説明

紫外線遮蔽性組成物、その製造方法、それらの使用方法およびそれらを使用した物品

【課題】重合体結合紫外線吸収剤を樹脂などの分散媒体に分散させた、紫外線遮蔽効果に優れ、透明性が高く、耐ブリード性に優れる紫外線遮蔽性組成物の提供。
【解決手段】反応性基を有する紫外線吸収剤と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた重合体結合紫外線吸収剤を分散媒体に分散させてなることを特徴とする紫外線遮蔽性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体結合紫外線吸収剤を樹脂(合成、半合成および天然樹脂を含む)などの分散媒体に分散させた、紫外線遮蔽効果に優れ、透明性が高く、耐ブリード性に優れる紫外線遮蔽性組成物、その製造方法、それらの使用方法およびそれらを使用した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックス成形加工物は、長期にわたって使用または保管する際に、太陽光線、特に紫外線曝露による脆化などによる弾性低下、引張り強度の低下、クラックの発生などの物性の低下、電気的性質の劣化、着色などを引き起こす。同様に、コーティング剤、塗料、オフセットインキ、グラビヤインキ、捺染剤などの被覆剤からなる樹脂塗膜は、上記紫外線曝露により光沢低下、割れ、ブリスター、顔料の変色、褪色などが生じる。また、樹脂製包装材料においては、包装材料が不適切であると、包装された内容物が紫外線などで品質劣化を引き起こす。
【0003】
それらの問題点を改善するために、紫外線吸収剤、特にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが樹脂の劣化防止などに使用されている。また、これらの紫外線吸収剤は、単独で或いは酸化防止剤、ヒンダートアミン系などの光安定剤などと組み合わせて使用されており、また、帯電防止の目的で帯電防止剤が併用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的にこれらの紫外線吸収剤は低分子量化合物であるため、これらを使用するに当たって種々の不都合を生じている。例えば、比較的融点の低い紫外線吸収剤や昇華性の紫外線吸収剤では、これらを含む樹脂の成形加工時や加熱硬化時などの熱加工時、加温状態での保存時或いは使用時などに紫外線吸収剤が昇華、揮発などを起こしたり、温水や酸性、アルカリ性などの水溶液、アルコール、油などの有機溶剤などと接触することによって、樹脂や塗膜中から紫外線吸収剤が抽出されることがあり、紫外線吸収剤の効果を長期にわたって持続することができない場合があった。
【0005】
また、紫外線吸収剤を樹脂と混合する場合、樹脂との相溶性が悪い場合には長期使用中に成型加工品表面や塗装表面に紫外線吸収剤がブリードアウト(ブルーミング現象)を起こし、紫外線吸収剤の樹脂中における有効存在量の減少をもたらすほか、成形加工品などの表面にべたつきを起こしたり、表面の接着性や印刷適性が低下したり、ブリードアウトした紫外線吸収剤が他の物品を汚染するなどの問題点が発生することもある。さらに紫外線吸収剤を樹脂に多量に添加すると、紫外線吸収剤が相分離を起こして樹脂の透明性や機械的強度を低下させることになるため、紫外線吸収剤の樹脂への添加量に制限があり、改善が要求されていた。さらに、紫外線吸収剤は低分子であることから皮膚や粘膜に対する刺激性が見られ、また、紫外線吸収剤が粉体の場合には粉塵の発生など、安全性や衛生性についても注意が必要のものがある。
【0006】
そこで、紫外線吸収剤にメタクリロイル基を付与し、これを他のメタクリルエステルモノマーやスチレンモノマーなどと共重合させて、紫外線吸収剤を高分子量化し、紫外線吸収剤の揮散、溶出などを防止しようとする試みがなされている。しかしながら、上記メタクリロイル基などの重合性基は、一般に保存中などにおいても徐々に重合してしまうことを避けることは困難であった。さらに実用上の問題として、上記の共重合体はアクリル系、メタアクリル系、スチレン、酢酸ビニル系などの共重合体であり、該共重合体は、主要な樹脂であるポリエチレン系、ポリプロピレン系などのポリオレフィン系樹脂、各種ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂など、樹脂の種類によっては上記共重合体が相溶性が充分でないなどの理由で使用範囲に限界があり、広範な汎用樹脂用の物性改良剤としては依然問題点は解決されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、縮合反応性基を有する紫外線吸収剤を、上記反応性基と反応する基を有する重合体に縮合反応により結合させて得られた重合体結合紫外線吸収剤によって、上記の問題点を解決できることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成されたものであり、重合体結合紫外線吸収剤の製造に当たり、互いに反応させる紫外線吸収剤と重合体とを選択することにより、この重合体結合紫外線吸収剤を添加する樹脂類などに対して適正な重合体結合紫外線吸収剤とすることができ、従来の紫外線吸収剤に比べて各種樹脂類などとの相溶性が良く、加工性に優れ、物性的にも熱安定性、耐ブリード性などに優れ、該重合体結合紫外線吸収剤を樹脂などの分散媒体に分散した状態で加工することにより、実用上極めて有用である。
【0008】
すなわち、本発明は、反応性基を有する紫外線吸収剤と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた重合体結合紫外線吸収剤であって、上記紫外線吸収剤が、カルボン酸アルキルエステル基、カルボン酸ハロゲナイド基、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、安息香酸系、ケイヒ酸系およびサリチル酸系の紫外線吸収剤からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、上記重合体が、水酸基、アミノ基、カルボン酸アルキルエステル基およびカルボン酸ハロゲナイド基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合体であり、かつ紫外線吸収剤残基の含有量が5〜95質量%である重合体結合紫外線吸収剤を分散媒体に分散させてなることを特徴とする紫外線遮蔽性組成物、その製造方法、それらの使用方法およびそれらを使用した物品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、該組成物を構成している重合体結合紫外線吸収剤が、従来の紫外線吸収剤に比べて各種樹脂類などとの相溶性が良く、加工性に優れ、熱安定性、耐ブリード性などに優れているため、その加工物品の加工性、熱安定性、耐ブリード性などの物性に優れている。
【0010】
本発明の紫外線遮蔽性組成物の特長は、樹脂や被覆材料の物性劣化改良剤として、使用される樹脂や被覆材料に対し相溶性に優れ、また、組成物の成形加工時やコーティング剤、塗料、インキなどの加熱硬化時などでも紫外線吸収剤が蒸発や昇華せず、水、有機溶媒などへの溶出もなく、紫外線吸収剤が成型品表面や被覆材表面へのブリードアウトを起こさないなどの優れた性質を有すると共に、紫外線吸収剤が高分子量の重合体に結合していることから、安全性、衛生性にも優れているものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
本発明で用いる重合体結合紫外線吸収剤は、反応性基を有する少なくとも1種の紫外線吸収剤と、上記反応性基と縮合反応する基を有する重合体とを縮合反応させることによって得られる。また、場合により反応性基を有する紫外線吸収剤と反応性基を有する酸化防止剤、光安定剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤或いは帯電防止剤などの少なくとも1種の機能剤とを、上記反応性基を有する重合体とを縮合反応させることもできる。
【0012】
紫外線吸収剤または重合体の有する反応性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の酸ハロゲン化物基、カルボキシル基の酸無水物基、カルボキシル基のアルキル(C1〜C12)エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロルトリアジン基およびイソシアネート基などの公知の縮合反応性基が挙げられる。これらの反応性基は、例えば、水酸基とカルボキシル基やその誘導基の組み合わせ(エステル結合)、水酸基とイソシアネート基の組み合わせ(ウレタン結合)の如く組み合わせる。
【0013】
反応性基を有する紫外線吸収剤としては、例えば、3−[3´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−4´−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−5´−メチル−4´−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−5´−エチル−4´−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−5´−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3´−(5″−クロロ−2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−5´−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸、3−[3″−(2″´H−ベンゾトリアゾール−2″´−イル)−4″−ヒドロキシ−5″−(1´,1´−ジメチルベンジル)フェニル]プロピオン酸、3−[3″−(2″´H−ベンゾトリアゾール−2″´−イル)−4″−ヒドロキシ−5″−(1″,1″,3″,3″−テトラメチルブチル)フェニル」プロピオン酸、4−[3´−(2″´H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−3´−ヒドロキシフェニキシ]酪酸、または2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール系化合物、例えば2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、ハロゲン原子が置換した5´−クロロ−2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、5´−ブロモ−2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールなど、またはベンゾトリアゾール基にC1〜C5までのアルキル基が1つまたは2つ置換した5´−メチル2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、5´−tブチル−2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、5´,6´−ジメチル−2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールなど、またはベンゾトリアゾール基にC1〜C5までのアルコキシ基が置換した5´−メトキシ−2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、および5´−n−ブトキシ−2−(2´,4´−ジヒドロキシフェニル)2H−ベンゾトリアゾールなどに、環状エステル化合物、例えばβ−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどを開環反応させた化合物または開環縮合させた化合物、具体的には3−[4´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−3´−ヒドロキシフェノキシ]プロピオン酸、4−[4´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−3´−ヒドロキシフェノキシ]ブタン酸、6−[4´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−3´−ヒドロキシフェノキシ]ヘキサン酸などの開環反応物、または末端に[4´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−3´−ヒドロキシフェノキシ]が結合したポリブチロラクトンやカプロラクトンなどおよびそれらの酸クロライド化物などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の誘導体が挙げられる。
【0014】
また、別の紫外線吸収剤としては、例えば、2−{4″−[(2″′−クロルカルボニル−プロピオニルオキシ)−3″′−ドデシルオキシプロピルオキシ]−2″−ヒドロキシフェニル}−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2″−ヒドロキシ−3″−メチルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2″−ヒドロキシ−3″−イソプロピルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2″−ヒドロキシ−3″−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、または2−[4′−[(2″−ヒドロキシ−3″−テトラデシルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2″−ヒドロキシ−3″−オクチロイルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2″−ヒドロキシ−3″−プロピロイルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2″−カルボキシプロピオキシ−3″−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4′−[(2′−フタリロキシ−3′−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2′−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなど、それらのジカルボン酸ハーフエステル誘導体、それらの酸クロライド化物などのトリアジン系紫外線吸収剤の誘導体が挙げられる。
【0015】
2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−nオクトキシベンゾフェノン、4,4′−ジ−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジ−ヒドロキシ−4,4′−ジ−メトキシベンゾフェノン、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸などの安息香酸系、ケイヒ酸、p−メトキシケイヒ酸などのケイヒ酸系、サリチル酸などおよびそれらの酸クロライド化物などの紫外線吸収剤が挙げられる。
【0016】
上記した重合体結合紫外線吸収剤と併用してもよい反応性を有する機能剤として、例えば、酸化防止剤としては、3−(3´,5´−ジ−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸などおよびそれらの酸クロライド化合物などのヒンダードフェノール系酸化防止剤の誘導体;3−3´−チオビスプロピオン酸モノドデシルエステル、3−3´−チオビスプロピオン酸モノオクタデシルエステルなどおよびそれらの酸クロライド化物などの硫黄系酸化防止剤の誘導体が挙げられる。
【0017】
また、光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール、1,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールなどおよびそれらのジカルボン酸ハーフエステル誘導体およびそれらの酸クロライド化合物などのヒンダードアミン系光安定剤の誘導体が挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、例えば、トリス(t−オクチル−ナフタロ)(カルボキシル−フタロ)シアニン・酸化バナジウムコンプレックス、N−(o−カルボキシル−p−ジブチルアミノフェニル)−N,N´,N´−トリス(p−ジブチルアミノフェニル)−p−フェニレンジアミン・6フッ化リン酸塩などの赤外線吸収剤の誘導体が挙げられる。
【0018】
また、帯電防止剤としては、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)モノメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)モノブチルエーテル、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノプロパノール、N,N−ジエチルアミノエトキシ−ポリエチレングリコールなどおよびそれらのジカルボン酸ハーフエステル誘導体およびそれらの酸クロライド化物など、3−ジエチルアミノプロピオン酸、2,3−エポキシプロピル−ジメチルアミン、2,3−エポキシプロピル−トリメチルアンモニウムクロライドなどの帯電防止剤の誘導体などが挙げられる。
【0019】
上記の反応性基を有する紫外線吸収剤などと反応する反応性基を有する重合体としては、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレン−co−プロピレン)、ポリ(エチレン−co−プロピレン−co−α−オレフィン)などのポリオレフィン系重合体、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール−co−プロピレングリコール)、(ポリエチレングリコール)−(ポリプロピレングリコール)ブロック共重合体、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテル系重合体、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンセバケートなどの脂肪族ポリエステル、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリネオペンチルテレフタレートなどの芳香族ポリエステルなどのポリエステル系重合体、6−ナイロン系、6,6−ナイロン系などのポリアミド系重合体、ポリスチレン、スチレン共重合体、ポリビニルブチラールなどのポリビニル系重合体、アクリル酸エステル(共)重合体、メタクリル酸エステル(共)重合体、アクリル−スチレン共重合体などの(メタ)アクリル系(共)重合体、ポリシリコーン系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリ尿素系重合体、エポキシ樹脂、メラミン系樹脂、セルロース系重合体、キトサン系重合体などから選ばれた単独重合体或いは上記の2種またはそれ以上の単量体からなる共重合体或いは上記の重合体からなるブロック共重合体が挙げられる。
【0020】
上記重合体の重量平均分子量は、約3,000〜200,000程度、好ましくは約5,000〜100,000程度である。これらの重合体を用いた重合体結合紫外線吸収剤は、比較的分子量の低い重合体であるが、該重合体よりも著しく低分子量の紫外線吸収剤に比べて、安全性および衛生性に優れ、物品の加工処理工程、保存時或いは使用時において加熱しても揮散せず、ブルーミング現象も起こさず、樹脂との相溶性に優れていることから、樹脂に対して必要量の紫外線吸収剤残基が添加でき、また、添加された樹脂の物性を阻害しないことが特長である。
【0021】
前記重合体の反応性基としては、水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の酸ハロゲン化物基、カルボキシル基の酸無水物基、カルボキシル基のアルキル(C1〜C12)エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロルトリアジン基およびイソシアネート基などである。これらの反応性基は前記紫外線吸収剤の有する反応性基との組み合わせで選ばれる。反応性基の組み合わせとしては、特に水酸基とカルボキシル基またはカルボキシクロリドとの組み合わせが好ましい。
【0022】
上記の反応性基を有する重合体としては、例えば、ポリオレフィン系の反応性重合体としては、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)共重合体、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール−co−酢酸ビニル)共重合体、ポリ(エチレン−co−アクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−アクリル酸メチル)共重合体、ポリ(エチレン−co−メタアクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−メタアクリル酸メチル)共重合体、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール−co−メタアクリル酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−エチルアクリレート−co−無水マレイン酸)共重合体、ポリ(エチレン−co−ブチルアクリレート−co−無水マレイン酸)共重合体、ポリエチレン−無水マレイン酸グラフト共重合体、ポリ(エチレン−co−グリシジルメタアクリレート)共重合体、ポリエチレンモノアルコール、ポリエチレンモノカルボン酸などが挙げられる。ビニルポリマー系や(メタ)アクリルポリマー系などでは、重合体の製造時に反応性を有する単量体を共重合するか、重合後に後処理を行うことによって重合体に反応性基を導入できる。
【0023】
本発明で用いる重合体結合紫外線吸収剤中の紫外線吸収剤残基の含有量は、紫外線吸収剤の重合体に対する結合量が少なければ、実際の使用時のその使用量を増加し、紫外線吸収剤の重合体に対する結合量が多ければ、その使用量は少なくて済む。紫外線吸収剤の重合体に対する結合量は、該残基が結合する重合体の重量平均分子量によっても異なり、一概に規定することはできないが、好ましい紫外線吸収剤の重合体に対する結合量は、重合体結合紫外線吸収剤中の紫外線吸収剤残基の含有量が5〜95質量%になる量である。ここで、紫外線吸収剤残基とは、前記例示の反応性基を有する紫外線吸収剤から反応性基を除いた残りの部分をいう。
【0024】
本発明で使用する重合体結合紫外線吸収剤の製造方法は特に限定されない。例えば、前記重合体および紫外線吸収剤を、それらを溶解する溶剤に溶解し、必要により縮合触媒を用いて、150〜250℃程度の温度で反応させる方法、押出機などの混練機中で上記重合体と上記紫外線吸収剤を溶融下に、必要により縮合触媒を共存させて、反応させる方法が挙げられる。他の重合体結合機能剤の製造方法も上記と同様である。
【0025】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、その用途に応じて重合体結合紫外線吸収剤を分散媒体、例えば、樹脂中に分散させたものであり、該組成物は各種製品の製造に使用される。分散媒体としての樹脂としては、固体状態または溶融状態の樹脂、樹脂の溶液または樹脂の水性分散体が挙げられる。このような樹脂を分散媒体とした本発明の紫外線遮蔽性組成物は、例えば、樹脂成形体、繊維、紙、不織布、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤、インクジェットインク、接着剤または化粧品などの製造時に、それぞれの樹脂、その溶液、ビヒクル樹脂或いは水性分散体などに重合体結合紫外線吸収剤を添加して得られる。これらの組成物は、従来公知のそれぞれの処理方法或いは加工方法で、例えば、成形、紡糸、製紙などで製品化される。各種製品は、成膜、塗布、捺染、印刷、電子写真記録、インクジェットプリンティング、接着などに使用され、形成された加工物品や記録などに改良された紫外線吸収機能などの機能が付与される。
【0026】
上記各種物品は、太陽光線曝露、特に紫外線などの作用による樹脂の脆化などによる弾性低下、引っ張り強度の低下、クラックの発生などの樹脂物性の低下、電気的性質の劣化、着色など、顔料、染料などの色素の変色、褪色などの問題点を解決し、さらに通常の低分子の紫外線吸収剤の有する欠陥である蒸発、揮発や昇華などによる紫外線吸収剤の揮散による機能の低下や、相溶性の限界による添加量の制限、表面へのブルーミング現象による有効添加量の減少や他の物品への汚染や印刷性の阻害、無機系紫外線吸収剤の樹脂(重合体媒体)への添加による透明性の低下などが改良される。また、化粧品の場合はそれを用いて化粧することで人の皮膚が保護される。
【0027】
上記した分散媒体としての樹脂は、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系、ポリスチレン系樹脂、スチレン−アクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−ビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、液晶ポリエステル樹脂(LCP)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)からなる群より選ばれた樹脂または2種以上の樹脂のポリマーブレンド或いはポリマーアロイである。
【0028】
また、上記樹脂にガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズなどのフィラーや難燃剤などを含有させた成形材料も使用される。例えば、PET、PBT、LCP、POM、PA、PPSなどのエンジニアリングプラスチックのガラス繊維入り複合材料或いは難燃剤、発泡剤、抗菌剤、架橋剤などの各種添加剤を添加したものである。
【0029】
また、必要に応じて従来使用されている樹脂用の添加剤、例えば、ポリオレフィン系樹脂微粉末、ポリオレフィン系ワックス、エチレンビスアマイド系ワックス、金属石鹸などを単独で或いは併用して使用することができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など、これらの樹脂にガラス繊維、炭素繊維、半炭化繊維、セルロース系繊維、ガラスビーズなどのフィラーや難燃剤などを含有させた熱硬化性成形材料が挙げられる。
【0030】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、重合体結合紫外線吸収剤を上記の樹脂に対して任意の添加量で添加して得ることが可能であるが、紫外線吸収剤残基の含有量として上記樹脂100部に対して約0.05〜20質量部、好ましくは約0.1〜10質量部の割合で添加するのがよい。また、重合体結合紫外線吸収剤として紫外線吸収剤残基の有する機能と、使用する目的とに応じて、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤のような同種機能剤の組み合わせ、或いは重合体結合紫外線吸収剤と重合体結合光安定剤或いは重合体結合酸化防止剤のような異種機能剤の組み合わせを含め2種以上併用し、相乗効果を得ることができる。
【0031】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、重合体結合紫外線吸収剤を、単独或いは上記の樹脂を加えてミキシングロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ニーダールーダー、単軸押出機或いは多軸押出機などで混練され、シート状のマスターバッチに裁断されるか、ペレタイザーでマスターバッチのペレットとされ、上記の樹脂と共に常法に従いヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラーなどにて混合し、ミキシングロール、射出成形機、押出し成形機、ブロー成形機、インフレーション成形機、圧縮成形機、回転成形機、熱硬化性樹脂成形機などで成形される。
【0032】
上記の方法で成形される物品として容器、フィルム、シート、ブリスター、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品、電気機器部品、文具、家具、日用品などが挙げられる。上記の物品の中で、透明性、紫外線遮蔽性、耐ブリード性が必要な用途の物品、特に耐ブリード性が必要な食品、医療用品、化粧品或いは精密装置部品用の包装フィルム、容器などに本発明の紫外線遮蔽性組成物は適している。
【0033】
本発明の紫外線遮蔽性組成物が適用される繊維材料としては公知の繊維材料が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリアミド繊維、ポリプロピレン系繊維、アクリロニトリル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維などである。加工方法もそれぞれ従来公知の紡糸方法に準じて行われる。紫外線遮蔽性組成物の添加量としては、紫外線吸収剤残基として上記材料100質量部に対して約0.1〜5質量部の割合で添加するのが好ましい。
【0034】
紙材料、不織布材料、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキまたは接着剤に本発明の紫外線遮蔽性組成物を適用する場合にも、従来公知の方法に準じてなされる。加工方法としては従来公知のそれぞれの処理方法、例えば、製紙、成膜、塗布、捺染、印刷することでなされる。塗料としては従来公知のアクリルメラミン系、アルキッドメラミン系、ポリエステルメラミン系、アクリルイソシアネート系、二液ポリウレタン系などの油性溶剤型、アクリルメラミン系、アルキッドメラミン系などの水性溶液型、アクリル樹脂エマルジョン系、フッ素樹脂エマルジョン系などの水性ディスパージョン型、アクリルイソシアネート系、ポリエステルイソシアネート系、ポリエステルエポキシ系などの粉体塗料など、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエステルアクリレート系などの紫外線硬化、電子線硬化塗料などが挙げられる。用途では、金属板用、特に自動車用、コイルコーティング用、建材用、木工用などである。コーティング剤や接着剤も同様な乾式および湿式のタイプが挙げられる。
【0035】
本発明の紫外線遮蔽性組成物が適用される捺染剤としては従来公知のアクリル樹脂エマルジョン系、アクリルスチレン樹脂エマルジョン系、合成ゴム系のタイプが挙げられる。本発明の紫外線遮蔽性組成物が適用される印刷インキとしては、従来公知の輪転、枚葉などのオフセットインキ、プラスチックフィルム・シート用、アルミ箔用、建材・化粧板用などのグラビヤインキ、金属板用インキなどのインキが挙げられる。本発明の紫外線遮蔽性組成物が適用される電子写真現像剤およびインクジェットインクとしては、従来公知のフルカラー、モノカラー、モノクロの乾式現像剤、湿式現像剤、水性、油性、ソリッドタイプのインクジェットインクが挙げられる。特に広告、看板用、外装塗装用などのフルカラー画像の用途に使用される現像剤やインクが挙げられる。
【0036】
上記のそれぞれの材料への紫外線遮蔽性組成物の添加量は使用される用途、目的によって変わるが、ひとつの基準として樹脂固形分100質量部に対する紫外線吸収剤残基として約0.1〜10質量部の割合で添加するのが好ましい。また、紫外線遮蔽性組成物として目的に応じて同種機能或いは異種機能を含め2種以上併用し、相乗効果を得ることができる。
【0037】
一般的に、製品がフィルムのような薄膜や繊維のように細い場合や、材料が劣化し易いものだったり、使用される状況が屋外の塗料のように厳しい環境に曝され、かつ長期にわたる耐久性を期待される時などでは、紫外線遮蔽性組成物の添加量としては多い方の比率で使用することが望ましい。
【0038】
本発明の紫外線遮蔽性組成物を用いる湿式の加工方法としては、加熱攪拌反応槽、混合攪拌反応槽、ディゾルバー混合などが挙げられ、湿式分散による加工方法としてはミキシングロールミル、ニーダー、ボールミル、アトライター、サンドミル、横形媒体分散機、縦形媒体分散機、連続横形媒体分散機、連続縦形媒体分散機などが使用される。乾式の溶解、分散加工方法は上記樹脂で挙げた方法および加工機械が使用できる。
【0039】
上記の樹脂、塗料、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤或いはインクジェットインクなどの物品を着色する場合に使用される色素としては、通常使用されている有機顔料、無機顔料および体質顔料、および染料が使用される。具体的には、例えば、溶性アゾ系顔料、不溶性アゾ系顔料、ポリアゾ系顔料、アゾメチンアゾ系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン−ペリレン系顔料、アゾメチン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ピロロピロール系顔料、蛍光顔料などの有機顔料、カーボンブラック顔料、酸化チタン系顔料、黄色酸化鉄、弁柄、酸化クロム、群青、複合酸化物顔料、硫化亜鉛などの無機顔料、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、硫酸バリウムなどの体質顔料、さらに分散染料、油溶性染料が挙げられ、特に限定されるものではない。
【0040】
色素の変色、褪色などに対する耐久性を改良するために紫外線遮蔽性組成物を併用する方法としては、樹脂用着色組成物、塗料、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤或いはインクジェットインクなどの着色組成物の調製時に紫外線遮蔽性組成物添加する方法や予め色素の製造工程中で色素に紫外線遮蔽性組成物混合処理や被覆処理をし、色素の加工品として準備する方法などで行われる。目的によっては複数の紫外線遮蔽性組成物を併用、処理すること、被覆処理の場合に、本発明の紫外線遮蔽性組成物を微小重合体ビーズ状に加工したり、架橋処理などにより固定化することも有効である。
【0041】
本発明の紫外線遮蔽性組成物に用いる重合体結合紫外線吸収剤は薬用化粧品の日焼け止め製品にも使用される。この場合には、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−ジメチルアミノ安息香酸などの安息香酸系、ケイヒ酸、p−メトキシケイヒ酸などのケイヒ酸系、サリチル酸などおよびそれらの酸クロライド化物などの紫外線吸収剤を前記した反応性重合体に縮合反応させて得られた重合体結合紫外線吸収剤が本発明の紫外線遮蔽性組成物に使用される。このような本発明の紫外線遮蔽性組成物は皮膚に対する安全性が高く、皮膚に有害なUV−A(320〜400nm)およびUV−B(290〜320nm)を効果的に吸収してくれる性能を有し、クリーム、乳液、油、ローションなどの基剤に均一に配合でき、汗や水浴で流れ落ちにくく、さらに安定性が良い。紫外線遮蔽性組成物の配合量としては、皮膚の曝される状況、使用目的や使用する材料などにより一概に決められるものでないが、紫外線吸収剤残基換算で約1〜20質量%で使用される。
【実施例】
【0042】
次に合成例および実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこらの例によって何ら限定されるものではない。なお、文中「部」または「%」とあるのは質量基準である。
【0043】
合成例1(重合体結合紫外線吸収剤−1の合成)
予め3−[3´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−4′−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸を、常法に従い塩素系溶媒中で塩化チオニルと反応させて酸クロライドにした。次いで、温度計、攪拌装置および水分乾燥剤器を有する還流冷却器を備えた反応容器にエチレン−ビニルアルコール共重合体40.0部、トルエン500部、および上記で得た酸クロライドを59.0部を仕込み、加熱溶解させ、5時間半加熱還流させた。放冷後、水200部を加え、炭酸ナトリウムで中和し、イソプロピルアルコール中に注入して反応生成物を析出させ、濾過した。水およびイソプロピルアルコールで十分に洗浄し、乾燥させ、「重合体結合紫外線吸収剤−1」82.3部を得た。
【0044】
生成物は赤外吸収スペクトルおよびNMRで確認した。GPC法による数平均分子量は約3万7千、重量平均分子量は約15万を示した。得られた重合体結合紫外線吸収剤−1の紫外線吸収剤残基の含有量は2−(2″−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−フェノール(以下「BTA」と称する)換算の含有率で示すと34%である。また、ジクロロメタンに100mg/lの濃度の溶液およびその希釈した溶液の紫外可視吸収スペクトルを石英セルを使用して測定したところ、304nmおよび344nmに大きな吸収を示した。
【0045】
合成例2(重合体結合紫外線吸収剤−2の合成)
予め2−{4″−[(2″′−クロルカルボニル−プロピオニルオキシ)−3″′−ドデシルオキシプロピルオキシ]−2″−ヒドロキシフェニル}−4,6−ビス(2′,4′−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン28.6部を溶解したキシレン溶液78.6部を調製した。温度計、攪拌機および還流管を備えた反応容器に合成例1で使用したエチレン−ビニルアルコール共重合体40.0部をキシレン500部に加え、溶解させた。そこへ合成例1で使用した酸クロライド44.4部を仕込み、加熱溶解させ、120℃にて2時間加熱攪拌した。次いで、上記で準備したアジン系紫外線吸収剤のカルボン酸クロライドのキシレン溶液を添加し、130℃で2時間反応を行った。放冷後、イソプロピルアルコール200部および水200部を加え、炭酸ナトリウムで中和し、イソプロピルアルコール中に注入して反応生成物を析出させ、濾過した。水およびイソプロピルアルコールで十分に洗浄し、乾燥させ、「重合体結合紫外線吸収剤−2」を93.9部を得た。
【0046】
生成物は赤外吸収スペクトルおよびNMRで確認した。得られた重合体結合紫外線吸収剤−2の紫外線吸収剤残基の含有量はBTA換算で22%、2−(2′−ヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(フェニル)−1,3,5−トリアジン(以下「TAZ」と称する)換算で12%であり、両者合計の換算含有率は34%である。重合体結合紫外線吸収剤−2を合成例1と同様にジクロロメタンに溶解し、紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、299nmおよび342nmに大きな吸収を示した。
【0047】
合成例3(重合体結合紫外線吸収剤−3の合成)
3−[3´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−5´−tブチル−4′−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸339gとエチレンビニルアルコール共重合体(重量平均分子量3万、エチレン含有量85%、水酸基価187)354gをキシレン200gと共に溶融させ、窒素気流下180〜230℃で7時間反応させ、反応終了後キシレン700gを加え、ついで3Lのイソプロピルアルコールに攪拌しながら加え、樹脂を析出させた。ついで、濾過乾燥し、重合体結合紫外線吸収剤−3(紫外線吸収剤残基含有量30%)を得た。得られた重合体結合紫外線吸収剤の光学分光器で測定した極大吸収波長は305、345nmであった。
【0048】
合成例4(重合体結合紫外線吸収剤−4の合成)
4−[4´−(2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−3´−ヒドロキシフェノキシ]ブタン酸313gとエチレンビニルアルコール共重合体から、合成例3と同様にして重合体結合紫外線吸収剤−4を得た。得られた重合体結合紫外線吸収剤の光学分光器で測定した極大吸収波長は340nmであった。
【0049】
合成例5(重合体結合紫外線吸収剤−5の合成)
3−[3´−(5″−クロロ−2″H−ベンゾトリアゾール−2″−イル)−5´−t−ブチル−4´−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸373gとエチレンビニルアルコール共重合体から、合成例3と同様にして重合体結合紫外線吸収剤−5を得た。得られた重合体結合紫外線吸収剤の光学分光器で測定した極大吸収波長は310、354nmであった。
【0050】
合成例6(重合体結合紫外線吸収剤−6の合成)
2−[4´−[(2″−カルボキシプロピオキシ−3″−ドデキシオキシプロピル)オキシ]−2´−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2´,4´−ジメチルフェニル)−1,3,5トリアジンとエチレンビニルアルコール共重合体から、合成例3と同様にして重合体結合紫外線吸収剤−6を得た。得られた重合体結合紫外線吸収剤の光学分光器で測定した極大吸収波長は290、346nmであった。
【0051】
実施例1(重合体結合紫外線吸収剤のペレットの製造例)
合成例1で得られた重合体結合紫外線吸収剤−1をミキシングロール(ロール表面温度:50℃)で混練し、シートとして引き出し、ペレタイザーで約3×3×2mmの、紫外線吸収剤残基をBTA換算で34%含有する重合体結合紫外線吸収剤のペレットとした。同様にして、合成例2で得られた重合体結合紫外線吸収剤−2をシートとして引き出し、同様にしてペレットとした。
【0052】
実施例2(重合体結合紫外線吸収剤を含むマスターバッチの製造例)
低密度ポリエチレン(比重0.918、MFR:12)86.1部と重合体結合紫外線吸収剤−1の13.9部を高速混合機(ヘンシェルミキサー)で充分混合した後、2軸押出し機を用い、130〜150℃で混練、造粒し、約3×3mmの大きさの円柱状の重合体結合紫外線吸収剤−1を含むマスターバッチを得た。このマスターバッチは紫外線吸収剤残基を5%含有する。同様にして、合成例2で得られた重合体結合紫外線吸収剤−2をポリエチレンと混練、造粒し、紫外線吸収剤残基の換算含有率が5%のマスターバッチとした。
【0053】
同様にして、合成例3〜6で得られた重合体結合紫外線吸収剤−3〜−6を上記のポリエチレンに代えてポリプロピレン樹脂にそれぞれ添加、混練、造粒し、それぞれ紫外線吸収剤残基の換算含有率が5%のマスターバッチとした。
【0054】
同様にして、合成例3で得られた重合体結合紫外線吸収剤−3を上記のポリエチレンに代えてポリブチレンテレフタレート樹脂に添加、混練、造粒し、紫外線吸収剤残基の換算含有率が5%のマスターバッチとした。
【0055】
実施例3
LLD(リニア低密度)ポリエチレン(比重:0.920、MFR:2.1)に実施例2で得られた重合体結合紫外線吸収剤−1を含むポリエチレンマスターバッチを0.5%(樹脂中のBTA換算の含有率で0.1%)に、また、重合体結合紫外線吸収剤−2を含むポリエチレンマスターバッチを0.5%(樹脂中のTAZおよびBTA換算の合計含有率で0.1%)になるように混合機でブレンドし、30m/mのインフレーション押出し機でそれぞれ厚み50μmのフィルムを得た。
【0056】
また、比較のために、2−(3′−t−ブチル−5′−メチル−2′−ヒドロキシ−フェニル)−2H−5−クロル−ベンゾトリアゾール(BTA換算の含有率:67%、以下「公知の紫外線吸収剤−1」と称する)0.15%(樹脂中のBTA換算含有率:0.1%)およびビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(以下「TMP」と称す))セバケート(TMP換算の含有率:59%、以下「公知の光安定剤−1」と称する)0.15%(樹脂中TMP換算含有率:0.09%)を併用して低密度ポリエチレンに添加し、混練し、インフレーション押出し機で厚み50μmのフィルムを得た。
【0057】
重合体結合紫外線吸収剤を含む上記ポリエチレンフィルムの紫外線劣化防止能を見るために耐候性促進試験機(サンシャイン型ウエザオメーター、63℃、スプレイサイクル:12分/時)で耐候試験を行い、フィルムの紫外線劣化の程度をフィルムの伸び率の変化(引張速度:200mm/分)で判定し、公知の紫外線吸収剤−1と公知の光安定剤−1との併用のフィルムと比較した。測定結果を表1に示した。
【0058】
その結果、紫外線吸収剤未添加のフィルムが、特に破断点強度が経時的に大きな劣化が見られたのに対し、紫外線吸収剤成分を添加したものはいずれも変化は少なく、効果が認められた。特に重合体結合紫外線吸収剤を含むフィルムは破断点強度の残率の減少がほぼ10%と著しく少なく、紫外線劣化防止の効果の長期間の持続性に優れていることを示している。公知の紫外線吸収剤にさらに光安定剤を加えたフィルムは破断点強度で20%強低下し、重合体結合紫外線吸収剤を用いた場合に比較して劣る結果を示した。これは添加した公知の機能剤が低分子量であることから、ブルーミングないし揮散し、有効成分の含有量が減少したためと考えられる。
【0059】

【0060】
実施例4
低密度ポリエチレン(比重0.918、MFR:12)にカーボンブラック顔料のマスターバッチ(顔料含有率:30%)3.3%および実施例2の重合体結合紫外線吸収剤−1のポリエチレンマスターバッチをBTA換算の含有率で0.68%になるように、また、別に、重合体結合紫外線吸収剤−2を含むポリエチレンマスターバッチをTAZおよびBTA換算の合計含有率で0.68%になるように混合し、ミキシングロール(ロール表面温度:120℃)で2分間混練し、熱プレス(160℃、100kg/cm2、1分)で成型し、重合体結合紫外線吸収剤−1または−2を含む2種類の約0.15mmの黒色フィルムを得た。また、同様にして公知の紫外線吸収剤−1をBTA換算の含有率で0.68%になるように添加し、混練、成型して約0.15mmの黒色フィルムを得た。
【0061】
得られたフィルムを60℃のキアオーブンで加熱し、紫外線吸収剤のポリエチレンフィルム表面へのブルーミング現象を表面の曇りの状況から調べた。上記の公知の紫外線吸収剤−1を含むフィルムと比較し、表2に表示した。ブルーミング試験を行った結果は重合体結合紫外線吸収剤を使用したポリエチレンフィルムは共に表面へのブルーミング現象を全く示さなかった。公知の紫外線吸収剤−1を使用したフィルムは表面に紫外線吸収剤のブルーミングを大きく起こした。
【0062】

【0063】
実施例5
ポリプロピレン(比重:0.9、MFR:7)と実施例2で得られた重合体結合紫外線吸収剤−3を含むポリプロピレンマスターバッチを、重合体結合紫外線吸収剤−3の濃度がそれぞれ0.5%、1.0%、1.5%になるように混合機でブレンドし、30m/mのインフレーション押出し機でそれぞれ厚み50μmのフィルムを得た。同様に、ポリプロピレン(比重:0.9、MFR:7)と実施例2で得られた重合体結合紫外線吸収剤−4〜6を含むポリプロピレンマスターバッチを、重合体結合紫外線吸収剤の濃度がそれぞれ0.5%、1.0%、1.5%になるように混合機でブレンドし、30m/mのインフレーション押出し機でそれぞれ厚み50μmのフィルムを得た。また、比較のために、公知の紫外線吸収剤−1についてもポリプロピレン(比重:0.9、MFR:7)中の濃度がそれぞれ0.5%、1.0%、1.5%になるように混合機でブレンドし、30m/mのインフレーション押出し機でそれぞれ厚み50μmのフィルムを得た。
【0064】
重合体結合紫外線吸収剤−3〜6を含むポリプロピレンフィルムはいずれも透明性良好で、1週間放置しても、紫外線吸収剤のブリードは見られなかった。それに対し低分子量である「公知の紫外線吸収剤−1」を含むポリプロピレンフィルムにはブリードが見られた。結果は表3に表示した。
【0065】

【0066】
実施例6
ポリエチレンテレフタレート(PET)と実施例2で得られた重合体結合紫外線吸収剤−3を含むポリブチレンテレフタレートマスターバッチを、重合体結合紫外線吸収剤−3の濃度がそれぞれ0.05%、0.1%、0.15%になるように混合機でブレンドし、射出成形機でそれぞれ厚み1〜2mmの成形プレートを得た。また、重合体結合紫外線吸収剤−5についても同様に重合体結合紫外線吸収剤−5の濃度がそれぞれ0.05%、0.1%、0.15%になるように混合機でブレンドし、射出成形機でそれぞれ厚み1〜2mmの成形プレートを得た。得られた成形プレートはいずれも透明でブリードは見られなかった。結果は表4に表示した。
【0067】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の紫外線遮蔽性組成物は、該組成物に含まれる重合体結合紫外線吸収剤が、分散媒体への相溶性、紫外線遮蔽性、耐熱性、耐ブリード性が良好なため、これを加工して得られる物品も透明性、紫外線遮蔽性、耐熱性、耐ブリード性に優れている。
【0069】
分散媒体が樹脂である本発明の紫外線遮蔽性組成物は、例えば、容器、フィルム、シートなどの樹脂成形体、繊維、紙、不織布、塗料、コーティング剤、捺染剤、印刷インキ、電子写真現像剤、インクジェットインク、接着剤または化粧品などの製造時に、それぞれの原料樹脂或いはその溶液、ビヒクル樹脂或いはその溶液または水性分散体などに、重合体結合紫外線吸収剤を従来公知の方法で添加して得られる。これら紫外線遮断性組成物は従来公知のそれぞれの処理方法或いは加工方法で、例えば、成形、紡糸、製紙などで製品化され、該各種製品は、成膜、塗布、捺染、印刷、電子写真記録、インクジェットプリンティング、接着などに使用され、形成された加工物品や記録などに改良された紫外線吸収機能などの機能が付与される。
【0070】
それによって、各種製品は、太陽光線曝露、特に紫外線などの作用による基材の脆化などによる弾性低下、引っ張り強度の低下、クラックの発生などの樹脂物性の低下、電気的性質の劣化、着色など、顔料、染料などの色素の変色、褪色などの問題点を解決し、さらに通常の低分子の紫外線吸収剤の有する欠陥である蒸発、揮発や昇華などによる紫外線吸収剤の揮散による機能の低下や、相溶性の限界による添加量の制限、表面へのブルーミング現象による有効添加量の減少、他の物品への汚染や印刷性の阻害、無機系紫外線吸収剤の樹脂(重合体媒体)への添加による透明性の低下などが改良される。また、化粧品の場合はそれを用いて化粧することで人の皮膚が保護される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基を有する紫外線吸収剤と、該反応性基と反応する基を有する重合体とを反応させて得られた重合体結合紫外線吸収剤であって、
上記紫外線吸収剤が、カルボン酸アルキルエステル基、カルボン酸ハロゲナイド基、水酸基およびアミノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、安息香酸系、ケイヒ酸系およびサリチル酸系の紫外線吸収剤からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、
上記重合体が、水酸基、アミノ基、カルボン酸アルキルエステル基およびカルボン酸ハロゲナイド基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合体であり、
かつ紫外線吸収剤残基の含有量が5〜95質量%である重合体結合紫外線吸収剤を分散媒体に分散させてなることを特徴とする紫外線遮蔽性組成物。
【請求項2】
分散媒体が、樹脂、樹脂の溶液或いは水系分散媒体である請求項1に記載の紫外線遮蔽性組成物。
【請求項3】
樹脂が、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である請求項2に記載の紫外線遮蔽性組成物。
【請求項4】
重合体結合紫外線吸収剤を樹脂中に高濃度で含有する請求項3に記載の紫外線遮蔽性組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の重合体結合紫外線吸収剤を、混練機、混合機または分散機により分散媒体に中に分散させることを特徴とする紫外線遮蔽性組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載の紫外線遮蔽性組成物を成形加工することを特徴とする紫外線遮蔽性樹脂加工物品の製造方法。
【請求項7】
加工物品が、容器、フィルム、シート、パイプ、ホース、チューブ、ビーズ、繊維、自動車部品、電気機器部品、文具、家具または日用品である請求項6に記載の紫外線遮蔽性樹脂加工物品の製造方法。
【請求項8】
請求項2または3に記載の紫外線遮蔽性組成物を、塗布方法、含浸方法または印刷方法で基材に付与することを特徴とする紫外線遮蔽性加工物品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法で得られたことを特徴とする紫外線遮蔽性加工物品。

【公開番号】特開2007−297494(P2007−297494A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125955(P2006−125955)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】