説明

索道設備の椅子のシートクッションおよび/またはバッククッションを加熱する方法およびこれに適した椅子

本発明は、索道設備、特にチェアリフトの椅子のシートクッションおよび/またはバッククッション(4,5)を加熱する方法に関する。この方法は、椅子が索道設備の駅に停止している間にシートクッションおよび/またはバッククッションに一体に設けた電気加熱装置(7)によりシートクッションおよび/またはバッククッションを加熱することを特徴としている。すなわち本発明は、電気作動式加熱装置(7)から成る椅子(3)にも関わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、索道設備の椅子のシートクッションおよび/またはバッククッションを加熱する方法およびこれに適した椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チェアリフトの形態の索道設備は知られている。この場合、搬送ロープには多数の吊り手が設けられ、これら吊り手はそれぞれ一人または複数の人間を搬送するための椅子を担持している。
【0003】
乗客を風や悪天候から保護するようにしたロープウェーとは異なり、チェアリフトは特に寒さが厳しいときに快適性が少ない。低温時には特に椅子のシートクッションおよびバッククッションがかなり冷却されるので、椅子の利用は乗客にとって不快なことがある。従来は、乗客が乗り込む前に索道設備の係員が冷えたクッションをカバー等で覆うことでこれに対処していた。しかしながら、椅子のクッションへのカバーの取り付け取り外しは面倒であり、利用者の要求を完全に満たすものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、チェアリフトの椅子の座り心地を著しく向上させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、独立請求項の構成により解決される。本発明の有利な他の構成は従属項に記載されている。
【0006】
本発明による方法は、椅子が索道設備の駅に停止している間にシートクッションおよび/またはバッククッションに一体に設けた電気加熱装置によりシートクッションおよび/またはバッククッションを加熱することを特徴としている。すなわち、本発明によれば、索道設備の各椅子は電気作動式加熱装置を有し、電気作動式加熱装置は椅子が索道設備の駅に停止している間に作動する。
【0007】
これにより、シートクッションおよび/またはバッククッションは乗客が乗り込む前に乗客が快適と感じる温度へ予め昇温される。この方法の利点は、椅子クッションの加熱が自動的に行なわれ、リフト係員に対し付加的な作業コストが必要ないことにある。
【0008】
本発明による方法の有利な構成によれば、椅子が索道設備の駅構内にある特定の時間の間だけ加熱装置に給電する。特に、給電の継続時間および/または強さは属地外気温に応じて制御する。これは、椅子が冷えていれば冷えているほど椅子のクッションを強く加熱することを意味している。
【0009】
加熱装置への給電は、シートクッションおよび/またはバッククッションの温度が所定の最大温度値に達したときにを中断する。この最大温度値も同様に属地外気温に応じて決定する。
【0010】
すでに述べたように、有利には各椅子のシートクッションおよびバッククッション内に適当な加熱装置が配置されている。この加熱装置は各椅子のクランプ体または吊り手に配置されたパンタグラフと結合されている。索道軌道設備の駅に進入すると、パンタグラフは索道設備内に設けられた接触装置と接触し、その結果加熱装置に電流が流れてクッションを加熱する。
【0011】
パンタグラフはローラ接触子を有していてもよいし、滑り接触子を有していてもよい。ローラ接触子および滑り接触子はそれぞれ対応的に構成された接触装置と協働する。接触装置は搬送ロープまたは引っ張りロープに沿って配置される導電軌条として構成されているのが有利である。有利な構成では、エネルギー伝送は誘導連結の形態で無接触に行なわれる。この場合、適当な装置により引っ張りロープに沿って交番電界が発生し、交番電界は椅子の適当な装置により受容され、加熱装置の作動に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の一実施形態を図面を用いて詳細に説明する。図面と以下の説明から、本発明の他の特徴、利点、適用範囲が明らかになる。
【0013】
図1は典型的な吊り手1の概略図である。吊り手1はクランプ体2を介して搬送ロープ6と結合されている。吊り手には複数の人間のための椅子が固定されている。椅子はシートクッション4とバッククッション5とを有している。
【0014】
図2に概略的に図示したように、シートクッション4は該シートクッションに一体的に設けた、電気的に作動する加熱マット7を有している。加熱マット7は電気接続部8を有し、電気接続部8は吊り手1の内部をクランプ体2の領域まで案内するのが有利である。加熱マット7はクッション部9によって取り囲まれており、クッション部9はカバー10、たとえば合成皮革からなるカバー10を有している。
【0015】
図3は索道設備の駅に設けた転向滑車または駆動滑車12を図示したものである。搬送ロープ6は転向滑車または駆動滑車12により適宜その走行方向11を転向せしめられる。図3の右上に図示したように、吊り手1を配置したクランプ体2はパンタグラフ(正の電流端子と負の電流端子とで示した)を有している。加熱マット7への給電は低電圧直流電流により行なうのが有利である。もちろん交流電流を使用してもよい。椅子が索道軌道設備の駅に進入すると、パンタグラフ13は導電軌条14と接触する。導電軌条14には適宜低電圧直流電圧が印加されている。直流電圧はパンタグラフ13と電気接続部8とを介して加熱マット7に達し、吊り手1が転向滑車または駆動滑車12のまわりを走行して導電軌条14の領域を再び離れるまで加熱マット7を加熱する。この時間内で椅子のシートクッション4およびバッククッション5とは所定の温度Tへ加熱される。
【0016】
なお、個々の加熱マットはそれぞれヒューズを備えており、特に温度ヒューズおよび/または過電流ヒューズを備えている。
【0017】
電流の強さと通電時間とは属地外気温に応じて制御することができ、したがってシートクッション4またはバッククッション5に対してはどのような場合も所定の温度値が達成される。
【0018】
シートクッション4およびバッククッション5が加熱されると、乗客は乗り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】担持ロープに固定されている索道軌道設備の椅子の概略図である。
【図2】椅子のシートクッションの概略構成図である。
【図3】索道軌道設備の転向滑車または駆動滑車の概略平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
索道設備の椅子のシートクッションおよび/またはバッククッションを加熱する方法であって、椅子(3)が索道設備の駅に停止している間にシートクッションおよび/またはバッククッション(4、5)に一体に設けた電気加熱装置(7)によりシートクッションおよび/またはバッククッション(4、5)を加熱することを特徴とする索道設備の椅子の加熱方法。
【請求項2】
特定の時間の間だけ加熱装置(7)に給電することを特徴とする請求項1に記載の索道設備の椅子の加熱方法。
【請求項3】
給電の継続時間および/または強さを属地外気温に応じて制御することを特徴とする請求項1または2に記載の索道設備の椅子の加熱方法。
【請求項4】
シートクッションおよび/またはバッククッション(4、5)の温度が所定の最大温度値に達するやいなや加熱装置(7)の給電を中断することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子の加熱方法。
【請求項5】
索道設備の停止時に加熱装置(7)の給電を中断することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子の加熱方法。
【請求項6】
搬送ロープまたは引っ張りロープ(6)に連結可能なクランプ体(2)と吊り手(1)を介して結合されている、索道設備の椅子(3)であって、椅子(3)が電気作動式加熱装置(7)を有していることを特徴とする索道設備の椅子。
【請求項7】
加熱装置(7)が椅子(3)のシートクッション(4)および/またはバッククッション(5)内に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の索道設備の椅子。
【請求項8】
クランプ体(2)または吊り手(1)に、加熱装置(7)と電気的に結合される少なくとも1つのパンタグラフ(13)が設けられ、パンタグラフ(13)が索道設備の駅構内に設けられた少なくとも1つの接触装置(14)と協働することを特徴とする請求項6または7に記載の索道設備の椅子。
【請求項9】
パンタグラフ(13)がローラ接触子を有していることを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子。
【請求項10】
パンタグラフ(13)が滑り接触子を有していることを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子。
【請求項11】
接触装置(14)が搬送ロープまたは引っ張りロープに沿って配置される導電軌条を有していることを特徴とする請求項6から10までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子。
【請求項12】
パンタグラフ(13)と接触装置(14)とが誘導式エネルギー伝送装置の一部であることを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子。
【請求項13】
個々の加熱マットがそれぞれヒューズを備えていることを特徴とする請求項6から8までのいずれか一つに記載の索道設備の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−519725(P2006−519725A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503942(P2006−503942)
【出願日】平成16年3月8日(2004.3.8)
【国際出願番号】PCT/AT2004/000075
【国際公開番号】WO2004/080776
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(500579431)インノヴァ・パテント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (31)
【Fターム(参考)】