説明

紙製トレイ状容器

【課題】深絞りのトレイにあっても、容器底部とコーナー部において、真空成型時に外容器と内層フィルムとの密着を確実にしてかつ、ピンホール等の発生を防ぐことの可能な紙製トレイ状容器を提供することを課題とする。
【解決手段】トレイ状容器のフランジ面に、前記蓋材が重ね合わせられ、その重ね合わせ内面が熱融着されて密封される紙製トレイ状容器において、外容器を形成するブランクの側面板とそれに連設された重合片の境界の折れ罫線を一端とする線状の凹部または凸部を重合片に設けたことを特徴とする紙製トレイ状容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内容物である、未調理、調理済食品を充填収納する紙を基材とした外容器の内面に合成樹脂フィルムを真空成形等で一体化したトレイ状の紙製トレイ状容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品等を収納する容器としては従来から、合成樹脂をコーティングした板紙からなるブランクを組み立てた、トレイ状の容器が提案され、実用化されている。
このトレイ状容器は、内面に合成樹脂がコーティングされ、しかもコーナー部で、ブランクの端面が露出しないように、重ね合わさるように折り返して成形するので、液状物を含む内容物、あるいは浸透性のある内容物に対しても使用可能であった。
【0003】
一方、近年とくに、このような紙製のトレイ状容器に、調理済食品、あるいは半調理食品を充填、密封し、使用時には、このトレイ状容器をそのまま、電子レンジ、またはオーブンにより加熱、あるいは加熱調理し、そのまま食器として使用するという要求が増大してきている。
このようなトレイ容器の内面に設ける合成樹脂としては、必要な耐熱性とヒートシール性を兼ね備えているホリプロピレンが好適であるが、電子レンジあるいはオーブンによる加熱工程に耐えるためには、膜厚がある程度厚いことが必要であり、たとえば100μm以上のフィルムを使用するのが好ましい。
【0004】
しかし、厚さの厚いポリプロピレンフィルム等の合成樹脂フィルムを、トレイ状容器の内面に用いると、コーナー部で折返して成形することが困難であり、また、コーナー部を折り返して成形した際に生じるフランジ部に段差が生じ、内容物を収納した後、フランジ部で密封するのが困難であった。
【0005】
このようなトレイ状容器の成型に当たっては、紙製の外容器の内面に、合成樹脂フィルムを加熱軟化させ、真空成形等の手段により積層接着したトレイ状容器がいくつか提案されている。この方法によれば合成樹脂フィルムを積層したブランクを用いる方法に比べて外容器内面のカバーおよび成型の容易さから見てすぐれたトレイ状容器を製造することが可能である。
【0006】
しかしながら、真空成型を用いてトレイ状容器の内面に合成樹脂フィルムを積層接着する工程で、紙製の外容器の内面と合成樹脂フィルムをピンホール等の欠陥を生じることなく必要な接着強度を有するかたちで積層することは必ずしも容易ではなかった。とくに深絞りの真空成型工程においては容器底面近傍の位置のフィルムを安定して強固に積層することが困難である。
【0007】
図7には紙製トレイ状容器の一例の真空成型工程(吸引前)の断面略図を、同じく図8には吸引後の断面略図を示した。
図7ではトレイ状に成型された紙製の外容器(10)は真空成型用の金型(30)の内側にセットされている。合成樹脂フィルム(20)は加熱装置(図示せず)により加熱されて金型(30)の上方に運ばれてきている。図の白抜き矢印はフィルムのこれからの変形方向とエアの吸引方向(D)を示している。
【0008】
図8では上記の状態から吸引を開始して合成樹脂フィルム(20)が外容器(10)の内面に沿って変形密着した状態を示している。外容器(10)の側面上部にあたる合成樹
脂フィルムは均一に密着しているが、エア抜きのときのエアが逃げる箇所が容器底部のコーナー部(E)しかないので、局部的にエアを抜くことでフィルムに負荷がかかりピンホールが出来易いのみならずフィルムの冷却が進むことで密着も弱くなる。
【0009】
このように従来のトレイ状容器の成型においては、外容器を金型内に載置し、加熱軟化している合成樹脂フィルムを真空成形等で一体化する時、この合成樹脂フィルムが外容器に接触した段階で直ちに冷却されてしまうため、外容器と充分な接着強度が得られなかった。特に、耐熱性、ヒートシール性を有するポリプロピレンフィルムの場合、満足する接着強度が得られなかった。
【0010】
紙製の外容器の内面に、合成樹脂フィルムを加熱軟化させ、真空成形等の手段により、積層接着する際のこのような問題を緩和させるために、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1や特許文献2に示されるように、紙製の外容器の内面に、合成樹脂フィルムを加熱軟化させ、真空成形等の手段により、積層接着したトレイ状容器が提案されている。
【0011】
特許文献1においては、下部にスリットを有する厚紙製の外箱と該外箱の内面に合成樹脂フィルムを前記スリットより脱気密封して成型した内箱とを一体的に構成してなる密封容器が提案されている。
【0012】
また特許文献2においては、板紙からなる外箱の内面にプラスチックフィルムが密着しており、このプラスチックフィルムは外箱の開口周縁に連続するフラップの外表面まで延長されているので、物品を密封包装するに際し、フラップを内側に折り込み、この上から熱接着性を有する蓋を被せて加熱加圧すれば鍔状片の全くない密封包装体とすることが出来、包装体の貯蔵および輸送時等に場所をとらず取り扱いも便利な容器が提案されている。
【0013】
これらのトレイ状容器は、フランジ部に段差が生じない構造とすることができ、密封性の良好な容器として使用可能であるが、下部のスリットからの脱気促進の構造のみでは前記コーナー部に生じ易い欠点を確実に防止することは困難であった。
【0014】
さらに特許文献3においては、外層容器の底面部に小径の孔を適宜数明け、別ラインで加熱されたプラスチックシートを被せて真空吸引する時に外層容器に開けた小孔を真空孔として用いることによって、脱気をスムースに行うことが出来るという複合容器の製造方法が提案されている。
【0015】
また特許文献4においては、紙製の外容器の内面に、前述のように加熱軟化させたポリプロピレンフィルムを真空成形等の手段で一体化した、密封性の良好なトレイ状容器で、ポリプロピレンフィルムの内層に特定の低融点プラスチックフィルムを介在させることによって、この外容器とポリプロピレンフィルムとの接着強度を高めたトレイ状容器が提案されている。これにより、コーナー部等においても、蓋材を開封した時、外容器に一体化した合成樹脂フィルムが、外容器から剥離する危険が少なくなる。
以上のような手段を用いてもなお深絞りのトレイにあっては、容器底部とコーナー部において、真空成型時に外容器と内層フィルムとの密着を確実にしてかつ、ピンホール等の発生を防ぐことは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】実公昭51−31202号公報
【特許文献2】実公昭54−42830号公報
【特許文献3】特開昭55−34910号公報
【特許文献4】特開平10−114327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであり、深絞りのトレイにあっても、容器底部とコーナー部において、真空成型時に外容器と内層フィルムとの密着を確実にしてかつ、ピンホール等の発生を防ぐことの可能な紙製トレイ状容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の請求項1に記載の発明は、
紙を基材とするトレイ状容器内に内容物を充填後、紙を基材とする蓋材により封嵌し密封する蓋材とトレイ状容器とからなり、前記トレイ状容器は、上面が開口しつつ、開口周縁にフランジ面を有する紙基材からなる外容器の内面に合成樹脂フィルムを、真空成形、又は真空成形と圧空成形の併用により、積層接着して一体化されていて、前記トレイ状容器のフランジ面に、前記蓋材が重ね合わせられ、その重ね合わせ内面が熱融着されて密封される紙製トレイ状容器において、外容器を形成するブランクの側面板とそれに連設された重合片の境界の折れ罫線を一端とする線状の凹部または凸部を重合片に設けたことを特徴とする紙製トレイ状容器である。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明は、
前記外容器を形成するブランクの側面板と重合片の境界の折れ罫線上に複数の微細孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製トレイ状容器である。
【0020】
本発明の請求項3に記載の発明は、
前記微細孔が紙製トレイ状容器の底部に行くに従って配置の密度が大きくなっているかまたは微細孔のサイズが大きくなっていることを特徴とする請求項2に記載の紙製トレイ状容器である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る紙製トレイ状容器は、紙基材からなる外容器の内面に合成樹脂フィルムを、真空成形、又は真空成形と圧空成形の併用により、積層接着して一体化されている紙製トレイ状容器において、外容器を形成するブランクの側面板とそれに連設された重合片の境界の折れ罫線を一端とする線状の凹部または凸部を重合片に設けたことを特徴とする紙製トレイ状容器である。
【0022】
本発明に係る紙製トレイ状容器の外容器を形成するブランクの側面板とそれに連設された重合片の境界の折れ罫線は真空吸引時にエアの通路となる。
この折れ罫線に接続された線状の凹部または凸部を重合片に設けることによって線状の凹部または凸部によって側面板と重合片の重なり合う領域に形成されたわずかな空隙を通じて重合片の端部から折れ罫線へと吸引時のエアが移動することが出来るので、深絞りのトレイにあっても、容器底部とコーナー部において、真空成型時に外容器と内層フィルムとの密着を確実にしてかつ、ピンホール等の発生を防ぐことが可能となる。
【0023】
この場合、重合片に形成された折れ罫線に接続している線状の凹部または凸部の反対側の端部は外容器の内部で開放されていなければならないのはもちろんである。
また、前記折れ罫線上に複数の微細孔が穿設されていることによって前記のエアの移動がさらに促進されて前記の効果がより早く顕著に発現するようになる。
【0024】
前記複数の微細孔は本発明に係る紙製トレイ状容器の底部に行くに従って配置の密度が大きくなっているかまたは微細孔のサイズが大きくなっていることによって、エア吸引時に脱気がもっとも必要とされる底部からの吸引がとくに促進され、前記の効果がさらに早く発現するようになる。
このようにして、本発明に係る紙製トレイ状容器によれば、内面の合成樹脂フィルムのピンホール発生による不良品の減少により製造工程での良品率が向上するのみならず、フィルム成形時の真空吸引の速度が安定することによって成形効率が上がる効果も期待できる。
【0025】
さらに紙製のトレー容器の内面に真空成形、または真空成形と圧空成形の併用により貼着された合成樹脂フィルムを用いたので、トレイ状容器の内面が完全な耐水性を有するので、液体、及び水分を含む食品の収納を可能とし、電子レンジ、オーブン等での容器をそのままで内容物の加熱調理を可能としたので、消費者にとっては鍋等の調理器具を準備することなく容易に調理することが可能となった。またこれら加熱調理によって容器は何ら損傷しないため、そのまま食器として使用することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の紙製トレイ状容器の一例のブランク図
【図2】本発明の紙製トレイ状容器の一例を側面3から見た模式図
【図3】本発明の紙製トレイ状容器の他の一例のブランク図
【図4】本発明の紙製トレイ状容器の他の一例のブランクの部分拡大図
【図5】本発明の紙製トレイ状容器の他の一例のブランクの部分拡大図
【図6】本発明の紙製トレイ状容器の他の一例のブランクの部分拡大図
【図7】紙製トレイ状容器の一例の真空成型工程(吸引前)の略図
【図8】紙製トレイ状容器の一例の真空成型工程(吸引後)の略図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照にして詳細に説明する。図1は本発明の紙製トレイ状容器の一例のブランク図を、図2は図1に示したブランクから組み立てられた紙製トレイ状容器を側面3側から見た模式図をそれぞれ示している。
本発明の紙製トレイ状容器は紙基材からなる外容器の内面に合成樹脂フィルムを、真空成形、又は真空成形と圧空成形の併用により、積層接着して一体化されている紙製トレイ状容器である。
【0028】
紙基材からなる外容器は図1のブランク図に示したような紙製ブランクから周知の製造方法によって組み立てられたトレイ状の容器であり、底面(1)から起ち上がった2対の側面(2)および側面(3)と側面外周部に連接された2対のフランジ(4)および(5)を備えたフランジを有する紙容器である。
【0029】
この紙製ブランクを組み立てて固定するために接着する部分として、左右の側面(2)の両側端に折れ罫線(A)を介して重合片(7)が連接されており、重合片(7)上にはそれらの一端が折れ罫線(A)につながっている線状の凹凸(C)がエンボスによって形成されている。この重合片(7)は組立て時に側面(3)を立ち上げた状態でその内側面に接着固定される。
【0030】
重合片(7)上に形成された線状の凹凸(C)は、その折れ罫線(A)につながっている反対側の端部が外容器の内側に向けて空隙で連通しており、外容器内側に合成樹脂フィルムを真空吸着するときに外容器とフィルムの間の空間からエアを抜くための補助的な役割を果たす。上記の真空成形時の容器断面の状態の概略は図7および図8を用いて既に説明したので省略する。
【0031】
本発明の他の実施の形態を図面を参照にして詳細に説明する。図3は本発明の紙製トレイ状容器の一例のブランク図を、図4は図3に示したブランクから組み立てられた紙製トレイ状容器を側面3側から見た重合片近辺(B)の部分拡大図をそれぞれ示している。
【0032】
紙基材からなる外容器は図3のブランク図に示したような紙製ブランクから周知の製造方法によって組み立てられたトレイ状の容器であり、底面(1)から起ち上がった2対の側面(2)および側面(3)と側面外周部に連接された2対のフランジ(4)および(5)を備えたフランジを有する紙容器である。
【0033】
この紙製ブランクを組み立てて固定するために接着する部分として、左右の側面(2)の両側端に折れ罫線(A)を介して重合片(7)が連接されており、重合片(7)上にはそれらの一端が折れ罫線(A)につながっている線状の凹凸(C)がエンボスによって形成されている。この重合片(7)は組立て時に側面(3)を立ち上げた状態でその内側面に接着固定される。
【0034】
さらに折れ罫線(A)上には複数の微細孔(6)が穿設されており、外容器内側に合成樹脂フィルムを真空吸着するときに一端が折れ罫線(A)につながっている線状の凹凸(C)による吸引効果に加えてさらに外容器とフィルムの間の空間からエアを抜くための補助的な役割を果たしている。
【0035】
上記の複数の微細孔(6)は図4に示したように折れ罫線(A)上にほぼ等間隔で配置される必要はない。
複数の微細孔(6)は図5に示したように、特にエア吸引の増強が必要とされる容器底部に狭い間隔で配置され、容器上部では広い間隔で配置されている状態が脱気を効果的に行なう上では望ましい。
また、同様の理由で複数の微細孔(6)のそれぞれのサイズは同じである必要はなく、図6に示したように、特にエア吸引の増強が必要とされる容器底部の孔径が大きく、容器上部では小さい孔径で形成されている状態が脱気を効果的に行なう上では望ましい。
【0036】
図示しないが、同様の理由で合成樹脂フィルムにピンホールが空き易い底部の角周辺に微細孔を追加する、もしくは重合片の切り離される側面との境界に小さな凹凸を設けることも可能である。
【0037】
外容器となる紙基材としては通常、カップ原紙等の板紙が用いられる。坪量と密度は容器の容量やデザインにより適宜選定されるが、通常は坪量200g/m〜500g/mの範囲で密度0.8前後のカップ原紙がよく用いられる。
紙基材としては、適度な剛度を有することはもちろんのこと、電子レンジ、オーブン等による加熱に対する剛性を持たせるために、加熱による臭気の発生がないか、または低い材質を使用する必要がある。この要求を満たす材質としてはバージンパルプにより製紙したものが適している。また加熱調理により発生する水分の付着を防止する必要から耐水性、端面からの水分の付着の吸収性のない、または低い材質を用いる必要がある。この要求を満たす材質としては、一般にカップ原紙と呼ばれるものが適している。
【0038】
これらの要求品質は、本密封紙製容器を冷蔵庫等で冷凍,冷蔵保存した時、また、その保存状態から消費者が購入し持ち帰るまでの間におこる容器表面の結露による容器の劣化防止の目的からも有効なものとなる。また、必要に応じて耐油性を持たせることもできる。さらに、開封時に蓋体との剥離強度において、紙剥けのしない材質である必要がある。
また、上記の紙基材は単体でもよいが必要に応じて他の層を複合した積層体でもよい。よく用いられる複合層としては、印刷層、シーラント層、ガスバリア層や層間の接着を確保
するための接着層、アンカー層等がある。
【0039】
外容器の表面に必要に応じて設けられる印刷層は周知のインキを用いてグラビア印刷等の方法で施すことが出来る、絵柄や商品情報などを含む層である。紙基材表面に熱可塑性樹脂層としてポリオレフィン樹脂を用いる場合にはインキの密着を良くするために通常はコロナ処理等の易接着処理を表面に行う。
【0040】
外容器の組立てをヒートシールで行なう場合にはシーラント層が必要になる。シーラント層は、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などからなる層であり、通常内容物封入後の蓋の密閉シールを兼ねている。具体的には、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体などのエチレン系樹脂や、ホモ・ブロック・ランダムの各ポリプロピレン樹脂や、プロピレン−αオレフィン共重合体などのプロピレン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体やエチレン−メタクリル酸共重合体などのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチルやエチレン−アクリル酸エチルやエチレン−メタクリル酸メチルやエチレン−メタクリル酸エチルなどのエチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物、カルボン酸部位をナトリウムイオン、亜鉛イオンで架橋した、エチレン−α,β不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体やエチレン−アクリル酸エチル−無水マレイン酸のような三元共重合体に代表される酸無水物変性ポリオレフィン、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などのエポキシ化合物変性ポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる樹脂の単体あるいは2種以上のブレンド物などにより設けられる。シーラント層(5)の厚みは特に限定はない。
【0041】
ガスバリア層としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミドなどのプラスチックの延伸フィルムや、各種プラスチックフィルムにポリビニルアルコールを塗工したり、アルミニウムなどの金属や酸化珪素などの金属酸化物の薄膜を蒸着した加工フィルム、さらにはアルミ箔などが適用できる。また、その厚みに関しても特に限定されるものではないが通常は6μm〜25μmの範囲の延伸フィルムがよく用いられる。
接着層およびアンカー層は積層する層の性質から通常使用される材質の層が適宜選択出来る。
【0042】
以上、本発明に係るトレイ状紙容器に用いる紙基材について説明したが、これらの積層体は上記のような構成のものに限定されるものではなく、包装材料としての用途を考慮し、包装材料として要求される剛性や耐久性などを向上する目的で、他の層を介在させた構成であってもよい。
【0043】
また、本発明のトレイ状紙容器に用いる外容器は、紙基材から例えば次のようにして作製できる。
印刷した紙基材を容器の形状に合わせて所定の形状に打ち抜き、同時に折曲げ用の罫線を入れたブランクとして断裁する。そのブランクを罫線に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を接着することによって外容器を製造する。
【0044】
本発明に係る紙製トレイ状容器では、外容器、蓋材の内面にのみに合成樹脂フィルムを設ける必要がある。これは、電子レンジ、オーブン等により、容器を加熱すると基材である紙の水分が沸騰蒸発し、紙の表面にでてくるという現象がおこるからである。このことにより、紙の両面に合成樹脂フィルムを設けると、この蒸気により紙と合成樹脂フィルムとの間の接着を剥がしてしまうという問題が発生する。この時、合成樹脂フィルムとして融点が低いものを配置すると、この合成樹脂フィルム自体の溶融と、前記蒸気の噴出により合成樹脂フィルムが発泡してしまうという問題が発生する。
【0045】
そこで、本発明に係る紙製トレイ状容器では、紙基材の内面にのみ合成樹脂フィルムを設け、外面には設けず、蒸気の放出を阻害しないようにしている。 また、外側にも合成樹脂フィルムを配置する場合、このような蒸気の放出を阻害しない他の手段としては、微細貫通孔を有するなど、高い通気性の合成樹脂フィルムを積層接着することにより可能である。
【0046】
本発明の紙製トレイ状容器に用いる合成樹脂フィルムは、耐水性に優れ、内容物を充填密封後の冷蔵冷凍等の保存時に十分な密封性を保ち、かつ、熱融着性に優れることはもちろんのこと、電子レンジ、オーブン等の加熱に対する耐性が必要となる。つまり、高い耐水性と耐熱性が必要である。
【0047】
例えば、内容物と接する層をポリプロピレン(PP)樹脂、具体的には、ホモポリプロピレン、ランダムポリプピレン共重合体、ブロックポリプロピレン共重合体であり、特に、ランダムポリプロピレン共重合体を用いるのが好ましい。
また、外容器と接する層は、カルボニル基を有するエチレン系共重合体層を用い、この少なくとも2層からなる合成樹脂フィルムであることが好ましい。この合成樹脂フィルムの厚さは、成形性、耐熱性、内容物保護性のため100μm以上必要であり、好ましくは100〜200μmの範囲である。
【0048】
前記カルボニル基を含むエチレン系共重合体としては、具体的には、エチレン─メチルメタアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、またはエチレン−アクリル酸エステル−無水マレイン酸三元共重合体が挙げられる。
この合成樹脂フィルムは、前記構成の他、PP層として、PPの単体以外に、内容物に接する側に用いたPP以外のPP、ポリエチレン、あるいは非晶質ポリエステルとを組み合わせた多層構成としてもよい。
前記合成樹脂フィルムは、それぞれドライラミネート法により積層してもよいが、同時に溶融押出しする、共押出し法により形成したフィルムが好ましい。
【0049】
一方、前記紙製トレイ状容器の開口部を密封する蓋材は、密封性と、開封性を兼ね備える必要があり、開封時の易開封性を向上させるために合成樹脂フィルムとして、ピーラブル樹脂を積層することが好ましい。
このピーラブル樹脂としては、シングルサイト触媒により重合したポリエチレン、あるいはエチレン−αオレフィン共重合体、またはシングルサイト触媒により重合したポリエチレン、あるいはエチレン−αオレフィン共重合体に、マルチサイト触媒により重合したポリエチレン、あるいはエチレン−αオレフィン共重合体を混合した樹脂を用いることが好ましい。
【0050】
前記紙製トレイ状容器に印刷層を設ける場合は、インキとしては電子レンジ、オーブン等による加熱に対する耐性を持たせる必要がある。つまり、高い耐熱性が必要である。また加熱による臭気の発生がない、または低いことが必要である。さらに、前記した加熱による紙からの蒸気の放出を阻害しないために通気性が必要となる。
【0051】
前記トレイ状容器に用いる印刷層は、絵柄形成用のインキに加えて、印刷層の最外面にオーバーコートニス(OPニス)を設けることも可能である。このOPニスを設けることで、トレイ状容器を製造する際、合成樹脂フィルムを真空成形、または真空圧空成形の併用で、紙基材と積層接着し、一体化することを金型内で行う時、金型からのトレイ状容器の取り出しが容易となり、取り出し工程におけるトレイ状容器の変形、破壊を防止できる。また、このOPニスも、他のインキと同様に耐熱性、通気性、加熱による臭気の発生がないという性質を同時に備えている必要がある。
【0052】
本発明の紙製トレイ状容器は前記外容器の内面に、真空成形、または真空成形と圧空成形の併用によって合成樹脂フィルムを積層接着し、一体化することによって製造する。
一方、トレイ状容器の開口部を密封する蓋材(図示せず)は、前記紙製トレイ状容器のフランジ(4)、(5)に合致する形状、寸法の紙製蓋材であり、内面に合成樹脂フィルムを積層接着し、外面の全面、または適宜部分に印刷層を設けたものである。
【0053】
そして、前記紙製トレイ状容器に食品等の内容物を充填した後、該トレイ状容器のフランジ(4)、(5)に前記蓋材を重ね、両部材の内面の合成樹脂フィルム同士を熱融着により封止して密封して使用する。
【産業上の利用可能性】
【0054】
部材であるカートンブランクの形状を変更して真空成形時の安定生産を可能にする本発明の方法は、紙製トレイ状容器のみならず、包装容器製造技術として紙製一次容器の分野でも広く適用できる技術であると考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1…底面
2…側面
3…側面
4…フランジ
5…フランジ
6…微細孔
7…重合片
10…外容器
20…合成樹脂フィルム
30…金型
A…折れ罫線
B…重合片近傍
C…線状の凹凸
D…吸引方向
E…コーナー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を基材とするトレイ状容器内に内容物を充填後、紙を基材とする蓋材により封嵌し密封する蓋材とトレイ状容器とからなり、前記トレイ状容器は、上面が開口しつつ、開口周縁にフランジ面を有する紙基材からなる外容器の内面に合成樹脂フィルムを、真空成形、又は真空成形と圧空成形の併用により、積層接着して一体化されていて、前記トレイ状容器のフランジ面に、前記蓋材が重ね合わせられ、その重ね合わせ内面が熱融着されて密封される紙製トレイ状容器において、外容器を形成するブランクの側面板とそれに連設された重合片の境界の折れ罫線を一端とする線状の凹部または凸部を重合片に設けたことを特徴とする紙製トレイ状容器。
【請求項2】
前記外容器を形成するブランクの側面板と重合片の境界の折れ罫線上に複数の微細孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紙製トレイ状容器。
【請求項3】
前記微細孔が紙製トレイ状容器の底部に行くに従って配置の密度が大きくなっているかまたは微細孔のサイズが大きくなっていることを特徴とする請求項2に記載の紙製トレイ状容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−188149(P2012−188149A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54049(P2011−54049)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】