説明

紙葉類特徴検出装置及び紙葉類特徴検出方法

紙幣21が搬送されて通過する紙葉類特徴検出装置20には突入センサ部22、透過型兼反射型のライン光センサ23、磁気センサ24、厚みセンサ27、脱出センサ部28が設けらる。紙幣21のすかし部分をライン光センサ23で測定し光透過センサですかし模様が検出され光反射センサでその模様が検出されないとき紙幣21を真券と判定する。すかし点字の場合も同様である。通常のスレッドの場合は光透過センサでスレッド有り且つ光反射センサでスレッド無しのとき紙幣21を真券と判定する。金属スレッドのときは光反射センサに代えて磁気センサを用い棒状スレッドのときは厚みセンサを用いて反応があるとき真券とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は紙葉類が真券であることを示す重要な特徴である透かし、点字透かし、又はスレッドの存在を、正しく検知する紙葉類特徴検出装置及び紙葉類特徴検出方法に関する。
【背景技術】
従来より、外部から挿入される例えば紙幣などの紙葉類を、その真贋を自動的に鑑別して、その真贋鑑別結果に基づいて自動的に紙葉類を仕分ける紙葉類処理装置がある。
ところが上記のような従来の紙葉類処理装置における鑑別による紙葉類の真贋の判断では、一般的に、すかし、点字、スレッド等の真券固有の特徴をセンサで測定して紙葉類の真贋の判断をしているが、偽造された特徴と本物の特徴との区別がセンサでは判断しにくいという問題を有していた。
例えば本物の透かし模様やスレッドに対応させて鉛筆等で書き込んだ偽造の透かし模様やスレッドと、本物の透かし模様やスレッドとの区別が、光透過型センサでは、どちらの場合も同じ測定結果が出力されるので、本物の紙葉類と偽造の紙葉類とを弁別することが出来ないという問題がある。
本発明の目的は、上記従来の実情に鑑み、紙葉類の真券固有の特徴を正確に識別する紙菜類の特徴検出装置及び特徴検出方法を提供することである。
【発明の開示】
先ず、本発明の紙葉類特徴検出装置は、少なくとも、紙葉類のすかし部分を測定する光透過センサ部と、上記すかし部分を測定する光反射センサ部と、上記光透過センサ部による測定結果がすかし模様の存在を示し且つ上記光反射センサ部による測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、を備えて構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出装置の他の例では、少なくとも、紙葉類の点字すかし部分を測定する光透過センサ部と、上記点字すかし部分を測定する光反射センサ部と、上記光透過センサ部による測定結果がすかし点字の存在を示し且つ上記反射センサ部による測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、を備えて構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出装置の他の例では、少なくとも、紙葉類のスレッド部分を測定する光透過センサ部と、上記スレッド部分を測定する光反射センサ部と、上記光透過センサ部による測定結果がスレッドの存在を示し且つ上記光反射センサ部による測定結果がスレッドの存在を示していないときのみ上記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、を備えて構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出装置の他の例では、少なくとも、紙葉類のスレッド部分を測定する光透過センサ部と、上記スレッド部分を測定する厚みセンサ部と、上記光透過センサ部による測定結果がスレッドの存在を示し且つ上記厚みセンサ部による測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、を備えて構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出装置の他の例では、少なくとも、紙葉類のスレッド部分を測定する光透過センサ部と、上記スレッド部分を測定する磁気センサ部と、上記光透過センサ部による測定結果がスレッドの存在を示し且つ上記磁気センサ部による測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、を備えて構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出装置の他の例では、少なくとも、紙葉類の外周部分を測定する光反射センサ部と、該光反射センサ部による測定結果が上記紙葉類の外周部分全てにインクが付着していることを示しているとき該インクは防盗インクであると判断する判断手段と、を備えて構成される。
次に、本発明の紙葉類特徴検出方法は、紙葉類のすかし部分を光透過センサにより測定する工程と、上記すかし部分を光反射センサにより測定する工程と、上記光透過センサによる測定結果がすかし模様の存在を示し且つ上記光反射センサによる測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する工程と、を含んで構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出方法の他の例では、紙葉類の点字すかし部分を光透過センサにより測定する工程と、上記点字すかし部分を光反射センサにより測定する工程と、上記光透過センサによる測定結果がすかし点字の存在を示し且つ上記反射センサによる測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する工程と、を含んで構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出方法の他の例では、紙葉類のスレッド部分を光透過センサにより測定する工程と、上記スレッド部分を光反射センサにより測定する工程と、上記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ上記光反射センサによる測定結果がスレッドの存在を示していないときのみ上記紙葉類は真券であると判断する工程と、を含んで構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出方法の他の例では、紙葉類のスレッド部分を光透過センサにより測定する工程と、上記スレッド部分を厚みセンサにより測定する工程と、上記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ上記厚みセンサ部による測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する工程と、を含んで構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出方法の他の例では、紙葉類のスレッド部分を光透過センサにより測定する工程と、上記スレッド部分を磁気センサにより測定する工程と、上記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ上記磁気センサによる測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ上記紙葉類は真券であると判断する工程と、を含んで構成される。
また、本発明の紙葉類特徴検出方法の他の例では、紙葉類の外周部分を光反射センサにより測定する工程と、該光反射センサ部による測定結果が上記紙葉類の外周部分全てにインクが付着していることを示しているとき該インクは防盗インクであると判断する工程と、を含んで構成される。
以上のように本発明によれば、二種類のセンサを組み合せて紙葉類を測定することにより、従来の単体センサでは見過ごされることが多かった偽造紙葉類を確実に見分けて排除することができる。また、防盗インクと既存のインク汚れとを容易に分別して排除することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は一実施の形態における紙葉類特徴検出装置の構成を模式的に示す図である。
図2は一実施の形態における紙葉類特徴検出装置に配設されるライン光センサの構成を模式的に示す図である。
図3は一実施の形態における紙葉類特徴検出装置の中央処理装置を中心とする処理システムの構成を示すブロック図である。
図4は一実施の形態における紙幣のすかし部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。
図5は一実施の形態における紙幣の点字部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。
図6は一実施の形態における紙幣に組み込まれて測定面には見えないスレッド部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。
図7は一実施の形態における紙幣に組み込まれて測定面には見えない金属スレッド部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。
図8は一実施の形態における紙幣に埋め込まれて測定面には見えない厚めの棒状スレッド部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。
図9は一実施の形態における光反射センサのみを用いて紙幣に付着した防盗インクを検知する処理を説明するフローチャートである。
図10は正常紙幣か偽造変造紙幣か盗難紙幣かの判定後にリジェクトゲート部により行われる紙幣の分別収容処理のフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施の形態における紙葉類特徴検出装置の構成を模式的に示す図である。同図に示す紙葉類特徴検出装置20は、特には図示しないが、例えば現金自動出納機などの紙葉類処理装置の紙幣投入口から紙幣収納部までの搬送路の中で紙幣投入口の近傍に設けられ、紙幣投入口から投入されて紙幣収納部まで矢印Aで示す搬送方向に搬送される紙幣21が、最初に通過する装置として配置される。
この紙葉類特徴検出装置20には、紙幣21の矢印Aで示す搬送方向手前から、所定の間隔で配置された少なくとも2個の光センサ22a及び22bから成る突入センサ部22、この突入センサ部22の搬送方向前方に配置された透過型と反射型の光センサから成るライン光センサ23、このライン光センサ部23の搬送方向前方に配置された磁気センサ24、この磁気センサ24の搬送方向前方に配置され、厚みローラ25とその厚みローラ25の両端に配置された2個の角度センサ26a、26bからなる厚みセン27、及び厚みセンサ27の搬送方向前方つまり紙葉類特徴検出装置20の搬送方向最前端において所定の間隔で配置された少なくとも2個の光センサ28a及び28bから成る脱出センサ部28が設けられている。
上記の突入センサ部22の光センサ22a及び22bは、光反射型又は光透過型の単一光センサから構成され、紙葉類特徴検出装置20に搬入されてくる紙幣21の搬送方向先端部を検出する。この突入センサ部22の紙幣検出信号は、紙葉類特徴検出装置20に搬入されてくる紙幣21の測定開始のタイミングを示す信号として用いられる。
また、脱出センサ部28の光センサ28a及び28bも、光反射型又は光透過型の単一光センサから構成され、紙葉類特徴検出装置20から搬出される紙幣21の搬送方向後端部を検出する。この脱出センサ部28の紙幣検出信号は紙幣21の測定終了のタイミングを示す信号として用いられる。
尚、突入センサ部22及び脱出センサ部28は、光センサと限ることなく、例えば回動ピンとスイッチ回路の組み合わせ等で構成された機械的に紙葉類の通過を検出するようなセンサで構成してもよい。
図2は、上記紙葉類特徴検出装置20に配設されるライン光センサ23の構成を模式的に示す図である。同図は、図1の紙葉類特徴検出装置20を矢印A方向に見たライン光センサ23の配設部位の断面図である。
図2に示すように、ライン光センサ23は、紙葉類特徴検出装置20の上方に配置されたn個の発光部29i(i=1、2、3、・・・、n)を形成する発光素子アレイとn個の反射側受光部30i(i=1、2、3、・・・、n)を形成する受光素子アレイとで形成される光反射型のライン光センサ(以下、光反射センサという)23aと、紙葉類特徴検出装置20の下方に配置され、上記n個の発光部29iの発光に同期して動作するn個の透過側受光部31i(i=1、2、3、・・・、n)を形成する受光素子アレイで形成される光透過型のライン光センサ(以下、光透過センサという)23bとで構成される。
このライン光センサ23のラインの長さは、紙葉類特徴検出装置20を通過する紙葉類の搬送方向に直交する方向の最大幅に対応している。
このライン光センサ23の構成により、このライン光センサ23で測定された紙幣21の微小領域に細分化された測定部分が、光透過部分であるか光不透過部分であるかが検出され、更に光不透過部分であればその光不透過部分からの反射光による輝度が検出される。他方、光透過部分である場合にはその光透過部分の例えばすかし部分の模様などが同時に検出される。
また、図1に示した磁気センサ24は、特には図解はしないが、微細な磁気ヘッドまたは磁気抵抗素子が直線アレイ状に配置されてなるライン状の磁気センサであり一般的に使用されるものである。これにより、紙幣21の表面に印刷された磁気成分や紙幣21に組み込まれた金属スレッドを検出することができる。
また、厚みセンサ27は、厚みローラ25の変位角を、その両端の角度センサ26aと26bとで検出するものであり、これにより紙幣21に組み込まれた各種のスレッドによる紙幣21の厚み変動量を検出することができる。
図3は、上記の紙葉類特徴検出装置の中央処理装置を中心とする処理システムの構成を示すブロック図である。尚、図3には、図1及び図2に示した構成部分と同一の構成部分には図1及び図2と同一の番号を付与して示している。
図3に示す処理システムにおいて、中央処理装置32には、例えば現金自動出納機等の本体装置に配設されている入力操作パネルの取引開始スイッチ部33が接続され、図1又は図2に示した突入センサ部22、光反射センサ23a、光透過センサ23b、磁気センサ24、及び厚みセンサ27が接続され、更に辞書比較部34、真贋判定部35、リジェクトゲート部36が接続されている。尚、中央処理装置32には、図1に示した脱出センサ部28も接続されているが、ここでは図示を省略している。
上記の構成において、中央処理装置32は、上記入力操作パネルの取引開始スイッチ部33からの取引開始を指示する入力操作イベントを受け取ると、突入センサ部22、光反射センサ23a、光透過センサ23b、磁気センサ24、厚みセンサ27、及び脱出センサ部28を起動して、それら各センサからの紙幣測定データを必要回数分サンプリングする。
上記の突入センサ部22には、増幅回路部37、及びA/D変換部38が直列に接続されている。突入センサ部22の紙幣検出信号は増幅回路部37に入力され、増幅回路部38により所定の比率で増幅されてA/D変換回部38に出力される。A/D変換回部38は、その入力された紙幣検出アナログ信号をデジタル信号に変換して、この変換した紙幣検出デジタル信号を中央処理装置32に出力する。
光反射センサ23aには、増幅回路部39、A/D変換部41が直列に接続され、光透過センサ23bには、増幅回路部42、A/D変換部43が直列に接続されいる。光反射センサ23a及び光透過センサ23bは、紙葉類特徴検出装置20を通過する紙幣21の全面を微小領域に分け、その微小領域をセンサのライン方向に沿った主走査方向に測定すると共に、その紙幣21の被搬送動作に同期して、その紙幣21の搬送方向つまり副走査方向に、上記の主走査測定を繰り返す。
光反射センサ23a及び光透過センサ23bによる測定データは、増幅回路39及び42に入力され、増幅回路39及び42によりそれぞれ所定の比率で増幅されてA/D変換回路41及び43に出力される。A/D変換回路41及び43は、その入力された紙幣21の測定アナログデータをデジタルデータに変換して、この変換した紙幣面測定デジタルデータを画像処理部44に出力する。
画像処理部44は、デジタルデータで示される紙幣21の画像データに斜行補正や濃度補正、更には原点位置の補正等の各種の画像処理を施して、この画像処理後のデジタル画像データを中央処理装置32に出力する。
磁気センサ24には、増幅回路部45、A/D変換部46が直列に接続されている。磁気センサ24による磁気検出アナログ信号はA/D変換部46に出力される。A/D変換部46は、その入力された磁気検出アナログ信号をデジタル信号に変換して、その変換後の磁気検出デジタル信号を中央処理装置32に出力する。
また、厚みセンサ27には、増幅回路部47、A/D変換部48が直列に接続されている。厚みセンサ27は、紙幣21の厚みを検出し、更に、紙幣21にスレッドがあるときは、スレッドのある分だけ増加した厚みの変動量を検出する。この厚み検出アナログ信号は増幅回路部47に出力され、増幅回路部47は入力された厚み検出アナログ信号を所定の比率で増幅してA/D変換部48に出力する。A/D変換部48は入力された増幅後厚み検出アナログ信号をデジタル信号に変換して、この変換した厚み検出デジタル信号を、中央処理装置32に出力する。
辞書比較部34には、各センサからの出力情報として、上記のデジタル画像データ、磁気検出デジタル信号、及び厚み検出デジタル信号が中央処理装置32から入力される。辞書比較部34には、辞書データ部49が接続されており、辞書データ部49には、各国毎にその国の各種の紙幣に関する全体の図柄情報、すかし図柄とその位置情報、点字とその位置情報、スライドの有無とその材質及び位置情報等がデータベース化されて格納されている。
辞書比較部34は、中央処理装置32から入力される各センサ毎の上記の出力情報と、そのセンサ出力情報に対応して辞書データ部49から読み出した辞書情報とを比較して、比較結果を真贋判定部35に出力する。真贋判定部35は、辞書比較部34から入力される比較結果に基づいて紙幣21の金種と真贋を判定して、その判定結果を中央処理装置32に通知する。
中央処理装置32は、真贋判定部35から入力される判定結果に基づいて、リジェクトゲート部36を制御する。この制御に下に、リジェクトゲート部36はリジェクトボックス51、損券ボックス52、又はリサイクルスタッカ53へ紙幣21を収容すべく搬送路の切り換えを行う。
上位のリジェクトボックス51には偽造紙幣や盗難紙幣が収容される。損券ボックス52には破損や汚れがひどく真券との交換が必要な紙幣が収容される。そして、リサイクルスタッカ53には引き続き使用可能な紙幣が収容される。
図4〜図8は、それぞれ上記構成の紙葉類特徴検出装置20の中央処理装置32の制御の下に行われる紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。尚、これらの処理は、いずれも所定の2種類のセンサから出力された測定データの組み合わせに基づいて真贋判定部35で真贋判定を行って、その判定結果を中央処理装置32に通知するまでの処理である。
図4は、右上に示す紙幣21のすかし54の部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。同図において、先ず、光透過センサ23bによる走査で得られたデジタル画像データのすかし54部分の画像データを調査する(S41)。この処理では、紙幣21の全体画像データに対応する辞書データから金種データが取得され、その金種データからすかし54部分の位置データが得られる。
この位置データで示される紙幣21の部位を調査し、すかし54が存在するか否か、すなわち、すかしの絵柄が検出されているか否かを判別する(S42)。そして、すかし54が存在する、つまり、すかしの絵柄が検出されていれば(S42がY)、その場合は、更に光反射センサ23aによる走査で得られたデジタル画像データのすかし54部分の画像データを調査する(S43)。
そして、すかしが存在しない、すなわち紙幣21の表面からは、すかしの絵柄が検出されていないときは(S44がN)、これは紙幣のすかし54部分の表面が空白である、つまりS42で検出された絵柄は、真正のすかしの絵柄であるので、正常な紙幣21であると判定して(S45)、処理を終了する。
他方、上記の処理S44の判別で、すかしの絵柄が存在していれば(S44がY)、この場合は、空白であるべきすかし54部分の表面にすかしの絵柄がある、すなわち、すかし54部分にすかしの絵柄と同様の絵柄が書き込まれたか印刷されていると可能性が高いと判断し(S46)、この場合は、偽造又は変造紙幣であると判定して(S47)、処理を終了する。
また、上記の処理S42の判別で、すかし54が存在しないときは(S41がN)、すかし54の絵柄がすかしで形成されていないということであり、この場合は、複写機などを用いてコピーされた模造券である可能性が大きいと判断し(S48)、この場合もS47を行って処理を終了する。
このように、本例は、紙幣等のすかし部が紙幣の内部にすき込んで作り込む特殊印刷技術であり、人が光にかざして見ると見えるが通常の反射光では見えないことに着目して案出されたものである。すなわち光透過センサではすかしの画像が鮮明に見えるが光反射センサでは画像が全く見えないことを利用したものである。
これにより、単なるコピー券ではすかし画像は印刷されていないため光透通センサ部で出力がないことを検知して排除し、もし、すかし部分に何らかの画像を書き込むか印刷してある場合には光透過センサではこの偽造券を排除できないが、本来検知されないはずの画像が光反射センサで見えることを手がかりとして偽造券を排除するものである。
図5は、右上に示す紙幣21の点字55の部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。尚、ここで取り上げる点字55は、例えば紙幣21の左下隅に、すかし模様で凹凸をつけて点字を形成してある場合を例としている。このような点字55は、点字の凹凸が光透過センサによって陰影のある画像、又は透過光量が著しく高い領域として検出される。
したがって、この場合も、図4に示したすかし54による真贋判定と全く同様にして紙幣21の真贋判定が行われる。すなわち、図5に示すS51〜S58の処理は、図4に示したS41〜S48の処理と、すかし54と点字55が入れ替わるだけで、同一の処理である。
図6は、右上に示す紙幣21に組み込まれて測定面には見えないスレッド56の部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。このスレッドは、紙幣の内部または表裏いずれか片面に、特殊な繊維、プラスチック又は金属の帯を、すき込むか又は織り込んだものである。海外の紙幣には非常に多く見られるものであり、近年では日本でも図書券、新幹線回数券等に偽造防止用に採用されているものである。
本例は、このようなスレッド(内部に入れ込んだもの)について、光透過センサでは見えて光反射センサでは見えないことを利用して偽造券を排除するものである。尚、紙幣の内部ではなく表裏いずれか片面にスレッドを織り込んだものでも、最初に辞書比較部34における画像認識処理で、辞書データ部49のデータベースから金種とその表裏の判別を行った後、スレッドを織り込まれていない側の面を測定面として測定すれば、同様の結果が得られる。
図6において、先ず、光透過センサ23bによる走査で得られたデジタル画像データのスレッド56部分の画像データを調査する(S61)。この処理では、紙幣21の全体画像データに対応する辞書データから金種データが取得され、その金種データからスレッド56部分の位置データが得られる。
この位置データで示される紙幣21の部位を調査し、スレッド56が存在するか否か、すなわち、スレッドの画像が検出されているか否かを判別する(S62)。そして、スレッド56が存在する、つまり、スレッド56の画像が検出されていれば(S62がY)、その場合は、更に光反射センサ23aによる走査で得られたデジタル画像データのスレッド56部分の画像データを調査する(S63)。
そして、スレッドが存在しない、すなわち紙幣21の測定面からはスレッド56の画像が検出されていないときは(S64がN)、これは紙幣の測定面には正常な画像のみが印刷されているのであり、S62で検出されたスレッドの画像は真正のスレッドの画像である、すなわち、正常な紙幣21であると判定して(S65)、処理を終了する。
他方、上記の処理S64の判別で、スレッド56の画像が存在していれば(S64がY)、この場合は、通常の画像以外の画像は無いはずの測定面にスレッド56の画像(帯状の筋)がある、すなわち、スレッド部分に本物のスレッド56と同様の画像に見えるような帯状の筋が書き込まれたか印刷されている可能性が大きいと判断し(S66)、この場合は、偽造又は変造紙幣であると判定して(S67)、処理を終了する。
また、上記の処理S62の判別で、スレッド56が存在しないときは(S61がN)、この場合は、複写機などを用いてコピーされた模造券である可能性が高いと判断し(S68)、この場合もS67を行って処理を終了する。
図7は、右上に示す紙幣21に組み込まれて測定面には見えない金属スレッド57の部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。尚、この処理は、最初に辞書比較部34における画像認識処理で、辞書データ部49のデータベースから金種が判別され、その金種判別により金属スレッドが組み込まれている紙幣であることが認識された後に行われる。
図7において、先ず、光透過センサ23bによる走査で得られたデジタル画像データの金属スレッド57部分の画像データを調査し(S71)、金属スレッド57の画像が検出されているか否かを判別する(S72)。そして、金属スレッド57の位置に金属スレッド状の画像が検出されていれば(S72がY)、その場合は、更に磁気センサ24による測定で得られた磁気検出デジタル信号の金属スレッド57部分のデータを調査する(S73)。
そして、金属スレッドが存在する、すなわち金属スレッド57があるべき位置に磁気検出デジタル信号が検出されていれば(S74がY)、S72で検出された金属スレッドの画像は真正の金属スレッド57の画像である、すなわち、正常な紙幣21であると判定して(S75)、処理を終了する。
他方、上記の処理S74の判別で、磁気検出デジタル信号が検出されていないときは(S74がN)、この場合は、S72で検出された金属スレッドの画像は金属スレッド部分に本物の金属スレッド57と同様の画像に見えるような帯状の筋が書き込まれたか印刷されている可能性が大きいと判断し(S76)、この場合は、偽造又は変造紙幣であると判定して(S77)、処理を終了する。
また、上記の処理S72の判別で、金属スレッド57が存在しないときは(S71がN)、この場合は、複写機などを用いてコピーされた模造券である可能性が大きいと判断し(S78)、この場合もS77を行って処理を終了する。
このように、金属スレッドについて、光透過センサ23bと磁気センサ24を組み合わせて、磁気センサにも光透通センサにも反応する金属スレッドという真券の特徴を確実に検知するようにし、金属スレッドを摸して手書きなどで書き込んだり又はコピーした場合には磁気センサには全く反応が出ないので確実に偽造券を排除することできる。
図8は、右上に示す紙幣21の内部に埋め込まれて外からは見えない厚めの棒状スレッド58の部分の測定によって紙幣の真贋を見分ける処理の動作を説明するフローチャートである。尚、この処理も、最初に辞書比較部34における画像認識処理で、辞書データ部49のデータベースから金種が判別され、その金種判別により棒状スレッドが埋め込まれている紙幣であることが認識された後に行われる。
図8において、先ず、光透過センサ23bによる走査で得られたデジタル画像データの棒状スレッド58部分の画像データを調査し(S81)、棒状スレッド58の画像が検出されているか否かを判別する(S82)。そして、棒状スレッド58の位置に棒状スレッド状の画像が検出されていれば(S82がY)、その場合は、更に厚みセンサ27による測定で得られた厚み検出デジタル信号の棒状スレッド58部分のデータを調査する(S83)。
そして、棒状スレッドが存在する、すなわち棒状スレッド58があるべき位置に厚み検出デジタル信号が検出されていれば(S84がY)、S82で検出された棒状スレッドの画像は真正の棒状スレッド58の画像である、すなわち、正常な紙幣21であると判定して(S85)、処理を終了する。
他方、上記の処理S84の判別で、厚み検出デジタル信号が検出されていないときは(S84がN)、この場合は、S82で検出された棒状スレッドの画像は棒状スレッド部分に本物の棒状スレッド58と同様の画像に見えるような棒状の筋が書き込まれたか印刷されている可能性が大きいと判断し(S86)、この場合は、偽造又は変造紙幣であると判定して(S87)、処理を終了する。
また、上記の処理S82の判別で、棒状スレッド58が存在しないときは(S81がN)、この場合は、複写機などを用いてコピーされた模造券である可能性が大きいと判断し(S88)、この場合もS87を行って処理を終了する。
このように、棒状スレッドについて、光透過センサ23bと厚みセンサ27を組み合わせて、厚みセンサにも光透通センサにも反応する棒状スレッドという真券の特徴を確実に検知するようにし、棒状スレッドを摸して手書きなどで書き込んだり又はコピーした場合には棒状センサには全く反応が出ないので確実に偽造券を排除することできる。
図9は、上述してきた処理とはやや異なり、光反射センサのみを用いて紙幣に付着した防盗インクを検知する処理を説明するフローチャートである。
尚、防盗インクとは、紙葉類処理装置の内部金庫内に、予め配設されているものであり、紙葉類処理装置の内部金庫から現金を盗む目的で不正な方法で扉を開けた場合に上記の防盗インクが金庫内の紙幣束の全面に吹き付けられるように構成されている。このシステムは主として海外の紙葉類処理装置で一般的に用いられているセキュリティ技術の一つである。
このようにして防盗インクが付着した紙葉類は、盗難に会ったものなので紙葉類処理装置では受け付けないことが望まれている。一方、防盗インクが特殊なインクでない堤合には通常の汚れ紙幣と区別がつきにくいため、これの排除が難しいという問題があった。本例では、そのような場合でも防盗インクであるとして弁別する。
図9において、先ず、光反射センサ23aによる走査で得られたデジタル画像データの紙幣21の外周部分の画像データを調査し(S91)、汚れが存在するか否かを判別する(S92)。そして、汚れが検出されていれば(S92がY)、その汚れが紙幣21の外周部分のみであるか否かを判別する(S93)。
この判別で、汚れが紙幣21の外周部分のみであったときは(S93がY)、その汚れは防盗インクによる汚れであると判定して(S94)、処理を終了する。他方、S93の判別で、汚れが紙幣21の外周部分のみでなく内部にも汚れがあるときは(S93がN)、通常の汚れである、すなわち、この紙幣21は通常の汚れ紙幣である判定して(S95)、処理を終了する。
また、上記S92の判別で汚れが存在しないときは(S92がY)、この場合は正常の紙幣であると判定して(S96)、処理を終了する。
このように、防盗インクが金庫内に収納された紙幣類に散布付着されるものであることに着目し、通常の流通紙幣は外周部分のみが汚れることは稀であり、外周部分のみにインクが付着している場合を防盗インクと判断して、これを排除するようにする。
図10は、上記のように図4〜図9で、正常紙幣か、偽造変造紙幣か、盗難紙幣かを真贋判定部35で判定した後に、中央処理装置32により、リジェクトゲート部36を制御して行われる紙幣の分別収容処理のフローチャートである。
図10において、先ず、紙幣21が正常紙幣と判定されたか否かを判別する(S101)。そして、紙幣21が正常紙幣と判定されていれば(S101がY)、その紙幣21をリサイクルスタッカー53に収容するように搬送路を切り換えて(S106)、処理を終了する。
他方、紙幣21が正常紙幣でないときは(S101がN)、続いて、紙幣21が偽造変造紙幣と判定されているか否かを判別する(S102)。そして、紙幣21が偽造変造紙幣と判定されていれば(S102がY)、その場合は、その紙幣21をリジェクトボックス51に収容するように搬送路を切り換えて(S105)、処理を終了する。
また、S102の判別で紙幣21が偽造変造紙幣でないときは(S102がN)、防盗インクが付着した紙幣であると判定されているか否かを判別する(S103)。そして、防盗インクが付着した紙幣であると判定されていれば(S103がY)、この紙幣21は盗難紙幣であるので、この場合も、紙幣21をリジェクトボックス51に収容するように搬送路を切り換えて(S105)、処理を終了する。
また、上記S103の判別で防盗インクが付着した紙幣ではないときは(S103がN)、通常の汚れの多い紙幣であるので、この場合は、紙幣21を損券ボックス52に収容するように搬送路を切り換えて(S104)、処理を終了する。このように、紙幣21は、各センサにより測定され、真贋判定部35により正常紙幣か偽造変造紙幣か盗難紙幣かを判定され、その判定に基づいて、それぞれ所定の収納容器に収容される。
尚、上記の実施の形態では、紙葉類として紙幣を例にとって説明したが、これに限ることなく、紙葉類としては、株券、商品券、搭乗券、乗車券、競技場入場券など種々の紙葉類に適用することができる。
また、図4から図8までに示す例では、いずれも二種類のセンサを組み合せる例を示しているが、これに限ることなく、三種類以上のセンサを組み合わせて紙葉類の真贋を判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
以上のように本発明の紙葉類特徴検出装置及び特徴検出方法は、二種類以上のセンサを組み合せて紙葉類を測定することにより、従来の単体センサでは見過ごされることが多かった偽造紙葉類を確実に見分けて排除することができ、また防盗インクと既存のインク汚れとを容易に分別して排除することができるので、偽造紙葉類の事件多発の近年にあっては、本発明を紙葉類処理装置に用いることにより、紙葉類処理装置に使用された紙葉類の真贋判定の極めて有効な自動判断の環境を提供することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
紙葉類のすかし部分を測定する光透過センサと、
前記すかし部分を測定する光反射センサと、
前記光透過センサによる測定結果がすかし模様の存在を示し且つ前記光反射センサによる測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類特徴検出装置。
【請求項2】
少なくとも、
紙葉類の点字すかし部分を測定する光透過センサと、
前記点字すかし部分を測定する光反射センサと、
前記光透過センサによる測定結果がすかし点字の存在を示し且つ前記反射センサによる測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類特徴検出装置。
【請求項3】
少なくとも、
紙葉類のスレッド部分を測定する光透過センサと、
前記スレッド部分を測定する光反射センサと、
前記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ前記光反射センサによる測定結果がスレッドの存在を示していないときのみ前記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類特徴検出装置。
【請求項4】
少なくとも、
紙葉類のスレッド部分を測定する光透過センサと、
前記スレッド部分を測定する厚みセンサと、
前記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ前記厚みセンサによる測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類特徴検出装置。
【請求項5】
少なくとも、
紙葉類のスレッド部分を測定する光透過センサと、
前記スレッド部分を測定する磁気センサと、
前記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ前記磁気センサによる測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類特徴検出装置。
【請求項6】
少なくとも、
紙葉類の外周部分を測定する光反射センサと、
該光反射センサによる測定結果が前記紙葉類の外周部分全てにインクが付着していることを示しているとき該インクは防盗インクであると判断する判断手段と、
を備えたことを特徴とする紙葉類特徴検出装置。
【請求項7】
紙葉類のすかし部分を光透過センサにより測定する工程と、
前記すかし部分を光反射センサにより測定する工程と、
前記光透過センサによる測定結果がすかし模様の存在を示し且つ前記光反射センサによる測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する工程と、
を含むことを特徴とする紙葉類特徴検出方法。
【請求項8】
紙葉類の点字すかし部分を光透過センサにより測定する工程と、
前記点字すかし部分を光反射センサにより測定する工程と、
前記光透過センサによる測定結果がすかし点字の存在を示し且つ前記反射センサによる測定結果が空白部分の存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する工程と、
を含むことを特徴とする紙葉類特徴検出方法。
【請求項9】
紙葉類のスレッド部分を光透過センサにより測定する工程と、
前記スレッド部分を光反射センサにより測定する工程と、
前記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ前記光反射センサによる測定結果がスレッドの存在を示していないときのみ前記紙葉類は真券であると判断する工程と、
を含むことを特徴とする紙葉類特徴検出方法。
【請求項10】
紙葉類のスレッド部分を光透過センサにより測定する工程と、
前記スレッド部分を厚みセンサにより測定する工程と、
前記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ前記厚みセンサによる測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する工程と、
を含むことを特徴とする紙葉類特徴検出方法。
【請求項11】
紙葉類のスレッド部分を光透過センサにより測定する工程と、
前記スレッド部分を磁気センサにより測定する工程と、
前記光透過センサによる測定結果がスレッドの存在を示し且つ前記磁気センサによる測定結果がスレッドの存在を示しているときのみ前記紙葉類は真券であると判断する工程と、
を含むことを特徴とする紙葉類特徴検出方法。
【請求項12】
紙葉類の外周部分を光反射センサにより測定する工程と、
該光反射センサによる測定結果が前記紙葉類の外周部分全てにインクが付着していることを示しているとき該インクは防盗インクであると判断する工程と、
を含むことを特徴とする紙葉類特徴検出方法。

【国際公開番号】WO2004/023402
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【発行日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−534048(P2004−534048)
【国際出願番号】PCT/JP2002/008816
【国際出願日】平成14年8月30日(2002.8.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】