説明

細径同軸ケーブルハーネス及びその製造方法

【課題】狭い収容スペースにおいても良好に収容することができ、さらに、シールド効果を高めることも可能な細径同軸ケーブルハーネス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】細径同軸ケーブルハーネスは、複数本の細径同軸ケーブル24が束ねられ、複数本の細径同軸ケーブル24のうちの一部の細径同軸ケーブル24が束ねられた分岐束部である複数の電線束41,42を有し、かつ全部の細径同軸ケーブル24が一つに束ねられた全数束部である結束部33を有し、電線束41,42は、銅箔糸を編組した筒状のスリーブ23,23’内に細径同軸ケーブル24が通されて束ねられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細径同軸ケーブルを束ねて成端処理した細径同軸ケーブルハーネス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末や小型ビデオカメラなどの普及により、これら電子機器の小型化や高画質化が求められている。このような要求に対応するために、機器本体と液晶表示部との接続や機器内の配線などに、極めて細い同軸ケーブルが用いられている。それらは配線の容易性から、複数本の同軸ケーブルを集合一体化させた同軸ケーブルハーネスとして用いられている。
【0003】
同軸ケーブルハーネスは、通常、端末部分では電気コネクタなどが接続されて成端処理が施され、ハーネスの中間部では、複数本の同軸ケーブルを束ねた部分が形成される。複数本の同軸ケーブルを束ねるには、接着テープ等の束ね部材を用いることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、複数本の同軸線を束ねた電線群に沿って複数本の銅箔糸を配したものがあり、複数本の銅箔糸は、数本の単線を撚って集合銅箔糸とし、複数本の集合銅箔糸を電線群と一体的に束ねて配するか、電線群の外周に横巻あるいは編組構造で配されるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−235690号公報
【特許文献2】特開2006−24372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、携帯端末や小型ビデオカメラ等の電子機器において、機器のさらなる小型・薄型化を図るため、機器内に配線される同軸ケーブルハーネスの収容スペースの高さを低くすることが要求されている。特に、回転や摺動など相対移動される筐体間にそれぞれ収容される基板間を電気的に接続する場合はその要求が強い。その一方、機能のさらなる高度化に伴い同軸ケーブルの本数は増加し、ハーネスの束の径が大きくなる傾向にある。したがって、狭い収容スペースに同軸ケーブルハーネスを収容すると、筐体同士の相対移動が良好に行われなくなる。また、ハーネスの損傷を引き起こすこともある。
このように、機器内に配線される同軸ケーブルハーネスを収容するための収容スペースを低くして機器の小型・薄型化を図ることが困難であった。
また、機器の小型・薄型化に伴い、同軸ケーブルのシールド効果を一層高め、同軸ケーブルにおける雑音の入り込み及び発散を極力抑えることが要求されている。
【0007】
本発明の目的は、狭い収容スペースにおいても良好に収容することができ、さらに、シールド効果を高めることも可能な細径同軸ケーブルハーネス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することのできる本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスは、複数本の細径同軸ケーブルが束ねられた細径同軸ケーブルハーネスであって、
前記複数本の細径同軸ケーブルのうちの一部の細径同軸ケーブルが束ねられた分岐束部を複数有し、
かつ全部の細径同軸ケーブルが一つに束ねられた全数束部を有し、
前記分岐束部のうちの少なくとも一つは、銅箔糸を編組した筒状のスリーブ内に前記細径同軸ケーブルが通されて束ねられていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスにおいて、複数の前記分岐束部の長さが異なることが好ましい。
【0010】
本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスにおいて、全ての前記分岐束部が銅箔糸を編組した筒状のスリーブに束ねられていることが好ましい。
【0011】
本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスにおいて、前記分岐束部は、銅箔糸を編組した筒状のスリーブ内に束ねられた束部と、ポリマー繊維を編組したまたは経編みした筒状のスリーブ内に束ねられた束部とからなることが好ましい。
【0012】
本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスの接続構造は、上記の細径同軸ケーブルハーネスの端部が異なる基板に接続されて配線されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスの接続構造において、少なくとも一つの分岐束部に含まれる細径同軸ケーブルの一端が接続される基板が、その細径同軸ケーブルの他端が接続される他の基板に対して相対的に移動するものであり、
前記分岐束部が、余長を有するか曲げられて配線されていることが好ましい。
【0014】
本発明に係る細径同軸ケーブルハーネスの製造方法は、上記の細径同軸ケーブルハーネスを製造する方法であって、
複数本の細径同軸ケーブルを長さの異なる複数の束に分けて、そのうち少なくとも一つの束をなす細径同軸ケーブルを、銅箔糸を編組した筒状のスリーブに通して束ねることで分岐束部を形成した後、
前記複数本の細径同軸ケーブルの端末を成端処理することを特徴とする。
なお、ここでいう成端処理するとは、細径同軸ケーブルの端末がコネクタ付けまたはFPC(フレキシブルプリント基板)付けして、基板に対して間接的に接続可能な状態とすること、または、細径同軸ケーブルの端部から中心導体や外部導体を段階的に露出させて、基板に対して直接的に接続可能な状態とすること、を指す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の細径同軸ケーブルハーネス、及び本発明の製造方法により製造される細径同軸ケーブルハーネスは、複数本の細径同軸ケーブルが複数の分岐束部に分けられているので、各束部の径を小さくすることができる。これにより、狭い収容スペースにおいても良好に収容することができる。さらに、本発明の細径同軸ケーブルハーネスが接続する基板を含む筐体が相対移動する場合は、筐体同士の相対移動の阻害やハーネスの損傷を起こすことがない。
特に、分岐束部のうちの少なくとも一つは、銅箔糸を編組した筒状のスリーブに束ねられているので、この銅箔糸を編組した筒状のスリーブに通された細径同軸ケーブルのシールド効果を高めることができ、細径同軸ケーブルにおける雑音の入り込み及び発散を極力抑えることができる。
また、複数本の細径同軸ケーブルが、複数の分岐束部の長さを異ならせると、回転、捻回、摺動等を伴う可動部分で使用しても、短い束部を内側として湾曲させて配置させることにより、曲げ径の差によるストレスを軽減することができ、この結果、配線した細径同軸ケーブルの曲げや捻れの可動範囲が大きくなる。よって、可動部分に配線した際に、各分岐束部が可動部分の動きに対して良好に追従することができ、その細径同軸ケーブルの断線の発生を低減させ、機器の信頼性を高めることができる。
さらに、各分岐束部のスリーブを扁平させて収容スペースへ収容させることで、高さが低い収容スペースにも良好に収容することができる。
分岐束部が繰り返し変形(湾曲や回動)しても、スリーブ内で複数の細径同軸ケーブル同士が移動し、各細径同軸ケーブルに加わる曲げの負荷を逃がしやすくすることができ、細径同軸ケーブルに過度の負荷がかかりにくい。したがって、当該ハーネスが繰り返し変形しても細径同軸ケーブルの中心導体の破断は極めて生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る細径同軸ケーブルハーネス及びその製造方法の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1および図2に示すように、本実施形態では、上下に重ねて配置され前後(図1,図2の左右方向)に水平移動する二つの基板11,12間が、複数本(20〜60本)の細径同軸ケーブル24を含む細径同軸ケーブルハーネス20によって接続されている。基板11,12は、例えば、携帯電話等の機器の相対的にスライドする筐体内にそれぞれ組み込まれている。細径同軸ケーブルハーネス20の両方の端末は、コネクタ25を取り付けて成端処理することで、基板11,12との接続を容易としている。なお、コネクタ25としては、横一列に細径同軸ケーブル24を配列して接続するタイプでも良く、また、複数列の細径同軸ケーブル24を複数段に配列して接続するタイプでも良い。
【0017】
そして、細径同軸ケーブルハーネス20は、両端部21a,21bを除いて複数の細径同軸ケーブル24を束ねた複数の電線束(分岐束部)41,42としており、全体としてU字状(またはJ字状)になるように両基板11,12に接続されている。これにより、細径同軸ケーブルハーネス20を基板11,12の平面視方向におけるU字状形状として両基板11,12間に配線することができる。なお、図1は細径同軸ケーブルハーネス20の両端部21a,21bが最も離れた状態であり、図2は両端部21a,21bが最も近接した状態である。基板11,12の水平移動距離は、例えば30mmから60mm程度である。
【0018】
細径同軸ケーブル24は、中心軸に直交する径方向の断面において、中心から外側に向かって、中心導体、内部絶縁体、外部導体、外被を有する構成であり、それぞれの端部21a,21bでは端末処理が施されて、外部導体、内部絶縁体、中心導体が段階的に所定長さずつ露出している。また、細径同軸ケーブルハーネス20には、複数本の細径同軸ケーブルの他に、外部導体のない細径絶縁ケーブルが含まれていても良い。なお、図面では細径同軸ケーブル24の本数を少なく示して簡略化している。
【0019】
細径同軸ケーブルハーネス20は、平面図でみて基板11,12の幅方向(図1(A)の両矢印Wの方向)に湾曲されている。基板11,12の幅が数cmあるので、この方向の曲げ径を十分確保することができる。例えば、図1(A)に示すように、細径同軸ケーブルハーネス20の一方の端部21aがスライド方向に対して上基板11の右側(図1(A)において上側)に接続されていれば、他方の端部21bをスライド方向に対して下基板12の左側(図1(A)において下側)に接続する。細径同軸ケーブルハーネス20はU字状に曲げられているが、細径同軸ケーブルハーネス20を収容するスペースを小さくするためには、U字の幅(直線部分の間隔)が狭いほどよい。
【0020】
従来のFPC(フレキシブルプリント基板)を用いた場合は、FPCは両基板11,12の間で、基板11,12の平面方向と直交する方向で曲げられるので、その曲げ径を確保するために両基板11,12の隙間を大きくする必要がある。本発明では、両基板11,12の隙間は、細径同軸ケーブルハーネス20の厚さ程度で十分であり、FPCを使用する場合のように大きくとる必要がなく、機器の薄型化を図ることができる。
【0021】
図3に示すように、上記の細径同軸ケーブルハーネス20は、その中間部分が、前述のように、複数本の細径同軸ケーブル24を複数組(本例では2組)の電線群に分割し、それぞれの電線群を銅箔糸編組スリーブ23,23’によって束ねることにより、2組の分岐束部である電線束41,42に分離されている。なお、分割する細径同軸ケーブル24の本数は等分である必要な特にないが、少なくとも10本以上の単位で分割されているのが望ましい。
【0022】
銅箔糸編組スリーブ23,23’は、複数本の銅箔糸を編組して筒状に形成したものである。銅箔糸の一例としては、ポリエステル糸等の高抗張力繊維糸に、丸線を圧延して作製した平角線状の銅箔テープをラップ巻きしたものが挙げられる。銅箔材料としては錫合金銅あるいは普通銅が用いられる。この銅箔糸編組スリーブ23,23’の両端23a,23bは、それぞれまとめられてコネクタ28が取り付けられ、このコネクタ28は、基板11,12のグランド電位部位に接続される。
【0023】
各電線束41,42は、必ずしも端から端までが銅箔糸編組スリーブ23,23’に覆われている必要はなく、シールドの必要な部分のみが銅箔糸編組スリーブ23,23’で覆われているのでもよい。この場合、各スリーブが長さ方向にずれないように各分岐束部に各スリーブが接着テープ等で固定されるのが好ましい。また、銅箔糸編組スリーブ23,23’の外周に保護テープを巻き付けることが好ましい。保護テープとしては、滑り性の良い樹脂テープが好ましく、このような樹脂テープを用いることにより、銅箔糸編組スリーブ23,23’と接触する筐体や基板11,12などの構成部材との擦れによる損傷を防止し得る。
電線束の一部分のみを銅箔糸編組スリーブ23,23’で覆う場合は、その他の部分をポリマー繊維を編組または経編みして筒状に形成したスリーブで覆うことができる。ポリマー繊維には、ポリエステルなどの合成繊維や、溶融液晶性ポリマーと屈曲性ポリマーからなるモノフィラメントハイブリッド繊維を用いることが好ましい。このモノフィラメントハイブリッド繊維は、溶融液晶性ポリマーからなる芯成分と、屈曲性ポリマーを含む鞘成分により構成されている。
【0024】
また、銅箔糸編組スリーブ23,23’は、銅箔糸のみで形成する以外に、ポリエステルなどの高強度のプラスチック糸あるいは弾性のあるゴム糸のような繊維糸を一緒に織り込んだ交織編組構造で形成するようにしてもよい。交織編組構造とすることにより、銅箔糸編組スリーブ23,23’を構成する銅箔糸間の耐磨耗性や伸縮特性を改善させることが可能となり、長寿命化を図ることが期待できる。
【0025】
細径同軸ケーブル24に沿って配置された銅箔糸編組スリーブ23,23’は、細径同軸ケーブル24の外部導体に対して並列接続された低抵抗のグランド導体として使用することができる。この結果、細径同軸ケーブルハーネス20のハーネス長が長く、細径同軸ケーブル24の外部導体の両端でグランド電位に差が生じるような場合であっても、並列状態に接続される銅箔のグランド導体(銅箔糸編組スリーブ23,23’)で電位差を最小限化(軽減化)し、低電位とすることができる。また、銅箔糸編組スリーブ23,23’は、細径同軸ケーブルハーネス20のシールドとしても機能する。
【0026】
2組の電線束41,42は、基板11,12に接続してU字状に湾曲させた際に、そのU字の内径側に配置される電線束41の長さよりもU字の外径側に配置される電線束42が長くされている。これにより、細径同軸ケーブルハーネス20は、直線状に配置した際に、長い電線束42に余長部42aが形成される。
なお、電線束41,42の長さの寸法差は、ケーブルの曲げ径により異なり、屈曲率が大きい場合は、長さの寸法差も大きくなり、屈曲率が小さい場合は長さの寸法差も小さくなる。
本発明の細径同軸ケーブルハーネスは、それに含まれる全部の細径同軸ケーブルが一つに束ねられた全数束部を有する。図3に示す例では、2つに分割された電線束41,42の始端と終端となる部分にスリーブあるいはテープによって全部の細径同軸ケーブル24を一つの束とするように結束した結束部33が全数束部である。この結束部33により銅箔糸編組スリーブ23,23’の端部が細径同軸ケーブル24とともに留められて電線束41,42の端部の位置決めがなされる。もし、結束部33がなくて全部の細径同軸ケーブル24が一つに成端処理された場合は、その端末部分が全数束部である。
【0027】
細径同軸ケーブル24としては、例えばAWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG42,AWG44,AWG46などの細い極細同軸ケーブルまたは外径が0.30mmよりも細い同軸ケーブルを用いるのが望ましい。これにより、細径同軸ケーブルハーネス20は曲がり易く、両基板11,12がスライドするときの抵抗を小さくすることができる。また、複数本の細径同軸ケーブル24を束ねて2組の電線束41,42を有する細径同軸ケーブルハーネス20を形成したときに、細径同軸ケーブルハーネス20のそれぞれの電線束41,42の厚さh1(図4(C)参照)を薄く形成することができ、機器の薄型化を図ることができる。この厚さh1としては、例えば、2mm以下の高さが望まれている。
【0028】
また、細径同軸ケーブルハーネス20の電線束41,42を基板11,12や筐体で挟んで押しつぶして扁平化することもできるので、基板11,12間や筐体間の隙間の高さは細径同軸ケーブルハーネス20の厚さよりも少し(0.2mm〜0.5mm程度)小さくてもよい。前述のように、細径同軸ケーブルハーネス20には、外部導体のない細径絶縁ケーブルが含まれていてもよいが、その細径絶縁ケーブルは外径が0.30mmより細いケーブルを用いるのが好ましい。
【0029】
細径同軸ケーブルハーネス20の各電線束41,42は、10本以上の細径同軸ケーブル24を含むものである。断面の直径が2.5mm以下であれば扁平化して高さ2mmの隙間に入れることができる。スリーブの厚さが0.2mm程度であれば、各電線束41,42に含まれる細径同軸ケーブル24を十分に束ねるのに強度も耐久性も十分である。細径同軸ケーブル24がAWG46の細さまたは外径が0.27mm以下の細さである場合には、断面が円に近い形状の束として細径同軸ケーブルハーネス20の電線束41,42(細径絶縁ケーブルが含まれていてもよい)を形成すると、各束に含まれる細径同軸ケーブルの本数を20本とすると銅箔糸編組スリーブ23,23’の厚さを含めた外径(厚さ)は1.7mm以下であり、各束に含まれる細径同軸ケーブルの本数が30本とするとスリーブ23,23’の厚さを含めた外径(厚さ)は2.0mm以下であり、いずれも2.0mmの高さ(厚さ)の収容スペースに配線することが可能である。この細径同軸ケーブルハーネス20をU字状に配置するとそのU字の幅は10mmから16mm以内に収めることができる。心数(細径同軸ケーブル24の本数)の増加によりU字の幅も広がるが、60本のAWG44の細径同軸ケーブル24を分割して束ねたとしてもそのU字の幅は18mm以内にできる。
【0030】
図1から図4に示すように、細径同軸ケーブルハーネス20は複数本の細径同軸ケーブル24を銅箔糸編組スリーブ23,23’内に通すことで束ねて電線束41,42としており、例えば図4(C)に示すように、扁平した楕円形断面のような厚さ寸法h1をできるだけ小さな形状とするのが望ましい。細径同軸ケーブルハーネス20は、銅箔糸編組スリーブ23,23’の断面積(内側の空間も含む)を分割した細径同軸ケーブル24の束の断面積の和よりも大きくする。これにより緩く細径同軸ケーブル24を束ねているため、細径同軸ケーブル24が銅箔糸編組スリーブ23,23’の中で並び変わるなど動きやすい。
【0031】
細径同軸ケーブルハーネス20の両端がそれぞれ接続された基板11,12が水平移動し、それに伴い細径同軸ケーブルハーネス20の2組の電線束41,42が繰り返し変形しても、それぞれの電線束41,42における銅箔糸編組スリーブ23内で複数の細径同軸ケーブル24が移動可能であるため、細径同軸ケーブル24に加わる曲げの負荷が全体的に逃げやすく、細径同軸ケーブル24に過度の負荷がかからない。したがって、細径同軸ケーブルハーネス20が繰り返し変形しても細径同軸ケーブル24の中心導体の破断を防ぐことができる。
【0032】
上記の細径同軸ケーブルハーネス20を製造するには、複数本の細径同軸ケーブル24を、2組の電線群に分割し、これら電線群を構成する複数本の細径同軸ケーブル24を、それぞれ銅箔糸編組スリーブ23へ挿通させ、銅箔糸編組スリーブ23,23’の両端から細径同軸ケーブル24を引き出す。束の長さを異ならせるときは、複数本の細径同軸ケーブル24を、その長さ毎に2組の電線群に分割する(他は同様)。
そして、2つに分割した電線束41,42の始端と終端となる部分が一つの束となるように、始端部分及び終端部分にスリーブを取り付けたりテープを巻き付けて結束部33を形成する。
【0033】
その後、細径同軸ケーブル24の配列状態をフィルムや治具等で保持しながら、細径同軸ケーブル24の端部から中心導体や外部導体を段階的に露出させて端末処理し、さらにコネクタ25を接続して成端処理する。
また、銅箔糸編組スリーブ23の両端23a,23bをそれぞれまとめ、これらの両端23a,23bにコネクタ28を取り付ける。
これにより、中間部分が2組に分割されて銅箔糸編組スリーブ23,23’により束ねられた電線束41,42を有する細径同軸ケーブルハーネス20を形成することができる。
【0034】
なお、成端処理する箇所の近傍部分で細径同軸ケーブル24の配列状態を平面状に維持するために、結束部33をテープで平面状に形成してもよい。
【0035】
この細径同軸ケーブルハーネス20は、複数本の細径同軸ケーブル24が複数の束に分かれて束ねられているので、各電線束41,42における銅箔糸編組スリーブ23,23’の径を小さくすることができる。これにより、狭い収容スペースにおいても筐体同士の相対移動の阻害やハーネスの損傷を起こすことなく、良好に収容することができる。特に、各電線束41,42の銅箔糸編組スリーブ23,23’を扁平させて収容させることで、高さが低い収容スペースにも良好に収容することができる。
【0036】
しかも、複数本の細径同軸ケーブル24からなる電線群が銅箔糸編組スリーブ23,23’に挿通されているので、この銅箔糸編組スリーブ23,23’に通された細径同軸ケーブル24のシールド効果を高めることができ、細径同軸ケーブル24における雑音の入り込み及び発散を極力抑えることができる。
【0037】
また、電線束41,42が繰り返し変形(湾曲や回動)しても、銅箔糸編組スリーブ23,23’内で複数の細径同軸ケーブル24同士が移動し、細径同軸ケーブル24に加わる曲げの負荷を逃がしやすくすることができ、細径同軸ケーブル24に過度の負荷がかかりにくい。したがって、細径同軸ケーブルハーネス20,23’が繰り返し変形しても中心導体の破断は極めて生じにくい。
【0038】
さらには、回転、捻回、摺動等を伴う可動部分で使用する場合は、分岐束部の長さを異ならせて短い電線束41を内側として湾曲させて配置させることにより、曲げ径の差によるストレスを軽減することができる。その結果、細径同軸ケーブル24の曲げや捻れの可動範囲が大きくなり、各電線束41,42を可動部分の可動に対して良好に追従させることができ、細径同軸ケーブル24の断線の発生を低減し、機器の信頼性を高めることができる。
【0039】
なお、上記実施形態においては、細径同軸ケーブルハーネス20の端部21a,21b及び銅箔糸編組スリーブ23,23’の端部23a,23bにコネクタ25,28を取り付けて成端処理した場合について説明したが、図5及び図6に示すように、細径同軸ケーブルハーネス20の細径同軸ケーブル24及び銅箔糸編組スリーブ23を基板11,12に直付けして成端処理することも可能である。細径同軸ケーブル24を基板11,12に直付けする場合には、並列させた細径同軸ケーブル24の端末及び銅箔糸編組スリーブ23の端部23a,23bを基板11,12に対してフィルムなどで仮止めし、細径同軸ケーブル24の端末の中心導体及び銅箔糸編組スリーブ23,23’の端部23a,23bを基板11,12の接続端子に半田付けで接続すればよい。また、外部導体にグランドバー26を接続し、その反対側から別のグランドバー27または押さえ部材27を配置して、各細径同軸ケーブル24を挟むことで、細径同軸ケーブル24のピッチを固定できる。基板11,12の片面に直付けすることもでき(図6(A)参照)、基板11,12の端部に直付けする場合は両面に直付けすることもできる(図6(B)参照)。図1(B)や図2(B)に示したような向き合った二つの基板に接続する場合は、上の基板11の下面と、下の基板12の上面にそれぞれ端末を付ける。直付けに限らずコネクタ等で基板11,12に接続するときも基板11,12の両面に接続することができる。また、銅箔糸編組スリーブ23,23’の端部23a,23bは、細径同軸ケーブル24の外部導体とともにグランドバー27によって固定しても良い。
【0040】
また、細径同軸ケーブルハーネス20の端を、前記で説明したコネクタ25の替わりにFPCに接続し、FPCを基板11,12に取り付けることもできる。
また、本発明の細径同軸ケーブルハーネスには、外部導体を有さない絶縁電線を適宜混在させることができる。絶縁電線をグランドとして使用することや、絶縁電線を給電線として使用することができる。
【0041】
また、細径同軸ケーブルハーネス20は、例えば、図7に示すように、筐体同士が相対的に回動する携帯電話等の機器に組み込んで使用することもできる。さらに、相対的に位置の変化がない基板間を接続する場合にも使用することができる。
【0042】
図7の例では、相対的に非移動側となる筐体32に直線溝32aと曲線溝32bが形成され、これらの溝32a,32bに移動側の筐体31に設けられたピン31a,31bが嵌挿されている。筐体31の移動時には、図7(A)に示した状態から、筐体31がピン31aの移動に伴い上方に変位するとともにピン31bの移動に伴い反時計回りに回動され、図7(B)の状態を経て、筐体31がピン31aの移動に伴い下方に変位するとともにピン31bの移動に伴いさらに反時計回りに回動されて、図7(C)の状態となる。これにより、筐体31が筐体32に対して90度回転されたことになる。このとき、筐体31の基板と筐体32の基板に接続された細径同軸ケーブルハーネス20は、筐体32に接続された端部21b付近は動かず、筐体31に接続された端部21aが上下に変位するとともに90度回動する。図7(A)から(C)の動きと、その逆の動きの繰り返しにより、細径同軸ケーブルハーネス20には端部21a近傍部分が繰り返し曲げられ、筐体31,32内および筐体間で摺動する。図8(A),図8(C)に比べて図8(B)の状態がコネクタ間の距離が長くなるが、細径同軸ケーブルハーネス20はその各電線束41,42がいずれの状態のコネクタ距離よりも長くなるように余長を有するように配線される。筐体が摺動しても細径同軸ケーブル24は過度に引っ張られることなく、かつ銅箔糸編組スリーブ23,23’内で負荷を逃がすように移動し、中心導体が破断することが防がれる。
【0043】
図8に示す細径同軸ケーブルハーネス50は、長さの異なる複数本の細径同軸ケーブル24を、その長さ毎に2組の電線群に分割し、これら電線群を構成する複数本の細径同軸ケーブル24を、それぞれ銅箔糸編組スリーブ23,23’で束ねて電線束41,42としたものである。この細径同軸ケーブルハーネス50では、各電線束41,42のそれぞれの一方の端部にそれぞれコネクタ51,52が接続され、また、電線束41,42のそれぞれの銅箔糸編組スリーブ23にコネクタ53,54が接続されている。
これにより、この細径同軸ケーブルハーネス50では、短い方の電線束41を内側にしてU字状あるいはJ字状に湾曲させて配線し、それぞれの電線束41,42が一括して接続されたコネクタ25及び銅箔糸編組スリーブ23のコネクタ28を一方の基板11に接続し、それぞれの電線束41,42の端部にそれぞれ接続したコネクタ51,52及び銅箔糸編組スリーブ23のコネクタ53,54を他方の基板12にそれぞれ独立に接続する。コネクタ25と51とが同じ基板に接続されてコネクタ52が他の基板に接続される、またはコネクタ25と52とが同じ基板に接続されてコネクタ51が他の基板に接続されるという場合もある。基板が三つあるときは、各コネクタ25,51,52がそれぞれ異なる基板に接続されるという場合もある。この場合は、三つのうちのいずれか二つが相対的に移動すればよい。例えば、コネクタ25が接続される基板Aとコネクタ51とが接続される基板Bとは同じ筐体に収容されて相対的に移動しないが、コネクタ52が接続される基板Cと基板Aとは別の筐体に収容されて相対的に移動する場合などである。
【0044】
上記の細径同軸ケーブルハーネス50を製造するには、長さの異なる複数本の細径同軸ケーブル24を、その長さ毎に2組の電線群に分割し、これら電線群を構成する複数本の細径同軸ケーブル24を、それぞれ銅箔糸編組スリーブ23,23’へ挿通させ、銅箔糸編組スリーブ23の両端から細径同軸ケーブル24を引き出す。
そして、2つに分割した電線束41,42の一端側が一つの束となるように、一端側にスリーブを取り付けたりテープを巻き付けて結束部33を形成する。
その後、電線束41,42の一端側を、まとめて端末処理してコネクタ25を接続し、電線束41,42の他端側を、それぞれ端末処理してコネクタ51,52を接続することにより、成端処理を施す。また、銅箔糸編組スリーブ23,23’のそれぞれの端末にコネクタ28,53,54を取り付ける。この形態では、コネクタ25,51,52を細径同軸ケーブルに接続した後に、コネクタ51,52をそれぞれスリーブ41,42に通して細径同軸ケーブルをスリーブに通すことも可能である。そして、結束部33は、スリーブ23を通す前に形成してもよい。
図8の形態の細径同軸ケーブルハーネスの変形例として、スリーブ41と42とが結束部33の近くで一つの管となった二股形状のスリーブを使用することもできる。
【0045】
これにより、二股に分割されて銅箔糸編組スリーブ23,23’により束ねられた長さの異なる電線束41,42を有する細径同軸ケーブルハーネス50を形成することができる。
そして、この細径同軸ケーブルハーネス50の場合も、複数本の細径同軸ケーブル24が、互いに長さの異なる複数の分岐束部に分かれて束ねられて電線束41,42とされ、一端では一つに束ねられた部分を有し、各電線束41,42は、銅箔糸を編組した筒状の銅箔糸編組スリーブ23,23’内に通されて束ねられている。複数本の細径同軸ケーブル24が複数の束に分かれて束ねられているので、各電線束41,42における銅箔糸編組スリーブ23,23’の径を小さくすることができる。これにより、狭い収容スペースにおいても筐体同士の相対移動の阻害やハーネスの損傷を起こすことなく、良好に収容することができる。特に、各電線束41,42の銅箔糸編組スリーブ23,23’を扁平させて収容させることで、高さが低い収容スペースにも良好に収容することができる。
【0046】
しかも、複数本の細径同軸ケーブル24からなる電線群が銅箔糸編組スリーブ23,23’に挿通されているので、この銅箔糸編組スリーブ23,23’に通された細径同軸ケーブル24のシールド効果を高めることができ、細径同軸ケーブル24における雑音の入り込み及び発散を極力抑えることができる。
【0047】
また、電線束41,42が繰り返し変形(湾曲や回動)しても、銅箔糸編組スリーブ23,23’内で複数の細径同軸ケーブル24同士が移動し、細径同軸ケーブル24に加わる曲げの負荷を逃がしやすくすることができ、細径同軸ケーブル24に過度の負荷がかかりにくい。したがって、細径同軸ケーブルハーネス50が繰り返し変形しても中心導体の破断は極めて生じにくい。
【0048】
さらには、回転、捻回、摺動等を伴う可動部分で使用しても、短い電線束41を内側として湾曲させて配置させることにより、曲げ径の差によるストレスを軽減することができ、この結果、細径同軸ケーブル24の曲げや捻れの可動範囲が大きくなり、よって、各電線束41,42を可動部分の可動に対して良好に追従させることができ、細径同軸ケーブル24の断線の発生を低減し、機器の信頼性を高めることができる。
【0049】
なお、上記実施形態では、複数本の細径同軸ケーブル24を2組の電線群に分割し、それぞれの電線群を銅箔糸編組スリーブ23,23’によって束ねることにより、2組の電線束41,42に分離したが、分割数は2組に限らず、3組以上であっても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、複数本の細径同軸ケーブル24を複数の電線群に分割し、それぞれの電線群を銅箔糸編組スリーブ23によって束ねてシールドしたが、シールド効果の向上を要する細径同軸ケーブル24とあまりシールド効果の向上を要しない細径同軸ケーブル24とに分割し、シールド効果の向上を要する細径同軸ケーブル24の束だけを銅箔糸編組スリーブ23で束ねてシールド効果を向上させても良い。
その場合、あまりシールド効果を要しない細径同軸ケーブル24の電線群は、耐久性や収容スペースなどに応じ、テープ巻きして束ねたり、あるいはスリーブを被せて束ねる。摺動箇所へ配線されず、また収容スペースに余裕がある場合は、安価なテープ巻きで束ねることが好ましく、摺動箇所に配線され、また、収容スペースにおいて高さなどが制限される場合は、スリーブによって束ね、束の径を決まった値とすることが好ましい。
【0051】
図9に示す細径同軸ケーブルハーネス60は、2組の電線束41,42のうちの一方の電線束41を銅箔糸編組スリーブ23で束ね、他方の電線束42をポリマー繊維編組スリーブ61で束ねたものである。
この細径同軸ケーブルハーネス60によれば、狭い収容スペースにおいても筐体同士の相対移動の阻害やハーネスの損傷を起こすことなく、良好に収容することができる。また、電線束41の銅箔糸編組スリーブ23及び電線束42のポリマー繊維編組スリーブ61を扁平させて収容させることで、高さが低い収容スペースにも良好に収容することができる。しかも、銅箔糸編組スリーブ23で束ねた電線束41では、シールド効果の向上を図ることができる。
【0052】
ここで、ポリマー繊維編組スリーブ61としては、ポリマー繊維を編組して筒状に形成したものが用いて好適である。ポリマー繊維として、溶融液晶性ポリマーと屈曲性ポリマーからなるモノフィラメントハイブリッド繊維を用いることが好ましい。このモノフィラメントハイブリッド繊維は、溶融液晶性ポリマーからなる芯成分と、屈曲性ポリマーを含む鞘成分により構成されている。
【0053】
芯成分に使用される溶融液晶性ポリマーは、溶融液晶性(溶融異方性)、すなわち溶融相において光学的液晶性(異方性)を示すポリマーであり、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等の反復構成単位からなる溶融液晶性ポリエステルを使用できる。溶融液晶性は、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。好ましい溶融液晶性ポリエステルの融点(MP)は、260〜360℃、より好ましくは270〜350℃である。ここでいう融点とは、示差走査熱量(DSC:例えばmettler社製、TA3000)で観察される主吸熱ピークのピーク温度である(JIS K7121)。
【0054】
溶融液晶性ポリエステルには、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエステルケトン、フッ素樹脂熱可塑性ポリマーを添加しても良い。また酸化チタン、カオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を含んでいても良い。
【0055】
鞘成分に使用される屈曲性熱可塑性ポリマー(屈曲性ポリマー)は特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエステルエーテルケトン、フッ素樹脂等が挙げられる。特に好ましくは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート及び半芳香族ポリエステルアミドである。なお、ここでいう屈曲性ポリマーとは、主鎖上に芳香環を有さないポリマー及び主鎖上に芳香環を有し、かつ芳香環間の主鎖上に原子が4個以上存在するポリマーをいう。
【0056】
また、鞘成分を、屈曲性熱可塑性ポリマーのみでなく、屈曲性熱可塑性ポリマーと溶融液晶性ポリエステルのブレンドで構成するのが好ましく、特に屈曲性熱可塑性ポリマーを海成分、溶融液晶性ポリエステルを島成分とする海島構造とするのが好ましい。鞘成分を溶融液晶性ポリエステルと屈曲性高分子からなるブレンド(特に海島構造)で構成することにより、鞘成分の強度を高めると同時に鞘成分と芯成分との接着性を顕著に高めることができる。
【0057】
ここでいう海島構造とは、繊維横断面において、マトリックスとなる海成分の中に数十から数百の島が存在している状態を意味する。海成分及び島成分の混合比、溶融粘度等を変えることにより島数を調整することができる。海成分と島成分をチップブレンドする、または両成分の溶融物をスタチックミキサー等で混合することにより得られる。鞘成分中の島成分比は、製造された鞘型複合繊維の横断面積比(島成分/海成分+島成分)において、強度及び耐フィブリル性の点で0.25〜0.5とするのが好ましい。島成分比は、繊維横断面の顕微鏡写真から求められるが、製造時の芯成分と鞘成分の吐出量の体積比により求めることもできる。島成分の直径は0.1〜2μm程度とするのが好ましい。
【0058】
鞘成分の溶融液晶性ポリエステルは、芯成分と同様の溶融液晶性ポリエステルを用いることができ、これらは同種であっても異種であっても良い。好ましくは、鞘成分の屈曲性熱可塑性ポリマーの融点(MP)+80℃以下、MP−10℃以上のポリマーが好ましい。また、鞘成分には、他のポリマーや各種添加剤を含んでいても良い。
【0059】
ポリマー繊維編組スリーブ61を構成するモノフィラメントハイブリッド繊維は、芯鞘型複合繊維の他、偏心芯鞘型を含むものである。複合繊維における芯成分比は0.25〜0.80、好ましくは、0.4〜0.7とする。特に、鞘成分を屈曲性熱可塑性ポリマーと溶融液晶性ポリエステルで構成した場合には、鞘成分も強度向上に寄与するため、芯成分比率を低くした場合においても、強度15g/d以上の優れた複合繊維を得ることができる。芯成分比が大きくなりすぎると芯が露出しやすく、小さすぎると強度の点で不十分となる場合がある。なお、ここでいう芯成分比とは、複合繊維の断面積比(芯成分/(芯成分+鞘成分))を示す。断面積比は、繊維横断面の顕微鏡写真から求められる。得られる繊維の線径変動率は−3.5〜+3.5%、さらに−3.0〜+3.0%であるのが好ましく、抱合度(ガイド摩耗回数)は1200回以上とするのが好ましい。
【0060】
このようなモノフィラメントハイブリッド繊維が、図10に示すように、編組されてポリマー繊維編組スリーブ61が形成されている。例えば、編組の形態は、モノフィラメント繊維を並列にした束61a(図10中、丸印で囲った箇所)を16単位用意して、16のキャリアを用いて筒状に編み込む。一つの束61aを6本から13本として16のキャリアで編組すると、ポリマー繊維編組スリーブ61はおよそ100本から200本のモノフィラメント繊維により構成される。例えば、一つの束61aを9本とした場合、モノフィラメント繊維の数は9×16=144本である。また、1本のモノフィラメント繊維の直径は0.02mmから0.10mmであり、ポリマー繊維編組スリーブ61の厚さ(筒形状の肉厚)は、0.05mmから0.20mmである。繊維の直径が0.045mmである場合には、ポリマー繊維編組スリーブ61の厚さは0.1mm程度である。また、ポリマー繊維編組スリーブ61を円筒状とした状態の断面の直径は、2.5mm以下である。繊維を編み込むときに、断面が楕円のダミーコアを使用したり、断面が円のダミーコアを複数本並べて使用して、その周囲に繊維を編み込むと、断面が楕円の編組スリーブが製造される。
【0061】
このような構成のポリマー繊維編組スリーブ61は、耐摩耗性、強度、および弾性率が優れており、これを用いた細径同軸ケーブルハーネス60は、曲げ性が良好で、なおかつ基板11,12等や電子機器の筐体との繰り返し摩擦によってポリマー繊維編組スリーブ61の表面が荒れて毛羽立つことなく、編組が破れることもない。したがって、細径同軸ケーブル24が繰り返し曲げられても中心導体が破断することを防止できるとともに、複数の細径同軸ケーブル24を束ねた状態を長期に亘って維持することができる。
【0062】
例えば、AWG46の太さの細径同軸ケーブル24を40本接着テープ(テフロン(登録商標)テープ)で束ねて、さらに20本ずつに分岐させてテフロン(登録商標)テープで束ねて、各分岐束部を高さ1.2mmの隙間に入れて摺動させた場合では、8万回の曲げ及び摺動の繰り返しにより、中心導体の破断が生じるが、本実施形態の銅箔糸編組スリーブ23またはポリマー繊維編組スリーブ61で20本ずつ二束に束ねた場合はいずれも、20万回の曲げ及び摺動の繰り返し後も中心導体が破断することがない。
【0063】
また、細径同軸ケーブル24を接着テープ等で拘束して束ねると、その部分の断面形状が比較的崩れにくい(扁平しにくい)が、銅箔糸編組スリーブ23またはポリマー繊維編組スリーブ61を用いて細径同軸ケーブル24を束ねることにより、銅箔糸編組スリーブ23またはポリマー繊維編組スリーブ61とともに複数の細径同軸ケーブル24が断面内方向で移動することができ、束ねた部分が収容スペースに合わせて適宜扁平する。例えば、銅箔糸編組スリーブ23またはポリマー繊維編組スリーブ61を円筒状としたときの直径が2.5mmであっても、スペースに合わせて扁平させることで2mmの厚さ(扁平した楕円の短径)まで扁平することができる。そのような断面が扁平した形状の編組スリーブを使用してもよい。上記の試験例のようにAWG46の太さの細径同軸ケーブル24を40本用意し、本実施形態の銅箔糸編組スリーブ23またはポリマー繊維編組スリーブ61でそれぞれ20本ずつ束ねて高さ1.2mmの隙間に入れて、図1および図2のようにU字(J字)状に曲げて摺動させた場合、スリーブが無理なく扁平するので、上記のように20万回の曲げ及び摺動の繰り返し後も中心導体が破断することがない。一方、接着テープで束ねる場合、直線状態では径が1.4mmとなるがU字状に曲げたときには隙間の高さ方向に2.5mm程度に膨れる。これを無理に1.2mmの高さに押し縮めるので上記のように摺動試験で耐久性がよくないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】(A)は本発明の細径同軸ケーブルハーネスに係る実施形態の例を示す平面図、(B)はその側面図である。
【図2】(A)は上下の基板を重ねた状態を示す平面図、(B)はその側面図である。
【図3】細径同軸ケーブルハーネスの平面図である。
【図4】(A)は細径同軸ケーブルハーネスの端部にコネクタを装着した状態を示す平面図、(B)はその側面図、(C)はその断面図である。
【図5】細径同軸ケーブルハーネスを基板に直付けした状態の例を示す平面図である。
【図6】(A)は細径同軸ケーブルハーネスを基板の片面に直付けした状態の例を示す側面図、(B)は細径同軸ケーブルハーネスを基板の両面に直付けした状態の例を示す側面図である。
【図7】細径同軸ケーブルハーネスを、筐体が回動する携帯電話内に配線した例を示す平面図である。
【図8】細径同軸ケーブルハーネスの変形例を示す平面図である。
【図9】細径同軸ケーブルハーネスの他の変形例を示す平面図である。
【図10】ポリマー繊維編組スリーブの一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
11,12…基板、20,50,60…細径同軸ケーブルハーネス、21a,21b…端部、23,23’…銅箔糸編組スリーブ、24…細径同軸ケーブル、25,51,52…コネクタ、33…結束部(全数束部)、41,42…電線束(分岐束部)、61…ポリマー繊維編組スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の細径同軸ケーブルが束ねられた細径同軸ケーブルハーネスであって、
前記複数本の細径同軸ケーブルのうちの一部の細径同軸ケーブルが束ねられた分岐束部を複数有し、
かつ全部の細径同軸ケーブルが一つに束ねられた全数束部を有し、
前記分岐束部のうちの少なくとも一つは、銅箔糸を編組した筒状のスリーブ内に前記細径同軸ケーブルが通されて束ねられていることを特徴とする細径同軸ケーブルハーネス。
【請求項2】
複数の前記分岐束部の長さが異なることを特徴とする請求項1に記載の細径同軸ケーブルハーネス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の細径同軸ケーブルハーネスであって、
全ての前記分岐束部が銅箔糸を編組した筒状のスリーブに束ねられていることを特徴とする細径同軸ケーブルハーネス。
【請求項4】
請求項1または2に記載の細径同軸ケーブルハーネスであって、
前記分岐束部は、銅箔糸を編組した筒状のスリーブ内に束ねられた束部と、ポリマー繊維を編組したまたは経編みした筒状のスリーブ内に束ねられた束部とからなることを特徴とする細径同軸ケーブルハーネス。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の細径同軸ケーブルハーネスの端部が異なる基板に接続されて配線されていることを特徴とする細径同軸ケーブルハーネスの接続構造。
【請求項6】
請求項5に記載の細径同軸ケーブルハーネスの接続構造であって、少なくとも一つの分岐束部に含まれる細径同軸ケーブルの一端が接続される基板が、その細径同軸ケーブルの他端が接続される他の基板に対して相対的に移動するものであり、
前記分岐束部が、余長を有するか曲げられて配線されていることを特徴とする細径同軸ケーブルハーネスの接続構造。
【請求項7】
請求項1から4の何れか一項に記載の細径同軸ケーブルハーネスを製造する方法であって、
複数本の細径同軸ケーブルを長さの異なる複数の束に分けて、そのうち少なくとも一つの束をなす細径同軸ケーブルを、銅箔糸を編組した筒状のスリーブに通して束ねることで分岐束部を形成した後、
前記複数本の細径同軸ケーブルの端末を成端処理することを特徴とする細径同軸ケーブルハーネスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−92621(P2010−92621A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258779(P2008−258779)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】