説明

細胞のスクリーニング方法

【課題】チップ上に保持された1万を超える抗原刺激に対するリンパ球の反応性を、同時に測定し、各細胞についてその状態を個別に把握できる方法およびこの方法に用いる手段を提供する
【解決手段】基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであるマイクロウェルアレイ。ウェルの周辺の主表面に、ウェルに格納される細胞が産生する物質と結合性を有する物質の被覆層を有する。上記マイクロウェルアレイのウェルに、被検体細胞を細胞の培養液とともに格納し、被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから被覆層への拡散が可能な状態で細胞を培養し、被検体細胞に含まれる目的細胞よって産生される物質に特異的に結合する標識物質を、被覆層に供給し、被覆層の物質に結合した、目的細胞によって産生された物質を、標識物質により検出して、目的細胞を特定する、目的細胞のスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞のスクリーニング方法およびこの方法に用いるマイクロウェルアレイに関する。さらに詳細には、本発明は、特異的免疫グロブリン産生細胞および特異的サイトカイン産生細胞等の免疫細胞のスクリーニング方法およびこの方法に用いるマイクロウェルアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モノクローナル抗体を製造するために、抗原特異的抗体産生ハイブリドーマが作製されている。従来のハイブリドーマの作製方法では、ハイブリドーマを作製した後に抗原特異的抗体を産生するハイブリドーマクローンをスクリーニングする。しかし、ハイブリドーマの作製は効率の良いものではない。すなわち、全てのBリンパ球がハイブリドーマになるわけではなく、ミエローマと細胞融合を起こしたBリンパ球の一部がハイブリドーマになるからである。また、抗原で刺激した脾細胞を用いてハイブリドーマを作製しても、抗原特異的抗体産生ハイブリドーマだけができるわけではなく、できてくるハイブリドーマのほとんどは関係ない抗体を産生しているか、抗体自身を産生していない。
【0003】
例えば、従来の方法で目的の抗体を産生しているハイブリドーマを見つけようとする場合、免疫したマウスから取ってきた脾細胞を使ってミエローマとの細胞融合を行い、96ウェルプレート10枚くらいに蒔く。全部の細胞を使うともっと蒔けるが、1人でスクリーニングを行う場合は時間的制限があり、残りはフリーズなどして保存する。この方法により、通常500個くらいのウェルのハイブリドーマが増殖する。
【0004】
ところが、500個のウェルからハイブリドーマが全て同じようなスピードで増殖してくるわけではなく、早く増殖するものもあればゆっくり増殖するものもある。従って、500個全部の増殖を同時にチェックできない。まず、顕微鏡下でどのウェルから細胞が増殖してきており、抗体をチェックするのに適した細胞数まで増殖しているかをチェックする。その上で、適当なウェルから細胞上清を採取し、抗原特異的抗体を産生しているかをチェックする。この細胞のチェックと細胞上清のチェックは素早く行う必要がある。というのは、ハイブリドーマはどんどん増殖するので、放っておくと増殖しすぎて培地の栄養状態が悪くなり死滅するからである。従って、欲しいハイブリドーマが死んでしまわないうちにスクリーニングし終わらなければならない。
【0005】
また、目的のハイブリドーマが増殖しているウェルが見つかった場合、そのウェルには通常、目的の抗体を産生しているハイブリドーマのほかに別の抗体を産生しているハイブリドーマが増殖していることがしばしばある。また、ハイブリドーマ自体染色体を落としながら増殖するので、抗体を産生していたハイブリドーマが抗体の染色体を喪失してしまうことにより抗体を作らなくなる場合もある。このような細胞の増殖は通常、抗体を産生しているハイブリドーマよりも速いことが多く、放っておくと培養している細胞のほとんどが抗体を産生していない細胞になってしまう。従って、欲しいハイブリドーマが増殖しているウェルが見つかるとすぐにそのウェルの細胞を96ウェルプレートに1個の細胞が1個のウェルになるようにまき直して(限界希釈法)、もう一度、ほしい抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングし直す(二次スクリーニング)。目的のハイブリドーマを検出後、二次スクリーニングまでを速やかに、細胞の状態が悪くならないうちに終えてしまう必要がある。
【0006】
上記のように、全ての作製したハイブリドーマをスクリーニングせずに、一部だけを使ってスクリーニングすることになることがあるので、頻度の低い抗原特異的抗体産生ハイブリドーマを得ることはむずかしくなる。
【0007】
より具体的には、人の抗原特異的抗体の場合、末梢Bリンパ球をEBウィルスで形質転換させ株化して抗原特異的抗体を産生している細胞をスクリーニングする方法がある(非特許文献1)。この方法の場合、樹立できるリンパ球細胞株の頻度が低いことから、抗原特異的抗体産生Bリンパ球細胞株を得られる確率は非常に低い。また、細胞株の樹立に1ヶ月程度かかり時間がかかる。さらに、樹立されたBリンパ球細胞株が産生する抗体量は少ない。マウスの場合はハイブリドーマを作製することができるが、人の場合は効率のよいハイブリドーマの系は作成されていない。
【0008】
マウスの場合、ハイブリドーマを作製することができる。従来、ハイブリドーマの作製は、マウスを抗原で免疫し、そのマウスから脾臓あるいはリンパ節を取りだし、リンパ球を調製し、調製した約108個のリンパ球と約107個のミエローマ細胞とをポリエチレングリコールを用いて、ないしは電圧をかけることにより融合させ、HAT等の選択培地で培養し、増殖してきたハイブリドーマが抗原特異的抗体を産生しているかをELISA、フローサイトメトリー等を用いてスクリーニングし、抗原特異的抗体産生ハイブリドーマを選択する(非特許文献2、3)。この方法を用いることにより、300〜400ウェルからハイブリドーマが増殖するが、その中で抗原特異的抗体を産生しているハイブリドーマが増殖しているウェルは数%である。この数は用いた抗原によって異なるが、抗原特異的抗体産生Bリンパ球の頻度が低い場合、この方法でハイブリドーマを作製することは困難である。
【0009】
そこで本発明者らは、頻度が比較的高い抗原特異的リンパ球は勿論のこと、頻度の低い抗原特異的リンパ球であっても、簡便に特定の抗原に特異的に反応するリンパ球を選択し、この選択された抗原特異的Bリンパ球から、抗原特異的抗体産生ハイブリドーマを作製する方法を検討し、ある抗原に特異的に反応するBリンパ球(抗原特異的Bリンパ球)を1個選択し、選択した抗原特異的Bリンパ球を培養し、培養により増殖した抗原特異的Bリンパ球をミエローマ細胞と融合させハイブリドーマを作製することを含む、抗原特異的抗体産生ハイブリドーマの作製方法を完成し、先に特許出願した。(WO2004/087911)
【0010】
また、細胞を1つ1つのレベルで特定し、選別し、選別された細胞を用いる試みがなされている。例えば、1つ1つのリンパ球の抗原特異性を個別に検出し、さらに検出された1つの抗原特異的リンパ球を回収し、回収された1つの抗原特異的リンパ球を用いて、例えば、抗体を製造することが検討されている(特開2004−173681号公報、特開2004−187676号公報)。
【特許文献1】WO2004/087911
【特許文献2】特開2004−173681号公報
【特許文献3】特開2004−187676号公報
【非特許文献1】リンパ球機能検索法(改訂5版)矢田純一、藤原道夫編著、中外医学社、1994年、「ヒトモノクローナル抗体作製へのEBウィルストランスフォームB細胞の利用」水野文雄、大里外誉郎、pp381−391)
【非特許文献2】リンパ球機能検索法(改訂5版) 矢田純一、藤原道夫編著、中外医学社、1994年、「B細胞ハイブリドーマによるモノクローナル抗体作製法」成内秀夫、pp574−576
【非特許文献3】Monoclonal antibodies in "Antibodies: A Laboratory Manual" by Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, pp139-pp244, 1988
【非特許文献4】In vitro antibody production. In Current Protocols in Immunology. Edited by J.E. Coligan et al., John Wiley & Sons (New York), p.3.8.1-3.8.16, 1991.
【非特許文献5】Babcook, J. S., Leslie, K. B., Olsen, O. A., Salmon, R. A., Schrader, J. W. A novel strategy for generating monoclonal antibodies from single, isolated lymphocytes producing antibodies of defined specificities. Proc Natl Acad Sci U S A, 93: 7843-7848, 1996.
【非特許文献6】Measurement of polyclonal immunoglobulin synthesis using the ELISPOT assay. In Current Protocols in Immunology. Edited by J.E. Coligan et al., John Wiley & Sons (New York), p.7.14.1-7.14.7, 1991.
【非特許文献7】Assays for antibody production. In Current Protocols in Immunology. Edited by J.E. Coligan et al., John Wiley & Sons (New York), p.2.1.1-2.1.22, 1991.
【非特許文献8】J.C. Love, J.L. Ronan, G.M. Grotenbreg, A.G. van der Veen, H.L. Ploegh, A microengraving method for rapid selection of single cells producing antigen-specific antibodies. Nature Biotechnology, 24: 703-707, 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来法では、マニュアルで、1つ1つのリンパ球の抗原特異性を個別に検出し、さらに検出された抗原特異的リンパ球を回収していた。特許文献2および3では、細胞単位で細胞を特定することが確認されたと記載され、かつ特定された細胞を回収することも可能であると記載されている。しかし、実際に抗原に特異的に反応したリンパ球を多数のリンパ球から検出することは容易でなかった。
【0012】
検出法としては、例えば、抗原に反応したリンパ球におけるカルシウムイオン濃度が上がることを利用し、カルシウムイオン濃度の変化を蛍光として検出し、抗原特異的リンパ球を特定している。しかし、細胞(リンパ球)の種類によって蛍光の発生の仕方や強度等が必ずしも一定ではなく、抗原刺激を受けると即座にカルシウムイオン濃度が上がり、その結果、蛍光強度も上がるリンパ球もあるが、抗原刺激後一定時間経過後にカルシウムイオン濃度が上がり、その結果、蛍光強度も上がるという細胞もある。また、数センチ四方のチップ表面に保持された1〜20万程度のリンパ球の蛍光強度を、一度にほぼ同時に測定する必要が有り、かつ、蛍光が、1つの細胞毎に起因する蛍光であるために蛍光強度が低く、高感度での蛍光検出である必要も有る。
【0013】
しかし、これまでのところ、そのような高集積されたチップ表面上の多数のしかも微弱な蛍光強度を、同時に測定できる方法および装置は存在しなかった。
【0014】
従来からある装置としては、レーザースキャンニング・サイトメーターがあり、レーザースキャンニング・サイトメーターを用いると、数十万個の細胞を個々に細胞内カルシウム濃度の測定ができる。しかし、一回のスキャンにかかる時間は10分以上と長く、抗原刺激後数分で蛍光強度が変化するリンパ球についての検出には、リアルタイム性に欠け、不向きである。
【0015】
蛍光顕微鏡・撮影装置は、通常の蛍光顕微鏡に撮影装置を併せ持つものである。蛍光顕微鏡・撮影装置は、速度的には問題が無いが、通常の顕微鏡だと撮影範囲が狭く、一度に最大1000個程度しか検出することができず、数万〜数十万個の細胞からの蛍光を一度に検出することはできなかった。
【0016】
DNAマイクロアレイスキャナを基にした細胞チップ検出装置は、細胞チップにアレイし た細胞蛍光を検出するために開発され、細胞内あるいは細胞外蛍光を検出することができる装置である。しかし、レーザーを用いて蛍光色素を励起し、励起光を検出するシステムであるため、時間変化を追う検出系ではレーザーによる線スキャン速度が遅く、多数の細胞領域の同時検出はできない。
【0017】
前述の特許文献2および3に記載されている方法で、抗原に対して特異的に反応する細胞を検出するには、反応検出系において、ひとつの細胞に対して、細胞内のカルシウムの変化を経時的に捕らえることができるリアルタイム性と、多数の細胞の中にごくわずかに存在(反応)する細胞を検出する必要性から、多数の細胞を個別に同時に解析できる並列性、が求められる。
【0018】
そこで本発明の目的は、チップ上に保持された1万を超える、好ましくは10万を超える多数の細胞の状態、例えば、抗原刺激に対するリンパ球の反応性を、同時に測定し、各細胞についてその状態を個別に把握できる方法を提供することにある。
【0019】
Bリンパ球は、細胞表面に一種類の抗体を発現しており、病原体(抗原)などがからだに侵入した際に、抗原が細胞表面の抗体に結合することにより、活性化され増殖・分化し、最終的に抗体分泌細胞へ分化する。抗体分泌細胞の特定の方法はすでに多数存在するが、1個の抗体分泌細胞を特定する方法としてはプラーク法とELISPOT(Enzyme-linked Immunospot)法が代表的である。
【0020】
プラーク法は赤血球を利用し、抗体分泌細胞周囲の抗原で標識した赤血球に抗体が結合し溶血を起こすことを指標に抗原特異的抗体分泌細胞を特定する方法である(非特許文献4)。プラーク法を用いて、抗原特異的抗体分泌細胞を検出し、抗体遺伝子を回収する方法はすでに実用化されている(非特許文献5)。
【0021】
ELISPOT法は細胞を抗原をコートしたプレートに播種し、抗体分泌細胞から分泌された抗体が細胞周囲の抗原に結合し、それを酵素標識抗Ig抗体などで検出する方法である(非特許文献6)。ELISPOT法の場合、抗原特異的抗体の細胞周囲への結合を酵素標識抗Ig抗体で検出する際に細胞自体は洗いさってしまうので、抗原特異的抗体分泌細胞を回収することはできない。
【0022】
ハイブリドーマも抗体を分泌する細胞であるが、ハイブリドーマをスクリーニングする際には通常ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)が用いられる(非特許文献7)。最近、この方法を発展させ、微小ウェルで1個のハイブリドーマを培養し、ウェル中に分泌された抗体を蛍光標識された抗原等を用いて検出することにより、抗原特異的抗体分泌細胞を検出する方法が報告された(非特許文献8)。
【0023】
本発明者らは、上記本発明の目的を達成するために、非特許文献4〜8に記載の方法とはまったく異なる、新たな抗原特異的抗体分泌細胞等の免疫細胞の検出方法を提供すべく種々検討し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0024】
以下、上記課題を解決するための本発明を示す。
[1]基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであるマイクロウェルアレイであって、
少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有することを特徴とする前記マイクロウェルアレイ。
[2]ウェル中に格納された細胞の少なくとも一部から産生される物質と、前記被覆層の物質との結合の有無を検出するために用いられる[1]に記載のマイクロウェルアレイ。
[3]前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部は、免疫グロブリン産生細胞またはサイトカイン産生細胞である[1]または[2]に記載のマイクロウェルアレイ。
[4]前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が、免疫グロブリン産生細胞であり、免疫グロブリン産生細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗免疫グロブリン抗体または抗原である[1]または[2]に記載のマイクロウェルアレイ。
[5]前記結合の有無の検出は、産生される免疫グロブリンに対する抗体または抗原を用いて行う[4]に記載のマイクロウェルアレイ。
[6]前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が、サイトカイン産生細胞であり、サイトカイン産生細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗サイトカイン抗体、またはサイトカイン受容体である[1]または[2]に記載のマイクロウェルアレイ。
[7]前記結合の有無の検出は、産生されるサイトカインに対する抗体またはサイトカイン受容体を用いて行う[6]に記載のマイクロウェルアレイ。
[8]前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が、免疫グロブリン産生細胞であり、免疫グロブリン産生細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、サイトカイン受容体または受容体である[1]または[2]に記載のマイクロウェルアレイ。
[9]前記結合の有無の検出は、サイトカインまたはリガンドを用いて行う[8]に記載のマイクロウェルアレイ。
[10]免疫グロブリン産生細胞およびサイトカイン産生細胞は、天然型細胞またはハイブリドーマである[1]〜[9]のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
[11]基体が板状である[1]〜[10]のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
[12]ウェルに格納される細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有さない前記主表面の少なくとも一部は、ブロッキング剤でコートされている、[1]〜[11]のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
[13]基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、かつ少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を細胞の培養液とともに格納し、
前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で細胞を培養し、
任意で培養液を除去した後に、被検体細胞に含まれる目的細胞よって産生される物質に特異的に結合する標識物質を、前記被覆層に供給し、
前記被覆層の物質に結合した、目的細胞によって産生された物質を、前記標識物質により検出して、目的細胞を特定することを含む、
目的細胞のスクリーニング方法。
[14]前記被検体細胞を含む細胞は、予め所望の抗原で刺激を与え、物質を産生し得る状態にある細胞を含む[13]に記載のスクリーニング方法。
[15]
前記被検体細胞は、免疫グロブリン産生細胞、またはサイトカイン産生細胞を含む[13]または14に記載のスクリーニング方法。
[16]
前記被検体細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含み、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗免疫グロブリン抗体または抗原であり、目的細胞が抗原特異的免疫グロブリン産生細胞である[13]または[14]に記載のスクリーニング方法。
[17]前記結合の有無の検出は、産生される免疫グロブリンに対する抗体または抗原を用いて行う[16]に記載のスクリーニング方法。
[18]前記被検体細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含み、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、サイトカイン受容体または受容体であり、目的細胞が抗原特異的免疫グロブリン産生細胞である[13]または[14]に記載のスクリーニング方法。
[19]前記結合の有無の検出は、サイトカインまたはリガンドを用いて行う[18]に記載のスクリーニング方法。
[20]前記被検体細胞が、サイトカイン産生細胞を含み、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗サイトカイン抗体、またはサイトカイン受容体であり、目的細胞がサイトカイン産生細胞である[13]または[14]に記載のスクリーニング方法。
[21]前記結合の有無の検出は、産生されるサイトカインに対する抗体またはサイトカイン受容体を用いて行う[20]に記載のスクリーニング方法。
[22]免疫グロブリン産生細胞およびサイトカイン産生細胞は、天然型細胞、ハイブリドーマ、または細胞株である[13]〜[21]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[23][13]〜[22]のいずれかに記載のスクリーニング方法で特定した目的細胞をウェルから回収することを含む目的細胞の製造方法。
[24]目的細胞が特異的免疫グロブリン産生細胞または特異的サイトカイン産生細胞である[23]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、チップ上に保持された例えば、1万を超える、好ましくは10万を超える多数の細胞の状態、例えば、抗原刺激に対するリンパ球の反応性を、同時に測定し、各細胞についてその状態を個別に把握できる方法と手段を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[マイクロウェルアレイ]
本発明のマイクロウェルアレイは、基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであるマイクロウェルアレイである。このような構造を有するマイクロウェルアレイは、例えば、上記特許文献1〜3に記載されているものをそのまま用いることができる。
【0027】
マイクロウェルアレイチップには、例えば、複数個のマイクロウェルが同一間隔で縦横に配置されている。
【0028】
マイクロウェルの形状や寸法には特に制限はないが、マイクロウェルの形状は、例えば、円筒形であることができ、円筒形以外に、複数の面により構成される多面体(例えば、直方体、六角柱、八角柱等)、逆円錐形、逆角錐形(逆三角錐形、逆四角錐形、逆五角錐形、逆六角錐形、七角以上の逆多角錐形)等であることもでき、これらの形状の二つ以上を組み合わせた形状であることもできる。例えば、一部が円筒形であり、残りが逆円錐形であることができる。また、逆円錐形、逆角錐形の場合、底面がマイクロウェルの開口となるが、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状である(その場合、マイクロウェルの底部は平坦になる)こともできる。円筒形、直方体は、マイクロウェルの底部は通常、平坦であるが、曲面(凸面や凹面)とすることもできる。マイクロウェルの底部を曲面とすることができるのは、逆円錐形、逆角錐形の頂上から一部を切り取った形状の場合も同様である。
【0029】
マイクロウェルが円筒形の場合、その寸法は、例えば、直径3〜100μmであることができ、生体細胞がBリンパ球の場合、好ましくは、直径は4〜15μmである。また、深さは、例えば、3〜100μmであることができ、生体細胞がBリンパ球の場合、好ましくは、深さは4〜40μmであることができる。但し、マイクロウェルの寸法は、上述のように、マイクロウェルに格納しようとする生体細胞の直径とのマイクロウェルの寸法の好適な比を考慮して適宜決定する。
【0030】
マイクロウェルの形状や寸法は、マイクロウェルに格納されるべき生体細胞の種類(生体細胞の形状や寸法等)を考慮して、1つのマイクロウェルに1つの生体細胞が格納されるように、適宜決定される。
【0031】
1つのマイクロウェルに1つの生体細胞が格納されるようにするためには、例えば、マイクロウェルの平面形状に内接する最大円の直径が、マイクロウェルに格納しようとする生体細胞の直径の0.5〜2倍の範囲、好ましくは0.8〜1.9倍の範囲、より好ましくは0.8〜1.8倍の範囲であることが適当である。
【0032】
また、マイクロウェルの深さは、マイクロウェルに格納しようとする生体細胞の直径の0.5〜4倍の範囲、好ましくは0.8〜1.9倍の範囲、より好ましくは0.8〜1.8倍の範囲であることが適当である。
【0033】
1つのマイクロウェルアレイチップが有するマイクロウェルの数は、特に制限はないが、生体細胞がリンパ球の場合、抗原特異的リンパ球の頻度が105個に1個から多い場合には約500個であるという観点から、1cm2当たり、例えば、2,000〜1,000,000個の範囲であることができる。
【0034】
さらに本発明のマイクロウェルアレイは、少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有する。この点が本発明のマイクロウェルアレイの特徴である。
【0035】
本発明のマイクロウェルアレイは、基体がプレートであることができ(プレートに限定される意図ではないが)、基体の主表面に設けられた複数のウェルの周辺の主表面の少なくとも一部に前記被覆層を設ける。本発明のマイクロウェルアレイは、ウェル中に格納された細胞の少なくとも一部から産生される物質と、被覆層の物性との結合の有無を検出するために用いられる。
【0036】
ウェルに格納される細胞(被検体細胞)は、例えば、免疫グロブリン産生細胞、またはサイトカイン産生細胞を含む細胞群であることができる。さらに、免疫グロブリン産生細胞およびサイトカイン産生細胞は、天然型細胞、ハイブリドーマまたは細胞株であることができる。天然型細胞は、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス等から採取した細胞であることができ、ハイブリドーマは、背景技術で説明した常法により作成したものであることができる。細胞株は発現型cDNAライブラリー等を遺伝子導入したものであることができる。
【0037】
ウェルに格納される細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含む被検体細胞であるときは、細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質として、免疫グロブリン産生細胞が産生する物質である免疫グロブリンと反応し得る抗免疫グロブリン抗体または抗原を用いる。そして前記結合の有無の検出は、産生される免疫グロブリンに対する抗体または抗原を用いて行う。
【0038】
ウェルに格納される細胞が、サイトカイン産生細胞を含む被検体細胞であることもでき、この場合、細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質としては、サイトカイン産生細胞が産生する物質であるサイトカインと反応し得る抗サイトカイン抗体、またはサイトカイン受容体を用いる。そして結合の有無の検出は、産生されるサイトカインに対する抗体またはサイトカイン受容体を用いて行う。
【0039】
あるいは、ウェルに格納される細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含む被検体細胞であるときは、細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、免疫グロブリン産生細胞が産生する物質である免疫グロブリンと反応し得るサイトカイン受容体または受容体であることもできる。この場合、結合の有無の検出は、サイトカイン受容体または受容体に反応し得るサイトカインまたはリガンドを用いて行う。産生される免疫グロブリンは、サイトカイン受容体または受容体と結合すると、結合の有無の検出に用いるサイトカインまたはリガンドとの結合をブロックし、結合の有無が検出できる。
【0040】
(1)細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質(結合性物質)、
(2)ウェルに格納される細胞(被検体細胞)、
(3)細胞が産生する物質(産生物質)および
(4)産生物質を同定するための標識物質(標識物質)
の例を以下の表1に示す。
【0041】
尚、産生物質を同定するための物質を標識する物質は、例えば、蛍光物質であることができる。但し、蛍光物質に限られず、他の標識物質であっても良い。また、標識物質である抗原や抗体等の蛍光物質での標識は公知の方法を用いて行うことができる。また、標識物質は、産生物質と特異的に結合する物質である場合と、結合性物質と特異的に結合する物質である場合とがある。
【0042】
【表1】

*サイトカインの結合をブロックする抗体の検出
**リガンドの結合をブロックする抗体の検出
【0043】
結合性物質の被覆層の形成は、基板の被覆層を形成する主表面を、結合性物質と主表面との結合性を確保するために、例えば、シランカップリング剤で表面処理し、次いで、結合性物質を含有する溶液を、シランカップリング剤処理した表面に適用することで形成できる。被覆層における結合性物質の被覆量は、結合性物質の種類や細胞および産生物質の種類、さらには、標識物質の種類に応じて適宜決定できる。尚、結合性物質と主表面との結合性を確保するための表面処理は、シランカップリング剤処理に限られず、タンパク質等からなる結合性物質と無機材料(例えば、シリコン材料)あるいは有機材料(例えば、ポリマー材料)からなる基板表面との結合を促進する物質であれば適宜選択して用いることができる。
【0044】
結合性物質を被覆した表面は、被覆量によっては、結合性物質が緻密に被覆されず、未被覆の表面が存在する場合がある。その場合、特に上記のようにシランカップリング剤処理した表面である場合、細胞が産生した物質が基板の表面に非特異的に結合する場合がある。このような非特異的結合は、検出の感度の精度を低下させる原因となる。そこで、本発明では、ウェルに格納される細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有さない前記主表面の少なくとも一部は、ブロッキング剤でコートされていることが好ましい。ブロッキング剤としては、例えば、細胞膜を構成するホスファチジルコリンの極性基と同一の構造をもつ2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)を構成単位とする水溶性ポリマーLIPIDURE(登録商標)(リピジュア(登録商標))を挙げることができる。
【0045】
[スクリーニング方法]
本発明のスクリーニング方法は、前記本発明のマイクロウェルアレイを用い、被検体細胞を含む細胞群から、目的細胞スクリーニングする方法であり、以下の工程を含む。
(1)マイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を、細胞の培養液とともに格納する。
(2)被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから被覆層への拡散が可能な状態で細胞を任意の時間培養する。
(3)培養液を除去した後に、被検体細胞に含まれる目的細胞よって産生される物質に特異的に結合する標識物質を、被覆層に供給する。
(4)被覆層の物質に結合した、目的細胞によって産生または分泌された物質を、標識物質により検出して、目的細胞を特定する。
【0046】
本発明のスクリーニング方法で使用する(1)細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質(結合性物質)、(2)ウェルに格納される細胞(被検体細胞)、(3)細胞が産生する物質(産生物質)および(4)標識された産生物質を同定する物質(標識同定物質)は、本発明のマイクロウェルアレイにおいて説明したものと同様であり、表1に示すものを例として挙げることが出来る。
【0047】
工程(1)
マイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を含む細胞(細胞群)を、細胞の培養液とともに格納する。細胞を格納する前には、マイクロウェルアレイのウェルとその周辺を培地で洗浄して、結合性物質の被覆層を形成した際に表面に付着した不純物を十分に除去することが、精度よく検出するために好ましい。細胞は、培養液とともにウェルに格納する。ウェルに格納される被検体細胞は、免疫グロブリン産生細胞、またはサイトカイン産生細胞を含む細胞群であることができ、さらに、免疫グロブリン産生細胞およびサイトカイン産生細胞は、天然型細胞またはハイブリドーマであることが出来る。これらの細胞群は、公知の方法を用いて得ることが出来る。
【0048】
ウェルに格納される細胞は、予め所望の抗原で刺激を与え、物質を産生し得る状態にある細胞であることができる。例えば、免疫グロブリン産生細胞の場合、予め所望の抗原で刺激を与え免疫グロブリンを産生し得る状態にある細胞であることが好ましい。同様に、サイトカイン産生細胞の場合、予め所望の抗原で刺激を与えサイトカインを産生し得る状態にある細胞であることが好ましい。所望の抗原には、特に制限はなく、種々のタンパク質、糖類、脂質、核酸、有機化合物、無機化合物、またそれらの組み合わせ(細胞を含む)等から所望のものを適宜選択することが出来る。培養液は、格納され、検出される細胞の種類に応じて適宜決定出来る。
【0049】
工程(2)
被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから被覆層への拡散が可能な状態で細胞を培養する。培養によって細胞が物質を産生し、産生された物質が培養液に放出され、ウェルからウェル周辺の被覆層に拡散する。拡散し、被覆層に到達した産生物質は、被覆層を構成する結合性物質と結合する。培養条件は、細胞の種類に応じて適宜決定でき、培養時間は、被覆層を構成する結合性物質と結合した産生物質の量が、検出可能なレベルになるように適宜決定できる。物質を産生しない細胞を格納したウェル周辺の被覆層では産生物質と結合性物質との結合は生じない。尚、培養時間が長くなりすぎると、産生物質が広く拡散しすぎて、産生物質を産生する細胞を格納したウェルの特定が困難になる場合があるので、培養時間は、産生物質を産生する細胞を格納したウェルの特定が容易に行なえる範囲で適宜決定することが好ましい。
【0050】
工程(3)
上記培養終了後、任意で培養液を除去した後に、被検体細胞に含まれる目的細胞によって産生される物質に特異的に結合する標識物質を、被覆層に供給する。目的細胞によって産生される物質は、培養中に拡散し、被覆層を構成する結合性物質と結合しており、この段階で上記標識物質を供給することで、標識物質は、被覆層に結合した産生物質と結合するか、あるいは、被覆層に結合した産生物質でブロックされていない被覆層と結合する。前者の場合は、標識物質は産生物質と結合性を有する場合であり、後者の場合は、標識物質は産生物質とではなく、被覆層を構成する結合性物質と結合性を有する場合である。この点の詳細については、後述する。
【0051】
標識物質を供給する前に、培養液は除去することが好ましい。培養液中には、ウェルに格納される細胞が、例えば免疫グロブリン産生細胞の場合、抗体が多量に分泌されており、そこに例えば抗免疫グロブリン抗体を加えると、チップ表面の抗体に結合する前に培養液中の抗体と結合してしまい、チップ表面に結合した抗体の検出ができなくなる可能性があるからである。但し、細胞と結合性物質との組み合わせによっては培養液を除去することなく標識物質を被覆層に供給しても問題なく検出が可能な場合もある。
【0052】
工程(4)
被覆層の物質に結合した、目的細胞によって産生された物質を、標識物質により検出して、目的細胞を特定する。標識物質は、被覆層に結合した産生物質と結合しており、そこで標識物質を検出することで、被覆層に結合する産生物質を産生する細胞(目的細胞)を特定することが出来る。
【0053】
標識物質が産生物質と特異的に結合する物質である場合、ウェルからウェル周辺の被覆層に拡散し、被覆層に到達して被覆層を構成する結合性物質と結合した産生物質には標識物質が結合し、この結合した、標識物質を検出する。一方、物質を産生しないウェル周辺の被覆層では産生物質と結合性物質との結合は生じず、従って、標識物質の結合もなく、標識物質の検出はない。
【0054】
標識物質が結合性物質と特異的に結合する物質である場合、ウェルからウェル周辺の被覆層に拡散し、被覆層に到達して被覆層を構成する結合性物質と結合した産生物質は、標識物質と結合性物質との結合をブロックする。一方、産生物質を産生しないウェル周辺の被覆層では産生物質と結合性物質との結合は生じず、従って、標識物質と結合性物質との結合はブロックされず、標識物質が結合する。この場合、産生物質を産生するウェルは、標識物質の検出はなく、標識物質が検出されるウェルと識別できる。
【0055】
標識物質は、例えば、蛍光標識である場合、蛍光顕微鏡や、蛍光イメージスキャナー、イメージリーダ等を用いて、目的細胞を特定することができる。
【0056】
後述する実施例において、主に正六角形の形状のウェルのチップ(図1左下)を用いている。その場合、シグナルはほぼ同心円状に広がっていく(図1左上)。しかし、図1右下に示すように正六角形のウェルに斜め方向にスリットが入っている場合、産生された抗体等は、スリットの方向にも広がるため、図1右上に示すような銀河系のような形になる。このように、産生物を介して得られる標識物質からのシグナルはウェルの形状によって異なる形になる。
【0057】
標識物質が産生物質と特異的に結合する物質である場合(1)
ウェルに格納される被検体細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含む場合、細胞は培養することにより免疫グロブリンを産生し、抗免疫グロブリン抗体または抗原を結合性物質とした被覆層を用いれば、産生した免疫グロブリンは被覆層と結合し、産生され被覆層と結合した免疫グロブリンは、この免疫グロブリンに対する抗体または抗原を用いて検出することができる。免疫グロブリンを産生しない細胞、即ち、与えられた抗原刺激では免疫グロブリンを産生しない細胞を格納したウェルの周辺には、このウェルから拡散した免疫グロブリンはなく、免疫グロブリンを産出する細胞を格納したウェルと識別できる。こうして、目的細胞である抗原特異的免疫グロブリン産生細胞を特定することができる。
【0058】
より具体的には、図2を用いて説明する。
(A)チップ表面に抗免疫グロブリン(Ig)抗体を結合させたシリコン製マイクロウェルアレイチップの各ウェルに抗体分泌細胞を分注する。
(B)細胞を培養し、抗体を分泌させる。細胞から分泌された抗体はウェル周囲の抗Ig抗体に結合する。
(C)そこに蛍光標識された抗原を添加すると抗原はウェル周囲にトラップされた抗原特異的抗体に結合する。
(D)蛍光顕微鏡、スキャナー等で観察すると抗原特異的抗体がウェル周囲にドーナツ状に広がっていることが観察される。
【0059】
標識物質が産生物質と特異的に結合する物質である場合(2)
ウェルに格納される被検体細胞が、サイトカイン産生細胞である場合、細胞は培養することによりサイトカインを産生し、抗サイトカイン抗体、またはサイトカイン受容体を結合性物質とした被覆層を用いれば、産生したサイトカインは被覆層と結合し、産生され被覆層と結合したサイトカインは、このサイトカインに対する抗体またはサイトカイン受容体を用いて検出することができる。サイトカインを産生しない細胞、即ち、与えられた抗原刺激ではサイトカインを産生しない細胞を格納したウェルの周辺には、このウェルから拡散したサイトカインはなく、サイトカインを産出する細胞を格納したウェルと識別できる。こうして、目的細胞としてサイトカイン産生細胞を特定することができる。
【0060】
標識物質が結合性物質と特異的に結合する物質である場合
ウェルに格納される被検体細胞が、免疫グロブリン産生細胞である場合、細胞は培養することにより免疫グロブリンを産生し、サイトカイン受容体または受容体を結合性物質とした被覆層を用いれば、産生した免疫グロブリンの一部は被覆層と結合し、産生され被覆層と結合した免疫グロブリンの一部は、サイトカイン受容体または受容体と標識物質であるサイトカインまたはリガンドとの結合をブロックし、標識物質は免疫グロブリンを産生する細胞を格納するウェルの周囲には結合しない。免疫グロブリンを産生しない細胞、即ち、与えられた抗原刺激では免疫グロブリンを産生しない細胞を格納したウェルの周辺には、このウェルから拡散した免疫グロブリンはなく、サイトカイン受容体または受容体とサイトカインまたはリガンドとの結合はブロックされず、また、免疫グロブリンは産生するが当該免疫グロブリンがサイトカイン受容体ないし受容体に結合しない細胞を格納したウェルの周辺、また、免疫グロブリンを産生し当該免疫グロブリンがサイトカイン受容体ないし受容体に結合するがサイトカイン受容体または受容体とサイトカインまたはリガンドとの結合をブロックしない細胞を格納したウェルの周辺には、ウェルから拡散した免疫グロブリンが結合しているが、サイトカイン受容体または受容体とサイトカインまたはリガンドとの結合はブロックされず、免疫グロブリンを産出する細胞を格納したウェルと識別できる。こうして、目的細胞として抗原特異的免疫グロブリン産生細胞を特定することができる。
【0061】
上記方法を図3に基づいて以下に説明する。
(A)受容体をチップ表面にコートする。
(B)抗体分泌細胞をマイクロウェルに添加し、培養する。分泌された抗体は拡散する。受容体特異的抗体はウェル周囲の受容体に結合する。
(C)受容体に結合した抗体が受容体上のリガンド結合部位に結合した場合には蛍光標識リガンドは受容体に結合できない。
(D)受容体に結合した抗体が受容体上のリガンド結合部位以外に結合した場合には蛍光標識リガンドは受容体に結合できる。
【0062】
[目的細胞の製造方法]
本発明は、上記本発明のスクリーニング方法で特定した目的細胞をウェルから回収することを含む目的細胞の製造方法を包含する。目的細胞は、特異的免疫グロブリン産生細胞または特異的サイトカイン産生細胞であることができる。
【0063】
本発明では、さらに、回収した目的細胞から、抗原特異的免疫グロブリン遺伝子のmRNAを回収し、抗体cDNAを発現させ、抗原特異的抗体タンパク質を作製することができる。また、サイトカインを産生した細胞よりその細胞が発現しているT細胞受容体遺伝子のmRNAを回収し、T細胞受容体cDNAを回収し、それを別の細胞に導入することによりT細胞受容体タンパク質を発現させることができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
マイクロウェルアレイチップの製作例を示す。
【0065】
製作例1
シリコン基板を用いた製作例を示す。図4-1は、製作例1によるマイクロウェルアレイチップの例である。また、図4-2にその製作工程例を示す。
(1)シリコン基板1-bに酸化膜1-aを形成する。
(2)基板上にフォトレジスト1-c、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布、露光機にてパターン転写を行う。
(3)フォトレジスト1-cより露出した酸化膜1-aを緩衝フッ酸にてエッチングする。
(4)ドライエッチング、ウエットエッチングにて深さ10〜20ミクロンのマイクロウェル1-dを形成する。フォトレジスト1-cはエッチング方法により適宜取り除く。
(5)抗体がむら無く結合する表面とするため、プライマーで処理する。例えばシリル化処理によって、表面、ウェル内壁にシリル基1-eを形成する。なお、本処理における材料、手段は、様々なものがあり、本製作例の処理に限定されるものではない。
(6)本発明による抗体分泌細胞の検出を行う。
【0066】
製作例2
細胞より分泌された抗体をより鮮明にモニタリングするために、ウェル周囲に隔壁を設けることも可能である。図5-1にその外観、図5-2にその製作例を示す。
(1)シリコン基板2-b上に酸化膜2-aを形成する。
(2)基板上にフォトレジスト2-c、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布、露光機にてパターン転写を行う。
(3)フォトレジスト2-cより露出した酸化膜2-aを緩衝フッ酸にてエッチングする。
(4)フォトレジスト2-cを取り除き、エッチングにて深さ1〜5ミクロンの凹形状2-dを作製する。
(5)基板上に再度フォトレジスト2-e、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布、露光機にてパターン転写を行う。凹形状が深い時は、東京応化工業(株)OMR-85などのネガレジストを使用してもよい。
(6)ドライエッチング装置にて深さ10〜20ミクロンのウェル2-fを形成する。
(7)抗体がむら無く結合する表面とするため、プライマーで処理する。例えばシリル化処理によって、表面、ウェル内壁にシリル基2-gを形成する。なお、本処理における材料、手段は、様々なものがあり、本製作例の処理に限定されるものではない。
(8)本発明による抗体分泌細胞の検出を行う。本例では、ウェル回りに抗体の拡散抑制壁が形成されるため、抗体拡散によるボケが抑制され、画像認識が容易になる。
図5-3は本製作例により試作したものである。
【0067】
製作例3
ウェル周囲の表面積を増やすことで、分泌された抗体をより明確に観測することも可能である。表面積は、例えばポーラスシリコン構造や凹凸構造を形成することによって増加することが可能である。ポーラスシリコンの作製方法は、例えば特開平6−21509に記載されている。凹凸構造は、例えばエッチング、蒸着などによって作製可能である。図6-1にその外観、図6-2にその製作例を示す。
(1)シリコン基板3-b上に酸化膜3-aを形成する。
(2)基板上にフォトレジスト3-c、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布、露光機にてパターン転写を行う。
(3)フォトレジスト3-cより露出した酸化膜3-aを緩衝フッ酸にてエッチングする。
(4)露出部分の開口表面積を増やすために、例えばポーラス構造3-dを作製する。ポーラス構造は、陽極化成処理などにより形成される。フッ酸と硝酸の混酸によって表面にナノ構造を作製してもよい。
(5)基板上に再度フォトレジスト3-e、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布、露光機にてパターン転写を行い、ドライエッチングにより深さ10〜20ミクロンのウェル3-fを形成する。
(6)抗体がむら無く結合する表面とするため、プライマーで処理する。例えばシリル化処理によって、表面、ウェル内壁にシリル基3-gを形成する。なお、本処理における材料、手段は、様々なものがあり、本製作例の処理に限定されるものではない。
(7)本発明による抗体分泌細胞の検出を行う。本例では、ウェル回りの表面積が増加するため、蛍光標識結合密度も増加するため、蛍光の画像認識が容易になる。
【0068】
製作例4
ウェル周囲にのみに局在させて抗体を結合することにより、抗体分泌をより明確に観測することも可能である。本方法は、ウェル周囲のみに抗体に対して結合手となる物質を、パターングなどによって終端することによって実現される。図7-1にその外観、図7-2にその製作例を示す。シリコン基板4-b上に酸化膜4-aを形成する。
(1)基板上にフォトレジスト4-c、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布、露光機にてパターン転写を行う。
(2)フォトレジスト4-cより露出した酸化膜4-aを緩衝フッ酸にてエッチングする。
(3)ここで抗体がむら無く結合する表面とするため、プライマー4-dで処理する。例えばシランカップリング剤であり、ヘキサメチルジシラザンなどで、表面を終端する。なお、本処理における材料、手段は、様々なものがあり、本製作例の処理に限定されるものではない。
(4)この上に、さらにフォトレジスト4-e、例えば東京応化工業(株)OFPR-800を塗布する。
(5)フォトレジスト4-eを露光機により、抗体結合パターンを形成する。抗体結合パターン寸法は、ウェルよりも大きくする必要があり、1ミクロン〜隣り合うウェル間隔の1/2以下である。
(6)さらに、フォトレジスト4-eを露光機により、ウェルパターンに加工する。
(7)ドライエッチングにより、ウェルパターンを深さ10〜20ミクロンのウェル4-fを形成する。ウェル形成の際、フォトレジスト4-eより保護されていない抗体と結合する物質4-dは、同時に除去される。酸素プラズマなどにより、取り除いてもよい。
(8)アセトンなとの有機溶剤などにより、フォトレジスト4-eを除去する。ここで、ウェル周囲のみに抗体結合する物質が存在するため、抗体の結合範囲を局在化することが可能となる。
(9)以上の工程は、感光性を有するシランカップリング剤を使用することで、簡素化することが可能である。具体的には、製作例1に従い加工を行った後、感光性シランカップリング剤を塗布、所望のパターンに露光することで本製作例と同様の結果を得ることが可能である。
【0069】
本製作例により試作したマイクロウェルアレイチップに蛍光標識抗体を播種し、その結合状態を観察したものが図7-3である。ウェル周辺部のみに抗体の結合が観察された。また、本製作例は、ウェル周囲にのみ抗体結合表面を形成することを特徴とするものであり、その実現には様々な方法がある。岸本産業株式会社・dixシリーズ等を使用しても良い。これは、ポリパラキシリレン樹脂表面にアミノ基を形成するものであり、本製作例と同様の結合表面を実現可能である。また、必要とする抗体結合表面以外の部分に抗体結合用プライマーと逆の効果を有する膜を形成しても同様の効果が得られ、例えば、東洋合成工業株式会社・BIOSURFINEなどが挙げられる。
【0070】
表面処理方法(図8)
抗Ig抗体をムラ無く結合させるために、以下の方法にて表面処理を行う。
1.基板5-a表面の油分など汚れを取り除く。汚れを取り除く方法は、例えば、有機溶剤、酸及びアルカリ洗浄であり、酸素プラズマなどのドライ洗浄である。基板材料、汚れによって適宜選択可能である。
2.ここで基板と抗体などを結合するプライマーの表面結合密度を向上させるために、基板表面にプライマーと置換する水酸基5-bを形成してもよい。基板表面に水酸基の形成と表面の微粒子を除去するために、例えば1%程度のアンモニア水洗浄を行う。その後、水で十分にリンスする。シリコンの場合は、RCA洗浄のうちSC-1洗浄に代替を行ってもよい。ただし、1において十分なプライマー結合に適した表面形成が可能であれば、2については省略可能である。
3.プライマー5-cを表面に結合させる。シランカップリング剤などに浸し、表面の水酸基と十分に置換させる。プライマーは、例えばヘキサメチルジシラザンであり、表面を疎水化する。なお、本処理におけるプライマー材料、手段は、様々なものがあり、本表面処理例に限定されるものではない。
【0071】
プライマーは、おもにシランカップリング剤あるいはシリル化剤であり、有機物と無機物を結合することを特徴とし、表面改質剤として利用され、疎水化表面を示す。半導体用としては、ヘキサメチルジシラザンに代表される材料が主に使用される。プライマーは基板材料により適宜選択する必要があり、例えば信越シリコーン社が販売しているシランカップリング剤、シリル化剤などがある。
【0072】
プライマーの塗布は様々な方法があり、ディップ、スピンコート、ガス拡散、N2バブリングなどがあるが、その選択は材料に最も適した方法にする必要がある。例えばガス拡散法の場合、5〜10分程度気化したプライマー密閉容器雰囲気に暴露することで実施可能である。
【0073】
本製作例によるマイクロウェルアレイチップは、シリコンに限らず樹脂、金属、ガラスなどでも形成可能である。またその形態は、材料単体のみならず、基板上に形成された膜形状でもよい。
【0074】
樹脂は、例えばアクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ABS、ポリウレタン、エポキシ樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化性樹脂、光溶解性樹脂等が挙げられる。これら樹脂は、射出、圧縮、熱硬化、光硬化、ドライエッチングなどにより成形可能である。ガラスやシリコン、金属基板上に樹脂を製膜して、成形加工してもよい。マイクロウェル形状に成形された樹脂は、シリコンと同様に表面をプライマーで処理することにより、抗体の結合が可能である。例えば、本発明に記載される表面処理方法により実現が可能である。また、感光性プライマーを利用することにより、シリコンと同様に、抗体結合パターンの形成も可能である。ここで、使用するプライマーは、樹脂材料との結合性を考慮しながら適宜選択することが適当である。なお、樹脂がその表面に抗体とのカップリングを行う結合手を持ち、抗体結合性を有するものであれば、さらに低コストでの実現が可能である。
【0075】
金属は、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、銅合金、金、ステンレス等が挙げられる。これら金属は、金型成形、エッチングなどによって成形可能である。ガラスやシリコン、金属基板上に金属膜を製膜して、成形加工しても良い。マイクロウェル形状に成形された金属は、シリコンと同様に表面をプライマーで処理することにより、抗体の結合が可能である。例えば、本発明に記載される表面処理方法により実現が可能である。ここで、使用するプライマーは、金属材料との結合性を考慮しながら適宜選択することが適当である。
【0076】
ガラスは、エッチングによってマイクロウェルが形成可能である。また、樹脂や、シリコン、金属を表面に製膜して、マイクロウェルの形成が可能である。マイクロウェル形状に成形された金属は、シリコンと同様に表面をプライマーで処理することにより、抗体の結合が可能である。例えば、本発明に記載される表面処理方法により実現が可能である。ここで、使用するプライマーは、ガラス、表面製膜材料との結合性を考慮しながら適宜選択することが適当である。
【0077】
以下の実施例では、製作例1に従って作製したシリコン製マイクロウェルアレイチップを用いた。但し、実施例で用いたチップのウェルの表面形状は、六角形とした(製作例1では円)。
【0078】
実施例1
実験方法(プロトコールI)
1.[抗ヒトIgGのチップへのコート]シランカップリング処理済シリコン製マイクロウェルアレイチップに抗ヒトIgG抗体を10μg/mLになるようにPBSに希釈したものを80μL添加し、チップ上の液が乾燥しないようにチップの湿度を保つ保湿箱(図9)に入れ、室温(15−25℃)で1時間静置し、シリコンチップ表面に抗IgG抗体を結合させた。この場合、下記工程2と異なり、減圧による脱気しておらず、ウェルの中に抗体は入っていかず、ウェル周囲に抗体が分布する。(以後、チップをインキュベーションするときは常に上記保湿箱に入れて乾燥を防いだ。)
2.[ブロッキング]抗体溶液をチップから除き、PBSをチップに100μL添加し、その後除くという洗浄の操作を3回繰り返した後、0.2%(v/v)Lipidure(日本油脂(株)、BL-B03リピジュア(5wt%))を含むPBSをチップに100μL添加し、真空ポンプを利用して減圧することによりマイクロウェル内の気泡を完全に除くことで、チップ表面およびウェル内にリピジュア液を満たした。15分間室温(15−25℃)で静置することによりブロッキングを行った。
3.[細胞の添加]チップを10% FCSを含むRPMI1640培地100 μLで3回洗浄後、10% FCSを含むRPMI1640培地で2回に洗浄したX63/116 細胞(B型肝炎ウイルス表面抗原(HBs抗原)に対するヒトIgGを分泌) あるいはHyHEL10 110TC細胞(鶏卵リゾチーム(HEL)に対するマウス/ヒトキメラ抗体を分泌) をチップに添加し、細胞がウェル内に入るようおよそ10分間室温にて静置した。
4.[細胞の培養]ウェル内に入らなかった細胞を10% FCSを含むRPMI1640培地で数回(余分な細胞が除去されるまで)洗浄・除去後、チップ上に10% FCSを含むRPMI1640培地80μLを加え、チップをCO2インキュベータ(37℃, 5% CO2)内に入れ、細胞をチップ上で2〜3時間培養した。
5.[ビオチン標識抗原の結合]細胞がウェルから出ないように注意しながら、チップ表面のバッファーを除去し、PBS約100μLをチップ表面に添加しさらに除去することを数回繰り返しチップを洗浄後、1μg/mLビオチン標識HELあるいはビオチン標識HBs抗原を80μLチップに添加し、室温で30分間静置した。
6.5と同様にチップをPBSで洗浄後、原液を1,000倍希釈したCy3標識ストレプトアビジン(SIGMA,S-6402)を80μLチップに添加し、同様に室温で30分静置した。
7.5と同様にチップをPBSで洗浄後、チップにPBSを添加し蛍光顕微鏡下でCy3の蛍光を観察し、ウェル周囲にドーナツ状にCy3の蛍光が広がっていることを指標に抗原特異的抗体を分泌している細胞が入っているウェル位置を確認した(図10)。
8.1μg/mL Oregon Green 80μLをチップに添加し3分間室温で静置することにより細胞をOregon Greenで標識した。5と同様にチップをPBSで洗浄後、新しいPBSをチップに加え、Oregon Greenの蛍光を指標に細胞を観察しながら、目的の抗原特異的抗体を分泌している細胞をマイクロマニピュレータにて回収した。
【0079】
本発明の方法(ImmunoSpot Assay on Chip(ISAC))を用いた抗原特異的抗体分泌細胞のマイクロウェルアレイチップ上での同定
HyHEL10 110TC細胞、X63/116細胞、110TC細胞(陰性コントロール、抗体を分泌していない)を抗IgG抗体をコートしたシリコン製マイクロウェルアレイチップ上で培養後、抗原特異的抗体の分泌をビオチン標識HELあるいはビオチン標識HBs抗原及びCy3標識ストレプトアビジンを用いて検出した(図11A)。図11Aのように分泌された抗体がウェル周囲にドーナツ状に検出された。抗体を分泌していない110TCを添加したチップではシグナルは検出されなかった。その後Oregon Greenで細胞を染色し細胞を確認した(図11B)。
【0080】
この染色は抗原特異的であり、HyHEL10 110TC細胞を添加したチップではビオチン標識HELでシグナルが検出されたがビオチン標識HBs抗原ではシグナルは検出されなかった。逆にX63/116細胞を添加したチップではビオチン標識HELでシグナルは検出されずビオチン標識HBs抗原にてシグナルが検出された(データは示していない)。
【0081】
FLISPOT法による抗原特異的抗体分泌ハイブリドーマの同定(プロトコールIの応用)
HEL蛋白にて免疫したBALB/cマウスより脾細胞を調製し、通常のポリエチレングリコールを用いた方法によりX63.Ag8.653ミエローマ細胞と融合しハイブリドーマを作製した。 HAT選択培地にてハイブリドーマを選択後、ハイブリドーマを抗マウスIgG抗体をコートしたマイクロウェルアレイチップに添加し、ウェルに入らなかった細胞を洗浄にて除去後、チップ上で1時間30分培養した。HELに対する抗体を分泌しているハイブリドーマをビオチン標識HELとPE標識ストレプトアビジンを用いて検出した(図11A)。次にOregon Greenを細胞に添加して細胞位置を確認した(図11B)。(図11C)AとBの組み合わせ。
【0082】
実施例2
実験方法(プロトコール II)
マウスCD138陽性細胞(抗体分泌細胞)の調製
1.マウス脾細胞を調製した。
2.細胞懸濁液100μLに抗マウスCD138抗体を106細胞あたり<1μgの量加え4℃、15分インキュベーションした。
3.細胞を10mLのPBSで2回洗浄後、100μLのPBSに細胞を懸濁し、細胞懸濁液に抗ラットκ鎖抗体結合マイクロビーズを106細胞あたり<1μgの量添加し4℃、15分インキュベーションした。
4.細胞を10mLのPBSで2回洗浄後、1000μLのPBSに細胞を懸濁して、AutoMACSにてCD138陽性細胞を回収した。
【0083】
ヒトCD138陽性細胞の調製
1.ヒト末梢血より定法(フィコールを用いた比重遠心法)によりリンパ球を分離した。
2.Fc受容体ブロッキング試薬(ミルテニーバイオテク(株))を107細胞あたり20μL添加後、抗CD138抗体結合マイクロビーズを106細胞あたり<1μgの量添加し4℃、15分インキュベーションした。
3.細胞を10mLのPBSで2回洗浄後、1000μLのPBSに細胞を懸濁してAutoMACSにてCD138陽性細胞を回収した。
【0084】
実験方法(プロトコール II続き)
1.以下の実験もチップをインキュベーションする際にはプロトコールIと同様に乾燥を防ぐ措置をとった。
2.シランカップリング処理済シリコン製マイクロウェルアレイチップにPBSに希釈した10μg/mLロバ由来抗ヤギIgG抗体80μLを添加し、チップ上の液が乾燥しないようにチップを保湿箱(図1)に入れ、室温(15〜25℃)で1時間静置し、シリコンチップ表面にロバ由来抗ヤギIgG抗体を結合させた。
3.抗体溶液をチップから除き、PBS 100μLで3回洗浄後、0.2%(v/v)Lipidure(日本油脂(株)、BL-B03リピジュア(5wt%))を含むPBSを100μLチップに添加し、減圧することによりマイクロウェル内の気泡を除くことで、チップ表面およびウェル内にリピジュア液を満たした。15分間室温にて静置することによりブロッキングを行った。
4.チップを10% FCSを含むRPMI1640培地100μLで3回洗浄後、PBS 10mLで1回洗浄したCD138陽性抗体分泌細胞(1〜2x106個の細胞をPBSで30μlに懸濁)をチップに添加し、細胞がウェル内に入るようおよそ10分間室温にて静置した。
5.ウェル内に入らなかった細胞を10% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄・除去後、チップ上に10μg/mLヤギ由来抗ヒト(or マウス) IgG 80μLを添加し室温で30分間静置することにより、抗体をチップ表面のロバ由来抗ヤギIgG抗体に結合させた。
6.細胞がウェルから出ないように注意しながらチップを10% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄後、再び10% FCSを含むRPMI1640培地80μLをチップに添加し、細胞をCO2インキュベータ内(37℃, 5% CO2)にて3時間培養した。
7.以後のステップは、プロトコールIのステップ5以下を続けて行う。
【0085】
本発明の方法(FLISPOT法)法を用いたHELを免疫したマウス脾細胞中のHEL特異的抗体分泌細胞の検出
鶏卵リゾチーム(HEL)を免疫したBALB/cマウスの脾細胞よりCD138陽性細胞を調製し、プロトコールIIに従って細胞をロバ由来抗ヤギIgG抗体を結合させたシリコン製マイクロウェルアレイチップに細胞を添加し、その後プロトコールに従ってヤギ由来抗マウスIgG抗体をチップに結合させた後、約3時間細胞を培養した。その後、ビオチン標識HELおよびCy3標識ストレプトアビジンを加えて蛍光顕微鏡下にてHEL特異的IgG抗体を分泌している細胞を検出した(図12)。その後マイクロマニピュレータにて細胞を回収し、抗体遺伝子を増幅した。その結果作製した7個のIgGのうち6個がHELに結合した(データは示していない)。
【0086】
本発明の方法(FLISPOT法)を用いたヒト末梢血リンパ球中のHBs抗原特異的抗体分泌細胞の検出
HBs抗原ワクチンにてブーストした健常人末梢血よりプロトコールIIに従ってCD138陽性細胞を調製した。プロトコールIIに従ってロバ由来抗ヤギIgG抗体を結合させたシリコン製マイクロウェルアレイチップにCD138陽性細胞を添加し、その後プロトコールに従ってヤギ由来抗ヒトIgG抗体をチップに結合させた後、約3時間細胞を培養した。その後、ビオチン標識HBs抗原およびCy3標識ストレプトアビジンを加えて蛍光顕微鏡下にてHBs抗原特異的IgG抗体を分泌している細胞を検出した(図13)。
【0087】
HBsワクチンをインフォームドコンセントを得たボランティアに接種後7日目に100mLの血液を採取しえられた末梢血リンパ球よりCD138陽性細胞を選択し、抗ヒトIgGをコートしたチップに播種した。細胞を培養後、ビオチン標識HBs抗原およびCy3標識ストレプトアビジンを用いてHBs特異的抗体分泌細胞を検出した。全部で24ウェルから細胞を回収した。HBsワクチン接種後8日目にも100mLの血液を採取し得られた末梢血リンパ球より同様にHBs特異的抗体分泌細胞を検出し、57ウェルから細胞を回収した。これらの細胞より抗体のH鎖およびL鎖のcDNA53ペアを作製した。発現ベクターにcDNAを組み込みH鎖とL鎖のペアを293T細胞(ヒト胎児腎由来細胞株)に遺伝子導入し、培養上清を回収し、上清中に分泌された抗体がHBs抗原に結合するかをELISAにて解析した。その結果、41個の抗体蛋白を産生することができ、そのうちの36個がHBs抗原特異的であった。
【0088】
実施例3
実験方法(プロトコールIII)
1.シランカップリング処理済シリコン製マイクロウェルアレイチップに抗原(HEL蛋白)を10μg/mLになるようにPBSに希釈したものを80μL添加し、チップ上の液が乾燥しないようにチップを保湿箱(図9)に入れ、室温(15〜25℃)で1時間静置し、シリコンチップ表面にHEL蛋白を結合させた。(以後、チップをインキュベーションするときは常に上記箱に入れて乾燥を防いだ。)
2.抗原溶液をチップから除き、100μL PBSで3回洗浄後、0.2%(v/v)Lipidure(日本油脂(株)、BL-B03リピジュア(5wt%))を含むPBSを100μLチップに添加し、減圧することによりマイクロウェル内の気泡を除くことで、チップ表面およびウェル内にリピジュア液を満たした。15分間室温静置することによりブロッキングを行った。
3.HELを免疫したマウスの脾細胞よりCD138陽性細胞をプロトコールIIに従って調製した。
4.チップを10% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄後、10mL PBSで1回洗浄したCD138陽性細胞(1〜2x106個の細胞を PBS 30μLに懸濁)をチップに添加し、細胞がウェル内に入るよう約10分間静置した。
5.ウェル内に入らなかった細胞を10% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄・除去後、チップ上に10% FCSを含むRPMI1640培地80μLを添加し、チップをCO2インキュベータ(37 ℃, 5% CO2)内に入れ、細胞をチップ上で3時間培養した。
6.細胞がウェルから出ないように注意しながら、チップ表面のバッファーを除去しPBS 100μLをチップ表面に添加することを数回繰り返し、チップを洗浄後、1μg/mL Cy3標識抗マウスIgG 80μLをチップに添加し、室温で30分間静置した。
7.6と同様にチップをPBSで洗浄後、チップにPBSを添加し蛍光顕微鏡下でCy3の蛍光を観察し、ウェル周囲にドーナツ状にCy3の蛍光が広がっていることを指標に抗原特異的抗体を分泌している細胞が入っているウェル位置を確認した(図14)。
8.Oregon Green 80μLをチップに添加し3分間室温で静置することにより細胞をOregon Greenで標識した。上記6と同様にチップをPBSで洗浄後、新しいPBSをチップに加え、Oregon Greenの蛍光を指標に細胞を観察しながら、目的の抗原特異的抗体を分泌している細胞をマイクロマニピュレータにて回収した。
【0089】
実施例4
実験方法(プロトコールIV 応用)
蛍光標識抗原あるいは蛍光標識抗体の代わりに酵素を標識した抗原ないし酵素を標識した抗体を用いる。
【0090】
変更点
1.酵素標識抗原あるいは酵素標識抗体を作用させた後、酵素の基質を加えたバッファーをチップに添加し室温でインキュベーションする。
2.基質が酵素により変化した産物がウェルの周囲にリング状に沈着する。それを光学顕微鏡で観察し、抗体分泌細胞を検出する。
酵素:アルカリフォスファターゼ、基質:BCIP/NBT
【0091】
蛍光色素の代わりにquantum dotが結合した抗原、抗体を用いることによっても検出できる。
【0092】
サイトカイン産生細胞の検出
1.抗IgG抗体をチップに結合させる代わりに、抗サイトカイン抗体をチップに結合させ、サイトカインを分泌しているT細胞等をチップに播種し、サイトカインを産生させる。
2.分泌されたサイトカインがウェル周囲の抗サイトカイン抗体に結合する。
3.次に、蛍光あるいは酵素標識抗サイトカイン抗体を加えると、ウェル周囲に結合したサイトカインのリングを検出でき、サイトカイン分泌T細胞等が検出される。
【0093】
Immuno Spot Assay on Chip (ISAC)
サイトカイン分泌細胞の検出
方法
1.ヒト末梢血よりリンパ球を調製し、10ng/mL phorbol myristate acetate (PMA),1μM ionomycineの存在下CO2 インキュベータ内(37 ℃, 5% CO2)にて一晩刺激した。
2.リンパ球を回収・洗浄後、抗ヒトIFNγ抗体をコートしたマイクロウェルアレイチップに細胞を加え、乾燥を防ぐために保湿箱(図9)に入れた後、CO2 インキュベータ内(37 ℃, 5% CO2)にて5時間培養した。
3.チップをPBS-Tween20にて洗浄後、ビオチン標識抗ヒトIFNγ抗体をチップに添加し、保湿箱内にて室温にて30分インキュベーションした。
4.チップをPBS-Tween20にて洗浄後、Cy3標識streptavidinを添加し、保湿箱内にて室温で30分インキュベーションした。
5.チップをPBS-Tween20にて洗浄後、蛍光顕微鏡下で分泌されたサイトカインのシグナルを観察した。(2秒露光)
【0094】
結果を図15に示す。
【0095】
実施例5(ブロッキング抗体の取得)
1.以下の実験もチップをインキュベーションする際にはプロトコールIと同様に乾燥を防ぐ措置をとった。
2.シランカップリング処理済シリコン製マイクロウェルアレイチップにPBSに希釈した10μg/mL TRAIL-R1/Fc80μLを添加し、チップ上の液が乾燥しないようにチップを保湿箱(図9)に入れ、室温(15〜25℃)で1時間静置し、シリコンチップ表面にTRAIL-R1/Fcを結合させた。
3.抗体溶液をチップから除き、PBS 100μLで3回洗浄後、0.2%(v/v)Lipidure(日本油脂(株)、BL-B03リピジュア(5wt%))を含むPBSを100μLチップに添加し、減圧することによりマイクロウェル内の気泡を除くことで、チップ表面およびウェル内にリピジュア液を満たした。15分間室温にて静置することによりブロッキングを行った。
4.チップを10% FCSを含むRPMI1640培地100μLで3回洗浄後、10mLで1回洗浄したCD138陽性抗体分泌細胞さらに10% FCSを含むRPMI1640培地1000μLで2回洗浄後(1〜2x106個の細胞を10% FCSを含むRPMI1640培地で30μlに懸濁)をチップに添加し、細胞がウェル内に入るようおよそ10分間室温にて静置した。
5.細胞がウェルから出ないように注意しながらチップを10% FCSを含むRPMI1640培地で洗浄後、再び10% FCSを含むRPMI1640培地80μLをチップに添加し、細胞をCO2インキュベータ内(37 ℃, 5% CO2)にて3時間培養した。
6.細胞がウェルから出ないように注意しながら、チップ表面のバッファーを除去し、PBS約100μLをチップ表面に添加しさらに除去することを数回繰り返しチップを洗浄後、1μg/mLビオチン標識TRAILを80μLチップに添加し、室温で30分間静置した。
7.6と同様にチップをPBSで洗浄後、原液を1,000倍希釈したCy3標識ストレプトアビジン(SIGMA,S-6402)を80μLチップに添加し、同様に室温で30分静置した。
8.6と同様にチップをPBSで洗浄後、チップにPBSを添加し蛍光顕微鏡下でCy3の蛍光を観察し、Cy3の蛍光でまっ赤のチップの表面にウェル周囲にCy3の蛍光が結合していないところが黒いドーナツ状になることを指標にTRAIL-R1/FcとそのリガントであるTRAILの間にブロックするものを分泌している細胞が入っているウェル位置を確認した。
9.1μg/mLOregon Green 80μLをチップに添加し3分間室温で静置することにより細胞をOregon Greenで標識した。6と同様にチップをPBSで洗浄後、新しいPBSをチップに加え、Oregon Greenの蛍光を指標に細胞を観察しながら、目的の抗原特異的抗体を分泌している細胞をマイクロマニピュレータにて回収した。
【0096】
実施例6(機能的抗体のスクリーニングへの応用)
受容体蛋白をチップ表面にコートし、受容体蛋白で免疫したマウスの脾細胞より調製したCD138細胞をチップ上に播種した。細胞を培養後、ビオチン標識リガンドおよびCy3標識ストレプトアビジンを添加した。チップのほぼ全面にビオチン標識リガンド/Cy3標識ストレプトアビジンが結合しているが、受容体のリガンドの結合をブロックするような機能的抗体を産生している細胞のウェル周囲はビオチン標識リガンド/Cy3標識ストレプトアビジンの結合が阻害されるため、暗くなっている。結果を図16に示す。左:ビオチン標識リガンド/Cy3標識ストレプトアビジンによる検出結果。中:細胞をOregon Greenにより標識し観察した。右:左と中の図を重ね合わせたもの。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、特異的免疫グロブリン産生細胞および特異的サイトカイン産生細胞等の免疫細胞のスクリーニング方法に関連する技術分野、例えば、抗体医薬等の免疫関連医薬あるいは診断の分野に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】ウェルの形状と標識物質からのシグナルの形状の関係を示す図。
【図2】抗体分泌細胞を用いた場合を例にした本発明の方法の説明図。
【図3】標識物質が産生物質と特異的に結合する物質である場合(1)の本発明の方法の説明図。
【図4−1】製作例1の説明図。
【図4−2】製作例1の説明図。
【図5−1】製作例2の説明図。
【図5−2】製作例2の説明図。
【図5−3】製作例2の説明図。
【図6−1】製作例3の説明図。
【図6−2】製作例3の説明図。
【図7−1】製作例4の説明図。
【図7−2】製作例4の説明図。
【図7−3】製作例4の説明図。
【図8】表面処理方法の説明図。
【図9】チップの湿度を保つ保湿箱の説明図。
【図10】実施例1における抗原特異的抗体を分泌している細胞が入っているウェル位置の確認結果。
【図11】実施例1における本発明の方法(FLISPOT法)を用いた抗原特異的抗体分泌細胞のマイクロウェルアレイチップ上での同定結果。
【図12】実施例2における本発明の方法(FLISPOT法)法を用いたHELを免疫したマウス脾細胞中のHEL特異的抗体分泌細胞の検出結果。
【図13】実施例2における本発明の方法(FLISPOT法)を用いたヒト末梢血リンパ球中のHBs抗原特異的抗体分泌細胞の検出結果。
【図14】実施例3の結果。
【図15】実施例4(サイトカイン産生細胞の検出)の結果。
【図16】実施例6(機能的抗体のスクリーニングへの応用)の結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであるマイクロウェルアレイであって、
少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有することを特徴とする前記マイクロウェルアレイ。
【請求項2】
ウェル中に格納された細胞の少なくとも一部から産生される物質と、前記被覆層の物質との結合の有無を検出するために用いられる、請求項1に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項3】
前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部は、免疫グロブリン産生細胞またはサイトカイン産生細胞である請求項1または2に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項4】
前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が、免疫グロブリン産生細胞であり、免疫グロブリン産生細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗免疫グロブリン抗体または抗原である請求項1または2に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項5】
前記結合の有無の検出は、産生される免疫グロブリンに対する抗体または抗原を用いて行う請求項4に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項6】
前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が、サイトカイン産生細胞であり、サイトカイン産生細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗サイトカイン抗体、またはサイトカイン受容体である請求項1または2に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項7】
前記結合の有無の検出は、産生されるサイトカインに対する抗体またはサイトカイン受容体を用いて行う請求項6に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項8】
前記ウェルに格納される細胞の少なくとも一部が、免疫グロブリン産生細胞であり、免疫グロブリン産生細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、サイトカイン受容体または受容体である請求項1または2に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項9】
前記結合の有無の検出は、サイトカインまたはリガンドを用いて行う請求項8に記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項10】
免疫グロブリン産生細胞およびサイトカイン産生細胞は、天然型細胞またはハイブリドーマである請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項11】
基体が板状である請求項1〜10のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項12】
ウェルに格納される細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有さない前記主表面の少なくとも一部は、ブロッキング剤でコートされている、請求項1〜11のいずれかに記載のマイクロウェルアレイ。
【請求項13】
基体の一方の主表面に複数のウェルを有し、ウェルは1つの細胞のみが入る大きさであり、かつ少なくとも前記ウェルの周辺の前記主表面の少なくとも一部に、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質の被覆層を有するマイクロウェルアレイの少なくとも一部のウェルに、被検体細胞を細胞の培養液とともに格納し、
前記被覆層およびウェルを培養液に浸漬して、培養液に含まれる物質のウェルから前記被覆層への拡散が可能な状態で細胞を培養し、
任意で培養液を除去した後に、被検体細胞に含まれる目的細胞よって産生される物質に特異的に結合する標識物質を、前記被覆層に供給し、
前記被覆層の物質に結合した、目的細胞によって産生された物質を、前記標識物質により検出して、目的細胞を特定することを含む、
目的細胞のスクリーニング方法。
【請求項14】
前記被検体細胞を含む細胞は、予め所望の抗原で刺激を与え、物質を産生し得る状態にある細胞を含む請求項13に記載のスクリーニング方法。
【請求項15】
前記被検体細胞は、免疫グロブリン産生細胞、またはサイトカイン産生細胞を含む請求項13または14に記載のスクリーニング方法。
【請求項16】
前記被検体細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含み、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗免疫グロブリン抗体または抗原であり、目的細胞が抗原特異的免疫グロブリン産生細胞である請求項13または14に記載のスクリーニング方法。
【請求項17】
前記結合の有無の検出は、産生される免疫グロブリンに対する抗体または抗原を用いて行う請求項16に記載のスクリーニング方法。
【請求項18】
前記被検体細胞が、免疫グロブリン産生細胞を含み、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、サイトカイン受容体または受容体であり、目的細胞が抗原特異的免疫グロブリン産生細胞である請求項13または14に記載のスクリーニング方法。
【請求項19】
前記結合の有無の検出は、サイトカインまたはリガンドを用いて行う請求項18に記載のスクリーニング方法。
【請求項20】
前記被検体細胞が、サイトカイン産生細胞を含み、目的細胞が産生する物質の少なくとも一部と結合性を有する物質が、抗サイトカイン抗体、またはサイトカイン受容体であり、目的細胞がサイトカイン産生細胞である請求項13または14に記載のスクリーニング方法。
【請求項21】
前記結合の有無の検出は、産生されるサイトカインに対する抗体またはサイトカイン受容体を用いて行う請求項20に記載のスクリーニング方法。
【請求項22】
免疫グロブリン産生細胞およびサイトカイン産生細胞は、天然型細胞、ハイブリドーマ、または細胞株である請求項13〜21のいずれかに記載のスクリーニング方法。
【請求項23】
請求項13〜22のいずれかに記載のスクリーニング方法で特定した目的細胞をウェルから回収することを含む目的細胞の製造方法。
【請求項24】
目的細胞が特異的免疫グロブリン産生細胞または特異的サイトカイン産生細胞である請求項23に記載の製造方法。

【図2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図5−3】
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【図7−3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−34047(P2009−34047A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201493(P2007−201493)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【特許番号】特許第4148367号(P4148367)
【特許公報発行日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【出願人】(505234030)エスシーワールド株式会社 (2)
【出願人】(503117829)財団法人富山県新世紀産業機構 (12)
【Fターム(参考)】