説明

紫外線センサ

【課題】センサ全体を大型化することなく、単一のセンサ素子で異なる波長帯を有する複数の紫外線を検出すること。
【解決手段】紫外線センサ1は、基板2と、この基板2上に形成され、第1の波長を有する第1の紫外線により抵抗値が変化する第1の感応膜3と、前記基板2上に形成され、前記第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の紫外線により抵抗値が変化する第2の感応膜5と、前記第1及び第2の感応膜3,5にそれぞれ形成された第1及び第2の個別電極6,7と、前記第1及び第2の感応膜3,5に跨って形成された共通電極8と、を備え、前記第1及び第2の個別電極6,7と前記共通電極8との間における抵抗値または電流値の変化を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長の異なる複数の紫外線を検知する紫外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長λ1の紫外線を検出する第1のフォトダイオードと、波長λ1より波長の長い波長λ2の紫外線を検出する第2のフォトダイオードと、第2のフォトダイオードの検出値から第1のフォトダイオードの検出値を減算して減算値を出力する減算器と、を備えた紫外線センサが知られている(特許文献1参照)。この紫外線センサでは、例えば、第1のフォトダイオードの検出する波長λ1を315nmに、第2のフォトダイオードの検出する波長λ2を380nmに調整して、波長λ2及びλ1の差分から波長帯380〜315nmのUV−A光を検出している。
【特許文献1】特開2004−061417号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の紫外線センサでは、検出波長λ1及びλ2を調整することで波長の異なる複数の紫外線を検出することはできるものの、フォトダイオード等のセンサ素子が検出波長の数だけ必要となるので、センサ全体が大型化してしまう問題がある。
【0004】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、センサ全体を大型化することなく、単一のセンサ素子で波長の異なる複数の紫外線を検出することができる紫外線センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の紫外線センサは、基板と、この基板上に形成され、第1の波長を有する第1の紫外線により抵抗値が変化する第1の感応膜と、前記基板上に形成され、前記第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の紫外線により抵抗値が変化する第2の感応膜と、前記第1及び第2の感応膜にそれぞれ形成された第1及び第2の個別電極と、前記第1及び第2の感応膜に跨って形成された共通電極と、を備え、前記第1及び第2の個別電極と前記共通電極との間における抵抗値または電流値の変化を検出することを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、第1及び第2の個別電極と共通電極との間における抵抗値または電流値の変化を検出するので、この抵抗値または電流値の変化により第1の紫外線又は第2の紫外線を検出することができる。そのため、単一のセンサ素子で波長の異なる複数の紫外線を検出することができる。また、波長の異なる複数の紫外線を検出する場合であっても、従来のように検出波長の数だけセンサ素子を設ける必要がなくなるので、センサ全体を小型化することができる。
【0007】
上記紫外線センサにおいて、前記第1及び第2の感応膜は、前記基板上に前記第1の感応膜と前記第2の感応膜との間に絶縁膜を挟んで積層され、前記共通電極は、下側の感応膜の一部を上側の感応膜の端部よりも側方に延出させて形成されていることが好ましい。この場合、例えば、上面の感応膜が短波長の紫外線に応答し、基板側の感応膜が長波長側の紫外線に応答する構成とすることが可能である。
【0008】
この構成によれば、共通電極が基板上に積層された下側の感応膜の一部を上側の感応膜の端部よりも側方に延出させて形成されているので、基板の幅方向においてセンサ素子を小型化することができると共に波長の異なる複数の紫外線を検出することができる。
【0009】
上記紫外線センサにおいて、前記第1及び前記第2の感応膜は、前記基板上の同一面に並んで形成され、前記共通電極は前記第1及び第2の感応膜の境界部に形成されていてもよい。
【0010】
上記紫外線センサにおいて、前記第1の感応膜からなる第1の可変抵抗と、一端が前記第1の個別電極に接続された第1の固定抵抗と、前記第2の感応膜からなる第2の可変抵抗と、一端が前記第2の個別電極に接続され、他端が第1の固定抵抗に接続された第2の固定抵抗とでブリッジ回路を構成し、抵抗値の相対的な変化を検出する構成が考えられる。
【0011】
また、上記紫外線センサにおいて、抵抗値の個別変化量を検出する検出手段を有することにより、第1の紫外線と第2の紫外線とを個別に検出することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、センサ素子を大型化することなく、単一のセンサ素子で波長の異なる複数の紫外線を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態に係る紫外線センサについて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る紫外線センサを模式的に示した断面図である。本実施の形態に係る紫外線センサは、異なる波長を有する2つ以上の紫外線(例えば、UV−A光,UV−B光)を検出する紫外線センサである。ここで、UV−A(UVA)光とは、近紫外線領域の波長帯の光を指し、波長が380〜315nm程度の光のことである。また、UV−B(UVB)光とは、近紫外線領域の波長帯の光を指し、波長が315〜280nm程度の光のことである。以下では、UVA光及びUVB光を検出する場合を例に説明する。
【0014】
図1に示すように、紫外線センサ1は、シリコン、ガラス又はプラスチックなどで構成された基板2上に作られている。基板2上には、UVA光を検知するUVA感応膜(第1の感応膜)3が形成されている。UVA感応膜3は、UVA光が照射されると抵抗値が変化する感応膜であり、例えば、ZnOやGaNで構成される。
【0015】
UVA感応膜3上には絶縁膜4が形成され、この絶縁膜4を介してUVB光を検知するUVB感応膜(第2の感応膜)5が形成されている。UVB感応膜5は、UVB光が照射されると抵抗値が変化する感応膜であり、例えば、MgZnOやAlGaNで構成される。絶縁膜4は、UVA光を透過可能な絶縁膜であり、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)や酸化アルミニウム(Al2O3)等で構成されている。UVA感応膜3の対向する両端部は、UVB感応膜5の外縁部よりも外側へ延出している。本実施の形態の紫外線センサ1では、上面のUVUB感応膜5が短波長の紫外線に応答し、基板2側のUVA感応膜3が長波長側の紫外線に応答する構成となっている。
【0016】
UVA感応膜3の延出部のうち、一方の端部(図1では右側端部)には、UVA感応膜3及びUVB感応膜5に跨って形成された共通電極8が形成されている。具体的には、共通電極8は、下側(基板2側)のUVA感応膜3の一部を、上側のUVB感応膜5の端部よりも側方(外方)に延出させて形成されている。一方、UVA感応膜3の延出部のうち、共通電極8が形成された端部と対向する他方の端部(図1では左側端部)には、第1の個別電極6がパターン形成されている。また、UVB感応膜5上において、共通電極8が形成された一方の端部と対向する他方の端部(図1では左側端部)には、第2の個別電極7がパターン形成されている。第1及び第2の個別電極6,7並びに共通電極8は、例えば、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)等で構成されている。
【0017】
次に、図2を用いて、紫外線センサ1の製造工程の一例を説明する。図2は、紫外線センサ1の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【0018】
例えば、スパッタ法や蒸着法を用いて、基板2上にUVA感応膜3が成膜される(図2(a))。次に、UVA感応膜3上に、シリコン酸化膜等の絶縁膜4が成膜され、絶縁膜4上にUVB感応膜5が成膜される(図2(b))。次に、UVB感応膜5の形成領域に対応するマスクを介してフォトリソグラフィが行われ、UVB感応膜5の形成領域以外のUVB感応膜5及び絶縁膜4がエッチングにより除去される(図2(c))。次に、電極形成領域以外の領域がパターンニングされたマスクを介してフォトリソグラフィが行われ、金(Au)、プラチナ(Pt)、アルミニウム(Al)等の金属材料がスパッタ法により成膜される(図2(d))。そして、リフトオフ加工により電極形成領域以外の領域の金属材料が除去されて、第1及び第2の個別電極6,7並びに共通電極8が形成される(図2(e))。
【0019】
なお、図1に示す紫外線センサ1では、同一基板2上に、絶縁膜4を介してUVA感応膜3及びUVB感応膜5を積層形成する場合を例に説明したが、共通電極8が、UVA感応膜3及びUVB感応膜5を跨ぐように形成される構成であれば、図3に示すような構成でもよい。図3に示す紫外線センサ1aでは、同一基板2上の左側にUVA感応膜3が、右側にUVB感応膜5が同一面(平面的)に並んで形成されている。UVA感応膜3及びUVB感応膜5上面の外側端部には第1及び第2の個別電極6,7がそれぞれ形成され、UVA感応膜3及びUVB感応膜5の境界部分を覆うように共通電極8が形成されている。
【0020】
次に、図4を用いて、具体的な紫外線の検出回路の一例について説明する。図4は、UVA光及びUVB光を検出する検出回路の一例を示した回路構成図である。図4に示すように、検出回路10は、UVA感応膜3からなる可変抵抗R1と、一端が第1の個別電極6に接続された固定抵抗R3と、第2の感応膜5からなる可変抵抗R2と、一端が第2の個別電極7に接続され、他端が固定抵抗R3に接続された固定抵抗R4とでブリッジ回路を構成している。
【0021】
可変抵抗R1の一端と可変抵抗R2の一端との接続点P1は共通電極8で構成され、接続点P1と、固定抵抗R3と固定抵抗R4との接続点P2とには、電源電圧が印加されている。第1の個別電極6で構成された可変抵抗R1の他端と固定抵抗R3の一端との接続点P3には、電圧検出部11が接続されている。個別電極7で構成された可変抵抗R2の他端と固定抵抗R4の一端との接続点P4には、電圧検出部11が接続されている。電圧検出部11は、この接続点P3及びP4における電圧を検出する。ここで、検出回路10において、UVA感応膜3又はUVB感応膜5に紫外線が照射されない場合には、接続点P1−P3間と接続点P1−P4間との電位が同電位となるように固定抵抗R3及びR4の抵抗値が調整され、電圧検出部11での検出電圧が、例えば0[V]となるように構成されている。すなわち、検出回路10は、紫外線の非照射時には、可変抵抗R1及び固定抵抗R3の抵抗値の比率と、可変抵抗R2及び固定抵抗R4の抵抗値との比率とが等しい状態に設定され、ブリッジが平衡状態を保つように構成されている。
【0022】
このように構成された検出回路10は、UVA感応膜3からなる可変抵抗R1又はUVB感応膜5からなる可変抵抗R2の相対的な抵抗値または電流値の変化を検出する。すなわち、相対的な抵抗値の変化に伴い第1及び第2の個別電極6,7と共通電極8との間の相対的な電圧の変化を読み出すことにより、UVA光又はUVB光を検出する。例えば、UVA感応膜3に、絶縁膜4を透過したUVA光が照射されると可変抵抗R1の抵抗値が下がるので、接続点P3と接続点P4との間で電位差が生じる。これにより、UVA光を検出することができる。逆に、UVB感応膜5にUVB光が照射されると可変抵抗R2の抵抗値が下がるので、接続点P3と接続点P4との間で電位差が生じ、UVB光を検知することができる。
【0023】
また、UVA光又はUVB光を個別に検出する場合には、図5に示すように、接続点(共通電極)P1と、可変抵抗R1又は可変抵抗R2との接続を切り換えるスイッチを設ければよい。図5は、UVA光及びUVB光を個別に検出する検出回路の一例を示した回路構成図である。
【0024】
図5に示す検出回路20は、可変抵抗R1に対して並列接続された固定抵抗R5と、可変抵抗R2に対して並列接続された固定抵抗R6と、接続点(共通電極)P1に接続されたスイッチSW1及びSW2とを備えている。スイッチSW1は、接続点P1との間において可変抵抗R1又は固定抵抗R5の接続を切り換え、スイッチSW2は、接続点P1との間において可変抵抗R2又は固定抵抗R6の接続とを切り換えるものである。なお、スイッチSW1及びSW2は、例えば、ダイオードで構成される。ここで、固定抵抗R5及びR6の抵抗値は、スイッチSW1及びSW2により可変抵抗R1及びR2の接続が切り換えられた場合において、ブリッジが平衡状態を保つように調整されている。例えば、スイッチSW1を可変抵抗R1に接続し、かつスイッチSW2を固定抵抗R6に接続した場合には、UVA感応膜3にUVA光が照射されると、可変抵抗R1の抵抗値のみが変化し、接続点P3と接続点P4との間の電位差が生じる。すなわち、スイッチSW1及びSW2の切り換えにより、可変抵抗R1又はR2の抵抗値の個別変化量を検出することができ、UVA光又はUVB光を検知することができる。
【0025】
このように本実施の形態によれば、基板2上に形成され、第1の波長を有する第1の紫外線により抵抗値が変化する第1の感応膜3と、基板2上に形成され、第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の紫外線により抵抗値が変化する第2の感応膜5と、第1及び第2の感応膜3,5にそれぞれ形成された第1及び第2の個別電極6,7と、第1及び第2の感応膜3,5に跨って形成された共通電極8と、を備え、第1及び第2の個別電極6,7と共通電極8との間における抵抗値または電流値の変化を検出する。この構成によれば、第1及び第2の個別電極6,7と共通電極8との間における抵抗値または電流値の変化を検出するので、この抵抗値または電流値の変化により第1の紫外線又は第2の紫外線を検出することができる。そのため、単一のセンサ素子で波長の異なる複数の紫外線を検出することができる。また、波長の異なる複数の紫外線を検出する場合であっても、従来のように検出波長の数だけセンサ素子を設ける必要がなくなるので、センサ全体を小型化することができる。
【0026】
また、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態にいて、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、波長の異なる複数の紫外線を検知する紫外線センサに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る紫外線センサを模式的に示した断面図である。
【図2】本実施の形態に係る紫外線センサの製造工程を模式的に示す断面図である。
【図3】紫外線センサの変形例を模式的に示した断面図である。
【図4】本実施の形態に係る検出回路の回路構成図である。
【図5】本実施の形態に係る検出回路のその他の回路構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1,1a 紫外線センサ
2 基板
3 UVA感応膜(第1の感応膜)
4 絶縁膜
5 UVB感応膜(第2の感応膜)
6 第1の個別電極
7 第2の個別電極
8 共通電極
10,20 検出回路
11 電圧検出部
R1 可変抵抗(第1の可変抵抗)
R2 可変抵抗(第2の可変抵抗)
R3 固定抵抗(第1の固定抵抗)
R4 固定抵抗(第2の固定抵抗)
R5,R6 固定抵抗
SW1,SW2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、この基板上に形成され、第1の波長を有する第1の紫外線により抵抗値が変化する第1の感応膜と、
前記基板上に形成され、前記第1の波長と異なる第2の波長を有する第2の紫外線により抵抗値が変化する第2の感応膜と、
前記第1及び第2の感応膜にそれぞれ形成された第1及び第2の個別電極と、
前記第1及び第2の感応膜に跨って形成された共通電極と、を備え、
前記第1及び第2の個別電極と前記共通電極との間における抵抗値または電流値の変化を検出することを特徴とする紫外線センサ。
【請求項2】
前記第1及び第2の感応膜は、前記基板上に前記第1の感応膜と前記第2の感応膜との間に絶縁膜を挟んで積層され、前記共通電極は、下側の感応膜の一部を上側の感応膜の端部よりも側方に延出させて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサ。
【請求項3】
前記第1及び前記第2の感応膜は、前記基板上の同一面に並んで形成され、前記共通電極は前記第1及び第2の感応膜の境界部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線センサ。
【請求項4】
前記第1の感応膜からなる第1の可変抵抗と、一端が前記第1の個別電極に接続された第1の固定抵抗と、前記第2の感応膜からなる第2の可変抵抗と、一端が前記第2の個別電極に接続され、他端が第1の固定抵抗に接続された第2の固定抵抗とでブリッジ回路を構成し、抵抗値の相対的な変化を検出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の紫外線センサ。
【請求項5】
抵抗値の個別変化量を検出する検出手段を有することを特徴とする請求項4に記載の紫外線センサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−133773(P2010−133773A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308525(P2008−308525)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】