説明

紙粉除去装置、輪転印刷機及び紙粉除去方法

【課題】コストを抑えつつ、印刷紙に付着している紙粉を確実に除去する紙粉除去装置を提供する。
【解決手段】本発明のオフセット輪転印刷機10に適用され紙粉除去装置12Aは、搬送される印刷紙であるロール状のウェブWの表面に接触しつつ、ウェブW上に付着した紙粉を除去する紙粉除去装置において、ウェブWの一方の面に当接してウェブW上に付着した紙粉を除去する水分を含浸させてなる第一の紙粉除去ローラ31−1と、第一の紙粉除去ローラ31−1の表面に湿し水Sを供給すると共に、吸着した紙粉を湿し水Sと共に回収する第一の湿し水循環装置32−1とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷紙の表面に付着した紙粉を除去する紙粉除去装置、輪転印刷機及び紙粉除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙製造装置により製造される印刷紙などの紙製品類等には、製造段階では除去し得ない紙粉が残存、付着している。紙製品類等の表面にこうした紙粉が残存、付着していると、部分的な白抜けや非画線部の汚れとなるヒッキーと称される汚れの現象が発生する。こうした紙製品類等の表面には文字等が印刷されているため、この印刷面を傷つけることなく紙製品類等の全体から紙粉を確実に除去することが要請される。こうした紙粉を除去するため、従来より紙製品類等の紙粉を除去する紙粉除去装置が種々提案されている。
【0003】
従来の紙粉除去装置の構成の一例を図4に示す。図4に示すように、従来の紙粉除去装置100Aは、ハウジング101内の印刷紙Pの送行路の下側で印刷紙Pの入口側に印刷紙Pの走行と共に回転するローラ102と、印刷紙Pの送行路の上下位置でローラ102より下流側に上下一対の空気噴出ヘッド(噴出手段)103と、印刷紙Pの送行路の上下位置で空気噴出ヘッド103より下流側に上下一対の空気吸引ヘッド(吸引手段)104とが設けられている。また、ハウジング101内には、空気導入管103aと空気吸引管104aとハウジング101の両側壁に外周縁が取り付けられた上下一対の断面略円弧状のフード105が設けられ、これらフード105と印刷紙Pとの間にはチャンバ106が形成されている(特許文献1、参照)。
【0004】
上下一対の空気噴出ヘッド103の各々の空気導入管103aの空気噴出ノズル103bから空気導入管103aに送られた空気を印刷紙Pに向けて噴出する。そして、上下一対の空気吸引ヘッド104の各々の空気吸引管104aの空気吸引ノズル104bより空気噴出ヘッド103により噴出された空気により印刷紙Pから離脱した紙粉を空気吸引管104a内に吸引除去するようにしている。また、印刷紙を搬送するローラの断面形状を多角形とし、より効果的に紙粉を除去するようにしている。
【0005】
また、従来の紙粉除去装置の他の構成を図5に示す。図5に示すように、従来の他の紙粉除去装置100Bは、印刷紙Pの表面に接触するようにその走行方向に沿って配置された複数本のガイドローラ111と、印刷紙Pの表面に接する拭き取り材であるエンドレスベルト112と、エンドレスベルト112に付着した紙粉を回収する水槽113とが一対備えられている。エンドレスベルト112を印刷紙Pの両面に押し当てつつ走行させ、紙面を擦りつつ印刷紙Pに付着している紙粉を除去し、水槽113内に浸すことで、エンドレスベルト112に付着した紙粉を回収するようになっている。そして、紙粉の除去されたエンドレスベルト112を用いて再度印刷紙Pに付着している紙粉を除去するようにしている(特許文献2、参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−22710号公報
【特許文献2】特許第2540277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図4に示すような従来の印刷紙Pの表面に空気を吹き付け、印刷紙Pの表面に付着している紙粉を吹き飛ばす方法では、印刷紙Pとは非接触であるため、印刷紙Pの表面に付着している紙粉の落ちが悪く、十分に取りきれない、という問題がある。
【0008】
また、図5に示すような従来の水で湿らせたエンドレスベルト112のように布を印刷紙Pに接触させて印刷紙Pに付着している紙粉をふき取る方法では、印刷紙Pとは接触するため印刷紙Pに付着している紙粉は確実に取れるが、エンドレスベルト112に堆積している紙粉がそのまま印刷紙Pに再度転写されてしまう、という問題がある。
【0009】
また、エンドレスベルト112の交換も必要であるため、コストが高くなり、装置も大型になる、という問題がある。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、コストを抑えつつ、印刷紙に付着している紙粉を確実に除去する紙粉除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、搬送される印刷紙の少なくとも一方の表面に接触しつつ、前記印刷紙上に付着した紙粉を除去する紙粉除去装置において、前記印刷紙の一方の面に当接して前記印刷紙上に付着した紙粉を除去する水分を含浸させてなる少なくとも一つ以上の紙粉除去ローラと、前記紙粉除去ローラの表面に水分を供給すると共に、吸着した紙粉を水分と共に回収する水分循環装置とを有することを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記水分循環装置が、本体内に供給される水分と紙粉を回収した水分とを仕切る仕切板を有することを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記印刷紙の送り速度を調整する第1駆動手段と、前記紙粉除去ローラを駆動回転する第2駆動手段と、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを有し、前記紙粉除去ローラの回転速度と前記印刷紙の送り速度とが異なることを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0014】
第4の発明は、第1乃至3の何れか一つの発明において、前記紙粉除去ローラの回転速度が前記印刷紙の送り速度よりも速いことを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0015】
第5の発明は、第1乃至4の何れか一つの発明において、前記水分循環装置が、前記紙粉除去ローラに付着した前記紙粉を剥がす紙粉掻取手段を有することを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0016】
第6の発明は、第1乃至5の何れか一つの発明において、前記紙粉除去ローラの回転速度を前記紙粉除去ローラの通常の回転速度よりも速くすることを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0017】
第7の発明は、第1乃至5の何れか一つの発明において、前記紙粉除去ローラの回転速度を前記紙粉除去ローラの通常の回転速度よりも遅くすることを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0018】
第8の発明は、第1乃至7の何れか一つの発明において、前記水分循環装置が、紙粉を回収した水分から紙粉を除去した後、前記水分を再度使用することを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0019】
第9の発明は、第1乃至8の何れか一つの発明において、前記水分循環装置が、少なくとも一つ以上の水分調整ローラを介して前記紙粉除去ローラに水分を供給することを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0020】
第10の発明は、第1乃至9の何れか一つの発明において、前記水分が、湿し水であることを特徴とする紙粉除去装置にある。
【0021】
第11の発明は、ロール状のウェブを繰り出す給紙装置と、前記給紙装置より繰り出された前記ウェブ上の少なくとも一方の面の紙粉を除去する第1乃至10の何れか一つの発明の紙粉除去装置と、前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、前記ウェブ上に印刷されたインキを乾燥する乾燥装置と、乾燥後の前記ウェブを冷却する冷却装置と、冷却後の前記ウェブを排紙する排紙装置とを有していることを特徴とする輪転印刷機にある。
【0022】
第12の発明は、第1乃至10の何れか一つの発明の紙粉除去装置を用いて搬送される印刷紙上に付着した紙粉の除去を行うことを特徴とする紙粉除去方法にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、印刷紙の一方の面に当接して前記印刷紙上に付着した紙粉を除去する水分を含浸させてなる少なくとも一つ以上の紙粉除去ローラと、前記紙粉除去ローラの表面に水分を供給すると共に、吸着した紙粉を水分と共に回収する水分循環装置とを有するので、前記印刷紙に付着している紙粉を確実に除去することができる。また、前記紙粉除去ローラに付着した紙粉を湿し水循環装置内の水分で洗い流すと共に、前記紙粉除去ローラに水分を供給し、付着させているため、前記印刷紙から除去した紙粉が前記印刷紙に再度転写させることなく使用することができる。
【0024】
また、本発明によれば、前記水分循環装置が、本体内に供給される水分と紙粉を回収した水分とを仕切る仕切板を有するので、前記紙粉除去ローラに常時新鮮な水分を供給することができ、前記印刷紙から除去した紙粉を前記印刷紙に再度転写させることなく、前記印刷紙に付着している紙粉を除去することができる。
【0025】
また、本発明によれば、前記印刷紙の送り速度を調整する第1駆動手段と、前記紙粉除去ローラを駆動回転する第2駆動手段と、前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを有し、前記紙粉除去ローラの回転速度と前記印刷紙の送り速度とが異なるので、前記紙粉除去ローラの回転速度と前記印刷紙の送り速度とを所望の速度、即ち、両方の周速差を適正なものとすることで、前記印刷紙に付着している紙粉をより確実に除去することができる。これにより、ヒッキーの発生を防止することができると共に、印刷品質を向上することができる。
【0026】
また、本発明によれば、前記紙粉除去ローラの回転速度が前記印刷紙の送り速度よりも速いので、前記印刷紙に対して前記紙粉除去ローラをスリップさせることで、前記印刷紙に付着している紙粉を前記紙粉除去ローラで剥ぎ落とし、前記印刷紙に付着した紙粉がそのまま印刷側に持って行かれないようにすることができる。これにより、前記印刷紙に付着している紙粉を更に効果的に除去することができる。
【0027】
また、本発明によれば、前記湿し水循環装置が、前記紙粉除去ローラに付着した前記紙粉を剥がす紙粉掻取手段を有するので、前記紙粉掻取手段が前記紙粉除去ローラと当接することで、前記紙粉除去ローラから紙粉を取り除くことができ、紙粉除去性能を向上させることができる。これにより、前記紙粉除去ローラに付着している紙粉を更に効果的に除去することができる。
【0028】
また、本発明によれば、前記紙粉除去ローラの回転速度を前記紙粉除去ローラの通常の回転速度よりも速くするので、前記印刷紙と前記紙粉除去ローラとのスリップ比を増大させ、前記印刷紙に付着している紙粉の除去効率を更に増大させることができる。
【0029】
また、本発明によれば、前記紙粉除去ローラの回転速度を前記紙粉除去ローラの通常の回転速度よりも遅くするので、前記印刷紙に付着している紙粉を除去する際、水分が飛び散らないようにすることができる。
【0030】
また、本発明によれば、前記湿し水循環装置が、紙粉を回収した水分から紙粉を除去した後、前記水分を再度使用するので、装置のランニングコストを抑えることができる。
【0031】
また、本発明によれば、前記湿し水循環装置が、少なくとも一つ以上の湿し水調整ローラを介して前記紙粉除去ローラに水分を供給するので、前記紙粉除去ローラに余分な湿し水を供給せず、適量の湿し水を供給することができる。
【0032】
また、本発明によれば、前記水分として湿し水を用いるので、装置のランニングコストを抑えることができる。
【0033】
また、本発明によれば、ロール状のウェブを繰り出す給紙装置と、前記給紙装置より繰り出された前記ウェブ上の少なくとも一方の面の紙粉を除去する上記何れか一つの紙粉除去装置と、前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、前記ウェブ上に印刷されたインキを乾燥する乾燥装置と、乾燥後の前記ウェブを冷却する冷却装置と、冷却後の前記ウェブを排紙する排紙装置とを有している輪転印刷機であるので、印刷品質を向上することができる。
【0034】
また、本発明によれば、上記何れか一つの紙粉除去装置を用いて搬送される印刷紙上に付着した紙粉の除去を行うので、前記印刷紙に付着している紙粉を確実に除去することができると共に、前記印刷紙から除去した紙粉を前記印刷紙に再度転写させることなく使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る紙粉除去装置及びオフセット輪転印刷機の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の実施例1に係る紙粉除去装置が適用されたオフセット輪転印刷機の概略構成図、図2は、実施例1のオフセット輪転印刷機における紙粉除去装置の構成を簡略に示す概念図である。
【0037】
実施例1の紙粉除去装置が適用されたオフセット輪転印刷機10は、図1に示すように、給紙装置11と、紙粉除去装置(インフィード装置)12Aと、印刷装置13と、乾燥装置14と、冷却装置15、ウェブパス装置16と、折り装置17とを有している。そして、この印刷装置13は、複数、本実施例では、4つのインキ色である藍(Cyan)、紅(Magenta)、黄(yellow)、墨(Black)ごとの4個の印刷ユニット21、22、23、24から構成されている。尚、本実施例では、4つのインキ色を用いているが、単色、2色、6色など限定されるものではない。また、本実施例では紙粉除去装置12AとしてウェブWの両面に紙粉除去装置12A−1、第二の紙粉除去装置12A−2を設けている。
【0038】
従って、給紙装置11に設けられたロール状のウェブ(紙)Wが紙粉除去装置12Aにより繰り出され、印刷装置13における各印刷ユニット21、22、23、24により多色印刷が行われ、印刷されたウェブWは、乾燥装置14でインキが乾燥され、冷却装置15で冷却され、ウェブパス装置16を通って折り装置17に搬送され、ここで折帳が作成される。なお、そして、各装置に設けられてウェブWが巻回される複数のローラの回転速度は、このウェブWの各ローラ間におけるテンションが最適になるように適宜制御されている。
【0039】
そして、印刷装置13を構成する印刷ユニット21、22、23、24は、ほぼ同様の構成をなしている。例えば、印刷ユニット21は、図1に示すように、ウェブWの表面に印刷を行う上ユニット25と、ウェブWの裏面に印刷を行う下ユニット26とから構成されており、この上下のユニット25、26によりウェブWの両面に印刷することができる。
【0040】
この上ユニット25は、印刷画像が形成された版が装着される版胴25aと、版胴25aにインキを供給する図示しないインキ装置と、版胴25aに装着された版の画像をウェブWの表面に転写する印刷胴としてのブランケット胴25bとを有している。一方、下ユニット26は、印刷画像が形成された版が装着される版胴26aと、版胴26aにインキを供給する図示しないインキ装置と、版胴26aに装着された版の画像をウェブWの表面に転写する印刷胴としてのブランケット胴26bとを有している。
【0041】
従って、上ユニット25のブランケット胴25bと下ユニット26のブランケット胴26bとは所定の印圧で互いに対向して接しており、印刷ユニット21に搬送されたウェブWは、この上ブランケット胴25bと下ブランケット胴26bとの間のニップ部に供給され、このニップ部を通過することでウェブWの両面に印刷が行われる。
【0042】
図2は、本発明の実施例1に係る紙粉除去装置の構成を簡略に示す概念図である。
また、本実施例では、ウェブWの両面の紙粉を除去するため、一対の紙粉除去装置12AがウェブWの両面に設けられ、ウェブWの一方の面には第一の紙粉除去装置12A−1が設けられ、ウェブWの他方の面には第二の紙粉除去装置12A−2が設けられている。
【0043】
図2に示すように、本実施例に係る第一の紙粉除去装置12A−1は、搬送される印刷紙であるロール状のウェブWの表面に接触しつつ、ウェブW上に付着した紙粉を除去する紙粉除去装置において、ウェブWの一方の面に当接してウェブW上に付着した紙粉を除去する水分を含浸させてなる第一の紙粉除去ローラ31−1と、第一の紙粉除去ローラ31−1の表面に湿し水Sを供給すると共に、吸着した紙粉を湿し水Sと共に回収する第一の湿し水循環装置32−1とを有するものである。
また、図中、符号33a〜33cは、ウェブWに接するように設けられ、ウェブWを搬送するガイドローラである。
また、本実施例において、水分として、湿し水を用いている。ここで、湿し水とは、平版印刷の非画線部にインキが付着しないように版面を湿らせる水をいい、通常の水も含むものとする。
【0044】
ウェブWはその一方の表面に接触するようにその走行方向に沿って配置された複数のガイドローラ33に掛け渡されている。ウェブWは、これらの複数のガイドローラ33に接しつつ走行し、第一の紙粉除去ローラ31−1でウェブWに付着している紙粉が除去された後、オフセット輪転印刷機10の印刷装置13に至り印刷される。
【0045】
この湿し水Sは外部から供給通路37aを介して本体37内に供給され、本体37外に排出通路37bを通して排出される。そして、第一の紙粉除去ローラ31−1がウェブWに当接した状態にて、第一の紙粉除去ローラ31−1を回転すると、第一の水循環装置32−1から紙粉除去ローラ31−1により湿し水Sは汲み上げられ、第一の紙粉除去ローラ31−1の表面に湿し水Sを供給し、付着させる。そして、第一の紙粉除去ローラ31−1はウェブWの表面と接するようにしているため、第一の紙粉除去ローラ31−1の表面に付着した湿し水Sは第一の紙粉除去ローラ31−1の回転に伴って、第一の紙粉除去ローラ31−1の湿し水Sが付着している表面がウェブWの表面に接する。そして、第一の紙粉除去ローラ31−1がウェブWと当接した状態で回転することにより、紙粉は湿し水Sに吸着され、ウェブWから除去することができるため、ウェブWに付着している紙粉を確実に除去することができる。
【0046】
また、第一の紙粉除去ローラ31−1はウェブWに付着している紙粉を除去した後、ウェブWに付着している紙粉を吸着した第一の紙粉除去ローラ31−1の表面は、第一の湿し水循環装置32−1に送給される。そして、第一の紙粉除去ローラ31−1に付着した紙粉は第一の湿し水循環装置32−1中の湿し水Sで洗い流すと共に、第一の紙粉除去ローラ31−1に湿し水Sを供給し、付着させているため、ウェブWから除去した紙粉をウェブWに再度転写させることなく使用することができる。
【0047】
また、第一の紙粉除去装置12A−1の下流側でウェブWの他方の面には、第二の紙粉除去装置12A−2を設け、第一の紙粉除去装置12A−1と同様にウェブWの他方の面の紙粉を除去するようにしている。
また、本実施例では、一対の紙粉除去装置12A−1、12A−2をウェブWの両面に設けているが、ウェブWの一方の面側にのみ設けるようにしてもよい。
【0048】
また、ウェブWの送り速度を調整する図示しない第一の駆動モータ(第一の駆動手段)と、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2を駆動回転する第二の駆動モータ(第二の駆動手段)35と、図示しない第一の駆動モータ及び第二の駆動モータ35を駆動制御する制御装置(駆動制御手段)36とを有している。制御装置36は、輪転印刷機などの運転状態に応じて図示しない第一の駆動モータ、第二の駆動モータ35各駆動モータを駆動制御することで、ウェブWの回転速度と第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度をそれぞれ独立して制御している。
【0049】
そして、制御装置36は、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度とウェブWの送り速度とを異なるように駆動制御し、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度とウェブWの送り速度とを所望の速度、即ち、両方の周速差を適正なものとしている。これにより、ウェブWに付着している紙粉をより確実に除去することができる。これにより、ヒッキーの発生を防止することができると共に、印刷品質を向上させることができる。
【0050】
具体的には、デザイン、シート紙、インキなどの種類によって印刷速度、つまり、ウェブWの回転速度が決定され、このウェブWの回転速度に対して第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度が決定される。そして、ウェブWにおける紙粉発生状況などを考慮し、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度とウェブWの送り速度とを設定し、適正値となるように第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度を無段階で調整制御している。
【0051】
即ち、第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2では、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の表面に湿し水Sを供給し、付着させ、ウェブWに当接させることで、このウェブWに所定量の湿し水Sを供給しウェブWに付着している紙粉を除去するようにしている。
【0052】
また、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度をウェブWの送り速度よりも速くしている。これにより、ウェブWの表面に対して第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2をスリップさせ、ウェブWに付着している紙粉を第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2で剥ぎ落とし、ウェブWに付着した紙粉がそのまま印刷側に持って行かれないようにすることができ、ウェブW上の紙粉をより効果的に除去することができる。
【0053】
また、第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2には、本体37内に供給される湿し水Sと紙粉を回収した湿し水Sとを仕切る仕切板38を設けている。仕切板38で本体37に供給される新しい湿し水Sと紙粉を含有する湿し水Sとを分けることで、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2には常時新鮮な湿し水Sを供給することができる。このため、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2は紙粉を含有する湿し水Sを用いることなく、常時新鮮な湿し水SをウェブWに供給することができるため、ウェブWから除去した紙粉を新たに送給されるウェブWに再度転写させることなく、ウェブWに付着している紙粉を効果的に除去することができる。
【0054】
第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2は、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に圧接し、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に付着した紙粉を剥がす紙粉掻取手段としてブラシ39を有している。このため、ブラシ39が第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2と当接することで、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2から紙粉を取り除くことができ、紙粉除去性能を向上させることができる。これにより、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に付着している紙粉を更に効果的に除去することができる。
【0055】
また、ブラシ39により紙粉を第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2から浮き上がらせ付着力を低下させることもできる。これにより、第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2の湿し水S中で第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に付着した紙粉を除去し易くすることができる。
【0056】
また、ブラシ39により第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に付着している紙粉を掻き落とすこともでき、このブラシ39で掻き落とされた紙粉はそのまま落下して第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2の本体37内に回収するようにしている。紙粉掻取手段としてブラシの他に、例えばスクレーパ、除去ローラあるいはブラシローラ等が用いられるが、本発明はこれに限定されるものでない。
【0057】
また、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度は、調整可能であり、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度を第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の通常の回転速度よりも速くすることで、ウェブWと第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2とのスリップ比を増大させ、ウェブWに付着している紙粉の除去効率を更に増大させることができる。
【0058】
また、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の通常の回転速度は、上記のように、ウェブWの回転速度により決定され、調整するものであるため、特に限定されるものではない。
【0059】
また、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転速度を第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の通常の回転速度よりも遅くすることで、ウェブWに付着している紙粉を除去する際、湿し水Sが飛び散らないようにすることができる。
【0060】
また、第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2は、紙粉を含有する湿し水S中の紙粉を除去した後、再度使用するようにしている。即ち、湿し水Sは外部から供給通路37aを介して本体37内に供給され、本体37外に排出通路37bを通して排出される。排出された湿し水Sは図示しないろ過装置などにより湿し水S中の紙粉を除去した後、再度、供給通路37aを介して本体37内に供給され、使用する。これにより、装置のランニングコストを抑えることができる。
【0061】
このように、本実施例に係る紙粉除去装置10A、10Bによれば、ウェブWの一方の面に当接してウェブW上に付着した紙粉を湿し水Sに吸着させ、除去する第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2と、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の表面に湿し水Sを供給し、付着させると共に、紙粉を吸着し、回収した湿し水Sを回収する第一の湿し水循環装置32−1、第二の湿し水循環装置32−2とを有しているため、ウェブWに付着している紙粉を確実に除去することができると共に、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に付着した紙粉を湿し水Sで洗い流しているため、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2に新鮮な湿し水Sを供給し、紙粉をウェブWに再度転写させることなく使用することができる。
【0062】
また、本実施例に係る紙粉除去装置10Aにおいては、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転方向とウェブWの送り方向とを同方向としているが、第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2の回転方向とウェブWの送り方向とを逆方向としてもよい。これにより、ウェブWに付着している紙粉を第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2により更に効率良く剥ぎ落とすことができる。
【0063】
また、本実施例に係る粉除去装置10Aにおいては、ウェブWの表裏両面に一対の第一の紙粉除去ローラ31−1、第二の紙粉除去ローラ31−2を設けるようにしたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ウェブWの何れか一方の面にのみ紙粉除去ローラを設けるようにしてもよい。また、ウェブWの表裏両面に紙粉除去ローラを二組以上設けるようにしてもよい。
【0064】
また、本発明は、輪転印刷機に用いることができるが、これに限定されるものではなく、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に適用可能である。また、段ボール類又は紙製品類等の紙粉類除去に適用する他、シート状のプラスチック板等の塵埃等の除去用としても適用可能である。
【実施例2】
【0065】
本発明による実施例2に係る紙粉除去装置について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施例2のオフセット輪転印刷機における紙粉除去装置の構成を簡略に示す概念図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。また、オフセット輪転印刷機の全体の説明については省略し、紙粉除去装置の部分についてのみ説明する。
【0066】
図3に示すように、実施例1の紙粉除去装置が適用されたオフセット輪転印刷機10は、第一の湿し水循環装置32−1が、ローラを介して第一の紙粉除去ローラ31−1に湿し水Sを供給するようにしたものである。
即ち、本実施例に係る紙粉除去装置12B−1は、図3に示すように、第一の湿し水循環装置32−1と第一の紙粉除去ローラ31−1との間に第一の湿し水循環装置32−1の湿し水Sを第一の紙粉除去ローラ31−1に供給する第一の湿し水調整ローラ41−1を有している。湿し水調整ローラ41−1は制御装置36によって図示しない駆動モータにより回転速度が制御されている。
【0067】
よって、本実施例に係る紙粉除去装置12B第一の湿し水調整ローラ41−1を介して第一の紙粉除去ローラ31−1に湿し水Sを供給することで、第一の紙粉除去ローラ31−1には余分な湿し水Sを供給せず、適量の湿し水Sを供給することができる。
【0068】
また、第一の湿し水循環装置32−1と第一の紙粉除去ローラ31−1との間に配置される第一の湿し水調整ローラ41−1は一つに限定されるものではなく、二つ以上設けるようにしてもよい。
【0069】
また、第一の紙粉除去装置12B−1の下流側でウェブWの他方の面には第二の紙粉除去装置12B−2を設け、第一の紙粉除去装置12B−1と同様に第二の湿し水調整ローラ41−2を設け、第二の紙粉除去ローラ31−2に適量の湿し水Sを供給するようにすることができる。
【0070】
また、本実施例では、一対の紙粉除去装置12A−1、12A−2の両方に第一の湿し水調整ローラ41−1、第二の湿し水調整ローラ41−2を各々設けるようにしているが、一方にのみ設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る紙粉除去装置は、表面に湿し水が供給され、湿し水が付着した紙粉除去ローラを用いて印刷紙に付着した紙粉を除去することで、印刷品質を向上させるようにしたものであり、どのような種類の輪転印刷機にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例1に係る紙粉除去装置が適用されたオフセット輪転印刷機の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1のオフセット輪転印刷機における紙粉除去装置の構成を簡略に示す概念図である。
【図3】本発明の実施例2に係る紙粉除去装置の構成を簡略に示す概念図である。
【図4】従来の紙粉除去装置の構成の一例を示す図である。
【図5】従来の紙粉除去装置の他の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
12 紙粉除去装置
12A−1、12B−1 第一の紙粉除去装置
12A−2、12B−2 第二の紙粉除去装置
31−1 第一の紙粉除去ローラ
31−2 第二の紙粉除去ローラ
32−1 第一の湿し水循環装置
32−2 第二の湿し水循環装置
33 ローラ
35 第二の駆動モータ(第二の駆動手段)
36 制御装置(駆動制御手段)
37 本体
38 仕切板
39 ブラシ
41−1、41−2 湿し水調整ローラ
W ウェブ
S 湿し水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される印刷紙の少なくとも一方の表面に接触しつつ、前記印刷紙上に付着した紙粉を除去する紙粉除去装置において、
前記印刷紙の一方の面に当接して前記印刷紙上に付着した紙粉を除去する水分を含浸させてなる少なくとも一つ以上の紙粉除去ローラと、
前記紙粉除去ローラの表面に水分を供給すると共に、吸着した紙粉を水分と共に回収する水分循環装置とを有することを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記水分循環装置が、本体内に供給される水分と紙粉を回収した水分とを仕切る仕切板を有することを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記印刷紙の送り速度を調整する第1駆動手段と、
前記紙粉除去ローラを駆動回転する第2駆動手段と、
前記第1駆動手段及び前記第2駆動手段を駆動制御する駆動制御手段とを有し、
前記紙粉除去ローラの回転速度と前記印刷紙の送り速度とが異なることを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一つにおいて、
前記紙粉除去ローラの回転速度が前記印刷紙の送り速度よりも速いことを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一つにおいて、
前記水分循環装置が、前記紙粉除去ローラに付着した前記紙粉を剥がす紙粉掻取手段を有することを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記紙粉除去ローラの回転速度を前記紙粉除去ローラの通常の回転速度よりも速くすることを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記紙粉除去ローラの回転速度を前記紙粉除去ローラの通常の回転速度よりも遅くすることを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つにおいて、
前記水分循環装置が、紙粉を回収した水分から紙粉を除去した後、前記水分を再度使用することを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一つにおいて、
前記水分循環装置が、少なくとも一つ以上の水分調整ローラを介して前記紙粉除去ローラに水分を供給することを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一つにおいて、
前記水分が、湿し水であることを特徴とする紙粉除去装置。
【請求項11】
ロール状のウェブを繰り出す給紙装置と、
前記給紙装置より繰り出された前記ウェブ上の少なくとも一方の面の紙粉を除去する請求項1乃至10の何れか一つの紙粉除去装置と、
前記ウェブに印刷を行う印刷装置と、
前記ウェブ上に印刷されたインキを乾燥する乾燥装置と、
乾燥後の前記ウェブを冷却する冷却装置と、
冷却後の前記ウェブを排紙する排紙装置とを有していることを特徴とする輪転印刷機。
【請求項12】
請求項1乃至10の何れか一つの紙粉除去装置を用いて搬送される印刷紙上に付着した紙粉の除去を行うことを特徴とする紙粉除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−226630(P2009−226630A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71967(P2008−71967)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】