説明

紡績糸の転がり試験装置

【課題】紡績糸の結束強さを高い信頼性で評価できる技術を提供する。
【解決手段】転がり試験装置1は、湾曲した糸接触表面を有する糸掛け体2と、この糸掛け体2に糸掛けされた結束紡績糸Yの片側を固定するクランプ部3と、転がり試験中に上記の結束紡績糸Yに対して張力を付与するための張力付与部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績糸の転がり試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、釣り糸の耐摩耗試験機を開示する。この耐摩耗試験機は、試験対象の糸を研磨ブロックと往復運動機構により複数回摩擦接触させ、糸切れセンサにより糸切れを検出して、糸切れが生じるまでの往復回数で耐摩耗性を測定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−208663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、糸条の種類として、一般的なリング紡績糸の他に、結束紡績糸なるものが知られている。この結束紡績糸は、周知の通り、繊維束を繊維の巻き付けによって結束させたものである。
【0005】
この結束紡績糸の品質試験として、本願出願人は、上記特許文献1の試験とは全く異なる、オペレータによる下記のような転がり試験(ローリング試験)を実施している。即ち、先ず、結束紡績糸を肩幅程度の間隔をあけて両手で掴んで腿の上に押し当て、この状態で腿の長手方向に結束紡績糸を転がすように往復させることで結束紡績糸に形成された結束部を積極的に解く。このときに結束紡績糸を糸切れせずに往復できた回数をもって、その結束紡績糸の結束強さを評価することとしている。
【0006】
しかし、(a)結束紡績糸をどのくらいの強さで腿に押し当てるか、即ち、転がり試験中の結束紡績糸の張力や(b)結束紡績糸と腿との接触距離、(c)腿の長手方向における結束紡績糸の往復距離は、オペレータごとに看過できないバラツキがあった。このため、上記の転がり試験には改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、紡績糸の結束強さを高い信頼性で評価できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、本願発明の発明者は、鋭意研究の末、紡績糸の結束強さを高い信頼性で評価するには、少なくとも、転がり試験中の紡績糸の張力を安定させること、及び試料と糸掛け体との接触長さが試料によって変化せず一定にすることが不可欠であることを見出し、以下の発明を完成させた。
【0009】
即ち、本願発明の観点によれば、以下のように構成される、紡績糸の転がり試験装置が提供される。即ち、紡績糸の転がり試験装置は、湾曲した糸接触表面を有する糸掛け体と、この糸掛け体に糸掛けされた紡績糸の片側を固定する糸固定手段と、転がり試験中に上記の紡績糸に対して張力を付与するための糸張力付与手段と、を備える。
【0010】
以上のように構成される転がり試験装置を用いて、紡績糸の転がり試験は、例えば以下のように実施する。先ず、オペレータは、上記糸掛け体に対してその長手方向に交差する方向で上記紡績糸を糸掛けすると共に、前記糸固定手段を用いて上記紡績糸の片側を固定する。次に、オペレータは、上記糸掛け体を挟んで前記糸固定手段と反対側で上記紡績糸を把持する。そして、前記糸張力付与手段を作動させた状態、即ち、上記紡績糸に張力が付与された状態で、オペレータは、上記紡績糸の把持した部分を上記糸掛け体の長手方向と平行な方向に往復させる。すると、上記紡績糸は、自身の張力によって前記糸掛け体上に押し当てられた状態で、前記糸掛け体上をその長手方向に沿って、換言すれば上記紡績糸の糸道に対して交差する方向で、転がり、上記紡績糸に形成された結束部が積極的に解かれることとなる。オペレータは、上記紡績糸が糸切れするまでの往復回数を記録し、この往復回数を紡績糸の結束強さの評価の指標とする。
【0011】
上記の転がり試験装置によれば、前記糸張力付与手段の存在により、転がり試験中の上記紡績糸の張力を安定させることができるので、上記紡績糸の結束強さを高い信頼性で評価することが可能となる。
【0012】
上記の紡績糸の転がり試験装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸張力付与手段は、上記紡績糸に対して一定の張力を付与するように構成される。即ち、転がり試験中の紡績糸の張力を安定させることの一態様として、一定の張力を上記紡績糸に対して付与することが挙げられる。
【0013】
上記の紡績糸の転がり試験装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸掛け体は、その長手方向に交差する方向において湾曲した形状とされる。以上の構成によれば、前記糸掛け体に対する上記紡績糸の滑らかな接触が実現される。
【0014】
上記の紡績糸の転がり試験装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸掛け体を挟む位置で上記紡績糸に対して接触する一対の接触手段が設けられる。以上の構成によれば、前記一対の接触手段の存在により、湾曲した形状の前記糸掛け体に対する上記紡績糸の接触距離が安定する。従って、前記糸掛け体に対する上記紡績糸の接触距離の、オペレータ間のバラツキが解消され、もって、上記紡績糸の結束強さの評価の信頼性が向上する。
【0015】
上記の紡績糸の転がり試験装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸張力付与手段は、前記糸固定手段と前記糸掛け体の間に配置される。このように前記糸張力付与手段を前記糸固定手段と前記糸掛け体の間に配置することで、前記糸掛け体を挟んで前記糸固定手段と反対側のレイアウトがすっきりするので、オペレータにとって、上記糸掛け体を挟んで前記糸固定手段と反対側で上記紡績糸を把持し、繰り返し往復させる前述の作業が習得し易くなる。
【0016】
上記の紡績糸の転がり試験装置は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸張力付与手段は、前記糸固定手段と前記糸掛け体との間における上記紡績糸の屈曲を伴って上記紡績糸に対して張力を付与するように構成される。前記糸掛け体を挟んで前記糸固定手段と反対側には、前記糸張力付与手段による上記紡績糸の屈曲の程度の変化を緩和するための湾曲ガイドが設けられる。上記の湾曲ガイドは、以下のようにして使用する。即ち、転がり試験を開始するには、前述の通り、オペレータは、前記糸掛け体を挟んで前記糸固定手段と反対側で上記紡績糸を把持すると共に、前記糸掛け体の長手方向と平行な方向に、その把持した部分を往復させる。この際、オペレータがその把持した部分を上記の湾曲ガイドに沿って往復させることで、前記糸張力付与手段による上記紡績糸の屈曲の程度の変化が緩和される。このように上記の湾曲ガイドによれば、前記糸張力付与手段による上記紡績糸の屈曲の程度の変化が緩和されるので、前記糸張力付与手段をコンパクトに構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の一実施形態に係る結束紡績糸の転がり試験装置の斜視図
【図2】図1に類似する図であって、転がり試験の第一工程を示す図
【図3】図2の正面図
【図4】図1に類似する図であって、転がり試験の第二工程を示す図
【図5】図4の正面図
【図6】図1に類似する図であって、転がり試験の第三工程を示す図
【図7】結束紡績糸の拡大図
【発明を実施するための形態】
【0018】
糸条の種類として一般的に知られているものとして、リング紡績糸と結束紡績糸が挙げられる。本願発明に係る紡績糸の転がり試験装置(以下、単に転がり試験装置とも称する。)は、結束強さという概念が存在する糸条であればその種を問わず試験の対象とすることができる。以下、本願発明に係る転がり試験装置が、上記の結束紡績糸の結束強さの評価に供される場合を一例として説明する。
【0019】
先ず、図7を参照しつつ結束紡績糸なるものを簡単に説明する。即ち、結束紡績糸Yは、糸条に沿って束になった繊維束Y1を繊維Y2の巻き付けによって結束させて構成される。具体的には、繊維束Y1を構成する繊維の端部が繊維Y2として繊維束Y1上に巻き付いている。この繊維束Y1は、ポリエステルやレーヨンなどの合成繊維や、綿糸やウールなどの天然繊維を束にしたものである。なお、結束紡績糸Yが合成繊維の場合は、繊維束Y1を構成する個々の繊維の繊維長が天然繊維の場合と比較して長く、従って、繊維Y2の巻き付きによって形成される結束部Yaの間隔も天然繊維の場合と比較して長くなり、相対的に糸切れし易いとされる。
【0020】
さて、図面を参照しつつ、本実施形態に係る転がり試験装置の構成を説明する。図1及び図3に示されるように、本実施形態に係る転がり試験装置1は、糸掛け体2と、クランプ部3(糸固定手段)と、張力付与部4(糸張力付与手段)と、を主たる構成として備える。
【0021】
上記糸掛け体2は、図2に示されるように、長手方向を有し、この長手方向に交差する方向で結束紡績糸Yが糸掛けされるものである。具体的には、糸掛け体2は、図3に示されるように、上に凸となるように滑らかに湾曲する板材であって、図3の紙面に対して垂直な方向に概ね50cm程度の長さとなるように延在する。本明細書において、「糸掛け体2の長手方向」とは、図1に示されるように、この「糸掛け体2の延在方向」を意味するものとする。また、「糸掛け体2の短手方向」とは、上記「糸掛け体2の長手方向に対して平面視で直交する方向」を意味するものとする。上記の糸掛け体2の湾曲する外表面2a(糸接触表面)には結束紡績糸Yとの間で十分な摩擦力が発生するような生地Xが貼り付けられる。そして、この糸掛け体2は、転がり試験装置1のメインフレーム1aに対してサブフレーム1bを介して固定される。
【0022】
糸掛け体2の短手方向において糸掛け体2から離れた位置には、上記のクランプ部3と張力付与部4を含み、メインフレーム1aに対して固定される糸把持ユニット5が設けられる。
【0023】
上記のクランプ部3は、上記糸掛け体2に糸掛けされた上記の結束紡績糸Yの片側を固定するものである(図2や図3を併せて参照。)。具体的には、クランプ部3は、図1に示されるように、ペダル6を操作することで開閉する糸把持部7を有し、この糸把持部7の前後には糸ガイド8が設けられる。これら糸把持部7及び糸ガイド8は、図3に示されるように、糸掛け体2と概ね同程度の高さに配置される。
【0024】
上記の張力付与部4は、転がり試験中に上記の結束紡績糸Yに対して張力を付与するためのものである(図4や図5を併せて参照。)。具体的には、張力付与部4は、図1に示されるように、クランプ部3と糸掛け体2の間に配置される。張力付与部4は、糸把持ユニット5の図示しないユニットフレームに対して回動自在に支持されるアーム9と、このアーム9の先端に設けられる鼓状のオモリ10と、から構成される。このオモリ10には、転がり試験時、図4及び図5に示されるように、結束紡績糸Yが下側から糸掛けされる。そして、図4及び図5に示されるように、結束紡績糸Yに対して所定以上の張力が付与されてアーム9が上方に若干回動すると、結束紡績糸Yには、クランプ部3と糸掛け体2の間で屈曲された状態で、一定の張力が付与されるようになっている。
【0025】
上記の転がり試験装置1は、更に、一対の糸接触部11(接触手段)と、湾曲ガイド12と、を備える。
【0026】
上記一対の糸接触部11は、糸掛け体2を挟む位置で上記結束紡績糸Yに対して接触するものである(図5を併せて参照。)。具体的には、各糸接触部11は、図1に示されるように、糸掛け体2の短手方向において糸掛け体2に対して隣接するようにサブフレーム1bに固定される。また、各糸接触部11は、図5に示されるように、斜め上方に凸となるように湾曲する板材であって、この糸接触部11の湾曲する外表面11aは、結束紡績糸Yとの間で発生する摩擦力が極力小さくなるように表面処理される。この構成で、図5に示されるように、結束紡績糸Yは、転がり試験装置1の正面視で、糸掛け体2の湾曲する外表面2aと、糸接触部11の湾曲する外表面11aと、の双方に対して共通する接線となる。
【0027】
上記の湾曲ガイド12は、糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側に設けられ、張力付与部4による結束紡績糸Yの屈曲の程度の変化を緩和するためのものである。具体的には、湾曲ガイド12は、図1に示されるように、糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側で、サブフレーム1bの側面に固定される。また、湾曲ガイド12は、下に凸となるように湾曲する板材であって、その両端には、ガイドの終端を明示する終端部12aが形成される。更に、この湾曲ガイド12の湾曲は、湾曲ガイド12と糸掛け体2を介して張力付与部4に至る最短距離が図6の符号a〜cで示される何れの場合においても略一定となるように設定される。
【0028】
次に、本実施形態の作動を説明する。
【0029】
(第一工程)
先ず、オペレータは、図示しないパッケージから結束紡績糸Yを引き出して、図2及び図3に示すように、糸掛け体2に対してその短手方向で上記結束紡績糸Yを糸掛けすると共に、結束紡績糸Yを鼓状のオモリ10に対して下側から糸掛けした上で、クランプ部3を用いて上記結束紡績糸Yの片側を固定する。
【0030】
次に、オペレータは、図2及び図3に示すように、上記糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側で上記結束紡績糸Yを把持する。具体的には、オペレータは、張力付与部4のオモリ10を押し上げない程度の僅かな張力で引っ張りつつ、図2に示すように、糸掛け体2の外表面2aと糸接触部11の外表面11aの境界線13のうち、上記糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側の境界線13の端13aで上記結束紡績糸Yを指Fで把持する。この状態では、結束紡績糸Yは、図3に示すように、クランプ部3側から順に、クランプ部3によって固定され、張力付与部4のオモリ10に対して下側から糸掛けされ、一方の糸接触部11の外表面11aとの接触で若干屈曲され、糸掛け体2の外表面2a上に糸掛けされ、上記糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側の境界線13近傍でオペレータに把持されている。
【0031】
(第二工程)
次に、オペレータは、図4及び図5に示すように、指Fで結束紡績糸Yを把持したまま、指Fを太線矢印Bで示す方向へ、即ち、位置F1から位置F2へと動かして結束紡績糸Yを引っ張る。すると、張力付与部4のアーム9は、太線矢印Aで示すように、図5において反時計回りに回動し、もって、張力付与部4を作動させた状態、即ち、張力付与部4によって上記結束紡績糸Yに張力が付与された状態となる。なお、張力付与部4によって結束紡績糸Yに付与される張力は、図5に示されるように、張力付与部4による結束紡績糸Yの屈曲の角度θと、オモリ10の質量と、によって決定される。
【0032】
(第三工程)
この状態で、オペレータは、図6に示すように、上記結束紡績糸Yの把持した部分を上記糸掛け体2の長手方向と平行な方向に往復させる。具体的には、結束紡績糸Yを把持する指Fを、符号-a→b→c→b→a→b→c→・・・となるように湾曲ガイド12に沿って、両端の終端部12aの間で、往復させる。
【0033】
すると、上記結束紡績糸Yは、張力付与部4によって付与された自身の張力によって前記糸掛け体2上に押し当てられた状態で、前記糸掛け体2上をその長手方向に沿って、換言すれば上記結束紡績糸Yの糸道に対して交差する方向で、転がり、上記結束紡績糸Yに形成された結束部Ya(図7を併せて参照。)が積極的に解かれることとなる。
【0034】
オペレータは、上記結束紡績糸Yが糸切れするまでの往復回数を記録し、この往復回数を結束紡績糸Yの結束強さの評価の指標とする。
【0035】
以上に本実施形態に係る転がり試験装置1の作動を説明した。なお、本実施形態では、前述の湾曲ガイド12の湾曲は、湾曲ガイド12と糸掛け体2を介して張力付与部4に至る最短距離が図6の符号a〜cで示される何れの場合においても略一定となるように設定される。従って、上記の転がり試験中、図5に示される張力付与部4による結束紡績糸Yの屈曲の角度θに変化はない。また、前述したように、張力付与部4によって結束紡績糸Yに付与される張力は、図5に示されるように、張力付与部4による結束紡績糸Yの屈曲の角度θと、オモリ10の質量と、によって決定される。従って、オモリ10の質量は一定であることから、転がり試験中、張力付与部4によってによって結束紡績糸Yに付与される張力は、一定となるようになっている。
【0036】
さらに、試料Yと糸掛け体2の外表面との接触長さは、糸掛け体2の両側の糸接触部11によって定まるので、各試料間での糸掛け体との接触長さが変化することなくほぼ一定とすることができ、試験評価の信頼性に寄与する。
【0037】
(まとめ)
(請求項1)
以上説明したように上記実施形態において転がり試験装置1は、以下のように構成される。即ち、転がり試験装置1は、長手方向を有し、この長手方向に交差する方向で結束紡績糸Yが糸掛けされる糸掛け体2と、この糸掛け体2に糸掛けされた上記の結束紡績糸Yの片側を固定するクランプ部3と、転がり試験中に上記の結束紡績糸Yに対して張力を付与するための張力付与部4と、を備える。上記の転がり試験装置1によれば、前記張力付与部4の存在により、転がり試験中の上記結束紡績糸Yの張力を安定させることができるので、上記結束紡績糸Yの結束強さを高い信頼性で評価することが可能となる。
【0038】
なお、上記実施形態では、転がり試験中の上記結束紡績糸Yの張力が一定とされるが、必ずしも、この張力は一定である必要はない。本明細書において、「安定する」とは、「オペレータ間でのバラツキが少ない」ということを意味する。
【0039】
(請求項2)
上記の転がり試験装置1は、更に、以下のように構成される。即ち、張力付与部4は、上記結束紡績糸Yに対して一定の張力を付与するように構成される。即ち、転がり試験中の結束紡績糸Yの張力を安定させることの一態様として、一定の張力を上記結束紡績糸Yに対して付与することが挙げられる。
【0040】
(請求項3)
上記の転がり試験装置1は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸掛け体2は、その短手方向において湾曲した形状とされる。以上の構成によれば、図3に示されるように、前記糸掛け体2に対する上記結束紡績糸Yの滑らかな接触が実現される。また、この滑らかな接触により、結束紡績糸Yの有する複数の結束部Yaが同時に糸掛け体2の外表面2aに対して接触することとなるので、結束紡績糸Yの結束強さを広範囲で一度に評価することができる。
【0041】
なお、上記実施形態において糸掛け体2は、その短手方向において湾曲した形状としたが、これに限らず、糸掛け体2は、少なくとも、その長手方向に交差する方向において湾曲した形状であれば上記の有益な効果が奏される。
【0042】
(請求項4)
上記の転がり試験装置1は、更に、以下のように構成される。即ち、前記糸掛け体2を挟む位置で上記結束紡績糸Yに対して接触する一対の糸接触部11が設けられる。以上の構成によれば、前記一対の糸接触部11の存在により、湾曲した形状の前記糸掛け体2に対する上記結束紡績糸Yの接触距離が安定する。従って、前記糸掛け体2に対する上記結束紡績糸Yの接触距離の、オペレータ間のバラツキが解消され、もって、上記結束紡績糸Yの結束強さの評価の信頼性が向上する。
【0043】
(請求項5)
上記の転がり試験装置1は、更に、以下のように構成される。即ち、前記張力付与部4は、前記クランプ部3と糸掛け体2の間に配置される。このように前記張力付与部4をクランプ部3と糸掛け体2の間に配置することで、糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側のレイアウトがすっきりするので、オペレータにとって、糸掛け体2を挟んでクランプ部3と反対側で上記結束紡績糸Yを把持し、繰り返し往復させる前述の作業が習得し易くなる。
【0044】
(請求項6)
上記の転がり試験装置1は、更に、以下のように構成される。即ち、張力付与部4は、クランプ部3と糸掛け体2との間における上記結束紡績糸Yの屈曲を伴って上記結束紡績糸Yに対して張力を付与するように構成される。前記糸掛け体2を挟んで前記クランプ部3と反対側には、張力付与部4による上記結束紡績糸Yの屈曲の程度の変化を緩和するための湾曲ガイド12が設けられる。以上の構成によれば、張力付与部4による上記結束紡績糸Yの屈曲の程度の変化が緩和されるので、張力付与部4をコンパクトに構成することが可能となる。
【0045】
なお、上記実施形態では、上記の湾曲ガイド12の両端に往復の折り返し地点を明示する終端部12aが設けられるので、糸掛け体2の長手方向における結束紡績糸Yの往復距離が安定するようになっている。
【0046】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0047】
即ち、例えば、上記実施形態において張力付与部4は、図1に示されるように、回動自在なアーム9と、このアーム9の先端に設けられるオモリ10と、を備え、このオモリ10に対して下側から結束紡績糸Yを糸掛けするように構成した。しかし、これに代えて、例えば、下端がメインフレーム1aに固定され、上端に糸ガイドが形成された引張バネを採用してもよい。
【0048】
また、転がり試験の試験対象たる糸条の種別に応じてオモリ10を質量の異なる他のオモリに交換してもよい。
【0049】
測定器は両面いずれからでも使用可能なので、オペレータの利き手に応じて使用する向き(図2の矢印A、B)を選ぶことが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 転がり試験装置
2 糸掛け体
3 クランプ部
4 張力付与部
Y 結束紡績糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲した糸接触表面を有する糸掛け体と、
この糸掛け体に糸掛けされた紡績糸の片側を固定する糸固定手段と、
転がり試験中に上記の紡績糸に対して張力を付与するための糸張力付与手段と、
を備える、
ことを特徴とする紡績糸の転がり試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の紡績糸の転がり試験装置であって、
前記糸張力付与手段は、上記紡績糸に対して一定の張力を付与するように構成される、
ことを特徴とする紡績糸の転がり試験装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の紡績糸の転がり試験装置であって、
前記糸掛け体は、その長手方向に交差する方向において湾曲した形状とされる、
ことを特徴とする紡績糸の転がり試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の紡績糸の転がり試験装置であって、
前記糸掛け体を挟む位置で上記紡績糸に対して接触する一対の接触手段が設けられる、
ことを特徴とする紡績糸の転がり試験装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の紡績糸の転がり試験装置であって、
前記糸張力付与手段は、前記糸固定手段と前記糸掛け体の間に配置される、
ことを特徴とする紡績糸の転がり試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載の紡績糸の転がり試験装置であって、
前記糸張力付与手段は、前記糸固定手段と前記糸掛け体との間における上記紡績糸の屈曲を伴って上記紡績糸に対して張力を付与するように構成され、
前記糸掛け体を挟んで前記糸固定手段と反対側には、前記糸張力付与手段による上記紡績糸の屈曲の程度の変化を緩和するための湾曲ガイドが設けられる、
ことを特徴とする紡績糸の転がり試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−168708(P2010−168708A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14378(P2009−14378)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】