説明

紡績機

【課題】ステップを有する紡績機において、作業者が紡績ユニットに接近できるようにする。
【解決手段】紡績機としての精紡機1は、複数の紡績ユニット2と、パッケージ載置部21と、ステップ22と、つま先収納部23と、を備えている。複数の紡績ユニット2は第1方向に沿って配列され、パッケージ45を巻き取る巻取部13を有する。パッケージ載置部21は紡績ユニット2の第1方向に沿い、かつ紡績ユニット2の巻取部側13に配置される。ステップ22は、複数の紡績ユニット2との間にパッケージ載置部21が位置するように第1方向に沿い、かつパッケージ載置部21の高さよりも低い位置に配置され、作業者の足を載置可能なステップ面22aを有する。つま先収納部23は、ステップ面22aに載った作業者の足のつま先を収納可能な空間を有し、パッケージ載置部21の下方に入り込むように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紡績機、特に、ステップを有する紡績機に関する。
【背景技術】
【0002】
紡績機は、繊維束を撚って紡績糸を生成する紡績部と、紡績部で生成された紡績糸を巻き取ってパッケージを生成する巻取部とを有する複数の紡績ユニットを有している。このような構成の紡績機において、紡績ユニットのメンテナンスの際に作業者が踏み台として使用するステップを有する紡績機が従来知られている(例えば、特許文献1参照)。従来のステップは、パッケージを載置するパッケージ載置部の紡績ユニットから離反する側の側面に配置されている。この側面は垂直面であり、ステップは、垂直な側面から作業者の靴のつま先を配置可能な長さの水平面を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−298548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の紡績機では、作業者がステップに足を載せると、つま先がパッケージ載置部の側面に接触する。このため、作業者が紡績ユニットに充分に接近することができないおそれがある。特に大型のパッケージを取り扱う紡績機の場合、載置されるパッケージの径方向にパッケージ載置部の長さが長くなる。その結果、作業者がステップに載ったとしても、紡績ユニットに接近しにくい。
【0005】
本発明の課題は、ステップを有する紡績機において、作業者が紡績ユニットに接近できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る紡績機は、複数の紡績ユニットと、パッケージ載置部と、ステップと、つま先収納部と、を備えている。複数の紡績ユニットは第1方向に沿って配列され、パッケージを巻き取る巻取部を有している。パッケージ載置部は、第1方向に沿って配置されている。また、パッケージ載置部は、紡績ユニットの糸巻取部側に配置されている。ステップは、複数の紡績ユニットとの間にパッケージ載置部が位置するように第1方向に沿って配置されている。また、ステップは、パッケージ載置部の高さよりも低い位置に配置されている。ステップは、作業者の足を載置可能なステップ面を有している。つま先収納部は、ステップ面に載った作業者の足のつま先を収納可能な空間を有している。つま先収納部は、パッケージ載置部の下方に入り込むように形成されている。
この紡績機では、メンテナンス等で作業者がステップのステップ面に載ると、つま先収納部に作業者の足のつま先を収納できる。つま先収納部はパッケージ載置部の下方に入り込むように形成されているので、作業者がステップに載ると、つま先収納部の長さ分業者が紡績ユニットに接近できるようになる。
【0007】
上記紡績機は、パッケージ載置部のステップが下方に形成された側に配置され、パッケージから離反する方向に折り曲げられたパッケージ保護部をさらに備えてもよい。これにより、パッケージ載置部とステップとの間にパッケージ保護部が設けられる。このため、パッケージ載置部に接近したステップに作業者が載っても、作業者によりパッケージが汚染されにくい。また、パッケージがパッケージ載置部に載置されるとき、又はパッケージがパッケージ載置部で搬送されるとき、パッケージがパッケージ保護部により保護される。
【0008】
上記紡績機は、走行レールと玉揚台車とをさらに備えてもよい。走行レールは、第1方向に沿ってステップ上に配置されている。玉揚台車は、走行レール上を走行可能に設けられ、紡績ユニットからパッケージ載置部にパッケージを搬出するための台車である。これにより、ステップ上に走行レールが配置されるので、玉揚台車を設けたとしても、紡績機全体の構成がコンパクトになる。
【0009】
玉揚台車の高さは紡績ユニットの高さより低くてもよい。これにより、玉揚台車が位置している紡績ユニットに対しても作業者が作業を行える。
【0010】
パッケージ載置部は、第1方向に沿ってパッケージを搬送するパッケージ搬送部を有してもよい。これにより、パッケージ載置部に載置されたパッケージをパッケージ搬送部によって第1方向に搬送できる。このため、紡績機の生産効率が高くなる。
【0011】
上記紡績機は、紡績糸が巻き取られたパッケージをパッケージ載置部に案内するパッケージ案内部をさらに備えてもよい。パッケージ案内部は、巻取部からパッケージ載置部に向かって先下がりの傾斜面を有している。これにより、巻取部からパッケージ載置部にパッケージが転がりながら移動する。このため、パッケージ載置部に載置される際にパッケージに作用する衝撃を低減できる。
【0012】
紡績ユニットは、スライバをドラフトして繊維束にするドラフト部と、ドラフト部から送られた繊維束を紡績して紡績糸を生成する紡績部と、をさらに有してもよい。ドラフト部は、紡績ユニットの上部に配置されている。巻取部は、紡績部で生成された紡績糸をパッケージへと巻き取るように紡績ユニットの下部に配置されている。ステップは、紡績ユニットの高さ方向において、巻取部より下方に配置されている。
作業者通路から近い位置にステップが配置されている従来の紡績機では、作業者通路に作業者が立っていると、パッケージ載置部に載置されたパッケージに作業者が接触しやすい。しかし、上記のように、ステップが巻取部より下方につま先収納部が配置されているので、作業者通路に作業者が立っても、パッケージ載置部に載置されたパッケージに接触せずに、紡績ユニットに作業者が接近することができる。
【0013】
上記紡績機は、複数の紡績ユニットの正面側に複数の紡績ユニットから間隔を隔てて第1方向に沿って配置された棒状部材をさらに備えていてもよい。これにより、作業者がつま先収納部の長さ分、紡績ユニットに接近しても、棒状部材により作業者の接近が規制され、作業者が紡績ユニットに誤って接近し過ぎなくなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、つま先収納部はパッケージ載置部の下方に入り込むように形成されているので、作業者がステップに載ると、つま先収納部の長さ分作業者が紡績ユニットに接近できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による紡績機の全体構成を示す正面図。
【図2】紡績機の断面図。
【図3】紡績機の正面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(紡績機)について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績時での糸の走行方向における上流及び下流を意味するものとする。
【0017】
(1)全体構成
図1に示す紡績機としての精紡機1は、並設された多数の錘である複数の紡績ユニット2を備えている。また、精紡機1は、糸継台車3と、玉揚台車4と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、ユニットフレーム6と、棒状部材16と、を備えている。さらに、精紡機1は、図2に示すように、第1吸引ダクト17と、第2吸引ダクト18と、第3吸引ダクト19と、を備えている。
【0018】
複数の紡績ユニット2は、ユニットフレーム6に図1左右方向である第1方向に並べて配置されている。各紡績ユニット2は、それぞれ所定長の紡績糸10が巻き付けられたパッケージ45を形成する。1台のユニットフレーム6は、例えば8錘の紡績ユニット2を装着可能である。なお、1台のユニットフレーム6に装着される紡績ユニット2の錘数は、特に限定されない。また、1つの精紡機1には、1つ又は複数のユニットフレーム6が設けられる。
【0019】
(2)紡績ユニット
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に、ドラフト部7と、紡績部9と、糸弛み取り部12と、巻取部13と、を主要な構成として備えている。ドラフト部7は、精紡機1のユニットフレーム6の上端近傍に設けられている。ドラフト部7は、スライバ15を延伸して繊維束8とする。紡績部9は、ドラフト部7から送られてくる繊維束8に旋回気流を利用して撚りを与えて空気紡績する。紡績部9から送出された紡績糸10は、ヤーンクリアラ52を通過した後、糸弛み取り部12に送られて下部に配置された巻取部13によって巻き取られ、パッケージ45が形成される。これにより、各紡績ユニット2の紡績部9から巻取部13にかけて、糸道LP(図2)が上下方向に形成される。なお、ヤーンクリアラ52は、通過する紡績糸10の太さ異常及び/又は紡績糸10に含まれる異物の有無等を検出する。
【0020】
糸弛み取り部12は、紡績糸10に所定の張力を付与して紡績部9から引き出す機能と、糸継台車3による糸継時に紡績部9から送出される紡績糸10を滞留させて紡績糸10の弛みを取る機能と、を有している。また、糸弛み取り部12は、巻取部13側の張力の変動が紡績部9側に伝達されないようにするバッファ機能を有している。
【0021】
巻取部13は、パッケージ45を巻き取る。巻取部13は、図2に示すように支持軸70回りに揺動自在に支持されたクレードルアーム71と、巻取ドラム72と、を有している。クレードルアーム71は、紡績糸10を巻回するためにボビン48を回転可能に支持する。巻取ドラム72は、ユニットフレーム6の前面に設けられ、ボビン48又はパッケージ45を、その外周面に接触して所定の巻取速度で回転駆動する。
【0022】
(3)糸継台車
糸継台車3は、ユニットフレーム6に設けられた第1走行レール81上を第1方向に沿って走行可能である。糸継台車3は、糸切断時に、糸継が必要な紡績ユニット2の位置まで走行し、紡績部9側の上糸と巻取部13側の下糸とを糸継できるように構成されている。糸継台車3は、図1では1台しか描かれていないが、精紡機1全体では、複数台設けられている。各糸継台車3は、図1及び図2に示すように、台車部41と、台車部41に装着された糸継装置43、糸継用のサクションパイプ44、サクションマウス46、及び吸引空気供給パイプ47(図2)と、を有している。
【0023】
台車部41は、走行方向に間隔を隔てて配置された二つの走行輪41eを第1方向の両端に有している。台車部41の上部及び下部には、1対のガイドローラ41fがそれぞれ設けられている。上部のガイドローラ41fは、案内レール41gにより案内される。
糸継装置43は上糸と下糸の糸継を行う。サクションパイプ44は、水平軸回りに回動して紡績部9にある上糸端を捕捉する。サクションマウス46は、上下方向に移動して巻取部13にある下糸端を捕捉する。
【0024】
吸引空気供給パイプ47は、第1吸引ダクト17の後述する副吸引ダクト17bの各紡績ユニット2に対応する位置に設けられたシャッタ95を開閉する。これにより、副吸引ダクト17bから糸継装置43、サクションパイプ44及びサクションマウス46にそれぞれ吸引用の空気が供給される。
【0025】
(4)玉揚台車
玉揚台車4は、図1、図2及び図3に示すように、紡績ユニット2の正面側に第1方向に沿って走行可能に配置されている。玉揚台車4は、紡績ユニット2から後述するパッケージ載置部21にパッケージ45を搬出するための台車である。玉揚台車4は、紡績ユニット2でパッケージ45が満巻になると、第2走行レール82上を当該紡績ユニット2まで走行し、そこで停止する。玉揚台車4は、図1及び図2に示すように、台車ケーシング85を有している。台車ケーシング85には、サクションパイプ88と、空ボビン供給部材89と、クレードル操作アーム90と、が設けられている。
【0026】
台車ケーシング85は、第1方向の両端に配置された二つの走行輪85aを有している。走行輪85aは、台車ケーシング85の下面の紡績ユニット2から離反する側に配置されている。したがって、玉揚台車4は、紡績ユニット2に離反する側で第2走行レール82に案内される。台車ケーシング85の高さは、紡績ユニット2の高さより低い。具体的には、台車ケーシング85の高さは、紡績ユニット2の糸弛み取り部12の位置より僅かに低い。
【0027】
台車ケーシング85は、ユニットフレーム6に設けられたパッケージ載置部21を上方から覆うように形成されている。したがって、本実施形態では、玉揚台車4が精紡機1の最も外側に配置されている。台車ケーシング85は、棒状部材16が通過可能な断面視C字状に凹んだ通過凹部85bを有している。通過凹部85bは、紡績ユニット2に対向する面に形成され、棒状部材16に加えて棒状部材16を支持する支持部材96も通過可能な大きさを有している。通過凹部85bには、図2のA部に拡大して示すように、棒状部材16により案内される転倒防止用のガイドローラ85cが設けられている。ガイドローラ85cは、棒状部材16を左右から挟んで2個配置されている。
【0028】
サクションパイプ88は、台車ケーシング85に伸縮可能かつ揺動可能に設けられている。サクションパイプ88は、紡績部9に進出して紡績部9から送出される紡績糸10の上糸端を吸い込みながら捕捉する。そして、退入しながら揺動して捕捉した紡績糸10を巻取部13に装着されるボビン48に案内する。サクションパイプ88の案内動作の範囲GLは、図2に二点鎖線で示した範囲である。空ボビン供給部材89は、空のボビン48を巻取部13に供給するために台車ケーシング85に回動自在に設けられている。クレードル操作アーム90は、台車ケーシング85に揺動自在に装着され、巻取部13のクレードルアーム71を揺動させてパッケージ45を取り外すことができる。
【0029】
(5)ブロアボックス
ブロアボックス80には、第1吸引ダクト17、第2吸引ダクト18、及び第3吸引ダクト19が接続されている。ブロアボックス80には、これらの第1吸引ダクト17、第2吸引ダクト、及び第3吸引ダクト19に吸引する空気の流れを発生するための図示しないブロアが搭載されている。
【0030】
(6)ユニットフレーム
ユニットフレーム6は、例えば8個の紡績ユニット2を装着する枠形状の部材である。ユニットフレーム6は、紡績ユニット2を装着するメインフレーム20と、メインフレーム20の正面側に配置されたパッケージ載置部21と、ステップ22と、つま先収納部23と、を有している。
【0031】
(6−1)メインフレーム
メインフレーム20は、鋼材を組んで構成された部材である。メインフレーム20の正面上部には、図2及び図3に示すように、紡績ユニット2のドラフト部7と紡績部9とを支持するための傾斜した支持部20aが形成されている。支持部20aの傾斜角度αは、例えば50度以上70度以下の角度の範囲である。これにより、ドラフト部7及び紡績部9は、従来の精紡機より起立して配置される。この結果、作業通路からドラフト部7及び紡績部9までの距離が短くなり、作業者は、ドラフト部7及び紡績部9をメンテナンスしやすくなる。
【0032】
メインフレーム20の正面中央部には、糸継台車3が走行する走行空間20cが凹んで形成されている。走行空間20cの下部に糸継台車3用の第1走行レール81が第1方向に沿って装着されている。
【0033】
メインフレーム20の背面下部には、作業者の踏み台として使用される背面ステップ20fが形成されている。背面ステップ20fは、作業者が背面側から作業する際に使用される。背面ステップ20fは、正面側のステップ22より高さが僅かに高く設定されている。
【0034】
(6−2)パッケージ載置部
パッケージ載置部21は、図2及び図3に示すように、巻取部13で満巻になったパッケージ45が載置される場所である。パッケージ載置部21は、頭部が切断された円錐台形状のパッケージ45を転がらずに載置することを目的として、断面視多角形状に凹んで形成されている。パッケージ載置部21は、図1に示すように、精紡機1の全長にわたり第1方向に沿って配置されている。また、パッケージ載置部31は、巻取部13側に配置されている。パッケージ載置部21は、図2のB部に拡大して示すように、例えばベルトコンベアの形態のパッケージ搬送部25を有している。パッケージ搬送部25は、載置されたパッケージ45を第1方向の一端側(例えばブロアボックス80側)又は他端側に搬送する。
【0035】
パッケージ載置部21の長手方向側面のうち、複数の紡績ユニット2が配列されている第1側と逆側の第2側の側面21aには、図2のB部に拡大して示すように、パッケージ45の形状に沿うように折り曲げられたパッケージ保護部27が装着されている。パッケージ保護部27の先端は丸められており、パッケージ45を傷つけないようになっている。このようなパッケージ保護部27を設けることにより、パッケージ載置部21に接近したステップ22に作業者が載っても、作業者によりパッケージ45が汚染されにくくなる。また、パッケージ45がパッケージ載置部21に載置されるとき、及びパッケージ搬送部25でパッケージ45が搬送されるとき、パッケージ45が保護される。
【0036】
パッケージ載置部21と巻取部13との間には、玉揚台車4で玉揚する際に使用されるパッケージ案内部28が設けられている。パッケージ案内部28は、紡績糸10が巻き取られたパッケージ45をパッケージ載置部21に案内する。パッケージ案内部28は、巻取部13からパッケージ載置部21に向かって先下がりの傾斜面28aを有している。傾斜面28aの傾斜角度は、30度以上60度以下であり、好ましくは30度以上45度以下である。
【0037】
このような傾斜面28aを有するパッケージ案内部28を巻取部13とパッケージ載置部21との間に設けることにより、巻取中のパッケージ45とパッケージ載置部21上に配置されたパッケージ45とが干渉しなくなる。したがって、パッケージ載置部21に載置されているパッケージ45の状況に関係なく、巻取部13がパッケージ45の巻取動作を行える。このため、精紡機1の紡績効率が向上する。
【0038】
傾斜面28aの角度が60度を超える場合、パッケージ載置部21に載置されたパッケージ45が、巻取部13により巻き取られているパッケージ45の下方に位置する。このため、一般にパッケージ同士の干渉を避けようとすると、精紡機1の高さを高くする必要がある。しかし、本実施形態のように傾斜面28aの角度を60度以下にすると上記のような不具合を回避でき、精紡機1の高さを低くできる。
【0039】
また、傾斜面28aの角度が30度未満である場合、巻取部13により巻き取られたパッケージ45とパッケージ載置部21に載置されたパッケージ45との干渉を避けるためには、巻取部13に対してパッケージ載置部21を大きく離反させなければならない。この結果、精紡機1の奥行き方向の長さが長くなり、作業者の作業性が低下する。しかし、本実施形態のように傾斜面28aの角度を30度以上とすることにより、精紡機1の奥行き方向の寸法を小さくすることができ、作業者の作業性が向上する。
【0040】
通常、満巻のパッケージ45の直径は最大で310mm程度であるので、巻取部13の巻取中心と、パッケージ載置部21に載置されたパッケージの中心位置とを320mmから360mmの範囲にすることにより、パッケージの干渉を防止できる。そして上記の角度範囲に傾斜面28aを設定することにより、精紡機1の奥行き方向の寸法を小さくしかつ高さを低くできる。
【0041】
(6−3)ステップ
ステップ22は、複数の紡績ユニット2との間にパッケージ載置部21が位置するように第1方向に沿って配置されている。すなわち、ステップ22は、パッケージ載置部21の第2側の側面(図2左側面)に配置されている。また、ステップ21は、パッケージ載置部21の高さよりも低い位置に配置されている。ステップ22は、作業者が紡績ユニット2のメンテナンスのために使用する踏み台として使用される。ステップ22は、平坦面で構成され、作業者の足を載置可能なステップ面22aを有している。ステップ面22aには、玉揚台車4が走行する第2走行レール82が配置されている。第2走行レール82は、僅かな厚みの金属製の板状の部材である。ステップ22の内部には、玉揚台車4に電力の供給、各種の信号の通信及び圧縮空気の供給を行うための配線及び空圧配管ホースを通すためのケーブルベア26が配置されている。ステップ22の紡績ユニット2から離反する外側は作業者通路となっている。
【0042】
(6−4)つま先収納部
つま先収納部23は、図2のB部に拡大して示すように、ステップ面22aに載った作業者の足のつま先を収納可能な空間を有している。つま先収納部23は、パッケージ載置部21の下方に入り込むように形成されている。具体的には、つま先収納部23は、パッケージ載置部21の下方に上下方向で重なり合うように形成されている。つま先収納部23の空間は、パッケージ載置部21の第2側の側面に第1側に向けて突出して形成されている。このようなつま先収納部23を設けることにより、ステップ22に載った作業者が紡績ユニット2にさらに接近することができる。これにより、作業者がメンテナンス等の作業を行うとき、作業性を向上させることができる。
【0043】
(7)棒状部材
棒状部材16は、手すりとしての機能と、玉揚台車4の案内部としての機能を有している。棒状部材16は、例えば、ステンレス鋼製のパイプ部材であり,紡績ユニット2から離反した位置に配置されている。これにより、例えば、紡績ユニット2に対してメンテナンス等の作業を行う際に、作業者が棒状部材16に手を置く、又は体を預けて作業を行うことができる。このため、紡績ユニット2に面して作業を行っても作業者が姿勢を安定して作業できるようになる。
棒状部材16の外周面には、図2のA部に示すように、玉揚台車4のガイドローラ85cが左右の両側から接触している。棒状部材16は、図1に示すように、第1方向に沿って配置されている。棒状部材16は、図2に示すように、玉揚台車4のサクションパイプ88の案内動作の範囲GLより紡績ユニット2から離反する側に配置されている。また、棒状部材16は、糸道LPとステップ22の間に配置されている。
このようにして、玉揚台車4の案内を第2走行レール82と棒状部材16により行える。ここで、棒状部材16で玉揚台車4の上部を案内し、第2走行レール82で玉揚台車4の上部を案内することにより、玉揚台車4の紡績ユニット2に対する位置精度が高くなる。このため、玉揚台車4が玉揚位置から精度良く玉揚作業を行うことができる。
【0044】
棒状部材16は、第1方向に間隔を隔てて配置された複数の支持部材96により支持されている。支持部材96は、棒状部材16の下面を固定している。したがって、棒状部材16の上面及び左右面には支持部材96は配置されない。これにより、ガイドローラ85cの配置が可能になる。
【0045】
支持部材96は、例えば4個の紡績ユニット2毎に配置されている。支持部材96は、メインフレーム20の正面に固定されている。支持部材96は肉厚の板状部材であり、内部に第2吸引ダクト18に連通する吸引通路(図示せず)を有している。吸引通路の先端には吸引部としての吸引キャップ96aが、例えば開位置と閉位置とに回動自在に装着されている。この吸引キャップ96aを開位置に回動させると、吸引通路を開放でき、糸屑等を吸引できる。これにより、作業者がメンテナンス作業等で集めた糸屑等の廃棄物を廃棄することができる。
【0046】
また、図1、図2及び図3に示すように、棒状部材16の下方には、棒状部材16に沿って、停止操作部29が配置されている。支持部材96の先端下部には、停止操作部29が通過可能な貫通孔96bが形成されている。停止操作部29は、一端に非常停止ボタン30が連結されたロープ状の部材である。支持部材96から離反する方向に停止操作部29を引っ張ると、非常停止ボタン30が押圧操作された場合と同様に非常停止動作するように、停止操作部29は構成されている。これにより、作業者は精紡機1の正面であればどのような位置にいても非常停止操作を迅速に行える。しかも、停止操作部29は、棒状部材16の下方に配置されるので、作業者が誤って停止操作部29を操作しにくい。
【0047】
(8)吸引ダクト
図2及び図3に示すように、第1吸引ダクト17は、糸継台車3が糸継作業を行うときに発生する糸屑を回収してブロアボックス80に搬送する。第2吸引ダクト18は、糸継作業の前後で発生する糸屑を回収してブロアボックス80に搬送する。第3吸引ダクト19は、ドラフト部7のドラフト中に発生するダスト及び浮遊繊維と、紡績部9による紡績中に発生するダスト及び糸屑等と、を回収してブロアボックス80に搬送する。
【0048】
本実施形態では、上下位置において、第1吸引ダクト17は、糸継台車3の下方に配置されるようにメインフレーム20内に配置されている。また、第2吸引ダクト18は、糸継台車3の上方に配置されるようにメインフレーム20内に配置されている。第3吸引ダクト19は、ドラフト部7及び紡績部9の後方に配置されるようにメインフレーム20内に配置されている。
【0049】
ここで、第2吸引ダクト18と第3吸引ダクト19は、精紡機1の各メインフレーム20に連続して設けられている。一方、第1吸引ダクト17は、メインフレーム20に連続して設けられる主吸引ダクト17aと、副吸引ダクト17bと、連結ダクト17cとにより構成されている。副吸引ダクト17bは、各メインフレーム20に両端が閉塞して設けられている。連結ダクト17cは、主吸引ダクト17aと副吸引ダクト17bとを連結する。主吸引ダクト17aは、糸継台車3の下方に配置され、複数の紡績ユニット2を1組として複数組の紡績ユニット2の第1方向に沿って配置される。副吸引ダクト17bは、第2吸引ダクト18の下方に設けられており、つまり糸継台車3の上方に設けられている。副吸引ダクト17bには、下面に紡績ユニット2に対応する位置に糸継台車3の走行に応じて開閉するシャッタ95が設けられている。
【0050】
(9)メンテナンス作業
このように構成された精紡機1では、紡績ユニット2のメンテナンス作業を行う場合、作業者は、ステップ22に載る。ステップ22に作業者が載るときに、靴のつま先をつま先収納部23に配置することができる。つま先収納部23は、パッケージ載置部21の下方に位置しているので、作業者は可及的に紡績ユニット2に接近できる。このため、作業者の作業効率を高めることができる。しかも、紡績ユニット2の正面に面して棒状部材16が第1方向に沿って配置されている。作業者は、棒状部材16に手をつく又は棒状部材16に体を預けてメンテナンス作業を行うことができる。このため、作業者の作業効率をさらに高めることができる。さらに、紡績ユニット2のドラフト部7及び紡績部9が起立して配置されるので、ステップ22に載った作業者にドラフト部7及び紡績部9がさらに接近して配置される。このため、紡績ユニット2のメンテナンス作業を作業者がさらに行いやすくなる。
【0051】
(10)特徴
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0052】
(A)紡績機としての精紡機1は、複数の紡績ユニット2と、パッケージ載置部21と、ステップ22と、つま先収納部23と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、第1方向に沿って配列され、パッケージ45を巻き取る巻取部13を有している。パッケージ載置部21は、第1方向に沿って配置されている。また、パッケージ載置部は、紡績ユニット2の巻取部13側に配置されている。ステップ22は、複数の紡績ユニット2との間にパッケージ載置部21が位置するように第1方向に沿って配置されている。また、ステップ22は、パッケージ載置部21の高さよりも低い位置に配置されている。ステップ22は、作業者の足を載置可能なステップ面22aを有している。つま先収納部23は、ステップ面22aに載った作業者の足のつま先を収納可能な空間を有している。つま先収納部23は、パッケージ載置部21の下方に入り込むように形成されている。
この精紡機1では、メンテナンス等で作業者がステップ22に載ると、ステップ22の先端側に形成されたつま先収納部23に靴のつま先を収納できる。つま先収納部23はパッケージ載置部21の下方に形成されているので、つま先がパッケージ載置部21の第2側の側面21aより紡績ユニット2に接近した位置になる。このため、ステップ22に載るときに、つま先収納部23の長さ分作業者が紡績ユニット2に接近できるようになる。
【0053】
(B)精紡機1は、パッケージ保護部27をさらに備えている。パッケージ保護部27は、パッケージ載置部21の第2側の側面21a側、すなわち、ステップ22が下方に形成された側に配置され、パッケージ45の形状に沿うように折り曲げられている。これにより、パッケージ載置部21とステップ22との間にパッケージ保護部27が設けられる。このため、パッケージ載置部21に接近したステップ22に作業者が載っても、作業者によりパッケージ45が汚染されにくくなる。また、パッケージ45がパッケージ載置部21に載置されるとき、又はパッケージ載置部21で搬送されるとき、パッケージ45が保護される。
【0054】
(C)精紡機1は、第2走行レール82と玉揚台車4とをさらに備えている。第2走行レール82は、ステップ22上に第1方向に沿って配置されている。玉揚台車4は、第2走行レール82上を走行可能に設けられ、紡績ユニット2からパッケージ載置部21にパッケージ45を搬送するための台車である。これにより、ステップ22上に第2走行レール82が配置されるので、玉揚台車4を設けても、精紡機1全体の構成がコンパクトになる。
【0055】
(D)玉揚台車4の高さは紡績ユニット2の高さより低い。これにより、玉揚台車4が位置している紡績ユニット2に対しても作業者が作業を行える。
【0056】
(E)パッケージ載置部21は、第1方向に沿ってパッケージ45を搬送するパッケージ搬送部25を有している。これにより、パッケージ載置部21に載置されたパッケージ45をパッケージ搬送部25によって第1方向に搬送できる。このため、精紡機1の生産効率が高くなる。
【0057】
(F)精紡機1は、紡績糸10が巻き取られたパッケージ45をパッケージ載置部21に案内するパッケージ案内部28をさらに備えている。パッケージ案内部28は、巻取部13からパッケージ載置部21に向かって先下がりの傾斜面28aを有している。これにより、巻取部13からパッケージ載置部21にパッケージ45が転がりながら移動する。このため、パッケージ載置部21に載置される際にパッケージ45に作用する衝撃を低減できる。
【0058】
(G)紡績ユニット2は、スライバ15をドラフトして繊維束8にするドラフト部7と、ドラフト部7から送られた繊維束8を紡績して紡績糸10を生成する紡績部9と、をさらに有している。ドラフト部7は、紡績ユニット2の上部に配置されている。巻取部13は、紡績部9で生成された紡績糸10をパッケージ45へと巻き取るように紡績ユニット2の下部に配置されている。ステップ22は、紡績ユニット2の高さ方向において、巻取部13より下方に配置されている。
作業者通路から近い位置にステップが配置されている従来の紡績機では、作業者通路に作業者が立っていると、パッケージ載置部に載置されたパッケージに作業者が接触しやすい。しかし、上記のように、ステップ22につま先収納部23が配置されているので、作業者通路に作業者が立っても、パッケージ載置部21に載置されたパッケージ45に接触せずに、紡績ユニット2に作業者が接近することができる。
【0059】
(H)精紡機1は、複数の紡績ユニット2の正面側に複数の紡績ユニット2から間隔を隔てて第1方向に沿って配置された棒状部材16をさらに備えている。これにより、作業者がつま先収納部23の長さ分、紡績ユニット2に接近しても、棒状部材16により作業者の接近が規制され、作業者が紡績ユニット2に誤って接近し過ぎなくなる。
【0060】
(11)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0061】
(a)前記実施形態では、上方から下方に糸道が形成されているが、下方から上方に糸道が形成される紡績機にも本発明を適用できる。
【0062】
(b)前記実施形態では、玉揚台車用の第2案内レールがパッケージ載置部の外側に配置されているが、パッケージ載置部の内側に第2案内レールが設けられる紡績機にも本発明を適用できる。この場合、前記実施形態に比べてステップが紡績ユニットから離反するので、つま先収納部を設けることにより、作業者はさらに紡績ユニットに接近できる。
【0063】
(c)前記実施形態及び変形例では、糸弛み取り部12により紡績糸10を紡績部9から引き出しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、糸弛み取り部12に代えて、公知のデリベリローラ及びニップローラを配置し、2つの回転するローラで紡績糸10をニップし、紡績糸10を紡績部9から引き出すように構成している。この場合でも、巻取動作時に発生する紡績糸10の弛みを解消するために、デリベリローラとニップローラの下流側に糸弛み取り部12を配置してもよい。
【0064】
(d)前記実施形態及び変形例では、パッケージ載置部21にベルトコンベアの形態のパッケージ搬送部を設けたが、パッケージ載置部21にパッケージ搬送部を設けなくてもよい。この場合、巻取部13から玉揚されたパッケージ45を作業者が手作業で回収するようにしてもより。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、ステップを有する紡績機に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 精紡機(紡績機の一例)
2 紡績ユニット
3 糸継台車
4 玉揚台車
5 原動機ボックス
6 ユニットフレーム
7 ドラフト部
8 繊維束
9 紡績部
10 紡績糸
12 糸弛み取り部
13 巻取部
15 スライバ
16 棒状部材
17 第1吸引ダクト
17a 主吸引ダクト
17b 副吸引ダクト
17c 連結ダクト
18 第2吸引ダクト
19 第3吸引ダクト
20 メインフレーム
20a 支持部
20c 走行空間
20f 背面ステップ
21 パッケージ載置部
21a 第2側の側面
22 ステップ
22a ステップ面
23 つま先収納部
25 パッケージ搬送部
26 ケーブルベア
27 パッケージ保護部
28 パッケージ案内部
28a 傾斜面
29 停止操作部
30 非常停止ボタン
41 台車部
41e 走行輪
41f ガイドローラ
41g 案内レール
43 糸継装置
44 サクションパイプ
45 パッケージ
46 サクションマウス
47 吸引空気パイプ
48 ボビン
52 ヤーンクリアラ
70 支持軸
71 クレードルアーム
72 巻取ドラム
80 ブロアボックス
81 第1走行レール
82 第2走行レール
85 台車ケーシング
85a 走行輪
85b 通過凹部
85c ガイドローラ
88 サクションパイプ
89 空ボビン供給部材
90 クレードル操作アーム
95 シャッタ
96 支持部材
96a 吸引キャップ
96b 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って配置され、パッケージを巻き取る巻取部を有する複数の紡績ユニットと、
前記第1方向に沿い、かつ前記紡績ユニットの前記巻取部側に配置されたパッケージ載置部と、
前記複数の紡績ユニットとの間に前記パッケージ載置部が位置するように前記第1方向に沿い、かつ前記パッケージ載置部の高さよりも低い位置に配置され、作業者の足を載置可能なステップ面を有するステップと、
前記ステップ面に載った前記作業者の足のつま先を収納可能な空間を有し、前記パッケージ載置部の下方に入り込むように形成されたつま先収納部と、
を備えた紡績機。
【請求項2】
前記パッケージ載置部の前記ステップが下方に形成された側に配置され、前記パッケージの形状に沿うように折り曲げられたパッケージ保護部をさらに備える、請求項1に記載の紡績機。
【請求項3】
前記第1方向に沿って前記ステップ上に配置された走行レールと、
前記走行レール上を走行可能に設けられ、前記紡績ユニットから前記パッケージ載置部に前記パッケージを搬出するための玉揚台車をさらに備える、請求項1又は2に記載の紡績機。
【請求項4】
前記玉揚台車の高さは前記紡績ユニットの高さより低い、請求項3に記載の紡績機。
【請求項5】
前記パッケージ載置部は、前記第1方向に沿って前記パッケージを搬送するパッケージ搬送部を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の紡績機。
【請求項6】
前記巻取部から前記パッケージ載置部に向かって先下がりの傾斜面を有し、紡績糸が巻き取られた前記パッケージを前記パッケージ載置部に案内するパッケージ案内部をさらに備える、請求項1〜5のいずれかに記載の紡績機。
【請求項7】
前記紡績ユニットは、
スライバをドラフトして繊維束にするドラフト部と、
前記ドラフト部から送られた繊維束を紡績して紡績糸を生成する紡績部と、をさらに有し、
前記ドラフト部は、前記紡績ユニットの上部に配置されており、
前記巻取部は、前記紡績部で生成された前記紡績糸をパッケージへと巻き取るように前記紡績ユニットの下部に配置されており、
前記ステップは、前記紡績ユニットの高さ方向において、前記巻取部より下方に配置されている、請求項1〜6のいずれかに記載の紡績機。
【請求項8】
前記複数の紡績ユニットの正面側に前記複数の紡績ユニットから間隔を隔てて第1方向に沿って配置された棒状部材をさらに備える、請求項1からのいずれかに記載の紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−57272(P2012−57272A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202656(P2010−202656)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】