説明

紫外線フィルター機構及び紫外線照射装置

【課題】 シャッター部材と可動自在の紫外線吸収フィルターとを有する紫外線照射装置で用いる紫外線フィルター機構及びこの機構を有する紫外線照射装置の提供。
【解決手段】 被処理基材に対向して紫外線照射光源を備えた紫外線照射装置に適用する紫外線フィルター機構であって、被処理基材と紫外線光源との間に、開口部を有するシャッター部材13と、開口部を有する少なくとも1層の紫外線吸収フィルター部材14とが設けられ、さらにフィルター部材がシャッター部材に対して平行に可動できるように構成されている。この紫外線フィルター機構を備えている紫外線照射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線フィルター機構及び紫外線照射装置に関し、特に多層配線用絶縁膜製造用の紫外線フィルター機構及びこの紫外線フィルター機構を有する紫外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層配線用の絶縁膜を有する半導体素子を作製する場合、この層間絶縁膜を硬化するため、また、多孔質層間絶縁膜で低誘電率を実現するための空孔を形成する際にテンプレート材を除去するため、従来から紫外線照射によるキュア処理が行われている。紫外線光源としては、単一波長にピークを持つナローバンド光源、紫外線領域での様々な波長域にブロードなピークを持つブロードバンド光源等が知られており、目的に沿って、所定の波長又は波長域の紫外線を用いている。
【0003】
例えば、Low−k膜等の誘電体膜を形成する際に、原料物質に界面活性剤等のテンプレート材を配合した物を被処理基材上に適用し、得られた膜に対してフィルターを通して紫外線を照射し、キュア処理により空孔を形成して、得られた膜の誘電率の低減を行いながら、膜の硬化処理を行って、機械的強度を紫外線が照射されない場合よりも改善することが知られている(例えば、特許文献1参照)。この場合、シャッター及びフィルターを設けることが記載されているが、シャッターとフィルターとの関係、及びフィルターが可動自在であることについては、何ら具体的に記載も示唆もされていない。そのため、紫外線を照射すると、常に、固定されたフィルターで所定の波長の紫外線が吸収され、かつ所定の波長の紫外線が透過される構造を有しており、フィルター有無の設定・選択は容易にはできない。
【0004】
また、フィルター透過後の紫外線が最適な波長域及び照度値となるようにした紫外線照射装置であって、紫外線が常に紫外線カットフィルターを透過する構造を有している装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。この場合、マイクロ波を遮断し、紫外光を透過させるRFスクリーンがランプハウスの一部に設けられていると共に、フィルターは固定されており、フィルターは可動自在、交換自在にはなっていない。そのため、紫外線を照射すると、常に、固定されたフィルターで所定の波長の紫外線が吸収され、かつ所定の波長の紫外線が透過される構造を有しており、フィルター有無の設定・選択は容易にはできない。
【0005】
さらに、上記したようなナローバンド光源では、波長の異なる複数の光源を用いてキュア処理せざるを得ない場合があるので、また、上記したようなブロードバンド光源では、不要な波長や波長域の紫外線が含まれてしまう場合があるので、キュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線を、被処理基材の種類等に応じて、適切に選択できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−274052号公報
【特許文献2】特開2010−199045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、シャッター部材と可動自在の紫外線吸収フィルター部材と有する紫外線照射装置で用いる紫外線フィルター機構及びこの機構を有する紫外線照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の紫外線フィルター機構は、被処理基材に対向して紫外線照射光源を備えた紫外線照射装置に適用する紫外線フィルター機構であって、前記基材と前記光源との間に、開口部を有するシャッター部材と、開口部を有する少なくとも1層の紫外線吸収フィルター部材とが設けられ、さらに前記フィルター部材が前記シャッター部材に対して平行に可動できるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
前記フィルター部材が1層の場合、前記シャッター部材と前記フィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、前記シャッター部材と前記フィルター部材との開口部同士が重なるように構成され、また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、前記シャッター部材の開口部と前記フィルター部材の開口部以外の部分とが重なるように、かつ前記シャッター部材の開口部以外の部分と前記フィルター部材の開口部とが重なるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
前記フィルター部材が複数の層の場合、前記シャッター部材と前記フィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、シャッター部材の開口部と前記フィルター部材の開口部とが重なるように構成され、また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、前記シャッター部材の開口部と前記フィルター部材の少なくとも1層の開口部以外の部分とが重なるように構成されていることを特徴とする。
【0011】
前記シャッター部材が、紫外線遮断材料から構成されていることを特徴とする。
【0012】
前記フィルター部材は、任意の波長又は波長域の紫外線を吸収し、前記フィルター部材の下流側に配置される前記被処理基材に対して、前記フィルター部材を透過した波長又は波長域の紫外線を照射できるように構成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の紫外線照射装置は、前記した紫外線フィルター機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定のシャッター部材と可動自在の特定の紫外線吸収フィルター部材とを組み合わせることにより、フィルター有無の選択が容易となり、また、紫外線吸収波長の異なるフィルター部材を同時に複数層設置すれば、フィルター部材の組み合わせにより、被処理基材に適用する紫外線が有する波長又は波長域を目的に合わせて適宜選択できるという効果を奏する。
【0015】
また、適用できる紫外線の波長又は波長域を適宜選択できることから、紫外線照射光源の削減等に寄与できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の紫外線照射装置の一構成例を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の紫外線照射装置の別の構成例を模式的に示す断面図。
【図3】本発明の紫外線フィルター機構を構成するシャッター部材と1層のフィルター部材との一配置構成例を模式的に示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその断面図。
【図4】本発明の紫外線フィルター機構を構成するシャッター部材と1層のフィルター部材との別の配置構成例を模式的に示す図であり、(a)はその上面図、(b)はその断面図。
【図5】本発明の紫外線フィルター機構を構成するシャッター部材と2層のフィルター部材との一配置構成例を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の紫外線フィルター機構を構成するシャッター部材と2層のフィルター部材との別の配置構成例を模式的に示す断面図。
【図7】本発明におけるスリット形状の開口部を有するシャッター部材の一構成例を模式的に示す上面図。
【図8】本発明における四角形状の開口部を有するシャッター部材の一構成例を模式的に示す上面図。
【図9】本発明における菱形形状の開口部を有するシャッター部材の一構成例を模式的に示す上面図。
【図10】本発明における丸形形状の開口部を有するシャッター部材の一構成例を模式的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る紫外線フィルター機構の実施の形態によれば、この紫外線フィルター機構は、被処理基材に対向して紫外線照射光源を備えた紫外線照射装置に適用する紫外線フィルター機構であって、被処理基材と照射光源との間に、所定の形状の開口部を有するシャッター部材と、開口部を有する少なくとも1層の紫外線吸収フィルター部材とが設けられ、さらにフィルター部材がシャッター部材に対して平行に可動できるように構成され、例えば、フィルター部材をシャッター部材に対して平行に移動させるための公知の手段を備えてなり、このフィルター部材は、紫外線の任意の波長又は波長域を吸収し、このフィルター部材を透過した波長又は波長域を有する紫外線を、フィルター部材の下流側(二次側)に配置される被処理基材に対して照射できるように構成されている。上記紫外線吸収フィルター部材の開口部は、所定の形状・大きさを有し、シャッター部材の開口部の形状と同じであっても異なっていても良く、また、シャッター部材の開口部の大きさと同じであっても、大きくても小さくても良い。フィルター部材の開口部の形状及び大きさは、所定の波長又は波長域の紫外線を有効に透過せしめることができれば特に制限はない。また、上記した移動手段は、フィルター部材をシャッター部材に対して平行に移動させることができるものであれば、手動であっても、モーター等により自動的に移動できる手段であっても良い。
【0018】
フィルター部材が1層の場合、前記したシャッター部材とフィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、フィルター部材を可動させ、両者の開口部同士が重なるように配置して、それらの開口部を紫外線が通過して被処理基材に対して照射できるように構成されている。また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、フィルター部材を可動させ、シャッター部材の開口部とフィルター部材の開口部以外の部分とが重なるように、かつシャッター部材の開口部以外の部分とフィルター部材の開口部とが重なるように配置して、このフィルター部材に紫外線を供給して、照射される紫外線のうちキュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線を吸収させ、キュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線を透過せしめて、被処理基材に対して照射できるように構成されている。上記したように、両者の開口部同士が重なる、シャッター部材の開口部とフィルター部材の開口部以外の部分とが重なる、また、シャッター部材の開口部以外の部分とフィルター部材の開口部とが重なるということは、完全に重なっても一部が重なっても良い。紫外線の遮断・通過・透過が目的に合わせて実施できれば、特に制限はない。
【0019】
上記したように、フィルター部材が1層の場合、シャッター部材とフィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、シャッター部材とフィルター部材との開口部を紫外線が通過できるように配置され、また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、シャッター部材の開口部は、紫外線が通過できるようにかつその開口部以外の部分は紫外線が遮断できるように、そしてフィルター部材の開口部以外の部分は任意の波長又は波長域の紫外線が透過できるように配置される。
【0020】
上記したシャッター部材及び1層のフィルター部材を用いる場合、シャッター部材の下流側にフィルター部材を配置しても、その逆に配置しても、同様な効果を達成できる。シャッター部材の開口部及びフィルター部材の開口部の関係も上記した通りである。
【0021】
上記したように、シャッター部材が上流側に配置され、フィルター部材が下流側に配置されて、シャッター部材の開口部とフィルター部材の開口部以外の部分とが重なるように、かつシャッター部材の開口部以外の部分とフィルター部材の開口部とが重なるよう構成されている場合、光源から照射される紫外線は、シャッター部材の開口部以外の部分で遮断され、そしてこの開口部を通過した紫外線のうち、フィルター部材の開口部以外の部分(フィルター自体)でキュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線が吸収され、フィルター部材を透過したキュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線は、被処理基材の表面に供給される。
【0022】
シャッター部材が下流側に配置され、フィルター部材が上流側に配置されて、フィルター部材の開口部以外の部分とシャッター部材の開口部とが重なるように、かつフィルター部材の開口部とシャッター部材の開口部以外の部分とが重なるよう構成されている場合、光源から照射される紫外線のうち、フィルター部材の開口部以外の部分(フィルター自体)でキュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線が吸収され、フィルター部材を透過したキュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線は、シャッター部材の開口部を通過して被処理基材の表面に供給される。この場合、フィルター部材の開口部を通過する紫外線は、シャッター部材の開口部以外の部分で遮断される。
【0023】
フィルター部材が複数の層の場合、前記したシャッター部材とフィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、フィルター部材を可動させ、両者の開口部同士が重なるように配置して、それらの開口部を紫外線が通過して被処理基材に対して照射できるように構成されている。また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、フィルター部材を可動させ、シャッター部材の開口部とフィルター部材の少なくとも1層の開口部以外の部分とが重なるように配置して、フィルター部材の開口部以外の部分(フィルター自体)に照射された紫外線のうちキュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線を吸収させ、フィルター部材を透過したキュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線を被処理基材に対して照射できるように構成されている。
【0024】
上記したシャッター部材及び複数の層のフィルター部材を用いる場合、シャッター部材の下流側にこれらのフィルター部材を配置しても、その逆に配置しても良いし、また、これらのフィルター部材の間にシャッター部材を配置しても良い。このように配置した場合、光源から照射される紫外線の光路に関しては、上記した1層のフィルター部材を配置した場合のシャッター部材及びフィルター部材のそれぞれの開口部と開口部以外の部分との関係に準じた関係にあるので、その詳細については説明しない。
【0025】
上記したフィルター部材が複数の層からなる場合、各層の吸収波長の数値が異なるフィルター部材を用いて、全層の開口部以外の部分をシャッター部材の開口部と重なるように配置すれば、ブロードバンド光源を用いても、被処理基材に対して照射される紫外線の波長又は波長域がキュア処理においてより適するように選択され得る。また、吸収波長やキュア処理に必要な波長又は波長域に依存して、フィルター部材の任意の層の開口部以外の部分がシャッター部材の開口部と重なるように(すなわち、この任意の層の開口部がシャッター部材の開口部以外の部分と重なるように)、かつフィルター部材の残りの層の開口部がシャッター部材の開口部と重なるように(すなわち、この残りの層の開口部以外の部分が上記したフィルター部材の任意の層の開口部と重なるように)配置してもよい。これにより、各種の被処理基材のキュア処理に適用できるようになる。勿論、各フィルター部材は、キュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線を吸収し、キュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線を透過するような素材からなる部材を選択することは当然である。上記したフィルター部材の開口部及び開口部以外が重なるということは、上記したように、完全に重なっても一部が重なっても良く、紫外線の通過・透過が目的に合わせて実施できれば、特に制限はない。
【0026】
上記したように、フィルター部材が複数の層の場合、照射される紫外線の全波長を利用する時には、シャッター部材とフィルター部材とのそれぞれの開口部は、シャッター部材の開口部とフィルター部材の開口部とを紫外線が通過できるように配置され、また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、シャッター部材の開口部は、紫外線が通過できかつその開口部以外の部分は紫外線が遮断できるように、そして前記フィルター部材の少なくとも1層の開口部以外の部分は任意の波長又は波長域の紫外線が透過できるように配置される。
【0027】
前記したシャッター部材を構成する紫外線遮断材料は、紫外線遮断性を有する公知の金属・合金材料や樹脂材料であれば、特に限定されない。例えば、アルミニウムやステンレス等の金属や、アルミナ等のセラミックスや、樹脂等からなる材料を使用できる。また、紫外線遮断性金属等を含有せしめた樹脂、例えば、特開2010−143948号公報に記載の酸化亜鉛の粒子を含有せしめたフッ素樹脂からなる材料であっても良い。さらに、基体樹脂に紫外線吸収剤や金属ナノ粒子を配合した紫外線遮断性を有する樹脂でも良い。さらにまた、特開2010−229243号公報に記載の結晶性ポリグリコール酸系樹脂を含有する紫外線遮断材料でも良い。
【0028】
本発明に係る紫外線照射装置の実施の形態によれば、この装置は、上記した紫外線フィルター機構を備えており、その構成例について、以下、図1及び2を参照して説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る紫外線照射装置の実施の形態の一構成例を示す断面図である。紫外線照射装置11の上方外側に、紫外線照射光源12、その下流側(二次側)に以下詳細に説明するシャッター部材13及び紫外線吸収フィルター部材14が設置されており、紫外線照射装置11の上部には石英等から構成されている紫外線透過窓15(以下、石英窓15と称す)が設けられ、紫外線照射装置の上蓋として機能している。紫外線照射装置11の内部には、紫外線照射光源12、シャッター部材13、紫外線吸収フィルター部材14及び石英窓15と対向して被処理基材Sが基材支持部材16により支持されて載置される。被処理基材Sを加熱するための加熱手段17がこの基材の下方に設置されている。紫外線吸収フィルター部材14は図示していない公知の移動手段によりシャッター部材13に対して平行に移動させることができるように構成されている。
【0030】
図2は、本発明に係る紫外線照射装置の実施の形態の別の構成例を示す断面図である。図1と同じ構成要素は同じ参照番号を付してある。紫外線照射装置11の上方外側に、紫外線照射光源12、その下流側(二次側)に以下詳細に説明するシャッター部材13及び紫外線吸収フィルター部材14が設置されており、紫外線照射装置11の上部に石英窓15が設けられ、紫外線照射装置の上蓋として機能している。紫外線照射装置11の内部には、紫外線照射光源12、シャッター部材13、紫外線吸収フィルター部材14及び石英窓15と対向して被処理基材Sが基材支持ステージ18上に載置される。被処理基材Sを加熱するための加熱手段は設けられていない。図2の場合の紫外線吸収フィルター部材14もまた、図1の場合と同様に、図示していない公知の移動手段によりシャッター部材13に対して平行に移動させることができるように構成されている。
【0031】
図1及び2に示す紫外線照射装置11によれば、紫外線照射光源12から供給される紫外線を、シャッター部材13、紫外線吸収フィルター部材14及び石英窓15を介して被処理基材Sに対して照射して、所定の処理を行う。このフィルター部材14は、特定の波長又は波長域を有する紫外線を吸収し、このフィルターの二次側に設けられている被処理基材Sへは吸収された以外の波長又は波長域を有する紫外線が照射されることになる。被処理基材Sは、図1に示す装置11の場合には加熱手段17により所定の温度に加熱されている。
【0032】
図1及び2に示すシャッター部材13及び紫外線吸収フィルター部材14には、それぞれ開口部が設けられている。両者の開口部の形状は同じ形状を有し、かつその配列も同じ配列を有するように形成されており、所定の移動手段(図示せず)によりフィルター部材14を、シャッター部材13と平行に移動させることにより、それらの各形状が重なる場合、又は重ならない場合を適宜選択できるように構成されている。これにより、シャッター部材13と紫外線吸収フィルター部材14との各開口部が重なる場合は、紫外線照射光源12から照射された紫外線は直接被処理基材Sに到達し、重ならない場合は、この光源12から照射された紫外線はシャッター部材13を通過し、直接フィルター部材14へと達する。そのため、フィルター部材14で吸収された波長又は波長域を有する紫外線は被処理基材Sには届かず、紫外線処理に有効な所望の波長又は波長域を有する紫外線のみが被処理基材Sに達し、所定の紫外線処理が行われ得る。
【0033】
図1及び2では、紫外線吸収フィルター部材14として1層の例について示したが、このフィルター部材を積層することにより、被処理基材Sの紫外線処理に合わせてより適切な波長又は波長域を有する紫外線を選択して透過させ、必要な波長又は波長域を有する紫外線のみを被処理基材Sに照射することができるというメリットがある。
【0034】
図1及び2では、紫外線照射光源12の下流側にシャッター部材13、紫外線吸収フィルター部材14及び石英窓15の順番で設けた構成例について説明したが、上記したようにシャッター部材13と紫外線吸収フィルター部材14とを逆に設けても、同じ効果が得られる。
【0035】
次に、本発明の紫外線フィルター機構における、開口部を有するシャッター部材と、これと同じ形状及び配列の開口部を有する紫外線吸収フィルター部材との配置例について、図3〜6を参照して説明する。
【0036】
図3(a)及び(b)は、シャッター部材13と1層のフィルター部材14との一配置構成例を模式的に示すものであり、図3(a)は上面図であり、図3(b)はその断面図である。図3(b)に示すように、シャッター部材13とフィルター部材14とは、両者のスリット状の各開口部が重なるように配置されている。そのため、紫外線照射光源から照射された紫外線は、シャッター部材13とフィルター部材14との開口部を通過して被処理基材へと照射され、そこで基材の表面を紫外線処理することができるように構成されている。
【0037】
図4(a)及び(b)は、シャッター部材13と1層のフィルター部材14との別の配置構成例を模式的に示すものであり、図4(a)は上面図であり、図4(b)はその断面図である。図4(b)に示すように、シャッター部材13とフィルター部材14とは、シャッター部材13の開口部にフィルター部材14の開口部以外の部分が重なるように構成されている。そのため、紫外線照射光源から照射された紫外線は、シャッター部材13の開口部を通過し、その開口部以外の部分では遮断される。この開口部を通過した紫外線は、フィルター部材14の開口部以外の部分(フィルター自体)に照射され、キュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線は吸収され、キュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線のみが透過されて被処理基材へと照射され、そこで基材の表面を紫外線処理することができるように構成されている。
【0038】
図5は、シャッター部材13と2層のフィルター部材14a及び14bとの一配置構成例を模式的に示す断面図である。図5に示すように、シャッター部材13とフィルター部材14aとは、シャッター部材13の開口部にフィルター部材14aの開口部以外の部分が重なるように構成されている。そのため、紫外線照射光源から照射された紫外線は、シャッター部材13の開口部を通過し、その開口部以外の部分では遮断される。この開口部を通過した紫外線は、フィルター部材14aの開口部以外の部分に照射され、キュア処理に不要な波長又は波長域を有する紫外線は吸収され、キュア処理に必要な波長又は波長域を有する紫外線のみが透過される。フィルター部材14aの下流側に配置されたフィルター部材14bは、その開口部がフィルター部材14aの開口部以外の部分に重なるように構成されているので、フィルター部材14aを透過した紫外線はフィルター部材14bの開口部を通過して、被処理基材へと照射され、そこで基材の表面を紫外線処理することができるように構成されている。このように、2層のフィルター部材を用いても、任意に所定の波長又は波長域を有する紫外線を利用することが可能である。
【0039】
図6は、シャッター部材13と2層のフィルター部材14a及び14bとの別の配置構成例を模式的に示す断面図である。図6に示すように、シャッター部材13とフィルター部材14aとは、シャッター部材13の開口部にフィルター部材14aの開口部以外の部分が重なるように構成され、また、フィルター部材14bの開口部以外の部分も同様にシャッター部材13の開口部に重なったフィルター部材14aの開口部以外の部分に重なって積層されている。そのため、紫外線照射光源から照射された紫外線は、シャッター部材13の開口部を通過し、その開口部以外の部分では遮断される。この開口部を通過した紫外線は、フィルター部材14aの開口部以外の部分に照射され、所定の不要な波長又は波長域を有する紫外線は吸収され、残りの波長又は波長域を有する紫外線は透過されて、次のフィルター部材14bへと照射される。このフィルター部材14bの開口部以外の部分に照射された紫外線のうち、さらに所定の不要な波長又は波長域を有する紫外線が吸収され、残りの必要な波長又は波長域を有する紫外線のみが透過されて基材へと照射され、そこで被処理基材の表面を紫外線処理することができるように構成されている。このように、フィルター部材を積層することにより、被処理基材Sの処理に合わせてより適切な波長を選択し、透過させ、必要な波長又は波長域を有する紫外線のみを被処理基材Sに照射することができる。
【0040】
以下、本発明の紫外線フィルター機構を構成するシャッター部材の開口部の各種形状について、図7〜10を参照して説明する。この開口部の形状及び配列はこれらの図に示す例に制限される訳ではなく、紫外線が透過され、最終的に基材表面へ均一に達することができる形状及び配列であればよい。
【0041】
図7は、スリット形状の開口部を有するシャッター部材の一例であり、このスリット形状の開口部は、縦方向又は横方向に設けられていても、斜め方向に設けられていても良い。図8は、四角形状の開口部を有するシャッター部材の一例であり、この四角形状は多角形状であっても良い。図9は、菱形形状の開口部を有するシャッター部材の一例である。そして、図10は円形形状の開口部を有するシャッター部材の一例であり、この円形形状は楕円形状であっても良い。上記各形状は、規則正しく配列していることが好ましいが、不規則に配列していても所定の目的を達成することができれば構わない。
【0042】
また、紫外線吸収フィルター部材についても、上記シャッター部材の開口部と同じ形状、かつ同じ配列の開口部を有する部材を用いることが必要である。フィルター部材の開口部とシャッター部材の開口部とが重なる場合、重ならない場合を適宜選択できるようにするためである。この場合、それらの開口部同士が重なっていると、紫外線照射光源から照射される紫外線は直接被処理基材に到達し、重なっていないと、光源から照射される紫外線はフィルター部材に達し、このフィルター部材で吸収されずに透過する紫外線が被処理基材に到達する。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、特定のシャッター部材と特定の紫外線吸収フィルター部材とを連動して組み合わせることにより、フィルター有無の選択が容易となる。また、紫外線吸収波長の異なるフィルター部材を同時に複数層設置することができ、その結果、フィルター部材の積層により被処理基材に適用できる波長又は波長域を有する紫外線を目的に合わせて適宜選択できることから、紫外線光源の削減等に寄与できる。従って、本発明は、例えば、多層配線用絶縁膜としての多孔質絶縁膜の製造装置としての紫外線照射装置の技術分野で有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
11 紫外線照射装置 12 紫外線照射光源
13 シャッター部材 14 紫外線吸収フィルター部材
14a フィルター部材 14b フィルター部材
15 紫外線透過窓(石英窓) 16 基材支持部材
17 加熱手段 18 基材支持ステージ
S 被処理基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基材に対向して紫外線照射光源を備えた紫外線照射装置に適用する紫外線フィルター機構であって、前記基材と前記光源との間に、開口部を有するシャッター部材と、開口部を有する少なくとも1層の紫外線吸収フィルター部材とが設けられ、さらに前記フィルター部材が前記シャッター部材に対して平行に可動できるように構成されていることを特徴とする紫外線フィルター機構。
【請求項2】
前記フィルター部材が1層の場合、前記シャッター部材と前記フィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、前記シャッター部材と前記フィルター部材との開口部同士が重なるように構成され、また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、前記シャッター部材の開口部と前記フィルター部材の開口部以外の部分とが重なるように、かつ前記シャッター部材の開口部以外の部分と前記フィルター部材の開口部とが重なるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線フィルター機構。
【請求項3】
前記フィルター部材が複数の層の場合、前記シャッター部材と前記フィルター部材とのそれぞれの開口部は、照射される紫外線の全波長を利用する時には、シャッター部材の開口部と前記フィルター部材の開口部とが重なるように構成され、また、照射される紫外線のうち任意の波長又は波長域を有する紫外線を利用する時には、前記シャッター部材の開口部と前記フィルター部材の少なくとも1層の開口部以外の部分とが重なるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線フィルター機構。
【請求項4】
前記シャッター部材が、紫外線遮断材料から構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線フィルター機構。
【請求項5】
前記フィルター部材は、任意の波長又は波長域の紫外線を吸収し、前記フィルター部材の下流側に配置される前記被処理基材に対して、前記フィルター部材を透過した波長又は波長域の紫外線を照射できるように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線フィルター機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線フィルター機構を備えていることを特徴とする紫外線照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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