紫外線照射装置、ベルト重合機、及び、水溶性重合体の製造方法
【課題】品質が一定で残留単量体含量の少ない高品質の水溶性重合体を効率よく製造することができる紫外線照射装置、紫外線照射装置を備えたベルト重合機及びそれを用いた水溶性重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置であって、該紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下である紫外線照射装置である。
【解決手段】ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置であって、該紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下である紫外線照射装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置、ベルト重合機、及び、水溶性重合体の製造方法に関する。より詳しくは、増粘剤や凝集剤として優れた機能を発揮し、各種工業製品の原料等として用いることができる水溶性重合体の製造方法に好適な紫外線照射装置、そのような装置を備えたベルト重合機、及び、それを用いた水溶性重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性重合体は、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸湿剤、乾燥剤等としての優れた基本性能を有することから、種々の用途において適用され、需要の増大が期待されている。例えば、掘削土処理剤や湿布薬・パップ剤用添加剤、浚渫土処理剤等の他、医薬、塗料、製紙、洗剤や化粧品、水処理、繊維処理、土木建築や農・園芸、接着剤、窯業、製造プロセス、その他の分野において多岐にわたって使用されている。また、適度な粘度を有し、残存する単量体量等が少ない優れた高品質の水溶性重合体は、その性能や安全性の面から食品や飼料、医薬品の用途に好適に適用することができる。
【0003】
従来の水溶性重合体の製造方法としては、ベルト重合機のベルト基材上に単量体を展開して光を照射し、光重合させて重合体を得る製造方法が用いられている。ベルト重合によって工業的な生産性が向上されることになるが、これに関しては、例えば、可動ベルト上で、アクリル系単量体溶液層の上面および下面を水で冷却しながら、溶液層上に設置した紫外線ランプによりアクリル系単量体を連続的に光重合させ、得られる重合体をドラムを介して紫外線ランプの上部に移行してから更に光照射を行うことで光重合させるアクリル系重合体の製造方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
また光重合に関しては、水溶性または水膨潤性の重合体を製造する方法であって、水性混合物を形成する工程と、水性混合物を1000μWcm−2までの強度で紫外線照射に付すことによって重合を実施する工程と、その生成物を、1000μWm−2を超える紫外線照射に付す工程とを含む方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に、第一段の光照射で単量体の大半を重合せしめた後、第二段以降の後照射で、光強度を漸増しながら光照射重合を行う水溶性ビニル系重合体の製造方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献1】特許第3964348号明細書(第1、10頁等)
【特許文献2】特表2004−529993号公報(第2、16、17頁等)
【特許文献3】特許第3621554号明細書(第1、7頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いて水溶性重合体等を光重合させると、光重合条件によっては、あるいはベルト基材面上で光重合される位置による差、例えば、ベルト中央部とベルト端部とにおいて、水溶性重合体の品質が安定しないことが判った。具体的には、従来技術に開示のある条件だけでは、ベルト中央部とベルト端部とにおいて残存モノマー量に差のある重合体が製造されたり、ベルト端部において不溶解分が多い重合体が製造されたりする場合があった。よって、例えば、上述したような従来技術の光ベルト重合条件による重合方法では、より物性(例えば、分子量、あるいは重合度合い)が均一で、残存モノマーも少なく、品質が一定の水溶性重合体等を効率よく安定に、かつ連続的に製造することは難しく、これらの解決すべき課題があるという結論に至った。
本発明者は、上記課題を解決するためには、先ず、照射される紫外線を一定にかつ均一に特定するということ、すなわち、光ベルト重合の技術分野においてはこれまでの予測を超えて光の均一性が非常に重要であるという今までにはなかった着想を得て、それを実現するための手法を種々検討した。その結果、どのような紫外線発生器をどのように配列すれば、照射される紫外線の量がより均一になり、工業的にも安定に、連続して水溶性樹脂の光ベルト重合が行えるか等を見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
また、従来の技術においては、光重合を行う紫外線発生器として水銀ランプを用いているものもあるが、水銀ランプは通常、図12で示すような形状をしているものであり、このようなランプの使用では、ベルト基材面における紫外線の均一性を向上させるには限界があることを見いだした。
更に、紫外線の照射強度に関して、上述した従来技術においては、重合開始時には比較的小さくし、重合後半には紫外線の照射強度を大きくすることで、不用意な若しくは急な重合反応や、重合熱による加熱を防止しているものであるが、この技術のみによっては上記課題を解消することはできないものであることをも見いだした。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、品質が一定で残留単量体含量の少ない高品質の水溶性重合体を効率よく製造することができる紫外線照射装置、紫外線照射装置を備えたベルト重合機、及び、それを用いた水溶性重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点に鑑み、検討した結果、ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置を用いて水溶性重合体含水ゲルを製造する方法において、紫外線を照射するにあたり、ある特定の照射条件下で照射を行うこと、あるいはその照射強度を制御するようにして光重合を行うことが上記課題解決にとって有効であることを見いだした。すなわち、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下であるようにすると、重合用溶液に対する光量の均一性を水溶性重合体の製法に充分に適したものとすることができ、これにより、均一で高品質な製品を安定的に製造することができることを見いだした。さらに、重合過程における反応の急激化や他の工程上のトラブルもなく、光重合を行えることを見いだした。
また光照射強度をより均一にすることについて鋭意検討した結果、例えば、紫外線発生器の配列や構成を工夫する(高密度に配列する、向きを工夫する、紫外線を反射するように構成する)ことや、一般的に多用されている水銀ランプではなく、棒状(直線状)の蛍光灯型紫外線発生器を特定の使用方法で用いることによって上記分布比率Xを15%以下とすることができることを見いだした。
更に、従来の技術の中には、蛍光ランプを用いて重合を行っているものもあるが調光できるものではなかったため、これを調光可能なものとすることによって、得られる重合体の均一性を保持した上で、容易に製造条件を変更することができ、利便性が向上し、ひいては生産性の向上も図ることができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置であって、該紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下である紫外線照射装置である。
本発明はまた、上記紫外線照射装置を備えたベルト重合機でもある。
本発明は更に、上記ベルト重合機を用いて、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程を含む水溶性重合体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の紫外線照射装置は、ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用のものである。上記紫外線照射装置は、ベルト基材上に展開された重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程において使用される製造装置である。このような紫外線照射装置を備えるベルト重合機では、ベルト基材が特定の方向に進行しながら重合が行われ、光重合された重合体が重合機から取り出された後、ベルト基材は反転して重合用溶液が展開される位置に戻り、これが繰り返されることになる。本明細書では、ベルト基材が進行する方向をベルト基材の進行方向という。なお、「ベルト基材の上方」とは、ベルト基材よりも上側であることを意味するものである。上記紫外線照射装置は、少なくとも一部がベルト基材の上側にあればよく、全体がベルト基材の上側にある必要はない。
【0008】
上記紫外線照射装置は、側板及び天井板を備え、当該天井板は側板で支持されてベルト基材の上方に設置されていればよい。上記天井板は、ベルト基材面に対して平行又は略平行に設置され、上記側板は、ベルト基材の端部付近に鉛直又は略鉛直に天井板の端部を支えるように設置されている形態が好適である(例えば、図14参照。)。このような、ベルト基材面の上方を覆うように天井板及び側板が設置されている形態が好ましい形態である。
これによって、ベルト基材面に展開された重合用溶液が保護され、また、不活性ガスを重合機に導入することによって重合を進行しやすくすることが可能となる。
【0009】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、天井板のベルト基材に向いた側に取り付けられており、該蛍光灯型紫外線発生器からベルト基材に向かって紫外線が照射されることになる。蛍光灯型紫外線発生器は、棒状(直線状)等の蛍光灯を備えた紫外線発生器であり、この棒状の蛍光灯に平行な方向を長軸方向という。なお、蛍光灯の形状は、棒状以外にも、U字やS字型等のように種々あり得るが、配列の容易さ、光量分布の均一性の確保、あるいは、メンテナンスのしやすさ等の点で、棒状(直線状、直管状)が好ましい。
【0010】
上記紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下である。
上記ベルト基材面における紫外線強度の平均値A及び標準偏差σは、ベルト基材面における複数の測定点で紫外線強度を測定して算出することになる。
上記紫外線強度の平均値Aは、製造される重合体の用途や、重合に用いる原料等によって適切な強度に調整すればよい。例えば、水溶性重合体を製造する場合には、0.1〜100W/m2とすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜50W/m2であり、更に好ましくは、1〜20W/m2である。上記「ベルト基材面」とは、ベルト基材の上面(重合用溶液が展開される面)のことである。
本発明においては、蛍光灯型紫外線発生器からの紫外線があたる重合ゾーンの全体を実質的に測定して、分布比率Xが15%以下となるように設定すればよいが、ある特定の部分(領域)だけを測定すれば、分布比率Xが15%を超えるとしても、本発明の効果(例えば、重合ゾーンの中央部と端部との残留単量体量、不溶解分の値が小さくなること)が奏されることになれば、そのような部分的に分布比率Xが15%以下を外れる形態であってもよい。好ましい形態としては、重合ゾーンの全体を実質的に測定して分布比率Xが15%以下となる形態である。
【0011】
上記蛍光灯型紫外線発生器の紫外線強度は、例えば、下記の条件において測定することができる。
装置名:UVメーター
製造会社:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー:UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm〔中心ポイント〕)
【0012】
上記光量分布(光強度分布)は、測定点がベルト基材の進行方向に沿って実質的に並列に配置され、かつベルト基材の幅方向に沿って実質的に並列に配置されている形態(例えば、図1参照。)で測定するものであることが好ましい。なお、測定は、重合用溶液(反応液)が展開されていないベルト基材面において測定すればよい。
上記測定点(光量計が配置される点)は、ベルト基材の進行方向に100mm以上、400mm以下の等間隔とし、ベルト基材の幅方向に100mm以上、400mm以下の等間隔とすることが好ましい。より具体的には、後述する実施例のように、光量計がベルト基材の進行方向に180mmの等間隔で配置され、ベルト基材の幅方向に177mmの等間隔で配置される形態が挙げられる。
測定点の個数は、10〜50個/m2であることが好ましく、より好ましくは、20〜40個/m2であり、更に好ましくは、30〜35個/m2である。より具体的には、図1で示すように、測定点が、33個/m2で等間隔で配置される形態が挙げられる。
【0013】
上記紫外線照射装置においては、上述した光強度の測定結果に基づいてその分布が少なくなり、上記分布比率Xの値が15%以下となるように、ベルト重合機における蛍光灯型紫外線発生器の配列や構成(高密度に配列する、向きを工夫する、紫外線を反射するように構成する等)、ベルト基材幅(製品幅)等を調整することになる。より好ましい構成としては、複数の蛍光灯型紫外線発生器によって生じる光の干渉による紫外線強度のピーク(極大値)の発現が実質的に1つ又は概ね1つとなるようにする構成である。
【0014】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に配列された構造を有するものであってもよいし、ベルト基材の進行方向に沿って(進行方向に対して平行方向に)配列された構造を有するものであってもよい。ベルト基材面における光強度をより均一にする(光強度分布を少なくする)観点からは、蛍光灯型紫外線発生器は、長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されていることが好ましい。これによって、また、蛍光灯型紫外線発生器の設置密度を工夫することによって、光強度分布をより均一なものとすることができる。
本明細書中で「蛍光灯型紫外線発生器の設置密度」とは、天井板を上方(ベルト基材面の法線方向)から見た場合に、天井板の面積に対して蛍光灯型紫外線発生器が設けられている面積で定義されるものである。
【0015】
なお、図13は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置されている場合の紫外線照射装置の平面模式図(ベルト基材面の法線方向から観察したときの模式図)であるが、図13(a)のような配置であると、ベルト基材上で重合体を製造する場合、製品幅27における端部28では直上に蛍光灯型紫外線発生器3が設置されていないこととなる。そのため、端部28と中央部29とで光照射の強度が変化し、得られる重合体の品質にムラが生じるおそれがある。また、図13(b)のように、製品幅27から蛍光灯型紫外線発生器3がはみ出しているような形態である場合には、端部28の直上に蛍光灯型紫外線発生器が設置されることとなるが、蛍光灯型紫外線発生器3がはみ出した部分からの紫外線は、重合用溶液に照射されないものとなるため、無駄な電力を消費してしまうことになる。
そこで、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されたもの(例えば、図3参照。)とすることによって、製品幅に依存せず、端部であっても、中央部であっても充分に紫外線を照射することができる。また、図13(b)のようにベルト基材から紫外線発生器がはみ出すことなく配置されるため、電力消費を抑制し、重合用溶液に対して蛍光灯一本当たりの有効照射面積をより大きなものとすることができる。すなわち、より効率的かつ経済的に水溶性重合体を製造することが可能となる。
【0016】
なお、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列された構造においては、蛍光灯型紫外線発生器をベルト基材の進行方向に沿って1つ又は2つ以上を直列に並べ、かつベルト基材の進行方向に対して垂直方向には、1つ又は2つ以上を並列に並べた形態とすることが好ましい。例えば、図3は、蛍光灯型紫外線発生器が、ベルト基材の進行方向に沿って実質的に直列され、かつベルト基材の幅方向に沿って実質的に並列されている形態を示す斜視模式図である。蛍光灯型紫外線発生器は、2列以上で並列される形態が好ましい。より好ましくは、3列以上であり、更に好ましくは、4列以上である。
【0017】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列された領域、当該進行方向に対して垂直方向に配列された領域の両方の領域を有するものであってもよい。例えば、紫外線照射装置に蛍光灯型紫外線発生器が取り付けられる際に、先ず重合用溶液(製品幅)上からはみ出さないように蛍光灯型紫外線発生器がベルト基材の進行方向に沿って配列し、当該方向に配列すれば蛍光灯型紫外線発生器が終端部からはみ出してしまう領域においては、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に配列された形態が挙げられる。
これによれば、重合前段部側において有効照射面積及び照射強度をより優れたものとすることができる。更に、当該進行方向に沿って配列すると蛍光灯型紫外線発生器が重合用溶液上からはみ出てしまう箇所においては、上記垂直方向に配列されることにより、重合用溶液の外部域(ベルト基材の終端部よりも先の領域)まで紫外線を照射することによる消費電力の無駄を実質的に防止することができる。
【0018】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、長軸どうしの間隔が40cm以下となるように備えられていることが好ましい。上記長軸どうしの間隔とは、蛍光灯型紫外線発生器の中心を通る蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向に沿った直線どうしの間隔である。上記長軸どうしの間隔は、例えば図2における距離Bである。距離Aは、本明細書中、蛍光灯型紫外線発生器の長軸どうしの間隔には該当しないものである。上記間隔としては、35cm以下であることがより好ましく、更に好ましくは、30cm以下であり、特に好ましくは、25cm以下であり、最も好ましくは、20cm以下である。これは、上記分布比率Xの値が本発明によって特定される範囲に入るようにするための一つの好ましい手法である。
【0019】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、製品幅(ベルト基材上の製品が製造される領域の幅)の端部付近の直上に設置されることが好ましい。これにより、端部付近で重合用溶液に照射される光量が少なくなることを抑制することができ、重合用溶液に対して照射される光量の均一性がより向上できることになる。
【0020】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が低い重合前段部と、設置密度が高い重合後段部とを有するものであることが好ましい。言い換えれば、上記紫外線照射装置は、ベルト基材上に少なくとも重合前段部と重合後段部とを有し、該重合前段部では蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が重合後段部より低くなるように蛍光灯型紫外線発生器が備えられていることが好ましい。このように異なる強度の近紫外線を2段階に分けて照射することにより、単量体の重合が促進され、得られる重合体を充分に分子量の高いものとし、且つ重合体中に残存する単量体を低減でき、得られる水溶性重合体を品質の高いものとすることができる。
なお、重合前段部は、ベルト基材上の重合開始側の領域であり、重合後段部は、ベルト基材上の重合終端側の領域である。上記重合前段部と後段部とは繋がっていてもよいし、その間に別の光強度の紫外線が照射される領域があってもよい。すなわち、2段階以上で段階的に強度が調整されていてもよい。
【0021】
本明細書中、上記設置密度が低い重合前段部は、一次重合ゾーンともいい、上記設置密度が高い重合後段部は、二次重合ゾーンともいう。上記一次重合ゾーンは、重合率が90%以下、すなわち、使用した全原料モノマーに対する残存モノマー量の割合が10質量%を超える領域であり、まだ盛んに重合が起こっている領域である。二次重合ゾーンは、一次重合ゾーンで残存したモノマー量を減らし、重合を完成させるゾーンである。
一次重合ゾーンと二次重合ゾーンとを有するような場合には、それぞれの領域で上記分布比率Xを算出することとなる。
上述したように、単量体成分が充分に存在し、より精度が高い重合の制御が望ましい一次重合ゾーンで分布比率Xが15%以下であればよく、工程上特に問題がなければ、残存したモノマー量を減らす二次重合ゾーンでは、上記分布比率Xが15%を超える形態であってもよい。
【0022】
上記のように大部分の単量体を重合させる一次重合ゾーンと、実質的に重合を完結させる二次重合ゾーンとを設けた形態である場合、通常では、二次重合ゾーンの方が一次重合ゾーンよりも紫外線強度が高くなるように設定されることになる。本願発明においてこのような形態の場合、一次重合ゾーンにおいて分布比率Xが15%以下となるようにすればよい。ただし、一次重合ゾーンと二次重合ゾーンとの境界近傍では、紫外線強度が高い二次重合ゾーンからの光が一次重合ゾーンに入り、光が干渉するため、通常では、一次重合ゾーンの最後の部分では分布比率Xが15%以下とはならない。しかし、このような部分が一次重合ゾーンの一部に過ぎず、一次重合ゾーンの大部分を、分布比率Xが15%以下で均一になっているようにすれば本願発明の効果を充分に発揮することができる。
上記のことから、一次重合ゾーンの全面積を100%とすれば、分布比率Xが15%以下である面積が80%以上となるようにすることが好ましい。より好ましくは85%以上、更に好ましくは、90%以上である。すなわち、一次重合ゾーンのうち、上記の割合以上の面積部分が二次重合ゾーンからの光の影響を実質的に受けず、したがって、一次重合ゾーンの大部分が均一な光の分布比率となるようにすることが好ましい。通常では、一次重合ゾーンだけを点灯したときに分布比率Xが15%以下となるようにすれば、一次重合ゾーンの距離が充分に長いので、二次重合ゾーンの影響を受けたとしても、上記面積は80%以上となる。なお、上記面積とはベルト基材面上の光が照射されている面積のことである。
また、本発明の好ましい形態である、一次重合ゾーンと二次重合ゾーンとを設ける場合、上述したように、通常では二次重合ゾーンの方が紫外線強度が高くなるように設定されることから、同様の蛍光灯型紫外線発生器を用いる場合、その配置間隔を狭くすることになる。したがって、分布比率Xとしては、一次重合ゾーンよりも二次重合ゾーンの方が低くなるが、本発明のより好ましい形態は、上記のように一次重合ゾーンを分布比率Xが15%以下になるように低く設定するところにある。
【0023】
上記重合前段部(蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が低い領域)においては、10W/m2以下の近紫外線を用いて光を照射することが好ましい。10W/m2を超える場合、光量が高過ぎて後述する一次ピーク温度が80℃を超えるおそれがあり、そのような場合、充分に高い分子量の水溶性重合体を得ることができない、また、不溶解分が多く発生するおそれがある。より好ましくは、8W/m2以下であり、更に好ましくは、6W/m2以下である。特に好ましくは、4W/m2以下である。下限値としては、0.2W/m2であることが好ましい。0.2W/m2未満であると、重合反応を充分に促進できないおそれがある。より好ましくは、1.0W/m2であり、更に好ましくは、1.5W/m2であり、特に好ましくは、3W/m2である。
【0024】
上記10W/m2以下の近紫外線は、照射時間が3分以上であることが好ましい。より好ましくは、5分以上であり、更に好ましくは、10分以上である。照射時間の上限としては、100分未満であることが好ましい。100分以上である場合には、生産性が低くなり、本発明の作用効果が充分に得られないことになる。より好ましくは、80分未満であり、更に好ましくは、60分未満である。
【0025】
上記重合後段部(蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が高い領域)においては、10W/m2を超える近紫外線を用いて光を照射することが好ましい。照射する近紫外線が10W/m2以下である場合、光量が低過ぎて残存する単量体を充分に減少させることができないおそれがある。より好ましくは、12W/m2を超えるものであり、更に好ましくは、13W/m2を超えるものである。上限値としては、100W/m2以下であることが好ましい。100W/m2を超えるものであると、照射強度が強過ぎて、製品が着色したり、充分に高い分子量の重合体が得られないおそれがある。より好ましくは、80W/m2以下であり、更に好ましくは、50W/m2以下である。特に好ましくは、17W/m2以下である。
上記重合後段部における近紫外線の照射時間としては、残存する単量体を充分に低減できる照射時間であれば特に限定されないが、1〜30分であることが好ましい。より好ましくは、3〜20分であり、更に好ましくは、5〜15分である。
【0026】
上記設置密度が低い領域と高い領域のベルト基材の進行方向における長さの比は、60/40〜95/5であることが好ましい。より好ましくは、70/30〜90/10であり、更に好ましくは、75/25〜85/15である。これにより本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0027】
本発明の紫外線照射装置における上記蛍光灯型紫外線発生器は、調光可能な蛍光灯型紫外線発生器であることが好ましい。これにより、紫外線発生器の種類や数を変更することなく光量を変えることが可能となる。また、パンチングメタル等の減光板を挿入することなしに減光することが可能となる。従って簡便に光照射強度を重合に好適なものに調整できる紫外線照射装置とすることができる。中でも、光強度の微調整が可能である点で、インバーター制御により照射強度を増減させることにより、照射強度を変更する形態が好ましい。これにより、重合用溶液の反応の急激化を防ぐことができるとともに、光強度の均一性をより優れたものとすることができ、本発明の効果をより充分に発揮することができる。インバーター制御に用いる調光器としては、例えばDF−70161−PD(調光器、商品名、東芝ライテック社製)が挙げられる。
なお、本発明の効果が損なわれることがない限り、照射強度の異なる蛍光灯型紫外線発生器を用いたり、蛍光灯型紫外線発生器に反射笠を付けて照射強度を増したり、パンチングメタル等の減光板を設置する等して照射強度を減少させたりすることにより、照射強度を変更することも勿論可能である。
【0028】
本発明の紫外線照射装置について、好ましい形態を図4〜6を用いて説明する。
図4(a)〜(e)は、簡易型紫外線照射装置における好適な形態を示す模式図である。図4(a)は、簡易型紫外線照射装置本体を上方から観察した場合の平面模式図であり、(b)は紫外線照射装置本体の断面模式図である。図4(c)は、簡易型紫外線照射装置の上蓋を示す平面模式図であり、(d)は、該上蓋の断面模式図である。図4(e)は、簡易型紫外線照射装置本体の一部を示す断面模式図である。
上蓋10が天井板であり、装置本体7を構成する鉛直方向の板が側板である。上蓋10、装置本体7に使用されている天井板及び側板の部材はSUS304である。なお、上蓋の重量は、一枚11kgであり、これを4枚用いている。装置本体の重量は95kgである。図4中には、光量計(モデルUVA−365、カスタム社製)のセンサーを挿入するために開ける側面の小穴を記載していないが、例えば、簡易型紫外線照射装置中で紫外線の強度分布を測定する際には、側面に小穴を開けて使用することが好ましい。図4に示す簡易型紫外線照射装置は、重合熱に伴う水蒸気を遮断する目的で防護用ガラス(強化ガラス板)6を蛍光灯型紫外線発生器3の下方に設置したものである。
また、図5は、簡易型紫外線照射装置中の蛍光灯型紫外線発生器3の好ましい配置形態を示す上面図である。例えば、(A)と(H)の組み合わせを同一インバーターで光強度を制御し、同様に、(B)と(G)、(C)と(F)、(D)と(E)をそれぞれ同一インバーターで制御することができる。これにより光強度がより均一になるように調整することもできる。なお、上記蛍光灯型紫外線発生器3は、内蓋10に取り付けられたものであり、蛍光灯型紫外線発生器3が取り付けられた面が簡易型紫外線照射装置の内側となるように設置する。
図6は、簡易型紫外線照射装置の側面図である。光量計挿入穴(本明細書中、「UVセンサー挿入穴」ともいう)は、一方の側面で8箇所ずつ(両側面で16箇所)設けられている。
以上はすべて蛍光ランプの間隔が248mmの図面である。また、「簡易型紫外線照射装置」とは、光強度分布を測定するために制作されたもので、実験室でも使用できるような小型の紫外線照射装置を表し、後述する実施例3以降で用いているベルト重合機に設置されるようなものではない。
【0029】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、中紫外線発生器及び/又は近紫外線発生器であることが好ましい。中でも、近紫外線発生器であることが特に好ましい。これにより、重合速度を適度な速度に制御することができ、また、ポリアクリル酸ナトリウムのような超高分子量重合体が必要とされる分野において、高分子量の水溶性重合体を得ることができる。
上記近紫外線発生器としては、蛍光灯型のブラックライト(本明細書中、蛍光灯状の蛍光ランプともいう)が好ましく、例えばFHF32BLB(調光可能な管長1.2mの蛍光ランプ、商品名、東芝ライテック社製)が挙げられる。上記FHF32BLBは、定格ランプ電力が45W/本であり、インバーターによる出力制御(調光)が可能である。
上記蛍光灯型のブラックライトの定格ランプ電力としては、10〜45W/本であるものが好ましい。
なお、本発明の効果が充分に発揮される限り、蛍光灯型紫外線発生器以外の紫外線発生器を更に用いてもよい。
【0030】
上記近紫外線発生器の波長領域としては、ベルト面における光分布の全体を100%とすると、波長分布における300nm以上、400nm以下の部分が70%以上であることが好適である。70%未満であると、300nm未満の波長の紫外線を照射した場合、重合反応が急激化し、残存単量体の量が少ない水溶性重合体が得られない場合がある。より好ましくは、80%以上であり、更に好ましくは、90%以上であり、特に好ましくは、実質的に100%である。
【0031】
本発明の紫外線照射装置において、構造的に好適な形態を以下に説明する。
上記紫外線照射装置は、側板及び天井板を備え、天井板及び側板の内面で紫外線を反射するように構成されていることが好ましい。このような形態は、蛍光灯型紫外線発生器から天井板の内面及び側板の内面に照射される光が乱反射されて重合用溶液側に照射されることになり、重合用溶液に対して照射される光強度をより充分なものとするとともに、更に均一性を高めることができるため好ましい形態である。なお、「天井板及び側板の内面」とは、天井板及び側板のベルト基材面側に向いている面のことを指す。例えば、図14では、天井板23及び側板24がベルト基材25を覆うように配置され、天井板の内面と側板の内面24aとによって紫外線が反射されるように構成されている。
【0032】
上述の紫外線を反射する材料で構成されるという技術範囲には、紫外線が反射される材質の採用、あるいは紫外線の反射を促す表面処理であればよく、このような形態が本発明の好ましい形態の一つとなる。例えば、金属以外の材質であっても上記内面が紫外線を反射できる材料で構成されていればよい。具体的には、蛍光灯型紫外線発生器設置室の内面と重合室の内面とが、同一又は異なって、例えば下記(1)〜(3)の形態により構成されたものであってもよい。(1)通常の金属板単独である形態、(2)通常の金属板単独又はそれ以外のものに、更に反射フィルムを貼った形態、(3)鏡等である形態。中でも、(1)通常の金属板単独である形態が好ましい。上記金属板は、例えば、内面をガラスコート処理してもよい。例えば、SUS板、アルミニウム板、鉄の板等が挙げられ、中でもSUS板が好ましい。SUS板は、例えば通常のSUSを使用することができるが、研磨処理し反射率を高める処理等を実施したものであってもよい。
【0033】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器が備わった蛍光灯型紫外線発生器設置室と重合用溶液が供給され展開される重合室に分かれるように防護用ガラスで仕切られた構造を有し、該防護用ガラスが、側面から装着及び脱着できるように複数枚に分割して設置されていることが好ましい。より具体的には、防護用ガラスが側面から装着及び脱着できるように、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に分割して設置されているものであることが好ましい。このような防護用ガラスの上面図、及び、紫外線照射装置におけるベルト基材の進行方向に対して側方側の面の一例を図8に示す。
このような場合、揮発性物質が、重合室から隣接して設置された蛍光灯型紫外線発生器設置室内に基本的に入り込まないものとすることができる。あわせて紫外線照射装置の外側から蛍光灯型紫外線発生器設置室内にも基本的に入り込まないものとすることができる。その結果、蛍光灯型紫外線発生器が揮発性物質に接触して漏電や腐食が生じることを防ぐことができる。
また原料の重合性単量体の種類によっては、アクリルアミド等の毒性の高い重合性単量体や、(メタ)アクリレート等の揮発性の高い重合性単量体もあるが、本発明の紫外線照射装置は、そういった重合性単量体を扱うときにも有効となる。
【0034】
更に、防護用ガラスが汚染した時に洗浄するために、側面から防護用ガラスを容易に装着及び脱着することができる形態が好ましい。その結果、上記紫外線照射装置は、長期にわたって当該水溶性重合体の製造に使用しても、防護用ガラスの汚染により光強度が弱くなることや、ベルト面の光量が不均一化するために残留単量体含量が増えることを防止することができる。このように、光強度を均一に維持するためには、汚染した防護用ガラスを脱着し、洗浄することが好ましい実施形態である。
また、例えば当該防護用ガラスがより大きな一枚のガラスにより構成される場合は、取り扱いが困難なことや、大きなガラスの自重により割れなどが生じる可能性がある。更に、大きなガラスの場合、ひずみやゆがみや反りが生じる結果、ガラスと蛍光灯型紫外線発生器設置室との間にすき間ができ、結果的に重合室から揮発性物質が入り込んで蛍光灯型紫外線発生器に漏電や腐食が生じるおそれがある。
更に、上記防護用ガラスは、複数枚に分割されたガラスが桟の上に載っている形態が好ましい。上記桟は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に紫外線照射装置中に架設されているものが好ましい(例えば、図7参照。)。このように、本発明の紫外線照射装置を備えたベルト重合機は、紫外線照射部(蛍光灯型紫外線発生器設置室)と重合室がガラスで仕切られた構造を備えたベルト重合機であることが好ましい。
【0035】
また、本発明の紫外線照射装置においては、上記蛍光灯型紫外線発生器設置室と重合室とを仕切る防護用ガラスが複数枚に分割されて桟の上に載せてあるだけの形態が好ましい。必要に応じ、上記の桟と防護用ガラスとの間に、シリコン樹脂やフッ素樹脂や耐腐食性のゴムのパッキンやシール材を設置することもできる。
【0036】
上記重合室は、紫外線照射装置の外部との間にガスの出入りがある構造(例えば、図7参照)を有することが好ましい。これにより、ガスを紫外線照射装置の外から重合室内に入れ、重合室から再び紫外線照射装置の外に排出することができる。これにより、当該ガスとともに重合用溶液から発生する揮発性物質を効率よく紫外線照射装置外に排出することができるので、光量及び光量の分布を均一なものとすることができる。
また、蛍光灯型紫外線発生器設置室内が、ガスが流通する形態であってもよい。このような形態とすることにより、重合室から蛍光灯型紫外線発生器設置室内へ揮発性物質が入り込むことがないものとなる。また、重合室内で発生する熱により、蛍光灯型紫外線発生器設置室内の温度が上昇するのを抑制することができる。その結果、蛍光灯型紫外線発生器の出力を高レベルに維持することが可能となる。
【0037】
上記防護用ガラスは、その近紫外線透過率が70〜90%であることが本発明の紫外線照射装置における好ましい実施形態である。70%未満であると、ベルト面における光強度が充分なものとならず、高品質の水溶性重合体を得ることができないおそれがある。90%を超えると、ガラス強度が充分なものとならないおそれがある。透過率が低くなると重合速度が遅くなりすぎ残留単量体も増える傾向がある。上記上限は、88%がより好ましい。更に好ましくは、85%である。上記下限は、73%がより好ましい。更に好ましくは、75%である。特に好ましくは、78%である。
【0038】
上記防護用ガラスは、厚みが3〜20mmであることが好ましい。3mm未満であると、ガラスが撓みやすくなる。撓みを防止するためには、ガラスを細分化する必要があるが、細分化すれば、ガラスを支持する桟の数が増える結果、ベルト面の影が増え、重合用溶液に向けて均一かつ充分な光量で光を照射することができなくなるおそれがある。20mmを超えると、ガラスの自重が大きいため、幅広で頑丈な桟が必要となり、ベルト面の影が増え、得られる重合体(ゲル)に品質ムラができるおそれがある。また、透過率が低下するおそれがある。上記防護用ガラスの厚みの下限は、3.5mmであることがより好ましい。更に好ましくは、4mmである。上限は、19mmであることがより好ましい。例えば、上記防護用ガラスは、厚みが4〜12mmであることが特に好ましい。
【0039】
上記防護用ガラスは、重合用溶液から重合熱により発生する揮発性物質から蛍光灯型紫外線発生器を防護することができるガラスであればよいが、強化ガラスによって構成されるものであることが好ましい。上記強化ガラスの具体例としては、例えばタフライト(強化ガラス、商品名、日本板硝子社製)等が挙げられ、その厚みは、例えば、4mmのもの、19mmのもの等が挙げられる。
【0040】
本発明はまた、本発明の紫外線照射装置を備えたベルト重合機でもある。
本発明のベルト重合機は、通常、本発明の紫外線照射装置、及び、該紫外線照射装置の下部構造底面(重合室底面)を構成するように設置されたベルト基材を備え、水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造することができるものである。水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造するとは、人手が必要な工程を介することなく、該含水ゲルを製造し続けることをいう。
【0041】
上記重合を行うベルト基材とは、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射して重合を行うためのベルト基材であればよいが、例えば、伝熱性基材であることが好ましい。
上記伝熱性基材は、熱伝導性を有し、基材の下側から冷却した場合に、基材上の単量体成分の重合を行うのに適した材料で作成されたものであればよく、中でも熱伝導度が6W/m・K以上のものが好ましい。このような熱伝導度の基材を用いることで、冷却水の温度が比較的高温でも充分に冷却することができる。熱伝導度としてより好ましくは、7W/m・K以上であり、更に好ましくは、8W/m・K以上である。
上記ベルト基材の具体例としては、樹脂製、スチール製、鉄製、銅製等が好適である。
より好ましくは、スチール製、鉄製、銅製等であり、更に好ましくは、スチール製である。上記スチール製ベルト基材の材質としては、SUS301、SUS304、SUS316、SUS316L等のSUS製や炭素鋼(CS)等、公知のものが使用できる。これらの中でも、SUS製の伝熱性基材が好ましい。より好ましくは、SUS301、SUS304、SUS316、SUS316Lであり、更に好ましくは、SUS301、SUS304である。
【0042】
上記ベルト進行方向側の幅としては、1m以上が好ましく、また、30m以下が好ましい。上限は、より好ましくは25mであり、更に好ましくは20mである。下限は、より好ましくは2mであり、更に好ましくは3mである。
【0043】
上記ベルト基材は、ベルト基材上に離型材を有する形態であってもよい。
上記離型材は、光重合後の水溶性重合体を剥離しやすくする材料であればよく、例えばフッ素樹脂フィルム、フッ素樹脂含浸ガラスクロス、ガラスクロス粘着テープ、カプトン粘着テープ、フッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイトフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリエステルフィルム、アセテートクロス、シリコーンゴム、ポリプロピレンフィルム、ガラスクロス等を挙げることができる。
【0044】
本発明は、本発明のベルト重合機を用いて、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程を含む水溶性重合体の製造方法でもある。このような方法により、重合体含水ゲルを効率的かつ容易に製造することができ、これを乾燥することにより、例えば高粘度で不溶解分が少なく重合率の高い水溶性重合体を得ることができる。
上記水溶液重合においては、例えば、窒素ガス等の不活性ガスをバブリングする等の方法により、水溶液(重合用溶液)中に溶解している溶存酸素を予め除去した状態で重合を行うことが好ましい。
【0045】
本発明の水溶性重合体の製造方法の好ましい実施形態としては、例えば単量体成分を含む溶液(以下、モノマー液ともいう)の入ったモノマー槽からモノマー液を抜き出し、触媒槽より触媒水溶液を抜き出し、モノマー液と触媒水溶液とが混合器で混合され、重合用溶液としてベルト重合機に供給される形態が好ましい。
上記モノマー液又は触媒水溶液の抜き出しは、例えばギヤーポンプを用いて単位時間当たりに一定量を抜き出すことが好ましい。例えば、単位時間当たりにモノマー液を抜き出す質量が単位時間当たりに触媒水溶液を抜き出す質量に対して、3〜500倍が好ましく、10〜200倍がより好ましい。上記重合用溶液の液比重(g/cm3)は、0.9〜1.5が好ましく、1.0〜1.3がより好ましく、1.05〜1.25が更に好ましい。
【0046】
本発明の製造方法においては、ベルト重合機を用いて含水ゲルを該含水ゲルと接するベルト面から連続的に剥がし続けることになる。引き剥がすための形態は、特に限定されないが、ベルト面から含水ゲルをローラーで引き上げる形態、ベルト重合機出口にスクレーパーが取り付けられていて、含水ゲルがベルト面に残留することなく排出される形態等が好ましい。上記含水ゲルと接するベルト面とは、ベルト基材の上面を意味し、重合室の底面を構成する。
【0047】
上記光重合は、一次ピーク温度が80℃以下になるように制御して行われるものであることが好ましい。光重合によると、光照射強度及び照射時間を容易に設定及び変更できるため、重合時間をより短縮することができ、生産性のよいものとすることができる。また、あまり高温で蒸気が立ち上る条件はよくないが、このような形態とすることにより、当該重合用溶液から発生する揮発性成分を低減することができるため、上述した曇りを充分に防止し、安定に紫外線を透過させることができる。
【0048】
上記一次ピーク温度(重合用溶液の一次ピーク温度)が80℃を超えると、重合反応が過度に進行することとなり、得られる水溶性重合体の分子量が充分に高いものとならないおそれがあるうえに、重合体中に残存する単量体を充分に低減できないおそれがある。また、上述した曇りが生じ、安定に紫外線を透過させることができなくなるおそれがある。より好ましくは、75℃以下であり、更に好ましくは、70℃以下である。重合用溶液の一次ピーク温度の下限としては、分子量が充分なものとなる温度であればよく、30℃以上であることが好ましい。より好ましくは、35℃以上であり、更に好ましくは、40℃以上である。
上記製造方法においては、一次ピーク温度の制御は、伝熱性基材の下面を水と接触させることによって行うことが好ましい。水と接触させることによって熱伝導性に優れた伝熱性基材の下面を冷却することにより重合用溶液を充分に冷却することができる。
上記伝熱性基材の下面を接触させる水の温度は、重合用溶液を冷却できる温度であれば特に限定されないが、10〜40℃であることが好ましい。
【0049】
上記水溶液重合において、単量体成分を含む水溶液の層厚は、5〜50mmが好ましい。層厚が、5mm未満又は50mmを超えると、得られる重合体に単量体成分が残存するとともに重合体の分子量が充分には高くならないおそれがある。より好ましくは、8〜30mmであり、更に好ましくは、10〜20mmである。
【0050】
本発明における単量体成分は、例えば、アクリル酸;アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなるアクリル酸塩;α−ヒドロキシ(メタ)アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和ジカルボン酸系単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和スルホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和ホスホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基を有する不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体等が挙げられる。好ましい単量体としては、不揮発性単量体である。上記単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記重合用溶液を用いて行われる重合工程においては、光重合開始剤を用いて重合させることが好ましい。光重合開始剤を用いて重合させることで、重合体を高粘度のものとすることができ、また、残存する単量体の量を低減することができる。この場合、上記重合用溶液に光重合開始剤を配合することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、その作用効果を発揮するものであれば特に限定されないが、アゾ系開始剤が好ましい。中でも、2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩等のアゾ系水溶性開始剤がより好ましい。
上記光重合開始剤としては、上記アゾ系水溶性開始剤以外にも、種々の光重合開始剤を用いることができる。また、このような光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく特に限定されるものではない。
【0052】
上記光重合開始剤の使用量としては、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、1g以下が好ましい。これにより、アクリル酸(塩)系水溶性重合体の分子量や重合率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、0.001g以上であり、また、0.5g以下である。
【0053】
本発明においては、熱重合開始剤を光重合開始剤と併用することが好適である。熱重合開始剤を併用することにより、残存する単量体の量を低減することができる。また、上記重合工程では、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。上記重合溶媒としては、水が好適に用いられる。
【0054】
上記重合工程の重合開始時における単量体成分の反応液中の濃度(単量体濃度)としては、20質量%以上であり、また、60質量%以下であり、より好ましくは、25〜55質量%であり、更に好ましくは、30〜50質量%である。上記重合開始時とは、重合するために所定量の単量体成分を含む反応液を調製し、重合させるときである。単量体濃度を高くすることで重合体の増粘作用を更に高めることができる。また、生産性を向上させることができる面でより有利である。しかしあまり単量体濃度が高すぎる場合、不溶解分が増加し好ましくない。また、重合を開始する温度としては、50℃以下であることが好ましい。より好ましくは、35℃以下であり、更に好ましくは、30℃以下である。重合開始温度が低い方が反応の急激化等の異常反応に基づく危険がなくなると共に、高濃度での反応が容易となるため、生産性の面で有利である。また、上記の重合温度は、得られる水溶性重合体の物性をより良好にするためにも有効な重合条件である。
【0055】
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体の中和度は、40〜100モル%であることが好ましい。上記水溶性重合体の中和度は、アクリル酸塩系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量(中和度)をいう。より好ましくは、60モル%以上であり、更に好ましくは、80モル%以上である。
【0056】
上述した重合工程により得られた水溶性重合体含水ゲルは、更に押出工程、乾燥工程及び粉砕工程に供して、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体(粉体)を製造することができる。ここで、押出工程は、重合工程で得られた重合体のゲル状物を押し出しすることにより、乾燥しやすいように解砕する工程である。粉砕工程は、その乾燥物を一定の大きさ(粒度)に砕く工程である。このようにして得られた粉粒体を次の分級工程で分級してもよい。上記工程としては特に限定されず、通常行われる方法が採用される。
【0057】
上記乾燥工程においては、重合物を好ましくは50℃〜220℃で乾燥させることにより、乾燥物である水溶性重合体を得ることができる。重合物を乾燥させる方法としては、例えば、乾燥しやすいように、重合物を切断する等の方法により重合物の表面積を大きくしたり、減圧乾燥したりすることが好ましい。乾燥温度が50℃よりも低いと、重合物を充分に乾燥させることができないおそれがあり、220℃よりも高いと、重合物の熱架橋が起こり、不溶解分が多くなるおそれがある。また、240℃よりも高い場合には、重合物の主鎖や架橋点の切断が起こるおそれがある。よって、より好ましい乾燥温度は、100〜210℃である。更に好ましくは、150〜200℃である。なお乾燥時間としては、重合物に含まれる水分量や乾燥温度等に応じて適宜設定すればよい。
重合後の処理工程としては、押出、乾燥、粉砕、分級の順に、これらの工程を含むことが好ましい。このような工程を経ることにより、種々の分野に好適に使用できる水溶性重合体が得られることとなる。
【0058】
本発明における水溶性重合体の残存単量体濃度は、1質量%以下であることが好ましい。水溶性重合体において、残存単量体濃度(残存モノマー濃度)が1質量%を超えると、品質が低いものとなり、本発明の作用効果を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、0.5質量%以下であり、更に好ましくは、0.3質量%以下である。
上記残存単量体濃度(残存モノマー濃度)は、例えば重合体がポリアクリル酸ナトリウムである場合、「食品添加物公定書」、第7版、p.436−437、又は、「飼料添加物の成分規格等収載書」、第10版、p.239−240に記載の純度試験の項に記載の以下の方法で測定されるものである。なお、アクリル酸(塩)系水溶性重合体を食品添加物用、又は、飼料添加物用として用いる場合は、下記方法によって残存モノマーの量を求めるとき、その量は1%以下でなければならない。
【0059】
残留単量体の測定方法
〔臭素付加法〕
本品(重合体)約1gを精密に量り、300mlのヨウ素瓶に入れ、水100mlを加え、時々振り混ぜながら約24時間放置して溶かす。この液に臭素酸カリウム・臭化カリウム試液10mlを正確に量って加え、更によく振り混ぜ、塩酸10mlを手早く加え、直ちに密栓して再びよく振り混ぜた後、ヨウ素瓶の上部にヨウ化カリウム試液約20mlを入れ、暗所で20分間放置する。次に栓を緩めてヨウ化カリウム試液を流し込み、直ちに密栓をしてよく振り混ぜた後、0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(指示薬デンプン試液2mL)。別に同様の方法で空試験を行い、次式により含量を求める。
【0060】
【数1】
【0061】
ただし、a:空試験における0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験における0.1mol/1チオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
【0062】
本発明における水溶性重合体の不溶解分は、2質量%以下であることが好ましい。不溶解分が2質量%を超えると、品質が低いものとなり、本発明の作用効果を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、1質量%以下であり、更に好ましくは、0.8質量%以下であり、特に好ましくは、0.6質量%以下である。最も好ましくは、含まれないことである。
上記不溶解分は、イオン交換水499gに水溶性重合体1.0gを添加し、50分間攪拌した後に25℃とし、500μmの網目のふるいを用いて濾過することにより、含水状態の不溶物を取り出し、下記計算式;
不溶解分(質量%)={不溶物の質量(g)/500(g)}×100
に基づいて算出される値である。なお、本明細書中、不溶解分は、水溶液中のアクリル酸(塩)系水溶性重合体を上記フィルタで濾過後、1分以内に測定される値とする。なお、濾過及び秤量は、25℃、湿度60%以上の条件で行う。
【0063】
〔溶液粘度の測定方法〕
容量500mlのビーカーにメタノール20mlを入れた後、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸塩を純分として1g添加する。マグネチックスターラーで攪拌しながら、イオン交換水500mlを添加した後、ジャーテスターを使用し100rpmで50分間攪拌溶解させる。その後、30℃に温度調整してB型粘度計(株式会社トキメック社製)を用いて30rpmの回転数で測定する。
【発明の効果】
【0064】
本発明の紫外線照射装置は、上述の構成よりなり、当該紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いて品質が一定で残留単量体量が少なく高品質な水溶性重合体を効率よく製造することができるものであり、医薬用、塗料用、土木・建築用、その他一般工業用において、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸湿剤、乾燥剤等として用いられる水溶性重合体を好適に製造することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0066】
実施例1、2及び比較例1において、ランプの位置、測定点の位置を示すa地点〜h地点、1地点〜11地点とは、図1中に示した測定点2の位置を示しているものである。以下、紫外線発生器を「ランプ」ともいう。また、蛍光灯型紫外線発生器を「蛍光ランプ」ともいう。「ランプの位置」とは、ランプを上面からみた場合にベルト基材の上方において対応する位置を意味する。なお、図1中の両端矢印に付された数値は長さ(mm)を表す。
実施例1及び2においては、DF−70161−PD(調光器、商品名、東芝ライテック社製)を紫外線照射装置に組み込み、調光器(インバーター)の制御電圧を測定した。
最大の光強度を示す電圧は0ボルトであった。また、最小の光強度を示す電圧は9ボルトであった。制御電圧が0ボルトのデータ(実施例1)と共に、制御電圧を4ボルトにして減光したデータ(実施例2)も合わせて測定した。
(紫外線照射装置)
上記実施例1〜2及び比較例1においては、図4〜6に示した紫外線照射装置において、紫外線照射装置内に設置した蛍光灯型紫外線発生器の配置を変化させて使用した。
装置の材質は、SUS304であり、蛍光ランプの長軸はベルトの進行方向を想定したものであった。
(光量測定点)
以下に示す実施例においては、図1に示す測定点2の位置を用いた。蛍光ランプの配置については、この測定点を基準にして示す。
【0067】
実施例1
図1は、実施例1に係る紫外線照射装置において、ランプの配置と測定点の配置を示す図である。
ランプ間隔248mm(調光器0ボルト)時の光強度分布
下記の条件で行った。
壁面数; (4壁面+1底面)
ランプ
・種類;ブラックライト FHF32BLB
・本数;4本(ランプ間隔248mm)
・ガラス;強化ガラス(タフライト、厚み4mm)
《ランプの位置》
第一ランプ1aの位置;3地点と4地点との間。
第二ランプ1bの位置;5地点。
第三ランプ1cの位置;6地点と7地点との間。
第四ランプ1dの位置;8地点。
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の端の位置》
・a地点とb地点の間
・g地点とh地点の間
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の制御電圧》
0ボルト(0ボルト時は光強度が最大)
参考;光強度が最小時の電圧は9Vであった。
【0068】
ランプ間隔248mm(調光器0ボルト)時の光強度分布を表1及び図9に示す。
表1〜3中で、数値は光強度(W/m2)を表す。
図1は、実施例1にかかる紫外線照射装置中に4本のランプ(蛍光灯型紫外線発生器)を設置したときの平面模式図である。実施例1では、図1のように4本のランプ(第一〜第四ランプ)を用いて測定を行っているため、この4本のランプの内側に配置された測定点を用いて紫外線強度の平均値と標準偏差とを求め、光量分布の程度を表す分布比率(標準偏差/平均値×100)を算出した。すなわち、実施例1においては、4地点〜8地点、b地点〜g地点における測定点を用いた。
上記測定範囲において、光強度分布の標準偏差は、0.60W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、4.6W/m2であった。この場合の、光量分布の程度を表す分布比率は、13.0%であった。なお、表1に測定結果を示すが、光強度分布の算出に用いた測定値は、表1中の太線で囲まれた部分である。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例2
実施例2においては、調光器の電圧を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして光強度分布の測定を行った。
ランプ間隔248mm(調光器4ボルト)時の光強度分布
下記の条件で行った。
壁面数;(4壁面+1底面)
ランプ
・種類;ブラックライト FHF32BLB
・本数;4本(ランプ間隔248mm)
・ガラス;強化ガラス(タフライト、厚み4mm)
《ランプの位置》
第一ランプの位置;3地点と4地点との間。
第二ランプの位置;5地点。
第三ランプの位置;6地点と7地点との間。
第四ランプの位置;8地点。
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の端の位置》
・a地点とb地点の間
・g地点とh地点の間
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の制御電圧》
4ボルト(0ボルト時は光強度が最大)
参考;光強度が最小時の電圧は直流9ボルトであった。
【0071】
ランプ間隔248mm(調光器4ボルト)時の光強度分布を表2及び図10に示す。
実施例2に関しても、実施例1と同様に、4地点〜8地点、b地点〜g地点における測定点を用いて光強度分布を算出した。
上記測定範囲において、光強度分布の標準偏差は、0.42W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、3.3W/m2であった。この場合の、光量分布の程度を表す分布比率は、12.7%であった。表2に測定結果を示すが、光強度分布の算出に用いた測定値は、表2中の太線で囲まれた部分である。
【0072】
【表2】
【0073】
比較例1
比較例1では、実施例1に対してランプの配置を変化させて光強度分布の測定を行った。
ランプ間隔497mm(調光器0ボルト)時の光強度分布は下記の条件で測定した。
壁面数;(4壁面+1底面)
ランプ
・種類;ブラックライト FHF32BLB
・本数;4本(ランプ間隔497mm)
・ガラス;強化ガラス(タフライト、厚み4mm)
《ランプの位置》
第一ランプの位置;1地点と2地点との間。
第二ランプの位置;5地点。
第三ランプの位置;7地点と8地点との間。
第四ランプの位置;10地点と11地点との間。
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の端の位置》
・a地点とb地点の間
・g地点とh地点の間
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の制御電圧》
0ボルト(0ボルト時は光強度が最大)
参考;光強度が最小時の電圧は直流9Vであった。
【0074】
ランプ間隔497mm時の光強度分布を表3及び図11に示す。
比較例1では、使用した4本のランプの内側に配置された測定点を用いて光量分布の程度を表す分布比率を算出した。すなわち、比較例1においては、2地点〜10地点、b地点〜g地点における測定点を用いて、光強度分布を算出した。
上記測定範囲において、光強度分布の標準偏差は、0.67W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、2.8W/m2であった。この場合の、光量分布の程度を表す分布比率は、23.9%であった。表3に測定結果を示すが、光強度分布の算出に用いた測定値は、表3中の太線で囲まれた部分である。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例1(ランプ間隔が248mm〔0ボルト〕時)では、比較例1と比較して光強度分布が非常に小さくなった。また、実施例1の測定結果を示す図9と比較例1の測定結果を示す図11を比較するとわかるように、実施例1における光強度分布は、ベルト基材の幅方向において、極大値が実質的に1つであった。すなわち、4本の蛍光灯が相互に干渉する結果、強度ピークとしては1本となった。比較例1においては、4本のピークがあらわれる結果となった。このことから、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔を小さくすることによって、光強度分布を小さくすることができ、少なくとも上記間隔が約25cm以下である場合には、その効果が充分に立証されているということができる。
実施例2(ランプ間隔248mm〔調光器4ボルト〕時)は、調光器の電圧を4ボルトとすることにより減光したものであるが、実施例1と同様に、光強度分布が小さく、均等に減光されていることが分かった。この結果より、調光可能な蛍光灯型紫外線発生器を用いることによって、蛍光灯型紫外線発生器の配置の変更等、煩雑な作業を行うことなく、また、光量分布を広くすることなく、重合用溶液に照射される紫外線の強度を容易に変化させることを立証している。
実施例1及び2においては、簡易型の紫外線照射装置を用いているが、蛍光灯型紫外線発生器の間隔や、配列等を特定することにより充分に光強度分布を小さくすることができることが立証されている。光強度分布は同様の配置をとる限り変わるものではないため、実際に製品を量産するために用いる紫外線照射装置を備えたベルト重合機であっても同様に、蛍光灯型紫外線発生器の配列等を特定することにより、実施例1及び2と同様の効果が得られることは明らかなものであるといえる。
また、上記測定結果から、例えば、実施例1及び2における測定範囲に対応するように紫外線が照射される領域を設定することによって光強度分布を均一なものとすることができる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウムの重合等を行う場合に、上記測定結果を考慮して光強度の微調整(重合用溶液に対する光量を充分なものとしながらその均一性を際立って優れたものとすること)することが高品質(高分子量)の製品を得るうえで極めて重要である。
【0077】
実施例3
図7に示したベルト重合機を用いて重合を行った。
該重合機は、重合に先立って以下の条件に調整されている。
気相部酸素濃度が8vol%となるように、重合室内は重合室のガス入り口14より連続的に窒素が導入されている。重合室内における一次重合ゾーンにおけるベルト基材中央上部の近紫外線強度は3.0W/m2となるように調光されている。また、二次重合ゾーンにおけるベルト基材中央上部の近紫外線強度は、13.0W/m2となるように調光されている。
ベルトスピードは39.5cm/minとなるように調整されている。該条件下、アクリル酸ナトリウム36%、グリセリン2.5%(対アクリル酸ナトリウム)、光重合開始剤としての2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩0.03g/モル(対アクリル酸ナトリウム)を含むpH10.0で溶存酸素が5ppmの重合液を図7の19で示した重合用溶液の供給口より、550kg/Hrの割合で供給した。約25分経過後、ベルト基材の終端部より厚みが約15mmの含水ゲルが連続的に製造された。両端に存在する端ゲル(エッジロープより中央部に向けて10cmまでのゲル)を一つにまとめ以下に示した手順に従って乾燥粉末を得た。また、端ゲルとは別に中央部に存在するゲルを端ゲルと同様に処理して乾燥粉末を得た。
【0078】
図7は、製品幅(ベルト基材の両端に設けられた高さ30mmのエッジロープ間の距離)1330mm、重合長9880mmの紫外線照射装置を備えた、ベルト基材幅が1550mmのベルト重合機である。蛍光灯型紫外線発生器3は、ブラックライト蛍光ランプであり、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に沿って設置されている。蛍光灯型紫外線発生器3は、合計88本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、7本×6列=42本であり、蛍光灯型紫外線発生器3どうしの間隔は、221mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器3どうしの間隔は、60mmである。
紫外線発生器(UV蛍光ランプ)の仕様は、メロウライン(品名、管長1.2m、定格ランプ電力45Wのブラックライト、型名「FHF32BLB」、東芝ライテック社製)である。また、図7に示されるベルト重合機では、ベルトの進行方法に沿って蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置されているため、製品幅(1330mm)の端部においても隙間が生じないように配置することができるため、ベルト基材の端部に対しても均一に紫外線を照射することができる。
強化ガラスの仕様は、タフライト(厚み4mmの強化ガラス、日本板硝子社製)である。
紫外線照射装置の天井板、側板の仕様は、SUS304板であり、図7で示される、本発明にかかる紫外線照射装置を備えたベルト重合機は、ガラス11が側面部から脱着できるような構造になっており、ガラス面の洗浄作業も容易に行える構造になっている。
紫外線発生器の光照射強度(近紫外線強度)は、ベルト基材面において測定される光照射強度であり、光照射強度は、下記の光量計で測定した。
装置:UVメーター
メーカー:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー:UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm〔355nm中心ポイント〕)
このときの、一次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、3.0W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は9.0%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
なお、一次重合ゾーン及び二次重合ゾーンにおける光量分布を表す分布比率Xに関してであるが、二次重合ゾーンにおいては照射される光量をより高くするために紫外線発生器が密に設置されているので、その結果、分布比率が少なくなる。よって、一次重合ゾーンよりも2次重合ゾーンの方の光量分布を示す分布比率が下がることになる。
【0079】
<ゲルの処理方法(乾燥粉末の取得方法)>
端ゲル(又は中央部ゲル)をミートチョッパー(平賀工作所製、No.32E型、ダイス径4.5mmΦ)で押出す。該押出しゲルを200℃で40分間乾燥する。風向はUPフローでありその線速は1.5m/Sである。このようにして乾燥された乾物を卓上粉砕機で粉砕した後、20メッシュパスとなるように分級して乾燥粉末を得た。
上記乾燥粉末の、溶液粘度、残存単量体、不溶解分を前記測定方法に従って測定し、結果を表4に示した。
【0080】
実施例4
実施例3と同様のベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、合計94本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、8本×6列=48本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、190mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は0.25W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は8.3%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
その他の条件については、実施例3と同様である。
【0081】
実施例5
実施例3と同様のベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、合計76本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、5本×6列=30本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、333mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は0.44W/m2であった。光強度分布の各光強度の平均値は、3.0W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は14.7%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
その他の条件については、実施例3と同様である。
なお、上記実施例3〜5において、一次重合ゾーンに関してはすべて、90%以上の面積領域(有効測定面積)にわたって分布比率が15%以下となっていた。
【0082】
比較例2
実施例3と同様のベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、合計70本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、4本×6列=24本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、443mmである。二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は0.49W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は16.3%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
その他の条件については、実施例3と同様である。
【0083】
比較例3
実施例3と同様の紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、ブラックライト蛍光ランプであり、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に設置されている。蛍光灯型紫外線発生器は、合計77本用いた。一次重合ゾーンは、7410mmで、二次重合ゾーンは、2470mmである。
一次重合ゾーン横置(低密度部)は、35本であり、212mm間隔で設置されている。
二次重合ゾーン横置(高密度部)は、42本であり、60mm間隔で設置されている。
紫外線発生器(UV蛍光ランプ)の仕様は、メロウライン(品名、管長1.2m、定格ランプ電力45Wのブラックライト、型名「FHF32BLB」、東芝ライテック社製)である。なお、比較例3における、蛍光ランプ間の距離の算出であるが、一次重合ゾーンと二次重合ゾーンの境界部に、二次重合ゾーンの1本目の蛍光ランプを設置するものとして蛍光ランプ間の間隔を算定したものである。例えば、当該境界部に、仮に一次重合ゾーン用の最後尾列のランプが設置されたものとする場合でも同様に、それぞれのゾーンに設置する蛍光ランプの本数から間隔を算定しランプ間隔とすればよい。
この場合、蛍光灯型紫外線発生器の長さが1230mmであり、重合性溶液をせきとめるためのエッジロープの間隔が1330mmであるため、蛍光灯型紫外線発生器とエッジロープとの間にそれぞれ50mmの間隔が生じている。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は、0.93W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は31.0%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.76W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、14.4W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は5.3%であった。
強化ガラスの仕様は、タフライト(厚み4mmの強化ガラス、日本板硝子社製)である。
紫外線照射装置の天井板、側板の仕様は、SUS304板である。
表4に、実施例3〜5及び比較例2及び3の結果を示す。
【0084】
【表4】
【0085】
実施例3〜5及び比較例2を比較した場合、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔を狭くすることによって、光強度分布が改善し、得られるゲルにおいても均一性が向上して高品質の製品が製造されていることがわかる。また、比較例2では、残留単量体含量(残存単量体濃度)が1.0%を超えているため、食品添加物の成分規格に適合しないものであった。
実施例3と比較例3とを比較した場合、蛍光灯型紫外線発生器の配列が異なるため、比較例3では、紫外線照射強度の分布が大きくなり、端部で製造されたゲルと、中央部で製造されたゲルとで、残存単量体分や不溶解分の差異が大きくなる。本発明の紫外線照射装置(ベルト基材面における光量分布の程度を表す分布比率が15%以下のもの)を用いることによって、端部と中央部との均一性が高まり高品質のゲルが製造されていることがわかる。
【0086】
比較例3のように、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に設置されている場合には、上述したように、蛍光灯型紫外線発生器とエッジロープとの間にそれぞれ50mmの間隔ができ、これにより、ベルト基材の端部で製造されたゲルと、中央部で製造されたゲルとで品質に差異が生じることとなる。実施例3においては、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されていることによって、光強度分布が改善されているため、端部で製造されたゲルと、中央部で製造されたゲルの品質を均一化することができる。すなわち、本発明の紫外線照射装置を用いたベルト重合機を用いることによって、高品質で均一性が優れたゲルを製造することができることとなる。
【0087】
(結論)ベルト基材面における紫外線の光量分布の程度を表す分布比率を15%以下とする、例えば、上記蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列することや、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔を狭くすること等により、製造される上記光強度の微調整が可能となり、光強度分布を小さいもの、すなわち、本発明の紫外線照射装置を用いたベルト重合機により得られるゲル等の品質を高めることができる。
例えば、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に配列されている場合には、紫外線照射装置や重合を行うためのベルト基材の大きさによっては、ベルト基材上の製品幅の端部に紫外線発生器が設置されていない隙間が生じる。そのため、中央部と端部とで光照射強度に分布が生じ、その結果、重合体が不均質なものとなるおそれがある。重合後段は、未反応単量体量を低減させる工程であり、重合前段におけるほどの光量均一性は必要ないことになる。そこで後段は光強度が強い種々の形態とすることができる。上述した実施例及び比較例から、本発明の紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いて高品質の水溶性重合体を製造することができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、簡易型紫外線照射装置における底面(ベルト基材面を想定)における紫外線照射強度の測定点の一形態を示す図である。
【図2】図2は、蛍光灯型紫外線発生器の長軸どうしの間隔(B)を示す図である。
【図3】図3は、本発明のベルト重合機における蛍光灯型紫外線発生器の配列の一形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の簡易型紫外線照射装置の一形態を示す図である。(図中にふされた長さの単位はmmである。)。
【図5】図5は、本発明の簡易型紫外線照射装置の一形態を示す上面図である。
【図6】図6は、本発明の簡易型紫外線照射装置の一形態を示す側面図である。
【図7】図7は、本発明の紫外線照射装置が設置されたベルト重合機の一形態を示す上面図及び側面図である。
【図8】図8は、紫外線照射装置における防護用ガラスの一形態を示す上面図及び紫外線照射装置のフード側面の一形態を示す図である。
【図9】図9は、実施例1にかかる光強度分布を示す図である。
【図10】図10は、実施例2にかかる光強度分布を示す図である。
【図11】図11は、比較例1にかかる光強度分布を示す図である。
【図12】図12は、水銀ランプの形状を示す図である。
【図13】図13は、蛍光灯型紫外線発生器の配列の一形態を示す平面図である。(a)は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置され、ベルト基材の進行方向に1列で並んでいる形態であり、(b)は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置され、ベルト基材の進行方向に2列で並んでいる形態である。
【図14】図14は、側板としてはベルト基材の端部付近に鉛直又は略鉛直に設置され、天井板としては側板に支えられてベルト基材面に対して平行又は略平行に設置される形態の一例を示す斜視模式図である。
【符号の説明】
【0089】
1a:第一ランプ
1b:第二ランプ
1c:第三ランプ
1d:第四ランプ
2:測定点
3:蛍光灯型紫外線発生器
4:ベルト基材の進行方向
5:ベルト基材上の縁
6:防護用ガラス
7:装置本体
8:取手
9:桟
10:上蓋
11:強化ガラス(タフライト4mm厚)
12:UVセンサー挿入穴
13、27:ベルト重合機
14a、14b:ガス入口
15a、15b:ガス出口
17:カーテン
18:重合用溶液
19:重合用溶液供給口
20:トレイ
21:トレイ取り出し口
22:のぞき窓
23:天井板
24:側板
24a:側板の内面
25:ベルト基材
26:エッジロープ
27:製品幅
28:端部
29:中央部
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線照射装置、ベルト重合機、及び、水溶性重合体の製造方法に関する。より詳しくは、増粘剤や凝集剤として優れた機能を発揮し、各種工業製品の原料等として用いることができる水溶性重合体の製造方法に好適な紫外線照射装置、そのような装置を備えたベルト重合機、及び、それを用いた水溶性重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶性重合体は、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸湿剤、乾燥剤等としての優れた基本性能を有することから、種々の用途において適用され、需要の増大が期待されている。例えば、掘削土処理剤や湿布薬・パップ剤用添加剤、浚渫土処理剤等の他、医薬、塗料、製紙、洗剤や化粧品、水処理、繊維処理、土木建築や農・園芸、接着剤、窯業、製造プロセス、その他の分野において多岐にわたって使用されている。また、適度な粘度を有し、残存する単量体量等が少ない優れた高品質の水溶性重合体は、その性能や安全性の面から食品や飼料、医薬品の用途に好適に適用することができる。
【0003】
従来の水溶性重合体の製造方法としては、ベルト重合機のベルト基材上に単量体を展開して光を照射し、光重合させて重合体を得る製造方法が用いられている。ベルト重合によって工業的な生産性が向上されることになるが、これに関しては、例えば、可動ベルト上で、アクリル系単量体溶液層の上面および下面を水で冷却しながら、溶液層上に設置した紫外線ランプによりアクリル系単量体を連続的に光重合させ、得られる重合体をドラムを介して紫外線ランプの上部に移行してから更に光照射を行うことで光重合させるアクリル系重合体の製造方法(例えば、特許文献1参照)が開示されている。
また光重合に関しては、水溶性または水膨潤性の重合体を製造する方法であって、水性混合物を形成する工程と、水性混合物を1000μWcm−2までの強度で紫外線照射に付すことによって重合を実施する工程と、その生成物を、1000μWm−2を超える紫外線照射に付す工程とを含む方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。更に、第一段の光照射で単量体の大半を重合せしめた後、第二段以降の後照射で、光強度を漸増しながら光照射重合を行う水溶性ビニル系重合体の製造方法(例えば、特許文献3参照)が開示されている。
【特許文献1】特許第3964348号明細書(第1、10頁等)
【特許文献2】特表2004−529993号公報(第2、16、17頁等)
【特許文献3】特許第3621554号明細書(第1、7頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いて水溶性重合体等を光重合させると、光重合条件によっては、あるいはベルト基材面上で光重合される位置による差、例えば、ベルト中央部とベルト端部とにおいて、水溶性重合体の品質が安定しないことが判った。具体的には、従来技術に開示のある条件だけでは、ベルト中央部とベルト端部とにおいて残存モノマー量に差のある重合体が製造されたり、ベルト端部において不溶解分が多い重合体が製造されたりする場合があった。よって、例えば、上述したような従来技術の光ベルト重合条件による重合方法では、より物性(例えば、分子量、あるいは重合度合い)が均一で、残存モノマーも少なく、品質が一定の水溶性重合体等を効率よく安定に、かつ連続的に製造することは難しく、これらの解決すべき課題があるという結論に至った。
本発明者は、上記課題を解決するためには、先ず、照射される紫外線を一定にかつ均一に特定するということ、すなわち、光ベルト重合の技術分野においてはこれまでの予測を超えて光の均一性が非常に重要であるという今までにはなかった着想を得て、それを実現するための手法を種々検討した。その結果、どのような紫外線発生器をどのように配列すれば、照射される紫外線の量がより均一になり、工業的にも安定に、連続して水溶性樹脂の光ベルト重合が行えるか等を見いだし、本発明を完成するに至ったのである。
また、従来の技術においては、光重合を行う紫外線発生器として水銀ランプを用いているものもあるが、水銀ランプは通常、図12で示すような形状をしているものであり、このようなランプの使用では、ベルト基材面における紫外線の均一性を向上させるには限界があることを見いだした。
更に、紫外線の照射強度に関して、上述した従来技術においては、重合開始時には比較的小さくし、重合後半には紫外線の照射強度を大きくすることで、不用意な若しくは急な重合反応や、重合熱による加熱を防止しているものであるが、この技術のみによっては上記課題を解消することはできないものであることをも見いだした。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、品質が一定で残留単量体含量の少ない高品質の水溶性重合体を効率よく製造することができる紫外線照射装置、紫外線照射装置を備えたベルト重合機、及び、それを用いた水溶性重合体の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題点に鑑み、検討した結果、ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置を用いて水溶性重合体含水ゲルを製造する方法において、紫外線を照射するにあたり、ある特定の照射条件下で照射を行うこと、あるいはその照射強度を制御するようにして光重合を行うことが上記課題解決にとって有効であることを見いだした。すなわち、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下であるようにすると、重合用溶液に対する光量の均一性を水溶性重合体の製法に充分に適したものとすることができ、これにより、均一で高品質な製品を安定的に製造することができることを見いだした。さらに、重合過程における反応の急激化や他の工程上のトラブルもなく、光重合を行えることを見いだした。
また光照射強度をより均一にすることについて鋭意検討した結果、例えば、紫外線発生器の配列や構成を工夫する(高密度に配列する、向きを工夫する、紫外線を反射するように構成する)ことや、一般的に多用されている水銀ランプではなく、棒状(直線状)の蛍光灯型紫外線発生器を特定の使用方法で用いることによって上記分布比率Xを15%以下とすることができることを見いだした。
更に、従来の技術の中には、蛍光ランプを用いて重合を行っているものもあるが調光できるものではなかったため、これを調光可能なものとすることによって、得られる重合体の均一性を保持した上で、容易に製造条件を変更することができ、利便性が向上し、ひいては生産性の向上も図ることができることも見いだし、本発明に到達したものである。
【0006】
すなわち本発明は、ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置であって、該紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下である紫外線照射装置である。
本発明はまた、上記紫外線照射装置を備えたベルト重合機でもある。
本発明は更に、上記ベルト重合機を用いて、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程を含む水溶性重合体の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明の紫外線照射装置は、ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用のものである。上記紫外線照射装置は、ベルト基材上に展開された重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程において使用される製造装置である。このような紫外線照射装置を備えるベルト重合機では、ベルト基材が特定の方向に進行しながら重合が行われ、光重合された重合体が重合機から取り出された後、ベルト基材は反転して重合用溶液が展開される位置に戻り、これが繰り返されることになる。本明細書では、ベルト基材が進行する方向をベルト基材の進行方向という。なお、「ベルト基材の上方」とは、ベルト基材よりも上側であることを意味するものである。上記紫外線照射装置は、少なくとも一部がベルト基材の上側にあればよく、全体がベルト基材の上側にある必要はない。
【0008】
上記紫外線照射装置は、側板及び天井板を備え、当該天井板は側板で支持されてベルト基材の上方に設置されていればよい。上記天井板は、ベルト基材面に対して平行又は略平行に設置され、上記側板は、ベルト基材の端部付近に鉛直又は略鉛直に天井板の端部を支えるように設置されている形態が好適である(例えば、図14参照。)。このような、ベルト基材面の上方を覆うように天井板及び側板が設置されている形態が好ましい形態である。
これによって、ベルト基材面に展開された重合用溶液が保護され、また、不活性ガスを重合機に導入することによって重合を進行しやすくすることが可能となる。
【0009】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、天井板のベルト基材に向いた側に取り付けられており、該蛍光灯型紫外線発生器からベルト基材に向かって紫外線が照射されることになる。蛍光灯型紫外線発生器は、棒状(直線状)等の蛍光灯を備えた紫外線発生器であり、この棒状の蛍光灯に平行な方向を長軸方向という。なお、蛍光灯の形状は、棒状以外にも、U字やS字型等のように種々あり得るが、配列の容易さ、光量分布の均一性の確保、あるいは、メンテナンスのしやすさ等の点で、棒状(直線状、直管状)が好ましい。
【0010】
上記紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下である。
上記ベルト基材面における紫外線強度の平均値A及び標準偏差σは、ベルト基材面における複数の測定点で紫外線強度を測定して算出することになる。
上記紫外線強度の平均値Aは、製造される重合体の用途や、重合に用いる原料等によって適切な強度に調整すればよい。例えば、水溶性重合体を製造する場合には、0.1〜100W/m2とすることが好ましい。より好ましくは、0.5〜50W/m2であり、更に好ましくは、1〜20W/m2である。上記「ベルト基材面」とは、ベルト基材の上面(重合用溶液が展開される面)のことである。
本発明においては、蛍光灯型紫外線発生器からの紫外線があたる重合ゾーンの全体を実質的に測定して、分布比率Xが15%以下となるように設定すればよいが、ある特定の部分(領域)だけを測定すれば、分布比率Xが15%を超えるとしても、本発明の効果(例えば、重合ゾーンの中央部と端部との残留単量体量、不溶解分の値が小さくなること)が奏されることになれば、そのような部分的に分布比率Xが15%以下を外れる形態であってもよい。好ましい形態としては、重合ゾーンの全体を実質的に測定して分布比率Xが15%以下となる形態である。
【0011】
上記蛍光灯型紫外線発生器の紫外線強度は、例えば、下記の条件において測定することができる。
装置名:UVメーター
製造会社:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー:UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm〔中心ポイント〕)
【0012】
上記光量分布(光強度分布)は、測定点がベルト基材の進行方向に沿って実質的に並列に配置され、かつベルト基材の幅方向に沿って実質的に並列に配置されている形態(例えば、図1参照。)で測定するものであることが好ましい。なお、測定は、重合用溶液(反応液)が展開されていないベルト基材面において測定すればよい。
上記測定点(光量計が配置される点)は、ベルト基材の進行方向に100mm以上、400mm以下の等間隔とし、ベルト基材の幅方向に100mm以上、400mm以下の等間隔とすることが好ましい。より具体的には、後述する実施例のように、光量計がベルト基材の進行方向に180mmの等間隔で配置され、ベルト基材の幅方向に177mmの等間隔で配置される形態が挙げられる。
測定点の個数は、10〜50個/m2であることが好ましく、より好ましくは、20〜40個/m2であり、更に好ましくは、30〜35個/m2である。より具体的には、図1で示すように、測定点が、33個/m2で等間隔で配置される形態が挙げられる。
【0013】
上記紫外線照射装置においては、上述した光強度の測定結果に基づいてその分布が少なくなり、上記分布比率Xの値が15%以下となるように、ベルト重合機における蛍光灯型紫外線発生器の配列や構成(高密度に配列する、向きを工夫する、紫外線を反射するように構成する等)、ベルト基材幅(製品幅)等を調整することになる。より好ましい構成としては、複数の蛍光灯型紫外線発生器によって生じる光の干渉による紫外線強度のピーク(極大値)の発現が実質的に1つ又は概ね1つとなるようにする構成である。
【0014】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に配列された構造を有するものであってもよいし、ベルト基材の進行方向に沿って(進行方向に対して平行方向に)配列された構造を有するものであってもよい。ベルト基材面における光強度をより均一にする(光強度分布を少なくする)観点からは、蛍光灯型紫外線発生器は、長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されていることが好ましい。これによって、また、蛍光灯型紫外線発生器の設置密度を工夫することによって、光強度分布をより均一なものとすることができる。
本明細書中で「蛍光灯型紫外線発生器の設置密度」とは、天井板を上方(ベルト基材面の法線方向)から見た場合に、天井板の面積に対して蛍光灯型紫外線発生器が設けられている面積で定義されるものである。
【0015】
なお、図13は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置されている場合の紫外線照射装置の平面模式図(ベルト基材面の法線方向から観察したときの模式図)であるが、図13(a)のような配置であると、ベルト基材上で重合体を製造する場合、製品幅27における端部28では直上に蛍光灯型紫外線発生器3が設置されていないこととなる。そのため、端部28と中央部29とで光照射の強度が変化し、得られる重合体の品質にムラが生じるおそれがある。また、図13(b)のように、製品幅27から蛍光灯型紫外線発生器3がはみ出しているような形態である場合には、端部28の直上に蛍光灯型紫外線発生器が設置されることとなるが、蛍光灯型紫外線発生器3がはみ出した部分からの紫外線は、重合用溶液に照射されないものとなるため、無駄な電力を消費してしまうことになる。
そこで、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されたもの(例えば、図3参照。)とすることによって、製品幅に依存せず、端部であっても、中央部であっても充分に紫外線を照射することができる。また、図13(b)のようにベルト基材から紫外線発生器がはみ出すことなく配置されるため、電力消費を抑制し、重合用溶液に対して蛍光灯一本当たりの有効照射面積をより大きなものとすることができる。すなわち、より効率的かつ経済的に水溶性重合体を製造することが可能となる。
【0016】
なお、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列された構造においては、蛍光灯型紫外線発生器をベルト基材の進行方向に沿って1つ又は2つ以上を直列に並べ、かつベルト基材の進行方向に対して垂直方向には、1つ又は2つ以上を並列に並べた形態とすることが好ましい。例えば、図3は、蛍光灯型紫外線発生器が、ベルト基材の進行方向に沿って実質的に直列され、かつベルト基材の幅方向に沿って実質的に並列されている形態を示す斜視模式図である。蛍光灯型紫外線発生器は、2列以上で並列される形態が好ましい。より好ましくは、3列以上であり、更に好ましくは、4列以上である。
【0017】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列された領域、当該進行方向に対して垂直方向に配列された領域の両方の領域を有するものであってもよい。例えば、紫外線照射装置に蛍光灯型紫外線発生器が取り付けられる際に、先ず重合用溶液(製品幅)上からはみ出さないように蛍光灯型紫外線発生器がベルト基材の進行方向に沿って配列し、当該方向に配列すれば蛍光灯型紫外線発生器が終端部からはみ出してしまう領域においては、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に配列された形態が挙げられる。
これによれば、重合前段部側において有効照射面積及び照射強度をより優れたものとすることができる。更に、当該進行方向に沿って配列すると蛍光灯型紫外線発生器が重合用溶液上からはみ出てしまう箇所においては、上記垂直方向に配列されることにより、重合用溶液の外部域(ベルト基材の終端部よりも先の領域)まで紫外線を照射することによる消費電力の無駄を実質的に防止することができる。
【0018】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、長軸どうしの間隔が40cm以下となるように備えられていることが好ましい。上記長軸どうしの間隔とは、蛍光灯型紫外線発生器の中心を通る蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向に沿った直線どうしの間隔である。上記長軸どうしの間隔は、例えば図2における距離Bである。距離Aは、本明細書中、蛍光灯型紫外線発生器の長軸どうしの間隔には該当しないものである。上記間隔としては、35cm以下であることがより好ましく、更に好ましくは、30cm以下であり、特に好ましくは、25cm以下であり、最も好ましくは、20cm以下である。これは、上記分布比率Xの値が本発明によって特定される範囲に入るようにするための一つの好ましい手法である。
【0019】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、製品幅(ベルト基材上の製品が製造される領域の幅)の端部付近の直上に設置されることが好ましい。これにより、端部付近で重合用溶液に照射される光量が少なくなることを抑制することができ、重合用溶液に対して照射される光量の均一性がより向上できることになる。
【0020】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が低い重合前段部と、設置密度が高い重合後段部とを有するものであることが好ましい。言い換えれば、上記紫外線照射装置は、ベルト基材上に少なくとも重合前段部と重合後段部とを有し、該重合前段部では蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が重合後段部より低くなるように蛍光灯型紫外線発生器が備えられていることが好ましい。このように異なる強度の近紫外線を2段階に分けて照射することにより、単量体の重合が促進され、得られる重合体を充分に分子量の高いものとし、且つ重合体中に残存する単量体を低減でき、得られる水溶性重合体を品質の高いものとすることができる。
なお、重合前段部は、ベルト基材上の重合開始側の領域であり、重合後段部は、ベルト基材上の重合終端側の領域である。上記重合前段部と後段部とは繋がっていてもよいし、その間に別の光強度の紫外線が照射される領域があってもよい。すなわち、2段階以上で段階的に強度が調整されていてもよい。
【0021】
本明細書中、上記設置密度が低い重合前段部は、一次重合ゾーンともいい、上記設置密度が高い重合後段部は、二次重合ゾーンともいう。上記一次重合ゾーンは、重合率が90%以下、すなわち、使用した全原料モノマーに対する残存モノマー量の割合が10質量%を超える領域であり、まだ盛んに重合が起こっている領域である。二次重合ゾーンは、一次重合ゾーンで残存したモノマー量を減らし、重合を完成させるゾーンである。
一次重合ゾーンと二次重合ゾーンとを有するような場合には、それぞれの領域で上記分布比率Xを算出することとなる。
上述したように、単量体成分が充分に存在し、より精度が高い重合の制御が望ましい一次重合ゾーンで分布比率Xが15%以下であればよく、工程上特に問題がなければ、残存したモノマー量を減らす二次重合ゾーンでは、上記分布比率Xが15%を超える形態であってもよい。
【0022】
上記のように大部分の単量体を重合させる一次重合ゾーンと、実質的に重合を完結させる二次重合ゾーンとを設けた形態である場合、通常では、二次重合ゾーンの方が一次重合ゾーンよりも紫外線強度が高くなるように設定されることになる。本願発明においてこのような形態の場合、一次重合ゾーンにおいて分布比率Xが15%以下となるようにすればよい。ただし、一次重合ゾーンと二次重合ゾーンとの境界近傍では、紫外線強度が高い二次重合ゾーンからの光が一次重合ゾーンに入り、光が干渉するため、通常では、一次重合ゾーンの最後の部分では分布比率Xが15%以下とはならない。しかし、このような部分が一次重合ゾーンの一部に過ぎず、一次重合ゾーンの大部分を、分布比率Xが15%以下で均一になっているようにすれば本願発明の効果を充分に発揮することができる。
上記のことから、一次重合ゾーンの全面積を100%とすれば、分布比率Xが15%以下である面積が80%以上となるようにすることが好ましい。より好ましくは85%以上、更に好ましくは、90%以上である。すなわち、一次重合ゾーンのうち、上記の割合以上の面積部分が二次重合ゾーンからの光の影響を実質的に受けず、したがって、一次重合ゾーンの大部分が均一な光の分布比率となるようにすることが好ましい。通常では、一次重合ゾーンだけを点灯したときに分布比率Xが15%以下となるようにすれば、一次重合ゾーンの距離が充分に長いので、二次重合ゾーンの影響を受けたとしても、上記面積は80%以上となる。なお、上記面積とはベルト基材面上の光が照射されている面積のことである。
また、本発明の好ましい形態である、一次重合ゾーンと二次重合ゾーンとを設ける場合、上述したように、通常では二次重合ゾーンの方が紫外線強度が高くなるように設定されることから、同様の蛍光灯型紫外線発生器を用いる場合、その配置間隔を狭くすることになる。したがって、分布比率Xとしては、一次重合ゾーンよりも二次重合ゾーンの方が低くなるが、本発明のより好ましい形態は、上記のように一次重合ゾーンを分布比率Xが15%以下になるように低く設定するところにある。
【0023】
上記重合前段部(蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が低い領域)においては、10W/m2以下の近紫外線を用いて光を照射することが好ましい。10W/m2を超える場合、光量が高過ぎて後述する一次ピーク温度が80℃を超えるおそれがあり、そのような場合、充分に高い分子量の水溶性重合体を得ることができない、また、不溶解分が多く発生するおそれがある。より好ましくは、8W/m2以下であり、更に好ましくは、6W/m2以下である。特に好ましくは、4W/m2以下である。下限値としては、0.2W/m2であることが好ましい。0.2W/m2未満であると、重合反応を充分に促進できないおそれがある。より好ましくは、1.0W/m2であり、更に好ましくは、1.5W/m2であり、特に好ましくは、3W/m2である。
【0024】
上記10W/m2以下の近紫外線は、照射時間が3分以上であることが好ましい。より好ましくは、5分以上であり、更に好ましくは、10分以上である。照射時間の上限としては、100分未満であることが好ましい。100分以上である場合には、生産性が低くなり、本発明の作用効果が充分に得られないことになる。より好ましくは、80分未満であり、更に好ましくは、60分未満である。
【0025】
上記重合後段部(蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が高い領域)においては、10W/m2を超える近紫外線を用いて光を照射することが好ましい。照射する近紫外線が10W/m2以下である場合、光量が低過ぎて残存する単量体を充分に減少させることができないおそれがある。より好ましくは、12W/m2を超えるものであり、更に好ましくは、13W/m2を超えるものである。上限値としては、100W/m2以下であることが好ましい。100W/m2を超えるものであると、照射強度が強過ぎて、製品が着色したり、充分に高い分子量の重合体が得られないおそれがある。より好ましくは、80W/m2以下であり、更に好ましくは、50W/m2以下である。特に好ましくは、17W/m2以下である。
上記重合後段部における近紫外線の照射時間としては、残存する単量体を充分に低減できる照射時間であれば特に限定されないが、1〜30分であることが好ましい。より好ましくは、3〜20分であり、更に好ましくは、5〜15分である。
【0026】
上記設置密度が低い領域と高い領域のベルト基材の進行方向における長さの比は、60/40〜95/5であることが好ましい。より好ましくは、70/30〜90/10であり、更に好ましくは、75/25〜85/15である。これにより本発明の効果を充分に発揮することができる。
【0027】
本発明の紫外線照射装置における上記蛍光灯型紫外線発生器は、調光可能な蛍光灯型紫外線発生器であることが好ましい。これにより、紫外線発生器の種類や数を変更することなく光量を変えることが可能となる。また、パンチングメタル等の減光板を挿入することなしに減光することが可能となる。従って簡便に光照射強度を重合に好適なものに調整できる紫外線照射装置とすることができる。中でも、光強度の微調整が可能である点で、インバーター制御により照射強度を増減させることにより、照射強度を変更する形態が好ましい。これにより、重合用溶液の反応の急激化を防ぐことができるとともに、光強度の均一性をより優れたものとすることができ、本発明の効果をより充分に発揮することができる。インバーター制御に用いる調光器としては、例えばDF−70161−PD(調光器、商品名、東芝ライテック社製)が挙げられる。
なお、本発明の効果が損なわれることがない限り、照射強度の異なる蛍光灯型紫外線発生器を用いたり、蛍光灯型紫外線発生器に反射笠を付けて照射強度を増したり、パンチングメタル等の減光板を設置する等して照射強度を減少させたりすることにより、照射強度を変更することも勿論可能である。
【0028】
本発明の紫外線照射装置について、好ましい形態を図4〜6を用いて説明する。
図4(a)〜(e)は、簡易型紫外線照射装置における好適な形態を示す模式図である。図4(a)は、簡易型紫外線照射装置本体を上方から観察した場合の平面模式図であり、(b)は紫外線照射装置本体の断面模式図である。図4(c)は、簡易型紫外線照射装置の上蓋を示す平面模式図であり、(d)は、該上蓋の断面模式図である。図4(e)は、簡易型紫外線照射装置本体の一部を示す断面模式図である。
上蓋10が天井板であり、装置本体7を構成する鉛直方向の板が側板である。上蓋10、装置本体7に使用されている天井板及び側板の部材はSUS304である。なお、上蓋の重量は、一枚11kgであり、これを4枚用いている。装置本体の重量は95kgである。図4中には、光量計(モデルUVA−365、カスタム社製)のセンサーを挿入するために開ける側面の小穴を記載していないが、例えば、簡易型紫外線照射装置中で紫外線の強度分布を測定する際には、側面に小穴を開けて使用することが好ましい。図4に示す簡易型紫外線照射装置は、重合熱に伴う水蒸気を遮断する目的で防護用ガラス(強化ガラス板)6を蛍光灯型紫外線発生器3の下方に設置したものである。
また、図5は、簡易型紫外線照射装置中の蛍光灯型紫外線発生器3の好ましい配置形態を示す上面図である。例えば、(A)と(H)の組み合わせを同一インバーターで光強度を制御し、同様に、(B)と(G)、(C)と(F)、(D)と(E)をそれぞれ同一インバーターで制御することができる。これにより光強度がより均一になるように調整することもできる。なお、上記蛍光灯型紫外線発生器3は、内蓋10に取り付けられたものであり、蛍光灯型紫外線発生器3が取り付けられた面が簡易型紫外線照射装置の内側となるように設置する。
図6は、簡易型紫外線照射装置の側面図である。光量計挿入穴(本明細書中、「UVセンサー挿入穴」ともいう)は、一方の側面で8箇所ずつ(両側面で16箇所)設けられている。
以上はすべて蛍光ランプの間隔が248mmの図面である。また、「簡易型紫外線照射装置」とは、光強度分布を測定するために制作されたもので、実験室でも使用できるような小型の紫外線照射装置を表し、後述する実施例3以降で用いているベルト重合機に設置されるようなものではない。
【0029】
上記蛍光灯型紫外線発生器は、中紫外線発生器及び/又は近紫外線発生器であることが好ましい。中でも、近紫外線発生器であることが特に好ましい。これにより、重合速度を適度な速度に制御することができ、また、ポリアクリル酸ナトリウムのような超高分子量重合体が必要とされる分野において、高分子量の水溶性重合体を得ることができる。
上記近紫外線発生器としては、蛍光灯型のブラックライト(本明細書中、蛍光灯状の蛍光ランプともいう)が好ましく、例えばFHF32BLB(調光可能な管長1.2mの蛍光ランプ、商品名、東芝ライテック社製)が挙げられる。上記FHF32BLBは、定格ランプ電力が45W/本であり、インバーターによる出力制御(調光)が可能である。
上記蛍光灯型のブラックライトの定格ランプ電力としては、10〜45W/本であるものが好ましい。
なお、本発明の効果が充分に発揮される限り、蛍光灯型紫外線発生器以外の紫外線発生器を更に用いてもよい。
【0030】
上記近紫外線発生器の波長領域としては、ベルト面における光分布の全体を100%とすると、波長分布における300nm以上、400nm以下の部分が70%以上であることが好適である。70%未満であると、300nm未満の波長の紫外線を照射した場合、重合反応が急激化し、残存単量体の量が少ない水溶性重合体が得られない場合がある。より好ましくは、80%以上であり、更に好ましくは、90%以上であり、特に好ましくは、実質的に100%である。
【0031】
本発明の紫外線照射装置において、構造的に好適な形態を以下に説明する。
上記紫外線照射装置は、側板及び天井板を備え、天井板及び側板の内面で紫外線を反射するように構成されていることが好ましい。このような形態は、蛍光灯型紫外線発生器から天井板の内面及び側板の内面に照射される光が乱反射されて重合用溶液側に照射されることになり、重合用溶液に対して照射される光強度をより充分なものとするとともに、更に均一性を高めることができるため好ましい形態である。なお、「天井板及び側板の内面」とは、天井板及び側板のベルト基材面側に向いている面のことを指す。例えば、図14では、天井板23及び側板24がベルト基材25を覆うように配置され、天井板の内面と側板の内面24aとによって紫外線が反射されるように構成されている。
【0032】
上述の紫外線を反射する材料で構成されるという技術範囲には、紫外線が反射される材質の採用、あるいは紫外線の反射を促す表面処理であればよく、このような形態が本発明の好ましい形態の一つとなる。例えば、金属以外の材質であっても上記内面が紫外線を反射できる材料で構成されていればよい。具体的には、蛍光灯型紫外線発生器設置室の内面と重合室の内面とが、同一又は異なって、例えば下記(1)〜(3)の形態により構成されたものであってもよい。(1)通常の金属板単独である形態、(2)通常の金属板単独又はそれ以外のものに、更に反射フィルムを貼った形態、(3)鏡等である形態。中でも、(1)通常の金属板単独である形態が好ましい。上記金属板は、例えば、内面をガラスコート処理してもよい。例えば、SUS板、アルミニウム板、鉄の板等が挙げられ、中でもSUS板が好ましい。SUS板は、例えば通常のSUSを使用することができるが、研磨処理し反射率を高める処理等を実施したものであってもよい。
【0033】
本発明の紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器が備わった蛍光灯型紫外線発生器設置室と重合用溶液が供給され展開される重合室に分かれるように防護用ガラスで仕切られた構造を有し、該防護用ガラスが、側面から装着及び脱着できるように複数枚に分割して設置されていることが好ましい。より具体的には、防護用ガラスが側面から装着及び脱着できるように、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に分割して設置されているものであることが好ましい。このような防護用ガラスの上面図、及び、紫外線照射装置におけるベルト基材の進行方向に対して側方側の面の一例を図8に示す。
このような場合、揮発性物質が、重合室から隣接して設置された蛍光灯型紫外線発生器設置室内に基本的に入り込まないものとすることができる。あわせて紫外線照射装置の外側から蛍光灯型紫外線発生器設置室内にも基本的に入り込まないものとすることができる。その結果、蛍光灯型紫外線発生器が揮発性物質に接触して漏電や腐食が生じることを防ぐことができる。
また原料の重合性単量体の種類によっては、アクリルアミド等の毒性の高い重合性単量体や、(メタ)アクリレート等の揮発性の高い重合性単量体もあるが、本発明の紫外線照射装置は、そういった重合性単量体を扱うときにも有効となる。
【0034】
更に、防護用ガラスが汚染した時に洗浄するために、側面から防護用ガラスを容易に装着及び脱着することができる形態が好ましい。その結果、上記紫外線照射装置は、長期にわたって当該水溶性重合体の製造に使用しても、防護用ガラスの汚染により光強度が弱くなることや、ベルト面の光量が不均一化するために残留単量体含量が増えることを防止することができる。このように、光強度を均一に維持するためには、汚染した防護用ガラスを脱着し、洗浄することが好ましい実施形態である。
また、例えば当該防護用ガラスがより大きな一枚のガラスにより構成される場合は、取り扱いが困難なことや、大きなガラスの自重により割れなどが生じる可能性がある。更に、大きなガラスの場合、ひずみやゆがみや反りが生じる結果、ガラスと蛍光灯型紫外線発生器設置室との間にすき間ができ、結果的に重合室から揮発性物質が入り込んで蛍光灯型紫外線発生器に漏電や腐食が生じるおそれがある。
更に、上記防護用ガラスは、複数枚に分割されたガラスが桟の上に載っている形態が好ましい。上記桟は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に紫外線照射装置中に架設されているものが好ましい(例えば、図7参照。)。このように、本発明の紫外線照射装置を備えたベルト重合機は、紫外線照射部(蛍光灯型紫外線発生器設置室)と重合室がガラスで仕切られた構造を備えたベルト重合機であることが好ましい。
【0035】
また、本発明の紫外線照射装置においては、上記蛍光灯型紫外線発生器設置室と重合室とを仕切る防護用ガラスが複数枚に分割されて桟の上に載せてあるだけの形態が好ましい。必要に応じ、上記の桟と防護用ガラスとの間に、シリコン樹脂やフッ素樹脂や耐腐食性のゴムのパッキンやシール材を設置することもできる。
【0036】
上記重合室は、紫外線照射装置の外部との間にガスの出入りがある構造(例えば、図7参照)を有することが好ましい。これにより、ガスを紫外線照射装置の外から重合室内に入れ、重合室から再び紫外線照射装置の外に排出することができる。これにより、当該ガスとともに重合用溶液から発生する揮発性物質を効率よく紫外線照射装置外に排出することができるので、光量及び光量の分布を均一なものとすることができる。
また、蛍光灯型紫外線発生器設置室内が、ガスが流通する形態であってもよい。このような形態とすることにより、重合室から蛍光灯型紫外線発生器設置室内へ揮発性物質が入り込むことがないものとなる。また、重合室内で発生する熱により、蛍光灯型紫外線発生器設置室内の温度が上昇するのを抑制することができる。その結果、蛍光灯型紫外線発生器の出力を高レベルに維持することが可能となる。
【0037】
上記防護用ガラスは、その近紫外線透過率が70〜90%であることが本発明の紫外線照射装置における好ましい実施形態である。70%未満であると、ベルト面における光強度が充分なものとならず、高品質の水溶性重合体を得ることができないおそれがある。90%を超えると、ガラス強度が充分なものとならないおそれがある。透過率が低くなると重合速度が遅くなりすぎ残留単量体も増える傾向がある。上記上限は、88%がより好ましい。更に好ましくは、85%である。上記下限は、73%がより好ましい。更に好ましくは、75%である。特に好ましくは、78%である。
【0038】
上記防護用ガラスは、厚みが3〜20mmであることが好ましい。3mm未満であると、ガラスが撓みやすくなる。撓みを防止するためには、ガラスを細分化する必要があるが、細分化すれば、ガラスを支持する桟の数が増える結果、ベルト面の影が増え、重合用溶液に向けて均一かつ充分な光量で光を照射することができなくなるおそれがある。20mmを超えると、ガラスの自重が大きいため、幅広で頑丈な桟が必要となり、ベルト面の影が増え、得られる重合体(ゲル)に品質ムラができるおそれがある。また、透過率が低下するおそれがある。上記防護用ガラスの厚みの下限は、3.5mmであることがより好ましい。更に好ましくは、4mmである。上限は、19mmであることがより好ましい。例えば、上記防護用ガラスは、厚みが4〜12mmであることが特に好ましい。
【0039】
上記防護用ガラスは、重合用溶液から重合熱により発生する揮発性物質から蛍光灯型紫外線発生器を防護することができるガラスであればよいが、強化ガラスによって構成されるものであることが好ましい。上記強化ガラスの具体例としては、例えばタフライト(強化ガラス、商品名、日本板硝子社製)等が挙げられ、その厚みは、例えば、4mmのもの、19mmのもの等が挙げられる。
【0040】
本発明はまた、本発明の紫外線照射装置を備えたベルト重合機でもある。
本発明のベルト重合機は、通常、本発明の紫外線照射装置、及び、該紫外線照射装置の下部構造底面(重合室底面)を構成するように設置されたベルト基材を備え、水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造することができるものである。水溶性重合体含水ゲルを連続的に製造するとは、人手が必要な工程を介することなく、該含水ゲルを製造し続けることをいう。
【0041】
上記重合を行うベルト基材とは、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射して重合を行うためのベルト基材であればよいが、例えば、伝熱性基材であることが好ましい。
上記伝熱性基材は、熱伝導性を有し、基材の下側から冷却した場合に、基材上の単量体成分の重合を行うのに適した材料で作成されたものであればよく、中でも熱伝導度が6W/m・K以上のものが好ましい。このような熱伝導度の基材を用いることで、冷却水の温度が比較的高温でも充分に冷却することができる。熱伝導度としてより好ましくは、7W/m・K以上であり、更に好ましくは、8W/m・K以上である。
上記ベルト基材の具体例としては、樹脂製、スチール製、鉄製、銅製等が好適である。
より好ましくは、スチール製、鉄製、銅製等であり、更に好ましくは、スチール製である。上記スチール製ベルト基材の材質としては、SUS301、SUS304、SUS316、SUS316L等のSUS製や炭素鋼(CS)等、公知のものが使用できる。これらの中でも、SUS製の伝熱性基材が好ましい。より好ましくは、SUS301、SUS304、SUS316、SUS316Lであり、更に好ましくは、SUS301、SUS304である。
【0042】
上記ベルト進行方向側の幅としては、1m以上が好ましく、また、30m以下が好ましい。上限は、より好ましくは25mであり、更に好ましくは20mである。下限は、より好ましくは2mであり、更に好ましくは3mである。
【0043】
上記ベルト基材は、ベルト基材上に離型材を有する形態であってもよい。
上記離型材は、光重合後の水溶性重合体を剥離しやすくする材料であればよく、例えばフッ素樹脂フィルム、フッ素樹脂含浸ガラスクロス、ガラスクロス粘着テープ、カプトン粘着テープ、フッ素樹脂フィルム、ポリフェニレンサルファイトフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリエステルフィルム、アセテートクロス、シリコーンゴム、ポリプロピレンフィルム、ガラスクロス等を挙げることができる。
【0044】
本発明は、本発明のベルト重合機を用いて、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程を含む水溶性重合体の製造方法でもある。このような方法により、重合体含水ゲルを効率的かつ容易に製造することができ、これを乾燥することにより、例えば高粘度で不溶解分が少なく重合率の高い水溶性重合体を得ることができる。
上記水溶液重合においては、例えば、窒素ガス等の不活性ガスをバブリングする等の方法により、水溶液(重合用溶液)中に溶解している溶存酸素を予め除去した状態で重合を行うことが好ましい。
【0045】
本発明の水溶性重合体の製造方法の好ましい実施形態としては、例えば単量体成分を含む溶液(以下、モノマー液ともいう)の入ったモノマー槽からモノマー液を抜き出し、触媒槽より触媒水溶液を抜き出し、モノマー液と触媒水溶液とが混合器で混合され、重合用溶液としてベルト重合機に供給される形態が好ましい。
上記モノマー液又は触媒水溶液の抜き出しは、例えばギヤーポンプを用いて単位時間当たりに一定量を抜き出すことが好ましい。例えば、単位時間当たりにモノマー液を抜き出す質量が単位時間当たりに触媒水溶液を抜き出す質量に対して、3〜500倍が好ましく、10〜200倍がより好ましい。上記重合用溶液の液比重(g/cm3)は、0.9〜1.5が好ましく、1.0〜1.3がより好ましく、1.05〜1.25が更に好ましい。
【0046】
本発明の製造方法においては、ベルト重合機を用いて含水ゲルを該含水ゲルと接するベルト面から連続的に剥がし続けることになる。引き剥がすための形態は、特に限定されないが、ベルト面から含水ゲルをローラーで引き上げる形態、ベルト重合機出口にスクレーパーが取り付けられていて、含水ゲルがベルト面に残留することなく排出される形態等が好ましい。上記含水ゲルと接するベルト面とは、ベルト基材の上面を意味し、重合室の底面を構成する。
【0047】
上記光重合は、一次ピーク温度が80℃以下になるように制御して行われるものであることが好ましい。光重合によると、光照射強度及び照射時間を容易に設定及び変更できるため、重合時間をより短縮することができ、生産性のよいものとすることができる。また、あまり高温で蒸気が立ち上る条件はよくないが、このような形態とすることにより、当該重合用溶液から発生する揮発性成分を低減することができるため、上述した曇りを充分に防止し、安定に紫外線を透過させることができる。
【0048】
上記一次ピーク温度(重合用溶液の一次ピーク温度)が80℃を超えると、重合反応が過度に進行することとなり、得られる水溶性重合体の分子量が充分に高いものとならないおそれがあるうえに、重合体中に残存する単量体を充分に低減できないおそれがある。また、上述した曇りが生じ、安定に紫外線を透過させることができなくなるおそれがある。より好ましくは、75℃以下であり、更に好ましくは、70℃以下である。重合用溶液の一次ピーク温度の下限としては、分子量が充分なものとなる温度であればよく、30℃以上であることが好ましい。より好ましくは、35℃以上であり、更に好ましくは、40℃以上である。
上記製造方法においては、一次ピーク温度の制御は、伝熱性基材の下面を水と接触させることによって行うことが好ましい。水と接触させることによって熱伝導性に優れた伝熱性基材の下面を冷却することにより重合用溶液を充分に冷却することができる。
上記伝熱性基材の下面を接触させる水の温度は、重合用溶液を冷却できる温度であれば特に限定されないが、10〜40℃であることが好ましい。
【0049】
上記水溶液重合において、単量体成分を含む水溶液の層厚は、5〜50mmが好ましい。層厚が、5mm未満又は50mmを超えると、得られる重合体に単量体成分が残存するとともに重合体の分子量が充分には高くならないおそれがある。より好ましくは、8〜30mmであり、更に好ましくは、10〜20mmである。
【0050】
本発明における単量体成分は、例えば、アクリル酸;アクリル酸を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなるアクリル酸塩;α−ヒドロキシ(メタ)アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和モノカルボン酸系単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和ジカルボン酸系単量体;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和スルホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸、及び、これらの酸型単量体を1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミン等で中和してなる中和物等の不飽和ホスホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基を有する不飽和単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体等が挙げられる。好ましい単量体としては、不揮発性単量体である。上記単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記重合用溶液を用いて行われる重合工程においては、光重合開始剤を用いて重合させることが好ましい。光重合開始剤を用いて重合させることで、重合体を高粘度のものとすることができ、また、残存する単量体の量を低減することができる。この場合、上記重合用溶液に光重合開始剤を配合することが好ましい。
上記光重合開始剤としては、その作用効果を発揮するものであれば特に限定されないが、アゾ系開始剤が好ましい。中でも、2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン2塩酸塩等のアゾ系水溶性開始剤がより好ましい。
上記光重合開始剤としては、上記アゾ系水溶性開始剤以外にも、種々の光重合開始剤を用いることができる。また、このような光重合開始剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよく特に限定されるものではない。
【0052】
上記光重合開始剤の使用量としては、重合に使用される単量体成分1モルに対して、0.0001g以上が好ましく、また、1g以下が好ましい。これにより、アクリル酸(塩)系水溶性重合体の分子量や重合率を充分に高いものとすることができる。より好ましくは、0.001g以上であり、また、0.5g以下である。
【0053】
本発明においては、熱重合開始剤を光重合開始剤と併用することが好適である。熱重合開始剤を併用することにより、残存する単量体の量を低減することができる。また、上記重合工程では、必要に応じて連鎖移動剤を用いてもよい。上記重合溶媒としては、水が好適に用いられる。
【0054】
上記重合工程の重合開始時における単量体成分の反応液中の濃度(単量体濃度)としては、20質量%以上であり、また、60質量%以下であり、より好ましくは、25〜55質量%であり、更に好ましくは、30〜50質量%である。上記重合開始時とは、重合するために所定量の単量体成分を含む反応液を調製し、重合させるときである。単量体濃度を高くすることで重合体の増粘作用を更に高めることができる。また、生産性を向上させることができる面でより有利である。しかしあまり単量体濃度が高すぎる場合、不溶解分が増加し好ましくない。また、重合を開始する温度としては、50℃以下であることが好ましい。より好ましくは、35℃以下であり、更に好ましくは、30℃以下である。重合開始温度が低い方が反応の急激化等の異常反応に基づく危険がなくなると共に、高濃度での反応が容易となるため、生産性の面で有利である。また、上記の重合温度は、得られる水溶性重合体の物性をより良好にするためにも有効な重合条件である。
【0055】
本発明の製造方法により得られる水溶性重合体の中和度は、40〜100モル%であることが好ましい。上記水溶性重合体の中和度は、アクリル酸塩系重合体が有する酸基と中和された状態の基の総和を100モル%として示したときの、中和された状態の基の含有量(中和度)をいう。より好ましくは、60モル%以上であり、更に好ましくは、80モル%以上である。
【0056】
上述した重合工程により得られた水溶性重合体含水ゲルは、更に押出工程、乾燥工程及び粉砕工程に供して、(メタ)アクリル酸(塩)系水溶性重合体(粉体)を製造することができる。ここで、押出工程は、重合工程で得られた重合体のゲル状物を押し出しすることにより、乾燥しやすいように解砕する工程である。粉砕工程は、その乾燥物を一定の大きさ(粒度)に砕く工程である。このようにして得られた粉粒体を次の分級工程で分級してもよい。上記工程としては特に限定されず、通常行われる方法が採用される。
【0057】
上記乾燥工程においては、重合物を好ましくは50℃〜220℃で乾燥させることにより、乾燥物である水溶性重合体を得ることができる。重合物を乾燥させる方法としては、例えば、乾燥しやすいように、重合物を切断する等の方法により重合物の表面積を大きくしたり、減圧乾燥したりすることが好ましい。乾燥温度が50℃よりも低いと、重合物を充分に乾燥させることができないおそれがあり、220℃よりも高いと、重合物の熱架橋が起こり、不溶解分が多くなるおそれがある。また、240℃よりも高い場合には、重合物の主鎖や架橋点の切断が起こるおそれがある。よって、より好ましい乾燥温度は、100〜210℃である。更に好ましくは、150〜200℃である。なお乾燥時間としては、重合物に含まれる水分量や乾燥温度等に応じて適宜設定すればよい。
重合後の処理工程としては、押出、乾燥、粉砕、分級の順に、これらの工程を含むことが好ましい。このような工程を経ることにより、種々の分野に好適に使用できる水溶性重合体が得られることとなる。
【0058】
本発明における水溶性重合体の残存単量体濃度は、1質量%以下であることが好ましい。水溶性重合体において、残存単量体濃度(残存モノマー濃度)が1質量%を超えると、品質が低いものとなり、本発明の作用効果を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、0.5質量%以下であり、更に好ましくは、0.3質量%以下である。
上記残存単量体濃度(残存モノマー濃度)は、例えば重合体がポリアクリル酸ナトリウムである場合、「食品添加物公定書」、第7版、p.436−437、又は、「飼料添加物の成分規格等収載書」、第10版、p.239−240に記載の純度試験の項に記載の以下の方法で測定されるものである。なお、アクリル酸(塩)系水溶性重合体を食品添加物用、又は、飼料添加物用として用いる場合は、下記方法によって残存モノマーの量を求めるとき、その量は1%以下でなければならない。
【0059】
残留単量体の測定方法
〔臭素付加法〕
本品(重合体)約1gを精密に量り、300mlのヨウ素瓶に入れ、水100mlを加え、時々振り混ぜながら約24時間放置して溶かす。この液に臭素酸カリウム・臭化カリウム試液10mlを正確に量って加え、更によく振り混ぜ、塩酸10mlを手早く加え、直ちに密栓して再びよく振り混ぜた後、ヨウ素瓶の上部にヨウ化カリウム試液約20mlを入れ、暗所で20分間放置する。次に栓を緩めてヨウ化カリウム試液を流し込み、直ちに密栓をしてよく振り混ぜた後、0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定する(指示薬デンプン試液2mL)。別に同様の方法で空試験を行い、次式により含量を求める。
【0060】
【数1】
【0061】
ただし、a:空試験における0.1mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
b:本試験における0.1mol/1チオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(ml)
【0062】
本発明における水溶性重合体の不溶解分は、2質量%以下であることが好ましい。不溶解分が2質量%を超えると、品質が低いものとなり、本発明の作用効果を充分に発揮できないおそれがある。より好ましくは、1質量%以下であり、更に好ましくは、0.8質量%以下であり、特に好ましくは、0.6質量%以下である。最も好ましくは、含まれないことである。
上記不溶解分は、イオン交換水499gに水溶性重合体1.0gを添加し、50分間攪拌した後に25℃とし、500μmの網目のふるいを用いて濾過することにより、含水状態の不溶物を取り出し、下記計算式;
不溶解分(質量%)={不溶物の質量(g)/500(g)}×100
に基づいて算出される値である。なお、本明細書中、不溶解分は、水溶液中のアクリル酸(塩)系水溶性重合体を上記フィルタで濾過後、1分以内に測定される値とする。なお、濾過及び秤量は、25℃、湿度60%以上の条件で行う。
【0063】
〔溶液粘度の測定方法〕
容量500mlのビーカーにメタノール20mlを入れた後、水溶性ポリ(メタ)アクリル酸塩を純分として1g添加する。マグネチックスターラーで攪拌しながら、イオン交換水500mlを添加した後、ジャーテスターを使用し100rpmで50分間攪拌溶解させる。その後、30℃に温度調整してB型粘度計(株式会社トキメック社製)を用いて30rpmの回転数で測定する。
【発明の効果】
【0064】
本発明の紫外線照射装置は、上述の構成よりなり、当該紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いて品質が一定で残留単量体量が少なく高品質な水溶性重合体を効率よく製造することができるものであり、医薬用、塗料用、土木・建築用、その他一般工業用において、増粘剤、粘着剤、凝集剤、吸湿剤、乾燥剤等として用いられる水溶性重合体を好適に製造することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0066】
実施例1、2及び比較例1において、ランプの位置、測定点の位置を示すa地点〜h地点、1地点〜11地点とは、図1中に示した測定点2の位置を示しているものである。以下、紫外線発生器を「ランプ」ともいう。また、蛍光灯型紫外線発生器を「蛍光ランプ」ともいう。「ランプの位置」とは、ランプを上面からみた場合にベルト基材の上方において対応する位置を意味する。なお、図1中の両端矢印に付された数値は長さ(mm)を表す。
実施例1及び2においては、DF−70161−PD(調光器、商品名、東芝ライテック社製)を紫外線照射装置に組み込み、調光器(インバーター)の制御電圧を測定した。
最大の光強度を示す電圧は0ボルトであった。また、最小の光強度を示す電圧は9ボルトであった。制御電圧が0ボルトのデータ(実施例1)と共に、制御電圧を4ボルトにして減光したデータ(実施例2)も合わせて測定した。
(紫外線照射装置)
上記実施例1〜2及び比較例1においては、図4〜6に示した紫外線照射装置において、紫外線照射装置内に設置した蛍光灯型紫外線発生器の配置を変化させて使用した。
装置の材質は、SUS304であり、蛍光ランプの長軸はベルトの進行方向を想定したものであった。
(光量測定点)
以下に示す実施例においては、図1に示す測定点2の位置を用いた。蛍光ランプの配置については、この測定点を基準にして示す。
【0067】
実施例1
図1は、実施例1に係る紫外線照射装置において、ランプの配置と測定点の配置を示す図である。
ランプ間隔248mm(調光器0ボルト)時の光強度分布
下記の条件で行った。
壁面数; (4壁面+1底面)
ランプ
・種類;ブラックライト FHF32BLB
・本数;4本(ランプ間隔248mm)
・ガラス;強化ガラス(タフライト、厚み4mm)
《ランプの位置》
第一ランプ1aの位置;3地点と4地点との間。
第二ランプ1bの位置;5地点。
第三ランプ1cの位置;6地点と7地点との間。
第四ランプ1dの位置;8地点。
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の端の位置》
・a地点とb地点の間
・g地点とh地点の間
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の制御電圧》
0ボルト(0ボルト時は光強度が最大)
参考;光強度が最小時の電圧は9Vであった。
【0068】
ランプ間隔248mm(調光器0ボルト)時の光強度分布を表1及び図9に示す。
表1〜3中で、数値は光強度(W/m2)を表す。
図1は、実施例1にかかる紫外線照射装置中に4本のランプ(蛍光灯型紫外線発生器)を設置したときの平面模式図である。実施例1では、図1のように4本のランプ(第一〜第四ランプ)を用いて測定を行っているため、この4本のランプの内側に配置された測定点を用いて紫外線強度の平均値と標準偏差とを求め、光量分布の程度を表す分布比率(標準偏差/平均値×100)を算出した。すなわち、実施例1においては、4地点〜8地点、b地点〜g地点における測定点を用いた。
上記測定範囲において、光強度分布の標準偏差は、0.60W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、4.6W/m2であった。この場合の、光量分布の程度を表す分布比率は、13.0%であった。なお、表1に測定結果を示すが、光強度分布の算出に用いた測定値は、表1中の太線で囲まれた部分である。
【0069】
【表1】
【0070】
実施例2
実施例2においては、調光器の電圧を変化させたこと以外は、実施例1と同様にして光強度分布の測定を行った。
ランプ間隔248mm(調光器4ボルト)時の光強度分布
下記の条件で行った。
壁面数;(4壁面+1底面)
ランプ
・種類;ブラックライト FHF32BLB
・本数;4本(ランプ間隔248mm)
・ガラス;強化ガラス(タフライト、厚み4mm)
《ランプの位置》
第一ランプの位置;3地点と4地点との間。
第二ランプの位置;5地点。
第三ランプの位置;6地点と7地点との間。
第四ランプの位置;8地点。
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の端の位置》
・a地点とb地点の間
・g地点とh地点の間
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の制御電圧》
4ボルト(0ボルト時は光強度が最大)
参考;光強度が最小時の電圧は直流9ボルトであった。
【0071】
ランプ間隔248mm(調光器4ボルト)時の光強度分布を表2及び図10に示す。
実施例2に関しても、実施例1と同様に、4地点〜8地点、b地点〜g地点における測定点を用いて光強度分布を算出した。
上記測定範囲において、光強度分布の標準偏差は、0.42W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、3.3W/m2であった。この場合の、光量分布の程度を表す分布比率は、12.7%であった。表2に測定結果を示すが、光強度分布の算出に用いた測定値は、表2中の太線で囲まれた部分である。
【0072】
【表2】
【0073】
比較例1
比較例1では、実施例1に対してランプの配置を変化させて光強度分布の測定を行った。
ランプ間隔497mm(調光器0ボルト)時の光強度分布は下記の条件で測定した。
壁面数;(4壁面+1底面)
ランプ
・種類;ブラックライト FHF32BLB
・本数;4本(ランプ間隔497mm)
・ガラス;強化ガラス(タフライト、厚み4mm)
《ランプの位置》
第一ランプの位置;1地点と2地点との間。
第二ランプの位置;5地点。
第三ランプの位置;7地点と8地点との間。
第四ランプの位置;10地点と11地点との間。
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の端の位置》
・a地点とb地点の間
・g地点とh地点の間
《各ランプ(第一〜第四ランプ)の制御電圧》
0ボルト(0ボルト時は光強度が最大)
参考;光強度が最小時の電圧は直流9Vであった。
【0074】
ランプ間隔497mm時の光強度分布を表3及び図11に示す。
比較例1では、使用した4本のランプの内側に配置された測定点を用いて光量分布の程度を表す分布比率を算出した。すなわち、比較例1においては、2地点〜10地点、b地点〜g地点における測定点を用いて、光強度分布を算出した。
上記測定範囲において、光強度分布の標準偏差は、0.67W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、2.8W/m2であった。この場合の、光量分布の程度を表す分布比率は、23.9%であった。表3に測定結果を示すが、光強度分布の算出に用いた測定値は、表3中の太線で囲まれた部分である。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例1(ランプ間隔が248mm〔0ボルト〕時)では、比較例1と比較して光強度分布が非常に小さくなった。また、実施例1の測定結果を示す図9と比較例1の測定結果を示す図11を比較するとわかるように、実施例1における光強度分布は、ベルト基材の幅方向において、極大値が実質的に1つであった。すなわち、4本の蛍光灯が相互に干渉する結果、強度ピークとしては1本となった。比較例1においては、4本のピークがあらわれる結果となった。このことから、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔を小さくすることによって、光強度分布を小さくすることができ、少なくとも上記間隔が約25cm以下である場合には、その効果が充分に立証されているということができる。
実施例2(ランプ間隔248mm〔調光器4ボルト〕時)は、調光器の電圧を4ボルトとすることにより減光したものであるが、実施例1と同様に、光強度分布が小さく、均等に減光されていることが分かった。この結果より、調光可能な蛍光灯型紫外線発生器を用いることによって、蛍光灯型紫外線発生器の配置の変更等、煩雑な作業を行うことなく、また、光量分布を広くすることなく、重合用溶液に照射される紫外線の強度を容易に変化させることを立証している。
実施例1及び2においては、簡易型の紫外線照射装置を用いているが、蛍光灯型紫外線発生器の間隔や、配列等を特定することにより充分に光強度分布を小さくすることができることが立証されている。光強度分布は同様の配置をとる限り変わるものではないため、実際に製品を量産するために用いる紫外線照射装置を備えたベルト重合機であっても同様に、蛍光灯型紫外線発生器の配列等を特定することにより、実施例1及び2と同様の効果が得られることは明らかなものであるといえる。
また、上記測定結果から、例えば、実施例1及び2における測定範囲に対応するように紫外線が照射される領域を設定することによって光強度分布を均一なものとすることができる。例えば、ポリアクリル酸ナトリウムの重合等を行う場合に、上記測定結果を考慮して光強度の微調整(重合用溶液に対する光量を充分なものとしながらその均一性を際立って優れたものとすること)することが高品質(高分子量)の製品を得るうえで極めて重要である。
【0077】
実施例3
図7に示したベルト重合機を用いて重合を行った。
該重合機は、重合に先立って以下の条件に調整されている。
気相部酸素濃度が8vol%となるように、重合室内は重合室のガス入り口14より連続的に窒素が導入されている。重合室内における一次重合ゾーンにおけるベルト基材中央上部の近紫外線強度は3.0W/m2となるように調光されている。また、二次重合ゾーンにおけるベルト基材中央上部の近紫外線強度は、13.0W/m2となるように調光されている。
ベルトスピードは39.5cm/minとなるように調整されている。該条件下、アクリル酸ナトリウム36%、グリセリン2.5%(対アクリル酸ナトリウム)、光重合開始剤としての2,2′−アゾビス−2−アミジノプロパン塩酸塩0.03g/モル(対アクリル酸ナトリウム)を含むpH10.0で溶存酸素が5ppmの重合液を図7の19で示した重合用溶液の供給口より、550kg/Hrの割合で供給した。約25分経過後、ベルト基材の終端部より厚みが約15mmの含水ゲルが連続的に製造された。両端に存在する端ゲル(エッジロープより中央部に向けて10cmまでのゲル)を一つにまとめ以下に示した手順に従って乾燥粉末を得た。また、端ゲルとは別に中央部に存在するゲルを端ゲルと同様に処理して乾燥粉末を得た。
【0078】
図7は、製品幅(ベルト基材の両端に設けられた高さ30mmのエッジロープ間の距離)1330mm、重合長9880mmの紫外線照射装置を備えた、ベルト基材幅が1550mmのベルト重合機である。蛍光灯型紫外線発生器3は、ブラックライト蛍光ランプであり、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に沿って設置されている。蛍光灯型紫外線発生器3は、合計88本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、7本×6列=42本であり、蛍光灯型紫外線発生器3どうしの間隔は、221mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器3どうしの間隔は、60mmである。
紫外線発生器(UV蛍光ランプ)の仕様は、メロウライン(品名、管長1.2m、定格ランプ電力45Wのブラックライト、型名「FHF32BLB」、東芝ライテック社製)である。また、図7に示されるベルト重合機では、ベルトの進行方法に沿って蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置されているため、製品幅(1330mm)の端部においても隙間が生じないように配置することができるため、ベルト基材の端部に対しても均一に紫外線を照射することができる。
強化ガラスの仕様は、タフライト(厚み4mmの強化ガラス、日本板硝子社製)である。
紫外線照射装置の天井板、側板の仕様は、SUS304板であり、図7で示される、本発明にかかる紫外線照射装置を備えたベルト重合機は、ガラス11が側面部から脱着できるような構造になっており、ガラス面の洗浄作業も容易に行える構造になっている。
紫外線発生器の光照射強度(近紫外線強度)は、ベルト基材面において測定される光照射強度であり、光照射強度は、下記の光量計で測定した。
装置:UVメーター
メーカー:株式会社カスタム
型式:本体 UVA−365
センサー:UVセンサー(スペクトラ応答性 300nm〜400nm〔355nm中心ポイント〕)
このときの、一次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、3.0W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は9.0%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
なお、一次重合ゾーン及び二次重合ゾーンにおける光量分布を表す分布比率Xに関してであるが、二次重合ゾーンにおいては照射される光量をより高くするために紫外線発生器が密に設置されているので、その結果、分布比率が少なくなる。よって、一次重合ゾーンよりも2次重合ゾーンの方の光量分布を示す分布比率が下がることになる。
【0079】
<ゲルの処理方法(乾燥粉末の取得方法)>
端ゲル(又は中央部ゲル)をミートチョッパー(平賀工作所製、No.32E型、ダイス径4.5mmΦ)で押出す。該押出しゲルを200℃で40分間乾燥する。風向はUPフローでありその線速は1.5m/Sである。このようにして乾燥された乾物を卓上粉砕機で粉砕した後、20メッシュパスとなるように分級して乾燥粉末を得た。
上記乾燥粉末の、溶液粘度、残存単量体、不溶解分を前記測定方法に従って測定し、結果を表4に示した。
【0080】
実施例4
実施例3と同様のベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、合計94本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、8本×6列=48本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、190mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は0.25W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は8.3%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
その他の条件については、実施例3と同様である。
【0081】
実施例5
実施例3と同様のベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、合計76本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、5本×6列=30本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、333mmである。
二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は0.44W/m2であった。光強度分布の各光強度の平均値は、3.0W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は14.7%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
その他の条件については、実施例3と同様である。
なお、上記実施例3〜5において、一次重合ゾーンに関してはすべて、90%以上の面積領域(有効測定面積)にわたって分布比率が15%以下となっていた。
【0082】
比較例2
実施例3と同様のベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、合計70本用いた。
一次重合ゾーン(低密度部)は、4本×6列=24本であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、443mmである。二次重合ゾーン(高密度部)は、23本×2列であり、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔は、60mmである。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は0.49W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は16.3%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.27W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、13.0W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は2.1%であった。
その他の条件については、実施例3と同様である。
【0083】
比較例3
実施例3と同様の紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いた。蛍光灯型紫外線発生器は、ブラックライト蛍光ランプであり、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に設置されている。蛍光灯型紫外線発生器は、合計77本用いた。一次重合ゾーンは、7410mmで、二次重合ゾーンは、2470mmである。
一次重合ゾーン横置(低密度部)は、35本であり、212mm間隔で設置されている。
二次重合ゾーン横置(高密度部)は、42本であり、60mm間隔で設置されている。
紫外線発生器(UV蛍光ランプ)の仕様は、メロウライン(品名、管長1.2m、定格ランプ電力45Wのブラックライト、型名「FHF32BLB」、東芝ライテック社製)である。なお、比較例3における、蛍光ランプ間の距離の算出であるが、一次重合ゾーンと二次重合ゾーンの境界部に、二次重合ゾーンの1本目の蛍光ランプを設置するものとして蛍光ランプ間の間隔を算定したものである。例えば、当該境界部に、仮に一次重合ゾーン用の最後尾列のランプが設置されたものとする場合でも同様に、それぞれのゾーンに設置する蛍光ランプの本数から間隔を算定しランプ間隔とすればよい。
この場合、蛍光灯型紫外線発生器の長さが1230mmであり、重合性溶液をせきとめるためのエッジロープの間隔が1330mmであるため、蛍光灯型紫外線発生器とエッジロープとの間にそれぞれ50mmの間隔が生じている。一次重合ゾーンにおける光強度の平均値を3.0W/m2に調光した時の光強度分布の標準偏差は、0.93W/m2であった。従って、一次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は31.0%であった。また、二次重合ゾーンにおける光強度分布の標準偏差は、0.76W/m2であり、光強度分布の各光強度の平均値は、14.4W/m2であった。従って、二次重合ゾーンにおける光量分布の程度を表す分布比率は5.3%であった。
強化ガラスの仕様は、タフライト(厚み4mmの強化ガラス、日本板硝子社製)である。
紫外線照射装置の天井板、側板の仕様は、SUS304板である。
表4に、実施例3〜5及び比較例2及び3の結果を示す。
【0084】
【表4】
【0085】
実施例3〜5及び比較例2を比較した場合、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔を狭くすることによって、光強度分布が改善し、得られるゲルにおいても均一性が向上して高品質の製品が製造されていることがわかる。また、比較例2では、残留単量体含量(残存単量体濃度)が1.0%を超えているため、食品添加物の成分規格に適合しないものであった。
実施例3と比較例3とを比較した場合、蛍光灯型紫外線発生器の配列が異なるため、比較例3では、紫外線照射強度の分布が大きくなり、端部で製造されたゲルと、中央部で製造されたゲルとで、残存単量体分や不溶解分の差異が大きくなる。本発明の紫外線照射装置(ベルト基材面における光量分布の程度を表す分布比率が15%以下のもの)を用いることによって、端部と中央部との均一性が高まり高品質のゲルが製造されていることがわかる。
【0086】
比較例3のように、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向(長軸方向の長さ1230mm)がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に設置されている場合には、上述したように、蛍光灯型紫外線発生器とエッジロープとの間にそれぞれ50mmの間隔ができ、これにより、ベルト基材の端部で製造されたゲルと、中央部で製造されたゲルとで品質に差異が生じることとなる。実施例3においては、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されていることによって、光強度分布が改善されているため、端部で製造されたゲルと、中央部で製造されたゲルの品質を均一化することができる。すなわち、本発明の紫外線照射装置を用いたベルト重合機を用いることによって、高品質で均一性が優れたゲルを製造することができることとなる。
【0087】
(結論)ベルト基材面における紫外線の光量分布の程度を表す分布比率を15%以下とする、例えば、上記蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列することや、蛍光灯型紫外線発生器どうしの間隔を狭くすること等により、製造される上記光強度の微調整が可能となり、光強度分布を小さいもの、すなわち、本発明の紫外線照射装置を用いたベルト重合機により得られるゲル等の品質を高めることができる。
例えば、蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向がベルト基材の進行方向に対して垂直方向に配列されている場合には、紫外線照射装置や重合を行うためのベルト基材の大きさによっては、ベルト基材上の製品幅の端部に紫外線発生器が設置されていない隙間が生じる。そのため、中央部と端部とで光照射強度に分布が生じ、その結果、重合体が不均質なものとなるおそれがある。重合後段は、未反応単量体量を低減させる工程であり、重合前段におけるほどの光量均一性は必要ないことになる。そこで後段は光強度が強い種々の形態とすることができる。上述した実施例及び比較例から、本発明の紫外線照射装置を備えたベルト重合機を用いて高品質の水溶性重合体を製造することができることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、簡易型紫外線照射装置における底面(ベルト基材面を想定)における紫外線照射強度の測定点の一形態を示す図である。
【図2】図2は、蛍光灯型紫外線発生器の長軸どうしの間隔(B)を示す図である。
【図3】図3は、本発明のベルト重合機における蛍光灯型紫外線発生器の配列の一形態を示す図である。
【図4】図4は、本発明の簡易型紫外線照射装置の一形態を示す図である。(図中にふされた長さの単位はmmである。)。
【図5】図5は、本発明の簡易型紫外線照射装置の一形態を示す上面図である。
【図6】図6は、本発明の簡易型紫外線照射装置の一形態を示す側面図である。
【図7】図7は、本発明の紫外線照射装置が設置されたベルト重合機の一形態を示す上面図及び側面図である。
【図8】図8は、紫外線照射装置における防護用ガラスの一形態を示す上面図及び紫外線照射装置のフード側面の一形態を示す図である。
【図9】図9は、実施例1にかかる光強度分布を示す図である。
【図10】図10は、実施例2にかかる光強度分布を示す図である。
【図11】図11は、比較例1にかかる光強度分布を示す図である。
【図12】図12は、水銀ランプの形状を示す図である。
【図13】図13は、蛍光灯型紫外線発生器の配列の一形態を示す平面図である。(a)は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置され、ベルト基材の進行方向に1列で並んでいる形態であり、(b)は、ベルト基材の進行方向に対して垂直方向に蛍光灯型紫外線発生器の長軸方向が配置され、ベルト基材の進行方向に2列で並んでいる形態である。
【図14】図14は、側板としてはベルト基材の端部付近に鉛直又は略鉛直に設置され、天井板としては側板に支えられてベルト基材面に対して平行又は略平行に設置される形態の一例を示す斜視模式図である。
【符号の説明】
【0089】
1a:第一ランプ
1b:第二ランプ
1c:第三ランプ
1d:第四ランプ
2:測定点
3:蛍光灯型紫外線発生器
4:ベルト基材の進行方向
5:ベルト基材上の縁
6:防護用ガラス
7:装置本体
8:取手
9:桟
10:上蓋
11:強化ガラス(タフライト4mm厚)
12:UVセンサー挿入穴
13、27:ベルト重合機
14a、14b:ガス入口
15a、15b:ガス出口
17:カーテン
18:重合用溶液
19:重合用溶液供給口
20:トレイ
21:トレイ取り出し口
22:のぞき窓
23:天井板
24:側板
24a:側板の内面
25:ベルト基材
26:エッジロープ
27:製品幅
28:端部
29:中央部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置であって、
該紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下であることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、長軸どうしの間隔が25cm以下となるように備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が低い重合前段部と、設置密度が高い重合後段部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、調光可能な蛍光灯型紫外線発生器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、近紫外線発生器であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線照射装置を備えたことを特徴とするベルト重合機。
【請求項8】
請求項7に記載のベルト重合機を用いて、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程を含むことを特徴とする水溶性重合体の製造方法。
【請求項1】
ベルト基材の上方に設置され、蛍光灯型紫外線発生器を備えたベルト重合機用の紫外線照射装置であって、
該紫外線照射装置は、ベルト基材面における紫外線強度の平均値をA、紫外線強度の標準偏差をσとした場合、光量分布の程度を表す分布比率X(σ/A×100)が15%以下であることを特徴とする紫外線照射装置。
【請求項2】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、長軸方向がベルト基材の進行方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載の紫外線照射装置。
【請求項3】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、長軸どうしの間隔が25cm以下となるように備えられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記紫外線照射装置は、蛍光灯型紫外線発生器の設置密度が低い重合前段部と、設置密度が高い重合後段部とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項5】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、調光可能な蛍光灯型紫外線発生器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項6】
前記蛍光灯型紫外線発生器は、近紫外線発生器であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の紫外線照射装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の紫外線照射装置を備えたことを特徴とするベルト重合機。
【請求項8】
請求項7に記載のベルト重合機を用いて、重合性単量体を含む重合用溶液に紫外線を照射し、連続的に重合を行う工程を含むことを特徴とする水溶性重合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−53309(P2010−53309A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222368(P2008−222368)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
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