説明

紙幣真偽判定装置

【課題】紙幣から取得した複数のデータをもとにした特徴値を複合して複合特徴値を算出し、その複合特徴値を用いて偽造紙幣を判別する手段を提供する。
【解決手段】輝度平均値、輝度偏差、磁気平均値、磁気偏差、赤外線平均値、赤外線偏差を記憶した記憶部8と、画像データ取得部3、磁気センサ4、赤外線センサ5を備え、画像データ取得部3で取得した画像データから抽出した輝度値と輝度平均値との差を輝度偏差で割ることで、輝度特徴値を算出し、磁気センサ4で取得した磁気データから抽出した磁気値と磁気平均値との差を磁気偏差で割ることで、磁気特徴値を算出し、赤外線センサ5で取得した赤外線データから抽出した赤外線値と赤外線平均値との差を赤外線偏差で割ることで、赤外線特徴値を算出し、その輝度特徴値と磁気特徴値、赤外線特徴値を足し合わせて複合特徴値を算出し、その複合特徴値を複合特徴閾値と比較することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣の真偽を判定する紙幣真偽判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の紙幣真偽判定装置は、判定する紙幣の画像データを取得し、その画像データの画素ごとの濃度を取得していき、その濃度の総数が閾値以上であるときにその紙幣が真券で有ると判断し、閾値未満の場合にはその紙幣は偽造紙幣であると判断している(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−194858号公報(段落0013、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、画像データの濃度の総数が閾値以上か否かを判断しているが、近年高精度なプリンタなどの出現により高精度な偽造紙幣が出回っており、画像データの濃度の確認だけでは偽造紙幣であってもそれを排除することができなくなっている。
また一般に、紙幣の真偽判定には画像データの濃度を用いる方法に加えて、さらにセンサによって紙幣の磁気値を抽出し、画像データの濃度の確認と、抽出した磁気値の確認とを行うことで、紙幣の真偽を判定する方法もあるが、それでも近年の高精度な偽造紙幣を排除できないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題点を解決するための手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、紙幣から画像データを取得する画像データ取得部と、紙幣から前記画像データ以外のデータを取得するためのセンサを備え、紙幣の真偽を判断するための複合特徴閾値を記憶する特徴閾値記憶手段を有し、前記画像データ取得部で取得した画像データをもとに算出した特徴値と、前記センサで取得したデータをもとに算出した他の特徴値とを複合して複合特徴値を算出し、その複合特徴値と前記特徴閾値記憶手段に記憶している複合特徴閾値とを比較することで、紙幣の真偽を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
これにより、本発明は、紙幣から得た複数の特徴値を複合したことによる複合特徴値を用い、紙幣の真偽判定を行うことによってさらに精度の高い真偽判定を行うことができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、図面を参照して本発明による紙幣真偽判定装置の実施例について説明する。
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1の紙幣真偽判定装置を示すシステム構成図、図2は実施例1の紙幣真偽判定手段を示すブロック図である。
図1において、1は紙幣真偽判定装置であり、図示しない金融機関の自動取引装置等の内部に設けられ、媒体搬送部によって搬送される紙幣の真偽の判定処理を行う。
2は媒体搬送部であり、搬送される紙幣がスキューの状態であるか否かを認識するためのセンサを備えており、また紙幣のスキューを補正するための機能を有している。
【0009】
3は画像データ取得部であり、CCDカメラ等を備えており、媒体搬送部2によって搬送される紙幣の画像データを取得する機能を有する。
4は磁気センサであり、媒体搬送部2の途中に設置されており、搬送される紙幣から磁気の強さを示す磁気データを取得するための機能を有する。
5は赤外線センサであり、媒体搬送部2を横断する赤外線発光部と、その赤外線発光部に対向配置される赤外線受光部とにより構成され、搬送される紙幣が赤外線を遮る際に紙幣を透過する赤外線の強さを示す赤外線データを取得するための機能を有する。
【0010】
7は制御部であり、記憶部8に格納されている制御プログラムに従って紙幣真偽判定装置1の各部の動作を制御する。
記憶部8は、制御部7が実行する制御プログラムや、搬送される紙幣の真偽を判定するための真偽判定プログラムを格納している他、制御部7による処理結果等を記憶する。
図2において、10は輝度抽出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、画像データ取得部3によって取得した画像データをもとにその紙幣自体の平均的な輝度値を抽出する。
【0011】
11は磁気抽出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、磁気センサ4によって取得した磁気データをもとにその紙幣自体の平均的な磁気の強さを示す磁気値を抽出する。
12は赤外線抽出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、赤外線センサ5によって取得した赤外線データをもとにその紙幣自体の平均的な赤外線の強さを示す赤外線値を抽出する。
【0012】
上記の記憶部8には、真券である紙幣(真券紙幣という。)をもとにした輝度値のヒストグラムから定まる平均値(輝度平均値)や標準偏差(輝度偏差)を格納するための輝度偏差格納エリアや、真券紙幣をもとにした磁気値のヒストグラムから定まる平均値(磁気平均値)や標準偏差(磁気偏差)を格納するための磁気偏差格納エリア、真券紙幣をもとにした赤外線値のヒストグラムから定まる平均値(赤外線平均値)や標準偏差(赤外線偏差)を格納する赤外線偏差格納エリアを備える。
【0013】
また、記憶部8は搬送される紙幣について輝度抽出部10や磁気抽出部11、赤外線抽出部12によって抽出される輝度値や磁気値、赤外線値を記憶するための記憶エリアを有する他、紙幣の真偽を判断するための紙幣特徴閾値を格納する。
13は輝度特徴値算出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、輝度抽出部10によって抽出される輝度値や、記憶部8の輝度偏差格納エリアに格納されている輝度平均値と輝度偏差とから紙幣の輝度特徴値を算出する。
【0014】
14は磁気特徴値算出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、磁気抽出部11によって抽出される磁気値や、記憶部8の磁気偏差格納エリアに格納されている磁気平均値と磁気偏差とから紙幣の磁気特徴値を算出する。
15は赤外線特徴値算出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、赤外線抽出部12によって抽出される赤外線値と記憶部8の赤外線偏差格納エリアに格納されている赤外線平均値と赤外線偏差とから紙幣の赤外線特徴値を算出する。
【0015】
なお、輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値を定める方法については後述する。
また、記憶部8は紙幣の輝度や磁気、赤外線の値を補正するための輝度補正値、磁気補正値、赤外線補正値も格納しており、それぞれの値は0よりも大きく1以下の範囲の数字であって、それぞれほぼ同値であることから本実施例においては共通して1とする。
16は複合特徴生成部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、輝度特徴値算出部13や磁気特徴値算出部14、赤外線特徴算出部15で算出される輝度特徴値や磁気特徴値、赤外線特徴値を複合し新たに紙幣の真偽判別のための複合特徴値を生成する。
【0016】
17は真偽判定部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、複合特徴生成部16によって生成される複合特徴値に従って紙幣が本物か偽物かを判定する。
18は結果出力部であり、この紙幣真偽判定装置1を搭載している自動取引装置に紙幣の真偽の判定結果を出力して伝達する。
【0017】
図3は輝度偏差と輝度平均値を定める手段を示すブロック図である。ここでは上記の輝度偏差と輝度平均値を定めるために必要な部位を示す。
図3において、20は集計部であり、複数枚の真券紙幣について、それぞれの紙幣から抽出される輝度値や磁気値、赤外線値を集計した集計データを記憶する。
21は真券紙幣データ算出部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、集計部20の統計データをもとに輝度平均値とその輝度偏差や、磁気平均値とその磁気偏差、赤外線平均値とその赤外線偏差を算出する。
【0018】
22は輝度データ取扱部であり、制御部7と記憶部8に格納されている真偽判定プログラムとによって実現され、真券紙幣データ算出部21によって算出される輝度平均値と輝度偏差を記憶部8の輝度偏差格納エリアに格納させる。
ここで、本実施例の紙幣真偽判定の動作について説明する前に、記憶部8に紙幣真偽判定に必要な輝度平均値と輝度偏差を格納しておくための方法について説明しておく。
【0019】
まず、紙幣真偽判定装置1の制御部7は、画像データ取得部3で複数枚投入される真券紙幣から画像データを順次取得していく。
輝度抽出部10は、画像データ取得部3によって取得される画像データをもとにして紙幣の輝度値を順次抽出していく。
制御部7は、抽出された輝度値を輝度集計部20に集計していき、上記の画像データ取得部3で画像データを取得する動作から輝度値を輝度集計部20に格納するまでの動作を全ての真券紙幣に対して行う。
【0020】
真券紙幣データ算出部21は、集計部20の統計データをもとに最も高い頻度で抽出される輝度値をもとに輝度平均値を定め、その輝度平均値を用いて輝度偏差を算出する。
なお、図4は複数枚の真券紙幣から集計した輝度値をもとに想定した輝度値を示す紙幣輝度ヒストグラムであって、縦軸が紙幣の集計枚数、横軸は輝度値の範囲(例えば0〜10、10〜20等のように区切られている)を示している。
【0021】
図4において、30は輝度値から作成される紙幣輝度ヒストグラムをもとにした輝度分布曲線である。
31は輝度平均値であって、32は輝度偏差であって集計された輝度値をもとにした輝度分布曲線30をもとに定められる。
輝度データ取扱部22は、上記の輝度平均値31と輝度偏差32を記憶部8の輝度偏差格納エリアに格納させる。
【0022】
なお、上記では紙幣の輝度について説明したが、これと同様にして集計部20は複数の真券紙幣をもとに磁気値や赤外線値を集計して記憶する。
真券紙幣データ算出部21は、集計部20に記憶されている磁気値と赤外線値とから磁気平均値と赤外線平均値を定め、さらに磁気偏差と赤外線偏差を算出する。
そして、図示しない磁気データ取扱部は、記憶部8の磁気偏差格納エリアに磁気平均値と磁気偏差を格納させ、また図示しない赤外線データ取扱部は、記憶部8の赤外線偏差格納エリアに赤外線平均値と赤外線偏差を格納する。
【0023】
上述した構成における紙幣真偽判定について説明する。
制御部7は、画像データ取得部3によって搬送される紙幣から輝度データを取得すると共に、磁気センサ4によって紙幣から磁気データを取得し、赤外線センサ5によって紙幣から赤外線データを取得する。
そして、輝度抽出部10は上記の輝度データをもとに輝度値を抽出し、磁気抽出部11は上記の磁気データをもとに磁気値を抽出し、赤外線抽出部12は上記の赤外線データをもとに赤外線値を抽出する。
【0024】
制御部7は、抽出された輝度値と磁気値、赤外線値を記憶部8に記憶しておく。
制御部7が記憶部8から輝度平均値と輝度偏差、輝度値を読み出すと、輝度特徴値算出部13は読み出された輝度平均値と輝度偏差、輝度値を用いて輝度特徴値を算出する。
以下に輝度特徴値を算出するための式(1)を示す。
式(1)において、輝度平均値をKave、輝度偏差をKσ、輝度値をKout、輝度特徴値をPaで示す。
【0025】
【数1】

式(1)に示すように輝度特徴値Paは、輝度平均値と紙幣の輝度値との差を輝度偏差で割って正規化することで算出される値であり、制御部7はその輝度特徴値Paを記憶部8に記憶しておく。
【0026】
次に磁気特徴値を算出するための式(2)を示す。
式(2)において、磁気平均値をMave、磁気偏差をMσ、磁気値をMout、磁気特徴値をPkで示す。
【0027】
【数2】

式(2)に示すように磁気特徴値Pkは、磁気平均値と紙幣の磁気値との差を磁気偏差で割って正規化することで算出される値であり、制御部7はその磁気特徴値Pkを記憶部8に記憶しておく。
【0028】
更に赤外線特徴値を算出するための式(3)を示す。
式(3)において、赤外線平均値をIRave、赤外線偏差をIRσ、赤外線値をIRout、赤外線特徴値をPiで示す。
【0029】
【数3】

式(3)に示すように赤外線特徴値Piは、赤外線平均値と紙幣の赤外線値との差を赤外線偏差で割って正規化することで算出される値であり、制御部7はその赤外線特徴値Piを記憶部8に記憶しておく。
【0030】
制御部7は、記憶部8から輝度特徴値と磁気特徴値、赤外線特徴値、輝度補正値、磁気補正値、赤外線補正値を読み出す。
複合特徴生成部16は、上記で読み出された輝度特徴値と磁気特徴値、赤外線特徴値、輝度補正値、磁気補正値、赤外線補正値をもとに複合特徴値を算出する。
以下に、複合特徴値を算出するための式(4)を示す。
【0031】
式(4)において、輝度特徴値をPk、磁気特徴値をPm、赤外線特徴値をPi、輝度補正値をWk、磁気補正値をWm、赤外線補正値をWi、複合特徴値をPcomで示す。
【0032】
【数4】

そして、制御部7が記憶部8に格納されている紙幣特徴閾値を読み出すと、真偽判定部17はその紙幣特徴閾値と上記の複合特徴値とを比較し、複合特徴値が紙幣特徴閾値未満の場合は入力された紙幣が真券であると判定し、紙幣特徴閾値以上の場合には偽造紙幣と判定する。
【0033】
以下に、上述した紙幣真偽判定について、実際に記憶部8に格納されている輝度平均値Kave、輝度偏差Kσ、磁気平均値Mave、磁気偏差Mσ、赤外線平均値IRave、赤外線偏差IRσや、紙幣から抽出される輝度値Koutと磁気値Mout、赤外線値Miに例となる数字を当てはめて説明する。
なお、真券紙幣と偽造紙幣との両方を比較できるように、両紙幣についての判定を行うものとする。
【0034】
ここで、輝度平均値Kaveを100、輝度偏差Kσを2、磁気平均値Maveを1000、磁気偏差Mσを50、赤外線平均値IRaveを400、赤外線偏差IRσを10とする。
真券の紙幣をもとに抽出される輝度値Koutは110で磁気値Moutは1300、赤外線値IRoutは450とする。
【0035】
また、偽造紙幣をもとに抽出される輝度値Kout´は180で磁気値Mout´は3000、赤外線値IRout´は700とする。
ここで、図5は各分布曲線を示す説明図であり、(a)は輝度分布曲線、(b)は磁気分布曲線、(c)は赤外線分布曲線を示したものであり、偽造紙幣や真券紙幣から抽出した値が各分布曲線においてどのように位置するかを示したものである。
【0036】
図5(a)、(b)、(c)において、35aは輝度分布曲線、35bは磁気分布曲線、35cは赤外線分布曲線を示す。
36a、36b、36cは偽造紙幣の輝度値、磁気値、赤外線値であり、輝度抽出部10、磁気抽出部11、赤外線抽出部12が偽造紙幣から抽出した値を示したものである。
37a、37b、37cは真券紙幣の輝度値、磁気値、赤外線値であり、輝度抽出部10、磁気抽出部11、赤外線抽出部12が真券紙幣から抽出した値を示したものである。
【0037】
38a、38b、38cは輝度平均値、磁気平均値、赤外線平均値を示す。
39a、39b、39cは輝度偏差、磁気偏差、赤外線偏差を示す。
40aは偽券輝度距離であり、偽造紙幣の輝度値36aから輝度平均値38aまでの距離を示す。
40bは偽券磁気距離であり、偽造紙幣の磁気値36bから磁気平均値38bまでの距離を示す。
【0038】
40cは偽券赤外線距離であり、偽造紙幣の赤外線値36cから赤外線平均値38cまでの距離を示す。
41aは真券輝度距離であり、真券紙幣の輝度値37aから輝度平均値38aまでの距離を示す。
41bは真券磁気距離であり、真券紙幣の磁気値37bから磁気平均値38bまでの距離を示す。
【0039】
41cは真券赤外線距離であり、真券紙幣の赤外線値37cから赤外線平均値38cまでの距離を示す。
これら上記の偽券輝度距離40a、偽券磁気距離40b、偽券赤外線距離40c、真券輝度距離41a、真券磁気距離41b、真券赤外線距離41cは、その距離が0に近いほど真券に近いことを表しており、よって図6(a)、(b)、(c)から偽券輝度距離40a、偽券磁気距離40b、偽券赤外線距離40cはそれぞれが真券輝度距離41a、真券磁気距離41b、真券赤外線距離41cに対して明らかに離れていることが見て分かる。
【0040】
以下に、上述した各数値を式(1)〜式(3)に代入して、輝度特徴値Pkと、磁気特徴値Pm、赤外線特徴値Piを求める。
【0041】
【数5】

次に偽造紙幣の輝度値Koutと磁気値Mout、赤外線値IRoutを用いることで、偽造紙幣の輝度特徴値Pk´、磁気特徴値Pm´、赤外線特徴値Pi´を計算する。なお輝度特徴値と磁気特徴値、赤外線特徴値を算出する際には上記式(1)〜式(3)を用いるが、真券と偽造紙幣を区別するために偽造紙幣の輝度特徴値と磁気特徴値、赤外線特徴値にはそれぞれ符号に´を付けることで区別する。
【0042】
これによって、
【0043】
【数6】

となる。
制御部7は、上記で算出された輝度特徴値Pk、Pk´と磁気特徴値Pm、Pm´、赤外線特徴値Pi、Pi´を上記の式(4)に適用することによっては真券紙幣の複合特徴値Pcomと偽造紙幣の複合特徴値Pcom´を算出する。
【0044】
ここで、式(4)では輝度補正値をWk、磁気補正値をWm、赤外線補正値をWiを用いるが、上述したように本実施例においては、それぞれがほぼ同値であることから本実施例においては共通して1としているので、真券紙幣の複合特徴値Pcomは、
【0045】
【数7】

となり、偽造紙幣の複合特徴値Pcom´は、
【0046】
【数8】

となる。
図6は紙幣真偽判定に必要な数値を示す一覧表を示しており、上述した輝度平均値と磁気平均値、赤外線平均値、輝度偏差、磁気偏差、赤外線偏差、真券紙幣と偽造紙幣から抽出される輝度値、磁気値、赤外線値、そして上記式(1)、式(2)、式(3)で算出される輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値を示す表である。
【0047】
そして、制御部7は記憶部8から紙幣特徴閾値(例えば50〜60間の値に設定される。)を読み出し、複合特徴値Pcom、Pcom´と比較して紙幣の真偽を判別する。
このように、輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値の各特徴値の算出は、輝度値、磁気値、赤外線値をそれぞれの標準偏差で割って正規化することでそれぞれ数字の桁が異なるもの同士でも、スケールを合わせてから足し合わせ、複合特徴値を算出するようにしている。
【0048】
そして、真券紙幣の複合特徴値は上記式(5)より16となり、偽造紙幣の複合特徴値は上記式(6)より110となって大きく差が現れるため、このことを用いることでさらに細かく紙幣の真偽を判定でき、偽造紙幣を排除できる。
以上説明したように、本実施例においては、輝度や磁気、赤外線等の異なった紙幣の特徴を複合して複合特徴値を算出し、その複合特徴値が紙幣特徴閾値未満のときにその紙幣が真券で有ると判断するので、紙幣の輝度値や磁気値、赤外線値等を個々に用いるよりも、更に紙幣真偽判別の精度を向上させることができる。
【0049】
また、輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値を算出するときにそれぞれの標準偏差で割ることによって、それぞれ桁が異なる数字の値であっても、スケールを合わせることができるので、元となる輝度値や磁気値、赤外線値を単に足し合わせたことで、桁が大きい値によって桁の小さい値の影響しなくなってしまうのを防止できる。
なお、上記実施例1においては、各種の補正値(輝度補正値、磁気補正値、赤外線補正値)をすべて1としたが、輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値のいずれかの値が他の値に比べて大きくなるような場合には、全体のバランスを合わせる用にそれぞれの補正値を設定するようにするとよい。
【0050】
また、上記実施例1においては、輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値の3種の特徴値をもとに複合特徴値を算出したが、これに限らず複合特徴値を構成するための特徴値は何種類でもよい。
さらに、輝度や磁気、赤外線のみに限定されるものでは無いことは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1の紙幣真偽判定装置を示すシステム構成図
【図2】実施例1の紙幣真偽判定手段を示すブロック図
【図3】紙幣真偽判定装置の輝度偏差と輝度平均値を定めるための部位を示すブロック図
【図4】輝度値を示す紙幣輝度ヒストグラム
【図5】各分布曲線を示す説明図
【図6】紙幣真偽判定に必要な数値を示す一覧表
【符号の説明】
【0052】
1 紙幣真偽判定装置
2 媒体搬送部
3 画像データ取得部
4 磁気センサ
5 赤外線センサ
7 制御部
8 記憶部
10 輝度抽出部
11 磁気抽出部
12 赤外線抽出部
13 輝度特徴値算出部
14 磁気特徴値算出部
15 赤外線特徴値算出部
16 複合特徴生成部
17 真偽判定部
18 結果出力部
20 集計部
21 真券紙幣データ算出部
22 輝度データ取扱部
30、35a 輝度分布曲線
31、38a 輝度平均値
32、39a 輝度偏差
35b 磁気分布曲線
35c 赤外線分布曲線
36a、37a 輝度値
36b、37b 磁気値
36c、37c 赤外線値
38b 磁気平均値
38c 赤外線平均値
39b 磁気偏差
39c 赤外線偏差
40a 偽券輝度距離
40b 偽券磁気距離
40c 偽券赤外線距離
41a 真券輝度距離
41b 真券磁気距離
41c 真券赤外線距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣から画像データを取得する画像データ取得部と、紙幣から前記画像データ以外のデータを取得するためのセンサを備え、
紙幣の真偽を判断するための複合特徴閾値を記憶する特徴閾値記憶手段を有し、
前記画像データ取得部で取得した画像データをもとに算出した特徴値と、前記センサで取得したデータをもとに算出した他の特徴値とを複合して複合特徴値を算出し、その複合特徴値と前記特徴閾値記憶手段に記憶している複合特徴閾値とを比較することで、紙幣の真偽を判定することを特徴とする紙幣真偽判定装置。
【請求項2】
請求項1において、
紙幣から磁気データを取得する磁気センサと、紙幣から赤外線データを取得する赤外線センサと、真券紙幣をもとに取得した輝度平均値、輝度偏差、磁気平均値、磁気偏差、赤外線平均値、赤外線偏差を記憶する特徴値算出用データ記憶手段とを備え、
前記画像データ取得部によって取得した画像データから紙幣の輝度値を抽出し、その輝度値と前記輝度平均値との差を前記輝度偏差で割ることで、輝度特徴値を算出し、
前記磁気センサによって取得した磁気データから磁気値を抽出し、該磁気値と前記磁気平均値との差を前記磁気偏差で割ることで、磁気特徴値を算出し、
前記赤外線センサによって取得した赤外線データから赤外線値を抽出し、該赤外線値と前記赤外線平均値との差を前記赤外線偏差で割ることで、赤外線特徴値を算出し、
前記輝度特徴値と、前記磁気特徴値、前記赤外線特徴値を足し合わせて複合することで複合特徴値を算出することを特徴とする紙幣真偽判定装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値に対する補正値を記憶する補正値記憶手段を有し、
複合特徴値を算出する際に、該補正値を前記輝度特徴値、磁気特徴値、赤外線特徴値に掛け合わせることを特徴とする紙幣真偽判定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−15591(P2008−15591A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183233(P2006−183233)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】