説明

紡績ユニット及び紡績機

【課題】整備等を行なう際には空気アクチュエータによって紡績部を移動可能としつつ、紡績糸を製造する際にはドラフトユニット部に対する紡績部の位置や該紡績部を構成するスピンドル等の位置がズレない紡績ユニットを提供する。
【解決手段】繊維束Fを牽伸するドラフトユニット部2と、前記ドラフトユニット部2によって牽伸された繊維束Fを撚る紡績部3と、前記ドラフトユニット部2から離間する方向に前記紡績部3を移動可動とする空気アクチュエータ38と、前記ドラフトユニット部2に近接する方向に前記紡績部3を移動可能とする弾性部材39と、を備える、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績ユニット及び紡績機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、繊維束を牽伸するとともに、牽伸された繊維束を撚ることで紡績糸を製造する紡績ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。このような紡績ユニットには、繊維束を牽伸するドラフトユニット部と、牽伸された繊維束を撚る紡績部と、が設けられている。
【0003】
ドラフトユニット部は、複数のドラフトローラ対を備えている。ドラフトローラ対は、動力機構を介して回転されるボトムローラと、該ボトムローラに接触した状態で従動回転するトップローラと、で構成される。ドラフトローラ対は、ボトムローラとトップローラが繊維束を把持した状態で回転するため、該繊維束を送り出すことができる。このため、ドラフトユニット部は、互いに隣接するドラフトローラ対の送り出し速度の差異によって繊維束を牽伸できる。
【0004】
紡績部は、主に紡績室に繊維束を案内するファイバーガイドと、紡績室に空気を案内するノズルブロックと、紡績室で撚られた繊維束を外部へ案内するスピンドルと、で構成される。紡績部は、紡績室に案内された空気が該紡績室内に旋回気流を形成するため、繊維束を撚ることができる。
【0005】
上記のような紡績ユニットにおいて、紡績部は、ドラフトユニット部の近傍に配置される。これは、ドラフトユニット部によって牽伸された繊維束が乱れる前に該繊維束を撚る必要があるためである。従って、ドラフトユニット部と紡績部との間に形成される隙間は狭くならざるを得ず、ドラフトユニット部から紡績部を離間させることによって整備等を可能としていた。このため、紡績部を移動可能とする空気アクチュエータを備えた紡績ユニットが存在していた(例えば特許文献2参照)。
【0006】
しかし、空気アクチュエータを用いて紡績部を移動可能とした紡績ユニットは、空気アクチュエータの動作不良(空気漏れによる収縮不良等)によって、紡績糸の特性が変化する場合があった。具体的に説明すると、空気アクチュエータの動作不良によって、ドラフトユニット部に対する紡績部の位置がズレた場合や紡績部を構成するスピンドル等の位置がズレた場合に、紡績糸の特性が変化する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−99192号公報
【特許文献2】特開2011−38210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決すべくなされたものであり、整備等を行なう際には空気アクチュエータによって紡績部を移動可能としつつ、紡績糸を製造する際にはドラフトユニット部に対する紡績部の位置や該紡績部を構成するスピンドル等の位置がズレない紡績ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
第1の発明は、繊維束を牽伸するとともに、牽伸された繊維束を撚ることで紡績糸を製造する紡績ユニットに関する。本発明の実施形態に係る紡績ユニットは、繊維束を牽伸するドラフトユニット部と、牽伸された繊維束を撚る紡績部と、を備える。また、本紡績ユニットは、空気アクチュエータと、弾性部材と、を備える。空気アクチュエータは、ドラフトユニット部から離間する方向に紡績部を移動可動とする。弾性部材は、ドラフトユニット部に近接する方向に紡績部を移動可能とする。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に係る紡績ユニットに関する。本実施形態の紡績部は、紡績室に繊維束を案内するファイバーガイドと、紡績室に空気を案内するノズルブロックと、紡績室で撚られた繊維束を外部へ案内するスピンドルと、ファイバーガイド及びノズルブロックを支持するノズルホルダと、スピンドルを支持するスピンドルホルダと、で構成される。空気アクチュエータは、ドラフトユニット部から離間する方向にスピンドルホルダを移動可能とする。弾性部材は、ドラフトユニット部に近接する方向にスピンドルホルダを移動可能とする。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る紡績ユニットに関する。本実施形態のドラフトユニット部は、繊維束を送り出すドラフトローラ対を複数具備する。空気アクチュエータは、繊維束の牽伸方向の最も下流側に配置されたドラフトローラ対から離間する方向にスピンドルホルダを移動する。弾性部材は、当該ドラフトローラ対に近接する方向にスピンドルホルダを移動する。
【0013】
第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明に係る紡績ユニットに関する。本実施形態の弾性部材は、バネである。
【0014】
第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明に係る紡績ユニットに関する。本発明の実施形態に係る紡績ユニットは、紡績部をドラフトユニット部から離間した位置で保持する掛止部を具備する。
【0015】
第6の発明は、第5の発明に係る紡績ユニットに関する。本実施形態の紡績部は、ピンを具備する。本実施形態の掛止部は、ピンに掛かるフックと、フックがピンから外れる方向に付勢する付勢部材と、を具備する。ピンにフックが掛かっている状態において、紡績部をドラフトローラ対から離間する方向に移動させた場合、付勢部材によりフックがピンから外れる。
【0016】
第7の発明は、第1から第6のいずれかの発明に係る紡績ユニットを複数備える紡績機である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
第1の発明によれば、整備等を行なう際には空気アクチュエータによって、ドラフトユニット部から紡績部を離間させることができる。このため、整備等を容易に行なうことが可能となる。また、紡績糸を製造する際には弾性部材によって、ドラフトユニット部に紡績部を近接させることができる。このため、ドラフトユニット部に対する紡績部の位置がズレることを防止でき、紡績糸の特性を安定させることが可能となる。
【0019】
第2の発明によれば、整備等を行なう際には空気アクチュエータによってスピンドルホルダを移動するため、ノズルホルダも一体となって移動し、ドラフトユニット部から紡績部を離間させることができる。このため、整備等を容易に行なうことが可能となる。また、紡績糸を製造する際には弾性部材によってスピンドルホルダを移動するため、ノズルホルダも一体となって移動され、ドラフトユニット部に紡績部を近接させることができる。このため、ドラフトユニット部に対する紡績部の位置がズレることを防止でき、紡績糸の特性を安定させることが可能となる。更に、弾性部材がノズルホルダ及びスピンドルホルダをドラフトユニット部に近接する方向に付勢するため、紡績部を構成するスピンドル等の位置がズレることを防止でき、紡績糸の特性を安定させることが可能となる。
【0020】
第3の発明によれば、牽伸方向の最も下流側に配置されたドラフトローラ対と紡績部の距離は紡績糸を製造する際に精度が求められるが、牽伸方向の最も下流側に配置されたドラフトローラ対と紡績部の距離を高い精度で管理できるため、紡績糸の特性を安定させることが可能となる。
【0021】
第4の発明によれば、バネにより確実に紡績部をドラフトユニット部に近接する方向に付勢するため、ドラフトユニット部に対する紡績部の位置がズレることを防止でき、紡績糸の特性を安定させることが可能となる。また、バネにより確実にノズルホルダ及びスピンドルホルダをドラフトユニット部に近接する方向に付勢するため、紡績部を構成するスピンドル等の位置がズレることを防止でき、紡績糸の特性を安定させることが可能となる。
【0022】
第5の発明によれば、掛止部により紡績部をドラフトユニット部から離間した位置で保持できる。このため、例えばドラフトユニット部のボトムローラを交換する際の作業性を向上させることが可能となる。
【0023】
第6の発明によれば、紡績部が掛止部によって保持されている状態において、紡績部をドラフトローラ対から離間する方向に移動させると、付勢部材が掛止部による紡績部の保持を解除できる。このため、紡績糸を製造する際の操作手順を簡素化することが可能となる。
【0024】
第7の発明によれば、紡績機は、整備性が良く、安定した特性の紡績糸を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】紡績ユニット100の全体構成を示す図。
【図2】紡績部3の一部構造を示す図。
【図3】紡績部3の全体構造を示す図。
【図4】ドラフトユニット部2から紡績部3が離間した状態を示す図。
【図5】ノズルホルダ34からスピンドルホルダ37が離間した状態を示す図。
【図6】ノズルホルダ34にスピンドルホルダ37が近接した状態を示す図。
【図7】ドラフトユニット部2に紡績部3が近接した状態を示す図。
【図8】紡績部3をドラフトユニット部2から離間した位置で保持した状態を示す図。
【図9】紡績部3の保持を解除した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、紡績ユニット100の全体構成について簡単に説明する。
【0027】
図1は、紡績ユニット100の全体構成を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向を示している。
【0028】
紡績ユニット100は、繊維束Fから紡績糸Yを製造してパッケージPを作成する紡績機械である。紡績ユニット100は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向に沿って、スライバ供給部1と、ドラフトユニット部2と、紡績部3と、欠点検出部4と、張力安定部5と、巻取部6と、を備えている。
【0029】
スライバ供給部1は、繊維束F(スライバ)をドラフトユニット部2へ供給する。スライバ供給部1は、スライバケース11と、スライバガイド(図示せず)と、を備えている。スライバケース11に貯溜された繊維束Fは、スライバガイドによって案内されてドラフトユニット部2へ導かれる。
【0030】
ドラフトユニット部2は、繊維束Fを牽伸して該繊維束Fの太さを均一化する。ドラフトユニット部2は、繊維束Fの送り方向に沿って、バックローラ対21と、サードローラ対22と、ミドルローラ対23と、フロントローラ対24と、の四組のドラフトローラ対21・22・23・24を備えている。ドラフトローラ対21・22・23・24は、動力機構を介して回転されるボトムローラ21A・22A・23A・24Aと、該ボトムローラ21A・22A・23A・24Aに接触した状態で従動回転するトップローラ21B・22B・23B・24Bと、で構成される。また、ボトムローラ23Aとトップローラ23Bには、エプロンバンド23C・23Cが巻回されている。ドラフトローラ対21・22・23・24は、ボトムローラ21A・22A・23A(23C)・24Aとトップローラ21B・22B・23B(23C)・24Bが繊維束Fを把持した状態で回転するため、該繊維束Fを送り出すことができる。このため、ドラフトユニット部2は、互いに隣接するドラフトローラ対21・22・23・24の送り出し速度の差異によって繊維束Fを牽伸できる。
【0031】
紡績部3は、牽伸された繊維束Fを撚ることで紡績糸Yを製造する。紡績部3は、ドラフトユニット部2の近傍に配置されている。このため、紡績部3は、適度に牽伸された繊維束Fから紡績糸Yを製造することができる。なお、紡績部3の構造については後述する。
【0032】
欠点検出部4は、製造された紡績糸Yの欠点部を検出する。具体的に説明すると、欠点検出部4は、発光ダイオードを光源として紡績糸Yを照射し、該紡績糸Yからの反射光量を検出する。欠点検出部4は、アナライザを介して制御部(図示せず)に接続されている。このため、制御部は、欠点検出部4からの検出信号に基づいて欠点部の有無を判断することができる。なお、紡績糸Yの欠点部とは、紡績糸Yの一部が太過ぎる(太糸)若しくは細過ぎる(細糸)異常の他、紡績糸Yに異物が介在している場合が含まれる。欠点検出部4は、本実施形態に係る光学式センサ以外にも、静電容量式のセンサを採用することが可能である。
【0033】
張力安定部5は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させる。張力安定部5は、解舒部材51と、ローラ52と、を備えている。解舒部材51は、紡績糸Yに掛かる張力が低い場合にローラ52とともに回転し、該ローラ52に紡績糸Yを巻き付ける。また、解舒部材51は、紡績糸Yに掛かる張力が高い場合にローラ52から独立して回転し、該ローラ52に巻き付けられた紡績糸Yを解舒する。このため、張力安定部5は、紡績糸Yに掛かる張力を適度に保ち安定させることができる。
【0034】
巻取部6は、紡績糸Yを巻き取ってパッケージPを作成する。巻取部6は、駆動ローラ61と、クレードル(図示せず)と、を備えている。駆動ローラ61は、クレードルによって回転自在に把持されたボビンBを回転させる。このため、巻取部6は、紡績糸Yを巻き取ってパッケージPを作成することができる。なお、巻取部6は、図示しない綾振装置によって紡績糸Yを綾振するため、パッケージPにおける紡績糸Yの偏りを防いでいる。
【0035】
以上が本発明の一実施形態に係る紡績ユニット100の全体構成である。但し、本紡績ユニット100の特徴部分である紡績部3を備えていれば詳細な構成については問わない。つまり、本紡績ユニット100の特徴部分である紡績部3を備えていればスライバ供給部1、ドラフトユニット部2、欠点検出部4、張力安定部5、巻取部6、その他の構成や配置について限定しない。
【0036】
次に、紡績部3の構造について詳細に説明する。
【0037】
図2は、紡績部3の一部構造を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向を示している。図中に示す白塗りの矢印は、供給された空気の流れ方向を示している。
【0038】
紡績部3は、紡績室SCに案内された繊維束Fを撚ることで紡績糸Yを製造する。紡績部3は、主にファイバーガイド31と、ノズルブロック32と、スピンドル33と、で構成される。
【0039】
ファイバーガイド31は、紡績室SCを構成する一部材である。ファイバーガイド31は、ドラフトユニット部2によって牽伸された繊維束Fを紡績室SCへ導く。具体的に説明すると、ファイバーガイド31は、紡績室SCに連通された繊維通路31hによって、該紡績室SC内へ繊維束Fを導く。
【0040】
ノズルブロック32は、紡績室SCを構成する一部材である。ノズルブロック32は、空気供給源から送られた空気を紡績室SCへ導く。具体的に説明すると、ノズルブロック32は、紡績室SCに連通された空気孔32aによって、該紡績室SC内へ空気を導く。なお、空気孔32aは、各空気孔32aから噴出した空気が同じ方向に流れるように連通されているため、該紡績室SC内に空気の旋回気流を発生させる。
【0041】
スピンドル33は、紡績室SCを構成する一部材である。スピンドル33は、紡績室SCで撚られた繊維束F、即ち、紡績糸Yを該紡績室SCの外部へ導く(紡出という)。具体的に説明すると、スピンドル33は、紡績室SCに連通された繊維通路33hによって、該紡績室SCの外部へ紡績糸Yを導く。
【0042】
ここで、紡績室SCについて更に詳しく説明する。紡績室SCは、ファイバーガイド31と、ノズルブロック32と、スピンドル33と、で囲まれた空間である。詳細には、紡績室SCは、ノズルブロック32に設けられた略円錐形状の貫通孔32tに対して、一方から挿入された略円錐形状のスピンドル33と、他方に取り付けられたファイバーガイド31と、で囲まれた空間である。
【0043】
紡績室SCは、ファイバーガイド31とスピンドル33の間に構成される空間SC1と、ノズルブロック32とスピンドル33の間に構成される空間SC2と、に分けられる。空間SC1において、繊維束Fを構成する繊維は、後端部が旋回気流によって反転される(図中二点鎖線参照)。空間SC2において、反転した繊維の後端部は、旋回気流によって回転される(図中二点鎖線参照)。そして、旋回気流によって回転された繊維は、次々と中心部の繊維に巻き付いていく。このようにして、紡績部3は、繊維束Fを撚ることができる。
【0044】
なお、本紡績部3は、ファイバーガイド31にニードル31nを備えている。ニードル31nは、繊維束Fを繊維通路33hに導くとともに、繊維束Fの撚りが上流側に伝わることを防ぐ。しかし、紡績部3は、ファイバーガイド31がニードル31nを備えていない構成であっても良い。この場合、紡績部3、ファイバーガイド31の下流側端部のエッジによりニードル31nの機能を実現する。
【0045】
図3は、紡績部3の全体構成を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、繊維束Fならびに紡績糸Yの送り方向を示している。
【0046】
ファイバーガイド31及びノズルブロック32は、ノズルホルダ34によって支持されている。具体的に説明すると、ファイバーガイド31は、ノズルブロック32の凹部に組み合わされている。ノズルブロック32は、ノズルホルダ34の貫通穴34hに挿入され、該ノズルブロック32の掛止面32sとノズルホルダ34の上面34sが当接した状態で支持されている。ファイバーガイド31とノズルブロック32は、ファイバーガイド31に爪部35hを掛けたノズルキャップ35によってノズルホルダ34に固定される。なお、ノズルホルダ34は、支持軸SH1に回動自在に取り付けられている。
【0047】
スピンドル33は、スピンドルホルダ37によって支持されている。具体的に説明すると、スピンドル33は、スピンドルホルダ37の凸部に組み合わされた状態で支持されている。スピンドル33は、該スピンドル33に爪部36hを掛けたスピンドルキャップ36によってスピンドルホルダ37に固定される。なお、スピンドルホルダ37も、支持軸SH1に回動自在に取り付けられている。
【0048】
更に、ノズルホルダ34とスピンドルホルダ37は、引張バネ40によって互いに近接する方向に付勢されている。このため、ノズルホルダ34とスピンドルホルダ37は、引張バネ40の付勢力により、一体となって回動することができる(図4参照)。但し、ノズルホルダ34が後述するストッパSTに当接した場合は、引張バネ40が伸びることによってスピンドルホルダ37のみが回動できる(図5参照)。
【0049】
空気アクチュエータ38は、シリンダ38aと、ピストン38bと、ロッド38cと、で構成される。空気供給源(図示せず)から送られた空気は、シリンダ38aに供給されてピストン38bを摺動させる。ピストン38bに取り付けられたロッド38cは、ピストン38bとともに摺動して、スピンドルホルダ37を回動させる。本実施形態において、空気アクチュエータ38は、シリンダ38aに空気を供給されるとロッド38cが伸長し、スピンドルホルダ37を回動させる。つまり、空気アクチュエータ38は、ドラフトユニット部2から離間する方向にスピンドルホルダ37を回動させる(図4、図5参照)。
【0050】
弾性部材39は、空気アクチュエータ38によってスピンドルホルダ37が回動される方向と反対の方向に、該スピンドルホルダ37を付勢している。つまり、弾性部材39は、空気アクチュエータ38が作動していない場合に、ドラフトユニット部2に近接する方向にスピンドルホルダ37を可動させる(図6、図7参照)。
【0051】
以下に、紡績部3の動作態様について詳細に説明する。
【0052】
図4は、ドラフトユニット部2から紡績部3が離間した状態を示す図である。図5は、ノズルホルダ34からスピンドルホルダ37が離間した状態を示す図である。図6は、ノズルホルダ34にスピンドルホルダ37が近接した状態を示す図である。図7は、ドラフトユニット部2に紡績部3が近接した状態を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、ノズルホルダ34及びスピンドルホルダ37の回動方向を示している。また、図中に示す白塗りの矢印は、弾性部材39の付勢方向を示している。
【0053】
上述したように、空気アクチュエータ38は、ドラフトユニット部2から離間する方向にスピンドルホルダ37を回動させる。すると、図4に示すように、ノズルホルダ34は、引張バネ40の付勢力により、スピンドルホルダ37と一体となって回動する。
【0054】
このような構成により、本紡績ユニット100は、整備等を行なう際には空気アクチュエータ38によって、ドラフトユニット部2から紡績部3を離間させることができる。このため、本紡績ユニット100は、整備等を容易に行なうことが可能となる。
【0055】
本実施形態に則して説明すると、以下の効果を奏する。即ち、本紡績ユニット100は、整備等を行なう際には空気アクチュエータ38によってスピンドルホルダ37を回動(移動)するため、ノズルホルダ34も一体となって回動(移動)し、ドラフトユニット部2から紡績部3を離間させることができる。このため、本紡績ユニット100は、整備等を容易に行なうことが可能となる。
【0056】
なお、ノズルホルダ34は、ストッパSTに当接するまで回動できる。従って、ノズルホルダ34は、ストッパSTに当接すると回動を制限され、該ストッパSTに当接した状態で停止することとなる。
【0057】
更に、空気アクチュエータ38は、スピンドルホルダ37を回動させる。すると、図5に示すように、スピンドルホルダ37は、引張バネ40が伸びることによって、該スピンドルホルダ37のみが回動される。つまり、スピンドルホルダ37は、ノズルホルダ34から離間する方向に単独で回動される。
【0058】
このような構成により、本紡績ユニット100は、ファイバーガイド31とノズルブロック32からスピンドル33を離間させることができる。このため、本紡績ユニット100は、スピンドル33の交換作業等を容易に行なうことが可能となる。
【0059】
また、上述したように、弾性部材39は、空気アクチュエータ38が作動していない場合に、ドラフトユニット部2に近接する方向にスピンドルホルダ37を回動させる。すると、図6に示すように、スピンドルホルダ37は、引張バネ40が縮むことによって、該スピンドルホルダ37のみが回動される。つまり、スピンドルホルダ37は、ノズルホルダ34に近接する方向に単独で回動される。
【0060】
更に、弾性部材39は、スピンドルホルダ37を回動させる。すると、図7に示すように、ノズルホルダ34は、スピンドルホルダ37に押されて、該スピンドルホルダ37と一体となって回動する。
【0061】
このような構成により、本紡績ユニット100は、紡績糸Yを製造する際には弾性部材39によって、ドラフトユニット部2に紡績部3を近接させることができる。このため、本紡績ユニット100は、ドラフトユニット部2に対する紡績部3の位置がズレることを防止でき、紡績糸Yの特性を安定させることが可能となる。
【0062】
本実施形態に則して説明すると、以下の効果を奏する。即ち、本紡績ユニット100は、紡績糸Yを製造する際には弾性部材39によってスピンドルホルダ37を回動(移動)するため、ノズルホルダ34も一体となって回動(移動)され、ドラフトユニット部2に紡績部3を近接させることができる。このため、ドラフトユニット部2に対する紡績部3の位置がズレることを防止でき、紡績糸Yの特性を安定させることが可能となる。更に、弾性部材39がノズルホルダ34及びスピンドルホルダ37を常に付勢するため、紡績部3を構成するスピンドル33等の位置がズレることを防止でき、紡績ユニット100により製造される紡績糸Yの特性を安定させることが可能となる。
【0063】
なお、本紡績ユニット100においては、フロントローラ対24に対して紡績部3を離間若しくは近接させるように構成している。
【0064】
これは、牽伸方向の最も下流側に配置されたフロントローラ対(ドラフトローラ対)24と紡績部3の距離は紡績糸Yを製造する際に精度が求められるため、該フロントローラ対(ドラフトローラ対)24に対して紡績部3を離間若しくは近接させることに利点が生じるからである。このため、本紡績ユニット100は、牽伸方向の最も下流側に配置されたフロントローラ対(ドラフトローラ対)24と紡績部3の距離を高い精度で管理でき、紡績糸Yの特性を安定させることが可能となる。
【0065】
更に、本紡績ユニット100において、弾性部材39は、バネである。なお、本紡績ユニット100では、引張バネを用いているが、バネの種類について限定するものでない。また、紡績部3をドラフトユニット部2に近接する方向に付勢できる弾性体であれば、その他の弾性体を弾性部材39として採用することができる。
【0066】
このような構成により、本紡績ユニット100は、バネである弾性部材39により確実に紡績部3をドラフトユニット部に近接する方向に付勢するため、ドラフトユニット部2に対する紡績部3の位置がズレることを防止できる。これにより、紡績ユニット100が製造する紡績糸Yの特性を安定させることが可能となる。また、バネである弾性部材39により確実にノズルホルダ34及びスピンドルホルダ37を付勢するため、紡績部3を構成するスピンドル33等の位置がズレることを防止できる。これにより、紡績ユニット100が製造する紡績糸Yの特性を安定させることが可能となる。
【0067】
次に、紡績ユニット100のその他の特徴点について説明する。
【0068】
図8は、紡績部3をドラフトユニット部2から離間した位置で保持した状態を示す図である。図9は、紡績部3の保持を解除した状態を示す図である。図中に示す黒塗りの矢印は、掛止部7の回動方向を示している。図中に示す白塗りの矢印は、紡績部3の回動方向を示している。
【0069】
紡績ユニット100は、紡績部3をドラフトユニット部2から離間した位置で保持できる掛止部7を備えている。掛止部7は、レバー7aと、フック7bと、を備えている。
【0070】
レバー7aは、スピンドルホルダ37に設けられた支持軸SH2によって回動可能に支持されている。オペレータは、レバー7aを回動することによって、フック7bを回動することができる。つまり、レバー7aとフック7bは、一体的に形成されている。
【0071】
フック7bは、スピンドルホルダ37に設けられた支持軸SH2によって回動可能に支持されている。フック7bは、支持軸SH2を中心として回動すると、ノズルホルダ34に設けられたピンPiを引っ掛けることができる(図8参照)。
【0072】
このような構成により、本紡績ユニット100は、紡績部3をドラフトユニット部2から離間した位置で保持できる。このため、本紡績ユニット100は、例えばドラフトユニット部2のボトムローラ24Aを交換する際の作業性を向上させることが可能となる。
【0073】
更に、本実施形態に係る掛止部7は、付勢部材7cを備えている。付勢部材7cは、フック7bがピンPiから外れる方向に付勢している。つまり、付勢部材7cは、フック7bがピンPiを引っ掛けることができる回動方向と反対の方向に、該フック7bを付勢している。
【0074】
このような構成により、本紡績ユニット100は、紡績部3をドラフトローラ対2から離間する方向に回動(移動)させると、付勢部材7cが掛止部7による紡績部3の保持を解除できる(図9参照)。このため、本紡績ユニット100は、紡績糸Yを製造する際の操作手順を簡素化することが可能となる。
【0075】
なお、従来より、紡績ユニットを複数備える紡績機は、整備性の向上が求められていた。また、従来より、紡績ユニットを複数備える紡績機は、各紡績ユニットで製造された紡績糸Yが同等の品質を有することが求められていた。本発明の実施形態に係る紡績ユニット100を複数備えることで、紡績機200は、整備性が良く、特性の安定した紡績糸Yを製造することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態に係る紡績ユニット100及び紡績機200ついて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、紡績ユニット100は、紡績部3から張力安定部5により紡績糸Yを引き出す構成としたが、この構成に限定されない。紡績部3と張力安定部5との間にデリベリローラとニップローラとを設けて、これらのローラで紡績糸Yを紡績部3から引き出す構成としてもよい。
【0077】
紡績部3は、特開2011−38210号公報に記載のように、互いに反対方向の撚りを繊維束Fに掛ける一対のエアジェットノズルでもよい。この場合、上流側のエアジェットノズルがノズルホルダ34により保持され、下流側のエアジェットノズルがスピンドルホルダ37により保持される。
【符号の説明】
【0078】
1 スライバ供給部
2 ドラフトユニット部
24 フロントローラ対(ドラフトローラ対)
24A ボトムローラ
24B トップローラ
3 紡績部
31 ファイバーガイド
32 ノズルブロック
33 スピンドル
34 ノズルホルダ
37 スピンドルホルダ
38 空気アクチュエータ
39 弾性部材
40 引張バネ
4 欠点検出部
5 張力安定部
6 巻取部
7 掛止部
7a フック
7c 付勢部材
100 紡績ユニット
200 紡績機
F 繊維束
Y 紡績糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束を牽伸するドラフトユニット部と、
前記ドラフトユニット部によって牽伸された繊維束を撚る紡績部と、
前記ドラフトユニット部から離間する方向に前記紡績部を移動可動とする空気アクチュエータと、
前記ドラフトユニット部に近接する方向に前記紡績部を移動可能とする弾性部材と、を備える、ことを特徴とする紡績ユニット。
【請求項2】
前記紡績部は、紡績室に繊維束を案内するファイバーガイドと、
前記紡績室に空気を案内するノズルブロックと、
前記紡績室で撚られた繊維束を外部へ案内するスピンドルと、
前記ファイバーガイド及び前記ノズルブロックを支持するノズルホルダと、
前記スピンドルを支持するスピンドルホルダと、で構成され、
前記空気アクチュエータは、前記ドラフトユニット部から離間する方向に前記スピンドルホルダを移動可能とし、
前記弾性部材は、前記ドラフトユニット部に近接する方向に前記スピンドルホルダを移動可能とする、ことを特徴とする請求項1に記載の紡績ユニット。
【請求項3】
前記ドラフトユニット部は、繊維束を送り出すドラフトローラ対を複数具備し、
前記空気アクチュエータは、繊維束の牽伸方向の最も下流側に配置された前記ドラフトローラ対から離間する方向に前記スピンドルホルダを移動し、
前記弾性部材は、繊維束の牽伸方向の最も下流側に配置された前記ドラフトローラ対に近接する方向に前記スピンドルホルダを移動する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の紡績ユニット。
【請求項4】
前記弾性部材は、バネである、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項5】
前記紡績部を前記ドラフトユニット部から離間した位置で保持する掛止部を具備する、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の紡績ユニット。
【請求項6】
前記紡績部は、ピンを具備し、
前記掛止部は、前記ピンに掛かるフックと、
前記フックが前記ピンから外れる方向に付勢する付勢部材と、を具備し、
前記ピンに前記フックが掛かっている状態において、前記紡績部を前記ドラフトローラ対から離間する方向に移動させた場合、前記付勢部材により前記フックが前記ピンから外れる、ことを特徴とする請求項5に記載の紡績ユニット。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の紡績ユニットを複数備える紡績機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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