説明

紫外線硬化型インクジェット用インク組成物

【課題】低粘度、且つ硬化性に優れた紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を提供する。
【解決手段】一般式(I):CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3・・(I)(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)で表されるモノマーAと、一般式(II):CH2=CR1−COO−(R4−O)n−R5・・(II)(式中、nは1〜2であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であり、R5はメチル基又はエチル基である。)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーBと、光重合開始剤と、を含む紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、モノマーAは、該インク組成物の総質量に対し、30〜60質量%含まれ、モノマーBは、該インク組成物の総質量に対し、10〜50質量%含まれる紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙などの被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
【0003】
近年、高い耐水性、耐溶剤性、及び耐擦過性などを有する印字を被記録媒体の表面に形成するため、インクジェット方式の記録方法において、紫外線を照射すると硬化する紫外線硬化型インクジェット用インク組成物が使用されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、トリプロピレングリコールジアクリレート、アミノアクリレート系アクリル樹脂、及び光重合開始剤を含む紫外線硬化型インクジェットインク組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−280383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示のインク組成物は、インクジェット用インクとしては粘度が高く、20〜25℃ではインク吐出が困難で、40℃以上の加温が必要であり、加温機構によって装置が複雑になる又は余分なエネルギーを必要とするという問題が生じる。例えば、装置の複雑化を避けるため、加温をしなくてもインク吐出が可能な粘度であることや、省エネルギーのため、低い温度の加温によってインク吐出が可能な粘度であることが望まれる。
【0007】
粘度を下げる手法として、インクが色材を含む場合、色材の割合を減らすということが挙げられるが、色材の割合を減らすと、印刷物の発色性が劣ってしまうという問題が生じる。他の手法として、20℃での粘度が10mPa・s以下である紫外線硬化型化合物を用いることが挙げられるが、硬化性が劣るという問題が生じる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、低粘度であり、硬化性に優れた紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]本適用例に係る紫外線硬化型インクジェット用インク組成物の一形態は、
下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)で表されるモノマーAと、
下記一般式(II):
CH2=CR1−COO−(R4−O)n−R5 ・・・(II)
(式中、nは1〜2であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であり、R5はメチル基又はエチル基である。)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーBと、
光重合開始剤と、
を含む紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、
前記モノマーAは、該インク組成物の総質量に対し、30〜60質量%含まれ、
前記モノマーBは、該インク組成物の総質量に対し、10〜50質量%含まれることを特徴とする。
【0011】
適用例1の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物によれば、前述した成分の組合せにより、硬化性が優れると共に、加温をしないあるいは低い温度の加温によりインクを吐出することが可能な粘度を達成することができる。
従って、複雑な加温装置を必要とすることなく印字可能な紫外線硬化型インクジェット用インクを提供することができる。
【0012】
[適用例2]適用例1において、前記モノマーAは、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルであることができる。
【0013】
[適用例3]適用例1又は2において、前記モノマーBは、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、及び、3−メトキシブチル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種であることができる。
【0014】
[適用例4]適用例1〜3のいずれか一例において、さらに、該インク組成物の総質量に対し、1〜10質量%の(メタ)アクリル化アミン化合物を含むことができる。
【0015】
[適用例5]適用例1〜4のいずれか一例において、さらに、該インク組成物の総質量に対し、1〜10質量%のヘキサ(メタ)アクリレート化合物を含むことができる。
【0016】
[適用例6]適用例1〜5のいずれか一例において、
さらに、該インク組成物の総質量に対し、1〜20質量%のフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0017】
[適用例7]適用例1〜6のいずれか一例において、前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対し、7質量%以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び、0.5質量%以上のチオキサントン化合物を含むことができる。
【0018】
[適用例8]適用例1〜7のいずれか一例において、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能であることを特徴とする。
【0019】
[適用例9]適用例1〜8のいずれか一例において、20℃環境下での粘度が3〜10mPa・sであることを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0021】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びそれに対応するメタクリレートのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリル」はアクリル及びそれに対応するメタクリルのうち少なくともいずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」はアクリロイル及びそれに対応するメタクリロイルのうち少なくともいずれかを意味する。
【0022】
本明細書において、「硬化性」とは、光の照射により、光重合開始剤の存在下又は不存在下で重合硬化する性質をいう。なお、本発明において「硬化する」とは、指で記録物に触れたときにべとつきが感じられなくなること、いわゆるタックフリーとなることをいう。
【0023】
本明細書において、「画像」とは、ドット群から形成される印字パターンを示し、テキスト印字、ベタ印字も含める。
【0024】
1.紫外線硬化型インクジェット用インク組成物
本発明の一実施形態は、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物に係る。
当該紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、
下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)
で表される、所定量のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(以下、「モノマーA」という。)と、
下記一般式(II):
CH2=CR1−COO−(R4−O)n−R5 ・・・(II)
(式中、nは1〜2であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であり、R5はメチル基又はエチル基である。)
で表されるモノマーからなる群から選ばれる、少なくとも1種の所定量の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー類(以下、「モノマーB」と言う)と、
光重合開始剤と、を含む。
【0025】
以下、本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物(以下、「インク組成物」ともいう。)に含まれるか、又は含まれ得る添加剤(成分)を説明する。
【0026】
1.1.重合性化合物
本実施形態のインク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
【0027】
1.1.1.モノマーA
本実施形態において必須の重合性化合物であるモノマーAは、上記一般式(I)で表される。
【0028】
インク組成物がモノマーAを含むことにより、インクの硬化性を良好なものとすることができる。
【0029】
上記の一般式(I)において、R2で表される2価の有機残基としては、炭素数2〜20の直鎖状、分枝状又は環状のアルキレン基、構造中にエーテル結合及び/又はエステル結合による酸素原子を有する炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数6〜11の置換されていてもよい2価の芳香族基が好適である。これらの中でも、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、及びブチレン基などの炭素数2〜6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn−プロピレン基、オキシイソプロピレン基、及びオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2〜9のアルキレン基が好適に用いられる。
【0030】
上記の一般式(I)において、R3で表される炭素数1〜11の1価の有機残基としては、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、炭素数6〜11の置換されていてもよい芳香族基が好適である。これらの中でも、メチル基又はエチル基である炭素数1〜2のアルキル基、フェニル基及びベンジル基などの炭素数6〜8の芳香族基が好適に用いられる。
【0031】
上記の有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基及び炭素原子を含まない基に分けられる。まず、上記置換基が炭素原子を含む基である場合、当該炭素原子は有機残基の炭素数に含まれる。炭素原子を含む基として、以下に限定されないが、例えばカルボキシル基が挙げられる。次に、炭素原子を含まない基として、以下に限定されないが、例えば水酸基及びハロ基が挙げられる。
【0032】
上記のモノマーAの具体例としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチル−3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1’−ジメチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、及び(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
【0033】
上記したものの中でも、硬化性に一層優れるため、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチルが好ましい。
【0034】
これらの中でも、低粘度で、引火点が高く、かつ、硬化性に優れるため、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、すなわち、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル及びメタクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルのうち少なくともいずれかが好ましく、前者がより好ましい。(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル及び(メタ)アクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられ、アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチルとしては、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(以下「VEEA」ともいう。)及びアクリル酸2−(1−ビニロキシエトキシ)エチルが挙げられる。
【0035】
モノマーAは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0036】
モノマーAの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、30〜60質量%であり、好ましくは30〜50質量%、より好ましくは40〜50質量%である。含有量が上記範囲内であると、特にインクの硬化性を良好にすることができる。
【0037】
モノマーAの製造方法としては、以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法C)、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物を水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法D)、(メタ)アクリル酸無水物と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法E)、(メタ)アクリル酸エステル類と水酸基含有ビニルエーテル類とをエステル交換する方法(製法F)、(メタ)アクリル酸とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法G)、(メタ)アクリル酸アルカリ(土類)金属塩とハロゲン含有ビニルエーテル類とをエステル化する方法(製法H)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とカルボン酸ビニルとをビニル交換する方法(製法I)、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類とアルキルビニルエーテル類とをエーテル交換する方法(製法J)が挙げられる。
【0038】
これらの中でも、本実施形態に所望の効果を一層発揮することができるため、製法Fが好ましい。
【0039】
1.1.2.モノマーB
本実施形態において必須の重合性化合物であるモノマーBは、上記一般式(II)で表される。
【0040】
本実施形態のインク組成物が、重合性化合物として、上記モノマーAとともにモノマーBを含むことにより、インクの粘度を低減させ、かつ硬化性を良好なものとすることができる。
【0041】
上記のモノマーBの具体例としては、以下に限定されないが、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−メトキシプロピルアクリレート、2−エトキシプロピルアクリレート、3−メトキシプロピルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、3−エトキシブチルアクリレート、4−メトキシブチルアクリレート、4−エトキシブチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、エトキシジプロピレングリコールアクリレート、メトキシジブチレングリコールアクリレート、エトキシジブチレングリコールアクリレート、及び、上記のモノマーのアクリレートをメタクリレートにしたもの、等が挙げられる。特に、硬化性などの点でアクリレートが好ましい。
【0042】
モノマーBは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0043】
モノマーBの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。含有量が上記範囲内であると、インクの粘度が低く、かつ、硬化性を良好にすることができる。
【0044】
上記の中でも、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特に、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレートが好ましい。モノマーBがエトキシジエチレングリコールアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレートである場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜40質量%である。含有量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、かつ、インクを低粘度化することができ、さらに光重合開始剤の溶解性が良好となる。
【0045】
1.1.3.(メタ)アクリル化アミン化合物
本実施形態に懸かるインク組成物は、さらに反応成分中に(メタ)アクリル化アミン化合物を含有してもよい。
【0046】
本実施形態に係るインク組成物は、反応成分中に(メタ)アクリル化アミン化合物を含有することにより、記録媒体上に吐出された塗膜の共重合反応を促進させることができる。具体的な作用効果の一例は、反応成分中に所定量の(メタ)アクリル化アミン化合物と、後述する重合開始剤と、を含有することにより、350〜400nmの範囲に極大発光波長を有する活性放射線を照射して硬化させるのに必要なエネルギー量を低減させることができる。これにより、LEDのような低エネルギーの光源を用いて活性放射線を照射した場合であっても速やかに硬化させることが可能となる。
【0047】
(メタ)アクリル化アミン化合物の製品としては、例えば、EBECRYL 7100(ダイセル・サイテック株式会社製商品名)、CN371、CN372、CN373、CN374、CN383、CN386(以上、サートマー社製商品名)、等が挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリル化アミン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル化アミン化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1〜10質量%である。インク組成物の総質量(100質量%)に対し、(メタ)アクリル化アミン化合物の含有量が1質量%未満では、共重合反応が円滑に進行せず、記録媒体上に記録した画像の硬化性が不十分となることがある。一方、10質量%を超えても、共重合反応を促進させる効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。また、インク組成物の粘度が上昇し、インクジェット記録装置におけるインクの吐出安定性を損なう場合があり、記録媒体上に記録した画像が黄色へと変色する場合がある。
【0050】
1.1.4.ヘキサ(メタ)アクリレート化合物
本実施形態に懸かるインク組成物は、さらに反応成分中にヘキサ(メタ)アクリレート化合物を含有してもよい。
【0051】
本実施形態のインク組成物が、反応成分中にヘキサ(メタ)アクリレート化合物を含むことにより、架橋剤としての機能を有するため、記録媒体上に吐出した塗膜の硬化性を高めることができる。
【0052】
ヘキサ(メタ)アクリレート化合物として、以下に限定されないが、例えば、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、並びにこれらのEO付加物及びPO付加物のうち少なくともいずれかが挙げられる。
【0053】
ヘキサ(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0054】
ヘキサ(メタ)アクリレート化合物の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1〜10質量%である。含有量が上記範囲内であると、インク粘度を低くしつつ、硬化性を極めて良好にすることができる。
【0055】
上記したものの中でも特に、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物がジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(より好ましくはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)である場合、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1〜10質量%であり、より好ましくは3〜7質量%である。含有量が上記範囲内であると、硬化性に優れ、かつ、インクを低粘度化することができる。
【0056】
1.1.5.フェノキシエチル(メタ)アクリレート
本実施形態に懸かるインク組成物は、さらに反応成分中にフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含有してもよい。
【0057】
フェノキシエチル(メタ)アクリレートは、後述する光重合開始剤を溶解するための溶媒としても機能する。なお、フェノキシエチル(メタ)アクリレートは、他のアクリレートモノマーに対する希釈性も良好であり、他のアクリレートモノマーが有する機能を阻害することがない。
【0058】
フェノキシエチル(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜10質量%である。含有量が上記範囲内であると、光重合開始剤が容易に溶解し、かつ、低粘度にすることができる。
【0059】
1.1.6.上記以外の重合性化合物
上記以外の重合性化合物(以下、「その他の重合性化合物」という。)としては、従来公知の、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々のモノマー及びオリゴマーが使用可能である。上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸やそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、並びに不飽和ウレタンが挙げられる。また、上記オリゴマーとしては、例えば、直鎖アクリルオリゴマー等の上記のモノマーから形成されるオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
【0061】
その他の重合性化合物のうち、5官能以下の(メタ)アクリル酸のエステル、即ち5官能以下の(メタ)アクリレートについて、以下に具体例を挙げる。
【0062】
単官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0063】
2官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
3官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
4官能の(メタ)アクリレートとしては、以下に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0066】
5官能の(メタ)アクリレートとして、以下に限定されないが、例えば、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びにこれらのエチレンオキサイド(EO)付加物及びプロピレンオキサイド(PO)付加物のうち少なくともいずれかが挙げられる。
【0067】
また、その他の重合性化合物のうち単官能の(メタ)アクリレートは、芳香環骨格、飽和脂環骨格、及び不飽和脂環骨格からなる群より選択される1種以上の骨格を有してもよい。その他の重合性化合物が、上記骨格を有する単官能の(メタ)アクリレートであることにより、インク組成物の粘度を低下させることができる。
【0068】
1.2.光重合開始剤
本実施形態のインク組成物に含まれ得る光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、被記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて印字を形成するために用いられる。照射光として紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば、制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0069】
上記の光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
【0070】
これらの中でも、特にインクの硬化性を良好にすることができるため、アシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物がより好ましい。
【0071】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及びビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシドが挙げられる。
【0072】
これらの中でも、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、及び2,4−ジエチルチオキサントンが好適に用いられる。
【0073】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、チバ・ジャパン社製商品名)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社製商品名)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製商品名)、及びユベクリルP36(UCB社製商品名)などが挙げられる。
【0074】
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
光重合開始剤は、紫外線硬化速度を十分に発揮させ、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けるため、その含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜20質量%であることが好ましい。特に、上記のとおり、インク組成物に含まれる光重合開始剤がアシルフォスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物である場合、前記アシルフォスフィンオキサイド化合物が、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは7質量%以上、より好ましくは7〜15質量%含まれる。加えて、前記チオキサントン化合物が、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.5質量%以上含まれ、より好ましくは0.5〜5質量%含まれる。この場合、インクの硬化性を良好にすることができる。
【0076】
なお、前述の重合性化合物として光重合性の化合物を用いることで、光重合開始剤の添加を省略することが可能であるが、光重合開始剤を用いた方が、重合の開始を容易に調整することができ、好適である。
【0077】
1.3.色材
本実施形態のインク組成物は、色材をさらに含んでもよい。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
【0078】
1.3.1.顔料
本実施形態において、色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
【0079】
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
【0080】
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
【0081】
更に詳しくは、ブラックインクとして使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社製商品名)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン社製商品名)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(以上、キャボット社製商品名)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4等(以上、デグッサ社製商品名)が挙げられる。
【0082】
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
【0083】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメント イエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
【0084】
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメント レッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、及びC.I.ピグメント ヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
【0085】
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメント ブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、及びC.I.バット ブルー 4、60が挙げられる。
【0086】
また、マゼンタ、シアン及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7、10、及びC.I.ピグメント ブラウン 3、5、25、26、及びC.I.ピグメント オレンジ 1、2、5、7、13、14、15、16、24、34、36、38、40、43、63が挙げられる。
【0087】
上記顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜200nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インク組成物における吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0089】
1.3.2.染料
本実施形態において、色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー9,45,249、C.I.アシッドブラック1,2,24,94、C.I.フードブラック1,2、C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック3,4,35が挙げられる。
【0090】
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0091】
色材の含有量は優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましい。
【0092】
1.4.分散剤
本実施形態のインク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。
【0093】
高分子分散剤の市販品として、第一工業製薬社製のディスコールシリーズ、ルーブリゾール社製のソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズが挙げられる。
【0094】
1.5.スリップ剤
本実施形態のインク組成物は、高い耐擦性が得られるという有利な効果が得られるため、スリップ剤(界面活性剤)をさらに含んでもよい。スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系界面活性剤として、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーンを用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性ポリジメチルシロキサンを用いることが特に好ましい。
【0095】
スリップ剤の市販品としては、BYK−347、BYK−348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(以上、ビックケミー・ジャパン社製商品名)を挙げることができる。
【0096】
1.6.重合禁止剤
本実施形態のインク組成物は、重合禁止剤をさらに含んでもよい。インク組成物が重合禁止剤を添加することにより、インク組成物の保存安定性が向上する。重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、フェノール化合物、ハイドロキノン化合物、及びキノン化合物からなる群より選択される一種以上が挙げられる。重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)が挙げられる。
【0097】
重合禁止剤の市販品としては、IRGASTAB UV10及びUV22(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製商品名)などを用いることができる。
【0098】
1.7.その他の添加剤
本実施形態のインク組成物は、上記に挙げた添加剤以外の添加剤(成分)を含んでもよい。このような成分としては、特に制限されないが、例えば従来公知の、重合促進剤、浸透促進剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤があり得る。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤が挙げられる。
【0099】
2.被記録媒体
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、後述するインクジェット記録方法によって、被記録媒体上に吐出されること等により、記録物が得られる。この被記録媒体として、例えば、吸収性又は非吸収性の被記録媒体が挙げられる。本実施形態のインクジェット記録方法は、水溶性インク組成物の浸透が困難な非吸収性被記録媒体から、水溶性インク組成物の浸透が容易な吸収性被記録媒体まで、様々な吸収性能を持つ被記録媒体に幅広く適用できる。ただし、当該インク組成物を非吸収性の被記録媒体に適用した場合は、紫外線を照射し硬化させた後に乾燥工程を設けること等が必要となる場合がある。
【0100】
吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、水性インクの浸透性が高い電子写真用紙などの普通紙、インクジェット用紙(シリカ粒子やアルミナ粒子から構成されたインク吸収層、あるいは、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドン(PVP)等の親水性ポリマーから構成されたインク吸収層を備えたインクジェット専用紙)から、水性インクの浸透性が比較的低い一般のオフセット印刷に用いられるアート紙、コート紙、キャスト紙等が挙げられる。
【0101】
非吸収性被記録媒体としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック類のフィルムやプレート、鉄、銀、銅、アルミニウム等の金属類のプレート、又はそれら各種金属を蒸着により製造した金属プレートやプラスチック製のフィルム、ステンレスや真鋳等の合金のプレート等が挙げられる。
【0102】
2.インクジェット記録方法
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、インクジェット記録方法に用いることができる。当該インクジェット記録方法は、被記録媒体上に、上記インク組成物を吐出する吐出工程と、上記吐出工程により吐出されたインク組成物に紫外線を照射して、上記インク組成物を硬化する硬化工程と、を含む。このようにして、被記録媒体上で硬化したインク組成物により、塗膜(硬化膜)が形成される。
【0103】
3.1.吐出工程
上記吐出工程においては、従来公知のインクジェット記録装置を用いることができる。インク組成物を吐出する際、吐出安定性を良好なものとするため、インク組成物の20℃での粘度を3〜10mPa・sとするのが好ましく、5〜10mPa・sとするのがより好ましい。
【0104】
本実施形態の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、通常のインクジェット用インクで使用される水性インク組成物より粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。かかるインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
【0105】
3.2.硬化工程
次に、上記硬化工程においては、被記録媒体上に吐出されたインク組成物が、紫外線(光)の照射によって硬化する。これは、インク組成物に含まれる光重合開始剤が紫外線の照射により分解して、ラジカル、酸、及び塩基などの開始種を発生し、光重合性化合物の重合反応が、その開始種の機能によって促進されるためである。あるいは、紫外線の照射によって、光重合性化合物の重合反応が開始するためである。このとき、インク組成物において光重合開始剤と共に増感色素が存在すると、系中の増感色素が紫外線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤と接触することによって光重合開始剤の分解を促進させ、より高感度の硬化反応を達成させることができる。
【0106】
紫外線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線硬化型インクジェット用インク組成物の硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。その一方で、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。さらに、紫外線発光ダイオード(UV−LED)及び紫外線レーザダイオード(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線硬化型インクジェット用光源として期待されている。これらの中でも、UV−LEDが好ましい。
【0107】
ここで、発光ピーク波長が、好ましくは350〜420nmの範囲、より好ましくは365〜405nmの範囲にある紫外線を、好ましくは300mJ/cm2以下、より好ましくは100〜250mJ/cm2の照射エネルギーで照射することにより、硬化可能であるような紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を用いることが好ましい。この場合、本実施形態におけるインク組成物の組成に起因して低エネルギー且つ高速での硬化が可能となる。照射エネルギーは、照射時間に照射強度を乗じて算出される。本実施形態におけるインク組成物の組成によって照射時間を短縮することができ、その場合、印刷速度が増大する。他方、本実施形態におけるインク組成物の組成によって照射強度を減少させることもでき、その場合、装置の小型化やコストの低下が実現する。その際の紫外線照射には、UV−LEDを用いることが好ましい。このようなインク組成物は、上記波長範囲の紫外線照射により重合を開始する重合性化合物、及び上記波長範囲の紫外線照射により分解する光重合開始剤を含むことにより得られる。
【0108】
このように、本実施形態によれば、低粘度で硬化性に優れた紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を提供することができる。
【0109】
4.実施例
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0110】
4.1.使用成分
下記の実施例及び比較例において使用した成分は、以下のとおりである。
〔モノマーA〕
・アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル(VEEA、日本触媒株式会社製商品名)
〔モノマーB〕
・2−メトキシエチルアクリレート(2−MTA、大阪有機化学工業株式会社製商品名)
・エトキシジエチレングリコールアクリレート(V#190、大阪有機化学工業株式会社製商品名)
・3−メトキシブチルアクリレート(V#158、大阪有機化学工業株式会社製商品名)
〔アミノアクリレート〕
・アミノアクリレート(EBECRYL7100、ダイセル・サイテック株式会社製商品名、表1及び表2ではEB7100と略記した。)
〔6官能アクリレート〕
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A−DPH、新中村化学株式会社製商品名)
〔上記以外の重合性化合物〕
・イソオクチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、表1及び表2ではIOAAと略記した。)
・メトキシトリエチレングリコールアクリレート(V#MTG、大阪有機化学工業株式会社製商品名)
・フェノキシエチルアクリレート(V#192、大阪有機化学株式会社製商品名)
〔光重合開始剤〕
・IRGACURE 819(BASF株式会社製商品名、固形分100%、表1及び表2では819と略記した。)
・DAROCURE TPO(BASF株式会社製商品名、固形分100%、表1及び表2ではTPOと略記した。)
・KAYACURE DETX−S(日本化薬株式会社製商品名、固形分100%、表1及び表2ではDETX−Sと略記した。)
〔スリップ剤〕
・BYK-UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製商品名、ポリエーテル変性アクリル基を有するポリジメチルシロキサン、表1及び表2ではUV3500と略記した。)
〔重合禁止剤〕
・p−メトキシフェノール(関東化学株式会社製、表1及び表2ではMEHQと略記した。)
〔顔料〕
・ピグメント レッド122(クロモファインマゼンタ RG C.I.PR122、大日本インキ化学株式会社製商品名、表1及び表2ではPR122と略記した。)
〔分散剤〕
・Solsperse 36000(LUBRIZOL社製商品名、表1及び表2ではSol36000と略記した。)
【0111】
4.2.紫外線硬化型インク組成物の調整
下記表1〜表2に記載の成分を、表1〜表2に記載の組成(単位:質量%)となるように添加し、これを高速水冷式撹拌機で撹拌することにより、マゼンタ色の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を得た。なお、表1及び表2中の空欄部分は無添加を意味する。
【0112】
4.3.評価試験
前記紫外線硬化型インク組成物について、下記の評価試験を行った。
【0113】
4.3.1.硬化性
インクジェットプリンターPX−G5000(セイコーエプソン株式会社製商品名)を用いて、上記の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物をそれぞれのノズル列に充填した。常温、常圧下でPETフィルム(ルミラー125E20、パナック社製商品名)上に、インクのドット径が中ドットで印刷物の膜厚が5〜7μmとなるようなベタパターン画像(記録解像度720×720dpi)を印刷し、記録物を水平な暗所で30秒間静置した後、紫外線照射装置のUV−LEDから、照射強度が1000mW/cm2となるように、波長が395nmの紫外線を照射してベタパターン画像を硬化させた。
【0114】
以上のようにして、PETフィルム上にベタパターン画像が印刷された記録物を作製した。ここで、ベタパターン画像とは、記録解像度で規定される最小記録単位領域である画素の全ての画素に対してドットを記録した画像である。
積算照射エネルギー[mJ/cm2]は、光源から照射される被照射表面における照射強度[mW/cm2]を測定し、これと照射継続時間[s]との積から求めた。照射強度の測定は、紫外線強度計UM−10、受光部UM−400(いずれもコニカミノルタセンシング社製)を用いて行った。
硬化性は、タックフリー時の積算照射エネルギーを指標として評価した。ここで、タックフリーといえるか否かは、下記の条件で判断した。すなわち、綿棒にインクが付着するか否か、又は被記録媒体上のインク硬化物に擦り傷が付くか否かで判断した。その際、使用した綿棒は、ジョンソン・エンド・ジョンソン社製のジョンソン綿棒であった。擦る回数は往復10回とし、擦る強さは100g荷重とした。
【0115】
硬化性評価時のインク塗膜(硬化膜)の膜厚は5〜7μmとした。下記の評価基準のうち、AAA、AA及びAが実用上許容される基準である。評価結果を下記表1及び表2に示す。
AAA:タックフリー時の積算照射エネルギー 100mJ/cm2未満
AA :タックフリー時の積算照射エネルギー 100mJ/cm2以上125mJ/cm2未満
A :タックフリー時の積算照射エネルギー 125mJ/cm2以上150mJ/cm2未満
B :タックフリー時の積算照射エネルギー 150mJ/cm2以上200mJ/cm2未満
C :タックフリー時の積算照射エネルギー 200mJ/cm2以上
【0116】
4.3.2.粘度
上記の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物の粘度[mPa・s]を、20℃環境下で測定した。測定装置はレオメーター(MCR−300、Physica社製商品名)を用いた。下記の評価基準のうちAが実用上許容される基準である。評価結果を下記表1及び表2に示す。
A :3mPa・s以上10mPa・s以下
B :10mPa・s超20mPa・s以下
C :20mPa・s超
【0117】
4.3.3.重合開始剤の溶解性
上記の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物を、25℃環境下で、マグネティックスターラー(HSD−6、アズワン社製)を用いて、攪拌速度を300rpmに設定し、任意の時間攪拌した後、5μmのメンブレンフィルターで濾過する。濾過前後のインク組成物をエチルジグリコールアセテートで1000倍希釈した溶液の吸光度を分光光度計(U−3900、日立ハイテクノロジー株式会社製)で測定することにより光重合開始剤の溶解性を評価した。
【0118】
波長395nmの吸光度が濾過前と比較して濾過後で減少している場合、光重合開始剤が溶け切れていないと判断することができる。下記の評価基準のうちAA及びAが実用上許容される基準である。評価結果を下記表1及び表2に示す。
AA:30分間の攪拌で、濾過後の吸光度の減少割合が0%以上10%未満
A :1時間の攪拌で、濾過後の吸光度の減少割合が0%以上10%未満
B :1時間の攪拌で、濾過後の吸光度の減少割合が10%以上30%未満
C :1時間の攪拌で、濾過後の吸光度の減少割合が30%以上
【0119】
4.4.評価結果
以上の評価試験の結果について、表1及び表2に併せて記載した。
【0120】
【表1】

【0121】
【表2】

【0122】
表1に記載の実施例1〜12の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物によれば、いずれも硬化性、粘度、光重合開始剤の溶解性の全ての評価項目において、実用上許容されるレベルであることが分かった。
【0123】
一方、表2の比較例1の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、反応成分中のモノマーAの含有量が60質量%を超えており、しかもモノマーBを含有していない。そのため、粘度が高くなり、光重合開始剤の溶解性が不十分な結果となった。
【0124】
表2の比較例2の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、反応成分中のモノマーBの含有量が10質量%未満であるため、粘度が高くなり、硬化性が不十分な結果となった。
【0125】
表2の比較例3の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、反応成分中のモノマーBの含有量が50質量%を超えるため、粘度が低く、光重合開始剤の溶解性は良好だが、硬化性が不十分な結果となった。
【0126】
表2の比較例4の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、反応成分中のモノマーAの含有量が60質量%を超えているため、硬化性が良好であるが、光重合開始剤の溶解性が不十分な結果となった。
【0127】
表2の比較例5の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物は、反応成分中のモノマーAの含有量が30質量%未満であるため、硬化性が不十分な結果となった。
【0128】
表2の比較例6及び7の紫外線硬化型インク組成物は、反応成分中のモノマーBと構造が異なる低粘度モノマーであるため、粘度、硬化性及び光重合開始剤の溶解性のうち、少なくとも1つは不十分な結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
CH2=CR1−COOR2−O−CH=CH−R3 ・・・(I)
(式中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は炭素数2〜20の2価の有機残基であり、R3は水素原子又は炭素数1〜11の1価の有機残基である。)で表されるモノマーAと、
下記一般式(II):
CH2=CR1−COO−(R4−O)n−R5 ・・・(II)
(式中、nは1〜2であり、R4は炭素数2〜4の直鎖状又は分枝状のアルキレン基であり、R5はメチル基又はエチル基である。)で表されるモノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーBと、
光重合開始剤と、
を含む紫外線硬化型インクジェット用インク組成物であって、
前記モノマーAは、該インク組成物の総質量に対し、30〜60質量%含まれ、
前記モノマーBは、該インク組成物の総質量に対し、10〜50質量%含まれる、
紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項2】
前記モノマーAが、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルである、請求項1に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項3】
前記モノマーBが、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、及び、3−メトキシブチル(メタ)アクリレートのうち少なくともいずれか1種を含有する、請求項1又は2に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
該インク組成物の総質量に対し、1〜10質量%の(メタ)アクリル化アミン化合物をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項5】
該インク組成物の総質量に対し、1〜10質量%のヘキサ(メタ)アクリレート化合物をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項6】
該インク組成物の総質量に対し、1〜20質量%のフェノキシエチル(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤は、該インク組成物の総質量に対し、7質量%以上のアシルフォスフィンオキサイド化合物、及び、0.5質量%以上のチオキサントン化合物を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項8】
発光ピーク波長が350〜420nmの範囲にある紫外線を、300mJ/cm2以下の照射エネルギーで照射することにより硬化可能である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項9】
20℃での粘度が3〜10mPa・sである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の紫外線硬化型インクジェット用インク組成物。

【公開番号】特開2012−188613(P2012−188613A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55177(P2011−55177)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】