説明

紡績機の作動制御方法及び装置

【課題】紡績機を再起動させた際に紡績部での糸詰まりを防止するための作動制御方法を提案することを目的とする。
【解決手段】紡績ユニット1のドラフト装置3から送り込まれたスライバSを紡績部4にて紡出する紡績機100の作動制御方法であって、紡績機100を再起動させるときは、前記紡績ユニット1に向けて開口された吸引ダクト30・31・32に吸引力を発生させるブロアモータ34a(吸引ブロア34)を作動させた後に、前記ドラフト装置3のドラフトローラ10・11・12・13を回転駆動させるドラフトモータ22を作動させ、前記吸引ダクト30・31・32がエア吸引された状態で前記ドラフトローラ10・11・12・13を回転駆動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績機の作動制御方法及び装置に関し、より詳細には、紡績ユニットのドラフトローラ駆動手段と機台本体に設けられた吸引ダクトのエア吸引手段との作動を制御する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維束をドラフトして紡績糸を紡出する紡績機は、通常、機台長手方向に複数の紡績ユニットが並設されており、各紡績ユニットにおいて繊維束の紡績が行われるように構成されている。すなわち、紡績ユニットでは、まずドラフト装置のドラフトローラによって繊維束がドラフトされ、ドラフト装置から排出された繊維束がドラフト装置の糸送り経路下流側に配置された紡績部の空気紡績ノズルに吸引されて、紡績糸が紡績部の下流側出口より紡出されるように構成されている。
【0003】
ここで、例えば特許文献1に開示されるように、機台本体側であって紡績部の上流側及び/又は下流側近傍に開口された吸引ダクトが設けられた紡績機が公知である(特許文献1参照)。このような紡績機では、吸引ブロア等のエア吸引手段によって吸引ダクトに吸引力が発生されており、繊維束や糸から発生した風綿や塵埃が開口部から吸引ダクト内部に吸引される。
【0004】
そして、従来の紡績機は、ドラフトローラの駆動手段としてのドラフトモータや吸引ブロア(ブロアモータ)などの作動が制御されて、例えば、スラブキャッチャにより糸欠点が検出された際など紡績が停止されるとき(作業停止)は、ドラフトモータ及びブロアモータの駆動は停止されずに、ドラフトローラの内バックローラ(若しくはサードローラ)の回転駆動のみが停止されるように制御される。
【特許文献1】特許第2947368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なるほど、紡績機は、作業停止時に上述したように作動制御されることで、ドラフト装置に送り込まれている繊維束がバックローラ(若しくはサードローラ)で引きちぎられて、糸屑として下流側へと送り出されて吸引ダクトに吸引され、ドラフト装置に残留しない。そのため、作業停止が解除されて紡績作業が再開されても、紡績部での糸詰まりなどが生じることがなく、紡績糸を連続して紡出できる。
【0006】
しかしながら、停電等で紡績機が急停止された場合には、上述した作業停止の状態とは異なり、ドラフトモータやブロアモータ等の駆動は強制的に停止されてしまう。そのため、ドラフト装置や紡績部の空気紡績ノズルに繊維束が残留されてしまう。このような状態で、紡績機を再起動させると、かかる繊維束が紡績部の上流側及び下流側で糸詰まりを生じて、紡績糸を連続して紡出できないという場合があった。これまでに、紡績機を再起動させる際の作動制御方法として、このような紡績機の構造上特有の問題を解決するに至る技術は提案されていない。
【0007】
そこで、本発明においては、紡績機の作動制御方法に関し、前記従来の課題を解決するもので、紡績機を再起動させた際に紡績部で糸詰まりが生じるのを防止するための作動制御方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、紡績ユニットのドラフト装置から送り込まれた繊維束を紡績部にて紡出する紡績機の作動制御方法であって、紡績機を再起動させるときは、前記紡績ユニットに向けて開口された吸引ダクトに吸引力を発生させるエア吸引手段を作動させた後に、前記ドラフト装置のドラフトローラを回転駆動させるドラフトローラ駆動手段を作動させ、前記吸引ダクトがエア吸引された状態で前記ドラフトローラを回転駆動させるものである。
【0010】
請求項2においては、紡績ユニットのドラフト装置から送り込まれた繊維束を紡績部にて紡出する紡績機の作動制御方法であって、紡績機を再起動させるときは、前記紡績ユニットに向けて開口された吸引ダクトに吸引力を発生させるエア吸引手段及び/又は前記紡績部にエアを供給するエア供給手段を作動させた後に、前記ドラフト装置のドラフトローラを回転駆動させるドラフトローラ駆動手段を作動させ、前記吸引ダクトがエア吸引された状態及び/又は前記紡績部にエア供給された状態で前記ドラフトローラを回転駆動させるものである。
【0011】
請求項3においては、紡績ユニットのドラフト装置から送り込まれた繊維束を紡績部にて紡出する紡績機の作動制御装置であって、前記紡績ユニットに向けて開口された吸引ダクトに吸引力を発生させるエア吸引手段と、紡績ユニットの紡績部にエアを供給するエア供給手段と、前記ドラフト装置のドラフトローラを回転駆動させるドラフトローラ駆動手段とを具備して成り、紡績機を再起動させる信号が入力されると、前記エア吸引手段及び/又はエア供給手段を作動させた後に、前記ドラフトローラ駆動手段を作動させ、前記吸引ダクトがエア吸引された状態及び/又は前記紡績部にエア供給された状態で前記ドラフトローラを回転駆動させるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1に示す構成としたので、ドラフト装置に残留する繊維束を吸引ダクト内へと除去することができるため、紡績機においてドラフト装置と紡績部との間での糸詰まりを防止しながら再起動させることができ、また再起動後も紡績糸を連続して紡出できる。
【0014】
請求項2に示す構成としたので、ドラフト装置に残留する繊維束だけでなく、紡績部に残留する糸屑を除去することができるため、紡績機において紡績部の上流側だけでなく下流側でも糸詰まりを防止しながら再起動できる。
【0015】
請求項3に示す構成としたので、ドラフト装置に残留する繊維束を吸引ダクト内へと除去することができるため、紡績機においてドラフト装置と紡績部との間での糸詰まりを防止しながら再起動させることができ、また再起動後も紡績糸を連続して紡出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明のコントローラが採用された紡績機の全体的な構成を示した正面図、図2は同じく図1の紡績機の側面図、図3は同じく図1の紡績機のドラフト装置及び紡績部周辺の拡大図、図4はコントローラのブロック図、図5は紡績機を再起動させたときのタイミングチャート、図6は別実施例の図5のタイミングチャートである。
【0017】
まず、本実施例が採用された紡績機100の全体構成について、以下に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施例の紡績機100には、スライバSから紡績糸Yを紡出する紡績ユニット1と、紡績ユニット1にて糸切りされた後の紡績糸Yを糸継ぎするための糸継ぎ台車9と、紡績ユニット1毎に生じる糸屑や糸切れを機台内部に吸引するためのサクション機構28等が設けられている。
【0018】
紡績ユニット1・1・・・は、機台長手方向に沿って複数並設され、紡績糸Yが製造される経路(糸送り経路)に沿って、ケンスKより引き出されたスライバSをドラフトするドラフト装置3と、ドラフト装置3から送り出されたスライバSを旋回気流によって撚り合わせて紡績糸Yを紡出する紡績部4と、紡績部4で紡出された紡績糸Yを糸巻取装置7へと送り出す糸送り装置5と、紡績糸Yの糸欠点を検出するスラブキャッチャ6と、紡績糸Yをボビン軸方向にトラバースしながら巻き取ってパッケージ8を形成する糸巻取装置7等とで構成されている。
【0019】
ドラフト装置3は、ドラフトローラによってスライバSを挟み込み、糸送り経路の上流から下流に向けて搬送しながらドラフトするように構成されている。このドラフトローラは、バックローラ10と、サードローラ11と、エプロンを有するセカンドローラ12と、フロントローラ13とからなる4線式に構成され、それぞれ上下に一対設けられている。
【0020】
ドラフト装置3では、隣り合う位置に配置された各ドラフトローラ10・11・12・13間の周速度に差が設けられることで、スライバSがドラフトされる。例えば、バックローラ10の周速度が1とし、サードローラ11の周速度を2とすると、バックローラ10とサードローラ11との間でスライバSが2倍にドラフトされる。特に、セカンドローラ12とフロントローラ13との間では、エプロンを有するセカンドローラ12にてスライバSが面接触により保持されるため、周速度比が最大限上げられてスライバSが最大限ドラフトされる。
【0021】
ここで、ドラフト装置3のドラフトローラについて、以下に詳述する。
図2及び図3に示すように、上述したドラフト装置3のドラフトローラは、バックボトムローラ10aとバックトップローラ10bとでバックローラ10が構成され、サードボトムローラ11aとサードトップローラ11bとでサードローラ11が構成され、セカンドボトムローラ12aとセカンドトップローラ12bとでセカンドローラ12が構成され、フロントボトムローラ13aとフロントトップローラ13bとでフロントローラ13が構成されている。
【0022】
ボトムローラ10a・11a・12a・13aは、紡績ユニット1の機台側に配置され、トップローラ10b・11b・12b・13bは、ボトムローラ10a・11a・12a・13aに対して離間自在に構成されている。そして、ボトムローラ10a・11a・12a・13aにトップローラ10b・11b・12b・13bが圧接されて、スライバSが上下にニップされる。
【0023】
この内、バックボトムローラ10aとサードボトムローラ11aは、紡績機100の機台長手方向に沿って各紡績ユニット1・1・・・を貫通するラインシャフト20(図1参照)とクラッチ機構21を介して連結されており、ラインシャフト20の回転駆動がクラッチ機構21を介して伝達されて回転駆動される。ラインシャフト20は、一端が紡績機100に配置されたドラフトモータ22と接続されており、紡績機100の起動中は常時回転駆動されている。なお、ドラフトモータ22は、後述するメインコントローラ37aに接続されている(図4参照)。
【0024】
クラッチ機構21は、紡績ユニット1・1・・・毎に設けられるとともに、ラインシャフト20とバックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aの間に配設され、ラインシャフト20に電磁クラッチ23を介して装着されたプーリ21aと、バックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aに装着されたプーリ21b・21cと、各プーリ21a・21b・21cに外接するように巻回されたベルト24等とで構成されている。電磁クラッチ23は、後述するユニットコントローラ37bに接続されており(図4参照)、電磁クラッチ23がON/OFF制御されることで、バックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aの駆動/停止が切り換えられる。
【0025】
セカンドボトムローラ12aとフロントボトムローラ13aは、機台長手方向に沿って延設されたラインシャフト26・27と同軸に直結されており(図1参照)、このラインシャフト26・27が上述したドラフトモータ22に接続されている。このように、セカンドボトムローラ12aとフロントボトムローラ13aは、各紡績ユニット1・1・・・のドラフト装置3において同期して一斉に回転駆動されるように構成されている。
【0026】
以上のように、ドラフト装置3は、ドラフトモータ22に連結されたラインシャフト20・26・27を介して、各ボトムローラ10a・11a・12a・13aが回転駆動されるように構成されている。紡績機100の起動中は、ドラフトモータ22も作動されているため、ドラフトモータ22の駆動によってラインシャフト20・26・27は常時回転されている。そして、ドラフトローラの内セカンドボトムローラ12aとフロントボトムローラ13aは、ラインシャフト26・27を介して常時回転駆動され、バックボトムローラ10aとサードボトムローラ11aは、上述したクラッチ機構21の電磁クラッチ23がON/OFF制御されることで、駆動/停止が切り換え可能に構成されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、本実施例の紡績部4は、高速紡績が可能な旋回流を発生する図示せぬ空気紡績ノズルと紡績スピンドルとを具備してなる。この紡績部4には、圧縮エアが充填されたタンク18から圧縮エアが供給されて、空気紡績ノズルにおいて旋回気流が生起されて紡績糸Yが紡出される。
【0028】
タンク18は、機台本体に配置され、このタンク18から各紡績ユニット1・1・・・の紡績部4にそれぞれ圧縮エアを供給するエア供給パイプが延設され、各エア供給パイプには圧縮エアの供給を切り換え制御するソレノイドバルブ19が設けられている。ソレノイドバルブ19は、後述するユニットコントローラ37bに接続されており(図4参照)、ソレノイドバルブ19がON/OFF制御されることで、紡績部4への圧縮エアの供給/停止が切り換えられる。本実施例では、紡績機100の起動中は常時「ON」に切り換えられて、紡績部4へ圧縮エアが供給される状態となるように制御されている。ある紡績ユニット1の紡績部4で紡績作業が中断等されるときには、ソレノイドバルブ19が「OFF」に切り換えられて紡績部4に圧縮エアが供給されないように制御されてもよい。
【0029】
なお、紡績部4としては、このような構成に限定するものではなく、例えば、2段の空気紡績ノズルや、空気紡績ノズルと一対の加撚ローラ対よりなる加撚部材や、紡績速度が数百m/分の他の高速紡績が可能な紡績部などを採用することできる。
【0030】
図2に示したように、糸送り装置5は、デリベリローラ15及びニップローラ16間に紡績糸Yがニップされながら搬出され、デリベリローラ15等の下流側に紡績糸Yを吸引する図示せぬスラックチューブが配設されている。スラブキャッチャ6は、紡績糸Yの太さムラなどの糸欠点を検出し、検出して糸欠点を切断・排除してパッケージ8へ巻取られないような構成とされている。糸継ぎ台車9は、機台長手方向に沿って内部下方を走行可能に配置され、スラブキャッチャ6によって紡績糸Yが切断されると所定の紡績ユニット1まで走行されて糸継ぎが行われるように構成されている。
【0031】
図1乃至図3に示すように、サクション機構28は、機台内部の長手方向に沿って略水平に延設された吸引ダクト30・31・32と、この吸引ダクト30・31・32から紡績ユニット1毎に機台前方すなわち紡績ユニット1に向けて延出される吸引パイプ30a・31a・32aと、吸引ダクト30・31・32の一端に接続されたダストボックス33と、ダストボックス33に接続され吸引ダクト30・31・32に吸引力を発生させるエア吸引手段としてのブロアモータ34aを備えた吸引ブロア34等とで構成されている(図1参照)。
【0032】
吸引パイプ30aは、一端が吸引ダクト30に接続され、他端が紡績部4の上流側(空気紡績ノズル入り口側)であってフロントローラ13の近傍に開口されている。また、吸引パイプ31aは、一端が吸引ダクト31に接続され、他端が紡績部4の下流側(出口側)であって紡績部4とデリベリローラ15との間に開口されている。そして、吸引パイプ32aは、一端が吸引ダクト32に接続され、他端がデリベリローラ15とスラブキャッチャ6との間に開口されている。
【0033】
ブロアモータ34aが作動されることによって、各吸引ダクト30・31・32を介して吸引パイプ30a・31a・32aに吸引力が発生されて、吸引パイプ30a・31a・32aの開口部からスライバSの風綿や糸屑等が吸引される。このブロアモータ34aは、後述するメインコントローラ37aに接続され(図4参照)、紡績機100の起動中は常時駆動されている。また、ダストボックス33の内部には、図示せぬフィルタ等が配置され、吸引ダクト30・31・32を介して吸入された風綿や糸屑等が捕集される。
【0034】
吸引ダクト30には、ドラフト装置3から紡績部4に糸送りされるスライバSに含まれる風綿が、ブロアモータ34a(吸引ブロア34)によって発生された吸引力によって吸引パイプ30aの開口部より吸引される。この風綿は、吸引ダクト30を介してダストボックス33に送られる。
【0035】
吸引ダクト31には、スラブキャッチャ6によって切断された紡績糸Yが、ブロアモータ34a(吸引ブロア34)によって発生された吸引力によって吸引パイプ31aの開口部から糸屑として吸引される。この糸屑は、吸引ダクト31を介してダストボックス33に送られる。つまり、スラブキャッチャ6により糸欠点が切断される間は、ドラフト装置3のバックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aの駆動が停止される一方で、セカンドボトムローラ12a及びフロントボトムローラ13aは回転駆動され、ドラフト装置3に送り込まれたスライバSは、バックローラ10及びサードローラ11で引きちぎられ、糸屑として紡績部4の下流側へと送り出されて吸引ダクト31内に吸引される。このような構成とすることで、かかる糸屑がドラフト装置3や紡績部4に残留せず、紡績作業が再開されても、紡績部4での糸詰まりなどが生じないようにしている。
【0036】
そして、糸継ぎ台車9による糸継ぎ作業の際に紡績部4から膨出された紡績糸Yが、ブロアモータ34a(吸引ブロア34)によって発生された吸引力によって、吸引パイプ32aの開口部から吸引パイプ32aの内部に吸引される。このように、吸引パイプ32aを設けることで、デリベリローラ15と糸継ぎ箇所の間で生じる糸弛みが防止され、つまり糸もつれやビリ発生等が防止される。
【0037】
次に、コントローラ37による紡績機100の作動制御について、以下に詳述する。
図4に示すように、紡績機100の作動制御装置としてのコントローラ37には、上述したソレノイドバルブ19、ドラフトモータ22、電磁クラッチ23、ブロアモータ34a等が接続され、このコントローラ37によってドラフト装置3、紡績部4及びサクション機構28の作動が制御される。
【0038】
本実施例のコントローラ37は、機台本体に設けられドラフトモータ22、ブロアモータ34a及び糸継ぎ台車9(駆動部や走行部)等が接続されたメインコントローラ37aと、ソレノイドバルブ19、電磁クラッチ23及びスラブキャッチャ6等が接続される複数のユニットコントローラ37b・37b・・・とで構成されている。このコントローラ37(メインコントローラ37a及びユニットコントローラ37b)は、各種演算処理や制御を実行するCPU、不揮発性メモリとしてのEEPROM、各種データ等を一時的に記憶させるRAM等とから構成されている。
【0039】
ユニットコントローラ37bは、紡績ユニット1・1・・・毎に設けられており、各ユニットコントローラ37b・37b・・・がメインコントローラ37aとそれぞれ接続されている。すなわち、一のメインコントローラ37aに対して、紡績ユニット1・1・・・に相当するユニットコントローラ37bが接続され、メインコントローラ37aによって各紡績ユニット1・1・・・の起動・停止等の作動が集中制御されるように構成されている。ただし、このコントローラ37は、ユニットコントローラ37bを省略してメインコントローラ37aとの間で直接ソレノイドバルブ19等と通信されるような構成としてもよい。
【0040】
まず、紡績機100が起動しているときのコントローラ37による作動制御を、以下に説明する。
起動中の紡績機100は、コントローラ37によってドラフトモータ22及びブロアモータ34aが常時作動されるように制御される。また、紡績ユニット1・1・・・において、ソレノイドバルブ19が「ON」されて紡績部4に圧縮エアが供給されるとともに、紡績作業時には電磁クラッチ23が「ON」されて、バックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aが回転駆動されるように制御される。このように作動制御されることで、ドラフトローラの糸送り経路上流側より送り出されたスライバSがドラフト装置3にてドラフトされ、ドラフトされたスライバSがドラフト装置3下流の紡績部4に送り込まれて紡績糸Yが紡出される。
【0041】
紡出された紡績糸Yは、紡績部4下流側のデリベリローラ15により糸送りがなされ、スラブキャッチャ6を通過される。ここで、このスラブキャッチャ6にて紡績糸Yに異常が検出されると、コントローラ37によって、電磁クラッチ23が「OFF」に切り換えられてバックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aの駆動が停止され、該当する紡績ユニット1での紡績作業が停止(作業停止)されるとともに、スラブキャッチャ6が糸欠点を切断するように作動制御される。なお、このとき、ソレノイドバルブ19が「OFF」に切り換えられて、紡績部4への圧縮エアの供給が停止されるように制御されてもよい。
【0042】
スラブキャッチャ6にて紡績糸Yの糸欠点が切断されると、コントローラ37によって、該当する紡績ユニット1まで糸継ぎ台車9が走行制御される。糸継ぎ台車9がかかる紡績ユニット1に到着すると、コントローラ37によって電磁クラッチ23が「ON」に切り換えられて、バックボトムローラ10a及びサードボトムローラ11aの回転駆動を再開させるように制御される。そして、この糸継ぎ台車9において、紡績部4から膨出された糸端及び巻取側の糸端が図示せぬサクションパイプによって吸引されながら糸継ぎが行われるのである。
【0043】
このように、紡績機100の起動中は、コントローラ37によって各紡績ユニット1・1・・・のドラフト装置3やサクション機構28等が切り換え制御されて、紡績部4等で糸詰まりが生じることなく、連続して紡績糸Yが紡出されるように作動制御される。なお、紡績ユニット1での紡績作業が一時停止される場合としては、上述した場合の他に、紡績ユニット1のメンテナンス作業時やパッケージ8の取り付け作業時等の場合が挙げられる。
【0044】
次に、紡績機100を再起動させるときのコントローラ37による作動制御を、以下に説明する。
本実施例では、コントローラ37によって、上述した作業停止を繰り返しても、紡績部4等で糸詰まりが生じることがないように紡績機100を制御する他に、例えば紡績機100が停電等で急停止された場合すなわち紡績機100の主電源が完全に一時的に切断された場合(完全停止)に、紡績部4等で糸詰まりが生じることがないように紡績機100を再起動させるように制御している。
【0045】
ここで、紡績機100が完全停止された状態とは、上述した、作業停止の状態とは異なり、ドラフトモータ22やブロアモータ34aの駆動も強制的に停止された状態である。また、完全停止された紡績機100を再起動させるとは、コントローラ37(メインコントローラ37a)に接続されたメインスイッチ38(図4参照)を「ON」にすることで、かかる状態から作業停止の状態に復帰させることをいう。
【0046】
図5は、紡績機100を再起動させる場合の、電磁クラッチ23(a)、ソレノイドバルブ19(b)、ブロアモータ34a(c)及びドラフトモータ22(d)を作動させるタイミングチャートである。完全停止された紡績機100は、電磁クラッチ23及びソレノイドバルブ19は「OFF」に切り換えられており、ブロアモータ34a及びドラフトモータ22は駆動が停止されている。かかる状態から、メインスイッチ38が「ON」に切り換えられると、コントローラ37によって、まずブロアモータ34aが作動され(図5におけるA点)、次いでドラフトモータ22が作動される(図5におけるB点)。
【0047】
このようにして、紡績機100は、完全停止の状態からブロアモータ34a及びドラフトモータ22を駆動させるように制御されて作業停止の状態に復帰される。そして、かかる状態(作業停止の状態)から、コントローラ37によって、ソレノイドバルブ19及びが「ON」に切り換えられかつ電磁クラッチ23が「ON」に切り換えられることで(図5におけるC点)、紡績作業が再開される。
【0048】
ところで、紡績機100は、停電等によって紡績作業中に強制的に停止されてしまった場合には、ドラフト装置3のドラフトローラにスライバSが残留される。すなわち、ドラフト装置3においては、セカンドローラ12にはエプロンが設けられておりトップ−ボトム間での押圧が強いことから、ドラフトモータ22が停止されて各ボトムローラ10a・11a・12a・13aの駆動が停止されると、セカンドローラ12とフロントローラ13との間でスライバSが糸屑として残留される。そして、ブロアモータ34aも停止されるため、この糸屑(スライバS)が吸引ダクト30内に吸引されない。
【0049】
本実施例では、コントローラ37によって、ドラフトモータ22とブロアモータ34aとの作動のタイミングをずらして、ブロアモータ34aの作動後にドラフトモータ22を作動させるように制御するものである。具体的には、ブロアモータ34aが作動されることで、ブロアモータ34aによって吸引ダクト30・31・32及び吸引パイプ30a・31a・32aがエア吸引されて静圧が上昇される。そして、吸引ダクト30・31・32及び吸引パイプ30a・31a・32a内が所定の静圧となるまでブロアモータ34aのみを駆動させた後に、ドラフトモータ22が作動されるように制御される(図5におけるA−B間)。また、ドラフトモータ22が作動されるとドラフトローラの内セカンドボトムローラ12a及びフロントボトムローラ13aのみが回転駆動されるため、ドラフト装置3内の残留された糸屑が糸送り方向下流側へと糸送りされて、吸引パイプ30aの開口部から吸引ダクト30内へと吸引される。そして、ドラフト装置3内の糸屑が全て糸送りされた後に、ソレノイドバルブ19及び電磁クラッチ23が「ON」に切り換えられるように制御されるのである(図5におけるB−C間)。
【0050】
このように、紡績機100を再起動する際には、コントローラ37によって、ブロアモータ34aを作動させて吸引ダクト30がエア吸引された状態で、ドラフトモータ22を作動させてドラフトローラを回転駆動させることで、ドラフト装置3に残留するスライバS(糸屑)を吸引ダクト30内へと確実に除去することができる。そのため、紡績機100において、紡績部4の上流側であってドラフト装置3と紡績部4との間で糸詰まりを防止しながら再起動させることができ、また紡績糸を連続して紡出することができる。
【0051】
なお、ドラフトモータ22を作動させるタイミングとしては、ブロアモータ34aによって各吸引ドラフト30・31・32内の静圧が充分に上昇されるまでの最小の待機時間(ずれ)が確保されればよい。また、ドラフトモータ22を作動させた後は、ドラフト装置3内の糸屑が全て糸送りされる間の最小の待機時間(ずれ)が確保されればよく、後は通常の紡績作業を行うタイミングで電磁クラッチ23やソレノイドバルブ19が作動されればよい。
【0052】
また、紡績機100が完全停止されると、紡績部4へのエア供給も停止されることから、紡績部4(空気紡績ノズル)にもスライバSが糸屑として残留する場合がある。そのため、ソレノイドバルブ19を「ON」にするタイミングは、上述した実施例に限定されず、例えば、図6に示すタイミングチャートのように、コントローラ37によって、ソレノイドバルブ19の作動後にドラフトモータ22を作動させるように制御するように構成してもよい。
【0053】
図6に示す制御方法では、メインスイッチ38が「ON」されると、ソレノイドバルブ19とブロアモータ34aとが同時に作動され(図6におけるA点)、その後ドラフトモータ22が作動されるように制御される。つまり、ブロアモータ34aと同時にソレノイドバルブ19が「ON」に切り換えられることで、タンク18からの圧縮エアが紡績部4(空気紡績ノズル)にエア供給されて紡績部4に残留する糸屑が紡績部4の出口側の端部より放出され、かかる糸屑が吸引パイプ31aの開口部を介して吸引ダクト31内に吸引された後に、ドラフトモータ22が作動されるように制御される(図6におけるA−B間)。
【0054】
このように、紡績機100を再起動する際には、コントローラ37によって、ブロアモータ34aを作動させて吸引ダクト30・31・32がエア吸引された状態に加えて、ソレノイドバルブ19を「ON」に切り換えて紡績部4にエア供給された状態で、ドラフトモータ22を作動させてドラフトローラを回転駆動させることで、ドラフト装置3に残留するスライバS(糸屑)だけでなく、紡績部4に残留する糸屑を除去することができる。そのため、紡績機100において、紡績部4の上流側だけでなく下流側でも糸詰まりを防止しながら再起動させることができ、また紡績糸を連続して紡出できる。
【0055】
上述したように、本実施例の紡績機100の作動制御方法は、一のドラフト装置3に対して一の紡績部4を備えた構成の紡績機100に適用されているが、かかる紡績機の構成はこれに限定されず、例えば、一対のドラフト装置3・3から延出されたスライバS・Sを一の紡績部4に導入して紡績するようにした構成のものにも適用することができる。かかる紡績部では、二個の空気紡績ノズルと中空ガイド軸体が設けられて、一対のスライバS・Sが吸引加撚されて実撚状の紡績糸Yが生成される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のコントローラが採用された紡績機の全体的な構成を示した正面図。
【図2】同じく図1の紡績機の側面図。
【図3】同じく図1の紡績機のドラフト装置及び紡績部周辺の拡大図。
【図4】コントローラのブロック図。
【図5】紡績機を再起動させたときのタイミングチャート。
【図6】別実施例の図5のタイミングチャート。
【符号の説明】
【0057】
1 紡績ユニット
3 ドラフト装置
4 紡績部
10 バックローラ
11 サードローラ
12 セカンドローラ
13 フロントローラ
19 ソレノイドバルブ(エア供給手段)
22 ドラフトモータ(ドラフトローラ駆動手段)
30、31、32 吸引ダクト
34 吸引ブロア
34a ブロアモータ(エア吸引手段)
37 コントローラ(作動制御装置)
100 紡績機
S スライバ(繊維束)
Y 紡績糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡績ユニットのドラフト装置から送り込まれた繊維束を紡績部にて紡出する紡績機の作動制御方法であって、
紡績機を再起動させるときは、前記紡績ユニットに向けて開口された吸引ダクトに吸引力を発生させるエア吸引手段を作動させた後に、前記ドラフト装置のドラフトローラを回転駆動させるドラフトローラ駆動手段を作動させ、前記吸引ダクトがエア吸引された状態で前記ドラフトローラを回転駆動させることを特徴とする紡績機の作動制御方法。
【請求項2】
紡績ユニットのドラフト装置から送り込まれた繊維束を紡績部にて紡出する紡績機の作動制御方法であって、
紡績機を再起動させるときは、前記紡績ユニットに向けて開口された吸引ダクトに吸引力を発生させるエア吸引手段及び/又は前記紡績部にエアを供給するエア供給手段を作動させた後に、前記ドラフト装置のドラフトローラを回転駆動させるドラフトローラ駆動手段を作動させ、前記吸引ダクトがエア吸引された状態及び/又は前記紡績部にエア供給された状態で前記ドラフトローラを回転駆動させることを特徴とする紡績機の作動制御方法。
【請求項3】
紡績ユニットのドラフト装置から送り込まれた繊維束を紡績部にて紡出する紡績機の作動制御装置であって、
前記紡績ユニットに向けて開口された吸引ダクトに吸引力を発生させるエア吸引手段と、紡績ユニットの紡績部にエアを供給するエア供給手段と、前記ドラフト装置のドラフトローラを回転駆動させるドラフトローラ駆動手段とを具備して成り、紡績機を再起動させる信号が入力されると、前記エア吸引手段及び/又はエア供給手段を作動させた後に、前記ドラフトローラ駆動手段を作動させ、前記吸引ダクトがエア吸引された状態及び/又は前記紡績部にエア供給された状態で前記ドラフトローラを回転駆動させることを特徴とする紡績機の作動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−107146(P2007−107146A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301007(P2005−301007)
【出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】