説明

紙葉類の搬送装置

【課題】受入部に受け入れた紙葉類を簡易な構成で搬送通路に導入し、所定の回収部に搬送、収納することで、コストが安く信頼性が高い紙葉類の搬送装置を提供する
【解決手段】紙葉類10の搬送通路20と、紙葉類10の搬送方向に延設された突条部18a(17a)と、これと対向して間隙38を介して噛み合うように形成された摩擦部材35と、摩擦部材35を案内移動する搬送手段5とを備え、突条部18a(17a)と摩擦部材35により紙葉類10を両面側から挟持し、搬送手段5により紙葉類10を搬送する紙葉類の搬送装置1であって、搬送通路20に紙葉類10を導入する導入部50を備え、導入部50は、紙葉類10の導入通路55と、これにに続き搬送方向に沿って長く設けられ、摩擦部材35と隙間を介して噛み合うように形成され、搬送通路20に導入される紙葉類10が待機状態にあるときその先縁が位置する待機突条部51bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を搬送通路に導入して搬送する紙葉類の搬送装置に関する。この装置は、例えば、遊技場において複数並設されたパチンコ台等の遊技機の間に配設される複数のパチンコ玉等の遊技媒体貸出機に投入された紙幣をその背面側に配置される紙幣搬送通路に導入し、その搬送通路により遊技機列の一側端に設けられた両替機等の紙幣収納部へその紙幣を搬送する紙幣回収搬送装置に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の紙葉類の搬送装置としては、本出願人が出願し特許された特許第2940233号公報(特許文献1)や、先に出願公開された特開2002−83341号公報(特許文献2)に記載されるようなものが知られている。
ここで、特許文献1に記載される紙葉類の搬送装置は、複数箇所に設けられた紙幣の受入部に投入された紙幣が、鑑別後にその出口側の一時保留部にそれぞれ保留され、後にそれらの保留紙幣が所定の収納部に回収、収納される装置であって、各一時保留部と収納部とを接続して一方向に循環する無端状の搬送手段と、この搬送手段上の複数箇所に設けられ、搬送手段により循環し、各一時保留部を通過するときそこに保留中の紙幣を把持し、所定の収納部を通過するときその紙幣を解放して収納部に収納させる把持回収手段とを備えるものである。そして、このように構成される把持回収手段により、各受入部が受け入れた紙幣の回収が信頼性高く行える紙幣の回収装置を提供するものである。
【0003】
また、特許文献2に記載の紙葉類の搬送装置は、紙幣を搬送する主搬送部と、複数の受入部に投入された紙幣が、鑑別後に送出される副搬送部とを備え、その副搬送部に送出された紙幣が主搬送部に導入され紙幣回収部に搬送される装置であって、副搬送部は、その受入口に設けられ互いに対向する一対の回転体と、その一方の回転体を回転駆動する回転駆動手段と、他方の回転体を往復移動しその一対の回転体間の間隔の広狭を切り換える間隔切換手段と、を備え、その一対の回転体間の間隔が狭い状態に切り換わったとき、副搬送部に受け入れられた紙幣がその一対の回転体間に挟持されて主搬送部に導入され所定の紙幣回収部まで搬送されるものである。そして、このように構成される搬送装置は、回転駆動手段の回転・停止の切り換えを行うことなく、回転体間の間隔の広狭を切り換えることにより、副搬送部に受け入れられた紙幣を主搬送部に導入するか否かを切換可能とすることができるから、主搬送路と副搬送路をそれぞれ駆動する2つの駆動手段を用いることなく、駆動手段を一つとしてコストダウンと装置の小形が可能とするものである。
【特許文献1】特許2940233号公報
【特許文献2】特開2002−83341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載される紙幣の搬送装置においては、一方向に循環する無端状の搬送手段上の複数箇所に、各一時保留部を通過するときそこに保留中の紙幣を把持し、所定の収納部を通過するときその紙幣を解放して収納部に収納させる把持回収手段を備えるが、その一時保留部と把持回収手段が精度良く連係して機能する必要があるから、それらの構造が複雑でコストが高く、また把持回収手段が無端状の搬送手段上に突設されてその回りを回動するから、装置の稼動スペースが大きくなり、設置場所が限定される問題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載される紙幣の搬送装置においては、受入部に投入された紙幣が、鑑別後に副搬送部に送出されるが、その副搬送部は一対の回転体と、回転体を一つの駆動手段に連結する駆動連結手段と、一対の回転体間の間隔の広狭を切り換える間隔切換手段等を備えるから、その構造が複雑である。また、この副搬送部に送出される紙幣は、一対の回転体により挟まれて主搬送部に導入可能な位置に送出される必要があるから、その送出位置を制御する制御手段が必要である。すなわち、その構成が複雑でコストが高い問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題に対応するため、簡易な構成で、受入部に投入された紙葉類を搬送通路に導入し、所定の回収部に搬送、収納することで、コストが安く、信頼性が高い紙葉類の搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、紙葉類を搬送する搬送通路と、前記搬送通路に設けられ、前記紙葉類の搬送方向に延びて形成された突条部と、前記突条部と対向してそれと間隙を介して噛み合うように形成された摩擦部材と、前記摩擦部材を案内移動する搬送手段と、を備え、前記突条部と前記摩擦部材により前記紙葉類を両面側から押圧するように挟持し、前記搬送手段により前記摩擦部材を案内移動することで前記紙葉類を前記搬送通路に沿って搬送する紙葉類の搬送装置であって、前記搬送通路に前記紙葉類を導入する導入部を備え、前記導入部は、前記搬送通路に合流し、前記紙葉類を導入する導入通路と、前記導入通路に続いて前記紙葉類の搬送方向に沿って長く設けられ、前記摩擦部材と対向してそれと隙間を介して噛み合うように形成され、前記導入通路から前記搬送通路に導入される前記紙葉類が待機状態にあるときその先縁が位置する待機突条部とを、備えたものである。
【0008】
これによれば、前記紙葉類の先縁が前記待機突条部に位置して待機状態にあるとき、前記摩擦部材を前記搬送手段により案内移動し、前記紙葉類を前記待機突条部と前記摩擦部材により両面から押圧するように挟持して前記搬送通路に導入し、搬送することができる。また、前記待機状態にある前記紙葉類は、その先縁が前記紙葉類の搬送方向に沿って長く設けられる前記待機突条部の何れの位置にあっても、前記搬送手段に案内移動される前記摩擦部材により前記搬送通路に導入することができる。
【0009】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の紙葉類の搬送装置において、前記待機突条部は、前記摩擦部材に対する突出高さを、前記突条部より低く形成したものである。
これによれば、前記待機突条部と前記摩擦部材により前記紙葉類を両面側から押圧するときの押圧力を、前記突条部と前記摩擦部材により前記紙葉類を両面側から押圧するときの押圧力より小さくすることができる。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の紙葉類の搬送装置において、前記紙葉類を前記待機状態に保持する待機保持手段を備え、前記待機保持手段による前記紙葉類の保持力は、前記待機状態にある前記紙葉類が前記待機突条部と前記摩擦部材に挟持されるときに生じる搬送力より大きく、前記紙葉類が前記突条部と前記摩擦部材に挟持されて前記搬送通路を搬送されるときに生じる搬送力より小さく設定されるものである。
【0011】
これによれば、待機状態にある前記紙葉類を前記待機保持手段により待機状態に保持し、前記待機状態から前記搬送通路に導入された前記紙葉類を確実に前記搬送通路に沿って搬送することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、紙葉類の先縁が待機突条部に位置して待機状態にあるとき、摩擦部材を搬送手段により案内移動し、その紙葉類を待機突条部と摩擦部材により両面から押圧するように挟持して搬送通路に導入し、搬送することができるから、上述のように複雑な構成の一時保留部や、保留紙幣を導入駆動する回転体等を必要とせず、簡易な構成で、受入部等に投入された紙葉類を確実に搬送通路に導入し、所定の回収部に搬送、収納することができる。したがって、コストが安く、信頼性が高い紙葉類の搬送装置を提供することができる。また、待機状態にある紙葉類は、その先縁が紙葉類の搬送方向に沿って長く設けられる待機突条部の何れの位置にあっても、搬送手段に案内移動される摩擦部材により搬送通路に導入することができるから、例えば、受入部等に投入された紙幣が、その鑑別後にこの搬送装置の導入部に送出されて待機状態に置かれる場合に、その導入部への送出位置にバラツキがあっても搬送手段に案内移動される摩擦部材により確実に搬送通路に導入することができる。すなわち、紙幣の導入部への精緻な送出制御手段等が不要でコストを安くすることができる。
【0013】
また、請求項2に係る発明によれば、待機突条部と摩擦部材により紙葉類を両面側から押圧するときの押圧力を、突条部と摩擦部材により紙葉類を両面側から押圧するときの押圧力より小さくすることができるから、紙葉類の先縁を待機突条部に位置させて待機状態ある紙葉類に生じる搬送力を小さくし、搬送通路において搬送状態にある紙葉類に生じる搬送力を大きくすることができる。したがって、待機状態の紙葉類を比較的に小さな保持力で容易に保持し、搬送状態の紙葉類を大きな搬送力で確実に搬送することができるから、信頼性の高い紙葉類の搬送装置を提供することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明によれば、待機状態にある紙葉類を待機保持手段により待機状態に保持し、待機状態から搬送通路に導入された紙葉類を確実に搬送通路に沿って搬送することができるから、その動作を確実にすることができる信頼性の高い紙葉類の搬送装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置1を適用するもので、遊技場において複数並設された遊技機(パチンコ台等)75の間に配置される複数の遊戯媒体(パチンコ玉等)貸出機70に投入された紙幣を回収し、その遊技機75列の一方端側に設けられた紙幣収納部(両替機等)76へその紙幣を搬送する装置を備えたいわゆる遊技島80を模式的に示す斜視図である。また、図2はこの遊技島80の構成を示す概略平面図である。このように構成される遊技島80において、遊技媒体貸出機70の紙幣挿入口71(図1)に挿入された紙幣は、その内部に設けられた図示しない紙幣識別機により真贋等が識別され、適正と判別されればその背面側の紙幣導入部50(図2)に送出される。紙幣導入部50に送出された紙幣は、遊技機75列に沿ってその背面側に延設された紙葉類の搬送装置1の紙幣搬送路3に取り込まれ、遊技機75列の一方端側に設けられた紙幣収納部76に向けて搬送され、収納される。
【0016】
図3は、遊技機75列に沿ってその背面側に延設される紙幣搬送路3の概略構造を示す側断面図、図4は同様の紙幣搬送路3の概略構造を示す正面図である。この紙幣搬送路3の内部には、その幅の略中央部に一方向に循環する無端状のチェーン5が配設されている。この無端状のチェーン5は、遊技島80の一方端側に設けられた駆動スプロケット6と、これと離間して他方側に配置された一対の従動スプロケット7に巻き掛けられて架設されている。ここで、一対の従動スプロケット7は、スライド自在に設けられた案内部材8に回動自在に取り付けられ、さらにこの案内部材8は無端状のチェーン5の内側に設けられたスプリング9によってその外側に向けて付勢されている。これにより、無端状のチェーン5はこれらの駆動スプロケット6、従動スプロケット7間に緩みなく架設される。そして、その駆動スプロケット6により一方行に循環駆動される。
【0017】
また、この紙幣搬送路3は、無端状のチェーン5を案内する後述の案内レール部12、13を上下に備えたメインフレーム11と、メインフレーム11の上方にこれと平行に配設された上フレーム15と、これらを挟むようにその両側に設けられた一対の通路側板17、18とによって略方形に形成され、その両側の通路側板17、18の内側に沿って紙幣を搬送する紙幣通路20がその両側に形成されている。
【0018】
メインフレーム11は、上構造部11aと下構造部11bとこれらを連結する連結プレート部11c等から構成されている。上部構造部11aは断面が略角筒状に形成され、その上部に無端状のチェーン5を案内する断面が略方形の案内レール部12が設けられ、その両側部には通路側板17、18を装着する側板装着部22と、紙幣10を搬送する紙幣通路20の下端面を形成するリブ部23が設けられている。下部構造部11bには、上構造部11aの案内レール部12と上下方向に対称に案内レール部13が設けられ、その側部に、案内レール部13を走行する無端状のチェーン5等を覆うカバー部材26を装着するためのカバー装着部24が設けられている。また、上構造部11aと下構造部11bを連結する連結プレート部11cの両側には、このメインフレーム11を搬送路支持部材等を介して遊技島80の基台等に取り付けるジョイント案内部25が設けられている。
【0019】
上フレーム15は断面が略角筒状に形成され、その上部両側に通路側板17、18を取り付ける取付部28が設けられ、その下方に紙幣通路20の上端面および上部側面を形成するリブ部29、30が設けられている。また、この上フレーム15の上端部にはこれを支持部材等を介して遊技島80の基台等に取り付けるためのジョイント案内リブ31が設けられている。
【0020】
紙幣搬送路3の両側の通路側板17、18は、メインフレーム11と上フレーム15を挟んで向き合うように設けられ、その内壁に紙幣通路20に突出するように複数の突条部17a、18aが紙幣の搬送方向に沿って延設されている。また、この突条部17a、18aの一つは、後述の摩擦部材35の作用部36と隙間38を介して噛み合うように配置され、紙幣通路20を搬送される紙幣10がこれらにより両面側から押圧される。すなわち、この突条部17a、18aの一つは、紙幣10が、安定に摩擦部材35の作用部36に当接して搬送されるように機能する。
【0021】
図5は、紙幣搬送路3内を一方向に循環する無端状のチェーン5を構成するリンク40を示すもので(a)はその正面図、(b)はその平面図である。図に示すように、このチェーン5を構成するリンク40は一対のリンクプレート41を結合して双胴船型に形成されている。このリンクプレート41の一方端部にはフック部41aが形成されている。また、他方端部には、両リンクプレート41間に駆動スプロケット6および従動スプロケット7と噛み合うブッシュローラー43が配設され、さらにその両外側に案内ローラー45が配設されて、これらが支軸46により回転自在に支持されている。そして、図中に実線と二点鎖線とで表示したように、隣り合うリンク40、40がそれぞれのフック部41aと支軸46とを係合させてループ状に連結されている。また、リンク40中央の結合部42上面には凹部47を有して突出形成された装着部48が設けられている。そして、この装着部48の凹部47に後述の摩擦部材35に凸状に設けられた連結部37が着脱可能に装着される。なお、摩擦部材35を装着しないリンク40には、装着部48を設けないものを使用してもよい。
【0022】
このように構成される無端状のチェーン5は、水平方向を長手方向とする細長いループを形成して紙幣搬送路3内に張設される。そして、この無端状のチェーン5の細長いループは、図3、図4に示すように、その上側の部分と下側の部分がそれぞれメインフレーム11の上構造部11aと下構造部11bに設けられる案内レール部12、13によって支持、案内され、その両端部分が駆動スプロケット6、および一対の従動スプロケット7に噛み合うように架設される。またこの無端状のチェーン5は、各リンク40の案内ローラー45が案内レール部12、13の各辺内面よって案内され、それが転動することにより案内レール部12、13内を円滑に走行する。
【0023】
図6は、無端状のチェーン5のリンク40に装着される摩擦部材35を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はその下面図である。この摩擦部材35は両側に作用部36を備えて略コ字状に形成され、その中央部に無端状のチェーン5を構成するリンク40の装着部48に設けられた凹部47に挿入される凸状の連結部37が設けられている。そして、この連結部37をリンク40の凹部47に挿入し、その両側の爪部37aをリンク40の装着部48の外側に係合させることにより、摩擦部材35はリンク40に着脱自在に装着される。なお、連結部37とともにその中央部の他方端側に凸状に設けられる支柱部39は、摩擦部材35の作用部36とリンク40の間隔を適当に保持するための案内部である。
【0024】
摩擦部材35両側の作用部36は、紙幣通路20を搬送される紙幣10と当接して摩擦力を生じるウレタンゴム等の摩擦材料からなり、その中央に形成される溝部36aは通路側板17、18に形成される突条部17a、18aと対向し、これと隙間38を介して噛み合うように形成されている。すなわち、このような構成によれば、紙幣通路20を搬送される紙幣10が、この作用部36と突条部17a、18aにより挟み込まれて波型状に変形すると紙幣10が作用部36に押圧され、それにより生じる摩擦力を安定させて、紙幣10の搬送を確実に行うことができる。なお、この摩擦部材35は、無端状のチェーン5のリンク40に搬送紙幣の長さより短い所定の間隔で装着される。
【0025】
図7は、遊技媒体貸出機70の紙幣挿入口71に挿入された紙幣が、その内部の図示しない紙幣識別機により適正と判別されて送出される紙幣導入部50の構造を示す平面断面図である。図に示すように、この紙幣導入部50は、通路側板18(17)と並んで配設されて紙幣通路20の側壁を構成する導入部本体51と、その外側に設けられた導入部カバー52等かなり、導入部本体51と導入部カバー52の間に、遊技媒体貸出機70から送出される紙幣10を紙幣通路20に導く紙幣導入通路55が形成されている。この紙幣導入通路55は、遊技媒体貸出機70から送出される紙幣10の向きを紙幣通路20に沿って略直角に変更し、紙幣10をその紙幣通路20に合流するように案内する。また、紙幣導入通路55と紙幣通路20の合流部付近には、それらの通路に突出しかつ紙幣10の搬送方向に回動自在に設けられた検知レバー56を備え、紙幣10がその位置を通過するとき検知レバー56がその紙幣10に押されて搬送方向に回動し、その回動により紙幣10の通過を検知する紙幣搬送検知センサ53が配置されている。
【0026】
また、紙幣導入部50には、通路側板18(17)に設けられた突条部18a(17a)に続きそれを延設するように導入突条部51aが設けられている。そして、この導入突条部51aには紙幣導入通路55と紙幣通路20の合流部から紙幣搬送方向に向かう所定の区間において、その高さが、通路側板18(17)の突条部18a(17a)よりも低く形成された導入待機部51bが設けられている。ここで、この紙幣搬送路3においては、遊技媒体貸出機70の紙幣識別機により適正と判別され紙幣導入部50に送出された紙幣10がエスクロ(返却可能)状態にあるとき、その紙幣10の先縁は、この導入待機部51bが形成された範囲に位置して、一時保留されるように構成されている。そして、遊技媒体貸出機70から紙幣導入部50に送出された紙幣10の先端がこのように導入待機部51bに位置する場合は、その紙幣10の先端部が摩擦部材35の作用部36と導入待機部51bにより挟まれてその搬送方向に搬送力を生じるが、その搬送力は、通路側板18(17)の突条部18a(17a)と同じ高さに形成される導入突条部51aの位置にある紙幣に生じるものより小さい。したがって、遊技媒体貸出機70の本体に設けられる例えば紙幣保持ローラー70a等により、この比較的に小さな搬送力に対応する力で挟持して、紙幣10を容易にその位置に保持することができる。また、この紙幣の紙幣保持ローラー70aによる挟持を解消しその一時保留状態を解除(すなわちエスクロ状態を解除)すれば、その紙幣10に生じる前述の比較的小さな搬送力により紙幣10が搬送方向に徐々に搬送される。そして、通路側板18(17)の突条部18a(17a)と同じ高さに形成される導入突条部51aの位置に到達すると、その搬送力が増して比較的大きなものとなり紙幣10の搬送を確実に行うことができる。
【0027】
以上のような紙幣類の搬送装置1を備える遊技島80において、遊技媒体貸出機70の紙幣挿入口71に挿入された紙幣10は、その内部に設けられた紙幣識別機により真贋等が識別され、適正と判別されたときはその背面側の紙幣導入部50に送出され、エスクロ状態で一時保留される。そして、パチンコ玉等の遊技媒体が遊技媒体貸出機70から貸し出されると、紙幣10のエスクロ状態が解除され、紙幣導入部50に一時保留された紙幣10は、遊技機75列に沿ってその背面側に延設された紙幣搬送路3の紙幣通路20に摩擦部材35により取り込まれる。さらに紙幣通路20に取り込まれた紙幣10は、遊技機75列の一方端に向けて搬送され、その端部に設けられた両替機等の紙幣収納部76収納される。このようにして、遊技場において複数並設されたパチンコ台等の遊技機75の間に配設される複数のパチンコ玉等の遊技媒体貸出機70に投入された紙幣10を回収し、その遊技機75列の一側端に設けられた両替機等の紙幣収納部76へその紙幣を搬送、収納する。
【0028】
以上のように、本発明の紙葉類の搬送装置1によれば、紙幣10の先縁を導入待機部51b(待機突条部)に位置させ、さらに遊技媒体貸出機70(紙幣保持ローラ70a)による一時保留状態を解除すれば、摩擦部材35を無端状のチェーン5(搬送手段)により案内移動し、その紙幣10を導入待機部51bと摩擦部材35により両面から押圧するように挟持して紙幣通路20に導入し、搬送することができるから、複雑な構成の一時保留部や、保留状態の紙幣を紙幣通路20に導入する特別な駆動手段等を必要とせず、簡易な構成で、遊技媒体貸出機70の紙幣挿入口71(受入部等)に投入された紙幣を確実に紙幣通路20に導入し、紙幣収納部76(回収部)に搬送、収納することができる。したがって、コストが安く、信頼性が高い紙葉類の搬送装置を提供することができる。また、遊技媒体貸出機70から紙幣導入部50に送出される紙幣10は、その先縁が紙幣10の搬送方向に沿って長く設けられる導入待機部51bの何れの位置にあっても、無端状のチェーン5に案内移動される摩擦部材35により紙幣通路20に導入することができるから、遊技媒体貸出機70の紙幣挿入口71に投入された紙幣の紙幣導入部50への送出位置にバラツキがあっても無端状チェーン5に案内移動される摩擦部材35により確実に紙幣通路20に導入することができる。すなわち、紙幣の紙幣導入部50への精緻な送出制御手段等が不要であるからコストを安くすることができる。また、搬送装置の設置場所等の違いにより、遊技媒体貸出機70と紙幣導入部50の間隔が設置場所毎に異なり、遊戯媒体貸出機70から紙幣導入部50に送出される紙幣10の送出量が異なる場合も、紙幣10の先縁が導入待機部51bの何れかの位置に送出されれば、その紙幣10を摩擦部材35により確実に紙幣通路20に導入し、搬送することができるから、装置の設置が容易な紙葉類の搬送装置を提供することができる。
【0029】
また、導入待機部51bは、摩擦部材35に対する突出高さを、突条部18a(17a)より低く形成するから、導入待機部51bと摩擦部材35により紙幣10を両面側から押圧するときの押圧力を、突条部18a(17a)と摩擦部材35により紙幣10を両面側から押圧するときの押圧力より小さくすることができる。したがって、紙幣10の先縁を導入待機部51bに位置させて一時保留状態にある紙幣10に生じる搬送力を小さくし、紙幣通路20において搬送状態にある紙幣10に生じる搬送力を大きくすることができる。すなわち、一時保留状態の紙幣10を比較的に小さな保持力で容易に保持し、搬送状態の紙幣10を大きな搬送力で確実に搬送することができるから、信頼性の高い紙葉類の搬送装置を提供することができる。
【0030】
また、遊技媒体貸出機70は、紙幣10を一時保留状態に保持する紙幣保持ローラー70a等を備え、この紙幣保持ローラー70a等による紙幣10の保持力は、一時保留状態にある紙幣10が導入待機部50bと摩擦部材35に挟持されるときに生じる搬送力より大きく、紙幣10が突条部18a(17a)と摩擦部材35に挟持されて紙幣通路20を搬送されるときに生じる搬送力より小さく設定されるから、一時保留状態にある紙幣10を紙幣保持ローラー70a等により一時保留状態に保持し、一時保留状態から紙幣通路20に導入された紙幣10を確実に紙幣通路20に沿って搬送することができる。すなわち、紙幣10の搬送操作を確実にすることができる信頼性の高い紙葉類の搬送装置を提供することができる。
【0031】
なお、本発明は、言うまでもなく本実施の形態に示す装置にのみ限定されず、その趣旨の包含する範囲で応用変更が可能である。例えば、遊技媒体貸出機70から紙幣導入部50に送出される紙幣10を一時保留状態に保持する保持手段は、遊技媒体貸出機70に設けられる紙幣保持ローラー70aに限らず他の方法であっても良い。また、摩擦部材35と隙間を介して噛み合うように設けられる突条部17a(18a)や導入突条部51a、導入待機部51bは、1条のみならず複数条を並べて紙幣の搬送方向に延設しても当然に良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置を適用するもので、遊技場において複数並設された遊技機(パチンコ台等)の間に配置される複数の遊戯媒体(パチンコ玉等)貸出機に投入された紙幣を回収し、その遊技機列の一方端側に設けられた紙幣収納部(両替機等)へその紙幣を搬送する装置を備えたいわゆる遊技島を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置を適用する遊技島の構成を示す概略平面図である。
【図3】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置において遊技機列に沿ってその背面側に延設される紙幣搬送路の構造を示す側断面図である。
【図4】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置において遊技機列の背面側に延設される紙幣搬送路を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置において紙幣搬送路内を一方向に循環する無端状のチェーンを構成するリンクを示すもので(a)はその正面図、(b)はその平面図である。
【図6】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置において無端状のチェーンのリンクに装着される摩擦部材を示すもので、(a)はその正面図、(b)はその側面図、(c)はその下面図である。
【図7】本発明の実施形態の紙葉類の搬送装置において、遊技媒体貸出機の紙幣挿入口に挿入された紙幣が、その内部の紙幣識別機により適正と判別されて送出される紙幣導入部の構造を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 紙葉類の搬送装置
3 紙幣搬送路
5 チェーン(搬送手段)
10 紙幣(紙葉類)
11 メインフレーム
12 案内レール部
15 上フレーム
17 通路側板
17a 突条部
18 通路側板
18a 突条部
20 紙幣通路(搬送通路)
35 摩擦部材
36 作用部
36a 溝部
50 紙幣導入部(導入部)
51 導入部本体
51b 導入待機部(待機突条部)
55 紙幣導入通路(導入通路)
70 遊技媒体貸出機
70a 紙幣保持ローラ(待機保持手段)
80 遊技島


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を搬送する搬送通路と、前記搬送通路に設けられ、前記紙葉類の搬送方向に延びて形成された突条部と、前記突条部と対向してそれと間隙を介して噛み合うように形成された摩擦部材と、前記摩擦部材を案内移動する搬送手段と、を備え、前記突条部と前記摩擦部材により前記紙葉類を両面側から押圧するように挟持し、前記搬送手段により前記摩擦部材を案内移動することで前記紙葉類を前記搬送通路に沿って搬送する紙葉類の搬送装置であって、
前記搬送通路に前記紙葉類を導入する導入部を備え、前記導入部は、前記搬送通路に合流し、前記紙葉類を導入する導入通路と、前記導入通路に続いて前記紙葉類の搬送方向に沿って長く設けられ、前記摩擦部材と対向してそれと隙間を介して噛み合うように形成され、前記導入通路から前記搬送通路に導入される前記紙葉類が待機状態にあるときその先縁が位置する待機突条部とを、備えたことを特徴とする紙葉類の搬送装置。
【請求項2】
前記待機突条部は、前記摩擦部材に対する突出高さを、前記突条部より低く形成したことを特徴とする請求項1に記載の紙葉類の搬送装置。
【請求項3】
前記紙葉類を前記待機状態に保持する待機保持手段を備え、前記待機保持手段による前記紙葉類の保持力は、前記待機状態にある前記紙葉類が前記待機突条部と前記摩擦部材に挟持されるときに生じる搬送力より大きく、前記紙葉類が前記突条部と前記摩擦部材に挟持されて前記搬送通路を搬送されるときに生じる搬送力より小さく設定されることを特徴とする請求項1または2に記載の紙葉類の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−213955(P2008−213955A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49476(P2007−49476)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】