説明

紙用透明化剤

【課題】 優れた透明性と耐水性とを付与することを可能としながら高度なリサイクル性を達成させることが可能な紙用透明化剤を提供すること。
【解決手段】 モノカルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物を含有することを特徴とする紙用透明化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙用透明化剤に関し、より詳しくは、紙に加工処理することにより透明性を付与することができる紙用透明化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙はその空隙に40〜50%の空気を含有しており、このような含有された空気と紙を構成するセルロース繊維との屈折率の違いにより紙が白く見え、不透明度が得られている。そのため、セルロース繊維に近い屈折率を有する化合物を浸透させて紙の空隙を満たすことで、透明紙を得ることができる。このようにして得られる透明紙は、例えばトレーシングペーパーや窓付封筒の窓の部分等に使用されている。
【0003】
このような窓付封筒は、一般に、封筒用紙の一部を切り抜き、その部分にセロファン等の透明なフィルムを貼り付ける方法によって製造されていた。しかしながら、このような方法では、窓部分の切り抜きやフィルムの糊付等といった複雑な工程が必要となるため作業効率が低かった。
【0004】
また、窓付封筒は、有機溶剤に溶かした樹脂類(例えば、アクリル系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、石油系炭化水素樹脂、高分子脂環式化合物やワックス)を紙用透明化剤として用い、前記紙用透明化剤を封筒用紙の一部に塗布し、その部分を加熱して樹脂を紙に浸透させることで封筒の窓部分を透明化する方法によっても製造されていた。しかしながら、このような方法に使用する樹脂類は水溶性を示さないか、或いは水溶性であっても水中に僅かに分散、乳化する程度であることから水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水にも溶解させることができない。そのため、このような方法で得られた窓付封筒は古紙再生が困難であり、古紙回収の際には新聞や広告紙等と窓付封筒を分別する作業が必要となってコストが高くなっていた。また、古紙回収の際に、このような方法で得られた窓付封筒の分別が不充分であると、パルパー等で離解された場合に樹脂ピッチやワックス由来のスカムが発生するため、再生紙を抄紙する際にトラブルが発生するばかりか、再生紙がインクを弾いてしまうといった多くの問題が発生していた。
【0005】
このような理由から、窓付封筒等の透明紙を得ることができる前記樹脂以外の紙用透明化剤が研究されてきている。例えば、特開2002−327397号公報(特許文献1)においては、炭化水素基又はアシル基とアルキレンオキサイド鎖とを有する特定の構造式を有する水性ポリエーテル化合物を含有する紙用透明化剤が開示されており、特開2003−306895号公報(特許文献2)においては、アルコキシアルキル基とアルキレンオキサイド鎖とを有する特定の構造式を有する水性化合物を含む紙用透明化剤が開示されている。更に、特開2003−313800号公報(特許文献3)にはヘテロシクロアルコール残基とアルキレンオキサイド鎖とを有する特定の構造式を有する水性化合物を含む紙用透明化剤が開示されている。しかしながら、このような特許文献1〜3に記載の紙用透明化剤においては、いずれも融点が低く水溶性があるため、耐水性に劣り、水滴の付着で白化したり夏場に汗をかいた手で触ると溶け出してしまうといった問題があった。
【特許文献1】特開2002−327397号公報
【特許文献2】特開2003−306895号公報
【特許文献3】特開2003−313800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた透明性と耐水性とを付与することを可能とすると同時に高度なリサイクル性を達成することが可能な紙用透明化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のアミド化合物を含有させることによって、紙に優れた透明性と耐水性とを付与しつつも高度なリサイクル性を達成させることが可能な紙用透明化剤が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第一の紙用透明化剤は、モノカルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物(A)を含有することを特徴とするものである。
【0009】
上記本発明の第一の紙用透明化剤としては、前述のアミド化合物(A)が、アミド化合物(A)を酸で中和させて得られるアミド化合物(A)の酸塩として含有されていてもよい。
【0010】
上記本発明の第一の紙用透明化剤としては、前述のアミド化合物(A)が、アミド化合物(A)にエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させて得られるアミド化合物(A)の縮合物として含有されていてもよい。
【0011】
本発明の第二の紙用透明化剤は少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物(B)を含有することを特徴とするものである。
【0012】
上記本発明の第二の紙用透明化剤としては、前述のアミド化合物(B)が、アミド化合物(B)を酸で中和させて得られるアミド化合物(B)の酸塩として含有されていてもよい。
【0013】
上記本発明の第二の紙用透明化剤としては、前述のアミド化合物(B)が、アミド化合物(B)にエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させて得られるアミド化合物(B)の縮合物として含有されていてもよい。
【0014】
また、本発明の第三の紙用透明化剤は、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物に、モノカルボン酸を縮合させて得られるアミド化合物(C)を含有することを特徴とするものである。
【0015】
上記本発明の第三の紙用透明化剤としては、前述のアミド化合物(C)が、アミド化合物(C)を酸で中和させて得られるアミド化合物(C)の酸塩として含有されていてもよい。
【0016】
さらに、本発明の第四の紙用透明化剤は、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物に、少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸とを縮合させて得られるアミド化合物(D)を含有することを特徴とするものである。
【0017】
上記本発明の第四の紙用透明化剤としては、前述のアミド化合物(D)が、アミド化合物(D)を酸で中和させて得られるアミド化合物(D)の酸塩として含有されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた透明性と耐水性とを付与することを可能とすると同時に高度なリサイクル性を達成することが可能な紙用透明化剤を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0020】
(第一の紙用透明化剤)
先ず、本発明の第一の紙用透明化剤について説明する。すなわち、本発明の第一の紙用透明化剤は、モノカルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物(A)を含有することを特徴とするものである。
【0021】
本発明に用いられるモノカルボン酸は、カルボキシル基を1個有する有機化合物である。このようなモノカルボン酸としては、炭素数が1〜28(より好ましくは12〜24)の脂肪酸であることが好ましい。前記炭素数が前記上限を超えるとリサイクル性が低下する傾向にある。また、このようなモノカルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、また、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。すなわち、本発明にかかるモノカルボン酸としては、脂肪族飽和直鎖モノカルボン酸、脂肪族飽和分岐モノカルボン酸、脂環式飽和モノカルボン酸、脂肪族不飽和直鎖モノカルボン酸、脂肪族不飽和分岐モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等が挙げられ、更に、このようなモノカルボン酸としては、水酸基やチオール基等の官能基を有するモノカルボン酸を用いることができる。
【0022】
このような脂肪族飽和直鎖モノカルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ベヘニン酸、テトラコサン酸等が挙げられる。
【0023】
前記脂肪族飽和分岐モノカルボン酸としては、例えば、2−メチルプロパン酸、2−エチルペンタン酸、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、2−エチルオクタン酸、2−メチルウンデカン酸、2−エチルテトラデカン酸、2−メチルヘプタデカン酸等が挙げられる。
【0024】
前記脂環式飽和モノカルボン酸としては、例えば、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、2−シクロヘキシルエタン酸、3−シクロヘキシルプロパン酸、4−シクロヘキシルブタン酸、6−シクロヘキシルヘキサン酸、8−シクロヘキシルオクタン酸、12−シクロヘキシルドデカン酸、16−シクロヘキシルテトラデカン酸等が挙げられる。
【0025】
前記脂肪族不飽和直鎖モノカルボン酸としては、例えば、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オレイン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸、リノール酸、エレオステアリン酸、リノレン酸、パリナリン酸、アラキドン酸、タリリン酸、ステアロール酸及びベヘノール酸等が挙げられる。
【0026】
前記脂肪族不飽和分岐モノカルボン酸としては、例えば、2−メチル−3−ブテン酸、2−エチル−5−ヘキセン酸、2−メチル−10−ウンデセン酸、2−エチル−15−ヘキサデセン酸、2−メチル−22−トリコセン酸、2−エチル−27−オクタコセン酸等が挙げられる。
【0027】
また、前記芳香族モノカルボン酸としては、例えば、ベンゼンカルボン酸(安息香酸)、フェニルエタン酸、3−フェニルプロパン酸、4−フェニルブタン酸、5−フェニルペンタン酸、6−フェニルヘキサン酸、8−フェニルオクタン酸、10−フェニルデカン酸、12−フェニルドデカン酸、18−フェニルオクタデカン酸、24−フェニルテトラコサン酸、ナフタレンカルボン酸、4−フェニルベンゼンカルボン酸、2−(カルボキシフェニル)−2−フェニルプロパン等が挙げられる。
【0028】
さらに、水酸基やチオール基等の官能基を有するモノカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、グルコン酸、ヒドロキシ安息香酸、乳酸、チオ乳酸、ヒドロキシアクリル酸、オキシ酪酸、グリセリン酸、トロパ酸、ベンジル酸、サリチル酸、グリセリン酸等が挙げられる。
【0029】
本発明にかかるアミン化合物は、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物である。
【0030】
このようなポリアルキレンポリアミンとしては、アルキレン基の炭素数が2〜10であって且つ構造中にアミンを2以上含むアミン化合物が挙げられる。このようなポリアルキレンポリアミンは、直鎖状あるいは分岐鎖状のいずれのものであってもよい。このようなポリアルキレンポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン等が挙げられる。
【0031】
また、前記アルカノールアミンとしては、炭素数が2〜10のアルカノールアミンであって構造中に1級アミンまたは2級アミンを1以上含むアミン化合物が挙げられる。このようなアルカノールアミンとしては、直鎖状あるいは分岐鎖状のいずれのものであってもよい。このようなアルカノールアミンとしては、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノブチルエタノールアミン、アミノヘキシルエタノールアミン、N−(ヒドロキシエチル)ジエチレントリアミン、N−(ヒドロキシプロピル)ジエチレントリアミン等が挙げられる。
【0032】
本発明において、このようなアミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
本発明にかかるアミド化合物(A)は、前記モノカルボン酸と、前記アミン化合物とを縮合させて得ることができる。
【0034】
このようなカルボン酸とアミン化合物とを縮合させる方法は特に制限されず、従来公知の方法を用いることができる。このようなアミド化合物(A)は、具体的には、例えば、反応装置を使用し、前記モノカルボン酸と前記アミン化合物とを無触媒または酸性触媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸等)の存在下、130〜250℃の温度条件下で縮合(アミド化反応)させて得ることができる。このように縮合反応を進行させる場合においては、反応モル比又はアミン化合物の種類等によって、残存するアミンに相当する量の酸を添加して中和することも可能である。このような中和に際しては、リサイクル性と耐水性とのバランスという観点から、縮合反応せしめた溶液中のアミド化合物のアミンを25モル%程度残しておいて中和することが好ましい。
【0035】
また、このような縮合に用いるモノカルボン酸とアミン化合物とのモル比は、モノカルボン酸:アミン化合物が0.5:1〜5:1であることが好ましく、1:1〜4:1であることがより好ましい。このようなモノカルボン酸の配合モル比が前記下限未満では、粘度が低くなって紙に付着させることが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、透明性が低下する傾向にある。
【0036】
また、前記中和に用いられる酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、亜リン酸、1価以上のカルボン酸等を上げることができる。このような1価以上のカルボン酸としては、炭素数1〜28の脂肪酸が好ましく、このような1価以上のカルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、環状構造を有していてもよい。更に、1価以上のカルボン酸としては、水酸基やチオール基などの官能基を有するものであってもよい。このような1価以上のカルボン酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、安息香酸、ナフトエ酸、乳酸、12-ヒドロキシステアリン酸、チオグリコール酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、スベリン酸、セパシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、ピロメリット酸、ポリメリット酸等が挙げられる。
【0037】
このようにして得られるアミド化合物(A)としては、紙用透明化剤を用いて得られる透明紙の透明性の向上という観点から、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンの双方を原料として得られるアミド化合物(A)が好ましい。このようなアミド化合物(A)としては、原料としてポリアルキレンポリアミンとアルカノールアミンとの2種を組み合わせたものを用いて、前記原料とモノカルボン酸とを反応させて得られるアミド化合物(A)であっても、ポリアルキレンポリアミンとアルカノールアミンとをそれぞれ別々にモノカルボン酸と反応させた後に混合して得られるアミド化合物(A)であっても良い。
【0038】
このようなアミド化合物(A)において、ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られたアミド化合物と、アルカノールアミンを原料にして得られたアミド化合物との混合割合は、質量比で5:95〜50:50であることが好ましく、15:85〜40:60であることがより好ましい。ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られたアミド化合物の混合割合(質量比)が前記5未満では、得られる紙用透明化剤の紙への浸透性が遅くなる傾向にあり、他方50を超えると、紙用透明化剤を加工した紙の透明性が低下する傾向にある。
【0039】
このような縮合によって得られるアミド化合物(A)としては、酸価が100mgKOH/g以下であることが好ましい。前記酸価が前記上限を超えると、透明性が低下する傾向にある。
【0040】
更に、得られたアミド化合物(A)の平均分子量としては500〜20000であることが好ましい。前記平均分子量が前記下限未満では、粘度が低くなって紙に付着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0041】
そして、本発明の第一の紙用透明化剤は、このようなアミド化合物(A)を含有させることで得ることができる。
【0042】
また、このような第一の紙用透明化剤においては、前述のアミド化合物(A)が、それを酸で中和させて得られるアミド化合物(A)の酸塩として含有されていてもよい。
【0043】
このような中和に用いられる酸は、前述の中和に用いられる酸と同様なものである。このような中和に用いる酸としては、本発明の紙用透明化剤が付与された古紙のリサイクル工程において脂肪酸石鹸を生成することができ、しかも古紙から固着物の離解を促進させる効果に優れることが期待できるという理由から、前述の1価以上のカルボン酸を用いることが好ましい。
【0044】
また、本発明において用いられる中和の方法としては特に制限されず、従来公知の中和の方法を用いることができる。このような中和は、60〜150℃程度の温度条件下で行うことが好ましい。また、このような中和に際しては、アミド化合物(A)の全アミン価1当量に対して、酸を0.1〜1.2当量含有させることが好ましい。酸の含有量が前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0045】
さらに、このような第一の紙用透明化剤においては、前述のアミド化合物(A)が、それにエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させて得られるアミド化合物(A)の縮合物として含有されていてもよい。
【0046】
このようなエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させる方法としては特に制限されず、従来より行われている縮合方法を用いることができ、例えば、アミド化合物(A)と、尿素とを反応装置に仕込み140〜170℃の温度条件下で縮合させることが挙げられる。
【0047】
このような尿素とアミド化合物との縮合を行う際の尿素の配合割合としては、尿素とアミド化合物(A)を製造する際に使用したアミン化合物とのモル比が0.1:1〜1.2:1であることが好ましい。尿素の配合量が前記下限未満では、透明性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0048】
また、前記エピクロルヒドリンとアミド化合物との縮合を行う際のエピクロルヒドリンの配合割合としては、エピクロルヒドリンとアミド化合物(A)を製造する際に使用したアミン化合物とのモル比が0.1:1〜1.2:1であることが好ましい。エピクロルヒドリンの配合量が前記下限未満では、透明性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0049】
このようにしてアミド化合物(A)をエピクロルヒドリン又は尿素によって縮合させることでアミド化合物(A)の縮合物を得ることができる。
【0050】
(第二の紙用透明化剤)
本発明の第二の紙用透明化剤は、少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物(B)を含有することを特徴とするものである。
【0051】
このようなモルカルボン酸としては、前述の第一の紙用透明化剤に用いられるモノカルボン酸と同様のものが用いられる。
【0052】
また、本発明にかかる多価カルボン酸は、カルボキシル基を2個以上有する有機化合物である。このような多価カルボン酸としては、炭素数が1〜28(より好ましくは2〜12)の脂肪酸であることが好ましい。前記炭素数が前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。また、このような多価カルボン酸は飽和であっても不飽和であってもよく、また、直鎖状であっても分岐鎖状あってもよく、環状構造を有していてもよい。更に、このような多価カルボン酸としては、水酸基やチオール基等の官能基を有する多価カルボン酸を用いることができる。
【0053】
このような多価カルボン酸化合物としては、例えば、シュウ酸、デカンジカルボン酸、アジピン酸、マレイン酸、マロン酸、エチルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、メチルグルタル酸、ジメチルグルタル酸、セバチン酸、アゼライン酸、ピメリン酸、スベリン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、3−iso−オクチルヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、クエン酸、トリカルバリン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、ポリメリット酸等を用いることができる。
【0054】
更に、水酸基やチオール基等の官能基を有する多価カルボン酸としては、例えば、メルカプトコハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、アロクエン酸等が挙げられる。
【0055】
また、本発明にかかるポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンは、前述の第一の紙用透明化剤に用いられるポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンと同様のものである。
【0056】
本発明にかかるアミド化合物(B)は、少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸と、前記アミン化合物とを縮合させて得ることができる。ここで、本発明に用いられる縮合の方法は、前述の第一の紙用透明化剤に用いられるモノカルボン酸とアミン化合物とを縮合させる方法と同様の方法である。
【0057】
また、このような縮合の際における前記モノカルボン酸と前記多価カルボン酸とを導入する方法としては特に制限されず、例えば、少なくとも1種の前記モノカルボン酸と少なくとも1種の前記多価カルボン酸とを混合させて得られるカルボン酸混合物を用いてモノカルボン酸と多価カルボン酸を導入する方法や、先ず前記多価カルボン酸を導入して前記多価カルボン酸と前記アミン化合物とを縮合させた後に前記モノカルボン酸を導入してモノカルボン酸と多価カルボン酸とを導入する方法等を挙げることができる。
【0058】
このような縮合反応においては、全カルボン酸とアミン化合物とのモル比が0.5:1〜5:1であることが好ましく、1:1〜4:1であることがより好ましい。このような全カルボン酸のモル比が前記下限未満では、粘度が低くなって紙へ付着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0059】
また、このような縮合反応に用いられるモノカルボン酸と多価カルボン酸とのモル比としては、モノカルボン酸:多価カルボン酸=0.5:1〜10:1であることが好ましい。モノカルボン酸の配合モル比が前記下限未満では、紙への浸透性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0060】
また、前記多価カルボン酸と前記アミン化合物とを縮合させた後に前記モノカルボン酸を導入して縮合させることでアミド化合物(B)を得る方法としては、具体的には、先ず、多価カルボン酸とアミン化合物とを反応容器に仕込み、無触媒または酸性触媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下、130〜250℃程度の温度条件下で1〜5時間程度反応させて、酸価が5mgKOH/g以下となるように多価カルボン酸とアミン化合物とを縮合反応させて、次に、反応容器内を100〜150℃程度に冷却した後、モノカルボン酸を反応容器に導入し、無触媒または酸性触媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下、130〜250℃程度の温度条件下で1〜5時間程度縮合反応させることでアミド化合物(B)を得る方法を挙げることができる。
【0061】
また、アミド化合物(B)としては、紙用透明化剤を用いて得られる透明紙の透明性の向上という観点から、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンの双方を原料として得られるアミド化合物(B)が好ましい。このようなアミド化合物(B)としては、原料としてポリアルキレンポリアミンとアルカノールアミンとの2種を組み合わせたものを用いて、前記原料とモノカルボン酸と多価カルボン酸とを縮合させて得られたアミド化合物(B)であっても、ポリアルキレンポリアミンとモノカルボン酸と多価カルボン酸とを縮合させて得られたものと、アルカノールアミンとモノカルボン酸と多価カルボン酸とを縮合させて得られたものとを混合して得られるアミド化合物(B)であっても良い。
【0062】
このようなアミド化合物(B)において、ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られたアミド化合物と、アルカノールアミンを原料にして得られたアミド化合物との混合割合は、質量比で5:95〜50:50であることが好ましく、15:85〜40:60であることがより好ましい。ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られたアミド化合物との混合割合(質量比)が前記5未満では、得られる紙用透明化剤の紙への浸透性が遅くなる傾向にあり、他方、前記50を超えると、紙用透明化剤を加工した紙の透明性が低下する傾向にある。
【0063】
このようなアミド化合物(B)としては、酸価が100mgKOH/g以下であることが好ましい。前記酸価が前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0064】
更に、得られたアミド化合物(B)の平均分子量としては500〜20000であることが好ましい。前記平均分子量が前記下限未満では、粘度が低く、紙へ付着させることが困難となる傾向にあり、他方前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0065】
そして、本発明の第二の紙用透明化剤は、このようなアミド化合物(B)を含有させることで得ることができる。
【0066】
また、このような第二の紙用透明化剤においては、前述のアミド化合物(B)が、それを酸で中和させて得られるアミド化合物(B)の酸塩として含有されていてもよい。
【0067】
このような中和に用いられる酸は、前述の中和に用いられる酸と同様なものである。このような中和に用いる酸の中でも、本発明の紙用透明化剤が付与された古紙のリサイクル工程において脂肪酸石鹸を生成することができ、しかも古紙から固着物の離解を促進させる効果に優れることが期待できるという理由から、前述の1価以上のカルボン酸を用いることが好ましい。
【0068】
また、本発明において用いられる中和の方法は特に制限されず、従来公知の中和の方法を用いることができる。このような中和は、60〜150℃程度の温度条件下で行うことが好ましい。このようにしてアミド化合物(B)を酸で中和させることでアミド化合物(B)の酸塩を得ることができる。
【0069】
さらに、前記第二の紙用透明化剤においては、アミド化合物(B)が、それにエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させて得られるアミド化合物(B)の縮合物として含有されていてもよい。
【0070】
また、このようなエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させる方法は、前述の第一の紙用透明化剤において用いられたエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させる方法と同様の方法である。
【0071】
このような尿素とアミド化合物との縮合を行う際の尿素の配合割合としては、尿素とアミド化合物(B)を製造する際に使用したアミン化合物とのモル比が0.1:1〜1.2:1であることが好ましい。尿素の配合量が前記下限未満では、透明性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0072】
また、前記エピクロルヒドリンとアミド化合物との縮合を行う際のエピクロルヒドリンの配合割合としては、エピクロルヒドリンとアミド化合物(B)を製造する際に使用したアミン化合物とのモル比が0.1:1〜1.2:1であることが好ましい。エピクロルヒドリンの配合量が前記下限未満では、透明性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0073】
(第三の紙用透明化剤)
本発明の第三の紙用透明化剤は、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物に、モノカルボン酸を縮合させて得られるアミド化合物(C)を含有することを特徴とするものである。
【0074】
ここで、先ず、アミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させる方法について説明する。
【0075】
本発明にかかるポリアルキレンポリアミン、アルカノールアミン及びモノカルボン酸は、前述の第一の紙用透明化剤において説明したものと同様のものある。
【0076】
本発明において用いられる前記アミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させる方法としては特に制限されず、従来より行われている縮合方法を用いることができる。具体的にアミン化合物とエピクロルヒドリンとを縮合させる場合には、反応装置に前記アミン化合物を仕込み、70〜100℃の温度条件でエピクロルヒドリンを徐々に加え、同温度で反応させる方法を挙げることができる。
【0077】
また、エピクロルヒドリンに代えて尿素を縮合させる場合には、反応装置に前記アミン化合物を仕込み、140〜170℃の温度条件で尿素を徐々に加え、同温度で反応させる方法を挙げることができる。
【0078】
このような縮合反応を行なう際におけるアミン化合物とエピクロルヒドリン又は尿素との配合割合としては、アミン化合物の全アミン価1当量に対してエピクロルヒドリン又は尿素を0.2〜1.2当量の割合で用いることが好ましい。エピクロルヒドリン又は尿素の配合割合が前記下限未満では、透明性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0079】
このようにして前記アミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させることで本発明にかかる縮合物を得ることができる。
【0080】
次に、このようにして得られた縮合物にモノカルボン酸を縮合させる方法を説明する。前記縮合物にモノカルボン酸を縮合させる方法としては特に制限されず、従来公知の縮合方法を用いることができ、例えば、前記縮合物にモノカルボン酸を加え、無触媒または酸性触媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下で、130〜250℃で縮合反応(アミド化反応)させる方法を挙げることができる。
【0081】
このような縮合反応において、モノカルボン酸と前記縮合物の合成に用いられたアミン化合物とのモル比が0.5:1〜5:1であることが好ましい。前記モノカルボン酸のモル比が前記下限未満では、粘度が低くなって紙に付着させることが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、透明性が低下する傾向にある。
【0082】
このように前記縮合物にモノカルボン酸を縮合させることで、本発明にかかるアミド化合物(C)を得ることができる。
【0083】
このようなアミド化合物(C)としては、紙用透明化剤を用いて得られる透明紙の透明性の向上という観点から、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンの双方を原料として得られる縮合物をモノカルボン酸で縮合して得られたアミド化合物(C)が好ましい。このようなアミド化合物(C)としては、原料としてポリアルキレンポリアミンとアルカノールアミンとの2種を組み合わせたものを用いて、前記原料をエピクロルヒドリン又は尿素と反応させて縮合物を得た後、前記縮合物にモノカルボン酸を縮合させて得られるアミド化合物(C)であっても、ポリアルキレンポリアミンとエピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られた縮合物と、アルカノールアミンとエピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られた縮合物とを各々モノカルボン酸と反応させた後に混合して得られるアミド化合物(C)であっても良い。
【0084】
このようなアミド化合物(C)において、ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られた縮合物をモノカルボン酸と反応させて得られるアミド化合物と、アルカノールアミンを原料にして得られた縮合物をモノカルボン酸と反応させて得られるアミド化合物との混合割合は、質量比で5:95〜50:50であることが好ましく、15:85〜40:60であることがより好ましい。ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られたアミド化合物の混合する混合割合(質量比)が前記5未満では、得られる紙用透明化剤の紙への浸透性が遅くなる傾向にあり、他方、前記50を超えると、得られる紙の透明性が低下する傾向にある。
【0085】
また、このようなアミド化合物(C)としては、酸価が100mgKOH/g以下であることがより好ましい。前記酸価が前記上限を超えると、透明性が低下する傾向にある。
【0086】
さらに、得られたアミド化合物(C)の平均分子量としては500〜20000であることが好ましい。前記平均分子量が前記下限未満では、粘度が低く、紙に付着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0087】
そして、本発明の第三の紙用透明化剤は、このようなアミド化合物(C)を含有させることで得ることができる。
【0088】
また、このような第三の紙用透明化剤においては、前述のアミド化合物(C)が、それを酸で中和させて得られるアミド化合物(C)の酸塩として含有されていてもよい。
【0089】
このような中和に用いられる酸は、前述の中和に用いられる酸と同様なものである。このような中和に用いる酸の中でも、本発明の紙用透明化剤が付与された古紙のリサイクル工程において脂肪酸石鹸を生成することができ、しかも古紙から固着物の離解を促進させる効果に優れることが期待できるという理由から、前述の1価以上のカルボン酸を用いることが好ましい。
【0090】
また、本発明において用いられる中和の方法は特に制限されず、従来公知の中和の方法を用いることができる。このような中和は、60〜150℃程度の温度条件下で行うことが好ましい。このようにしてアミド化合物(C)を酸で中和させることでアミド化合物(C)の酸塩を得ることができる。
【0091】
(第四の紙用透明化剤)
本発明の第四の紙用透明化剤は、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物に、少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸とを縮合させて得られるアミド化合物(D)を含有するものであることを特徴とするものである。
【0092】
本発明にかかるポリアルキレンポリアミン、アルカノールアミン、モノカルボン酸及び多価カルボン酸は前述の第一〜第二の紙用透明化剤において説明したものと同様のものである。また、本発明にかかるアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物は、前述の本発明の第三の紙用透明化剤で説明した縮合物と同様のものである。
【0093】
また、本発明にかかる前記縮合物に少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸とを縮合させる方法は特に制限されず、従来公知の縮合方法を適宜用いることができる。
【0094】
また、このような縮合反応の際に、前記モノカルボン酸と前記多価カルボン酸とを導入する方法としては特に制限されず、例えば、少なくとも1種の前記モノカルボン酸と少なくとも1種の前記多価カルボン酸とを混合させて得られるカルボン酸混合物を用いてモノカルボン酸と多価カルボン酸を導入する方法や、先ず前記多価カルボン酸を導入して前記多価カルボン酸と前記アミン化合物とを縮合反応させた後に前記モノカルボン酸を導入してモノカルボン酸と多価カルボン酸とを導入する方法等を挙げることができる。
【0095】
このような縮合反応において、用いられる全カルボン酸と縮合物の合成に用いられたアミン化合物とのモル比が0.5:1〜5:1であることが好ましく、1:1〜4:1であることがより好ましい。このような全カルボン酸のモル比が前記下限未満では、粘度が低くなって紙へ付着させることが困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0096】
また、このような縮合反応に用いられるモノカルボン酸と多価カルボン酸とのモル比としては、モノカルボン酸:多価カルボン酸=0.5:1〜10:1であることが好ましい。モノカルボン酸の配合モル比が前記下限未満では、紙への浸透性が低下する傾向にあり、前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0097】
ここで、前記多価カルボン酸を導入して前記多価カルボン酸と前記縮合物とを縮合させた後に前記モノカルボン酸を導入して縮合反応させることでアミド化合物(D)を得る方法を具体的に説明する。
【0098】
先ず、多価カルボン酸と前記縮合物とを反応容器に仕込み、無触媒または酸性触媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下、130〜250℃程度の温度条件下で1〜5時間程度反応させて、酸価が5mgKOH/g以下となるように多価カルボン酸と前記縮合物とを縮合反応させる。次に、反応容器内を100〜150℃程度に冷却した後、モノカルボン酸を反応容器に導入し、無触媒または酸性触媒(硫酸、パラトルエンスルホン酸など)の存在下、130〜250℃程度の温度条件下で1〜5時間程度縮合反応させる。このような方法によってもアミド化合物(D)を得ることができる。
【0099】
また、アミド化合物(D)としては、紙用透明化剤を用いて得られる透明紙の透明性の向上という観点から、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンの双方を原料として得られる縮合物を用いて得られたアミド化合物(D)が好ましい。このようなアミド化合物(D)としては、原料としてポリアルキレンポリアミンとアルカノールアミンとの2種を組み合わせたものを用いて、前記原料とエピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて縮合物を得た後、前記縮合物にモノカルボン酸と、多価カルボン酸とを縮合させて得られるアミド化合物(D)であっても、ポリアルキレンポリアミンとエピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物と、アルカノールアミンとエピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物とを得た後、それぞれの前記縮合物と、モノカルボン酸と、多価カルボン酸とを縮合させた後に混合して得られるアミド化合物(D)であっても良い。
【0100】
このようなアミド化合物(D)において、ポリアルキレンポリアミンを原料として得られるアミド化合物と、アルカノールアミンを原料として得られるアミド化合物との混合割合は、質量比で5:95〜50:50であることが好ましく、15:85〜40:60であることがより好ましい。ポリアルキレンポリアミンを原料にして得られたアミド化合物の混合割合(質量比)が前記5未満では、得られる紙用透明化剤の紙への浸透性が遅くなる傾向にあり、他方、前記50を超えると、得られる紙の透明性が低下する傾向にある。
【0101】
このようなアミド化合物(D)としては、酸価が100mgKOH/g以下であることが好ましい。前記酸価が前記上限を超えると透明性が低下する傾向にある。
【0102】
更に、得られたアミド化合物(D)の平均分子量としては500〜20000であることが好ましい。前記平均分子量が前記下限未満では、粘度が低く、紙に付着させることが困難となる傾向にあり、他方前記上限を超えると、紙への浸透性が低下する傾向にある。
【0103】
そして、本発明の第四の紙用透明化剤は、このようなアミド化合物(D)を含有させることで得ることができる。
【0104】
また、このような第四の紙用透明化剤においては、前述のアミド化合物(D)が、それを酸で中和させて得られるアミド化合物(D)の酸塩として含有されていてもよい。
【0105】
このような中和に用いられる酸は、前述の中和に用いられる酸と同様なものである。このような中和に用いる酸の中でも、本発明の紙用透明化剤が付与された古紙のリサイクル工程において脂肪酸石鹸を生成することができ、しかも古紙から固着物の離解を促進させる効果に優れることが期待できるという理由から、前述の1価以上のカルボン酸を用いることが好ましい。
【0106】
また、本発明において用いられる中和の方法は特に制限されず、従来公知の中和の方法を用いることができる。このような中和は、60〜150℃程度の温度条件下で行うことが好ましい。このようにしてアミド化合物(D)を酸で中和させることでアミド化合物(D)の酸塩を得ることができる。
【0107】
なお、前述の本発明の第一〜第四の紙用透明化剤(以下、本発明の紙用透明化剤という)においては、ポリアルキレンポリアミンを原料として得られるアミド化合物と、アルカノールアミンを原料として得られるアミド化合物とを配合する場合に、ポリアルキレンポリアミンを原料として得られる前述のアミド化合物(A)〜(D)のうちのいずれか1種又は2種以上と、アルカノールアミンを原料として得られる前述のアミド化合物(A)〜(D)のうちのいずれか1種又は2種以上とを配合することが可能である。
【0108】
また、本発明の紙用透明化剤には、粘度を下げたり紙への浸透性を向上させる目的で、アルコール系溶剤や界面活性剤を少量添加することができる。前記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられ、前記界面活性剤としては、浸透性良好な非イオン活性剤(例えば、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド9モル付加物)、浸透性良好なアニオン界面活性剤(例えば、ジオクチルスルホサクシネート)等が挙げられる。
【0109】
(本発明の紙用透明化剤を使用する方法)
以上、本発明の紙用透明化剤について説明したが、以下において、本発明の紙用透明化剤を使用する方法等を説明する。
【0110】
本発明の紙用透明化剤は、紙に付与、浸透させることにより、透明性に優れ、表面のべたつきもなく、紙のリサイクル性が良好な透明紙を得ることができる。すなわち、本発明の紙用透明化剤を紙の少なくとも片面に塗布して加熱した後、乾燥、静置等の工程を経て、透明紙を得ることができる。また、本発明の紙用透明化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0111】
このような本発明の紙用透明化剤を適用できる紙としては特に制限はないが、普通紙を好適に挙げることができる。ここで普通紙とは一般に用いられる中性紙又は酸性紙である。
【0112】
また、本発明の紙用透明化剤を紙に塗布する方法としては特に制限されず、従来公知の方法が適用でき、例えば、印刷機やバーコーターなどの機器を用いる方法、或いは、ローラー、刷毛などを用いる方法、スプレーによる塗布等を挙げることができる。このような塗布する工程においては、紙の坪量に対して20〜100質量%となるような量で紙用透明化剤を塗布するのが好ましい。
【0113】
さらに、本発明の紙用透明化剤を塗布して得られた透明紙により高度な耐水性を付与する場合は、必要に応じて、酸化澱粉、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、酢酸ビニルとマレイン酸とのコポリマー、メチルセルロース、アクリルアミド樹脂等の水溶性樹脂を塗布してもよい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0115】
(合成例1 アミド化合物(A−1):モノカルボン酸とポリアルキレンポリアミンとを縮合させて得られたアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にトリエチレンテトラアミン71.0g(0.5mol)と、ステアリン酸278g(中和価201.8、1.0mol)とを仕込み、その後、窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまでステアリン酸とトリエチレンテトラアミンとを縮合させた。このようにしてアミド化合物(A−1)を得た。
【0116】
(合成例2 アミド化合物(B−1):モノカルボン酸と、多価カルボン酸と、ポリアルキレンポリアミンとを縮合させたアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にジエチレントリアミン77.4g(0.75mol)と、アジピン酸73.1g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまでジエチレントリアミンとアジピン酸とを縮合させた。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で前記反応容器にステアリン酸139g(中和価201.8、0.5mol)を仕込み、再度窒素ガスを導入しながら昇温させて、180〜220℃の温度条件下で約5時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまで縮合させた。このようにしてアミド化合物(B−1)を得た。
【0117】
(合成例3 アミド化合物(A−2)の縮合物:モノカルボン酸とポリアルキレンポリアミンとを縮合させた後に、エピクロルヒドリンを縮合させて得られるアミド化合物の縮合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にトリエチレンテトラアミンを18.3g(0.125mol)と、ステアリン酸139g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて、180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまでトリエチレンテトラアミンとステアリン酸とを縮合させてアミド化合物(A−2)を得た。次に、反応容器内を冷却し、再度窒素ガスを導入しながら80〜90℃の温度条件下でエピクロルヒドリン92.5g(1.0mol)を1時間かけて滴下し、3時間前記アミド化合物(A−2)とエピクロルヒドリンとを縮合させた。このようにしてアミド化合物(A−2)の縮合物を得た。
【0118】
(合成例4 アミド化合物(C−1): ポリアルキレンポリアミンと尿素とを縮合させた後、モノカルボン酸を縮合させて得られるアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着たものを用い、前記反応容器にジエチレントリアミン18.3g(0.5mol)、尿素を15.0g(0.25mol)を仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて、150〜160℃の温度条件下で2時間、ジエチレントリアミンと尿素とを縮合させて縮合物を得た。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で前記反応容器にステアリン酸を139g(0.50mol)を仕込み、その後、再度窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜190℃の温度条件下で3時間、酸価が10mgKOH/g以下になるまで前記縮合物とステアリン酸とを縮合させた。このようにしてアミド化合物(C−1)を得た。
【0119】
(合成例5 アミド化合物(B−2)の酸塩:モノカルボン酸と多価カルボン酸とポリアルキレンポリアミンとを縮合させた後に酸で中和させて得られるアミド化合物の酸塩)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にトリエチレンテトラアミン91.4g(0.63mol)と、アジピン酸73.1g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて、180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまでトリエチレンテトラアミンとアジピン酸とを縮合させた。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で前記反応容器にステアリン酸34.8g(中和価201.8、0.125mol)を仕込み、再度窒素ガスを導入しながら昇温させて、180〜220℃の温度条件下で2時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまで縮合させてアミド化合物(B−2)を得た。そして、反応容器内を冷却し、150〜130℃の温度条件下でステアリン酸34.8g(中和価201.8、0.125mol)を前記反応容器に仕込み、アミド化合物(B−2)をステアリン酸で中和した。このようにしてアミド化合物(B−2)の酸塩を得た。
【0120】
(合成例6 アミド化合物(A−3):モノカルボン酸とアルカノールアミンとを縮合させて得られたアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にアミノエチルエタノールアミン52.1g(0.5mol)と、ステアリン酸208.5g(中和価201.8、0.75mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて、180〜220℃の温度条件下で約5時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまでステアリン酸とアミノエチルエタノールアミンとを縮合させた。このようにしてアミド化合物(A−3)を得た。
【0121】
(合成例7 アミド化合物(B−3):モノカルボン酸と、多価カルボン酸と、アルカノールアミンとを縮合させたアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にアミノエチルエタノールアミン104.2g(1.0mol)と、アジピン酸73.1g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて、180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまでアジピン酸とアミノエチルエタノールアミンとを縮合させた。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で前記反応容器にステアリン酸139g(中和価201.8、0.5mol)を仕込み、再度窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で約5時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまで縮合させた。このようにしてアミド化合物(B−3)を得た。
【0122】
(合成例8 アミド化合物(B−4):モノカルボン酸と、多価カルボン酸と、アルカノールアミンとを縮合させたアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にアミノエチルエタノールアミン104.2g(1.0mol)と、アジピン酸73.1g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまでアミノエチルエタノールアミンとアジピン酸とを縮合させた。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で前記反応容器にステアリン酸69.5g(中和価201.8、0.25mol)と、ベヘニン酸169g(中和価166、0.25mol)とを仕込み、再度窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で5時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまで縮合させた。このようにしてアミド化合物(B−4)を得た。
【0123】
(合成例9 アミド化合物(B−5)の酸塩:モノカルボン酸と多価カルボン酸とアルカノールアミンとを縮合させた後に酸で中和させて得られるアミド化合物の酸塩)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にアミノエチルエタノールアミン78.1g(0.75mol)、アジピン酸73.1g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で約3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまでアミノエチルエタノールアミンとアジピン酸とを縮合させた。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で前記反応容器にステアリン酸69.5g(中和価201.8、0.25mol)を仕込み、再度窒素ガスを導入しながら昇温して180〜220℃の温度条件下で5時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまで縮合させてアミド化合物(B−5)を得た。その後、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下でベヘニン酸169g(中和価166、0.25mol)を仕込み、アミド化合物(B−5)をベヘニン酸で中和した。このようにしてアミド化合物(B−5)の酸塩を得た。
【0124】
(合成例10 アミド化合物(B−6):モノカルボン酸と、多価カルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなるアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物)
先ず、反応容器として500mLの4つ口フラスコに、脱水装置、温度計及び窒素導入管を装着したものを用い、前記反応容器にジエチレントリアミン10.3g(0.1mol)と、アミノエチルエタノールアミン41.3g(0.4mol)と、アジピン酸73.1g(0.50mol)とを仕込み、窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で3時間、酸価が1mgKOH/g以下になるまで縮合させた。次に、反応容器内を冷却し、窒素ガスを導入しながら130〜150℃の温度条件下で反応容器にステアリン酸166.8g(中和価201.8、0.6mol)を仕込み、再度窒素ガスを導入しながら昇温させて180〜220℃の温度条件下で2時間、酸価が5mgKOH/g以下になるまで縮合させた。このようにしてアミド化合物(B−6)を得た。
【0125】
(実施例1)
合成例1で得られたアミド化合物(A−1)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0126】
(実施例2)
合成例2で得られたアミド化合物(B−1)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0127】
(実施例3)
合成例3で得られたアミド化合物(A−2)の縮合物をそのまま紙用透明化剤とした。
【0128】
(実施例4)
合成例4で得られたアミド化合物(C−1)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0129】
(実施例5)
合成例5で得られたアミド化合物(B−2)の酸塩をそのまま紙用透明化剤とした。
【0130】
(実施例6)
合成例2でアミド化合物(B−1)を50質量部と、合成例5で得られたアミド化合物(B−2)の酸塩50質量部とを溶解、混合して紙用透明化剤とした。
【0131】
(実施例7)
合成例6で得られたアミド化合物(A−3)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0132】
(実施例8)
合成例7で得られたアミド化合物(B−3)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0133】
(実施例9)
合成例8で得られたアミド化合物(B−4)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0134】
(実施例10)
合成例9で得られたアミド化合物(B−5)の酸塩をそのまま紙用透明化剤とした。
【0135】
(実施例11)
合成例10で得られたアミド化合物(B−6)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0136】
(実施例12)
合成例7で得られたアミド化合物(B−3)50部と、合成例2で得られたアミド化合物(B−1)50部とを溶解、混合して紙用透明化剤とした。
【0137】
(実施例13)
合成例9で得られたアミド化合物(B−5)の酸塩75部と、合成例4で得られたアミド化合物(C−1)25部とを溶解、混合して紙用透明化剤とした。
【0138】
(比較例1)
パラフィンワックス115゜F(日本精蝋株式会社製)をそのまま紙用透明化剤とした。
【0139】
(比較例2)
PEG6000をそのまま紙用透明化剤とした。
【0140】
<紙用透明化剤の性能の評価>
各実施例及び各比較例で得られた紙用透明化剤を用いて下記のようにして得られた各透明紙の評価を行った。
【0141】
透明紙の作製
不透明度が68%であって坪量50g/mの試験紙の表面に、各実施例及び各比較例で得られた紙用透明化剤(実施例3、実施例9、比較例1及び比較例2で得られた紙用透明化剤については100℃に加熱溶融したもの)を、有効成分が35g/m(試験紙に対し70質量%)になるようにバーコーターを用いて塗布し、105℃の温度条件下で60秒間乾燥せしめた後、室温まで冷却させて各実施例及び各比較例で得られた紙用透明化剤をそれぞれ用いて加工された透明紙を得た。
【0142】
(1)透明性の評価
JIS P 8138(1976)に準じて、REFLECTOMETER MODEL TC−ED(東京電色株式会社製)を用いて各透明紙の不透明度(%)を測定した。得られた結果を表1に示す。なお、この数値が小さいほど、透明性が良好な透明紙である。
【0143】
(2)耐水性の評価
耐水性を評価するため、各透明紙の表面に水滴を1滴落とし、1分後ふき取ったときの各透明紙の表面状態を観察して白化の有無を評価した。得られた結果を表1に示す。なお、白化の評価基準は下記に示す通りである。
【0144】
評価基準
○:白化していなかった
△:わずかに白化していた(透明性はある)
×:白化していた(透明性がない)。
【0145】
(3)リサイクル性の評価
リサイクル性を評価するため未離解物の有無を評価した。すなわち、パルパーに透明紙5gと、40℃の水90gと、1質量%の水酸化ナトリウム水溶液5gとを仕込み、透明紙から紙用透明化剤を離解させた。このようにして得られたパルプを50g/mで抄紙してサンプルシートを得た。このようなサンプルシートの外観を観察して未離解物の有無を評価した。得られた結果を表1に示す。なお、未離解物の有無の評価基準は下記に示す通りである。
【0146】
評価基準
○:未離解物が無かった
△:わずかに未離解物が認められた
×:未離解物が認められた。
【0147】
【表1】

【0148】
表1に示された結果からも明らかなように、実施例1〜13で得られた各紙用透明化剤を用いて得られた透明紙は、透明性及び耐水性に優れながらも高いリサイクル性を有していることが確認された。特に、アミド化合物の脂肪酸塩を用いた実施例5、6、10及び13で得られた各紙用透明化剤を用いて得られた透明紙においては、より高度なリサイクル性を有していることが確認された。また、アミン化合物としてポリアルキレンポリアミンとアルカノールアミンとの両方を原料とした実施例11〜13で得られた紙用透明化剤を用いて得られた透明紙においては、1種のアミン化合物を原料とした他の実施例で得られた紙用透明化剤を用いて得られた透明紙に比べて透明性が向上していた。
【産業上の利用可能性】
【0149】
以上説明したように、本発明によれば、優れた透明性と耐水性とを付与することを可能としながら高度なリサイクル性を達成させることが可能な紙用透明化剤を提供することが可能となる。
【0150】
したがって、本発明の紙用透明化剤は、窓付封筒の窓部分等の透明紙を加工するための紙用透明化剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノカルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物(A)を含有することを特徴とする紙用透明化剤。
【請求項2】
アミド化合物(A)を酸で中和させて得られるアミド化合物(A)の酸塩を含有することを特徴とする請求項1に記載の紙用透明化剤。
【請求項3】
アミド化合物(A)にエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させて得られるアミド化合物(A)の縮合物を含有することを特徴とする請求項1に記載の紙用透明化剤。
【請求項4】
少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸と、ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物とを縮合させて得られるアミド化合物(B)を含有することを特徴とする紙用透明化剤。
【請求項5】
アミド化合物(B)を酸で中和させて得られるアミド化合物(B)の酸塩を含有することを特徴とする請求項4に記載の紙用透明化剤。
【請求項6】
アミド化合物(B)にエピクロルヒドリン又は尿素を縮合させて得られるアミド化合物(B)の縮合物を含有することを特徴とする請求項4に記載の紙用透明化剤。
【請求項7】
ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物に、モノカルボン酸を縮合させて得られるアミド化合物(C)を含有することを特徴とする紙用透明化剤。
【請求項8】
アミド化合物(C)を酸で中和させて得られるアミド化合物(C)の酸塩を含有することを特徴とする請求項7に記載の紙用透明化剤。
【請求項9】
ポリアルキレンポリアミン及びアルカノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種のアミン化合物と、エピクロルヒドリン又は尿素とを縮合させて得られる縮合物に、少なくとも1種のモノカルボン酸と、少なくとも1種の多価カルボン酸とを縮合させて得られるアミド化合物(D)を含有することを特徴とする紙用透明化剤。
【請求項10】
アミド化合物(D)を酸で中和させて得られるアミド化合物(D)の酸塩を含有することを特徴とする請求項9に記載の紙用透明化剤。


【公開番号】特開2006−207048(P2006−207048A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17878(P2005−17878)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【Fターム(参考)】