説明

紙葉類供給装置

【課題】より効率よく重送を防止することが可能な紙葉類供給装置の提供を目的とする。
【解決手段】紙葉類供給装置1は、給紙部2と、給紙部2の下方に設けられ、複数の紙葉類を載置する給紙台6と、給紙台6上の最上位の紙葉類が給紙部に達する位置まで給紙台3を上昇させる移送手段6と、給紙部2の下方に設けられ、給紙台3上の紙葉類10の前端縁を当接させる突き当てガイド5と、給紙部2による紙葉類10の搬送面より下方であって、少なくとも給紙台3上の紙葉類10の載置幅範囲内に、複数の紙葉類10の前端縁を予備的に捌くための予備捌き部4とを備え、前記予備捌き部4は、突き当てガイド5における給紙台3の上昇経路に配設され、給紙台3が上昇する際給紙台3上の紙葉類10の前端縁が干渉する干渉部材8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、孔版印刷機等において給紙台上に載置された複数の紙葉類を最上位の紙葉類から1枚ずつ印刷処理部へ供給する紙葉類供給装置として、下記特許文献1には紙葉類に摺接する補助摺接面を有する補助捌き部材を固定部材で支持して給紙ローラ間に配設する技術が開示され、これにより紙葉類の重送を防ぐとともに、厚紙や葉書等の厚手の紙葉類を印刷する際にも紙面を傷めることなく給紙できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−145595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の紙葉類供給装置では、複数の給紙ローラの間に補助捌き部材が配設されているため補助捌き部材の作用する紙葉類の箇所と給紙ローラによる搬送の作用する箇所とが略隣り合わせに存在することとなり、紙葉類を分離する際紙葉類にかかる力を分散することが可能となるが、効率よく重送を防止することができない。
【0005】
また、一般に紙葉類は、製紙工場において所定の大きさに裁断される際、裁断面に若干の裁断バリを生じることがあるが、この裁断バリによって紙葉類の端部は裁断刃の通過した方向に若干撓んだものとなる。この結果、上下に積層された複数の紙葉類をより密着させ、最上位にある紙葉類を1枚ずつ分離して搬送することが困難となりやすく、重送の問題が生じやすくなる。かかる裁断バリを有する紙葉類については、上記特許文献1に記載の紙葉類供給装置を用いた場合にも同様に効率よく1枚ずつ搬送することが困難となっている。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、より効率よく重送を防止することが可能な紙葉類供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の紙葉類供給装置は、紙葉類を給紙する給紙手段と捌き部材とを備えた給紙部と、給紙部の下方に設けられ、複数の紙葉類を載置する給紙台と、給紙台上の最上位の紙葉類が給紙部に達する位置まで給紙台を上昇させる移送手段と、給紙部の下方に設けられ、給紙台上の紙葉類の前端縁を当接させる突き当てガイドと、給紙部による紙葉類の搬送面より下方であって、少なくとも給紙台上の紙葉類の載置幅範囲内に、複数の紙葉類の前端縁を予備的に捌くための予備捌き部とを備え、前記予備捌き部は、突き当てガイドにおける給紙台の上昇経路に配設され、給紙台が上昇する際給紙台上の紙葉類の前端縁が干渉する干渉部材を備えている。
【0008】
また、請求項2に記載の紙葉類供給装置は、前記構成において、予備捌き部が、給紙部における給紙手段の設置幅範囲内に設けられているものである。
【0009】
そして、請求項3に記載の紙葉類供給装置は、前記各構成において、予備捌き部が可撓性材料により構成されているものである。
【0010】
更に、請求項4に記載の紙葉類供給装置は、前記各構成において、予備捌き部が基部に設けられた複数の鉤状突起部を備えているものである。
【0011】
更に、請求項5に記載の紙葉類供給装置は、前記構成において、鉤状突起部が略下方に向けて湾曲した下方向湾曲突起部と、略上方に向けて湾曲した上方向湾曲突起部とを備えているものである。
【0012】
更に、請求項6に記載の紙葉類供給装置は、前記各構成において、予備捌き部が基部に設けられた少なくとも鉤状、玉状又は鏃状のいずれか1つの突起部を備えてなる面ファスナーにより構成されているものである。
【0013】
更に、請求項7に記載の紙葉類供給装置は、前記各構成において、突き当てガイドの所定箇所に、前記突き当てガイドの紙葉類の当接面より所定深さ陥没した陥没部を設け、前記陥没部の内部に予備捌き部を構成する基部の少なくとも下端縁が収容されているものである。
【0014】
更に、請求項8に記載の紙葉類供給装置は、前記各構成において、給紙手段が複数の給紙ローラを備えており、捌き部材は前記複数の給紙ローラのうち少なくとも1つの給紙ローラに摺接するよう設置され、更に、複数の給紙ローラの間に紙葉類を補助的に捌く補助捌き部材を配設したものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の紙葉類供給装置によれば、給紙部と、給紙台と、給紙台を上昇させる移送手段と、紙葉類の前端縁を当接させる突き当てガイドとを備え、更に給紙部による紙葉類の搬送面より下方であって、少なくとも給紙台上の紙葉類の載置幅範囲内に、複数の紙葉類の前端縁を予備的に捌くための予備捌き部を備えてなり、前記予備捌き部は、突き当てガイドにおける給紙台の上昇経路に配設され、給紙台が上昇する際給紙台上の紙葉類の前端縁が干渉する干渉部材を備えたので、給紙台上の紙葉類を移送手段の作用によって上昇する際に、予備捌き部が少なくとも給紙台上の紙葉類の載置幅範囲内となる紙葉類の前端縁を予め上下方向に1枚ずつ分離し、空気を含ませて捌くことができ、効率よく紙葉類の重送を防止することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の紙葉類供給装置によれば、予備捌き部が、給紙部における給紙手段の設置幅範囲内に設けられているので、予備捌き部が紙葉類を分離する箇所と給紙手段による搬送の作用する箇所とが同じ範囲内となるために、より効率よく1枚ずつ紙葉類を供給することができ、紙葉類の他の箇所は密着した状態である場合にも、給紙手段に接触する紙葉類の前端縁の所定箇所が予備捌き部によって予め空気を含んだ状態であるために、紙葉類を1枚ずつ搬送できるようになる。
【0017】
また、請求項3に記載の紙葉類供給装置によれば、予備捌き部が可撓性材料により構成されているので、予備捌き部が柔軟に変形し、効率よく紙葉類を捌くことができる。
【0018】
そして、請求項4に記載の紙葉類供給装置によれば、予備捌き部が基部に設けられた複数の鉤状突起部を備えているので、鉤状突起部が紙葉類の前端縁を引き掻き、上下に密着し積層された紙葉類を鉤の先端によって容易に分離し上下の紙葉類の間に空気を含ませて捌くことができる。
【0019】
更に、請求項5に記載の紙葉類供給装置によれば、鉤状突起部が下方に向けて湾曲した下方向湾曲突起部と、上方に向けて湾曲した上方向湾曲突起部とを備えているので、紙葉類の前端縁が、給紙台と平行な面より上方に向かって撓んだ裁断バリを有する紙葉類が給紙台上に載置された場合、及び逆に給紙台と平行な面より下方に向かって撓んだ裁断バリを有する紙葉類のいずれの場合であっても効率よく紙葉類を上下方向に分離することができる。
【0020】
更に、請求項6に記載の紙葉類供給装置によれば、予備捌き部が基部に設けられた少なくとも鉤状、玉状又は鏃状のいずれか1つの突起部を備えてなる面ファスナーにより構成されているので、安価な市販品を所定長さや所定形状に裁断し、接着剤等により容易に設置面に設置可能であるので、製造コストを低減可能であるとともに、製造時間及び製造の際の手間を少なくすることができる。
【0021】
更に、請求項7に記載の紙葉類供給装置によれば、突き当てガイドの所定箇所に、前記突き当てガイドの紙葉類の当接面より所定深さ陥没した陥没部を設け、前記陥没部の内部に予備捌き部を構成する基部の少なくとも下端縁が収容されているので、移送手段により給紙台が上昇され、予備捌き部の下部に紙葉類が下方から接触する際に、陥没部の内部にある予備捌き部の下端縁に紙葉類が直接触れることなく、徐々に予備捌き部に接触し、予備捌き部が剥離したり、逆に紙葉類が破損したり皺を形成したりするのを防止することができる。
【0022】
更に、請求項8に記載の紙葉類供給装置によれば、給紙手段が複数の給紙ローラを備えており、捌き部材は前記複数の給紙ローラのうち少なくとも1つの給紙ローラに摺接するよう設置され、更に、複数の給紙ローラの間に紙葉類を補助的に捌く補助捌き部材を配設したので、給紙台が上昇する際予備捌き部により紙葉類の前端縁を上下方向に分離するとともに、紙葉類が給紙部に至った後は紙葉類の搬送面において紙葉類が給紙ローラと捌き部材との間を通過するに際して、給紙ローラ間において補助捌き部が紙葉類に湾曲した部位を形成して紙葉類どうしの離間を促して重送を更に効率よく防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る紙葉類供給装置の要部を示す斜視図である。
【図2】前記紙葉類供給装置の正面図である。
【図3】図2におけるA−A矢視断面図である。
【図4】前記紙葉類供給装置の予備捌き部の斜視図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る紙葉類供給装置の正面図である。
【図6】前記紙葉類供給装置の使用態様図である。
【図7】前記紙葉類供給装置の使用態様図である。
【図8】前記紙葉類供給装置の使用態様図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態に係る紙葉類供給装置の使用態様図である。
【図10】従来の紙葉類供給装置の使用態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る紙葉類供給装置の要部を示す斜視図、図2は前記紙葉類供給装置の正面図、図3は図2におけるA−A矢視断面図、図4は前記紙葉類供給装置の予備捌き部の斜視図である。各図において、この実施形態に係る紙葉類供給装置1は、孔版印刷機等における紙葉類供給部であって、給紙台3上に積み重ねられた紙葉類10を上から1枚ずつ分離して搬送するものである。紙葉類供給装置1は、給紙部2と、給紙台3と、移送手段6と、突き当てガイド5と、予備捌き部4とを備えている。
【0025】
給紙部2は、給紙手段23を構成する回転軸21に固定され並設された3つの給紙ローラ22と、中央の給紙ローラ22aの下方に設けられ、図3に示すように、給紙ローラ22aの外周面に摺接する捌き部材24と、捌き部材24を支持し、捌き部材24の給紙ローラ22aの外周面への接触圧力を調整する接触圧力調整機構25と、各給紙ローラ22の間に配設された紙葉類10を補助的に捌くための補助捌き部材26とを備えている。
【0026】
給紙台3は、給紙部2の下方に設けられ、複数の紙葉類10が載置される。図3に示すように、給紙台3は紙葉類10の後端縁より前端縁の方(図3において右方)が低くなるよう水平方向より若干傾斜して設けられている。
【0027】
図1に示すように、移送手段6は、給紙台3上の最上位の紙葉類10aが給紙部2に達し給紙ローラ22に当接する位置まで給紙台3を上昇するとともに、給紙部2によって1枚ずつ給紙台3上の紙葉類10を搬送する際、常に最上位の紙葉類10aが給紙ローラ22に当接するよう徐々に給紙台3を上昇させるものである。更に、給紙部2による紙葉類10の供給を終了し給紙台3上に紙葉類10が載置されなくなった状態では所定の待機位置まで給紙台3を下降するものである。
【0028】
突き当てガイド5は、給紙部2の下方に設けられ、給紙台3に対し略直交する向きに形成された板状部材により構成されている。そして、該突き当てガイド5には上述した給紙台3の傾斜によって容易に給紙台3上の複数の紙葉類10の前端縁が当接するようになっている。
【0029】
突き当てガイド5の高さ方向及び幅方向中央部には、突き当てガイド5の紙葉類10の当接面より所定深さ陥没した正面視略矩形状の陥没部52を設けている。陥没部52には、捌き部材24の給紙ローラ22aへの接触圧力を調整する接触圧力調整ダイヤル53を設けており、接触圧力調整ダイヤル53は接触圧力調整機構25に連動しており、該接触圧力調整ダイヤル53を時計回りまたは反時計回りに回動することで接触圧力調整機構25に作用し捌き部材24の給紙ローラ22aへの押圧力を調整するようになっている。
【0030】
予備捌き部4は、給紙部2による紙葉類10の搬送面より下方に設けられている。紙葉類10の搬送面とは、給紙ローラ22と捌き部材24との間に紙葉類10を1枚ずつ挟持し給紙ローラ22の回転により紙葉類10を搬送する際の該紙葉類10の通過する面である。そして、図3に示すように、予備捌き部4は突き当てガイド5の紙葉類10の前端縁の当接面の上部に設けている。
【0031】
また、図2に示すように、予備捌き部4は、正面から見て少なくとも給紙台3上の紙葉類10の載置幅T範囲内に設けられ、好ましくは、給紙部2を構成する3個の給紙ローラ22の設置幅U範囲内に設けられ、より好ましくは、予備捌き部4は、給紙部2を構成する中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲内に設けられており、更に好ましくは、中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲と、捌き部材24の設置幅V範囲の双方の設置幅の重複範囲内に設けられている。
【0032】
図1〜3では、予備捌き部4全体の設置幅Yが中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲と捌き部材24の設置幅V範囲の双方の設置幅より小さい範囲に設けられた例を示しているが、必ずしもこれに限定されず、予備捌き部4の設置幅Yの範囲と、少なくとも給紙台3上の紙葉類の載置幅T範囲との間に少しでも重複する範囲があればよく、好ましくは、給紙部2を構成する少なくとも3個の給紙ローラ22の設置幅U範囲との間に重複する範囲があればよく、より好ましくは、中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲との間に重複する範囲があればよく、更に好ましくは、中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲と、捌き部材24の設置幅V範囲の双方の設置幅との間に重複する範囲があればよい。
【0033】
即ち、例えば、図2において2点差線で示すように、予備捌き部4Aが中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲と、捌き部材24の設置幅V範囲の双方の設置幅より大きく、紙葉類10の幅と略同じ程度の幅を有していてもよく、図5(a)に示すように、各給紙ローラ22a,22b,22cの下方に各々1つずつ合計3個の予備捌き部4a,4b,4cを設けてもよく、更に、図5(b)に示すように、中央の給紙ローラ22aの下方に上下2段に分けて予備捌き部4d,4eを設けてもよい。
【0034】
更に、好ましい形態としての中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲と、捌き部材24の設置幅V範囲の双方の設置幅との間で重複する範囲に予備捌き部4があればよい場合に加え、捌き部材24の配設位置が、中央の給紙ローラ22a以外の左右いずれかの給紙ローラ22b,22cまたは、中央を含むいずれか2個以上の給紙ローラ22の外周に摺接する位置に設けられている状態では、かかる捌き部材24が摺接する給紙ローラ22及び捌き部材24の双方の設置幅が重複する部分の範囲内に予備捌き部4を設けていればよい。
【0035】
予備捌き部4は可撓性材料により構成されることが好ましい。可撓性材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン等の合成樹脂、シリコーンゴム、ウレタンゴム等の合成ゴム、天然ゴム、可撓性の金属などが挙げられる。
【0036】
そして、予備捌き部4は、給紙台3が移送手段6により上昇される際、該給紙台3上の複数の紙葉類10の前端縁を予備的に捌くよう構成されている。そして、予備捌き部4は、突き当てガイド5における給紙台3の昇降経路に配設され、給紙台3が上昇する際、給紙台3上の紙葉類10の前端縁が干渉する干渉部材8を備えてなる。
【0037】
図4に示すように、干渉部材8は、正面視矩形状の基部81と、該基部81に固定されて突設された複数の突起部82を備えている。基部81は、天然繊維、合成繊維、又はこれらの混合物からなる織布、編布または不織布等の布地、金属、合成樹脂等の薄板状部材や、合成樹脂、天然樹脂からなるフィルムまたはシート材等を用いることができる。
【0038】
基部81の厚さは特に限定されず、例えば、0.05mm〜2mm、より好ましくは0.1mm〜3mm程度であるのに対し、突起部82の基部81からの突出高さは特に限定されないが、例えば1mm〜5mm、好ましくは1.5mm〜3mm程度のものを用いることができる。この結果、突き当てガイド5の紙葉類10の前端縁の当接面からの予備捌き部4の突出高さは1.05mm〜7mm程度となる。
【0039】
基部81は、下端より全長の3分の1程度の高さ位置で、図4に示す直線Lに沿って、側方より見て基部81側が谷折りに、突起部82側が山折りになるよう僅かに屈曲して形成されている。この直線Lより上部が突き当てガイド5に接着されており、直線Lより下部が陥没部35の内部に潜入され、下端部が陥没部35内に収容されている。これに伴って複数の鉤状突起部83の突出方向も、干渉部材8の上部及び中央部と下部との間で僅かに異なっている。
【0040】
突起部82は、図4では、先端が湾曲した鉤状突起部83を有するものを示したが、これに限定されず、基部に設けられた玉状、鏃状のフック型の突起部であってもよく、ループ型の突起部であってもよい。かかる突起部を有する干渉部材8としては、面ファスナーのフック型の雄材やループ型の雌材、またはフック型とループ型とが混在する雄雌混在のもの等を用いることができる。このように、市販されている面ファスナーの雄材、雌材や雄雌混在のものを予備捌き部4に用いることで、安価且つ容易に製造可能となる。
【0041】
図4に示すように、鉤状突起部83は略下方に向けて湾曲した下方向湾曲突起部83aと、略上方に向けて湾曲した上方向湾曲突起部83bとを備えている。この下方向湾曲突起部83a及び上方向湾曲突起部83bに加え、略左方向又は略右方向のいずれか、或いは略左方向と略右方向の双方の略水平方向に向けてそれぞれ湾曲した水平方向湾曲突起部(図示しない)を備えていてもよく、略上下方向、又は略左右方向のいずれの方向にも属さず傾斜する向きに湾曲した傾斜湾曲突起部(図示しない)を備えていてもよい。
【0042】
更に、突起部82の配列は、図4に示すような下方向湾曲突起部82a及び上方向湾曲突起部82bがそれぞれ横方向に複数並設され、且つ、この並設された複数の下方向湾曲突起部82a及び上方向湾曲突起部82bが上下方向に交互に設けられた形態に限定されず、例えば、下方向湾曲突起部82aと上方向湾曲突起部82bとが横方向に交互に複数並設されていてもよく、または不規則に設けられていてもよく、他のいずれかの形状の突起部が規則的に又は不規則に設けられる等他の種々の形態が利用可能である。
【0043】
引続き、紙葉類供給装置1の動作につき、以下に説明する。紙葉類供給装置1により紙葉類を供給する際は、給紙台3が待機位置にある状態で、紙葉類10の前端縁が突き当てガイド5に当接するよう複数の紙葉類10を給紙台3上に載置する。そして、移送手段6により給紙台3上の最上位の紙葉類10aが給紙部2に達する位置まで給紙台3を上昇させる。このとき、突き当てガイド5における給紙台3の上昇経路に沿って給紙台3が上昇する際、給紙台3上のそれぞれの紙葉類10の前端縁が干渉部材8に干渉することで紙葉類10を上下方向に予備的に捌く。
【0044】
ここで、一般に紙葉類は、製紙工場において所定の大きさに裁断される際、裁断面に若干の裁断バリを生じることがある。この裁断バリによって紙葉類10の端部は裁断刃の通過した方向に若干撓んだものとなり、この結果上下に積層された複数の紙葉類10をより密着させ、各紙葉類10を相互に絡み合わせて外れにくくさせてしまう。このような紙葉類10を紙葉類供給装置により給紙するには、最上位にある紙葉類を1枚ずつ分離して搬送することが困難となりやすく、重送の問題が生じやすくなる。
【0045】
図10は、このような裁断バリを有する紙葉類100を搬送するため、従来の紙葉類処理装置90を用いた状態を示す図であって、紙葉類100の前端縁が突き当てガイド50に当接した状態の拡大断面図を示している。給紙台(図示しない)上に載置された紙葉類100の前端縁が裁断バリを有する場合は、裁断刃の通過した向きによって給紙台上の紙葉類10の前端縁が撓む方向が給紙台3と平行な面より上方に向かって、または下方に向かってのいずれかとなる。図10では、給紙台と平行な面より上方に向かって撓んだ場合を示す。
【0046】
図10に示すように、紙葉類100の前端縁が給紙台と平行な面より上方に向かって撓んでいる場合には、紙葉類100が給紙部20により搬送される際、2枚目以降の紙葉類100bの前端縁が最上位の紙葉類100aの給紙部20による搬送を阻止する方向に撓んでいることとなる。よって、最上位の紙葉類100aの前端縁の撓んだ部分に2枚目以降の紙葉類100bの前端縁の撓んだ部分が引っ掛かり、最上位の紙葉類100aの搬送方向への移動に伴って2枚目以降の紙葉類100bも一緒に移動してしまうため、重送されやすくなる。この結果、紙葉類100の搬送面における搬送方向の分離が困難となり、裁断バリのない場合に比較して重送を引き起こしやすくなる。
【0047】
このような紙葉類10の前端縁が給紙台3と平行な面より上方に向かって撓んでいる紙葉類10を本実施形態にかかる紙葉類供給装置1により給紙する場合には、図6に拡大して示すように、紙葉類10の前端縁が干渉部材8に干渉することで、紙葉類10の前端縁の上方へ向かった撓みが略解消される。
【0048】
より詳しくは、上方に湾曲した紙葉類10の前端縁が、下方向湾曲突起部83a又は上方向湾曲突起部83bに係合した状態で給紙台3の上昇に伴って下方向湾曲突起部83a又は上方向湾曲突起部83bを上方に引き上げていく。更に、下方向湾曲突起部83aの湾曲した鉤の先端部分により紙葉類10の前端縁を1枚ずつ引き掻いて分離するとともに、紙葉類10の裁断バリと逆方向に紙葉類10を癖づける。そして、紙葉類10の前端縁と下方向湾曲突起部83a又は上方向湾曲突起部83bとの係合が外れると、下方向湾曲突起部83a又は上方向湾曲突起部83bは紙葉類10の前端縁の拘束から開放され、元の形状に復帰する。
【0049】
この結果、予備捌き部4に接触した紙葉類10の前端縁の所定箇所に、1枚ずつ空気を含まることができ、裁断バリ等によって給紙台3と平行な面より上方向に撓み上下により密着した紙葉類10を予備捌き部4の設置幅Y範囲内において1枚ずつ分離し、給紙部2に達する前の段階で予備的に紙葉類10を捌くことができる。
【0050】
更に、予備捌き部4に接触した紙葉類10の前端縁を、裁断バリと逆方向に癖付けることで、予備捌き部4に接触した紙葉類10の前端縁の所定箇所を給紙台3と略平行な方向、又は給紙台3と平行な面よりやや下方に向かって撓ませることができる。
【0051】
そして、紙葉類10の前端縁は全ての下方向湾曲突起部83a及び上方向湾曲突起部83bに接触し、予備捌き部4によって予備的に捌かれ、紙葉類10の前端縁の予備捌き部4に接触した箇所が1枚ずつ多くの空気を含んだ状態となり、図7に示すように、最上位の紙葉類10aが搬送面に達する。紙葉類10が給紙部2に至った後は、予備捌き部4によって空気を含んだ状態となっている紙葉類10の前端縁の所定箇所を、給紙ローラ22aの回転動作及び捌き部材24による搬送面における紙捌きによって搬送面において紙葉類10を搬送方向に前後に分離する。
【0052】
このように予備捌き部4により予備的に捌かれ空気を含んだ所定箇所を、更に搬送面において搬送方向に分離するので、重送することなく1枚ずつ容易に搬送可能である。また、予備捌き部4に接触しない紙葉類10の前端縁の他の箇所は、上下密着したままの状態であっても、容易に重送を防止しつつ搬送可能である。
【0053】
そして、紙葉類10の搬送面において、紙葉類10が給紙ローラ22と捌き部材24との間を通過するに際して、補助捌き部26が紙葉類10を留まらせ、各給紙ローラ2間において紙葉類10に湾曲した部位を形成して紙葉類どうしの離間を促して重送を更に効率よく防止することができる。
【0054】
逆に、紙葉類10の前端縁が給紙台3と平行な面より下方に向かって撓んでいる紙葉類10を供給する場合の態様を図8に示す。図8に示すように、紙葉類10の前端縁が給紙台と平行な面より下方に向かって撓んでいる場合においても、上記と同様に、給紙部2の設置幅範囲内となる紙葉類10の前端縁を干渉部材8により干渉して、1枚ずつ分離し空気を含ませ、上下方向に予備的に捌くことができる。
【0055】
以上より、本実施形態にかかる紙葉類供給装置1は、給紙部2と、給紙台3と、給紙台3を上昇させる移送手段6と、紙葉類10の前端縁を当接させる突き当てガイド5とを備え、更に給紙部2による紙葉類10の搬送面より下方であって、少なくとも給紙台3上の紙葉類10の載置幅T範囲内に、複数の紙葉類10の前端縁を予備的に捌くための予備捌き部4を備えてなり、前記予備捌き部4は、突き当てガイド5における給紙台5の上昇経路に配設され、給紙台3が上昇する際給紙台3上の紙葉類の前端縁が干渉する干渉部材8を備えたので、給紙台3上の紙葉類10を移送手段6の作用によって上昇する際に、干渉部材8が紙葉類10の前端縁に干渉して少なくとも給紙台3上の紙葉類10の載置幅T範囲内となる紙葉類10の前端縁を予め上下方向に1枚ずつ分離し、空気を含ませて捌くことができ、より効率よく紙葉類の重送を防止することができる。
【0056】
また、予備捌き部4が、給紙部2における給紙手段23を構成する給紙ローラ22の設置幅U範囲内に設けられている場合には、給紙手段23によって最上位の紙葉類10aを搬送するとともに2枚目以降の紙葉類10を分離する所定箇所と同じ範囲内となる紙葉類10の前端縁の所定箇所を、予備捌き部4が予め上下方向に分離し空気を含ませることができる。そして、この空気を含んだ箇所と同一範囲内の箇所を給紙部2において更に紙葉類10の搬送方向に沿って分離するので、給紙部2における重送をより確実に防止することができる。また、紙葉類10の他の箇所は密着した状態である場合にも、給紙手段23に接触する紙葉類10の前端縁の所定箇所が予備捌き部4によって予め空気を含まされた状態であるために、紙葉類10の重送を防止することができる。
【0057】
更に、より好ましい実施形態として予備捌き部4が、給紙部2を構成する3個の給紙ローラ22のうち特に中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲内に設けられている場合には、紙葉類10の中央部分を予備的に分離することができるので、より効率よく紙葉類10を捌くことができ、また、更により好ましい実施形態として予備捌き部4が中央の給紙ローラ22aの設置幅W範囲と、捌き部材24の設置幅V範囲の双方の設置幅の重複範囲内に設けられている場合には、搬送面において給紙ローラ22aと捌き部材24によって紙葉類10を狭持し1枚ずつ分離する箇所と同一箇所を、予め空気を含ませておくことができ、より効率よく紙葉類10を分離し重送を防止することができる。
【0058】
また、予備捌き部4が可撓性材料により構成されているので、予備捌き部4が柔軟に変形し、効率よく紙葉類10を捌くことができるとともに、予備捌き部4に接触する紙葉類10の前端縁を傷めることなく皺や紙粉の発生を防止することができる。特に、移送手段6による給紙台3の上昇速度は、搬送面において給紙ローラ22が紙葉類10を搬送する速度に比較して遅いので、給紙台3が上昇する際給紙台3の上昇経路において干渉部材8が紙葉類10の前端縁を干渉しても紙葉類10を傷めにくく確実に1枚ずつ空気を含ませて予備的に捌くことができる。
【0059】
そして、予備捌き部4が基部81に設けられた複数の鉤状突起部83を備えているので、鉤状突起部83が紙葉類10の前端縁を引き掻き、上下に密着し積層された紙葉類10を鉤の先端によって容易に分離し上下の紙葉類10の間に空気を含ませて捌くことができる。
【0060】
更に、鉤状突起部83が下方に向けて湾曲した下方向湾曲突起部83aと、上方に向けて湾曲した上方向湾曲突起部83bとを備えているので、給紙台3と平行な面より上方に向かって撓んだ裁断バリを有する紙葉類10が給紙台3上に載置された場合、及び逆に給紙台3と平行な面より下方に向かって撓んだ裁断バリを有する紙葉類10のいずれの場合であっても効率よく紙葉類10を上下方向に分離することができる。
【0061】
即ち、給紙台3上に紙葉類10の前端縁が給紙台3と平行な面より上方に向かって撓んだ紙葉類10が載置される場合には、下方向湾曲突起部83aの下方に湾曲した先端と紙葉類10の上方に湾曲した前端部分が相互に容易に掛かり合い、上下に密着した紙葉類10の給紙部2の設置幅範囲内となる箇所を上下方向に分離させることができる。逆に、給紙台3上に紙葉類10の前端縁が給紙台3と平行な面より下方に向かって撓んだ紙葉類10が載置された場合には、紙葉類10の前端縁の給紙部2の設置幅範囲内となる箇所を上方向湾曲突起部83b及び下方向湾曲突起部83aの双方の湾曲した先端の内部に紙葉類10の下方に湾曲した前端部分を引き込むので紙葉類10の給紙部2の設置幅範囲内となる箇所を容易に分離させることができる。
【0062】
更に、紙葉類10の給紙台3と平行な面より上方に向かって撓んだ前端縁を有する紙葉類10は上方向湾曲突起部83bによっても、また、紙葉類10の前端縁が給紙台3と平行な面より下方に向かって撓んだ前端縁を有する紙葉類10は下方向湾曲突起部83aによっても、それぞれ給紙台3と平行な方向より下方に撓むよう癖付けられ、給紙部2による紙捌きをより確実にすることができる。
【0063】
更に、予備捌き部4が基部81に設けられた少なくとも鉤状、玉状又は鏃状のいずれか1つの突起部82を備えてなる面ファスナーにより構成されているので、安価な市販品を所定長さや所定形状に裁断し、接着剤等により容易に設置面に設置可能であるので、製造コストを低減可能であるとともに、製造時間及び製造の際の手間を少なくすることができる。
【0064】
更に、突き当てガイド5の所定箇所に、前記突き当てガイド5の紙葉類10の当接面より所定深さ陥没した陥没部52を設け、前記陥没部52の内部に予備捌き部4を構成する基部81の下部が潜入され、下端縁が収容されているので、移送手段6により給紙台3が上昇され、予備捌き部4の下部に紙葉類10が下方から接触する際に、陥没部52の内部にある予備捌き部4の下端縁に紙葉類10が直接触れることなく、予備捌き部4の下部に紙葉類10が下方から徐々に接触することで、予備捌き部4が剥離したり、逆に紙葉類10が破損したり皺を形成したりするのを防止することができる。
【0065】
更に、給紙手段23が複数の給紙ローラ22を備えており、捌き部材24は前記複数の給紙ローラ22のうち少なくとも1つの給紙ローラ22に摺接するよう設置され、更に、複数の給紙ローラ22の間に紙葉類10を補助的に捌く補助捌き部材26を配設したので、給紙台3が上昇する際予備捌き部4により紙葉類10の前端縁を上下方向に分離するとともに、紙葉類10が給紙部2に至った後は紙葉類10の搬送面において補助捌き部26により紙葉類10を留まらせ、紙葉類10が給紙ローラ22と捌き部材24との間を通過するに際して、各給紙ローラ2間において紙葉類10に湾曲した部位を形成して紙葉類どうしの離間を促して重送を更に効率よく防止できる。
【0066】
尚、上記の実施形態では、給紙部2は給紙手段23を構成する給紙ローラ22、捌き部材24、予備捌き部26及び接触圧力調整機構25により構成したが、本発明の紙葉類供給装置はそれに限定されるものでなく、例えば給紙手段23は給紙ローラ22に替えて紙葉類を吸着して搬送する構成であってもよい。また、給紙ローラ22は3個を並設したが1個であってもよく、この場合、捌き部材24が外周面に摺接する給紙ローラのみの構成となる。
【0067】
また、捌き部材24は、給紙ローラ22aの外周面に摺接する構成としたが、給紙ローラによる紙葉類の搬送速度より遅い速度で回転する回転ローラ等であってもよく、また、捌き部材24は接触圧力調整機構25により支持され給紙ローラ22aへの接触圧力を調整可能な可動式であったが、これに限定されず、給紙ローラの外周面に一定の圧力で接触する固定式であってもよく、また、接触圧力調整機構25については図3に示す例えば上記特許文献1に開示されたものと同様の構成を示したが、これに限定されず、他の種々の公知の機構により構成可能である。そして、移送手段6は上記実施形態ではいわゆるエレベータ式のものを示したが、いわゆるバネ式であってもよく、これら以外の公知の構造のものも用いることができる。
【0068】
また、予備捌き部4の設置位置は、捌き部材24の設置位置より下方であって突き当てガイド5の紙葉類10の前端縁の当接面の上部に設けたが、これに限定されず、給紙部による紙葉類の搬送面より下方であって、少なくとも給紙台上の紙葉類の載置幅範囲であれば、突き当てガイドの下部であってよく、固定式の捌き部材の前面に設けてもよい。
【0069】
また、予備捌き部4は、干渉部材8が紙葉類10の前端縁に接触する構成としたが、これに限定されず、紙葉類の前端縁に空気を吹きかける構成などにより干渉する他の構成としてもよい。
【0070】
また、予備捌き部4は鉤状、玉状又は鏃状等の突起部を備えてなる面ファスナーを用いたが、これに限定されず所定の大きさに裁断した不織布、スポンジ等の合成樹脂発泡体、 等他の部材を用いてもよい。
【0071】
また、予備捌き部4は、上部が突き当てガイド5に接着され、下部が陥没部52の内部に潜入した構成としたが、これに限定されず、突き当てガイドの給紙台上の紙葉類の載置幅範囲内に、予備捌き部収容用開口部を形成し、該予備捌き部収容用開口部内に予備捌き部の全部又は一部を収容する構成としてもよい。尚、この該予備捌き部収容用開口部は、突き当てガイドに形成した陥没部の底面に設けてもよい。
【0072】
そして、この予備捌き部収容用開口部内に全部又は一部が収容された予備捌き部に関しては、突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し該予備捌き部を進退させる進退機構により支持される構成であることが好ましい。
【0073】
かかる突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し予備捌き部を進退させる進退機構としては、種々の公知のものが利用可能である。例えば、予備捌き部の下部を揺動中心とし、上部を揺動させる揺動機構等により予備捌き部を支持し、予備捌き部の上部を紙葉類の前端縁に深く干渉する位置と浅く干渉する位置との間で揺動するといったことが挙げられる。また、基部全体を平行移動して進退する機構等が挙げられ、該機構により、紙葉類の前端縁を破損等しないまたは予備捌き部が剥離等しない所定の範囲において、予備捌き部を紙葉類の前端縁に深く干渉する位置と浅く干渉する位置との間で突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し進退するといったことなども利用可能である。
【0074】
このように、突き当てガイドの予備捌き部収容用開口部に予備捌き部を収容するとともに、該予備捌き部収容用開口部に収容された予備捌き部を進退機構により進退する場合には、紙葉類の前端縁への干渉部材の干渉量を紙葉類の厚さや種類に応じて調整することが可能となり、様々な厚さや種類の紙葉類について該紙葉類を傷めることなく非常に効率よく上下方向に分離し空気を含ませることができる。
【0075】
そして、この突き当てガイドの予備捌き部収容用開口部内に収容された予備捌き部を支持する進退機構については、接触圧力調整ダイヤル53に連動させる構成とすることがより好ましい。これにより、接触圧力調整ダイヤル53の回動に伴って突き当てガイドの紙葉類10の当接面からの予備捌き部の突出高さを調整可能なものとすることもできる。これにより、紙葉類の厚さや種類に応じて該接触圧力調整ダイヤル53を回動して捌き部材24の給紙ローラ22aへの押圧力を調整する際、同時に突き当てガイドの紙葉類10の当接面からの予備捌き部の突出高さを調整する等といったことができることとなる。
【0076】
また、上記した図1〜8に示す実施形態では、このように予備捌き部4の下部のみが陥没部52の内部に潜入し、上部は突き当てガイド5に接着した構成としたが、これに限定されず、図9に示すように、予備捌き部4fの基部81a全体が陥没部52aに収容され、突起部82aが陥没部52aから突出して紙葉類10の前端縁に当接する構成であってもよい。
【0077】
この図9に示す構成の場合、予備捌き部4f全体の高さHに対し、突き当てガイド5aの紙葉類10の当接面から陥没部52a内に予備捌き部4fが潜入している深さFの割合(F/H)は0%〜90%程度であることが好ましい。ここで、F/H=0%である場合とは、F=0の場合、即ち、陥没部52a内に予備捌き部4fが全く潜入されていない状態であって、上記実施形態に示した突き当てガイド5の紙葉類10の当接面に予備捌き部4を設けた状態である。
【0078】
更に、図9に示す予備捌き部4fの基部81a全体が陥没部52aに収容される構成については、予備捌き部4fが陥没部52aの底面に接着され、固定された構成を示したが、必ずしもこれに限定されず、突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し予備捌き部を進退させるとともに陥没部内に収容された予備捌き部の基部を支持する進退機構を備え、該進退機構により予備捌き部を進退可能としてもよい。
【0079】
これにより、図9に示す予備捌き部4fが陥没部52aの底面に接着され、固定されている状態においては突き当てガイド5の紙葉類10の前端縁の当接面からの突起部82aの突出高さIは所定の高さを維持するものとなっているのに対し、突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し予備捌き部を進退可能とした場合には、進退機構によって突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面からの突起部の突出高さを紙葉類の厚さや種類に応じて変更することができることとなる。
【0080】
かかる突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し予備捌き部を進退させるとともに陥没部内に収容された予備捌き部の基部を支持する進退機構としては、上記した突き当てガイドに形成した予備捌き部収容用開口部内に収容された予備捌き部を支持する進退機構と同様のものが利用可能である。このように、予備捌き部の基部全体が陥没部内に収容され、突起部が陥没部から突出して紙葉類10の前端縁に当接するとともに、進退機構によって突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し予備捌き部を進退可能に構成した場合には、突き当てガイドに予備捌き部収容用開口部を形成することが不要となるとともに、簡単な構造によって紙葉類の前端縁を分離可能である。
【0081】
この突き当てガイドの紙葉類の前端縁の当接面に対し予備捌き部を進退させるとともに陥没部内に収容された予備捌き部の基部を支持する進退機構に関しては、上記突き当てガイドの予備捌き部収容用開口部内に収容した予備捌き部を進退自在に支持する進退機構と同様に、接触圧力調整ダイヤル53に連動させる構成とすることが可能であり、これにより、接触圧力調整ダイヤル53の回動に伴って突き当てガイド5aの紙葉類10の当接面からの突出部の突出高さを調整可能なものとすることもできる。
【0082】
また、突起部82は基部81に固定されて突設された構成とし、突起部82の基部81からの突出高さは所定の突出高さを維持するものとしたが、これに限定されず、突起部の基部からの突出高さを紙葉類の厚さや種類に応じて変更可能な構成としてもよい。かかる突起部の基部からの突出高さを変更可能な構成としては、種々のものが利用可能であるが、例えば、基部に複数の貫通孔を形成し、該貫通孔に突起部の根元を進退自在に挿通するといったもの等が挙げられる。
【0083】
そして、このような基部からの突出高さを変更可能な予備捌き部は、上記した種々の予備捌き部の進退機構の場合と同様に、接触圧力調整ダイヤル53に連動させる構成とすることで、接触圧力調整ダイヤル53の回動に伴って突起部の基部からの突出高さを紙葉類の厚さや種類に応じて調整することができ、紙葉類の厚さや種類に応じた対応を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 紙葉類供給装置
2 給紙部
3 給紙台
4,4A,4a,4b,4c,4d,4e,4f 予備捌き部
5,5a 突き当てガイド
6 移送手段
8 干渉部材
52,52a 陥没部
81,81a 基部
82,82a 突起部
83 鉤状突起部
83a 下方向湾曲突起部
83b 上方向湾曲突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を給紙する給紙手段と捌き部材とを備えた給紙部と、
給紙部の下方に設けられ、複数の紙葉類を載置する給紙台と、
給紙台上の最上位の紙葉類が給紙部に達する位置まで給紙台を上昇させる移送手段と、
給紙部の下方に設けられ、給紙台上の紙葉類の前端縁を当接させる突き当てガイドと、
給紙部による紙葉類の搬送面より下方であって、少なくとも給紙台上の紙葉類の載置幅範囲内に、複数の紙葉類の前端縁を予備的に捌くための予備捌き部とを備え、
前記予備捌き部は、突き当てガイドにおける給紙台の上昇経路に配設され、給紙台が上昇する際給紙台上の紙葉類の前端縁が干渉する干渉部材を備えてなる紙葉類供給装置。
【請求項2】
予備捌き部が、給紙部における給紙手段の設置幅範囲内に設けられている請求項1に記載の紙葉類供給装置。
【請求項3】
予備捌き部が可撓性材料により構成されている請求項1または請求項2に記載の紙葉類供給装置。
【請求項4】
予備捌き部が基部に設けられた複数の鉤状突起部を備えている請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の紙葉類供給装置。
【請求項5】
鉤状突起部が略下方に向けて湾曲した下方向湾曲突起部と、略上方に向けて湾曲した上方向湾曲突起部とを備えている請求項4に記載の紙葉類供給装置。
【請求項6】
予備捌き部が基部に設けられた少なくとも鉤状、玉状又は鏃状のいずれか1つの突起部を備えてなる面ファスナーにより構成されている請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の紙葉類供給装置。
【請求項7】
突き当てガイドの所定箇所に、前記突き当てガイドの紙葉類の当接面より所定深さ陥没した陥没部を設け、
前記陥没部の内部に予備捌き部を構成する基部の少なくとも下端縁が収容されている請求項1乃至請求項6に記載の紙葉類供給装置。
【請求項8】
給紙手段が複数の給紙ローラを備えており、
捌き部材は前記複数の給紙ローラのうち少なくとも1つの給紙ローラに摺接するよう設置され、
更に、複数の給紙ローラの間に紙葉類を補助的に捌く補助捌き部材を配設した請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の紙葉類供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−265104(P2010−265104A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119922(P2009−119922)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】