説明

紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物

本発明は、紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物に関し、詳細には、ナノサイズのコロイド性無機酸化物粒子、硬化性結合剤前駆体、架橋性シラン化合物、コロイド安定剤及び添加剤を含むハードコーティング剤組成物において、前記コロイド安定剤として、紫外線照射により重合が起こりつつコロイドを安定化させる役割を果たし、毒性のほとんどないモルホリン類を選択使用することにより、最終的に製造された組成物の混用性に優れていると共に、粘度が著しく改善され、これをコーティング時コーティング面が均一になるばかりではなく、毒性がほとんどないため、人体に無害で環境親和的であり、光学的に透明で、カーリング現象が生じず、耐磨耗性に優れた、紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物に関するものであって、さらに詳細には、ナノサイズのコロイド性無機酸化物粒子、硬化性結合剤前駆体、架橋性シラン化合物、コロイド安定剤及び添加剤を含むハードコーティング剤組成物に、従来前記硬化性結合剤前駆体として広範囲に使用されていたペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を使用しないか、または追加的に使用して、前記コロイド安定剤として、紫外線照射により重合が起こりつつコロイドを安定化させる役割を果たし、特に既存のコロイド安定剤とは違って、毒性のほとんどないモルホリン(morpholine)類を選択使用することにより、最終的に製造された組成物の混用性に優れていると共に、粘度が著しく改善され、これをコーティング時コーティング面が均一になるばかりではなく、毒性がほとんどないため、人体に無害で環境親和的であり、光学的に透明で、カーリング(curling)現象が生じなく、耐磨耗性に優れた、紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでの様々な種類のプラスチック成形物の表面保護のために、耐磨耗性、耐スクラッチ性の強いハードコーティング剤組成物を、そのプラスチック構造物上にコーティングし硬化させて使用してきて、その中で既に公知されている多くのハードコーティング剤組成物は、(メタ)アクリレート作用性単量体のような放射線(例えば、紫外線)硬化性予備重合体から製造された結合剤マトリックスを使用するが、このようなハードコーティング剤組成物は、米国特許第5,541,049号及び米国特許第5,176,943号によく記述されている。
【0003】
前記特許によるハードコーティング剤は、有機結合体マトリックスに分散されたナノメートルサイズの無機酸化物粒子(例えば、シリカ)を有する、好ましくは透明なハイブリッド(hybrid)重合性複合剤である。このようなハードコーティング剤の組成物は、当該技術分野で公知されているように、硬化性結合剤前駆体及びその他の任意の成分が水生ゾルの中に混合される工程により、無機コロイドの水生ゾルから誘導することができる。しかし、水生ゾルのコロイドの極度に敏感な特性により、優れた物性を有するハードコーティング組成物を製造することは難しかった。
【0004】
特に、その他の成分、例えば結合剤マトリックス前駆体またはその他の添加剤をゾルに添加すると、コロイドが不安定になり、コロイドが固まってゾルから沈澱してしまうなどの問題が発生する。
【0005】
前記のような固まりは、高品質コーティングを得ることにおいて、役に立たない。即ち、コロイドの固まりにより、混濁したハードコーティング剤組成物が製造されて、このようなハードコーティング剤組成物から形成されたハードコーティング層も混濁してしまうおそれがある。
【0006】
一方、従来のハードコーティング層は、ハードコーティング剤組成物をプラスチック基材上に直接、または1μm程度のプライマー層上に2〜15μm程度の薄い塗膜を形成して製造している。
【0007】
しかしながら、前記従来のハードコート層は、そのハードコート層の硬度が十分であったとしても、その塗膜厚が薄いため、プラスチック基材が変形される場合、ハードコート層も変形されてしまい、ハードコート層全体の硬度が低下するため、コーティングされた塗膜としての機能が果たせず、耐久性などの品質が十分満足する程度のものではなかった。
【0008】
上記のような問題を解決するために薄いフィルム、例えば、厚さ25〜100μm程度の薄いポリエステルフィルム上に、ハードコート層の厚さを厚く形成すると、硬度は向上するが、このようにコーティング厚を増加させる場合は、ハードコート層が亀裂するか容易に剥離されると共に、特に、硬化収縮によるハードコート層のたわみ現象がひどくなるという問題がある。これをカーリング(curling)現象という。
【0009】
また、一部のコーティング層では、表面汚染が生じたり、ハードコーティング剤組成物の一部成分は毒性があるため、環境上の問題を誘発したりもする。このため、従来の技術では、実用上使用できる良好な特性を有するハードコート層を得ることが困難であった。
【0010】
例えば、従来のハードコートのために使用されたハードコート組成物の中で、結合剤マトリックス前駆体としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)と、添加剤としてN,N’−ジメチル(メタ)アクリレート(DMA)、シラン化合物及びシリカなどを使用するハードコーティング剤組成物が提案されている。
【0011】
しかしながら、前記組成物は、耐磨耗性は向上したが、前記ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)は、比較的粘度が高いため、無機酸化物とコロイドに混入が難しく、コロイド中の水のストリッピング時、未反応ゲルや無機酸化物の沈澱が多く発生し、工程が複雑になるだけではなく、アクリルやポリカーボネート板に前記組成のハードコーティング剤をコーティングすると、コーティング不均一などの問題が発生した。
【0012】
また、コロイド安定剤の役割をしながら重合の単量体の役割をするコロイド安定剤のDMAは、毒性が多いため、環境親和的ではなく、沸点が比較的低いため、コロイドの水をストリッピング時、一部が水に混ざって排出され、環境汚染問題などを引き起こすと共に、20μm程度の薄いポリエステルフィルムにコーティングして、紫外線を照射し硬化させると、フィルムにカーリング(Curing)現象が発生したりもして、また、酸性の物質(例えば、ジュース、コーヒーなど)に汚染され易い傾向があった。
【0013】
上記のような問題点を解決するための方案として、前記DMAの代わりにフッ素化合物を使用する場合もあったが、得られた組成物の耐汚染性は優秀であるが、フッ素化合物を製造する過程で他の公害が発生し、また同じくカーリング現象が発生するため、実用化にはならない実情である。
【0014】
また、従来は、ハードコーティング剤組成物は、各種プラスチック成形物の表面保護のみを目的で、ハードコーティング層のみを形成すればよかったものの、IT産業が発達した最近は、携帯電話のディスプレイから見られるように、アクリル板の透明状態で表面保護という目的以外に、ミラー印刷(Mirror Print)のような特殊な印刷工程で要求される印刷特性を要求しているだけではなく、コンピューターのタッチスクリーン(Touch Screen)でのように印刷の反対概念と言える耐汚染性などの多様な機能性を要求している実情であって、このような要求を満足するハードコーティング剤組成物の必要性が大きくなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このため、本発明者は、上記のような従来の問題点を解決するために、鋭意研究し、下記のような結果を得て、本発明を完成した。
【0016】
本発明の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物は、硬化性結合剤前駆体として、粘度が低くコロイド性無機酸化物粒子との混用性に優れているトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)と、前記コロイドに容易に流入できる多作用性アクリレートを単独または混合して主成分として使用する。前記多作用性アクリレートとしては、親水生基を有してコロイドに容易に流入できるアルコキシ化多作用性アクリレートを主に使用するか、極めて高い粘度のハードコートが求められる場合は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を単独または混合して使用し、必要に応じては、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を混合して使用する。
【0017】
また、本発明の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物は、既存のコロイド安定剤として使用されたジメチル(メタ)アクリルアミド(DMA)の代わりに、コロイド安定剤として、毒性のほとんどないアクリロイルモルホリン(acryloyl morpholine)を使用する。
【0018】
上記のように、硬化性結合剤前駆体とコロイド安定剤を選択使用して、コロイド性無機酸化物粒子、架橋性シラン化合物を含み、ハードコーティング剤組成物を適用する目的物の必要に応じて、多様な添加剤を最適量で配合することにより、コロイド性無機酸化物粒子が有機マトリックスによく分布されるため、コロイドの固まりが発生せず光学的に非常に透明で、カーリング現象が発生しないと共に、環境親和的で、耐汚染性及び耐磨耗性に優れており、各種プラスチック基材だけではなく多様な産業分野のハードコーティング層に適用することができるということが分かった。
【0019】
従って、本発明は、コロイド性無機酸化物粒子の沈澱やゲルの発生を排除することができ、最終的に得られたハードコーティング剤組成物をコーティングしたコーティング面が光学的に極めて透明で、カーリング(curling)現象が発生しないと共に、耐磨耗性、耐スクラッチ性、耐汚染性、印刷性、接着性、耐加水分解性に優れているだけではなく、毒性がほとんどないため、人体に無害で且つ親環境的な効果を付与した、改善された紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物を提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、コロイド性無機酸化物粒子、硬化性結合剤前駆体、架橋性シラン化合物、コロイド安定剤及び添加剤を含むハードコーティング剤組成物において、固形分基準に、前記コロイド性無機酸化物10〜50質量%;前記硬化性結合剤前駆体として、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンメトキシ化トリアクリレート(TMP(MO)3TA)、トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)の中から選択された1種または2種以上の混合物5〜60質量%;前記架橋性シラン化合物5〜20質量%;前記コロイド安定性として、アクリロイルモルホリン5〜20質量%;及び前記添加剤として、安定剤、吸収剤、防止剤、耐スクラッチ剤及び耐汚染剤の中から選択された0.01〜10質量%を含む、紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物を特徴とする。
【0021】
本発明は、ナノサイズのコロイド性無機酸化物、硬化性結合剤前駆体、架橋性シラン化合物、コロイド安定剤及び添加剤を含むハードコーティング剤組成物に、従来硬化性結合剤前駆体として広く使用されていたペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を一部使用するか、追加的に少量使用して、前記コロイド安定剤として、紫外線照射により重合が起こりながらコロイドを安定化させる役割をして、特に既存のコロイド安定剤とは違って毒性のほとんどない、モルホリン(morpholine)類を選択使用した紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0022】
上述のように、本発明によるハードコーティング剤組成物[セリング(CeRing)、本発明品の商業的名称]は、コロイド性無機酸化物粒子、硬化性結合剤前駆体、架橋性シラン化合物、結合剤前駆体、各種添加剤を最適量で含有し、コロイドの固まりが発生しないため、光学的に非常に透明であって、耐磨耗性、耐汚染性などの一般物性は従来のハードコート剤よりも優秀でありながら、毒性はほとんどない物質を使用することにより、環境親和的で、安全性の確保されたハードコーティング用組成物である。
【0023】
また、最近のIT電子製品用など、特殊目的に合わせて開発したハードコート剤組成物であって、既存製品より進歩した効果がある。
【0024】
本発明から得たセリングは、光学的に非常に透明で、耐磨耗性、耐スクラッチ性に非常に優れていると共に、各種の光学レンズ、携帯電話のディスプレイ、各種電子製品の電気操作ウィンドー、コンピューターのタッチスクリーン用プラスチックなどの各種プラスチック製品を物理的または機械的損傷から保護するために、ハードコーティング層を構造物にコーティングした後、紫外線照射による硬化過程を経て、プラスチック構造物の保護膜として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物を構成成分別に具体的に説明するが、本発明の明細書に使用された質量%は、ハードコーティング剤組成物の固形分を基準とした値である。
【0026】
まず、コロイド性無機酸化物10〜50質量%を含む。
【0027】
前記コロイド性無機酸化物は、粒子、粉末及び溶液状で使用できて、粒子状として、平均粒径が好ましくは10〜100nmの球形で、非凝集の粒子を使用することがさらに好ましい。この際、前記コロイド性無機酸化物の粒径が10nm未満であると、あまりにも微細で、作業性が悪くて製造上の困難があり、100nmを超過すると、ハードコーティング剤組成物内への粒子の分散が難しく、平滑な表面が得られなくて、光学的に透明ではなく、耐スクラッチ強度が劣る問題点がある。
【0028】
このようなコロイド性無機酸化物は、実質的に凝集されていない状態(実質的に分離されている状態)であることが好ましいが、その理由は、凝集される場合、沈澱、ゲルの形成(gellation)またはゾル粘度の著しい増加を招来し、基材に対する接着性及び光学的透明性が減少するからである。前記コロイド性無機酸化物としては、代表的にシリカが使用されて、コロイド性金属酸化物と混用できるが、この場合は、金属酸化物のコロイドのPHが酸性側にかたよると、シリカのコロイドとPHが異なり、コロイドの安定性を求め難いため、注意しなければならない。
【0029】
また、本発明で使用するコロイド性無機酸化物は、粉末、ゲルまたはゾルのいずれの形態でも使用できるが、ゾルの形態が最も好ましい。ゾルの状態で、コロイド性無機酸化物粒子は、液相媒質内に分散される。コロイド性粒子に対する分散剤として好ましい液相媒質は、水であり、コロイド性粒子を水に分散させる場合、粒子は、各粒子の表面上における共通電荷により安定化する。共通電荷は、凝集よりは分散を促進する傾向があるが、これは、類似に荷電された粒子らは、お互い反発し、凝集を防止するからである。
【0030】
本発明を行うに有用なゾルは、本発明の技術分野でよく知られている通常の方法により製造することができて、適合したゾルは、市販品を利用してもよい。例えば、水溶液中にゾルとして分散されたコロイド性シリカとしては、ナルコ(Nalco)シリーズ(アメリカ、Nalco社製品)がある。
【0031】
次に、前記硬化性結合剤前駆体として、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンメトキシ化トリアクリレート(TMP(MO)3TA)、トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)の中から選択された1種または2種以上の混合物5〜60質量%を含む。
【0032】
このような硬化性結合剤前駆体として、必要に応じ、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)も含めることができ、使用量は、5〜45質量%であって、より高い粘度を要求するハードコーティング剤組成物を製造する場合、DPPA、DPHAまたはこれらの混合物を5〜60質量%使用してもよい。但し、上記のPETA、DPPA、DPHAなどを含む全ての硬化性結合剤前駆体の使用量が5〜60質量%の範囲となるようにする。
【0033】
本発明で最も重要な役割をする硬化性結合剤前駆体を使用することにより、アクリルまたはポリカーボネート、ポリエステルフィルムなどの基材に対する接着性及びコーティング加工性に優れており、ハードコーティング組成物に製造時、コロイドを安定化させて、本発明の要求する物性のハードコーティング剤組成物が得られるようにする。特に、エトキシ化またはメトキシ化された多作用性アクリレートを単独または混用して使用すると、組成物の粘度を低めることができて、適用しようとする基材に応じ、前記硬化性結合剤前駆体を選択し組み合せて使用することができる。例えば、エトキシ化またはメトキシ化された多作用性アクリレートを単独または混用して使用する場合は、コロイド安定剤としてDMAを使用すると、粘度を改善することができる。
【0034】
前記TMPTAなどは、セリング(CeRing)の粘度を低めながら、セリング内の無機酸化物粒子の分布が優秀であるため、セリング製造時、無機酸化物の沈澱やゲルの発生がなく、流れ性がよいため、アクリルやポリカーボネートの基材に対してフローコーティング(Flow Coating)またはディップコーティング(Dipping Coating)時、表面が非常にきれいでありながら均一な厚さを有するハードコーティング層を得ることができる。
【0035】
その反面、硬化性結合剤前駆体としてDPPAまたはDPHAを単独または混用して、場合によってはPETAと混用して使用すると、ハードコーティング剤組成物の粘度が高く、フローコーティング方式では均一なコーティング層を得ることが難しいが、グラビア印刷方式またはバーコーティング(Bar Coating)方式を用いてポリエステルフィルム基材上にコーティングすると、透明で、前記基材に対する接着力及び耐磨耗性に優れているだけではなく、ポリエステルフィルム上に透明コーティング時に発生するレインボー現状が著しく減少し、商品の価値を高めることができる。
以下、表1に、本発明のハードコーティング剤組成物に使用される硬化性結合剤前駆体の物性を比較して、簡単に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
前記表1のデータは、(株)ミウォン商社(Miwon Commercial Co., LTD.)の製品カタログから抜粋したものである。
【0038】
次に、架橋性シラン化合物5〜20質量%を含む。
【0039】
本発明のハードコーティング剤組成物において、コロイド性無機酸化物粒子の表面処理で組成物内で粒子の分散性を増進させるために使用する架橋性シラン化合物は、使用量が5質量%未満であると、分散性が低下し、透明度や品質に問題があり、20質量%を超過すると、これを適用したハードコートの特性が低下するという問題がある。
【0040】
前記架橋性シラン化合物は、加水分解性シラン残基及びシラン残基以外の重合性残基を含有するものであって、市販する製品としては、KBM−503(日本Shin-Etsu Chemical社製品)などがある。
【0041】
次の成分は、コロイド安定剤として本発明で特徴的に使用するアクリロイルモルホリン5〜20質量%である。
【0042】
前記アクリロイルモルホリンは、コロイド安定剤と結合性前駆体として同時に作用するものであって、本発明のハードコーティング剤組成物において、無機酸化物のコロイドを安定化し、硬化性結合剤前駆体と架橋性シラン化合物とのコロイドへの混入が安定的になされるようにして、紫外線照射による硬化時、重合反応を起こして硬化される単量体、即ち、他の表現で言うと結合剤前駆体である。
【0043】
従来は、このような結合剤前駆体として、アクリルアミド系のジメチル(メタ)アクリルアミド(N,N'-Dimethyl(meta)Acrylamide, DMA)を主に使用したが、前記DMAは、毒性が多くて使用上の問題があり、コロイドの媒質である水を加熱状態で真空によるストリッピング時、水と共にストリッピングされてしまい、環境に影響を及ぼす。
【0044】
本発明で特徴的に使用するアクリロイルモルホリン(ACMO)は、毒性がほとんどないため環境親和的であり、前記DMAに比べ性能的に優秀であるため、ポリエステルフィルム基材上にコーティングした後、紫外線照射による熱硬化時、カーリング現象が起こらない。しかし、場合によって、硬化性結合剤前駆体として、親水生基を有するトリメチロールプロパンアルコキシ化トリアクリレートを選択使用する場合、物性に優れている組成物を得ることができる。
【0045】
このようなアクリロイルモルホリンは、5〜20質量%を使用するが、使用量が5質量%未満であると、コロイドに安定性付与の効果が低下し、20質量%を超過すると、耐磨耗性が低下するという問題がある。前記ACMOとDMAの毒性を、これらの製造社の一つである日本の(株)コジンのMSDSから抜粋して、次の表2に整理して示した。
【0046】
【表2】

【0047】
上記した主要成分以外に、様々な目的で本発明のハードコーティング剤組成物に使用される添加剤を簡単に説明する。本発明で使用できる添加剤としては、安定剤、吸収剤、防止剤、耐スクラッチ剤及び耐汚染剤などがあり、このような添加剤の総使用量は、0.01〜5質量%である。
【0048】
具体的に説明すると、本発明のハードコーティング剤組成物を紫外線照射により硬化させる際、自由ラジカルを生成させて、ハードコーティング剤組成物の重合物の架橋を開始させる役割をする光開始剤がある。前記光開始剤としては、代表的にベンゾフェノンを使用することができて、使用量は、0.01〜2質量%を使用することが好ましい。
【0049】
一般に、重合体物質は、いずれも多様なメカニズムにより分解が進行されると知られているが、このような分解メカニズムを抑制または防止するような添加剤を入れることにより、完全ではないが分解を抑制することができる。このような役割をする通常の添加剤としては、安定剤、吸収剤、防止剤などがあるが、それぞれ単独で、場合によっては混合して使用することができる。
【0050】
紫外線安定剤または紫外線吸収剤は、一般に、ハードコーティング層の耐候性を改善して、時間の経過により紫外線による黄変(yellowing)を減少させる役割をして、酸化防止剤は、ハードコーティング層が空気中のオゾンや酸素との反応により分解されることを防止する役割をして、熱安定剤は、短時間の高温の熱処理による分解や気候による黄変を減少させる役割をする。
【0051】
前記紫外線安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤などを、必要に応じて単独または混用して使用することができて、使用量は、0.01〜5質量%を使用することが好ましい。
【0052】
前記紫外線安定剤または紫外線吸収剤として市販される製品としては、Tinuvin292、Tinuvin123(Ciba Geigy社製品)、酸化防止剤としては、Anitoxidant BHT(アメリカInfochems, Inc製品)がある。
【0053】
本発明のハードコーティング剤組成物が形成したハードコーティング層は、耐磨耗性や耐スクラッチ性に非常に優れているが、添加剤によるハードコーティング層の表面スリップ(slip)性を付与することにより、耐磨耗性や耐スクラッチ性をさらに改善することができて、通常シリコン系物質が使用できるが、これは、組成物との混合性(Blend性)が悪く、ハードコーティング層の透明性を低下させる虞があるため、注意しなければならない。添加量は、0.01〜1質量%を使用することが好ましい。市販される製品としては、DC−57(アメリカDow Corning社製品)がかなり効果的であることを確認した。
【0054】
従来は、ハードコーティング層の組成物の一つの成分であったDMAは、比較的強いアルカリ性により、酸性系のジュース、コーヒーなどにより汚染される虞があった。しかし、本発明のハードコーティング剤組成物は、上記DMAの代わりにACMOを使用することにより、耐汚染性を著しく改善した。一方、さらに耐汚染性を強化する、または水分に対する撥水性を付与するために添加剤を使用することができるが、このような耐汚染剤としては、フッ素系化合物とアクリレートとが結合され、本発明のハードコーティング剤組成物との混合性に優れているゾニルアクリレート(Zonyl Acrylate、アメリカDupont社製品)を、ハードコーティング剤組成物固形分に対し、0.1〜5質量%添加することが好ましい。
【0055】
上記のような成分からなる本発明のハードコーティング剤組成物は、以下のように製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0056】
まず、粘度状態に応じて若干加熱した(50℃程度まで)硬化性結合剤前駆体に無機酸化物のコロイド(媒質として水)を添加する。これに、他の容器で予め用意した架橋性シラン化合物とコロイド安定剤との混合物を添加して混合し、光開始剤と酸化防止剤などの添加剤を混合する。次いで、上記の混合物を攪拌しながら真空中で加熱し、コロイドに媒質として含有された水を98%以上除去すると、粘度の高い透明な液体が得られる。
【0057】
この透明な液体にケトン類、アルコール類、アセテート類などの中から選択された有機溶媒を加えて、希釈した透明な液相のハードコーティング剤組成物の固形分を攪拌しながら注入して、15〜40質量%程度のハードコーティング剤組成物を製造する。
【0058】
参考に、適用しようとする基材に応じて組成成分の含量を調節した本発明のハードコーティング剤組成物を、具体的な例を挙げて説明する。
【0059】
まず、あらゆる種類のプラスチック基材に一般的に使用できるハードコーティング剤組成物を紹介すると、次のようである。
【0060】
コロイド性無機酸化物粒子25〜35質量%、硬化性結合剤前駆体として、PETA30〜45質量%、DPPAまたはDPHA5〜20質量%、架橋性シラン化合物5〜10質量%、コロイド安定性として、ACMO5〜15質量%、シリコンオイル0.01〜1質量%、光開始剤0.01〜1質量%、酸化防止剤0.01〜1質量%を含むハードコーティング剤組成物である。上記のような成分と含量で製造する場合、特に耐スクラッチ性が強くて、光学的に非常に透明で、カーリング発生も少ないという長所を有する。また、毒性の多いDMAの代わりに、毒性のほとんどないACMOを使用することにより、さらに環境親和的な効果を奏する。
【0061】
次に、最近多く補給された携帯電話のディスプレイ用として、アクリル板基材のハードコーティング用に使用できるハードコーティング剤組成物であるが、最近の携帯電話ディスプレイは、光学的に非常に透明で、高い耐磨耗性、耐スクラッチ強度を要求するだけではなく、高度の印刷特性を要求する。ここで、印刷特性とは、特殊インクを使用した印刷、転写方式や蒸着方式による印刷などのインク媒体との強い接着力を意味する。また、前記印刷特性のほかにも、滑らかで均一な表面のハードコーティング層を要求する。特に、アクリル板基材は、サイズが約1220mm×2420mm程度になるが、ノズルによるハードコーティング剤の噴射によるフローコーティングで、前後面全体にかけて厚さの偏差がほとんどない、均一な形態でコーティングされなければならなく、紫外線照射による硬化工程の間、表面の変化が生じてはいけない。このような物性の要求に適合したハードコーティング用組成物は、硬化性結合剤前駆体としてPETA 0〜30質量%、粘度の低いTMPTA 20〜40質量%、自体分子構造内に親水基を有しており、コロイド無機酸化物に安定した状態で分散されるTMP(EO)3TA 10〜30質量%、コロイド性無機酸化物粒子25〜35質量%、ACMO 5〜15質量%、光開始剤0.01〜1質量%、酸化防止剤0.01〜1質量%からなる組成物を要求する。
【0062】
特に、前記組成によるハードコーティング剤組成物は、コロイドの媒質である水を真空によりストリッピング時、無機酸化物の沈澱やゲルの発生が全くないため、アクリル板基材上にフローコーティング時、不良発生がほとんどないだけではなく、平滑性(Leveling性)に優れており、ハードコーティング剤に要求される耐磨耗性、透明性においても全く劣らなかった。
【0063】
次に、ポリエステルフィルム基材上にハードコーティング層を形成し、コンピューターのタッチスクリーンとして使用されるハードコーティング剤組成物である。一般に、透明なポリエステルフィルムは、自らレインボー現象を現して、その上に透明なハードコーティング層を形成すると、場合によってはレインボー現象がさらにひどく現れて、使用上に問題点が提起される。本発明のハードコーティング剤組成物は、透明なハードコーティング層に硬化されても、ポリエステルフィルム自体のレインボー現象を減少させることができて、このような特性を満たす具体的な例としては、硬化性結合剤前駆体として、非常に粘度の高いDPHA20〜45質量%、PETA10〜20質量%を混合して、これにコロイド性無機酸化物粒子25〜35質量%、架橋性シラン化合物5〜10質量%、コロイド安定剤としてACMO5〜15質量%、光開始剤0.01〜1質量%、酸化防止剤0.01〜1質量%を含有する場合である。
【0064】
上記組成からなるハードコーティング剤組成物は、粘度が高いため、ポリエステルフィルム基材上にグラビアコーティング方式またはバーコーティング方式によりコーティングした後、硬化させると、ポリエステルフィルム基材自体のレインボー現象を減少させることができて、光学的な透明度、耐磨耗性、耐スクラッチ強度などにも非常に優れている。
【0065】
即ち、上記のように適用しようとする基材に応じて調節された成分からなるハードコーティング剤組成物を製造した後、耐磨耗性、耐スクラッチ性などの改善を必要とする任意の基材上にコーティングするが、そのコーティングの方法は、基材の性質及びハードコーティング剤組成物の粘度などの物性に応じて、ディップコーティング(Dipping Coating)、フローコーティング(Flow Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ナイフコーティング(Knife Coating)、グラビアコーティング(Gravure Coating)、ロールコーティング(Roll Coating)など、多様な方法により行われる。
【0066】
コーティング時、コーティング膜の厚さは、溶剤を含んだ状態で5〜15μmであることがさらに好ましく、コーティング後、溶媒は乾燥して除去する。この際、溶剤が残っている状態で硬化すると、ヘーズ(Haze)が発生し、光学的に透明な層が得られない場合があるため、溶剤が残らず完全に乾燥されるよう注意しなければならない。溶剤が完全に乾燥すると、コーティング層に紫外線(UV)を照射し、硬化させる。
【0067】
このようにすると、硬化性結合剤前駆体及び表面処理されたコロイド性無機酸化物が共に交差結合し、コロイド無機酸化物及び選択的に投入された添加剤が重合体マトリックス内に均一に散在されている、耐磨耗性に優れており、光学的に非常に透明でありながら、各種基材に対しての接着力に優れている、ハードコート層が得られるようになる。
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明がこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
実施例1
硬化性結合剤前駆体としてDPHA15質量%、PETA40質量%を2l容量のフラスコに入れて約50℃に加熱した。これにナルコ2327を26.3質量%、架橋性シラン化合物である3−メタクリルオキサプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)7質量%、ACMO 11質量%、シリコンオイル(DC-57、アメリカDow Corning社製品)0.5質量%、ベンゾフェノン0.1質量%、BHT 0.1質量%を混合し、前記混合物を52℃で弱く真空(100mmHg)をかけて大部分の水/メタノールを除去した。ナルコに媒質として混合された水の2質量%程度は、生成分に残っている。
【0070】
ストリッピング工程が終わる頃、イソプロピルアルコール(Isopropyl Alcohol)を固形分含量が25%となるように稀釈した。次いで、前記セリング[本出願人により製造されたハードコーティング剤組成物をセリング(CeRing)と称する]組成物を通常的なフローコーティング(Flow Coating)方法により、10μmの厚さでアクリル板基材にコーティングし、ハードコーティング層を形成した。コーティングされた基材を約60℃の空気循環オーブンで2.5分間フラッシュ乾燥し、最後に高圧水銀ランプ(Model:J-H4000、韓国第一UV社製品)を使用して、紫外線光処理機のコンベヤーベルト上でコーティング層を硬化させた。処理条件は、ベルトスピード6m/min、100W、エネルギー800mj/cm2であった。
【0071】
このようにして得られたセリングコーティング、即ちハードコーティング層は、完璧に透明であって、アクリル基材上に完璧に接着した。前記セリングのハードコーティング層の物性は、次の表3に示した。
【0072】
実施例2
硬化性結合剤前駆体としてTMPTA 20質量%、TMP(EO)3TA 20質量%、PETA 15質量%、ナルコ2327 26.3質量%、ACMO 11質量%、KBM−503 7質量%、開始剤(ベンゾフェノン) 0.1質量%、酸化防止剤(BHT) 0.1質量%を混合して、ストリッピング、アクリル基材上のコーティング、紫外線照射による硬化などは、前記実施例1と同様に処理した。
【0073】
上記のセリング組成物の場合、水/メタノールが真空によりほとんどストリッピングされた時の組成物の粘度が、50℃で100poise程度であって、実施例1(220poise)に比べ遥かに低かった。従って、ストリッピング工程中に発生する無機酸化物の沈澱やゲルの発生がほとんどなく、極めて透明な液体として得られた。
【0074】
アクリル板基材上にフローコーティング方式によりセリング組成物をコーティング時、極めて均一なコーティング層が得られた。
【0075】
ハードコーティング層は、光学的に黄変(Yellowing)の全くない非常に透明な状態であって、耐磨耗性、基材上の接着性などにも極めて優れていた。
【0076】
実施例3
DPHA 40質量%、PETA 15質量%、ナルコ2327 26.3質量%、ACMO 11質量%、KBM−503 7質量%、開始剤(ベンゾフェノン)0.1質量%、酸化防止剤(BHT)0.1質量%を混合したことを除いては、前記実施例1と同様に処理した。
【0077】
水/メタノールがほとんどストリッピングされた時の50℃での粘度が350poise程度で、非常に高かった。
【0078】
メチルエチルケトン(MEK)をセリング組成物の固形分が25%となるように投入して稀釈した後、186μm厚さのポリエステルフィルム基材上にバーコーティング(Bar Coating)方式によりコーティングした後、溶剤の乾燥後、紫外線照射により硬化させた。
【0079】
前記セリングハードコーティング層の形成されたポリエステルフィルム上に、レインボー現象を肉眼でよく観察できる特殊蛍光灯(FO32w/850、ドイツSYLVANIA社製品)の光を照射した結果、ポリエステルフィルム基材自体から発するレインボー現象より弱いレインボー現象が観察された。
【0080】
その他の光学的透明性や、耐磨耗性、耐スクラッチ性も優秀であって、特に、前記ハードコーティング層の形成されたポリエステルフィルム基材を熱処理した結果、カーリング現象が前記実施例1より少なかった。
【0081】
実施例4
セリング組成物において、特に耐汚染度を上げるために、前記実施例1のACMO 11質量%の代わりに、ACMO 8質量%、ゾニルアクリレート(アメリカDupont社製品)3質量%を使用したことを除いては、実施例1と同様な組成で製造した。
【0082】
アクリル板基材に前記組成液をコーティングした後、紫外線照射による硬化を行った結果、光学的に非常に透明で、耐磨耗性などの他の物性も前記実施例1とあまり変わりがなく、各接触角の測定結果から、耐汚染度が非常に上昇したことが分かった。
【0083】
比較例
硬化性結合剤前駆体としてPETA 55質量%、無機酸化物コロイドとしてナルコ2327(アメリカNalco社製品)29.8質量%、架橋性シラン化合物としてA−174(アメリカUnion Carbide社製品)7質量%、結合剤前駆体としてDMA 8質量%、開始剤0.1質量%、酸化防止剤0.1質量%を混合して、前記実施例1と同様な方法によりハードコーティング剤組成物を製造した。
【0084】
このようにして得られたハードコーティング剤組成物をアクリル板基材やポリエステルフィルム基材などに適用する様々な方法によりコーティングして、紫外線照射により硬化させた後、前記実施例1〜3のセリング組成物のハードコーティング層と諸物性を比較試験した。
【0085】
しかし、毒性の多いDMAを使用することにより、安定性に問題が多かった。
【0086】
また、真空による水/メタノールのストリッピング時、ごく一部ではあるが、水と共にストリッピングされて環境上の問題点を提起した。
【0087】
試験例
1.プラスチック平板におけるテーバー(Taber)磨耗試験
ASTMD1044方式により、室温で500gの荷重下で、100、300、500回のサイクルでハードコーティング層の基材上を回転させて磨耗させた後、磨耗による混濁度を%変化率で測定した。
【0088】
2.スクラッチ(Scratch)に対する抵抗強度
常温でJIS D-0202規格により、ハードコーティング層の形成された基材上を鉛筆芯の強度を上げながら鉛筆芯で掻き、スクラッチが発生される鉛筆芯の硬度を測定した。
【0089】
3.光透過度(Transmission)試験
ハードコーティング層が光学的にどのくらい透明であるかを測定する試験であって、可視光線透過反射率測定機(形式HA-TR、日本スガ試験機株式会社製品)により、ハードコーティング層の形成された部位に一定量の光を透過させて、ハードコーティングの基材を通した光量を測定して%で示した。
【0090】
4.接着強度実験
接着強度の測定は、所謂クロスハッチ(Cross Hatch)法により行う。図1に示したように、縦と横の各10mmを1mm単位で鋭いナイフで分ける。10間×10間、即ち100間上に幅18mmの一番セロテープ(登録商標)(日本国一番株式会社製品、JIS Z-1522)を張って、手で押さえてよく密着させた後、テープの接着方向の直角方向にテープを瞬間的に取り離して、この時テープにくっ付いて剥離された間数を数えて表示する。
【0091】
100/100は、プラスチック基材との完全な接着を意味し、0/100は、接着力が全くないことを意味する。
【0092】
5.加水分解試験
基材上にコーティングされたハードコーティング部分を80℃の水の中に1日、3日、5日間沈積させて、温水によりハードコーティング層の加水分解が起こったのかどうかを測定する試験であって、沈積されたハードコーティング層と基材との接着強度を、前記4の接着強度の試験方法により測定した。
【0093】
6.カーリング(Curling)測定
厚さ50μmのポリエステルフィルム基材上に、固形分30%のセリング組成物を8番バー(Bar、18.3μmの湿塗膜厚)を利用してバーコーティングした後、60℃に維持したオーブンの中に3分間入れて溶剤を完全に乾燥した後、紫外線を照射し硬化させた。
【0094】
紫外線による硬化条件は、ベルトスピード6.0m/min、100W、エネルギー800mj/cm2、ベルトと高圧水銀ランプ(Model:J-H4000、韓国第一UV社製品)との間隔は12cmであった。このようにしてハードコーティング層の形成されたポリエステルフィルムを20cm×20cmの大きさで切って、平板上に載せ、平板とカーリングされたフィルムとの成す角度(図2参考)を測定した。
【0095】
7.耐熱安定性実験
ハードコーティング層を高温処理した時の物性変化を調べる実験であって、ポリエステルフィルム(厚さ186μm)基材上にハードコーティングを形成した後、図のように鋭いナイフで切断する。
【0096】
切断した試料を150℃の恒温オーブンに0.5時間放置した後、対角線の交差する中心地点の鋭い部分がどのくらい上昇したのか、その高さを測定して、耐熱安定性の資料とする。
【0097】
8.接触角
ハードコーティング層の形成されたプラスチック基板上に形成される液滴(Liquid drop)の角度であって、接触角が大きいほど疎水性を示し、接触角が小さいほど親水性を示すが、これは接触角が小さいほど、印刷インクとの親和力があることを意味する。即ち、接触角が小さいほど印刷特性がよくなる。接触角装置の名称は、DSD Fast/60 Contact Angle Meter(GBX Instrumentation Scientifique, France)である。



















【0098】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】クロスハッチ(cross hatch)法により接着強度を測定するために、一定な規格に目盛りを入れた形態を簡単に示した図である。
【図2】カーリング(curling)の生じたポリエステルフィルムと平板を簡単に示した図である。
【図3】ハードコーティング剤組成物をコーティングして形成したハードコーティング層の耐熱安定性の測定のために切断した試片の規格である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド性無機酸化物、硬化性結合剤前駆体、架橋性シラン化合物、コロイド安定剤及び添加剤を含むハードコーティング剤組成物において、
固形分基準に、前記コロイド性無機酸化物10〜50質量%;
前記硬化性結合剤前駆体として、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンメトキシ化トリアクリレート(TMP(MO)3TA)、トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)の中から選択された1種または2種以上の混合物5〜60質量%;
前記架橋性シラン化合物5〜20質量%;
前記コロイド安定性として、アクリロイルモルホリン5〜20質量%;及び
前記添加剤として、安定剤、吸収剤、防止剤、耐スクラッチ剤及び耐汚染剤の中から選択された0.01〜5質量%を含むことを特徴とする、紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項2】
前記硬化性結合剤前駆体として、ペンタエリスリトールトリアクリレート5〜30質量%をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項3】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0〜55質量%;
ペンタエリスリトールトリアクリレート5〜30質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
アクリロイルモルホリン5〜15質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;及び
酸化防止剤0.01〜1質量%を含むことを特徴とする、請求項2に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項4】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート20〜45質量%;
ペンタエリスリトールトリアクリレート10〜20質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
アクリロイルモルホリン5〜15質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;及び
酸化防止剤0.01〜1質量%を含むことを特徴とする、請求項3に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項5】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)20〜40質量%;
トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)10〜30質量%; ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)5〜30質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
アクリロイルモルホリン5〜15質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;及び
酸化防止剤0.01〜1質量%を含むことを特徴とする、請求項2に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項6】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)20〜40質量%;
トリメチロールプロパンメトキシ化トリアクリレート(TMP(MO)3TA)10〜30質量%; トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)10〜30質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
ジメチル(メタ)アクリルアミド(DMA)5〜10質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;及び
酸化防止剤0.01〜1質量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項7】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10〜20質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
アクリロイルモルホリン5〜10質量%;
耐汚染剤1〜5質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;及び
酸化防止剤0.01〜1質量%と、さらにペンタエリスリトールトリアクリレート20〜45質量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項8】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
トリメチロールプロパンメトキシ化トリアクリレート(TMP(MO)3TA)10〜30質量%;
トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)10〜30質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
アクリロイルモルホリン5〜10質量%;
耐汚染剤1〜5質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;
酸化防止剤0.01〜1質量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。
【請求項9】
コロイド性無機酸化物25〜35質量%;
トリメチロールプロパンメトキシ化トリアクリレート(TMP(MO)3TA)10〜30質量%;
トリメチロールプロパンエトキシ化トリアクリレート(TMP(EO)3TA)10〜30質量%;
架橋性シラン化合物5〜10質量%;
コロイド安定剤として、アクリロイルモルホリンの代わりにジメチル(メタ)アクリルアミド(DMA)5〜10質量%;
耐汚染剤1〜5質量%;
光開始剤0.01〜1質量%;及び
酸化防止剤0.01〜1質量%を含むことを特徴とする、請求項8に記載の紫外線硬化性ハードコーティング剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−527299(P2006−527299A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516924(P2006−516924)
【出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【国際出願番号】PCT/KR2004/001413
【国際公開番号】WO2004/111138
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505461739)
【Fターム(参考)】