説明

紙製造方法及び装置

同一の抄紙機によって複数の紙グレードを製造するための方法及び装置であって、その形成され、少なくとも部分的に乾燥させられるウェブは、コーティングユニット(20)において、液状の処理剤をそのウェブの表面に吹き付けることによって処理され、その後に、そのウェブは、少なくともそのウェブの滑らかさ、また、必要に応じて、同様にその光沢を増大させるために、カレンダーユニット(40)において加熱及び圧縮によって影響を及ぼされる。その方法において、製造されるべきその紙グレードが選択され、その紙グレードに従ってその液状処理剤が選択され、そのウェブに影響を及ぼし、かつ、製造されるその紙グレードの特徴を使用できるようにする。上記液状処理剤は、水、添加剤が加えられた水、表面サイズ、色素含有コーティング剤、及び、それらの混合物のグループから選択可能である。そのウェブにおける所望の固形成分含有量は、カレンダーユニット(40)の前に選択される。乾燥プロセス(30)は、その所望の固形成分含有量を得るために選択され、乾燥プロセス(30)において、相互に異なる乾燥方法及び乾燥出力は、コーティングユニット(20)とカレンダーユニット(40)との間で選択され得る。その乾燥出力は、クリアランスによってもたらされる自然乾燥から、複数の乾燥機(30、321、361)の組み合わせにより提供される乾燥出力までで選択可能である。そのウェブにおける上記所望の固形成分含有量は、その液状処理剤が水の場合には85〜92%であり、また、その液状処理剤が色素含有コーティング剤の場合には90〜95%、好適には92%である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の抄紙機によって様々な紙グレードを製造する方法に関し、その形成され、かつ、少なくとも部分的に乾燥させられたウェブは、コーティングユニット(20)において、液状の処理剤をそのウェブの表面に吹き付けることによって処理され、その後、そのウェブは、少なくともそのウェブの滑らかさ、また必要に応じてその光沢を増大させるために、加熱及び圧縮を用いるカレンダーユニット(40)において影響を及ぼされる。
【0002】
本発明はまた、ウェブを形成し、かつ、少なくともその一部を乾燥させる手段を含む同一の抄紙機によって様々な紙グレードを製造し、また、そのウェブの表面に液状の処理剤を吹き付ける手段を含む、そのウェブを処理するためのコーティングユニット(20)を含み、そのウェブの製造方向におけるその後には、加熱及び圧縮を用いて少なくともそのウェブの滑らかさ、また必要に応じてその光沢を増大させるためのカレンダーユニット(40)がある、装置に関する。
【背景技術】
【0003】
SC(SuperCalendered)紙グレードは、従来、木材含有パルプで作られ、その特別な製造特徴の一つは、スーパーカレンダーによる強いカレンダー加工である。以前は、これらのスーパーカレンダーは、詰め物をしたロールと冷却されたロールとをほとんど独占的に使用し、そのウェブは、それらロールの間のニップを介して方向付けられた。そのウェブの両サイドに同様の特性を与えるために、いわゆるリバーシブルニップが、それらロールによって形成されるスタックの中央で使用され、その冷却されたロール及びその詰め物をしたロールのサイドが、このリバーシブルニップのところで、そのウェブに対して変更される。現在は、スーパーカレンダーの代わりに、様々なマルチロールカレンダーが主に使用され、それらの動作原理は、ほとんど同じであるが、その詰め物をしたロールの代わりに、より強い高分子被覆ロールを備える。そのウェブを取り扱うニップの数もまた、変化した。以前の8〜12のロールニップの代わりに、同数のロールニップ、又は、代替的に、3+5、2+4、4+5、3+3のニップを持つカレンダー等のような、複数セットのロールを含む様々なカレンダーがあり得る。しかしながら、新しいカレンダーが以前と同様の特性を持つ紙を製造するために使用され得るという点からも、紙グレードの特性は、原則として同じままである。
【0004】
SC紙は、SC−A+、SC−A、SC−B+、SC−B、SC−Cの複数のサブタイプに区分されることができ、その識別要因は、光沢、滑らかさ、原料、及び、充填剤の含有量を含む。SC−Aの光沢は、46〜55%のオーダーであり、その粗度は、1.0〜1.3μmであり、一方で、SC−Cの対応する値は、光沢が18〜27%であり、粗度が1.8〜2.4μmである。カレンダーパラメータの変更だけで大きな違いを実現することはできないが、当然ながら、これらの値を達成するために、繊維状のウェブに含まれる含有物は相互に異なり、一つの特徴的な含有物は、灰である。極端にきめの細かい含有物として、灰は、カレンダーの結果に大きく影響する。原則的に、その含有量が増大するにつれて、より光沢のある、より滑らかな紙が、カレンダー加工によって得られる。
【0005】
SCグレードと同様、LWC(Low Weight Coated)紙は、主に、木材含有の、すなわち、機械パルプから製造される。SCグレードの製造に含まれるサブプロセスに加え、この製造プロセスはまた、カレンダー加工前に実行されるコーティング加工を含む。LWC紙の典型的なコーティング量は、1サイドにつき10g/mであり、一般的には、合計で16〜25g/mであって、複製プリントをする上で良好な明るくかつ滑らかな表面を提供する。ブレードコーティング、サイズプレスコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング等の多くの様々なコーティング方法が存在する。より良いグレードを提供するために、これらの方法はまた、組み合わされることができる。しかしながら、良質で基本的なLWCの製造においては、そのウェブの両サイドは、一度だけコーティングされる。刊行物WO02/103109は、LWCグレードの製造に関する要因のかなり多用途の選択を提示する。
【0006】
紙の表面特性を変えるための複数の方法の目的は、製紙工場、すなわち、当時の印刷所の顧客が求める特性を提供することである。これらの紙グレードの典型的な用途は、様々な新聞、広告、折り込み広告、カタログを含む。水準の低廉なところでは、着色された新聞印刷用紙、すなわち、改良型ニュースグレードがあり、それは、最も粗い印刷を提供し、かつ、低い灰含有量を持ち、また、高価なところでは、最高の印刷品質を可能とするSC−Aグラビア用紙、及び、LWCオフセット用紙がある。
【0007】
その印刷方法は、複数の紙グレードで別の要望を作り出す。グラビア印刷では、そのインクが、印刷機のインプレッションローラの表面にあるカップから、印刷対象の紙の表面に移される。この方法では、印刷表面の滑らかさは、良好な印刷品質を提供する上でかなり重要である。その表面が一様でなければ、そのインクは、そのカップから不規則に移動し、そのインクの下に気泡が残ったままとなり、その印刷された図形は、そのインプレッションローラの表面にあるようには複写されない。オフセットでは、複数の印刷用インク及びパターンが、最初に、化学的接着を用いてそのインプレッションローラの表面に構築され、そのインクは、圧縮によりその紙の表面に付着した後、そこからはぎ取られる。
【0008】
その表面は、そのインプレッションローラの表面からの粘り気のある印刷用インクのはぎ取りに耐える必要があるので、この印刷方法は、特に、その印刷表面における表面強さを必要とする。このようにして、その印刷用インクは、そのインクとその圧縮ローラのラバーコーティングとの間の接触面からはがれるはずである。その印刷用紙が不適切であれば、その紙は、プレス加工後にその表面で薄い層に裂け、すなわち、その紙の表層がそのインプレッションローラの表面に移り、印刷の失敗をもたらす。
【0009】
US2003/0056920A1は、紙製造ラインにおけるSC−Aのオンラインカレンダー加工の方法及び装置を公開する。その刊行物は、マルチロールカレンダーの第一ニップの前に、そのウェブの表面を0.6〜1.2秒間湿らすための湿潤装置を配置することで、所望の表面特性を持つ紙が製造可能である点を提案する。その湿潤装置は、平均滴径が50μmより小さい、或いは、20μmより小さい微細な液滴を作り出す。その刊行物は、湿させた後のそのウェブの湿度が7〜11%であり、言い換えれば、その固形成分含有量が89〜93%である点を記載する。
【0010】
WO02/103109は、一回コーティングされるLWCを製造するための、方法、抄紙機及び原紙を公開する。その刊行物は、異なる構造グループに対する適切な構成要素の選択を示し、製造される最終生産物でできるだけ良好な品質を提供するための特定のパラメータの活用を可能にする。その刊行物はまた、湿潤加工及びコーティング加工で使用されるパラメータの、製造される製品の特性における効果を説明する。
【特許文献1】国際公開第02/103109号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開2003/0056920号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、状況に応じた多様な用途のための最高品質の印刷用紙を製造するために利用可能な製造方法及び抄紙機を、選びやすい方法で提供することである。紙市場では、様々な紙グレードに対する需要が、景気等に従って激しく変動するが、本発明の目的は、様々な市況の中でも抄紙機投資の最大限の利用を可能にする装置を提供することである。別の目的は、SC−A+からSC−Cまでの複数のSCグレード、及び、オフセット及びロトグレード等の種々のLWCグレードの双方をカバーするため、一つの抄紙機によって場合により供給されるグレードの選択を拡げることである。
【0012】
その方法の目的もまた、紙のいわゆる勾配(グラディエント)カレンダー加工用の広い紙選択のための多用途の装置を提供することであり、製造される紙グレードのそれぞれにおける湿度分布は、その原紙のカレンダー特性を十分に活用するために、カレンダー加工の前に、その厚さの方向又はZ方向に個別かつ最適に調節可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に従った方法は、その方法において:
製造されるべき紙グレードが選択され、その紙グレードに従って液状の処理剤が選択され、そのウェブに影響を与え、かつ、その製造されるべき紙グレードの特徴を有効にし、
上記液状の処理剤は、水、添加剤が加えられた水、表面サイズ及び色素含有コーティング剤、並びに、それらの混合物のグループから選択可能であり、
そのウェブにおける所望の固形成分含有量は、カレンダーユニット40の前に選択され、
乾燥プロセス30は、その所望の固形成分含有量を得るために選択され、乾燥プロセス30において、相互に異なる乾燥方法及び乾燥出力は、コーティングユニット20とカレンダーユニット40との間で選択され、
その乾燥出力は、クリアランスによってもたらされる自然乾燥から、複数の乾燥機30、321、361の組み合わせにより提供される乾燥出力までで選択可能であり、
そのウェブにおける上記所望の固形成分含有量は、85〜92%(その液状処理剤は水である。)、また、90〜95%、好適には92%(その液状処理剤は色素含有コーティング剤である。)であることを特徴とする。
【0014】
本発明に従った装置は、同様に、
製造されるべき紙グレードの選択を可能にする制御ユニットであって、その液状処理剤がその紙グレードに従って選択可能であり、その液状処理剤が対象となる紙グレードの特徴を使用できるようにし、かつ、その特徴がその制御ユニットのメモリに記憶可能であるところの制御ユニットと、
複数の液状処理剤を吹き付ける手段を含むコーティングユニット20であって、上記液状処理剤が、水、添加剤が加えられた水、表面サイズ及び色素含有コーティング剤、並びにそれらの混合物のグループから選択可能であるところのコーティングユニットと、
乾燥ユニット30であって、そのカレンダーユニットの前にその所望の固形成分含有量を得るために複数の乾燥プロセスが実施可能であり、相互に異なる乾燥方法及び乾燥出力が上記乾燥ユニットで選択可能であり、
その乾燥出力は、結果として得られるその所望の固形成分含有量が、85〜92%(その液状処理剤は水である。)となり、また、90〜95%、好適には92%(その液状処理剤は色素含有コーティング剤である。)となるよう、クリアランスによってもたらされる自然乾燥から複数の乾燥機30、321、361の組み合わせによってもたらされる乾燥出力までで選択可能であるところの乾燥ユニットと、
を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明に従った方法及び抄紙機は、同じ抄紙機によって製造される紙グレードを、従来の比較的小さなグレード選択からかなり大きなものに拡げるために使用可能である。このようにして、稼働率、また、しばしば、その抄紙機の性能の一時的な悪化をほとんど不可避的に引き起こす時間の掛かる変更やその変更によって求められる慣らし運転無しに、様々な市況やそれらによって作り出される要望に合わせることが容易になる。本発明を用いることで、このようにして、複数の紙グレードを製造することがうってつけとなるが、それらは、それらそれぞれの紙グレードにおいて最高品質である。必要とされる変更は、その抄紙機に既に組み込まれている。それ故、それらは、従来の方法で動かされる必要はない。このようにして、紙のいわゆる勾配カレンダーのための広い紙選択に用いられる多用途の装置がまた提供され、その原紙のカレンダー特性を十分に活用するために、製造されるべき紙グレードのそれぞれにおける湿度分布は、カレンダー加工の前に、個別かつ最適に、その厚さ方向又はZ方向で調節可能である。この目的は、特別な方法において、その液状処理剤、乾燥、及び、滞留(ドウェル)時間の組み合わせを選択することで実現され、それにより、そのカレンダーユニットに来たときには、そのウェブの特性は、そのカレンダー加工の仕上がりにとって最適なものとなっている。
【0016】
本発明の好適な特徴の一つは、相互に異なる粘度を持つ液状処理剤を吹き付けるための少なくとも一つの手段を有する一つのコーティングユニットにおいて、そのウェブがその液状処理剤で処理される点で特徴付けられる。本発明の目的は、実際には複数の液状処理剤の使用を必要とするであろうかなり広範な紙グレードセレクションを製造することであった。従来、複数の水吹き付けシステムがSC紙グレードのために使用されている。LWC紙グレードを製造するために、色素含有コーティング剤が使用され、それは、スプレーコーティングユニットによってそのウェブの表面に吹き付けられ得る。SC紙グレードで使用される水、及び、LWC紙グレードで使用される色素含有剤を含むその液体は、特にそれらの粘度、並びに、表面張力、摩損性、及び、固化や乾燥の特性等の他の多くの特性に関しても相互にかなり異なっている。これらの異なる種類の液状処理剤のために少なくとも取り替え可能なノズルを備えることが好適であり、適切な被覆を行い、かつ、模様さえも有する液状処理剤の層がその通過するウェブに吹き付けられ得るようにする。
【0017】
そのプロセスで使用されるエネルギーを低減させるため、ウェブの破れを減少させるため、また、製造される紙の品質をできるだけ良好にするために、その液状処理剤でそのウェブを処理するときに、そのウェブの総固形成分含有量の減少が極小化され、一方で、そのカレンダーユニットの後で、少なくともそのウェブの光沢及び滑らかさが、その選択された紙グレードの特徴的な値になるようにすることが好適である。これを実現するための一つの方法は、そのコーティングユニットの後で、供給される液状処理剤の量、及び、その液状処理剤の固形成分含有量に影響を及ぼすことによって、そのウェブの総固形成分含有量に影響を及ぼすことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下では、添付された図面を参照しながら本発明が説明される。
【実施例】
【0019】
図1は、本発明に従った動作モードの図を示し、そこで、ウェブの加工は、矢印の方向に進む。そのプロセスにおいて、製造されるウェブ、すなわち、SC又はLWCの原紙は、原紙を作るために必要な全ての装置を含む抄紙機10によって形成され、かつ、十分な固形成分含有量まで乾燥させられる。コーティングユニット20は、その製造中に、移動するウェブの表面に液状の処理剤を吹き付けるために必要な全ての装置を含む。乾燥ユニット30は、カレンダーユニット40の前に、適切な固形成分含有量まで、すなわち、逆に言えば、適切な湿度までそのウェブを乾燥させる処理を行う。カレンダーユニット40では、そのウェブは、少なくとも滑らかさを、また、必要に応じてそのウェブの光沢を向上させるために、加熱と圧縮とを用いて形成される。そのウェブの巻き取りユニット50は、そのウェブをロール上に巻き取り、それは、その後、例えば、スリッター等の更なる加工のために運ばれ得る。測定ユニット60は、とりわけ、適切な段階で、そのウェブの品質特性を管理する。実現のための一方法は、好適には、コーティングユニット20の前、コーティングユニット20の直後、及び、カレンダーユニット40の後で、そのウェブの固形成分含有量を測定することであり、その測定は、好適には、そのウェブの両面で、かつ、そのウェブを通じて実行され、それにより、そのウェブの両側の表面の固形成分含有量と、そのウェブの総固形成分含有量とは、区別可能となる。保持点又は保持要素70は、各点における適切なウェブテンションを維持することにより、その装置の良好な動作性を確保する。保持点70は、コーティングユニット20内であって、かつ、カレンダーユニット40の前にあるウェブのテンションを制御するために、好適には、コーティングユニット20とカレンダーユニット40との間におけるウェブ転送経路上にある。そのウェブとその保持要素との間の接触点の異なる側におけるウェブのテンションは、製造が進行するにつれて異なるものとなり得、また、従来の製造中にあっては、その保持要素とそのウェブとは、原則的に、相互に非滑り接触である。
【0020】
図1はまた、乾燥ユニット30を詳細に示し、三つの異なるウェブ転送経路32、34及び36を含む、実施可能な実施例の一つとしての解決策を示す。従って、コーティングユニット20とカレンダーユニット40との間にあるウェブの滞留(ドウェル)時間は、ここでは、異なるウェブ転送経路を有する少なくとも二つの代替物32、34、36から選択され得る。その滞留時間を選択することにより、そのウェブの厚さ方向における湿度分布は、それに関する限り、影響を受け、そのウェブの厚さ方向における最高湿度と最低湿度との間で、より短い滞留時間によってより大きな差が与えられ、より長い滞留時間によってより小さな差が与えられるようにする。これらのウェブ転送経路において、参照番号34で示されるものは近道であり、その上には独立の乾燥手段がないが、そのウェブは、適度に低い程度まで乾燥させられ、その乾燥は、クリアランスによってもたらされる。この代替経路では、そのコーティングユニットとそのカレンダーユニットとの間の滞留時間はできるだけ短くされ、それにより、そのウェブの厚さ方向における水分の寄与は、一様なではなくなる。そのコーティングユニット後のウェブの表面における固形成分含有量は、供給される液状の処理剤とそのウェブとの間の疎水性による影響を受け得る。この化学的方法は、その液体のそのウェブへの吸収を調節するために容易に使用され得る。ウェブ転送経路32及び36は、乾燥のための互いに異なる解決策を含む代替物である。この乾燥プロセス30は、出力調節可能な流動床乾燥機、又は、他のスルー乾燥機、赤外線乾燥機、クリアランス、及び、それらの乾燥機の組み合わせを含んでもよい。それらの乾燥機の組み合わせは、一又は複数の上記乾燥機30、321、361を含んでもよい。シリンダー乾燥機、又は、接触に基づく対応する乾燥機もまた、使用され得る。ウェブ転送経路32及び36の長さは、所望とする運転パラメータの範囲に応じて、異なるものとなり得る。図2は、対応位置にある、一つのウェブ転送経路を含む乾燥ユニット30を示すが、異なる液状処理剤によって要求される異なる乾燥方法及び出力は、必要に応じて、複数の乾燥機のスイッチをオン・オフし、また、それらの乾燥機の出力を調節することで実現される。そのコーティングユニットとそのカレンダーユニットとの間のウェブ転送経路の長さが、SCグレードの製造にとって十分短いままであり、また一方で、LWCグレードの最も重い部類の製造のための十分な乾燥出力が得られれば、これは、好適な実施例である。
【0021】
図1のコーティングユニット20は、図2のものと同様となるよう示され、コーティングユニット20は、2セットの吹き付けヘッド22及び24を含む。液状処理剤は、圧生成器具26を用いて容器Tから供給され、そのウェブの表面に吹き付けられる。そのパイプラインは、閉塞装置25を含み、それは、その液状処理剤を所望とする吹き付けヘッドに向けるために使用される。図3は、二つの容器T及び2セットの圧生成装置26を含む、液状処理剤のための二つのシステムを含む別の実施可能な実施例を示す。この解決策の特別な有利点は、そのグレードの変更が、その変更の間に、特に、LWCの製造からSCの製造に移すときに、そのシステムを洗浄する必要無しに、すぐに、変更され得る点にある。別の有利点は、各液状処理剤におけるそれらの圧力及び体積流量率に関する最適な流れの状態により近づけて動作させる場合に、配管及びポンプの寸法決定の論理的な実現がより容易になるという点にある。一つの不利点は、言うまでもなく、その大きな初期投資である。
【0022】
カレンダーユニット40において、そのウェブは、少なくとも一つのニップにおける、好適には、複数のニップによる加熱と圧縮とによる影響を受ける。そのニップは、ロール、金属ベルト若しくは弾性材料で作られたベルト、又は、それらの組み合わせを用いて形成される。
【0023】
その方法及びその装置は、モデルに基づく制御又は多変数制御により、好適には、モデルに基づく学習型多変数制御により、制御される。
【0024】
その方法及びその装置によって提供される製品は、そのコーティングユニットの吹き付けヘッド22、24、場合により、コーティングユニット20とカレンダーユニット40との間のウェブ転送経路32、34、36、及び、乾燥プロセス等の制御パラメータを変更することで、SC及びLWC紙グレード、具体的には、SC−A+からSC−Cまでの紙グレード、ニュースグレード、並びに、LWCオフセット、及び、LWCロトグレードを含むことができ、上記変更は、抄紙機に組み込まれており、その制御システムにより利用可能である。
【0025】
図4は、本発明に従った方法及び抄紙機により製造されるSC紙グレードにおける複数のサブグレードの典型的な特性を示し、光沢及び粗度に関する分布状態を示す。最高の印刷品質を可能にするSC−A+及びSC−Cとニュースグレード(News)との間で粗度及び光沢に顕著な違いがあることが図から観察され得る。これらのサブグレード間の違いは、示されたサブグレードを別にすれば、はっきりしておらず、その大きさは、図4に示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を説明する一つの実現可能な動作モードの図を示す。
【図2】本発明を説明する別の実現可能な動作モードの図を示す。
【図3】コーティングユニット20の代替的な実施例の図を示す。
【図4】光沢及び粗度に関して調べられた、異なる紙グレード又はサブグレードの特性を示す。
【符号の説明】
【0027】
10 抄紙機
20 コーティングユニット
22 吹き付けヘッド/吹き付けノズル
24 吹き付けヘッド/吹き付けノズル
25 閉塞装置
26 圧力生成装置
30 乾燥ユニット
32 ウェブ転送経路
321 ウェブ転送経路32の乾燥装置
34 ウェブ乾燥経路
36 ウェブ乾燥経路
361 ウェブ乾燥経路36の乾燥装置
40 カレンダーユニット
50 ウェブの巻き取りユニット
60 測定ユニット、品質測定
70 保持点/保持要素
T 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ抄紙機によって複数の紙グレードを製造するための方法であり、その形成され、かつ、少なくとも部分的に乾燥させられるウェブは、コーティングユニットにおいて、該ウェブの表面に液状処理剤を吹き付けることによって処理され、その後に、該ウェブは、少なくとも該ウェブの滑らかさ、及び、所望の場合には同様に該ウェブの光沢を増大させるために、カレンダーユニットにおいて加熱及び圧縮を用いることで影響を及ぼされる、方法であって、
製造されるべき前記紙グレードが選択され、前記紙グレードに従って液状処理剤が選択され、前記ウェブに影響を及ぼし、かつ、製造される前記紙グレードの特徴を有効にし、
前記液状処理剤は、水、添加剤が加えられた水、表面サイズ及び色素含有コーティング剤、並びに、それらの混合物のグループから選択可能であり、
前記ウェブにおける所望の固形成分含有量は、前記カレンダーユニット前に選択され、
前記所望の固形成分含有量を得るために乾燥プロセスが選択され、その乾燥プロセスにおいて、相互に異なる乾燥方法及び乾燥出力は、前記コーティングユニットと前記カレンダーユニットとの間で選択可能であり、
前記乾燥出力は、クリアランスによってもたらされる自然乾燥から、複数の乾燥機群の組み合わせにより提供される乾燥出力までで選択可能であり、
前記ウェブにおける前記固形成分含有量は、前記液状処理剤が水のときに、85〜92%であり、また、前記液状処理剤が色素含有コーティング剤のときに、90〜95%、好適には92%である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ウェブは、相互に異なる粘度を有する液状処理剤を吹き付けるための少なくとも一つの手段を含む一のコーティングユニットにおいて前記液状処理剤で処理される、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項3】
前記コーティングユニットと前記カレンダーユニットとの間における前記ウェブの滞留時間は、異なるウェブ転送経路を有する少なくとも二つの代替物から選択され得る、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項4】
前記滞留時間を選択することにより、前記ウェブの厚さ方向における湿度分布がその一部において影響を及ぼされ、前記ウェブの厚さ方向における最高湿度と最低湿度との間で、より短い滞留時間によって、より大きな差がもたらされ、また、より長い滞留時間によって、より小さな差がもたらされる、
ことを特徴とする請求項1及び3に従った方法。
【請求項5】
前記ウェブを処理する場合に、前記ウェブの総固形成分含有量の減少が前記液状処理剤によって極小化されるが、少なくとも前記カレンダーユニット後の前記ウェブの光沢及び滑らかさが、選択された紙グレードの特徴を示す値になるようにする、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項6】
前記コーティングユニット後の前記ウェブの総固形成分含有量は、供給される液状処理剤の量、及び、前記液状処理剤の固形成分含有量に影響を与えることによって制御される、
請求項1及び5に従った方法。
【請求項7】
前記コーティングユニット後の前記ウェブの表面の固形成分含有量は、供給される前記液状処理剤と前記ウェブとの間の疎水性による影響を受け得る、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項8】
前記乾燥プロセスは、出力調節可能な流動床乾燥機、又は、他のスルー乾燥機、赤外線乾燥機、クリアランス、及び、それらの乾燥機の組み合わせを含んでもよく、該乾燥機の組み合わせは、一又は複数の前記乾燥機群を含んでもよい、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項9】
前記ウェブの固形成分含有量は、好適には、前記コーティングユニット前、前記コーティングユニット直後、及び、前記カレンダーユニット後に測定され、その測定は、好適には、前記ウェブの両面で、かつ、前記ウェブを通じて実行され、それにより、前記ウェブの両サイドの表面の固形成分含有量、及び、前記ウェブの総固形成分含有量は、区別され得る、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項10】
前記コーティングユニットと前記カレンダーユニットとの間の前記ウェブ転送経路上に、前記ウェブに接触する保持要素が配置され、それにより、前記ウェブと前記保持要素との間の接触点の異なるサイドにおける前記ウェブのテンションは、製造が進行するにつれて異なるものとなり得、また、従来の製造中にあっては、前記保持要素と前記ウェブとは、原則的に、相互に非滑り接触である、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項11】
前記カレンダーユニットにおいて、前記ウェブは、少なくとも一つのニップで、好適には、複数のニップにより、加熱及び圧縮による影響を及ぼされ、該ニップは、ロール、金属ベルト若しくは弾性材料で作られたベルト、又は、それらの組み合わせによって形成され得る、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項12】
当該方法は、モデルに基づく制御、又は、多変数制御を用いて制御され、好適には、モデルに基づく学習型多変数制御を用いて制御される、
ことを特徴とする請求項1に従った方法。
【請求項13】
前記コーティングユニットの吹き付けヘッド、また、場合によっては、前記コーティングユニットと前記カレンダーユニットとの間の前記ウェブ転送経路、及び、前記乾燥プロセスのような制御パラメータの変更により、SC及びLWC紙グレード、具体的には、SC−A+からSC−Cまでの紙グレード、ニュースグレード、並びに、LWCオフセット及びLWCロトグレードを含み、前記変更は、前記抄紙機に組み込まれており、また、その制御システムによって有効にされ得る、
ことを特徴とする請求項1に従った方法によってもたらされる製品。
【請求項14】
ウェブを形成し、かつ、少なくとも部分的にそれを乾燥させるための手段を含み、また、該ウェブを処理するためのコーティングユニットであり、液状処理剤を該ウェブの表面に吹き付けるための手段を有するコーティングユニットを含み、該ウェブの製造方向における、その後に、加熱及び圧縮により、少なくとも該ウェブの滑らかさを、また必要に応じて、該ウェブの光沢を増大させるために、カレンダーユニットがある、同じ抄紙機によって複数の紙グレードを製造するための装置であって、
製造される前記紙グレードの選択を可能にする制御ユニットであって、前記液状処理剤が前記紙グレードに従って選択可能であり、前記液状処理剤が、対象となる前記紙グレードの特徴を提供し、前記特徴が前記制御ユニットのメモリに記憶可能であるところの制御ユニットと、
複数の液状処理剤を吹き付けるための手段を含むコーティングユニットであって、前記液状処理剤が、水、添加剤が加えられた水、表面サイズ及び色素含有コーティング剤、並びにそれらの混合物のグループから選択可能であるところのコーティングユニットと、
乾燥ユニットであって、前記カレンダーユニット前に所望の固形成分含有量を得るために複数の乾燥プロセスを実施可能であり、相互に異なる乾燥方法及び乾燥出力が前記乾燥ユニットで選択可能であり、前記乾燥出力は、結果として得られる前記所望の固形成分含有量が、前記液状処理剤が水であるときに85〜92%となり、また、前記液状処理剤が色素含有コーティング剤であるときに90〜95%、好適には92%となるよう、クリアランスによってもたらされる自然乾燥から複数の乾燥機群の組み合わせによってもたらされる乾燥出力までで選択可能であるところの乾燥ユニットと、
を含むことを特徴とする装置。
【請求項15】
液状処理剤で前記ウェブを処理するための少なくとも一つのコーティングユニットを含み、前記コーティングユニットは、少なくとも、互いに異なる粘度を有する処理剤を吹き付けるための手段を含む、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項16】
異なる種類の液状処理剤のために、少なくとも交換可能なノズルが前記コーティングユニットに配置される、
ことを特徴とする請求項14及び15に従った装置。
【請求項17】
前記ウェブ転送経路の長さは、利用可能な生産速度での移動時間が0.3秒以上から選択できるようなものであり、次に長いウェブ転送経路が選択されたときに、その長さは、好適には、短いほうのウェブ転送経路に比べて、二倍以上となる、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項18】
前記乾燥機群は、出力調節可能な流動床乾燥機、又は、他のスルー乾燥機、赤外線乾燥機、クリアランス、及び、それらの乾燥機の組み合わせを含んでいてもよい、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項19】
前記ウェブの前記固形成分含有量を決めるための手段を含み、該手段は、好適には、前記コーティングユニット前、前記コーティングユニット直後、及び、前記カレンダーユニット後に位置付けられ、その決定は、好適には、前記ウェブの厚さの方向にある三つの異なる層の固形成分含有量を決めるために、前記ウェブの両面で、かつ、前記ウェブを通じて実行される、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項20】
前記コーティングユニットと前記カレンダーユニットとの間の前記ウェブ転送経路上に、前記コーティングユニットにおける前記ウェブ、及び、前記カレンダーユニット前の前記ウェブのテンションを制御するために、保持要素がある、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項21】
前記カレンダーユニットに、ロール、金属ベルト若しくは弾性部材で作られたベルト、又は、それらの組み合わせを用いて形成される、少なくとも一つのニップ、好適には、複数のニップがある、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項22】
モデルベース制御、又は、多変数制御、好適には、学習型モデルベース多変数制御に基づく制御システムを含む、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。
【請求項23】
SC及びLWC紙グレード、具体的には、SC−A+からSC−Cまでの紙グレード、並びに、LWCオフセット及びLWCロトグレードを製造するために、前記抄紙機に組み込まれ、かつ、前記制御システムを用いて使用可能とされ得る、前記コーティングユニットの変更可能な吹き付けユニットを含む、
ことを特徴とする請求項14に従った装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−544097(P2008−544097A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516354(P2008−516354)
【出願日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際出願番号】PCT/FI2006/000203
【国際公開番号】WO2006/134213
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】