説明

紙缶容器およびその製造方法

【課題】蓋部分の脱落を防止して容易に開口部を開閉することができ、凹凸のない意匠性に優れた紙缶容器を提供する。
【解決手段】上端にカーリング部23Aが、下端に内方に折り返し部がそれぞれ形成されるとともに、上部に略V字状の切り裂き目24dが両端貼着部を除いて形成された外筒部2と、外筒部2の内周面に上端縁が略V字状の切り裂き目24dを越えるようにほぼ全周にわたって貼着された内筒部3と、外筒部2のカーリング部23Aに貼着された天面板4と、外筒部2の折り返し部に周縁に形成された折り返し部が挾持されて貼着された底面板と、から紙缶容器1が形成される。そして、外筒部2が切り裂き目24dに沿って切り裂くことにより、天面板4および外筒部2の上部が、外筒部2の両端接着部分をヒンジとして、内筒部3に案内されて上端側開口部を開閉することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙缶容器およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、食品や菓子などを収容するため、金属缶に代えて紙製の容器である紙缶容器が使用されるようになっている。
【0003】
この紙缶容器は、例えば、特許文献1に示されるように、円筒状胴部の上端部に、蓋体を着脱自在に嵌挿して構成されている。
【特許文献1】特開平9−20354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した紙缶容器においては、円筒状胴部と蓋体とを別個に形成し、食品などを収容した後、円筒状胴部に蓋体を嵌挿しなければならず、両者の寸法差によって嵌合できなかったり、あるいは、蓋体が脱落し易いという欠点があった。また、円筒状胴部の外周面に蓋体が板厚分積層されて凹凸が発生し、意匠性が低下するという欠点があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、蓋部分の脱落を防止して容易に開口部を開閉することができ、凹凸のない意匠性に優れた紙缶容器およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の紙缶容器は、上端にカーリング部が、下端に内方に折り返し部がそれぞれ形成されるとともに、上部に略V字状の切り裂き目が両端接着部を除いて形成された外筒部と、外筒部の内周面に上端縁が略V字状の切り裂き目を越えるようにほぼ全周にわたって貼着された内筒部と、外筒部のカーリング部に貼着された天面板と、外筒部の折り返し部に周縁に形成された折り返し部が挾持されて貼着された底面板と、から構成され、外筒部が切り裂き目に沿って上方部分および下方部分に切り裂かれることによって、外筒部の両端貼着部分をヒンジとして、天面板を設けた外筒部の上方部分が外筒部の下方部分に対して回動可能であることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、購入時に外筒部に形成された切り裂き目に沿って切り裂いて上方部分と下方部分に分離させることにより、外筒部の両端接着部分をヒンジとして、天面板を設けた外筒部の上方部分を下方部分に対して回動させることにより、上端側開口部を開閉することができる。
【0008】
この結果、切り裂き目が形成されていない外筒部の両端接着部分がヒンジとなって外筒部の上方部分の脱落を防止することができるとともに、外筒部の内周面に貼着された内筒部が外筒部の上方部分の開閉時の案内として機能することから、容易に回動させて上端側開口部を開閉することができ、また、外筒部の外周面に凹凸が発生せず、広告宣伝を施す際に意匠性に優れたものとなる。
【0009】
本発明の紙缶容器の製造方法は、左右一側端縁に糊代が連設される一方、上端縁にカーリング形成部が、下端縁に折り返し形成部がそれぞれ折り目を介して連設されるとともに、糊代および左右他側端部を除いて上部に略V字状の切り裂き目が左右方向に形成された外筒部と、糊代を除く外筒部の幅に相当する長さの横寸法と外筒部に形成された切り裂き目の高さよりも大きな高さの縦寸法からなる略方形の内筒部と、円板状の天面板および周縁に折り目を介して折り返し形成部が折り目を介して連設された底面板とからなり、外筒部の内面に、上端縁が切り裂き目を越えるように内筒部を貼着した後、内筒部を貼着した外筒部を円筒状に巻回し、糊代をその他側端部に貼着して上下端部が開口された円筒体を形成し、次いで、底面板の折り返し形成部を折り返して折り返し部を形成するとともに、その折り返し部を外筒部に嵌挿して貼着した後、外筒部の折り返し形成部を内方に折り返して底面板の折り返し部に貼着し、さらに、外筒部のカーリング形成部を丸めてカーリング部を形成し、そのカーリング部に天面板を貼着することを特徴とするものである。
【0010】
本発明によれば、外筒部の内面に内筒部を貼着した後、内筒部を貼着した外筒部を円筒状に巻回し、糊代を貼着して円筒体を形成する。次いで、底面板の折り返し形成部を折り返して折り返し部を形成して外筒部に嵌挿し、貼着した後、外筒部の折り返し形成部を内方に折り返して底面板の折り返し部に貼着する。さらに、外筒部のカーリング形成部を丸めてカーリング部を形成し、そのカーリング部に天面板を貼着すればよい。
【0011】
この結果、外筒部に内筒部を連設し、内筒部、外筒部の順に二回転させて二重の筒体を形成する必要がないため、外筒部の上方部分を脱落を防止しつつ内筒部に沿って容易に回動させることができるとともに、外筒部の外周面に凹凸のない意匠性に優れた紙缶容器を簡単に製造することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蓋部分の脱落を防止して容易に開口部を開閉することができ、凹凸のない意匠性に優れた紙缶容器を得ることができるとともに、その紙缶容器を簡単に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1乃至図4には、本発明の紙缶容器1の一実施形態が示されている。
【0015】
この紙缶容器1は、パスタなどの食品や菓子などを収容するものであり、コートボールを図5に示す展開図にしたがって打ち抜いた後、各構成部品を貼着して組み立てられる。そして、紙缶容器1に食品などを収容して包装した後、出荷される。
【0016】
この包装容器1は、図5の展開図において、外筒部2、内筒部3、天面板4および底面板5から構成されている。
【0017】
外筒部2は、外筒本体21の左端縁に糊代22が連設される一方、外筒本体21の上端縁にカーリング形成部23が折り目2aを介して連設されるとともに、その下端縁に折り返し形成部24が折り目2bを介して連設され、さらに、外筒本体21には、その上端部近傍において糊代22および該糊代22に貼着される右端縁部にそれぞれ横方向に延びる折り目2c,2cが左右対称に形成されるとともに、これらの折り目2c,2cの内端縁に連続して、中央に向かって緩やかに直線状に下降するとともに、中央近傍において緩やかに上方に向けて湾曲しつつ合流する一対の切り裂き目2d,2dが、全体として略V字状となるように、左右対称に形成されている。この外筒部2の外筒本体21は、紙缶容器1の外周長に相当する横寸法と、その高さに相当する縦寸法との方形に形成されている。
【0018】
なお、外筒部2には、内筒部3の下端縁を位置決めして貼着するためのマーキング2xが付されている。
【0019】
一方、内筒部3は、外筒部2の外筒本体21の横寸法に略相当する横寸法と、その外筒本体21に形成された切り裂き目2dを覆うことのできる高さの縦寸法を有し、上端縁は、中央を頂点として、左右端縁に向かって緩やかに湾曲して下降する円弧に形成されている。
【0020】
天面板4は、紙缶容器1の直径に略相当する直径の円板に形成されている。
【0021】
また、底面板5は、紙缶容器1の直径に略相当する直径の底面本体51の周縁に折り返し形成部52が折り目5aを介して連設された円板に形成されている。
【0022】
次に、このように構成された紙缶容器1の組み立て手順について説明する。
【0023】
まず、図5の展開図にしたがってコートボールから外筒部2、内筒部3、天面板4、底面板5を打ち抜く。そして、外筒部2の裏面が上面を向くように反転させた後、外筒部2の切り裂き目2dの下方部分に左右方向にわたって接着剤を塗布する一方、内筒部3の下端縁をマーキング2xに沿わせるとともに、その右端縁を外筒本体21と糊代22との仮想連設線に合わせて貼着する(図6参照)。次いで、内筒部3が貼着された外筒部2の糊代22の表面に接着剤を塗布した後、貼着された内筒部3とともに外筒部2を円筒状に丸めて外筒部2の裏面側左端縁部に貼着し、上下両端が開口された円筒体Cを形成した後、円筒体Cの外筒部2における折り返し形成部24が上方に位置するように、円筒体Cを上下反転させて倒立させる(図7参照)。
【0024】
その後、底面板5の折り返し形成部52を折り目5aに沿って立ち上げ、折り返し部52Aを形成するとともに、底面板5の折り返し部52Aの外周面に接着剤を塗布し、円筒体Cにおける外筒部2の内方に嵌挿し、その内周面に貼着する(図8参照)。この際、外筒部2における外筒本体21と折り返し形成部24との折り目2bに、底面板5の折り返し部52Aの上端縁を沿わせて貼着する。次いで、円筒体Cにおける外筒部2の折り返し形成部24の内周面に接着剤を塗布し、折り目2bに沿って外筒部2の内方に向けて折り込んで折り返し部24Aを形成し、先に貼着した底面板5の折り返し部52Aの内周面に貼着する(図9参照)。
【0025】
底面板5を貼着したならば、円筒体Cの外筒部2におけるカーリング形成部23が上方に位置するように、円筒体Cを再び上下反転させて正立させた後、外筒部2のカーリング形成部23をカーリングし、カーリング部23Aを形成する(図10参照)。そして、底面板5が貼着されて下端側開口部が閉鎖された円筒体Cの内部に食品などを充填した後、カーリング部23Aの頂部に接着剤を塗布し、天面板4の周縁を貼着すれば、内部に食品などが収容された紙缶容器1が形成される(図1参照)。この後、詳細には図示しないが、紙缶容器1はフィルムで包装されて、出荷される。
【0026】
一方、店頭にて食品などを購入した消費者はフィルムを剥離した後、外筒部2の、切り裂き目2dよりも上方部分を把持して上方に引き上げることにより、外筒部2の上方部分を回動させて、上端側開口部を開放させることができ、上端側開口部を通して食品などを取り出すことができる。
【0027】
すなわち、外筒部2の上方部分を把持し、上方に持ち上げる方向に回動操作すると、外筒部2に形成された切り裂き目2dが切り裂かれて、糊代22および該糊代22に貼着された外筒本体21の側端縁部を除いて上方部分と下方部分とに切り離される。そして、糊代22および該糊代22に貼着された外筒本体21の側端縁部に形成された折り目2c,2cをヒンジとして切り離された外筒部2の上方部分が回動し、上端側開口部を開放させることができる。
【0028】
食品などを取り出して後、上端側開口部を閉鎖する場合は、外筒部2の上方部分を把持して押し下げれば、糊代22および該糊代22に貼着された外筒本体21の側端縁部に形成された折り目2c,2cをヒンジとして外筒部2の上方部分が回動し、内筒部3の外周面に沿って滑落し、上端側開口部を閉鎖することができる。
【0029】
これにより、切り裂き目2dが形成されていない部分、すなわち、糊代22および該糊代22が貼着された外筒本体21の側端縁部に形成された折り目2c,2cをヒンジとして切り離された外筒部2の上方部分が回動することから、外筒部2の上方部分の脱落を防止することができる。また、外筒部2の内周面に貼着された内筒部3が外筒部2の上方部分の開閉時の案内として機能することから、上端側開口部を容易に開放し、あるいは、閉鎖することができる。この際、外筒部2の上方部分のヒンジとなる糊代22および該糊代22が貼着された外筒本体21の側端縁部に、内筒部3の上端縁の最下方となる左右端縁が位置するため、外筒部2の上方部分が前述したヒンジ回りに回動する際、内筒部3の上端縁と干渉することを防止することができる。また、外筒部2の外周面に凹凸が発生せず、外周面に広告宣伝を施す際に違和感が発生することがなく、意匠性に優れたものとなる。
【0030】
また、内筒部分に外筒部分を連設して二重の筒体を形成する場合のように、二回転(720度)させる必要がなく、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の紙缶容器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の紙缶容器を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図2のa部およびb部をそれぞれ拡大して示す断面図である。
【図4】図1の紙缶容器の上端側開口部を開放した状態を示す斜視図である。
【図5】図1の紙缶容器を構成する外筒部、内筒部、天面板、底面板の展開図である。
【図6】図1の紙缶容器の組立工程を示す説明図である。
【図7】図1の紙缶容器の組立工程を示す説明図である。
【図8】図1の紙缶容器の組立工程を示す説明図である。
【図9】図1の紙缶容器の組立工程を示す説明図である。
【図10】図1の紙缶容器の組立工程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 紙缶容器
2 外筒部
22 糊代
23 カーリング形成部
23A カーリング部
24 折り返し形成部
24A 折り返し部
2c 折り目(ヒンジ)
2d 切り裂き目
3 内筒部
4 天面板
5 底面板
52 折り返し形成部
52A 折り返し部
C 円筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端にカーリング部が、下端に内方に折り返し部がそれぞれ形成されるとともに、上部に略V字状の切り裂き目が両端接着部を除いて形成された外筒部と、外筒部の内周面に上端縁が略V字状の切り裂き目を越えるようにほぼ全周にわたって貼着された内筒部と、外筒部のカーリング部に貼着された天面板と、外筒部の折り返し部に周縁に形成された折り返し部が挾持されて貼着された底面板と、から構成され、外筒部が切り裂き目に沿って上方部分および下方部分に切り裂かれることによって、外筒部の両端貼着部分をヒンジとして、天面板を設けた外筒部の上方部分が外筒部の下方部分に対して回動可能であることを特徴とする紙缶容器。
【請求項2】
左右一側端縁に糊代が連設される一方、上端縁にカーリング形成部が、下端縁に折り返し形成部がそれぞれ折り目を介して連設されるとともに、糊代および左右他側端部を除いて上部に略V字状の切り裂き目が左右方向に形成された外筒部と、糊代を除く外筒部の幅に相当する長さの横寸法と外筒部に形成された切り裂き目の高さよりも大きな高さの縦寸法からなる略方形の内筒部と、円板状の天面板および周縁に折り目を介して折り返し形成部が折り目を介して連設された底面板とからなり、外筒部の内面に、上端縁が切り裂き目を越えるように内筒部を貼着した後、内筒部を貼着した外筒部を円筒状に巻回し、糊代をその他側端部に貼着して上下端部が開口された円筒体を形成し、次いで、底面板の折り返し形成部を折り返して折り返し部を形成するとともに、その折り返し部を外筒部に嵌挿して貼着した後、外筒部の折り返し形成部を内方に折り返して底面板の折り返し部に貼着し、さらに、外筒部のカーリング形成部を丸めてカーリング部を形成し、そのカーリング部に天面板を貼着することを特徴とする紙缶容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−254798(P2008−254798A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101017(P2007−101017)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【出願人】(000106885)シグマ紙業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】