説明

累進屈折力レンズおよびその製造方法

【課題】歪曲収差を抑制した累進屈折力レンズ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、同第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折面をレンズの内面に形成した累進屈折力レンズにおいて、遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は老視補正用の眼鏡に使用される累進屈折力レンズ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢により眼の水晶体による調節機能が低下し近方視が困難な状態が老視である。この老視に対する矯正用の眼鏡に累進屈折力レンズが使用されている。
一般的に累進屈折力レンズは屈折力のそれぞれ異なる2つの屈折領域と、それら両領域の間で屈折力(度数)が累進的に変わる累進領域とを備えた非球面レンズとされており、境目がなく1枚のレンズで遠くのものから近くのものまで見ることができるものである。ここに2つの領域とはレンズの上方位置に設定された遠用部領域と、レンズの下方位置に設定された近用部領域の2つの領域のことである。遠用部領域と近用部領域との移行帯である累進領域は滑らかかつ連続的に連結されている。
遠用部領域は主として遠距離の物体を目視するための領域であり、近用部領域は主として近距離の物体を目視するための領域であり、累進領域は主として中距離の物体を目視するための領域である。もっとも累進屈折力レンズは屈折力が連続的に変化しているためこれら領域が明確に区画されているわけではない。
【0003】
累進屈折力レンズは光学性能の分布が非対称的であることから球面レンズに比べて像の歪みが顕著である。また、累進屈折力レンズはレンズのベースカーブが浅くなるほどレンズを薄く形成できるものの、歪曲収差や非点収差が大きくなる傾向にあるため、特に薄型の累進屈折力レンズにおいては歪曲収差や非点収差をいかに低減するかが課題であった。
そのため、従来から歪曲収差を改善するための累進屈折力レンズが提案されている。このような累進屈折力レンズの一例として特許文献1を挙げる。
【特許文献1】特開2004−264365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような累進屈折力レンズでは歪曲収差を抑制するには必ずしも十分ではなかった。特に強度の近視や強度の遠視で、かつ加入度の大きな累進屈折力レンズを装用する人には、非球面であることの歪みが顕著に感じられるためにより性能のよい累進屈折力レンズが求められていた。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、歪曲収差を抑制した累進屈折力レンズ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、同第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折面をレンズの内面に形成した累進屈折力レンズにおいて、レンズの外面を回転非対称の非球面形状としたことをその要旨とする。
【0006】
また請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記レンズの外面の回転非対称の非球面形状は、レンズの外面に設定される幾何中心の上部領域の実用域(以下、上部実用域とする)と下部領域の実用域(以下、下部実用域とする)における平均面屈折力が異なることで実現されていることをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項2の発明の構成に加え、前記レンズの幾何中心の上部実用域と下部実用域との平均面屈折力は遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合には上部実用域>下部実用域に設定され、ともにプラスの場合には上部実用域<下部実用域に設定されていることをその要旨とする。
【0007】
また請求項4の発明では請求項3の発明の構成に加え、遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを以下のいずれかのような特性としたことをその要旨とする。
a)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させること
b)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記下部実用域について均等なカーブの曲率とすること
c)前記下部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記上部実用域について均等なカーブの曲率とすること
【0008】
また請求項5の発明では請求項3の発明の構成に加え、遠用度数と近用度数がともにプラスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを以下のいずれかのような特性としたことをその要旨とする。
a)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させること
b)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記下部実用域について均等なカーブの曲率とすること
c)前記下部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記上部実用域について均等なカーブの曲率とすること
【0009】
また請求項6の発明では請求項4又は5に記載の発明の構成に加え、レンズの外面であって、レンズの幾何中心を通る仮想垂直線に対し直交する仮想水平線上に位置する所定の点(X,Y)における平均面屈折力をレンズ内の所定の基準点を基準とした所定の点(X,Y)の方向に基づいた重みを考慮して設定するようにしたことをその要旨とする。
【0010】
また請求項7の発明では請求項1〜6のいずれかの発明の構成に加え、遠用フィッティングポイントにおいて垂直方向に延びる接線に沿った、レンズの上方に向かって15mmの距離にあるレンズ外面上の点をAとし、レンズの下方に向かって15mmの距離にあるレンズ外面上の点をBとした際に、同点A及び点Bにおけるレンズ外面の平均面屈折力P(A)及びP(B)が、以下の関係を満たすことをその要旨とする。
a)遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合
P(B)+0.25 ≦ P(A) ≦ P(B)+ADD
b)遠用度数と近用度数がともにプラスの場合
P(A)+0.25 ≦ P(B) ≦ P(A)+ADD
また請求項8の発明では、請求項1〜請求項7に記載の累進屈折力レンズの製造方法であって、レンズの外面が球面形状であることを前提としてレンズの内面に対する所定の累進特性を発現させるような所定の累進屈折面のデータを設計し、次いで同球面形状のレンズの外面に設定した球面形状データに対して所定の回転非対称の非球面形状のデータを合成する設計をし、レンズの外面を非球面形状とする変形設計に伴って発生する乱視成分及び累進特性の変化を補正する補正値を同累進屈折面のデータに追加的に与えた後、各データに基づいてレンズ両面を成形するようにしたことをその要旨とする。
【0011】
上記のような構成においては、レンズの内面に第1の領域から第2の領域にかけて加入度が徐々に付加されていくように加入勾配が設定された累進屈折力レンズはそのレンズの外面(物体側の面)において回転非対称の非球面形状とされている。このように、レンズの内面(眼球側の面)に累進面を設定するとともにレンズの外面を回転非対称の非球面形状とすることで主として歪曲収差の低減を図ることが可能である。
レンズの外面の非球面形状は好ましくはレンズの外面に設定される幾何中心の上部領域の実用域(以下、上部実用域とする)と下部領域の実用域(以下、下部実用域とする)における平均面屈折力が異なることで実現される。このように、回転非対称の非球面形状として幾何中心を挟んだ上部実用域と下部実用域の平均面屈折力を異なるものとすることで主として歪曲収差の低減を図ることが可能である。
ここに、実用域とは実際にレンズをフレームに入れる(いわゆる枠入れ)際に不要となるレンズ周縁部分を除いた部分をいう。眼鏡レンズとして機能しない周縁部分は格別目的を持った何らの特性も与えずに適当なカーブ構成で形成されることがあるためである。
【0012】
更により具体的には、上部実用域と下部実用域との平均面屈折力は遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合には上部実用域>下部実用域に設定され、ともにプラスの場合には上部実用域<下部実用域に設定されていることが好ましい。
遠用度数と近用度数がともにマイナスのレンズはいわゆる凹レンズであるため、上部実用域と下部実用域ともに負の歪曲特性(物が小さく見える特性)を持つ。そして、遠用度数は近用度数よりもマイナス側の度数であるため、遠用部は大きな、近用部は小さな負の歪曲特性を持つ。したがって、レンズ外面の平均面屈折力を上部実用域>下部実用域とすることで、レンズ上下の歪曲の差を小さくしてバランスを整えるような屈折力を得ることができる。逆に遠用度数と近用度数がともにプラスのレンズはいわゆる凸レンズであるため、上部実用域と下部実用域ともに正の歪曲特性(物が大きく見える特性)を持つ。そして、近用度数は遠用度数よりもプラス側の度数であるため、遠用部は小さな、近用部は大きな正の歪曲特性を持つ。したがって、レンズ外面の平均面屈折力を上部実用域<下部実用域とすることで、レンズ上下の歪曲の差を小さくしてバランスを整えるような屈折力を得ることができる。
すなわち、遠用度数と近用度数がともにマイナスであるか、同様に遠用度数と近用度数がともにプラスであるようなレンズであれば本発明を適用するのに好適である。
【0013】
上記のように凹レンズでは平均面屈折力は上部実用域>下部実用域であることがその特性上好ましいが更に具体的に、遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを以下のいずれかのような特性とすることがより好ましい。
a)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させること
b)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記下部実用域について均等なカーブの曲率とすること
c)前記下部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記上部実用域について均等なカーブの曲率とすること
ここに、幾何中心とはフレームの形に合わせて加工する前のレンズ(丸い形状のレンズ)の幾何中心を意味する。レンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加或いは逓減させる場合に、現実的な非球面サグ量の設定手段としては奇関数(例えば3次関数)によるものが最も簡便で計算が楽である。但し、レンズの上部から下部にかけて曲率の変化が連続的であれば、偶関数やその他の非対称的な関数を組み合わせることも可能である。
【0014】
例えばレンズの外面を球面形状をベースとして、ここに上記のレンズの外面の垂直方向のカーブを合成させるものとする。すると、垂直成分は非球面量が与えられることとなるため歪曲収差は低減されるわけであるが、このときの水平方向の断面形状はベースとなる球面の水平方向の断面形状と同一のままである。
そのため、上記のようなマイナスレンズに対し、レンズの外面であって、レンズの幾何中心を通る仮想垂直線に対し直交する仮想水平線上に位置する所定の点(X,Y)における平均面屈折力を設定するに際してレンズ内の所定の基準点を基準とした所定の点(X,Y)の方向に基づいた重みを考慮することが歪曲収差のさらなる低減の観点から好ましい。
ここに、「レンズ内の所定の基準点」とは最も代表的なものとして遠用フィッティングポイントや幾何中心等が挙げられる。基準点から所定の点(X,Y)の方向に基づいて重みは決定されるのであるが、実際の計算において方向は例えば幾何中心を通る仮想水平線を基準とした偏角θによることが可能である。つまり三角関数(特に正弦関数)や極座標を用いて所定の点(X,Y)における重みを割り当て平均面屈折力を最適な条件に設定することができる。また、方向に加えて基準点から所定の点(X,Y)までの距離に基づいた重みを考慮することも可能である。その場合には基準点から所定の点(X,Y)のベクトルに基づいて計算することも可能である。
【0015】
上記のように凸レンズでは平均面屈折力は上部実用域<下部実用域であることがその特性上好ましいが更に具体的に、遠用度数と近用度数がともにプラスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを以下のいずれかのような特性とすることがより好ましい。
a)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させること
b)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記下部実用域について均等なカーブの曲率とすること
c)前記下部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記上部実用域について均等なカーブの曲率とすること
幾何中心の定義は上記と同様である。レンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加或いは逓減させる場合に、現実的な非球面サグ量の設定手段としては上記と同様奇関数(例えば3次関数)によるものが最も簡便で計算が楽である。但し、レンズの上部から下部にかけて曲率の変化が連続的であれば、偶関数やその他の非対称的な関数を組み合わせることも可能である。
上記と同様このようなプラスレンズに対し、レンズの外面であって、レンズの幾何中心を通る仮想垂直線に対し直交する仮想水平線上に位置する所定の点(X,Y)における平均面屈折力をレンズ内の所定の基準点を基準とした所定の点(X,Y)の方向基づいて設定することが歪曲収差のさらなる低減の観点から好ましい。また、方向に加えて基準点から所定の点(X,Y)までの距離に基づいた重みを考慮することも可能である。
【0016】
更に、遠用フィッティングポイントにおいて垂直方向に延びる接線に沿った、レンズの上方に向かって15mmの距離にあるレンズ外面上の点をAとし、レンズの下方に向かって15mmの距離にあるレンズ外面上の点をBとした際に、同点A及び点Bにおけるレンズ外面の平均面屈折力P(A)及びP(B)が、以下の関係を満たすことが好ましい。
a)遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合
P(B)+0.25 ≦ P(A) ≦ P(B)+ADD
b)遠用度数と近用度数がともにプラスの場合
P(A)+0.25 ≦ P(B) ≦ P(A)+ADD
つまり、遠用フィッティングポイントを挟んだ上下30mmのレンズ外面上の点における2つの点の平均面屈折力の差を0.25(D:ディオプタ)〜ADD(加入度)としたものである。これは上部実用域と下部実用域との平均面屈折力の差の限界を示す1つの指標である。一般的な眼鏡レンズとしては上部及び下部実用域の間隔は30mm程度であるので、この30mmの間隔における上部及び下部実用域の最適な平均面屈折力の差を規定することは有意義である。平均面屈折力の差を0.25Dより大きくとしたのはこれ以下では歪曲収差を低減するだけの光学的意義がなくなるためであり、同じく平均面屈折力の差をADDまで留めたのは主としてレンズの外観上の問題(上部及び下部実用域のカーブの曲率の差が大きくいびつに感じられるため)からである。
【0017】
また、このようにレンズの内面を累進屈折面とし、レンズの外面を回転非対称の非球面形状とした累進屈折力レンズを製造する場合には、まず、レンズの外面には球面を想定しこれに基づいてレンズの内面の累進屈折面を設計することが計算がシンプルとなって好ましい。ところが、レンズの外面の球面形状に回転非対称の非球面形状を合成することに伴って乱視成分が発生することとなる。
これを補正するために、レンズの外面が球面形状であることを前提としてレンズの内面に対する所定の累進特性を発現させるような所定の累進屈折面のデータを設計し、次いで同球面形状のレンズの外面に対する所定の回転非対称の非球面形状のデータを合成する設計をし、レンズの外面が非球面形状となる変形設計に伴って発生する乱視成分及び累進特性の変化を補正する補正値を同累進屈折面のデータに追加的に与えた後、各データに基づいてレンズ両面を成形するようにすることが好ましい。
ここに「回転非対称の非球面形状」とは上記のようにレンズの外面に設定される幾何中心の上部領域の実用域(以下、上部実用域とする)と下部領域の実用域(以下、下部実用域とする)における平均面屈折力が異なる場合や、レンズの幾何中心の上部実用域と下部実用域との平均面屈折力は遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合には上部実用域>下部実用域に設定され、ともにプラスの場合には上部実用域<下部実用域に設定されていることが好ましい。遠用度数と近用度数がともにマイナスであるか、同様に遠用度数と近用度数がともにプラスであるような場合も含む。また、このような上部実用域及び下部実用域の非球面特性も上記の通りである。
またここに、レンズ両面の成形は直接基材を切削や研削するだけではなく、モールドによるプラスチック成型法によって成形される場合も含む。
【発明の効果】
【0018】
上記各請求項の発明では、従来に比べて特に歪曲収差が抑えられた累進屈折力レンズを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の累進屈折力レンズの実施例について説明する。
A.マイナスレンズについて
(実施例1)
(1)レンズの設定
・累進帯長:13mm
・レンズ素材の屈折率:1.6
・遠用S−5.00D
・加入度2.00D
・表カーブ(ベースカーブ)の曲率半径261.50mm
・遠用フィッティングポイント:レンズ幾何中心の2mm上
・幾何中心Oから垂直方向に15mm上においては垂直方向に1.00Dの近似的なカーブ増加を、垂直方向に15mm下においては垂直方向に1.00Dの近似的なカーブ減少をそれぞれ加える。ここで、幾何中心Oの15mm上下を目安に変形したのは、一般的なフレーム形状を意識してのことである。この設定は一例であって変更可能である。
【0020】
(2)レンズ外面のサグ量の設定
実施例1では最も単純な例として、レンズ外面の垂直方向の面屈折力を変化させた。幾何中心Oを通る水平線(x方向)上の非球面量を0とする。すなわち、点Oを通る水平断面は円形状である。幾何中心Oから上に向かって非球面量は正に、点Oから下に向かって非球面量は負に変化する。水平線(x方向)に対し直交する方向をy方向とする。ここに、非球面量が正とはレンズの外面から内面に向かう方向であり、負とはその逆をいうものとする(以下の実施例、比較例でも同様)。
本実施例1では、非球面量を
f(y)=ay・・・式1
(y:Oからの垂直方向の距離[mm]、aは正の係数)
とした。すなわち、外面の非球面量を3次関数によって定める。従って、実施例1のレンズの外面はベースカーブとこの式1との合成面とされる。
ここで、上記1.00Dの近似的なカーブ変化を得るための係数aを求める。
上記式1をyについて二階微分した式にy=15を代入すると(6×15)aとなる。この値はレンズ外面の曲率変化に近似的に等しいため、
(6×15)a=1/(1000・(n−1))
となる。ここでnはレンズ素材の屈折率であり、この実施例ではレンズの屈折率は1.6なのでn=1.6を代入してa=1.852×10−5が得られる。
【0021】
(3)レンズ内面の形状
所定の累進面に加えて外面と同じ変形量を内面にも加える。その結果、度数や乱視成分となる非点収差の分布は、元の状態(外面が球面)に近くなった。この操作をベンディングという。一般にベンディングとは、レンズのパワーを保持したまま球面の外面と球面の内面の曲率をそれぞれ変化させることをいう。ここではこの考え方を拡張して、表面を非球面化したときに裏面も同等量だけ非球面化する操作もベンディングと呼ぶ。
この状態を出発点にして、内面の係数aを微調整し、遠用度数測定位置における平均度数(レンズメータで評価した)を−5.00Dに戻した。
次に、累進面形状のサグ分布に適当な係数を乗じて調整し、近用度数測定位置における平均度数を−3.00Dに戻した。尚、外面の形状に合わせた変形を、レンズの上部と下部で独立した係数によって実施することによってもこの操作は可能である。
また、透過光の非点収差を低減するために、更にレンズ内面に非球面を合成した(透過光補正)。
本実施例では、
g(r)=br
(r:合成する非球面の中心からの距離[mm]、bは正の係数)
という形式の非球面を合成した。透過光補正に必要な変形量すなわち係数bの値は遠用と近用で異なるので、ここでは方向別に変位させた。すなわち、垂直上方に向かってはbを遠用の値とし、垂直下方に向かってはbを近用の値とし、水平方向では遠用と近用の中間値とし、円周にそって角度の比率にしたがって変位させた。
付加する非球面の中心は、図4に示すように幾何中心Oの5mm下方に設定した。この位置は、遠用から近用までの度数変化のほぼ中心なので、遠用と近用の光学性能をそれぞれ変化させる中心としては好適である。例えば変形の中心から真上または真下の点においては、垂直方向は中心から離れる方向すなわち子午方向となり、水平方向は子午方向と直交する方向すなわち球欠方向になる。非球面を付加したときのカーブ変化は、子午方向が球欠方向より大きい。この性質を利用して非点収差を低減することができる。
透過光によって評価した平均度数は、レンズメータ光で評価した平均度数にくらべて(マイナス度数もプラス度数も)強めになる。この問題に対応するため、内面に付加する非球面によって、透過光によって評価した平均度数を弱め(すなわち本来必要とされる度数)にシフトさせることができる。この時、像の歪曲も同時に減少する。
【0022】
(4)実施例1のレンズの特徴
このレンズは遠用S−5.00Dという強度のマイナスレンズである。このようなレンズでレンズ外面のベースカーブを浅くすると、収差が大きくなる傾向となる。しかし、実施例1では、外面の非球面量を垂直方向に3次関数によって与えているため、ベースカーブが浅いにも関わらず収差の低減を図ることができる。
このようなレンズの外面は縦断面形状では図1に示すようなベースカーブBに対して破線で示すように水平線から上方は上方寄りほど徐々に深く(カーブの曲率逓加)、水平線から下方は下方寄りほど浅く(カーブの曲率逓減)なっている。
【0023】
(5)実施例1の光学性能の評価内容
平均度数、非点収差及び歪曲収差について透過光によるシミュレーションを行って評価した。歪曲収差については正面を見る視線から45度方向の円を描き、その内部の視野を評価する手法を採った。眼前10m位置に縦横等間隔の格子を配置し、どのように見えるかをシミュレーションした。格子の間隔は2mとした。円の外部は実用領域外における累進面を整え切れていない部分で光線の乱れがあるため、参考データである。各図における水平・垂直方向の座標は、光線がレンズ外面を通過する位置に対応させている。
等度数曲線および等非点収差曲線は0.25D間隔で図示し、1.00Dステップで太線で図示するようにした。
評価結果を表1〜3に示す。
【0024】
(実施例2)
(1)レンズの設定
実施例1と同様である。
但し、レンズ外面の非球面のカーブの設定については実施例1と異なり、幾何中心Oから垂直方向に15mm上においては水平方向に1.00Dの近似的なカーブ増加を、垂直方向に15mm下においては水平方向に1.00Dの近似的なカーブ減少をそれぞれ加えた。
(2)レンズ外面のサグ量の設定
実施例1では垂直方向のカーブを増減させた例であったが、実施例2では垂直方向のカーブの増減を抑えた例である。幾何中心Oを通る水平線(x方向)上の非球面量を0とする。すなわち、点Oを通る水平断面は円形状である。幾何中心Oから上に向かって非球面量は正に、点Oから下に向かって非球面量は負に変化する。水平線(x方向)に対し直交する方向をy方向とする。
本実施例2では、非球面量を
f(x,y)=axy・・・式2とする。
(x:Oからの水平方向の距離[mm]、y:Oからの垂直方向の距離[mm]、aは正の係数)
とした。実施例1と同様係数aを求めるために式2をxについて二階偏微分した式にy=15を代入すると(2×15)aとなる。この値はレンズ外面の曲率変化と近似的に等しいため、
(2×15)a=1/(1000・(n−1))
となる。n=1.6を代入してa=5.556×10−5が得られる。
【0025】
(3)レンズ内面の形状
実施例1と同様に外面と同じ変形量を内面にも加える。
(4)実施例2のレンズの特徴
このレンズも実施例1と同様強度のマイナスレンズである。しかし、実施例2では、図2に示すように非球面量をシミュレーションした面Pはレンズ上方では外面の水平カーブは深くなる。レンズ下方では逆に水平カーブは浅くなる。レンズ上方から下方にかけてのカーブの変化は、yに比例するのでほぼ一定の変化となる。
【0026】
(5)実施例2の光学性能の評価内容
実施例1と同様に平均度数、非点収差及び歪曲収差について評価した。評価手法は同じである。評価結果を表1〜3に示す。
【0027】
(実施例3)
(1)レンズの設定
実施例1と同様である。
但し、レンズ外面の非球面のカーブの設定については実施例1と異なり、幾何中心Oから垂直方向に15mm上においては垂直方向と水平方向の平均で0.50Dの近似的なカーブ増加を、垂直方向に15mm下においては垂直方向と水平方向の平均で0.50Dの近似的なカーブ減少をそれぞれ加えた。
(2)レンズ外面のサグ量の設定
実施例3ではレンズ外面上の点(X,Y)の位置と方向について重みを考慮した非球面量を与えるすべての方向における歪曲収差を抑制するようにしている。
幾何中心Oを通る水平線(x方向)上の非球面量を0とする。すなわち、点Oを通る水平断面は円形状である。幾何中心Oから上に向かって非球面量は正に、点Oから下に向かって非球面量は負に変化する。水平線(x方向)に対し直交する方向をy方向とする。
本実施例3では、非球面量を
非球面量を f(x,y)=ar・sinθ・・・式3とする。
(x:幾何中心Oからの水平方向の距離[mm]、y:幾何中心Oからの垂直方向の距離[mm]、aは正の係数、θ:幾何中心Oを中心とした水平線に対する偏角、r:幾何中心Oからの距離)
とした。sinθは図3に示すように、0〜1の値をとる正弦関数であるため、点(X,Y)の方向に従って重みを与えるのに有利な関数となる。
r=(x+y1/2)、sinθ=y/r
なので、この式は、
f(x,y)=a(x+y)y
と変形することで偏角θを使わずに表現することも可能である。
実施例1と同様係数aを求める。まず式3をxについて二階偏微分した式にy=15を代入すると(2×15)aとなる。次にyについて二階偏微分した式にy=15を代入すると(6×15)aとなる。これらの平均は(4×15)aである。この値はレンズ外面の平均的な曲率変化に等しいため、
(4×15)a=0.5/(1000・(n−1))
n=1.6を代入してa=1.389×10−5が得られる。
【0028】
(3)レンズ内面の形状
実施例1と同様に外面と同じ変形量を内面にも加える
(4)実施例3のレンズの特徴
このレンズも実施例1と同様強度のマイナスレンズである。しかし、実施例3では、レンズ外面の非球面量をレンズ外面上の点(X,Y)の位置と方向によって重み付けしているため(sinθを掛け合わせるため)、幾何中心Oを通る水平断面上(y=0)では、非球面量は0になる。すなわち実施例1と同様に、幾何中心Oを通る水平断面は円形状である。その一方、幾何中心O通る垂直線上(x=0)の領域近傍においては回転対称非球面に似た形状になる。そのため、累進屈折力レンズにおいて最も重要な正面の視野において、物が縦長や横長に変形する効果を抑えることができる。
【0029】
(5)実施例3の光学性能の評価内容
実施例1と同様に平均度数、非点収差及び歪曲収差について評価した。評価手法は同じである。評価結果を表1〜3に示す。
【0030】
(比較例1)
上記実施例1〜実施例3との比較のため、レンズの設定が同じでレンズ外面が球面であるレンズについて同様に平均度数、非点収差及び歪曲収差について評価した。評価手法は同じである。評価結果を表1〜3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
【表3】

【0034】
B.プラスレンズについて
(実施例4)
(1)レンズの設定
・累進帯長:13mm
・レンズ素材の屈折率:1.6
・遠用S+3.00D
・加入度2.00D
・表カーブ(ベースカーブ)の曲率半径108.96mm
・遠用フィッティングポイント:レンズ幾何中心の2mm上
・幾何中心Oから垂直方向に15mm上においては垂直方向に1.00Dの近似的なカーブ減少、垂直方向に15mm下においては垂直方向に1.00Dの近似的なカーブ増加をそれぞれ加える。ここで、幾何中心Oの15mm上下を目安に変形したのは、一般的なフレーム形状を意識してのことである。この設定は一例であって変更可能である。
(2)レンズ外面のサグ量の設定
実施例1の係数aを負として設定した(a=−1.852×10−5)。
【0035】
(3)レンズ内面の形状
マイナスレンズと同様所定の累進面に加えて外面と同じ変形量を内面にも加える。また、
透過光の非点収差を低減するために、更にレンズ内面に非球面を合成した。
(4)実施例4のレンズの特徴
このレンズは遠用S+3.00Dで加入度2.00Dであるため、強度のプラスレンズである。このようなレンズでレンズ外面のベースカーブを浅くすると、収差が大きくなる傾向となる。しかし、実施例4では、外面の非球面量を垂直方向に3次関数によって与えているため、ベースカーブが浅いにも関わらず収差の低減を図ることができる。
(5)実施例4の光学性能の評価内容
平均度数、非点収差及び歪曲収差についてマイナスレンズと同様に評価した。ただし格子の間隔は1mとした。
評価結果を表4〜6に示す。
【0036】
(実施例5)
(1)レンズの設定
実施例4と同様である。
但し、レンズ外面の非球面のカーブの設定については実施例4と異なり、幾何中心Oから垂直方向に15mm上においては水平方向に1.00Dの近似的なカーブ減少を、垂直方向に15mm下においては水平方向に1.00Dの近似的なカーブ増加をそれぞれ加えた。
(2)レンズ外面のサグ量の設定
実施例2の係数aを負として設定した(a=−5.556×10−5)。
(3)レンズ内面の形状
マイナスレンズと同様所定の累進面に加えて外面と同じ変形量を内面にも加える。また、
透過光の非点収差を低減するために、更にレンズ内面に非球面を合成した。
(4)実施例5のレンズの特徴
このレンズも実施例4と同様強度のプラスレンズである。しかし、実施例5では、図2と逆にレンズ上方では外面の水平カーブは浅くなる。レンズ下方では逆に水平カーブは深くなる。レンズ上方から下方にかけてのカーブの変化は、yに比例するのでほぼ一定の変化となる。
(5)実施例5の光学性能の評価内容
平均度数、非点収差及び歪曲収差について実施例4と同様に評価した。
評価結果を表4〜6に示す。
【0037】
(実施例6)
(1)レンズの設定
実施例4と同様である。
但し、レンズ外面の非球面のカーブの設定については実施例4と異なり、幾何中心Oから垂直方向に15mm上においては垂直方向と水平方向の平均で0.50Dの近似的なカーブ減少を、垂直方向に15mm下においては垂直方向と水平方向の平均で0.50Dの近似的なカーブ増加をそれぞれ加えた。
(2)レンズ外面のサグ量の設定
実施例3の係数aを負として設定した(a=−1.389×10−5)。
(3)レンズ内面の形状
マイナスレンズと同様所定の累進面に加えて外面と同じ変形量を内面にも加える。また、
透過光の非点収差を低減するために、更にレンズ内面に非球面を合成した。
(4)実施例6のレンズの特徴
このレンズも実施例1と同様強度のプラスレンズである。しかし、実施例6では、レンズ外面の非球面量をレンズ外面上の点(X,Y)の位置と方向によって重み付けしているため(sinθを掛け合わせるため)、幾何中心Oを通る水平断面上(y=0)では、非球面量は0になる。すなわち実施例1と同様に、幾何中心Oを通る水平断面は円形状である。その一方、幾何中心O通る垂直線上(x=0)の領域近傍においては回転対称非球面に似た形状になる。そのため、累進屈折力レンズにおいて最も重要な正面の視野において、物が縦長や横長に変形する効果を抑えることができる。
(5)実施例6の光学性能の評価内容
平均度数、非点収差及び歪曲収差について実施例4と同様に評価した。
評価結果を表4〜6に示す。
【0038】
(比較例2)
上記実施例4〜実施例6との比較のため、レンズの設定が同じでレンズ外面が球面であるレンズについて同様に平均度数、非点収差及び歪曲収差について評価した。評価手法は同じである。評価結果を表4〜6に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
【表5】

【0041】
【表6】

【0042】
C.評価結果
(1)平均度数の比較について(表1)
度数分布は特に上部領域において比較例1と比べいずれの実施例も明らかな改善が見られた。透過光補正を施すと、さらに改善されたことが分かる。
(2)非点収差の比較について(表2)
いずれの実施例も明らかな改善が見られた。透過光補正を施すと、さらに改善されたことが分かる。
(3)歪曲収差の比較について(表3)
実施例1(縦方向の非球面):レンズ上端の歪曲が小さくなっている。
実施例2:側方の垂直線が比較的まっすぐになっている。
実施例3:実施例1と実施例2の中間的な結果になった。つまり上下左右とも平均的に歪曲が改善されている。
また、いずれの実施例も、透過光補正を施したことで歪曲が改善されている。
(4)平均度数の比較について(表4)
いずれの実施例も明らかな改善が見られた。顕著な事象は透過光補正を施す前では遠用部側方において等度数曲線が垂直に近い角度になっている。これも装用者にとっては、顔を左右に動かしたときの歪みとして作用する。透過光補正を行った実施例では、この傾向が抑えられている。
(5)非点収差の比較について(表5)
いずれの実施例も明らかな改善が見られたが、特に実施例6の透過光補正を実施した例では、非点収差の分布が滑らかである。
(6)歪曲収差の比較について(表6)
マイナスレンズの実施例と同様の傾向である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1のレンズ形状を説明する説明図。
【図2】本発明の実施例2のレンズ形状を説明する説明図。
【図3】本発明の実施例3のレンズ設計における非球面量を与える式を説明する説明図。
【図4】本発明の実施例のレンズ内面の形状を説明するための説明図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ上方に配置された比較的遠方を見るための第1の領域と、同第1の領域よりも下方に配置され同第1の領域よりも大きな屈折力を有する第2の領域と、これら領域の間に配置され屈折力が累進的に変化する累進帯を備えた累進屈折面をレンズの内面に形成した累進屈折力レンズにおいて、レンズの外面を回転非対称の非球面形状としたことを特徴とする累進屈折力レンズ。
【請求項2】
前記レンズの外面の回転非対称の非球面形状は、レンズの外面に設定される幾何中心の上部領域の実用域(以下、上部実用域とする)と下部領域の実用域(以下、下部実用域とする)における平均面屈折力が異なることで実現されていることを特徴とする請求項1に記載の累進屈折力レンズ。
【請求項3】
前記レンズの幾何中心の上部実用域と下部実用域との平均面屈折力は遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合には上部実用域>下部実用域に設定され、ともにプラスの場合には上部実用域<下部実用域に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の累進屈折力レンズ。
【請求項4】
遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを以下のいずれかのような特性としたことを特徴とする請求項3に記載の累進屈折力レンズ。
a)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させること。
b)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記下部実用域について均等なカーブの曲率とすること。
c)前記下部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記上部実用域について均等なカーブの曲率とすること。
【請求項5】
遠用度数と近用度数がともにプラスの場合にはレンズの外面の垂直方向のカーブを以下のいずれかのような特性としたことを特徴とする請求項3に記載の累進屈折力レンズ。
a)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記下部実用域について同水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させること。
b)前記上部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓減させ、前記下部実用域について均等なカーブの曲率とすること。
c)前記下部実用域についてレンズの幾何中心を通る仮想水平線から離間するにつれてレンズの外面のカーブの曲率を逓加させ、前記上部実用域について均等なカーブの曲率とすること。
【請求項6】
レンズの外面であって、レンズの幾何中心を通る仮想垂直線に対し直交する仮想水平線上に位置する所定の点(X,Y)における平均面屈折力をレンズ内の所定の基準点を基準とした所定の点(X,Y)の方向に基づいた重みを考慮して設定するようにしたことを特徴とする請求項4及び5に記載の累進屈折力レンズ。
【請求項7】
遠用フィッティングポイントにおいて垂直方向に延びる接線に沿った、レンズの上方に向かって15mmの距離にあるレンズ外面上の点をAとし、レンズの下方に向かって15mmの距離にあるレンズ外面上の点をBとした際に、同点A及び点Bにおけるレンズ外面の平均面屈折力P(A)及びP(B)が、以下の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の累進屈折力レンズ。
a)遠用度数と近用度数がともにマイナスの場合
P(B)+0.25 ≦ P(A) ≦ P(B)+ADD
b)遠用度数と近用度数がともにプラスの場合
P(A)+0.25 ≦ P(B) ≦ P(A)+ADD
【請求項8】
前記請求項1〜請求項7に記載の累進屈折力レンズの製造方法であって、
レンズの外面が球面形状であることを前提としてレンズの内面に対する所定の累進特性を発現させるような所定の累進屈折面のデータを設計し、次いで同球面形状のレンズの外面に設定した球面形状データに対して所定の回転非対称の非球面形状のデータを合成する設計をし、レンズの外面を非球面形状とする変形設計に伴って発生する乱視成分及び累進特性の変化を補正する補正値を同累進屈折面のデータに追加的に与えた後、各データに基づいてレンズ両面を成形するようにしたことを特徴とする累進屈折力レンズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−323129(P2006−323129A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146305(P2005−146305)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】