説明

紙葉類識別装置および紙葉類識別用磁気センサ

【課題】 磁性材料により形成された第1のパターンと、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとを共通のセンサで検出することのできる紙葉類識別装置および紙葉類識別用磁気センサを提供すること。
【解決手段】 紙葉2の搬送路に磁気センサ10が配置された紙葉類識別装置において、磁気センサ10は、搬送路3に向けられる感磁部110を備えたコア体11と、コア体11に巻回されて交流電流の供給によって搬送路に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイル12とを備え、紙葉2が搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果に基づいて、紙葉2に磁性材料により形成された第1のパターン21と、紙葉2に非磁性の導電性材料により形成された第2のパターン22とを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣や有価証券等の紙葉類の真贋や種類などを識別するための紙葉類識別装置および紙葉類識別用磁気センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣などの識別装置では、紙幣に磁気インクにより印刷されたパターンをMRセンサ(磁気抵抗センサ)によって検出し、紙幣の真贋や種類を識別するという方法が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−35701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、印刷技術の向上に伴い、MRセンサによる検出だけでは真券と識別されてしまう贋札が出現する傾向にあることから、紙幣にホログラムパターンを形成した紙幣が用いられるようになったが、このようなホログラムパターンは、アルミニウムなどといった非磁性の金属材料で形成されているため、MRセンサで検出するのは不可能である。
【0004】
そこで、識別装置に光学センサを搭載する方法が考えられるが、1台の識別装置に磁気センサと光学センサとを搭載した場合には、装置構成が複雑化するため、装置が大型化するとともに、コストが増大するという問題点がある。
【0005】
以上の問題に鑑みて、本発明の課題は、磁性材料により形成された第1のパターンと、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとを共通のセンサで検出することのできる紙葉類識別装置および紙葉類識別用磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、紙幣や小切手などの紙葉類の搬送路に配置された磁気センサを備え、当該磁気センサの検出結果に基づいて、前記搬送路を搬送される前記紙葉類を識別する紙葉類識別装置において、前記磁気センサは、前記搬送路に向けられる感磁部を備えたコア体と、該コア体に巻回されて交流電流の供給によって前記搬送路に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイルとを備え、前記紙葉類が前記搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果に基づいて、前記紙葉類に磁性材料により形成された第1のパターンと、前記紙葉類に非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとを検出することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る紙葉類識別装置では、感磁部を備えたコア体、および該コア体に巻回されて搬送路に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイルを備えた磁気センサを用いているので、紙葉類が搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果には、紙葉類に磁性材料により形成された第1のパターンに起因する磁界変化が含まれる。従って、磁気センサによって、第1のパターンを検出できる。また、本発明に係る紙葉類識別装置で用いた磁気センサは、パターン検出用の励磁コイルによって搬送路に磁界を発生させるため、紙葉類が搬送路を搬送される際、紙葉類に非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンに渦電流が発生する。従って、紙葉類が搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果には、紙葉類に第2のパターンに起因する磁界変化が含まれる。従って、磁気センサによって、第2のパターンを検出できる。それ故、本発明によれば、共通のセンサによって、磁性材料により形成された第1のパターンと、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとを検出できるので、装置構成を簡素化できる。よって、紙葉類識別装置の小型化、および低コスト化を実現できる。
【0008】
本発明において、前記第2のパターンは、例えば、非磁性の金属材料により形成されたホログラムパターンである。
【0009】
本発明において、前記磁気センサは、自励式あるいは他励式のいずれを用いてもよい。
【0010】
本発明において、前記磁気センサは、前記コア体に前記パターン検出用の励磁コイルと差動検出用のコイルとが巻回され、前記パターン検出用の励磁コイルが発生させた磁界の変化と、前記差動検出用の励磁コイルが発生させた磁界の変化との差により、前記パターンの検出を行うことが好ましい。すなわち、本発明では、差動検出を行うことが好ましく、このように構成すれば、温度などの環境変化の影響を受けないため、紙葉類を高い精度で識別することができる。
【0011】
また、本発明では、磁性材料により形成された第1のパターンと、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとが形成された紙葉類を識別するための紙葉類識別用磁気センサであって、感磁部を備えたコア体と、該コア体に巻回されて交流電流の供給によって磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイルとを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る紙葉類識別装置および紙葉類識別用磁気センサでは、感磁部を備えたコア体、および該コア体に巻回されて搬送路に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイルを備えた磁気センサを用いているので、紙葉類が搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果には、紙葉類に磁性材料により形成された第1のパターンに起因する磁界変化が含まれる。従って、磁気センサによって、第1のパターンを検出できる。また、本発明に係る紙葉類識別装置で用いた磁気センサは、パターン検出用の励磁コイルによって搬送路に磁界を発生させるため、紙葉類が搬送路を搬送される際、紙葉類に非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンに渦電流が発生する。従って、紙葉類が搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果には、紙葉類に第2のパターンに起因する磁界変化が含まれる。従って、磁気センサによって、第2のパターンを検出できる。それ故、本発明によれば、共通のセンサによって、磁性材料により形成された第1のパターンと、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとを検出できるので、装置構成を簡素化できる。よって、紙葉類識別装置の小型化、および低コスト化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ、およびこの磁気センサを用いた紙葉類識別装置を説明する。
【0014】
(全体構成)
図1は、本発明を適用した紙葉類識別装置の要部構成を示す構成図である。図1において、本形態の紙葉類識別装置1は、紙幣や小切手などの紙葉2の紙面に形成されているパターンを検出して、その真贋や種類を識別するための装置であり、紙葉2に磁気インクなどの磁性材料により形成された第1のパターン21と、紙葉2にアルミニウムなどの非磁性の導電性材料により形成された第2のパターン22とを検出することにより、紙葉2の真贋や種類を識別する。ここで、第2のパターン22は、ホログラムパターンなどとして形成されている。
【0015】
本形態の紙葉類識別装置1は、紙葉2を伏せた状態のまま搬送路3に沿って搬送する搬送機構(図示せず)、搬送路3の途中位置に配置された磁気センサ10、この磁気センサ10に交流電流を供給する電源回路(図示せず)、磁気センサ10からの出力を処理する検出回路(図示せず)などを備えている。ここで、磁気センサ10は、搬送路3の幅方向(紙葉2の搬送方向に交差する方向)に向かって複数、配置され、搬送される紙葉2のうち、その下方位置を通る部位のパターンを時系列に検出する。なお、紙葉2の搬送方向は矢印Wで示してある。
【0016】
(磁気センサの構成)
図2(a)、(b)は、本発明を適用した紙葉類識別装置に使用可能な自励式の磁気センサの原理図、および他励式の磁気センサの原理図である。図3(a)、(b)、(c)および図4は、本発明を適用した紙葉類識別装置に使用可能な自励式の磁気センサの説明図、および差動検出を採用した場合の説明図である。
【0017】
本発明を適用した紙葉類識別装置1では、磁気センサ10として、図2(a)に示す自励式の磁気センサ10、および図2(b)に示す他励式の磁気センサ10のいずれをも用いることができる。図2(a)に示す自励式の磁気センサ10は、搬送路3に向けられる感磁部110を備えたコア体11と、このコア体11に巻回されて搬送路3に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイル12と、この励磁コイル12の両端に電気的に接続された抵抗13とを備えている。抵抗13の両端の電圧Voutは検出回路に出力されており、この出力によって、紙葉2が搬送路3を搬送される際の磁界変化を検出することができる。ここで、コア体11はフェライトやパーマロイ、アモルファス磁性体などからなる。
【0018】
図2(b)に示す他励式の磁気センサ10は、搬送路3に向けられる感磁部110を備えたコア体11と、このコア体11に巻回されて搬送路3に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイル12と、コア体11に巻回された検出コイル14とを備えている。検出コイル14の両端の電圧Voutは、検出回路に出力されており、この出力によって、紙葉2が搬送路3を搬送される際の磁界変化を検出することができる。ここで、コア体11はフェライトやパーマロイ、アモルファス磁性体などからなる。
【0019】
このような磁気センサ10のうち、自励式の磁気センサ10としては、例えば、図3(a)に示すように、水平板部111の中央から搬送路3に向けて1枚の垂直板部112が延びたT字形状のものを用いることができ、この場合、垂直板部112にパターン検出用の励磁コイル12が巻回され、垂直板部112の端部が感磁部110として利用される。
【0020】
また、自励式の磁気センサ10としては、図3(b)に示すように、水平板部111の中央、一方の端部、および他方の端部から搬送路3に向けて3枚の垂直板部112、113、114が延びたE字形状のものを用いることができ、この場合、中央の垂直板部112にパターン検出用の励磁コイル12が巻回され、垂直板部112の端部が感磁部110として利用される。
【0021】
さらに、信号検出に差動検出法を採用する場合には、自励式の磁気センサ10としては、例えば、図3(c)に示すように、水平板部111の中央、一方の端部、および他方の端部から、搬送路3およびその反対側に向けて計6枚の垂直板部112、113、114、115、116、117が延びたものを用いることができる。この場合、搬送路3に向けて延びた中央の垂直板部112にパターン検出用の励磁コイル12が巻回され、垂直板部112の端部が感磁部110として利用される。さらに、搬送路3とは反対側に向けて延びた中央の垂直板部115には、差動検出用のコイル15が巻回されている。ここで、パターン検出用の励磁コイル12と差動検出用のコイル15とは直列に接続されており、その両端に交流電流に供給され、かつ、パターン検出用の励磁コイル12と差動検出用のコイル15との接続点から信号が出力される。
【0022】
このような磁気センサ10を用いて、差動検出法により信号検出を行う場合には、図4に示す駆動回路が用いられる。この駆動回路は、複数の磁気センサ10の各パターン検出用の励磁コイル12、および各差動検出用のコイル15に交流電流を供給する共通の電源回路40と、各磁気センサ10に対応する複数のセンサ信号処理回路30とを有している。センサ信号処理回路30は、差動アンプ31、半波整流回路あるいは全波整流回路などの整流回路32、ローパスフィルタ33、増幅アンプ34などから構成されており、各磁気センサ10からの出力信号を増幅する。また、各センサ信号処理回路30から出力される出力パターンを照合することにより、紙葉2の真贋や種類を識別する。
【0023】
(動作)
図5(a)、(b)は、本形態の紙葉類識別装置に仕掛けられる紙葉類の一例を示す説明図、およびこの紙葉を仕掛けたときのセンサ出力を示す説明図である。
【0024】
本形態の紙葉類識別装置1において、図5(a)に示すように、紙面に磁気インクで形成された第1のパターン21と、ホログラムパターンからなる第2のパターン22とが形成された紙葉2を仕掛けると、図5(a)に矢印Lで示す位置を測定する磁気センサ10からは、図5(b)に示す出力が得られる。
【0025】
図5(b)に示す出力において、まず、紙葉2において第1のパターン21が形成されている領域L1が磁気センサ10の下方を通過する期間t1では、第1のパターン21によって透磁率が上昇するため、出力がハイレベルとなる。次に、紙葉2において第1のパターン21が形成されている領域L1と第2のパターン22が形成されている領域L3の間の領域L2が磁気センサ10の下方を通過する期間t2では、領域L2に第1のパターン21および第2のパターン22のいずれもが形成されていないため、出力が中間レベルとなる。紙葉2において第2のパターン22が形成されている領域L3が磁気センサ10の下方を通過する期間t3では、第2のパターン22に渦電流が発生するため、出力がローレベルとなる。そして、紙葉2において第2のパターン22が形成されている領域L3が磁気センサ10の下方を通り過ぎた後、領域L4が磁気センサ10の下方を通過する期間t4では、領域L4に第1のパターン21および第2のパターン22のいずれもが形成されていないため、出力が中間レベルとなる。
【0026】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の紙葉類識別装置1では、感磁部110を備えたコア体11、およびコア体11に巻回されて搬送路3に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイル12を備えた磁気センサ10を用いているので、紙葉2が搬送路3を搬送される際の磁界変化の検出結果には、紙葉2に磁性材料により形成された第1のパターン21に起因する磁界変化が含まれる。従って、磁気センサ10によって、第1のパターン21を検出できる。また、本形態に係る紙葉類識別装置1で用いた磁気センサ10は、パターン検出用の励磁コイル12によって搬送路3に磁界を発生させるため、紙葉2が搬送路3を搬送される際、紙葉2に非磁性の導電性材料により形成された第2のパターン22に渦電流が発生する。従って、紙葉2が搬送路3を搬送される際の磁界変化の検出結果には、紙葉2に第2のパターン22に起因する磁界変化が含まれる。従って、磁気センサ10によって、第2のパターン22も検出できる。それ故、本形態によれば、共通の磁気センサ10によって、磁性材料により形成された第1のパターン21と、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターン22とを検出できるので、装置構成を簡素化できる。よって、紙葉類識別装置1の小型化、および低コスト化を実現できる。
【0027】
また、信号を検出するにあたって、差動検出法を採用したため、温度などの環境変化の影響を相殺することができるので、紙葉2を高い精度で識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を適用した紙葉類識別装置の要部構成を示す構成図である。
【図2】(a)、(b)は、本発明を適用した紙葉類識別装置に使用可能な自励式の磁気センサの原理図、および他励式の磁気センサの原理図である。
【図3】(a)、(b)、(c)は、本発明を適用した紙葉類識別装置に使用可能な自励式の磁気センサの説明図である。
【図4】本発明を適用した紙葉類識別装置おいて差動検出を採用した場合の説明図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明を適用した紙葉類識別装置に仕掛けられる紙葉類の一例を示す説明図、およびこの紙葉を仕掛けたときのセンサ出力を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 紙葉類識別装置
2 紙葉
3 搬送路
10 磁気センサ(紙葉類識別用磁気センサ)
11 コア体
12 パターン検出用の励磁コイル
15 差動検出用のコイル
110 感磁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類の搬送路に配置された磁気センサを備え、当該磁気センサの検出結果に基づいて、前記搬送路を搬送される前記紙葉類を識別する紙葉類識別装置において、
前記磁気センサは、前記搬送路に向けられる感磁部を備えたコア体と、該コア体に巻回されて交流電流の供給によって前記搬送路に磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイルとを備え、
前記紙葉類が前記搬送路を搬送される際の磁界変化の検出結果に基づいて、前記紙葉類に磁性材料により形成された第1のパターンと、前記紙葉類に非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとを検出することを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2のパターンは、非磁性の金属材料により形成されたホログラムパターンであることを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記磁気センサは、自励式あるいは他励式であることを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記磁気センサは、前記コア体に前記パターン検出用の励磁コイルと差動検出用のコイルとが巻回され、
前記パターン検出用の励磁コイルが発生させた磁界の変化と、前記差動検出用の励磁コイルが発生させた磁界の変化との差により、前記パターンの検出を行うことを特徴とする紙葉類識別装置。
【請求項5】
磁性材料により形成された第1のパターンと、非磁性の導電性材料により形成された第2のパターンとが形成された紙葉類を識別するための紙葉類識別用磁気センサであって、
感磁部を備えたコア体と、該コア体に巻回されて交流電流の供給によって磁界を発生させるパターン検出用の励磁コイルとを備えていることを特徴とする紙葉類識別用磁気センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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