説明

細胞、組成物および方法

T細胞および/またはプロT細胞からITNK細胞、標的T細胞、および/または標的プロT細胞を作製するための方法であって、方法は、T細胞および/またはプロT細胞中に存在する少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質の活性および/または効果を調整する工程ならびに上述のT細胞および/またはプロT細胞を、ITNK細胞または標的T細胞および/もしくは標的プロT細胞に変換する工程を含む方法が記載される。そのような方法によって作製されるITNK細胞、標的T細胞、および/または標的プロT細胞ならびにBcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞ならびに医療におけるそのような細胞またはBcl11bの調整因子の使用もまた、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITNK(induced T-to-Natural-Killer)細胞、それらの作製のための方法、およびそのような細胞の使用ならびにT細胞を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の主な構成要素を構成する一種の細胞障害性リンパ球である。NK細胞は、腫瘍ならびにウイルスおよび微生物が感染した細胞の拒絶に主な役割を果たす。NK細胞は、大型顆粒リンパ球(LGL)であり、幹細胞または多能性前駆体から分化した細胞を構成する。幹細胞からの様々な細胞型の発生を制御する分子メカニズムは、完全には理解されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Ikawa et al., 2001 ; Yokota et al., 1999
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、T細胞および/またはプロT細胞からITNK細胞を作製するための方法であって、T細胞またはプロT細胞中に存在するBcl11b遺伝子および/またはBcl11bタンパク質の活性および/または効果を調整し、それによって、上述のT細胞および/またはプロT細胞をITNK細胞に変換する工程を含む方法を提供する。
【0005】
本発明は、標的T細胞および/または標的プロT細胞を作製するための方法であって、T細胞および/またはプロT細胞中に存在する少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果を調整する工程ならびに上述のT細胞および/またはプロT細胞を上述の標的T細胞および/または標的プロT細胞に変換する工程を含む方法を提供する。
【0006】
本発明は、T細胞またはプロT細胞から取得可能であるまたは取得されるITNK細胞を提供する。適切には、T細胞またはプロT細胞は、T細胞またはプロT細胞がITNK細胞に変換することができるように活性および/または効果が調整されているBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物を含む。
【0007】
本発明はまた、疾患の予防または治療などのような医療における使用のための、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞(以下TBcl11b細胞と呼ばれる)にも関する。本発明はまた、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である単離または精製成熟活性化T細胞にも関する。
【0008】
本発明は、それぞれT細胞またはプロT細胞から取得可能であるまたは取得される標的T細胞または標的プロT細胞を提供する。適切には、標的細胞は、標的T細胞または標的プロT細胞がITNK細胞に変換することができるように、野生型細胞と比較した場合に、活性および/または効果が調整されている少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物を含む。本開示との関連における野生型細胞は、癌細胞または形質転換細胞を指さない。
【0009】
本発明は、薬学的に許容される賦形剤と一緒にITNK細胞、標的T細胞、または標的プロT細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明は、療法における使用のためのITNK細胞または標的T細胞もしくは標的プロT細胞を提供する。
【0011】
本発明は、癌またはウイルス感染症などのような疾患に罹患しているまたはそれに対して感受性のヒトまたは非ヒト哺乳動物対象を治療するための方法であって、治療有効量のITNK細胞または標的T細胞/プロT細胞、好ましくは、その対象から得られたT細胞またはプロT細胞に由来するITNK細胞または標的T細胞/プロT細胞を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0012】
本発明は、癌またはウイルス感染症などのような疾患に罹患しているまたはそれに対して感受性のヒトまたは非ヒト哺乳動物対象を治療するための方法であって、T細胞またはプロT細胞におけるBcl11b遺伝子またはタンパク質の発現、活性、および/または効果を調整または阻害し、かつこれらのT細胞またはプロT細胞のITNK細胞への変換を引き起こす、治療有効量の化合物を対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0013】
本発明は、Bcl11b遺伝子産物および/またはタンパク質産物が相互作用する、またはそれに関して効果を有する、標的を同定するためのアッセイであって、Bcl11b遺伝子および/または遺伝子産物の活性を調整する工程ならびに潜在的な下流標的に対する相互作用または効果をモニターする工程を含むアッセイを提供する。任意選択で、このように同定された下流標的は、ITNK細胞産生を引き起こすまたは支援するように調整される。
【0014】
本発明はまた、Bcl11b活性の上流の調整因子、適切には、T細胞またはプロT細胞のITNK細胞または標的T細胞/プロT細胞への変換を引き起こすまたは支援することができる上流の調整因子にも関する。本発明はまた、適切には、本明細書において開示されるようにITNK形成に対する上流の調整因子の効果によって評価されるように、Bcl11b遺伝子またはタンパク質の発現または活性または効果に影響を与えることができる化合物の同定を含む、Bcl11bの上流の調整因子の同定のための方法にも関する。
【0015】
一態様では、本発明は、T細胞のITNK細胞への変換を達成するための、Bcl11b遺伝子もしくはタンパク質の発現もしくは活性を調節するまたはBcl11b遺伝子もしくはタンパク質の機能的に下流にあるまたはBcl11b遺伝子の機能的に上流にある因子の使用およびT細胞のITNK細胞への変換を達成するためのこれらの因子の調整因子の使用に関する。
【0016】
本発明は、T細胞またはプロT細胞のITNK細胞への再プログラムを支援する化合物の同定のためのアッセイであって、T細胞またはプロT細胞を試験化合物と接触させる工程およびT細胞のITNK細胞または標的T/プロT細胞への変換をモニターするまたは選択する工程を含むアッセイを提供する。
【0017】
本発明は、T細胞またはプロT細胞のITNK細胞への再プログラムをもたらすまたはそれに寄与する突然変異の同定のためのアッセイであって、T細胞またはプロT細胞の突然変異誘発の工程およびT細胞のITNK細胞への変換をモニターしまたは選択し、その後に、突然変異の位置の同定の工程を含むアッセイを提供する。
【0018】
本発明は、T細胞のITNK細胞への再プログラムを支援する化合物の同定のためのアッセイであって、Bcl11b DNAもしくはRNAまたはBcl11bタンパク質に結合する化合物をスクリーニングする工程および上述の化合物がT細胞のITNK細胞への変換を促進することができるかどうかを評価する工程を含むアッセイを提供する。
【0019】
本発明は、そのようにT細胞またはプロT細胞のITNK細胞への変換が発見された化合物の使用をさらに提供する。
【0020】
本発明は、ITNK細胞および/または標的T細胞もしくは標的プロT細胞を持つ非ヒト動物をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】Bcl11bは、T細胞発生およびT細胞の同一性を維持するのに不可欠である。(A)IL-2の非存在下における培養DN1およびDN2胸腺細胞(+OHT)のフローサイトメトリープロファイル。(B)IL-2を補足した培養flox/flox DN3胸腺細胞(±OHT)のフローサイトメトリープロファイル。(C)OHT処理flox/flox DN3胸腺細胞によるOP9-DLI間質細胞の死滅。(D)精製NKp46+細胞からのDNAを調製し、TCRβ座でのDJ(上)およびVDJ(下)組換えを検出するためにPCRにかけた。(E〜G)DN3胸腺細胞からのNKp46+CD3+ITNK細胞における遺伝子発現のマイクロアレイ分析。(E)アレイデータの2方向階層的クラスターマップ。(F)および(G)ITNK、LAK、およびDN3細胞の中で選択された遺伝子の遺伝子発現のqRT-PCR検証。
【図2A−B】T細胞のITNKへの、効果のある再プログラム。(A)単一のflox/flox DN3細胞から再プログラムされたITNKの代表的なフローサイトメトリープロファイル。(B)2つの代表的なT細胞(T1、T2)およびITNK(I1、I2)ウェルにおけるBcl11b欠失のPCR遺伝子型同定。
【図2C−D】T細胞のITNKへの、効果のある再プログラム。(C)特有のDJ組換えを示す5つのITNKウェル(I1〜I5)のTCRβ座でのDJ組換え。(D)親のDN3胸腺細胞(T)およびITNK細胞のギムザ染色。
【図2E−e】T細胞のITNKへの、効果のある再プログラム。(E)および(e)ITNK細胞の透過電子顕微鏡写真。
【図2F】T細胞のITNKへの、効果のある再プログラム。(F)示すエフェクター対標的比(E:T)でB16F10、RMA、およびRMA-S腫瘍細胞標的を用いて標準の51Cr放出アッセイにおいて測定されたITNK(「+OHT」と標識)およびLAKの細胞毒性。-OHT:flox/flox T細胞。
【図3A−B】in vivoで再プログラムされたITNKは、強力な腫瘍細胞キラーであった。(A)OHT処理flox/floxおよびflox/+マウスからの胸腺細胞および脾細胞のフローサイトメトリー分析。(B)OHT処理flox/floxマウスにおける胸腺γδT細胞からのITNKの分析。
【図3C−D】in vivoで再プログラムされたITNKは、強力な腫瘍細胞キラーであった。(C)flox/flox DP胸腺細胞を注射したRag2-/-Il2rg-/-レシピエントにおけるITNK産生。(D)レシピエントマウスの脾細胞からのIL-2におけるITNKのex vivo増殖。
【図3d−E】in vivoで再プログラムされたITNKは、強力な腫瘍細胞キラーであった。(d)4つのRag2-/-Il2γc-/-レシピエントマウスの脾臓型(splenotype)から始める、in vivo再プログラムiTNK細胞のex vivo増殖。(E)ex vivo増殖ITNK(「+OHT」と標識)は、示すエフェクター対標的比(E:T)でB16F10、RMA、およびRMA-S腫瘍細胞標的を用いる51Cr放出死滅アッセイにおいて使用した。-OHT:flox/flox T細胞。
【図3F−G】in vivoで再プログラムされたITNKは、強力な腫瘍細胞キラーであった。(F)ITNKは、腫瘍転移を予防した。Rag2-/-Il2rg-/-レシピエントに、処理(+OHT)もしくは未処理(-OHT)flox/flox DP胸腺細胞またはPBSを移植し、50,000のB16F10メラノーマ細胞を続いて静脈内注射した。(G)in vivo iTNKは、マウスにおいてB16F10メラノーマ細胞を有効に排除した。
【図4】Bcl11bは、Notchシグナル伝達の直接的な下流標的遺伝子である。(A)ウェスタンブロットによって検出されるOHT処理後のT細胞におけるBcl11bタンパク質。(B)推定上のCSL結合部位(BS)を示すBcl11b座の概略図および関連性がないコントロール結合部位(CTL)の概略図。(C)ゲノムDNAは、CSLまたはコントロールIgG抗体を使用して、胸腺細胞の免疫沈降から調製し、Bcl11b座の推定上のCSLまたはコントロール結合部位の側面に位置するプライマーを使用して増幅した。
【図5】Bcl11b-tdTomatoレポーターマウスの生成。(A)tdTomatoカセットは、Bcl11b座の3'UTRを標的にした。(B)Bcl11b 3'UTRでのtdTomatoカセットの挿入は、T細胞発生に影響を与えなかった。
【図6】Bcl11b-tdTomatoレポーターマウスを使用する造血系列におけるBcl11b発現の検出。(A)CD4-CD8-ダブルネガティブ(DN;DN1〜DN4)胸腺細胞亜集団。(B)ダブルポジティブ(DP)胸腺細胞(CD4+CD8+)、脾臓CD4+およびCD8+T細胞、胸腺γδT細胞、ならびに脾臓NKT細胞(CD3+CD1d+)。(C)骨髄B細胞(CD19+B220+)および骨髄細胞(CD11b+Gr-1+)。(D)脾臓(CD3-)および胸腺(CD3-CD4-CD8-)NK細胞。(E)ソートされた脾臓ナイーブ(CD44-CD62L+)および活性化(CD44+CD62L-)T細胞集団におけるBcl11b発現のqRT-PCR。(F)Bcl11btd/+マウスにおけるナイーブおよび活性化T細胞におけるBcl11b発現の定量。
【図7】フローソーティングおよび分析のための細胞集団の同定のための戦略。(A)Lin-ならびにCD25およびCD44の発現によって定義されるダブルネガティブ(DN)胸腺細胞(DN1〜DN4)集団の同定。(B)γδT細胞の同定。(C)B細胞を最初にゲートアウトする(またはFACSソーティングに先立って磁気的に除外する)ことによる脾臓中のNKT細胞の同定。(D)NK前駆型およびNK細胞サブセット細胞の同定。(E)胸腺NK細胞はNK1.1+CD127+胸腺細胞として定義した。(F)ナイーブ(CD44-CD62L+)および活性化(CD44+CD62L-)T細胞の同定。
【図8A−B】Bcl11b欠損T細胞のin vitro分析。(A)Bcl11bコンディショナルノックアウト対立遺伝子の模式図。(B)Bcl11b欠損DN胸腺細胞の分析のための実験計画。
【図8C−E】Bcl11b欠損T細胞のin vitro分析。(C)DN1およびDN2 OHT処理flox/flox胸腺細胞からのNKp46+CD3-細胞は、TCRβを発現しなかった。(D)DN1およびDN2の培養物からの、T(NKp46-CD3+)細胞集団ではなくITNK(NKp46+CD3-)におけるホモ接合型Bcl11b欠失。(E)NKp46+細胞ではなくT細胞が、未処理flox/flox胸腺細胞から得られた。
【図8F−H】Bcl11b欠損T細胞のin vitro分析。(F)OP9間質細胞上で培養した、IL-2またはIL-15の非存在下における、OHT処理DN1およびDN2 flox/flox胸腺細胞からのNKp46+TCRβ-細胞。(G)NKp46+TCRβ-細胞は、T細胞培地において、flox/+ではなくOHT処理DN3 flox/flox胸腺細胞において検出された。(H)骨髄細胞培養条件におけるBcl11b欠損DN3胸腺細胞のNKp46+細胞への再プログラム。
【図8I−L】Bcl11b欠損T細胞のin vitro分析。(I)B細胞培養条件における、Bcl11b欠損DN3胸腺細胞のNKp46+CD19-細胞への再プログラム。(J)LAK対DN3(緑色)およびITNK対DN3(紫色)の間のアップレギュレート(>2倍)遺伝子のベン図比較。(K)DP flox/flox胸腺細胞からのITNKは、OHTを用いて処理し、IL-2の存在下においてOP9-DL1上で培養した。(L)脾臓flox/flox CD8+T細胞からのITNKは、OHTを用いて処理し、IL-2の存在下においてOP9-DL1上で培養した。
【図9A−a】in vitro再プログラムITNK表現型の特徴づけ。(A)および(a)単一のDN3胸腺細胞のITNKへの再プログラムのための実験計画。
【図9B−F】in vitro再プログラムITNK表現型の特徴づけ。(B〜C)in vitroでDN3胸腺細胞から再プログラムされたITNKによる、細胞内およびNK細胞表面マーカーの発現。(D)in vitroでBcl11b欠損DP胸腺細胞から再プログラムされたITNKによるNK細胞マーカーの発現。(E)ITNKはCD127を発現せず、したがって胸腺NK細胞ではなかった。(F)DN3胸腺細胞から再プログラムされた、大量培養ITNKにおけるCD27およびCD11bの分析。
【図10A−C】flox/floxマウスにおけるin vivo再プログラムITNK細胞の分析。(A)in vivo再プログラムITNK細胞の分析のための実験計画。(B)flox/floxマウスにおけるITNK(NKp46+CD3+およびNKp46+CD3-)細胞集団におけるBcl11b欠失のPCR。(C)NKp46+ITNKにおけるCD4およびCD8発現のフローサイトメトリー分析。
【図10D−F】flox/floxマウスにおけるin vivo再プログラムITNK細胞の分析。(D)OHT処理マウスからの全胸腺細胞または脾細胞のex vivo増殖後の細胞のフローサイトメトリー分析。(E)胸腺および脾臓におけるCD1d制限NKT細胞のフローサイトメトリー分析。(F)ex vivo増殖ITNK培養物におけるCD1d制限細胞の分析。
【図10G−H】flox/floxマウスにおけるin vivo再プログラムITNK細胞の分析。(G)CD8+T細胞、CD8+ITNK、およびLAKにおける、いくつかの重要なTまたはNK細胞関連遺伝子のqRT-PCR分析。(H)タモキシフェンを用いて治療したflox/floxまたはflox/+マウスからの脾細胞は、ITNK上のCD3の発現を確認するために、NKp46、NK1.1、CD8、およびCD3を用いて染色した。
【図11A−C】DP胸腺細胞からのin vivo再プログラムITNKは、腫瘍転移を予防した。(A)DP胸腺細胞のITNKへのin vivo再プログラムの分析のための実験計画。(B)脾臓中のほとんどのITNKは、CD8+であった。(C)ITNKは、完全なBcl11b欠失を有したが、ドナー由来NKp46-細胞は、なお、loxPが導入された対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを保持した。
【図11D−E】DP胸腺細胞からのin vivo再プログラムITNKは、腫瘍転移を予防した。(D)ITNKはまた、骨髄および末梢血においても見つけられた。(E)in vivo再プログラムITNK上のさらなるNK細胞表面マーカーの発現。
【図11F−G】DP胸腺細胞からのin vivo再プログラムITNKは、腫瘍転移を予防した。(F)ITNKは、腫瘍転移を予防した。Rag2-/-Il2rg-/-レシピエントに処理(+OHT)もしくは未処理(-OHT)flox/flox DP胸腺細胞またはPBSを移植し、5×104 B16F10メラノーマ細胞を続いて静脈内注射した。(G)プロットは、in vivo再プログラムおよび腫瘍攻撃後にレシピエントマウスから得られたITNK細胞(正方形)の百分率および観察された肺コロニー(円形)の数字の間の逆相関を示す。
【図12】Bcl11bは、Notchシグナル伝達の下流に作用し、T細胞発生を促進し、T細胞の同一性を維持することを示す作動モデル。
【図13】a.蛍光基質FDGを使用するBcl11b-lacZノックインマウスからの胸腺細胞におけるBcl11bの発現。b.5つのDN1サブ集団におけるBcl11b発現の検出。c.上、Bcl11bの急性の損失は、DN1胸腺細胞にNK特異的遺伝子を発現させた。下、DN2胸腺細胞におけるBcl11bの欠失は、NK様細胞に変換する同じ表現型のもとになった。
【図14】a.左のパネル:異なるダブルネガティブ(DN)胸腺細胞集団;右のパネル:DN1胸腺細胞の5つのサブ集団。b.Bcl11b欠損DN1胸腺細胞を分析するフローチャート。
【図15】a.ダブルポジティブ(DP)胸腺細胞はBcl11b欠失後にNKp46を発現した。b.精製CD8シングルポジティブ細胞(-OHT)は、OP9-DL1間質細胞上で増殖した。それらは、NKp46を発現しなかった。一度Bcl11bが欠失したら、それから、細胞の38%は、間質細胞を死滅させたNKp46を発現した。c.T細胞培地中で成長する精製CD4シングルポジティブ細胞(-OHT)(左)。Bcl11b欠失(+OHT)は、これらのCD4 T細胞にNKp46およびNKG2Dを発現させた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
Table 1(表1) マイクロアレイ分析における、ITNK、DN3、およびLAK細胞の遺伝子発現プロファイルの比較。
Table 2(表2) LAKおよびITNKの細胞表面受容体レパートリーの比較。
Table 3(表3) マイクロアレイ分析におけるBcl11bの欠失の24時間および48時間後の胸腺細胞における遺伝子発現プロファイルの変化。
Table 4(表4) PCRプライマー
【0023】
T細胞は、DN1(ダブルネガティブステージ1)、DN2、DN3、およびDN4、DP(ダブルポジティブ)として知られている一連の工程を通して、NKおよび骨髄の素質を有する初期T細胞前駆体から発生し、次いで、シングルポジティブ(SP)成熟CD4またはCD8ポジティブT細胞になる。ヘルパー-T細胞、細胞障害性T細胞、および調節性T細胞を含む様々な種類のT細胞がある。
【0024】
T細胞の活性化は、適切な抗原MHC複合体との相互作用によって引き起こされる。たとえば、ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原が提示される場合、活性化されるようになる。T細胞の活性化のプロセスは、当業者に知られている。
【0025】
本発明において、発明者らは、Bcl11b遺伝子/遺伝子経路の調整により、T細胞およびプロT細胞がITNK細胞に再プログラムされるのを可能にすることを示す。データは、DN、DP、およびSP T細胞について示す。さらに、発明者らは、そのようなITNK細胞が、in vivoモデルにおける疾患の回復において有効であり、動物モデルに対していかなる副作用をも示さないことを示す。マウスおよびヒトにおけるBcl11bタンパク質は、高度に保存されており、さらに、ヒトおよびマウスの両方におけるT細胞発生は、非常に類似している。この情報は、マウスにおける発見から、ヒト疾患の治療または予防が推定されるかもしれないことを示す。
【0026】
本明細書におけるBcl11bに対する言及は、他の種において同定されるかもしれないあらゆるBcl11b相同体、適切には、全体的にまたは部分的に欠失した場合に、その種においてITNK細胞の生成をもたらし得る相同体を含む。
【0027】
本発明は、T細胞および/またはプロT細胞からITNK細胞を作製するための方法であって、T細胞またはプロT細胞中に存在する少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物の活性および/または効果を調整し、それによって、上述のT細胞および/またはプロT細胞をITNK細胞に変換する工程を含む方法を提供する。
【0028】
本発明は、標的T細胞および/または標的プロT細胞を作製するための方法であって、T細胞および/またはプロT細胞中に存在する少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果を調整する工程ならびに上述のT細胞および/またはプロT細胞を上述の標的T細胞および/または標的プロT細胞に変換する工程を含む方法を提供する。
【0029】
T細胞に対する言及は、たとえば、DN1、DN2、DN3、DN4、DP胸腺細胞、CD4もしくはCD8シングルポジティブ成熟T細胞などのようなDN、DP、もしくはSP T細胞またはγδ-T細胞を含む。プロT細胞に対する言及は、T細胞に変換することができる一般的なリンパ系前駆細胞、幹細胞、および他の非T造血細胞または非造血細胞を含む。
【0030】
標的T細胞または標的プロT細胞は、T細胞またはプロT細胞における少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物の活性および/または効果の調整の結果としてITNK細胞に変換する素質を有するが、ITNK様の表現型を生ずるようにはまだ変換していない細胞である。
【0031】
Bcl11b遺伝子またはタンパク質の活性または効果の調整は、適切には、直接または間接的に、Bcl11bの活性または効果を阻害することによって達成される。
【0032】
適切には、阻害は、上述のBcl11b遺伝子の少なくとも一部分、適切には、Bcl11b遺伝子の少なくとも1つの単一のエクソン、適切には、Bcl11b遺伝子の少なくともエクソン4の欠失を含む。一態様では、遺伝子は、すべて欠失している。適切には、Bcl11bの活性または効果の阻害は、Bcl11b座への遺伝子カセットの挿入を通してBcl11bの機能を破壊することによって達成されてもよい。適切には、Bcl11bの活性または効果の阻害は、Bcl11b座またはBcl11bを調節するもしくはBcl11bによって調節される遺伝子座でのエピジェネティックな変化を調整することによって達成されてもよい。適切には、Bcl11bの活性または効果の阻害は、Bcl11bの遺伝子産物またはその上流もしくは下流遺伝子を中和するために抗体(従来のまたはペプチドAb)を使用することによって達成されてもよい。
【0033】
他の態様では、本発明は、Bcl11bコンディショナルノックアウト(cko)対立遺伝子を含むゲノム、好ましくは、そのようなコンディショナル突然変異を有するT細胞またはプロT細胞に関する。コンディショナル対立遺伝子の生成は、bcl11bが発現する条件下で細胞の成長を可能にし、その後に、bcl11b遺伝子を欠失させ、ITNK表現型を発現させる異なる条件下での成長を可能にする。したがって、本発明はまた、T細胞またはプロT細胞における少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物の活性および/または効果の調整に適したコンディショナル突然変異の活性化を含む、ITNK細胞の誘発のプロセスに関する。
【0034】
一態様では、調整は、直接、Bcl11b遺伝子発現のレベルでのものであり、Bcl11bの発現は、好ましくは、ITNK細胞産生を刺激するために阻害される。一態様では、Bcl11b遺伝子の配列またはプロモーター領域もしくはエンハンサー領域などのような制御配列は、転写または翻訳が悪影響を及ぼされるように突然変異させてもよい。
【0035】
一態様では、Bcl11bの発現の制御は、mRNA発現またはタンパク質翻訳の制御によって達成される。一態様では、Bcl11bの発現は、アンチセンスRNAまたは低分子干渉RNA(siRNA)もしくはmiRNAの使用によって調整される。
【0036】
一態様では、Bcl11bの調整は、タンパク質レベルでのものである。Bcl11bタンパク質の活性は、たとえば、Bcl11b結合タンパク質によって調整されてもよい、好ましくは阻害されてもよい。
【0037】
一態様では、上述のBcl11b遺伝子またはタンパク質の活性および/または効果の調整または阻害は、上述のBcl11bタンパク質が関与する生物学的経路における下流の調整をもたらす。一態様では、上述の下流の調整は、上述の生物学的経路における下流標的の存在および/または活性および/または効果を調節する。Bcl11bによって調節される下流のエレメントの評価は、T細胞およびプロT細胞からのITNK作製を制御するかもしれない代替標的が同定されるのを可能にする。本発明はまた、下流標的の同定にも関する-下記を参照されたい。
【0038】
本発明は、幹細胞または前駆体を含む、T細胞またはプロT細胞から取得可能であるまたは取得されるITNK細胞を提供し、T細胞またはプロT細胞は、T細胞またはプロT細胞がITNK細胞に変換することができるように活性および/または効果が調整されているBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物を含む。
【0039】
本発明はまた、T細胞またはプロT細胞がITNK細胞に変換することができるように、野生型細胞と比較した場合に、活性および/または効果が調整されている少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/または遺伝子産物を含む標的T細胞または標的プロT細胞をも提供する。標的T細胞または標的プロT細胞は、ES細胞、成体幹細胞、または誘発性多能性幹細胞(IPS細胞)であってもよい。
【0040】
本発明の一態様では、ITNK細胞または標的T/プロT細胞は、Bcl11b遺伝子のすべてまたは一部分が欠失しているT細胞またはプロT細胞から取得される。一態様では、Bcl11b遺伝子の両方の対立遺伝子またはその一部分において欠失がある。
【0041】
本発明はまた、Bcl11b遺伝子のすべてまたは一部分が欠失している哺乳動物ゲノムにも関する。
【0042】
本発明はまた、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞(TBcl11b細胞とも呼ばれる)にも関する。この文脈における成熟T細胞は、癌T細胞または形質転換T細胞ではなく正常な成熟T細胞を指す。下記実施例の部において示されるように、単一細胞レベルで、活性化脾臓T細胞の約10〜20%が、非常に低レベルのBcl11b発現を有することが発明者らよって観察された(図6(F)もまた参照されたい)。よって、医療における、特に癌およびウイルス感染症の治療におけるこれらの細胞の使用は、本発明の態様を形成する。
【0043】
本発明はまた、T細胞およびプロT細胞および幹細胞などのような細胞ならびにマウスなどのような非ヒト動物などのような動物にも関し、このゲノムは、Bcl11bコンディショナルノックアウト(cko)対立遺伝子を含む。
【0044】
一態様では、Bcl11b遺伝子のすべてまたは一部分は、Bcl11b遺伝子またはその一部分が欠失するのを可能にするように、loxPが導入されているまたは他の場合にはレコンビナーゼ標的配列と関連している。一態様では、loxPが導入された遺伝子を含む細胞は、タモキシフェン(OHT)誘発性Creレコンビナーゼを発現する。OHT誘発によるCreレコンビナーゼの発現は、適切には、Bcl11bのすべてまたは一部分を欠失させる。
【0045】
本発明はまた、ITNK細胞または標的ITNK細胞を作製するために、欠失以外によってBcl11b遺伝子またはタンパク質活性が調整された細胞または非ヒト哺乳動物にも関する。
【0046】
ITNK細胞は、適切には、他の細胞型から取得される、または取得可能であり(T細胞またはプロT細胞、適切には、DN1、DN2、DN3、DN4、DP胸腺細胞、CD4またはCD8シングルポジティブ成熟T細胞、一般的なリンパ系前駆細胞または幹細胞など)、適切には、1つもしくは複数のまたはすべての以下の特性を示す。
(a)たとえば図2D、図2E、および図2eにおいて示されるようにT細胞と比較してナチュラルキラー細胞と類似する形態。下記に示されるように、再プログラムされた胸腺細胞は、NK細胞表面受容体を発現しただけでなく、形態学的にT細胞のように見えず、むしろ、それらは、サイズが大きく、細胞質が大きく、顆粒および豊富な小胞体(ER)において高度なタンパク質合成活性を有する通常のNK細胞に非常に類似していた(図2D、2E、および2e)。
(b)たとえば図2Cにおいて示されるようなTCRβ特異的ゲノムDNA再編成;下記に示されるように、ある種のITNK細胞は、T細胞としてのそれらの起源を示す再編成されたTCRβ座を有する。
(c)たとえば図1Eおよび1Gにおいて示されるように、ITNK細胞を発生させた親細胞よりも、LAK細胞などのようなNK細胞の遺伝子発現プロファイルにより類似する遺伝子発現プロファイル。親DN3胸腺細胞およびそれらのBcl11b欠損誘導体の間で発現差異を示した遺伝子をTable 1(表1)中に列挙する。遺伝子のこの表を考慮すると、ITNK細胞は、LAK細胞と同じ方向(増加または減少)で異なって発現される(2倍以上の差異)、適切には少なくとも50%、適切には少なくとも60%、適切には少なくとも70%の遺伝子を有する。
(d)ZFP105、IL2Rβ、Id2、JAK1、NKG2D、NKG2A/C/E、B220、Rog (Zbtb32)、Tnfrsf9、Cdkn1c、Trail、パーフォリン、インターフェロン-γ、NK1.1、NKp46、E4bp4、NKG7、KLRD1、LTA、PLCG2、Ly49C/I、およびLy49G2などのような、非エフェクター細胞またはナイーブT細胞上で見つけられないまたは高レベルで発現されない1つまたは複数のNK特異的遺伝子の細胞発現。
(e)ITNK細胞が由来する親細胞と比較して、Notch1、Est1、Hes1、Gata3、Deltax1、TCRβ、CD3、Tcf1、IL7Ra、T-bet、CD8の発現の減少または無発現などのような、1つまたは複数のT系列遺伝子の発現の減少または無発現。一態様では、ITNK細胞は、CD8+細胞に由来し、IL7Rおよび/またはT-betを発現せず、低レベルのCD8aを発現する。
(f)細胞死滅能力、たとえば、適切には、使用される前駆細胞(親T細胞またはプロT細胞)と比較して、腫瘍の形成または成長を予防するまたは改善する能力、間質細胞、腫瘍細胞、または感染細胞を死滅させる能力。細胞死滅は、本明細書における実施例の部において記載される方法によってin vitroまたはin vivoで評価されてもよい。さらに、ITNKは、MHC-I分子を認識することができる。さらに、in vivoで作製されたITNK細胞は、MHC-Iに制限されず、MHC-Iポジティブ細胞またはネガティブ細胞を死滅させることができる。in vitroまたはin vivoで作製されたかにかかわらずITNK細胞は、MHC-I低細胞またはネガティブ細胞を死滅させる。
(g)転写または翻訳もしくはタンパク質配列に影響を与えるまたは他の場合にはBcl11b活性もしくは効果に影響を与える、適切にはITNK作製を促進する、Bcl11b遺伝子または制御配列における突然変異。
【0047】
適切には、細胞は、OHT処理によってなどのようにT細胞またはプロT細胞からITNK細胞への変換を開始する処理の後に、適切には10日などのように、5〜15日などのように、2〜20日以内にOP9-DL1間質細胞を死滅させることができる。適切には、ITNKは、1か月の間、in vitroで培養された場合でさえ、死滅能力を保持する。
【0048】
疑問を回避するために、T細胞および/またはプロT細胞におけるBcl11b活性および/または効果を調整することによって作製されたITNK細胞は、Bcl11bが、後に、そのような細胞において通常のレベルに戻った場合でさえ、それらが細胞死滅能力を保持する場合、本発明によればITNK細胞のままである。
【0049】
適切には、本発明のITNK細胞は、上記の(a)、(c)、(d)、(e)、および(f)における特性を示す。適切には、本発明のITNK細胞は、上記の(a)または(c)または(d)または(e)および(f)における特性を示す。ITNK細胞はまた、1つ以上のまたはすべての以下の特性を有していてもよい。
【0050】
適切には、ITNK細胞の増殖および/または分化は、培養基中にIL-2またはIL-15を補足することによって促進される。
【0051】
適切には、ITNKは、適切には、NKp46+細胞の存在量によって評価されるように、Bd11bが欠失したもしくは他の場合には影響を与えられたまたはBcl11b経路が調整された後に、10日などのように、5〜15日などのように、2〜20日以内にT細胞培養物から成長することができる(図8K、8L、15a、および15b)。
【0052】
適切には、T細胞/プロT細胞からITNK細胞への、T細胞/プロT細胞からの変換は、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上効果がある、適切には100%効果があるなどのように50%以上効果があり、これによって、Bcl11b遺伝子が欠失しているまたは他の場合にはBcl11b経路が調整されているすべての細胞のたとえば50%以上が、続いてITNK細胞を作製することを意味する。
【0053】
適切には、in vivoで作製されたITNK細胞は、少なくとも1か月、好ましくは2か月、好ましくは3か月の間、レシピエントマウスなどのようなレシピエント宿主において検出可能である。適切には、レシピエント動物は、目立つ異常を示さず、ITNK細胞が、レシピエントマウスにおける正常な宿主細胞を攻撃しないことを示す。
【0054】
適切には、本発明によるITNK細胞は、サイトカイン放出などのような免疫応答の調節に関するNK細胞の機能を有する。
【0055】
適切には、ITNKは、細胞培養中で少なくとも3週間増殖し続けることができる。
【0056】
一態様では、ITNK細胞は、NKp46を発現しない。
【0057】
適切には、ITNK細胞またはT細胞は、Notchシグナル伝達と非依存性とすることができる。
【0058】
一態様では、ITNK細胞は、NK細胞と完全には同一ではない。一態様では、ITNK細胞は、Ly49Dを発現しない。一態様では、ITNK細胞は、CD8、CD3e、およびβTCRなどのような1つまたは複数のT細胞表面マーカーを発現しない。
【0059】
他の態様では、ITNK細胞は、LAKに特異的なものとしてTable 2(表2)中に列挙されるNK細胞特異的マーカーの少なくとも20%、好ましくは、これらの知られているNK細胞マーカーの40%、60%、または80%を発現する。
【0060】
一態様では、in vivoで作製されたITNK細胞は、MHC-Iに制限されず、MHC-Iポジティブ細胞またはネガティブ細胞を死滅させることができる。in vitroまたはin vivoで作製されたかにかかわらずITNK細胞は、MHC-I低細胞またはネガティブ細胞を死滅させる。これは、下記実施例の部においてさらに詳細に説明され、図3Eにおいて示され、ここで、LAKと異なり、in vivoで作製されたITNK細胞は、RMA-Sの死滅とほとんど同じ効率でRMA細胞を死滅させたことが示される。そのようなin vivoで作製されたITNKは、それらの使用が自己免疫疾患の危険性を有していないという利点を有する。
【0061】
一態様では、ITNK細胞は、少なくとも2つ、3つ、または4つ以上の上記に列挙される特性、好ましくはすべてのそのような特性を有する。
【0062】
一態様では、ITNK細胞は、再編成されたTCRβ座を示し、LAKに特異的なものとしてTable 2(表2)中に列挙される遺伝子のすべてを発現するとは限らず、本明細書において記載される細胞死滅を示す。
【0063】
一態様では、本発明は、本明細書における実施例1.1.9および1.1.11の方法などのような方法によって評価されるように細胞死滅能力を有するが、Ly49Dを発現しない、本発明によって取得可能であるまたは取得されるITNK細胞を提供する。
【0064】
一態様では、NK細胞は、ITNK細胞が排除されるのを可能にするための自殺遺伝子または他のメカニズムを含む。例として、ITNK細胞またはT細胞またはプロT細胞のゲノムは、ネガティブ選択カセットを含有するように操作されてもよい。
【0065】
本発明は、薬学的に許容される賦形剤と一緒にITNK細胞を含む医薬組成物を提供する。適した賦形剤は、当技術分野においてよく知られており、薬学的に許容されるバッファー、保存剤、希釈剤、およびキャリアならびにその他同種のものを含む。
【0066】
抗癌剤または抗感染剤、たとえば抗ウイルス剤などのような治療剤との本発明のITNK細胞の混合物もまた提供される。ITNK細胞は、抗癌療法または抗ウイルス療法などのような疾患療法において、複合調製物において、同時の、別々の、または連続的な使用に使用されてもよいが、ITNKの使用は、癌療法および抗ウイルス療法に限定されず、ITNKは、多くの種類の異常細胞を排除するのに有用であってもよい。たとえば、ITNKはまた、細菌、酵母、および寄生虫の感染症の治療または予防に使用されてもよい。
【0067】
適している抗癌剤は、アルキル化剤、代謝拮抗薬、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤を含み、他の薬剤は、ある方法で細胞分裂またはDNA合成および機能に影響を与える。他の薬剤は、モノクローナル抗体およびチロシンキナーゼ阻害剤およびナノ粒子などのような標的療法を含む。さらに、アジュバント療法として知られているホルモン治療などのように、細胞を直接攻撃することなく腫瘍細胞の活動を調整する薬剤もまた適している。代替として、免疫療法のための作用物質もまた、免疫を誘発するためのインターフェロンおよび他のサイトカインならびに特異的な免疫応答を生成するためのワクチンの使用などのように、含まれていてもよい。
【0068】
適した抗感染薬は、細胞へのウイルスの侵入をブロックするように作用する薬剤、逆転写酵素阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤などのような、ウイルス複製を予防する薬剤、および体内へのウイルス放出を予防する薬剤を含む。
【0069】
本発明の細胞および組成物の送達は、たとえば、一日に一度、週に一度、月に一度、または他の適したスケジュールで、注射または注入によってなどのように、腸内または非経口を含む、投与の任意の適しているルートによるものであってもよい。複数回または1回の治療が、用いられてもよい。
【0070】
本発明は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物用の医薬の調製のための方法であって、T細胞の試料を採取する工程、本明細書において記載されるようにT細胞をITNK細胞に変換する工程、任意選択で、次いで、治療のために医薬中の上述の細胞を使用する工程を含む方法に関する。任意選択で、方法は、医薬としての使用に先立って、単一のT細胞の希釈または他の場合には選択および任意選択でT細胞ゲノムの操作を含む。
【0071】
本発明は、医療における使用のためのITNK細胞および標的T/プロT細胞ならびに癌またはウイルス感染症などのような疾患の治療または予防のための医薬の調製におけるITNK細胞および標的T/プロT細胞の使用を提供する。ITNKはまた、細菌、酵母、および寄生虫の感染症の治療または予防に使用されてもよい。
【0072】
本発明はまた、医療における使用および癌またはウイルス感染症などのような疾患の治療または予防のための医薬の調製におけるそのような細胞の使用のための、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞(TBcl11b細胞とも呼ばれる)を提供する。
【0073】
NK細胞は、腫瘍ならびにウイルスが感染した細胞の拒絶に主な役割を果たし、本発明のITNK細胞は、in vitroおよびin vivoで抗癌特性を示す。一態様では、T細胞またはプロT細胞から作製されたITNK細胞は、癌などのような疾患およびウイルス感染症などのような感染症を治療するために使用される。
【0074】
T細胞またはプロT細胞をITNK細胞に変換する能力およびTBcl11b細胞の使用は、療法が患者自身の細胞を使用して開発されることを可能にし、これは、拒絶を伴うことなく同じ患者において使用することができる。
【0075】
本発明は、したがって、その個人における感染症または疾患の治療または予防における、患者のT細胞またはプロT細胞に由来する治療有効量のITNK細胞の使用に関する。さらなる態様では、細胞は、他の個人において使用されてもよい。
【0076】
本発明は、患者を治療するための方法であって、治療有効量のITNK細胞または好ましくはTBcl11b細胞を上述の患者に投与する工程を含み、ITNK細胞は、患者から得られたT細胞またはプロT細胞に由来する方法を提供する。
【0077】
標的T細胞またはプロT細胞もまた、ITNK細胞の代わりに上記のように用いられてもよい。
【0078】
一態様では、本発明のT細胞/プロT細胞または標的T細胞または標的プロT細胞は、癌T細胞または形質転換T細胞を指さない。
【0079】
一態様では、本発明によるITNK細胞は、リンパ腫患者からのT細胞などのような形質転換T細胞または癌T細胞におけるBcl11b活性および/または効果を調整することによって得られ、これらは、野生型細胞と比較して、異なるレベルのBcl11bを有していてもよい。この態様では、形質転換T細胞または癌T細胞は、ITNK細胞に変換することができるT細胞/プロT細胞または標的T細胞もしくは標的プロT細胞である。
【0080】
一態様では、ITNK細胞は、患者に対していかなる副作用をも示さない。
【0081】
一態様では、本発明は、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは患者に不在である自然発生の成熟活性化T細胞(TBcl11b細胞)を単離するための方法であって、in vitroで細胞を増殖する工程ならびに癌およびウイルス感染症などのような状態の治療のために治療有効量のTBcl11b細胞を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0082】
一態様では、本発明は、患者(ヒトまたは非ヒト)からT細胞/プロT細胞を単離する工程、T細胞またはプロT細胞がITNK細胞に変換することができるように、Bcl11b遺伝子および/または遺伝子産物の活性および/または効果を調整する工程、癌およびウイルス感染症などのような状態の治療のために、治療有効量のITNK細胞または標的T細胞もしくは標的プロT細胞を患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0083】
一態様では、ITNK細胞は、本明細書において記載される方法を使用してITNK細胞に変換される単一のT細胞に由来する。このプロセスは、適切には、ウイルスもしくは微生物抗原などのようなまたは腫瘍特異的抗原などのような疾患特異的抗原などのような対象の抗原に特異的なT細胞が、NK様細胞に変換することを可能にする。
【0084】
単一のT細胞から0.5百万個までのITNKを得ることができる。これは、約1600個の細胞を単一のNK細胞の増殖によって作製することができるヒトNK細胞と比較して、はるかに大きな数である。
【0085】
本発明は、直接のBcl11bの調整に関し、また、ITNK細胞の作製におけるBcl11b経路の構成要素およびその調整因子の使用にも関する。
【0086】
T細胞およびプロT細胞をITNK細胞に変換することができるという認識は、変換プロセスを制御するために使用されてもよい化合物についてのアッセイとしてこの変換が使用されるのを可能にする。したがって、本発明は、T細胞のITNK細胞への再プログラムを支援する化合物の同定のためのアッセイであって、T細胞またはプロT細胞を試験化合物と接触させる工程および次いで、T細胞のITNK細胞への変換をモニターするまたは選択する工程を含むアッセイに関する。そのような化合物は、低化学分子、タンパク質(増殖因子、サイトカイン、抗体を含むが、これらに限定されない)、または核酸ベースの療法およびこれらの化合物のいずれかのライブラリーを含むことができる。本発明はまた、T細胞またはプロT細胞のITNK細胞への変換においてそのように同定された化合物の使用およびさらに、それらの化合物自体に関する。
【0087】
さらに、本発明は、T細胞のITNK細胞への再プログラムを制御する遺伝子突然変異の同定のためのアッセイであって、T細胞またはプロT細胞のランダムまたは標的突然変異の工程およびT細胞またはプロT細胞が生存可能でない条件下でITNK細胞をスクリーニングする工程またはITNK細胞を選択する工程を含むアッセイに関する。
【0088】
Bcl11bがT細胞およびプロT細胞のITNK細胞への変換における役割を果たすという認識は、Bcl11b遺伝子およびタンパク質が、Bcl11bシグナル経路における他の構成要素を同定するために、プローブとして直接使用されることを可能にし、次いで、これは、T細胞のITNK細胞への変換に対する効果について試験されてもよい。したがって、本発明は、T細胞のITNK細胞への再プログラムを支援する化合物の同定のためのアッセイであって、Bcl11b遺伝子またはBcl11bタンパク質に結合する化合物をスクリーニングする工程およびさらに任意選択で、上述の化合物がT細胞のITNK細胞への変換を促進することができるかどうかを評価する工程を含むアッセイに関する。本発明は、さらに、T細胞またはプロT細胞のITNK細胞への変換においてそのように同定された化合物の使用およびそれらの化合物自体に関する。
【0089】
さらなる態様では、本発明は、T細胞のITNK細胞への変換を達成するための、Bcl11b遺伝子もしくはタンパク質の発現もしくは活性を調節するまたはBcl11b遺伝子もしくはタンパク質の機能的に下流にあるまたはBcl11b遺伝子の機能的に上流にある因子の使用およびT細胞のITNK細胞への変換を達成するためのこれらの因子の調整因子の使用に関する。適切には、調整因子は、Bcl11b遺伝子またはタンパク質の発現または活性または下流の遺伝子産物または上流の遺伝子産物を調節する、Bcl11bまたは因子を標的とする抗体である。適切には、調整因子は、ヒトまたは非ヒトの病気の対象に投与される。
【0090】
たとえば、Notchは、Bcl11bの上流にある。一態様では、Notchシグナル伝達の調整因子は、T細胞およびプロT細胞のITNK細胞への変換を達成するために使用される。
【0091】
CSIは、Bcl11bの上流で作用する。一態様では、CSLの調整因子は、T細胞およびプロT細胞のITNK細胞への変換を達成するために使用される。
【0092】
他の態様では、本発明は、Bcl11bに対して下流標的の同定のためのアッセイであって、推定上の下流標的に対する、Bcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物を調整する効果をモニターする工程を含むアッセイに関する。そのようなアッセイは、下流標的自体が調整されている場合、T細胞またはプロT細胞のITNK細胞への変換をモニターする工程をさらに含んでいてもよい。そのようなアッセイは、その活性および/または効果を調整し、T細胞またはプロT細胞の1つまたは複数のITNK細胞への変換をもたらすために、上述の下流標的と相互作用する調整因子を同定する工程をさらに含んでいてもよい。
【0093】
本発明は、ITNK細胞および/または標的T細胞もしくは標的プロT細胞を持つ非ヒト動物をさらに提供する。
【0094】
一態様では、ITNKは、Notchシグナル伝達と非依存性である。
【0095】
さらなる態様では、本発明は、T細胞産生を刺激するための方法であって、ヒトもしくは胚性幹細胞またはIPS細胞などのようなプロT細胞中に存在する、少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質の活性および/または効果を調整する工程を含む方法に関する。適切には、方法は、Bcl11bの発現または活性を刺激する工程を含む。
【0096】
T細胞成熟経路におけるBcl11bの重要性についての理解は、Bcl11b遺伝子またはタンパク質の発現または活性の操作がT細胞産生を刺激するのを助けることができることを示唆する。したがって、本発明は、in vivoまたはin vitroでのT細胞産生の刺激における上流または下流の、Bcl11b経路の活性化因子の使用および医療におけるそのように作製されたT細胞の使用に関する。
【実施例】
【0097】
T細胞は、胸腺において発生し、適応免疫に不可欠である。ナチュラルキラー(NK)リンパ球は、微生物およびウイルスに対する腫瘍の監視機構および防御における自然免疫系の不可欠な構成要素を構成する。
【0098】
T細胞およびNK細胞発生についての一般的な序論
T細胞発生は、前駆体ホーミング、系列特異化、およびコミットメントを含み、重要な転写因子(1、2)の間で複雑な相互作用を必要とする。T細胞受容体(TCR)コレセプターCD4およびCD8を欠く、胸腺細胞のうちで最も初期の集団(ダブルネガティブ細胞またはDN細胞)(28)は、DN1〜4として細胞表面マーカーによってさらに細分化することができる(29)。DN1(CD44+CD25-)胸腺細胞集団は、多能性前駆体を含有する(30、31)のに対して、DN2胸腺細胞(CD44+CD25+)は、NKおよび骨髄の素質を有する(30、31)。これらの非T細胞の発生の素質は、DN3(CD44-CD25+)胸腺細胞において失われている。DN4胸腺細胞(CD44-CD25-)は、Tcrβ遺伝子再編成の成功の後に、β選択を受け(32)、CD4+ CD8+ダブルポジティブ(DP)ステージに分化するプロセスを既に開始している(33、34)。
【0099】
末梢において、サイトカインIL-7および自己ペプチド-MHCとT細胞の持続的な相互作用は、T細胞維持において不可欠な役割を果たす(3)。RT-PCR分析は、DN1からDN2への遷移において、T細胞コミットメントにとって重要な多くの遺伝子がそれらの発現を増加し始め、Bcl11bが最もアップレギュレートされる転写因子であることを示す(4)。硬骨魚において、Bcl11bは、胸腺へのT細胞前駆型ホーミングに必要とされることが示されている(5)。マウスにおいて、Bcl11bは、胎児の胸腺細胞の発生および生存においてならびにダブルポジティブ胸腺細胞のポジティブ選択および生存において不可欠な役割を有する(6、7)。
【0100】
NK細胞コミット前駆型(CD122+)は、主として骨髄において多能性造血性前駆体から分化するが、分化はまた、胸腺および二次リンパ組織においても生じ得る(35)。これらの前駆型は、NKp46+未成熟NK細胞のもとになり、それらが分化するとともに、MHC受容体、NKG2A/C/E、およびLy49を含む、さらなる受容体を続いて発現する(36、12)。自然免疫応答へのそれらの参加に加えて、NK細胞は、いくつかの適応免疫の特徴を有することが最近示された(37)。
【0101】
NK発生経路は完全には明らかではないが、発生部位および起源が異なる、NK細胞、骨髄由来(CD127-)および胸腺(CD127+)NK細胞の2つの亜集団が、マウスにおいて同定された(Huntington et al., 2007)。先の研究は、NK細胞の発生およびホメオスタシスにとって重要な分子を同定した。たとえば、bHLH Eタンパク質E2AおよびHEBにアンタゴナイズするId2は、Id2ノックアウトマウスがNK細胞を欠くので、NK系列にとって不可欠である(Ikawa et al., 2001 ; Yokota et al., 1999)。逆に、Id2またはId3の外力による発現は、プロT細胞からNK細胞への分化を再指示することができる(Blom et al., 1999; Fujimoto et al., 2007)。最近の研究はまた、Zfp105を過剰発現させることが造血幹細胞からNK系列への分化を促進するので、NK特異的転写因子としてZfp105をも同定する(Chambers et al., 2007)。
【0102】
T細胞発生遺伝子にとって重要ないくつかの遺伝子または経路はまた、NK細胞についての機能をも有する。たとえば、Gata3およびT-betは、NKの発生、成熟、およびホメオスタシスにおいて重要な役割を果たす(Samson et al., 2003; Vosshenrich et al., 2006)(Townsend et al., 2004)。Notchは、T細胞プログラムの開始を引き起こし、プロT細胞ステージの全体にわたって細胞を維持するまたは防御するために必要とされる(Maillard et al., 2005; Radtke et al., 1999; Rothenberg, 2007)。DN1胸腺細胞におけるNotchシグナル伝達の損失は、それらを樹状細胞に変換する(Feyerabend et al., 2009)。胸腺におけるNotchの欠失は、おそらく細胞外因性経路によって、胸腺におけるB細胞の蓄積を引き起こす(Feyerabend et al., 2009; Radtke et al., 1999)。
【0103】
T細胞におけるその役割とは対照的に、Notchは、一般に、細胞が、コミットDN3ステージに進むまで、DN1およびDN2プロT細胞におけるNKの素質を抑制する(Carotta et al., 2006; De Smedt et al., 2005; Garcia-Peydro et al., 2006; Rolink et al., 2006; Schmitt et al., 2004; Taghon et al., 2007; van den Brandt et al., 2004)。それにもかかわらず、一過性のNotchシグナル伝達が、初期前駆体または幹細胞からのNK分化に必要とされることが提唱されている(Benne et al., 2009; Haraguchi et al., 2009; Rolink et al., 2006)。これは、T/NK二分化能前駆体を促進する際のNotchの役割を反映するかもしれない(DeHart et al., 2005)。
【0104】
末梢において、サイトカインIL-7および自己ペプチド-MHCとT細胞の持続的な相互作用は、T細胞維持において不可欠な役割を果たす(3)。RT-PCR分析は、DN1からDN2への遷移において、T細胞コミットメントにとって重要な多くの遺伝子がそれらの発現を増加し始め、Bcl11bが最もアップレギュレートされる転写因子であることを示す(4)。硬骨魚において、Bcl11bは、胸腺へのT細胞前駆型ホーミングに必要とされることが示されている(5)。マウスにおいて、Bcl11bは、胎児の胸腺細胞の発生および生存においてならびにダブルポジティブ胸腺細胞のポジティブ選択および生存において不可欠な役割を有する(6、7)。
【0105】
Bcl11bは、C2H2ジンクフィンガー転写リプレッサーである(Avram et al., 2000; Cismasiu et al., 2005)。マウスにおけるBcl11bの生殖系列突然変異は、胸腺細胞における不完全なβ選択によって誘発されるアポトーシスに伴って、DN3ステージでの胸腺細胞発生のブロックを引き起こす(Wakabayashi et al., 2003)。Bcl11bは、最近、ダブルポジティブ胸腺細胞のポジティブ選択および生存に必要とされることが示された(Albu et al., 2007)。しかしながら、RNA干渉によるBcl11b発現の抑制は、形質転換T細胞におけるアポトーシスを選択的に誘発するが、正常な成熟T細胞に影響を与えるようには見えない(Grabarczyk et al., 2007)。
【0106】
ここで、発明者らは、転写因子Bcl11bが、すべてのT細胞コンパートメントにおいて発現され、T系列発生に不可欠であったことを示す。Bcl11bを欠失させると、すべての発生ステージからのT細胞は、NK細胞特性を獲得し、同時にT細胞関連遺伝子発現を失ったまたは減少させた。従来のNK細胞に形態学的におよび遺伝子的に類似するこれらのITNK細胞は、in vitroで腫瘍細胞を死滅させ、in vivoで腫瘍転移を有効に予防した。したがって、ITNKは、細胞ベースの療法のための新しい細胞供給源になるかもしれない。
【0107】
Bcl11bは、初期T細胞前駆体において発現され、かつ必要とされる
マイクロアレイ研究は、Bcl11bを含む、T細胞コミットメントにおいて重要な多くの遺伝子の発現が、DN2胸腺細胞において増加し始めることを示す。転写因子の中で、Bcl11bは、DN1からDN2への遷移において最も大きくアップレギュレートされる(Rothenberg, 2007)。単一細胞レベルで初期T細胞におけるBcl11b発現を決定するために、発明者らは、SA-lacZカセットがその発現を追跡するためにイントロン3に挿入されたBcl11bのlacZノックイン対立遺伝子を作製した(Song-Choon Lee, et al、非公開)。そのため、Bcl11b発現は、フローサイトメトリーにおいて、β-ガラクトシダーゼの蛍光基質であるフルオレセインジ-β-D-ガラクトピラノシド(FDG)を使用することによって、間接的に追跡することができる。造血系列において、Bcl11bの発現は、T細胞において検出可能であるのみであった(データ示さず)。胸腺において、DN2〜DN4胸腺細胞はほとんどすべて、Bcl11bを発現した(図13aおよび図14a)。対照的に、DN1胸腺細胞のわずか約80%が、Bcl11bを発現した。さらに、CD117抗体を使用する分析は、最も初期のT細胞前駆体であると考えられるDN1aおよびDN1b胸腺細胞の60%が(Porritt et al., 2004)、既にBcl11bを発現していたことを同定し(図13Bおよび14a)、最も初期のT系列特異化工程におけるBcl11bの予想される役割を示唆する。
【0108】
単一細胞レベルでT細胞におけるBcl11b発現を決定するために、発明者らは、Bcl11b tdTomatoノックインマウスを作製し、分析した(図5A〜B)。造血系列において、Bc11bは、B細胞または骨髄細胞において発現されなかったのに対して、ほとんどすべてのDN2〜DN4胸腺細胞およびDP胸腺細胞、CD4+T細胞およびCD8+T細胞、γδ-T細胞、ならびにナチュラルキラーT細胞(NKT)は、Bcl11bを発現した(図6A〜Cおよび7A〜C)。DN1胸腺細胞において、Bcl11bの発現は、CD117++細胞(初期T細胞系列前駆体(2)として知られている)においてほとんどまたは全く検出されなかった(図6Aおよび7A)。NK発生の間に、一過性の低いBcl11b発現が、NK前駆型(NKP)または成熟NK細胞ではなく未成熟NK細胞において観察された(図6Dおよび7D)。対照的に、CD127(8)によって同定された胸腺NK細胞の大多数は、Bcl11bを発現した(図6Dおよび7E)。さらに、CD4+およびCD8+脾臓T細胞の両方において、Bcl11bの転写は、定量リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)分析において、ナイーブ(CD44-CD62L+)細胞と比較して、活性化T細胞(CD44+CD62L-)においておおよそ2倍低下し(図6Eおよび7F)、二方式のパターンの発現を示した(図6F)。
【0109】
Bcl11bの欠失は、T細胞においてT細胞の同一性の損失およびNK特異的特性の獲得を引き起こした
上記の発現および機能のデータは、Bcl11bが、T細胞前駆型において発現され、T細胞系列への分化に必要とされたことを示した。Bcl11bの生殖系列欠失は、胎児の胸腺においてDN3胸腺細胞におけるアポトーシスを引き起こし、DN1/2細胞に明らかに影響を与えなかった(Wakabayashi et al., 2003)。T細胞においてBcl11b機能をさらに決定するために、発明者らは、エクソン4にloxPが導入されたコンディショナルノックアウトマウス(Bcl11bflox/flox)を生成し(図8A)、これらを、Rosa26Cre-ERT2マウスに交雑させた(9)。CreERT2;Bcl11bflox/floxマウスからの胸腺細胞はすべて、タモキシフェン(OHT)誘発性Creレコンビナーゼを発現する。結果的に、CreERT2;Bcl11bflox/floxマウス(PLBD系。原稿においてflox/floxとも呼ばれる)において、Bcl11bは、タモキシフェン(OHT)で、培養細胞またはマウスを処理することによって欠失させることができた。これらのおよびコントロール(CreERT2;Bcl11bflox/+、flox/+と呼ばれる)マウスからのOHT処理全胸腺細胞から、発明者らは、T細胞培地(Flt3リガンドおよびII-7)中のDN1およびDN2細胞をソートし、続いて、T細胞発生を支援するが、前駆体からのNK細胞発生を抑制する(11)OP9-DL1間質細胞上で(図8B)(10)、2週間の間(図14b)、培養した。OP9-DL1間質細胞は、Delta-Like-1 Notchリガンドを発現し、強いT細胞発生を支援するが(Schmitt and Zuniga-Pflucker, 2002)、通常、NK細胞発生を抑制する(Rolink et al., 2006; van den Brandt et al., 2004)。間質細胞はすべて、OHT処理flox/flox DN1胸腺細胞培養物において死滅した。
【0110】
フローサイトメトリーは、培養胸腺細胞の18%が、ここで、NK細胞マーカーNK1.1を発現したことを示した(図13c中のDN1)。この培養物中の細胞の24%が、NKp46を発現し、これらは、NK細胞上で主として発現される(図1A)(12)。これらのNKp46+細胞は、T細胞遺伝子CD3またはTCRβを発現せず(図8C)、Bcl11bエクソン4の両方の対立遺伝子を失い(図8D)、14日間、OP9-DL1間質細胞と同時培養したにもかかわらず、それらが、T細胞の特徴を獲得しなかったまたは失ったことを示す。これらのNK1.1+CD3-およびNKp46+CD3-細胞のPCR遺伝子型同定は、それらが、Bcl11bエクソン4の両方の対立遺伝子を欠失したことを示したが、同じOHT処理培養物からのそれらのNKp46-CD3+細胞が、Bcl11b cko対立遺伝子の少なくとも1つのコピーをなお保持することが分かった。他方では、コントロールOHT処理flox/+および未処理flox/flox DN1細胞は、急速に増殖し、多く(36%)が、Notchシグナル伝達と一致して、NK1.1+またはNKp46+ではなくCD3発現を獲得し(図1Aおよび図8E)、NK発生を抑制し、OHT処理DN1細胞培養物中のNKp46+細胞がNK前駆型混入物に由来するという可能性を排除した(図13c)。したがって、これらのデータは、Bcl11b欠損がDN1胸腺細胞からのNKp46+細胞の産生を引き起こし、Bcl11bが初期T細胞発生において必要とされることを実証した。
【0111】
T細胞系列コミットメントは、Gata3、Tcf1、およびBcl11bなどのようなT細胞特異化遺伝子の発現の増加と共にDN2細胞において生じると考えられる(Ciofani and Zuniga-Pflucker, 2007; Rothenberg, 2007)。それにもかかわらず、最近のデータは、DN2胸腺細胞さえ、骨髄系列およびNK系列の分化の素質をなお保持することを示唆する(Bell and Bhandoola, 2008)。発明者らは、次に、精製DN2胸腺細胞においてBcl11bを欠失させることによってT細胞系列コミットメントの間のBcl11b機能を調査した。野生型DN2胸腺細胞(-OHT)は、OP9-DL1細胞上で広範囲に増殖し、NK細胞ではなくCD3+細胞のもとになった(図13cにおける-OHT DN2)。培養されたDN1胸腺細胞に類似して、OHT処理flox/flox DN2胸腺細胞もまた、NKp46+CD3-細胞を産生し、これらは間質細胞を死滅させたのに対して、コントロールDN2胸腺細胞は死滅させなかった(図1Aおよび図8E)。DN1胸腺細胞培養物に類似して、NK1.1+CD3-細胞およびNKp46+CD3-細胞もまた、OP9-DL1間質細胞上でBcl11b欠損DN2胸腺細胞培養物から成長し(図13cにおける+OHT DN2)、DN2胸腺細胞におけるBcl11b損失に際してのT細胞分化の素質の急速な損失を実証する。
【0112】
NKp46+細胞が、IL-2なしでOP9間質細胞上で培養されたDN1胸腺細胞またはDN2胸腺細胞から直ちに産生されたので、Bcl11b欠損DN1胸腺細胞またはDN2胸腺細胞からのNK様細胞の成長は、Notchシグナル伝達非依存性であるように見えた(図8F)。よって、Bcl11bは、T細胞系列の初期の特異化において不可欠な機能を有する。
【0113】
発明者らは、続いて、DN3胸腺細胞においてBcl11bを欠失させた。さらに、間質細胞を死滅させるNKp46+CD3-細胞が現われた(図1B〜C;図8G)。発明者らは、CreERT2;Bcl11bflox/floxからのOHT処理全胸腺細胞からDN3胸腺細胞を精製し、OP9-DL1間質細胞上でそれらを培養した。培養の14日以内に、ほとんどの細胞は、NKp46+CD3-になり、間質細胞を死滅させることができた。培養基へのIL-2またはIL-15の補足は、これらの細胞の増殖および/または分化を大幅に促進した。結果的に、培養物中のほとんどの細胞は、NKp46+であり、それらは、OHT処理後の10日以内に間質細胞を死滅させ始めた(図1Bおよび1C)。NK前駆体は、通常、OP9-DL1間質細胞上で分化しない(図1D)。
【0114】
再プログラムはまた、骨髄またはB細胞の培養基中でも作動し(図8H〜I)、NKp46+細胞への再プログラムが、Bcl11b欠損胸腺細胞にとって内因性であることを実証した。NKp46+CD3-細胞がT細胞から生じたことをさらに確認するために、発明者らは、それらを精製し、DNA再編成についてそれらのTCRβ座を検査した。たとえ、それらが、細胞表面上にTcrβを発現しなかったとしても、これらのNKp46+CD3-細胞は、TCRβV(D)J組換えを保持し、したがって、これらのNKp46+CD3-細胞のT細胞起源を遺伝子的に確認した(図1D)。発明者らは、したがって、T細胞から再プログラムしたキラー細胞を、ITNK(induced T-to-Natural-Killer)細胞(T細胞から誘導されたナチュラルキラー細胞)と名づけた。
【0115】
発明者らは、次に、DN3胸腺細胞、濃縮後にin vitroで増殖した正常な脾臓NK細胞(>90% NK細胞から構成されるリンホカイン活性キラー細胞またはLAK細胞)、およびDN3細胞から再プログラムされたITNKの発現プロファイルをマイクロアレイ分析を使用して比較した(図1E)。ITNK細胞の致死能力と一致して、それらの発現プロファイルは、それらの親のDN3胸腺細胞よりもLAK細胞にはるかに類似していた。親DN3胸腺細胞およびそれらのBcl11b欠損誘導体の間で発現差異を示した遺伝子をTable 2(表2)中に列挙した。qRT-PCR分析は、アレイ結果を確認するために続いて実行した(図13F)。qRT-PCR検証は、Notch1、Est1、Hes1、Gata3、Dtx1、およびTcf1などのような多くのT系列遺伝子の発現は減少したのに対して、Id2(13)、IL2rβ(CD122)、Zfp105(14)、およびE4bp4(15)などのようなNK細胞と普通関連する遺伝子の発現はアップレギュレートしたことを示した(図1FおよびTable 1(表1))。DN3細胞において通常発現されないが、T細胞活性化を調節する際に重要な役割を果たし、Gata3活性を抑制する、Zbtb32(Rog、GATAのリプレッサー)は(16)、ITNKにおいて高度に発現された。Bcl11bの推定上の直接的な下流の標的遺伝子であるCdkn1c(p57KIP2)の発現もまた(17)、ITNKにおいて大きく増加した(図1Fおよび1G)。実際に、p57KIP2発現は、DN3細胞においてほとんど検出可能ではなかったが、DN3由来のiTNKにおいて大きく増加した(図1Fおよび1G)。さらに、アレイデータからの分析により、DN3胸腺細胞に対してLAKにおいて少なくとも2倍高く発現された504の遺伝子およびそれらの親のDN3胸腺細胞に対するDN3胸腺細胞由来NKp46+CD3-細胞における366の遺伝子を同定した(Table 2(表2))。iTNKにおけるこれらの366の遺伝子の70%は、LAKにおいて過剰発現したことが分かった(図8J)。したがって、これらの結果は、総合的に、Bcl11bが、T細胞発現プロファイルの維持およびNK細胞遺伝子発現の抑制にとって不可欠であったことを実証した。
【0116】
発明者らは、次に、精製されたダブルポジティブ(DP)胸腺細胞、CD4またはCD8シングルポジティブ成熟T細胞をOHT処理にかけることによって、Bcl11bがすべてのT細胞においてT細胞の同一性の維持に必要とされるかどうかを調査した。次いで、これらの細胞を、OP9-DL1間質細胞上で培養した。培養Bcl11b欠損DN3胸腺細胞に類似して、iTNKは、多くのNKp46+細胞によって実証されるように、Bcl11bが欠失した後、10日以内にすべてのT細胞培養物から成長した(図15a、15b、15c)。興味深いことに、Tcrβ発現T細胞に由来するこれらのiTNKは、なお、細胞表面上にTcrβを保持した。CD8をなお発現したCD8+T細胞からのiTNKとは対照的に、CD4+シングルポジティブT細胞由来iTNKは、もはや、CD4を発現しなかった(図15c)。
【0117】
ITNKはまた、成熟T細胞からも作製することができた。発明者らは、flox/floxマウスからの、ソートされたダブルポジティブ(DP)胸腺細胞、CD4+およびCD8+T細胞、ならびにγδ-T細胞をOHT処理した。多くのITNK(NKp46+)が、DP胸腺細胞およびCD8+T細胞培養物中で成長することが分かり(図8K〜L)、これらは、間質細胞を有効に死滅させた。これらのITNKは、DN1〜3胸腺細胞から再プログラムされたものとは対照的に、細胞表面上にTCRβを保持した。一度Bcl11bが欠失すると、これらの細胞がin vitroで細胞死の傾向があるように見えたので、発明者らは、脾臓もしくは胸腺CD4+T細胞またはγδT細胞からのNKp46+細胞の一貫した産生を得ることができなかった。
【0118】
一度Bcl11bが欠失すると、DN3胸腺細胞はすべて、T細胞の同一性を失い、ITNKになった
再プログラム(Bcl11b欠失に際してのTからNKへの変換)効率を評価するために、発明者らは、T細胞培地中のOP9-DL1間質細胞をあらかじめ接種した96ウェルプレートの個々のウェルに、OHT処理flox/flox胸腺細胞から単一のDN3胸腺細胞をソートした(図9A)。成長している細胞を有した79のウェルのうち、36ウェルは、CD3およびTcrβを含むT細胞表面マーカーを発現した、多くの急速に増殖しているT細胞を有した(図2A)。PCR遺伝子型同定により、これらのウェル中の細胞は、完全なBcl11b欠失を有しなかったが、一方のみのflox Bcl11b対立遺伝子を欠失させたことを確認した(図2B、レーンT1およびT2)。これらの細胞(flox/-)は、それにもかかわらず、それらが活性化Creレコンビナーゼを有したので、Cre毒性について優れたコントロールとして役立った。他の43のウェルにおいて、胸腺細胞は、NKp46+間質細胞死滅ITNKに再プログラムされた(図2A)。これらの43のウェルにおいて、細胞は、比較的遅く成長したが、間質細胞を死滅させた。なお、1つのDN3胸腺細胞から、50万までの間質死滅細胞が、OHT処理の14日後に直ちに得られた。フローサイトメトリー分析は、これらのウェル中の細胞はほとんどすべて、NK特異的マーカーNKp46を発現し、したがって、ITNKであったことを示した(図2A)。1つのDN3胸腺細胞から、50万までのITNKがIL-2ありで得られたが、IL-2なしではわずか約50,000の細胞しか得られなかったので、IL-2は、明らかに、ITNKの増殖を大幅に促進することができた。ITNK細胞はすべて、両方のBcl11b対立遺伝子を失い(図2b、レーンl1およびl2)、個々のウェルのITNKは、特有の再編成TCRβ座を有し、したがって、それらの独立した起源を確認した(図2C)。そのため、一度Bcl11bが欠失したら、ITNKへのDN3胸腺細胞の再プログラム効率は、100%に達することができた。DN3胸腺細胞からのITNKは、NK細胞表面受容体を発現し、類似する細胞障害性機能を有しただけではなく、T細胞よりも大きく、顆粒を有し、豊富な小胞体による高度なタンパク質合成活性を有するLAK細胞に形態学的に類似していた(図2、D〜E)。
【0119】
ITNKは、胸腺細胞よりも大きく、顆粒を有し、豊富な小胞体による高度なタンパク質合成活性の証拠を示した(図2、D〜E)。NK1.1およびNKp46の他に、ITNKは、Ly49ファミリーのメンバーまたはFasL(CD178)などのような他のいくつかの重要なNK細胞機能遺伝子ではなく、NKG2A/C/E、TRAIL、パーフォリン、およびインターフェロン-γを発現した(図9B〜C)。類似する観察は、DP胸腺細胞からのin vitro再プログラムITNK細胞により得られた(Table 2(表2)および図9D)。ITNKは、CD127を発現しなかったので、胸腺NK細胞と関係がありそうになかった(図9E)。さらに、従来の成熟NK細胞と異なり、ほとんどのITNKは、CD11bを発現せず、むしろ、それらは、CD27を発現し、1か月の間、in vitroで培養した後でさえ致死能力を保持した(図9F)。in vitro培養Bd11b欠損DN3胸腺細胞からのiTNKは、一晩の同時培養後にOP9-DL1間質細胞を死滅させた。実際、iTNKは、少なくとも1か月の間、in vitroで培養されても、致死能力を保持した。新鮮な間質細胞にiTNK細胞培養物の上清を移動させても、これらの細胞を死滅させず、そのため、iTNK細胞によって分泌されるサイトカインは、十分ではなく、細胞間接触が、効果のある死滅に必要とされた。
【0120】
発明者らは、次に、3つのNK感受性細胞系を用いる標準の51Cr放出アッセイを実行することによって、DN3再プログラムITNK:B16F10メラノーマ(MHC-I低またはネガティブ)(18)、MHCクラスI分子を発現するRMAリンパ腫、および低下したMHCクラスI提示を有するRMA-Sリンパ腫(TAP-1欠損変異体)の致死能力を測定した(19、20)。LAK細胞は、一般に、MHCクラスIネガティブ細胞のみを死滅させた(図2F)。LAKに類似して、ITNKはまた、MHC-IネガティブB16F10およびRMA-S細胞を選択的に死滅させたが、MHC-IポジティブRMAリンパ腫細胞を死滅させなかった(図2F)。通常のLAKと比較して、iTNKは、比較的低い死滅効力を有するように見えた。これは、in vitro誘導ITNKにおける完全なNK細胞表面レパートリーの欠如と一致している(Table 2(表2))。発明者らは、Bcl11b欠損T細胞をより強力な腫瘍細胞キラーに完全に変換するのに、in vivo微小環境が必要とされるかもしれないことを推測した。
【0121】
in vivo再プログラムNK細胞は、より強力な腫瘍細胞キラーである
ITNKがin vitro人工産物である可能性を排除するために、発明者らは、in vivoでBcl11bを欠失させた(図10A)。OHT処理の2〜3週間後に、ITNKは、flox/+コントロールではなくflox/floxマウスからの脾臓(NKp46+CD3+)および胸腺(NKp46+)の両方において検出された(図3A)。Bcl11bは、これらのin vivo再プログラムITNKにおいて欠失していたことが分かった(図10B)。重要なことには、CD4+およびCD8+ITNK(NKp46+)の両方が見つけれらた(図10C)。いくつかの野生型γδ-T細胞は、NKp46を発現したが、Bcl11b欠失は、NKp46+γδ-T細胞の3倍の増加を引き起こし(図3B)、これは、T細胞集団がすべて、再プログラムの素質を有することを示唆した。in vivo再プログラムITNKは、NK培養条件において直ちに増殖することができたが(図10D)、それらはNKT細胞ではなかった(図10E〜F)。発現NK細胞関連遺伝子の他に、in vivo再プログラムITNKはまた、ll7ra、Tbx21(T-bet)、Cd8などのようないくつかの重要なT細胞遺伝子を失ったまたは減少させた(図10G)。結果的に、ITNKにおけるTCRシグナル伝達は、損なわれるように見えた(図10H)。
【0122】
flox/floxマウスにおけるITNKのin vivo分析は、多くの宿主T細胞およびNK細胞の存在によって複雑になった(図3A)。この問題を検討し、さらに、Bcl11b損失に際してのin vivo再プログラムが細胞自律性かどうかを調査するために、発明者らは、flox/floxマウス(CD45.2+)からの2〜4百万のOHT処理DP胸腺細胞を、B、T、およびNK細胞を欠くRag2-/-Il2rg-/-マウス(CD45.1+)に移植した(図11A)(21)。発明者らは、DP胸腺細胞が、普通、全胸腺細胞の75%以上を占め、ITNにin vitroで効率的に再プログラムすることができたので、DP胸腺細胞を選んだK(図8K)。移植の2週間後に、脾細胞の約5%は、ドナー細胞(CD45.2+)からのものであることが分かり(図3C)、それらの約47%は、NKp46を発現し、したがって、ITNKであった。ITNKは、Bcl11bの両方のコピーを失い、それらの大多数は、CD8を発現した(図11B〜C)。他の53%の細胞(NKp46-)は、T細胞であり、Bcl11bのloxPが導入された対立遺伝子をなお保持した(図11C)。ITNKは、普通、全脾細胞の2〜3%を占めた。興味深いことに、大多数の脾臓NKp46+ITNKは、CD8を発現した(図11B)。著しい量のNKp46+ITNKはまた、骨髄および末梢血中にも存在した(図11D)。発明者らは、脾臓のみで約200,000のiTNK細胞があると予測した。それにもかかわらず、2〜4百万ものDP胸腺細胞が最初に移植され、in vitroでのTからITNKへの変換が100%であったので、この低いITNK数は、予想外であった。ほとんどのBcl11b欠損DP胸腺細胞が、in vivo微小環境およびin vitro培養条件の間の差異、たとえばマウスにおける相対的な低レベルのサイトカインにより、変換の前にまたはその直後に死んだことが予想される。NKp46+細胞は、未処理DP胸腺細胞を移植したコントロールマウスにおいて見つからなかった(図3C)。ITNK細胞は、細胞数の変化を伴わないで、少なくとも3か月の間、レシピエント中で維持され、おそらく、それらの数の動的なバランスを意味した。重要なことには、レシピエントマウスは目立つ異常を示さず、ITNK細胞が、正常な細胞を無差別に死滅させず、悪性形質転換されなかったことを示した。
【0123】
in vivo iTNKは、フローサイトメトリーによってさらに表現型を同定した。in vitroで再プログラムされたものと比較して、in vivo再プログラムITNKは、NKG2A/C/Eなどのようなより多くのNK表面受容体ならびにLy49C/IおよびLy49G2を含むLy49ファミリーのほとんどの受容体を発現するように見え(図11E)(Table 2(表2))、それらの致死能力をなお保持しながら、少なくとも3週間の間、IL-2またはIL-15ありでex vivoで広範囲に増殖することができた(図3D)。Ly49C/I、Ly49G2を含むLy49ファミリー遺伝子などのようなNK表面受容体は、in vitro誘導iTNK細胞において不在であった。重要なことには、CD1d制限NKT細胞が、NKp46を発現せず(Walzer et al., 2007)、この研究において検査されたiTNKが、多くのNKT細胞において存在し、非多形CD1d分子を認識するVβ2TCRを発現しなかった(データ示さず)(Bendelac et al., 2007)ので、これらのiTNK細胞は、NKT細胞ではなかった。
【0124】
通常のNK細胞は、サイトカインを有する培養物中でLAKになり、7日までの間、増殖することができる。その後、LAKは、徐々に、増殖能力および致死能力を失う。in vivo iTNKの増殖能力を試験するために、発明者らは、LAK条件で、レシピエントマウスからの2百万の脾細胞(約50,000のiTNKを含有する)を培養した。ほとんどの細胞は、最初の3日間で死んだ(図3d)。しかしながら、培養の7日以内に、発明者らは、細胞集団の80〜90%を占め、少なくとも3週間の間、増殖し続けることができた約2百万のNKp46+Tcrβ+ITNKを得た(図3d)。
【0125】
in vivo iTNK細胞の機能を評価するために、発明者らは、レシピエントマウスからのex vivo増殖iTNKを使用し、それらの腫瘍細胞死滅能力を調査した。それらが、より多くのキラーエフェクターおよび受容体を発現することと一致して、in vivo iTNK細胞は、広範囲なex vivo増殖後でさえ、通常のLAKよりも腫瘍細胞を死滅させることにおいてはるかに強力であった。これらの細胞は、細胞障害性の素質の上昇を示し、また、標的細胞のそれぞれに対して、in vitro ITNKおよびLAKの両方よりも全般的に強力であった(図3Eおよび図2F)。予想外に、これらin vivo iTNKは、試験した3つの腫瘍細胞系すべてに対して、それらのMHC-I発現ステータスにかかわらず、強力なキラーであった。それらは、MHC-Iを認識するいくつかの阻害性Ly49受容体の発現にもかかわらず、RMA-S細胞を死滅させるのとほとんど同じ効率でRMA細胞を死滅させた(図3E)。
【0126】
移植可能なマウスメラノーマB16細胞系は、実験用の癌療法およびNK細胞腫瘍監視機構機能を研究するための十分に確立されたモデルである(22)。Rag2-/-Il2rg-/-マウスへのB16細胞の注射は、肺における転移性の病巣の急速な形成を引き起こす(23)。in vivoでITNK細胞の腫瘍致死能力を調査するために、発明者らは、Rag2-/-Il2rg-/-レシピエントにflox/floxマウスからの2百万のOHT処理または未処理DP胸腺細胞を注射し、in vivoで胸腺細胞のITNKへの再プログラムを可能にした(図11F)。2週間後に、それぞれのレシピエントに、50,000のB16F10メラノーマ細胞を注射した。最初の胸腺細胞移植の4週間後に、レシピエントは、犠牲死させ、分析した。PBSまたは未処理DP細胞を注射したマウスは、肺中に約200の転移性の病巣を有した。対照的に、OHT処理DP胸腺細胞を注射したマウスは、肺中に約20の腫瘍コロニーを有した(図3Fおよび図11G)。そのため、ITNKは、in vivo腫瘍細胞の強力なキラーであり、癌進行を予防した。
【0127】
T細胞におけるNotchシグナル伝達によって調節されるBcl11b
ウェスタンブロットは、CreERT2;Bcl11bflox/floxからの胸腺細胞において、Bcl11bタンパク質レベルが、OHT処理の24時間後に大きく減少したことを示した。また、48時間後に、Bcl11bタンパク質は、検出不可能になった。よって、Bcl11bの欠失は、Bcl11bタンパク質の急速な消失を引き起こした(図4A)。T細胞におけるBcl11b欠失直後の遺伝子発現変化をプローブするために、発明者らは、OHT処理の24および48時間後に発現アレイ分析を実行した。マイクロアレイ分析は、OHT処理flox/flox胸腺細胞において、TCRβおよびCD3などのようなT細胞遺伝子の発現が、24時間以内に早くもダウンレギュレートされたことを示した(Table 3(表3))。さらに24時間で、NK細胞と関連する多くの遺伝子が発現した(Table 3(表3))。Table 3(表3)は、Bcl11b損失がそれらの発現に著しく影響を与えた(2倍)遺伝子を列挙する。NKG7、KLRD1(CD94)、PLCG、およびIFNGなどのようなNK細胞機能にとって重要であるいくつかの遺伝子の発現は、OHT処理の48時間後に早くも増加した。
【0128】
Bcl11bは、T細胞発生においてNotchシグナル伝達によって調節されることが提唱されている(24)。ショウジョウバエにおける最近の全ゲノムChlP-seqは、Bcl11遺伝子のショウジョウバエオルソログであるCG6530がNotchシグナル伝達の直接的な下流の標的遺伝子であることを実際に同定した(Krejci et al., 2009)。Notchシグナル伝達は、通常、NK系列分化において阻害性の役割を果たし、NK細胞は、OP9-DL1間質細胞上で培養された骨髄または胸腺細胞から成長しない。Bcl11bがT細胞においてNotchシグナル伝達に下流で作用するという考えと一致して、OP9またはOP9-DL1間質細胞のいずれかを使用して、TからNKへの変換が生じたので、一度Bcl11bが欠失されたら、T細胞からのiTNK産生は、Notchシグナル伝達に非依存性となった(データ示さず)。
【0129】
Bcl11bが、分子レベルで、マウスT細胞においてNotchシグナル伝達によって直接調節されることを確認するために、発明者らは、最初に、マウスおよびヒトのBcl11b遺伝子の間で保存されている、Bcl11b座の推定上のCSL結合部位(CGTGGGAA)についてBcl11b遺伝子座内を検索した(26)(図4B)(Table 4(表4))。いくつかのCSL部位が同定されたが、発明者らは、マウスおよびヒトのBcl11b遺伝子の間で保存されている部位に注目した。クロマチン免疫沈降(ChIP)アッセイを、CSLポリクローナル抗体を使用して続いて実行し、T細胞からゲノムDNA断片を抽出した。3つのゲノム領域が、コントロールと比較してCSL抗体を使用して、T細胞試料において大幅に濃縮された(図4C)。推定上のCSL結合領域の側面に位置するプライマーは、ChIP抽出ゲノムDNAを増幅するために設計した(図4B)。領域3、4、7は、抗体コントロールの使用と比較して、CSL抗体を使用して、T細胞試料において大幅に濃縮された(図4CおよびTable 4(表4))。領域3は、転写の開始点から約1.8kbのところにある。領域4は、エクソン1の5.4kb下流に位置し、領域7は、エクソン2の約600bp下流にあった。したがって、ChIP結果は、基本的なNotchシグナル伝達が、T細胞においてBcl11bを直接調節することを確認した(図12)。
【0130】
しかしながら、CD4-CreまたはLck-Creのいずれかを使用してCSL(RBPJk)を欠失させても、全T細胞損失を引き起こさなかったまたはITNKの産生を引き起こさなかったことが報告されている(38)。この矛盾は、おそらく、発明者らが、即時の機能的結果のためにT細胞においてBcl11bを急性的に欠失させたが、CD4-Creが使用される場合、欠失が、前駆体において生じ得ることを反映する。結果的に、CD4-Creマウスにおいて、欠損を有する細胞は、突然変異前駆体からのものであり、Bcl11bの損失を補うためのメカニズムを発達させている。発明者らは、Bcl11bが、Notchシグナル伝達の下流標的遺伝子であり、Bcl11bが、他のNotch下流転写因子Gata3およびTcf1と一緒に、T細胞系列の特異化、コミットメント、および維持において中心的な役割を果たすことを提唱する。
【0131】
発明者らは、Bcl11bが、T細胞発生およびT細胞の同一性の維持にとって不可欠であったことを示す。しかしながら、B細胞におけるPax5の損失と異なり(39)、リンパ球および成熟T細胞の両方がITNKに直ちに再プログラムされ、DP胸腺細胞および成熟T細胞からのITNKが、なお、TCRβ、CD4、またはCD8の発現を保持したので、Bcl11bの欠失は、検出可能な脱分化ステップを有するようには見えなかった。この「分化転換」は、TおよびNK系列が、造血において後半に方向転換し、したがって、1つの転写因子、Bcl11bの損失が、100%の効率で系列スイッチを引き起こすのに十分であったという事実を反映するかもしれない。
【0132】
成熟T細胞から再プログラムされたITNKがTCRβ発現を保持するので、Bcl11bは、T細胞系列の促進および維持ではなく、NK系列のサプレッサーとして主として機能することが予想される。しかしながら、発明者らのデータは、この可能性を支持しない:ITNKは、DN1〜DN2胸腺細胞から再プログラムされたものでさえ、NK細胞とは異なる;Bcl11bは、NK発生のあるステージで発現される;成熟T細胞からのITNKは、より多くのT細胞特性を保持するが、それらは、T細胞またはNK細胞とは、なお非常に異なり、IL7Ra、CD4、CD8、CD3、およびT-bet(図10G)の発現を有していないまたはそれらの発現が減少している;マイクロアレイデータは、OHT処理胸腺細胞(Bcl11b欠失)において、最初の24時間で、T細胞関連遺伝子のダウンレギュレーションが、ほとんどすべての遺伝子発現の変化を説明するものであることを示す。NK関連遺伝子発現は、T細胞遺伝子のダウンレギュレーションに続き、Bcl11b欠失の48時間後に始まる。細胞系列を促進し、系列の同一性を維持するのに必要とされるマスターレギュレーターが、いくつかの細胞系列について同定されている。たとえば、プロB細胞およびプロT細胞においてCebpαを異所的に発現することにより、約60%の頻度でそれらをマクロファージに形質転換する(Laiosa et al., 2006; Xie et al., 2004)。MyoDを発現する線維芽細胞の25〜50%は、筋原性のコロニーに変換される(Davis et al., 1987)。最近、3つのTF、Pdx1、Ngn3、およびMafaを発現する膵腺房細胞は、20%の予測度数で、in vivoで、インスリン発現β細胞にそれらを変換することができることが示されている。さらに、B細胞におけるPax5の損失は、多能性前駆体になるようにB細胞の脱分化を可能にする(Mikkola et al., 2002)。B細胞におけるPax5に類似して、発明者らは、ここで、Bcl11bが、T細胞発生にとって不可欠であり、現在、T細胞の同一性の維持のための唯一の知られている転写因子であることを示す。しかしながら、Pax5の損失に際してのB細胞における脱分化と異なり(Cobaleda et al., 2007)、プロTおよび成熟T細胞の両方がITNKに直ちに変換されるので、T細胞におけるBcl11bの欠失は、明白なまたは長期間の脱分化ステップを有するようには見えない。さらに、DP胸腺細胞および成熟T細胞からのITNKは、なお、Tcrβ発現を保持した。これは、TおよびNK系列が、胸腺におけるT細胞発生の間に後半に方向転換し、したがって、1つの転写因子、Bcl11bの損失は、100%の効率でT細胞をiTNK細胞に変換するのに十分であるという事実を反映するかもしれない。そのため、発明者らの研究は、造血系列特異化、コミットメント、および維持において中心的な役割を果たす転写因子の集団にBcl11bを追加する。
【0133】
NK細胞ベースの療法は、癌治療において有望である。発明者らは、今や、T細胞をITNKに再プログラムすることができ、これらは、広範囲に増殖することができるが、悪性に形質転換されない。むしろ、それらは、in vitroで腫瘍細胞を有効に死滅させ、マウスにおける転移性の細胞を排除したが、正常な細胞を攻撃するようには見えなかった。そのため、ITNK細胞は、癌免疫療法および他の細胞ベースの療法のための新しい細胞供給源として役立つかもしれない。
【0134】
(参考文献)






【0135】
図の説明文:
図1. Bcl11bは、T細胞発生およびT細胞の同一性を維持するのに不可欠である。flox/floxまたはflox/+コントロールマウスからの胸腺細胞は、OHTを用いて処理しまたは処理せず、次いで、DN1またはDN2の亜集団にソートし、OP9-DL1間質細胞上で培養した。(A)IL-2の非存在下における培養DN1およびDN2胸腺細胞(+OHT)のフローサイトメトリープロファイル。数字は、ゲート中の細胞の百分率を表す。データは、3回の実験を表す。(B)IL-2を補足した培養flox/flox DN3胸腺細胞(±OHT)のフローサイトメトリープロファイル。データは、3回の実験を表す。Bcl11b欠損DN3胸腺細胞は、T細胞の同一性を失い、NKp46発現細胞に変換された。-OHT:非処理細胞;+OHT:処理細胞。(C)OHT処理flox/flox DN3胸腺細胞によるOP9-DLI間質細胞の死滅。スケールバー:40μm。Bcl11b欠損DN3胸腺細胞(+OHT)からのNKp46+細胞は、OP9-DL1間質細胞を有効に死滅させた。(D)精製NKp46+細胞からのDNAを調製し、TCRβ座でのDJ(上)およびVDJ(下)組換えを検出するためにPCRにかけた。T:未処理DN3胸腺細胞から成長するT細胞;N1およびN2:OHT処理flox/flox DN3胸腺細胞から成長する、ソートされたNKp46+細胞;Thy:野生型全胸腺細胞;B:B細胞;GL:生殖系列バンド;H2O:PCRにおけるDNA鋳型なし。数字は、DJ組換え産物を示す。Bcl11b欠損DN3胸腺細胞からのNKp46+細胞は、Tcrβを発現しなかったが、なお、Tcrβ座にV(D)J組換えを保持した。(E〜G)DN3胸腺細胞からのNKp46+CD3+ITNK細胞(l1〜l4)、IL-2増殖NK細胞(LAK;L1〜L4)、およびソートしたDN3 flox/flox胸腺細胞(DN3;D1〜D4)における遺伝子発現のマイクロアレイ分析を発現にかけた。(E)アレイデータの2方向階層的クラスターマップ。カラムの数字(たとえばl1〜l4)は、それぞれの細胞型についての4つの独立したRNA試料を表し、列は、個々の転写物である。スケールは、正規化したシグナルレベルのlog2値を示す。親のDN3胸腺細胞、DN3胸腺細胞に由来するiTNK細胞、および通常のNK細胞(LAK)の発現プロファイルの比較。RNA試料は、それぞれの細胞型について4匹のマウスから得た。(F)ITNK、LAK、およびDN3細胞の中で選択された遺伝子の遺伝子発現のqRT-PCR検証。バーは、3つの試料の平均値±SDである。図1(F)におけるそれぞれのヒストグラムにおいて、第1のバーはDN3細胞を表し、第2のバーはITNKを表し、第3のバーはLAKを表す。DN3、iTNK、およびLAK細胞の間の遺伝子発現差異のqRT-PCR検証(G)。T細胞特異的遺伝子の発現は全般的に減少し、NK特異的遺伝子の発現は、NK様細胞において大幅に増加した。Zbtb23(Rog)およびCdkn1c(p57Kip)は、DN3胸腺細胞において通常発現されなかった。図1(G)におけるそれぞれのヒストグラムにおいて、第1のバーはLAK細胞を表し、第2のバーはITNKを表し、第3のバーはDN3細胞を表す。
図2. T細胞のITNKへの、効果のある再プログラム。(A)単一のflox/flox DN3細胞から再プログラムされたITNKの代表的なフローサイトメトリープロファイル。数字は、全細胞における百分率を表す。T:完全なBcl11b欠失を有しなかったT細胞。データは、3回の実験を表す。OP9-DL1間質細胞と同時培養された、個々のウェル(96ウェルプレート)における、単一のBcl11b欠損DN3胸腺細胞に由来するNKp46+iTNK。T:T細胞遺伝子を発現した細胞、Bcl11bは完全には欠失されなかった;iTNK:Bcl11bの両方のコピーを欠失しており、NKp46を発現した細胞。
(B)2つの代表的なT細胞(T1、T2)およびITNK(I1、I2)ウェルにおけるBcl11b欠失のPCR遺伝子型同定。flox:loxPが導入された対立遺伝子;del;欠失対立遺伝子。-OHT:OHT処理なし;H2O:鋳型なしコントロール。PCR遺伝子型同定は、いくつかのウェルにおける細胞が完全なCre-loxP組換えを有していないことを示した(T1およびT2)。これらの細胞は、Bcl11b座に1つの欠失対立遺伝子および1つのcko対立遺伝子を有していた。他方では、NKp46+細胞はすべて、Bcl11bを完全に欠失させた(I1およびI2)。欠失は、OHT処理なしでは(-OHT)細胞において検出されなかった。
(C)特有のDJ組換えを示す5つのITNKウェル(I1〜I5)のTCRβ座でのDJ組換え。L:DNAラダー;Thy:野生型胸腺細胞。(D)親のDN3胸腺細胞(T)およびITNK細胞のギムザ染色。スケールバー:20μm。(E)ITNK細胞の透過電子顕微鏡写真。1:核;2.ゴルジ体;3.顆粒;4.ER。スケールバー:2μm。(e)ITNK細胞の電子透過顕微鏡画像は、顕著なゴルジおよびERならびに顆粒を示す。矢印:1=核;2=ER;3=顆粒;4=ゴルジ。(F)示すエフェクター対標的比(E:T)でB16F10、RMA、およびRMA-S腫瘍細胞標的を用いて標準の51Cr放出アッセイにおいて測定されたITNK(「+OHT」と標識)およびLAKの細胞毒性。-OHT:flox/flox T細胞。データは、三つ組のウェルの平均値である。DN3胸腺細胞からのin vitro誘導ITNK細胞は、腫瘍細胞を有効に死滅させた。LAKおよびITNK細胞の両方は、MHC-IネガティブB16F10メラノーマおよびRMA-Sリンパ腫細胞を死滅させた。
図3. in vivoで再プログラムされたITNKは、強力な腫瘍細胞キラーであった。(A)OHT処理flox/floxおよびflox/+マウスからの胸腺細胞および脾細胞のフローサイトメトリー分析。数字は、リンパ球ゲートにおける百分率を表す。データは、4匹のマウスを表す。(B)OHT処理flox/floxマウスにおける胸腺γδT細胞からのITNKの分析。データは、2匹のマウスを表す。(C)flox/flox DP胸腺細胞を注射したRag2-/-Il2rg-/-レシピエントにおけるITNK産生。注射の2週間後に、ドナー(CD45.2+)および宿主(CD45.1+)脾細胞を分析した。数字は、リンパ球ゲートの百分率を表す。プロットは、3回の独立した実験からの15匹のマウスを表す。ドナー細胞は、CD45.2染色によって同定した。脾細胞の約5%はドナー由来であり、これらのドナー由来細胞のおおよそ半分は、NKp46+iTNKであった。(D)レシピエントマウスの脾細胞からのIL-2におけるITNKのex vivo増殖。生細胞は、示す時点でカウントし、分析した(下パネル)。数字は、百分率を表す。培養物中のほとんどの細胞は、それらがNKp46、TCRβ、NK1.1、およびNKG2Dを発現したので、ITNKであった。バーは、4つの試料の平均値±SDである。データは、3回の実験を表す。(d)4つのRag2-/-Il2γc-/-レシピエントマウスの脾臓型(splenotype)から始める、in vivo再プログラムiTNK細胞のex vivo増殖。これらの細胞は、3〜4週間までの間、培養物中で広範囲に増殖することができた。下パネル:iTNK細胞(NK1.1+および/またはNKp46+)は、1週間の培養後に培養物において大多数の細胞を占めた。(E)ex vivo増殖ITNK(「+OHT」と標識)は、示すエフェクター対標的比(E:T)でB16F10、RMA、およびRMA-S腫瘍細胞標的を用いる51Cr放出死滅アッセイにおいて使用した。-OHT:flox/flox T細胞。データは、三つ組のウェルの平均値である。結果は、3つの実験を表す。ex vivo増殖iTNKは、LAKよりも腫瘍細胞に対して強力なキラーであった。iTNKは、MHC-Iポジティブまたはネガティブの腫瘍細胞を有効に死滅させた。
(F)ITNKは、腫瘍転移を予防した。処理(+OHT)もしくは未処理(-OHT)flox/flox DP胸腺細胞またはPBSを最初に移植したRag2-/-Il2rg-/-レシピエント。レシピエントに、50,000のB16F10メラノーマ細胞を続いて静脈内注射した。肺腫瘍コロニーは、腫瘍攻撃の2週間後に数えた。データは個々のマウスからのものであり、バーは平均値を表す。(G)in vivo iTNKは、マウスにおいてB16F10メラノーマ細胞を有効に排除した。多くの転移性のコロニーは、PBS(細胞なし)または未処理DP胸腺細胞(-OHT)のいずれかを注射したコントロールマウスの肺において可視的であった。OHT処理DP胸腺細胞が注射され、よって、iTNKが産生された(+OHT)場合、転移性のコロニーはほとんど存在しなかった。
図4. Bcl11bは、Notchシグナル伝達の直接的な下流標的遺伝子である。(A).ウェスタンブロットによって検出されるOHT処理後のT細胞におけるBcl11bタンパク質。(B)推定上のCSL結合部位(BS)を示すBcl11b座の概略図および関連性がないコントロール結合部位(CTL)の概略図。(C)ゲノムDNAは、CSLまたはコントロールIgG抗体を使用して、胸腺細胞の免疫沈降から調製し、Bcl11b座の推定上のCSLまたはコントロール結合部位の側面に位置するプライマーを使用して増幅した。3つのBcl11b結合領域:領域1、転写の開始点から約1.8kb;領域2、エクソン1の5.4kb下流;領域3、エクソン2の約600bp下流。CSL:CSL抗体;IgG:コントロールIgG。濃縮倍数は、IgGコントロール(1に設定)と比較して計算した。バーは、三つ組の平均値±SDである。図4(c)におけるヒストグラムにおいて、第1のバーはCSLを表し、第2のバーはIgGを表す。
図5. Bcl11b-tdTomatoレポーターマウスの生成。(A)tdTomatoカセットは、Bcl11b座の3'UTRを標的にした。(B)Bcl11b 3'UTRでのtdTomatoカセットの挿入は、T細胞発生に影響を与えなかった。数字は、リンパ球ゲートの百分率を表す。データは、3匹のマウスを表す。
図6. Bcl11b-tdTomatoレポーターマウスを使用する造血系列におけるBcl11b発現の検出。Bcl11btd/+マウスの胸腺、脾臓、および骨髄からの白血球は、フローサイトメトリー分析のために抗体を用いて標識した。Bcl11b発現細胞は、赤色の蛍光を有した。実線はBcl11btd/+マウスを表し、点線は野生型マウスを表す。(A)CD4-CD8-ダブルネガティブ(DN;DN1〜DN4)胸腺細胞亜集団。DN1:CD44+CD25-;DN2:CD44+CD25+;DN3:CD44-CD25+;DN4:CD44-CD25-。(B)ダブルポジティブ(DP)胸腺細胞(CD4+CD8+)、脾臓CD4+およびCD8+T細胞、胸腺γδT細胞、ならびに脾臓NKT細胞(CD3+CD1d+)。(C)骨髄B細胞(CD19+B220+)および骨髄細胞(CD11b+Gr-1+)。(D)脾臓(CD3-)および胸腺(CD3-CD4-CD8-)NK細胞。NKP:NK細胞前駆型;未成熟:NK1.1+CD27+CD11b+およびNK1.1+CD27+CD11b+。(E)ソートされた脾臓ナイーブ(CD44-CD62L+)および活性化(CD44+CD62L-)T細胞集団におけるBcl11b発現のqRT-PCR。Bcl11b発現は、CD8+CD44+CD62L-(1に設定した)と比較して計算した。バーは、3つの試料の平均値±SEMである。(F)Bcl11btd/+マウスにおけるナイーブおよび活性化T細胞におけるBcl11b発現の定量。百分率は、Bcl11btd/+マウスにおいて示される細胞亜集団を表す。この図におけるFACSデータはすべて、3つの実験を表す。
図7. フローソーティングおよび分析のための細胞集団の同定のための戦略。(A)Lin-ならびにCD25およびCD44の発現によって定義されるダブルネガティブ(DN)胸腺細胞(DN1〜DN4)集団の同定。DN1サブ集団は、CD117(c-Kit)の発現によって定義した。数字は、百分率を表す。(B)γδT細胞の同定。(C)B細胞を最初にゲートアウトする(またはFACSソーティングに先立って磁気的に除外する)ことによる脾臓中のNKT細胞の同定。INKTは、CD3+であり、CD1d二量体によってポジティブに染色された。(D)NK前駆型(CD3-CD122+NK1.1-)およびNK細胞亜集団(NK1.1+CD27+CD11b-、NK1.1+CD27+CD11b+、NK1.1+CD27-CD11b+)細胞の同定。(E)胸腺NK細胞はNK1.1+CD127+胸腺細胞として定義した。(F)ナイーブ(CD44-CD62L+)および活性化(CD44+CD62L-)T細胞の同定。
図8. Bcl11b欠損T細胞のin vitro分析。(A)Bcl11bコンディショナルノックアウト対立遺伝子の模式図。Bcl11bエクソン4は、loxP部位が側面に位置した。示すDNA断片は、標的ES細胞のサザンブロット分析において5'プローブによって検出した。27kb野生型BamHIバンドを検出した5'プローブを使用する、標的ES細胞クローンのサザンブロット分析。同じプローブを、コンディショナルノックアウトクローン(cko/+)における12.6kb断片および5'loxP部位を有しなかったクローン(+/-)における17.5kb断片にハイブリダイズさせた。(B)Bcl11b欠損DN胸腺細胞の分析のための実験計画。CreERT2;Bcl11bflox/flox(flox/flox)またはCreERT2;Bcl11bflox/+(flox/+)マウスからの全胸腺細胞は、48時間、OHTを用いて処理し(+OHT)または未処理のままとし(-OHT)、次いで、示す亜集団にソートし、2週間の間、OP9-DL1間質細胞上で培養した。(C)DN1およびDN2 OHT処理flox/flox胸腺細胞からのNKp46+CD3-細胞は、TCRβを発現しなかった。数字は、細胞の百分率を表す。データは、2回の実験を表す。(D)DN1およびDN2の培養物からの、T(NKp46-CD3+)細胞集団ではなくITNK(NKp46+CD3-)におけるホモ接合型Bcl11b欠失。flox:コンディショナルノックアウト対立遺伝子;del:欠失対立遺伝子。H2O:DNA鋳型なしコントロール。(E)NKp46+細胞ではなくT細胞が、未処理flox/flox胸腺細胞から得られた。(F)OP9間質細胞上で培養した、IL-2またはIL-15の非存在下における、OHT処理DN1およびDN2 flox/flox胸腺細胞からのNKp46+TCRβ-細胞。(G)NKp46+TCRβ-細胞は、T細胞培地において、flox/+ではなくOHT処理DN3 flox/flox胸腺細胞において検出された。(H)骨髄細胞培養条件におけるBcl11b欠損DN3胸腺細胞のNKp46+細胞への再プログラム。(I)B細胞培養条件における、Bcl11b欠損DN3胸腺細胞のNKp46+CD19-細胞への再プログラム。(J)LAK対DN3(緑色)およびITNK対DN3(紫色)の間のアップレギュレート(>2倍)遺伝子のベン図比較は、2つの遺伝子リストの間で著しく重なることを示す。(K)DP flox/flox胸腺細胞からのITNKは、OHTを用いて処理し、IL-2の存在下においてOP9-DL1上で培養した。未処理細胞は、この条件下で急速に死んだ。(L)脾臓flox/flox CD8+T細胞からのITNKは、OHTを用いて処理し、IL-2の存在下においてOP9-DL1上で培養した。この図におけるFACSデータはすべて、2〜4の実験を表す。
図9. in vitro再プログラムITNK表現型の特徴づけ。(A)単一のDN3胸腺細胞のITNKへの再プログラムのための実験計画。flox/floxマウスからの全胸腺細胞は、OHTを用いて処理し(+OHT)または未処理のままとし(-OHT)、48時間後、単一のDN3細胞は、ソートし、96ウェルプレート中のOP9-DL1間質細胞上に接種し、10〜14日間の間、IL-2を補足した。(a)単一のDN3胸腺細胞のiTNKへの変換を分析するための実験計画。DN3胸腺細胞(OHTを用いて処理または未処理)は、OP9-DL1間質細胞をあらかじめ接種した96ウェルプレートの個々のウェルにソートした。2週間(Il2あり)または3週間(Il2なし)後に、iTNKに変換したOHT処理DN3細胞(Bcl11b欠損)は、FACS分析およびゲノムDNA PCRによって確認した。(B〜C)in vitroでDN3胸腺細胞から再プログラムされたITNKによる、細胞内(TRAIL、パーフォリン、IFNγ)およびNK細胞表面マーカーの発現。(D)in vitroでBcl11b欠損DP胸腺細胞から再プログラムされたITNKによるNK細胞マーカーの発現。(E)ITNKはCD127を発現せず、したがって胸腺NK細胞ではなかった。(F)DN3胸腺細胞から再プログラムされた、大量培養ITNKにおけるCD27およびCD11bの分析。FACSデータはすべて、3回の実験を表す。
図10. flox/floxマウスにおけるin vivo再プログラムITNK細胞の分析。(A)in vivo再プログラムITNK細胞の分析のための実験計画。flox/floxまたはflox/+マウスに、3日間連続で経口強制飼養によってタモキシフェンを用いて治療し、胸腺および脾臓を2〜3週間後に分析した。発明者らは、治療flox/+コントロールマウスと比較して、治療flox/floxマウスにおいて全胸腺細胞における5〜10倍の低下および脾細胞における約2倍の低下を観察した。(B)flox/floxマウスにおけるITNK(NKp46+CD3+およびNKp46+CD3-)細胞集団におけるBcl11b欠失のPCR。flox:コンディショナルノックアウト対立遺伝子;del:欠失対立遺伝子。H2O:DNA鋳型なしコントロール。胸腺におけるNKp46+CD3+およびNKp46+CD3-細胞はすべて、ITNKであった。脾臓におけるITNKの分析は、多くのNKp46+在来型NK細胞の存在によりより複雑であった。しかしながら、脾臓におけるほとんどのNKp46+CD3+細胞は、Bcl11b欠損を有し、したがって、ITNKであった。PCRデータは、3つの実験を表す。(C)NKp46+ITNKにおけるCD4およびCD8発現のフローサイトメトリー分析。CD4およびCD8の両方の発現が、CD4+NKp46-またはCD8+NKp46-T細胞と比較して、ITNK(CD4+NKp46+またはCD8+NKp46+)において下がっていたことに注目されたい。(D)OHT処理マウスからの全胸腺細胞または脾細胞のex vivo増殖後の細胞のフローサイトメトリー分析。(E)胸腺および脾臓におけるCD1d制限NKT細胞のフローサイトメトリー分析。全リンパ球およびCD19-脾細胞は、胸腺および脾臓においてそれぞれゲート制御した。OHT処理flox/floxマウスにおけるNKT細胞の低下に注目されたい。(F)ex vivo増殖ITNK培養物におけるCD1d制限細胞の分析。数字は、リンパ球ゲートにおける百分率を表す。この図におけるFACSデータはすべて、3〜4匹の個々のマウスを表す。(G)CD8+T細胞、CD8+ITNK、およびLAKにおける、いくつかの重要なTまたはNK細胞関連遺伝子のqRT-PCR分析。バーは、3つの試料の平均値±SEMである。それぞれの遺伝子の最も高度な発現レベルを1に選んだ。(H)タモキシフェンを用いて治療したflox/floxまたはflox/+マウスからの脾細胞は、ITNK上のCD3の発現を確認するために、NKp46、NK1.1、CD8、およびCD3を用いて染色した。別々の一定分量をIndo-1と共に装填し、NKp46、NK1.1、およびCD8に対する抗体を用いて染色し、フローサイトメトリーによってカルシウムフラックスについて分析した。上位のパネル:ゲート制御されたT細胞(CD3+NKp46-)およびITNK(CD3+NKp46+)細胞を示すflox/floxまたはflox/+マウスからの脾細胞の表現型。数字は、全リンパ球のゲートにおける百分率を表す。下位のパネル:示す細胞サブセットからのカルシウムフラックスプロット。ベースラインは、獲得を中断する前にアッセイの開始時に確立し、抗CD3(145-2C11)を追加した(第1の矢印)。次いで、CD3は、抗ハムスター二次抗体の追加によって架橋し(第2の矢印)、イオノマイシンは、ポジティブコントロールとして追加した(第3の矢印)。ゲート中の数字は、抗ハムスター抗体の追加後のレスポンダー(上部のゲート)および非レスポンダー(下位のゲート)を表す。下記のデータ、カルシウムプロットは、非レスポンダーに対するレスポンダーの比を示す。データは、2匹のマウスを表す。
図11. DP胸腺細胞からのin vivo再プログラムITNKは、腫瘍転移を予防した。(A)DP胸腺細胞のITNKへのin vivo再プログラムの分析のための実験計画。flox/floxマウスからの全胸腺細胞は、OHTを用いて処理し(+OHT)または未処理のままとし(-OHT)、48時間後、DP細胞は、ソートし、Rag2-/-Il2rg-/-マウスに静脈内注射した。2週間後に、脾細胞、骨髄(BM)、および末梢血細胞(PB)は、ITNKについてフローサイトメトリーによって分析した。(B)脾臓中のほとんどのITNKは、CD8+であった。ゲート中の数字は、百分率を表す。データは、3回の実験を表す。(C)ITNKは、完全なBcl11b欠失を有したが、ドナー由来NKp46-細胞は、なお、loxPが導入された対立遺伝子の少なくとも1つのコピーを保持した。PCRデータは、2回の個々の実験を表す。(D)ITNKはまた、骨髄および末梢血においても見つけられた。骨髄の約1.0%および末梢血白血球の6〜7%は、NKp46を発現し、したがって、Bcl11b欠損DP胸腺細胞を注射したレシピエントにおいてITNKであった。(E)in vivo再プログラムITNK上のさらなるNK細胞表面マーカーの発現。in vivo iTNKは、Ly49C/IおよびLy49G2などのようなよりNK特異的受容体を発現した。(F)ITNKは、腫瘍転移を予防した。Rag2-/-Il2rg-/-レシピエントに処理(+OHT)もしくは未処理(-OHT)flox/flox DP胸腺細胞またはPBSを移植した。レシピエントに、5×104 B16F10メラノーマ細胞を続いて静脈内注射した。肺腫瘍コロニーは、腫瘍攻撃の2週間後に数えた。実験は、2度実行した。(G)プロットは、in vivo再プログラムおよび腫瘍攻撃後にレシピエントマウスから得られたITNK細胞(正方形)の百分率および観察された肺コロニー(円形)の数字の間の逆相関を示す。データは、個々のマウスであり、2回の独立した実験を表し、それぞれ、群当たり5匹のマウスを用いた。チャートは、in vivoで、脾臓におけるITNKの百分率(正方形)が、OHT処理DP胸腺細胞の注射後のRag2-/-Il2rg-/-マウスにおいて転移性部位(+OHT円形)の低下と相関したことを示す。-OHTの正方形および円形は、OHT未処理DP胸腺細胞を注射したレシピエントマウスにおけるiTNKおよび転移性部位をそれぞれ表す。OHT処理DP胸腺細胞を注射したマウスにおいて、脾細胞の約4%は、iTNKであった。
図12. Bcl11bは、Notchシグナル伝達の下流に作用し、T細胞発生を促進し、T細胞の同一性を維持することを示す作動モデル。
図13. Bcl11bは、初期T細胞前駆型において発現され、T細胞分化にとって不可欠である。
a.蛍光基質FDGを使用するBcl11b-lacZノックインマウスからの胸腺細胞におけるBcl11bの発現。DN2〜DN4胸腺細胞はほとんどすべて、FDGについてポジティブに染色された。しかしながら、かなりのDN1集団は、Bcl11bを発現しなかった。
b.5つのDN1サブ集団におけるBcl11b発現の検出。CD117+であり、真のT細胞前駆体を含有すると考えられたDN1aおよびDN1b胸腺細胞の約半分は、Bcl11bを発現した。
c.上、Bcl11bの急性の損失は、OP9-DL1間質細胞上でDN1胸腺細胞にNK特異的遺伝子NK1.1およびNKp46を発現させた。下、DN2胸腺細胞におけるBcl11bの欠失は、T細胞分化の素質を失い、NK様細胞に変換する同じ表現型のもとになった。
図14.
a.左のパネル:CD25およびCD44の発現によって定義される異なるダブルネガティブ(DN)胸腺細胞集団。右のパネル:CD24およびCD117(c-Kit)の発現に基づくDN1胸腺細胞の5つのサブ集団。
b.Bcl11b欠損DN1胸腺細胞を分析するフローチャート。Bcl11b欠損細胞(+OHT)は、NK特性を獲得したが、未処理のもの(-OHT)は、増殖し、OP9-DL1間質細胞上でT細胞に分化した。
図15.
a.ダブルポジティブ(DP)胸腺細胞はBcl11b欠失後にNKp46を発現した。未処理DP細胞は、OP9-DL1間質細胞上で平板培養した約1週間後にT細胞培地中で死んだ(データ示さず)。
b.精製CD8シングルポジティブ細胞(-OHT)は、OP9-DL1間質細胞上で増殖した。それらは、NKp46を発現しなかった。一度Bcl11bが欠失したら、それから、細胞の38%は、NKp46を発現し、間質細胞を死滅させた。これらのiTNKが、なお、TcrβおよびCD8を発現したことに注目されたい。
c.T細胞培地中で成長する精製CD4シングルポジティブ細胞(-OHT)(左)。Bcl11b欠失(+OHT)は、これらのCD4 T細胞にNKp46を発現させた。それからほとんどの細胞がもはやCD4を発現しなかったことに注目されたい。
【0136】
材料および方法
1.1.1 マウス
Bcl11bコンディショナルノックアウト標的ベクターは、リコンビニアリング(recombineering)を使用して構築し(Liu et al., 2003)、マウス(Bcl11bflox/flox)はES細胞における標準の遺伝子標的アプローチに従って得られた。Bcl11bflox/floxマウスは、Cre-ERT2マウスと交雑し、Cre-ERT2;Bcl11bflox/floxマウスを生成した。Cre-ERT2;Bcl11bflox/floxマウスは、混合性のC57BL/6Jおよび129S5の遺伝的背景をしていた。SA-lacZカセットは、Bcl11b-lacZレポーターマウスにおけるBcl11b遺伝子のイントロン3を標的にした(Song-Choon Lee and Pentao Liu、非公開)。マウスはすべて、フローサイトメトリーによってNK1.1+であり、それらが、NK遺伝子複合体にC57BL/6ハプロタイプを受け継いだことを示唆した。Bcl11b tdTomatoレポーターマウスは、Bcl11bの3'UTRにtdTomatoカセットを挿入することによって構築した。Bcl11b tdTomatoマウスは、C57BL/6を背景に持つ。Rag2-/-Il2rg-/-は、C57BL/6を背景に持つ。C57BL/6および129S5の両方は、MHCにH-2bハプロタイプを有する。動物実験はすべて、UK 1986 Animals Scientific Procedure Actおよび地方協会倫理委員会規則に従って実行した。
【0137】
1.1.2 in vivoでのT細胞のITNKへの再プログラム
内因性T細胞のITNKへのin vivo再プログラムについて試験するために、Cre-ERT2;Bcl11bflox/floxおよびCre-ERT2;Bcl11bflox/+マウスに、3日間連続、経口強制飼養によって、サンフラワーオイル中に溶解した3用量の1mgタモキシフェン(OHTとして本文中に示す)(Sigma)を与えた。in vitro処理胸腺細胞のin vivo再プログラムについては、Cre-ERT2;Bcl11bflox/floxからの胸腺細胞は、48時間、4-ヒドロキシタモキシフェン(OHTとして本文中に示す)(Sigma)を用いて処理したまたは未処理のままとした。次いで、2〜4×106 DP胸腺細胞は、ソートし、照射なしでRag2-/-Il2rg-/-レシピエントマウスに静脈内注射した。その後、様々な時点で、血液、骨髄、および/または脾細胞を分析のために調製した。
【0138】
1.1.3 PCR遺伝子型同定およびqRT-PCR
ゲノムDNAを抽出するために、ソートした細胞は、2時間、65℃で、400μlの溶解バッファー(pH8.0を有する50mM Tris、100mM NaCl、pH8.0を有する25mM EDTA、0.5%SDS、および0.5mg/mlプロテイナーゼK)中でインキュベートした。ゲノムDNAは、500μlのイソプロパノールを細胞溶解バッファーに追加することによって沈殿させた。遠心分離後に、DNAは、500μl 70%エタノールを用いて一度洗浄し、PCRのための鋳型として再懸濁する前に風乾した。Bcl11b cko対立遺伝子およびCre-loxP組換え後の欠失は、Table 4(表4)中に記載されるプライマーを用いてPCRによって検出した。TCRβ D-JおよびV-DJを検出するためのPCRプライマーもまた、Table 4(表4)中に列挙する。qRT-PCRについては、RNAは、FACSソート細胞からRNAqueous Micro Kit(Ambion)を使用して単離した。DNase I処理後に、RNAは、Super Script II(Invitrogen)を用いてcDNAを得るために逆転写した。qRT-PCRは、SYBR(Invitrogen)またはTaqman Master Mix(ABgene)を用いて実行した。cDNA投入量を正規化し、PCRを40サイクル実行した。qRT-PCRのためのプライマーをTable 4(表4)中に列挙する。
【0139】
FDG染色
FDG染色については、細胞は、最初に、上記のように表面染色した。次いで、細胞は、20μlのあらかじめ温めたFDG(Sigma)を追加する前に、5分間温め、さらに1分間温めた。反応は、2.0ml氷冷PBSおよび1%BSAの追加によって止め、細胞は、さらに30分間、氷上でインキュベートした。細胞は、遠心分離し、分析前にPBS中に再懸濁した。
【0140】
1.1.4 フローサイトメトリーおよび細胞ソーティング
脾臓、胸腺、および骨髄からの細胞は、機械的に破壊し、赤血球は、ACK溶解バッファー(Lonza)を用いて除去した。血液は、EDTAチューブ(Sarstedt)に収集した。in vitro培養細胞は、収集し、抗体標識前にPBS/1%BSAを用いて洗浄した。すべての細胞について、Fc受容体は、抗体標識前に抗CD16(2.4G2)を用いてブロックした。以下の抗原に対する抗体を使用した:CD3ε(145-2C11)、CD4(L3T4)、CD8α(53-6.7)、CD25(PC61)、CD44(IM7)、CD122(TM-β1)、CD27(LG.3A10)、CD11b(M1/70)、CD45.2(104)、TCRβ(H57-597)、CD117(2B8)、NK1.1(PK136)、CD49b(DX5)、NKp46(29A1.4)、Ly49C/I(5E6)、Ly49G2(4D11)、Ly49D(4E5)。抗体はすべて、BD BiosciencesまたはeBioscienceからのものとした。細胞は、洗浄する前に4℃で30分間、抗体と共にインキュベートした。いくつかの場合では、ビオチン化抗体は、4℃での、さらに20分間の蛍光色素コンジュゲートストレプトアビジンとのインキュベーションによって明らかにした。CD1d制限NKTは、α-ガラクトシルセラミド(Kirin)をロードしたCD1d-マウスIgG1 Fc融合タンパク質(BD Biosciences)、その後に蛍光色素コンジュゲート抗マウスIgG1(BD Biosciences)を用いて、細胞を標識することによって検出した。データ獲得は、FACSCalibur(BD Biosciences)、LSR II(BD Biosciences)、またはFC 500(Beckman Coulter)を使用して実行し、死細胞は、散乱プロファイルまたはDAPI包含に基づいて排除した。分析は、FlowJo(Tree Star)ソフトウェアを使用して実行した。ソーティングは、MoFloまたはFACS Aria(DAKO)(BD Biosciences)を使用して実行した。
【0141】
1.1.5 OP9間質細胞培養
OP9間質細胞は、10%FCS(30分間、56℃で熱不活性化)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および2mM L-グルタミン(Life Technologies)を有するアルファ-MEM(Sigma)中で培養した。OP9-DL1間質細胞は、20%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および2mM L-グルタミン(Life Technologies)を有するアルファ-MEM(Sigma)中で培養した。細胞は、トリプシン処理(Invitrogen)によって2〜3日間ごとに継代した。単層(70%〜80%コンフルエント)のOP9またはOP9-DL1細胞を同時培養の24時間前に調製した。
【0142】
1.1.6 in vitroでのOHT処理
Cre-ERT2;Bcl11bflox/floxマウスからの胸腺細胞または脾細胞は、48時間、37℃で、1μM 4-ヒドロキシタモキシフェン(OHTとして本文中に示す)を用いてT細胞培地中で培養した。この後に、細胞は、洗浄し、新鮮な培地を用いて再懸濁した。T細胞培地:RPMI-1640、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、5ng/ml muFlt-3L、5ng/ml huIL-7。この研究中で使用したサイトカインはすべて、PeproTechから購入した。
【0143】
1.1.7 in vitroでのT細胞のITNKへの再プログラム
OHT処理後に、胸腺細胞は、FACSによってソートし、T細胞培養基中でOP9-DL1と同時培養した(24ウェルプレート中ウェル当たり3,000の細胞)。ITNK増殖を促進するために、20ng/ml muIL-15または100ng/ml huIL-2を、示すように、T細胞培地中に補足した。3日ごとに、培地の半分を、本文中に示されるように、IL-15またはIL-2を有する新鮮なT細胞培地と交換した。7日ごとに、細胞は、勢いよくピペット操作することによって収集し、細胞ストレーナーでろ過し、新鮮なOP9-DL1間質細胞をあらかじめ接種した新しい組織培養プレートに移動させた。OHT処理の14日間後に、細胞は、収集し、FACSによって分析した。骨髄細胞分化条件におけるITNK産生の分析については、IMDMは、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、1ng/ml huIL-7、5ng/ml muFlt-3L、10ng/ml huIL-3、huIL-6、幹細胞因子(muSCF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(muGM-CSF)を補足して使用した。細胞は、OP9間質細胞上で培養した。B細胞分化条件におけるITNK産生の分析については、IMDMは、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、5ng/ml huIL-7、5ng/ml muFlt-3Lを補足して使用した。細胞は、OP9間質細胞上で培養した。
【0144】
1.1.8 単一胸腺細胞のITNKへの再プログラム
Cre-ERT2;Bcl11bflox/floxの胸腺細胞を、上記のようにOHTを用いて処理した。単一DN3胸腺細胞は、100ng/ml huIL-2を補足したT細胞培地中のOP9-DL1間質細胞をあらかじめ接種した96ウェルプレートの個々のウェルに直接ソートした。培地は、3日ごとに交換した。10〜14日後に、細胞は、フローサイトメトリーで分析した。ゲノムDNAは、Bcl11b座の遺伝子型同定のためにおよびPCRを用いるβTCR再編成の増幅のために抽出した。
【0145】
1.1.9 腫瘍細胞死滅アッセイ
B16F10メラノーマ(H-2b)、RMAリンパ腫、およびRMA-Sリンパ腫(H-2b TAP-1-欠損変異体)は、RPMI-1640、5%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、2mM L-グルタミン中で維持した。致死アッセイのために、標的細胞は、37℃で、45分間、0.1μCi Na2 51CrO4(Perkin Elmer)を用いて洗浄し、インキュベートした。次いで、細胞は、洗浄し、示すE:T比でエフェクター細胞に3度追加した。上清をシンチレーションカウンターにおいてクロム放出について試験する前に、プレートは37℃で4時間インキュベートした。特異的溶解パーセントは、(実験による放出-自発的な放出)/(最大の放出-自発的な放出)×100として計算した。
【0146】
in vivoでのT細胞からiTNK
Cre-ERT2からの胸腺細胞;Bcl11bflox/floxは、上記のようにOHTを用いて処理した。2〜4×106 DP胸腺細胞は、ソートし、照射なしでRag2-/-Il2γc-/-レシピエントマウスに静脈内注射した。その後、様々な時点で、血液および/または脾細胞を分析のために調製した。
【0147】
1.1.10 ITNK ex vivo増殖およびLAK培養
ex vivo増殖のために、脾臓ITNK細胞は、NK単離キット(Miltenyi)を使用して濃縮し、10% FCS/50μM 2-メルカプトエタノール/2.0mM L-グルタミン、および1000U/ml hIL-2(Chiron)を含有するRPMI 1640培地中で1×106細胞/mlで6〜9日間、培養した。細胞は、2日ごとに分割し、新鮮なIL-2を補足した。純度は、常に>90%とした。ex vivoで再プログラムITNK細胞を培養するために、全脾細胞は、あらかじめ濃縮することなく培養した。
【0148】
1.1.11 in vivoでの腫瘍実験
OHT処理後に、2〜4×106 DP T細胞をCre-ERT2;Bcl11bflox/flox胸腺細胞からソートし、照射なしでそれぞれのRag2-/-Il2rg-/-レシピエントマウスに静脈内注射した。2週間後に、5×104 B16F10メラノーマ細胞を静脈内注射し、肺コロニーを腫瘍接種の14日後に数えた。
【0149】
カルシウムフラックス実験
flox/floxまたはflox/+マウスを、タモキシフェンを用いて処理し、上記に記載されるようにin vivo再プログラムITNKを誘導し、脾細胞を4〜5週間後に分析した。脾細胞は、表現型を同定するためにNKp46、NK1.1、CD8、およびCD3に対する抗体を用いて直接染色したまたは2μM Indo-1(Invitrogen)をロードし、洗浄し、NKp46、NK1.1、およびCD8に対する抗体を用いて染色した。次いで、データは、リンパ球をゲート制御するLSR IIフローサイトメーターを使用して獲得し、時間に対するIndo-1(紫色)/Indo-1(青)比を測定した。非刺激細胞は、獲得を中断する前に、ベースラインIndo-1(紫色)/Indo-1(青)蛍光を確立するために流し、抗CD3(145-2C11;10μg/ml)を追加し、獲得を継続した。獲得をさらに中断し、架橋抗ハムスターIgG二次抗体を継続前に追加し、イオノマイシン(1μg/ml)は、ポジティブコントロールとして提供するために獲得の終了時に追加した。
【0150】
1.1.12 遺伝子発現解析
RNAは、FACSソート細胞からRNAqueous Micro Kit(Ambion)を使用して抽出した。RNA試料の品質および量は、バイオアナライザーを用いて試験した。全RNAは、メーカーの指示に従って、Illumina Total Prep RNA Amplification Kit(Ambion)を使用して増幅した。ビオチン化cRNA(試料当たり1500ng)は、Illumina Mouse-6 Expression BeadChipsにかけ、一晩、58℃でハイブリダイズした。チップは、洗浄し、検出し、メーカーの指示に従ってスキャンし、スキャナ出力は、BeadStudioソフトウェア(Illumina)にインポートした。
【0151】
クロマチン免疫沈降
クロマチン免疫沈降は、以前に記載されたように実行した。コントロールIgGおよびCSL抗体は、Abeamから購入した。ゲノムDNAは、Qiaquick PCR精製キット(QIAGEN)を用いて精製し、特異的なゲノムDNA領域は、Taqman(ABI)またはSYBR Green(Invitrogen)を用いてリアルタイム定量PCRによって定量した。IP後に回収されたDNAの濃度を定量するために、投入量DNAは標準曲線として使用した。それぞれのChIP試料から回収したDNAの量はコントロールIgGと比較して示した。このアッセイ中で使用したプライマーは、Table 4(表4)中に列挙する。
【0152】
【表1−1】

【0153】
【表1−2】

【0154】
【表1−3】

【0155】
【表1−4】

【0156】
【表1−5】

【0157】
【表1−6】

【0158】
【表1−7】

【0159】
【表1−8】

【0160】
【表1−9】

【0161】
【表1−10】

【0162】
【表1−11】

【0163】
【表1−12】

【0164】
【表1−13】

【0165】
【表1−14】

【0166】
【表1−15】

【0167】
【表1−16】

【0168】
【表1−17】

【0169】
【表1−18】

【0170】
【表1−19】

【0171】
【表1−20】

【0172】
【表1−21】

【0173】
【表1−22】

【0174】
【表1−23】

【0175】
【表1−24】

【0176】
【表1−25】

【0177】
【表1−26】

【0178】
【表1−27】

【0179】
【表1−28】

【0180】
【表1−29】

【0181】
【表2】

【0182】
【表3−1】

【0183】
【表3−2】

【0184】
【表3−3】

【0185】
【表3−4】

【0186】
【表3−5】

【0187】
【表3−6】

【0188】
【表3−7】

【0189】
【表4−1】

【0190】
【表4−2】

【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図1D】

【図1E】

【図1F】

【図1G】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】

【図2E】

【図2e】

【図7A】

【図7B】

【図7C】

【図7D】

【図7E】

【図7F】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞および/またはプロT細胞由来の、T細胞から誘導されたナチュラルキラー細胞(ITNK)細胞を作製するための方法であって、T細胞および/またはプロT細胞中に存在する少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質の活性および/または効果を調整する工程ならびに前記T細胞および/またはプロT細胞をITNK細胞に変換する工程を含む方法。
【請求項2】
標的T細胞および/または標的プロT細胞を作製するための方法であって、T細胞および/またはプロT細胞中に存在する少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果を調整する工程、ならびに前記T細胞および/またはプロT細胞を前記標的T細胞および/または標的プロT細胞に変換する工程を含む方法。
【請求項3】
前記Bcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果の前記調整が、前記活性および/または効果を阻害することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記Bcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果の前記阻害が、エクソン4などのような前記Bcl11b遺伝子の少なくとも一部分の欠失を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Bcl11b遺伝子の全体または実質的に全体が、欠失している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記Bcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果の前記調整が、前記Bcl11b遺伝子の遺伝子発現の調整を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記Bcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の活性および/または効果の前記調整が、前記Bcl11bタンパク質の活性および/または効果を直接または間接的に調整することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記Bcl11bタンパク質の活性および/または効果を直接または間接的に阻害することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記Bcl11bタンパク質の活性および/または効果の前記調整または阻害が、前記Bcl11bタンパク質が関与する生物学的経路における下流の調整をもたらす、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記下流の調整が、前記生物学的経路における下流標的の存在および/または活性および/または効果を調節する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記前駆型または標的T細胞またはプロT細胞が、以下の細胞型:幹細胞、IPS細胞、CLP、DN1、DN2、DN3、DN4、CD4、またはCD8細胞の1つまたは複数を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
T細胞またはプロT細胞から取得可能であるまたは取得されるITNK細胞。
【請求項13】
T細胞またはプロT細胞が前記ITNK細胞に変換することができるように、活性および/または効果が調整されている、少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物を含む、請求項12に記載のITNK細胞。
【請求項14】
請求項1または請求項3〜11のいずれか一項に記載の方法を実行することによって取得可能であるまたは取得されるITNK細胞。
【請求項15】
宿主からのその排除を少なくとも容易にするために、自殺遺伝子または他のメカニズムをさらに含む、請求項12〜14に記載のITNK細胞。
【請求項16】
標的T細胞または標的プロT細胞がITNK細胞に変換することができるように、活性および/または効果が、前駆T細胞または前駆プロT細胞における対応する遺伝子および/またはタンパク質産物と比較して調整されている、少なくとも1つのBcl11b遺伝子産物および/またはタンパク質産物を含む標的T細胞または標的プロT細胞。
【請求項17】
前記Bcl11b遺伝子および/またはタンパク質産物の前記活性および/または効果が、前記前駆T細胞または前駆プロT細胞における対応する活性と比較して阻害されている、請求項16に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項18】
エクソン4などのような、前記Bcl11b遺伝子の少なくとも一部分が欠失している、請求項17に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項19】
Bcl11b遺伝子全体または実質的に全体が、欠失している、請求項18に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項20】
前記Bcl11b遺伝子の遺伝子発現が、前記前駆T細胞または前駆プロT細胞における遺伝子発現と比較して調整されている、請求項16に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項21】
前記Bcl11bタンパク質の活性および/または効果が、前記前駆T細胞または前駆プロT細胞における前記Bcl11bタンパク質の対応する活性および/または効果と比較して調整されている、請求項16に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項22】
前記Bcl11bタンパク質の活性および/または効果が、前記前駆T細胞または前駆プロT細胞における前記Bcl11bタンパク質の対応する活性および/または効果と比較して、直接または間接的に阻害されている、請求項21に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項23】
前記Bcl11bタンパク質の活性および/または効果が、前記Bcl11bタンパク質が関与する生物学的経路における下流の調整をもたらすように調整されている、請求項21に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項24】
前記下流の調整が、前記生物学的経路における下流標的の存在および/または活性および/または効果を調節する、請求項23に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項25】
請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法を実行することによって取得可能であるまたは取得される標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項26】
前記前駆型または標的T細胞またはプロT細胞が、以下の細胞型:幹細胞、IPS細胞、CLP、DN1、DN2、DN3、DN4、CD4、またはCD8細胞の1つまたは複数を含む、請求項16〜25のいずれか一項に記載の標的T細胞またはプロT細胞。
【請求項27】
以下の特性:
(a)T細胞と比較してナチュラルキラー細胞と類似する形態、
(b)TCRβ特異的ゲノムDNA再編成、
(c)ITNK細胞を発生させた親細胞よりも、LAK細胞などのようなNK細胞の遺伝子発現プロファイルにより類似する遺伝子発現プロファイル、
(d)ZFP105、IL2Rβ、Id2、JAK1、NKG2D、NKG2A/C/E、B220、Rog(Zbtb32)、Tnfrsf9、Cdkn1c、Trail、パーフォリン、インターフェロン-γ、NK1.1、NKp46、E4bp4、NKG7、KLRD1、LTA、PLCG2、Ly49C/I、およびLy49G2などのような1つまたは複数のNK特異的遺伝子の細胞発現、
(e)ITNK細胞が由来する親細胞と比較して、Notch1、Est1、Hes1、Gata3、Deltax1、TCRβ、CD3、Tcf1、IL7R、T-bet、および/またはCD8aの発現の減少または無発現などのような、1つまたは複数のT系列遺伝子の発現の減少または無発現、
(f)細胞死滅能力、たとえば、使用される前駆細胞(親T細胞またはプロT細胞)と適切に比較して、腫瘍の形成または成長を予防するまたは改善する能力、間質細胞、腫瘍細胞、または感染細胞を死滅させる能力、
(g)MHC-I分子を認識することができ、in vivoで作製された場合にMHC-Iポジティブ細胞またはネガティブ細胞を死滅させることができること
の1つもしくは複数またはすべてを示すことを特徴とするITNK細胞。
【請求項28】
請求項12〜14もしくは請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞または請求項16〜26のいずれか一項に記載の標的T細胞もしくは標的プロT細胞を、そのための薬学的に許容されるキャリア、希釈剤、または賦形剤と一緒に含む医薬組成物。
【請求項29】
疾患の予防または治療などのような医療における使用のための、請求項12〜15もしくは請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞または請求項16〜26のいずれか一項に記載の標的T細胞もしくは標的プロT細胞。
【請求項30】
癌療法における使用またはウイルス感染症などのような感染症の予防のための、請求項12〜15もしくは請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞または請求項16〜26のいずれか一項に記載の標的T細胞もしくは標的プロT細胞。
【請求項31】
癌またはウイルス感染症の治療または予防のための医薬の製造における、請求項12〜15もしくは請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞または請求項16〜26のいずれか一項に記載の標的T細胞もしくは標的プロT細胞の使用。
【請求項32】
疾患の予防または治療などのような医療における使用のための、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞。
【請求項33】
癌療法における使用またはウイルス感染症などのような感染症の予防のための、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞。
【請求項34】
癌またはウイルス感染症の治療または予防のための医薬の製造における、Bcl11b発現がダウンレギュレートされたまたは不在である成熟活性化T細胞の使用。
【請求項35】
癌またはウイルス感染症などのような疾患に罹患しているまたはそれに対して感受性のヒトまたは非ヒト哺乳動物の対象を治療するための方法であって、治療有効量の、請求項12〜15もしくは27のいずれか一項に記載のITNK細胞、または請求項32〜34のいずれか一項に記載の細胞、または請求項28に記載の医薬組成物を前記対象に投与する工程を含む方法。
【請求項36】
癌またはウイルス感染症などのような疾患に罹患しているまたはそれに対して感受性のヒトまたは非ヒト哺乳動物の対象を治療するための方法であって、T細胞またはプロT細胞におけるBcl11b遺伝子またはタンパク質の発現、活性、および/または効果を調整または阻害し、かつこれらのT細胞またはプロT細胞のITNK細胞への変換を引き起こす、治療有効量の化合物を対象に投与する工程を含む方法。
【請求項37】
Bcl11bの発現、活性、および/または効果を調整または阻害する化合物は、アンチセンスRNAまたは低分子干渉RNA(siRNA)またはmiRNAである、請求項3に記載の方法。
【請求項38】
1つまたは複数の抗癌剤、抗ウイルス剤、または治療計画と組み合わせた、請求項12〜15または請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞。
【請求項39】
抗癌療法における同時、別々、または連続的使用のための複合調製物としての、請求項12〜15または請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞および1つまたは複数の抗癌剤を含有する産物。
【請求項40】
抗ウイルス療法における同時、別々、または連続的使用のための複合調製物としての、請求項12〜15または請求項27のいずれか一項に記載のITNK細胞および1つまたは複数の抗ウイルス剤を含有する産物。
【請求項41】
前記Bcl11b遺伝子産物および/またはタンパク質産物が相互作用する、またはそれに関して効果を有する、下流標的を同定するためのアッセイであって、潜在的な下流標的に対する、Bcl11b遺伝子またはタンパク質の調整の効果をモニターする工程および発現がBcl11b調整によって影響を与えられる標的を選択する工程を含むアッセイ。
【請求項42】
T細胞のITNK細胞への変換をモニターすることをさらに含む、請求項41に記載のアッセイ。
【請求項43】
(i)前記Bcl11b遺伝子産物の活性および/もしくは効果を調整するように、前記Bcl11b遺伝子産物および/もしくはタンパク質産物と相互作用する、または(ii)前記下流標的の活性および/もしくは効果を調整するように、前記下流標的と相互作用する、調整因子を同定する工程をさらに含み、それによって、(i)または(ii)に従ってそのように調整されるT細胞またはプロT細胞が、1つまたは複数のITNK細胞に変換される、請求項41または42に記載のアッセイ方法。
【請求項44】
請求項12〜15もしくは27のいずれか一項に記載のITNK細胞および/または請求項16〜26のいずれか一項に記載の標的T細胞もしくはプロT細胞を有するヒトもしくは非ヒト動物。
【請求項45】
ヒトまたは胚性幹細胞などのようなプロT細胞中に存在する、少なくとも1つのBcl11b遺伝子および/またはタンパク質の活性および/または効果を刺激する工程を含む、T細胞産生を刺激するための方法。

【図8C−E】
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【図8F−H】
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【図8I−L】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図15a】
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【図15b】
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【図15c】
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【図2F】
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【図3A−B】
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【図3C−D】
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【図3d−E】
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【図3F−G】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8A−B】
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【図9A−a】
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【図9B−F】
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【図10A−C】
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【図10D−F】
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【図10G−H】
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【図11A−C】
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【図11D−E】
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【図11F−G】
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【図12】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−532624(P2012−532624A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520100(P2012−520100)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051158
【国際公開番号】WO2011/007176
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(512010753)ゲノム・リサーチ・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】