説明

紙幣識別装置

【課題】 紙幣識別装置において、濡れた紙幣が挿入された場合に、紙幣を全て取り込む前に排除することができ、紙幣識別装置内で札詰まりが発生するのを大幅に軽減することができるようにする。
【解決手段】 紙幣1の搬送路2に互いに絶縁状態で配置された二つの導電部材3a,3bと、二つの導電部材3a,3b間のインピーダンスを検出する検出回路4を備え、検出回路4により検出されたインピーダンスが所定値以下のときに搬送路2に搬入された紙幣1を搬入方向と逆の方向に搬送して返却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等に取り付けられた紙幣識別装置に関し、特に、濡れた紙幣による札詰まりを防止する紙幣識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動販売機等に取り付けられた紙幣識別装置においては、紙幣を一旦全て紙幣識別装置内に取り込んだ後、各センサの諸要素を判定し、濡れ札によりその判定結果が所定のデータと一致しない場合は真券ではないとして返却するか、あるいは真券と判定した場合はエスクロするといった方法が一般的に採られている。しかし、このような場合、一旦紙幣を全て取り込むために、濡れた紙幣を返却する場合に、水分の影響で紙幣の腰が弱くなっているので、搬送路内で札詰まりが発生しやすい。
【0003】
そこで、紙幣識別装置内に水分吸収シートを配設し、挿入された紙幣に付着している水分を吸い取ることが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、紙幣の搬送路の両側に、回転しながら紙幣の両側のエッヂに接触する回転手段を設けることにより、濡れた紙幣や皺くちゃの紙幣の搬送を確実に行うことも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−250143号公報
【特許文献2】特開平11−144118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の紙幣識別装置では、濡れた紙幣を紙幣識別装置内に全て取り込む前に検知して排除することができないため、紙幣識別装置内で札詰まりが発生するのを防止できない場合があるという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、濡れた紙幣を全て取り込む前に排除することができ、紙幣識別装置内で札詰まりが発生するのを大幅に軽減することができる紙幣識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では上記課題を解決するために、紙幣の搬送路に互いに絶縁状態で配置された二つの導電部材と、前記二つの導電部材間のインピーダンスを検出する検出手段と、を備え、前記検出手段により検出されたインピーダンスが所定値以下のときに前記搬送路に搬入された紙幣を搬入方向と逆の方向に搬送して返却することを特徴とする紙幣識別装置が提供される。
【0007】
このような紙幣識別装置によれば、濡れた紙幣を全て取り込む前に排除することができ、紙幣識別装置内で札詰まりが発生するのを大幅に軽減することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙幣識別装置は、紙幣の搬送路に配置された二つの導電部材間のインピーダンスを検出し、検出されたインピーダンスが所定値以下のときに、搬送路に搬入された紙幣を搬入方向と逆の方向に搬送して返却するため、濡れた紙幣を全て取り込む前に排除することができ、紙幣識別装置内で札詰まりが発生するのを大幅に軽減することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施の形態の紙幣識別装置の要部を示す図である。同図の(A)は導電部材の配置例を示し、(B)は導電部材の形状及び検出回路の一例を示している。
【0010】
この紙幣識別装置は、紙幣1の搬送路2に互いに絶縁状態で配置された二つの導電部材3a,3bと、二つの導電部材3a,3b間のインピーダンスを検出する検出回路(検出手段)4を備え、検出回路4により検出されたインピーダンスが所定値以下のときに搬送路2に搬入された紙幣1を搬入方向と逆の方向に搬送して返却する構成を有している。
【0011】
上記二つの導電部材3a,3bは、紙幣1が挿入される搬送路2の最初の搬送ローラ5(もしくは搬送ベルト)の下側に配置されている。また、直線状の平行部分が互いに入れ子になるよう櫛歯状に形成された一対の導電部材となっている。そして、一方が検出回路4に接続され、もう一方がGNDに接続されている。
【0012】
検出回路4は、演算増幅器からなるコンパレータQ1を有し、二つの導電部材3a,3b間の電圧からそのインピーダンスを検出する。具体的には、コンパレータQ1の負入力端子(−)に一方の導電部材3aが接続され、正入力端子(+)には抵抗R1とR2により分圧された比較電圧が入力される。この比較電圧は、許容できる濡れ札(濡れた紙幣1)を実際に接触させたときに検出された電圧を参考にして決定することができ、濡れ札の許容範囲をこの比較電圧で設定可能となる。R3及びR4は抵抗である。
【0013】
上記のように構成された紙幣識別装置においては、搬送路2に金属等の二つの導電部材3a,3bが絶縁状態で配置されており、濡れた紙幣1が挿入されて、二つの導電部材3a,3bに接触すると、二つの導電部材3a,3bが短絡状態となる。したがって、この二つの導電部材3a,3b間のインピーダンスを監視することで、濡れた紙幣1の挿入を検知することができる。本実施の形態では、二つの導電部材3a,3b間のインピーダンスが所定値以下のときに濡れた紙幣1が挿入されたと判定し、挿入口に即返却する。これにより、濡れた紙幣1を全て取り込む前に返却することができる。
【0014】
従来では、自動販売機等に取り付けられた紙幣識別装置において、雨の日に紙幣を挿入する場合や濡れた手で紙幣を挿入するような場合、紙幣が濡れていることにより、その紙幣を取り込んだ紙幣識別装置の内部で紙幣が詰まり、札詰まりが発生することがあった。しかし、本実施の形態の紙幣識別装置では、濡れた紙幣を全て取り込む前の早い段階で素早く排除することができ、紙幣識別装置内で札詰まりが発生するのを大幅に軽減することができる。
【0015】
ここで、本実施の形態では、二つの導電部材3a,3bの配置場所として、早めに濡れた紙幣1を返却できるように、搬送路2の最初の搬送ローラ5(もしくは搬送ベルト)の位置としている。また、紙幣1を確実に二つの導電部材3a,3bに接触させるために、その搬送ローラ5(もしくは搬送ベルト)の下側に配置している。さらに、濡れた紙幣1の僅かな接触でも短絡が可能となるように、二つの導電部材3a,3bの形状を櫛歯状に形成している。
【0016】
図2は本実施の形態の紙幣識別装置の動作を示すフローチャートである。ここでは、紙幣識別装置の札詰まり防止方法を示している。この札詰まり防止方法は、紙幣1の搬送路2に互いに絶縁状態で配置された二つの導電部材3a,3b間のインピーダンスを検出する検出工程と、検出工程で検出されたインピーダンスが所定値以下のときに搬送路2に搬入された紙幣1を搬入方向と逆の方向に搬送して返却する返却工程を有している。
【0017】
まず、紙幣1の挿入の有無を監視し(S1)、紙幣1の挿入を検知した場合は、図示しない搬送モータを正転させ、紙幣1の取り込みを開始する(S2)。続いて、紙幣1の真偽判定のための各センサのデータの取り込みを行うとともに、検出回路4の出力信号を監視し、挿入された紙幣1が濡れ札であるかを検知する(S3)。この濡れ札のチェックは、各センサのデータの取り込みが終了するまで行い(S4,S5)、この間濡れ札が検知されなかった場合は、紙幣1の真偽を判定するデータ判定のステップに移行する。データの取り込み中に濡れ札を検知した場合は、即座にデータの取り込みを中止し、上記の搬送モータを逆転させ、紙幣1を返却する(S6)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の紙幣識別装置の要部を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の紙幣識別装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0019】
1 紙幣
2 搬送路
3a,3b 導電部材
4 検出回路
5 搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣の搬送路に互いに絶縁状態で配置された二つの導電部材と、
前記二つの導電部材間のインピーダンスを検出する検出手段と、を備え、
前記検出手段により検出されたインピーダンスが所定値以下のときに前記搬送路に搬入された紙幣を搬入方向と逆の方向に搬送して返却することを特徴とする紙幣識別装置。
【請求項2】
前記二つの導電部材は、前記紙幣が挿入される搬送路の最初の搬送ローラもしくは搬送ベルトの下側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。
【請求項3】
前記二つの導電部材は、直線状の平行部分が互いに入れ子になるよう櫛歯状に形成された一対の導電部材であることを特徴とする請求項1記載の紙幣識別装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−350700(P2006−350700A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176253(P2005−176253)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】