説明

紫外線遮蔽性貼付剤

太陽光線を直射した場合にも薬物が光分解することなく、薬効を十分発現するとともに製剤物性や安全性に優れた貼付剤を提供することを課題とし、本発明は、ポリエステル系支持体の片面に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含有する粘着剤層が設けられた貼付剤であって、該支持体が一般式(1):
【化1】


式中、
及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素またはC〜Cのアルキルであり、Xは、ハロゲン原子である、
で表されるヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体を含有する、前記貼付剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線遮蔽効果に優れた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤は皮膚表面に貼り付けて使用するため、適用部位によっては屋外において太陽光線の照射を受ける場合がある。そのため太陽からの紫外線により分解されやすい化合物を含有する貼付剤においては、基剤中薬物が分解して本来の薬効を発現できなかったり、その光分解物が副作用を誘発したりする等の問題があった。
【0003】
従来、このような紫外線による影響を避ける工夫として、基剤に紫外線吸収剤を添加することが一般的に試みられている。例えば、基剤中に紫外線吸収剤を配合することにより、薬効成分の光分解を抑えた外用剤があるが(例えば、特許文献1参照)、紫外線吸収剤自体が皮膚に接触または吸収されるため安全性が懸念されるという問題があった。また、貼付剤の支持体に紫外線吸収剤を含有させる方法も提案されている(例えば、特許文献2および3参照)。支持体として2層以上からなる積層体を有し、該積層体の少なくとも一層が紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルムからなる経皮吸収貼付剤もある(例えば、特許文献4参照)。また、有機系紫外線吸収剤及び/または無機系紫外線遮断剤で加工した単層の支持体により薬物の光安定性を高めた貼付剤が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0004】
しかしながら、これらは水銀ランプや室内光等の人工光により照射された紫外線を遮蔽する効果は認められるものの、紫外線量の多い季節に太陽光線を直射した際に生じる薬物光分解を十分抑制するには不十分であり、さらに衣服や保護カバーにより貼付剤を覆うなどの補助手段が必要であるという欠点があった。
【0005】
【特許文献1】:特公平5−8169号公報
【特許文献2】:特公平3−76285号公報
【特許文献3】:実開平5−30118号公報
【特許文献4】:特開平10−265371号公報
【特許文献5】:WO01/68061公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、紫外線量の多い季節に太陽光線を直射した場合にも薬物が光分解することなく、薬効を十分発現するとともに製剤物性や安全性に優れた貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねる中で、ポリエステル系伸縮性支持体をある特定のヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体により紫外線遮蔽加工することにより、貼付剤中の薬物の光分解を顕著に抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリエステル系支持体の片面に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含有する粘着剤層が設けられた貼付剤であって、該支持体が一般式(1):

【0009】
式中、
及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素またはC〜Cのアルキルであり、Xは、ハロゲン原子である、
で表されるヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体を含有する、前記貼付剤に関する。
【0010】
また、本発明は、支持体が、さらに酸化チタンを含有することを特徴とする、前記貼付剤に関する。
さらに、本発明は、支持体の紫外線透過率が、2%以下であることを特徴とする、前記貼付剤に関する。
また、本発明は、支持体の目付が、100g/m〜130g/mであることを特徴とする、前記貼付剤に関する。
【0011】
さらに、本発明は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が、ケトプロフェンであることを特徴とする、前記貼付剤に関する。
また、本発明は、粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および/またはポリイソブチレンからなることを特徴とする、前記貼付剤に関する。
さらに、本発明は、粘着剤層が、紫外線吸収剤を含有しないことを特徴とする、前記貼付剤に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の貼付剤は、ポリエステル系支持体を特定のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤で処理することにより、支持体の紫外線透過率を驚くほどに低くすることができ、紫外線量の多い季節に太陽光線を直射した際にも、薬効を十分発現する。従って、紫外線に対する安定性の悪い非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)に好適に用いることができる。また、粘着剤層が紫外線吸収剤を含有しない場合であっても、粘着剤層の劣化がなくその安定性に優れ、また紫外線吸収剤自体が皮膚に接触しないため、安全性にも優れたものである。
本発明の貼付剤は、紫外線強度が3mW/cmの条件下での支持体の紫外線透過率が、好ましくは2%以下である。なお、上記紫外線量は、季節や地域により変動が認められ、一例として2002年8月22日の佐賀県鳥栖市における日中の紫外線強度を後述の方法により測定したところ、2.9mW/cmであり、1日あたりの累積紫外線量は81936mJ/cmであったのに対し、同地域の2002年11月5日の紫外線強度は、1.6mW/cm、累積紫外線量は47340mJ/cmであった。即ち、本発明の貼付剤は、紫外線量の多い季節の強い紫外線強度下であっても、従来にないほど紫外線透過率を低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の貼付剤は、主に、硬膏剤(テープ剤)に用いることができる。
本発明の貼付剤は、ポリエステル系支持体にベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤をそれぞれ吸着、吸収、固定若しくは支持体を構成する繊維に練り込ませる等して含有させたものである。上記本発明のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤は、式(1)で表されるベンゾトリアゾール誘導体であり、R及びRは水素または低級アルキル基を表し、ポリエステル系支持体の加工のし易さの点で、C〜Cのアルキル基であることが好ましく、メチル又はt−ブチルであることが更に好ましい。
Xは、ハロゲン原子を表し、フッ素、臭素、塩素のいずれかであることが好ましく、ポリエステル系支持体の加工のし易さの点で、塩素であることが特に好ましい。
また、R及びRは同一または異なってもよい。
【0014】

具体的には以下の化合物が挙げられる。すなわち、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0015】
これらベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた紫外線遮蔽加工としては、単層からなる貼付剤用支持体の材料である繊維または布帛に該吸収剤を吸着、吸収または固着させる方法が用いられる。または、上記支持体材料である繊維の製造工程(重合または紡糸工程)で、ポリマーに該吸収剤を添加または練り込んで改質し、その後改質ポリマーを繊維化して支持体用部材としてもよい。
これらベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の支持体への配合量は支持体全体(吸収剤を含む)の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、さらに好ましくは1〜2質量%である。
【0016】
さらに本発明に用いられる支持体の紫外線遮蔽効果を得るために、紫外線遮蔽剤である金属酸化物で処理してもよく、具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、タルク、カオリン、アルミナ、炭酸カルシウムより選ばれる1種または2種以上を配合することができる。特に酸化チタンを用いて加工するのが好ましい。
これら無機系遮蔽剤を用いた紫外線遮蔽加工としては、繊維の製造工程(ポリマーまたは紡糸工程)で、ポリマー中に無機系遮蔽剤を添加または練り込んで改質した後、繊維化する方法が一般に用いられる。
その配合量は支持体全体の質量に対し0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%で配合することが好ましく、これらの配合割合にすることにより紫外線に対する遮蔽効果を十分に発揮することができる。
【0017】
支持体の材質は、ポリエステル系の基布であり、具体的には、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。これらを織布、編み布、不織布あるいはフィルムなどに加工して用いることができる。
【0018】
支持体の目付は、紫外線の透過率、皮膚への使用感を考慮すると、好ましくは、100g/m〜130g/mであり、さらに好ましくは、105g/m〜120g/mである。
【0019】
本発明に用いられる支持体の紫外線透過率は、紫外線強度が3.0mW/cmの条件下で好ましくは、2.0%以下、より好ましくは、1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。なお、紫外線強度の測定には、紫外線強度計(株式会社トプコン、UVR−2)を用い、受光部には、UD−36を使用し、測定波長域は、310〜400nmである。紫外線透過率の算出は、支持体に対して直射日光が十分照射される環境下にて、支持体を透過する紫外線量を測定し、上記製剤のない場合の紫外線強度を100としてそれぞれの透過率を算出する。
【0020】
本発明の貼付剤に用いられる非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、ケトプロフェン、ジクロフェナク、スプロフェン、ピロキシカム、インドメタシン、フルルビプロフェン、フェルビナク、ロキソプロフェン、イブプロフェン、ケトロラク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、カルプロフェン、フェノプロフェンまたはそれらの塩が挙げられ、これらの薬物を1種または2種以上配合することができる。これらの非ステロイド系抗炎症薬のうち、ケトプロフェンが最適である。非ステロイド系抗炎症薬の配合割合は、薬物を含む基剤総量基準で0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜16質量%であり、医学的に許容される無機塩または有機塩の形態も含まれ、この配合割合にすることにより薬効を十分に期待することができる。
【0021】
本発明の貼付剤に用いる基剤としては、ゴム系基剤が好ましく、ゴム系基剤としては、合成ゴムあるいは天然ゴムとしてポリイソプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0022】
なお、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体は、紫外線に対して劣化しやすく、光安定性が悪いため、本発明に用いられる支持体を好適に用いることができる。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を用いた場合には、重量平均分子量が100,000〜300,000であることが好ましく、例えばクレイトンD−KX401CSまたはD−1107CU(シェル化学株式会社製)、SIS−5000またはSIS−5002(日本合成ゴム株式会社製)、クインタック3530、3421または3570C(日本ゼオン株式会社製)、ソルプレン428(フイリップペトロリアム株式会社製)が挙げられる。基剤にはこれらスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を1種または2種以上配合することができ、その配合量は、凝集力、作業性を考慮すると、基剤総量基準で好ましくは10〜50質量%、より好ましくは13〜40質量%、さらにより好ましくは15〜30質量%の範囲である。
【0023】
本発明の貼付剤の基剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体として前記した重量平均分子量を有するものを、前記した配合割合で含有すること、より好ましくはさらに粘度及び粘着力を調整することにより、皮膚への付着性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される。
【0024】
また、本発明の貼付剤の基剤は、ポリイソブチレンを配合してもよく、その配合量は基剤総量基準で好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜40質量%である。なお、平均分子量の異なる2種以上のポリイソブチレンを組合わせて使用してもよく、例えば、粘度平均分子量(Staudinger法)が5,000〜15,000のポリイソブチレンと、粘度平均分子量が50,000〜200,000のポリイソブチレンとの組合わせが好ましい。そして、これらのポリイソブチレンを特定の割合で配合することがさらに好ましい。
【0025】
粘度平均分子量が5,000〜15,000のポリイソブチレンとしては、ビスタネックスLM−MS及びLM−MH(エクソン化学株式会社製)、テトラックス4T、5T及び6T(日本石油化学株式会社製)、オパノールB12SF及びB15SF(BASFジャパン株式会社製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上をテープ剤基剤に配合することができる。その配合量は、基剤総量基準で好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。
【0026】
粘度平均分子量が50,000〜200,000のポリイソブチレンとしては、ビスタネックスMML−80、MML−100、MML−120及びMML−140(エクソン化学株式会社製)、オパノールB80、B100、B120及びB150(BASFジャパン株式会社製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上をテープ剤基剤に配合することができる。その配合量は基剤総量基準で好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%であり、これらの配合割合にすること、より好ましくはさらに粘度及び粘着力を調整することにより、基剤の粘着力、長時間の皮膚への付着性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される。
なお、粘度平均分子量が異なるポリイソブチレンを2種以上配合するときは、ポリイソブチレン全体量が基剤総量基準で50質量%を超えないことが好ましい。
【0027】
本発明に係る好ましい粘着性基剤は、スチンン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン、粘着付与剤及び可塑剤を含有し、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソブチレン及び粘着付与剤を所望の割合で混合した後、この混合物を可塑剤により前記の粘度になるように調整して得ることができる。本発明の貼付剤の粘着力は、主として粘着性基剤の組成を調整することにより調整することができる。
【0028】
粘着付与剤としては、軟化点が60℃〜150℃のものが好ましく、例えばロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン酸変性ロジンエステル、ポリテルペン樹脂、石油樹脂を用いることができ、具体的にはエステルガムA、AA−G、H、またはHP(荒川化学株式会社製)、ハリエスターL、S、またはP(播磨化成株式会社製)、パインクリスタルKE−100、またはKE−311(荒川化学株式会社製)、ハーコリンD(理化ハーキュンス株式会社製)、フォーラル85、または105(理化ハーキュレス株式会社製)、ステベライトエステル7、または10(理化ハーキュレス株式会社製)、ペンタリン4820、または4740(理化ハーキュレス株式会社製)、アルコンP−85、またはP−100(荒川化学株式会社製)、エスコレッツ5300(エクソン化学株式会社製)、クリアロンK、M、またはP(ヤスハラケミカル株式会社製)等が挙げられ、これらの1種または2種以上を粘着性基剤に配合することができる。粘着付与剤の配合量は、基剤総量基準で好ましくは5〜50質量%、より好ましくは7〜45質量%、さらにより好ましくは10〜40質量%であり、基剤の粘度及び粘着力が前記した範囲になるように調整される。この配合割合にすることにより、得られる基剤の粘着力、皮膚への付着性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれ等が大きく改善される。
【0029】
可塑剤としては、溶液粘度が10〜100センチストークス(40℃)のものが好ましく、例えばアーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油、オレフィン酸、流動パラフィンが挙げられ、これらを1種または2種以上粘着性基剤に配合することができる。その配合割合は基剤総量基準で好ましくは10〜70質量%、より好ましくは15〜60質量%、さらにより好ましくは20〜55質量%であり、基剤の粘度及び粘着力が前記した範囲になるように調整される。この配合割合にすることにより、得られる基剤の粘着力、皮膚への付着性、薬物の基剤中均一分散性、剥離時の痛み、角質層へのダメージ、皮膚のかぶれ及び熱安定性等が大きく改善される。
【0030】
本発明の貼付剤の基剤は、従来公知の充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶解剤等を含有することができる。充填剤としては、たとえば酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、シリカ類、酸化マグネシウム、ステアリン酸金属塩類等が用いられる。酸化防止剤としては、たとえばアスコルビン酸、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル等が用いられる。紫外線吸収剤としては、たとえば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、サリチル酸グリコール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が用いられるが、皮膚への安全性を考慮すると含有しないのが好ましい。溶解剤としては、たとえばオレイン酸、ベンジルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、クロタミトン、オレイルアルコール、ユーカリ油、リモネン、イソプレゴールまたはその他の製油類が用いられる。また、界面活性剤、油脂、高級脂肪酸、着香剤等を必要に応じて含有することができる。更に、L−メントール、カンフル、ハッカ油、トウガラシエキス、カプサイシン、ニコチン酸ベンジル、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等の皮膚刺激剤(カウンターイリタント)を必要に応じて適宜配合することもできる。
【0031】
次に、本発明の貼付剤の製造方法について説明する。一例として、まずスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンに、粘着付与剤及び可塑剤を加えて粘度及び粘着力を調整し、任意に充填剤及び酸化防止剤等を所定の割合で加え混合物となし、これを窒素ガス雰囲気下で加熱攪拌して溶解物とする。攪拌時の温度は110〜200℃であり、攪拌時間は30〜120分間である。次に、薬効成分を前記溶解物の攪拌時に温度が110〜200℃の範囲内で添加し、1〜30分間混合して均一な溶解物を得る。次に、この溶解物を通常の方法で直接、紫外線吸収剤及び/または紫外線遮蔽剤にて特殊加工した支持体に展延した後、剥離被覆物で覆うか、あるいは一旦剥離被覆物に展延した後、支持体で覆い圧着転写させてもよい。剥離被覆物は剥離処理を施した剥離紙、セロファン、またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等のフィルムから適宜選択できる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。尚、実施例において、「%」は、全て質量%を意味する。
【0033】
テープ製剤1(実施例1)
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(クレイトンD−1107CU:シェル化学製)22質量部、ポリイソブチレン22質量部(オパノールB80:BASF製)、水添ロジンエステル(ステベライトエステル:理化ハーキュレス製)12質量部、流動パラフィン(クリストールJ−352:エッソ石油製)40質量部、ジブチルヒドロキシトルエン1質量部を、窒素ガス雰囲気下110〜200℃の温度範囲で撹拌しながらケトプロフェン3質量部を添加し、更に5〜30分混合して均一な溶解物を得て、テープ用基剤とした。次に基剤を70cmあたり1gとなるように、シリコーン処理したポリエステルフィルムに展延した。
【0034】
一方、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)1質量部を目付け約110g/mのポリエステル織布99質量部に吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得た。上記フィルム上の展延基剤をこの支持体で覆って圧着転写させ、所望の大きさに裁断しテープ剤とした。
【0035】
テープ製剤2(実施例2)
2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)2質量部をポリエステル織布98質量部に吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得たこと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0036】
テープ製剤3(実施例3)
2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)3質量部をポリエステル織布97質量部に吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得たこと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0037】
テープ製剤4(実施例4)
酸化チタン1.5質量部をポリエステル樹脂97.5質量部に練り込んだ織布に、更に2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)1質量部を吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得たこと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0038】
テープ製剤5(実施例5)
酸化チタン1.5質量部をポリエステル樹脂96.5質量部に練り込んだ織布に、更に2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)2質量部を吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得たこと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0039】
テープ剤製6(実施例6)
酸化チタン0.1質量部をポリエステル樹脂97.9質量部に練り込んだ織布に、更に2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)2質量部を吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得たこと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0040】
テープ剤製7(実施例7)
酸化チタン0.2質量部をポリエステル樹脂97.8質量部に練り込んだ織布に、更に2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(TINUVIN 326:ナガセ化成製)2質量部を吸着させ、紫外線遮蔽加工した支持体を得たこと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0041】
テープ製剤8(比較例1,3)
ポリエステル織布に紫外線遮蔽加工を行わない(未処理)こと以外は、実施例1と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0042】
テープ製剤9(比較例2)
ポリエステル織布の紫外線遮蔽加工に用いる紫外線吸収剤を2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールに代えたこと以外は、実施例2と同様にしてケトプロフェンテープ剤を得た。
【0043】
光透過試験
各テープ製剤1〜9(実施例1〜7、比較例1〜3)に使用した支持体について光透過性拭験を行った。まず、直射日光下で紫外線強度計(株式会社トプコン、UVR−2)により紫外線強度を測定した。このときの受光部には、UD−36を使用し、測定波長域は、310〜400nmであった。次に各支持体に対して直射日光が十分照射される環境下にて、支持体を透過する紫外線量を測定し、上記支持体のない場合の紫外線強度(実施例1〜5、比較例1及び2約3.0mW/cm、実施例6〜7、比較例3約1.6mW/cm)を100とした時の紫外線透過率を算出し光透過性試験とした。
【0044】
光安定性試験1
各テープ製剤1〜9(実施例1〜7、比較例1〜3)について以下の通り、薬物の光安定性試験を行った。すなわち、各テープ製剤の支持体面を上にして直射日光が十分照射する場所へ放置し、基剤中の薬物残存率を液体クロマトグラフィーにより測定した。なお、実施例1〜5、比較例1および2の試験を実施した2002年8月22日の佐賀県鳥栖市における日中(快晴)の紫外線量は、1時間あたり約10000mJ/cm、照射時間は8時間(累積紫外線量約80000mJ/cm)であり、実施例6および7、比較例3の試験を実施した2002年11月5日〜6日の佐賀県鳥栖市における日中の紫外線量は、1時間あたり約6000mJ/cm、照射時間は15時間(累積紫外線量約85000mJ/cm)であった。
【0045】
光安定性試験2
各テープ製剤の支持体面を上にして直射日光が十分照射する場所へ放置し、試験後(実施例1〜5、比較例1および2:紫外線量1時間あたり約10000mJ/cm、照射時間8時間、累積紫外線量約80000mJ/cm、実施例6および7、比較例3:紫外線量1時間あたり約6000mJ/cm、照射時間15時間、累積紫外線量約85000mJ/cm)における基剤の着色の度合いについて外観を観察した。
【0046】
光安定性試験3
各テープ製剤の支持体面を上にして直射日光が十分照射する場所へ放置し、試験後(実施例1〜5、比較例1および2:紫外線量1時間あたり約10000mJ/cm、照射時間8時間、累積紫外線量約80000mJ/cm、実施例6および7、比較例3:紫外線量1時間あたり約6000mJ/cm、照射時間15時間、累積紫外線量約85000mJ/cm)における基剤の凝集力(べたつき)について外観を観察した。
【0047】
結果を表1にまとめた。

【0048】
官能性試験
テープ製剤5 70cmをボランティア5名のひざに8時間貼付し、付着性、貼付時の違和感について評価し使用性の総合判定を行った。
使用性の評価基準
付着性
全く剥がれていない:◎ 端の部分が剥がれた:○ 1/4以上が剥がれた:△ 1/2以上が剥がれた:×
貼付時の違和感
全く突っ張り感がない:○ やや突っ張り感がある:△ 突っ張り感がある:×
総合判定
使用性に満足:○ 使用性にやや不満:△ 使用性に不満:×
結果を表2にまとめた。
【0049】
[表2]

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の貼付剤は、紫外線遮蔽効果に優れ、紫外線量の多い直射日光を照射した場合であっても、支持体の紫外線透過率を低くすることができ、粘着剤層のシミ出し等の劣化がなく、薬効を十分に発揮することができる。また、紫外線吸収剤自体が皮膚へ接触することがないため、皮膚への刺激性を低減することができ、安全性に優れ、また使用感が優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系支持体の片面に非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を含有する粘着剤層が設けられた貼付剤であって、該支持体が一般式(1):

式中、
及びRは、同一又は異なっていてもよく、水素またはC〜Cのアルキルであり、Xは、ハロゲン原子である、
で表されるヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体を含有する、前記貼付剤。
【請求項2】
支持体が、さらに酸化チタンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
支持体の紫外線透過率が、2%以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の貼付剤。
【請求項4】
支持体の目付が、100g/m〜130g/mであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項5】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が、ケトプロフェンであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の貼付剤
【請求項6】
粘着剤層が、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体および/またはポリイソブチレンからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の貼付剤。
【請求項7】
粘着剤層が、紫外線吸収剤を含有しないことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の貼付剤。

【国際公開番号】WO2004/098575
【国際公開日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【発行日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505983(P2005−505983)
【国際出願番号】PCT/JP2004/006024
【国際出願日】平成16年5月7日(2004.5.7)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【Fターム(参考)】