説明

紫外線を発光する高強度応力発光材料とその製造方法、ならびに、その利用

【課題】特有の結晶構造を有する発光体によって、強い発光を示す発光体の提供。
【解決手段】多面体構造の分子により構成される母体構造に、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが挿入され、その一部が、希土類金属、遷移金属、III族の金属、またはIV族の金属の、いずれかのイオンで置換された構造を有する応力発光材料。該応力発光材料は、三斜晶構造、正方晶構造或いは三方晶構造を有する発光体で紫外線の発光を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力発光材料とその製造方法、ならびに、その利用に関するものであって、特に、紫外線を発光する高強度応力発光材料とその製造方法、ならびに、その利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、外部から様々な刺激(外部刺激)を受けることによって、可視光を発光する現象(いわゆる蛍光現象)が知られている。このような蛍光現象を示す物質は、蛍光体と呼ばれ、ランプや照明灯、ブラウン管やプラズマディスプレイパネル等の各種ディスプレイ、および顔料等の様々な分野で用いられている。
【0003】
また、外部刺激として、紫外線、電子線、X線、放射線、電界、または化学反応によって発光現象を示す物質(発光体)は、数多く知られている。また、近年、本発明者らは、摩擦、剪断力、衝撃力、振動等の機械的な外力を加えることによって生じた歪みにより発光する応力発光材料を見出しており、その評価方法および利用方法を開発している。
【0004】
具体的には、本発明者らは、(1)スピネル構造、コランダム構造、またはβアルミナ構造を有する応力発光体(特許文献1を参照)、(2)ケイ酸塩の応力発光体(特許文献2および3を参照)、(3)欠陥制御型アルミン酸塩の高輝度応力発光体(特許文献4を参照)、(4)エポキシ樹脂を含む複合材料および当該複合材料の塗布膜により作製した試験片に、圧縮、引張、摩擦、およびねじり等の機械的な力を加えることによって、応力分布を可視化評価する方法(特許文献4および5を参照)、(5)ウルツ鉱型構造と閃亜鉛鉱型構造とが共存する構造を有し、酸化物、硫化物、セレン化物、およびテルル化物を主成分として構成される高輝度メカノルミネッセンス材料(特許文献6を参照)等を開発している。
【0005】
上記の応力発光体は、肉眼でも確認できる程の輝度で、半永久的に繰り返し発光することが可能である。また、これらの応力発光体は、応力発光体を含む構造体における応力分布を測定するために用いることができる。
【0006】
応力分布の測定方法としては、例えば、(1)応力発光体を用いた、応力または応力分布の測定方法、(2)応力分布の測定システム(特許文献7を参照)、(3)機械的な外力を直接光信号に変換して伝達する発光ヘッド、(4)上記発光ヘッドを用いた遠隔スイッチシステム(特許文献8参照)等が挙げられる。
【特許文献1】特開2000−119647公報(平成12年(2000)4月25日公開)
【特許文献2】特開2000−313878公報(平成12年(2000)11月14日公開)
【特許文献3】特開2003−165973公報(平成15年(2003)6月10日公開)
【特許文献4】特開2001−49251公報(平成13年(2001)2月20日公開)
【特許文献5】特開2003−292949公報(平成15年(2003)10月15日公開)
【特許文献6】特開2004−43656公報(平成16年(2004)2月12日公開)
【特許文献7】特開2001−215157公報(平成13年(2001)8月10日公開)
【特許文献8】特開2004−77396公報(平成16年(2004)3月11日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の応力発光体は、発光波長が500nm以上(緑色〜赤色の発光波長域)では強い発光(高輝度発光)を示す。一方、それよりも短い発光波長域(紫外線〜青紫色の発光波長域)で強い発光を示す発光体は、これまでに知られていない。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、特有の結晶構造を有する物質を用いて、高強度応力発光材料およびその製造方法を提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、従来、開発されていない紫外線の発光を示す高強度応力発光材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、応力発光材料の結晶構造に着目して、強い発光を示す応力発光材料について鋭意に検討した。その結果、その結晶構造(母体構造)の最小単位が、四面体、六面体、および八面体等の多面体構造の分子から構成され、これら多面体構造の分子の間にアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが挿入されることにより、上記結晶構造の大きな空間と、フレキシブルに結合した柔軟な構造とを有する応力発光材料が、強い発光を示すことを見出した。さらに、このフレームワーク構造(母体構造)が、1次元、2次元、および3次元のいずれかの構造であり、特定の金属イオンを発光中心として添加した応力発光材料が、強い紫外線発光を示すことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる応力発光材料は、多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された基本構造を有し、上記空間に挿入された、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部が、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンからなる群より選択される、少なくとも1種の金属イオンによって置換されていることを特徴としている。
【0011】
上記基本構造は、自発歪を有し、上記の多面体構造の分子は、四面体構造の、AlO、SiO、PO、およびBOのうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0012】
また、上記基本構造は、P−1空間群に属する三斜晶構造を有することが好ましい。
【0013】
上記P−1空間群に属する三斜晶構造は、アノーサイト様構造であることが好ましい。
【0014】
さらに、上記基本構造は、P−42m空間群に属する正方晶構造を有することが好ましい。
【0015】
上記P−42m空間群に属する正方晶構造は、オケルマナイト様構造であることが好ましい。
【0016】
加えて、上記基本構造は、R−3空間群に属する三方晶構造を有することが好ましい。
【0017】
上記応力発光材料は、紫外線の発光を示すことが好ましい。
【0018】
上記基本構造は、下記一般式(1)〜(6)、
1−xAlSi ・・・(1);
1−xAlSi ・・・(2);
(X1−x)(SiAl1−x)AlSi ・・・(3);
Ca1−x―yAl2―xSi2+x ・・・(4);
2−xMgSi ・・・(5);
3−x(PO ・・・(6);
(ただし、式中、MおよびNは、2価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Ca、Sr、Ba、MgまたはMnであり、XおよびYは、1価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Li、Na、またはKであり、0≦x,y≦0.8である。)
のいずれか1つの一般式で示されることが好ましい。
【0019】
本発明にかかる応力発光材料においては、母体構造に形成された上記空間に、イオン半径が異なる複数の、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが挿入されていることが好ましい。
【0020】
これにより、単一のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を備える場合よりも、応力発光材料の歪み(自発歪)が大きくなる。自発歪を有する応力発光材料は、自発歪を有さない応力発光材料よりも、発光しやすい。このように、応力発光材料の自発歪を調整すれば、応力発光材料を容易に発光させることができる。
【0021】
上記希土類金属、遷移金属、III族の金属、およびIV族の金属の含有量は、0.1mol%以上10mol%以下の範囲内であることが好ましい。
【0022】
上記含有量は、上記応力発光材料の発光に大きく影響するが、上記含有量を上記範囲内に設定することにより、応力発光材料を効果的に発光させることができる。
【0023】
また、上記希土類金属イオンは、Eu、Dy、La、Gd、Ce、Sm、Y、Nd、Tb、Pr、Er、Tm、Yb、Sc、Pm、Ho、およびLuからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであり、上記遷移金属イオンは、Cr、Mn、Fe、Sb、Ti、Zr、V、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ta、およびWからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであり、上記III族の金属イオンが、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであり、上記IV族の金属イオンが、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであることが好ましい。
【0024】
さらに、上記希土類金属イオンがCeイオンであって、上記III族の金属イオンがTlイオンであって、上記IV族の金属イオンがSnイオンまたはPbイオンであることが好ましい。
【0025】
本発明にかかる応力発光材料においては、上記空間に、少なくともCeイオンが挿入されていることが好ましい。これにより、Ceイオン、または、Ceイオンと他のイオンとの混合物が発光中心となり、上記応力発光材料は、紫外線発光を示すことができる。
【0026】
また、本発明にかかる応力発光材料は、Ca1−yCeAlSi(ただし、0.001≦y≦0.1である。)で示されることが好ましい。
【0027】
また、本発明にかかる応力発光材料は、Sr1−yCe(PO(ただし、0.001≦y≦0.1である。)で示されることが好ましい。
【0028】
また、本発明にかかる応力発光材料の製造方法は、多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された基本構造を形成する工程と、上記空間に挿入されたアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部を、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属、およびIV族の金属からなる群より選択される、少なくとも1種の金属イオンによって、置換する工程とを含むことを特徴としている。
【0029】
さらに、上記製造方法は、母体構造に形成された上記空間に、イオン半径の異なる複数のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを挿入する工程を含むことが好ましい。
【0030】
本発明にかかる応力発光体は、上記応力発光材料を形成してなることを特徴としている。
【0031】
また、上記応力発光体は、上記応力発光材料と高分子材料とを混合してなることが好ましい。
【0032】
本発明にかかる応力発光材料の利用方法は、上記応力発光材料を、1次元分散させることを特徴としている。
【0033】
また、上記応力発光材料の利用方法は、上記応力発光材料を、2次元的に分布させることを特徴としている。
【0034】
さらに、上記応力発光材料の利用方法は、上記応力発光材料を、3次元的に分布させることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明にかかる応力発光材料は、以上のように、多面体構造の分子から構成され、歪を生じさせやすい空間を有する母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された基本構造を有する。それゆえ、強い発光を示すことができるという効果を奏する。さらに、上記応力発光材料は、上記空間に挿入されたアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンの一部が、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンから選択される少なくとも1種の金属イオンに、置換されている構成である。それゆえ、強い紫外線発光を示すという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に、本発明の一実施形態について、図1および図4に基づいて説明すると以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。以下の説明では、本発明にかかる応力発光材料およびその製造方法、ならびに、本発明の利用の順で、本発明をより詳細に説明する。
【0037】
<1.本発明にかかる応力発光材料>
本発明にかかる応力発光材料の基本構造は、多面体構造の複数の分子により形成された母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された構造であることが好ましい。
【0038】
本明細書において、「多面体構造の分子」とは、中心の原子と結合する別の原子を結ぶことによって、多面体構造が形成される分子をいう。すなわち、多面体は、仮想的なものである。例えば、SiO分子やAlO分子は、それぞれ、ケイ素原子(Si)またはアルミニウム原子(Al)を中心に、酸素原子(O)を頂点に有することにより、四面体構造を形成している。多面体構造の分子して、他に、GaO、MgO、PO、BO等が挙げられる。
【0039】
また、「母体構造」とは、多面体(例えば、四面体、六面体、八面体等)を結晶の最小単位とする分子(多面体構造の分子)を、単独あるいは複数種類、組み合わせて、1次元、2次元、または3次元結合することによって形成された構造をいう。このようにして形成された母体構造は、大きな空間(隙間)を含む柔軟な構造を有している。すなわち、上記母体構造では、上記空間において、歪が生じやすい。このように、上記母体構造が歪むことにより、発生する歪エネルギーは、応力発光材料の発光中心を励起する。その励起状態の発光中心が、基底状態に戻る時に、上記応力発光材料は発光する。したがって、母体構造が上記のような構造を有することにより、上記応力発光材料は強い発光を示すことができる。
【0040】
上記母体構造の具体例としては、図1〜図3に示す構造が挙げられる。
【0041】
図1は、四面体構造のSiOとAlOとによって、3次元的に母体構造(フレームワーク)が構成され、その空間にCaが挿入されたCaAlSiの構造を示している。その結果、自発歪をもつ構造を有する。図2(a)および(b)は、SiOによって、2次元的な母体構造(フレームワーク)が構成され、その空間に、SrとMgとが挿入されたSrMgSiの構造を示している。これらの構造は、自発歪をもつ構造を有する。図3は、POとアルカリ土類金属(Ba)とが交互に配置されたBa(POの構造を示している。これら3例はすべて、自発歪をもつ構造を有する。
【0042】
本明細書において、「自発歪」とは、構造に変化が生じて、別の構造に変化する時に生じる歪みのことである。例えば、発光材料は、温度が上昇すると、対称性のよい構造に変化するが、そこから、温度や圧力が変化すると、構造に変化が生じて、別の相に変わる。「自発歪」とは、このような対称性のよい構造から、その構造と比較してどの程度歪んでいるかを示す指標であって、発光材料自身が有する歪みを示す。なお、「自発歪」には、外力によって発光材料に生じさせた歪は含まれない。これらの材料には、結晶の対称中心を有しない特徴がある。
【0043】
本発明において、上記母体構造を形成する多面体構造の分子は、特に限定されるものではないが、四面体構造、六面体構造、または八面体構造の分子であることが好ましい。特に、AlO、PO、BO、SiOであることが好ましい。これら四面体構造の分子は非常に硬いのに対して、これらで形成された母体構造の中に挿入される発光中心の周りの構造はフレキシブル性が高い。そのため、応力を加えたとき、フレキシブル構造の発光中心のところに応力が集中し、上記母体構造が歪みやすくなる。したがって、上述したように、上記応力発光材料は、歪エネルギーによる応力発光が起こりやすくなる。
【0044】
また、上記母体構造は、1種類の多面体構造の分子によって形成されてもよく、また、複数種類の多面体構造の分子によって形成されてもよい。
【0045】
上記基本構造は、上記母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入されることにより形成されるが、具体的には、アルミノケイ酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、またはアルミン酸塩によって実現される。
【0046】
本明細書において、「アルミノケイ酸塩」、「リン酸塩」、「ホウ酸塩」、「ケイ酸塩」、および「アルミン酸塩」とは、それぞれ、リン酸、ホウ酸、ケイ酸、およびアルミン酸の、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩をいう。
【0047】
上記アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンは、特に限定されるものでないが、例えば、アルカリ金属イオンとして、Li、Na、K、Rb、Cs等のイオンが挙げられる。また、アルカリ土類金属イオンとして、Ca、Mg、Ba、Sr等のイオンが例示できる。
【0048】
また、上記母体構造の空間に挿入されるアルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンは、1種類でも2種類以上でもよい。さらに、複数種類のアルカリ金属およびアルカリ土類金属が挿入される場合、それら複数種類のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属は、互いにイオン半径の異なるものであることが好ましい。これにより、応力発光材料の自発歪が変化し、応力発光材料が発光しやすくなる。
【0049】
また、母体構造の空間に挿入されたアルカリ金属またはアルカリ土類金属の一部が、他のイオンで置換してもよい。結晶構造を維持できれば、置換させることによりひずみやすくことになり、応力発光しやすくなる。
【0050】
本発明において、上記基本構造は、P−1空間群に属する三斜晶構造、P−42m空間群に属する正方晶構造、または、R−3空間群に属する三方晶構造を有することが好ましい。P−1空間群に属する三斜晶構造の例としては、アノーサイト様構造が挙げられる。なお、「アノーサイト様構造」とは、以下でも述べるが、アノーサイト構造のみを示すものではなく、3次元構造の空間に、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを挿入できる範囲で、アノーサイト構造に類似する構造(類似の組成物)も包含する意味である。また、P−42m空間群に属する正方晶構造の例としては、オケルマナイト(akermanite、オケルマン石)様構造が挙げられる。なお、「オケルマナイト様構造」とは、オケルマナイト構造のみを示すものではなく、母体構造の空間に、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを挿入できる範囲で、オケルマナイト構造に類似する構造(類似の組成物)も包含する意味である。
【0051】
また、上記基本構造は、アルミノケイ酸塩であることが好ましい。アルミノケイ酸塩は、ポリケイ酸イオンの一部をアルミニウムで置換することにより得られる。アルミノケイ酸塩では、結晶構造の空間(隙間)に、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが挿入されている。
【0052】
アルミノケイ酸塩の例として、長石(feldspar、フェルドスパー)を例示することができる。長石とは、理想化学組成がZ(Si,Al)(ただし、Zはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、0<Al/Si≦1)で示されるアルミノケイ酸塩である。なお、長石は、通常、曹長石(albite、アルバイト)NaAlSi、アノーサイト(anorthite、灰長石)CaAlSi、およびカリ長石KAlSiを端成分とする固溶体である。すなわち、長石とは、アノーサイト構造を含む複数のアルミノケイ酸塩の混合物である。
【0053】
長石では、四面体構造のSiO分子およびAlO分子が最小単位であり、これらの分子が全ての頂点を共有して複数結合することにより、3次元構築体が形成される。さらに、長石では、上記3次元構築体に形成された空間(隙間)に、Z(アルカリ金属またはアルカリ土類金属)が挿入されている。
【0054】
例えば、アノーサイト構造は、図4に示すように、AlOとSiOとを基本構造の基本単位とし、これらの分子が互いに頂点を共有することにより大きな空間を有している。さらに、上記分子同士の結合がフレキシブルで、上記空間に挿入されたアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンのサイズに依存して、その構造を自由に歪ませることができる。このため、長石のようなアルミノケイ酸塩は、上記応力発光材料の基本構造として、好適に用いることができる。なお、上記基本構造がアルミノケイ酸塩である場合、上記母体構造は、AlSi(アルカリ金属塩の場合)またはAlSi2―(アルカリ土類金属塩の場合)であることが好ましい。
【0055】
上記基本構造の他の例として、「アノーサイト様構造」、「長石様構造」、「準長石(feldspathoid、フェルドスパソイド)構造」等が挙げられる。
【0056】
本明細書において、「アノーサイト様構造」とは、前述のように、アノーサイトのみを示すものではなく、発光体の3次元構造を形成する母体構造の空間に、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを挿入できる範囲で、アノーサイト構造に類似する構造(類似の組成物)も包含する意味である。同様に、「長石様構造」とは、長石構造のみを示すものではなく、3次元構造の空間に、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンを挿入できる範囲で、アノーサイト構造に類似する構造(類似の組成物)も包含する意味である。
【0057】
また、「準長石」とは、「長石」と同様、アルミノケイ酸塩であり、かつ、AlOおよびSiOは、全ての頂点を共有して複数結合することにより、3次元構築体を形成している。準長石としては、例えば、白榴石(leucite、リューサイト)KAlSi、かすみ石(nepheline、ネフェリン)NaAlSiO、およびこれらの組成物に結晶構造が類似する組成物等が挙げられる。
【0058】
また、本発明に見出した強い応力発光を示す応力発光材料の分子式について、同じような組成で異なる構造を有する発光材料では、応力発光機能を有しないことも、本発明者らは確認している。
【0059】
例えば、BaAlSiが破壊発光を示すことが、石原氏らの論文で報告されている(Fract-Luminescence of rare earth element-Doped hexacelsian (BaAl2Si2O8)、Jpn. J Appl. Phys. (学術雑誌、 1997 ) 36巻6B、ppL781-783、および、Full Color triboluminescence of rare-earth-doped hexacelsian (BaAl2Si2O8)Solid State Commun (学術雑誌、 1998 ) 107巻pp.763-767)。上記の参考文献では、BaAlSiは、全く異なる製造方法で製造され、その得られた構造は、上記の参考文献のタイトルにも明記されているように、六方晶の層状構造を有している。これは、本発明の結晶構造とは、全く異なっている。六方晶の層状構造のBaAlSiは、強い破壊発光を示すものの、機械的な外力による歪エネルギーにより発光する、すなわち、本発明における「応力発光」は示さなかった。なぜなら、両者の発光原理は、全く異なっているので、好適の発光材料の母体構造が異なるためである。
同様に、本発明者らは、先に出願したケイ酸塩の発光体(特許文献2および3を参照)も含めて、ケイ酸塩の結晶性を特定した。その結果、いずれの結晶も、本発明に提案する母体構造を有していなかった。つまり、特許文献2および3に示されるケイ酸塩の発光体は、発光測定には摩擦発光や円盤ペレットの瞬間圧縮発光を利用して評価したものであり、破壊発光の寄与が大きいことを示している。
【0060】
一方、変形に由来する発光は、破壊発光とは全く異なる原理に起因するものであるため(例えば、参照文献:ハイブリッド応力発光材料、セラミックス、39(2)、ページ130−133,2004年)、破壊発光の大きい発光材料が、変形発光するとは限らない。本発明者らは、以前提案した破壊発光の大きい発光材料が、変形による発光をほとんど示さないことを確認している。
【0061】
本発明にかかる応力発光材料は、上記母体構造の空間に挿入されたアルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部が、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンからなる群より選択される、少なくとも1種の金属イオンによって置換されていることが好ましい。
【0062】
上記希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンは、特に限定されるものではないが、発光中心となるものであることが好ましい。例えば、希土類金属のイオンとして、ユウロピウム(Eu)、ジプシロシウム(Dy)、ランタン(La)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、サマリウム(Sm)、イットリウム(Y)、ネオジウム(Nd)、テルビウム(Tb)、プラセオジム(Pr)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、スカンジウム(Sc)、プロメチウム(Pm)、ホルミウム(Ho)、およびルテチウム(Lu)等のイオンが例示される。
【0063】
また、遷移金属のイオンとして、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、アンチモン(Sb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ニオビウム(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、およびタングステン(W)等のイオンが例示される。
【0064】
さらに、III族の金属イオンとして、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、およびタリウム(Tl)等のイオンが例示される。
【0065】
加えて、IV族の金属イオンとして、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、および鉛(Pb)等のイオンが例示される。
【0066】
なお、これら希土類金属のイオン、遷移金属のイオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンは、これらの中から、少なくとも1つのイオンを選択すればよい。
【0067】
発光材料では、希土類金属イオンおよび遷移金属イオンの含有量、言い換えれば、発光中心の含有量が、発光に大きく影響する。本発明において、上記含有量は、特に限定されるものではないが、母体構造の3次元構造を維持できる範囲内であることが好ましい。具体的には、0.1mol%以上20mol%以下の範囲内であることが好ましく、0.2mol%以上10mol%以下の範囲内であることがより好ましく、0.5mol%以上5mol%以下の範囲内であることが特に好ましい。なお、上記含有量が、0.1mol%未満の場合、効率的な発光が得られず、20mol%を越えると母体構造が乱れ、発光効率が低下する。
【0068】
また、発光材料では、発光中心の種類によって、発光材料の発光色が変化する。言い換えれば、本発明においては、選択する上記希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンの種類によって、発光色を変化させることができる。従来の応力発光材料は、発光波長が500nm以上(緑色〜赤色の波長域)では、強い発光を得ることができるが、それより短い発光波長域、すなわち、紫外線〜青色の波長域では、強い発光を得ることができなかった。しかし、本発明にかかる応力発光材料において、例えば、希土類金属イオンとして、Ceイオンを選択すれば、強い紫外線発光を呈する応力発光材料(高強度応力発光材料)を実現することができる。
【0069】
したがって、本発明にかかる応力発光材料では、上記母体構造に形成される空間に、少なくともCeイオンが挿入されていることが好ましい。すなわち、上記応力発光材料の発光中心が、Ceイオンまたはその混合物を用いることが好ましい。これにより、好適に紫外線発光を示す応力発光材料を提供することができる。
【0070】
なお、本明細書において、「紫外線」とは、波長200〜400nmの領域の放射をいう。
【0071】
本発明にかかる応力発光材料は、上述したように、上記母体構造の結晶構造(空間)に歪を生じさせることにより、発光する。この応力発光材料は、機械的な外力によって、3次元構造を有する母体構造に歪みを生じさせることにより、強い発光を示す。
【0072】
本明細書において、「応力発光」とは、摩擦力、せん断力、圧力、および張力等の機械的な外力による変形によって発光することをいう。
【0073】
上記母体構造の結晶構造は、機械的な外力によって、歪を生じさせる以外にも、電場等、種々のエネルギーによって歪を生じさせることができるため、本発明にかかる応力発光材料を、応力発光以外の発光様式で、発光させてもよい。
【0074】
また、発光材料の分野では、応力発光材料は、その他の発光材料(例えば、電場発光材料等)に比べて、製造することが非常に困難とされている。例えば、電場発光材料に、電場をかけずに機械的な外力を加えても発光しない。一方、応力発光材料は、応力発光以外の発光様式でも発光させることが可能なことが実証されている。例えば、応力発光を示せば、それ以外の発光様式の発光(電場発光等)も示す。従って、本発明の発光材料の発光様式は、特に限定されるものではなく、応力発光以外の発光様式によって、発光させることも可能である。
【0075】
本発明にかかる応力発光材料の基本構造は、下記一般式(1)〜一般式(6)のいずれか1つで示されることがより好ましい。
【0076】
1−xAlSi ・・・(1)
1−xAlSi ・・・(2)
(X1−x)(SiAl1−x)AlSi ・・・(3)
Ca1−x―yAl2―xSi2+x ・・・(4)
2−xMgSi ・・・(5)
3−x(PO ・・・(6)
(ただし、式中、MおよびNは、2価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Ca、Sr、Ba、MgまたはMnであり、XおよびYは、1価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Li、Na、またはKであり、0≦x,y≦0.8である。)
具体的には、特に強い紫外線発光を示す応力発光材料としては、アルカリ金属酸化物またはアルカリ土類金属酸化物、アルミニウム酸化物、およびシリコン酸化物から構成されたアルミノケイ酸塩であって、かつ、長石構造、好ましくはアノーサイト構造を維持できる範囲内で、この中のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンの一部を、別の1価の金属イオン、または2価の金属イオンと置換し、さらに1種類以上の遷移金属イオンまたは希土類金属イオンと置換した発光材料が好ましい。
【0077】
また、本発明にかかる紫外線発光を示す応力発光材料は、下記一般式(7)
1−x−yAlSi ・・・(7)
(ただし、式中のMおよびNはそれぞれ、アノーサイト構造ではCa、Sr、Mg、またはBaであり、長石構造では、Li、NaまたはKであり、Qは、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、もしくはIV族の金属イオンであり、0≦x≦0.8、0.001≦y≦0.1を満たす数である。)で示される応力発光材料であることが好ましい。
【0078】
さらに、上記応力発光材料において、アルカリ土類金属イオンとしてCaを選択し、かつ、そのCaサイトの一部を、希土類金属イオンとしてCeで置換した応力発光材料がより好ましい。
【0079】
すなわち、上記応力発光材料は、下記一般式(8)、
Ca1−yAlSi・・・(8)
(式中、Qは、Ceまたは他の発光中心イオンであり、yは0.001≦y≦0.1を満たす数である。)で示される応力発光材料であることが、さらに好ましい。
【0080】
また、上記一般式(8)は、Ca1−mCeAlSi(式中、mは、0.001≦m≦0.1を満たす数である。)と表すこともできる。
【0081】
また、上記応力発光材料において、アルカリ土類金属イオンとしてSrを選択し、かつ、そのSrサイトの一部を、希土類金属イオンとしてCeで置換した応力発光材料がより好ましい。
【0082】
すなわち、上記応力発光材料は、下記一般式(9)、
Sr1−y(PO・・・(9)
(式中、Qは、Ceまたは他の発光中心イオンであり、yは0.001≦y≦0.1を満たす数である。)で示される応力発光材料であることが、さらに好ましい。
【0083】
また、上記一般式(9)は、Sr1−mCe(PO(式中、mは、0.001≦m≦0.1を満たす数である。)と表すこともできる。
【0084】
なお、ここでいう、「発光中心イオン」とは、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、もしくはIV族の金属イオンをいう。
【0085】
<3.本発明にかかる応力発光材料の製造方法>
上記応力発光材料は、応力発光材料の組成となるように、原料を秤量し、焼成することによって製造することができる。本発明にかかる応力発光材料の製造方法において、強調すべきことは、焼成が極めて重要であるということである。特に、焼成時の急速の降温は、所定の結晶性が得られにくいため、ゆっくり(段階的に)降温することが特に好ましい。例えば、後述の実施例のように、焼成温度の昇温および降温は、1分間2℃の速度で、段階的に行うことができる。非晶質化(ガラス化)になってしまうと、本発明の母体構造を維持できないため、同じ組成でも、構造が異なるために応力発光性を示さない。
【0086】
しかしながら、上記応力発光材料の製造における焼成温度は、特に限定されるものではなく、所定の母体構造を形成できる範囲であればよい。さらに、この焼成温度は、応力発光材料の組成に応じて設定することが好ましい。つまり、本発明において強調すべきことは、本発明の応力発光材料において、上記の母体構造が形成されていることが、応力発光を示す前提となる。
【0087】
例えば、後述の実施例では、図5に示すように、1000℃では、応力発光材料が得られていないが、1200℃からは、応力発光材料が得られている。言い換えれば、1200℃以上の焼成によって、応力発光材料の母体構造が形成され、この母体構造を有する応力発光材料を製造することができる。
【0088】
本発明にかかる応力発光材料の原料としては、特に限定されるものではなく、焼成によって酸化物となるものであることが好ましい。例えば、前述のようなアルミノケイ酸塩の組成に応じて、焼成により、アルカリ金属の酸化物およびアルカリ土類金属の酸化物、アルミニウム酸化物、シリコン酸化物、ならびに、希土類金属の酸化物および/または遷移金属の酸化物が形成されるように、原料を秤量して、焼成することにより応力発光材料を製造することができる。
【0089】
このような原料としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の、無機化合物または有機化合物の塩を用いることができる。また、希土類金属、遷移金属、III族の金属、またはIV族の金属の、無機化合物または有機化合物の塩を用いることができる。
【0090】
上記無機化合物の塩として、炭酸塩、酸化物、ハロゲン化物(例えば塩化物)、水酸化物、硫酸塩、および硝酸塩等が挙げられる。また、上記有機化合物の塩として、酢酸塩、およびアルコラート等が挙げられる。また、アルミニウム酸化物およびシリコン酸化物の原料としては、AlおよびSiOを用いることができる。
【0091】
さらに、上記応力発光材料の製造時には、ホウ酸、または塩化アンモニウム等のフラックス剤を用いることもできる。
【0092】
また、上記の応力発光材料の原料の量は、製造する応力発光材料の組成に応じて、構成原子比に相当する割合の量を用いる。上記母体構造を容易に歪ませるために、アルカリ金属イオン、またはアルカリ土類金属イオンの格子欠陥を形成させることが有利である。そのため、化学組成量論よりもアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の組成は0.1モル%から10モル%の範囲内に減らすことが好ましい。
【0093】
<4.本発明にかかる応力発光材料の利用>
本発明にかかる応力発光材料は、従来得られなかった紫外線の強い発光を示す応力発光材料である。したがって、本発明の利用としては、特に限定されるものではなく、上記応力発光材料は、紫外線を利用するあらゆる分野に利用することができるだけでなく、さまざまの利用形態が可能である。
【0094】
例えば、まず、上記応力発光材料は、微粒子として利用することができる。すなわち、1次元分散系への利用が可能である。なお、本明細書において、「1次元分散」とは、微粒子状のある物質が、他の均一な物質の中に散在する現象をいい、「1次元分散させる」とは、微粒子状のある物質(本発明における例としては、粒径が数nm〜100μmの応力発光微粒子)を、他の均一な物質の中に散在させることをいう。
【0095】
本発明にかかる応力発光材料を1次元分散させることによって、上記応力発光材料を利用する方法としては、例えば、上記応力発光材料からなる応力発光微粒子を対象系に分散し、機械的な外力によって、紫外線を発生させて用いる方法が挙げられる。発生した紫外線は、上記応力発光微粒子に接触、または近接している対象物に対して、物理的および化学的に機能する。
【0096】
また、上記応力発光材料は、対象物にコーティングすることによって利用することができる。すなわち、2次元的に分布させて、利用することができる。例えば、上記発光微粒子で、対象系の表面をコーティングし、機械的な外力によって、紫外線を発生させる。この紫外線は、上記応力発光微粒子が接触している対象物に対して、物理的および化学的に機能する。
【0097】
さらに、上記応力発光材料は、3次元のネットワーク構造に、対象物をコーティングすることによって利用することができる。すなわち、3次元的に分布させて、利用することができる。
【0098】
また、それ以外の用途として、上記応力発光粒子を含む均一な材料を具体的な形状に加工して紫外線を発光する応力発光体(応力発光構造体)として用いる用途を挙げることができる。
【0099】
紫外線の発光は、短波長であるためエネルギーが高い。このため、上記紫外線発光体を発光させることにより得られる紫外線のエネルギーを、励起光として利用できる。例えば、上記紫外線発光体と、赤・黄・緑等の青とは異なる色の発光体であって、紫外線の光で発光し、かつ、応力で発光しない発光体とを混合して複合材料とする。この複合材料に、応力を加えると、紫外線発光体のみが発光する。そして、この紫外線発光体の発光により、生じた紫外線エネルギーを、可視光を発光する発光体を励起させるための励起エネルギーとして利用する。これにより、青から赤までの全ての色の発光体を発光させることができる。その結果、複合材料の発光色を変えることができる。
【0100】
また、紫外線の発光は、エネルギーが高いため、検出器による検出が容易である。このため、発光体の発光強度を容易に検出することができる。さらに、紫外線、特に400nm付近での光は、蛍光灯等の照明器具から放出が少なく、その発光を計測する時に照明環境下でも干渉が少ない利点がある。
【0101】
本発明にかかる発光体は、機械的な外力、例えば摩擦力、せん断力、衝撃力、振動、風力、超音波等を加えることによって発光する。この発光強度は、励起源となる機械的な外力の性質に依存するが、一般的には加えた機械的な作用力が大きいほど高くなる傾向がある。したがって、発光体の発光強度を測定することによって、発光体に加えられている機械的な外力を知ることができる。これによって、発光体にかかる応力状態を、無接触で検出できるようになり、応力状態の可視化することも可能である。このため、本発明の発光体は、応力検出器その他の広い分野での応用が期待できる。
【0102】
本発明にかかる応力発光材料は、その塗膜を耐熱性基材の表面に設けることにより、積層材料とすることができる。この塗膜は、上記母体構造を形成しうる化合物、例えば硝酸塩やハロゲン化物やアルコキシ化合物等を溶剤に溶解して調製した塗布液を、耐熱性基材の表面に塗布したのち、焼成することにより形成される。この耐熱性基材については特に限定されないが、その材質として例えば石英、シリコン、グラファイト、石英ガラスやバイコールガラス等の耐熱ガラス、アルミナや窒化ケイ素や炭化ケイ素やケイ化モリブデン等のセラミックス、ステンレス鋼のような耐熱鋼やニッケル、クロム、チタン、モリブデン等の耐熱性金属または耐熱性合金、サーメット、セメント、コンクリート等が挙げられる。
【0103】
本発明にかかる応力発光材料は、他の無機材料または有機材料との複合材料として利用することもできる。この複合材料は、応力発光材料を含んでいるので、機械的な外力によって、この複合材料に歪を与えると、発光する。例えば、応力発光材料を、樹脂またはプラスチック等の有機材料に、任意の割合で混合および分散させた複合材料を形成する。この複合材料に、機械的な外力を加えると、複合材料中の応力発光材料に歪が生じる。そして、この歪が励起エネルギーとなり、複合材料は発光する。
【0104】
本発明にかかる応力発光材料は、他の材料表面に塗布して利用することができる。言い換えれば、上記応力発光材料は、他の材料表面に、上記応力発光材料を含む層(応力発光層)を形成して利用することができる。これにより、応力発光層を形成した材料に、機械的な外力を加えると、その応力発光層が変形し、発光する。このように、応力発光層を形成して利用すれば、少量の応力発光材料を用いて、大面積の発光を実現することができる。
【0105】
本発明にかかる発光体は、蓄光体、または、蛍光体としても利用できる。
【0106】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、特許請求の範囲に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこの実施例によって何ら限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例における応力発光材料の複合材料は次のようにして調製した。
【0108】
〔複合材料の製造方法〕
応力発光材料の複合材料は、無機の応力発光材料の粉末を有機ポリマーと混錬することにより得た。例えば、上記有機ポリマーがエポキシ樹脂の場合、無機の上記応力発光体粉末とエポキシ樹脂を重量比1対1で混錬した後、20×5×45mmの複合材料試料片に加工した。
【0109】
〔実施例1〕
本実施例では、アルカリ土類金属としてCa、3次元フレームワーク(母体構造)を形成する多面体構造の分子の1種類としてAlO、3次元フレームワーク(母体構造)を形成する多面体構造の分子の別種類としてSiOを用いる場合を説明する。
【0110】
炭酸カルシウムCaCO、酸化アルミニウムAl、酸化セリウムCeO、酸化テリビウムTb、および酸化ケイ素SiOを、Ca0.99Ce0.005Tb0.005AlSiの組成となるように、所定量秤量して、エタノール中で、ボールミルで十分に混合した後、80℃で乾燥した。得られた混合物を乳鉢で粉砕し、次いで、還元雰囲気(5%水素含有アルゴン)中において、1400℃で4時間焼成した。なお、昇温および降温は1分間2℃の速度でゆっくり行った。次に、焼成後に得られた材料を粉砕し、粉末の応力発光材料を得た。そして、この応力発光材料についてX線回折(XRD)測定、紫外線励起発光ルミネッセンス(Photoluminescence、以下「PL」ともいう)測定、および応力発光(Mechanoluminescence、以下「ML」ともいう)測定を行った。
【0111】
なお、いずれの測定も、応力発光材料のみ利用した測定、および複合材料を利用した測定の両方を行った。
【0112】
図5は、焼成温度を変化させた場合のXRDパターンである。この回折パターンから、応力発光を示すP−1空間群に属する三斜相は、1200℃以上で出現することが明らかとなった。さらに、この構造をもつ応力発光材料は、少なくとも1500℃まで安定して製造することができた。なお、昇温および降温は徐々に(1分間2℃の速度)行った。
【0113】
図6は、Ca0.99Ce0.005Tb0.005AlSiの応力発光スペクトルを示す。図6に示す発光スペクトルによると、添加したCe3+に対応する発光ピークは、380nmである。これはCa0.99Ce0.005Tb0.005AlSiが、紫外光励起により紫外線蛍光を発することを示している。応力発光でも同様な発光スペクトルが観測されたことから、応力発光の起源はPL(光ルミネッセンス)と同様であり、発光中心のCe3+からの発光と考えられる。
【0114】
図7は、Ca0.99Ce0.005Tb0.005AlSiの複合材料における応力発光の経時変化を示すグラフである。なお、応力発光の測定は、材料試験機を用いて1500Nの機械的圧縮荷重を加えながら発光特性を計測することによって行った。荷重が変化するとともに、発光強度も変化した。すなわち、応力の増大に伴って、応力発光強度も増大した。
【0115】
なお、応力発光材料(応力発光セラミックス)だけを用いて、同様の測定を行った場合は、応力と、応力の変化速度とが同じであるとき、複合材料の場合より、発光強度は低かったが、発光波長(発光スペクトル)および応力発光強度の応力に対する依存性は、ほぼ同じであった。
【0116】
〔実施例2〕
原料物質を変更した以外、〔実施例1〕と同様の方法で、基本構造、および発光中心を変化させた応力発光材料を製造し、それらの応力発光材料について、ML強度を測定した。その結果を表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
表1は、様々な組成の応力発光材料について、ML強度を測定した結果を一覧に示したものである。アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンが、非化学量論組成が格子欠陥である場合、サンプルは、高い応力発光を示した。
【0119】
〔実施例3〕
原料物質を変更した以外、〔実施例1〕と同様の方法で、Ca0.970.03AlSi、Sr0.970.03AlSi、Ba0.970.03AlSi、Ca0.2Sr0.770.03AlSi、Ca0.8Sr0.170.03AlSi、Sr0.17Ba0.80.03AlSi、Mg0.2Sr0.770.03AlSi、Ba0.2Sr0.770.03AlSiを製造した。なお、上記式中、Qは、EuまたはCeを示す。これらのサンプルについて、PL強度およびML強度を測定した。その結果、図8に示すように、すべてのサンプルは、PLを示したが、特にSrを含有するサンプルは、高いPLを示すことがわかった。一方、PLが高いサンプルのMLが高いとは、限らないことが分かった。
【0120】
また、CaをSrで置換すると、Caの構造(三斜晶)のままで、80%までに固溶できた。一方、それ以上ではSrの構造(単斜相Monoclinic)になった。三斜晶と単斜晶との境界のところでは、応力発光を示すが、この限界を遥かに超えると、応力発光強度は、顕著に低下した。例えば、図8に示すように、三斜晶ではない、SrSiAlおよびBaAlSiの場合、応力発光強度は低かった。さらに、DyやHo等を同時に添加すると、応力発光強度は増大した。
【0121】
また、これらの応力発光材料の発光色を調べたところ、QがEu、すなわち、発光中心Euのとき、これらの応力発光材料は、すべて青色発光を示した。一方、QがCe、すなわち、発光中心がCeのときは、アルカリ土類金属がCaのみの場合は青色発光であるのに対して、Caの一部をSrで置換すると、紫外発光した。
【0122】
〔実施例4〕
原料物質を変更した以外、〔実施例1〕と同様の方法で、Sr1.990.01MgSi、Sr1.97Na0.020.01MgSi、Ba1.990.01MgSi、Ca1.990.01MgSiを製造した。なお、上記式中、Qは、EuまたはCeを示す。これらのサンプルについて、PL強度およびML強度を測定した。その結果、SrMgSiは、最も高いMLを示した(表1を参照)。また、アルカリ土類金属の一部をアルカリ金属で置換すると、PL強度は増大した(図9を参照)。
【0123】
また、これらの応力発光材料の発光色を調べたところ、QがEu、すなわち、発光中心Euのとき、これらの応力発光材料は、すべて青色発光を示した。一方、QがCe、すなわち、発光中心がCeのときは、紫外発光した。さらに、発光中心が、Ceのとき、Tbを同時に添加すると、ML強度は増大した。
【0124】
〔実施例5〕
原料物質を変更した以外、〔実施例1〕と同様の方法で、Ca2.970.01MgSi、Sr2.990.01MgSi、Ca2.970.010.01MgSi、Sr2.90.1MgSi、Ba2.990.01MgSi、Ba0.990.01Siを製造した。これらのサンプルについて、PL強度およびML強度を測定した(図10を参照)。図10に示すように、CaMgSiは、PLは高くないが、非常に高いMLを示した。一方、BaMgSiは、非常に高いPLを示したが、MLは高くない。
【0125】
また、これらの応力発光材料の発光色を調べたところ、QがEu、すなわち、発光中心Euのとき、これらの応力発光材料は、すべて青色発光を示した。一方、QがCe、すなわち、発光中心がCeのときは、紫外発光した。
【0126】
〔実施例6〕
原料物質として、SrCOおよびSrHPOと、EuまたはCe(NO・6HOとを用い、〔実施例1〕と同様の方法で、基本構造がSr(PO構造であり、発光中心がEuまたはCeの応力発光材料を製造した。なお、焼成条件は、表2に示す通りとした。
【0127】
また、原料物質として、BaCOおよびBaHPOと、Eu、Ce(NO・6HO、またはTl(NOとを用い、〔実施例1〕と同様の方法で、基本構造がBa(PO構造であり、発光中心がEu、Ce、またはTlの応力発光材料を製造した。なお、焼成条件は、表2に示す通りとした。
【0128】
上記の通り製造した応力発光材料について、X線による結晶解析およびPL強度の評価を行った。また、応力発光材料の粉末とエポキシ樹脂とを重量比1対1に混合し、長方体状に成型し、ML強度を評価した。
【0129】
【表2】

【0130】
表2に示すように、Sr(PO構造は、焼成条件を最適化することにより、Euを発光中心に用いた場合には紫青色の強い発光を示すことが分かった。一方、Ceを発光中心に用いた場合には、紫外線の強い発光を示すことが分かった。また、図11に示すように、1500℃で焼成して得られたSr2.985Ce0.015(POでは、荷重が変化するとともに、発光強度も変化した。すなわち、応力の増大に伴って、応力発光強度も増大した。なお、応力発光の測定は、材料試験機を用いて1500Nの機械的圧縮荷重を加えながら発光特性を計測することによって行った。
【0131】
さらに、1500℃で焼成して得られたSr2.985Ce0.015(POについて、X線による結晶解析の結果、図12に示すように、結晶構造はR−3空間群に属する菱面体(三方晶)であった。
【0132】
〔比較例1〕
原料物質を変更した以外、〔実施例1〕と同様の方法で、SrMgSi:Eu1%Dy2%、SrMgSi:Ce0.5%、CaMgSi:Eu1%、CaMgSi:Eu1%Dy2%、CaMgSi:Ce0.5%を製造した。これらのサンプルについて、PL強度、ML強度、および発光波長を測定した。その結果、表3に示すように、いずれのサンプルも、青色発光を示した。
【0133】
【表3】

【0134】
〔比較例2〕
原料物質を変更した以外、〔実施例1〕と同様の方法で、CaAlSiO:Eu1%、CaAlSiO:Eu1%Dy2%、CaAlSiO:Ce0.5%、SrAlSiO:Eu1%、SrAlSiO:Eu1%Dy2%、SrAlSiO:Ce0.5%を製造した。これらのサンプルについて、PL強度、ML強度、および発光波長を測定した。その結果、表4に示すように、いずれのサンプルも、青色発光を示した。
【0135】
【表4】

【0136】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の応力発光材料は、強い発光を示すため、応力発光だけでなく、種々の発光様式の発光材料として利用することができる。さらに、従来にはない、高エネルギーの紫外線発光も実現できるため、別の発光材料と組み合わせた複合材料として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】CaAlSiの結晶構造を示す模式図である。
【図2】SrMgSiの結晶構造を示す模式図である。
【図3】Ba(POの結晶構造を示す模式図である。
【図4】Ca0.2Sr0.8AlSiの結晶構造を示す模式図である。
【図5】Ca0.99Ce0.005Tb0.005AlSiの粉末X線回折パターンである。
【図6】Ca0.99Ce0.005Tb0.005AlSiの発光スペクトルである。
【図7】Ca0.99Ce0.005Tb0.005AlSiの応力発光の経時変化を示すグラフである。
【図8】実施例3における応力発光材料のPL強度およびML強度の測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例4における応力発光材料のPL強度およびML強度の測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例5における応力発光材料のPL強度およびML強度の測定結果を示すグラフである。
【図11】実施例6における応力発光材料(Sr2.985Ce0.015(PO)の応力発光の経時変化を示すグラフである。
【図12】実施例6における応力発光材料(Sr2.985Ce0.015(PO)のX線による結晶解析の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンが挿入された基本構造を有し、
上記空間に挿入された、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部が、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属イオン、およびIV族の金属イオンからなる群より選択される、少なくとも1種の金属イオンによって置換されていることを特徴とする応力発光材料。
【請求項2】
上記基本構造が、自発歪を有し、
上記の多面体構造の分子が、四面体構造の、AlO、SiO、PO、およびBOのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の応力発光材料。
【請求項3】
上記基本構造が、P−1空間群に属する三斜晶構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の応力発光材料。
【請求項4】
上記P−1空間群に属する三斜晶構造が、アノーサイト様構造であることを特徴とする請求項3に記載の応力発光材料。
【請求項5】
上記基本構造が、P−42m空間群に属する正方晶構造を有することを特徴とする請求項1または2の記載の応力発光材料。
【請求項6】
上記P−42m空間群に属する正方晶構造が、オケルマナイト様構造であることを特徴とする請求項5に記載の応力発光材料。
【請求項7】
上記基本構造が、R−3空間群に属する三方晶構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の応力発光材料。
【請求項8】
紫外線の発光を示すことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項9】
上記基本構造が、下記一般式(1)〜(6)、
1−xAlSi ・・・(1);
1−xAlSi ・・・(2);
(X1−x)(SiAl1−x)AlSi ・・・(3);
Ca1−x―yAl2―xSi2+x ・・・(4);
2−xMgSi ・・・(5);
3−x(PO ・・・(6);
(ただし、式中、MおよびNは、2価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Ca、Sr、Ba、MgまたはMnであり、XおよびYは、1価の金属イオンであって、少なくとも1つは、Li、Na、またはKであり、0≦x,y≦0.8である。)
のいずれか1つの一般式で示されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項10】
母体構造に形成された上記空間に、イオン半径が異なる複数の、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンが挿入されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項11】
上記希土類金属、遷移金属、III族の金属、およびIV族の金属の含有量が、0.1mol%以上10mol%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項12】
上記希土類金属イオンが、Eu、Dy、La、Gd、Ce、Sm、Y、Nd、Tb、Pr、Er、Tm、Yb、Sc、Pm、Ho、およびLuからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであり、
上記遷移金属イオンが、Cr、Mn、Fe、Sb、Ti、Zr、V、Co、Ni、Cu、Zn、Nb、Mo、Ta、およびWからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであり、
上記III族の金属イオンが、Al、Ga、In、およびTlからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであり、
上記IV族の金属イオンが、Ge、Sn、およびPbからなる群より選択される、少なくとも1種の金属のイオンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項13】
上記希土類金属イオンが、Ceイオンであって、
上記III族の金属イオンが、Tlイオンであって、
上記IV族の金属イオンが、SnイオンまたはPbイオンであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項14】
上記空間に、少なくともCeイオンが挿入されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項15】
Ca1−yCeAlSi(ただし、0.001≦y≦0.1である。)で示されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項16】
Sr1−yCe(PO(ただし、0.001≦y≦0.1である。)で示されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の応力発光材料。
【請求項17】
多面体構造の複数の分子によって形成される母体構造の空間に、アルカリ金属イオンとアルカリ土類金属イオンとが挿入された基本構造を形成する工程と、
上記空間に挿入された、アルカリ金属イオンおよび/またはアルカリ土類金属イオンの一部を、希土類金属イオン、遷移金属イオン、III族の金属、およびIV族の金属からなる群より選択される、少なくとも1種の金属イオンによって置換する工程とを含むことを特徴とする応力発光材料の製造方法。
【請求項18】
母体構造に形成された上記空間に、イオン半径の異なる複数のアルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを挿入する工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の応力発光材料の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の応力発光材料を形成してなる応力発光体。
【請求項20】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の応力発光材料と高分子材料とを混合してなる応力発光体。
【請求項21】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の応力発光材料を、1次元分散させて用いることを特徴とする応力発光材料の利用方法。
【請求項22】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の応力発光材料を、2次元的に分布させて用いることを特徴とする応力発光材料の利用方法。
【請求項23】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の応力発光材料を、3次元的に分布させて用いることを特徴とする応力発光材料の利用方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2006−312719(P2006−312719A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76495(P2006−76495)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】