説明

紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構

【課題】紙葉類収納カセットから紙葉類を一枚ごと繰出す際の繰出し負荷を低減させる紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構を提供する。
【解決手段】紙幣収納カセット21の紙幣収納部27には多枚数の積載紙幣から成る紙幣束28が予め収納される。紙幣収納部27は下部側面に紙幣を外部に繰出す繰出口22を有し、繰出口22の近傍に紙幣束28の最下部の紙幣43を順次繰出口22に繰出す繰出機構39を備えている。繰出機構39の後方にはカセット底板29の底面29a上に摺動自在に配置された紙幣長調整ガイド33を備えている。紙幣長調整ガイド33の下端部両側から水平に繰出口22方向に伸び出す軸受け保持部40にそれぞれ2個の軸受41が保持され、軸受41には回転シャフト42が軸支されている。回転シャフト42は紙幣束28の後方底面に接触し、紙幣の繰出し方向に沿って回転自在に配設されている。繰出し紙幣43の底面はカセット底板29と摺接することなく繰出し負荷が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類収納カセットから紙葉類を一枚ごと繰出す際の繰出し負荷を低減させる紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図6(a)に示すATM(automated teller [telling] machine:現金自動入出金機)のような紙幣入出金機能を有する装置において、紙幣出金部に装着される同図(b)に示すような紙幣収納カセットがある。
【0003】
図6(a)に示すATM1は、装置全体を内包する筐体2と、筐体2の中に配設された紙幣出金機3を備えている。紙幣出金機3には、図6(b)に示すような紙幣収納カセット4が装着されている。
【0004】
紙幣収納カセット4は、紙幣収納部5を備えている。紙幣収納部5には多枚数の紙幣が積載された紙幣束6が予め収納されている。紙幣収納カセット4は下部横方向に繰出口7を備え、その繰出口7の近傍には、紙幣収納カセット4の底面8から僅かに周面を除かせて第1の繰出ローラ9が配設されている。
【0005】
紙幣束6の上面左端部には、紙幣束加圧部11が不図示の付勢部材により下方に付勢されて紙幣束6の左端部底面を繰出ローラ9に向けて押圧している。第1の繰出ローラ9より繰出口7側に、第2の繰出ローラ12と捌き部材13から成る紙幣束分離部14が配置されている。繰出口7の外には、紙幣出金機3側の繰出紙幣引き抜き部15が配置されている。
【0006】
ATM1が顧客に紙幣を払い出すときは、先ず、ATM1の制御部等から紙幣出金機3に対し指定枚数の紙幣の出金要求がなされ、紙幣出金機3の紙幣収納カセット4から指定された枚数の紙幣が一定間隔ごとに1枚ずつ紙幣出金機3側に繰出される。
【0007】
紙幣収納カセット4から繰り出された紙幣は、繰出口7から紙幣出金機引き抜き部15にて紙幣出金機3側に引き抜かれる。その後、紙幣搬送部を通過し、指定枚数になるまで紙幣一時収納部に蓄積される。指定枚数に到達後、紙幣束として一括して出金口に放出され、顧客によって受け取られる。
【0008】
上記の図6(a),(b)では、紙幣収納カセット4が1個の場合の例を示しているが、1台の紙幣出金機に2つの紙幣収納カセットを装着し、同一駆動源で2つの紙幣収納カセットの紙幣繰出しを行うものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、この特許文献1の場合も、紙幣収納カセットから紙幣を繰出す機構と原理は図6(b)の場合と同一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−027870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図6(b)に示した紙幣束6は、紙幣束6自身の自重によりその下面部が紙幣収納カセット4の底面8に押圧されている。そして、紙幣束6の最下部の紙幣は、上に積載されている紙幣束6と紙幣収納カセット4の底面8との間に挟まれている形となる。
【0011】
したがって、紙幣の繰出しの際は、繰出される最下部一枚の紙幣は、表裏両面から接触圧による摩擦抵抗を受けるため、紙幣束6の紙幣枚数の量が多い場合には、繰出せなくなるという問題が発生する。
【0012】
このため、図6(b)に示すように紙幣収納カセット内に紙幣を平らに積み上げていく紙幣縦積み式の紙幣収納カセットの収納可能な紙幣の枚数は、紙幣を立てた状態で横に並べていく紙幣横積み式の紙幣収納カセットの収納可能な紙幣枚数と比べて必然的に少なくなるという問題があった。
【0013】
この問題を解決するためには、紙幣束加圧部からの紙幣束への加圧力を上げて紙幣と繰出ローラとの接触力を上げる方法がある。しかし、同時に紙幣同士の接触力も上がることとなって、紙幣分離部を2枚又は3枚と複数枚の紙幣が通過し、複数の紙幣が同時に繰出される問題が発生する。
【0014】
また、紙幣収納カセットから繰り出た後の紙幣出金機引き抜き部での引き抜きにも、より大きな引き抜き力を必要とする。そうすると、繰出動作の有無により、紙幣出金機引き抜き部における負荷に大きな差が生じ、紙幣出金機側モータにかかる負荷トルクに大きな変動が生じる。
【0015】
このため、紙幣出金機側モータとなるステッピングモータが脱調したり、その脱調を防止するため高価な高トルクモータを配設しなければならないなどの問題が生じる。ところが特許文献1には、上記の問題点については何らの記載もなく、勿論、上記の問題点の解決策についても何ら記載がない。
【0016】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、紙葉類収納カセットから紙葉類を一枚ごと繰出す際の繰出し負荷を低減させる紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構は、紙葉類収納カセットに設けられた紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構であって、上記紙葉類収納カセットは、紙葉類を内部に収納し、下部側面に上記紙葉類を外部に繰出すための繰出口を有し、該繰出口の近傍に上記紙葉類を外部に繰出す繰出機構を備え、該繰出機構と、該繰出機構が上記紙葉類の底面に接する上記紙葉類の端部とは反対側端部と、の間において、上記紙葉類の底面に接し、上記紙葉類の繰出し方向に沿って回転自在であり、上記紙葉類収納カセットの底部に配置された回転体から成る、ように構成される。
【0018】
上記回転体は、例えば、上記紙葉類収納カセットの上記繰出口とは反対側の内壁下部に連結された軸受保持部に固定された軸受により回転自在に支持され、上記紙葉類の繰出し方向に直交するよう配置され、上記紙葉類の底面に接する複数のシャフトからなる、ように構成される。
【0019】
また、上記回転体は、例えば、上記紙葉類収納カセットの上記繰出口とは反対側の内壁下部に連結された軸受保持部に両端を固定され且つ上記紙葉類の繰出し方向に直交するよう配置された複数のシャフトにそれぞれ外嵌し、上記紙葉類の底面に接する複数のローラからなる、ように構成される。
【0020】
上記回転体は、上記紙葉類収納カセットの底面に形成された凹部に嵌入し、上部円周の一部のみを上記紙葉類収納カセットの底面よりも上方に突出するよう配置された単体のローラからなる、
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構。
【0021】
また、上記軸受保持部が下部に連結された上記繰出口とは反対側の上記内壁は、上記紙葉類収納カセットに収納される上記紙葉類の寸法に応じて該紙葉類の上記繰出口とは反対側の端部に当接するよう移動可能である、ように構成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、紙葉類収納カセットの底部に繰出機構と紙葉類の底面に接する複数の回転体を設けるので、紙葉類収納カセットから紙葉類を繰り出す力及び繰り出した紙葉類を引き抜く力が、従来と比べて減少されるので、紙幣収納カセットに収納可能な紙葉類の最大枚数を増加させることができるという効果を奏する。
【0023】
また、紙葉類収納カセットから紙葉類を繰り出す力及び繰り出した紙葉類を引き抜く力が、従来と比べて減少されるので、回転トルクの低い安価なモータを使用することができて、電力面からも製品価格面からも経済的であるという効果を奏する。
【0024】
また、紙葉類収納カセットから紙葉類を繰り出す力及び繰り出した紙葉類を引き抜く力が、従来と比べて減少されるため、繰出ローラ及び紙幣出金機側引き抜き部の回転系にかかる負荷が軽減されると共に負荷の変動幅が小さくなるので、関係部材が高寿命化されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)は本発明の実施例1に係る紙幣収納カセットを備えた紙幣出金機の構成を模式的に示す断面図、(b)は紙幣収納カセットの構成を詳細に示す図である。
【図2】実施例1に係る紙幣収納カセットの繰出負荷低減機構の動作状態を説明する図である。
【図3】(a),(b)は、紙幣収納部に収納される紙幣の紙幣長に合わせる紙幣長調整ガイドの動作を示す図である。
【図4】(a)は実施例2に係る紙幣収納カセットの構成を示す平面図、(b)はその側面図である。
【図5】(a)は実施例3に係る紙幣収納カセットの構成を示す平面図、(b)はその側面図である。
【図6】(a)は従来のATM(automated teller [telling] machine)の構成を簡略に示す図、(b)はその紙幣収納カセットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1(a)は、実施例1に係る紙幣収納カセットを備えた紙幣出金機の構成を模式的に示す断面図であり、図1(b)は紙幣収納カセットの構成を詳細に示す図である。
図1(a)に示す紙幣出金機20は、内部に紙幣収納カセット21を備えている。紙幣収納カセット21は、内部に紙葉類としての紙幣を収納し、下部側面に紙幣を外部に繰出すための繰出口22を有している。
【0028】
紙幣出金機20の本体装置側は、上記の繰出口22から繰り出される紙幣を引き抜く引抜部23と、この引抜部23により引き抜かれた紙幣を搬送する搬送部24と、搬送された紙幣を指定された出金枚数まで一時的に集積する一時収納部25と、出金枚数まで集積された紙幣を一時収納部25から搬出して顧客に払い出す払出口26を備えている。
【0029】
上記の紙幣収納カセット21は、図1(b)に示すように、下部横方向に上述した繰出口22を形成されている紙幣収納部27を備えている。紙幣収納部27には多枚数の紙幣が積載されて成る紙幣束28が予め収納されている。
【0030】
紙幣収納カセット21は、カセット底板29と、繰出口側にある前板31と、前板31の両側(図面奥行き方向手前と向う側)に沿い付けるように立設され、紙幣束28の繰出口側の端部位置を規制する規制ガイド32とを備えている。
【0031】
更に、紙幣収納カセット21は、カセット底板29の後部底面29a上に摺動自在に配置された紙幣長調整ガイド33を備えている。紙幣長調整ガイド33は、紙幣束28の繰出口反対側端部(後端部)を、紙幣長に合わせて規制する。
【0032】
更に、紙幣収納カセット21は、図では見えない図面奥行き方向手前と向う側の合わせて2枚の横板を備えている。これら2枚の横板と、カセット底板29と、規制ガイド32と、紙幣長調整ガイド33とで、上述した紙幣収納部27が形成されている。
【0033】
また、紙幣収納カセット21には、繰出口22の近傍に、紙幣収納部27の前部(繰出口22側)底面29bから僅かに周面を除かせて第1の繰出ローラ34が配設されている。紙幣束28の前部上面には、紙幣束加圧部材35が圧接している。
【0034】
紙幣束加圧部材35は、規制ガイド32内に配置されている図では見えない付勢部材により下方に付勢されて、紙幣束28の前部底面を第1の繰出ローラ34に向けて押圧している。
【0035】
上述した紙幣長調整ガイド33は、紙幣束28を紙幣収納部27に収納するに際し、金種により紙幣束28の長さが異なるため、紙幣束28の前端下部を第1の繰出ローラ34に当接させるため、各金種の紙幣束28の紙幣長の繰り出し方向の後端に合わせて位置を調整されている。
【0036】
また、第1の繰出ローラ34より繰出口22側に、第2の繰出ローラ36と捌き部材37とから成る紙幣束分離部38が配置されている。これら第1の繰出ローラ34、第2の繰出ローラ36、及び捌き部材37により繰出機構39が形成されている。
【0037】
繰出機構39の紙幣束分離部38は、第1の繰出ローラ34により紙幣収納部27から繰り出される紙幣の重送を規制し、一枚の紙幣のみが繰出口22から繰り出されるようにしている。
【0038】
第1の繰出ローラ34より後方は傾斜のある段差部29cが形成され、段差部29cの後方は上述したカセット底板後部底面29aに連続している。このカセット底板後部底面29a上に配置された紙幣長調整ガイド33には、その下端部両側から水平に繰出口22方向に伸び出す軸受け保持部40が形成されている。
【0039】
軸受け保持部40には、それぞれ2個の軸受41が保持されている。これら2個の軸受41の対向する軸受41間にそれぞれ回転シャフト42が軸支されている。回転シャフト42は、紙幣の繰出し方向に直交するよう配置され、繰出機構39と同一の高さで紙幣束28の後方底面に接触し、紙幣の繰出し方向に沿って回転自在に配設されている。
【0040】
回転シャフト42はカセット底板後部底面より上部に位置し、紙幣束28の後端は回転シャフト42の上に乗っているため、紙幣束28の最下部と紙幣収納カセット21のカセット底板29の後部底面29aとの間には間隙44が形成されている。
【0041】
したがって、紙幣束28の最下部の紙幣43は、繰出機構39によって繰り出される直前まで、前部の下面が第1の繰出ローラ34のみに接触し、前部の上面は第1の繰出ローラ34との接触部に当たる部分が紙幣束28のみに接触する。
【0042】
そして、紙幣43の後部下面は回転シャフト42のみに接触し、紙幣43の後部上面は回転シャフト42との接触部に当たる部分が紙幣束28のみに接触している。上記の軸受け保持部40、軸受41、及び回転シャフト42は本例における紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構を形成している。
【0043】
図2は、本例の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構の動作状態を説明する図である。尚、図2には、説明に必要な部分において、図1(a),(b)と同一の構成部分には図1(a),(b)と同一の番号を付与して示している。
【0044】
図2において、繰出機構39が始動すると、繰出機構39により紙幣束28の最下部の一枚の紙幣43が繰出口22から繰り出され、その紙幣43が引抜部23により繰出口22から引き抜かれる。
【0045】
このとき、紙幣43の繰り出し初期においては、図1(b)に示すように、紙幣束28の最下部後端、つまり紙幣43の後端43aは、下面が回転シャフト42のみに接触し、上面が回転シャフト42との接触部に当たる部分のみが残りの紙幣束28に接触している。
【0046】
そして、紙幣43の先端への引き抜きが加わる図2に示す繰り出しの後半では、紙幣43の後端43aは、上面は残りの紙幣束28から離れ、下面は後端部がカセット底板後部底面29aに摺接するだけである。
【0047】
このように、紙幣43の繰り出しと引き抜きに対して加わる抵抗力は、最初は紙幣43の上面に接触する紙幣束28との摩擦抵抗と、第1の繰出ローラ34に圧接する部分の摩擦抵抗であり、従来のようなカセット底板後部底面29aとの接触による摩擦抵抗は存在しない。
【0048】
また、紙幣43の上面に接触する紙幣束28との摩擦抵抗は、紙幣43と回転シャフト42との接触部に当たる部分の上面と紙幣束28との接触による摩擦抵抗であり、従来のようなカセット底板後部底面29aとの全面接触に対応する紙幣束28との全面接触による摩擦抵抗ではないので極めて弱い摩擦抵抗である。
【0049】
そして、紙幣43の先端が引抜部23に到達するタイミングで紙幣43の後端が前方(繰出口22方向)の回転シャフト42から抜けるように、回転シャフト42が位置設定されているため、繰り出しの後半では、紙幣43は紙幣束28との弱い摩擦抵抗からも開放され、第1の繰出ローラ34に圧接する部分の摩擦抵抗のみが、引き抜き完了まで継続する。
【0050】
尚、回転シャフト42の位置設定は、紙幣長調整ガイド33の下端部内側から前方の回転シャフト42までの距離が、紙幣束分離部38から引抜部23までの距離とほぼ等しくなるように、回転シャフト42の位置を設定する。
【0051】
本例において、繰り出される紙幣43が繰り出しと引き抜きにおいて受ける抵抗力すなわち負荷は、紙幣束28が繰出ローラ34と回転シャフト42に乗っているため、紙幣束28の自重の約半分と、紙幣束加圧部35からの圧力とで形成される。
【0052】
このように、本例の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構では、従来と比べ、繰り出し対象の紙幣43は、紙幣束28によるカセット底板面29への接触が無く、且つ、紙幣束28の自重の影響が1/2に減少するので、実測によれば本例では従来よりも引き抜き負荷が3割から4割減少する。
【0053】
図3(a),(b)は、紙幣収納部27に収納される紙幣の紙幣長に合わせる紙幣長調整ガイド33の動作を示す図である。図1(a)は紙幣長の比較的長い紙幣束28aを紙幣収納部27に収納した状態を示し、図1(b)は紙幣長の比較的短い紙幣束28bを紙幣収納部27に収納した状態を示している。
【0054】
前述したように、回転シャフト42は、紙幣長調整ガイド33の下端部内側から前方の回転シャフト42までの距離nが、紙幣束分離部38から引抜部23までの距離mとほぼ等しくなるように位置設定されている。
【0055】
そして、本例では、図1(b)に示したように、紙幣長調整ガイド33と一体構成の軸受け保持部40に、回転シャフト42を保持させているので、金種の異なる紙幣ごとに、その紙幣長の後端に合わせて紙幣長調整ガイド33を位置調節するだけで、紙幣43の先端が引抜部23に到達したタイミングに合わせて紙幣43の後端が回転シャフト42を抜け出るように容易に調節することができる。
【0056】
このように、本発明の実施例1によれば、紙幣の繰り出し時に繰り出し紙幣が紙幣収納カセット底面には接触しないので、繰り出し機構にかかる繰り出し力と共に 紙幣出金機側の引抜部にかかる引き抜き力をも軽減させることができる。
【0057】
これにより、大摩擦抵抗による繰り出し不良、加圧力強化による繰り出し紙幣の重送等の問題が解決されるだけでなく、紙幣出金機側の引抜部での紙幣引き抜き力が大きく低減され、回転駆動系の電力節減に貢献する。また、紙幣束の自重による摩擦抵抗が軽減されるので、紙幣収納部に収納する紙幣の枚数を従来よりも多くすることができる。
【実施例2】
【0058】
図4(a)は、実施例2に係る紙幣収納カセットの構成を示す平面図であり、同図(b)はその側面図である。尚、図4(a),(b)には、図1(b)と同一の構成部分又は同一の機能部分には、図1(b)と同一の番号を付与して示している。
【0059】
図4(a),(b)において、図1(b)の回転シャフト42に代わる回転体として、ローラ45が設けられている。ローラ45は、固定シャフト46に回転自在に嵌合して固定シャフト46に保持されている。固定シャフト46は紙幣長調整ガイド33の軸受け保持部40に保持されている。尚、固定シャフト46も、固定ではなく回転するようにしてもよい。
【0060】
本例では、紙幣束は、ローラ45と第1の繰出ローラ34の回転周面に載置される。本例の場合も、実施例1の場合と同様に、紙幣束の最下面の紙幣は、ローラ45の回転により、繰り出し及び引き抜きの際の摩擦抵抗による負荷が大きく軽減される。
【実施例3】
【0061】
図5(a)は、実施例3に係る紙幣収納カセットの構成を示す平面図であり、同図(b)はその側面図である。尚、図5(a),(b)には、図1(b)と同一の構成部分又は同一の機能部分には、図1(b)と同一の番号を付与して示している。
【0062】
図5(a),(b)において、繰出負荷低減機構として複数(図では6個)の単体のローラ47が用いられる。ローラ47は、カセット底板29の後方に形成されたローラ47の数に対応する数の凹部にそれぞれ回転自在に嵌め込まれている。
【0063】
本例の場合は、図1(b)の紙幣長調整ガイド33に代わって紙幣束の後端部位置を規制する規制板48がカセット底板29に固定して設けられる。ローラ47及び規制板48は金種ごとの紙幣長に適した位置に移動は出来ないが、紙幣長が一定の紙幣束のみを取扱う場合には、シャフトや軸受等がなくなるのでコストを低減することができる。
【0064】
尚、上述した実施例1ないし3は、いずれも紙幣を長手方向に繰り出して、そのまま長手方向に搬送する形式の払い出し専用の紙幣出金機における紙幣収納カセットの繰出負荷低減機構である。
【実施例4】
【0065】
しかし、本発明の繰出負荷低減機構は、一般の銀行等に設置されている紙幣を短手方向に搬送するATMの入出金用の紙幣収納カセットの出金時の繰出負荷低減機構としても適用することができる。
【0066】
この場合、特には図示しないが、図1ないし図3に示した紙幣束加圧部材35を、入金時には入金紙幣の収納を阻害しない待機位置に退避させ、出金時には紙幣束加圧位置に復帰して図1ないし図3に示したように紙幣束を加圧するようにするとよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構に利用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 ATM(automated teller [telling] machine)
2 筐体
3 紙幣出金機
4 紙幣収納カセット
5 紙幣収納部
6 紙幣束
7 繰出口
9 第1の繰出ローラ
11 紙幣束加圧部
12 第2の繰出ローラ
13 捌き部材
14 紙幣束分離部
15 繰出紙幣引き抜き部
20 紙幣出金機
21 紙幣収納カセット
22 繰出口
23 引抜部
24 搬送部
25 一時収納部
26 払出口
27 紙幣収納部
28 紙幣束
29 カセット底板
29a カセット底板後部底面
29b カセット底板前部底面
29c カセット底板段差部
31 前板
32 規制ガイド
33 紙幣長調整ガイド
34 第1の繰出ローラ
35 紙幣束加圧部材
36 第2の繰出ローラ
37 捌き部材
38 紙幣束分離部
39 繰出機構
40 軸受け保持部
41 軸受
42 回転シャフト
43 紙幣
43a 紙幣後端
44 間隙
45 ローラ
46 固定シャフト
47 ローラ
48 規制板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類収納カセットに設けられた紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構であって、
前記紙葉類収納カセットは、紙葉類を内部に収納し、下部側面に前記紙葉類を外部に繰出すための繰出口を有し、該繰出口の近傍に前記紙葉類を外部に繰出す繰出機構を備え、
該繰出機構と、該繰出機構が前記紙葉類の底面に接する前記紙葉類の端部とは反対側端部と、の間において、前記紙葉類の底面に接し、前記紙葉類の繰出し方向に沿って回転自在であり、前記紙葉類収納カセットの底部に配置された回転体から成る、
ことを特徴とする紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構。
【請求項2】
前記回転体は、前記紙葉類収納カセットの前記繰出口とは反対側の内壁下部に連結された軸受保持部に固定された軸受により回転自在に支持され、前記紙葉類の繰出し方向に直交するよう配置され、前記紙葉類の底面に接する複数のシャフトからなる、
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構。
【請求項3】
前記回転体は、前記紙葉類収納カセットの前記繰出口とは反対側の内壁下部に連結された軸受保持部に両端を固定され且つ前記紙葉類の繰出し方向に直交するよう配置された複数のシャフトにそれぞれ外嵌し、前記紙葉類の底面に接する複数のローラからなる、
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構。
【請求項4】
前記回転体は、前記紙葉類収納カセットの底面に形成された凹部に嵌入し、上部円周の一部のみを前記紙葉類収納カセットの底面よりも上方に突出するよう配置された単体のローラからなる、
ことを特徴とする請求項1記載の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構。
【請求項5】
前記軸受保持部が下部に連結された前記繰出口とは反対側の前記内壁は、前記紙葉類収納カセットに収納される前記紙葉類の寸法に応じて該紙葉類の前記繰出口とは反対側の端部に当接するよう移動可能である、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の紙葉類収納カセット繰出負荷低減機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−248148(P2012−248148A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121673(P2011−121673)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】