説明

紫外線硬化発泡シート

【課題】高い強度を有し、脆弱性(脆さ)が低く、伸びの低下が少ない紫外線硬化発泡シートの提供を目的とする。
【解決手段】オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤、ウィスカーを含む紫外線硬化性樹脂原料を、オークスミキサーなどにより機械的に発泡させて紫外線で硬化させることにより、強度が高く、伸びの低下が少ない紫外線硬化発泡シートを得る。紫外線硬化性樹脂原料に含まれるウィスカーとしては、塩基性の硫酸マグネシウムウィスカーが用いられる。紫外線硬化性樹脂原料のオリゴマーと希釈剤の合計100重量部当たりにおける硫酸マグネシウムウィスカーの添加量は、3〜30重量部が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高い強度を有し、脆弱性(脆さ)が低く、伸びの低下が少ない紫外線硬化発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薄物の発泡シートは、例えば携帯電話やPDA用のシール材、制振材、衝撃吸収材等電気機器部材に多用されている。前記発泡シートの一つとして、紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させた紫外線硬化発泡シートがある。この紫外線硬化発泡シートは、他の発泡シートに比べて製造時の硬化時間を短縮できる利点がある。なお、機械的発泡は、化合物の分解等によって発泡ガスを生じる発泡剤による発泡ではなく、ミキサー等を用いる攪拌等により起泡させる方法である。
【0003】
ところで、発泡シートには、強度が要求されることがある。しかし、従来の紫外線硬化発泡シートにおいては、強度を増大させようとすると伸びが大きく低下する傾向があり、しかも脆性があるため、シール材、制振材、衝撃緩衝材等の用途には、充分な物性を有するとはいえない場合がある。
【0004】
一方、発泡体ではない樹脂組成物においては、SiCウィスカーの含有による強度改善が提案されている(以下の特許文献6参照)。しかし、SiCウィスカーが黒色であることから、SiCウィスカーを紫外線硬化発泡シートに含有させた場合には紫外線による硬化が妨げられて製品が得られなくなる。また、ポリオレフィン樹脂に硼酸アルミニウムウィスカーを含有させることが提案されている(以下の特許文献7参照)。ところが、本発明者が樹脂発泡体に種々のウィスカーを含有させて強度を確認した結果、顕著な強度向上を確認できないものもあった。
【0005】
【特許文献1】特開平6−287376号公報
【特許文献2】特開平7−258978号公報
【特許文献3】特開昭61−137711号公報
【特許文献4】特開平3−54230号公報
【特許文献5】特開平9−174733号公報
【特許文献6】特開平4−353404号公報
【特許文献7】特開平7−3082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は前記の点に鑑みなされたものであって、高い強度を有し、脆弱性(脆さ)が引くく、伸びの低下が少ない紫外線硬化発泡シートに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させた紫外線硬化発泡シートにおいて、前記紫外線硬化性樹脂原料には、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤およびウィスカーを含み、前記ウィスカーが硫酸マグネシウムウィスカーであることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記硫酸マグネシウムウィスカーの量が前記オリゴマーと希釈剤の合計100重量部に対して3〜30重量部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線硬化発泡シートによれば、紫外線硬化性樹脂原料に硫酸マグネシウムウィスカーを含むため、強度を高くすることができると共に、脆弱性(脆さ)が低く、伸びの低下を抑えることができた。
【0010】
以下この発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の紫外線硬化発泡シートは、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤および硫酸マグネシウムウィスカーを含む紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させたものである。
【0011】
オリゴマーは、末端にアクリレート基またはメタクリレート基を持ち、直鎖部分がポリウレタン、エポキシ、ポリエーテル、ポリエステル、シロキサン等からなるものが用いられる。オリゴマーの分子量は8,000〜40,000が好ましい。このような高分子量のオリゴマーを用いることで紫外線硬化発泡シートの伸びが良くなる。前記オリゴマーの製造は、公知のプレポリマー製造方法と同様の方法により行うことができる。例えばウレタンアクリレートオリゴマーの場合、脂肪族または脂環式イソシアネートと、ポリオールと、イソシアネート基を有するアクリル酸エステル系単量体から製造される。具体的には、所定温度(例えば80℃)に加熱したタンクに前記ポリオールを所定量投入し、窒素を充填した状態で攪拌しながら、イソシアネートとイソシアネート基を有するアクリル酸エステル系単量体とを所定量投入して反応させることにより行われる。なお、市販のオリゴマーを使用することもできる。
【0012】
希釈剤には光重合可能なモノマーが用いられる。例えば、単官能のものではイソアミルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸等が、2官能のものでは、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等、その他3官能以上のものとしてはトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が用いられる。なお、希釈剤の量は、オリゴマーと希釈剤の合計100重量部中に20〜40重量部含まれるのが好ましい。20重量部より少なくなると強度が低下し、一方、40重量部より多くなると柔軟性が悪くなるため、強度を高く、かつ柔軟性を良好にするには、20〜40重量部の範囲が好ましい。
【0013】
紫外線重合開始剤は、オリゴマーの重合反応を開始させるものであり、紫外線によりフリーラジカルを生成する。紫外線重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン系、アミノアセトフェノン系、アシルアセトフェノン系、オキシムアセトフェノン系等を用いることもできる。
【0014】
整泡剤は、機械的な発泡時(起泡時)に気泡の安定化、気泡の微細化等を行うものであり、界面活性剤を挙げることができる。特にシロキサン部とエーテル部とからなり、エーテル部を側鎖に有するペンダント型構造の整泡剤は、起泡性、泡安定性(起泡後の泡の維持性)が良好なため、縞模様発生防止効果が高くなり、好ましいものである。
【0015】
硫酸マグネシウムウィスカーは、MgSO・5Mg(OH)・3HOで表される塩基性の硫酸マグネシウムの針状粒子である。本発明において硫酸マグネシウムウィスカーの添加による強度向上は、前記化学構造で示される5Mg(OH)部分の樹脂とのイオン架橋による強度向上の相乗効果もあると考えられる。硫酸マグネシウムウィスカーは、無色、白色〜淡色であり、紫外線硬化性樹脂原料に紫外線を照射した際に、紫外線が紫外線硬化性樹脂原料に透過し易く、硬化を妨げるおそれがない。前記硫酸マグネシウムウィスカーは、平均繊維長10〜30μm、平均繊維径0.5〜1.1μmのものが好ましい。平均繊維長が10μm未満の場合は強度向上効果が小さくなり、一方、30μmを超えると紫外線硬化性樹脂原料の粘度上昇が高くなってウィスカーを紫外線硬化性樹脂原料に均一に混合するのが難しくなると共に、強度向上効果も期待できなくなる。より好ましい硫酸マグネシウムウィスカーは、前記平均繊維長及び前記平均繊維径の範囲にあって、かつ平均アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)が30〜60のものである。前記アスペクト比が前記範囲より小であると強度向上効果が得難くなり、一方前記範囲より大であると紫外線硬化性樹脂原料の粘度上昇が高くなってウィスカーを紫外線硬化性樹脂原料に均一に混合するのが難しくなると共に、特に発泡体であるが故に泡の保持が妨げられ、均一な発泡体を得るのが困難となる。強度向上効果も期待できなくなる。また、前記硫酸マグネシウムウィスカーの量は、前記オリゴマーと希釈剤の合計100重量部に対して3〜30重量部、より好ましくは3〜10重量部である。前記硫酸マグネシウムウィスカーの量が前記範囲よりも少ないと、硫酸マグネシウムウィスカーによる強度向上効果が得られなくなり、一方前記範囲より多いと、紫外線硬化性樹脂原料の粘度上昇が著しくなってウィスカーを紫外線硬化性樹脂原料に均一に混合するのが難しくなり、また、紫外線硬化発泡シートの生産性が劣るようになる。なお、本発明において、硫酸マグネシウムウィスカーは、フィラーの一つとして用いられており、他のフィラー例えば、無機フィラーであるシリカや炭酸カルシウム等と併用してもよい。
【0016】
その他、紫外線硬化性樹脂原料には着色剤が含まれることもある。着色剤は、紫外線硬化発泡シートに求められる色のものが用いられる。例えば、紫外線硬化発泡シートを白色とする場合には白色の着色剤が用いられる。
【0017】
図1に前記紫外線硬化発泡シートのための製造装置10を示す。製造装置10は、下側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段と、紫外線硬化性樹脂原料の機械発泡・塗布手段と、上側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段と、紫外線照射手段と、紫外線硬化発泡シートの巻き取り手段とよりなる。
【0018】
下側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段は、下側プラスチックフィルム11が巻かれた下側プラスチックフィルム供給ロール13から下側プラスチックフィルム11を巻き戻して上方へ供給し、供給側下側ロール14で略水平方向へ向きを変えて所定距離供給した後に巻き取り側下側ロール15で下方へ向きを変え、後述の紫外線硬化発泡シートAの下面から剥がして下側プラスチックフィルム巻き取りロール16で巻き取るように構成されている。
【0019】
紫外線硬化性樹脂原料の機械発泡・塗布手段は、前記供給側下側ロール14付近において、前記略水平方向に供給される前記下側プラスチックフィルム11の上面に発泡(起泡)後の紫外線硬化性樹脂原料Pを吐出する機械発泡装置21で構成される。前記機械発泡装置21は、外部から供給される不活性ガスを紫外線硬化性樹脂原料に混合攪拌して紫外線硬化性樹脂原料を発泡(起泡)させるオークスミキサー、ホバートミキサー等の各種ミキサーを備え、発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pを、略水平方向に供給されている下側プラスチックフィルム11の上面に吐出可能となっている。なお、機械発泡装置21としては、攪拌によって紫外線硬化性樹脂原料にガスを巻き込んで紫外線硬化性樹脂原料を発泡(起泡)させることができ、かつ発泡(起泡)状態で吐出可能なものであれば、制限なくする使用することができる。不活性ガスは、常温常圧で気体状態のものであって、紫外線硬化性樹脂を劣化させないものであれば、特に限定されない。例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム等の無機ガスや、フロンガス、低分子量の炭化水素等の有機ガスが挙げられる。不活性ガスの供給量は適宜決定されるが、窒素ガスの場合の供給量は1〜10L/minが好ましい。
【0020】
上側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段は、上側プラスチックフィルム31の巻かれた上側プラスチックフィルム供給ロール33と、ナイフコーター34と、巻き取り側上側ロール35と、上側プラスチックフィルム巻き取りロール36とで構成される。
【0021】
前記上側プラスチックフィルム供給ロール33は、前記下側プラスチックフィルムの供給・巻き取り手段の上方に設けられている。前記上側プラスチックフィルム供給ロール33から巻き戻された上側プラスチックフィルム31は、略水平方向へ供給されている前記下側プラスチックフィルム11の近くまで供給され、発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの上面に積層される。
【0022】
前記ナイフコーター34は、前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの上面に積層された上側プラスチックフィルム31の上面に下端が接触し、前記上側プラスチックフィルム31の向きを略水平方向に変えると共に、前記下側プラスチックフィルム11と上側プラスチックフィルム31間における前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの厚みを調整する。前記ナイフコーター34の下端は、前記下側プラスチックフィルム11との間隔が、目的とする紫外線硬化発泡体Aの厚みと略等しくされる。正確には、紫外線硬化発泡シートAの厚みに上側プラスチックフィルム31の厚みを加算した値と略等しくされる。前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの厚みは、適宜の値とされるが、0.1〜3.0mmが好ましい。この範囲とすることで、後述の紫外線照射時に紫外線が前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの一側から反対側まで透過し、均一な気泡分布の紫外線硬化発泡シートAを得やすくなる。すなわち、前記厚みが0.1mm未満の場合、酸素阻害性による影響が大きくなり、十分に硬化した発泡シートが得られなくなる。一方、3.0mmを超えると紫外線の透過性が悪く、発泡シート内部まで十分に硬化しなくなる。
【0023】
前記巻き取り側上側ロール35は、前記供給側下側ロール14の上方に設けられ、前記上側プラスチックフィルム31の向きを上方に変えて紫外線硬化発泡シートAの上面から剥がすようにされている。
【0024】
前記上側プラスチックフィルム巻き取りロール36は、前記巻き取り側上側ロール35によって上方へ向きが変えられた上側プラスチックフィルム31を巻き取る。
【0025】
前記下側プラスチックフィルム11および前記上側プラスチックフィルム31は前記巻き取られた後、繰り返し使用することが可能である。また、前記下側プラスチックフィルム11および前記上側プラスチックフィルム31の少なくとも一方は紫外線透過性のものとされ、より好ましくは両方共、紫外線透過性とされる。本実施例では、前記下側プラスチックフィルム11および前記上側プラスチックフィルム31の両方共、紫外線透過性とされている。前記下側プラスチックフィルム11および上側プラスチックフィルム31は、外気を遮断し、前記紫外線硬化性樹脂に対して剥離可能なものが好ましい。
【0026】
前記紫外線透過性のプラスチックフィルムは、紫外線を透過可能なものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ビニルポリイソプレン、ポリカーボネート等の熱可塑性樹脂からなる透明プラスチックフィルムを用いることができる。さらに、紫外線を透過可能なもの、すなわち透明であれば、これらの樹脂の混合物からなるプラスチックフィルム、あるいはこれらの樹脂の積層フィルムであってもよい。前記下側プラスチックフィルム11および上側プラスチックフィルム31の厚みは25〜100μm程度が好ましい。
【0027】
紫外線照射手段41は、紫外線を照射可能な紫外線ランプ等を備えるもので構成され、前記ナイフコーター34と前記巻き取り側上側ロール35間に設けられて前記下側プラスチックフィルム11および上側プラスチックフィルム31のうち、少なくとも紫外線透過性フィルム側に紫外線を照射可能に構成されている。本実施例では上側プラスチックフィルム31側に紫外線を照射可能とされている。
【0028】
紫外線硬化発泡シートの巻き取り手段は、前記下側プラスチックフィルム11の略水平供給方向前方(進行方向側)において、前記巻き取り側下側ロール15および前記巻き取り側上側ロール35よりも前方位置に設けられた発泡シート向き変更用ロール42と、前記発泡シート向き変更用ロール42により上方へ向きを変えた紫外線硬化発泡シートAを巻き取る紫外線硬化発泡シート巻き取りロール43とで構成されている。
【0029】
前記製造装置10を用いる紫外線硬化発泡シートの製造について説明する。まず、前記下側プラスチックフィルム供給ロール13から下側プラスチックフィルム11を前記機械発泡装置21へ向けて供給し、前記機械発泡装置21から発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pを、前記下側プラスチックフィルム11の上面に吐出、塗布する。本実施例では、前記下側プラスチックフィルム11は紫外線透過可能な透明なものからなる。紫外線硬化性樹脂原料は前記の構成からなる。
【0030】
前記下側プラスチックフィルム11の上面に塗布された発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pの上面に、前記上側プラスチックフィルム供給ロール33から上側プラスチックフィルム31を供給して積層すると共に、前記ナイフコーター34の下端を前記上側プラスチックフィルム31の上面に接触させて前記上側プラスチックフィルム31と下側プラスチックフィルム11間で紫外線硬化性樹脂原料Pの厚みを所定厚みにする。本実施例では前記上側プラスチックフィルム31は紫外線透過可能な透明なものからなる。
【0031】
次に、前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pは、前記下側プラスチックフィルム11と上側プラスチックフィルム31で両面が挟まれた状態で前記紫外線照射手段41へ移動し、前記紫外線照射手段41によって紫外線が照射される。本実施例では、紫外線が透過可能な透明な上側プラスチックフィルム31の上方から前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pに紫外線が照射される。前記紫外線の照射によって前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pが硬化し、紫外線硬化発泡シートAになる。その際、前記発泡後の紫外線硬化性樹脂原料Pは、前記下側プラスチックフィルム11と上側プラスチックフィルムで両面が覆われ、酸素との接触が防止されているため、酸素による重合阻害(いわゆる酸素阻害)により硬化性が悪くなって紫外線硬化発泡シートAの表面が粘着性のべたついたものになるのを防ぐことができる。
【0032】
前記紫外線の照射により紫外線硬化発泡シートAとした後、前記下側プラスチックフィルム11を前記下側プラスチックフィルム巻き取りロール16で巻き取って前記紫外線硬化発泡シートAの下面から剥がすと共に、前記上側プラスチックフィルム31を前記上側プラスチックフィルム巻き取りロール36で巻き取って前記紫外線硬化発泡シートAの上面から剥がし、前記紫外線硬化発泡シートAを紫外線硬化発泡シート巻き取りロール43で巻き取る。これによって、前記紫外線硬化発泡シートAが連続的に製造される。前記紫外線硬化発泡シート巻き取りロール43に巻き取られた前記紫外線硬化発泡シートAは、その後、用途に応じた寸法に裁断されて使用される。なお、前記下側プラスチックフィルム巻き取りロール16に巻き取られた下側プラスチックフィルム11、および前記上側プラスチックフィルム巻き取りロール36に巻き取られた上側プラスチックフィルム31は繰り返し使用可能である。
【実施例】
【0033】
以下、具体的な実施例および比較例について示す。図1に示した製造装置10を用い、表1〜表2に示す配合の紫外線硬化性樹脂原料に窒素ガスを5L/minの供給量で吹き込みながら、オークスミキサー(機械発泡装置21)により攪拌して機械的に発泡させ、発泡後の紫外線硬化性樹脂原料を前記下側プラスチックフィルム11上に塗布し、前記のようにして実施例および比較例の紫外線硬化発泡シート(厚み略1mm)を製造した。ミキサー回転数は400rpm、原料供給量は240g/minである。また、オークスミキサー(機械発泡装置21)の吐出ヘッドは、下側プラスチックフィルム11の幅方向へ往復移動させることなく、下側プラスチックフィルム11の幅方向中央に位置を固定して紫外線硬化性樹脂原料の吐出を行った。なお、表1〜表2における基本配合は、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤および整泡剤からなり、その内容を表3に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
表1〜表2のフィラーは、以下のとおりである。実施例1〜9におけるフィラーは塩基性の硫酸マグネシウムウィスカー、MgSO・5Mg(OH)・3HO、品名:モスハイジ、宇部マテリアルズ株式会社である。一方、比較例1はフィラー無し、比較例2のフィラーは粒状の水酸化アルミニウム、品名:ハイジライト(登録商標)H−21、関東化学株式会社、比較例3のフィラーは繊維状のワラスナイト、CaSiO、住友商事株式会社、比較例4のフィラーはガラス繊維、朝日ファイバーグラス株式会社、比較例5のフィラーはホウ酸アルミニウムウィスカー、品名:アルボレックス、四国化成株式会社、比較例6のフィラーは炭酸カルシウムウィスカー、丸尾カルシウム株式会社である。
【0038】
表3の基本配合におけるオリゴマーAは、ポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートからなるポリウレタンメタクリレート、2官能、分子量20000、自社製、オリゴマーBはポリエーテルポリオールと脂肪族イソシアネートからなるポリウレタンメタクリレート、2官能、分子量10000、自社製、希釈剤(モノマー)Aはモルホリンアクリレート、1官能、分子量141、品名:ACMO、(株)興人製、希釈剤(モノマー)Bは2−アクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、1官能、分子量216、品名:A−SA、新中村化学工業(株)製、紫外線重合開始剤は2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、分子量164.2、品名:Darocur 1173、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、整泡剤はポリエーテル変性ポリシロキサン、ペンダント型、品番:SH192、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製である。
【0039】
なお、実施例1〜実施例5は平均繊維長20μm、平均繊維径0.5μm、アスペクト比40の硫酸マグネシウムウィスカーの添加量を、オリゴマーと希釈剤の合計100重量部に対して3〜30重量部の範囲で変化させた例、実施例6〜実施例8は実施例3の基本配合Aを基本配合B,C,Dに変えた例、実施例9は実施例3の硫酸マグネシウムウィスカーを平均繊維長30μm、平均繊維径0.5μm、アスペクト比60のものに変更した例である。一方、比較例1は、ウィスカー及び他のフィラーを含まない例、比較例2〜比較例6は実施例1〜5と基本配合及びフィラーの添加量を同一とし、フィラーの種類のみを実施例1〜5と異ならせた例である。
【0040】
各実施例および比較例に対して、密度(JIS K 6401準拠)、引張強度(JIS K6251準拠)、伸び(JIS K 6251準拠)、引裂強度(JIS K 6252準拠)を測定した。なお、引張強度によって主に強度を判断し、一方、引裂強度によって主に脆弱性を判断した。測定結果は表1〜表2の下欄に示すとおりである。
【0041】
測定結果から理解されるように、実施例1〜9は、引張強度が1300〜6120kPa、引裂強度が10.66〜25.1N/mmであるのに対して、比較例1〜6は引張強度が440〜1150kPa、引裂強度が3.03〜5.96N/mmであり、実施例1〜9は比較例1〜6よりも引張強度及び引裂強度の何れも向上しているのがわかる。すなわち、実施例1〜9は比較例1〜6よりも高い強度を有し、脆弱性(脆さ)が低いのがわかる。さらに、ウィスカーの種類のみ異なる実施例3と比較例5及び6を比較すると、ウィスカーの種類が硫酸マグネシウムの実施例3が引張強度3030kPa、引裂強度17.36N/mmであるのに対し、ウィスカーの種類がホウ酸アルミニウムの比較例5は引張強度1150kPa、引裂強度5.96N/mm、ウィスカーの種類が炭酸カルシウムの比較例6は引張強度1120kPa、引裂強度4.64N/mmであった。このことから、実施例3のウィスカー、すなわち硫酸マグネシウムウィスカーは、比較例5及び6のウィスカー、すなわちホウ酸アルミニウムウィスカー及び炭酸カルシウムウィスカーよりも強度向上効果が高く、脆弱性(脆さ)が低いことがわかる。また、実施例1〜実施例9の伸びは170〜75%であり、伸びが向上、あるいは伸びの低下が抑えられていることがわかる。特に、硫酸マグネシウムウィスカーの量が3〜10重量部の実施例1〜3及び実施例6〜9は、伸びが170〜90%であり、シール材、制振材、衝撃緩衝材等の用途として良好なあるいは充分な伸びを有している。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】紫外線硬化発泡シートを連続的に製造する製造装置の概略正面図である。図である。
【符号の説明】
【0043】
11,31 プラスチックフィルム
21 機械発泡装置
41 紫外線照射手段
A 紫外線硬化発泡シート
P 機械的に発泡させた紫外線硬化性樹脂原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化性樹脂原料を機械的に発泡させて紫外線で硬化させた紫外線硬化発泡シートにおいて、
前記紫外線硬化性樹脂原料には、オリゴマー、希釈剤、紫外線重合開始剤、整泡剤およびウィスカーを含み、
前記ウィスカーが硫酸マグネシウムウィスカーであることを特徴とする紫外線硬化発泡シート。
【請求項2】
前記硫酸マグネシウムウィスカーの量が前記オリゴマーと希釈剤の合計100重量部に対して3〜30重量部であることを特徴とする請求項1に記載の紫外線硬化発泡シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−51889(P2009−51889A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217921(P2007−217921)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】