説明

紙葉類管理装置及び紙葉類管理方法

【課題】大きさが種類別に異なる紙葉類を収納している各収納庫の収納枚数を、計数専用の収納庫を要せずに計数することができる紙葉類管理装置及び紙葉類管理方法を提供することを課題とする。
【解決手段】紙幣を出し入れする独立した出入機構47,48をそれぞれ備えた上段収納部45と下段収納部46との2つの収納空間を有する収納庫4a〜4dを備え、前記収納庫4a〜4dの上段収納部45か下段収納部46かの何れか一方に収納されている紙幣を一時保留部3に一時保留させた後、一時保留した紙幣を他方の収納部へ移送させる際に、移送された処理枚数を計数する主制御部111を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば金融機関などで使用されるATM(現金自動預払機)、両替機などの自動取引装置で扱われる紙幣等の紙葉類を管理する紙葉類管理装置及び紙葉類管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動取引装置では紙幣を搬送処理する際に2枚出しや連れ出しが発生すると、紙幣を金種別に収納管理している内部の収納庫の紙幣収納枚数が不明になり、現在収納されている収納庫の紙幣収納枚数を正確に把握できなくなる。このため、2枚出しや連れ出しが発生した際に収納庫に収納されている紙幣の収納枚数を正確に把握するには改めて計数動作を必要としていた。
【0003】
この計数動作を行うものとして、例えば計数が必要となった収納庫に対し、その収納庫の紙幣の全てを計数専用の別の収納庫に一旦移し替え、この移し替え過程で紙幣の収納枚数を鑑別部で計数する自動取引装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この方法では、大きさの異なる紙幣を扱う場合に問題があった。詳述すると、紙幣の幅や長さが金種別に大きく異なる場合、金種別に収納される紙幣の収納庫ごとの大きさが異なる。ことに、計数管理用の1個の専用の収納庫を設けて多金種を収納させるようにすると、大きさの異なる各金種を混在させるため取り扱うことが難しく、金種別に応じた複数の計数管理用の収納庫が必要になってしまう。このため、幅や長さが異なる多様なサイズの紙幣を計数する場合は、装置が大型化してしまう問題を有していた。
【0005】
また、紙幣の幅や長さが異なる多様なサイズの紙幣を扱う装置として、装置内部に複数の紙幣収納庫を内蔵した紙幣収納庫群を設け、このうち1個を装填回収庫に用い、各紙幣収納庫との間で紙幣の授受を行うことで計数するようにした紙幣入出金機が提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、多くの種類の紙幣を1個の装填回収庫に集積する構成では金種別にサイズが大きく異なる紙幣を混在させる場合に適用できず、この結果、収納庫別に収納されている全ての紙幣を自動的に計数することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−295132号公報
【特許文献2】特開2003−272027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、大きさが種類別に異なる紙葉類を収納している各収納庫の収納枚数を、計数専用の収納庫を要せずに計数することができる紙葉類管理装置及び紙葉類管理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、紙葉類取扱口に連通する内部で紙葉類を識別する識別部と、前記識別部と接続して紙葉類を一時保留する一時保留部と、前記紙葉類を種類別に分けて収納する複数の収納庫と、少なくとも前記紙葉類取扱口と前記識別部と前記一時保留部と前記複数の収納庫との間を接続する搬送路とを備えた紙葉類管理装置であって、前記収納庫は紙葉類を出し入れする独立した出入機構をそれぞれ備えた第1収納部と第2収納部とを備え、前記第1収納部か第2収納部かの何れか一方に収納されている紙葉類を、前記識別部を経由させて前記一時保留部に一時保留させた後、一時保留した紙葉類を前記他方の収納部へ移送させる際に、移送された処理枚数を計数する制御手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、大きさが種類別に異なる紙葉類を収納している各収納庫の収納枚数を、計数専用の収納庫を要せずに計数することができる紙葉類管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】紙幣管理装置の概略を示す内部構成図。
【図2】紙幣管理装置の制御ブロック図。
【図3】収納庫の計数処理条件とその動作を示すフローチャート。
【図4】一時保留部を経由させて上段収納部から下段収納部に紙幣を移動させる際の搬送ルートを示す説明図。
【図5】上段収納部の計数処理動作を示すフローチャート。
【図6】一時保留部を経由させて下段収納部から上段収納部に紙幣を移動させる際の搬送ルートを示す説明図。
【図7】下段収納部の計数処理動作を示すフローチャート。
【図8】巻取式の一時保留部を用いた紙幣管理装置の概略を示す内部構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0013】
図1は紙葉類管理装置として紙葉類の一例に紙幣を扱う紙幣管理装置を例にとって示している。
この紙幣管理装置において、1は顧客が紙幣の預け入れや払い出しを行う紙葉類取扱口としての入出金口、2は紙幣の金種、真偽などを判別する識別部、3は計数した紙幣を一時的に収納する一時保留部である。この一時保留部3には金種ごとに大きさが異なる多種多様な紙幣を収納するために、紙幣の長手方向や短手方向を揃える当て止め機構やセンタリング機構などを備えている。
【0014】
4a〜4dは紙幣を種類別に収納する収納庫、5は識別部によってリジェクトされた紙幣を収納する回収庫、6は顧客が取り忘れた紙幣を収納するリジェクト庫、10は収納先に紙幣を搬送する搬送路、11は紙幣の通過を検知する通過センサ、12は紙幣の搬送ルートを切り替えるゲートである。
【0015】
31は一時保留部の空を検知する一時保留部空検知センサ、32は一時保留部の満杯を検知する一時保留部満杯検知センサである。
【0016】
前記収納庫4a〜4dは、紙幣を収納する縦長の空間を上下に仕切り、第1収納部である上段収納部45と第2収納部である下段収納部46との2つの収納部45,46を有している。各収納部45,46には紙幣を1枚ずつ出し入れする独立した出入機構47,48を備えている。さらに、40は上段収納部45の出入機構47に配設されて紙幣の搬送先を切り替える振分けゲート、41は上段収納部45の空を検知する上段収納部空検知センサ、42は上段収納部45の満杯を検知する上段収納部満杯検知センサ、43は下段収納部46の空を検知する下段収納部空検知センサ、44は下段収納部46の満杯を検知する下段収納部満杯検知センサである。
【0017】
このような構造を内部構成する紙幣管理装置は、上部側に紙幣を搬送処理する紙幣搬送群を設け、下部側に紙幣を収納する紙幣収納群を設けて、該装置の上下を搬送系と収納系とに分離して内部構造の簡素化を図っている。
【0018】
また、上部の搬送路10と下部の収納庫4a〜4dとの接続構成は、搬送路10の一部を収納庫4aの上部より接続し、上段収納部45と下段収納部46の順に上下方向に搬送路10を接続している。上段収納部45に対しては上段の出入機構47が対応し、下段収納部46に対しては下段の出入機構48が対応して搬送路10と接続している。
【0019】
そして、上段の出入機構47の部位に配置されている振分けゲート40には、上段収納部45と下段収納部46に紙幣を出し入れさせる際の振分け機能を持たせている。すなわち、振分けゲート40の振分け操作によって、紙幣搬送群から流下してきた紙幣を搬送先の上段収納部45か下段収納部46かの何れか一方に振分けて取り込ませる役目と、搬送元の上段収納部45と下段収納部46から繰り出した紙幣を上流側の紙幣搬送群に送り出すように振分ける役目とを持たせている。
【0020】
図2は紙幣管理装置の制御ブロック図を示している。101は紙幣管理装置の上位装置として備えられる別のユニットであり、例えば金融機関に設置される自動取引装置の本体制御部である。
【0021】
102は上位装置と通信するための回線制御部、103は搬送路を構成している搬送ローラや搬送ベルトを駆動するモータをON/OFF制御する搬送モータ制御部、104は紙幣が搬送路により搬送された移動量を計数する搬送量計数部である。
【0022】
105はセンサ制御部であり、紙幣の通過を検知する通過センサ等のセンサを制御する。106はゲート制御部であり、紙幣を所定の収納先に搬送するようにゲートを切り替える。107は入出金口1からの紙幣の取込処理、入出金口1への紙幣の収納処理などを制御する入出金口制御部、108は一時保留部3からの紙幣の繰出処理、一時保留部3への紙幣の収納処理など制御する一時保留部制御部、109は各収納庫からの紙幣の繰出処理、各収納庫への紙幣の収納処理などを制御する収納庫制御部、110は種々の情報を記憶する記憶部、111は紙幣管理装置の各部位を制御する制御手段としての主制御部である。
【0023】
なお、記憶部110は主制御部111に含まれるものと考慮してもよく、主制御部(単に制御部とも言う)111はCPU、メモリ等のハードウェアで、そのハードウェアによってプログラムを実行し、後述する各制御、処理、取引が行われる。
【0024】
この紙幣管理装置では、4aを20ユーロ収納庫、4bを50ユーロ収納庫、4cを100ユーロ収納庫、4dを500ユーロ収納庫にそれぞれ設定して構成している。また、各収納庫4a〜4dにおける紙幣の収納空間は、金種別の紙幣の大きさに合わせた収納空間に調整されている。
【0025】
次に、紙幣管理装置を用いて紙幣を入出金処理する概要について説明する。
入金取引の場合では、顧客が入出金口1に紙幣を投入すると、主制御部111は入出金口1に投入された紙幣を1枚ずつ内部に取り込んで搬送路10上に繰り出す。
【0026】
繰り出された紙幣は識別部2に導き、この識別部2を通過する際に、識別部2が紙幣の金種、真偽等を判定し、紙幣管理装置で取り扱うことができる適正紙幣と判定した紙幣のみを一時保留部3に搬送して一時保留する。一方、識別部2で取り扱うことができない不適な紙幣と判定されると、その不適な紙幣を入出金口1に戻すように搬送する。
【0027】
入金された取引情報が顧客により確認されると、主制御部111は一時保留部3に一時保留した紙幣を1枚ずつ搬送路10上に繰り出させる。繰り出された紙幣は識別部2を通過する際に、識別部2が紙幣の金種、真偽等を判定し、還流して取り扱うことができる適正な紙幣と判定した紙幣のみを対応する金種の収納庫4a〜4dの上段収納部45に搬送し、還流して取り扱うことができない不適な紙幣と判定された紙幣(リジェクト札)を回収庫5に搬送する。
【0028】
出金取引の場合では、顧客の出金指示を受け付けた主制御部111は指定された収納庫4a〜4dの上段収納部45から紙幣を1枚ずつ搬送路10上に繰り出す。繰り出された紙幣は識別部2を通過する際に、識別部2が紙幣の金種、真偽等を判定し、顧客に払い出すことができる適正紙幣と判定された紙幣を入出金口1に搬送し、払い出しできない流通に不適な紙幣と判定された紙幣(リジェクト札)を回収庫5に搬送する。
【0029】
各取引において、主制御部111は識別部2から得られる紙幣の金種、真偽の情報、及びセンサ制御部105から得られる紙幣の通過情報に基づいて、各繰出元から繰り出した紙幣の繰出枚数と各収納先に収納した紙幣の収納枚数を計数し、かつ計数したデータを記憶部110に記憶する。収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の収納枚数は、収納庫4a〜4dに紙幣を1枚ずつ収納させる度に加算し、収納庫4a〜4dから紙幣を繰り出した際は、その繰り出した枚数を減算して現在の収納枚数を算出している。
【0030】
しかしながら、収納庫4a〜4dから紙幣を繰り出した際に2枚出し、連れ出しなどが発生してしまうと、主制御部111は実際に何枚の紙幣が収納庫4a〜4dから繰り出されたのかを知ることができないので、収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の収納枚数を正しく把握することができなくなる。この際は、主制御部111が回線制御部102を介して上位装置101に収納庫4a〜4dに収納している紙幣の収納枚数を正確に把握できなくなったことを通知する。これに基づいて上位装置101は回線制御部102を介して収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の収納枚数を計数するように指示する。
【0031】
これらの収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の計数に際して、主制御部111は上段収納部45か下段収納部46かの何れか一方に収納されている紙幣を、識別部2を経由させて一時保留部3に一時保留させた後、一時保留した紙幣を他方の収納部へ移送させる際に、移送された処理枚数を計数する制御機能を有している。これにより、大きさが種類別に異なる紙幣を収納している各収納庫4a〜4dの収納枚数を、計数専用の収納庫を要せずに計数することができる。
【0032】
また、主制御部111は、例えば上段収納部45からの紙幣を受け付けた一時保留部3が満杯になると、該一時保留部3の紙幣を下段収納部46へ移し替え、再度上段収納部45から一時保留部3への一時保留を行う繰り返し処理を実行する機能を備えている。
【0033】
この繰り返し処理を行うことにより、一時保留部3での紙幣収納量が小さくても紙幣を、少量ずつ一時保留部3を経由させて下段収納部46へと移し替えることができる。このため、上段収納部45での紙幣収納量が大量であっても、一時保留部3を経由させて全て移し替えることができる。このように、繰り返し処理を行うことで収納庫4aの収納枚数の計数が可能になる。
【0034】
また、下段収納部46に収納されている紙幣を計数する場合も、下段収納部46から紙幣を、少量ずつ一時保留部3を経由させて上段収納部45へと移し替える操作を繰り返すことで収納庫4aの収納枚数を計数できる。
【0035】
さらに、上位装置101からの計数指示に基づいて主制御部111は自動的に計数を実行するが、この計数するタイミングは取引待機中などの運用上の最適なタイミングを選んで実行する。
【0036】
次に、収納庫4aに収納されている紙幣の収納枚数を計数する場合の計数処理条件とその動作を図3のフローチャートを参照して説明する。
主制御部111は回線制御部102を介して上位装置101からの指示を受けると、上段収納部空検知センサ41a、及び下段収納部空検知センサ43aの検知信号をチェックし、収納庫4aの上段収納部45が空でなく、かつ収納庫4aの下段収納部46が空であることを確認すると(ステップS1)、収納庫4aの上段収納部45に収納されている紙幣の収納枚数を計数する(ステップS2)。
【0037】
主制御部111は収納庫4aの上段収納部45が空、かつ収納庫4aの下段収納部46が空でないことを確認すると(ステップS3)、主制御部111は収納庫4aの下段収納部46に収納されている紙幣の収納枚数を計数する(ステップS4)。さらに、主制御部111は収納庫4aの上段収納部45、下段収納部46ともに空、またはともに空でないときは、計数対象の紙幣がないので枚数計数不可とする(ステップS5)。
【0038】
次に、収納庫4aの上段収納部45に収納されている紙幣の収納枚数を計数する場合を図4の紙幣搬送説明図、及び図5の計数フローチャートを参照して説明する。
【0039】
主制御部111は収納庫4aの上段収納部45の収納枚数を計数するに際して、一時保留部3に紙幣を一時保留させるための準備を行うよう一時保留部制御部108に指示する(ステップS101)。
【0040】
さらに、主制御部111は振分けゲート40の振分け方向を上段収納部45から紙幣を繰り出す方向に切り替え、搬送路10の回転方向を収納庫4a〜4dから一時保留部3に紙幣を搬送する回転方向に搬送モータ制御部103に指示する(ステップS102)。さらに、主制御部111は収納庫4aの上段収納部45から紙幣を1枚ずつ繰り出す旨を収納庫制御部109に指示する(ステップS103)。
【0041】
主制御部111は一時保留部満杯センサ32、上段収納部空検知センサ41をチェックし(ステップS104)、一時保留部3が満杯になるか、収納庫4aの上段収納部45が空になるまで紙幣を搬送処理する。一時保留部3が満杯になるか、収納庫4aの上段収納部45が空になると、主制御部111は収納庫4aの上段収納部45からの紙幣繰出動作を停止する旨を収納庫制御部109に指示し(ステップS105)、また搬送路10の回転を停止する旨を搬送モータ制御部103に指示する(ステップS106)。
【0042】
その後、主制御部111は一時保留部3の紙幣を収納庫4aの下段収納部46に収納するための準備を行う旨を収納庫制御部109に指示する(ステップS107)。このとき、主制御部111は振分けゲート40の振分け方向を下段収納部46に紙幣を収納する方向に切り替える。
【0043】
さらに、主制御部111は搬送路10を一時保留部3から収納庫4a〜4dに紙幣を搬送する方向に回転するよう搬送モータ制御部103に指示する(ステップS108)。また、一時保留部3から紙幣の繰り出しを開始するよう一時保留部制御部108に指示する(ステップS109)。
【0044】
主制御部111は、識別部2で識別された結果から、当該紙幣を収納庫4aの下段収納部46に収納することができる適正な紙幣であるか否かをチェックし(ステップS110)、適正な紙幣であれば、主制御部111は下段収納部46に紙幣を搬送するルートにゲート12を切り替える旨をゲート制御部106に指示する(ステップS111)。そして、紙幣の通過情報から主制御部111は下段収納部46に収納した紙幣の収納枚数を識別部2及び通過センサ11を通過させた収納過程で1枚ずつ積算して計数する(ステップS112)。
【0045】
また、主制御部111は下段収納部46に収納することができない識別不能紙幣や流通に不適な紙幣であれば、回収庫5へと搬送するルートにゲート12を切り替えるようゲート制御部106に指示する(ステップS113)。
【0046】
主制御部111は一時保留部空検知センサ31をチェックし(ステップS114)、一時保留部3が空になるまで紙幣の搬送を行う。一時保留部3が空になると、主制御部111は一時保留部3から紙幣を繰出停止する旨を一時保留部制御部108に指示する(ステップS115)。また、搬送路10の回転を停止するよう搬送モータ制御部103に指示する(ステップS116)。
【0047】
そして、主制御部111は収納庫4aの上段収納部45が空か否かをチェックし(ステップS117)、収納庫4aの上段収納部45が空になるまで前記した一時保留部3を介して下段収納部46へと至る紙幣の移替処理(ステップS101〜ステップS117)を繰り返す。この紙幣の移替処理が終了すると、記憶部110に記憶されている収納庫4aの紙幣収納枚数を、今回計数した結果に更新する(ステップS118)。
【0048】
以上のようにして、一時保留部3を経由し、収納庫4aの上段収納部45に収納されていた全ての紙幣を収納庫4aの下段収納部46に移動させて、紙幣の収納枚数を計数することにより収納庫4aに収納している紙幣の収納枚数を計算して正確に把握し直すことができる。
【0049】
以後、収納庫4aの上段収納部45は空の状態で運用し、入金取引の際には収納庫4aの下段収納部46に紙幣を収納し、出金取引の際には、収納庫4aの下段収納部46から紙幣を繰り出して運用する。
【0050】
その後、再び、収納庫4aから紙幣を繰り出す際に2枚出し、連れ出しなどが発生して、この収納庫4aに収納されている紙幣の収納枚数を正しく把握することができなくなると、収納庫4aの下段収納部46に収納されている紙幣の収納枚数を再計数する。この計数の際も、一時保留部3を経由させて上段収納部45に、紙幣を移し替えるように移送して収納庫4aの紙幣の収納枚数を計数する。さらに、紙幣の収納枚数を正しく把握できなくなった場合以外にも、収納庫4aの交換時に紙幣の収納枚数を計数するようにしてもよい。
【0051】
次に、収納庫4aの下段収納部46に収納されている紙幣の収納枚数を計数する場合を図6の紙幣搬送説明図、及び図7の計数フローチャートを参照して説明する。
主制御部111は収納庫4aの収納枚数を計数するに際して、一時保留部3に紙幣を一時保留させるための準備を行うよう一時保留部制御部108に指示する(ステップS201)。
【0052】
さらに、主制御部111は振分けゲート40の振分け方向を下段収納部46から紙幣を繰り出す方向に切り替え、搬送路10の回転方向を収納庫4a〜4dから一時保留部3に紙幣を搬送する回転方向に搬送モータ制御部103に指示する(ステップS102)。さらに、主制御部111は収納庫4aの下段収納部46から紙幣を繰り出す旨を収納庫制御部109に指示する(ステップS203)。
【0053】
主制御部111は一時保留部満杯センサ32、下段収納部空検知センサ43をチェックし(ステップS204)、一時保留部3が満杯になるか、収納庫4aの下段収納部46が空になるまで紙幣を搬送処理する。一時保留部3が満杯になるか、収納庫4aの下段収納部46が空になると、主制御部111は収納庫4aの下段収納部46から紙幣を繰り出すことを停止するよう収納庫制御部109に指示し(ステップS205)、また搬送路10の回転を停止するよう搬送モータ制御部103に指示する(ステップS206)。
【0054】
その後、主制御部111は一時保留部3の紙幣を収納庫4aの上段収納部45に収納するための準備を行うよう収納庫制御部109に指示する(ステップS207)。このとき、主制御部111は振分けゲート40の振分け方向を上段収納部45に紙幣を収納する方向に切り替える。
【0055】
主制御部111は搬送路10を一時保留部3から収納庫4a〜4dに紙幣を搬送する方向に回転するよう搬送モータ制御部103に指示する(ステップS208)。また、一時保留部3から紙幣を繰り出すことを開始するよう一時保留部制御部108に指示する(ステップS209)。
【0056】
主制御部111は識別部2で識別された結果から当該紙幣を収納庫4aの上段収納部45に収納することができる紙幣であるか否かをチェックし(ステップS210)、適正な紙幣であれば、主制御部111は上段収納部45に紙幣を搬送するルートにゲート12を切り替えるようゲート制御部106に指示する(ステップS211)。そして、紙幣の通過情報から主制御部111は上段収納部45に収納した紙幣の収納枚数を識別部2及び通過センサ11を通過させた収納過程で1枚ずつ積算して計数する(ステップS212)。
【0057】
また、主制御部111は上段収納部45に収納することができない不適な紙幣であれば、回収庫5へと搬送するルートにゲート12を切り替えるようゲート制御部106に指示する(ステップS213)。
【0058】
主制御部111は一時保留部空検知センサ31をチェックし(ステップS214)、一時保留部3が空になるまで紙幣の搬送を行う。一時保留部3が空になると、主制御部111は、一時保留部3から紙幣を繰出停止する旨を一時保留部制御部108に指示する(ステップS215)。また、搬送路10の回転を停止するよう搬送モータ制御部103に指示する(ステップS216)。
【0059】
そして、主制御部111は収納庫4aの下段収納部46が空か否かをチェックし(ステップS217)、収納庫4aの下段収納部46が空になるまで前記した一時保留部3を介して上段収納部45へと至る紙幣の移替処理(ステップS201〜ステップS217)を繰り返す。この紙幣の移替処理が終了すると、記憶部110に記憶されている収納庫4aの紙幣収納枚数を今回計数した結果に更新する(ステップS218)。
【0060】
以上のようにして、収納庫4aの上段収納部45に収納している紙幣の枚数を計数したときと同様にして、一時保留部3を経由し、収納庫4aの下段収納部46に収納されていた全ての紙幣を収納庫4aの上段収納部45に移動させて、紙幣の収納枚数を計数することにより収納庫4aに収納している紙幣の収納枚数を計数して正確に把握し直すことができる。
【0061】
収納庫4b〜4dについても同様に行い、収納庫4b〜4dに収納している紙幣の枚数を把握することができる。
【0062】
以後、収納庫4a〜4dの上段収納部45、下段収納部46何れかを空にして運用し、収納庫4a〜4d内に収納されている紙幣の収納枚数が把握できなくなった際に、収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の収納枚数を計数することができる。
【0063】
このように、収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の枚数を常に正確に把握することができるので、出金取引で残金不足が発生しなくなり、さらに計数用に別の収納庫を用意しなくて済み、計数している際に他の金種の紙幣と混ざり合うこともなくなる。
【0064】
前述の実施例では、収納庫4a〜4dから紙幣を繰り出す際に2枚出し、連れ出しなどが発生した場合について記述したが、着脱可能な収納庫4a〜4dを入れ替えた際に、当該収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の枚数を計数することもできる。
【0065】
また、上述の実施例では、収納庫の上段収納部45、下段収納部46の何れか一方を空にして運用する例を示したが、必ずしもその必要はなく、上段収納部45と下段収納部46に収納している紙幣の枚数を合わせたとき、どちらか一方の空間に収納することができる枚数であれば、一時保留部3を経由して、どちらか一方の空間に紙幣をいったん移動した後、再び一時保留部3を経由して、他方の空間に全ての紙幣を移動し、紙幣の枚数を計数することにより、収納庫4a〜4dに収納している紙幣の枚数を把握し直すことができる。
【0066】
さらに、図8に示すように、搬送されてきた紙幣を羽根車状の巻取り回転体で巻き取って羽根車の周面に一時保留する巻き取り式の一時保留部3で構成することもできる。
【0067】
このような巻き取り式の一時保留部3を備えた場合は、紙幣の長さ、幅の寸法が異なった多様なサイズの紙幣を全て取り扱うことができるので、各収納庫4a〜4dに収納されている紙幣の大きさが収納庫別に大きく異なる外国紙幣のような場合でも全ての紙幣の一時保留を可能にして、各収納庫4a〜4dの収納枚数を計数することができる。
【0068】
上述のように、上段収納部と下段収納部との紙幣を集積する2つの空間を有し、そのうちのどちらの空間からも一時保留部を経由させて紙幣を出し入れすることができる収納庫を設け、該収納庫の一方の空間から一時保留部を経由して、もう一方の空間に紙幣を搬送する際に、その搬送過程で紙幣を計数する。これにより、収納庫に収納されている紙幣の収納枚数を自動的に計数するものである。
【0069】
したがって、収納庫の紙幣収納量の計数が必要になった場合は、その都度、紙幣を少しずつ移し替える如く循環させて自動的に計数させることができる。これにより、紙幣のサイズが金種別に大きく異なっても計数専用の収納庫を要しない自動精査が可能になる。また、計数専用の収納庫を要しないため装置自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0070】
ことに、サイズ違いの紙幣であっても自動計数できるため、紙幣の幅や長さが金種別に大きく異なる国でも計数処理できる。また、紙幣を移送させて計数する際に、一時保留部を経由させるだけで自動計数が可能になり、既存の一時保留部を計数処理に有効に活用できることに加えて計数専用の収納庫が不要になる。また、計数に先立ち、計数専用の収納庫を予め空にしておくような必要もなくなる。
【0071】
さらに、一時保留部は紙幣を一時保留する機能上、収納庫に比べて小さい保留スペースであるが、収納庫から移送される紙幣量が一時保留部の収納限度を超える場合は、小分けして繰り返し一時保留処理すればよく、紙幣の処理枚数にかかわらず少しずつ搬送処理することに基づいて自動計数を可能にしている。
【0072】
この発明は上述の実施例に記載された構成に限定されるものではなく、請求項に記載された技術思想に基づいて応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
紙葉類を取り扱うATM、両替機、券売機などの自動取引する装置の全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1…入出金口
2…識別部
3…一時保留部
4a〜4d…収納庫
10…搬送路
11…通過センサ
40…振分けゲート
45…上段収納部
46…下段収納部
47,48…出入機構
111…主制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類取扱口に連通する内部で紙葉類を識別する識別部と、前記識別部と接続して紙葉類を一時保留する一時保留部と、前記紙葉類を種類別に分けて収納する複数の収納庫と、少なくとも前記紙葉類取扱口と前記識別部と前記一時保留部と前記複数の収納庫との間を接続する搬送路とを備えた紙葉類管理装置であって、
前記収納庫は紙葉類を出し入れする独立した出入機構をそれぞれ備えた第1収納部と第2収納部とを備え、
前記第1収納部か第2収納部かの何れか一方に収納されている紙葉類を、前記識別部を経由させて前記一時保留部に一時保留させた後、一時保留した紙葉類を前記他方の収納部へ移送させる際に、移送された処理枚数を計数する制御手段を備えた
紙葉類管理装置。
【請求項2】
前記一時保留部に一時保留された紙葉類を前記第1収納部と前記第2収納部との何れか一方に振分ける振分けゲートを備えた
請求項1に記載の紙葉類管理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記一時保留部が満杯になると、該一時保留部の紙葉類を他方の収納部へ移し替え、再度一方の収納部から一時保留部への一時保留を行う繰り返し処理を実行する
請求項1または2に記載の紙葉類管理装置。
【請求項4】
収納庫に、紙葉類を出し入れする独立した出入機構をそれぞれ備えた第1収納部と第2収納部とを備え、
前記第1収納部か第2収納部かの何れか一方に収納されている紙葉類を、識別部を経由させて一時保留部に一時保留させた後、一時保留した紙葉類を前記他方の収納部へ移送させる際に、移送された処理枚数を制御手段により計数する
紙葉類管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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