説明

紫外線硬化可能なゲル化剤インキを含む機械読み取り可能なコード

【課題】紙、板紙、プラスチック等対象物の上に情報を埋め込むための方法を提供する。
【解決手段】基材の上に情報を埋め込む方法は、機械読み取り可能なコードが一組の印刷されたマーキングを含み、前記組のそれぞれの印刷されたマーキングが基材の上に予め決められた高さを有し予め決められた値を表し、同一の予め決められた高さを有する印刷されたマーキングは同一データ値を表し、異なったデータ値を表す印刷されたマーキングは異なる高さを有する工程と、任意成分の着色剤、放射線硬化性モノマー又はプレポリマー、光重合開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インキビヒクルを含む、紫外線硬化可能な相変化インキを堆積させ、基材の上に機械読み取り可能なコードを印刷する工程と、印刷されたマーキングのそれぞれが、予め決められた高さを有するように堆積されたインキを硬化させる工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されているのは、たとえば紙、板紙、プラスチックなど対象物の上に、情報を埋め込むための方法およびコードシステムである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機械読み取り可能なコードについて開示され、この機械読み取りコードは、印刷されたマーキングのセットを含み、セットの各々の印刷されたマーキングは、基材上に予め決められた高さを有し、予め定められたデータ値を表し、異なるデータ値を表す印刷された複数のマーキングは、異なる高さを有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0121727号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セキュリティおよび/または証明もしくは認証用途のために、対象物の上に情報を埋め込み、そして回収するための新規な技術、システムおよびプロセスが依然として必要とされている。さらに、文書の上に、機械読み取りが可能であって、コピー機やスキャナーのような事務機器では容易に再生できないようなコード化された情報を、あからさまにまたは密かに配置することを可能とするシステムおよびプロセスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基材の上に情報を埋め込むための方法であって、情報を機械読み取り可能なコードに変換させる工程であって、前記コードが一組の意図的に印刷されたマーキングを含み、前記の組のそれぞれの意図的に印刷されたマーキングが基材の上に予め決められた高さを有して予め決められた値を表し、同一の予め決められた高さを有する意図的に印刷されたマーキングが同一のデータ値を表し、そして異なったデータ値を表す意図的に印刷されたマーキングが異なった高さを有する工程と、任意成分の着色剤、ならびに放射線硬化性モノマーもしくはプレポリマー、光重合開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インキビヒクルを含む、紫外線硬化可能な相変化インキを堆積させることによって、前記基材の上に前記機械読み取り可能なコードを印刷する工程と、前記意図的に印刷されたマーキングのそれぞれが、前記予め決められた高さを有して印刷されているように前記堆積されたインキを硬化させる工程と、を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】バーコードの形態の機械読み取り可能なコードの一例である。
【図2】二進コードの形態の機械読み取り可能なコードの一例である。
【図3】二次元データマトリックスコードの一例である。
【図4A】図3のコードの一部分である。
【図4B】別な見方をした図3に示されたコードである。
【図4C】三次元データマトリックススタイルコードの一例である。
【図5】自立型構造の図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書においては、各種の適切または所望の機械読み取り可能なコードフォーマットを選択することができるが、そのようなものとしては、一次元表示のたとえばバーコード、二次元表示のたとえばスタックトバーコード、マトリックスコード、PDF417のようなコードなどが挙げられる。コードは二進法の形式であっても、その他の形式であってもよい。機械読み取り可能なコードセットの印刷されたマーキングは、バーコードにおけるようなロッドまたはストライプ、ドット、グリフなど含めた各種適切な形式をとることができる。
【0008】
機械読み取り可能なコードは、一組の印刷されたマーキングからなるが、ここで、その組のそれぞれの印刷されたマーキングは、基材の上に予め決められた印刷高さを有することで予め決められたデータ値を表しているが、その一組の印刷されたマーキングには、異なったデータ値を表し、異なった印刷高さを有する印刷されたマーキングが含まれる。
【0009】
暗号化された情報は、紫外線硬化可能なゲル化剤インキを含む、高さが変えられるマーキング物質を使用して基材の上に印刷することができるが、そのインキには、任意成分の着色剤と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーもしくはプレポリマー、光重合開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インキビヒクルとが含まれる。その印刷高さが異なっていることは、読み取り機によって認識および識別することが可能であって、そのため、印刷高さの違いを、各種のデジタルデータ値をコード化することに利用することができる。
【0010】
異なった印刷されたマーキングのそれぞれに対して予め決められた印刷高さは、それぞれ他から、3マイクロメートル(μm)〜100μm異なっている。印刷高さとは、印刷されたマーキングが形成される基材の底面から、印刷されたマーキングの頂上の部分までとして求められる、印刷されたマーキングの高さを指しており、読み取り装置はその頂上部分でマーキングを検出し、読み取る。その印刷された高さは、100μmを超えるくらい異なっていてもよいが、そのように高さが違っていると、裸眼で見えたり、触って判るようになっていたりする可能性がある。1μm以下の印刷高さの差では、読み取り機が、異なったデータ値を示していることを着実正確に検出することが困難となる可能性がある。読み取り装置の許容度は、相互に±1μmの範囲内の印刷高さを有する印刷されたマーキングが、同一の予め決められた高さを有している、すなわち同一のデータ値を表していると受け取るように設定するのがよい。
【0011】
機械読み取り可能なコードは、それぞれの印刷されたマーキングに伴う異なった高さを有し、異なった一桁の数字0〜9を表している一組の印刷されたマーキングを用いて書き込んでもよい。その機械読み取り可能なコードがバーコードであって、その一組の印刷されたマーキングが、予め決められた異なった高さの2〜10種の印刷されたマーキングを含んでいてもよい。その一組の印刷されたマーキングが、異なった予め決められた高さの、10種の異なった印刷されたマーキングを含んでいてもよく、この場合その10種の異なった印刷されたマーキングのそれぞれが、0、1、2、3、4、5、6、7、8および9から選択されるデータ値の1つを表している。
【0012】
そのように印刷されたマーキングの組の例を図1に部分的に示すが、ここでは、0〜9の数が割り当てられた印刷高さを有しているように、隆起したバーコードが作られている。たとえば、0が約8μmの印刷高さ、1が約16μmの印刷高さ、3が約24μmの印刷高さといったように、9までの数字が割り当てられている。
【0013】
二進法ベースのデジタルコード化は、印刷高さが異なる印刷されたマーキングから作られる0および1を与えることによって作り出すことができる。一例を図2に示すが、ここでは、2種の異なった印刷高さを使用して、暗号化されたデジタル情報が作り出されている。約10μmの印刷高さに0を割り当て、約20μmの印刷高さに1を割り当てることができる。
【0014】
暗号化可能な情報の量は、選択されたプリンタの解像度によってのみ制限を受ける。所定の表面単位の上に印刷される情報の量は、印刷解像度を上げなくても、印刷高さを変化させることによって増加させることが可能である。二次元データマトリックスコードでは、紙表面上のxy次元を使用して、一連の印刷された黒および白の正方形からなる情報を暗号化する。二次元コードは、独立した輸送可能なデータベースとして機能するので、二次元ラベルを貼り付けた物品に対して、完全な輸送性を保証する。二次元バーコードの中に含ませることが可能な情報の量は、約1200の記号に限定される。二次元データマトリックスにコード化されたメッセージの一例を図3に示すが、ここで暗号化されているメッセージは、「Xerox Research Centre of Canada」である。x、y次元に加えて印刷高さ(z次元)の使用を可能とするために、隆起印刷の概念を採用している。図4に示すように、印刷された黒色の正方形のいくつかは、z=1の高さを有することが可能であり、それに対して他のものはz=2の高さを有することができる。図4Aは、図3で点線で囲んだコードの部分を示している。図4Bは、その点線で囲んだコードの部分で、z=0である底面部分を示している。図4Cは、z=1またはz=2のいずれかである高さを有する選択された領域を示しているが、これによって、同一の底面部分の上に情報をコード化するためのさらなる次元が与えられる。図4Cにおいて#1から伸びている矢印は、ゼロの高さを有するコードの部分を示している。図4Cにおいて#2から伸びている矢印は、第一の高さ、z=1を有するコードの部分を示し、図4Cにおいて#3から伸びている矢印は、第一の高さよりは高い第二の高さであるz=2を有するコードの部分を示している。その三次元コードは、図4Aおよび4Bに示した組合せを使用することによって、二次元コードとして機能させることもできる。図4Cに見られるように印刷高さの組合せを使用することによって、底面部分の全体を増やすことなく、所定の表面積の上に、より大量の情報を配することが可能となる。ドットサイズは、プリンタの解像度のみによって制限を受ける。大量のデジタルデータをそれぞれの文書または包装に加えることができる。
【0015】
暗号化されたデジタル情報は、各種の高さを識別することが可能な光学的または電気的読み取り機を使用して取り出すことができる。その高さ信号を記録した後で、ソフトウェアを使用してその情報を読み取り可能なフォーマットに翻訳することができる。
【0016】
コードのフォーマットは、たとえば米国特許第5,128,525号明細書および米国特許第5,168,147号明細書に開示されているような、セルフクロッキンググリフコードからなっていてよい。データは、グリフの形状、グリフの回転、またはその他所望の変化形でコード化させることができる。
【0017】
二つの異なった形状が可能な単純なコードにおいては、そのグリフは、垂直方向から約+45度(たとえば、「/」)または約−45度(たとえば、「\」)のいずれかに回転させた楕円形のマーキングである。直交配向させたマークを使用すれば、場合によっては、データビット1とデータビット0との間で区別の程度を大きくすることが可能となる。マークは水平や垂直にするよりは45度傾けるのがよいが、その理由は以下のとおりである:(a)隣接するマークが接触する傾向が少ない、(b)目は、垂直や水平の線に対するよりは斜めの線に対する方が感度が低い、(c)印刷およびスキャンにおける不均等性は、水平(バンディング)または垂直(光検出器アレイの応答性変動)となりやすい。2種のグリフはそれぞれ同数の近接「ON」ピクセルを有する細長いマルチピクセル記号であるが、垂直からのそれらの回転が互いに異なるようにしてもよい。
【0018】
グリフマーキングの高さを変化させることによる利点は、情報を暗号化または蓄積するための容量を顕著に増やすことが可能であること、ならびに、暗号化のために2種の異なった機構を使用することにある。第一は、グリフの配向である。第二は、印刷高さの違いである。この性質は、基材の同一表面積の上により多くの情報を暗号化するためのメカニズムとして使用可能な、四つの異なった状態を与える。従来からの同一の高さのグリフでは、二つの状態しか与えない。グリフを形成させるために、異なった高さの印刷されたグリフを使用すると、以下の四つの状態を得ることが可能である:(1)右側配向/第一の高さ(二進コード、00)、(2)右側配向/別な第二の高さ(二進コード、01)、(3)左側配向/第一もしくは第二の高さまたは別な第三の高さ(二進コード、10)、および(4)左側配向/第二もしくは第一の高さまたは別な第四の高さ(二進コード、11)。したがって、その機械読み取り可能なコードフォーマットには、4個一組のグリフが含まれ、それぞれのグリフが、00、01、10および11からなる群より選択される別々のデジタル値に相当し、その第四のグリフは、二つの異なった配向の内の一つと、四つの異なった高さの内の一つとからなる。
【0019】
印刷されたマーキングは、その画像形成装置の解像度によってのみ制限される、極めて狭い幅および/または直径を有する。印刷されたマーキングの平均の幅または直径は、10μm〜1,000μmとしてよい。
【0020】
マーキングの印刷高さに差があることの結果として、その印刷されたマーキングが、目に見える着色剤を含むマーキング物質を使用して形成された場合であっても、その暗号化されたコードは、今日の事務機器たとえばコピー機やスキャナーによっては、複写したり再生したりすることはできない。その上に暗号化されたコードを有する物品の偽造や複写を試みる者は、典型的には、その印刷されたマーキングに高さの差があることを認識することはできないであろう。その結果として、フォトコピーされた物品は、目に見えるコードパターンは複製できるが、高さの違いがないために、その物品が模造品であると容易に見破ることが可能である。
【0021】
その印刷されたマーキングは、実質的に無色/透明なインキを使用して形成させることで、セキュリティ面を強化することが可能であり、それによって、その画像のフォトコピーやスキャンしたものにはセキュリティマーキングがまったく含まれないことになり、かつ偽造者は、そのセキュリティマーキングの存在を知ることすらできないであろう。それでも、読み取り装置はそのセキュリティマーキングを検出することが可能であって、高さの違いを認識して、暗号化された情報を回収することができる。実質的に無色のマーキング物質を使用することにより、その無色のマーキング物質が通常の画像を妨害することがないために、そのセキュリティマーキングを通常の印刷画像の上に置くことが可能となる。
【0022】
隆起した印刷されたマーキングを使用することによって、狭い領域の中に大量の情報を印刷することが可能となる。損傷を受けた文書中の暗号化された情報を回復すること、および現行の暗号化技術に比較すると、回復可能な文書が顕著に高い割合であることに関連して、この特色が有益であるが、その理由は、小さなサイズの印刷されたマーキングであっても、暗号化によって大量の情報を蓄積できるからである。通常のグリフに比較して、二重情報(過剰保護)の量を増やすことができる。
【0023】
印刷されたマーキングは、各種所望の受像基材の上に形成させることができるが、そのような基材としてはたとえば、普通紙、罫線付きノート用紙、ボンド紙、シリカコート紙、光沢コート紙、透明部材(OHPシート材料)、布、織物製品、包装材料たとえばプラスチック、ポリマーフィルム、ホイル、およびホイルコートしたプラスチックおよび紙、さらには無機基材たとえば金属、ならびに木材などが挙げられる。
【0024】
マーキング物質には、任意成分の着色剤と、少なくとも1種の放射線硬化性モノマーもしくはプレポリマー、光重合開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インキビヒクルとを含む紫外線硬化可能な相変化インキ組成物が含まれる。その物質のゲル的な性質が、室温では、印刷された液滴の拡がりまたは移行を防止し、隆起した暗号化面の形成を容易とすることができる。同一の文書の上に、同一のインキを使用して、通常の印刷と隆起面の両方を作成することができる。その硬化させたインキは極めて堅牢であり、広く各種の基材となじみがよく、各種に変化させることが可能な高さを有する印刷構造を作ることが可能である。
【0025】
着色剤は、マーキング物質の0.5〜75重量%で存在させてよく、ビヒクル中に分散または溶解させることが可能な各種の染料または顔料を含んでいてよい。
【0026】
放射線硬化性の相変化ゲル化剤インキは、隆起した高さの画像のそれぞれを配した後、または隆起した高さの画像の全ての層を完全に堆積させてから、硬化させることができる。
【0027】
本明細書において開示されたインキビヒクルには、各種適切な硬化可能なモノマーもしくはプレポリマー、たとえばアクリレートおよびメタクリレートモノマー化合物を含むことができる。比較的非極性のアクリレートおよびメタクリレートモノマーとしては、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、カプロラクトンアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ブチルアクリレートなどが挙げられる。多官能アクリレートおよびメタクリレートのモノマーおよびオリゴマーとしては、たとえば、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、1,2−エチレングリコールジアクリレート、1,2−エチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,12−ドデカノールジアクリレート、1,12−ドデカノールジメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどが挙げられる。反応性希釈剤は、1〜80%、またはキャリヤーの70重量パーセント以下の量で添加する。
【0028】
そのインキビヒクルには、たとえばプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレートのような、ゲル様の挙動を示すことが可能な少なくとも1種の化合物を含んでいて、それは、紫外光線のような放射線に暴露されたときに、硬化性モノマーとしての挙動を示す化合物のような液体の中に溶解させた場合に、比較的狭い温度範囲を超えると、比較的鋭い粘度上昇を起こす。
【0029】
本明細書において開示されるいくつかの化合物は、少なくとも5℃〜30℃の温度範囲で、少なくとも10から10センチポワズまでに、その粘度が変化する。
【0030】
本明細書における化合物は、第一の温度で半固体ゲルを形成することができる。その化合物を相変化インキの中に組み入れた場合、この温度は、そのインキをジェット噴射する際の特定温度よりは低い。その半固体ゲル相は物理的ゲルであって、1種または複数の固体ゲル化剤分子と液状溶媒からなる、動的平衡として存在している。その半固体ゲル相は、非共有結合的相互作用によって互いに保持される分子成分の動的ネットワーク化集合体であって、物理的な力で刺激を与えると、巨視的レベルで液体から半固体状態への可逆的な転移をすることが可能である。そのゲル化剤分子を含む溶液では、温度をその溶液のゲル化点の上下に変化させると、半固体ゲル状態と液体状態の間で熱的に可逆性の転移を示す。半固体ゲル相と液体相との間のこの転移の可逆サイクルは、その溶液配合物の中で何度でも繰り返すことができる。
【0031】
そのインキビヒクルには、各種適切な光重合開始剤を含むことができるが、そのようなものとしてはたとえば以下のようなものが挙げられる:イルガキュア(Irgacure)(登録商標)127、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)379、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)819、ベンゾフェノン、ベンジルケトン、α−アルコキシベンジルケトン、モノマー性ヒドロキシルケトン、ポリマー性ヒドロキシルケトン、α−アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α−ヒドロキシアルキルフェノン、α−アミノアルキルフェノン、アシルホスフィン光重合開始剤、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル−ジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシドおよびその他のアシルホスフィン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンおよび1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル2−ジメチルアミノ1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン、チタノセン、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタール、さらにはそれらの混合物である。
【0032】
場合によっては、相変化インキに、アミン相乗剤たとえば、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートが含まれる。
【0033】
本明細書において開示されるインキのための重合開始剤は、200〜560ナノメートルの放射線を吸収する。
【0034】
場合によっては、光重合開始剤は、インキ組成物の0.5〜15重量パーセントである。
【0035】
各種好適な反応性ワックスを使用することができるが、それは、他の成分と混和性があり、また、硬化可能なモノマーと共に重合してポリマーを形成して、インキがジェット噴射温度から冷却されたときにインキの粘度の上昇を促進する。
【0036】
いくつかの実施態様においては、その反応性ワックスは、重合性の基を用いて官能化されたヒドロキシル末端ポリエチレンワックスである。例としては、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アリル性エーテル、エポキシドおよびオキセタンなどが挙げられる。それらのワックスは、変換可能な官能基、たとえばカルボン酸またはヒドロキシルを備えたワックスを反応させることにより合成することができる。
【0037】
ヒドロキシル末端ポリエチレンワックスの例としては、CH−(CH−CHOHの構造を有する炭素鎖(鎖長nが16〜50の混合物が存在する)、および類似の平均鎖長の直鎖状低分子量ポリエチレンの混合物が挙げられる。そのようなワックスの例としては、ユニリン(UNILIN)(登録商標)350、ユニリン(UNILIN)(登録商標)425、ユニリン(UNILIN)(登録商標)550およびユニリン(UNILIN)(登録商標)700が挙げられる。ゲルベアルコール、2,2−ジアルキル−1−エタノールもまた好適な化合物であり、16〜36個の炭素を含むものが含まれ、たとえば次式の異性体を含むプリポール(PRIPOL)(登録商標)2033が、
【化1】

選択される。
【0038】
それらのアルコールを、UV硬化性残基を備えたカルボン酸と反応させて、反応性エステルを形成させることができる。例としては、アクリル酸およびメタクリル酸が挙げられる。
【0039】
硬化性の基を用いて官能化されることが可能な、カルボン酸末端のポリエチレンワックスの例としては、CH−(CH−COOHの構造を有する炭素鎖(平均して16〜50の鎖長nの混合物が存在する)および類似の平均鎖長の直鎖状の低分子量ポリエチレンなどの混合物が挙げられる。例としては、ユニシッド(UNICID)(登録商標)350、ユニシッド(UNICID)(登録商標)425、ユニシッド(UNICID)(登録商標)550、およびユニシッド(UNICID)(登録商標)700が挙げられる。その他の好適なワックスは、CH−(CH−COOHの構造を有し、たとえば、n=14、n=15、n=16、n=18、n=20、n=22、n=24、n=25、n=26、n=28、n=30、n=31、n=32、n=33である。ゲルベ酸、2,2−ジアルキルエタン酸もまた好適な化合物である。プリポール(PRIPOL)(登録商標)1009、
【化2】

を使用することもできる。
【0040】
これらのカルボン酸をUV硬化性残基を備えたアルコールと反応させて、反応性エステルを形成させることが可能である。例としては、以下のものが挙げられる:2−アリルオキシエタノール;
【化3】

SR495B(登録商標);
【化4】

CD572(登録商標)(R=H、n=10)およびSR604(R=Me、n=4)。
【0041】
任意成分の硬化可能なワックスは、インキの1〜約25重量%の量で含まれる。
【0042】
硬化可能なモノマーもしくはプレポリマーおよび硬化可能なワックスは、合計して、インキの50重量%を超える量であってもよい。
【0043】
米国特許出願第11/290,202号明細書に記載されているような、次式の、ゲル化剤を使用することができるが、
【化5】

ここでRが、
(i)1〜12個の炭素原子を有するアルキレン(2価の脂肪族またはアルキルであって、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、非環状、置換、非置換のアルキレンを含み、ヘテロ原子(本明細書においては、たとえば酸素、窒素、硫黄、ケイ素、リン、ホウ素を意味する)がアルキレン中に存在していてもよい);
(ii)5〜14個の炭素原子を有するアリーレン(2価の芳香族またはアリールであって、置換および非置換のアリーレンを含み、ヘテロ原子が前記アリーレンの中に存在していてもよい);
(iii)6〜32個の炭素原子を有するアリールアルキレン(2価のアリールアルキルであって、置換および非置換のアリールアルキレンを含み、前記アリールアルキレンのアルキル部分は直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アリールアルキレンのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい);または、
(iv)6〜32個の炭素原子のアルキルアリーレン(2価のアルキルアリールであって、置換および非置換のアルキルアリーレンを含み、前記アルキルアリーレンのアルキル部分が、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アルキルアリーレンのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい);ここで、置換されたアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレンの上の置換基は、ハロゲン原子、シアノ、ピリジン、ピリジニウム、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、アミド、カルボニル、チオカルボニル、スルフィド、ニトロ、ニトロソ、アシル、アゾ、ウレタン、尿素、それらの混合物であってよく、2個またはそれ以上の置換基が相互に結合して環を形成していてもよい。
【0044】
およびR’はそれぞれ他から独立して、
(i)1〜54個の炭素原子を有するアルキレン(2価の脂肪族またはアルキルであって、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、非環状、ならびに置換および非置換のアルキレンを含み、ヘテロ原子が前記アルキレンの中に存在していてもよい);
(ii)5〜14個の炭素原子を有するアリーレン(2価の芳香族またはアリールであって、置換および非置換のアリーレンを含み、ヘテロ原子が前記アリーレンの中に存在していてもよい);
(iii)6〜32個の炭素原子を有するアリールアルキレン(2価のアリールアルキルであって、置換および非置換のアリールアルキレンを含み、そのアリールアルキレンのアルキル部分は直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、ヘテロ原子がそのアリールアルキレンのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい);または、
(iv)6〜32個の炭素原子を有するアルキルアリーレン(2価のアルキルアリールであって、置換および非置換のアルキルアリーレンを含み、そのアルキルアリーレンのアルキル部分は、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アルキルアリーレンのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい);ここで、その置換されたアルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、およびアルキルアリーレンの上の置換基はRの(iv)の場合と同じであってよい。
【0045】
およびR’はそれぞれ他から独立して、以下の基のいずれかであり、(a)光重合開始基、たとえば次式の1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンから誘導される基、
【化6】

次式の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンから誘導される基、
【化7】

次式の2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンから誘導される基、
【化8】

次式のN,N−ジメチルエタノールアミンまたはN,N−ジメチルエチレンジアミンから誘導される基のいずれかである。
【化9】

【0046】
または、(b)以下の基、
(i)2〜100個の炭素原子を有するアルキル(直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、非環状、置換および非置換のアルキルであって、ヘテロ原子が前記アルキルの中に存在していてもよい)、
(ii)5〜100個の炭素原子を有するアリール(置換および非置換のアリールであって、ヘテロ原子が前記アリールの中に存在していてもよい)、たとえばフェニル、
(iii)6〜100個の炭素原子を有するアリールアルキル(置換および非置換のアリールアルキルであって、前記アリールアルキルのアルキル部分は直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アリールアルキルのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい)、たとえばベンジル、または、
(iv)6〜100個の炭素原子を有するアルキルアリール(置換および非置換のアルキルアリールであって、前記アルキルアリールのアルキル部分は、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アルキルアリールのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい)、たとえばトリルであるが、ここでその置換されたアルキル、アリールアルキル、およびアルキルアリールの上の置換基はRの(iv)の場合と同じであってよい。
【0047】
ただし、RおよびR’の少なくとも一つは光重合開始基であり;ならびに、XおよびX’はそれぞれ他から独立して、酸素原子であるか、または式−NR−であるが、ここでRが:
(i)水素原子、
(ii)1〜100個の炭素原子を有するアルキルであって、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、非環状、置換および非置換のアルキルを含み、ヘテロ原子が前記アルキルの中に存在していてもよい、
(iii)5〜100個の炭素原子を有するアリールであって、置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子が前記アリールの中に存在していてもよい、
(iv)6〜100個の炭素原子を有するアリールアルキルであって、置換および非置換のアリールアルキルを含み、前記アリールアルキルのアルキル部分は直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状、または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アリールアルキルのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよい、または、
(v)6〜100個の炭素原子を有するアルキルアリールであって、置換および非置換のアルキルアリールを含み、前記アルキルアリールのアルキル部分は、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和、環状または非環状であってよく、ヘテロ原子が前記アルキルアリールのアリールまたはアルキルのいずれの部分に存在していてもよく、ここでその置換されたアルキル、アリール、アリールアルキル、およびアルキルアリールの上の置換基はRの(iv)の場合と同じであってよい。
【0048】
一つの実施態様においては、RおよびR’が各々式−C3456+a−であって、分岐状のアルキレンであるが、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であって、次式の異性体も含む。
【0049】
【化10】

【0050】
一つの実施態様においては、Rがエチレン(−CHCH−)である。
【0051】
一つの実施態様においては、RおよびR’がいずれも次式である。
【0052】
【化11】

【0053】
一つの実施態様においては、その化合物が次式のものであるが、
【化12】

式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であって、次式の異性体も含む。
【0054】
【化13】

【0055】
さらなる例としては挙げられるのは、次式のもの、
【化14】

式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、mは2であって、次式の異性体も含む。
【0056】
【化15】

【0057】
次式のもの、
【化16】

式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、nは2または5であって、次式の異性体も含む。
【0058】
【化17】

【0059】
次式のもの、
【化18】


式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、pは2または3であって、次の異性体も含む。
【0060】
【化19】

【0061】
次式のもの、
【化20】

式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、qは2または3であって、次式の異性体も含む。
【0062】
【化21】

【0063】
次式のもの、
【化22】

式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基が含まれていてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12であり、rは2または3であって、次式の異性体も含む。
【0064】
【化23】

【0065】
いくつかの実施態様においては、そのゲル化剤が以下のものの混合物であるが、
【化24】

【化25】

および、
【化26】

式中、−C3456+a−は分岐状のアルキレンを表していて、それらには不飽和および環状基、置換および非置換のアルキレンが含まれていてもよく、また場合によってはそのアルキレンの中にヘテロ原子が存在していてもよく、aは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12である。
【0066】
本明細書におけるゲル化剤には、同時係属出願中の米国特許出願第11/290,121号明細書に開示されているような物質を含んでいてもよいが、それには次式の化合物が含まれ、
【化27】

式中、RおよびR’はそれぞれ他から独立して、アルキル、アリールアルキル、またはアルキルアリール(それぞれが、少なくとも1個のエチレン性不飽和を有する)であり、R、R’、およびRはそれぞれ他から独立して、アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、またはアルキルアリーレンであり、そしてnは少なくとも1である。
【0067】
本明細書において開示されるようなゲル化剤化合物は、各種所望または効果的な方法で調製することができるが、たとえば、次式の化合物を調製するためのプロセスの記載がある、米国特許第7,259,275号明細書に記載されているような方法に従うが、
【化28】

式中、Rはアルキル、アリールアルキル、またはアルキルアリール(それぞれが、少なくとも1個のエチレン性不飽和を有する)であり、RおよびRはそれぞれ他から独立して、アルキレン、アリーレン、アリールアルキレン、またはアルキルアリーレンであり、nは少なくとも1であるが、前記プロセスには、(a)次式の二酸:HOOC−R−COOHを、次式のジアミンと、
【化29】

溶媒を存在させずに反応させながら、その反応混合物から水を除去して酸末端のオリゴアミド中間体を形成させる工程と、(b)その酸末端のオリゴアミド中間体を次式のモノアルコール:R−OHと、カップリング剤および触媒の存在下に反応させて、反応生成物を形成させる工程、とが含まれる。
【0068】
本明細書における放射線硬化性相変化インキには、場合によっては抗酸化剤を含むことが可能であって、そのようなものとしてはたとえば、ナウガード(NAUGARD)(登録商標)524、ナウガード(NAUGARD)(登録商標)635、ナウガード(NAUGARD)(登録商標)A、ナウガード(NAUGARD)(登録商標)I−403、およびナウガード(NAUGARD)(登録商標)959;イルガノックス(IRGANOX)(登録商標)1010およびイルガスタブ(IRGASTAB)(登録商標)UV10;ゲノラッド(GENORAD)(登録商標)16およびゲノラッド(GENORAD)(登録商標)40などが挙げられ、それらはインキキャリヤーの0.01〜20重量パーセントの量で存在させる。
【0069】
放射線硬化性相変化インキにはさらに、消泡剤、滑剤およびレベリング剤のような添加剤、顔料分散剤、界面活性剤、あるいはさらなるモノマー性もしくはポリマー性原料なども含むことができる。
【0070】
インキ画像に、200〜480ナノメートルの化学線照射を0.2〜30秒間暴露させることによって、インキを硬化させることができる。
【0071】
そのインキ組成物は一般的に、ジェット噴射温度(50℃〜120℃)で2〜30センチポワズの溶融粘度を有する。
【0072】
インキは、110℃より低い、たとえば40℃〜110℃の低温でジェット噴射される。そのような低いジェット噴射温度では、通常のように、ジェット噴射されるインキとインキが上にジェット噴射される基材との間の温度差を利用してインキ中で急速な相変化を起こさせるには、効果的ではない可能性がある。したがって、基材の上で、ジェット噴射されたインキの粘度を急速に上昇させるために、ゲル化剤を使用することが可能である。インキのインクジェット噴射温度より低い温度では、インキが十分な粘度変化を起こして、液体状態からゲル状態へとなるような相変化の転移の作用によって、ジェット噴射されたインキの液滴を、受像基材の上の位置に固定することができる。
【0073】
インキがゲル状態となる温度は、そのインキのジェット噴射温度より低ければいかなる温度であってもよいが、たとえばそのインキのジェット噴射温度よりも5℃かそれ以上低い温度である。インキが液体状態であるジェット噴射温度から、インキがゲル状態であるゲル温度にまで冷却すると、インキの粘度が急速かつ大幅に増大する。粘度の増大は、一つの具体的な実施態様においては、粘度が少なくとも102.5倍に増大する。
【0074】
インキのための好適なゲル化剤は、インキビヒクル中のモノマー/オリゴマーを急速かつ可逆的にゲル化させ、たとえば30℃〜100℃の温度範囲内での狭い相変化転移を示すであろう。一つの具体的な実施態様においては、インキのゲル状態が、ジェット噴射温度における粘度に比較して、転移温度たとえば、30℃〜70℃では、粘度が最小でも102.5センチポワズまたは10センチポワズの増大を示す。一つの具体的な実施態様は、ジェット噴射温度よりも5℃〜10℃下の範囲内で急速に粘度が上昇し、究極的にはジェット噴射粘度の10倍を超える粘度に達するゲル化剤含有インキを目的としており、また別な実施態様においては、ジェット噴射粘度の約10倍を目的としている。
【0075】
インキがゲル状態にある場合には、そのインキの粘度は、1,000〜100,000センチポワズである。ゲル状態の場合の粘度の値は、10〜10センチポワズである。好適なゲル相粘度は、その印刷プロセスによって変化する可能性がある。多孔質の紙に直接ジェット噴射する場合や、インキのブリードやひげ(feathering)に対する影響を最小限にとどめるために中間体転写を採用する場合には、最高の粘度とするのが好ましい。多孔性が低い基材たとえばプラスチックでは、より低いインキ粘度を使用して、ドットゲインや個々のインキピクセルのアグロメレーションを調節するようにしてもよい。ゲル粘度は、インキの配合と基材温度によって調節することができる。放射線硬化性インキでゲル状態とすることのさらなるメリットは、10〜10センチポワズのような高い粘度にすることによって、インキ中での酸素の拡散を抑制することが可能となり、その結果として、フリーラジカル重合開始における硬化速度をより早くすることができる点にある。
【0076】
インキが最終的な基材の上に直接印刷される印刷用途においては、一つの具体的な実施態様においては、インキの粘度が、最終的な基材の温度では10センチポワズ以上に増大して、インキがその最終的な基材の中にしみ込むことを防止し、および/または放射線に暴露させることによって硬化させるまで、その最終的な基材に対する接着性を助長する。一つの実施態様においては、その上にインキを印刷し、そこでインキの粘度が10センチポワズ以上にまで増大する最終的な基材または中間転写部材の温度は、50℃以下である。
【0077】
インキ組成物を調製するには、相互に混合し、次いで加熱して温度80℃〜100℃とし、均質なインキ組成物が得られるまで撹拌し、次いで、そのインキを冷却して周囲温度とする。
【0078】
基材の上に情報を埋め込み、そして回収するためのシステムには、印刷マーキングを書き込むための画像形成装置が含まれる。その画像形成装置が、基材の上に形成されるべき印刷マーキングに関するデータを受け取り、そのデータに従って、印刷されたマーキングを形成させる。そのシステムにはさらに、暗号化されるべき情報を、適切なデジタル値に変換する、および/またはその画像形成装置によって使用するための印刷マーキングを形成させるためのデータに変換する処理装置が含まれていてもよい。
【0079】
本発明の紫外線硬化可能なゲル化剤相変化インキは、現行の印刷ヘッド技術と共存できる。
【0080】
それらのインキは、直接印刷および間接印刷プロセスのための装置に採用することができる。また別な実施態様は、本明細書において開示されたようなインキをインクジェット印刷装置に組み入れる工程、そのインキを溶融させる工程、およびその溶融されたインキの液滴を記録基材の上に像様パターンで噴射させる工程、が含まれるプロセスである。その印刷装置では、ピエゾ電気印刷プロセスを採用することも可能である。本明細書におけるインキはさらに、他のホットメルト印刷プロセスにおいても採用することができる。
【0081】
その装置は、米国特許出願第11/683,011号明細書に記載されている装置であってよく、それには、少なくとも一つのインクジェット印字ヘッドと、そのインクジェット印字ヘッドからインキがジェット噴射される対象の印刷領域表面とが含まれるが、ここで、インクジェット印字ヘッドと印刷領域表面との間の高さの差が調節可能である。
【0082】
画像形成装置には、電子写真装置とインクジェット装置の両方が含まれていてもよい。再現される画像を形成させるのに電子写真装置を使用し、その一方でインクジェット装置を用いて、それぞれの文書の上に暗号化された情報を印刷することができる。プロセスの方向としては、電子写真装置よりも下流側にインクジェット装置を設けて、暗号化された情報が電子写真装置によって上書きされない様にするのが望ましいが、インクジェット装置が電子写真装置よりも上流側にあってもよい。
【0083】
その印刷されたマーキングは、機械で読み取り、各種適切または所望の方法で解読することができる。その読み取りは、印刷されたマーキングの異なった印刷高さに対して実施される。たとえば、そのデジタル情報は、印刷高さの違いを識別する性能を有する電子読み取り機によって読み取る。その読み取り機は、吸収、透過または反射分光光度法によって操作することができるが、その理由は、印刷されたマーキングの高さの違いが、光学的な性質に違いを与えるからである。実際に印刷高さを測定することが可能なプロフィルメーターを使用することも可能である。グリフ印刷されたマーキングでは、ファクシミリ転送、フォトコピーのスキャンなどによって画像のゆがみや品質劣化が起きた場合であっても、そのグリフのビットマップ画像は処理することができる。
【0084】
印刷されたマーキングが読み取られ、解読または翻訳されてデジタル値になれば、適切なソフトウェアを使用して、人間が読み取ることが可能な情報にその値を変換することができる。
【0085】
本明細書におけるメリットには、いかなる文書または包装の上にも、情報を暗号化させる性能が含まれる。紫外線硬化可能なゲル化剤インキによって、オリジナルの文書もしくは包装または所望の基材の上に識別マーキングを与えるための材料が得られるが、それは、電子複写的にコピーすることができず、文書のセキュリティを密かに向上させることができる。本発明の紫外線硬化可能なゲル化剤相変化インキが堅牢であることは、その文書および包装に粗雑な取扱いをしても耐えられるので有利である。そのインキは、広く各種の基材に適用することが可能であり、普通紙およびコート紙、フレキシブルな基材において使用することが可能であって、このことが、所望のあらゆるタイプの文書または包装の上で印刷できるという自由度を与える。フレキシブルな包装基材の上に印刷できるということは、各種の用途において有用であるが、ここで「フレキシブル」という用語が意図しているのは、一般的にはロールの形態で供給され、その上に印刷され、そして印刷後には再びロールに巻き上げられる、薄いフィルムもしくはホイル材料を指すことであるが、ただし、「フレキシブル」は、それらロール材料に限定される訳ではない。フレキシブルな包装基材の例としては、プラスチック、金属ホイル、それらの積層物、および紙との積層物などが挙げられる。包装基材は、アルミニウムホイル、ポリエステルフィルム、またはポリプロピレンフィルムなどとすることができる。フレキシブルな包装基材は、食品、医薬品、化粧品またはタバコを包装するために使用することができる。インキが基材の内部へ浸透することはほとんど、またはまったくなく、主として基材の表面に留まる。ほとんど複写することが不可能なような状態で密かにラベル包装できるということは、薬の偽造が、発症やさらには死亡といって極端な結果をもたらす可能性がある医薬品産業においては、大きな実用的価値を与える。
【実施例】
【0086】
実施例1.
紫外線硬化可能な相変化ゲル化剤インキを調製したが、それに含まれるのは以下のものである:7.5重量パーセントの硬化可能なアミドゲル化剤(米国特許第7,279,587号明細書の実施例VIIIに記載されたようなもの)、5重量パーセントのユニリン(Unilin)350(商標)アクリレートワックス(米国特許出願公開第2007/120925号明細書の記載に従って調製)、5重量パーセントのジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR399LV(登録商標))、72.8重量パーセントのプロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート(SR9003(登録商標))、3重量パーセントのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)379光重合開始剤、1重量パーセントのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)819光重合開始剤、3.5重量パーセントのイルガキュア(IRGACURE)(登録商標)127光重合開始剤、および2重量パーセントのダロキュア(DAROCUR)(登録商標)ITX光重合開始剤、および0.2重量パーセントのUV安定剤(イルガスタブ)(IRGASTAB)(登録商標)UV10を用い、すべての成分を合わせて、90℃で1時間撹拌した。
【0087】
改造したゼロックス・フェーザー(Xerox Phaser)(登録商標)860プリンタを使用し、すべての第三ジェットを噴射させて、そのインキ材料をデジタル印刷させた。基材に対して水平に向けた、ゼロックス(Xerox)(登録商標)圧電式印刷ヘッドを、0.5秒のバーストで予め決められた回数噴射させた。図5に自立型構造を示すが、このものは、室温のマイラー(Mylar)(登録商標)基材の上にジェット噴射し、印刷後に、「D」電球を採用したUV・ヒュージョン・ライト・ハンマー・6・ウルトラバイオレット・ランプ・システム(UV Fusion Light Hammer 6 Ultraviolet Lamp System)を備えた、UV・ヒュージョン・LC−6B・ベンチトップ・コンベア(UV Fusion LC−6B Benchtop Conveyor)からのUV光に最小で1秒間暴露させることによって硬化させて、堅牢な構造を得た。その構造物のそれぞれの構造の間の隙間は5.5ミリメートルであった。一番左の端の構造は、基材から構造物の頂上までで、約500マイクロメートルの高さを有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に情報を埋め込むための方法であって、
情報を機械読み取り可能なコードに変換させる工程であって、前記コードが一組の意図的に印刷されたマーキングを含み、前記の組のそれぞれの意図的に印刷されたマーキングが基材の上に予め決められた高さを有して予め決められた値を表し、同一の予め決められた高さを有する意図的に印刷されたマーキングが同一のデータ値を表し、そして異なったデータ値を表す意図的に印刷されたマーキングが異なった高さを有する工程と、
任意成分の着色剤、ならびに放射線硬化性モノマーもしくはプレポリマー、光重合開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インキビヒクルを含む、紫外線硬化可能な相変化インキを堆積させることによって、前記基材の上に前記機械読み取り可能なコードを印刷する工程と、
前記意図的に印刷されたマーキングのそれぞれが、前記予め決められた高さを有して印刷されているように前記堆積されたインキを硬化させる工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記ゲル化剤が次式の化合物である、請求項1に記載の方法。
【化1】


[式中、
が、(i)アルキレン(直鎖状および分岐状、飽和および不飽和、環状および非環状、ならびに置換および非置換のアルキレンを含み、ヘテロ原子が前記アルキレンの中に存在していてもよい)、(ii)アリーレン(置換および非置換のアリーレンを含み、ヘテロ原子が前記アリーレンの中に存在していてもよい)、(iii)アリールアルキレン(置換および非置換のアリールアルキレンを含み、前記アリールアルキレンのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アリールアルキレンのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していても、存在していなくてもよい)、または(iv)アルキルアリーレン(置換および非置換のアルキルアリーレンを含み、前記アルキルアリーレンのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アルキルアリーレンのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していても、存在していなくてもよい)であり、
およびR’がそれぞれ他から独立して、(i)アルキレン(直鎖状および分岐状、飽和および不飽和、環状および非環状、ならびに置換および非置換のアルキレンを含み、ヘテロ原子が前記アルキレンの中に存在していても、存在していなくてもよい)、(ii)アリーレン(置換および非置換のアリーレンを含み、ヘテロ原子が前記アリーレンの中に存在していてもよい)、(iii)アリールアルキレン(置換および非置換のアリールアルキレンを含み、前記アリールアルキレンのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アリールアルキレンのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもよい)、または(iv)アルキルアリーレン(置換および非置換のアルキルアリーレンを含み、前記アルキルアリーレンのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってもよく、ヘテロ原子が、前記アルキルアリーレンのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していても、存在していなくてもよい)であり、
およびR’がそれぞれ他から独立して、(a)光重合開始基であるか、または(b)(i)アルキル(直鎖状および分岐状、飽和および不飽和、環状および非環状、ならびに置換および非置換のアルキルを含み、ヘテロ原子が前記アルキルの中に存在していてもよい)、(ii)アリール(置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子が、前記アリールの中に存在していても存在していなくてもよい)、(iii)アリールアルキル(置換および非置換のアリールアルキルを含み、前記アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アリールアルキルのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していても存在していなくてもよい)、または(iv)アルキルアリール(置換および非置換のアルキルアリールを含み、前記アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アルキルアリールのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していても存在していなくてもよい)の基であるかのいずれかであり、そして、
XおよびX’がそれぞれ他から独立して、酸素原子または式−NR−であり、ここでRが、(i)水素原子、(ii)アルキル(直鎖状および分岐状、飽和および不飽和、環状および非環状、ならびに置換および非置換のアルキルを含み、ヘテロ原子が、前記アルキルの中に存在していても、存在していなくてもよい)、(iii)アリール(置換および非置換のアリールを含み、ヘテロ原子が前記アリールの中に存在していても、存在していなくてもよい)、(iv)アリールアルキル(置換および非置換のアリールアルキルを含み、前記アリールアルキルのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アリールアルキルのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもよい)、または(v)アルキルアリール(置換および非置換のアルキルアリールを含み、前記アルキルアリールのアルキル部分が、直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和、そして環状もしくは非環状であってよく、ヘテロ原子が、前記アルキルアリールのアリールまたはアルキル部分のいずれかの中に存在していてもよい)である。]
【請求項3】
前記コードが、バーコードまたはデータマトリックス形式のコードである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
任意成分の着色剤と、放射線硬化性モノマーもしくはプレポリマー、光重合開始剤、反応性ワックス、およびゲル化剤を含む相変化インキビヒクルとを含む紫外線硬化可能な相変化インキを用いて作られた一組の印刷されたマーキングを含む機械読み取り可能なコードであって、前記組のそれぞれの印刷されたマーキングが、基材の上に予め決められた印刷高さを有することで予め決められたデータ値を表し、前記一組の印刷されたマーキングが、異なったデータ値を表し、異なった印刷高さを有する印刷されたマーキングを含む、機械読み取り可能なコード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−58512(P2010−58512A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−203468(P2009−203468)
【出願日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】