説明

紡機における繊維束集束装置

【課題】維束の集束・移送機能を低下させることなく、多孔ベルトを形成する糸の交差部への紡出繊維の挟まり・付着を抑制して紡出性を向上させるとともに、多孔ベルトに付着する繊維の除去作業を容易にする。
【解決手段】繊維束集束装置11はドラフト装置12の最終送出ローラ対13の下流側に設けられ、ニップローラ対16と、ニップローラ対16のニップ点を挟んで繊維束Fの移動方向に吸引孔29a,30aを備えた案内面29b,30bを有する吸引部17と、案内面29b,30bを摺動する状態で回転される多孔ベルト18とを備えている。多孔ベルト18は、平織りの織物でループ状に形成され、織物の糸に熱融着糸34が使用され、熱融着糸34は交差部35で融着されている。熱融着糸34は芯部34b及び鞘部34aがそれぞれポリアミド製である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡機における繊維束集束装置に係り、詳しくは例えば精紡機のドラフト装置(ドラフトパート)の下流に配置され、ドラフト装置でドラフトされた繊維束を集束する繊維束集束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラフトされた繊維束を撚り掛けの前に予め集束し、毛羽の低減等の糸品質の向上を目的とした繊維束集束装置が種々提案されているが、基本の機能となる繊維束の集束・移送用としてエンドレス多孔ベルトが用いられる(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。特許文献1には、移送ベルト(エンドレス多孔ベルト)を、直径が0.1mmより小さいポリアミドマルチフィラメントヤーンを使用した織物で形成することにより、吸引気流を均一にして吸引効率を高めることが開示されている。織物としては平織り物が使用されている。特許文献2には、エンドレス多孔ベルト(通気エプロン)を織布により形成することが開示されている。
【特許文献1】特開2000−34631号公報(段落番号[0021]〜[0023]、図1,図3)
【特許文献2】特開2003−113540号公報(段落番号[0036]、図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、エンドレスの多孔ベルトを織物で形成した場合、紡出時に多孔ベルトを形成する織物の糸の切断あるいは多孔ベルトの端部のほつれが発生すると、切断された糸端や
ほつれた糸の糸端が紡出中の繊維束に絡まったり、繊維の集束に悪影響を与え、糸切れ、糸品質不良を引き起こす場合があるという問題がある。また、ほつれが始まると早期に多孔ベルトが使用不可能な状態にまで達するおそれもある。特許文献1には、移送ベルト(多孔ベルト)の縦縁は融着させてもよい旨が記載されているが、端部以外の部分に関しては何ら記載されていない。
【0004】
また、多孔ベルトを織物で形成した場合、紡出中の繊維束の繊維が織物を構成する糸の交差部に挟まり易い。そして、繊維が前記交差部に挟まると、挟まった繊維が繊維束に悪影響を及ぼし、糸切れ、糸品質不良を引き起こす場合があるため、多孔ベルトの清掃を短い周期で行うか多孔ベルトを交換する必要がある。また、多孔ベルトの清掃を行う場合、糸の交差部に挟まった繊維は圧縮空気の噴射等では簡単に除去することができず、除去に手間が掛かるという問題もある。
【0005】
本発明は前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、繊維束の集束・移送機能を低下させることなく、多孔ベルトを構成する糸の交差部への紡出繊維の挟まり・付着を抑制して紡出性を向上させるとともに、多孔ベルトに付着する繊維の除去作業を容易にすることができる紡機における繊維束集束装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する紡機における繊維束集束装置である。そして、前記ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられるとともにニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の少なくとも上流側に吸引孔を備えた案内面を有する吸引部と、前記案内面を摺動する状態で回転される多孔ベルトとを備える。前記多孔ベルトは、織物、編み物のように糸が交差部を有するように構成されたシート状体で形成され、かつ前記糸が前記交差部で融着されている。ここで「シート状体」とは、平織り、綾織り等で織成された織物や編み物の他に、一方向に配列された糸で構成された糸層を糸の配列方向が交差する状態で2層積層して各糸の交差部を融着したものも含む。
【0007】
ドラフトパートでドラフトされた繊維束は、多孔ベルトの回動に伴って送出部を通過する。その際、吸引孔の吸引作用が多孔ベルトを通して繊維束に作用し、繊維束が吸引孔と対応する位置に集束される。多孔ベルトが従来技術のように普通の織物(糸の交差部に処理の施されていない織物)で形成されている場合は、織物を構成する糸が切断した場合、糸端が紡出される繊維束に絡まる等により糸切れや糸品質不良を引き起こしたり、紡出中の繊維束の繊維が織物を構成する糸の交差部に挟まり、紡出に悪影響を及ぼしたりする。しかし、この発明の多孔ベルトは、織物等を構成する糸がその交差部で融着されているため、織物等を構成する糸が切断しても、切断した糸端が紡出される繊維束に絡まることはなく、紡出中の繊維束の繊維が糸の交差部に挟まることもない。また、繊維が織物や編み物の目の部分に付着しても、圧縮空気の噴射や吸引気流の作用により容易に除去することができる。従って、繊維束の集束・移送機能を低下させることなく、多孔ベルトを構成する糸の交差部への紡出繊維の挟まり・付着を抑制して紡出性を向上させるとともに、多孔ベルトに付着する繊維の除去作業を容易にすることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記シート状体を構成する糸に芯鞘構成の熱融着糸が使用されている。この発明では、織物、編み物等を構成する糸をその交差部で容易に融着することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記熱融着糸は芯部及び鞘部がそれぞれポリアミド製である。従って、この発明では、多孔ベルトを薄くするため熱融着糸の太さを0.1mm程度としても必要な強度を確保できる。また、ポリアミドは綿と相性が良く、紡出が円滑に行われる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記多孔ベルトは帯電防止機能を備えている。繊維束集束装置においては、多孔ベルト上を綿等の繊維束が通過するため静電気が発生し易い。そのため、多孔ベルトが帯電して繊維が付着し易くなる。しかし、この発明では、多孔ベルトは帯電防止機能を備えているため、繊維が多孔ベルトに付着し難くなり、糸の交差部が融着されたことによる繊維の挟まり防止効果に加えて付着抑制効果が向上する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、繊維束の集束・移送機能を低下させることなく、多孔ベルトを構成する糸の交差部への紡出繊維の挟まり・付着を抑制して紡出性を向上させるとともに、多孔ベルトに付着する繊維の除去作業を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を精紡機に装備される繊維束集束装置に具体化した一実施形態を図1〜図3に従って説明する。図1(a)は繊維束集束装置を示す一部破断概略側面図、(b)は多孔ベルトの模式斜視図、(c)は多孔ベルトの糸の交差部の模式図、(d)は開口率を説明するための模式図である。図2は吸引部とボトムニップローラとの関係を示し、図1(a)においてトップローラ側を除いた状態で斜め左上側から見た部分概略図である。
【0013】
繊維束集束装置は本願出願人が先に出願した特許文献2に記載された繊維束集束装置と基本的に同じ構成である。図1(a)に示すように、繊維束集束装置11は、ドラフトパートとしてのドラフト装置12の最終送出ローラ対13の下流側に設けられている。最終送出ローラ対13は、フロントボトムローラ14及びフロントトップローラ15により構成されている。
【0014】
繊維束集束装置11は送出部としてのニップローラ対16、吸引部17及び多孔ベルト18を備えている。ニップローラ対16はフロントボトムローラ14と平行に配設された回転軸19に形成された駆動ローラ部としてのボトムニップローラ19aと、ボトムニップローラ19aに多孔ベルト18を介して押圧されるトップニップローラ20とで構成されている。トップニップローラ20はドラフト装置12のフロントトップローラ15と同様に2錘毎に、支持部材21を介してウエイティングアーム(図示せず)に支持されている。支持部材21はフロントトップローラ15の支持部材と一体に形成されている。
【0015】
一方、繊維束集束装置11のボトム側は、図2に示すように、ドラフト装置12のローラスタンド22間に配置される錘の半分、この実施形態では4錘分を1ユニットとして構成されている。機台長手方向に所定間隔で配設されたローラスタンド22の中間位置には、バックボトムローラ(図示せず)より後側において機台長手方向に延設された支持ビーム(図示せず)に、基端側が支持された状態で支持アーム23が配設され、ローラスタンド22と支持アーム23との間に回転軸19が支持されている。
【0016】
回転軸19は複数錘(この実施形態では4錘)と対応する所定長さに形成され、その両端に固定された軸受(図示せず)がエンドプラグ25に嵌合されている。そして、エンドプラグ25が嵌合部25aにおいてローラスタンド22及び支持アーム23に設けられた支持部22a,23aに支持されることにより、回転軸19はローラスタンド22と支持アーム23との間に回転可能に支持されている。支持部22a,23aは、エンドプラグ25を2個支持可能に形成され、隣接する回転軸19の端部に取り付けられたエンドプラグ25を支持可能になっている。
【0017】
回転軸19には長手方向の中央に、駆動源の回転力が伝達される回転力伝達部としてのギヤ26が設けられている。ギヤ26は回転軸19と一体形成されている。この実施形態では回転軸19の駆動源としてフロントボトムローラ14が使用され、フロントボトムローラ14にはギヤ26と対向する位置にギヤ部14a(図1(a)に図示)が形成されている。そして、前記支持アーム23と同様に、基端側が支持ビームに固定された支持アーム27に中間ギヤ28が回転可能に支持され、中間ギヤ28はギヤ部14a及びギヤ26に噛合している。即ち、フロントボトムローラ14の回転力は、ギヤ部14a、中間ギヤ28及びギヤ26を介して回転軸19に伝達される。
【0018】
精紡機機台にはその長手方向(図1(a)の紙面と垂直方向)に延びるように吸引ダクト(図示せず)が配設されている。吸引部17は、回転軸19と平行に延びる吸引パイプ29,30と、吸引ダクトに連結されて負圧を吸引パイプ29,30に作用させる接続管31とを備えている。接続管31は一部がギヤ26及び中間ギヤ28のカバーの役割を果たすように、ギヤ26の前側に配置され、基端側において蛇腹状の連結管32を介して吸引ダクトに接続されている。吸引パイプ29,30は第1端部が接続管31の先端部の左右両側に形成された嵌合孔に嵌合され、第2端部がエンドプラグ25に嵌合されている。
【0019】
図1(a)及び図2に示すように、吸引パイプ29は、ニップローラ対16のニップ点を挟んで繊維束(フリース)Fの移動方向の上流側に延びる吸引孔29aが形成された案内面29bを有する。吸引パイプ30は、下流側に延びる吸引孔30aが形成された案内面30bを有する。そして、吸引パイプ29はボトムニップローラ19aのニップ点より繊維束Fの移動方向上流側に、吸引パイプ30は下流側に位置するように配設されている。
【0020】
図1(a)に示すように、吸引パイプ30の下方近傍には、糸切れ時にドラフト装置12から送出される繊維束Fを吸引する作用をなすシングルタイプのニューマ装置の吸引ノズル33の先端がそれぞれ配設されている。吸引ノズル33の基端は吸引ダクト(図示せず)に接続されている。
【0021】
図1(a)に示すように、多孔ベルト18は一部が吸引パイプ29,30に、一部がボトムニップローラ19aに接触するように巻掛けられ、ボトムニップローラ19aの回転に伴って案内面29b,30bに沿って摺動しつつ回転されるようになっている。
【0022】
多孔ベルト18は、平織りの織物により、継ぎ目のないループ状に形成されている。この実施形態では、筒状に織成された織物を所定幅に切断して形成されている。図1(c)に示すように、織物を構成する糸には芯鞘構成の熱融着糸34が使用されている。そして、熱融着糸34は、織物を構成する糸の交差部35で鞘部34aが融着されている。この実施形態では熱融着糸34は芯部34b及び鞘部34aがそれぞれポリアミド製であり、芯部34bには融点が260℃のポリアミドが、鞘部34aには融点が220℃のポリアミドがそれぞれ使用されている。また、この実施形態では芯部34bはモノフィラメントで構成されている。
【0023】
織物は径(太さ)が0.05〜0.15mmの熱融着糸34で織成されている。糸が細い方が紡出中の繊維束Fに対する吸引作用は好ましいが、多孔ベルト18の強度が不十分となるため、前記の範囲の太さが好ましい。また、開口率が25〜30%に形成されている。ここで、開口率とは、図1(d)に示すように、隣接する2本の経糸36a及び2本の緯糸36bの中心線(破線で図示)により囲まれる部分の面積をA1、2本の経糸36a及び2本の緯糸36bにより囲まれる斜線を付した部分(開口部)の面積をA2としたとき、(A2/A1)×100(%)で定義される。
【0024】
多孔ベルト18は帯電防止機能を備えている。帯電防止機能は多孔ベルト18に帯電防止剤を塗布することにより付与されている。帯電防止剤としては公知のもの、例えば、界面活性剤が使用され、カチオン界面活性剤や両性界面活性剤が好適に使用される。
【0025】
前記構成の多孔ベルト18は、熱融着糸34で平織りの筒状織物を織成した後、所定幅に切断し、鞘部34aのみが溶融する温度に保持することで、経糸及び緯糸の交差部35が溶融された多孔ベルト18が得られる。その多孔ベルト18が界面活性剤を含む溶液内に含浸された後、乾燥されて帯電防止処理が施される。
【0026】
次に前記のように構成された繊維束集束装置11の作用を説明する。
精紡機が運転されると、繊維束Fはドラフト装置12でドラフトされた後、最終送出ローラ対13から繊維束集束装置11へ案内される。ニップローラ対16は最終送出ローラ対13の表面速度より若干速く回転され、繊維束Fは適度な緊張状態でニップローラ対16のニップ点を過ぎた後、転向して撚り掛けを受けながら下流側へ移動する。
【0027】
また、ダクトの吸引作用が接続管31を介して吸引パイプ29,30に及び、案内面29b,30bに形成された吸引孔29a,30aの吸引作用が多孔ベルト18を介して繊維束Fに及ぶ。そして、繊維束Fが吸引孔29a,30aと対応する位置に吸引集束された状態で移動する。従って、繊維束集束装置11の装備されない紡機に比較して、毛羽の発生や落綿が抑制されて糸質が改善される。
【0028】
多孔ベルト18が従来技術のように普通の織物(糸の交差部35に処理の施されていない織物)で形成されている場合は、織物を構成する糸が切断した場合、糸端が紡出される繊維束Fに絡まる等により糸切れや糸品質不良を引き起こしたり、紡出中の繊維束Fの繊維が織物を構成する糸の交差部35に挟まり、紡出に悪影響を及ぼしたりする。しかし、この実施形態の多孔ベルト18は、織物を構成する糸(熱融着糸34)がその交差部35で融着されているため、織物等を構成する糸が切断しても、切断した糸端が紡出される繊維束Fに絡まることはなく、紡出中の繊維束Fの繊維が糸の交差部35に挟まることもない。また、繊維が織物や編み物の目の部分に付着しても、圧縮空気の噴射や吸引気流の作用により容易に除去することができる。
【0029】
多孔ベルト18が巻き掛けられているボトムニップローラ19aは、ドラフト装置12のフロントボトムローラ14とほぼ同程度の回転速度(200〜300rpm)で回転するため、多孔ベルト18に静電気が発生し易く、発生した静電気が帯電し易い。多孔ベルト18を静電気が帯電し易い状態にしておくと、多孔ベルト18に繊維が付着し易くなる。しかし、多孔ベルト18に帯電防止機能が付与されているため、多孔ベルト18に繊維が付着し難くなる。
【0030】
この実施形態は以下の効果を有する。
(1)繊維束集束装置11を構成する吸引パイプ29,30の案内面29b,30bに接触する状態で回転される多孔ベルト18は、その素材となるシート状体である織物を構成する糸(熱融着糸34)が交差部35で融着されている。従って、織物を構成する糸が切断しても、切断した糸端が紡出される繊維束Fに絡まることはなく、紡出中の繊維束Fの繊維が糸の交差部35に挟まることもない。その結果、繊維束Fの集束・移送機能を低下させることなく、多孔ベルト18を構成する糸の交差部35への紡出繊維の挟まり・付着を抑制して紡出性を向上させるとともに、多孔ベルト18に付着する繊維の除去作業を容易にすることができる。
【0031】
(2)多孔ベルト18の素材となる織物(シート状体)を構成する糸に芯鞘構成の熱融着糸34が使用されている。従って、織物を構成する糸をその交差部35で容易に融着することができる。
【0032】
(3)熱融着糸34は芯(芯部34b)及び鞘(鞘部34a)がそれぞれポリアミド製である。従って、多孔ベルト18を薄くするため熱融着糸34の太さを0.1mm程度としても必要な強度を確保できる。また、ポリアミドは綿と相性が良く、綿糸の紡出や、綿と他の繊維との混紡糸の紡出が円滑に行われる。
【0033】
(4)多孔ベルト18は帯電防止機能を備えているため、繊維が多孔ベルト18に付着し難くなり、糸の交差部35が融着されたことによる繊維の挟まり防止効果に加えて付着抑制効果が向上する。
【0034】
(5)多孔ベルト18の素材の織物は経糸36a及び緯糸36bの両方に熱融着糸34が使用されているため、一方のみが熱融着糸34の場合に比較して、糸の交差部35の融着を容易に行うことができる。
【0035】
(6)多孔ベルト18は0.1mm程度の細い糸で織り目が小さく織成されているため、繊維束Fに対する吸引作用が効率よくなされる。
(7)多孔ベルト18は継ぎ目のないループ状に形成されているため、繊維束Fの移送が円滑に行われるとともに、継ぎ目の所から疲労が進み易くなるのを回避できる。
【0036】
(8)多孔ベルト18を形成する織物はフィラメント糸で織成されているため、同じ太さにおいてステープル糸に比較して強度が強くなるとともに、通気性が向上する。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
【0037】
○ 多孔ベルト18は平織りの織物(例えば、図3(a)に図示)で形成されるものに限らず、綾織り(例えば、図3(b)に図示)等他の織り方で織られた織物を使用してもよい。
【0038】
○ 多孔ベルト18は織物で形成されるものに限らず、編み物(編み地)で形成されてもよい。この場合、編み物の伸縮性により、テンション装置を特に設けなくても多孔ベルト18が適度な張力状態で回転される。
【0039】
○ 多孔ベルト18は織物や編み物に限らず、図4に示すように、一方向に配列された糸(熱融着糸34)で構成された糸層39を熱融着糸34の配列方向が交差する状態(例えば、直交状態)で2層積層して各熱融着糸34の交差部35を融着したシート状体で形成してもよい。
【0040】
○ 多孔ベルト18はエンドレスに織られたあるいは編まれた織物あるいは編み物で形成された継ぎ目の無いループ状に限らず、帯状の織物あるいは編み物等の両端を固着した継ぎ目のあるループ状であってもよい。
【0041】
○ 多孔ベルト18を形成する織物は必ずしも全ての糸を熱融着糸で構成する代わりに、経糸のみあるいは緯糸のみを熱融着糸で構成してもよい。
○ 多孔ベルト18に帯電防止機能を付与する方法として、多孔ベルト18を構成する糸に導電性を有する導電性繊維(電導性繊維)を使用するようにしてもよい。導電性繊維として、例えばカーボンブラックを混入して紡出した繊維がある。
【0042】
○ 多孔ベルト18に帯電防止機能を付与する方法として、多孔ベルト18を形成した後に帯電防止剤を付着する方法に代えて、多孔ベルト18を帯電防止剤が付着された糸を使用した織物又は編み物で形成するようにしてもよい。
【0043】
○ 熱融着糸34は鞘部34a及び芯部34bがともにポリアミド製のものに限らない。例えば、鞘部34a及び芯部34bともポリエステル製のものや、鞘部34aをポリエステル製、芯部34bをポリアミド製のものを使用してもよい。
【0044】
○ 回転軸19及び吸引パイプ29,30は4錘を1ユニットとする構成に限らず、ローラスタンド22間の錘数(例えば8錘)を1ユニットとしたり、2錘を1ユニットとした構成としてもよい。また、必ずしも全ユニットを同じ錘数とせずに、ローラスタンド22間の錘数を異なる数に分けて(例えば6錘と2錘)それに対応して2種のユニットを設けてもよい。
【0045】
○ 繊維束Fのニップ点を挟んで上流側及び下流側に吸引孔29a,30aを設ける構成に限らず、ニップ点を挟んで上流側にのみ吸引孔29aを有する構成としてもよい。その場合、吸引パイプ30に代えて吸引パイプ30と同じ外形で、吸引孔30aを形成しないパイプあるいはバーを使用すれば製造方法や組み付けを前記実施形態とほぼ同じにすることができる。また、吸引パイプ30を無くして多孔ベルト18を吸引パイプ29とボトムニップローラ19aとの間に巻き掛けた構成としてもよい。
【0046】
○ 繊維束集束装置11の送出部はニップローラ対16を装備する構成に限らない。例えば、図5に示すように、断面略卵形の吸引パイプ40を設け、吸引パイプ40の所定位置に吸引孔40aを形成する。そして、吸引パイプ40及びテンションローラ41の外周に沿って多孔ベルト18を摺動可能に巻き掛ける。また、駆動ベルト42を介してフロントトップローラ15の回転をトップニップローラ20に伝達し、トップニップローラ20を多孔ベルト18に圧接しながら駆動することで多孔ベルト18を駆動するようにしてもよい。
【0047】
○ ボトムニップローラ19aが形成される回転軸19を全錘共通のシャフトとして、ドラフト装置12のフロントボトムローラ14と同様に機台のギヤエンドに設けられたギヤ列を介してモータにより駆動される構成としてもよい。
【0048】
○ 多孔ベルト18をトップ側に設ける構成としてもよい。
○ 精紡機のドラフト装置に限らず、他の紡機のドラフト装置に適用してもよい。
前記実施形態から把握される発明(技術的思想)について、以下に記載する。
【0049】
(1)請求項4に記載の発明において、前記多孔ベルトは多孔ベルトを構成する糸が導電性を有することで帯電防止機能を備えている。
(2)請求項4に記載の発明において、前記多孔ベルトは、帯電防止剤が付着された糸を使用した織物又は編み物で形成されている。
【0050】
(3)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1),(2)のいずれか一項に記載の発明において、前記多孔ベルトは継ぎ目のないループ状に形成されている。
(4)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれか一項に記載の多孔ベルト。
【0051】
(5)請求項1〜請求項4及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれか一項に記載の繊維束集束装置を備えたリング精紡機。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は一実施形態の繊維束集束装置の一部破断概略側面図、(b)は多孔ベルトの模式斜視図、(c)は多孔ベルトの糸の交差部の模式図、(d)は開口率を説明するための模式図。
【図2】吸引部とボトムニップローラとの関係を示す部分概略図。
【図3】(a)は平織りの織物の経糸と緯糸の関係を示す模式図、(b)は綾織りの織物の経糸と緯糸の関係を示す模式図。
【図4】別の実施形態の多孔ベルトを構成するシート状体の構成を示す模式図。
【図5】別の実施形態の繊維束集束装置を示す概略側面図。
【符号の説明】
【0053】
F…繊維束、11…繊維束集束装置、12…ドラフトパートとしてのドラフト装置、13…最終送出ローラ対、16…送出部としてのニップローラ対、17…吸引部、18…多孔ベルト、29a,30a,40a…吸引孔、29b,30b…案内面、34…熱融着糸、34a…鞘部、34b…芯部、35…交差部、37,38…織物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトパートでドラフトされた繊維束を集束する紡機における繊維束集束装置であって、
前記ドラフトパートの最終送出ローラ対の下流側に設けられるとともにニップローラを備えた送出部と、該送出部のニップ点を挟んで繊維束の移動方向の少なくとも上流側に吸引孔を備えた案内面を有する吸引部と、前記案内面を摺動する状態で回転される多孔ベルトとを備え、前記多孔ベルトは、織物、編み物のように糸が交差部を有するように構成されたシート状体で形成され、かつ前記糸が前記交差部で融着されている紡機における繊維束集束装置。
【請求項2】
前記シート状体を構成する糸に芯鞘構成の熱融着糸が使用されている請求項1に記載の紡機における繊維束集束装置。
【請求項3】
前記熱融着糸は芯部及び鞘部がそれぞれポリアミド製である請求項1又は請求項2に記載の紡機における繊維束集束装置。
【請求項4】
前記多孔ベルトは帯電防止機能を備えている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の紡機における繊維束集束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−9166(P2006−9166A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183990(P2004−183990)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】