説明

紡織繊維および織物の再装填可能な仕上げ剤

本発明は、仕上げ剤、仕上げ層、仕上げた紡織繊維および織布ならびに紡織繊維および織布を仕上げる方法に関する。本発明により製造された布地は、複数回、活性物質、または活性成分を受け入れられ、塗布の機能により、周りの媒体に等方的方法で、または非等方的方法で隣接している層に付着できる。その仕上げ層は、膨張性および活性物質を受け入れる性能を特徴とする。ポリマー層は、膨張中に、1つ以上のゲスト分子を受け入れ可能なナノポケットを形成する。活性物質は仕上がった織物が運ばれる間に、体温、湿度、摩擦および移動に助けられ、放出、脱着する。シクロデキストリンに基づく既知のインテリジェントバイオ生地とは対照的に、本発明によれば、より広い範囲の活性物質の布地表面への複数回塗布が可能である。活性物質は、装填された布地の着用時に付着され、着用者に皮膚的または経皮的に吸収され、目的部位に所望の効果を及ぼす。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、紡織繊維および織物の仕上げ剤配合物および再装填可能な仕上げ剤、ならびに上記機能層を紡織繊維および織物に適用する方法に関する。同様に、本発明は、本発明による方法に基づいて繰返し装填できる仕上げ剤により処理されまたは得られた紡織繊維および織物に関する。
【0002】
被覆または仕上げ加工した織物の市場は、織物部門において今日おそらく最も急速に成長している。被覆または仕上げ加工した織物の機能性に対する要求がますます厳しくなりつつあり、一方で同時に、より厳しい環境および消費者保護の法律が入手できる化学物質の範囲により大きな制限を加えている。それ故、仕上げ剤は、選択が制限される出発物質を用いて新規でおよび/または改良された機能を提供する新製品を生み出すことを求められている。文献および実地手法は、汚れ反発力、水および/または油反発力、UV耐性、耐磨耗性および耐薬品性に関する紡織繊維の表面特性に影響を及ぼし、改良する複数の被覆剤について記載している。これらの機能のすべてにおいて、織物製品の着用者をいくつかの外部の影響に対して保護すること、すなわち材料を着用者の身体から遠ざけることに重点が置かれる。
【0003】
用語「インテリジェント布地」とは、被覆剤/仕上げ剤を含み、身体に近接して着用され、衣類が着用されている間に着用者の皮膚に与えられ、あるいは仕上げ剤から放出される活性な治療用または化粧用成分を有する衣類を提供することを可能にする既知の布地を含めて今日既に使用されている用語である。経済的に興味深い活性成分の範囲は、大きいものと考えられ、神経皮膚炎患者のための軟膏中のコルチゾンおよび喫煙離脱者のためのニコチンから皮膚クリーム中の抗皺剤まで広がる。上記のインテリジェントバイオ仕上げ剤を介した皮膚への鎮痛薬、ホルモン、ビタミン、または日射しよけの連続的供給は既に提案されている。抗菌性物質を、不快な汗の臭いの発生を防ぐために、下着、靴下、スポーツ衣料またはシューズ等の布地に使用できることも知られている。
【0004】
以下で外に特に規定がなければ、活性成分および活性物質は医薬品および健康物質と見なされる。薬事法は、前者を疾病、苦痛、身体障害または病徴を治癒、軽減、防止または検出するために、ヒトまたは動物の体に適用する物質および物質の組成物として定義している。健康物質は、生活のすべての肉体的および精神的状況の全般的な意味の健康を高め、心と体と精神を自然と調和させるために使用する物質である。以下において健康物質は、また、化粧品として理解すべきでもある。上のカテゴリー化に基づいて医薬品の中に含まれるべき「自然薬品」および伝統薬の両方に由来するいくつかの薬剤的に活性な物質をそれらのそれぞれの用途と共に以下にまとめる:
乗り物酔い:スコポラミン、シンナリジン、メクロジン;
禁煙:ニコチン;
血管障害:ヘパリン;
枯草熱:セチリジンを含む抗ヒスタミン剤;
筋肉/関節痛:ジクロフェナク;および
狭心症:トリニトログリセリン。
【0005】
織物仕上げにおけるインテリジェント仕上げ剤を製造するには基本的に2つの異なる方法が存在する。一方においては、装填可能なかご形分子、例えば、シクロデキストリンまたはデンドリマーが、被覆すべき表面に塗布され、またはそれぞれの活性成分と混合されたポリマーバインダー系(例えば、ポリアクリレートまたはポリメタン)が、織物基材に塗布される。かご形分子によって機能化された層は、被覆物質を作成済みのポリマーバインダーと活性物質との混合物からなる層とは対照的に、繰返し装填することができ、織物仕上げの過程において仕上げ剤として塗布されたものである。
【0006】
前述の製造法は、両方とも、主として対象用途、特に製造されるべき仕上げ層の機能に関係する不都合を伴う。
【0007】
かご形分子で製造された層に対する適用の範囲は、分子の大きさおよび幾何学的形状、ならびに組み込まれる物質に対する親和性によって大きく制限され、そのため非常に狭い限界内にセットできるに過ぎない。シクロデキストリンは、例えば、極性のOH基をもつ外側と疎水性の内側とを有する中空構造の6〜8個のグルコース単位を含むオリゴ糖である。その結果、小さな親油性の活性物質を組み込むことができるのみで、そのために目的物およびシクロデキストリン含有仕上げ剤の普遍性に大きな制約を与える。そのため、通常は活性物質が既に装填されているかご形分子を、仕上げ用液体と混合し、織物仕上げ機によって織物に塗布する。得られた機能性および上記の仕上げた織物の予定した用途の対象を考えると、販売のリスクを低く抑えるために非常に限定された量しか製造されない。これによって製品は非常に高価となり、製品範囲は小さいままとなる。「かご形分子」で製造した層のポリマーバインダー系と比較した利点は、問題の衣類を洗濯した後にそれらを再装填できることと関係があり、これは使用した仕上げ剤に一部は依存する。
【0008】
この再装填性は、直接活性物質と混合したポリマーバインダー系を塗布している間は与えられない。官能性を決定する化学物質または活性成分は、ここでは仕上げ工程の間に布地物品に塗布され、次いでほとんどの場合、熱で固定される。目的機能の大部分はこの固定工程の途中で既に失われる。とりわけ、活性成分は、熱的に分解され、もしくは改変され、結合され、または固定手段での反応によって分解され、あるいはそれらは蒸発し、加熱媒体と共に(例えば去っていく空気と共に)消散する。織物に残っている残りの活性成分は、この方法で加工した健康層が耐洗濯性ではなく、再装填できないため、それぞれの衣類に対して限られた期間のみの使用の機能性となる。以上説明した不都合のために、この方法で機能化した織物に対する市場は非常に限られており、織物仕上げ業者にとっての販売リスクは高い。
【0009】
本発明の目的は、現布地市場の製品および利用できる方法に内在する不都合を伴わない、仕上げ剤配合物、再装填可能な仕上げ剤、仕上がった紡織繊維および織物、ならびに紡織繊維および織物を仕上げるための方法を提供することである。
【0010】
この目的は、新規な仕上げ剤配合物、新規な仕上げ方法、新規な仕上げ剤およびその新規な仕上げ剤で処理した紡織繊維および織物を用いることによって達成される。特別に選択された化学物質は、そのいくつかは布地産業における使用にとって例外的であるが、とりわけ以下の事柄を達成することを可能にする:
i)新規な仕上げ剤は、例えば長期間の使用の後、または対応する衣類が洗濯された後、さまざまな物質を繰返し装填することができ、2つの別々に制御できる機能性を本発明により仕上げた1つの織布の中に組み合わせることを可能とする;
ii)意図した用途によって、ゲスト物質として主に親油性が優勢な活性成分を吸収することを可能にし、後者を再び周りの媒体に全方向に等しく放出するか、または局所的に方向付けられた物質の流れにより非等方的に直ぐ隣に接している層に放出することを可能にする機能的表面(ゲスト/ホスト系)を織布上に実現する。
【0011】
本発明による仕上げ剤を実現するため、既存の方法および布地の仕上げに対して新しい方法、例えば、布地に塗布された仕上げ剤配合物のUV硬化の両方を使用できる。
【0012】
本発明による仕上げ剤は、活性成分放出コーティング、またはいわゆる「薬物送達系」として、および/または有害成分取り込み層として設計し、使用できる。
【0013】
本発明の基本的な特徴の1つは、ゲスト/ホストの原理に従い、最も広い範囲の応用の可能性を有するホスト系を提供し、さまざまな活性成分またはゲスト分子を繰返しおよび一時的に装填できる仕上げ剤または仕上げ層を、紡織繊維または織物に塗布することである。布地仕上げ業者により塗布されるホスト層は、例えば顧客自身が塗布できるゲスト分子のための担体である。顧客(例えば、既製品衣料メーカー、化学品を使用するクリーニング屋または着用者)は、したがって、一般にそれぞれの織物または衣類の機能を本人自身が決定できる。これは、架橋性ポリマーバインダーを、架橋性スペーサー物質、界面活性剤(乳化剤、分散剤またはそれらの組合せ)および一般的な多官能性架橋剤の使用、ならびに任意の触媒の使用を組み合わせて使用することにより可能となる。繊維もしくは繊維表面に固定された後、上記の化学物質からなる仕上げ層は、活性物質を受け入れるために必要なホスト系を形成する。
【0014】
生成された仕上げ剤の膨張性能は、本発明を理解する点から見て重要である。好ましくは親油性に変性されたポリマー化合物および架橋性の「触糸」またはスペーサー分子の使用により、プロトン性極性物質および/または非プロトン性極性物質により膨張できるものよりむしろポリマー層が生じる。このポリマー層が膨張するとき、仕上げ層中に確率論的なナノポケット(分子の大きさと関係し、使用したスペーサーに依存する空間の広がり)が生じる。これらのナノポケットは、それらの空間的構造および極性を受け入れられるべきゲストの分子の大きさに調節できるので1つまたは複数のゲスト分子を受け入れることができる。ナノポケットは、好ましくは500ナノメートルの最大サイズを有する。1つまたは複数のゲスト物質、すなわち受け入れられる活性物質は、この方式で仕上げられた織物が着用されたとき、体温、湿度、摩擦および移動の助けにより再び放出され脱着する。活性物質の種類により、それらは着用者の皮膚により、皮膚的にまたは経皮的に吸収され、意図した場所に所望の効果を及ぼすことができる。
【0015】
架橋性界面活性剤の併用は、一方で主に親油性活性物質に対する層の親和性を、他方でヒトの皮膚に対する仕上げ層の生理学的挙動を決定する仕上げ剤成分の熱力学的に誘導された空間的な自己組織化を生じる。
【0016】
仕上げ層の生成に続いて即座に、ナノポケットは、膨張していない仕上げ層中にいわゆる崩壊形で存在する。仕上げ層を固定した後に存在する可能性のあるナノポケットの形成は、最初に、吸着される活性物質または好ましい実施形態における活性物質の混合物の水性エマルジョンであり得る湿気および吸着される物質、または吸収される物質の混合物と接触して起こる。ポリマー層を形成する量の比率および化学物質の選択は両方とも仕上げ層を通して活性物質を受け取り、付着させる管理パラメータを意味する。
【0017】
ナノポケットに加えて本発明による仕上げ層には、ミクロ孔および/またはメソ孔をさらなる構造として与えることができる。このために、例えば、COまたはNを分離する物質を、仕上げ剤配合物を製造する間に混合することができ、および/または非反応性の蒸発可能な溶媒を加えることができる。放出ガスまたは逃避する非反応性溶媒は、乾燥および/または固定の過程の間に、仕上げ層にミクロまたはメソ毛細管(透過クラスター)を生じ、そのミクロまたはメソ孔のサイズは、1〜25μmの範囲である。かくのごとくに大幅に拡大される有効表面は、塗布される活性物質の吸着または脱着挙動に著しく影響する。
【0018】
かくのごとく製造される機能性仕上げ剤の別の基本的な特徴は、仕上げ層を繰返し装填する能力および活性物質に特有のその活発なナノポケットの形成である。この機能は、何よりも先ず仕上げ層に存在するスペーサー物質の種類および濃度により決定される。
【0019】
本発明による仕上げ剤の別の機能は、仕上げ剤配合物中にかご形分子を混合することによるか、ナノポケットを組み込むポリマー層を既に与えられている本発明による再装填可能な布地にそのかご形分子を別々に塗布することによって獲得できる。既知のシクロデキストリンに加えて、β−グルカンおよびゼオライトを特記しなければならない。β−グルカンは、酵母の製造の途中の廃棄物として形成される多糖類構造のポリマーである。
【0020】
グルカン製品から脂肪およびタンパク質物質を除去した後、グルカンをかご形分子として使用しなければならない。ゼオライトは、水含有構造ケイ酸塩であり、一方でその格子構造中にさまざまなカチオンを保持し、他方でゼオライト粒子の間の隙間にゲスト分子を保持できる。
【0021】
2つのホスト系(ナノポケットおよびかご形分子の活発な形成)は、一方ではナノポケットを形成する仕上げ層の構成比率による異なる活性物質の受け入れに関して区別され、他方では使用されるかご形分子の機能および構造特性ならびにそれらの仕上げ剤成分との相互作用により区別される。例えば、かご形分子の荷電優位性(アニオン性、ノニオン性、カチオン性)は、使用される仕上げ剤成分と共に活性物質を吸収するその能力に影響する。これらのパラメータは、ゲスト分子に対する吸収または脱着の優先を決定する特性、例えば極性、親和性、幾何学的および空間的構造などを決定する。
【0022】
仕上げ剤化学物質およびそれらの混合比率の正確な選択に加えて、ホストを含む化学物質に合わせて調整する乾燥および固定の条件が、ホスト系のナノポケット構造の形成に対して極めて重要である。ホストを形成する化学物質は、ドレッシング液すなわち仕上げ用配合物を生じるために最初の段階で一緒に混合する。このために、主要成分は、好ましくは架橋性、脂肪変性(C〜C18)で水乳化したアクリル、エポキシまたはウレタンポリマーからなる少なくとも1つのポリマー化合物の形で提供される。化学物質は、次に、一方で少なくとも1つの末端反応性基を有する分子状「触糸」を含有し、他方でスペーサー機能を果たすスペーサーとして加えられる。分子状「触糸」またはスペーサーの化学構造は、ポリエーテル鎖、例えば、好ましくはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ブロックポリマー、および/または例えば末端にヒドロキシル、アミノ、カルボニル、カルボキシル、酸アミド、イソシアネート、N−メチロールまたはメトキシ−N−メチロール(α−アミノアルキル化生成物)官能基を有するC〜C18の鎖を含む。
【0023】
少なくとも1つの多官能性人工樹脂化合物を、耐洗濯性、膨張性能および仕上げ層のナノポケット構造を決定するための支援で重要な役割を演じる架橋剤(α−アミノアルキル化製品、例えば、メトキシル化エチレンカルバミドまたはメラミン化合物)として作用する別の化合物としてドレッシング液に好ましくは添加する。
【0024】
成分の架橋を触媒する物質として、触媒、例えば塩化マグネシウム、モノ−およびポリカルボン酸または酸分離化合物としてのエステルを使用する。
【0025】
仕上げ層の親和性および生理的挙動を調整するために、1つの界面活性剤または複数の界面活性剤の混合物を該液体中に組み込む。界面活性剤は、一般的には、アニオン性物質および非イオン性物質、例えば、クエン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、脂肪変性ソルビタン誘導体(例えば、スパンおよびトゥイーンシリーズからの乳化剤)、セタリルグルコシド、オレイン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリルならびにシロキサンポリグリコールエーテルおよび/またはシロキサンポリグルコシドであり、これらのHLB値(親水性−親油性バランス)は3〜15の範囲である。
【0026】
仕上げ層に対する膨張効果を有するガス分離(ブローガスとしてのCOおよびN)および非反応性物質が、特定の目的のために、例えばピークの高い装填および高い放出速度が必要な場合に、任意で使用される。この目的は、望ましくない臭い物質の吸着および脱着と密接に関係する。仕上げ層のための望ましいミクロ/メソ孔透過構造は、有機のCOおよび/またはNを分離するブローガス物質(例えば、アセト酢酸、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2−メチルプロパン))、無機のCO分離物質(例えば、酸分離触媒と組み合わせた炭酸水素ナトリウム)を、沸点が60〜200℃の範囲、好ましくは120℃と判定される極性で非反応性の膨潤溶媒(例えば、酢酸エチル、メチルグリコールアセテート、ジグリコールジメチルエーテル)と共に加えることによって達成される。
【0027】
手順の2番目のステップにおいては、ホスト化学物質を含有するドレッシング液が、標準的な工業的塗装技術、例えばパッド染色、コーティングまたは吹付け塗りを用いて塗布される。ホスト系の洗濯耐久性を増大させるために、反応性基を含有するプライマー層とも呼ばれる接着剤層を、特に合成繊維材料に対して予め塗布できる。これらのプライマー層は、例えば国際公開第01/75216号パンフレットから知られている。プライマー層の塗布は、ホスト層塗布に先立つ手順ステップである。ホスト層を担持する織物を意図した塗布により、一般的に適用される塗布系、例えばスロップパディング(slop padding)を用いて、例えばそれらの親和性が異なる(より親油性であるかより親油性でない)差異のある作用を発揮する2つのホスト層を塗布できる。
【0028】
ナノポケット構造を発生させるために重要な3番目の手順ステップは、含浸された織物を乾燥し(最大で30%の残留水含量)、次いで仕上げ層を固定するステップを含み、それらは乾式固定法(120〜180℃で)および湿式固定法(15〜40℃で)の両方を用いて実施できる。仕上がった織物は、50℃と150℃の間の温度で30〜180秒間、工業用機械、例えばテンターフレームまたはホットフルーを用いて乾燥させる。仕上げ層を固定させる間、採用されるポリマー/架橋系によっては、熱および/またはUV放射反応装置を好ましくは使用する。熱による固定は、120℃と200℃の間、好ましくは140〜160℃の温度、および1〜5分の反応時間で起こる。UV硬化ポリマーを使用するときは、ポリマーの種類および反応凝固体の受ける放射入力によって0.5〜60秒、好ましくは1〜3秒が必要である。UV硬化ポリマーを使用する主な利点は、織物基材への耐洗濯層の固定が低温で起こり得ることである。その結果、機能層は、層を形成する化学物質が塗布されているとき、さもなければよく起こるゲスト物質の熱破壊反応および/または蒸発なしで、活性物質を装填できる。
【0029】
以下の事例は、本発明による好ましい仕上げ剤配合物、ナノポケット形成性仕上げ層の製造、および望ましい機能に対するそれらの有効性についての選択された実施例を示す。
【0030】
(実施例1:ナノ構造透過クラスターを発生させる仕上げ層)
予め浄化し、漂白した210g/mの平方メートル重量の混合綿織物(綿75%、PES25%)に、仕上げ液を含浸させると、その成分が、その織物の乾燥段階中にナノポケット、すなわちナノ構造の浸透クラスターを形成する。ポケットを含有しない織物コーティングを、再装填できる薬物送達系および例えば望ましくない臭い物質のための純粋な吸着層としての両方に使用できる。
【0031】
織物表面に塗布される仕上げ剤配合物は、乾燥した織物重量に対して11%の質量分率を有する。織物に仕上げ剤成分を含有する液体を含浸させた後、その織物は、120℃で120秒間乾燥する。
その仕上げ剤配合物は、以下成分を含有する:
【0032】
【表1】

【0033】
Dicrylan ASは、ERBA社により販売されている固形分40%のアクリレート水性分散体であり、その他の配合成分と組み合わせたときソフトな低刺激性のコーティングを生ずる。
Glucan P20は、架橋性のプロポキシル化グルコースであり、活性作用物質(ゲスト)が後に適用されるようにホスト系が生み出すナノポケットを形成するためのスペーサーとしての役割を果たす。
Lyofix CHNは、仕上げ剤成分を架橋させる人工樹脂(部分エーテル化ヘキサメチロールメラミン樹脂)であり、その他の配合成分および触媒(MgCl)と組み合わせたとき洗濯しても落ちない織物コーティングを生じる。
この層は、150℃で3分間かけて固定する。
【0034】
1種類または複数種の活性物質を含有する水性エマルジョンに浸したとき、このようにして組み立てた層は、活性物質(1つまたは複数)が装填されたナノ構造の透過クラスターを形成できる。
【0035】
(実施例2:ゲスト物質に対して動態的調整ができるナノポケット)
30%の綿と70%のポリアミドからなり、165gの平方メートル重量を有する煮沸して漂白した混合織物に、織物を製造した後で塗布するゲスト物質(すなわち活性物質)のためのホスト系に相当するコーティング部分とも称される以下の仕上げ剤配合物を含浸により塗布した。繊維表面に固定された仕上げ剤は、未処理の繊維の乾燥重量に対して8%の質量分率を有する。このコーティング部分を含有する仕上げ液を混合織物に含浸させた後、この織物を130℃で60秒間乾燥し、乾燥過程で形成されるナノポケットを含有する仕上げ層は、150℃で180秒かけて固定する。その含浸液は以下の成分を含有する:
【0036】
【表2】

【0037】
Subitol ES(Bezema AG)は、アニオン界面活性剤に基づく架橋およびブロッキングの助剤である。
Dicrylan ASは、紡織繊維材料の水性コーティングのための化学的/熱的架橋が可能な非イオン性ポリアクリレート分散体である。
Pluriol P600(BASF)は、約600g/molの平均モル質量を有するポリプロピレングリコールであり、発泡を抑え、そして溶解性を与え、極性を変化させ、コンシステンシーを修正するために使用される。
【0038】
Lyofix MLF(ERBA)は、セルロースおよびその合成繊維との混合物の寸法安定性仕上げ剤用の、非イオン性で比較的低ホルムアルデヒドの部分的にエーテル化したヘキサメチロールメラミン樹脂である。メラミン系の従来の架橋剤と比較して、これは低いホルムアルデヒド含量および高い緩衝効果を有しており、良好な洗濯およびアイロン/収縮値、良好な初期効果および非常に良好な耐久性を生じさせる。
【0039】
親油性健康物質のモデル物質としてのイソオクタノールを20%含む水性エマルジョンに12時間さらした後、この仕上げ液によって生じた仕上げ層は、層の質量に対して最大16%のオクタノールの吸収を示す。その仕上げ層を、50%の水/エタノール溶液で3回の装填および抽出をした後、最初に測定した16%のオクタノールの取り込みが再現された。
【0040】
この実験により、最終消費者でさえ親油性物質を含む仕上げ層を繰返し装填することができ、その人の必要性を反映する仕上げ層の機能をその人が自由に選択できることが示された。
【0041】
(実施例3:神経皮膚炎患者のためのナノポケットを備えた機能化された仕上げ剤)
230gの平方メートル重量を有するポリエステルおよびライクラを含むニット織物を、染色前に繊維処理剤を除去するために化学的に浄化し、次いで染色する。ニット織物およびその後の衣類の裏の一面を被覆する塗布系(スロップパディング技法)を用いて、その染色し乾燥したニット織物にコーティング部分を塗布する。そのコーティング部分は、ホスト系として、ゲストとしての親油性活性物質、例えばオレガノまたはゴボウの根の抽出物のフェノールカルボン酸、ファルネソールまたはγリノレン酸(月見草油)などを吸収できる。仕上げ層の機能は、その衣類を着用する人により塗布する活性成分が選択されることによってのみ判定される。オレガノまたはゴボウの根の抽出物には、殺菌および静菌効果があり、一方ファルネソールには静菌効果があるだけであり、そして月見草油は、神経皮膚炎により誘発される皮膚のかゆみを軽減する。ナノポケット含有コーティング層は、ニット織物に下記の仕上げ液を含浸させ、続いて120℃で80秒間乾燥させ、160℃で180秒間固定させることによって組み立てる。塗布した仕上げ層の質量は、ニット織物の乾燥重量に対して12%に相当する。層成分とその濃度を以下に掲げる。
【0042】
【表3】

【0043】
Invadin PBN(ERBA)は、エトキシレート化脂肪アルコールおよび脂肪族エーテルアルコールからなる界面活性製剤であり、水および油反発性仕上げ剤用の特別な架橋剤である。
Perapret HVNは、BASF社から提供されるセルロース繊維およびその合成繊維との混合物を含む織物またはニットウェアを仕上げるための熱架橋が可能なアニオン性のポリアクリレート分散体である。
Pluronic PE3100は、プロピレンオキシドとエチレンオキシドの共重合によって製造されたBASF社の製品であり、低発泡性界面活性剤として使用される。
Drapal GE202(Akzo Chemie)は、部分エステル化枝分かれカルボン酸と疎水性アルキル基および親水性エーテル基とを有する乳化特性をもったコポリマーである。
【0044】
Lyofix MLF(ERBA)は、セルロースおよびその合成繊維との混合物の寸法安定性仕上げ剤用の、非イオン性で比較的低ホルムアルデヒドの部分的にエーテル化したヘキサメチロールメラミン樹脂である。メラミン系の従来の架橋剤と比較して、これは低いホルムアルデヒド含量および高い緩衝効果を有しており、良好な洗濯およびアイロン/収縮値、良好な初期効果および非常に良好な耐久性を生じさせる。
【0045】
上記の処方により加工した仕上げ層に、水性オレガノまたはゴボウの根の抽出物およびファルネソールを含有するエマルジョンを、コーティング層を持つニット織物の面の一方だけに吹き付けることによって装填した。吹付けの12時間後、ニット織物の一部分を穏やかに洗浄し、乾燥した。活性成分を含有するニット織物の洗浄部分と未処理のニット織物部分を菌に犯された寒天ゲルの上に置き、調湿キャビネット中に30℃で3日間放置した。
【0046】
3日後、未処理のニット織物の部分は菌の培養によって大きく増大し、一方仕上げ剤を持ち、ゴボウの根の抽出物およびファルネソールを装填したニット織物部分は、活性物質の脱着を経由した試験片によって覆われた寒天層上で菌の増殖を完全に停止させた。
【0047】
この実施例は、ホスト層の装填およびこの場合は意図した応用の機能として殺菌および静菌効果を発揮するゲスト物質の脱着を実証している。
【0048】
(実施例4:臭い吸収効果を有する仕上げ剤)
予め洗浄した後、30%の綿と70%のポリエステルとからなる混合織物を、染色し乾燥する。その織物表面を、以下に特定する組成を有する仕上げ層を塗布することによって機能化する:
【0049】
【表4】

【0050】
Subitol LS−Nは、チュービンゲンのCHT社により販売されている相乗作用界面活性剤混合物に基づくアニオン性の低発泡性架橋剤である。
Methocell 311は、DOW Europe S.A.製のセルロースエーテルである。
Knittex FPC(ERBA)は、セルロース物品およびそれらの混合物の低ホルムアルデヒド、煮沸洗濯耐性で、アイロンがけのいらない仕上げのための変性グリオキサール架橋剤に基づく非イオン性反応物架橋剤である。
Knittex 触媒MOF(ERBA)は、好ましくはセルロース物品に対して良質な仕上げ剤を塗布するために使用するマグネシウム塩系の液体酸供与体である。
アゾビスイソブチロニトリルは、N分離膨張剤として使用する。
【0051】
仕上げ液中に含まれる化学物質は、一方で親油性物質を吸収するために適するナノポケット構造および極性の形成を確実にし、他方で吸着剤の急速な吸着および脱着のために必要な層の空隙率を確保する。機能層を組み立てるため、織物には上記の仕上げ液を含浸させ(液吸収80%)、110℃で180秒間乾燥する。その層は、その後テンターフレーム上での150℃3分の縮合を経て固定する。そうでない場合は普通の吸着された物質がバクテリアの攻撃にさらされることを防ぐために、仕上げ層には、少量のファルネソール(仕上げ層の重量に対して約2%)を装填する。
【0052】
ファルネソールを装填した後、臭いが強烈な、例えばレストランまたはレストランの厨房で出くわす類の物質を吸着するために、実施例4に記載の仕上げ剤を使用する。実施例4による仕上げ剤を施したレストラン作業員の作業衣またはこの種の女性または男性の外出着は3日間着用した後でさえ臭いに邪魔されることはない。上記のファルネソールの臭い吸収特性は、衣類を繰り返し洗濯した後でさえ保持され、ただし、その衣類または仕上げ層は各洗濯の後にファルネソールを装填しなければならない。
【0053】
(実施例5:ナノポケットおよびかご形分子を有する2成分仕上げ剤)
100%ポリアミドからなるニット織物を、繊維軟化剤を除去した後染色し、乾燥する。その後第1ステップで、そのニット織物にナノポケットを形成する化学物質を含浸させ、120℃で2分間乾燥する。手順の第2ステップにおいて、カルボキシル化により変性したアニオン性グルカン(かご形分子)を含有する懸濁液を、かご形分子が銀錯体を前もって装填されている片側だけのスロップパディングにより塗布する。これに続いて、官能性が変動する装填の優劣性(非イオン性ナノポケットホストおよびアニオン性かご形分子ホスト)によって異なる2つのホスト系(ナノポケットおよびかご形分子)を乾燥し化学固定した。未処理のニット部分に対して、ニット織物部分に塗布されたナノポケット形成仕上げ剤部分は10%を成し、装填したグルカンのそれは1%を成す。手順の第1ステップで塗布されるドレッシング液中の残りが72%の水分の成分を以下に掲げる:
【0054】
【表5】

【0055】
Bermocoll E230FQ(Akzo Nobel)は、水性製品のコンシステンシーおよび安定性を増す非イオン性の、水溶性セルロースエーテル(エチルヒドロキシエチルセルロースの低粘度品)である。
Pluronic P3500(BASF)は、ポリプロピレングリコールとエチレンオキシドとのブロック重合体であり、主として非イオン界面活性剤として使用される。
【0056】
手順の第2ステップでその後スロップパディングにより衣類の保持面の一方だけに塗布されるグルコース懸濁液は、以下のものからなる:
【0057】
【表6】

【0058】
この仕上げ剤は、乾燥したうろこ状のすなわちすぐに感染する皮膚を持つ着用者が、皮膚と接して着用する衣料品のための多機能な層をもたらす。それは銀を取り込んだグルカンかご形分子の顕著な殺菌機能を有しており、皮膚は、また、静菌効果を生ずるナノポケット中に装填された活性成分によって、滑らかさがもどり、潤いが与えられる。この目的を達成するために、ナノポケットを含有する機能層に、亜麻仁油、カルバミド、γリノレン酸およびファルネソールを含有する水性エマルジョンを12時間にわたって装填し、ヒトの皮膚を模倣したゲル上での付着を数日間にわたって調べた。フランツ型拡散セル中の上記活性物質の4日間の脱着の後、ナノポケット構造中に最初に存在していた活性物質のわずか約17%しか検出することができなかった。予想通り、活性物質部分の残りの83%は、ヒトの皮膚を模倣した拡散ゲルの中であった。仕上げ層の上記の多機能性に基づき、皮膚と接近して着用される衣料におけるその使用は、神経皮膚炎患者にとって全く理想的である。
【0059】
(実施例6:その他のナノポケットおよびかご形分子を有する2成分仕上げ剤)
100%ポリアミドからなるニット織物を、予め洗浄した後、染色してすすぎ、タンニンによる後処理にかける。第1ステップにおいて、乾燥したニット織物を、実施例5と類似のナノポケットを形成する化学物質で仕上げる。後の手順ステップにおいて、銀ゼオライトの懸濁液を吹き付ける。その後の乾燥および縮合によって、2つのホスト系(ナノポケットおよび銀ゼオライト)がニット織物上に直ちに固定される。その塗布量は、実施例5で定めた量と同じ様に選択した。手順の第1ステップで塗布した化学物質は、残りの75%の水分と共に塗布した。ニット織物に吹き付けた銀ゼオライト含有液は、以下のものからなる:
【0060】
【表7】

【0061】
2つのホスト系からなる仕上げ層の機能性は、実施例5で述べた意図した適用に帰できる。装填されていないか、他の物質(銀以外の)を装填したゼオライトを使用することにより、その他の機能を発生させることが可能である。
【0062】
熱的におよび/またはUVもしくは青色光で硬化する仕上げ剤の場合、活性成分および活性物質(ゲストまたは薬物)を受け入れるホスト系は、熱的におよび/またはUVもしくは青色光で硬化するプレポリマーまたはモノマー、ならびにスペーサー機能および界面活性剤を含む少なくとも1つの成分からなる。このようにして構造化されたホスト系は、活性成分および活性物質を含有する水性エマルジョンにより膨潤することができ、エマルジョンに含まれている活性成分および活性物質を吸着し、再び放出できる。
【0063】
界面活性剤は、3と16の間、好ましくは8と12の間で変動するHLB値を有する反応性基含有モノマーまたはポリマーである。代表的なものとしては、ソルビタンラウレートまたはステアレート、モノおよびジグリセリド、エトキシル化および/またはプロポキシル化C〜C20化合物または10〜30個のEO単位を有するビニルもしくはアリル−エーテルアルコキシレートであって、主に求核反応性基、例えばアミノおよびヒドロキシル官能基と付加または縮合生成物を形成するものが挙げられる。
【0064】
仕上げ層の膨張を確定する助けをするスペーサー物質は、一般型が、RG−RS−RGのものである。RGは、UVまたは青色光硬化反応性基またはそのような反応性基と架橋する官能基に相当し、RSは、スペーサー物質を特徴付ける残基、例えばポリエーテル、ポリエステルまたはビニル鎖に相当する。
【0065】
【化1】

【0066】
スペーサー物質の親水性、疎水性を決定する残基RSの鎖長は、nおよびxによって決められ、ここでnは、好ましくは5を超えて30より小さく、xは、好ましくは2と4の間である。
【0067】
(実施例7:UV硬化した静菌性仕上げ剤)
前処理(脱サイズおよび漂白)後、170gの平方メートル重量を有する綿とポリエステルからなる織物を、染色して乾燥する。その織物に、続いて、健康活性成分および「ミクロポケット」を形成するコーティング成分を含浸させる。その化学固定は、その織物がUV硬化により乾燥した後でのみ起こる。UV硬化を使用することにより、ナノポケット発生仕上げ剤成分は、健康活性物質を、その化学的変質または熱的に誘発される物質の損失を心配する必要なく、仕上げ層を製造している間に既に使用することが可能となる。
【0068】
静菌効果を有する以下の仕上げ剤の配合物は、このような例を示す:
【0069】
【表8】

【0070】
仕上げ液は、織物に、フーラードを用いて75%のピンチオフ効果で塗布し、テンターフレーム内で110℃で2分間乾燥する。
テンターフレームを通過直後に仕上げ層をUV硬化にかける。層の硬化は、保護雰囲気下のUVチャネル内で2.5秒間続ける。
このようにして仕上げた織物は、やや疎水性で静菌作用があることを特徴とする。その静菌作用は、問題の衣類を洗濯した後ファルネソールで再度装填し直すことができる。
【0071】
(実施例8:UV硬化性、再装填可能な仕上げ被覆)
予め洗浄し、染色した180g/mの平方メートル重量を有するポリアミドの織物に、色堅ろう度を改良するために5g/lのRewin RT(BEZEMA AG)の溶液を含浸させる。その前処理し、乾燥した織物に、第2ステップで、水性エマルジョンの形の仕上げ剤配合物をテンターフレームフーラード上で含浸させる。そのエマルジョンの製造および組成について以下で説明する。
【0072】
エマルジョンは次の組成で製造する:
【0073】
【表9】

【0074】
OTA480は、プロポキシレートトリメチロールプロパントリアクリレートであり、UCB社により販売されている。
Superonic PE/F108は、Unicema社のビニルエーテルアルコキシレート(約14,000g/mol)である。
UVR6105は、Dow社のエポキシ樹脂の名称である。
【0075】
水とSuperonic PE/F108とを互いに十分に混合する。OTA480、UVR6105、Pluronic PE6200、エチルヒドロキシエチルセルロース、ソルビタンモノラウレートおよび2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノンの混合物を少しずつこの混合物に加える。
【0076】
テンターフレームフーラード上で布地物品の乾燥重量に対して80%の液体塗布で含浸させた織物を、その後120℃で2分間乾燥し、乾燥後UVチャネルを通して仕上げ層を固定させる。UVチャネル中の反応時間は、5.5kW/mの特定の放射出力で2.5秒間である。UVチャネルは、一方ではアクリルのラジカル硬化途中の望ましくない酸化作用を避けるため、他方ではオゾンの形成を抑えるために、好ましくは窒素、COまたはアルゴン等の保護ガスを流す。
【0077】
このようにして製造された織物仕上げ剤は、優れたホスト特性によって区別され、言い換えると、ホスト層の良好な膨張性能および親油性物質に対する高い親和性を特徴とする。記載されている方法で組み立てられた層は、ホスト層1グラム当り23mgのイソオクタノール(治療および/または化粧用活性物質のモデル物質)という特定物質の吸収を示す。もう1つの基本的なホスト特性の特徴は、それぞれの衣料品が選択された後のホスト層の再装填である。当該仕上げ層の再装填能は、5回の洗濯の後にイソオクタノールに対してまだ最初の吸着能力の82%を示す。
【0078】
UV硬化性仕上げ層の機能に関する特性に加えて、通常は行われる高温の固定が省かれるために、それらが高い費用効率で製造されることに言及する必要がある。UV硬化性仕上げ成分の使用により、所望の活性物質を、その化学的変質または熱により誘発される物質の損失を心配する必要なく、仕上げ層を製造している間に既に使用するか加えることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性ポリマーバインダー、界面活性剤および一般的な多官能性架橋剤を含む紡織繊維と織物の仕上げ剤を製造するための仕上げ剤配合物であって、該組成物が、架橋性スペーサー物質からなり、かつ、好ましくは親油性に変性したポリマーバインダーと共に、プロトン性極性および/または非プロトン性極性物質により膨張可能なナノポケットを有する繰返し活性物質を装填できるポリマー仕上げ層を製造できることを特徴とする仕上げ剤配合物。
【請求項2】
ポリマーバインダーが、架橋性、脂肪変性で、水乳化した、C〜C18アクリル、エポキシ、酢酸ビニル、ビニルピロリドンの各ポリマーおよびそれらのブロックポリマーまたはウレタンポリマーの群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項3】
ポリマーバインダーが、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して40〜80%、好ましくは50〜65%の割合で存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項4】
多官能性人工樹脂化合物、好ましくはα−アミノアルキル化生成物、例えばメチロール化および/またはメトキシル化エチレンカルバミドまたはメラミン化合物などが、架橋剤として添加されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項5】
架橋剤が、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して5〜40%、好ましくは10〜20%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項6】
スペーサー物質が、以下の群:ポリエーテル鎖、好ましくはポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ブロックポリマーおよび/または好ましくは末端にヒドロキシル、アミノ、カルボニル、カルボキシル、酸アミド、イソシアネート、N−メチロールもしくはメトキシ−N−メチロールの各官能基を有するC〜C18の鎖から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項7】
スペーサー物質が、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して5〜40%、好ましくは10〜25%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項8】
架橋触媒として、次の群:塩化マグネシウム、モノおよびポリカルボン酸または酸分離化合物としてのエステルからの物質が添加されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項9】
架橋触媒が、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して1〜8%、好ましくは2〜4%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項10】
HLB値が3〜15の範囲のアニオン性および非イオン性物質が界面活性剤として添加されており、後者が次の群:クエン酸グリセリル、ラウリン酸グリセリル、脂肪変性ソルビタン誘導体、好ましくはスパンおよびトゥイーンシリーズからの乳化剤、セタリルグルコシド、オレイン酸ポリグリセリル、ステアリン酸ポリグリセリルならびにシロキサンポリグリコールエーテルおよび/またはシロキサンポリグルコシドから選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項11】
界面活性剤が、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して2〜25%、好ましくは5〜8%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項12】
仕上げ層を製造している間に、仕上げ層−繊維複合材料中の透過構造の発生および空間的拡大を制御するために、COおよび/またはNを分離し、および/または非反応性である膨張作用を有する物質が添加されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項13】
COおよび/またはNを分離するブローガス物質が、アセト酢酸、2,2’−アゾビス−イソブチロニトリルおよび2,2’−アゾビス−(2−メチルプロパン)からなる群からの有機物質、および/またはCOを分離する無機の炭酸水素ナトリウムを酸分離触媒と組み合わせて含むことを特徴とする、請求項12に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項14】
60℃と200℃の間、好ましくは120℃の沸点を有する、好ましくは酢酸エチル、メチルグリコールアセテートおよび/またはジグリコールジメチルエーテルが、極性で非反応性の膨潤溶媒として加えられることを特徴とする、請求項12に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項15】
膨張性物質が、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して1〜15%、好ましくは2〜5%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項16】
シクロデキストリン、デンドリマーおよび/またはグルカンからなる群からのかご形分子を含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項17】
かご形分子が、製造される仕上げ層の乾燥物質含量に対して1〜20%、好ましくは8〜15%の割合で存在することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項18】
100nm〜400nmのUV範囲、または400nm〜800nmの可視範囲の光により架橋できることを特徴とする、前記請求項のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項19】
熱的におよび/またはUVもしくは青色光で硬化したプレポリマーまたはモノマー、ならびにスペーサー機能を有する少なくとも1つの成分および界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項18に記載の仕上げ剤配合物。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の仕上げ剤配合物を用いて加工され、プロトン性極性および/または非プロトン性極性物質により膨張させることができ、膨張した状態で活性物質を繰返し装填できるナノポケットを表わすことを特徴とする、紡織繊維および織物のための仕上げ剤。
【請求項21】
ナノポケットが、それらの空間的拡大に対して確率論的分布を示すことを特徴とする、請求項20に記載の仕上げ剤。
【請求項22】
ナノポケットの大きさの上限が500nmであることを特徴とする、請求項20に記載の仕上げ剤。
【請求項23】
ミクロ孔とメソ孔の大きさが1〜25μmの範囲であるミクロまたはメソ毛細管を示すことを特徴とする、請求項20に記載の仕上げ剤。
【請求項24】
シクロデキストリン、デンドリマーまたはグルカンあるいはそれらの混合物からなる群からのかご形分子を含むことを特徴とする、請求項20〜23のいずれか一項に記載の仕上げ剤。
【請求項25】
銀ゼオライトを含むことを特徴とする、請求項20〜24のいずれか一項に記載の仕上げ剤。
【請求項26】
請求項20〜25のいずれか一項に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法であって、請求項1〜19のいずれか一項に記載の少なくとも1つの仕上げ剤配合物を使用することを特徴とする方法。
【請求項27】
仕上げ剤配合物が、紡織繊維および織物に標準的な工業的塗布技術、例えばパッド染色、コーティングまたは吹付けを用いて塗布し、次いで乾燥し、固定させることを特徴とする、請求項26に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項28】
仕上がった繊維および織物を、50℃と150℃の間の温度で30〜180秒間、通常の工業用機械、例えばテンターフレームまたはホットフルーを用いて乾燥することを特徴とする、請求項27に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項29】
仕上げ層を固定させるとき、使用したポリマー/架橋系に応じて、好ましくは熱および/またはUVもしくは青色光放射反応装置を使用することを特徴とする、請求項27または28に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項30】
熱固定が、120℃と200℃の間の温度、好ましくは140〜160℃で起こることを特徴とする、請求項29に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項31】
化学固定が、織物がUVもしくは青色光硬化により乾燥した後に行われることを特徴とする、請求項29に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項32】
100nm〜400nmのUV範囲または400nm〜800nmの可視範囲の光が固定のために使用されることを特徴とする、請求項31に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項33】
アクリレート系仕上げ層が保護雰囲気下で固定されることを特徴とする、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
活性物質が、固定化前に仕上げ剤成分に既に添加されていることを特徴とする、請求項31〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
特に合成繊維材料のホスト系の洗濯耐久性を増大させるために反応性基を含有するプライマー層を塗布する、プライマー層の塗布を仕上げ層の塗布に先立って行うことを特徴とする、請求項26〜34のいずれか一項に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項36】
かご形分子を仕上げるべき布にさらに塗布することを特徴とする、請求項26〜35のいずれか一項に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項37】
完全に固定された仕上げ層を、プロトン性極性および/または非プロトン性極性物質、好ましくは活性物質の水性エマルジョンを用いて膨張させ、その間に仕上げ層中のミクロポケットに活性成分を装填することを特徴とする、請求項26〜36のいずれか一項に記載の紡織繊維および織物の仕上げ剤を製造する方法。
【請求項38】
紡織繊維および織物を含む群から選択される担体材料、および該担体材料に塗布された請求項20〜25のいずれか一項に記載の仕上げ剤からなる布地物品。
【請求項39】
織布として設計されており、少なくとも片側に前記請求項20〜25のいずれか一項に記載の仕上げ剤が施されていることを特徴とする、請求項38に記載の布地物品。
【請求項40】
第2の側に、シクロデキストリン、デントリマーもしくはグルカンまたはそれらの混合物からなる群からのかご形分子を含む仕上げ剤が施されていることを特徴とする、請求項39に記載の布地物品。
【請求項41】
第2の側に、銀ゼオライトを含む仕上げ剤が施されていることを特徴とする、請求項40に記載の布地物品。
【請求項42】
少なくとも1つの好ましくは親油性の活性物質を繰返し装填できることを特徴とする、請求項38〜41のいずれか一項に記載の布地物品。
【請求項43】
少なくとも1つの好ましくは親油性の活性物質が装填されていることを特徴とする、請求項38〜42のいずれか一項に記載の布地物品。
【請求項44】
少なくとも1つの活性物質が、オレガノまたはゴボウの根の抽出物のフェノールカルボン酸、ファルネソールまたはγリノレン酸(月見草油)、親油性鎮痛薬、ホルモンまたはビタミン、スコポラミン、シンナリジン、メクロジン、ニコチン、ヘパリン、抗ヒスタミン剤、ジクロフェナク、トリニトログリセリンの群から選択されることを特徴とする、請求項42または43に記載の布地物品。
【請求項45】
塗布された仕上げ層の質量が、布地の乾燥重量に対して1%と10%の間、好ましくは2%と4%の間であることを特徴とする、請求項38〜44のいずれか一項に記載の布地物品。

【公表番号】特表2008−506865(P2008−506865A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521768(P2007−521768)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/CH2005/000419
【国際公開番号】WO2006/007753
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(507022167)シューラー テクスティル アーゲー (2)
【Fターム(参考)】