説明

紙幣判別装置

【課題】紙幣の種類の判別速度の高速化を図る。
【解決手段】赤色光、緑色光及び青色光の中から少なくとも2色の照射光を、一部領域Aに向けて照射する光源12と、照射光が照射されることにより一部領域から発生する光を受光光として受光する受光部14と、受光光から、一部領域における孔の画像データとしての孔画像データを照射光の色ごとに作成する孔画像データ作成部22と、孔画像データから孔の特徴量を抽出する孔特徴抽出部24と、孔の特徴量と、予め記憶されている基準データとの比較結果により紙幣の種類を照合する照合部26と、照合部による照合結果を出力する出力部30とを備えていて、紙幣の種類ごとに異なるパターンで一部領域に孔Hが開けられている孔パターンHPを備える紙幣の種類を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紙幣の種類を判別する紙幣判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学式紙幣判別装置では、紙幣全面の輝度分布を測定し、この輝度分布を予め記憶されている基準データと比較することにより紙幣の種類を判別していた。
【0003】
より詳細には、判別すべき紙幣の画像データを取得し、その画像データの画素ごとの輝度を求め、その輝度の総数が予め定められた閾値以上かどうかで、その紙幣の種類を特定していた(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、紙幣の中には孔が開けられたものが存在している。この孔は、紙幣の表面から裏面に貫通して開口しており、紙幣の種類によって、孔径や隣接する孔間の間隔(ピッチ)や複数の孔がなすパターン(模様:以下、孔パターンと称する。)が異なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−197507号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来の光学式紙幣判別装置では、上述した孔を有する紙幣についても、紙幣全面にわたり輝度分布を測定して紙幣の種類を判別していたために、判別に長時間を要するという問題点があった。
【0007】
この発明は、このような問題点に鑑みなされたものである。従って、この発明の目的は、表面に孔が開けられた紙幣の種類を従来よりも迅速かつ正確に判別することができる紙幣判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的の達成を図るために、この発明の紙幣判別装置は、赤色光、緑色光及び青色光の中から少なくとも2色の照射光を、紙幣の種類ごとに異なるパターンで一部領域に孔が開けられている孔パターンを備える紙幣の一部領域に向けて照射する光源と、照射光が照射されることにより一部領域を介した光を受光光として受光する受光部と、受光光から、一部領域における孔の画像データとしての孔画像データを照射光の色ごとに作成する孔画像データ作成部と、基準データ記憶部と、孔画像データから孔の特徴量を抽出する孔特徴抽出部と、孔の特徴量と基準データ記憶部から読み出された基準データとしての孔の基準特徴量との比較結果により紙幣の種類を照合する照合部と、照合部による照合結果を出力する出力部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
上述の紙幣判別装置の好適例によれば、受光光から、照射光の色ごとの一部領域の画像データとしての色画像データを作成する色画像データ作成部と、色画像データから、一部領域の色の特徴量を抽出する色特徴抽出部とを備え、照合部が、色の特徴量と基準データ記憶部から読み出された基準データとしての色の基準特徴量との比較結果を、紙幣の種類の照合にさらに用いる構成とするのがよい。
【0010】
上述の紙幣判別装置の実施に当たり、照合に用いる孔の特徴量が、孔の直径、隣接する孔との距離、孔パターン形状及び孔の総数からなる群より選ばれた1以上の特徴量であることが好ましい。
【0011】
上述の紙幣判別装置の他の好適例によれば、受光光が、一部領域からの反射光であってもよい。
【0012】
上述の紙幣判別装置のさらに他の好適例によれば、受光光が、一部領域からの透過光であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明の紙幣判別装置は、紙幣に開けられた孔を紙幣の種類の判別に利用することにより、紙幣の全面に照射して得られる受光光に含まれる全面画像データから紙幣の一部領域の画像データを抽出して、この抽出された画像データを用いることにより紙幣の種類を判別することができる。これにより、紙幣の判別精度を低下させることなく、従来よりも高速に紙幣の種類の判別を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)は、紙幣の全体像を模式的に示す平面図であり、(B)は、(A)の一部領域を拡大して示す平面図であり、(C)は、(B)において、孔パターンに含まれる孔を拡大して示す平面図である。
【図2】実施の形態1の紙幣判別装置の機能ブロック図である。
【図3】実施の形態2の紙幣判別装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、各図は、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係について、この発明の実施の形態が理解できる程度に概略的に示してある。また、以下、この発明の実施形態の好適な構成例について説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は、以下の実施の形態に何ら限定されない。また、各図において、共通する構成要素には同符号を付し、その説明を省略することもある。
【0016】
(実施の形態1)
(紙幣について)
紙幣判別装置10の構成の説明に先立ち、まず、この実施の形態の紙幣判別装置10が判別すべき紙幣について図1を参照して簡単に説明する。
【0017】
図1(A)は、紙幣Pの全体像を模式的に示す平面図である。図1(B)は、図1(A)において、孔パターンが設けられた一部領域を拡大して示す平面図である。図1(C)は、図1(B)において、孔パターンに含まれる孔を拡大して示す平面図である。
【0018】
図1(A)〜(C)を参照すると、紙幣Pは、紙幣の種類ごとに異なるパターンで一部領域Aに孔Hが開けられている孔パターンHPを備える。
【0019】
図1(A)を参照すると、紙幣Pの表面において孔Hが開けられている領域は、紙幣Pの全面ではなく、紙幣Pの一部の領域すなわち一部領域Aに限定されている。詳しくは図1(B)及び(C)を参照して説明するが、図1(A)に示す例では、紙幣Pの左上隅部及び右下隅部に付された“1000”なる文字パターンを含む矩形状の領域が一部領域Aに対応し、この領域にのみ孔Hが設けられている。なお、この一部領域Aは、領域内に形成されている文字パターンを除き、紙幣の種類によらず、紙幣の共通の座標位置に設けられている。
【0020】
図1(B)及び(C)を参照すると明らかなように、この実施の形態に示す例では、上述した“1000”なる文字パターンを構成する“1”,“0”,“0”及び“0”の4個の文字が、紙幣Pに開けられた複数の細かい孔Hにより形作られている。図1(C)には、これらの4個の文字の内、文字“1”が孔Hにより形作られている様子が示されている。図中、個々の孔Hを黒丸(●)で示している。このようにして孔Hにより形作られた“1000”なる模様すなわちパターンを孔パターンHPと称する。図1(B)を参照すると明らかなように、孔パターンHPは、一部領域Aの内部に含まれている。また、孔パターンHPの全体形状、すなわち、この例では“1000”なる模様である孔パターン形状は、紙幣Pの種類ごとに予め定められている。
【0021】
図1(C)を参照すると、孔Hは、紙幣Pの種類により予め決められている空間的な規則に従って設けられている。すなわち、この実施の形態に示す例では、孔Hは、互いに直交する仮想の平行直線群の交点にその中心点を一致させて開けられている。また、紙幣Pの種類ごとに、孔Hの第1孔ピッチP1、第2孔ピッチP2、孔径D及び孔Hの総数は予め定められている。ここで、第1孔ピッチP1とは、紙幣Pの長手方向に沿って隣接する2個の孔H1及びH2の間の中心間距離を示す。また、第2孔ピッチP2とは、紙幣Pの短手方向に沿って隣接する2個の孔H1及びH3の間の中心間距離を示す。また、孔径Dとは、孔Hの直径を示す。また、孔Hの総数とは、孔パターンHPに含まれる孔の全個数を示す。
【0022】
なお、これらの孔Hの特徴を表わしているパラメータ、すなわち第1孔ピッチP1、第2孔ピッチP2、孔径D、孔Hの総数及び上述した孔パターンの形状を、以降「孔の特徴量」と称する。詳しくは後述するが、これらの孔の特徴量は、紙幣の判別に用いられる。
【0023】
(実施の形態1)
続いて、図2を参照してこの実施の形態の紙幣判別装置について説明する。
【0024】
図2は、紙幣判別装置の機能ブロック図である。図2を参照すると、この実施の形態の紙幣判別装置10は、光源12と、受光部14と、紙幣搬送部16と、生データ記憶部18と、一部領域切り出し部20と、孔画像データ作成部22と、孔特徴抽出部24と、照合部26と、基準データ記憶部28と、出力部30と、制御部32と、汎用記憶部34とを備えている。
【0025】
詳しくは後述するが、これらの構成要素の内、一部領域切り出し部20と、孔画像データ作成部22と、孔特徴抽出部24と、照合部26と、制御部32とは、CPU(Central Proseesing Unit)の機能手段として構成されていて、図示しない記憶部に記憶されているプログラムをCPUの演算部が実行することで達成される。
【0026】
なお、制御部32は、CPUが上述のプログラムを実行することにより、光源12、受光部14、紙幣搬送部16、基準データ記憶部28、汎用記憶部34、出力部30等の構成要素の他、CPU内の各機能手段20,22,24,26をそれぞれの構成要素や、それぞれの機能手段の目的に応じた動作をさせるための指令等をこれらにそれぞれ出力する。
【0027】
光源12は、赤色光を照射する赤色光源12Rと、緑色光を照射する緑色光源12Gと、青色光を照射する青色光源12Bとを備えている。赤色光源12R、青色光源12B及び緑色光源12Gは、好ましくは、従来周知のLED(Light Emitted Diode)から構成するのがよい。LEDを利用する代わりに、白色光源から対応するスペクトル成分を分離する手法を用いて各光源とすることも可能である。
【0028】
赤色光源12R、青色光源12B及び緑色光源12Gは、制御部32から発せられる指令に従い、少なくとも2色の光を照射光として、適当な照明光学系を経て、紙幣Pの一部領域Aに向けて照射する。少なくとも2色の光を照射する理由は、紙幣の種類の判別の精度を高めるためである。なお、照射光の色の選択は、制御部32が実行するプログラムによる指令によりランダムに決定される。なお、このプログラムは、被判別紙幣の種類に対応して指令内容が指定される。
【0029】
受光部14は、照射光が照射されることにより、紙幣の全面領域を介した光を受光光として受光する。この構成例では、受光部14は、紙幣判別装置10の内部において、紙幣Pを挟んで光源12と対向して配置されている。受光部14は、好ましくは、従来公知のCCD(Charge Coupled Device)から構成されているのが良いが、他の任意好適な光電変換素子を使用しても良い。受光部14は、光源12の色(赤色光源12R、青色光源12B及び緑色光源12G)に対応して赤色受光部14R、青色受光部14B及び緑色受光部14Gを備えている。
【0030】
赤色受光部14Rは、赤色光源12Rから照射される赤色光に由来する紙幣Pからの透過光を紙幣から発生する光としてとらえ、この光を受光光として検出する。青色受光部14Bは、青色光源12Bから照射される青色光に由来する紙幣Pからの透過光を紙幣から発生する光としてとらえ、この光を受光光として検出する。緑色受光部14Gは、緑色光源12Gから照射される緑色光に由来する紙幣Pからの透過光を紙幣から発生する光としてとらえ、この光を受光光として検出する。
【0031】
紙幣搬送部16は、紙幣判別装置10の内部において、光源12と受光部14との間に介在して設けられている。紙幣搬送部16は、図示しない紙幣投入口に投入された紙幣Pを、制御部32の指令に基づき、光源12の発光タイミングに合わせて1枚ごとに搬送する機能を有する。
【0032】
上述の受光部14での受光光から、紙幣Pの一部領域Aにおける孔Hの画像データとしての孔画像データを照射光の色ごとに作成する。この作成は、孔画像データ作成部22で行う。この孔画像データを作成するために、この構成例では、受光光を生データ記憶部18に送り、これに紙幣Pの全面の画像データ(以下、全面画像データと称する。)を一旦記憶させる。
【0033】
次に、一部領域切り出し部20で、全面画像データから、紙幣の孔パターンHPが作成される一部領域Aの画像データを抽出すなわち切り出して、孔画像データ作成部22に送る。
【0034】
ここで、生データ記憶部18は、受光部14で受光された紙幣Pの全面画像データを記憶する機能を有している。より詳細には、生データ記憶部18は、照射光の色に応じた3つの記憶領域を有している。
【0035】
つまり、生データ記憶部18は、照射光が赤色光である場合の紙幣Pからの全面画像データ(以下、赤色生データと称する。)を記憶する赤色記憶領域と、照射光が青色光である場合の紙幣Pからの全面画像データ(以下、青色生データと称する。)を記憶する青色記憶領域と、照射光が緑色光である場合の紙幣からの全面画像データ(以下、緑色生データと称する。)を記憶する緑色記憶領域を備えている。以降、赤色生データ、青色生データ及び緑色生データを総称する場合には、単に「生データ」と称する。
【0036】
生データ記憶部18は、従来公知の記憶素子、好ましくは、例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)から構成されているのがよい。
【0037】
一部領域切り出し部20は、制御部32が実行するプログラムによる指令に従い、生データ記憶部18から生データを読み出す。そして、この生データから孔Hが設けられている一部領域Aの画像を抽出すなわち切り出す。
【0038】
具体的には、一部領域切り出し部20は、生データ記憶部18から、生データを照射光の色ごとに順次に読み出す。さらに、一部領域切り出し部20は、汎用記憶部34から、予め記憶させておいた紙幣Pの表面における一部領域Aの位置座標を読み出す。そして、生データから、読み出した位置座標に対応する領域の画像を切り出す。このようにして切り出された一部領域Aの画像は、汎用記憶部34に、照射光の色ごとに読み出し自在に記憶される。なお、以降、生データから切り出された一部領域Aの画像データのことを「切り出し生データ」又は「抽出生データ」と称する。
【0039】
孔画像データ作成部22は、制御部32が実行するプログラムによる指令に従い、汎用記憶部34から切り出し生データを、照射光の色ごとに順次読み出す。そして、切り出し生データに画像処理を施して、孔Hの画像のみを残し、孔H以外の背景画像を透明化した孔画像データを作成する。
【0040】
好ましい具体例では、孔画像データ作成部22は、切り出し生データを構成する各画素(以下、生データ画素と称する。)の輝度を、照射光の色ごとに閾値と比較する。なお、この閾値は、照射光の色ごとに、予め汎用記憶部34に記憶されており、孔画像データの作成時に孔画像データ作成部22へ読み込まれる。
【0041】
具体的には、孔画像データ作成部22は、生データ画素の輝度が閾値よりも小さいか等しい場合には、その生データ画素は孔Hの画像を構成する画素ではないと判断し、作成される孔画像データの対応する画素(以下、孔画像データ画素と称する)を透明に設定して、汎用記憶部34に一時的に記録する。一方、生データ画素の輝度が閾値よりも大きい場合には、孔画像データ作成部22は、その生データ画素は孔Hの画像を構成する画素であると判断する。そして、孔画像データ画素の輝度を、読み取った生データ画素と同じ値に設定して、汎用記憶部34に一時的に記録する。
【0042】
このようにして孔画像データ作成部22は、切り出し生データの全生データ画素について閾値との比較を行い、切り出し生データから孔Hの画像のみが抜き出された孔画像データを作成する。
【0043】
孔特徴抽出部24は、制御部32が実行するプログラムによる指令に従い、孔画像データ作成部22が作成した孔画像データを汎用記憶部34から読み出してきて、これらデータを用いて、孔Hの特徴量を算出する。
【0044】
より詳細には、孔特徴抽出部24は、孔画像データを読み込み、例えば二値化法等の画像処理法により、孔画像データにおける孔Hの位置及び大きさを特定する。その上で、孔特徴抽出部24は、上述した孔の特徴量を算出する。すなわち、孔特徴抽出部24は、孔画像データから第1孔ピッチP1、第2孔ピッチP2、孔径D、孔Hの総数及び上述した孔パターンの形状を求める。求められた孔の特徴量は、汎用記憶部34に一時的に記憶される。
【0045】
照合部26は、汎用記憶部34に記憶されている孔の特徴量を基準データ記憶部28に記憶されている基準データと比較することにより、紙幣の種類の判別を行う。基準データは、紙幣Pの種類と特徴量とがテーブルになっており、特徴量が判別すれば、紙幣Pの種類も判別できる。
【0046】
より詳細には、照合部26は、汎用記憶部34から、判別すべき紙幣Pの孔の特徴量を読み出す。さらに、照合部26は、基準データ記憶部28から、紙幣の種類ごとに記憶されている孔の特徴量の基準データを読み出す。
【0047】
そして、照合部26は、判別すべき紙幣Pから求められた孔の特徴量を、紙幣の種類ごとの基準データと比較する。すなわち、第1孔ピッチP1、第2孔ピッチP2、孔径D、孔Hの総数及び上述した孔パターンの形状をそれぞれの基準データと比較する。そして、全ての特徴量が基準データと一致したことをもって、その紙幣Pの種類を決定する。
【0048】
出力部30は、照合部26における照合結果、すなわち紙幣の判別結果を、図示しないディスプレイ、プリンタ、スピーカ等の出力装置に出力する。
【0049】
このように、この実施の形態の紙幣判別装置10においては、紙幣Pの一部領域Aから得られた孔Hの特徴量を用いて紙幣の種類の判別を行うので、紙幣の全面からのデータを用いて判別を行っていた従来の技術に比べて、紙幣の種類の判別に要する時間を短縮することができる。
【0050】
なお、この実施の形態では、受光部14が受光する受光光が紙幣Pからの透過光の場合について説明した。しかし、受光部14が受光する受光光は、紙幣Pからの反射光であってもよい。
【0051】
この場合には、紙幣判別装置10において、受光部14は、反射光を受光する必要があるために、紙幣Pに対して光源12と同じ側に設けられる必要がある。
【0052】
また、この実施の形態においては、光源12は、ランダムに選択された2色の照射光を紙幣Pに対して照射する場合について説明した。しかし紙幣Pの種類の判別に用いる照射光の色は、2色以上であれば3色であっても構わない。照射光の色を3色とすることにより、より紙幣の種類の判別精度を高めることができる。
【0053】
また、この実施の形態においては、照合部26で、全ての孔の特徴量について基準データとの比較を行っている。しかし、充分な判別精度が保たれるならば、基準データとの比較を行う孔の特徴量は、1種類以上であってもよい。
【0054】
(実施の形態2)
続いて、図3を参照して、実施の形態2の紙幣判別装置について説明する。
【0055】
この実施の形態の紙幣判別装置40は、孔の特徴量に加えて一部領域Aにおける色の特徴量を用いて紙幣の種類を判別する点のみが、実施の形態1の紙幣判別装置10と異なっている。より具体的には、この実施の形態の紙幣判別装置40は、色画像データ作成部42と、色特徴抽出部44とを備えている点が、実施の形態1の紙幣判別装置10と異なっている。なお、色画像データ作成部42と、色特徴抽出部44とは、従来周知のCPUの機能手段として構成されていて、図示しない記憶部に記憶されているプログラムをCPUの演算部が実行することで達成される。
【0056】
従って、以下の説明においては、主に実施の形態1の紙幣判別装置10と異なっている点について説明する。
【0057】
図3は、紙幣判別装置40の機能ブロック図である。
【0058】
色画像データ作成部42は、制御部32が実行するプログラムによる指令に従い、汎用記憶部34から切り出し生データを読み出して、画像処理を行い、照射光の色ごとの一部領域Aの画像データとしての色画像データを作成する。
【0059】
より詳細には、色画像データ作成部42は、汎用記憶部34から切り出し生データを読み出す。そして、全ての生データ画素の輝度を、予め決められた階調(例えば256階調)に分類する。そして、この階調化された輝度を、色画像データの対応する画素(以下、色画像データ画素と称する。)に書き込む。このようにして、色画像データ作成部42は、色画像データを作成して、汎用記憶部34に一時的に記憶させる。
【0060】
色特徴抽出部44は、制御部32が実行するプログラムによる指令に従い、色画像データ作成部42が作成した色画像データを汎用記憶部34から読み出してきて、色の特徴量を算出する。
【0061】
より詳細には、色特徴抽出部44は、色画像データを汎用記憶部34から読み込む。そして、色画像データを構成する色画像データ画素を輝度ごとに総和して、色画像データの画素の輝度分布を作成する。この輝度分布が、色の特徴量に対応する。
【0062】
このようにして求められた色の特徴量は、汎用記憶部34に一時的に記憶される。
【0063】
照合部26は、汎用記憶部34に記憶されている孔の特徴量及び色の特徴量を基準データ記憶部28に記憶されているそれぞれの基準データと比較することにより、紙幣の種類の判別を行う。
【0064】
より詳細には、照合部26は、汎用記憶部34から、色の特徴量としての画素の輝度分布を読み出す。次に、照合部26は、基準データ記憶部28から、色の特徴量の基準データ(以下、色基準データと称する。)を読み込む。そして、色基準データと、判別すべき紙幣Pから得られた色の特徴量すなわち輝度分布を比較する。そして、両者が予め定められた誤差の範囲内で一致したことをもって、その紙幣Pの種類を仮判別する。
【0065】
続いて、照合部26は、実施の形態1で説明したと同様の手順により孔の特徴量を用いて紙幣Pの種類を仮判別する。
【0066】
そして、照合部26は、孔の特徴量を用いた紙幣Pの種類の仮判別結果と、色の特徴量を用いた紙幣Pの仮判別結果とを比較し、2種類の仮判別結果が同じ種類の紙幣Pを特定していた場合には、その結果を紙幣Pの最終的な判別結果として出力部30に出力する。
【0067】
このように、この実施の形態の紙幣判別装置40は、孔の特徴量に加えて一部領域Aにおける色の特徴量を用いて、紙幣Pの種類の判別を行っている。その結果、実施の形態1の紙幣判別装置10に比較してより正確に紙幣Pの判別を行うことができる。
【符号の説明】
【0068】
10,40 紙幣判別装置
12 光源
14 受光部
16 紙幣搬送部
18 生データ記憶部
20 一部領域切り出し部
22 孔画像データ作成部
24 孔特徴抽出部
26 照合部
28 基準データ記憶部
30 出力部
32 制御部
34 汎用記憶部
42 色画像データ作成部
44 色特徴抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤色光、緑色光及び青色光の中から少なくとも2色の照射光を、紙幣の種類ごとに異なるパターンで一部領域に孔が開けられている孔パターンを備える当該紙幣の当該一部領域に向けて照射する光源と、
前記照射光が照射されることにより前記一部領域を介した光を受光光として受光する受光部と、
前記受光光から、前記一部領域における前記孔の画像データとしての孔画像データを前記照射光の色ごとに作成する孔画像データ作成部と、
基準データ記憶部と、
前記孔画像データから前記孔の特徴量を抽出する孔特徴抽出部と、
前記孔の特徴量と前記基準データ記憶部から読み出された基準データとしての孔の基準特徴量との比較結果により前記紙幣の種類を照合する照合部と、
前記照合部による照合結果を出力する出力部とを備えていることを特徴とする紙幣判別装置。
【請求項2】
前記受光光から、前記照射光の色ごとの前記一部領域の画像データとしての色画像データを作成する色画像データ作成部と、
前記色画像データから、前記一部領域の色の特徴量を抽出する色特徴抽出部とを備え、
前記照合部が、前記色の特徴量と前記基準データ記憶部から読み出された基準データとしての色の基準特徴量との比較結果を、前記紙幣の種類の照合にさらに用いることを特徴とする請求項1に記載の紙幣判別装置。
【請求項3】
照合に用いる前記孔の特徴量が、当該孔の直径、隣接する孔との距離、孔パターン形状及び孔の総数からなる群より選ばれた1以上の特徴量であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙幣判別装置。
【請求項4】
前記受光光が、前記一部領域からの反射光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙幣判別装置。
【請求項5】
前記受光光が、前記一部領域からの透過光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の紙幣判別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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