説明

紙粉除去装置及び衛生用紙の製造方法

【課題】衛生用紙の製造工程において、大型な装置は必要とせず、効率よく衛生用紙から紙粉を除去する装置、及び紙粉が除去された衛生用紙の製造方法を提供する。
【解決手段】衛生用紙原反ロール20から繰り出された、紙粉が付着した衛生用紙25の搬送経路に備えられ、回転軸を有し、その回転軸に垂直な断面が多角形の多角形ロール部10と、その多角形ロール部10を駆動する駆動部11とを備え、多角形ロール部10の回転軸が、搬送される衛生用紙25と接触又は離間して衛生用紙25の搬送方向と同方向に回転するように備えられており、衛生用紙25の搬送に伴って、搬送方向と同方向に多角形ロール部10を回転させることにより、多角形ロール部10が衛生用紙25へ高圧及び低圧での接触、あるいは押圧及び離脱を繰り返し、衛生用紙25を振動させて紙粉を除去する衛生用紙の紙粉除去装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙粉除去装置と、紙粉が除去された衛生用紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ティシュ抄造工程において衛生用紙原反巻取の際に混入する紙粉は、そのまま次の加工工程に送られる。このような紙粉を除去するために、従来、製造工程の途中経路において、衛生用紙を振動させ、浮き上がった紙粉をエア噴出で離脱させ、離脱した紙粉をエア吸引ヘッドにより吸引する工程を組み込むことが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、紙の進行方向とは逆向きに高速エアを吹き付けて、紙表面にかかる遠心力と高速エアの吐出力により、紙粉を紙表面から離脱させ、吸引装置により紙粉を吸引する紙粉除去装置も提案されている(特許文献2を参照)。
【0004】
一方、箱詰め型ティシュペーパーの製造工程において、複数並設された折り板からなる折り板群によって複数枚の連続シートを折り畳みながら積み重ねるために使用されるインターフォルダが知られている。この折り板タイプのインターフォルダでは、折り板のエッジと連続シートが擦れ合うために紙粉が発生しやすく、紙粉が折り板上に堆積し、稀に、紙粉が塊となって落下し、製品に混入することがある。このため、折り板に向けてエアを噴出するノズルを複数固設し、折り板に堆積する紙粉を除去しているが、エアの当たらない部分ができるなど問題があり、可動式のエア噴出手段を備えたインターフォルダが提案されている(特許文献3を参照)。
【0005】
また、用紙から紙粉を除去するために、超音波発生装置から超音波を発生することにより、用紙の表面に付着する紙粉及び用紙の内部の紙粉を用紙から分離し、吸引装置により、紙粉を吸引する紙粉除去装置が提案されている(特許文献4を参照)。
【0006】
さらに、印刷機の内部の紙粉除去装置としては、超音波を用紙に照射し、粘着シートで紙粉を吸着する考案も提案されている(特許文献5を参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2007−22710号公報
【特許文献2】特開2002−200591号公報
【特許文献3】特許第3653481号
【特許文献4】特開平9−39204号公報
【特許文献5】実開平4−96343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の衛生用紙や印刷用紙などの紙粉除去装置には、超音波発生装置、エア噴出装置やエア吸引装置など、大掛かりな装置が必要となり、装置全体が大きくなるなどの問題があった。
【0009】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、衛生用紙の製造工程において、大型な装置は必要とせず、効率よく衛生用紙から紙粉を除去する装置、及び紙粉が除去された衛生用紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、衛生用紙原反ロールから折り機の間に多角形ロール部を備え、この多角形ロール部を衛生用紙に接触させ衛生用紙を振動させて紙粉を除去することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明に到達したものである。
【0011】
本発明によれば、衛生用紙原反ロールから繰り出された、紙粉が付着した衛生用紙の搬送経路に備えられ、回転軸を有し、その回転軸に垂直な断面が多角形の多角形ロール部と、その多角形ロール部を駆動する駆動部とを備え、前記回転軸は、搬送される前記衛生用紙と接触又は離間して前記多角形ロール部が前記衛生用紙の搬送方向と同方向に回転するように備えられており、前記衛生用紙の搬送に伴って、搬送方向と同方向に前記多角形ロール部を回転させることにより、前記多角形ロール部が前記衛生用紙へ高圧及び低圧での接触、あるいは押圧及び離脱を繰り返し、前記衛生用紙を振動させて前記紙粉を除去する衛生用紙の紙粉除去装置が提供される。
【0012】
本発明の紙粉除去装置においては、前記多角形ロール部の表面は、前記紙粉の付着防止用としてポリテトラフルオロエチレンによる加工又はめっき加工等の表面加工が施されてなることが好ましい。
【0013】
また、本発明においては、前記多角形ロール部の表面の角部の先端部は、円弧状に形成されてなることが衛生用紙の切断、損傷を防止する上で好ましい。
【0014】
また本発明によれば、衛生用紙原反ロールから繰り出された、紙粉が付着した衛生用紙に対し、その搬送経路の途中において、その回転軸に垂直な断面が多角形の多角形ロール部が前記衛生用紙の搬送方向と同方向に回転しながら、前記多角形ロール部が前記衛生用紙へ高圧及び低圧での接触、あるいは押圧及び離脱を繰り返すことにより、前記衛生用紙を振動させて前記紙粉を除去し、次いで、紙粉が除去された衛生用紙が折り機に送られて折り畳まれる衛生用紙の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ティシュ抄造工程において衛生用紙原反巻取の際に混入し衛生用紙に付着した紙粉を効果的に振り落とし除去することができる。
【0016】
また、多角形ロール部の表面は、ポリテトラフルオロエチレンによる加工又はめっき加工が施されると、紙粉が多角形ロール部に付着し大きな塊となって衛生用紙に付着することを防止できる。
【0017】
さらに、多角形ロール部の表面の角が面取りされ円弧状に形成されることで、衛生用紙を傷つけず、効率よく紙粉の除去ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0019】
図1は、本発明の紙粉除去装置の一実施例を示す概要図である。紙粉除去装置1は、衛生用紙の衛生用紙原反ロール20と折り機30の間の衛生用紙搬送経路に備えられる。紙粉除去装置1は、回転軸を有し、その回転軸に垂直な断面が多角形の多角形ロール部10と、その多角形ロール部10を駆動する駆動部11とを有している。多角形ロール部10の回転軸は、搬送される衛生用紙25から離間して配置されており、駆動部11により、衛生用紙原反ロール20から搬送される衛生用紙25と同じ方向に回転する。この実施例では、衛生用紙25が上方(垂直方向)に搬送される箇所に近接して多角形ロール部10がその回転軸が水平方向となるように設置されている。そして、多角形ロール部10が回転しながら多角形ロール部10が衛生用紙25に押圧及び離脱を繰り返すことにより、衛生用紙25を振動させて紙粉を除去することになり、効率よく紙粉を除去することができる。
【0020】
なお、上記実施例は、多角形ロール部10の回転軸が衛生用紙25から離間して配置され、多角形ロール部10と衛生用紙25が押圧及び離脱を繰り返す実施形態を示しているが、本発明はこれに限られず、多角形ロール部10が衛生用紙25と常時接触しており、衛生用紙25へ高圧及び低圧での接触を繰り返すような実施形態を含むものである。
【0021】
衛生用紙原反ロール20は、ベルト駆動部21により回転し、衛生用紙25が送り出される。衛生用紙25は、上記のように本発明の紙粉除去装置による紙粉除去を行った後、折り機30に送りこまれ、所定形状に折り畳まれる。
【0022】
多角形ロール部10の回転速度は、衛生用紙原反ロール20から搬送される衛生用紙25の搬送速度と同じであることが望ましいが、多少の速度差はあっても良い。具体的には、衛生用紙25の搬送速度が約80〜150m/分であり、多角形ロール部10の回転速度はそれより約5〜10%速くなっても、遅くなっても良い。
【0023】
多角形ロール部10と衛生用紙25が常時接触し、高圧及び低圧での接触を繰り返す実施形態においては、図2(a)(b)に示すように、多角形ロール部10が、衛生用紙25の搬送方向と同一方向に回転し、多角形ロール部10の表面の角の部分で衛生用紙25に高圧で接触し、多角形ロール部10の面の部分では前記衛生用紙25に低圧で接触する状況、すなわち、多角形ロール部10の回転にしたがって衛生用紙25への高圧での接触(図2(a)の状態)及び低圧での接触(図2(B)の状態)を繰り返すことになり、この高圧での接触及び低圧での接触の繰り返しにより、衛生用紙25を振動させ、衛生用紙25に付着する紙粉を効率的に除去することができる。
【0024】
多角形ロール部10と衛生用紙25が押圧及び離脱を繰り返す実施形態においては、図3(a)(b)に示すように、多角形ロール部10の回転軸中心と多角形ロール部10の外周面中央部との距離をa、多角形ロール部10の回転軸中心と多角形ロール部10の角部先端との距離をb、多角形ロール部10の回転軸中心と衛生用紙25との距離をcとしたとき、a<c<bの関係が成立するような配置が好ましい。このような位置関係であれば、多角形ロール部10が、衛生用紙25の搬送方向と同一方向に回転し、多角形ロール部10の表面の角の部分で衛生用紙25に接し、多角形ロール部10の面の部分では前記衛生用紙25に接しない状況、すなわち、多角形ロール部10の回転にしたがって衛生用紙25への押圧(図3(a)の状態)及び離脱(図3(b)の状態)を繰り返すことになり、この押圧及び離脱の繰り返しにより、衛生用紙25を振動させ、衛生用紙25に付着する紙粉を効率的に除去することができる。
【0025】
多角形ロール部10の回転軸に垂直な断面形状としては、多角形であれば特に限定されないが、三角形〜十二角形が好ましく、特に好ましくは四角形〜六角形である。また、多角形ロール部10の角部は、円弧状に形成されていると好ましく、このことにより接触する衛生用紙25を傷つけることなく、効率よく衛生用紙を振動させて、紙粉を除去できる。また、角部の数が少ないほうが衛生用紙25をより大きく振動させるため、紙粉除去の効率は良くなる。
【0026】
なお、多角形ロール部10に紙粉が付着すると、紙粉の塊となって衛生用紙25に付着する可能性があるため、多角形ロール部10には、紙粉が付かないほうが良い。そのため紙粉が付着しにくいように、多角形ロール部10の表面をフッ素樹脂加工、例えばポリテトラフルオロエチレン加工しても良いし、めっき加工しても良い。
【0027】
衛生用紙原反ロール20は、ベルト駆動部21のベルトの回転により動力が伝達されて回転し、衛生用紙25を送り出している。送り出された衛生用紙25は、順次送られて多角形ロール部10の領域を通過する際に紙粉を除去され、折り機30へと送られる。
【0028】
なお、多角形ロール部10の角部が衛生用紙25を押し込む幅は、5〜20mmが好ましく、特に好ましくは10〜15mmである。この幅で、衛生用紙を押し込み、振動させると、効率よく紙粉を除去できる。
【0029】
多角形ロール部10は、1つでも良いが、2つ以上備えても良い。衛生用紙25の紙粉が効率よく除去できる条件の個数備えれば良い。
【0030】
多角形ロール部10を複数設ける場合は、衛生用紙25の両面に接するように多角形ロール部10を設けると、衛生用紙25の送り出しの効率が悪くなるため、多角形ロール部10を複数備える場合は、衛生用紙25を両面から押さえないように配置すると良い。
【0031】
図1に示すように、多角形ロール部10は、衛生用紙原反ロール20から垂直方向(上方)に送り出された部分に配置されるのが好ましい。すなわち、多角形ロール部10が、衛生用紙25が横向き(水平方向)になる部分に配置された場合は、衛生用紙25から紙粉が効果的に除去できない場合がある。前記したように、多角形ロール部10を衛生用紙原反ロール20の上部において、衛生用紙25が上方(垂直方向)に搬送している箇所に設置することが好ましく、この場合には、衛生用紙25へのエアの吸引や吹き付けを行っても良く、より効率よく紙粉を除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の紙粉除去装置と衛生用紙の製造方法により、効率よく衛生用紙の紙粉を除去でき、ティシュペーパーなど衛生用紙の生産工程に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の紙粉除去装置の一実施例を示す概要図である。
【図2】多角形ロール部と衛生用紙の接触状態を示す模式図で、(a)は多角形ロール部が衛生用紙を高圧で接触している状態、(b)は多角形ロール部と衛生用紙が低圧で接触している状態を示す。
【図3】多角形ロール部と衛生用紙の接触状態を示す模式図で、(a)は多角形ロール部が衛生用紙を押圧した状態、(b)は多角形ロール部と衛生用紙が離脱した状態を示す。
【符号の説明】
【0034】
1:紙粉除去装置、10:多角形ロール部、11:駆動部、20:衛生用紙原反ロール、
21:ベルト駆動部、30:折り機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生用紙原反ロールから繰り出された、紙粉が付着した衛生用紙の搬送経路に備えられ、回転軸を有し、その回転軸に垂直な断面が多角形の多角形ロール部と、
その多角形ロール部を駆動する駆動部とを備え、
前記回転軸は、搬送される前記衛生用紙と接触又は離間して前記多角形ロール部が前記衛生用紙の搬送方向と同方向に回転するように備えられており、
前記衛生用紙の搬送に伴って、搬送方向と同方向に前記多角形ロール部を回転させることにより、前記多角形ロール部が前記衛生用紙へ高圧及び低圧での接触、あるいは押圧及び離脱を繰り返し、前記衛生用紙を振動させて前記紙粉を除去する衛生用紙の紙粉除去装置。
【請求項2】
前記多角形ロール部の表面は、前記紙粉の付着防止用として、ポリテトラフルオロエチレンによる加工又はめっき加工が施されてなる請求項1に記載の衛生用紙の紙粉除去装置。
【請求項3】
前記多角形ロール部の表面の角部の先端部は、円弧状に形成されてなる請求項2に記載の衛生用紙の紙粉除去装置。
【請求項4】
衛生用紙原反ロールから繰り出された、紙粉が付着した衛生用紙に対し、その搬送経路の途中において、その回転軸に垂直な断面が多角形の多角形ロール部が前記衛生用紙の搬送方向と同方向に回転しながら、前記多角形ロール部が前記衛生用紙へ高圧及び低圧での接触、あるいは押圧及び離脱を繰り返すことにより、前記衛生用紙を振動させて前記紙粉を除去し、次いで、紙粉が除去された衛生用紙が折り機に送られて折り畳まれる、衛生用紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−230787(P2008−230787A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−74040(P2007−74040)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】