紙葉類処理装置
【課題】ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易な紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】紙葉類処理装置(紙幣入出金機1)は、第1及び第2の一対の搬送面625、654を含む搬送路432と、搬送路432に沿って搬送される紙葉類を収納するよう構成された、少なくとも1の収納モジュール62と、搬送路及び収納モジュールを内蔵する本体と、を備える。収納モジュール62は、所定の着脱方向に移動させることによって本体に対し取り付け及び取り外しが可能であり、収納モジュール62を本体に対し取り付けたときには、収納モジュール62の外面の一部が、第1の搬送面625を形成する一方、収納モジュール62を本体から取り外したときには、当該取り外し先の位置から着脱方向に見て、第2の搬送面654が視認可能に開放される。
【解決手段】紙葉類処理装置(紙幣入出金機1)は、第1及び第2の一対の搬送面625、654を含む搬送路432と、搬送路432に沿って搬送される紙葉類を収納するよう構成された、少なくとも1の収納モジュール62と、搬送路及び収納モジュールを内蔵する本体と、を備える。収納モジュール62は、所定の着脱方向に移動させることによって本体に対し取り付け及び取り外しが可能であり、収納モジュール62を本体に対し取り付けたときには、収納モジュール62の外面の一部が、第1の搬送面625を形成する一方、収納モジュール62を本体から取り外したときには、当該取り外し先の位置から着脱方向に見て、第2の搬送面654が視認可能に開放される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣、及びその他の紙葉類の処理を行う紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、現金自動取引装置に実装される紙幣入出金機を開示している。この紙幣入出金機は、第1〜第3の3つの金庫カセットを備えている。各金庫カセットは、紙幣入出金機に投入された紙幣を収納するカセットであり、3つの金庫カセットは、紙幣入出金機の下部ユニット内に前後方向に並んで配置されている。投入口に投入された紙幣は、装置内部に配設された搬送路に沿って搬送されて、各カセットに至る。この搬送路の一部は、各金庫カセットの上面と、前後方向に並んだ3つの金庫カセットに跨るように、これらの金庫カセットの上側で前後方向に延びて配設された搬送路ユニットとによって構成されている。紙幣は、各金庫カセットの上面(以下、この面を搬送面という場合がある)と、搬送路ユニットの下面(つまり、搬送面)との間に挟まれて搬送される。
【0003】
特許文献2は、例えば銀行等の金融機関におけるテラーカウンターに設置され、窓口業務を行うテラーが操作する紙幣入出金機を開示している。この入出金機は、紙幣を収納する収納ユニットを6個備えている。6個の収納ユニットは、その内の3個が前後方向に並んで配置されることで列を構成すると共に、その3個の収納ユニットのそれぞれに、別の収納ユニットが上下に重ねられて配置されている。言い換えると、上下に重ねられた一対の収納ユニットが、前後方向に三対、並んでいる。この入出金機では、上側の収納ユニットの列と、下側の収納ユニットの列との間に搬送路が形成されている。より詳細には、上側の列を構成する各収納ユニットは、その下面が搬送路の上側の搬送面を構成し、下側の列を構成する収納ユニットは、その上面が搬送路の下側の搬送面を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2538911号公報
【特許文献2】国際公開第2008/047094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記の特許文献に記載されているような紙幣入出金機を含む、紙葉類処理装置においては、紙葉類の搬送中にその紙葉類が引っ掛かる等してジャムが発生する場合がある。ジャム発生時には装置を開けて、詰まっている紙葉類を搬送路から手で取り除かなければならない。
【0006】
このジャム発生時の紙幣の取り除きのために、特許文献1の紙幣入出金機では、前後方向に延びる搬送ユニットの後端部が、上向きに回動可能となるよう下部ユニットに取り付けられている。つまり、特許文献1の紙幣入出金機では、ジャム発生時には、下部ユニットを筐体から引き出した上で、搬送路ユニットを、その後端軸を中心に回動させることによって、搬送路ユニットと各金庫カセットとの間に形成された搬送路を開放し、紙幣を取り除くことを可能にしている。
【0007】
しかしながら、搬送路ユニットを軸支した構成では、特許文献1の図4に示されるように、回動角度が一定のときには、その軸から離れた側は相対的に大きく開放されて紙幣の取り除きが比較的容易になるのに対し、軸に近い側は余り大きく開放されないため、紙幣の取り除きがし難くなる。
【0008】
また、特許文献2の紙幣入出金機では、上下に重なる一対の収納ユニットの左側部同士、より正確には、上側の収納ユニットの左下端部と、下側の収納ユニットの左上端部とがヒンジ結合されており、これによって、上側の収納ユニットが、下側の収納ユニットの左外方に向かって回動することを可能にしている。つまり、特許文献2の紙幣入出金機では、ジャム発生時には、6個の収納ユニットを筐体から前側に引き出した上で、上側の収納ユニットを左外方に向かって回動させることによって、当該上側の収納ユニットと下側の収納ユニットとの間に形成された搬送路を開放し、紙幣を取り除くことを可能にしている。
【0009】
しかしながら、収納ユニット同士をヒンジ結合した構成では、特許文献1の紙幣入出金機と同様に、回動角度が一定のときには、ヒンジ結合部に近い側では、紙幣が取り除き難くなる。また、この特許文献2の紙幣入出金機では上側の収納ユニットを回動させるが、収納ユニットはその内部に紙幣を収納する分だけ、高さ方向に比較的、かさ高であり、上側の収納ユニットを、その左下端部を中心として左外方に向かって回動させたときには、左上端部付近が装置の左外方に大きく移動するようになる。そのため、例えば、紙幣入出金機の左側を壁に近づけて設置してしまうと、上側の収納ユニットが壁と干渉してしまうため、その上側の収納ユニットを大きく回動させることができず、紙幣の取り除きが極めて困難になるという不都合がある。
【0010】
また、収納ユニットを左外方に向かって回動させるためには、そのヒンジ結合側とは反対側である、装置の右側方に作業者が位置して、上側の収納ユニットを持ち上げなければならない。しかしながら、入出金機の設置スペースの如何によっては、そうした作業スペースを確保することも困難となって、ジャム発生時の紙幣の取り除きの作業性が悪化することもある。
【0011】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易な紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに開示する装置は、紙葉類の処理を行う紙葉類処理装置である。この紙葉類処理装置は、互いに向かい合った第1及び第2の一対の搬送面を含みかつ、当該搬送面同士の間で前記紙葉類を搬送するよう構成された搬送路と、前記搬送路に沿って搬送される前記紙葉類を収納するよう構成された、少なくとも1の収納モジュールと、前記搬送路及び前記収納モジュールを内蔵する本体と、を備える。
【0013】
そして、前記収納モジュールは、所定の着脱方向に移動させることによって前記本体に対し取り付け及び取り外しが可能であり、当該収納モジュールを前記本体に対し取り付けたときには、前記収納モジュールの外面の一部が、前記第1の搬送面を形成する一方、前記収納モジュールを前記本体から取り外したときには、当該取り外し先の位置から前記着脱方向に見て、前記第2の搬送面が視認可能に開放される。
【0014】
ここで、「収納モジュール」は、搬送路に沿って搬送されてきた紙葉類を収納するモジュール、収納している紙葉類を繰り出して搬送路に沿って搬送させるモジュール、及び、その双方を行うモジュールを含む。
【0015】
また、「収納モジュールの取り外し」は、本体に対して収納モジュールが分離することを意味し、例えばヒンジ結合等のように、収納モジュールと本体とが結合したままで分離しないことは含まない。但し、例えばチェーン等のひも状の部材によって本体と収納モジュールとが互い連結されており、収納モジュールを本体から取り外して、収納モジュールと本体とを分離したときに、当該ひも状の部材を介して両者が互いに連結されている構成は含まれる。また、収納モジュールと本体との間に、両者の結合と非結合とを切り替えるロック機構を設けてもよい。この構成では、ロック機構が収納モジュールと本体とを結合しているときには、収納モジュールと本体とを分離することはできないが、ロック機構が収納モジュールと本体とを非結合にしているときには、収納モジュールと本体とを分離することができる。
【0016】
この構成によると、収納モジュールを本体に対し取り付けたときには当該収納モジュールの外面の一部によって第1の搬送面が形成される。紙葉類は、この第1の搬送面及び第2の搬送面によって構成される搬送路に沿って搬送される。
【0017】
この紙葉類処理装置においてジャムが発生したときには、収納モジュールを本体から取り外す。このことによって、搬送路における第2の搬送面を開放する。このとき収納モジュールは、所定の着脱方向に移動させることによって本体から取り外され、収納モジュールは本体から分離される。このため、収納モジュールと本体とを互いに結合した構成例、例えばヒンジ結合の採用によって収納モジュールと本体とを互いに結合した構成例では、その結合構造によって収納モジュールの動きが制約を受ける。つまり、ヒンジ結合の場合、収納モジュールはヒンジ軸を中心とした回動しかできない。このため、紙葉類処理装置の周囲における特定の位置(例えば収納モジュールの回動先の位置)に、収納モジュールの移動を許容する空きスペースを確保しなければならない。
【0018】
これに対し、収納モジュールと本体とを分離可能にした前記の構成では、空きスペースに関する制約がなくなる。このことは、紙葉類処理装置の周囲のどこに空きスペースがあっても、収納モジュールを本体から容易に取り外すことを可能にする。また、収納モジュールが本体から分離されるため、搬送路、ひいては第2の搬送面を、取り外しの方向から視認可能に大きく開放することが可能になる。つまり、収納モジュールを上向きに移動させた構成では、上から見て視認可能に第2の搬送面が開放され、収納モジュールを前向きに移動させた構成では、前から見て視認可能に第2の搬送面が開放される。そうして、ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易になる。
【0019】
前記収納モジュールは、第1及び第2の、少なくとも2つの収納モジュールを含んでいて、前記第1の収納モジュールが前記着脱方向の手前側になり、前記第2の収納モジュールが前記着脱方向の奥側になるように隣り合って、前記本体に取り付けられ、前記第1の収納モジュールは、その外面の一部が前記第1の搬送面を形成し、前記第2の収納モジュールは、その外面の一部が前記第2の搬送面を形成し、前記第1の収納モジュールは、前記本体に対して取り付け及び取り外しが可能であり、当該第1の収納モジュールを前記本体から取り外したときには、前記第2の収納モジュールによって形成される前記第2の搬送面が視認可能に開放される、としてもよい。
【0020】
ここで、「第1の収納モジュールは、前記本体に対して取り付け及び取り外しが可能」であることには、第1の収納モジュールを、本体に対して直接的に、取り付け及び取り外しを可能することの他にも、本体に対して取り付けられている第2の収納モジュールに対し、第1の収納モジュールの取り付け及び取り外しを可能にすることによって、第1の収納モジュールを、本体に対して間接的に、取り付け及び取り外しを可能することも含まれる。また、第1の収納モジュールと第2の収納モジュールとの間に、ロック機構を設けてもよい。
【0021】
この構成においても、前記と同様に、ジャム発生時には、着脱方向の手前側に取り付けられている第1の収納モジュールを本体から取り外すことによって、第1の収納モジュールを本体から分離し、第2の収納モジュールによって形成される第2の搬送面を大きく開放することが可能になる。こうして、第1の収納モジュールを容易に取り外すことと、第2の搬送面を大きく開放することとが組み合わさって、ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易になる。
【0022】
前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結可能に構成されており、前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結されて一体となった状態で、前記本体から取り外しが可能である、としてもよい。
【0023】
前記搬送路は、水平方向に実質的に平行な搬送方向に前記紙葉類を搬送し、前記収納モジュールの前記着脱方向は、前記搬送方向に実質的に直交する略垂直方向に設定されている、としてもよい。
【0024】
この構成は、紙葉類処理装置の本体から収納モジュールを水平方向に引き出し、その引き出した状態から収納モジュールを上向きに取り外す構成において、紙葉類の取り除きを容易にする上で有利である。この構成は特に、紙葉類処理装置の左右両側に空きスペースが十分に確保できないときでも、収納モジュールを上向きに容易に取り外して第2の搬送路を上向きに開放することによって、紙葉類を容易に取り除くことを可能にする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、前記の紙葉類処理装置は、ジャム発生時の紙葉類の取り除きを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】紙幣入出金機の外観を示す斜視図である。
【図2】紙幣入出金機の内部構造を示す図である。
【図3】紙幣入出金機の動作制御に係る構成を示すブロック図である。
【図4】入金処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図5】一時保留部を利用する場合の、入金処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図6】出金処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図7】収納モジュールへの紙幣の収納状態の一例と、その収納状態を利用した一部精査処理を説明する図である。
【図8】紙幣の記番号管理を伴う、収納モジュールへの紙幣の収納形態の例を説明する図である。
【図9】テープの番地管理を伴う、収納モジュールへの紙幣の収納形態の例を説明する図である。
【図10】紙幣入出金機の出金処理に係るフローチャートである。
【図11】計数処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図12】収納部を金庫部から引き出した状態を示す斜視図である。
【図13】上収納モジュールの斜視図である。
【図14】上収納モジュールの天地を反転させた状態の斜視図である。
【図15】下収納モジュールの斜視図である。
【図16】下収納モジュールの天地を反転させた状態の斜視図である。
【図17】台板の斜視図である。
【図18】下収納モジュールと台板との結合箇所を拡大して示す断面図である。
【図19】上収納モジュールと下収納モジュールとの結合箇所を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、紙幣入出金機の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。図1は、紙幣入出金機(以下、単に入出金機という)1の外観を示している。この入出金機1は、例えば銀行のテラーカウンターに設置されかつ、この入出金機1を挟んだ左右二人のテラーによって共用で使用される。このため、この入出金機1は、基本的には左右対称に構成されている。
【0028】
この入出金機1は、詳しくは後述するが、投入口211に投入された紙幣を収納部3に収納する入金処理、及び、収納部3に収納している紙幣を出金口231に払い出す出金処理を少なくとも実行する。この入出金機1は、いわゆる循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出す紙幣には、入金処理時に収納部3に収納した紙幣が含まれる。
【0029】
入出金機1は、図1及び2に示すように、上側の処理部11と、下側の金庫部13とに大別される。処理部11を構成する筐体111内には、投入口211を有する入金部21と、出金口231を有する出金部23と、紙幣の識別を行う識別部25と、入金部21、出金部23及び識別部25を相互に連結するループ搬送路411を含む処理部側搬送部41と、が配設されている。一方、金庫部13を構成する筐体131内には、複数の(図例では8個の)巻き取り方式の収納モジュール31を含んで構成された収納部3と、処理部側搬送部41のループ搬送路411と各収納モジュール31とを互いに接続する搬送路431を含む金庫部側搬送部43と、が配設されている。ここで、金庫部13を構成する筐体131は、処理部11を構成する筐体111とは異なり、その内部に格納している収納部3等を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成された防護筐体131である。
【0030】
入金部21の投入口211は、前述したように、例えば入金処理の際に入金する紙幣を投入するための口である。投入口211は、処理部側筐体111の上面において上向きに開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。入金部21はまた、投入口211に投入された複数枚の紙幣を、一枚ずつ、ループ搬送路411に繰り出す繰り出し機構を備えている。
【0031】
出金部23の出金口231は、前述したように、例えば出金処理の際に紙幣を払い出すための口である。出金口231は、投入口211よりも装置手前側(図2の紙面右側)の、処理部側筐体111における上面から前面にかけての位置でかつ、斜め上方に向かって開口している。この出金口231も、投入口211と同様に、複数枚の紙幣を一度に保持可能に構成されている。
【0032】
識別部25は、ループ搬送路411上に配設されて、そのループ搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損を識別するように構成されている。
【0033】
処理部側搬送部41は、処理部側筐体111内においてエンドレスに設けられたループ搬送路411を備えている。紙幣は、このループ搬送路411に沿って図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。このループ搬送路411は、図2に例示するように、多数のローラ、複数のベルト及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。ループ搬送路411は、その搬送路に沿って、紙幣と紙幣との間に所定間隔を隔てた状態で、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。
【0034】
ループ搬送路411と投入口211との間は、投入路413によって互いに接続されており、投入口211に投入された紙幣は、この投入路413を通ってループ搬送路411まで搬送される。
【0035】
ループ搬送路411にはまた、払出路415が、紙幣の搬送方向を切り替える分岐機構417を介して接続されている。払出路415の先端は、出金口231に接続されている。分岐機構417は、ループ搬送路411を時計回り方向及び反時計回り方向に搬送されている紙幣を、そのままループ搬送路411上で搬送させるか、払出路415に引き込むかを切り替えるように動作する。この構成によって、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣は、分岐機構417の動作制御によって選択的に、払出路415を通って出金口231に搬送される。
【0036】
ループ搬送路411上にはまた、第1−第3の分岐機構419,4111,4113が設けられている。第1−第3の分岐機構419−4113はそれぞれ、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。分岐機構の具体的な構成は、国際公開第2009/034758号に例示されている。
【0037】
より具体的に、第1の分岐機構419は、ループ搬送路411と金庫部側搬送部43の搬送路431との接続位置に設けられている。第1の分岐機構419は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的に、金庫部側搬送部43の搬送路431に送って、収納部3に収納させるか、又は、収納部3から繰り出されかつ、金庫部側搬送部43の搬送路431に沿って搬送されてきた紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
【0038】
また、第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411と接続路4115との接続位置に設けられている。接続路4115は、詳しくは後述するが、図2においては仮想的に示す一時保留部51と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、接続路4115に送って一時保留部51に収納させるか、又は、一時保留部51から繰り出した紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
【0039】
さらに、第3の分岐機構4113は、ループ搬送路411とカセット接続路4117との接続位置に設けられている。カセット接続路4117は、詳しくは後述するが、図2において仮想的に示す回収カセット53と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第3の分岐機構4113は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的にカセット接続路4117に送り、それを回収カセット53に収納するように動作する。
【0040】
収納部3は、前述したように、図例では第1−第8の巻き取り方式(言い換えると、テープ式)の収納モジュール31−1−31−8を含んで構成されている。ここで、以下の説明において、各々の収納モジュールを総称する場合には、符号「31」を付し、第1、第2、第3…の、各々の収納モジュールを区別する場合には、符号「31−1、31−2、31−3…」を付す。尚、収納モジュール31の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。8個の収納モジュール31は、この例では、装置の奥行き方向(図2の紙面左右方向)に4個並んで1列を構成すると共に、その列が上下方向に2列を構成するように積み重ねられている。
【0041】
この巻き取り方式の収納モジュール31は、特開2000−123219号公報に例示されるように、概略矩形箱状の筐体内に、紙幣をガイドする一枚のテープ、ガイド部材、及び、紙幣と共にテープを巻き取るリールを備えて構成されるか、又は、本件出願人が先に出願したPCT/JP2009/066729に例示されるように、筐体内に、紙幣を挟む2枚のテープ、及び、紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るリールを備えて構成される。いずれの構成においても、巻き取り方式の収納モジュール31は、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。各収納モジュール31は、この例では図2に示すように、それぞれテープが巻き付けられたテープリール313を2つ備え、テープリール313から引き出された2枚のテープによって紙幣を挟むように構成されており、紙幣は、互いに所定間隔を隔てながらリール311に巻き取られる。各収納モジュール31にはまた、筐体の内外を連通するように形成された出入口の近傍に、紙幣の通過を検知する検知センサが設けられている。
【0042】
金庫部側搬送部43の搬送路431は、処理部側搬送部41のループ搬送路411と同様に、ローラ、ベルト及びガイドの組み合わせによって構成されており、この搬送路431もまた、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。搬送路431は、ループ搬送路411上の第1の分岐機構419から、鉛直下向きに延びると共に、その下端部において、奥行き方向の手前側(図2の紙面右側)及び奥側(図2の紙面左側)のそれぞれに分岐している。装置1の奥側に向かって延びる分岐路は、上下に積み重ねられた2列の収納モジュール31の間に配設されている。各収納モジュール31は、この分岐路上に設けられた振分機構433−1−433−8を介して分岐路に接続されている。各振分機構433−1−433−8は、後述する制御部513によって駆動制御され、そのことにより、紙幣が、識別部25によって識別された金種及び/又は正損等に応じて複数の収納モジュール31に振り分けられて収納されることになる。
【0043】
この入出金機1では、紙幣を一時的に保留する一時保留部51、及び、金庫部13の防護筐体131内に着脱可能に取り付けられる回収カセット53が、オプションで装着されるように構成されている。
【0044】
一時保留部51は、図2に一点鎖線で示すように、処理部側筐体111内における奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に装着される。一時保留部51は、前述したように、接続路4115を介して、第2の分岐機構4111に接続される。一時保留部51は、この例では、前述した収納モジュール31と同様に、2枚のテープを利用した巻き取り方式であり、紙幣の順番を入れ替えることなく、先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。
【0045】
回収カセット53は、図2に一点鎖線で示すように、防護筐体131内における奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に着脱可能に装着される。回収カセット53は、前述したように、カセット接続路4117を介して、ループ搬送路411上の第3の分岐機構4113に接続されている。回収カセット53は、巻き取り式の収納モジュール31や一時保留部51とは異なり、その内部に昇降する集積台531を備えかつ、この集積台上に紙幣を重ねて収納するように構成されている。これにより、回収カセット53に収納された紙幣は、そこから繰り出すことはできない。回収カセット53には、例えば入金処理時に投入口211に投入された紙幣の内、収納部3に収納しきれなかったオーバーフロー紙幣が収納される。また、出金処理時等に識別不可であったリジェクト紙幣が、この回収カセット53に収納される場合がある。従って、回収カセット53が未装着のときには、オーバーフロー紙幣やリジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。尚、回収カセット53は、図例に示すように箱状でなくても、袋状であってもよい。
【0046】
また、防護筐体131内の空きスペースには、回収カセット53が配設される代わりに、巻き取り式の収納モジュール31を、さらに追加して装着することが可能である。追加の収納モジュール31は、図2に示すように、例えば2個のモジュールが上下に積み重ねられて配設される場合があり、これら2個の収納モジュール31はそれぞれ、搬送路431の下端から奥行き方向の手前側に延びる分岐路に対し、前述した振分機構を介して接続される。
【0047】
図3は、入出金機1の動作制御に係る構成を示している。入出金機1は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部513を備えている。制御部513には、前述した入金部21、出金部23、第1−第nの収納モジュール31を含む収納部3、処理部側搬送部41、及び金庫部側搬送部43が、信号の送受信可能に接続されている。これらの各部21,23,3,41,43は、図示は省略するが、例えば搬送路を搬送されている紙幣を検知するといった機能を有する各種のセンサを含んでおり、各種センサの検知信号は制御部513に入力される。制御部513は、入力された検知信号等に基づいて制御信号を出力し、各部21,23,3,41,43は、その制御信号に従って動作をする。
【0048】
制御部513にはまた、識別部25が接続されており、識別部25は、識別結果を制御部513に提供する。さらに、図1等では図示を省略するが、テラー等の、この入出金機1を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分としての操作部55、入出金機1が、例えばLANやシリアルバスを通じて、図示を省略する上位端末及びその他の機器との間で信号の送受信を行うための通信部57、及び、各種の情報を記憶するための、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成される記憶部59がそれぞれ、入出金機1に接続されている。
【0049】
記憶部59は、入出金機1が収納している紙幣の金種別枚数又は金額である在高を少なくとも記憶する。また、記憶部59は、収納モジュール31毎の在高も記憶する。
【0050】
前述したように、オプション機器である一時保留部51や回収カセット53が、この入出金機1に装着されるときには、それらの機器51,53もまた、制御部513に接続されることにより、制御部513が出力する制御信号に従って動作をする。また、入出金機1には、各種の情報を表示するための、例えばフラットパネルディスプレイからなる表示部511がオプション機器として装着可能に構成されており、この表示部511もまた、制御部513に接続される。
【0051】
制御部513は、通信部57を通じて受けた上位端末からの指令、及び/又は、操作部55を通じて受けた各種の指令に応じて、各部21,23,25,3,41,43,51,53,55,57,59,511の動作を制御する。このことにより、入出金機1は、以下に説明する入金処理及び出金処理を含む、各種処理を行う。入出金機1において実行した各種の処理の履歴は、記憶部59にログとして記憶される。
【0052】
(入金処理)
入金処理は、入出金機1に紙幣を入金(収納)する処理であり、投入口211に投入された紙幣は、識別部25による識別結果と、予め設定された収納割当とに従って、いずれかの収納モジュール31に収納される。より詳細に、入出金機1は、入金処理の際には、次のように動作する。すなわち、入金する紙幣を投入口211に投入した状態で、例えば上位端末及び/又は操作部55の操作によって入金処理の開始コマンドを、入出金機1に入力する。図4に矢印で示すように、入金部21の繰り出し機構は、投入口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、その紙幣の識別を行うと共に、計数を行う。処理部側搬送部41はまた、識別部25によって正常に識別された紙幣(この紙幣を、リジェクト紙幣の対の名称として正常紙幣と呼ぶ)を、図4に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から、第1の分岐機構419を通って金庫部側搬送部43の搬送路431へと搬送する。金庫部側搬送部43は、識別部25による識別結果、及び、予め設定された収納割当に従って、各紙幣を所定の収納モジュール31に収納する。すなわち、各紙幣は、金種別や正損別に応じて、いずれかの収納モジュール31に収納される。
【0053】
一方、処理部側搬送部41は、識別部25において真偽の識別ができない紙幣等、入出金機1がそのまま受け入れることができないリジェクト紙幣を、図4に一点鎖線の矢印で示すように、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、リジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。尚、入金処理時に発生したリジェクト紙幣は、投入口211に再度投入され、識別部25による識別が、もう一度行われることになる。
【0054】
また、入金処理時に、収納モジュール31が満杯になることに起因して収納できなくなった紙幣(つまり、オーバーフロー紙幣)も、出金口231に払い出される。尚、図示は省略するが、入出金機1に回収カセット53が装着されているときには、オーバーフロー紙幣は、回収カセット53に収納される。
【0055】
入金処理の終了後には、記憶部59に記憶している在高を更新する。
【0056】
(一時保留部がある場合の入金処理の例)
図4は、入出金機1に一時保留部51が装着されていない場合の入金処理の動作例を示している。これに対し、図5は、一時保留部51が入出金機1に装着されている場合の入金処理の動作例を示している。この動作例においても、入金部21の繰り出し機構は、図4と同様に、投入口211に投入された紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。処理部側搬送部41は、識別部25によって正常に識別された正常紙幣を、図5に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から、第2の分岐機構4111を通って一時保留部51に搬送し、そこに収納する。尚、リジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。
【0057】
そうして、投入口211に投入された紙幣が全て繰り出されることによって、入金される紙幣の計数が全て完了したときには、上位端末、及び/又は、オプションの表示部511に計数結果が表示される。オペレータは、その計数結果を確認した上で、上位端末及び/又は操作部55において所定の収納操作を行う。このことによって、図5に破線の矢印で示すように、一時保留部51は、そこに収納している紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を、ループ搬送路411から第1の分岐機構419を通って、金庫部側の搬送路431へと搬送する。そうして、金庫部側搬送部43は、識別部25による識別結果、及び、予め設定された収納割当に従って、各紙幣を、金種別や正損別に応じて収納モジュール31に収納する。尚、オペレータが、収納操作ではなく、所定のキャンセル操作を行ったときには、一時保留部51に収納されている紙幣は、出金口231に払い出される。
【0058】
(出金処理)
出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を払い出す処理である。具体的には、上位端末及び/又は操作部55において、少なくとも金種と枚数とを指定する所定の出金操作を行うことによって、出金処理は開始する。収納部3は、図6に実線の矢印で示すように、指定された金種の紙幣を、それが収納されている収納モジュール31から、指定された枚数だけ繰り出す。金庫部側搬送部43は、繰り出された紙幣を、搬送路431を介して、処理部側搬送部41のループ搬送路411へと搬送する。処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送し、識別部25が識別を行った後に、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、出金口231に各紙幣が払い出される。出金処理の終了後には、記憶部59に記憶している在高を更新する。
【0059】
出金される紙幣の枚数が出金口231の容量よりも多いときには、出金する紙幣を、複数回に分けて払い出す分割出金処理を行う。すなわち、分割出金処理では、出金口231の容量以下の枚数の紙幣を出金口231に払い出した時点で処理が中断し、出金口231から紙幣が取り除かれた後、出金処理が再開する。こうした処理の中断と再開とが、出金される紙幣の枚数に応じて繰り返される。
【0060】
ここで、図6に示すように、一時保留部51や回収カセット53が装着されていない入出金機1においては、出金処理時に、識別部25による識別が不可であったリジェクト紙幣が発生したときに、そのリジェクト紙幣は、正常紙幣と共に、出金口231に払い出すことになる。このように出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、入出金機1及び/又は表示部511に、その旨(エラーメッセージ)が表示され、それによって、オペレータは、出金口231に払い出された紙幣に、リジェクト紙幣が含まれていることを認識することができる。
【0061】
(精査処理)
前述した入金処理時に、識別部25において識別及び計数をした後、各収納モジュール31に紙幣を収納するまでの搬送中に、搬送異常が発生する場合がある。搬送異常としては、搬送路411,431に沿って紙幣を搬送している際に紙幣が斜めに搬送される場合(斜行)、複数の紙幣が所定の間隔を隔てないで搬送される場合(連鎖)、及び、複数の紙幣が重なって搬送される場合(重送)を例示することができる。こうした搬送異常は、例えば識別部25の識別結果と各収納モジュール31に取り付けられた紙幣の検知センサの検知結果とを照合することによって検出することが可能である。
【0062】
入金処理時に、前述した連鎖や重送が発生したときには、搬送されている紙幣の順番がずれてしまって、紙幣が所望の収納モジュール31に収納されなくなってしまう場合がある。その場合は、各収納モジュール31に収納されている紙幣の金種や枚数が不確定になってしまう。そのため、入金処理時に搬送異常が発生したときには、各収納モジュール31に収納されている紙幣の金種と枚数とを確定させる処理が必要になる。この処理は、精査処理と呼ばれ、精査処理は、具体的には、第1の収納部である各収納モジュール31に収納されている紙幣を全て、一旦、繰り出して、識別部25によって識別及び計数をし、その後、その紙幣を再び、収納モジュール31に戻すことを行う。尚、収納モジュール31から繰り出した紙幣は、識別の前又は後に、第2の収納部である収納モジュール31に、一旦、収納される。一時保留部51を備えた入出金機1では、第2の収納部として、一時保留部51を用いるのがよい。
【0063】
ここで、入金処理時に搬送異常が発生したことは、前述したように、識別部25の識別結果と各収納モジュール31の検知センサの検知結果との照合によって検出することになるため、その検出タイミングは、全ての紙幣が収納モジュール31に収納された後になる。また、精査処理は、入金処理の際に、紙幣が一枚でも収納された収納モジュール31の全てに対して行う必要があると共に、該当する収納モジュール31に収納されている紙幣を全て繰り出さなければならない。そのため、精査処理に要する時間は長くなりやすい。また、収納モジュール31に収納されている紙幣の枚数が多いほど、精査に要する時間も長くなる。
【0064】
また、前述した出金処理時に、連鎖や重送といった搬送異常やリジェクト紙幣が生じたときにも、収納モジュール31から繰り出した紙幣の枚数が不確定になるため、その出金処理後の収納モジュール31の在高(つまり、収納モジュール31の収納枚数)が未確定になる。そのため、紙幣を一枚でも繰り出した収納モジュール31の全てに対して、精査処理を行うことによって、各収納モジュール31の在高を確定させる必要がある。
【0065】
しかしながら、入金処理後及び出金処理後の如何に拘わらず、精査処理の最中は入出金機1を使用することができないため、窓口業務に遅れが生じてしまうという不都合がある。
【0066】
そこで、この入出金機1では、精査処理に要する時間を短縮させるために、各収納モジュール31への紙幣の収納を工夫している。この工夫によって、精査処理時に収納モジュール31に収納されている紙幣の全てを繰り出すのではなく、少なくとも一部の紙幣を繰り出すことだけで、収納モジュール31についての精査処理が可能になり、精査処理に要する時間が短くなる。尚、以下において、収納モジュール31に収納されている一部の紙幣のみを繰り出して行う精査処理を、一部精査処理と呼ぶ場合がある。
【0067】
(収納モジュールへの紙幣の収納例)
図7は、収納モジュール31への紙幣の収納形態の一例を示している。同図における紙面左右方向の中央には、巻き取り式の収納モジュール31のリール311に巻き取られた紙幣の状態を、平面に展開して示している。図7の紙面上側は、リール311の径方向内方側に相当し、紙面下側は、リール311の径方向内方側に相当する。従って、図7の紙面上側の紙幣は、収納モジュール31に先に収納された紙幣であり、紙面下側の紙幣は、収納モジュール31に後から収納された紙幣であり、収納モジュール31から紙幣を繰り出すときには、紙面下側の紙幣から順に、繰り出されることになる。
【0068】
前述したように、入金処理時には、紙幣は、互いに所定間隔dを隔てながらリール311に巻き取られる。そして、図7に示す収納例では、入金処理毎(言い換えると、1取引毎に)、所定間隔dよりも広い区切りを設ける。
【0069】
また、記憶部59には、図6の左図に例示するように、収納モジュール31毎に、通し番号と、金種と、ブロック番号とを互いに紐付けした収納情報を記憶しておく。通し番号は、当該収納モジュール31に収納されている紙幣についての通し番号であり、この通し番号によって、当該収納モジュール31に収納されている紙幣の枚数を特定することが可能である。また、ここでいう「ブロック番号」は、収納モジュール31内での、区切りと区切りとの間の紙幣のまとまりを意味し、これは「取引番号」と置き換えることが可能である。従って、通し番号とブロック番号とを紐づけすることによって、通し番号、言い換えると収納モジュール31の在高情報と、ブロック番号、言い換えると区切りとが対応づけられることになる。図例では、一点鎖線の矢印で示すように、リール311に巻き取られた紙幣と収納情報とが対応づけられているとする。記憶部59に記憶されている、この収納情報は、入金処理を行う毎に更新される。
【0070】
このような状態で、入金処理時に搬送異常が発生した場合を考える。この搬送異常が発生した入金処理を、ここでは、図6に示すように「取引3」とする。また、この例では、取引3よりも以前に行われた入金処理として「取引1」及び「取引2」があり、これら取引1及び取引2では、搬送異常が発生せず、取引1の完了時点、及び、取引2の完了時点の収納モジュール31の在高は、記憶部59に記憶されている収納情報によって確定しているとする。
【0071】
取引3の最中に搬送異常が発生したため、その取引3の終了後には、該当する収納モジュール31に対する精査処理が必要になる。このときに収納モジュール31から繰り出す紙幣は、リール311に巻き取られた紙幣の内の、最初の区切りまでの紙幣とする。つまり、取引3において収納モジュール31に収納した紙幣のみを、収納モジュール31から繰り出して精査処理を実行する。少なくとも取引2の完了時点の収納モジュール31の在高は確定していることから、取引2までの在高情報と今回の精査結果とに基づいて、当該収納モジュール31の在高を確定させることが可能である。このように、紙幣の収納に際し、収納モジュール31の在高情報に対応づけられた目印(つまり、この例では区切りに相当する。)を設けることによって、収納モジュール31に収納されている紙幣を全て繰り出さなくても、一部の紙幣のみを繰り出すことによって精査処理を行うことが可能になる。これは、精査処理に要する時間を短縮する。ここで、紙幣の繰り出しは、前述の通り、取引3だけに限定すればよいが、例えば搬送異常が発生した入金処理(この例では、取引3)と、その一つ前の入金処理(この例では、取引2)とを含めるようにしてもよい。尚、紙幣の繰り出しは任意に設定することが可能である。
【0072】
ここで、区切りの検知は、例えば図7の右図に示すように、収納モジュール31の出入口近傍に配置された検知センサの信号に基づいて検知すればよい。つまり、紙幣を繰り出している最中に、紙幣同士の通常の間隔dよりも広い間隔を検出したときには、区切りに到達したと検知することが可能であり、そのタイミングで、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しを停止すればよい。尚、区切りの間隔は、搬送中の紙幣の詰まりを検出するためのジャムタイマの計時時間T1に相当する間隔よりも短く設定することが望ましい。こうすることによって、紙幣の詰まりの誤検出が回避される。
【0073】
一方、出金処理時に精査処理が必要な状況になったときには、その精査処理時には、収納モジュール31から、紙幣を任意の区切りまで繰り出せばよい。例えば最初の区切りまで紙幣を繰り出すことにすれば、繰り出し枚数を最も少なくすることができ、精査処理の時間の短縮に有利になる。そうして、前述した入金処理後の精査処理と同様に、出金処理後においても、一部精査処理が可能になる。
【0074】
ここで、取引毎に区切りを設けていたのでは、区切りの数が多くなりすぎて、収納モジュール31の収納容量が少なくなる可能性がある。そこで、取引と取引との間に区切りを設ける代わりに、収納モジュール31に収納した枚数が所定の枚数を超える毎に、区切りを設けるようにしてもよい。こうすることで、取引毎に区切りを設ける場合と比較して区切りの数が減るため、区切りが多くなることに起因して収納モジュール31の収納容量が少なくなることが回避される。一方で、前述の通り、精査処理の際に、収納モジュール31に収納されている紙幣の全てを繰り出す必要がないため、精査処理に要する時間が短縮する。このことは特に、収納容量の確保と精査時間の短縮とを、バランスよく両立させる上で有利である。
【0075】
一部精査処理は、収納モジュール31内に、その在高情報と関連づけた目印を設けていることによって可能になるから、前述した、紙幣同士の区切り以外の目印を利用することも可能である。以下、区切り以外の目印の例として、紙幣の記番号を利用する例と、収納モジュール31において紙幣を巻き取るためのテープの位置(テープの番地)を利用する例とについて説明する。すなわち、一部精査処理の目印としては、紙幣同士の区切りやテープの位置等、形態や物理量といった物理的な目印や、記番号等、データとして記憶される論理的な目印を用いることができる。これらの目印は、それぞれ単独で用いてもよいが、複数の目印を同時に用いることによって、目印の信頼性を高めることができる。
【0076】
(記番号を利用した紙幣の収納例)
図8は、記番号を利用する例における収納モジュール31への紙幣の収納形態の一例を示している。この例では、紙幣同士の区切りは不要であるため、同図に示すように、紙幣は、所定間隔dを隔ててリール311に巻き取られている。
【0077】
記番号を利用する場合は、収納モジュール31に紙幣を収納する際に、紙幣の記番号を読み取り、それを記憶しておく必要がある。記番号の読み取りは、例えば識別部25が行うようにしてもよい。その場合、識別部25は、紙幣の真偽、金種及び正損の識別の他に、紙幣に印字されている記番号を光学的に読み取る機能を有するように構成すればよい。尚、記番号の読み取りは識別部25ではなく、識別部25とは別の読取部を、例えばループ搬送路411上に配置してもよい。そうして読み取った記番号の情報は、図8の左図に例示するように、収納モジュール31毎に、通し番号と金種とに紐付けした収納情報として、記憶部59に記憶しておく。こうして、在高情報(つまり、通し番号)と目印(つまり、記番号)とが対応づけられる。図例では、一点鎖線の矢印で示すように、リール311に巻き取られた紙幣と、収納情報とが対応づけられているとする。記憶部59に記憶されている収納情報が入金処理を行う毎に更新される点は、前記と同様である。
【0078】
この構成では、例えば入金処理時に搬送異常が発生することによって、精査処理が必要な状況になれば、[当該入金処理において収納モジュール31に収納した枚数の紙幣]+[少なくとも一枚の紙幣]を収納モジュール31から繰り出す。そうして、繰り出した紙幣の識別及び計数を行うと共に、少なくとも最後に繰り出した紙幣については、その記番号を読み取る。読み取った記番号は、記憶部59に記憶している収納情報の記番号と照合する。読み取った記番号が収納情報に含まれているときには、その紙幣よりも前に収納している紙幣の金種及び枚数は、記憶部59に記憶されている収納情報によって確定している。そこで、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しを終了して、精査処理を終了する。読み取った記番号が収納情報に含まれていないときには、収納情報に含まれている記番号の紙幣が繰り出されるまで、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しを継続する。
【0079】
一方、出金処理時に精査処理が必要な状況になったときには、その精査処理時には、収納情報に含まれている記番号の紙幣が繰り出されるまで、収納モジュール31から紙幣を繰り出す。
【0080】
この例では、紙幣の記番号を目印として利用し、収納モジュール31に収納されている紙幣の少なくとも一部を繰り出すことだけで精査処理を可能にしているため、前述した区切りを利用する例と同様に、精査処理に要する時間を短縮することが可能である。また、この例では、リール311に巻き取る紙幣と紙幣との間に、相対的に広い間隔の区切りを設けないため、収納モジュール31の収納容量が減らないという利点がある。
【0081】
尚、紙幣の記番号の読み取り及び記憶を、全ての紙幣について行うのではなく、例えば所定枚数毎に記番号の読み取り及び記憶を行ってもよいし、各取引における最後の紙幣について、記番号の読み取り及び記憶を行ってもよい。また、それらを組み合わせてもよい。これらは、記憶部59の記憶容量の節約に有利である。尚、記番号の照合に際して、記番号の全ての一致を条件としてもよいし、少なくとも一部の一致を条件としてもよい。これは精査処理に要する時間の短縮に有利になる。また、少なくとも一部の一致が、複数枚の紙幣について成立することを条件としてもよい。
【0082】
(テープの番地を利用した紙幣の収納例)
図9は、テープの番地を利用する例を示している。前述したように、巻き取り式の収納モジュール31は、この例では、2枚のテープで紙幣を挟み込みながら、そのテープをリール311に巻き付けることによって紙幣を巻き取る。このため、図9に示すように、テープ315の長さ方向の位置と、リール311に巻き取られた各紙幣とが1対1に対応づけられる。そこで、この例では、テープ315の長さ方向の位置を、「テープの番地」と呼び、これを目印として利用する。テープ315の長さ方向の位置(つまり、テープの番地)は、収納モジュール31内に取り付けられかつ、テープ315の繰り出し及び巻き戻しの状態を検知するエンコーダの出力(パルス数)から取得することが可能である。例えば入出金機1の立ち上げ時(設置初期時)に、テープ315の繰り出し及び巻き戻しを行うことによってエンコーダの出力とテープの番地とを対応づけるキャリブレーションを行えばよい。
【0083】
この例では、入金処理時に、収納モジュール31に収納される紙幣が所定の枚数となる毎に、その紙幣の巻き取り位置に対応するテープの番地が、エンコーダの出力によって特定される。そして、テープの番地情報が、通し番号と金種とに紐付けされた収納情報とし、記憶部59に記憶される。これによって、在高情報(つまり、通し番号)と目印(つまり、テープの番地)とが対応づけられる。尚、所定の枚数毎にではなく、紙幣の一枚一枚について、テープ315の番地を記憶するようにしてもよい。また、取引を基準に、例えば取引の最初に収納された紙幣についてのテープ番地や、取引の最後に収納された紙幣についてのテープ番地を記憶するようにしてもよい。さらに、紙幣の枚数と取引とを組み合わせてもよい。図例では、一点鎖線の矢印で示すように、リール311に巻き取られた紙幣と、収納情報とが対応づけられているとする。記憶部59に記憶されている収納情報が入金処理を行う毎に更新される点は、前記と同様である。
【0084】
この構成では、例えば入金処理時に搬送異常が発生することによって、精査処理が必要な状況になれば、当該入金処理よりも以前に収納モジュール31に収納した紙幣であって、テープ315の番地が記憶されている紙幣まで、収納モジュール31から紙幣を繰り出して、精査処理を行う。つまり、テープ315の番地が記憶されている紙幣よりも前に収納している紙幣の金種及び枚数は、記憶部59が記憶している収納情報によって確定しているためである。
【0085】
一方、出金処理時に精査処理が必要な状況になったときも同様に、その精査処理時には、収納モジュール31から、テープ315の番地が記憶されている紙幣まで繰り出す。
【0086】
この例では、テープの番地を目印として利用し、収納モジュール31に収納されている紙幣の少なくとも一部を繰り出すことだけで精査処理を可能にしているため、前述した区切りを利用する例と同様に、精査処理に要する時間を短縮することが可能である。また、この例でも、リール311に巻き取る紙幣と紙幣との間に、相対的に広い間隔の区切りを設けないため、収納モジュール31の収納容量が減らないという利点がある。尚、紙幣とテープの番地とを対応付けることと同様に、紙幣と紙幣との間隔の部分とテープの番地とを対応付けても、同様の精査処理が可能である。
【0087】
(出金処理から計数処理への移行)
前述したように、この入出金機1は、回収カセット53が装着されていないときには、出金処理時に発生したリジェクト紙幣を、正常紙幣と共に、出金口231に払い出すように構成している(図6参照)。このため、リジェクト紙幣が発生したときには、出金口231に払い出された紙幣の特定及びその枚数の確定のために、計数処理が必要である。また、出金口231に払い出された紙幣の計数をしなければ、収納部3の在高が不確定になる場合もある。このように、この入出金機1ではリジェクト紙幣を出金口231に払い出すように構成していることから、出金処理の際にリジェクト紙幣が発生したときには、その後に、計数処理を必ず行わなければならない。計数処理は、オペレータが手で、又は、別の計数装置(例えば、紙幣計数機)を用いて行うことが一般的である。このことは、オペレータの作業を繁雑にする。また、リジェクト紙幣と正常紙幣との双方が出金口231に払い出された場合は、紙幣の枚数が多くなるかもしれない。紙幣の枚数が多くなればなるほど、計数処理のためのオペレータの負担は大きくなる。そのため、リジェクト紙幣を出金口231に払い出す構成においては、オペレータの負担を軽減しつつも、紙幣の管理を適切に行うことができる構成が望まれる。
【0088】
これに対し、この入出金機1では、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、オペレータの負担を軽減しつつ、貨幣の管理を適切に行うように、計数処理に移行するように構成されている。
【0089】
図10は、入出金機1の出金処理に係るフローチャートを示している。先ず、スタート後のステップSA1では、オペレータの操作によって、出金処理の実行が指定されたか否かを判定する。出金処理の実行が指定されていないとき(NOのとき)には、ステップSA1を繰り返す。つまり、出金処理の実行が指定されるまで待機する。出金処理の実行が指定されたとき(YESのとき)には、ステップSA2に移行する。ステップSA2では、前述の通りに、出金処理を実行する。
【0090】
続くステップSA3においては、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したか否かを判定する。リジェクト紙幣が発生しなかったとき(NOのとき)には、フローはそのまま終了する。一方、リジェクト紙幣が発生したとき(YESのとき)には、ステップSA4に移行する。このとき、記憶部59は、リジェクト紙幣が発生した出金処理のログを、計数処理が必要な出金処理のログとして、出金処理前の在高の情報と共に、記憶する。
【0091】
ステップSA4では、オペレータが計数処理の実行を指定したか否かを判定する。つまり、この入出金機1では、出金処理後の計数処理の実行の要否が、オペレータによって任意に選択することができるように構成されている。例えば引き続き次の出金処理を行って、窓口業務を停滞無く進める必要があるときは、次の出金処理を先に行い、その後に、計数処理を行う方がよい場合がある。そこで、この入出金機1では、出金処理後の計数処理の実行の要否を、オペレータが任意に選択する。このことは、入出金機1の使い勝手を高める。
【0092】
ステップSA4において、計数処理の実行が指定されなかったとき(NOのとき)には、ステップSA6に移行する。ステップSA6では、出金処理が、リジェクト紙幣が発生せずに正常に終了したか否かを判定し、正常に終了したとき(YESのとき)には、フローを終了する。一方、正常に終了しなかったとき(NOのとき)には、出金処理を再度行うべく、ステップSA2に戻る。
【0093】
また、ステップSA4において、計数処理の実行が指定されたとき(YESのとき)には、ステップSA5に移行し、計数処理を実行する。
【0094】
(出金処理後の計数処理)
出金処理後の計数処理は、出金口231に払い出された紙幣を全て(つまり、リジェクト紙幣と正常紙幣との双方を含んでいる)投入口211に投入し、その状態でオペレータが所定の開始操作を行うことによって開始される。図11に示すように、入金部21の繰り出し機構は、投入口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、各紙幣の識別と計数とを行う。処理部側搬送部41はまた、識別部25を通過した後の紙幣を、図11に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、全ての紙幣は、出金口231に、再び払い出される。このようにして行われた計数処理の結果は、上位端末及び/又は表示部511に表示され、このことによりオペレータは、計数結果を認識することが可能になる。
【0095】
出金処理後に、入出金機1が計数処理を行うことによって、オペレータは手で計数処理を行う必要がなくなり、オペレータの負担が軽減される。また、出金処理を行った入出金機1と同じ装置で、しかも、出金処理に連続して計数処理を行うことにより、オペレータの作業は簡略化するため、オペレータの負担は、より一層軽減される。また、入出金機1が出金処理と計数処理との双方を行うことは、履歴の管理、及び、ログの追跡に有利になる。
【0096】
計数処理の計数結果は、前述したように上位端末や表示部511に表示することによって、オペレータが、出金処理時に払い出された紙幣の枚数の確認に利用することが可能である。このことにより、オペレータが、手動で、出金処理後の収納部3の在高を確定させることも可能になる。一方、計数結果を利用して、入出金機1の収納部3の在高を自動で確定させてもよい。すなわち、この計数結果は、計数処理が必要な出金処理において払い出された紙幣の金種別枚数であるから、その出金処理を行う前の在高から、計数結果を減算することによって、出金処理後の在高を確定することが可能である。
【0097】
尚、計数処理時にリジェクト紙幣が発生した場合は、それに関するリジェクト情報(金種及び枚数)を、例えばオペレータが手動で入力し、記憶部59はそれを記憶する。そうして、計数処理の結果と、記憶部59に記憶しているリジェクト情報とに基づいて、入出金機1の在高を確定させればよい。
【0098】
出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、計数処理の実行と共に、精査処理を実行することによって、計数結果、精査結果及び出金処理前の収納部3の在高を、照合するようにしてもよい。こうした運用は、例えば出金処理から計数処理への移行に際し、出金口231から投入口211に紙幣を入れ替えたときに、紙幣の一部の投入漏れが生じてしまったような場合でも、そのことが明らかになる。つまり、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときの紙幣の管理を、より一層適切に行うことが可能になる。
【0099】
ここで、精査処理としては、収納モジュール31に収納されている紙幣の全てを繰り出して行う、通常の精査処理としてもよいし、前述した一部精査処理としてもよい。
【0100】
尚、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、計数処理に移行する前に、出金処理の実行を別途指定して、出金処理を正常に完了させることによって、窓口業務を速やかに完了させるようにしてもよい。計数処理は、正常な出金処理の完了後に、実行すればよい。この場合は、リジェクト紙幣が発生したときに出金口231に払い出された紙幣(リジェクト紙幣及び正常紙幣を含む)は、計数処理を開始するまで、別途、管理しておけばよい。
【0101】
また、オペレータが計数処理を行った場合には、その計数結果を、手動で入力することにより、記憶部59が記憶している、計数処理が必要な出金処理のログと、計数結果とを関連づけることが可能になり、出金処理後の在高が確定する。オペレータが計数処理を行った場合、入出金機1は計数処理を行う必要がないため、手動で計数結果が入力されたときには、計数処理への移行を解除すればよい。尚、計数処理が必要な出金処理のログが、記憶部59に複数、記憶されているときには、オペレータは計数結果を入力する際に、その計数結果を関連づける出金処理のログを、手動で選択すればよい。
【0102】
また、出金処理後の計数処理においては、図11に一点鎖線の矢印で示すように、収納部3に収納可能な正券は収納モジュール31に収納するようにしてもよい。こうした運用は、入出金機1の紙幣の利用効率を高める上で有利になる。
【0103】
尚、前記の構成では、出金処理の終了後に、オペレータが計数処理への移行を手動で行うようにしているが(図10のステップSA4)、出金処理から計数処理への移行を、自動的に行うようにしてもよい。
【0104】
また、分割出金処理を行うときには、全ての紙幣の払い出しが終了した後に、計数処理に移行してもよいし、リジェクト紙幣が発生した回の紙幣の払い出しが終了した時点で出金処理を中断し、計数処理に移行してもよい。この場合は、計数処理の終了後に、出金処理を再開すればよい。
【0105】
また、出金処理後の計数処理(尚、この明細書において「出金処理後」には、前述した出金処理を中断することが含まれる場合がある)としては、紙幣の識別及び計数を行うこと以外にも、紙幣の計数のみを行うようにしてもよい。入出金機1が払い出した紙幣の枚数と、計数結果(紙幣の枚数)とが一致すれば、出金処理の際の出金内容に基づいて、在高を確定することが可能である。
【0106】
また、図5に示すように、入出金機1に一時保留部51が装着されているときには、出金処理の際に発生したリジェクト紙幣を一時保留部51に収納するようにしてもよい。この構成では、正常紙幣のみを出金口231に払い出すことによって、出金処理を正常にかつ早期に終了させ、その後に、一時保留部51に収納したリジェクト紙幣の計数処理を行うようにしてもよい。一時保留部51に収納していたリジェクト紙幣は、出金処理において払い出された紙幣が出金口231から取り除かれた後で、出金口231に払い出し、計数処理の際に、その紙幣を投入口211に投入するようにしてもよい。また、リジェクト紙幣のみついての計数処理の結果に基づいて、収納モジュール31の在高を、手動で又は自動で、更新してもよい。特にリジェクト紙幣が、再度、識別不可と識別されたようなときには、オペレータが手動で、収納モジュール31の在高を更新してもよい。
【0107】
(収納モジュールの構成)
図12は、入出金機1から、収納部3を引き出した状態を示している。図1、12に示すように、入出金機1の金庫部13の前側には開閉扉132が取り付けられており、この開閉扉132を開くことによって金庫部13の前部開口を開放して、その内部に収容されている収納部3を、入出金機1の前側に引き出すことが可能に構成されている。尚、図12に示すように、回収カセット53が入出金機1に装着されているときには、その回収カセット53(又は追加の収納モジュール31が装着されているときには、その追加の収納モジュール31)も、収納部3と共に、入出金機1の前側に引き出される。
【0108】
図12において符号61は、図17にも示すように、概略矩形箱状の台板であり、この台板61は、底板611及び左右の側板612、613を含んでいて、その上部が上向きに開口している。台板61の左右の側面には、前後方向に延びるガイドレール618が取り付けられており(尚、図12では左側のガイドレールのみを図示する)、このガイドレール618は、図示は省略するが、入出金機1の防護筐体131の内側壁に設けられた支持部にスライド可能に支持されることによって、台板61を、入出金機1に対し前後方向に相対移動することを可能にする。台板61は、前後方向の長さが左右方向の幅に比べて長い縦長形状を有しており、詳しくは後述するが、この台板61の中には、4つの収納モジュール、より正確には下側の4個の収納モジュール31−2、31−4、31−6、31−8が前後方向に並んで配設される。そうして前後方向に並んだ収納モジュール31の各々に対し別の収納モジュール31が積み重ねられることによって、上側の4個の収納モジュール31−1、31−3、31−5、31−7が、前後方向に並んで配設されることになる。
【0109】
図13、14は、上側に配置される収納モジュールの外観を示しており、これらの図では理解容易のために、収納モジュールの内部の構成の図示を一部省略している。尚、以下においては、上側に配置される収納モジュールを、上収納モジュールと呼び、符号62を付す場合がある。ここで、図14は、図13に示す上収納モジュール62の状態から、その天地を反転させると共に、その左右を入れ替えた状態を示している。
【0110】
上収納モジュール62は、左右両側に配置された左側板621と、右側板622とを備えており、左側板621と右側板622との上部は、上板623によって互いに連結されている一方、左側板621と右側板622との下部は、前述した、収納モジュール31間の搬送路(つまり、搬送路431から分岐した分岐路であり、以下においてはこの分岐路を搬送路と呼び、符号432を付す(図19参照))の一部を構成する搬送部材624によって、互いに連結されている。搬送部材624は、その下面が搬送路432の上側の面を構成する第1の搬送面625とされている。この第1の搬送面625には、前述の振分機構433を構成する多数の分岐部材628が設けられ、この分岐部材628は一体で揺動する。分岐部材628が搬送路431へ突出すると、上収納モジュール62と搬送路431との間で紙幣の搬送が可能となる。分岐部材628が上収納モジュール内に退避すると、紙幣は上収納モジュール62を通過する。また、第1の搬送面625には、分岐部材628及び後述する下収納モジュール65の分岐部材658(図15参照)が移動するための多数の凹溝とが形成されていると共に、紙幣を搬送するための複数個の搬送ローラ629が設けられている。図14では、分岐部材628が第1の搬送面625から突出した状態を示している。
【0111】
また、上収納モジュール62の左側板621には、連結板63と位置決めピン641とが、それぞれ取り付けられている。連結板63は、上収納モジュール62の左側板621に固定される略矩形の本体部631と、この本体部631の前後の両端部から下向きに延びることによって、図19に拡大して示すように、上収納モジュール62の下端よりも下方に突出する一対の案内部632、632とを備えていて、全体として逆U字状を有している。各案内部632の下端部は、図19に明示されるように、外側方に向かって斜め下向きに傾斜しており、これによって、詳しくは後述するが、上収納モジュール62を、下収納モジュール65に対してその上方から取り付けるときに、上収納モジュール62を案内して、上収納モジュール62と下収納モジュール65との相対的な位置決めを行うようにしている。また、位置決めピン641は、連結板63の本体部631から、左側方に向かって突出して配設されている。
【0112】
さらに、図14に示すように、上収納モジュール62の右側板622の下端部には、その右側板622の外面から突出した位置決めピン642が取り付けられている。
【0113】
図15、16は、下側に配置される収納モジュールの外観を示しており、これらの図でも理解容易のために、収納モジュールの内部の構成の図示を一部省略している。尚、以下においては、下側に配置される収納モジュールを、下収納モジュール65と呼ぶ場合がある。ここで、図16は、図15に示す下収納モジュール65の状態から、その天地を反転させると共に、その左右を入れ替えた状態を示している。
【0114】
下収納モジュール65は、上収納モジュール62と同様に、左右両側に配置された左側板651と右側板652とを備えており、左側板651と右側板652との上部は、収納モジュール間の搬送路432の一部を構成する搬送部材653によって、互いに連結されている。この搬送部材653は、その上面が、搬送路432の下側の面を構成する第2の搬送面654とされている。この第2の搬送面654には、前述の振分機構433を構成する多数の分岐部材658が設けられ、この分岐部材658は一体で揺動する。分岐部材658が搬送路431へ突出すると、下収納モジュール65と搬送路431との間で紙幣の搬送が可能となる。分岐部材658が下収納モジュール内に退避すると、紙幣は下収納モジュール65を通過する。また、第2の搬送面654には、分岐部材658及び、前述の上収納モジュール62の分岐部材628(図14参照)が移動するための多数の凹溝とが形成されていると共に、紙幣を搬送するための複数個の搬送ローラ659が設けられている。図15では、分岐部材658が下収納モジュール65内に退避した状態を示している。
【0115】
下収納モジュール65の左側板651の上端部には、上収納モジュール62の連結板63及び位置決めピン641と係合する規制板66が取り付けられている。規制板66は、連結板63における一対の案内部632、632間に相当する長さを有する略矩形状であって、下収納モジュール65の上端よりも上方に突出するように起立して配設されている。規制板66の中間部には、その上端に開口すると共に、鉛直下向きに延びる切欠き661が形成されており、この切欠き661内に上収納モジュール62の位置決めピン641が挿入される。規制板66の上端部はまた、図19に明示されるように、外側方に向かって斜め上向きに傾斜しており、これによって、上収納モジュール62を、下収納モジュール65に対してその上方から取り付けるときに、上収納モジュール62を案内して、上収納モジュール62と下収納モジュール65との相対的な位置決めを行う。
【0116】
また、下収納モジュール65の右側板652の上端部には、上収納モジュール62の位置決めピン642と係合する規制片67が形成されている。この規制片67は、下収納モジュール65の右側板652から上方に突出するように設けられており、この規制片67の上端に開口する切り欠き671が、鉛直下向きに延びて形成されている。規制片67の上端部はまた、規制板66と同様に、外側方に向かって斜め上向きに傾斜している(図19参照)。
【0117】
下収納モジュール65の下端にはまた、この下収納モジュール65を、台板61に対して取り付け固定するための孔655と、挿入片656とが形成されている。孔655は、図17、18に示すように、台板61の底板611における所定の位置に設けられた突起614が内挿される孔であって、図15、16に示すように、下収納モジュール65の左側板651の下端面に形成されている。尚、図17では、突起614を3つのみ図示しているが、台板61には、そこに取り付けられる4つの下収納モジュール65に対応して、4つの突起614が前後方向に所定の間隔を空けて設けられている。また、挿入片656は、台板61の底板611における所定の位置に設けられたスリット615に挿入される片であって、図16、18に示すように、挿入片656は、下収納モジュール65の右側板652の下端面に、前後方向に間隔を空けて、下向きに突出するように2つ形成されている。尚、図17では、5つのスリット615のみを図示しているが、台板61には合計8個のスリット615が形成されている。
【0118】
また、台板61には、下収納モジュール65の位置決めのために、図17に示すように、平面視でL字状のガイド部材616と、仕切り板617とが取り付けられている。ガイド部材616は、台板61における右側板613に取り付けられて、下収納モジュール65の右後の角部に当接することによって、下収納モジュール65の位置決めを行う。ガイド部材616は、台板61に4つ取り付けられている。一方、仕切り板617は、台板61における左側板612から、内方に向かって拡がるように取り付けられており、前後方向に隣り合う2つの下収納モジュール65の間に位置して、各下収納モジュール65の位置決めを行う。仕切り板617は、台板61に3つ取り付けられている。
【0119】
搬送路432は、図19に示すように、第1の搬送面625と第2の搬送面654が向かい合って構成される。搬送路432を搬送される紙幣は、搬送ローラ629と搬送ローラ659に挟まれて搬送される。
【0120】
以上の構成の上収納モジュール62及び下収納モジュール65は、次のようにして、台板61(つまり、台板61が結合されている防護筐体131である本体)に取り付けられる。先ず、下収納モジュール65は、台板61の内部に向かって上から下向きに移動させることで、そこに取り付けられる。このときに、台板61のガイド部材616及び仕切り板617が、下収納モジュール65を所定の取付位置に案内する。そうして、図18に示すように、下収納モジュール65の挿入片656が台板61のスリット615に内挿され、それと共に、台板61の突起614が、下収納モジュール65の孔655に内挿されることによって、下収納モジュール65の、台板61に対する取り付けが完了する。下収納モジュール65は、挿入片656及びスリット615、孔655及び突起614、ガイド部材616、仕切り板617、並びに左右の側板612、613によって、台板61に対し前後左右の位置決めがなされる。同様にして、残り3つの下収納モジュール65のそれぞれを台板61に取り付ける。こうすることで、図示は省略するが、前後方向に4つ並んだ下収納モジュール65の、搬送部材653の上面によって、前後方向に延びる第2の搬送面654が構成される。
【0121】
上収納モジュール62は、台板61に取り付けられた4つの下収納モジュール65それぞれに対して取り付ける。こうして、下収納モジュール65を介して、台板61、つまり防護筐体131に取り付けられる。上収納モジュール62もまた、上から下向き移動させることで、下収納モジュール65に重ね合わせる。このときに、上収納モジュール62の連結板63の案内部632(つまり、外側方の斜め下向きに拡がる案内形状)、並びに、下収納モジュール65の規制板66(つまり、外側方の斜め上向きに拡がる案内形状)及び規制片67(つまり、外側方の斜め上向きに拡がる案内形状)によって、上収納モジュール62は、下収納モジュール65における所定の取付位置に案内される。そうして、図19に示すように、上収納モジュール62の左右の側板621、622のそれぞれが、下収納モジュール65の左右の側板651、652のそれぞれと突き当たると共に(図19の一点鎖線参照)、上収納モジュール62の位置決めピン641が下収納モジュール65の規制板66の切り欠き661に内挿されかつ、上収納モジュール62の位置決めピン642が下収納モジュール65の規制片67の切り欠き671内に挿入されて、上収納モジュール62と下収納モジュール65との連結、ひいては台板61に対する取り付けが完了する。上収納モジュール62と下収納モジュール65とは、位置決めピン641と切り欠き661とが互いに係合しかつ、位置決めピン642と切り欠き671とが互いに係合することによって、前後方向の位置決めがなされ、規制板66が連結板63の外面に当接しかつ、規制片67が上収納モジュール62の右側板652の外面に当接することによって、左右方向の位置決めがなされる。このようにして、各下収納モジュール65に対し上収納モジュール62を連結させることによって、前後方向に4つ並んだ上収納モジュール62の搬送部材624の下面によって、第2の搬送面654に向かい合う第1の搬送面625が、前後方向に延びて構成されるようになる。そうして、図19に示すように、第1の搬送面625及び第2の搬送面654により上収納モジュール62と下収納モジュール65との間で水平方向に延びる搬送路432が構成される。
【0122】
下収納モジュール65及び上収納モジュール62の、台板61に対する取り付けが全て完了すれば、台板61を防護筐体131内に押し込んで、各収納モジュール62、65を、筐体131内に収容する。この収容状態では、図2に概略的に示すように、防護筐体131内に取り付けている板ばね133が、各上収納モジュール62の上板623を下向きに押圧する。これにより、防護筐体131内で、上収納モジュール62及び下収納モジュール65がそれぞれ、動かないように保持されることになる。
【0123】
そして、入出金機1の動作中に、上収納モジュール62と下収納モジュール65との間の搬送路432においてジャムが発生したときには、先ず、図12に示すように、金庫部13の開閉扉132を開いて、台板61を入出金機1の前側に引き出す。これによって、上収納モジュール62及び下収納モジュール65を全て筐体131の外に引き出す。このように上収納モジュール62及び下収納モジュール65を引き出すことに伴い、板ばね133による保持が無くなるため、上収納モジュール62(及び下収納モジュール65)を、台板61から取り外すことが可能になる。
【0124】
各上収納モジュール62は、図12に矢印で示すように、前述した取り付け時とは逆に上向きに引き上げることによって、下収納モジュール65(言い換えると台板61)から容易に取り外すことができる。上収納モジュール62を取り外すことに伴い、下収納モジュール65によって構成される、搬送路432の第2の搬送面654を上向きに開放することが可能になる。このように、上収納モジュール62と下収納モジュール65とが互いに独立しており、上収納モジュール62を上向きに移動させることによって、下収納モジュール65から分離することが可能である。このことは、ジャム発生時の紙幣の取り除き作業を容易にする。
【0125】
つまり、上収納モジュールと下収納モジュールとを互いに結合した従来の構成例、例えば上収納モジュールと下収納モジュールとをヒンジ結合した構成例では、上収納モジュールは回動させることしかできず、しかも上収納モジュールを、下収納モジュールから分離することができない。このため、上収納モジュールを大きく回動させるためには、入出金機の周囲の特定の位置、言い換えると回動する上収納モジュールが移動する位置に、予め空きスペースを確保しなければならない。しかしながら、特定の位置に十分な空きスペースを確保することができないときには、上収納モジュールを大きく回動させることができず、その結果、搬送路を大きく開放することができなくなる。特にヒンジ結合を採用した場合、回動角度が小さいときには、ヒンジ軸に近い側の搬送路は、ほとんど開放することができない。このことは、紙幣の取り除き作業を困難にし、作業性を低下させる。
【0126】
これに対し、上収納モジュール62と下収納モジュール65とを分離可能にした前記の構成では、上収納モジュール62を下収納モジュール65から取り外した後、その上収納モジュール62を自由に移動させることが可能である。このため、入出金機1の周囲の特定の位置に空きスペースを確保しなければならないという制約は無くなる。つまり、入出金機の周囲の任意の位置に空きスペース(例えば紙幣の取り除きを行う作業者が立つためのスペース)があれば、上収納モジュール62を取り外して、開放された搬送路432から紙幣を取り除く作業は可能である。このことは、入出金機1の設置場所の如何に拘わらず、ジャム発生時の紙幣の取り除きを容易にする。
【0127】
また、上収納モジュール62を下収納モジュール65から取り外して分離することができるため、下収納モジュール65の第2の搬送面654を大きく開放することが可能になる。より詳細には、上収納モジュール62を取り外した後は、下収納モジュール65の第2の搬送面654は、真上からは勿論のこと、入出金機1の左側方からも、右側方からも視認することが可能になる。このことは、紙幣の取り除き作業を行う際の、作業位置の制約を無くし、その作業性を大幅に高める上で有利になる。
【0128】
また、前記の構成では、前後方向に4つ並んだ上収納モジュール62は互いに独立しているため、4つの上収納モジュール62を個別に取り外すことも可能である。そのため、ジャムの発生箇所に対応する上収納モジュール62のみを、取り外して紙幣を取り除くことが可能であり、作業性のさらなる向上が図られる。
【0129】
また、上収納モジュール62だけでなく、下収納モジュール65も互いに独立していて、台板61から個別に取り外しことが可能である。そのため、例えば上収納モジュール62と下収納モジュール65とを互いに連結した状態で、上収納モジュール62と下収納モジュール65との双方を、台板61から一度に取り外すことも可能である。これは、ジャム発生時に紙幣を取り除くことに限らず、収納モジュールのメンテナンスを容易化する上で有利な構成である。尚、上収納モジュール62を下収納モジュール65に取り付けた状態で、両者を分離不可能となるように互いに結合するロック機構を設けてもよい。この構成では、ロック機構が上収納モジュール62及び下収納モジュール65を結合しているときには、上収納モジュール62と下収納モジュール65との双方を、台板61から一度に取り外すことを容易に行うことができる。また、ロック機構が上収納モジュール62及び下収納モジュール65の結合を解除することによって、前述したように、上収納モジュール62を下収納モジュール65から取り外して、これら2つのモジュール62、65を分離することが可能になる。また、下収納モジュール65と台板61との間にも、同様のロック機構を設けてもよい。このようなロック機構を備えた構成では、前述した上収納モジュール62及び下収納モジュール65を保持するための板ばね133を省略することが可能である。
【0130】
また、ここでは、搬送路の第2の搬送面を、下収納モジュール65の上面によって構成しているが、搬送路の第2の搬送面は、必ずしも収納モジュールによって構成しなくてもよい。例えば第2の搬送面を有する搬送ユニットを備え、その搬送ユニット上に、前述した上収納モジュール62を配置する構成を採用してもよい。
【0131】
また、ここでは、搬送路432を水平方向に延びるように形成し、上収納モジュール62を、水平方向に直交する垂直方向に移動させることによって、本体に対する取り付け及び取り外しを行うようにしている。つまり、上収納モジュール62の着脱方向を垂直方向に設定しているが、これとは異なり、搬送路を例えば垂直方向に延びるように形成し、収納モジュールを、水平方向に移動させることによって、その取り付け及び取り外しを行うようにしてもよい。つまり、上収納モジュール62の着脱方向を水平方向に設定してもよい。
【0132】
尚、ここに開示する技術が適用される入出金機は、テラーカウンター用の入出金機には限定されない。例えば店舗等において、売上金を入金するための入出金機に、本技術を適用してもよい。
【0133】
また、ここに開示する技術は、紙幣の入金及び出金を行う入出金機ではなく、投入された紙幣の入金を行う入金機や、収容している紙幣の払い出しを行う出金機に適用してもよい。また、紙幣に限定されず、小切手やチケット等の紙葉類の処理装置に、広く適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、ここに開示した紙葉類処理装置は、ジャム発生時に紙葉類の取り除きを容易に行い得る点で有用である。
【符号の説明】
【0135】
1 入出金機(紙葉類処理装置)
131 防護筐体(本体)
3 収納部
31 収納モジュール
432 搬送路
62 上収納モジュール(第1の収納モジュール)
625 第1の搬送面
65 下収納モジュール(第2の収納モジュール)
654 第2の搬送面
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙幣、及びその他の紙葉類の処理を行う紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、現金自動取引装置に実装される紙幣入出金機を開示している。この紙幣入出金機は、第1〜第3の3つの金庫カセットを備えている。各金庫カセットは、紙幣入出金機に投入された紙幣を収納するカセットであり、3つの金庫カセットは、紙幣入出金機の下部ユニット内に前後方向に並んで配置されている。投入口に投入された紙幣は、装置内部に配設された搬送路に沿って搬送されて、各カセットに至る。この搬送路の一部は、各金庫カセットの上面と、前後方向に並んだ3つの金庫カセットに跨るように、これらの金庫カセットの上側で前後方向に延びて配設された搬送路ユニットとによって構成されている。紙幣は、各金庫カセットの上面(以下、この面を搬送面という場合がある)と、搬送路ユニットの下面(つまり、搬送面)との間に挟まれて搬送される。
【0003】
特許文献2は、例えば銀行等の金融機関におけるテラーカウンターに設置され、窓口業務を行うテラーが操作する紙幣入出金機を開示している。この入出金機は、紙幣を収納する収納ユニットを6個備えている。6個の収納ユニットは、その内の3個が前後方向に並んで配置されることで列を構成すると共に、その3個の収納ユニットのそれぞれに、別の収納ユニットが上下に重ねられて配置されている。言い換えると、上下に重ねられた一対の収納ユニットが、前後方向に三対、並んでいる。この入出金機では、上側の収納ユニットの列と、下側の収納ユニットの列との間に搬送路が形成されている。より詳細には、上側の列を構成する各収納ユニットは、その下面が搬送路の上側の搬送面を構成し、下側の列を構成する収納ユニットは、その上面が搬送路の下側の搬送面を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2538911号公報
【特許文献2】国際公開第2008/047094号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記の特許文献に記載されているような紙幣入出金機を含む、紙葉類処理装置においては、紙葉類の搬送中にその紙葉類が引っ掛かる等してジャムが発生する場合がある。ジャム発生時には装置を開けて、詰まっている紙葉類を搬送路から手で取り除かなければならない。
【0006】
このジャム発生時の紙幣の取り除きのために、特許文献1の紙幣入出金機では、前後方向に延びる搬送ユニットの後端部が、上向きに回動可能となるよう下部ユニットに取り付けられている。つまり、特許文献1の紙幣入出金機では、ジャム発生時には、下部ユニットを筐体から引き出した上で、搬送路ユニットを、その後端軸を中心に回動させることによって、搬送路ユニットと各金庫カセットとの間に形成された搬送路を開放し、紙幣を取り除くことを可能にしている。
【0007】
しかしながら、搬送路ユニットを軸支した構成では、特許文献1の図4に示されるように、回動角度が一定のときには、その軸から離れた側は相対的に大きく開放されて紙幣の取り除きが比較的容易になるのに対し、軸に近い側は余り大きく開放されないため、紙幣の取り除きがし難くなる。
【0008】
また、特許文献2の紙幣入出金機では、上下に重なる一対の収納ユニットの左側部同士、より正確には、上側の収納ユニットの左下端部と、下側の収納ユニットの左上端部とがヒンジ結合されており、これによって、上側の収納ユニットが、下側の収納ユニットの左外方に向かって回動することを可能にしている。つまり、特許文献2の紙幣入出金機では、ジャム発生時には、6個の収納ユニットを筐体から前側に引き出した上で、上側の収納ユニットを左外方に向かって回動させることによって、当該上側の収納ユニットと下側の収納ユニットとの間に形成された搬送路を開放し、紙幣を取り除くことを可能にしている。
【0009】
しかしながら、収納ユニット同士をヒンジ結合した構成では、特許文献1の紙幣入出金機と同様に、回動角度が一定のときには、ヒンジ結合部に近い側では、紙幣が取り除き難くなる。また、この特許文献2の紙幣入出金機では上側の収納ユニットを回動させるが、収納ユニットはその内部に紙幣を収納する分だけ、高さ方向に比較的、かさ高であり、上側の収納ユニットを、その左下端部を中心として左外方に向かって回動させたときには、左上端部付近が装置の左外方に大きく移動するようになる。そのため、例えば、紙幣入出金機の左側を壁に近づけて設置してしまうと、上側の収納ユニットが壁と干渉してしまうため、その上側の収納ユニットを大きく回動させることができず、紙幣の取り除きが極めて困難になるという不都合がある。
【0010】
また、収納ユニットを左外方に向かって回動させるためには、そのヒンジ結合側とは反対側である、装置の右側方に作業者が位置して、上側の収納ユニットを持ち上げなければならない。しかしながら、入出金機の設置スペースの如何によっては、そうした作業スペースを確保することも困難となって、ジャム発生時の紙幣の取り除きの作業性が悪化することもある。
【0011】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易な紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
ここに開示する装置は、紙葉類の処理を行う紙葉類処理装置である。この紙葉類処理装置は、互いに向かい合った第1及び第2の一対の搬送面を含みかつ、当該搬送面同士の間で前記紙葉類を搬送するよう構成された搬送路と、前記搬送路に沿って搬送される前記紙葉類を収納するよう構成された、少なくとも1の収納モジュールと、前記搬送路及び前記収納モジュールを内蔵する本体と、を備える。
【0013】
そして、前記収納モジュールは、所定の着脱方向に移動させることによって前記本体に対し取り付け及び取り外しが可能であり、当該収納モジュールを前記本体に対し取り付けたときには、前記収納モジュールの外面の一部が、前記第1の搬送面を形成する一方、前記収納モジュールを前記本体から取り外したときには、当該取り外し先の位置から前記着脱方向に見て、前記第2の搬送面が視認可能に開放される。
【0014】
ここで、「収納モジュール」は、搬送路に沿って搬送されてきた紙葉類を収納するモジュール、収納している紙葉類を繰り出して搬送路に沿って搬送させるモジュール、及び、その双方を行うモジュールを含む。
【0015】
また、「収納モジュールの取り外し」は、本体に対して収納モジュールが分離することを意味し、例えばヒンジ結合等のように、収納モジュールと本体とが結合したままで分離しないことは含まない。但し、例えばチェーン等のひも状の部材によって本体と収納モジュールとが互い連結されており、収納モジュールを本体から取り外して、収納モジュールと本体とを分離したときに、当該ひも状の部材を介して両者が互いに連結されている構成は含まれる。また、収納モジュールと本体との間に、両者の結合と非結合とを切り替えるロック機構を設けてもよい。この構成では、ロック機構が収納モジュールと本体とを結合しているときには、収納モジュールと本体とを分離することはできないが、ロック機構が収納モジュールと本体とを非結合にしているときには、収納モジュールと本体とを分離することができる。
【0016】
この構成によると、収納モジュールを本体に対し取り付けたときには当該収納モジュールの外面の一部によって第1の搬送面が形成される。紙葉類は、この第1の搬送面及び第2の搬送面によって構成される搬送路に沿って搬送される。
【0017】
この紙葉類処理装置においてジャムが発生したときには、収納モジュールを本体から取り外す。このことによって、搬送路における第2の搬送面を開放する。このとき収納モジュールは、所定の着脱方向に移動させることによって本体から取り外され、収納モジュールは本体から分離される。このため、収納モジュールと本体とを互いに結合した構成例、例えばヒンジ結合の採用によって収納モジュールと本体とを互いに結合した構成例では、その結合構造によって収納モジュールの動きが制約を受ける。つまり、ヒンジ結合の場合、収納モジュールはヒンジ軸を中心とした回動しかできない。このため、紙葉類処理装置の周囲における特定の位置(例えば収納モジュールの回動先の位置)に、収納モジュールの移動を許容する空きスペースを確保しなければならない。
【0018】
これに対し、収納モジュールと本体とを分離可能にした前記の構成では、空きスペースに関する制約がなくなる。このことは、紙葉類処理装置の周囲のどこに空きスペースがあっても、収納モジュールを本体から容易に取り外すことを可能にする。また、収納モジュールが本体から分離されるため、搬送路、ひいては第2の搬送面を、取り外しの方向から視認可能に大きく開放することが可能になる。つまり、収納モジュールを上向きに移動させた構成では、上から見て視認可能に第2の搬送面が開放され、収納モジュールを前向きに移動させた構成では、前から見て視認可能に第2の搬送面が開放される。そうして、ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易になる。
【0019】
前記収納モジュールは、第1及び第2の、少なくとも2つの収納モジュールを含んでいて、前記第1の収納モジュールが前記着脱方向の手前側になり、前記第2の収納モジュールが前記着脱方向の奥側になるように隣り合って、前記本体に取り付けられ、前記第1の収納モジュールは、その外面の一部が前記第1の搬送面を形成し、前記第2の収納モジュールは、その外面の一部が前記第2の搬送面を形成し、前記第1の収納モジュールは、前記本体に対して取り付け及び取り外しが可能であり、当該第1の収納モジュールを前記本体から取り外したときには、前記第2の収納モジュールによって形成される前記第2の搬送面が視認可能に開放される、としてもよい。
【0020】
ここで、「第1の収納モジュールは、前記本体に対して取り付け及び取り外しが可能」であることには、第1の収納モジュールを、本体に対して直接的に、取り付け及び取り外しを可能することの他にも、本体に対して取り付けられている第2の収納モジュールに対し、第1の収納モジュールの取り付け及び取り外しを可能にすることによって、第1の収納モジュールを、本体に対して間接的に、取り付け及び取り外しを可能することも含まれる。また、第1の収納モジュールと第2の収納モジュールとの間に、ロック機構を設けてもよい。
【0021】
この構成においても、前記と同様に、ジャム発生時には、着脱方向の手前側に取り付けられている第1の収納モジュールを本体から取り外すことによって、第1の収納モジュールを本体から分離し、第2の収納モジュールによって形成される第2の搬送面を大きく開放することが可能になる。こうして、第1の収納モジュールを容易に取り外すことと、第2の搬送面を大きく開放することとが組み合わさって、ジャム発生時の紙葉類の取り除き作業が容易になる。
【0022】
前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結可能に構成されており、前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結されて一体となった状態で、前記本体から取り外しが可能である、としてもよい。
【0023】
前記搬送路は、水平方向に実質的に平行な搬送方向に前記紙葉類を搬送し、前記収納モジュールの前記着脱方向は、前記搬送方向に実質的に直交する略垂直方向に設定されている、としてもよい。
【0024】
この構成は、紙葉類処理装置の本体から収納モジュールを水平方向に引き出し、その引き出した状態から収納モジュールを上向きに取り外す構成において、紙葉類の取り除きを容易にする上で有利である。この構成は特に、紙葉類処理装置の左右両側に空きスペースが十分に確保できないときでも、収納モジュールを上向きに容易に取り外して第2の搬送路を上向きに開放することによって、紙葉類を容易に取り除くことを可能にする。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、前記の紙葉類処理装置は、ジャム発生時の紙葉類の取り除きを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】紙幣入出金機の外観を示す斜視図である。
【図2】紙幣入出金機の内部構造を示す図である。
【図3】紙幣入出金機の動作制御に係る構成を示すブロック図である。
【図4】入金処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図5】一時保留部を利用する場合の、入金処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図6】出金処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図7】収納モジュールへの紙幣の収納状態の一例と、その収納状態を利用した一部精査処理を説明する図である。
【図8】紙幣の記番号管理を伴う、収納モジュールへの紙幣の収納形態の例を説明する図である。
【図9】テープの番地管理を伴う、収納モジュールへの紙幣の収納形態の例を説明する図である。
【図10】紙幣入出金機の出金処理に係るフローチャートである。
【図11】計数処理時における紙幣の搬送経路を示す図である。
【図12】収納部を金庫部から引き出した状態を示す斜視図である。
【図13】上収納モジュールの斜視図である。
【図14】上収納モジュールの天地を反転させた状態の斜視図である。
【図15】下収納モジュールの斜視図である。
【図16】下収納モジュールの天地を反転させた状態の斜視図である。
【図17】台板の斜視図である。
【図18】下収納モジュールと台板との結合箇所を拡大して示す断面図である。
【図19】上収納モジュールと下収納モジュールとの結合箇所を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、紙幣入出金機の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は例示である。図1は、紙幣入出金機(以下、単に入出金機という)1の外観を示している。この入出金機1は、例えば銀行のテラーカウンターに設置されかつ、この入出金機1を挟んだ左右二人のテラーによって共用で使用される。このため、この入出金機1は、基本的には左右対称に構成されている。
【0028】
この入出金機1は、詳しくは後述するが、投入口211に投入された紙幣を収納部3に収納する入金処理、及び、収納部3に収納している紙幣を出金口231に払い出す出金処理を少なくとも実行する。この入出金機1は、いわゆる循環式の入出金機であり、出金処理時に払い出す紙幣には、入金処理時に収納部3に収納した紙幣が含まれる。
【0029】
入出金機1は、図1及び2に示すように、上側の処理部11と、下側の金庫部13とに大別される。処理部11を構成する筐体111内には、投入口211を有する入金部21と、出金口231を有する出金部23と、紙幣の識別を行う識別部25と、入金部21、出金部23及び識別部25を相互に連結するループ搬送路411を含む処理部側搬送部41と、が配設されている。一方、金庫部13を構成する筐体131内には、複数の(図例では8個の)巻き取り方式の収納モジュール31を含んで構成された収納部3と、処理部側搬送部41のループ搬送路411と各収納モジュール31とを互いに接続する搬送路431を含む金庫部側搬送部43と、が配設されている。ここで、金庫部13を構成する筐体131は、処理部11を構成する筐体111とは異なり、その内部に格納している収納部3等を、所定以上のセキュリティレベルで防護するように構成された防護筐体131である。
【0030】
入金部21の投入口211は、前述したように、例えば入金処理の際に入金する紙幣を投入するための口である。投入口211は、処理部側筐体111の上面において上向きに開口していて、複数枚の紙幣を一度に受け入れ可能に構成されている。入金部21はまた、投入口211に投入された複数枚の紙幣を、一枚ずつ、ループ搬送路411に繰り出す繰り出し機構を備えている。
【0031】
出金部23の出金口231は、前述したように、例えば出金処理の際に紙幣を払い出すための口である。出金口231は、投入口211よりも装置手前側(図2の紙面右側)の、処理部側筐体111における上面から前面にかけての位置でかつ、斜め上方に向かって開口している。この出金口231も、投入口211と同様に、複数枚の紙幣を一度に保持可能に構成されている。
【0032】
識別部25は、ループ搬送路411上に配設されて、そのループ搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、その真偽、金種及び正損を識別するように構成されている。
【0033】
処理部側搬送部41は、処理部側筐体111内においてエンドレスに設けられたループ搬送路411を備えている。紙幣は、このループ搬送路411に沿って図2における時計回り方向及び反時計回り方向に搬送される。このループ搬送路411は、図2に例示するように、多数のローラ、複数のベルト及び複数のガイドの組み合わせによって構成されている。ループ搬送路411は、その搬送路に沿って、紙幣と紙幣との間に所定間隔を隔てた状態で、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。
【0034】
ループ搬送路411と投入口211との間は、投入路413によって互いに接続されており、投入口211に投入された紙幣は、この投入路413を通ってループ搬送路411まで搬送される。
【0035】
ループ搬送路411にはまた、払出路415が、紙幣の搬送方向を切り替える分岐機構417を介して接続されている。払出路415の先端は、出金口231に接続されている。分岐機構417は、ループ搬送路411を時計回り方向及び反時計回り方向に搬送されている紙幣を、そのままループ搬送路411上で搬送させるか、払出路415に引き込むかを切り替えるように動作する。この構成によって、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣は、分岐機構417の動作制御によって選択的に、払出路415を通って出金口231に搬送される。
【0036】
ループ搬送路411上にはまた、第1−第3の分岐機構419,4111,4113が設けられている。第1−第3の分岐機構419−4113はそれぞれ、互いに異なる3方向に延びる搬送路の集合位置において、所定方向から搬送されてくる紙幣を、それとは別の2方向それぞれに選択的に搬送させるように動作する。分岐機構の具体的な構成は、国際公開第2009/034758号に例示されている。
【0037】
より具体的に、第1の分岐機構419は、ループ搬送路411と金庫部側搬送部43の搬送路431との接続位置に設けられている。第1の分岐機構419は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的に、金庫部側搬送部43の搬送路431に送って、収納部3に収納させるか、又は、収納部3から繰り出されかつ、金庫部側搬送部43の搬送路431に沿って搬送されてきた紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
【0038】
また、第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411と接続路4115との接続位置に設けられている。接続路4115は、詳しくは後述するが、図2においては仮想的に示す一時保留部51と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第2の分岐機構4111は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、接続路4115に送って一時保留部51に収納させるか、又は、一時保留部51から繰り出した紙幣を、ループ搬送路411上で時計回り方向に搬送させるか、若しくは、反時計回り方向に搬送させるかの切り替えを行う。
【0039】
さらに、第3の分岐機構4113は、ループ搬送路411とカセット接続路4117との接続位置に設けられている。カセット接続路4117は、詳しくは後述するが、図2において仮想的に示す回収カセット53と、ループ搬送路411とを互いに連結する。第3の分岐機構4113は、ループ搬送路411上を時計回り方向又は反時計回りに搬送されている紙幣を、選択的にカセット接続路4117に送り、それを回収カセット53に収納するように動作する。
【0040】
収納部3は、前述したように、図例では第1−第8の巻き取り方式(言い換えると、テープ式)の収納モジュール31−1−31−8を含んで構成されている。ここで、以下の説明において、各々の収納モジュールを総称する場合には、符号「31」を付し、第1、第2、第3…の、各々の収納モジュールを区別する場合には、符号「31−1、31−2、31−3…」を付す。尚、収納モジュール31の数は特に限定されず、1個以上で、適宜の数を設定すればよい。8個の収納モジュール31は、この例では、装置の奥行き方向(図2の紙面左右方向)に4個並んで1列を構成すると共に、その列が上下方向に2列を構成するように積み重ねられている。
【0041】
この巻き取り方式の収納モジュール31は、特開2000−123219号公報に例示されるように、概略矩形箱状の筐体内に、紙幣をガイドする一枚のテープ、ガイド部材、及び、紙幣と共にテープを巻き取るリールを備えて構成されるか、又は、本件出願人が先に出願したPCT/JP2009/066729に例示されるように、筐体内に、紙幣を挟む2枚のテープ、及び、紙幣を挟み込んだ2枚のテープを巻き取るリールを備えて構成される。いずれの構成においても、巻き取り方式の収納モジュール31は、紙幣を一枚ずつ巻き取って収納すると共に、その収納した順番とは逆順で、紙幣を一枚ずつ繰り出す、いわゆる先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。各収納モジュール31は、この例では図2に示すように、それぞれテープが巻き付けられたテープリール313を2つ備え、テープリール313から引き出された2枚のテープによって紙幣を挟むように構成されており、紙幣は、互いに所定間隔を隔てながらリール311に巻き取られる。各収納モジュール31にはまた、筐体の内外を連通するように形成された出入口の近傍に、紙幣の通過を検知する検知センサが設けられている。
【0042】
金庫部側搬送部43の搬送路431は、処理部側搬送部41のループ搬送路411と同様に、ローラ、ベルト及びガイドの組み合わせによって構成されており、この搬送路431もまた、紙幣を一枚ずつ短手搬送する。搬送路431は、ループ搬送路411上の第1の分岐機構419から、鉛直下向きに延びると共に、その下端部において、奥行き方向の手前側(図2の紙面右側)及び奥側(図2の紙面左側)のそれぞれに分岐している。装置1の奥側に向かって延びる分岐路は、上下に積み重ねられた2列の収納モジュール31の間に配設されている。各収納モジュール31は、この分岐路上に設けられた振分機構433−1−433−8を介して分岐路に接続されている。各振分機構433−1−433−8は、後述する制御部513によって駆動制御され、そのことにより、紙幣が、識別部25によって識別された金種及び/又は正損等に応じて複数の収納モジュール31に振り分けられて収納されることになる。
【0043】
この入出金機1では、紙幣を一時的に保留する一時保留部51、及び、金庫部13の防護筐体131内に着脱可能に取り付けられる回収カセット53が、オプションで装着されるように構成されている。
【0044】
一時保留部51は、図2に一点鎖線で示すように、処理部側筐体111内における奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に装着される。一時保留部51は、前述したように、接続路4115を介して、第2の分岐機構4111に接続される。一時保留部51は、この例では、前述した収納モジュール31と同様に、2枚のテープを利用した巻き取り方式であり、紙幣の順番を入れ替えることなく、先入れ後出しとなるように紙幣を収納する。
【0045】
回収カセット53は、図2に一点鎖線で示すように、防護筐体131内における奥行き方向の手前側に設けられた空きスペース内に着脱可能に装着される。回収カセット53は、前述したように、カセット接続路4117を介して、ループ搬送路411上の第3の分岐機構4113に接続されている。回収カセット53は、巻き取り式の収納モジュール31や一時保留部51とは異なり、その内部に昇降する集積台531を備えかつ、この集積台上に紙幣を重ねて収納するように構成されている。これにより、回収カセット53に収納された紙幣は、そこから繰り出すことはできない。回収カセット53には、例えば入金処理時に投入口211に投入された紙幣の内、収納部3に収納しきれなかったオーバーフロー紙幣が収納される。また、出金処理時等に識別不可であったリジェクト紙幣が、この回収カセット53に収納される場合がある。従って、回収カセット53が未装着のときには、オーバーフロー紙幣やリジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。尚、回収カセット53は、図例に示すように箱状でなくても、袋状であってもよい。
【0046】
また、防護筐体131内の空きスペースには、回収カセット53が配設される代わりに、巻き取り式の収納モジュール31を、さらに追加して装着することが可能である。追加の収納モジュール31は、図2に示すように、例えば2個のモジュールが上下に積み重ねられて配設される場合があり、これら2個の収納モジュール31はそれぞれ、搬送路431の下端から奥行き方向の手前側に延びる分岐路に対し、前述した振分機構を介して接続される。
【0047】
図3は、入出金機1の動作制御に係る構成を示している。入出金機1は、例えば周知のマイクロコンピュータをベースとした制御部513を備えている。制御部513には、前述した入金部21、出金部23、第1−第nの収納モジュール31を含む収納部3、処理部側搬送部41、及び金庫部側搬送部43が、信号の送受信可能に接続されている。これらの各部21,23,3,41,43は、図示は省略するが、例えば搬送路を搬送されている紙幣を検知するといった機能を有する各種のセンサを含んでおり、各種センサの検知信号は制御部513に入力される。制御部513は、入力された検知信号等に基づいて制御信号を出力し、各部21,23,3,41,43は、その制御信号に従って動作をする。
【0048】
制御部513にはまた、識別部25が接続されており、識別部25は、識別結果を制御部513に提供する。さらに、図1等では図示を省略するが、テラー等の、この入出金機1を操作するオペレータに対するヒューマンインターフェース部分としての操作部55、入出金機1が、例えばLANやシリアルバスを通じて、図示を省略する上位端末及びその他の機器との間で信号の送受信を行うための通信部57、及び、各種の情報を記憶するための、例えばハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の汎用のストレージデバイスにより構成される記憶部59がそれぞれ、入出金機1に接続されている。
【0049】
記憶部59は、入出金機1が収納している紙幣の金種別枚数又は金額である在高を少なくとも記憶する。また、記憶部59は、収納モジュール31毎の在高も記憶する。
【0050】
前述したように、オプション機器である一時保留部51や回収カセット53が、この入出金機1に装着されるときには、それらの機器51,53もまた、制御部513に接続されることにより、制御部513が出力する制御信号に従って動作をする。また、入出金機1には、各種の情報を表示するための、例えばフラットパネルディスプレイからなる表示部511がオプション機器として装着可能に構成されており、この表示部511もまた、制御部513に接続される。
【0051】
制御部513は、通信部57を通じて受けた上位端末からの指令、及び/又は、操作部55を通じて受けた各種の指令に応じて、各部21,23,25,3,41,43,51,53,55,57,59,511の動作を制御する。このことにより、入出金機1は、以下に説明する入金処理及び出金処理を含む、各種処理を行う。入出金機1において実行した各種の処理の履歴は、記憶部59にログとして記憶される。
【0052】
(入金処理)
入金処理は、入出金機1に紙幣を入金(収納)する処理であり、投入口211に投入された紙幣は、識別部25による識別結果と、予め設定された収納割当とに従って、いずれかの収納モジュール31に収納される。より詳細に、入出金機1は、入金処理の際には、次のように動作する。すなわち、入金する紙幣を投入口211に投入した状態で、例えば上位端末及び/又は操作部55の操作によって入金処理の開始コマンドを、入出金機1に入力する。図4に矢印で示すように、入金部21の繰り出し機構は、投入口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、その紙幣の識別を行うと共に、計数を行う。処理部側搬送部41はまた、識別部25によって正常に識別された紙幣(この紙幣を、リジェクト紙幣の対の名称として正常紙幣と呼ぶ)を、図4に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から、第1の分岐機構419を通って金庫部側搬送部43の搬送路431へと搬送する。金庫部側搬送部43は、識別部25による識別結果、及び、予め設定された収納割当に従って、各紙幣を所定の収納モジュール31に収納する。すなわち、各紙幣は、金種別や正損別に応じて、いずれかの収納モジュール31に収納される。
【0053】
一方、処理部側搬送部41は、識別部25において真偽の識別ができない紙幣等、入出金機1がそのまま受け入れることができないリジェクト紙幣を、図4に一点鎖線の矢印で示すように、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、リジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。尚、入金処理時に発生したリジェクト紙幣は、投入口211に再度投入され、識別部25による識別が、もう一度行われることになる。
【0054】
また、入金処理時に、収納モジュール31が満杯になることに起因して収納できなくなった紙幣(つまり、オーバーフロー紙幣)も、出金口231に払い出される。尚、図示は省略するが、入出金機1に回収カセット53が装着されているときには、オーバーフロー紙幣は、回収カセット53に収納される。
【0055】
入金処理の終了後には、記憶部59に記憶している在高を更新する。
【0056】
(一時保留部がある場合の入金処理の例)
図4は、入出金機1に一時保留部51が装着されていない場合の入金処理の動作例を示している。これに対し、図5は、一時保留部51が入出金機1に装着されている場合の入金処理の動作例を示している。この動作例においても、入金部21の繰り出し機構は、図4と同様に、投入口211に投入された紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。処理部側搬送部41は、識別部25によって正常に識別された正常紙幣を、図5に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から、第2の分岐機構4111を通って一時保留部51に搬送し、そこに収納する。尚、リジェクト紙幣は、出金口231に払い出される。
【0057】
そうして、投入口211に投入された紙幣が全て繰り出されることによって、入金される紙幣の計数が全て完了したときには、上位端末、及び/又は、オプションの表示部511に計数結果が表示される。オペレータは、その計数結果を確認した上で、上位端末及び/又は操作部55において所定の収納操作を行う。このことによって、図5に破線の矢印で示すように、一時保留部51は、そこに収納している紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を、ループ搬送路411から第1の分岐機構419を通って、金庫部側の搬送路431へと搬送する。そうして、金庫部側搬送部43は、識別部25による識別結果、及び、予め設定された収納割当に従って、各紙幣を、金種別や正損別に応じて収納モジュール31に収納する。尚、オペレータが、収納操作ではなく、所定のキャンセル操作を行ったときには、一時保留部51に収納されている紙幣は、出金口231に払い出される。
【0058】
(出金処理)
出金処理は、入出金機1に収納されている紙幣を払い出す処理である。具体的には、上位端末及び/又は操作部55において、少なくとも金種と枚数とを指定する所定の出金操作を行うことによって、出金処理は開始する。収納部3は、図6に実線の矢印で示すように、指定された金種の紙幣を、それが収納されている収納モジュール31から、指定された枚数だけ繰り出す。金庫部側搬送部43は、繰り出された紙幣を、搬送路431を介して、処理部側搬送部41のループ搬送路411へと搬送する。処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送し、識別部25が識別を行った後に、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、出金口231に各紙幣が払い出される。出金処理の終了後には、記憶部59に記憶している在高を更新する。
【0059】
出金される紙幣の枚数が出金口231の容量よりも多いときには、出金する紙幣を、複数回に分けて払い出す分割出金処理を行う。すなわち、分割出金処理では、出金口231の容量以下の枚数の紙幣を出金口231に払い出した時点で処理が中断し、出金口231から紙幣が取り除かれた後、出金処理が再開する。こうした処理の中断と再開とが、出金される紙幣の枚数に応じて繰り返される。
【0060】
ここで、図6に示すように、一時保留部51や回収カセット53が装着されていない入出金機1においては、出金処理時に、識別部25による識別が不可であったリジェクト紙幣が発生したときに、そのリジェクト紙幣は、正常紙幣と共に、出金口231に払い出すことになる。このように出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、入出金機1及び/又は表示部511に、その旨(エラーメッセージ)が表示され、それによって、オペレータは、出金口231に払い出された紙幣に、リジェクト紙幣が含まれていることを認識することができる。
【0061】
(精査処理)
前述した入金処理時に、識別部25において識別及び計数をした後、各収納モジュール31に紙幣を収納するまでの搬送中に、搬送異常が発生する場合がある。搬送異常としては、搬送路411,431に沿って紙幣を搬送している際に紙幣が斜めに搬送される場合(斜行)、複数の紙幣が所定の間隔を隔てないで搬送される場合(連鎖)、及び、複数の紙幣が重なって搬送される場合(重送)を例示することができる。こうした搬送異常は、例えば識別部25の識別結果と各収納モジュール31に取り付けられた紙幣の検知センサの検知結果とを照合することによって検出することが可能である。
【0062】
入金処理時に、前述した連鎖や重送が発生したときには、搬送されている紙幣の順番がずれてしまって、紙幣が所望の収納モジュール31に収納されなくなってしまう場合がある。その場合は、各収納モジュール31に収納されている紙幣の金種や枚数が不確定になってしまう。そのため、入金処理時に搬送異常が発生したときには、各収納モジュール31に収納されている紙幣の金種と枚数とを確定させる処理が必要になる。この処理は、精査処理と呼ばれ、精査処理は、具体的には、第1の収納部である各収納モジュール31に収納されている紙幣を全て、一旦、繰り出して、識別部25によって識別及び計数をし、その後、その紙幣を再び、収納モジュール31に戻すことを行う。尚、収納モジュール31から繰り出した紙幣は、識別の前又は後に、第2の収納部である収納モジュール31に、一旦、収納される。一時保留部51を備えた入出金機1では、第2の収納部として、一時保留部51を用いるのがよい。
【0063】
ここで、入金処理時に搬送異常が発生したことは、前述したように、識別部25の識別結果と各収納モジュール31の検知センサの検知結果との照合によって検出することになるため、その検出タイミングは、全ての紙幣が収納モジュール31に収納された後になる。また、精査処理は、入金処理の際に、紙幣が一枚でも収納された収納モジュール31の全てに対して行う必要があると共に、該当する収納モジュール31に収納されている紙幣を全て繰り出さなければならない。そのため、精査処理に要する時間は長くなりやすい。また、収納モジュール31に収納されている紙幣の枚数が多いほど、精査に要する時間も長くなる。
【0064】
また、前述した出金処理時に、連鎖や重送といった搬送異常やリジェクト紙幣が生じたときにも、収納モジュール31から繰り出した紙幣の枚数が不確定になるため、その出金処理後の収納モジュール31の在高(つまり、収納モジュール31の収納枚数)が未確定になる。そのため、紙幣を一枚でも繰り出した収納モジュール31の全てに対して、精査処理を行うことによって、各収納モジュール31の在高を確定させる必要がある。
【0065】
しかしながら、入金処理後及び出金処理後の如何に拘わらず、精査処理の最中は入出金機1を使用することができないため、窓口業務に遅れが生じてしまうという不都合がある。
【0066】
そこで、この入出金機1では、精査処理に要する時間を短縮させるために、各収納モジュール31への紙幣の収納を工夫している。この工夫によって、精査処理時に収納モジュール31に収納されている紙幣の全てを繰り出すのではなく、少なくとも一部の紙幣を繰り出すことだけで、収納モジュール31についての精査処理が可能になり、精査処理に要する時間が短くなる。尚、以下において、収納モジュール31に収納されている一部の紙幣のみを繰り出して行う精査処理を、一部精査処理と呼ぶ場合がある。
【0067】
(収納モジュールへの紙幣の収納例)
図7は、収納モジュール31への紙幣の収納形態の一例を示している。同図における紙面左右方向の中央には、巻き取り式の収納モジュール31のリール311に巻き取られた紙幣の状態を、平面に展開して示している。図7の紙面上側は、リール311の径方向内方側に相当し、紙面下側は、リール311の径方向内方側に相当する。従って、図7の紙面上側の紙幣は、収納モジュール31に先に収納された紙幣であり、紙面下側の紙幣は、収納モジュール31に後から収納された紙幣であり、収納モジュール31から紙幣を繰り出すときには、紙面下側の紙幣から順に、繰り出されることになる。
【0068】
前述したように、入金処理時には、紙幣は、互いに所定間隔dを隔てながらリール311に巻き取られる。そして、図7に示す収納例では、入金処理毎(言い換えると、1取引毎に)、所定間隔dよりも広い区切りを設ける。
【0069】
また、記憶部59には、図6の左図に例示するように、収納モジュール31毎に、通し番号と、金種と、ブロック番号とを互いに紐付けした収納情報を記憶しておく。通し番号は、当該収納モジュール31に収納されている紙幣についての通し番号であり、この通し番号によって、当該収納モジュール31に収納されている紙幣の枚数を特定することが可能である。また、ここでいう「ブロック番号」は、収納モジュール31内での、区切りと区切りとの間の紙幣のまとまりを意味し、これは「取引番号」と置き換えることが可能である。従って、通し番号とブロック番号とを紐づけすることによって、通し番号、言い換えると収納モジュール31の在高情報と、ブロック番号、言い換えると区切りとが対応づけられることになる。図例では、一点鎖線の矢印で示すように、リール311に巻き取られた紙幣と収納情報とが対応づけられているとする。記憶部59に記憶されている、この収納情報は、入金処理を行う毎に更新される。
【0070】
このような状態で、入金処理時に搬送異常が発生した場合を考える。この搬送異常が発生した入金処理を、ここでは、図6に示すように「取引3」とする。また、この例では、取引3よりも以前に行われた入金処理として「取引1」及び「取引2」があり、これら取引1及び取引2では、搬送異常が発生せず、取引1の完了時点、及び、取引2の完了時点の収納モジュール31の在高は、記憶部59に記憶されている収納情報によって確定しているとする。
【0071】
取引3の最中に搬送異常が発生したため、その取引3の終了後には、該当する収納モジュール31に対する精査処理が必要になる。このときに収納モジュール31から繰り出す紙幣は、リール311に巻き取られた紙幣の内の、最初の区切りまでの紙幣とする。つまり、取引3において収納モジュール31に収納した紙幣のみを、収納モジュール31から繰り出して精査処理を実行する。少なくとも取引2の完了時点の収納モジュール31の在高は確定していることから、取引2までの在高情報と今回の精査結果とに基づいて、当該収納モジュール31の在高を確定させることが可能である。このように、紙幣の収納に際し、収納モジュール31の在高情報に対応づけられた目印(つまり、この例では区切りに相当する。)を設けることによって、収納モジュール31に収納されている紙幣を全て繰り出さなくても、一部の紙幣のみを繰り出すことによって精査処理を行うことが可能になる。これは、精査処理に要する時間を短縮する。ここで、紙幣の繰り出しは、前述の通り、取引3だけに限定すればよいが、例えば搬送異常が発生した入金処理(この例では、取引3)と、その一つ前の入金処理(この例では、取引2)とを含めるようにしてもよい。尚、紙幣の繰り出しは任意に設定することが可能である。
【0072】
ここで、区切りの検知は、例えば図7の右図に示すように、収納モジュール31の出入口近傍に配置された検知センサの信号に基づいて検知すればよい。つまり、紙幣を繰り出している最中に、紙幣同士の通常の間隔dよりも広い間隔を検出したときには、区切りに到達したと検知することが可能であり、そのタイミングで、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しを停止すればよい。尚、区切りの間隔は、搬送中の紙幣の詰まりを検出するためのジャムタイマの計時時間T1に相当する間隔よりも短く設定することが望ましい。こうすることによって、紙幣の詰まりの誤検出が回避される。
【0073】
一方、出金処理時に精査処理が必要な状況になったときには、その精査処理時には、収納モジュール31から、紙幣を任意の区切りまで繰り出せばよい。例えば最初の区切りまで紙幣を繰り出すことにすれば、繰り出し枚数を最も少なくすることができ、精査処理の時間の短縮に有利になる。そうして、前述した入金処理後の精査処理と同様に、出金処理後においても、一部精査処理が可能になる。
【0074】
ここで、取引毎に区切りを設けていたのでは、区切りの数が多くなりすぎて、収納モジュール31の収納容量が少なくなる可能性がある。そこで、取引と取引との間に区切りを設ける代わりに、収納モジュール31に収納した枚数が所定の枚数を超える毎に、区切りを設けるようにしてもよい。こうすることで、取引毎に区切りを設ける場合と比較して区切りの数が減るため、区切りが多くなることに起因して収納モジュール31の収納容量が少なくなることが回避される。一方で、前述の通り、精査処理の際に、収納モジュール31に収納されている紙幣の全てを繰り出す必要がないため、精査処理に要する時間が短縮する。このことは特に、収納容量の確保と精査時間の短縮とを、バランスよく両立させる上で有利である。
【0075】
一部精査処理は、収納モジュール31内に、その在高情報と関連づけた目印を設けていることによって可能になるから、前述した、紙幣同士の区切り以外の目印を利用することも可能である。以下、区切り以外の目印の例として、紙幣の記番号を利用する例と、収納モジュール31において紙幣を巻き取るためのテープの位置(テープの番地)を利用する例とについて説明する。すなわち、一部精査処理の目印としては、紙幣同士の区切りやテープの位置等、形態や物理量といった物理的な目印や、記番号等、データとして記憶される論理的な目印を用いることができる。これらの目印は、それぞれ単独で用いてもよいが、複数の目印を同時に用いることによって、目印の信頼性を高めることができる。
【0076】
(記番号を利用した紙幣の収納例)
図8は、記番号を利用する例における収納モジュール31への紙幣の収納形態の一例を示している。この例では、紙幣同士の区切りは不要であるため、同図に示すように、紙幣は、所定間隔dを隔ててリール311に巻き取られている。
【0077】
記番号を利用する場合は、収納モジュール31に紙幣を収納する際に、紙幣の記番号を読み取り、それを記憶しておく必要がある。記番号の読み取りは、例えば識別部25が行うようにしてもよい。その場合、識別部25は、紙幣の真偽、金種及び正損の識別の他に、紙幣に印字されている記番号を光学的に読み取る機能を有するように構成すればよい。尚、記番号の読み取りは識別部25ではなく、識別部25とは別の読取部を、例えばループ搬送路411上に配置してもよい。そうして読み取った記番号の情報は、図8の左図に例示するように、収納モジュール31毎に、通し番号と金種とに紐付けした収納情報として、記憶部59に記憶しておく。こうして、在高情報(つまり、通し番号)と目印(つまり、記番号)とが対応づけられる。図例では、一点鎖線の矢印で示すように、リール311に巻き取られた紙幣と、収納情報とが対応づけられているとする。記憶部59に記憶されている収納情報が入金処理を行う毎に更新される点は、前記と同様である。
【0078】
この構成では、例えば入金処理時に搬送異常が発生することによって、精査処理が必要な状況になれば、[当該入金処理において収納モジュール31に収納した枚数の紙幣]+[少なくとも一枚の紙幣]を収納モジュール31から繰り出す。そうして、繰り出した紙幣の識別及び計数を行うと共に、少なくとも最後に繰り出した紙幣については、その記番号を読み取る。読み取った記番号は、記憶部59に記憶している収納情報の記番号と照合する。読み取った記番号が収納情報に含まれているときには、その紙幣よりも前に収納している紙幣の金種及び枚数は、記憶部59に記憶されている収納情報によって確定している。そこで、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しを終了して、精査処理を終了する。読み取った記番号が収納情報に含まれていないときには、収納情報に含まれている記番号の紙幣が繰り出されるまで、収納モジュール31からの紙幣の繰り出しを継続する。
【0079】
一方、出金処理時に精査処理が必要な状況になったときには、その精査処理時には、収納情報に含まれている記番号の紙幣が繰り出されるまで、収納モジュール31から紙幣を繰り出す。
【0080】
この例では、紙幣の記番号を目印として利用し、収納モジュール31に収納されている紙幣の少なくとも一部を繰り出すことだけで精査処理を可能にしているため、前述した区切りを利用する例と同様に、精査処理に要する時間を短縮することが可能である。また、この例では、リール311に巻き取る紙幣と紙幣との間に、相対的に広い間隔の区切りを設けないため、収納モジュール31の収納容量が減らないという利点がある。
【0081】
尚、紙幣の記番号の読み取り及び記憶を、全ての紙幣について行うのではなく、例えば所定枚数毎に記番号の読み取り及び記憶を行ってもよいし、各取引における最後の紙幣について、記番号の読み取り及び記憶を行ってもよい。また、それらを組み合わせてもよい。これらは、記憶部59の記憶容量の節約に有利である。尚、記番号の照合に際して、記番号の全ての一致を条件としてもよいし、少なくとも一部の一致を条件としてもよい。これは精査処理に要する時間の短縮に有利になる。また、少なくとも一部の一致が、複数枚の紙幣について成立することを条件としてもよい。
【0082】
(テープの番地を利用した紙幣の収納例)
図9は、テープの番地を利用する例を示している。前述したように、巻き取り式の収納モジュール31は、この例では、2枚のテープで紙幣を挟み込みながら、そのテープをリール311に巻き付けることによって紙幣を巻き取る。このため、図9に示すように、テープ315の長さ方向の位置と、リール311に巻き取られた各紙幣とが1対1に対応づけられる。そこで、この例では、テープ315の長さ方向の位置を、「テープの番地」と呼び、これを目印として利用する。テープ315の長さ方向の位置(つまり、テープの番地)は、収納モジュール31内に取り付けられかつ、テープ315の繰り出し及び巻き戻しの状態を検知するエンコーダの出力(パルス数)から取得することが可能である。例えば入出金機1の立ち上げ時(設置初期時)に、テープ315の繰り出し及び巻き戻しを行うことによってエンコーダの出力とテープの番地とを対応づけるキャリブレーションを行えばよい。
【0083】
この例では、入金処理時に、収納モジュール31に収納される紙幣が所定の枚数となる毎に、その紙幣の巻き取り位置に対応するテープの番地が、エンコーダの出力によって特定される。そして、テープの番地情報が、通し番号と金種とに紐付けされた収納情報とし、記憶部59に記憶される。これによって、在高情報(つまり、通し番号)と目印(つまり、テープの番地)とが対応づけられる。尚、所定の枚数毎にではなく、紙幣の一枚一枚について、テープ315の番地を記憶するようにしてもよい。また、取引を基準に、例えば取引の最初に収納された紙幣についてのテープ番地や、取引の最後に収納された紙幣についてのテープ番地を記憶するようにしてもよい。さらに、紙幣の枚数と取引とを組み合わせてもよい。図例では、一点鎖線の矢印で示すように、リール311に巻き取られた紙幣と、収納情報とが対応づけられているとする。記憶部59に記憶されている収納情報が入金処理を行う毎に更新される点は、前記と同様である。
【0084】
この構成では、例えば入金処理時に搬送異常が発生することによって、精査処理が必要な状況になれば、当該入金処理よりも以前に収納モジュール31に収納した紙幣であって、テープ315の番地が記憶されている紙幣まで、収納モジュール31から紙幣を繰り出して、精査処理を行う。つまり、テープ315の番地が記憶されている紙幣よりも前に収納している紙幣の金種及び枚数は、記憶部59が記憶している収納情報によって確定しているためである。
【0085】
一方、出金処理時に精査処理が必要な状況になったときも同様に、その精査処理時には、収納モジュール31から、テープ315の番地が記憶されている紙幣まで繰り出す。
【0086】
この例では、テープの番地を目印として利用し、収納モジュール31に収納されている紙幣の少なくとも一部を繰り出すことだけで精査処理を可能にしているため、前述した区切りを利用する例と同様に、精査処理に要する時間を短縮することが可能である。また、この例でも、リール311に巻き取る紙幣と紙幣との間に、相対的に広い間隔の区切りを設けないため、収納モジュール31の収納容量が減らないという利点がある。尚、紙幣とテープの番地とを対応付けることと同様に、紙幣と紙幣との間隔の部分とテープの番地とを対応付けても、同様の精査処理が可能である。
【0087】
(出金処理から計数処理への移行)
前述したように、この入出金機1は、回収カセット53が装着されていないときには、出金処理時に発生したリジェクト紙幣を、正常紙幣と共に、出金口231に払い出すように構成している(図6参照)。このため、リジェクト紙幣が発生したときには、出金口231に払い出された紙幣の特定及びその枚数の確定のために、計数処理が必要である。また、出金口231に払い出された紙幣の計数をしなければ、収納部3の在高が不確定になる場合もある。このように、この入出金機1ではリジェクト紙幣を出金口231に払い出すように構成していることから、出金処理の際にリジェクト紙幣が発生したときには、その後に、計数処理を必ず行わなければならない。計数処理は、オペレータが手で、又は、別の計数装置(例えば、紙幣計数機)を用いて行うことが一般的である。このことは、オペレータの作業を繁雑にする。また、リジェクト紙幣と正常紙幣との双方が出金口231に払い出された場合は、紙幣の枚数が多くなるかもしれない。紙幣の枚数が多くなればなるほど、計数処理のためのオペレータの負担は大きくなる。そのため、リジェクト紙幣を出金口231に払い出す構成においては、オペレータの負担を軽減しつつも、紙幣の管理を適切に行うことができる構成が望まれる。
【0088】
これに対し、この入出金機1では、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、オペレータの負担を軽減しつつ、貨幣の管理を適切に行うように、計数処理に移行するように構成されている。
【0089】
図10は、入出金機1の出金処理に係るフローチャートを示している。先ず、スタート後のステップSA1では、オペレータの操作によって、出金処理の実行が指定されたか否かを判定する。出金処理の実行が指定されていないとき(NOのとき)には、ステップSA1を繰り返す。つまり、出金処理の実行が指定されるまで待機する。出金処理の実行が指定されたとき(YESのとき)には、ステップSA2に移行する。ステップSA2では、前述の通りに、出金処理を実行する。
【0090】
続くステップSA3においては、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したか否かを判定する。リジェクト紙幣が発生しなかったとき(NOのとき)には、フローはそのまま終了する。一方、リジェクト紙幣が発生したとき(YESのとき)には、ステップSA4に移行する。このとき、記憶部59は、リジェクト紙幣が発生した出金処理のログを、計数処理が必要な出金処理のログとして、出金処理前の在高の情報と共に、記憶する。
【0091】
ステップSA4では、オペレータが計数処理の実行を指定したか否かを判定する。つまり、この入出金機1では、出金処理後の計数処理の実行の要否が、オペレータによって任意に選択することができるように構成されている。例えば引き続き次の出金処理を行って、窓口業務を停滞無く進める必要があるときは、次の出金処理を先に行い、その後に、計数処理を行う方がよい場合がある。そこで、この入出金機1では、出金処理後の計数処理の実行の要否を、オペレータが任意に選択する。このことは、入出金機1の使い勝手を高める。
【0092】
ステップSA4において、計数処理の実行が指定されなかったとき(NOのとき)には、ステップSA6に移行する。ステップSA6では、出金処理が、リジェクト紙幣が発生せずに正常に終了したか否かを判定し、正常に終了したとき(YESのとき)には、フローを終了する。一方、正常に終了しなかったとき(NOのとき)には、出金処理を再度行うべく、ステップSA2に戻る。
【0093】
また、ステップSA4において、計数処理の実行が指定されたとき(YESのとき)には、ステップSA5に移行し、計数処理を実行する。
【0094】
(出金処理後の計数処理)
出金処理後の計数処理は、出金口231に払い出された紙幣を全て(つまり、リジェクト紙幣と正常紙幣との双方を含んでいる)投入口211に投入し、その状態でオペレータが所定の開始操作を行うことによって開始される。図11に示すように、入金部21の繰り出し機構は、投入口211の紙幣を一枚ずつ繰り出し、処理部側搬送部41は、各紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、各紙幣の識別と計数とを行う。処理部側搬送部41はまた、識別部25を通過した後の紙幣を、図11に実線の矢印で示すように、ループ搬送路411から分岐機構417を通って払出路415へと搬送する。そうして、全ての紙幣は、出金口231に、再び払い出される。このようにして行われた計数処理の結果は、上位端末及び/又は表示部511に表示され、このことによりオペレータは、計数結果を認識することが可能になる。
【0095】
出金処理後に、入出金機1が計数処理を行うことによって、オペレータは手で計数処理を行う必要がなくなり、オペレータの負担が軽減される。また、出金処理を行った入出金機1と同じ装置で、しかも、出金処理に連続して計数処理を行うことにより、オペレータの作業は簡略化するため、オペレータの負担は、より一層軽減される。また、入出金機1が出金処理と計数処理との双方を行うことは、履歴の管理、及び、ログの追跡に有利になる。
【0096】
計数処理の計数結果は、前述したように上位端末や表示部511に表示することによって、オペレータが、出金処理時に払い出された紙幣の枚数の確認に利用することが可能である。このことにより、オペレータが、手動で、出金処理後の収納部3の在高を確定させることも可能になる。一方、計数結果を利用して、入出金機1の収納部3の在高を自動で確定させてもよい。すなわち、この計数結果は、計数処理が必要な出金処理において払い出された紙幣の金種別枚数であるから、その出金処理を行う前の在高から、計数結果を減算することによって、出金処理後の在高を確定することが可能である。
【0097】
尚、計数処理時にリジェクト紙幣が発生した場合は、それに関するリジェクト情報(金種及び枚数)を、例えばオペレータが手動で入力し、記憶部59はそれを記憶する。そうして、計数処理の結果と、記憶部59に記憶しているリジェクト情報とに基づいて、入出金機1の在高を確定させればよい。
【0098】
出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、計数処理の実行と共に、精査処理を実行することによって、計数結果、精査結果及び出金処理前の収納部3の在高を、照合するようにしてもよい。こうした運用は、例えば出金処理から計数処理への移行に際し、出金口231から投入口211に紙幣を入れ替えたときに、紙幣の一部の投入漏れが生じてしまったような場合でも、そのことが明らかになる。つまり、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときの紙幣の管理を、より一層適切に行うことが可能になる。
【0099】
ここで、精査処理としては、収納モジュール31に収納されている紙幣の全てを繰り出して行う、通常の精査処理としてもよいし、前述した一部精査処理としてもよい。
【0100】
尚、出金処理時にリジェクト紙幣が発生したときには、計数処理に移行する前に、出金処理の実行を別途指定して、出金処理を正常に完了させることによって、窓口業務を速やかに完了させるようにしてもよい。計数処理は、正常な出金処理の完了後に、実行すればよい。この場合は、リジェクト紙幣が発生したときに出金口231に払い出された紙幣(リジェクト紙幣及び正常紙幣を含む)は、計数処理を開始するまで、別途、管理しておけばよい。
【0101】
また、オペレータが計数処理を行った場合には、その計数結果を、手動で入力することにより、記憶部59が記憶している、計数処理が必要な出金処理のログと、計数結果とを関連づけることが可能になり、出金処理後の在高が確定する。オペレータが計数処理を行った場合、入出金機1は計数処理を行う必要がないため、手動で計数結果が入力されたときには、計数処理への移行を解除すればよい。尚、計数処理が必要な出金処理のログが、記憶部59に複数、記憶されているときには、オペレータは計数結果を入力する際に、その計数結果を関連づける出金処理のログを、手動で選択すればよい。
【0102】
また、出金処理後の計数処理においては、図11に一点鎖線の矢印で示すように、収納部3に収納可能な正券は収納モジュール31に収納するようにしてもよい。こうした運用は、入出金機1の紙幣の利用効率を高める上で有利になる。
【0103】
尚、前記の構成では、出金処理の終了後に、オペレータが計数処理への移行を手動で行うようにしているが(図10のステップSA4)、出金処理から計数処理への移行を、自動的に行うようにしてもよい。
【0104】
また、分割出金処理を行うときには、全ての紙幣の払い出しが終了した後に、計数処理に移行してもよいし、リジェクト紙幣が発生した回の紙幣の払い出しが終了した時点で出金処理を中断し、計数処理に移行してもよい。この場合は、計数処理の終了後に、出金処理を再開すればよい。
【0105】
また、出金処理後の計数処理(尚、この明細書において「出金処理後」には、前述した出金処理を中断することが含まれる場合がある)としては、紙幣の識別及び計数を行うこと以外にも、紙幣の計数のみを行うようにしてもよい。入出金機1が払い出した紙幣の枚数と、計数結果(紙幣の枚数)とが一致すれば、出金処理の際の出金内容に基づいて、在高を確定することが可能である。
【0106】
また、図5に示すように、入出金機1に一時保留部51が装着されているときには、出金処理の際に発生したリジェクト紙幣を一時保留部51に収納するようにしてもよい。この構成では、正常紙幣のみを出金口231に払い出すことによって、出金処理を正常にかつ早期に終了させ、その後に、一時保留部51に収納したリジェクト紙幣の計数処理を行うようにしてもよい。一時保留部51に収納していたリジェクト紙幣は、出金処理において払い出された紙幣が出金口231から取り除かれた後で、出金口231に払い出し、計数処理の際に、その紙幣を投入口211に投入するようにしてもよい。また、リジェクト紙幣のみついての計数処理の結果に基づいて、収納モジュール31の在高を、手動で又は自動で、更新してもよい。特にリジェクト紙幣が、再度、識別不可と識別されたようなときには、オペレータが手動で、収納モジュール31の在高を更新してもよい。
【0107】
(収納モジュールの構成)
図12は、入出金機1から、収納部3を引き出した状態を示している。図1、12に示すように、入出金機1の金庫部13の前側には開閉扉132が取り付けられており、この開閉扉132を開くことによって金庫部13の前部開口を開放して、その内部に収容されている収納部3を、入出金機1の前側に引き出すことが可能に構成されている。尚、図12に示すように、回収カセット53が入出金機1に装着されているときには、その回収カセット53(又は追加の収納モジュール31が装着されているときには、その追加の収納モジュール31)も、収納部3と共に、入出金機1の前側に引き出される。
【0108】
図12において符号61は、図17にも示すように、概略矩形箱状の台板であり、この台板61は、底板611及び左右の側板612、613を含んでいて、その上部が上向きに開口している。台板61の左右の側面には、前後方向に延びるガイドレール618が取り付けられており(尚、図12では左側のガイドレールのみを図示する)、このガイドレール618は、図示は省略するが、入出金機1の防護筐体131の内側壁に設けられた支持部にスライド可能に支持されることによって、台板61を、入出金機1に対し前後方向に相対移動することを可能にする。台板61は、前後方向の長さが左右方向の幅に比べて長い縦長形状を有しており、詳しくは後述するが、この台板61の中には、4つの収納モジュール、より正確には下側の4個の収納モジュール31−2、31−4、31−6、31−8が前後方向に並んで配設される。そうして前後方向に並んだ収納モジュール31の各々に対し別の収納モジュール31が積み重ねられることによって、上側の4個の収納モジュール31−1、31−3、31−5、31−7が、前後方向に並んで配設されることになる。
【0109】
図13、14は、上側に配置される収納モジュールの外観を示しており、これらの図では理解容易のために、収納モジュールの内部の構成の図示を一部省略している。尚、以下においては、上側に配置される収納モジュールを、上収納モジュールと呼び、符号62を付す場合がある。ここで、図14は、図13に示す上収納モジュール62の状態から、その天地を反転させると共に、その左右を入れ替えた状態を示している。
【0110】
上収納モジュール62は、左右両側に配置された左側板621と、右側板622とを備えており、左側板621と右側板622との上部は、上板623によって互いに連結されている一方、左側板621と右側板622との下部は、前述した、収納モジュール31間の搬送路(つまり、搬送路431から分岐した分岐路であり、以下においてはこの分岐路を搬送路と呼び、符号432を付す(図19参照))の一部を構成する搬送部材624によって、互いに連結されている。搬送部材624は、その下面が搬送路432の上側の面を構成する第1の搬送面625とされている。この第1の搬送面625には、前述の振分機構433を構成する多数の分岐部材628が設けられ、この分岐部材628は一体で揺動する。分岐部材628が搬送路431へ突出すると、上収納モジュール62と搬送路431との間で紙幣の搬送が可能となる。分岐部材628が上収納モジュール内に退避すると、紙幣は上収納モジュール62を通過する。また、第1の搬送面625には、分岐部材628及び後述する下収納モジュール65の分岐部材658(図15参照)が移動するための多数の凹溝とが形成されていると共に、紙幣を搬送するための複数個の搬送ローラ629が設けられている。図14では、分岐部材628が第1の搬送面625から突出した状態を示している。
【0111】
また、上収納モジュール62の左側板621には、連結板63と位置決めピン641とが、それぞれ取り付けられている。連結板63は、上収納モジュール62の左側板621に固定される略矩形の本体部631と、この本体部631の前後の両端部から下向きに延びることによって、図19に拡大して示すように、上収納モジュール62の下端よりも下方に突出する一対の案内部632、632とを備えていて、全体として逆U字状を有している。各案内部632の下端部は、図19に明示されるように、外側方に向かって斜め下向きに傾斜しており、これによって、詳しくは後述するが、上収納モジュール62を、下収納モジュール65に対してその上方から取り付けるときに、上収納モジュール62を案内して、上収納モジュール62と下収納モジュール65との相対的な位置決めを行うようにしている。また、位置決めピン641は、連結板63の本体部631から、左側方に向かって突出して配設されている。
【0112】
さらに、図14に示すように、上収納モジュール62の右側板622の下端部には、その右側板622の外面から突出した位置決めピン642が取り付けられている。
【0113】
図15、16は、下側に配置される収納モジュールの外観を示しており、これらの図でも理解容易のために、収納モジュールの内部の構成の図示を一部省略している。尚、以下においては、下側に配置される収納モジュールを、下収納モジュール65と呼ぶ場合がある。ここで、図16は、図15に示す下収納モジュール65の状態から、その天地を反転させると共に、その左右を入れ替えた状態を示している。
【0114】
下収納モジュール65は、上収納モジュール62と同様に、左右両側に配置された左側板651と右側板652とを備えており、左側板651と右側板652との上部は、収納モジュール間の搬送路432の一部を構成する搬送部材653によって、互いに連結されている。この搬送部材653は、その上面が、搬送路432の下側の面を構成する第2の搬送面654とされている。この第2の搬送面654には、前述の振分機構433を構成する多数の分岐部材658が設けられ、この分岐部材658は一体で揺動する。分岐部材658が搬送路431へ突出すると、下収納モジュール65と搬送路431との間で紙幣の搬送が可能となる。分岐部材658が下収納モジュール内に退避すると、紙幣は下収納モジュール65を通過する。また、第2の搬送面654には、分岐部材658及び、前述の上収納モジュール62の分岐部材628(図14参照)が移動するための多数の凹溝とが形成されていると共に、紙幣を搬送するための複数個の搬送ローラ659が設けられている。図15では、分岐部材658が下収納モジュール65内に退避した状態を示している。
【0115】
下収納モジュール65の左側板651の上端部には、上収納モジュール62の連結板63及び位置決めピン641と係合する規制板66が取り付けられている。規制板66は、連結板63における一対の案内部632、632間に相当する長さを有する略矩形状であって、下収納モジュール65の上端よりも上方に突出するように起立して配設されている。規制板66の中間部には、その上端に開口すると共に、鉛直下向きに延びる切欠き661が形成されており、この切欠き661内に上収納モジュール62の位置決めピン641が挿入される。規制板66の上端部はまた、図19に明示されるように、外側方に向かって斜め上向きに傾斜しており、これによって、上収納モジュール62を、下収納モジュール65に対してその上方から取り付けるときに、上収納モジュール62を案内して、上収納モジュール62と下収納モジュール65との相対的な位置決めを行う。
【0116】
また、下収納モジュール65の右側板652の上端部には、上収納モジュール62の位置決めピン642と係合する規制片67が形成されている。この規制片67は、下収納モジュール65の右側板652から上方に突出するように設けられており、この規制片67の上端に開口する切り欠き671が、鉛直下向きに延びて形成されている。規制片67の上端部はまた、規制板66と同様に、外側方に向かって斜め上向きに傾斜している(図19参照)。
【0117】
下収納モジュール65の下端にはまた、この下収納モジュール65を、台板61に対して取り付け固定するための孔655と、挿入片656とが形成されている。孔655は、図17、18に示すように、台板61の底板611における所定の位置に設けられた突起614が内挿される孔であって、図15、16に示すように、下収納モジュール65の左側板651の下端面に形成されている。尚、図17では、突起614を3つのみ図示しているが、台板61には、そこに取り付けられる4つの下収納モジュール65に対応して、4つの突起614が前後方向に所定の間隔を空けて設けられている。また、挿入片656は、台板61の底板611における所定の位置に設けられたスリット615に挿入される片であって、図16、18に示すように、挿入片656は、下収納モジュール65の右側板652の下端面に、前後方向に間隔を空けて、下向きに突出するように2つ形成されている。尚、図17では、5つのスリット615のみを図示しているが、台板61には合計8個のスリット615が形成されている。
【0118】
また、台板61には、下収納モジュール65の位置決めのために、図17に示すように、平面視でL字状のガイド部材616と、仕切り板617とが取り付けられている。ガイド部材616は、台板61における右側板613に取り付けられて、下収納モジュール65の右後の角部に当接することによって、下収納モジュール65の位置決めを行う。ガイド部材616は、台板61に4つ取り付けられている。一方、仕切り板617は、台板61における左側板612から、内方に向かって拡がるように取り付けられており、前後方向に隣り合う2つの下収納モジュール65の間に位置して、各下収納モジュール65の位置決めを行う。仕切り板617は、台板61に3つ取り付けられている。
【0119】
搬送路432は、図19に示すように、第1の搬送面625と第2の搬送面654が向かい合って構成される。搬送路432を搬送される紙幣は、搬送ローラ629と搬送ローラ659に挟まれて搬送される。
【0120】
以上の構成の上収納モジュール62及び下収納モジュール65は、次のようにして、台板61(つまり、台板61が結合されている防護筐体131である本体)に取り付けられる。先ず、下収納モジュール65は、台板61の内部に向かって上から下向きに移動させることで、そこに取り付けられる。このときに、台板61のガイド部材616及び仕切り板617が、下収納モジュール65を所定の取付位置に案内する。そうして、図18に示すように、下収納モジュール65の挿入片656が台板61のスリット615に内挿され、それと共に、台板61の突起614が、下収納モジュール65の孔655に内挿されることによって、下収納モジュール65の、台板61に対する取り付けが完了する。下収納モジュール65は、挿入片656及びスリット615、孔655及び突起614、ガイド部材616、仕切り板617、並びに左右の側板612、613によって、台板61に対し前後左右の位置決めがなされる。同様にして、残り3つの下収納モジュール65のそれぞれを台板61に取り付ける。こうすることで、図示は省略するが、前後方向に4つ並んだ下収納モジュール65の、搬送部材653の上面によって、前後方向に延びる第2の搬送面654が構成される。
【0121】
上収納モジュール62は、台板61に取り付けられた4つの下収納モジュール65それぞれに対して取り付ける。こうして、下収納モジュール65を介して、台板61、つまり防護筐体131に取り付けられる。上収納モジュール62もまた、上から下向き移動させることで、下収納モジュール65に重ね合わせる。このときに、上収納モジュール62の連結板63の案内部632(つまり、外側方の斜め下向きに拡がる案内形状)、並びに、下収納モジュール65の規制板66(つまり、外側方の斜め上向きに拡がる案内形状)及び規制片67(つまり、外側方の斜め上向きに拡がる案内形状)によって、上収納モジュール62は、下収納モジュール65における所定の取付位置に案内される。そうして、図19に示すように、上収納モジュール62の左右の側板621、622のそれぞれが、下収納モジュール65の左右の側板651、652のそれぞれと突き当たると共に(図19の一点鎖線参照)、上収納モジュール62の位置決めピン641が下収納モジュール65の規制板66の切り欠き661に内挿されかつ、上収納モジュール62の位置決めピン642が下収納モジュール65の規制片67の切り欠き671内に挿入されて、上収納モジュール62と下収納モジュール65との連結、ひいては台板61に対する取り付けが完了する。上収納モジュール62と下収納モジュール65とは、位置決めピン641と切り欠き661とが互いに係合しかつ、位置決めピン642と切り欠き671とが互いに係合することによって、前後方向の位置決めがなされ、規制板66が連結板63の外面に当接しかつ、規制片67が上収納モジュール62の右側板652の外面に当接することによって、左右方向の位置決めがなされる。このようにして、各下収納モジュール65に対し上収納モジュール62を連結させることによって、前後方向に4つ並んだ上収納モジュール62の搬送部材624の下面によって、第2の搬送面654に向かい合う第1の搬送面625が、前後方向に延びて構成されるようになる。そうして、図19に示すように、第1の搬送面625及び第2の搬送面654により上収納モジュール62と下収納モジュール65との間で水平方向に延びる搬送路432が構成される。
【0122】
下収納モジュール65及び上収納モジュール62の、台板61に対する取り付けが全て完了すれば、台板61を防護筐体131内に押し込んで、各収納モジュール62、65を、筐体131内に収容する。この収容状態では、図2に概略的に示すように、防護筐体131内に取り付けている板ばね133が、各上収納モジュール62の上板623を下向きに押圧する。これにより、防護筐体131内で、上収納モジュール62及び下収納モジュール65がそれぞれ、動かないように保持されることになる。
【0123】
そして、入出金機1の動作中に、上収納モジュール62と下収納モジュール65との間の搬送路432においてジャムが発生したときには、先ず、図12に示すように、金庫部13の開閉扉132を開いて、台板61を入出金機1の前側に引き出す。これによって、上収納モジュール62及び下収納モジュール65を全て筐体131の外に引き出す。このように上収納モジュール62及び下収納モジュール65を引き出すことに伴い、板ばね133による保持が無くなるため、上収納モジュール62(及び下収納モジュール65)を、台板61から取り外すことが可能になる。
【0124】
各上収納モジュール62は、図12に矢印で示すように、前述した取り付け時とは逆に上向きに引き上げることによって、下収納モジュール65(言い換えると台板61)から容易に取り外すことができる。上収納モジュール62を取り外すことに伴い、下収納モジュール65によって構成される、搬送路432の第2の搬送面654を上向きに開放することが可能になる。このように、上収納モジュール62と下収納モジュール65とが互いに独立しており、上収納モジュール62を上向きに移動させることによって、下収納モジュール65から分離することが可能である。このことは、ジャム発生時の紙幣の取り除き作業を容易にする。
【0125】
つまり、上収納モジュールと下収納モジュールとを互いに結合した従来の構成例、例えば上収納モジュールと下収納モジュールとをヒンジ結合した構成例では、上収納モジュールは回動させることしかできず、しかも上収納モジュールを、下収納モジュールから分離することができない。このため、上収納モジュールを大きく回動させるためには、入出金機の周囲の特定の位置、言い換えると回動する上収納モジュールが移動する位置に、予め空きスペースを確保しなければならない。しかしながら、特定の位置に十分な空きスペースを確保することができないときには、上収納モジュールを大きく回動させることができず、その結果、搬送路を大きく開放することができなくなる。特にヒンジ結合を採用した場合、回動角度が小さいときには、ヒンジ軸に近い側の搬送路は、ほとんど開放することができない。このことは、紙幣の取り除き作業を困難にし、作業性を低下させる。
【0126】
これに対し、上収納モジュール62と下収納モジュール65とを分離可能にした前記の構成では、上収納モジュール62を下収納モジュール65から取り外した後、その上収納モジュール62を自由に移動させることが可能である。このため、入出金機1の周囲の特定の位置に空きスペースを確保しなければならないという制約は無くなる。つまり、入出金機の周囲の任意の位置に空きスペース(例えば紙幣の取り除きを行う作業者が立つためのスペース)があれば、上収納モジュール62を取り外して、開放された搬送路432から紙幣を取り除く作業は可能である。このことは、入出金機1の設置場所の如何に拘わらず、ジャム発生時の紙幣の取り除きを容易にする。
【0127】
また、上収納モジュール62を下収納モジュール65から取り外して分離することができるため、下収納モジュール65の第2の搬送面654を大きく開放することが可能になる。より詳細には、上収納モジュール62を取り外した後は、下収納モジュール65の第2の搬送面654は、真上からは勿論のこと、入出金機1の左側方からも、右側方からも視認することが可能になる。このことは、紙幣の取り除き作業を行う際の、作業位置の制約を無くし、その作業性を大幅に高める上で有利になる。
【0128】
また、前記の構成では、前後方向に4つ並んだ上収納モジュール62は互いに独立しているため、4つの上収納モジュール62を個別に取り外すことも可能である。そのため、ジャムの発生箇所に対応する上収納モジュール62のみを、取り外して紙幣を取り除くことが可能であり、作業性のさらなる向上が図られる。
【0129】
また、上収納モジュール62だけでなく、下収納モジュール65も互いに独立していて、台板61から個別に取り外しことが可能である。そのため、例えば上収納モジュール62と下収納モジュール65とを互いに連結した状態で、上収納モジュール62と下収納モジュール65との双方を、台板61から一度に取り外すことも可能である。これは、ジャム発生時に紙幣を取り除くことに限らず、収納モジュールのメンテナンスを容易化する上で有利な構成である。尚、上収納モジュール62を下収納モジュール65に取り付けた状態で、両者を分離不可能となるように互いに結合するロック機構を設けてもよい。この構成では、ロック機構が上収納モジュール62及び下収納モジュール65を結合しているときには、上収納モジュール62と下収納モジュール65との双方を、台板61から一度に取り外すことを容易に行うことができる。また、ロック機構が上収納モジュール62及び下収納モジュール65の結合を解除することによって、前述したように、上収納モジュール62を下収納モジュール65から取り外して、これら2つのモジュール62、65を分離することが可能になる。また、下収納モジュール65と台板61との間にも、同様のロック機構を設けてもよい。このようなロック機構を備えた構成では、前述した上収納モジュール62及び下収納モジュール65を保持するための板ばね133を省略することが可能である。
【0130】
また、ここでは、搬送路の第2の搬送面を、下収納モジュール65の上面によって構成しているが、搬送路の第2の搬送面は、必ずしも収納モジュールによって構成しなくてもよい。例えば第2の搬送面を有する搬送ユニットを備え、その搬送ユニット上に、前述した上収納モジュール62を配置する構成を採用してもよい。
【0131】
また、ここでは、搬送路432を水平方向に延びるように形成し、上収納モジュール62を、水平方向に直交する垂直方向に移動させることによって、本体に対する取り付け及び取り外しを行うようにしている。つまり、上収納モジュール62の着脱方向を垂直方向に設定しているが、これとは異なり、搬送路を例えば垂直方向に延びるように形成し、収納モジュールを、水平方向に移動させることによって、その取り付け及び取り外しを行うようにしてもよい。つまり、上収納モジュール62の着脱方向を水平方向に設定してもよい。
【0132】
尚、ここに開示する技術が適用される入出金機は、テラーカウンター用の入出金機には限定されない。例えば店舗等において、売上金を入金するための入出金機に、本技術を適用してもよい。
【0133】
また、ここに開示する技術は、紙幣の入金及び出金を行う入出金機ではなく、投入された紙幣の入金を行う入金機や、収容している紙幣の払い出しを行う出金機に適用してもよい。また、紙幣に限定されず、小切手やチケット等の紙葉類の処理装置に、広く適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、ここに開示した紙葉類処理装置は、ジャム発生時に紙葉類の取り除きを容易に行い得る点で有用である。
【符号の説明】
【0135】
1 入出金機(紙葉類処理装置)
131 防護筐体(本体)
3 収納部
31 収納モジュール
432 搬送路
62 上収納モジュール(第1の収納モジュール)
625 第1の搬送面
65 下収納モジュール(第2の収納モジュール)
654 第2の搬送面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の処理を行う紙葉類処理装置であって、
互いに向かい合った第1及び第2の一対の搬送面を含みかつ、当該搬送面同士の間で前記紙葉類を搬送するよう構成された搬送路と、
前記搬送路に沿って搬送される前記紙葉類を収納するよう構成された、少なくとも1の収納モジュールと、
前記搬送路及び前記収納モジュールを内蔵する本体と、を備え、
前記収納モジュールは、所定の着脱方向に移動させることによって前記本体に対し取り付け及び取り外しが可能であり、当該収納モジュールを前記本体に対し取り付けたときには、前記収納モジュールの外面の一部が、前記第1の搬送面を形成する一方、前記収納モジュールを前記本体から取り外したときには、当該取り外し先の位置から前記着脱方向に見て、前記第2の搬送面が視認可能に開放される紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記収納モジュールは、第1及び第2の、少なくとも2つの収納モジュールを含んでいて、前記第1の収納モジュールが前記着脱方向の手前側になり、前記第2の収納モジュールが前記着脱方向の奥側になるように隣り合って、前記本体に取り付けられ、
前記第1の収納モジュールは、その外面の一部が前記第1の搬送面を形成し、前記第2の収納モジュールは、その外面の一部が前記第2の搬送面を形成し、
前記第1の収納モジュールは、前記本体に対して取り付け及び取り外しが可能であり、当該第1の収納モジュールを前記本体から取り外したときには、前記第2の収納モジュールによって形成される前記第2の搬送面が視認可能に開放される請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結可能に構成されており、
前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結されて一体となった状態で、前記本体から取り外しが可能である請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記搬送路は、水平方向に実質的に平行な搬送方向に前記紙葉類を搬送し、
前記収納モジュールの前記着脱方向は、前記搬送方向に実質的に直交する略垂直方向に設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【請求項1】
紙葉類の処理を行う紙葉類処理装置であって、
互いに向かい合った第1及び第2の一対の搬送面を含みかつ、当該搬送面同士の間で前記紙葉類を搬送するよう構成された搬送路と、
前記搬送路に沿って搬送される前記紙葉類を収納するよう構成された、少なくとも1の収納モジュールと、
前記搬送路及び前記収納モジュールを内蔵する本体と、を備え、
前記収納モジュールは、所定の着脱方向に移動させることによって前記本体に対し取り付け及び取り外しが可能であり、当該収納モジュールを前記本体に対し取り付けたときには、前記収納モジュールの外面の一部が、前記第1の搬送面を形成する一方、前記収納モジュールを前記本体から取り外したときには、当該取り外し先の位置から前記着脱方向に見て、前記第2の搬送面が視認可能に開放される紙葉類処理装置。
【請求項2】
前記収納モジュールは、第1及び第2の、少なくとも2つの収納モジュールを含んでいて、前記第1の収納モジュールが前記着脱方向の手前側になり、前記第2の収納モジュールが前記着脱方向の奥側になるように隣り合って、前記本体に取り付けられ、
前記第1の収納モジュールは、その外面の一部が前記第1の搬送面を形成し、前記第2の収納モジュールは、その外面の一部が前記第2の搬送面を形成し、
前記第1の収納モジュールは、前記本体に対して取り付け及び取り外しが可能であり、当該第1の収納モジュールを前記本体から取り外したときには、前記第2の収納モジュールによって形成される前記第2の搬送面が視認可能に開放される請求項1に記載の紙葉類処理装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結可能に構成されており、
前記第1及び第2の収納モジュールは互いに連結されて一体となった状態で、前記本体から取り外しが可能である請求項2に記載の紙葉類処理装置。
【請求項4】
前記搬送路は、水平方向に実質的に平行な搬送方向に前記紙葉類を搬送し、
前記収納モジュールの前記着脱方向は、前記搬送方向に実質的に直交する略垂直方向に設定されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の紙葉類処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−226494(P2012−226494A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92345(P2011−92345)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】
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