細胞のストレスの検出
本発明者らは、生化学的ストレスまたは毒性状態のような細胞環境における外部変化または内部変化に応答してその発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域由来の核酸配列を組み込む、レポーター遺伝子構築物を提供する。このプロモーターは、選択された核酸配列であって、それらの転写物および/または翻訳産物がアッセイされ得、その結果このレポーター遺伝子構築物が細胞内状態を検出し得る容易さを基準として、その選択された核酸配列に対して作動可能に連結される。また、構築物を含むトランスフェクトされた細胞株、およびこの構築物を含むトランスジェニック非ヒト動物モデルも記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レポーター遺伝子構築物、この構築物を含むトランスフェクトされた細胞株およびこの構築物を含むトランスジェニック非ヒト動物モデルであって、レポーター遺伝子構築物は、細胞環境における外部変化または内部変化に、そして詳細にはストレス状態に応答してその発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域由来の核酸配列を組み込み、プロモーターは、選択された核酸配列であって、それらの転写物および/または翻訳産物がアッセイされ得る容易さを基準として、この選択された核酸配列に作動可能に連結されるものに関する。レポーター遺伝子構築物は、それによって、生化学的ストレスまたは毒性状態の特徴である細胞内状態を検出し得るシステムを提供する。詳細には本発明は、レポーター遺伝子構築物であって、例えば、限定ではないが、サイクリン依存性キナーゼインヒビター1(p21)遺伝子をその構築物についてのプロモーター領域として含むレポーター遺伝子構築物を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬物開発の現代の方法、たとえば、化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングは、潜在的な治療効果を有する多数の化学物質を同定する。しかしそれらの化合物の多くが代謝性または毒性学的な特徴を有し、それによってそれらの化合物は臨床使用に不適切となるので、有用な薬物をいつも作成するのは、これらの化合物のある区分に過ぎない。市場に対して潜在的な新規な治療薬であるために必要な投資のレベルを考慮すれば、あらゆる有害な(adverse)毒性学的特性を保有する化合物を、重要な開発事業が行われる前に早期の段階で同定すべきであることが極めて望ましい。
【0003】
有害な毒性学的な特徴について多数の化合物を確実にスクリーニングする事に伴う大きい問題は、現在利用可能な方法が、多数の化合物のスクリーニングには適切でないか、治療薬として所与の化合物の適切性を確実に予測するために毒性の特定の機構に対して集中し過ぎているということである。従って、実験動物におけるインビボの病理学的研究では、潜在的な毒性の極めて確実な指標を得ることができるが、必要な時間および動物数に関する費用によって、このような研究は、多数の化合物をスクリーニングするためには不経済となる。インビボの病理学的研究の代替は、公知の生化学的な機構を検出するインビトロ方法を使用することである。これらは、確実にハイスループットのスクリーニングの適用に適しているが、種々の理由のためにインビトロの毒性を予測する能力は限定されている。これらとしては、(i)細胞培養系に呈示され得るのはインビボ組織のある選択肢のみである;(ii)インビボでみられる間接的な毒性の機構は、器官間の相互作用の影響が培養物に存在しないという理由で、複製されない;(iii)初代培養物における細胞株または細胞の増殖/静止状態がインビボにおけるそれらの対応物とはしばしば異なり、その結果それらの応答が異なる;(iv)細胞株のクローン選択は、用いられる特定の細胞株に決定的に依存する結果を生じる、という事実が挙げられる。
【0004】
ハイスループットスクリーニングに対する適用のために経済的である方式で毒性の全身的指標をモニターし得るシステムは、既存の方法を上回る極めて大きい改善を示す。
【0005】
細胞のストレス機構は、細胞、近接する細胞、組織または器官全体の正常な機能に対する脅威を現実的にまたは潜在的に保有する、細胞環境における外的または内的な変化に対して応答する、細胞、細胞の群または組織タイプにおいてその発現が改変される任意の遺伝子または遺伝子のセットの応答としてみなしてもよい。細胞環境における、そしてその遺伝子の発現が結果として転写的に改変され得る、その遺伝子における変化の例としては、以下が挙げられる。
【0006】
1.細胞におけるDNAの恒常性状態の乱れ。これらの乱れとしては、核酸または前駆体ヌクレオチドの化学的変化、DNA合成の阻害、およびDNA複製の阻害またはDNAに対する損傷を挙げることができる。その発現がこのタイプの乱れに応答して変更され得る遺伝子としては、c-myc(Hoffman et al Oncogene 21 3414-3421)、p21/WAF-1(El-Diery Curr.Top.Microbiol.Immunol.227 121-137(1998);El-Diery Cell Death Differ.8 1066-1075(2001);Dotto Biochim.Biophys.Acta 1471 43-56(2000))、MDM2(Alarcon-Vargas & Ronai Carcinogenesis 23 541-547(2002);Deb & Front Bioscience 7 235-243(2002))、Gadd45(Sheikh et al Biochem.Pharmacol.59 43-45(2000))、FasL(Wajant Science 296 1635-1636(2002))、GAHSP40(Hamajima et al J.Cell.Biol.84 401-407(2002))、TRAIL-R2/DR5(Wu et al Adv.Exp.Med.Biol.465 143-151(2000);El-Diery Cell Death Differ.8 1066-1075(2001)),BTG2/PC3(Tirone et al J.Cell.Physiol.187 155-165(2001))が挙げられる。
【0007】
2.細胞の酸化的状態における変化。このような変化は、例えば、フリーラジカルの蓄積または低酸素状態によってもたらされ得る。このタイプの変化に応答して発現が変化され得る遺伝子としては、MnSODおよび/またはCuZnSOD(Halliwell Free Radio.Res.31 261-272(1999);Gutteridge & Halliwell Ann.NY Acad.Sci.899 136-147(2000))、IDB(Ghosh & Karin Cell 109 Suppl..,S81-96(2002))、ATF4(Hai & Hartman Gene 273 1-11(2001))、キサンチンオキシダーゼ(Pristos Chem.Biol.Interact.129 195-208(2000))、COX2(Hinz & Brune J.Pharmacol.Exp.Ther.300 376-375(2002))、INOS(Alderton et al Biochem.J.357 593-615(2001))、Ets-2(Bartel et al Oncogene 19 6443-6454(2000))、FasL/CD95L(Wajant Science 296 1635-1636(2002))、DGCS(Lu Curr.Top.Cell.Regul.36 95-116(2000);Soltaninassab et al J.Cell.Physiol.182 163-170(2000))、ORP150(Ozawa et al Cancer Res.61 4206-4213(2001);Ozawa et al J.Biol.Chem.274 6397-6404(1999))が挙げられる。
【0008】
3.肝毒性ストレスを生じる変化。肝毒性ストレスに応答して発現が変化され得る遺伝子としては、Lrg-21(Drysdale et al Mol.Immunol.33 989-998(1996)),SOCS-2および/またはSOCS-3(Tollet-Egnell et al Endocrinol.140 3693-3704(1999)、PAI-1(Fink et al Cell.Physiol.Biochem.11 105-114(2001))、GBP28/アディポネクチン(Yoda-Murakami et al Biochem.Biophys.Res.Commun.285 372-377(2001))、D-1酸糖タンパク質(Komori et al Biochem Pharmacol.62 1391-1397(2001))、メタロチオネインI(Palmiter et al Mol.Cell.Biol.13 5266-5275(1993))、メタロチオネインII(Schlager & Hart App.Toxicol.20 395-405(2000))、ATF3(Hai & Hartman Gene 273 1-11(2001))、IGFbp-3(Popovici et al J.Clin.Endocrinol.Metab.86 2653-2639(2001))、VDGF(Ido et al Cancer Res.61 3016-3021(2001))およびHIFi pTacchini et al Biochem.Pharmacol.63 139-148(2002)を挙げることができる。
【0009】
4.細胞をアポトーシスへ誘引し得る刺激。発現がアポトーシス促進性のストレスによって改変され得る遺伝子の例は、Gadd 34(Hollander et al J.Biol.Chem.272 13731-13737(1997))、GAHSP40(Hamajima et al J.Cell.Biol.84 401-407(2002))、TRAIL-R2/DR5(Wu et al Adv.Exp.Med.Biol.465 143-151(2000);El-Diery Cell Death Differ.8 1066-1075(2001))、c-fos(Teng Int.Rev.Cytol.197 137-202(2000))、CHOP/Gadd153(Talukder et al Oncogene 21 4280-4300(2002))、APAF-1(Cecconi & Gruss Cell.Mol.Life Sci 5 1688-1698(2001))、Gadd45(Sheikh et al Biochem.Pharmacol.59 43-45(2000(),BTG2/PC3(Tirone J.Cell.Physiol.187 155-165(2001))、Peg3/Pwl(Relaix et al Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 97 2105-2110(2000))、Siah 1a(Maeda et al FEBS Lett.512 223-226(2002))、S29リボソームタンパク質(Khanna et al Biochem.Biophys.Res.Commun.277 476-486(2000))、FasL/CD95L(Wajant Science 296 1635-1636(2002))、組織トランスグルタミナーゼ(Chen & Mehta Int.J.Cell.Biol.31 817-836(1999))、GRP78(Rao et al FEBS Lett.514 122-128(2002))、Nur77/NGFI-B(Winoto Int.Arch.Allergy Immunol.105 344-346(1994))、シクロスポリンD(Andreeva et al Int.J.Exp.Pathol.80 305-315(1999))、p73(Yang et al Trends Genet 18 90-95(2002))およびBak(Lutz Biochem.Soc.Trans.28 51-56(2000))である。
【0010】
5.化合物、薬物または他の生体異物因子の投与。このような条件下で発現が変化され得る遺伝子の例は、2A、2B、2C、2D、2E、2S、3A、4Aおよび4Bの遺伝子ファミリー由来の生体異物代謝チトクロームp450酵素である(Smith et al Xenobiotica 28 1129-1165(1998);Honkaski & Negishi J.Biochem.Mol.Toxicol.12 3-9(1998);Raucy et al J.Pharmacol.Exp.Ther.302 475-482(2002);Quattrochi & Guzelian Drug Metab.Dispos.29 615-622(2001))。
【0011】
6.天然の、モデル化された、または誘導された疾患状態。これらの疾患は、限定はしないが、肥満、免疫不全、神経変性障害、癌、心血管、炎症の疾患、遺伝的疾患または代謝性障害から構成されるリストから選択され得る。
【0012】
p21遺伝子(Cdkn−1a、WAF1、CIP1、SDI1およびMDA−6としても種々に公知)は、細胞の機能として、サイクリン依存性キナーゼの阻害および引き続く細胞周期停止および/またはアポトーシスを含むタンパク質をコードする(el-Deiry,W.S et al.,Cell 75:817-825,1993;el-Deiry,W.S.et al.,Cancer Res.54:1169-1174,1994;Gartel,A.L.およびTyner,A.L,Mol.Cancer Therapeutics 1:639-649,2002)。p21遺伝子の転写は、p53腫瘍サプレッサータンパク質および他の転写因子、例えば、Sp1、AP2、BRCA1、ビタミンD3レセプター、レチノイン酸レセプター、C/EBP、およびSTATによる調節を含む細胞ストレスと関連する種々の機構による制御に供される。p21遺伝子プロモーター領域の分析によって、それを通じてそれらのプロモーターの効果が媒介される5キロベースの転写開始部位内にある多数のcis−作用配列エレメントが同定される(Gartel,A.L.およびTyner,A.L,Exp.Cell Res.246:280-289,1999)。
【0013】
p21遺伝子のプロモーター領域由来の配列を組み込んでいるレポーター遺伝子系は、特定の配列エレメントが、特定の細胞タイプでp21発現を調節するのにおいて、特定の転写因子の作用を媒介する能力を実証するために実験的に用いられている(el-Deiry,W.S.et al.,Cancer Res.55:2910-2919,1995;Biggs,J.R.et al.,J.Biol.Chem.271:901-906,1996;Chin,Y.E.et al.,Science 272:719-722;Matsumura,I.et al.,Mol.Cell Biol.17:2933-2943,1997;Zeng,Y.X.et al.,Nat.Genet.15:78-82,1997,Bellido,T.et al.,J.Biol.Chem.273:21137-21144,1998;Moustakas,AおよびKardassis,D.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:6733-6738,1998;Biggs,J.R.and Kraft,A.S.,J.Biol.Chem.274:36987-36994,1999;Mitchell,K.O.およびel-Deiry,W.S.,Cell Growth Differ.10:223-230,1999;Yang,W.L.et al.,Mol.Cell Biol.Res.Commun.1:125-131,1999;Zhang,W.et al.,J.Biol.Chem.275:18391-18398,2000;Gartel,A.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:4510-4515,2001;Gartel,A.L.et al.,Oncol.Res.13:405-408,2003)。しかし、p21遺伝子の転写応答の全体的範囲の読み出しを提供するように設計されたレポーター遺伝子システム、またはインビボにおいて投与された化合物の効果をスクリーニングするためのその使用という説明は以前には存在していない。
【0014】
ルシフェラーゼ基質の注入後のルシフェラーゼ発現を誘導する毒性のマーカーとして化合物をインビボスクリーニングするためにHo1−luc(ヘムオキシゲナーゼ−ルシフェラーゼ)トランスジェニックマウスを用いることは先行技術から公知である(Malstrom et al 2004)。しかし、Malstrom et alは、ドキソルビシンによって誘導されるルシフェラーゼシグナルが、腸、腎臓、胃、脾臓、生殖腺およびある程度は肝臓由来であったこと、そして「心臓では処置に関連する知見は観察されなかった(no treatment-related findings were observed in heart)」ことを報告する。これは、心臓がドキソルビシン毒性の周知の部位であるという共通の一般的知識とはかなり対照的である(Sun et al.2001およびその引用文献を参照のこと)。この観察によって、Malstrom et alによって用いられる導入遺伝子は、特定の重要な環境において潜在的な毒性を検出できず、そのため偽陰性を生じ得るということが示唆される。
【0015】
従って、内因性遺伝子の方式に類似の方式で調節され得、そして遺伝子活性化に関与する細胞ストレス応答の検出の改善をもたらすレポーターシステムが求められる。本発明者らは、例えば、p21遺伝子または別のストレス応答性遺伝子を組み込んでいるレポーターシステムが、広範な種々の生理学的に関連する細胞ストレスを検出する正確かつより鋭敏な方法を提供し、従って、多くの種類の毒性の早期の検出の手段の必要性を満たすということを本発明において発見している。
【発明の開示】
【0016】
本発明においては、本発明者らは、ストレス応答性プロモーター配列、例えば限定はしないが、p21遺伝子プロモーターの特性に基づいたシステムを開発した。本発明者らは、驚くべきことに、適切な読み出し遺伝子の発現を駆動する、例えば、p21プロモーター由来のプロモーターエレメントの適切なアレイを含む、レポーター遺伝子の構築物が、広範な種々の毒性機構の迅速なインビトロまたはインビボのアッセイを提供するために、トランスフェクトされた細胞株またはトランスジェニック動物で用いられ得ることを見出した。本発明のレポーター導入遺伝子は、毒性の徴候である種々の細胞ストレス機構に関連する生化学的事象が丸ごとの動物で便利に試験され得るシステムを提供する。
【0017】
本発明の第一の態様によれば、(i)細胞環境における有害な外部または内部(細胞外または細胞内)の変化に応答してその発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域の核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得、かつ分泌可能タンパク質および/または組織学的に検出され得る因子の形態での読み出し得る少なくとも1つの核酸配列(「レポーター配列」)とを含む、核酸構築物が提供される。
【0018】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という言葉、ならびにその言葉のバリエーション、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」とは、「限定はしないが〜を含む(including but not limited to)」を意味し、そして他の部分、追加物、成分、整数または工程を排除する意図ではない(そして排除しない)。
【0019】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲を通じて、単数形は、その文脈がその他を要するものでない限り、複数を包含する。詳細には、不定冠詞を用いる場合、本明細書は、その文脈が他を要するのでない限り、複数および単数を同様に意図するものであることが理解されるべきである。
【0020】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と合わせて記載される特色、整数、特徴、化合物、化学的成分または基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に対して、それと不適合でない限り、適応可能であることが理解されるべきである。
【0021】
レポーター配列は、本発明の核酸構築物が組み込まれているシステムの読み出しをもたらし、その結果所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用する核酸配列は、分泌可能なタンパク質、タンパク質複合体またはフラグメント、その酵素、酵素産物または結合体、一次、二次もしくはさらなる代謝物および/または塩、このレポーター遺伝子産物の発現に対する直接または二次的な効果によって放出される非生物学的産物、ホルモンまたは抗体の形態であってもよく、または読み出しは、細胞から分泌可能でないが、組織学的に検出可能である因子、例えば、限定はしないがLacZ産物を生成してもよいことが理解される。本発明の核酸構築物は、2つ以上のレポーター配列を含んでもよく、例えば、これは、分泌可能な読み出し産物を発現する2つ以上のレポーター配列を含んでもよいし、または核酸は、組織学的に検出可能である因子を発現するレポーター配列および発現された分泌可能な読み出し産物を含んでもよい。レポーター配列の数およびその変動は、本出願の範囲を限定するものではない。
【0022】
好ましくは、この遺伝子のプロモーター配列は、以下のストレス状態:
(i)細胞におけるDNAの恒常性状態における乱れ
(ii)細胞の酸化ストレスに応答する変化
(iii)肝毒性ストレスを生じる変化
(iv)細胞アポトーシスを誘発する刺激
(v)化合物、治療剤または他の生体異物因子の投与;または
(vi)天然、誘導された、またはモデル化された疾患状態、
のうちの任意の1つ以上に対する応答において、変化された発現を有する。
【0023】
ルシフェラーゼレポーターシステムは、読み出しシステムとしては所望されないことが理解される。なぜならルシフェラーゼ検出には、動物にルシフェリン基質を与えることが必要であるからである。従って、ルシフェラーゼ発現は注射されたルシフェリンに対してアクセス可能な器官および組織においてのみ、そしてルシフェリンが体から分泌される前にのみ、検出可能である。さらに、ルシフェリンは投与された試験化合物に対する毒性または他の応答に影響し得るという可能性がある。
【0024】
さらに、ルシフェラーゼレポーターシステムを用いれば、研究中の動物は、麻酔されるか、拘束されなければならない。麻酔自体のストレスおよび/または影響は、投与された試験化合物に対する応答に影響し得る。英国では、生きている動物に対する実験手順に対する法的な制限によって、繰り返しの全身麻酔、または2時間を超えて食物および水を与えないことは正当化することが極めて困難になり、そしてルシフェラーゼレポーター読み出しシステムの適用を厳しく限定する。従って、本発明では、レポーター配列は、上述の例から、偽の読み取りを生じ得る最小限のバックグラウンドストレス効果を視野に入れて選択される。
【0025】
好ましくは、本発明の構築物のプロモーター配列は、以下の遺伝子であって、p21、メタロチオネイン1A、PUMA、Gclc、Cox2、Ki67、Stk6、Hsp、Hmox−1、Ho−1、PIG3およびSOD2の群を含む遺伝子の任意の1つ以上から選択される。
【0026】
本発明の1実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物p21遺伝子の転写開始部位のすぐ5’側の領域由来の最大5000塩基対のDNAを含む、核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0027】
プロモーター配列は、好ましくは、ヒト、ラットまたはマウスの遺伝子由来の、任意の哺乳動物p21遺伝子(Cdkn1a、WAF−1、CIP−1、SDI1、およびMDA−6としても公知)の転写開始部位の5’の5000塩基対内由来の配列を含んでもよい。このプロモーター配列は、全部で166〜5000のヌクレオチド塩基対を含んでもよく、このヌクレオチド塩基対は、1つ以上の個々に選択された配列長を含み、その各々が以下のリストにおける配列間隔の1つ以上を含み、この数は、転写開始部位の5’側の位置のヌクレオチド塩基対の包括的範囲を指す:0〜5;15〜20;64〜69;77〜82;93〜143;157〜162;688〜696;765〜779;1194〜1212;1256〜1270;1920〜1928;2553〜2561;4228〜4236。
【0028】
転写開始配列は、機能的なプロモーターエレメントまたは転写因子結合部位、例えば、PhCMV*−1プロモーターに会合された場合、真核生物ポリメラーゼによる転写を指向する、p21遺伝子または最小真核生物コンセンサスプロモーターの第一の非コードエキソンの一部または全てを含むことによって提供され得る(Furth et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:9302-9306,1994)。
【0029】
このレポーター配列は、転写物またはコードされた翻訳産物ポリペプチドのいずれかのアッセイを通じて遺伝子発現の都合のよい読み出しを提供するように選択される。好ましくはレポーター配列の転写は、以下のうち任意の1つ以上によって便利に検出され得る。
(1)例えば、
(a)電気泳動分離およびブロットハイブリダイゼーション
(b)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);
(c)インサイチュハイブリダイゼーション;
によるレポーター配列のRNA転写物のアッセイ。当業者は、アッセイされるべき任意の転写物のアッセイに適切なハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーオリゴヌクレオチド配列を選択し得る。
(2)例えば、以下によるレポーター配列のポリペプチド翻訳産物のアッセイ:
(a)イムノアッセイであって、任意の特定のペプチド翻訳産物、例えば、リポカリン(WO04011676A2)またはSEAP(GB0322196A0)またはヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ鎖のアッセイに適切な抗体を、選択されたさらなるエピトープタグペプチド配列の有無とともに生成および選択して、例えば、
(i)ラジオイムノアッセイ;
(ii)酵素結合免疫吸着アッセイ;
(iii)電気泳動分離およびイムノブロッティング;
(iv)免疫組織化学;
により、適切な既存の抗体によって検出可能なポリペプチド翻訳産物を作成する方法を当業者が公知であるイムノアッセイ;
(b)ポリペプチドに特異的な酵素活性、例えば、クロラムフェニコールのアセチル化によって測定される細菌のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ活性(Gorman Mol.Cell.Biol.2:1044-1051,1982)またはβガラクトシダーゼ(lacZ)活性がX−Galを代謝する能力によるその活性のアッセイ;
(c)ポリペプチド、例えば、Aequoria victoria由来の緑色蛍光タンパク質の蛍光特性または発光特性;
(d)例えば、
(i)mRNAの安定性増大または代謝回転の減少のアッセイによる;
(ii)例えば、ポリユビキチン化の除去の結果として、別のタンパク質の安定性増大または代謝回転の減少のアッセイによる;
(iii)低分子代謝物の蓄積の増大
による、化学反応または生化学的反応におけるポリペプチドによる阻害。
【0030】
ある場合には、構築物が同じプロモーター配列の結果として多数の異なる読み取りを提供し得るように、本発明のレポーター遺伝子構築物が同じプロモーター配列を含み、レポーター配列が異なってもよいことが理解される。
【0031】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物メタロチオネイン1A遺伝子の26kbの上流セグメントを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物PUMA遺伝子の最大16kbの上流遺伝子配列および5kbのセグメントの下流配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物Gclc遺伝子の最大16kbの上流遺伝子配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0034】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物cox2遺伝子のコード配列由来の転写開始部位から上流の最大3.5kbの配列およびさらなる3kbのセグメントを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のKi67遺伝子の転写開始の最大30kbの上流の遺伝子配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0036】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のStk6遺伝子のE4TF1モチーフ(−87〜−78)およびSp−1部位(−129〜−121)および必要に応じてタンデムリプレッサーエレメントCDE/CHR(−53〜−49/−39〜−35)を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0037】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のHsp70遺伝子の5’隣接領域の最大5kbを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0038】
本発明のなおさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のHo1遺伝子レポーター遺伝子座の最大16.5kbの上流プロモーターおよび8kbの3’配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0039】
本発明のなおさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物PIG3遺伝子のp53認識配列リピートを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0040】
本発明の第二の態様によれば、部位特異的なリコンビナーゼによって認識される核酸配列に隣接するヌクレオチド配列(「アイソレーター配列」)によって、または本発明の第一の態様下で規定されるような、転写開始配列およびレポーター配列に関して逆転されるような挿入によって、本発明の第一の態様下で規定されるような、転写開始配列およびレポーター配列から作動可能に隔てられた、本発明の第一の態様下で規定されるような、プロモーター配列を含む核酸構築物が提供される。このリコンビナーゼ認識部位は、このアイソレーター配列が欠失されるか、または逆転されたプロモーター配列の方向がリコンビナーゼの存在下で逆転されるような方向に配置される。この構築物はまた、部位特異的なリコンビナーゼのコード配列をコードする遺伝子に作動可能に連結された組織特異的なプロモーターを含む核酸配列を含む。
【0041】
この態様によって、特定の組織でのみレポーター配列発現を検出することが可能になる。組織特異的なプロモーターを用いて適切なリコンビナーゼ発現を制御することによって、この誘導性遺伝子構築物は、プロモーターが活性である組織でのみ可視になる。例えば、肝臓特異的なプロモーターからリコンビナーゼ活性を駆動することによって、肝臓のみが再配列されたレポーター構築物を含み、従って、レポーター配列発現が生じ得る唯一の組織である。
【0042】
従って、活性なレポーター配列発現単位を引き起こす組み換え事象はリコンビナーゼが発現される組織でのみ生じ得る。この方法では、レポーター配列は特定の組織タイプでのみ発現され、リコンビナーゼの発現は、このプロモーターに連結された誘導性プロモーターからなる機能的な転写単位を引き起こす。このような機能を果たすことが公知の部位特異的なリコンビナーゼ系としては、バクテリオファージのP1 cre−loxおよび細菌のFLIP系が挙げられる。従って、部位特異的なリコンビナーゼ配列は、バクテリオファージP1の2つのloxP部位であってもよい。
【0043】
培養された哺乳動物細胞において正確に規定された欠失を生じさせるための部位特異的なリコンビナーゼ系の使用は実証されている。Gu et al(Cell 73:1155-1164,1993)は、マウスのES細胞における免疫グロブリンのスイッチ領域における欠失が、単一のloxP部位を離れる、Cre部位特異的なリコンビナーゼの一過性の発現によってバクテリオファージP1 loxP部位の2つのコピーの間でどのように生成されるかを記載している。同様に酵母のFLPリコンビナーゼは、マウスの赤白血病細胞におけるリコンビナーゼ標的部位によって規定される選択マーカーを正確に欠失させるために用いられている(Fiering et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:8469-8473,1993)。Cre lox系は、以下に実証されているが、他の部位特異的なリコンビナーゼ系を用いてもよい。
【0044】
Cre loxシステムにおいて用いた構築物は通常、以下の3つの機能的エレメントを有する。
1.発現カセット;
2.遍在性に発現されたプロモーター(例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(Soriano et al.,Cell 64:693-702,1991))の制御下で発現された負の選択マーカー(例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子);および
3.DNAフラグメントのいずれかの末端に位置するバクテリオファージP1部位特異的な組み換え部位loxP(Baubonis et al.,Nuc.Acids.Res.21:2025-2029,1993)の2つのコピー。
【0045】
リポフェクチンによって細胞に導入され得るCreリコンビナーゼタンパク質によって媒介される2つのloxP部位の間の部位特異的な組み換えの方法によって、この構築物を含む宿主細胞または細胞株からこの構築物は排除され得る(Baubonis et al.,Nuc.Acids Res.21:2025-2029,1993)。2つのloxP部位の間のDNAを欠失している細胞を、適切な薬物(TKの場合にはガンシクロビル)を含む培地中での増殖によって、TK遺伝子(または他の負の選択マーカー)の損失について選択する。
【0046】
本発明の第三の態様によれば、本発明の前の態様のいずれか1つに従う核酸構築物でトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。細胞タイプは、好ましくはヒトまたは非ヒト哺乳動物起源であるが、また他の動物、植物、酵母または細菌起源であってもよい。
【0047】
本発明の第四の態様によれば、非ヒト動物の細胞が、本発明の前の態様のいずれか1つに従う核酸構築物によってコードされるタンパク質を発現する、トランスジェニック非ヒト動物が提供される。このトランスジェニック動物は好ましくはマウスであるが、別の哺乳動物種、例えば、別のげっ歯類、例えば、ラットもしくはモルモット、または別の種、例えば、ウサギ、またはイヌもしくはネコ、または有蹄動物種、例えば、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ、ウシ、または非哺乳動物種、例えば、鳥類(例えば、家禽、例えば、ニワトリもしくはシチメンチョウ)であってもよい。
【0048】
前に記載されたような核酸構築物の使用を含む、トランスフェクトされた宿主細胞またはトランスジェニック非ヒト動物の調製に関する本発明の実施形態では、細胞または非ヒト動物を、さらなる形質転換に供してもよく、ここでこの形質転換は、さらなる遺伝子(単数または複数)またはタンパク質コード核酸の配列(単数または複数)の導入である。この形質転換は、細胞または細胞株の一過性のもしくは安定なトランスフェクション、細胞もしくは細胞株におけるエピソーム発現系であっても、または胚性幹(ES)細胞における組み換え事象を通じた、前核性のマイクロインジェクションによる、もしくは核移入クローニング手順におけるドナー核としてその核が用いられるべき細胞のトランスフェクションによる、トランスジェニック非ヒト動物の調製であってもよい。
【0049】
前に記載されたような核酸構築物の使用を含む、トランスフェクトされた宿主細胞またはトランスジェニック非ヒト動物の調製に関する本発明の実施形態では、細胞または非ヒト動物とは、選択性の欠失または1つ以上の内因性遺伝子の発現の阻害を生じさせる、以前の遺伝的改変を受けているものであってもよい。この遺伝子欠失または阻害は、ゲノム由来の選択された配列の永続的な欠失、選択された配列の条件的な欠失によって、例えば、欠失されるべき配列に隣接するloxP配列の挿入、およびcreレコンビナーゼの構成的もしくは条件的な発現(米国特許第4959317号)またはRNA転写物での選択的干渉によるこの欠失されるべき配列の引き続く条件的な切除によって、例えば、標的遺伝子に対して相補的な一本鎖で短い二本鎖RNA分子の発現を指向するDNA配列のゲノムへの挿入(米国特許第6573099号)によって、達成され得る。
【0050】
1つ以上の内因性遺伝子の発現の選択的欠失または阻害を生じさせる遺伝的改変が達成されている細胞または非ヒト動物への前に記載されたような核酸構築物の導入は、別の遺伝子の欠失もしくは阻害が以前に達成されている細胞もしくは細胞株の一過性のもしくは安定なトランスフェクションによって、または別の遺伝子の欠失もしくは阻害が前に達成されている細胞もしくは細胞株へのエピソーム発現系の導入によって、または別の遺伝子の欠失もしくは阻害が以前に達成されている動物由来の胚性幹(ES)細胞における組み換え事象を通じた、前核性マイクロインジェクションによるトランスジェニック非ヒト動物の調製によって、または核移入クローニング手順においてドナー核としてその核が用いられるべき、別の遺伝子の欠失または阻害が以前に達成されている動物由来の細胞のトランスフェクションによって、または本発明の第四の態様に記載されている動物と、別の遺伝子の欠失もしくは阻害が以前に達成されている同じ種の別の動物と交配させること、およびこの交配の子孫の引き続くゲノム分析で本発明の核酸構築物を導入された個体および他の選択された遺伝子の欠失もしくは阻害が存在する個体を、例えば、組織サンプル由来のゲノムDNAの単離およびPCR分析によって同定することによって達成され得る。
【0051】
トランスジェニック細胞もしくは細胞株、またはトランスジェニック非ヒト動物を調製する方法であって、この方法は、細胞もしくは細胞株の一過性のもしくは安定なトランスフェクション、細胞もしくは細胞株におけるエピソーム発現系の発現、または前核マイクロインジェクション、ES細胞もしくは他の細胞株における組み換え事象を包含するか、または異なる発生経路に分化され得、その核が核移入のドナーとして用いられる細胞株のトランスフェクションによる;ここでさらなる核酸配列または構築物の発現を用いて、本発明の第一、第二、第三または第四の態様に従って、トランスフェクションまたは形質転換についてスクリーニングする。例としては、細胞の増殖培地に添加された抗生物質に対する耐性を付与する選択マーカーの使用が挙げられる。例えば、G418に対する耐性を付与するネオマイシン耐性マーカー。さらなる例としては、相補的な配列であり、本発明の第一、第二、第三または第四の態様に従う核酸配列とまたはその構成成分とハイブリダイズする核酸配列を用いる検出が挙げられる。例としては、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析およびPCRが挙げられる。
【0052】
本発明の第五の態様によれば、インビトロまたはインビボにおいて細胞中の変更された代謝状態の変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための、本発明の第一、第二、第三または第四の態様のいずれか1つに従う核酸構築物の使用が提供される。
【0053】
遺伝子活性化事象は、毒性学的ストレスの誘導、代謝変化、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物感染の結果であってもそうでなくてもよいが疾患の結果であり得る。
【0054】
本発明の第六の態様によれば、インビトロまたはインビボにおける細胞での変更された代謝状態における変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための、本発明の第一の態様下で規定されたような、レポーター配列を含む核酸構築物の使用が提供され、ここではこのレポーター配列の転写および/または翻訳産物は、レポーター配列が発現される細胞と異種である。
【0055】
この遺伝子活性化事象は、毒性学的ストレスの誘導、代謝変化、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物感染の結果であってもそうでなくてもよいが疾患の結果であり得る。
【0056】
本発明の第五および第六の態様に従う使用はまた、標的細胞または組織タイプ内の遺伝子発現プロフィールの変化が疾患の結果として変更される、細胞、細胞株または非ヒトトランスジェニック動物における疾患状態の検出または疾患モデルの特徴づけに及ぶ。開示される方法下で検出可能な本発明のこの態様の状況における疾患は、感染性疾患、癌、炎症性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、神経学的疾患および遺伝に基づく疾患として規定され得る。
【0057】
本発明のこの態様に従うさらなる使用は、適切な免疫無防備状態のマウス株(異種移植片と呼ばれる)例えば、ヌードマウスにおける第三の態様に従うトランスフェクトされた細胞株の増殖を包含し、本発明の第一または第二の態様に記載されるレポーターの発現における変更は、毒物学的ストレス、代謝性変化、遺伝的基礎を有する疾患またはウイルス、細菌、真菌もしくは寄生生物感染の結果であってもそうでなくてもよい疾患の結果として宿主の変更された代謝状態の測定値として用いられ得る。この使用の範囲はまた、レポーター構築物の発現に対する異種の化合物または薬物の効果をモニタリングするのにおける使用の範囲であり得る。
【0058】
本発明の第五および第六の態様は、インビトロもしくはインビボにおいて遺伝子活性化事象を検出する方法に及ぶ。
【0059】
本発明の第五の態様による実施形態では、この方法は、本発明の第一または第二の態様のうちのいずれか1つに従う核酸構築物で安定にトランスフェクトされた宿主細胞、または本発明の第四の態様に従うトランスジェニック非ヒト動物をアッセイする工程を含み、ここでこの細胞または動物は、レポーター配列であってその翻訳産物がエピトープタグペプチド配列の方法によって同定されるレポーター配列の発現によってシグナル伝達される遺伝子活性化事象に供される。
【0060】
本発明の第六の態様に従う実施形態では、この方法は、レポーター配列を含む核酸構築物で安定にトランスフェクトされた宿主細胞をアッセイする工程を含み、このレポーター配列の転写または翻訳産物は、それが発現される細胞に対して、またはこのような構築物を細胞が発現するトランスジェニック非ヒト動物に対して異種であり、この細胞または動物は、レポーター配列であってその翻訳産物がエピトープタグペプチド配列の方法によって同定されるレポーター配列の発現によってシグナル伝達される遺伝子活性化事象に供される。
【0061】
本発明のなおさらなる態様によれば、上記のような核酸構築物でトランスフェクトされているか、またはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含む、細胞または細胞株または非ヒト動物における毒性学的に誘導されたストレスをスクリーニングするかまたはモニタリングする方法が提供される。
【0062】
好ましくは、細胞または細胞株または非ヒト動物は、種々のストレス状態が単独の細胞または細胞株または非ヒト動物において同時にモニタリングまたはスクリーニングできるように、本発明に従う2つ以上の遺伝子構築物を含み得る。この方法では多数の異なる読み出しを得ることができるということが理解される。
【0063】
あるいは、本発明の方法では、本発明に従う異なる遺伝子構築物(単数または複数)を各々が含む、細胞、細胞株または非ヒト動物のあるセットまたは複数を、そのセットまたは群において種々のストレス状態が同時にスクリーニングまたはモニタリングされ得るように、同時に用いてもよい。この方法では多数の異なる読み出しを得ることができることが理解される。
【0064】
毒物学的ストレスは、DNA損傷、酸化ストレス、細胞性タンパク質の翻訳後化学改変、細胞性核酸の化学改変、アポトーシス、細胞周期停止、過形成、免疫学的変化、ホルモンレベルの変化もしくはホルモンの化学的改変の結果による影響、または細胞損傷をもたらし得る他の要因として規定され得る。
【0065】
従って、上記のような核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含む、ウイルス、細菌、真菌および寄生生物感染をスクリーニングして特徴付けるための方法も提供される。
【0066】
従って、癌、炎症性疾患、心臓血管疾患、代謝性疾患、神経学的疾患および遺伝的基礎を有する疾患をスクリーニングする方法であって、上記のような核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれらを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含む方法がさらに提供される。
【0067】
細胞が一時的にトランスフェクトされ得るこれらの状況では、上記のような核酸構築物は、エピソームとしておよび一時的に維持される。あるいは、細胞は安定にトランスフェクトされ、それによって、この核酸構築物は、トランスフェクトされた細胞の染色体DNAに永続的にかつ安定に取り込まれる。
【0068】
また、この状況では、トランスジェニック動物とは、上記のような核酸構築物が、好ましくはそのゲノムDNA中に、その細胞の全てまたはいくつかにおいて取り込まれている非ヒトトランスジェニック動物として規定される。
【0069】
レポーター配列であってその翻訳産物が本発明の第五の態様に関してエピトープタグペプチド配列の方法で同定されるレポーター配列の発現は、細胞培養培地中のこのレポーター配列翻訳産物またはその精製されるかもしくは部分的に精製された画分のレベルを測定することによってアッセイされ得る。
【0070】
当業者は、その翻訳産物が体液中に分泌されることが公知であるレポーター配列を選択する方法を承知している。例えば、レポーター配列は、細胞から分泌される、リポカリンまたはヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ鎖、または分泌型アルカリホスファターゼのいずれかをコードし、それらが発現されて尿中に排出されるように選択され得る。従って、本発明の第四の態様に従うレポーター配列の発現は、回収可能な体液中に分泌されるこのレポーター配列の翻訳産物のレベルを測定することによってアッセイされ得る。本発明の好ましい実施形態では、体液は、尿であるが、また乳汁、唾液、涙液、精液、血液および脳脊髄液を含むリスト、またはその精製されるかもしくは部分的に精製された画分から選択されてもよい。
【0071】
培養細胞から組織培養培地への、またはトランスジェニック非ヒト動物体液からのレポーター配列翻訳産物の検出および定量は、当業者に公知の多数の方法を用いて達成され得る。
【0072】
1.免疫学的方法
(i)このアッセイは、ELISAであってもよく、これは抗体または抗血清が、レポーター配列の翻訳産物を認識する単独の抗体のまたは抗体の混合物を含むこと、そして捕獲抗体として用いて、このアッセイを行うために適切なマイクロタイタープレートまたは他の媒体をコーティングすることによる。レポーター遺伝子産物(分析物)を含有する培養培地または体液を、マイクロタイタープレートに添加して、分析物の結合をさせる。酵素、通常は西洋ワサビペルオキシダーゼに対して結合体化されている同じ抗体または抗血清の添加を二次抗体として用いる。適切な基質、好ましくは酵素による変換後に着色生成物を生じるものの添加を行って、どの程度の二次抗体結合体が結合しているかに比例してこの分析物を定量する。
【0073】
(ii)競合的ELISA。代替の形態では、組織培養培地または体液(分析物)のサンプルは、このアッセイを行うために適切な支持体に結合された発現されたレポーター配列翻訳産物を含む。別の反応では、レポーター遺伝子産物を特異的に認識する抗体の限定的な標準量を同じの別のアリコートに添加して、結合させる。これを支持体に結合された分析物に添加して、残りの遊離の抗体を結合させる。第二に、例えば、第一の抗体のFc領域に対する酵素結合体化抗体を、結合させて、比色読み出しを用いて、色の変化の程度がサンプル中の分析物のレベルに対して反比例することによって、分析物を定量し得る。
【0074】
(iii)ウエスタンブロット分析
トランスフェクトされた細胞ホモジネートを、ホモジナイゼーション緩衝液(140mM NaCl、50mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA、1%Triton−100)中で、30分間氷上での細胞のインキュベーションによって調製した。不溶性物質を除くための短時間の遠心分離後、透明な上清をタンパク質含量についてアッセイした。40μgの細胞抽出物に対して等価な容積および等価な容積の細胞培養物を、SDS−PAGEに供して、半乾性ブロッティング装置(Bio-Rad,Richmond,CA)を用いてニトロセルロース(Schleicher and Schuell,Dassel,Germany)メンブレン上にブロットした。このメンブレンをブロッキング緩衝液(5%NFDM(w/v)含有PBS)中で1時間ブロックし、次いで、ブロッキング緩衝液中で希釈したmyc mAb(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)とともに2時間、連続的に撹拌しながらインキュベートした。PBST(PBSに加えて0.05% Tween−20)中での一連の洗浄後、このメンブレンを、ブロッキング緩衝液中で希釈したHRPに結合体化された抗マウス抗体中で、1時間、撹拌しながらインキュベートして、PBST中での別の一連の洗浄後にHRP活性を、ECLキット(Pierce,Rockford,IL)を用いて発色させて、オートラジオグラフのフィルム(Kodak)上に焼き付けた。
【0075】
(iv)蛍光分極。レポーター配列翻訳産物を特異的に認識する抗体は、フルオレセインと結合体化されて、生成された分析物と混合される。この方法は、存在する抗体−抗原複合体の量を直接測定することによって分析物を定量する。この方法はまた、任意のタンパク質間相互作用を測定するように適合され得る。
【0076】
2.標識された基質の放出。レポーター配列の翻訳産物の酵素活性に起因する基質の変換の検出。基質変換の性質は、以下の事象のカテゴリーのうちの1つ以上におさまっても収まらなくてもよい:タンパク質分解、リン酸化、アセチル化または硫酸化、メチル化。
【0077】
3.複数の基質の検出。多数のレポーター配列翻訳産物を用いる場合、このような事象の検出のために適切な方法としては限定する必要はないが以下を挙げることができる。
(i)質量分析
(ii)核磁気共鳴(NMR)
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、レポーター遺伝子活性化合事象を検出する方法が提供され、この方法は以下の工程を含む。
1.本発明の第一、第二、第三または第四の態様に従う核酸構築物を用いて、細胞をトランスフェクトさせるかまたは受精したマウス卵の前核をマイクロインジェクションする工程。必要に応じてマイクロインジェクションされた卵またはトランスフェクトされたマウスES細胞株を用いる;
2.このトランスフェクトされた細胞、細胞株またはトランスジェニック非ヒト動物を、刺激であって、遺伝子発現系の変更を生じさせる代謝状態における変化を生じても生じなくてもよい刺激に曝す工程。
3.適切なアッセイを用いて、例えば、ELISA、RIA、質量分析、NMR、遠隔操作方法などの検出方法を用いて、レポーター配列翻訳産物の発現レベルを決定する、工程。
【0079】
工程(1)では、レポーター配列転写産物および/または翻訳産物は、レポーター配列が発現される細胞中で既に発現されている産物に対して異種であってもよい。いずれの場合も、当業者は、レポーター配列の転写産物および/または翻訳産物が、このレポーター配列が発現される細胞で既に発現された産物に対して異種であるように、タグ化配列を用いてこのレポーター配列を操作する方法を理解する。
【0080】
本発明に従う方法および使用によって、改変された遺伝子発現が有意な役割を果たす領域を検討するのにおいて大きな進歩が得られる。このようなレポーター遺伝子は、p21遺伝子の活性を検出するために細胞およびトランスジェニック動物において使用される。特定の適用としては、限定はしないが以下が挙げられる。
1.化合物の潜在的な毒性効果を評価するための迅速かつ確固たるインビボのスクリーニングシステムを提供すること。
2.毒性の機構に関する情報を提供する。このような情報は、選択プロセスから化合物を排除するために用いられるか、またはある化合物に対する可能性のある改変を示唆し得る。
3.化合物の併用の効果に対する情報を提供する。
4.種々の時間間隔で尿中におけるレポーター(単数または複数)のレベルを測定することによって、経時的なレポーター遺伝子発現における変動のモニタリングを可能にする。
5.病原性の感染に関連する遺伝子発現における変化の評価。
6.神経学的、心臓血管的および代謝的な疾患に関連する遺伝子発現における変化の評価。
7.癌に関連する遺伝子発現における変化の評価。
8.例えば、機構が規定されて理解されている毒素の作用に対してレポーター発現プロフィールを適合させることによって、薬物標的選択のバリデーションを可能にする情報を提供する。
9.毒性、代謝性または変性の表現型を逆転させる目的での治療ストラテジーとして化合物を評価するための使用。
10.環境変化および/または行動性の変化から生じる遺伝子発現における変化の評価。
【0081】
本発明の第二の態様および引き続く態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えた第一の態様に関する。
【0082】
本発明は、以下の実施例を参照してここに記載されるが、これは例示の目的でのみ示されるものであって、本発明に関して限定すると解釈されるべきではない。本出願における参照は、多数の図面に対しても行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
[材料および方法]
[p21レポーター構築物の生成]
2つのレポーター構築物が生成されている。両方とも4.5kbのフラグメントを含み、これがマウスp21遺伝子プロモーターの連続セグメントおよび上流の転写制御配列を包含する。一方ではp21プロモーターセグメントは、LacZレポーター遺伝子のコード配列から上流であり、そして他方では、これは免疫学的アッセイによる検出を容易にするように設計された固有のエピトープでタグ化されたヒト絨毛性ゴナドトロピンのコード配列から上流である。これらの構築物は、それぞれ、pX3W(図2)およびpXWhCG.RAB(図3)と呼ばれる。これらのマップは図2および3に示される。
【0084】
[WAZトランスジェニックマウスの作成]
p21−LacZおよび/またはp21−hCG構築物を受精したマウスの卵にマイクロインジェクションして、これを偽妊娠した代理母に移植する。尾の生検組織溶解物のPCR分析によってLacZレポーター遺伝子の存在について仔をスクリーニングする。PCRスクリーニングのために用いたプライマーの配列は以下である。
フォワードプライマー 5’-GAC ACC AGA CCA ACT GGT AAT-3’(配列番号1)
リバースプライマー 5’-GCA TCG AGC GTA ATA AGC-3’(配列番号2)。
【0085】
サンプルは以下のとおりサイクリングする:94℃で5.00分、35サイクルの(94℃で0.30分、61℃で0.30分、72℃で2.00分)72℃で7.00分、4℃でα。
【0086】
この方法によって同定されたトランスジェニック個体を、トランスジェニック動物と交配して、導入遺伝子の生殖細胞系伝達を決定し、そして分析用のトランスジェニックマウス株を確立する。全てのマウスは、病原体なしの環境で飼育する。
【0087】
[株の選択]
記載されたように作成されかつ同定された創始動物由来のトランスジェニック子孫の最初のスクリーニングは、野性型p21遺伝子の活性を誘導することが公知の適切な化合物のIP注射によって行った;例えば、トポイソメラーゼIIインヒビターエトポシドは、DNA損傷を生じさせることが公知である。DMSOに溶解して、40mg/kg(LD50)で腹腔内注射する場合、LacZレポーター遺伝子発現を検出するために染色による組織サンプル切片の引き続く試験を行って、個々のトランスジェニック株のレポーター遺伝子発現の特徴を検査してもよい。
【0088】
[標的された形質転換]
マウスX染色体上の、ヒポキサンチン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt)遺伝子座での導入遺伝子の標的化挿入は、Nucleis S.A.,60 Avenue Rockefeller,69008 Lyon,Franceによって行った。Hprt遺伝子はハウスキーピング遺伝子であり、そのようなものとして全ての組織において遍在性に発現される。この遺伝子座は、ほとんどの組織において内因性のエンハンサー活性を示さないことが示されており、そしてプロモーター依存性の導入遺伝子発現を支持する見事に許容的なクロマチン環境を提供する(Farhadl et al.,2003;Heaney et al.,2004)。標的化挿入は、BPES胚性幹細胞を用いて達成され、ここではマウスHprt遺伝子座は、Hprt遺伝子機能を修復するように設計されたHprt標的化ベクターpDESTと組み合わせて部分的に欠失されており、その中に導入遺伝子がクローニングされている。この導入遺伝子は、λファージに基づく部位特異的な組み換えの方法によってpDEST標的化ベクター(Gateway(登録商標)クローニング,Invitrogen)に導入される。この系を利用するためには最初に、特定の組み換え部位(attL)を含む低コピー数のプラスミド、いわゆるEntryベクターを作成する必要がある。これを用いて、最初に構築して、次いでその後に組み換えによってpDEST目的(destination)ベクターにこの導入遺伝子をシャトルすることができる。このベクターは、低コピー数プラスミドpACYC177へ、スペーサーフラグメントによって隔てられた、特定の組み換え配列attL1およびattL2を導入して、プラスミドpCL15attを作成することによって生成される。このベクターは、レポーター構築物の引き続くクローニングのために用いられる。
【0089】
[動物の飼育]
マウスを固い床のポリプロピレンのケージ中でおがくずの上で飼育して、使用の前に5日間順応させた。温度は19〜23℃の範囲内で、そして相対湿度は40〜70%の範囲内で維持した。1時間あたり14〜15回の空気交換を行い、そして12時間の暗野を伴って12時間の明野の周期とさせた。動物にはRM1食餌(Special Diet Services Ltd.,Stepfield,Witham,Essex,UKより供給)を各々の試験の期間中、自由にとらせた。飲用水は局所の供給からとらせ、そしてボトルで与え、自由にとらせた。動物は、群に無作為に割り当てて、各々の実験の開始前に耳に番号をつけて秤量した。
【0090】
[用量調製および投与]
各々の試験化合物を適切なビヒクル溶液に溶解して、10ml/kgの用量容積で腹腔内注射(i.p.)によって投与した。できるだけ、そのまま(未処理)のコントロールおよびビヒクル処理したコントロールの両方を用いた。マウスにおいて毒性が劣ることが特徴付けられている試験品目を用いる場合、用量設定実験を主な実験の前に行なった。試験品目を単独のマウスに投与して、これを6〜8時間および24時間後に有害な効果についてモニターした。この単一の用量範囲でマウスが処置に耐容した場合、残りのマウスにはプロトコールに従ってこの試験品目を投与した。
【0091】
[終結手順]
最終の血液サンプルを、心臓穿刺によって、血漿の調製のためのチリウム/ヘパリンコーティングしたチューブに採取した。組織は、各々のプロトコールに規定されるとおり、以下のように慣用的に解体した。
【0092】
組織の2つの切片(約2mmの厚み)を、以下に記載の方法に従ってLacZ発現の組織化学的分析のために取り出した。
【0093】
2つのさらなる切片(約2mmの厚み)を、10%の中性の緩衝化ホルマリン(10%NBF)に一晩入れ、次いで、処理して、切り出して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
【0094】
残りの組織を凍結バイアルに入れて、RT−PCRおよび可能な生化学的分析のために液体窒素中で急速凍結させた。
【0095】
マウス脳を、できるだけ完全に歯状回を除去するように切開した。腎臓の場合には、腎臓の1つを縦断面で、その他は横断面で切断した。
【0096】
[血漿サンプルの分析]
血漿調製に適切なチューブに取り出した後、静脈血サンプルをローラー上で10分間混合し、次いで氷上で冷却した。2,000rpmで、8〜10℃で10分間の遠心分離によって赤血球を除去した。この上清(血漿)を第二のチューブに移して、分析が必要になるまで−70℃で保管した。
【0097】
血漿サンプルは、製造業者の指示に従ってRocheオートアナライザー(Cobas Integra 400)で適切な分析物について分析した。測定された慣用的なマーカーとしては以下が挙げられた:(肝臓の障害について)血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアルカリホスファターゼ(ALP)および(腎臓の障害については)血漿クレアチニンおよび血中尿素窒素(BUN)。
【0098】
[mRNAの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイ]
内因性遺伝子の発現の分析は、ABI Prism 7000システムを用いてRT−PCRによって行った。RT−PCR分析に関して、凍結組織サンプルは、1mlのTRI試薬(Sigma)中でPolytron PT-mr2100ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。各々のサンプルの総RNAは、製造業者の指示に従って単離して、RNAペレットは、75%エタノール下で−70℃で保管した。各々のRNAペレットをRNAase/DNAaseを含まないdH2O中に再懸濁して、Genequant RNA/DNAカルキュレータ(Amersham)を用いて定量した。第一鎖のcDNA合成は、製造業者のプロトコールに従って2μgの総RNAおよびProtoscript First Strand cDNA Synthesis Kit(New England Biolabs)を用いて各々のサンプルについて行った。cDNA合成後にRNAを分解するためのさらなる工程を行った。各々のサンプルをRNAase/DNAaseを含まないdH2Oを用いて50μlまで希釈して−20℃で保管した。
【0099】
p21またはヘモオキシゲナーゼ−1(HO−1)発現における変動を測定するためには、内部コントロールを含むことが必要であった。βアクチンcDNAの増幅によって、サンプル間のRNA含量に対する変動を制御する標準が得られる。従って、2つの別の反応(標的遺伝子およびβアクチンcDNA増幅)から構成される最終の反応が単独のチューブ中で同時に行われた。用いられるPCR条件は、95℃で10分、続いて95℃で15秒間の変性の40サイクルおよび60℃で1分間のアニーリング/伸長であった。p21およびHO−1増幅反応のためのプライマーおよびプローブは、ABIから入手した(Assay-On-Demandキット)。これらの方法は、ABI Prism 7000システムで用いた標準的な条件について前にバリデートされている。
【0100】
[LacZ導入遺伝子発現の検出]
・凍結方法1
組織をPBSで洗浄して、0.1M MgCl2および5mMのEDTAを含有する、PBSに含有される0.2%グルタルアルデヒド(pH7.3)中でシェーカー上で4℃で4時間、前固定した。固定後、この組織を20%のスクロース溶液に移して、4℃で一晩脱水した。翌日、それらをコルクの円板上でcryo−M−bed培地中に包埋して、液体窒素中にゆっくりと下ろし、次いで切片が必要になるまで−80℃に移した。
【0101】
クリオスタットサンプルおよびチャンバの温度は−30℃に設定した。切片化するサンプルを、切り出す1時間前にクリオスタットに入れて、適切な温度と平衡にさせた。凍結切片(10μm)を切断して、アミノプロピルトリエトキシシラン(APES)コーティングしたスライド上に置いた。
【0102】
染色前に、切片を0.2%のグルタルアルデヒド(上記)中において室温で10分間インキュベートし、次いで2mMのMgCl2、0.01%のデオキシコール酸ナトリウムおよび0.02%のNonidet−P40を含有するPBS中で2回(各5分)洗浄した。次いで、切片を1mg/mlのX−gal、5mMのフェロシアン化カリウムおよび5mMのフェリシアン化カリウムを含有する同じ洗浄溶液で、37℃で一晩さらに洗浄し、次いでPBS中で5分間2回洗浄して、風乾させて、水性の封入剤(Hydromount)中に装填した。スライドを評価して写真に撮った。
【0103】
・凍結方法2
この方法は、Campbell et al.,1996およびCampbell et al.,2005に記載されたとおりで、ただしわずかな改変をともなった。
【0104】
組織を切り出して、直ちに、PBS中に0.1%グルタルアルデヒドおよび2mMのMgCl2を含有する冷却した4%パラホルムアルデヒド中に入れて、上記の溶液中で穏やかに振盪しながら2〜8℃で3時間固定した。固定した組織を、2mMのMgCl2を含有する冷却したPBSを用いて2〜8℃で3×5分洗浄して、2mMのMgCl2および30%(w/v)スクロースを含有するPBS中で2〜8℃で一晩脱水した。翌日、脱水した組織をイソペンタン/ドライアイス浴を用いてOCT包埋培地中に包埋した。包埋した組織は凍結切片にされ得るまで−70℃で保管した。
【0105】
凍結切片を、2mMのMgCl2を含有するPBS中で2〜8℃で5分間3回、次いで界面活性剤洗浄液(2mMのMgCl2、0.01%のNonidet P40および0.1%のデオキシコール酸ナトリウムを含有するPBS)中で2〜8℃で3×30分、洗浄した。次いで、それらを2mMのMgCl2、0.02% Nonidet P40、0.1%のデオキシコール酸ナトリウム、5mMのフェロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウムおよび0.1%のX−galを含有するPBS中において37℃で一晩染色した。翌日、このスライドを2mMのMgCl2を含有するPBS中において5分間3回、続いて、PBS中において室温で5分で3回洗浄した。それらを100%のエタノール(5分)で平衡化して、Eosinを用いて室温で1分間対比染色した。脱水および装着の後、それらを評価して、写真を撮った。
【0106】
・ホール・マウント・メソッド
新鮮な4%パラホルムアルデヒド中に事前に固定された組織標本を、「Whole Mount X-Gal Histochemistry of Transgenic Animal Tissues」(http://www.rodentia.com/wmc/docs/lacZ bible.htmlを参照のこと、以下にまとめている)の手順を用いて、直ちに染色し、そして固定後の組織を70%(v/v)のエタノールに移した。
【0107】
4%パラホルムアルデヒド中での1時間の固定後に、リンス緩衝液(100mMリン酸ナトリウム(pH7.3)、2mM MgCl2、0.01%デオキシコール酸ナトリウム、0.02%のNP−40)を用いて、組織を室温で各々30分間3回リンスした。次いで、それらをリンス緩衝液に加えて5mMのフェリシアン化カリウム、5mMのフェロシアン化カリウム、1mg/mlのX−gal(−20℃で保管したジメチルホルムアミド(DMF)中の25mg/mlストックから作成)中で、4〜48時間(代表的には、一晩;約90%の潜在的な染色が最初の24時間に生じると考えられる)染色した。引き続き、この組織を10%ホルマリン中で4℃で一晩、後固定して、処理して、切片にして、ニュートラルレッド(Neutral Red)で対比染色して核を明らかにした。
【実施例】
【0108】
[実施例1:p21レポーター遺伝子構築物]
p21のプロモーター領域の4つの切片(el-Deiry,W.S.et al.,Cancer Res.55:2910-2919,1995;Ensembl Mus-musculus transcript information ENSMUST00000023829)を、図1(a)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー対を用いHerculase Taq(Stratagene)を用いてマウスゲノムDNA(CB/4)からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって個々に増幅させた。マウスp21プロモーター領域由来の配列に相補的なプライマー配列切片は下線で示す。各々のPCR産物は、HindIIIおよびEcoRIを用いて別々に消化して、pBluescriptにライゲーションさせた。配列バリデーションの後、この4つのフラグメントを固有の内部ApaLI、BamHIおよびAscI制限部位、ならびに操作されたEcoRIおよびXhoI隣接部位を用いて単一の構築物に連結して、p21の最初の87塩基対の非コードエキソンおよびそれから上流の配列を含む5006塩基対の構築物を作成した(図1b)。次いで、この完全なp21プロモーター構築物をEcoRIおよびXhoIを用いて切り出して、Kozak配列、LacZコード配列およびSV40ポリアデニル化シグナル配列の上流のベクターpXen3中に連結して、ベクターpX3Wを得た(図2)。トランスジェニックのWAZマウスは、前核性のC57BL/6xCBA胚へのpX3Wのマイクロインジェクションによって作成した。
【0109】
[実施例2:メタロチオネイン1Aレポーター遺伝子構築物]
mt1とも呼ばれる、強力な金属結合および酸化還元能力を有する小さいシステインリッチタンパク質の1つのファミリー、Mt1は、亜鉛の恒常性、ならびに重金属毒性および酸化的損傷に対する細胞応答において重要な役割を果たす。転写因子結合部位の複雑なアレイは、近位プロモーターにおいて−700bpから転写開始部位へ同定されている。これらとしては、5つのMRE(MTM−1結合)、Sp1、ARE、USF1、AP−1(さらに、ヒトにおけるAP−2、AP−4)が挙げられる。近位プロモーター領域(−153〜−43)に集合されるこの5つのMREは、重金属に対する、そして酸化ストレスに対する応答における転写誘導の媒介に関与する(Stuart et al.,1984 Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Dec;81(23):7318-22,Dalton et al.,1996 J Biol Chem;271(42):26233-41)。−100で重複するARE/USF認識配列は、基本的な発現を維持するのに必須であって、また酸化ストレスに応答するMt1発現の活性化においても役割を果たす。MTF−1およびUSF−1は、発達中の胚における亜鉛に対する応答においてMt−1発現の本質的な調節で協同することが報告されている(Andrews et al.,2001 EMBO J 20:1114-112)。AREは、H2O2および酸化還元サイクルの生体異物に対する応答においてGST−Yaサブユニットおよびキニンリダクターゼ遺伝子の誘導を媒介する(Jaiswal,1994 Biochem Pharmacol.3;48(3):439-44.)。マウス遺伝子について既に構築されたレポーター(LacZおよびタグ化hCG)は、まだ特徴付けられていない上流の転写調節エレメントとして包含するように設計された、遺伝子の26kbの上流セグメントを組み込む。他では、mt1およびmt2についてマウスノックアウトモデルが作成されて研究されている:両方の対立遺伝子の破壊についてホモ接合性のマウスは正常に発生したが、野性型よりもCdでの肝中毒作用に対して顕著に過敏であった(Masters et al.,1994 Proc.Nat.Acad.Sci.91:584-588)。Beattie et al.(1998,Proc.Nat.Acad.Sci.95:358-363,1998)はまた、mt1/mt2二重ヌルマウスにおける毒性ストレス、高い食物取り込みおよび結果としての肥満に対する感受性の増大を報告した。なかでも、mt1の転写の向上を誘発する刺激は、重金属(例えば、カドミウム)(Li et al.,1998 Nucl.Acids.Res.26:5182-5189)、コバルト、亜鉛、H2O2、ヒドロキシラジカル、ヘム類似体、虚血、四塩化炭素、スズ・プロトポルフィリン、糖質コルチコイド、ホルボールエステル、パラコート、ジエチルおよびピロリジン・ジカルバメート、LPS、X線照射および炎症性ストレスシグナルである。
【0110】
[実施例3:PUMAレポーター遺伝子構築物]
アポトーシスのp53上方制御調節因子はまた、BBC3とも呼ばれる。PUMAの外因性の発現は、それが発現される細胞中で過度に急激なアポトーシスを生じることが示されている(Yu.J et al.,2001)。その転写は少なくとも一部は、近位のプロモーター内の同族のプロモーター結合部位に対するp53の結合によって上昇され(p53結合部位は転写開始の230bp上流のBS1、および翻訳開始の144bp上流のBS2)、ヒトプロモーターにおいて特徴付けられる主要なp53応答エレメントである。ヒトプロモーターにおける対応物は、転写開始からそれぞれ、−410bpおよび−375bpに位置する。しかし、PUMAのプロモーター領域は十分に特徴付けられていないので、レポーターは、最大16kbの上流遺伝子配列および5kbの下流配列を組み込み、その結果まだ特徴付けられていない転写制御エレメントが含まれる。
【0111】
従って、PUMA遺伝子レポーターは、細胞においてアポトーシスを誘発する毒性の侵襲を検出するために有用であると予想される。公知の誘導因子としては、DNA損傷剤、例えば、5FU、アドリアマイシン、エトポシド(Yu.J et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.100:1931-1936,2003,Yu.J et al.,Molec.Cell 7:673-682,2001、Nakano,K Molec.Cell 7:683-694,2001)およびp53の細胞レベルを増大することが公知の因子、例えば、4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)(Jia-wen Han et al.,2001 PNAS 98(20)11318-11323)が挙げられる。
【0112】
[実施例4;Gclcレポーター遺伝子構築物]
グルタミン酸−システインリガーゼ触媒性サブユニット(GCLC)は、調節性ユニット(GCLM)と一緒になって、フリーラジカルの蓄積を生じさせるある範囲の毒性の侵襲に対する細胞の防御に必須の役割を果たす、グルタチオン(GSH)生合成の最初の工程を触媒する。Gclc転写物は、ある範囲の化学的/生体異物因子、例えば、クロロホルム、塩化カドミウム、アセトアルデヒド(Yang H.et al.,2001 Biochem.J.(2001)357:447-455)、ピロリジンジチオカルバメート(PDTC)によって、HepG2およびHEK293細胞において(Erica L.Dahl et al.,2001 Toxicological;Sciences 61,265-272)、イソチオシアン酸フェネチル(PEITC)によって、HepG2およびHEK293細胞において(Erica L.Dahl et al.,2001 Toxicological;Sciences 61,265-272)、そして、β−ナフトフラボン(β−NF)によって、HepG2細胞において(Erica L.Dahl et al.,2001)、そして塩化カドミウムによって上昇されることが公知である。このプロモーターの多数の領域が、gclc遺伝子転写を調節することが公知である;例えば、Yang et al(2001)は、このプロモーターの機能的な分析を行って、−595〜−111、−1108〜−705の間に位置する3つの上流の隣接領域(正の調節を与える)および−705〜−595の間のもの(負の調節を付与する)を記載している。
【0113】
−416〜−316の近位プロモーター内には、NF−κBおよびAP−1認識配列が存在する。ヒトの5’隣接領域の分析によって、これが、抗酸化的応答エレメント(ARE)およびAP−1およびNF−κB結合部位を含むことが示される。マウスグルタミン酸システインリガーゼ触媒性サブユニット(Gclc)遺伝子のノックアウトは、ホモ接合性の場合胚致死性であり、ヘテロ接合性の場合、軽度のグルタチオン欠損のモデルとして提唱されている(Dalton et al.,2000 Biochem Biophys Res Commun.Dec 20;279(2):324-9)。従って、gclcに基づくレポーターは、試験系(細胞またはトランスジェニック動物)が酸化ストレス下に配置されているか否かという信頼性のある指標を提供するということが想定される。レポーター遺伝子のコード領域が、この第二のエキソンにおいて、gclc遺伝子座の天然の第一のコドンの位置に、公知のそして推定の特徴付けされていない転写調節エレメントを提供する16kbの上流配列とともに配置されるように、このレポーターは設計される。
【0114】
[実施例5:Cox2レポーター遺伝子構築物]
プロスタグランジン−エンドペルオキシダーゼシンターゼ2(Ptgs2)とも呼ばれる、マウスのシクロオキシゲナーゼ−2は、アラキドン酸のプロスタグランジンへの変換を触媒することを担う。これは、炎症性シグナル、例えば、IL−6に対する応答で誘導され、そしてアスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬物の主な標的である。文献は、cox−2の発現の上昇を生じさせる広範な化合物、例えば、リポポリサッカライド、サイトカイン、分裂促進因子:スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、亜ヒ酸塩、CCl4、4−ヒドロキシ−2−ノネナール、LPS、インターロイキン−1、腫瘍壊死因子α、PAFまたはインターロイキン−1β、ベンゾ[a]ピレン、エタノールおよびアラキドン酸、ホルボール12−ミリステート13−アセテート、ドキソルビシン、Fe−NTA、デオキシコール酸12−O−テトラデカノイルホルボール13−アセテートを報告する。
【0115】
Cox2に基づく発現カセットは可能性としては、炎症性応答を惹起する任意の毒性侵襲についての良好な候補レポーターに相当する。この遺伝子のプロモーター領域は、公知の転写因子結合部位、例えば、NF−kB、(NF−κB−2ただしNF−κB−1ではない)、NF−IL6、ATF/CRE、E−Box、Pea3、SP1、AP−2、C/EBP、STAT3、STAT1、TBP−応答エレメントの複雑なアレイを含む。高度に保存された3’UTRは、mRNA安定性のレベルで媒介された転写後制御に関係する、例えば、ホスファチジル−イノシトール3−キナーゼおよびAgC10は、メッセージの安定に必要なp38MAPKを阻害することによって3’UTRを介してCox−2のmRNAを負に調節する。従ってこのレポーター構築物は、転写開始部位から上流の約3.5kbのセグメト、およびcox2のコード配列から下流のさらなる約3kbのセグメントを組み込む。
【0116】
[実施例6;Ki67レポーター遺伝子構築物]
この名称は、増殖している細胞において高度に発現される極めて大きい核抗原を認識する市販の抗体をいう(Schluter,C et al.,J.Cell Biol(1993)123:513-522)。抗原の発現は細胞周期の早期のG1、S、G2およびM期の間に生じるが、静止期の細胞では検出されない。この抗体は、その機能に関してほとんど知られていない新生物疾患状態における増殖中の細胞を検出するための腫瘍病理学で広範に用いられるが、分裂している細胞集団におけるその遍在によって、細胞分裂での中心的な役割が明らかに示唆される。高レベルのKi67発現と周期中の細胞集団との間の絶対的な相関によって、これは細胞増殖のレポーター遺伝子の基礎となる潜在的に強力なツールにされる。この遺伝子およびその調節は、まだ十分に特徴付けされていないので、レポーター遺伝子設計は、まだ未同定の調節性エレメントとして包含するように設計される遺伝子の大きい上流のセグメント(転写開始の最大30kbの上流)を利用する。
【0117】
[実施例7;Stk6レポーター遺伝子構築物]
セリン/トレオニンキナーゼ6(オーロラ(Aurora)ファミリー・キナーゼ1)、STK6は、種々の分裂事象を制御する。STK6遺伝子の転写物は、細胞周期を通じて変化して、G2/Mの間にピークになる。マウスSTK6のプロモーターは、特徴付けられている。E4TF1モチーフ(−87〜−78)およびSp−1部位(−129〜−121)は、正の調節エレメントとして同定されている(Tanaka M et al.,(2002)JBC Vol.277:10719-10726)。タンデムリプレッサーエレメント、CDE/CHR(−53〜−49/−39〜−35)は、細胞周期調節エレメントとして同定されている。レポーター遺伝子コード配列の上流にこの領域を置くことによって、レポーターカセットは、外部刺激に応答して宿主細胞集団が細胞分裂を受けるようなシグナル伝達を潜在的に可能にする。
【0118】
[実施例8;Hsp70レポーター遺伝子構築物]
ストレスに応答する熱ショック遺伝子(hsp)の誘導は、最初の侵襲に対して防御するように機能し、引き続くストレスに対する耐性の状態を生じさせる。この防御的な役割は、タンパク質の折り畳みにおける積極的な関与、タンパク質の天然の折り畳み状態におけるそれらのタンパク質の維持、および誤って畳まれたタンパク質の分解の修復または促進に起因する。Hsp70は、種々のストレス刺激によって誘導される細胞アポトーシスに関与する。従って、これによって潜在的に、ある範囲のストレス刺激をシグナル伝達し得るレポーターの基礎が提供される。これはUV照射、熱ショック、重金属および病理学的刺激(感染、熱、炎症、悪性)または生理学的刺激(増殖因子、ホルモン刺激組織発達)によって誘導される。マウスHsp70遺伝子の5.0kbの5’隣接領域は、hsp70遺伝子の転写の増大を媒介することによって急性ストレスに応答することが示された調節性モチーフを含む。従って、レポーターは、これに基づいて操作されている;レポーターコード配列は、hsp70遺伝子座の転写開始部位から約5kb上流で開始する配列の制御下に置かれる。
【0119】
[実施例9;Hmox−1レポーター遺伝子構築物]
HOZレポーター遺伝子構築物は、βガラクトシダーゼのコード配列である、LacZに作動可能に連結されたマウスヘモキシゲナーゼ−1(HO−1)遺伝子由来の調節性配列を含む。HO−1は、ヘムの異化における最初の反応を触媒して、ビリベルジンおよび一酸化炭素および鉄を生じさせる。ほとんどの誘導因子によるHO−1遺伝子発現の刺激は、転写のレベルで媒介される。転写は、酸化ストレス、ヘム、重金属、熱ショックおよびUVに応答して誘導される。
【0120】
以前の多数の研究で、マウスHO−1遺伝子由来の最大14kbの上流配列を含んだクローンの誘導が報告されている(Alam,1994;Alam et al.,1994;Alam et al.,1995;Zhang et al.,2001)。
【0121】
いくつかのエンハンサー領域がこれらの研究から同定されている。これらのさらに遠位では、AB1領域は、開始部位から10kb上流に位置し、このことは、少なくとも10kbのプロモーター配列が種々の誘導性因子による正確な誘導に必要であることを示す。さらなるエンハンサー領域SX2は−4kbに位置し、いくつかのSTAT結合部位はほぼ−400〜−600bpに位置する。さらに、あるエンハンサーエレメントが、ヘムおよびカドミウム応答を調節する、ヒト遺伝子のイントロン内で同定されている(Hill-Kapturczak et al.,2003)。
【0122】
本発明者らは、RedET組み換えクローニング(Zhang et al.,2000)を用いて、HO−1−LacZレポーター導入遺伝子を生成した。HO−1遺伝子のエキソン1および2に対して相同な領域を含むようにLacZ−SV40ポリAミニ遺伝子を操作した。このミニ遺伝子カセットはまた、その3’末端に細菌Amp遺伝子を含み、これがクローニングの間に選択マーカーとして用いられた。次いで、このミニ遺伝子を、内因性HO−1エキソン1およびイントロン1配列を置換する、マウスHO−1遺伝子座(クローンRPCI-23 290L07、HGMP Resource Centre)を含むBACクローンに、相同組み換えによって導入した。従って、HO−1プロモーターは、HO−1タンパク質の代わりに、ATG開始コドンからLacZを発現する。LacZ−SV40ポリAミニ遺伝子の正確な位置は、5’−接合領域および3’−接合領域の両方を配列決定することによって確認された。次いで、ほとんどのHO−1遺伝子を16.5kbの上流プロモーターおよび8kbの3’配列と一緒に含むHO−1レポーター遺伝子座を、BACクローンから外してpACYC低コピー数プラスミド骨格へ組み込んだ。
【0123】
この構築物のHEK293細胞への一過性のトランスフェクション、およびヘミンでの誘導によって、誘導されていないコントロールの細胞を上回るLacZ標識指数の11倍の増大が生じた。
【0124】
Malstrom et alのHO−1レポーターは、転写開始部位の上流の15kbのHO−1配列を用いる。本発明のHOZレポーター遺伝子は、転写開始部位の上流16.5kbおよび下流8kbを用いる。従って、本発明のレポーターは、Malstrom et alによって用いられる配列のない調節性DNA配列を含む可能性が高く、従ってその発現は、内因性のHO−1遺伝子の方式と類似の方式で調節される可能性がさらに高く、従ってHO−1遺伝子活性化に関与する細胞ストレス応答のさらによい検出装置である。
【0125】
[実施例10;PIG3レポーター遺伝子構築物]
p53誘導性遺伝子3すなわちPIG3は、転写物であって、その発現がコントロール細胞(p53ヌル)に対してp53発現結腸直腸癌細胞において10倍より大きく上昇された14の転写物のパネルの1つとして、連続的遺伝子発現解析(serial analysis of gene expression)(SAGE)によって最初に同定された(Polyak et al.,1997 Nature Genet.30:315-320,2002)。反応性の酸素種(ROS)は、アポトーシスの強力な誘導因子であり;PIG3は、ROSの代謝においてある役割を有し得るキノンオキシドリダクターゼホモログをコードする。
【0126】
Contente et al.,(2002 Nature Genet.30:315-320)は、PIG3転写物が、Y=CまたはTであるPIG3プロモーター(TGYCC)nのペンタヌクレオチド反復配列に対するp53の結合への直接応答で上方制御されるということを実証した。この配列はPIG3プロモーターの転写活性化に必要かつ十分である。これに基づいて、p53認識配列リピートを含む、近位プロモーターから下流に配置されたレポーター遺伝子配列、およびPIG3遺伝子から上流の配列を含む構築物は可能性として、レポーター遺伝子が存在する細胞または組織におけるp53誘導のレポーターを提供する。
【0127】
[実施例11;SOD2レポーター遺伝子構築物]
マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD、SOD2)は、H2O2へのスーパーオキシドアニオンの不均化を触媒する金属酵素の多数のメンバーのファミリーである。SOD2遺伝子は、酸化的リン酸化の副産物として生成されたスーパーオキシドに対する防御の第一選択であるミトコンドリア内のフリーラジカルスカベンジング酵素をコードする。これは腫瘍壊死因子(TNF)誘導性遺伝子産物である。これは、細胞内シグナル伝達分子H2O2の生成において重要な役割を果たす。
【0128】
SOD2遺伝子のプロモーター領域は、多数の十分に特徴付けられた転写因子認識配列を含み、これにはSP−1;AP−1;AP−2;NF−κB;STAT3;C/EBP;Egr−1;TNFREが挙げられる。転写因子SP−1およびAP−2は、基本プロモーターの転写活性において反対の役割を有するようである。SP−1は、ヒトMnSODプロモーターからの転写に絶対的に必須である正の役割を果たすが、AP−2は、この目的において負の役割を果たすようである。エンハンサーエレメントは、ヒトMnSOD遺伝子のプロモーター領域でみられる。いくつかの重要なエンハンサーエレメントは、第二のイントロンに位置する。第二のイントロンにおけるNF−κB部位は必須であるが、サイトカインによるMnSODの高レベルの誘導には十分でない。調節性エレメントにおける変異は、いくつかの細胞タイプにおけるMnSODの誘導の欠失をおそらく部分的に担うが、誘導の程度の相違が存在し、これは、DNA合成における欠陥では説明できない。この相違は、細胞における活性化補助因子またはサプレッサータンパク質の有無に起因し、酸化ストレスに対する防御に物理学的な役割を有し得る可能性が高い。
【0129】
ヒトMnSODプロモーターは、TATAボックスおよびCAATボックスの両方を欠くが、いくつかのGCモチーフを有する。近位プロモーター領域(基本プロモーター)は、複数のSp1およびAp−2結合部位を含むこと、そしてSp1はMnSOD遺伝子の構成的発現に必須であることが示されている。Egr−1結合部位は、MnSODの基本プロモーターで同定されている。この基本プロモーターは、ヒト肝細胞癌細胞株HepG2において12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)に応答性である。TPAによるhMnSOD転写の活性化における、これらの結合部位の寄与、ならびに転写因子Egr−1、AP−2、およびSp1の役割は、部位特異的変異分析、ウエスタンブロットおよび転写因子の過剰発現によって検討されている。この結果によって、Sp1は、ベースのそしてTPA活性化hMnSOD転写の両方に正の役割を果たすが、Egr−1の過剰発現は、hMnSODのTPA媒介性活性に対するなんら影響のない基本プロモーターの活性における負の役割を有することが示された。
【0130】
約11.8kbの5’プロモーター領域と18kbの遺伝子に加えて3’領域との間にクローニングされたレポーター遺伝子配列を含むレポーター構築物は潜在的に、レポーター構築物を含む細胞または組織において酸化ストレスのレポーターを提供する。
【0131】
[実施例12;p21−LacZ(WAZ44)レポーターマウスおよびエトポシドの効果]
記載されたように431の受精したマウス卵へのpX3W構築物の注入によって、全部で96の子孫が得られ、そのうち12がトランスジェニックであることがPCR分析によって見出された。これらの創始動物のうち6匹を、トランスジェニックマウス系統を首尾よく樹立するために管理した。これらのうち1つの系統であるWAZ44を、毒性チャレンジ後、極めて低レベルの基礎的なトランスジェニック発現および導入遺伝子誘導を示した予備研究の結果に基づいて、詳細な検討のために選択した。
【0132】
WAZ44マウスにおけるLacZ誘導に対するさらなる評価のための化合物としてエトポシドを選択した。エトポシドは、エピポドフィロトキシンから誘導された一般に用いられる化学療法剤であり、その抗癌剤としての作用方式は、酵素トポイソメラーゼIIの阻害を包含する。エトポシドは、マウスに対して慢性的に投与された場合、遺伝毒性の発癌物質である。その作用形態は、染色体の再配列をもたらす有糸分裂再組み換えの誘導および重要な遺伝子座での異型接合性の損失を包含する(Wijnhoven et al.,2003)。導入遺伝子に関与するDNAインバージョン後にのみ発現されるE.coli LacZ導入遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを用いて、エトポシドは、インビボで0.05〜50mg/kgの用量で体細胞染色体内組み換え事象の有意な誘導を生じさせることが実証されている(Hooker et al.,2002,Sykes et al.,1999)。エトポシドが毒性用量のi.p.(腹腔内)投与の3〜4週後のマウスで慢性の腹膜炎および胸膜炎をもたらす顕性の毒性を誘導することを示す証拠は限られている(Staehelin,1976)。
【0133】
WAZ44マウスでの実験では、単独用量(最大40mg/kg)のエトポシドをi.p.投与した。動物を24時間後に殺傷して、組織を固定して、LacZ発現のために染色した。コントロールのWAZ44マウスでは導入遺伝子発現はほとんどまたは全く検出されなかったが、エトポシドを投与された動物は、脾臓、胸腺および脳のいくつかの領域で有意な発現を示した。
【0134】
[実施例13:p21−LacZ(WAZ44)レポーターマウスおよびアクリルアミドの効果の影響]
アクリルアミドは、150mg/kgという総用量で、処置の開始の約7日後に部分的麻痺として神経障害の顕在化を誘導する。この用量は、単独の注射としてまたは分割して与えられてもよい;しかし、この効果は、総用量に依存しており、150mg/kgの単独用量は、急性毒性であると考えられるので、30mg/kgの注射の5日のコースが好ましい。アクリルアミドの中毒は、中枢性効果および末梢性の効果の両方を伴う;この中枢の影響としては、投与の2日内に生じる挙動の変化(乳なめ(milk-licking)の増大)、進行性の末梢性変化、例えば、後肢把持の減少および最大3週間に及ぶ自発運動の減少が挙げられる(TealおよびEvans,1982)。WAZ44マウスの実験では、5用量のアクリルアミド(30mg/kg)をi.p.投与した。
【0135】
アクリルアミド処理したWAZ44マウスの脳から凍結切片を調製して、凍結方法1を用いて染色した。解剖用の顕微鏡を用いて、スライドを見て、顕微鏡写真(a)脳全体の横断面、もとの倍率×10;(b)歯状回および海馬、もとの倍率×25、(c)皮質、もとの倍率×63を撮った。アクリルアミドを用いて得た結果の例を図4に図示しており、これによって、アクリルアミド処理したWAZ44マウス脳の歯状回、海馬および皮質における高レベルのLacZ発現が明らかになる。
【0136】
[実施例14:脳でのWAZ導入遺伝子発現]
脳におけるWAZ遺伝子導入をさらに検討するため、本発明者らは、p21を誘導することが示されている塩化第二水銀(HgCl2)(Bartosiewicz et al,.2001)、海馬においてp21を誘導することが示されているリポポリサッカライド(LPS)(Ring et al,.2002)、および血液脳関門を横切ることが公知であるパラセタモールの効果とエトポシドの効果を比較した。
【0137】
WAZマウスには、エトポシド(40mg/kg);塩化第二水銀(HgCl2、8.5mg/kg);リポポリサッカライド(LPS、1.5mg/kg)またはパラセタモール(300mg/kg)の単回i.p.注射を与えた。WAZマウスには、単独用量レベルで各々の化合物の単回のi.p.注射を与えた(図5を参照のこと)。24時間後、このマウスを殺傷して、脳を切片にして、LacZ発現のために染色した。図Xは、各々の化合物の投与から生じるLacZ染色を示す。全ての化合物が、脳におけるWAZ導入遺伝子の高レベルの発現を誘導した。エトポシド塩化第二水銀およびLPSは全て、脳の種々の領域内で同じ細胞において発現を誘導した。しかし、パラセタモールは、海馬、樟脳および皮質内で異なるパターンの誘導を生じた。
【0138】
[実施例15:HO−1−LacZ(HOZ)レポーターマウスおよび塩化カドミウムの効果]
HOZマウスは、実施例9に記載されたHO−1プロモーターによって駆動されたLacZレポーター遺伝子を含む。HO−1−LacZ導入遺伝子は、「標的化形質転換(Targeted Transgenesis)」に記載されたとおり、BPES細胞株を用いて、相同組み換えによって、マウスHprt遺伝子(X染色体)中に挿入した。
【0139】
胚盤胞への注入のために2つのES細胞クローンを選択し、引き続いて4匹の雄性キメラマウスをこのクローンの1つから得た。キメラの3匹は100%ES由来であって、これらの雄性動物を、B6雌性動物と交配して24匹の子孫を作成した。次いで、これらの動物を用いて、HOZ導入遺伝子レポーターの誘導能を検討した。
【0140】
毒性の侵襲に対するHOZ導入遺伝子応答の予備的な特徴づけは、塩化カドミウムを用いて行った。塩化カドミウムの経口投与後、カドミウムは、近位十二指腸を介して吸収されて、肝臓に輸送され、ここで腎臓へ再分布される前に沈着される(Sorensen et al.,1993)。従って、カドミウムは、急性の肝毒性、続いて慢性の腎毒性を生じさせる。カドミウムの腎毒性効果は、急性の曝露後の肝臓で合成されて、循環中に放出されるメタロチオネイン−Cdの腎取り込みに起因すると考えられる(SendelbachおよびKlaassen,1988)。
【0141】
カドミウムの生化学的毒性は、酸化ストレスに関する多数の変化に関与し、これには、肝脂質過酸化の増強、グルタチオン枯渇、γグルタミルトランスペプチダーゼの上方制御およびGSTおよびCYPの下方制御が挙げられる(Andersen and Andersen,1988,Dalvi and Robbins,1978,Karmakar et al.,1999)。
【0142】
最初に、1匹のHOZマウスに体重1kgあたり10mgの塩化カドミウムをi.p.で与えた。1匹のコントロール動物にはビヒクル溶液、等張の生理食塩水、i.p.を与え、未処理の動物を第二のコントロールとして用いた。この動物を投薬の24時間後に殺傷し、肝臓、腎臓および脳をH&E染色およびlacZ組織学のために収集した。
【0143】
引き続き、さらなる実験を行なって、多数のHOZマウスを用いて、これらの知見を拡大した。この実験のために、雄性および雌性の両方のHOZマウスを用いて、用量範囲2〜8mg/kgでの投与後8時間および24時間の塩化カドミウムの効果を試験した。選択された用量は、これらの用量が受容できない毒性を誘導することなくマウスの肝臓でHO−1誘導を生じるという、前の実験に、そして文献報告に基づいた(Aleksunes et al.,2005,Kenyon et al.,2005,Malstrom et al.,2004)。
【0144】
HOZマウスの肝臓および腎臓の切片を調製して、標準的な手順(H&E)に従って染色した。(a,b)未処理のコントロール;(c,d)生理食塩水処理;(e,f)塩化カドミウム処理(10mg/kg、i.p.生理食塩水に含有される)。図5の全ての画像は、H&E染色切片の画像である:(a、c、およびe)は肝臓の画像;b、dおよびfは、腎臓の画像(もとの倍率×100)。H&E染色された切片の評価によって、未処理の動物およびビヒクル処理したコントロールの動物では顕著な肝臓の異常は示されなかったが、塩化カドミウム処理した動物由来の肝臓の外見は、肝細胞空胞化および赤血球の沈着に関連する壊死の領域として表れる急性の毒性を示した(図6、a、cおよびe)。腎臓の組織学的評価によって、塩化カドミウム処理されたマウス腎臓における偶発的な壊死性の近位尿細管(PCT)の存在が明らかになったが、未処理または生理食塩水処理したコントロールの腎臓では顕著な異常は観察されなかった(図6、b、dおよびf)。
【0145】
HOZマウス肝臓の切片を調製して、上記のように染色した。(a,b)未処理のコントロール;(c,d)生理食塩水処理;(e,f)塩化カドミウム処理(10mg/kg、i.p.生理食塩水に含有される)。a、cおよびeの画像に示される切片は、凍結法1に従って凍結され、そして凍結法2に従って染色され(もとの倍率×200)、そしてb、dおよびfに示されたものは、ホール・マウント法(もとの倍率×200)によって調製され、そして染色された。未処理およびビヒクルで処理されたコントロールの動物の肝臓は、LacZ染色を欠いた(図7、a、b、cおよびd)。対照的に、LacZの発現を示す極度に青い染色が、投与の24時間後の塩化カドミウム処理マウスの肝臓で観察された(図7、eおよびf)。染色は、肝臓の小葉の中心静脈の周囲で最も強度であると思われた。
【0146】
図8に関して、この応答は、種々の用量の塩化カドミウムの投与後24時間のHOZマウス肝臓におけるHOZ導入遺伝子発現を示す。各々の性別のHOZマウスに、示されたように体重1kgあたり0、2、4または8mgという動物1匹あたりの総用量が得られるように算出した濃度で塩化カドミウムを含む等張性の生理食塩水の腹腔内注射(体重1kgあたり10ml)を与えた。24時間後、動物を殺傷して、肝臓組織の切片をLacZについて染色した。低用量の塩化カドミウムの効果を試験した場合、HOZ遺伝子発現は、8mg/kgの塩化カドミウムの24時間後に各々の性別の動物由来の肝臓において明白に出現した。雄性の動物では、低用量の塩化カドミウムの後にいくつかのHOZ発現がみられたが、雌性の動物では明白でなかった(図8)。
【0147】
図9を参照すれば、種々の用量の塩化カドミウムの投与8時間後のHOZマウス肝臓でのHOZ導入遺伝子発現の応答が示されている。各々の性別のHOZマウスに、示されたように体重1kgあたり0、2、4または8mgという動物1匹あたりの総用量が得られるように算出した濃度で塩化カドミウムを含む等張性の生理食塩水の腹腔内注射(体重1kgあたり10ml)を与えた。8時間後、動物を殺傷して、肝臓組織の切片をLacZについて染色した。低用量を与えられた動物では低レベルの発現を伴う8mg/kgの塩化カドミウムのわずか8時間後の雌性マウス由来の肝臓において、高レベルのHOZ遺伝子発現がまた明らかであった。雌性の動物由来の肝臓では、8時間ではHOZ発現の一貫した証拠はなかったが、4mg/kgの塩化カドミウムを投与された動物では弱いLacZ染色が観察された(図9)。
【0148】
LacZ染色を腎臓で評価した場合、点状の青い染色をみることができた(図10)。HOZマウス腎臓の切片を調製して、上記のように染色した。(a,b)未処理のコントロール;(c,d)生理食塩水処理;(e,f)塩化カドミウム処理(10mg/kg、i.p.生理食塩水に含有される)。切片は、凍結法1に従って凍結して、そして凍結法2に従って染色した(b、eおよびh:もとの倍率×10;c、fおよびi:もとの倍率×200)未処理および生理食塩水で処理されたコントロールの動物では、わずか2〜3の近位尿細管(PCT)が染色された(図10、a、b、c、およびd)だけであるが、塩化カドミウム処理したマウスでは、染色されたPCTの頻度はかなり高かった(図10、eおよびf)。このパターンは、引き続く実験において確認され、ここでは8mg/kgの塩化カドミウムが、投与の8時間後の腎臓でHOZ遺伝子の検出可能な発現を生じた。
【0149】
これらの結果は、塩化カドミウムに応答する腎臓におけるHOZ導入遺伝子の誘導を示す。
【0150】
塩化カドミウム処理の有無において、HOZマウスの脳ではLacZ発現の証拠はなかった。
【0151】
Malstrom et alのデータでは、Ho1−lucトランスジェニックマウス研究によって、塩化カドミウムに応答するそれらのルシフェラーゼシグナルは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルと相関して「中程度(moderately)」に過ぎない。対照的に、本発明者らの結果では、ALT上昇が証明される前に低用量の塩化カドミウムでHOZ導入遺伝子発現が示される。従って、HOZ導入遺伝子発現は、単に毒性と相関するのではなく毒性の予測因子である。この証拠によって、本発明のシステムは、正確であるだけでなく、先行技術の方法よりも鋭敏であることが示唆される。
【0152】
[実施例16;内因性HO−1の発現]
内因性HO−1発現に対する塩化カドミウムの効果を、HOZマウス由来の肝臓および腎臓の組織におけるHO−1のmRNAのレベルのRT−PCRアッセイによって決定した。図11は、10mg/kgの塩化カドミウムの投与の24時間後のHOZマウス肝臓におけるHO−1のmRNAレベルを示す。このバーは、生理食塩水を投与されたマウスおよび未処理のマウスのいずれかと比較して、24時間前に10mg/kgの塩化カドミウムを投与されたマウスの脳、腎臓および肝臓の組織におけるRT−PCRによってアッセイされたHO−1 mRNAの相対的濃度を示す。
【0153】
10mg/kgの塩化カドミウムを投与された動物では、24時間後の腎臓および肝臓におけるHO−1 mRNAのレベルは、コントロールに比較して極めて大きく上昇した(図11)。肝臓では、塩化カドミウムの用量増大とHO−1 mRNAの増大との間の明確な用量応答関係は、8時間で両方の性で明らかであった。これは、24時間まではほとんど存在しなかったが、HO−1のmRNAレベルは、最高用量の塩化カドミウムを与えられた動物の肝臓では依然としてわずかに上昇していた(図12)。図12を参照すれば、種々の用量の塩化カドミウムの投与の8時間および24時間後のHOZマウスの肝臓におけるHO−1のmRNAレベルが示される。このバーは、体重1kgあたり0〜8mg/kgに及ぶ塩化カドミウムの投与後のHOZマウス肝臓における、RT−PCRによってアッセイされたHO−1のmRNAの相対的な濃度を示す。このパネルは、塩化カドミウム注射後の8時間または24時間の雄性および雌性のマウスでみられた効果を比較する。
【0154】
[実施例17;亜ヒ酸ナトリウムの効果]
(メタ)亜ヒ酸ナトリウムによるHO−1の誘導に対する前の報告では、i.p.投与後8時間でHO−1活性がピークになったことが示された。従って、本発明者らは、投与後8時間および24時間後のHOZ導入遺伝子発現に対する亜ヒ酸ナトリウム投与の効果を検査した。雌性のHOZマウスには、等張性の生理食塩水中で体重あたり13mg/kgの亜ヒ酸ナトリウムを、i.p.で8時間後または24時間後のいずれかで投与して、肝臓組織を収集して、LacZ発現について染色した。これらの結果によって、両方の時点でHOZ導入遺伝子の発現が示された(図13)。
【0155】
[実施例18:肝毒性および腎毒性のマーカー]
2つの血漿酵素マーカーALTおよびASTを、塩化カドミウムまたは亜ヒ酸ナトリウムで処理したHOZマウスにおける肝毒性のマーカーとして用いた。10mg/kgの塩化カドミウムで処理したHOZマウスについてのこの分析の結果は、表1に、そして2〜8mg/kgの塩化カドミウムまたは13mg/kgの亜ヒ酸ナトリウムで処理したHOZマウスについての分析の結果は、表2および3に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
雌性HOZマウスは、塩化カドミウム8mg/kgに対する顕著でかつ急激な応答を示した。血漿ALTにおける増大は、8時間後170倍、そして24時間後275倍であったが、ASTについての対応する増大は、8時間後237倍、そして24時間後97倍であった。用量応答は急勾配であった:塩化カドミウムの4mg/kgの用量に対する応答における血漿ALTの増大は、8時間後2.4倍でしかなく、8時間後にはALTにおける2倍を超える増大はないが、血漿ASTにおける増大はいずれの時点でも観察されなかった。塩化カドミウムに対する雄性HOZマウスの応答は、緩徐であって、より弱く、ここでは、8mg/kgでの処理の24時間後、ALTが7.9倍に増大、そしてASTは3.8倍に増大しており、ただしそれ以外に2倍を超える増大はなかった。HOZマウスは、亜ヒ酸ナトリウムに対して肝毒性の応答を示さなかった。
【0160】
表4に示されるように血中尿素窒素(BUN)レベルを測定することによって腎毒性を評価した。8mg/kgの塩化カドミウムに対する応答では、BUNによって測定した場合、雌性マウスは軽度の腎毒性を示した。BUNの増大は、8時間後に6倍、そして24時間後に44倍であった。このマーカーを用いて測定した場合、雄性のマウスでは腎毒性は観察されなかった。
【0161】
【表4】
【0162】
引用文献
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】パート(a)が、マウスp21遺伝子の4つの領域を増幅するために用いられるPCRプライマーオリゴヌクレオチド対およびそのプロモーターの配列を示し、パート(b)が、完全なレポーター構築物を作成するためのレポーター配列との組み合わせのために適切なプロモーター配列、転写開始配列および非コードエキソンを含む5006塩基対のDNA構築物のこれらの4つの増幅されたPCR産物の再構成形態を示す。
【図2】pX3W構築物を示す。
【図3】pXWhCG.RAB構築物を示す。
【図4】アクリルアミド処理したWAZ44マウスの脳におけるLacZの発現を示す。
【図5】WAZ44マウス脳におけるLacZの発現を示す。
【図6】塩化カドミウムでの処理後のHOZマウスの肝臓および腎臓の組織病理学を示す。
【図7】塩化カドミウム処理の有無によるHOZマウスの肝臓の組織学を示す。
【図8】投与の24時間後の肝臓におけるHOZ導入遺伝子発現に対する塩化カドミウムの効果を示す。
【図9】投与8時間後の肝臓におけるHOZ導入遺伝子発現に対する塩化カドミウムの効果を示す。
【図10】塩化カドミウム処理の有無によるHOZマウスの腎臓の組織学を示す。
【図11】未処置、ビヒクルコントロールおよび塩化カドミウム処理したHOZマウスでのHO−1 mRNAの誘導を示す。
【図12】種々の用量の塩化カドミウム投与の8時間および24時間後のHOZマウスの肝臓におけるHO−1のmRNAレベルを示す。
【図13】亜ヒ酸ナトリウムがマウスの肝臓においてHOZ導入遺伝子発現を誘導することを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、レポーター遺伝子構築物、この構築物を含むトランスフェクトされた細胞株およびこの構築物を含むトランスジェニック非ヒト動物モデルであって、レポーター遺伝子構築物は、細胞環境における外部変化または内部変化に、そして詳細にはストレス状態に応答してその発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域由来の核酸配列を組み込み、プロモーターは、選択された核酸配列であって、それらの転写物および/または翻訳産物がアッセイされ得る容易さを基準として、この選択された核酸配列に作動可能に連結されるものに関する。レポーター遺伝子構築物は、それによって、生化学的ストレスまたは毒性状態の特徴である細胞内状態を検出し得るシステムを提供する。詳細には本発明は、レポーター遺伝子構築物であって、例えば、限定ではないが、サイクリン依存性キナーゼインヒビター1(p21)遺伝子をその構築物についてのプロモーター領域として含むレポーター遺伝子構築物を提供する。
【背景技術】
【0002】
薬物開発の現代の方法、たとえば、化学ライブラリーのハイスループットスクリーニングは、潜在的な治療効果を有する多数の化学物質を同定する。しかしそれらの化合物の多くが代謝性または毒性学的な特徴を有し、それによってそれらの化合物は臨床使用に不適切となるので、有用な薬物をいつも作成するのは、これらの化合物のある区分に過ぎない。市場に対して潜在的な新規な治療薬であるために必要な投資のレベルを考慮すれば、あらゆる有害な(adverse)毒性学的特性を保有する化合物を、重要な開発事業が行われる前に早期の段階で同定すべきであることが極めて望ましい。
【0003】
有害な毒性学的な特徴について多数の化合物を確実にスクリーニングする事に伴う大きい問題は、現在利用可能な方法が、多数の化合物のスクリーニングには適切でないか、治療薬として所与の化合物の適切性を確実に予測するために毒性の特定の機構に対して集中し過ぎているということである。従って、実験動物におけるインビボの病理学的研究では、潜在的な毒性の極めて確実な指標を得ることができるが、必要な時間および動物数に関する費用によって、このような研究は、多数の化合物をスクリーニングするためには不経済となる。インビボの病理学的研究の代替は、公知の生化学的な機構を検出するインビトロ方法を使用することである。これらは、確実にハイスループットのスクリーニングの適用に適しているが、種々の理由のためにインビトロの毒性を予測する能力は限定されている。これらとしては、(i)細胞培養系に呈示され得るのはインビボ組織のある選択肢のみである;(ii)インビボでみられる間接的な毒性の機構は、器官間の相互作用の影響が培養物に存在しないという理由で、複製されない;(iii)初代培養物における細胞株または細胞の増殖/静止状態がインビボにおけるそれらの対応物とはしばしば異なり、その結果それらの応答が異なる;(iv)細胞株のクローン選択は、用いられる特定の細胞株に決定的に依存する結果を生じる、という事実が挙げられる。
【0004】
ハイスループットスクリーニングに対する適用のために経済的である方式で毒性の全身的指標をモニターし得るシステムは、既存の方法を上回る極めて大きい改善を示す。
【0005】
細胞のストレス機構は、細胞、近接する細胞、組織または器官全体の正常な機能に対する脅威を現実的にまたは潜在的に保有する、細胞環境における外的または内的な変化に対して応答する、細胞、細胞の群または組織タイプにおいてその発現が改変される任意の遺伝子または遺伝子のセットの応答としてみなしてもよい。細胞環境における、そしてその遺伝子の発現が結果として転写的に改変され得る、その遺伝子における変化の例としては、以下が挙げられる。
【0006】
1.細胞におけるDNAの恒常性状態の乱れ。これらの乱れとしては、核酸または前駆体ヌクレオチドの化学的変化、DNA合成の阻害、およびDNA複製の阻害またはDNAに対する損傷を挙げることができる。その発現がこのタイプの乱れに応答して変更され得る遺伝子としては、c-myc(Hoffman et al Oncogene 21 3414-3421)、p21/WAF-1(El-Diery Curr.Top.Microbiol.Immunol.227 121-137(1998);El-Diery Cell Death Differ.8 1066-1075(2001);Dotto Biochim.Biophys.Acta 1471 43-56(2000))、MDM2(Alarcon-Vargas & Ronai Carcinogenesis 23 541-547(2002);Deb & Front Bioscience 7 235-243(2002))、Gadd45(Sheikh et al Biochem.Pharmacol.59 43-45(2000))、FasL(Wajant Science 296 1635-1636(2002))、GAHSP40(Hamajima et al J.Cell.Biol.84 401-407(2002))、TRAIL-R2/DR5(Wu et al Adv.Exp.Med.Biol.465 143-151(2000);El-Diery Cell Death Differ.8 1066-1075(2001)),BTG2/PC3(Tirone et al J.Cell.Physiol.187 155-165(2001))が挙げられる。
【0007】
2.細胞の酸化的状態における変化。このような変化は、例えば、フリーラジカルの蓄積または低酸素状態によってもたらされ得る。このタイプの変化に応答して発現が変化され得る遺伝子としては、MnSODおよび/またはCuZnSOD(Halliwell Free Radio.Res.31 261-272(1999);Gutteridge & Halliwell Ann.NY Acad.Sci.899 136-147(2000))、IDB(Ghosh & Karin Cell 109 Suppl..,S81-96(2002))、ATF4(Hai & Hartman Gene 273 1-11(2001))、キサンチンオキシダーゼ(Pristos Chem.Biol.Interact.129 195-208(2000))、COX2(Hinz & Brune J.Pharmacol.Exp.Ther.300 376-375(2002))、INOS(Alderton et al Biochem.J.357 593-615(2001))、Ets-2(Bartel et al Oncogene 19 6443-6454(2000))、FasL/CD95L(Wajant Science 296 1635-1636(2002))、DGCS(Lu Curr.Top.Cell.Regul.36 95-116(2000);Soltaninassab et al J.Cell.Physiol.182 163-170(2000))、ORP150(Ozawa et al Cancer Res.61 4206-4213(2001);Ozawa et al J.Biol.Chem.274 6397-6404(1999))が挙げられる。
【0008】
3.肝毒性ストレスを生じる変化。肝毒性ストレスに応答して発現が変化され得る遺伝子としては、Lrg-21(Drysdale et al Mol.Immunol.33 989-998(1996)),SOCS-2および/またはSOCS-3(Tollet-Egnell et al Endocrinol.140 3693-3704(1999)、PAI-1(Fink et al Cell.Physiol.Biochem.11 105-114(2001))、GBP28/アディポネクチン(Yoda-Murakami et al Biochem.Biophys.Res.Commun.285 372-377(2001))、D-1酸糖タンパク質(Komori et al Biochem Pharmacol.62 1391-1397(2001))、メタロチオネインI(Palmiter et al Mol.Cell.Biol.13 5266-5275(1993))、メタロチオネインII(Schlager & Hart App.Toxicol.20 395-405(2000))、ATF3(Hai & Hartman Gene 273 1-11(2001))、IGFbp-3(Popovici et al J.Clin.Endocrinol.Metab.86 2653-2639(2001))、VDGF(Ido et al Cancer Res.61 3016-3021(2001))およびHIFi pTacchini et al Biochem.Pharmacol.63 139-148(2002)を挙げることができる。
【0009】
4.細胞をアポトーシスへ誘引し得る刺激。発現がアポトーシス促進性のストレスによって改変され得る遺伝子の例は、Gadd 34(Hollander et al J.Biol.Chem.272 13731-13737(1997))、GAHSP40(Hamajima et al J.Cell.Biol.84 401-407(2002))、TRAIL-R2/DR5(Wu et al Adv.Exp.Med.Biol.465 143-151(2000);El-Diery Cell Death Differ.8 1066-1075(2001))、c-fos(Teng Int.Rev.Cytol.197 137-202(2000))、CHOP/Gadd153(Talukder et al Oncogene 21 4280-4300(2002))、APAF-1(Cecconi & Gruss Cell.Mol.Life Sci 5 1688-1698(2001))、Gadd45(Sheikh et al Biochem.Pharmacol.59 43-45(2000(),BTG2/PC3(Tirone J.Cell.Physiol.187 155-165(2001))、Peg3/Pwl(Relaix et al Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 97 2105-2110(2000))、Siah 1a(Maeda et al FEBS Lett.512 223-226(2002))、S29リボソームタンパク質(Khanna et al Biochem.Biophys.Res.Commun.277 476-486(2000))、FasL/CD95L(Wajant Science 296 1635-1636(2002))、組織トランスグルタミナーゼ(Chen & Mehta Int.J.Cell.Biol.31 817-836(1999))、GRP78(Rao et al FEBS Lett.514 122-128(2002))、Nur77/NGFI-B(Winoto Int.Arch.Allergy Immunol.105 344-346(1994))、シクロスポリンD(Andreeva et al Int.J.Exp.Pathol.80 305-315(1999))、p73(Yang et al Trends Genet 18 90-95(2002))およびBak(Lutz Biochem.Soc.Trans.28 51-56(2000))である。
【0010】
5.化合物、薬物または他の生体異物因子の投与。このような条件下で発現が変化され得る遺伝子の例は、2A、2B、2C、2D、2E、2S、3A、4Aおよび4Bの遺伝子ファミリー由来の生体異物代謝チトクロームp450酵素である(Smith et al Xenobiotica 28 1129-1165(1998);Honkaski & Negishi J.Biochem.Mol.Toxicol.12 3-9(1998);Raucy et al J.Pharmacol.Exp.Ther.302 475-482(2002);Quattrochi & Guzelian Drug Metab.Dispos.29 615-622(2001))。
【0011】
6.天然の、モデル化された、または誘導された疾患状態。これらの疾患は、限定はしないが、肥満、免疫不全、神経変性障害、癌、心血管、炎症の疾患、遺伝的疾患または代謝性障害から構成されるリストから選択され得る。
【0012】
p21遺伝子(Cdkn−1a、WAF1、CIP1、SDI1およびMDA−6としても種々に公知)は、細胞の機能として、サイクリン依存性キナーゼの阻害および引き続く細胞周期停止および/またはアポトーシスを含むタンパク質をコードする(el-Deiry,W.S et al.,Cell 75:817-825,1993;el-Deiry,W.S.et al.,Cancer Res.54:1169-1174,1994;Gartel,A.L.およびTyner,A.L,Mol.Cancer Therapeutics 1:639-649,2002)。p21遺伝子の転写は、p53腫瘍サプレッサータンパク質および他の転写因子、例えば、Sp1、AP2、BRCA1、ビタミンD3レセプター、レチノイン酸レセプター、C/EBP、およびSTATによる調節を含む細胞ストレスと関連する種々の機構による制御に供される。p21遺伝子プロモーター領域の分析によって、それを通じてそれらのプロモーターの効果が媒介される5キロベースの転写開始部位内にある多数のcis−作用配列エレメントが同定される(Gartel,A.L.およびTyner,A.L,Exp.Cell Res.246:280-289,1999)。
【0013】
p21遺伝子のプロモーター領域由来の配列を組み込んでいるレポーター遺伝子系は、特定の配列エレメントが、特定の細胞タイプでp21発現を調節するのにおいて、特定の転写因子の作用を媒介する能力を実証するために実験的に用いられている(el-Deiry,W.S.et al.,Cancer Res.55:2910-2919,1995;Biggs,J.R.et al.,J.Biol.Chem.271:901-906,1996;Chin,Y.E.et al.,Science 272:719-722;Matsumura,I.et al.,Mol.Cell Biol.17:2933-2943,1997;Zeng,Y.X.et al.,Nat.Genet.15:78-82,1997,Bellido,T.et al.,J.Biol.Chem.273:21137-21144,1998;Moustakas,AおよびKardassis,D.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:6733-6738,1998;Biggs,J.R.and Kraft,A.S.,J.Biol.Chem.274:36987-36994,1999;Mitchell,K.O.およびel-Deiry,W.S.,Cell Growth Differ.10:223-230,1999;Yang,W.L.et al.,Mol.Cell Biol.Res.Commun.1:125-131,1999;Zhang,W.et al.,J.Biol.Chem.275:18391-18398,2000;Gartel,A.L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:4510-4515,2001;Gartel,A.L.et al.,Oncol.Res.13:405-408,2003)。しかし、p21遺伝子の転写応答の全体的範囲の読み出しを提供するように設計されたレポーター遺伝子システム、またはインビボにおいて投与された化合物の効果をスクリーニングするためのその使用という説明は以前には存在していない。
【0014】
ルシフェラーゼ基質の注入後のルシフェラーゼ発現を誘導する毒性のマーカーとして化合物をインビボスクリーニングするためにHo1−luc(ヘムオキシゲナーゼ−ルシフェラーゼ)トランスジェニックマウスを用いることは先行技術から公知である(Malstrom et al 2004)。しかし、Malstrom et alは、ドキソルビシンによって誘導されるルシフェラーゼシグナルが、腸、腎臓、胃、脾臓、生殖腺およびある程度は肝臓由来であったこと、そして「心臓では処置に関連する知見は観察されなかった(no treatment-related findings were observed in heart)」ことを報告する。これは、心臓がドキソルビシン毒性の周知の部位であるという共通の一般的知識とはかなり対照的である(Sun et al.2001およびその引用文献を参照のこと)。この観察によって、Malstrom et alによって用いられる導入遺伝子は、特定の重要な環境において潜在的な毒性を検出できず、そのため偽陰性を生じ得るということが示唆される。
【0015】
従って、内因性遺伝子の方式に類似の方式で調節され得、そして遺伝子活性化に関与する細胞ストレス応答の検出の改善をもたらすレポーターシステムが求められる。本発明者らは、例えば、p21遺伝子または別のストレス応答性遺伝子を組み込んでいるレポーターシステムが、広範な種々の生理学的に関連する細胞ストレスを検出する正確かつより鋭敏な方法を提供し、従って、多くの種類の毒性の早期の検出の手段の必要性を満たすということを本発明において発見している。
【発明の開示】
【0016】
本発明においては、本発明者らは、ストレス応答性プロモーター配列、例えば限定はしないが、p21遺伝子プロモーターの特性に基づいたシステムを開発した。本発明者らは、驚くべきことに、適切な読み出し遺伝子の発現を駆動する、例えば、p21プロモーター由来のプロモーターエレメントの適切なアレイを含む、レポーター遺伝子の構築物が、広範な種々の毒性機構の迅速なインビトロまたはインビボのアッセイを提供するために、トランスフェクトされた細胞株またはトランスジェニック動物で用いられ得ることを見出した。本発明のレポーター導入遺伝子は、毒性の徴候である種々の細胞ストレス機構に関連する生化学的事象が丸ごとの動物で便利に試験され得るシステムを提供する。
【0017】
本発明の第一の態様によれば、(i)細胞環境における有害な外部または内部(細胞外または細胞内)の変化に応答してその発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域の核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得、かつ分泌可能タンパク質および/または組織学的に検出され得る因子の形態での読み出し得る少なくとも1つの核酸配列(「レポーター配列」)とを含む、核酸構築物が提供される。
【0018】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」および「含む(contain)」という言葉、ならびにその言葉のバリエーション、例えば、「含む(comprising)」および「含む(comprises)」とは、「限定はしないが〜を含む(including but not limited to)」を意味し、そして他の部分、追加物、成分、整数または工程を排除する意図ではない(そして排除しない)。
【0019】
本明細書の詳細な説明および特許請求の範囲を通じて、単数形は、その文脈がその他を要するものでない限り、複数を包含する。詳細には、不定冠詞を用いる場合、本明細書は、その文脈が他を要するのでない限り、複数および単数を同様に意図するものであることが理解されるべきである。
【0020】
本発明の特定の態様、実施形態または実施例と合わせて記載される特色、整数、特徴、化合物、化学的成分または基は、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態または実施例に対して、それと不適合でない限り、適応可能であることが理解されるべきである。
【0021】
レポーター配列は、本発明の核酸構築物が組み込まれているシステムの読み出しをもたらし、その結果所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用する核酸配列は、分泌可能なタンパク質、タンパク質複合体またはフラグメント、その酵素、酵素産物または結合体、一次、二次もしくはさらなる代謝物および/または塩、このレポーター遺伝子産物の発現に対する直接または二次的な効果によって放出される非生物学的産物、ホルモンまたは抗体の形態であってもよく、または読み出しは、細胞から分泌可能でないが、組織学的に検出可能である因子、例えば、限定はしないがLacZ産物を生成してもよいことが理解される。本発明の核酸構築物は、2つ以上のレポーター配列を含んでもよく、例えば、これは、分泌可能な読み出し産物を発現する2つ以上のレポーター配列を含んでもよいし、または核酸は、組織学的に検出可能である因子を発現するレポーター配列および発現された分泌可能な読み出し産物を含んでもよい。レポーター配列の数およびその変動は、本出願の範囲を限定するものではない。
【0022】
好ましくは、この遺伝子のプロモーター配列は、以下のストレス状態:
(i)細胞におけるDNAの恒常性状態における乱れ
(ii)細胞の酸化ストレスに応答する変化
(iii)肝毒性ストレスを生じる変化
(iv)細胞アポトーシスを誘発する刺激
(v)化合物、治療剤または他の生体異物因子の投与;または
(vi)天然、誘導された、またはモデル化された疾患状態、
のうちの任意の1つ以上に対する応答において、変化された発現を有する。
【0023】
ルシフェラーゼレポーターシステムは、読み出しシステムとしては所望されないことが理解される。なぜならルシフェラーゼ検出には、動物にルシフェリン基質を与えることが必要であるからである。従って、ルシフェラーゼ発現は注射されたルシフェリンに対してアクセス可能な器官および組織においてのみ、そしてルシフェリンが体から分泌される前にのみ、検出可能である。さらに、ルシフェリンは投与された試験化合物に対する毒性または他の応答に影響し得るという可能性がある。
【0024】
さらに、ルシフェラーゼレポーターシステムを用いれば、研究中の動物は、麻酔されるか、拘束されなければならない。麻酔自体のストレスおよび/または影響は、投与された試験化合物に対する応答に影響し得る。英国では、生きている動物に対する実験手順に対する法的な制限によって、繰り返しの全身麻酔、または2時間を超えて食物および水を与えないことは正当化することが極めて困難になり、そしてルシフェラーゼレポーター読み出しシステムの適用を厳しく限定する。従って、本発明では、レポーター配列は、上述の例から、偽の読み取りを生じ得る最小限のバックグラウンドストレス効果を視野に入れて選択される。
【0025】
好ましくは、本発明の構築物のプロモーター配列は、以下の遺伝子であって、p21、メタロチオネイン1A、PUMA、Gclc、Cox2、Ki67、Stk6、Hsp、Hmox−1、Ho−1、PIG3およびSOD2の群を含む遺伝子の任意の1つ以上から選択される。
【0026】
本発明の1実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物p21遺伝子の転写開始部位のすぐ5’側の領域由来の最大5000塩基対のDNAを含む、核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0027】
プロモーター配列は、好ましくは、ヒト、ラットまたはマウスの遺伝子由来の、任意の哺乳動物p21遺伝子(Cdkn1a、WAF−1、CIP−1、SDI1、およびMDA−6としても公知)の転写開始部位の5’の5000塩基対内由来の配列を含んでもよい。このプロモーター配列は、全部で166〜5000のヌクレオチド塩基対を含んでもよく、このヌクレオチド塩基対は、1つ以上の個々に選択された配列長を含み、その各々が以下のリストにおける配列間隔の1つ以上を含み、この数は、転写開始部位の5’側の位置のヌクレオチド塩基対の包括的範囲を指す:0〜5;15〜20;64〜69;77〜82;93〜143;157〜162;688〜696;765〜779;1194〜1212;1256〜1270;1920〜1928;2553〜2561;4228〜4236。
【0028】
転写開始配列は、機能的なプロモーターエレメントまたは転写因子結合部位、例えば、PhCMV*−1プロモーターに会合された場合、真核生物ポリメラーゼによる転写を指向する、p21遺伝子または最小真核生物コンセンサスプロモーターの第一の非コードエキソンの一部または全てを含むことによって提供され得る(Furth et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 91:9302-9306,1994)。
【0029】
このレポーター配列は、転写物またはコードされた翻訳産物ポリペプチドのいずれかのアッセイを通じて遺伝子発現の都合のよい読み出しを提供するように選択される。好ましくはレポーター配列の転写は、以下のうち任意の1つ以上によって便利に検出され得る。
(1)例えば、
(a)電気泳動分離およびブロットハイブリダイゼーション
(b)逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);
(c)インサイチュハイブリダイゼーション;
によるレポーター配列のRNA転写物のアッセイ。当業者は、アッセイされるべき任意の転写物のアッセイに適切なハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーオリゴヌクレオチド配列を選択し得る。
(2)例えば、以下によるレポーター配列のポリペプチド翻訳産物のアッセイ:
(a)イムノアッセイであって、任意の特定のペプチド翻訳産物、例えば、リポカリン(WO04011676A2)またはSEAP(GB0322196A0)またはヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ鎖のアッセイに適切な抗体を、選択されたさらなるエピトープタグペプチド配列の有無とともに生成および選択して、例えば、
(i)ラジオイムノアッセイ;
(ii)酵素結合免疫吸着アッセイ;
(iii)電気泳動分離およびイムノブロッティング;
(iv)免疫組織化学;
により、適切な既存の抗体によって検出可能なポリペプチド翻訳産物を作成する方法を当業者が公知であるイムノアッセイ;
(b)ポリペプチドに特異的な酵素活性、例えば、クロラムフェニコールのアセチル化によって測定される細菌のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ活性(Gorman Mol.Cell.Biol.2:1044-1051,1982)またはβガラクトシダーゼ(lacZ)活性がX−Galを代謝する能力によるその活性のアッセイ;
(c)ポリペプチド、例えば、Aequoria victoria由来の緑色蛍光タンパク質の蛍光特性または発光特性;
(d)例えば、
(i)mRNAの安定性増大または代謝回転の減少のアッセイによる;
(ii)例えば、ポリユビキチン化の除去の結果として、別のタンパク質の安定性増大または代謝回転の減少のアッセイによる;
(iii)低分子代謝物の蓄積の増大
による、化学反応または生化学的反応におけるポリペプチドによる阻害。
【0030】
ある場合には、構築物が同じプロモーター配列の結果として多数の異なる読み取りを提供し得るように、本発明のレポーター遺伝子構築物が同じプロモーター配列を含み、レポーター配列が異なってもよいことが理解される。
【0031】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物メタロチオネイン1A遺伝子の26kbの上流セグメントを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0032】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物PUMA遺伝子の最大16kbの上流遺伝子配列および5kbのセグメントの下流配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物Gclc遺伝子の最大16kbの上流遺伝子配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0034】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物cox2遺伝子のコード配列由来の転写開始部位から上流の最大3.5kbの配列およびさらなる3kbのセグメントを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0035】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のKi67遺伝子の転写開始の最大30kbの上流の遺伝子配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0036】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のStk6遺伝子のE4TF1モチーフ(−87〜−78)およびSp−1部位(−129〜−121)および必要に応じてタンデムリプレッサーエレメントCDE/CHR(−53〜−49/−39〜−35)を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0037】
本発明のさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のHsp70遺伝子の5’隣接領域の最大5kbを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0038】
本発明のなおさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物のHo1遺伝子レポーター遺伝子座の最大16.5kbの上流プロモーターおよび8kbの3’配列を含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0039】
本発明のなおさらなる実施形態では、この核酸構築物は、(i)哺乳動物PIG3遺伝子のp53認識配列リピートを含む核酸配列(「プロモーター配列」)と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列(「転写開始配列」)と、(iii)所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列(「レポーター配列」)とを含む。
【0040】
本発明の第二の態様によれば、部位特異的なリコンビナーゼによって認識される核酸配列に隣接するヌクレオチド配列(「アイソレーター配列」)によって、または本発明の第一の態様下で規定されるような、転写開始配列およびレポーター配列に関して逆転されるような挿入によって、本発明の第一の態様下で規定されるような、転写開始配列およびレポーター配列から作動可能に隔てられた、本発明の第一の態様下で規定されるような、プロモーター配列を含む核酸構築物が提供される。このリコンビナーゼ認識部位は、このアイソレーター配列が欠失されるか、または逆転されたプロモーター配列の方向がリコンビナーゼの存在下で逆転されるような方向に配置される。この構築物はまた、部位特異的なリコンビナーゼのコード配列をコードする遺伝子に作動可能に連結された組織特異的なプロモーターを含む核酸配列を含む。
【0041】
この態様によって、特定の組織でのみレポーター配列発現を検出することが可能になる。組織特異的なプロモーターを用いて適切なリコンビナーゼ発現を制御することによって、この誘導性遺伝子構築物は、プロモーターが活性である組織でのみ可視になる。例えば、肝臓特異的なプロモーターからリコンビナーゼ活性を駆動することによって、肝臓のみが再配列されたレポーター構築物を含み、従って、レポーター配列発現が生じ得る唯一の組織である。
【0042】
従って、活性なレポーター配列発現単位を引き起こす組み換え事象はリコンビナーゼが発現される組織でのみ生じ得る。この方法では、レポーター配列は特定の組織タイプでのみ発現され、リコンビナーゼの発現は、このプロモーターに連結された誘導性プロモーターからなる機能的な転写単位を引き起こす。このような機能を果たすことが公知の部位特異的なリコンビナーゼ系としては、バクテリオファージのP1 cre−loxおよび細菌のFLIP系が挙げられる。従って、部位特異的なリコンビナーゼ配列は、バクテリオファージP1の2つのloxP部位であってもよい。
【0043】
培養された哺乳動物細胞において正確に規定された欠失を生じさせるための部位特異的なリコンビナーゼ系の使用は実証されている。Gu et al(Cell 73:1155-1164,1993)は、マウスのES細胞における免疫グロブリンのスイッチ領域における欠失が、単一のloxP部位を離れる、Cre部位特異的なリコンビナーゼの一過性の発現によってバクテリオファージP1 loxP部位の2つのコピーの間でどのように生成されるかを記載している。同様に酵母のFLPリコンビナーゼは、マウスの赤白血病細胞におけるリコンビナーゼ標的部位によって規定される選択マーカーを正確に欠失させるために用いられている(Fiering et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:8469-8473,1993)。Cre lox系は、以下に実証されているが、他の部位特異的なリコンビナーゼ系を用いてもよい。
【0044】
Cre loxシステムにおいて用いた構築物は通常、以下の3つの機能的エレメントを有する。
1.発現カセット;
2.遍在性に発現されたプロモーター(例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(Soriano et al.,Cell 64:693-702,1991))の制御下で発現された負の選択マーカー(例えば、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK)遺伝子);および
3.DNAフラグメントのいずれかの末端に位置するバクテリオファージP1部位特異的な組み換え部位loxP(Baubonis et al.,Nuc.Acids.Res.21:2025-2029,1993)の2つのコピー。
【0045】
リポフェクチンによって細胞に導入され得るCreリコンビナーゼタンパク質によって媒介される2つのloxP部位の間の部位特異的な組み換えの方法によって、この構築物を含む宿主細胞または細胞株からこの構築物は排除され得る(Baubonis et al.,Nuc.Acids Res.21:2025-2029,1993)。2つのloxP部位の間のDNAを欠失している細胞を、適切な薬物(TKの場合にはガンシクロビル)を含む培地中での増殖によって、TK遺伝子(または他の負の選択マーカー)の損失について選択する。
【0046】
本発明の第三の態様によれば、本発明の前の態様のいずれか1つに従う核酸構築物でトランスフェクトされた宿主細胞が提供される。細胞タイプは、好ましくはヒトまたは非ヒト哺乳動物起源であるが、また他の動物、植物、酵母または細菌起源であってもよい。
【0047】
本発明の第四の態様によれば、非ヒト動物の細胞が、本発明の前の態様のいずれか1つに従う核酸構築物によってコードされるタンパク質を発現する、トランスジェニック非ヒト動物が提供される。このトランスジェニック動物は好ましくはマウスであるが、別の哺乳動物種、例えば、別のげっ歯類、例えば、ラットもしくはモルモット、または別の種、例えば、ウサギ、またはイヌもしくはネコ、または有蹄動物種、例えば、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヤギ、ウシ、または非哺乳動物種、例えば、鳥類(例えば、家禽、例えば、ニワトリもしくはシチメンチョウ)であってもよい。
【0048】
前に記載されたような核酸構築物の使用を含む、トランスフェクトされた宿主細胞またはトランスジェニック非ヒト動物の調製に関する本発明の実施形態では、細胞または非ヒト動物を、さらなる形質転換に供してもよく、ここでこの形質転換は、さらなる遺伝子(単数または複数)またはタンパク質コード核酸の配列(単数または複数)の導入である。この形質転換は、細胞または細胞株の一過性のもしくは安定なトランスフェクション、細胞もしくは細胞株におけるエピソーム発現系であっても、または胚性幹(ES)細胞における組み換え事象を通じた、前核性のマイクロインジェクションによる、もしくは核移入クローニング手順におけるドナー核としてその核が用いられるべき細胞のトランスフェクションによる、トランスジェニック非ヒト動物の調製であってもよい。
【0049】
前に記載されたような核酸構築物の使用を含む、トランスフェクトされた宿主細胞またはトランスジェニック非ヒト動物の調製に関する本発明の実施形態では、細胞または非ヒト動物とは、選択性の欠失または1つ以上の内因性遺伝子の発現の阻害を生じさせる、以前の遺伝的改変を受けているものであってもよい。この遺伝子欠失または阻害は、ゲノム由来の選択された配列の永続的な欠失、選択された配列の条件的な欠失によって、例えば、欠失されるべき配列に隣接するloxP配列の挿入、およびcreレコンビナーゼの構成的もしくは条件的な発現(米国特許第4959317号)またはRNA転写物での選択的干渉によるこの欠失されるべき配列の引き続く条件的な切除によって、例えば、標的遺伝子に対して相補的な一本鎖で短い二本鎖RNA分子の発現を指向するDNA配列のゲノムへの挿入(米国特許第6573099号)によって、達成され得る。
【0050】
1つ以上の内因性遺伝子の発現の選択的欠失または阻害を生じさせる遺伝的改変が達成されている細胞または非ヒト動物への前に記載されたような核酸構築物の導入は、別の遺伝子の欠失もしくは阻害が以前に達成されている細胞もしくは細胞株の一過性のもしくは安定なトランスフェクションによって、または別の遺伝子の欠失もしくは阻害が前に達成されている細胞もしくは細胞株へのエピソーム発現系の導入によって、または別の遺伝子の欠失もしくは阻害が以前に達成されている動物由来の胚性幹(ES)細胞における組み換え事象を通じた、前核性マイクロインジェクションによるトランスジェニック非ヒト動物の調製によって、または核移入クローニング手順においてドナー核としてその核が用いられるべき、別の遺伝子の欠失または阻害が以前に達成されている動物由来の細胞のトランスフェクションによって、または本発明の第四の態様に記載されている動物と、別の遺伝子の欠失もしくは阻害が以前に達成されている同じ種の別の動物と交配させること、およびこの交配の子孫の引き続くゲノム分析で本発明の核酸構築物を導入された個体および他の選択された遺伝子の欠失もしくは阻害が存在する個体を、例えば、組織サンプル由来のゲノムDNAの単離およびPCR分析によって同定することによって達成され得る。
【0051】
トランスジェニック細胞もしくは細胞株、またはトランスジェニック非ヒト動物を調製する方法であって、この方法は、細胞もしくは細胞株の一過性のもしくは安定なトランスフェクション、細胞もしくは細胞株におけるエピソーム発現系の発現、または前核マイクロインジェクション、ES細胞もしくは他の細胞株における組み換え事象を包含するか、または異なる発生経路に分化され得、その核が核移入のドナーとして用いられる細胞株のトランスフェクションによる;ここでさらなる核酸配列または構築物の発現を用いて、本発明の第一、第二、第三または第四の態様に従って、トランスフェクションまたは形質転換についてスクリーニングする。例としては、細胞の増殖培地に添加された抗生物質に対する耐性を付与する選択マーカーの使用が挙げられる。例えば、G418に対する耐性を付与するネオマイシン耐性マーカー。さらなる例としては、相補的な配列であり、本発明の第一、第二、第三または第四の態様に従う核酸配列とまたはその構成成分とハイブリダイズする核酸配列を用いる検出が挙げられる。例としては、サザンブロット分析、ノーザンブロット分析およびPCRが挙げられる。
【0052】
本発明の第五の態様によれば、インビトロまたはインビボにおいて細胞中の変更された代謝状態の変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための、本発明の第一、第二、第三または第四の態様のいずれか1つに従う核酸構築物の使用が提供される。
【0053】
遺伝子活性化事象は、毒性学的ストレスの誘導、代謝変化、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物感染の結果であってもそうでなくてもよいが疾患の結果であり得る。
【0054】
本発明の第六の態様によれば、インビトロまたはインビボにおける細胞での変更された代謝状態における変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための、本発明の第一の態様下で規定されたような、レポーター配列を含む核酸構築物の使用が提供され、ここではこのレポーター配列の転写および/または翻訳産物は、レポーター配列が発現される細胞と異種である。
【0055】
この遺伝子活性化事象は、毒性学的ストレスの誘導、代謝変化、ウイルス、細菌、真菌または寄生生物感染の結果であってもそうでなくてもよいが疾患の結果であり得る。
【0056】
本発明の第五および第六の態様に従う使用はまた、標的細胞または組織タイプ内の遺伝子発現プロフィールの変化が疾患の結果として変更される、細胞、細胞株または非ヒトトランスジェニック動物における疾患状態の検出または疾患モデルの特徴づけに及ぶ。開示される方法下で検出可能な本発明のこの態様の状況における疾患は、感染性疾患、癌、炎症性疾患、心血管疾患、代謝性疾患、神経学的疾患および遺伝に基づく疾患として規定され得る。
【0057】
本発明のこの態様に従うさらなる使用は、適切な免疫無防備状態のマウス株(異種移植片と呼ばれる)例えば、ヌードマウスにおける第三の態様に従うトランスフェクトされた細胞株の増殖を包含し、本発明の第一または第二の態様に記載されるレポーターの発現における変更は、毒物学的ストレス、代謝性変化、遺伝的基礎を有する疾患またはウイルス、細菌、真菌もしくは寄生生物感染の結果であってもそうでなくてもよい疾患の結果として宿主の変更された代謝状態の測定値として用いられ得る。この使用の範囲はまた、レポーター構築物の発現に対する異種の化合物または薬物の効果をモニタリングするのにおける使用の範囲であり得る。
【0058】
本発明の第五および第六の態様は、インビトロもしくはインビボにおいて遺伝子活性化事象を検出する方法に及ぶ。
【0059】
本発明の第五の態様による実施形態では、この方法は、本発明の第一または第二の態様のうちのいずれか1つに従う核酸構築物で安定にトランスフェクトされた宿主細胞、または本発明の第四の態様に従うトランスジェニック非ヒト動物をアッセイする工程を含み、ここでこの細胞または動物は、レポーター配列であってその翻訳産物がエピトープタグペプチド配列の方法によって同定されるレポーター配列の発現によってシグナル伝達される遺伝子活性化事象に供される。
【0060】
本発明の第六の態様に従う実施形態では、この方法は、レポーター配列を含む核酸構築物で安定にトランスフェクトされた宿主細胞をアッセイする工程を含み、このレポーター配列の転写または翻訳産物は、それが発現される細胞に対して、またはこのような構築物を細胞が発現するトランスジェニック非ヒト動物に対して異種であり、この細胞または動物は、レポーター配列であってその翻訳産物がエピトープタグペプチド配列の方法によって同定されるレポーター配列の発現によってシグナル伝達される遺伝子活性化事象に供される。
【0061】
本発明のなおさらなる態様によれば、上記のような核酸構築物でトランスフェクトされているか、またはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含む、細胞または細胞株または非ヒト動物における毒性学的に誘導されたストレスをスクリーニングするかまたはモニタリングする方法が提供される。
【0062】
好ましくは、細胞または細胞株または非ヒト動物は、種々のストレス状態が単独の細胞または細胞株または非ヒト動物において同時にモニタリングまたはスクリーニングできるように、本発明に従う2つ以上の遺伝子構築物を含み得る。この方法では多数の異なる読み出しを得ることができるということが理解される。
【0063】
あるいは、本発明の方法では、本発明に従う異なる遺伝子構築物(単数または複数)を各々が含む、細胞、細胞株または非ヒト動物のあるセットまたは複数を、そのセットまたは群において種々のストレス状態が同時にスクリーニングまたはモニタリングされ得るように、同時に用いてもよい。この方法では多数の異なる読み出しを得ることができることが理解される。
【0064】
毒物学的ストレスは、DNA損傷、酸化ストレス、細胞性タンパク質の翻訳後化学改変、細胞性核酸の化学改変、アポトーシス、細胞周期停止、過形成、免疫学的変化、ホルモンレベルの変化もしくはホルモンの化学的改変の結果による影響、または細胞損傷をもたらし得る他の要因として規定され得る。
【0065】
従って、上記のような核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含む、ウイルス、細菌、真菌および寄生生物感染をスクリーニングして特徴付けるための方法も提供される。
【0066】
従って、癌、炎症性疾患、心臓血管疾患、代謝性疾患、神経学的疾患および遺伝的基礎を有する疾患をスクリーニングする方法であって、上記のような核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれらを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含む方法がさらに提供される。
【0067】
細胞が一時的にトランスフェクトされ得るこれらの状況では、上記のような核酸構築物は、エピソームとしておよび一時的に維持される。あるいは、細胞は安定にトランスフェクトされ、それによって、この核酸構築物は、トランスフェクトされた細胞の染色体DNAに永続的にかつ安定に取り込まれる。
【0068】
また、この状況では、トランスジェニック動物とは、上記のような核酸構築物が、好ましくはそのゲノムDNA中に、その細胞の全てまたはいくつかにおいて取り込まれている非ヒトトランスジェニック動物として規定される。
【0069】
レポーター配列であってその翻訳産物が本発明の第五の態様に関してエピトープタグペプチド配列の方法で同定されるレポーター配列の発現は、細胞培養培地中のこのレポーター配列翻訳産物またはその精製されるかもしくは部分的に精製された画分のレベルを測定することによってアッセイされ得る。
【0070】
当業者は、その翻訳産物が体液中に分泌されることが公知であるレポーター配列を選択する方法を承知している。例えば、レポーター配列は、細胞から分泌される、リポカリンまたはヒト絨毛性ゴナドトロピンのβ鎖、または分泌型アルカリホスファターゼのいずれかをコードし、それらが発現されて尿中に排出されるように選択され得る。従って、本発明の第四の態様に従うレポーター配列の発現は、回収可能な体液中に分泌されるこのレポーター配列の翻訳産物のレベルを測定することによってアッセイされ得る。本発明の好ましい実施形態では、体液は、尿であるが、また乳汁、唾液、涙液、精液、血液および脳脊髄液を含むリスト、またはその精製されるかもしくは部分的に精製された画分から選択されてもよい。
【0071】
培養細胞から組織培養培地への、またはトランスジェニック非ヒト動物体液からのレポーター配列翻訳産物の検出および定量は、当業者に公知の多数の方法を用いて達成され得る。
【0072】
1.免疫学的方法
(i)このアッセイは、ELISAであってもよく、これは抗体または抗血清が、レポーター配列の翻訳産物を認識する単独の抗体のまたは抗体の混合物を含むこと、そして捕獲抗体として用いて、このアッセイを行うために適切なマイクロタイタープレートまたは他の媒体をコーティングすることによる。レポーター遺伝子産物(分析物)を含有する培養培地または体液を、マイクロタイタープレートに添加して、分析物の結合をさせる。酵素、通常は西洋ワサビペルオキシダーゼに対して結合体化されている同じ抗体または抗血清の添加を二次抗体として用いる。適切な基質、好ましくは酵素による変換後に着色生成物を生じるものの添加を行って、どの程度の二次抗体結合体が結合しているかに比例してこの分析物を定量する。
【0073】
(ii)競合的ELISA。代替の形態では、組織培養培地または体液(分析物)のサンプルは、このアッセイを行うために適切な支持体に結合された発現されたレポーター配列翻訳産物を含む。別の反応では、レポーター遺伝子産物を特異的に認識する抗体の限定的な標準量を同じの別のアリコートに添加して、結合させる。これを支持体に結合された分析物に添加して、残りの遊離の抗体を結合させる。第二に、例えば、第一の抗体のFc領域に対する酵素結合体化抗体を、結合させて、比色読み出しを用いて、色の変化の程度がサンプル中の分析物のレベルに対して反比例することによって、分析物を定量し得る。
【0074】
(iii)ウエスタンブロット分析
トランスフェクトされた細胞ホモジネートを、ホモジナイゼーション緩衝液(140mM NaCl、50mM Tris−HCl pH7.5、1mM EDTA、1%Triton−100)中で、30分間氷上での細胞のインキュベーションによって調製した。不溶性物質を除くための短時間の遠心分離後、透明な上清をタンパク質含量についてアッセイした。40μgの細胞抽出物に対して等価な容積および等価な容積の細胞培養物を、SDS−PAGEに供して、半乾性ブロッティング装置(Bio-Rad,Richmond,CA)を用いてニトロセルロース(Schleicher and Schuell,Dassel,Germany)メンブレン上にブロットした。このメンブレンをブロッキング緩衝液(5%NFDM(w/v)含有PBS)中で1時間ブロックし、次いで、ブロッキング緩衝液中で希釈したmyc mAb(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)とともに2時間、連続的に撹拌しながらインキュベートした。PBST(PBSに加えて0.05% Tween−20)中での一連の洗浄後、このメンブレンを、ブロッキング緩衝液中で希釈したHRPに結合体化された抗マウス抗体中で、1時間、撹拌しながらインキュベートして、PBST中での別の一連の洗浄後にHRP活性を、ECLキット(Pierce,Rockford,IL)を用いて発色させて、オートラジオグラフのフィルム(Kodak)上に焼き付けた。
【0075】
(iv)蛍光分極。レポーター配列翻訳産物を特異的に認識する抗体は、フルオレセインと結合体化されて、生成された分析物と混合される。この方法は、存在する抗体−抗原複合体の量を直接測定することによって分析物を定量する。この方法はまた、任意のタンパク質間相互作用を測定するように適合され得る。
【0076】
2.標識された基質の放出。レポーター配列の翻訳産物の酵素活性に起因する基質の変換の検出。基質変換の性質は、以下の事象のカテゴリーのうちの1つ以上におさまっても収まらなくてもよい:タンパク質分解、リン酸化、アセチル化または硫酸化、メチル化。
【0077】
3.複数の基質の検出。多数のレポーター配列翻訳産物を用いる場合、このような事象の検出のために適切な方法としては限定する必要はないが以下を挙げることができる。
(i)質量分析
(ii)核磁気共鳴(NMR)
【0078】
本発明の好ましい実施形態では、レポーター遺伝子活性化合事象を検出する方法が提供され、この方法は以下の工程を含む。
1.本発明の第一、第二、第三または第四の態様に従う核酸構築物を用いて、細胞をトランスフェクトさせるかまたは受精したマウス卵の前核をマイクロインジェクションする工程。必要に応じてマイクロインジェクションされた卵またはトランスフェクトされたマウスES細胞株を用いる;
2.このトランスフェクトされた細胞、細胞株またはトランスジェニック非ヒト動物を、刺激であって、遺伝子発現系の変更を生じさせる代謝状態における変化を生じても生じなくてもよい刺激に曝す工程。
3.適切なアッセイを用いて、例えば、ELISA、RIA、質量分析、NMR、遠隔操作方法などの検出方法を用いて、レポーター配列翻訳産物の発現レベルを決定する、工程。
【0079】
工程(1)では、レポーター配列転写産物および/または翻訳産物は、レポーター配列が発現される細胞中で既に発現されている産物に対して異種であってもよい。いずれの場合も、当業者は、レポーター配列の転写産物および/または翻訳産物が、このレポーター配列が発現される細胞で既に発現された産物に対して異種であるように、タグ化配列を用いてこのレポーター配列を操作する方法を理解する。
【0080】
本発明に従う方法および使用によって、改変された遺伝子発現が有意な役割を果たす領域を検討するのにおいて大きな進歩が得られる。このようなレポーター遺伝子は、p21遺伝子の活性を検出するために細胞およびトランスジェニック動物において使用される。特定の適用としては、限定はしないが以下が挙げられる。
1.化合物の潜在的な毒性効果を評価するための迅速かつ確固たるインビボのスクリーニングシステムを提供すること。
2.毒性の機構に関する情報を提供する。このような情報は、選択プロセスから化合物を排除するために用いられるか、またはある化合物に対する可能性のある改変を示唆し得る。
3.化合物の併用の効果に対する情報を提供する。
4.種々の時間間隔で尿中におけるレポーター(単数または複数)のレベルを測定することによって、経時的なレポーター遺伝子発現における変動のモニタリングを可能にする。
5.病原性の感染に関連する遺伝子発現における変化の評価。
6.神経学的、心臓血管的および代謝的な疾患に関連する遺伝子発現における変化の評価。
7.癌に関連する遺伝子発現における変化の評価。
8.例えば、機構が規定されて理解されている毒素の作用に対してレポーター発現プロフィールを適合させることによって、薬物標的選択のバリデーションを可能にする情報を提供する。
9.毒性、代謝性または変性の表現型を逆転させる目的での治療ストラテジーとして化合物を評価するための使用。
10.環境変化および/または行動性の変化から生じる遺伝子発現における変化の評価。
【0081】
本発明の第二の態様および引き続く態様の好ましい特徴は、必要な変更を加えた第一の態様に関する。
【0082】
本発明は、以下の実施例を参照してここに記載されるが、これは例示の目的でのみ示されるものであって、本発明に関して限定すると解釈されるべきではない。本出願における参照は、多数の図面に対しても行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
[材料および方法]
[p21レポーター構築物の生成]
2つのレポーター構築物が生成されている。両方とも4.5kbのフラグメントを含み、これがマウスp21遺伝子プロモーターの連続セグメントおよび上流の転写制御配列を包含する。一方ではp21プロモーターセグメントは、LacZレポーター遺伝子のコード配列から上流であり、そして他方では、これは免疫学的アッセイによる検出を容易にするように設計された固有のエピトープでタグ化されたヒト絨毛性ゴナドトロピンのコード配列から上流である。これらの構築物は、それぞれ、pX3W(図2)およびpXWhCG.RAB(図3)と呼ばれる。これらのマップは図2および3に示される。
【0084】
[WAZトランスジェニックマウスの作成]
p21−LacZおよび/またはp21−hCG構築物を受精したマウスの卵にマイクロインジェクションして、これを偽妊娠した代理母に移植する。尾の生検組織溶解物のPCR分析によってLacZレポーター遺伝子の存在について仔をスクリーニングする。PCRスクリーニングのために用いたプライマーの配列は以下である。
フォワードプライマー 5’-GAC ACC AGA CCA ACT GGT AAT-3’(配列番号1)
リバースプライマー 5’-GCA TCG AGC GTA ATA AGC-3’(配列番号2)。
【0085】
サンプルは以下のとおりサイクリングする:94℃で5.00分、35サイクルの(94℃で0.30分、61℃で0.30分、72℃で2.00分)72℃で7.00分、4℃でα。
【0086】
この方法によって同定されたトランスジェニック個体を、トランスジェニック動物と交配して、導入遺伝子の生殖細胞系伝達を決定し、そして分析用のトランスジェニックマウス株を確立する。全てのマウスは、病原体なしの環境で飼育する。
【0087】
[株の選択]
記載されたように作成されかつ同定された創始動物由来のトランスジェニック子孫の最初のスクリーニングは、野性型p21遺伝子の活性を誘導することが公知の適切な化合物のIP注射によって行った;例えば、トポイソメラーゼIIインヒビターエトポシドは、DNA損傷を生じさせることが公知である。DMSOに溶解して、40mg/kg(LD50)で腹腔内注射する場合、LacZレポーター遺伝子発現を検出するために染色による組織サンプル切片の引き続く試験を行って、個々のトランスジェニック株のレポーター遺伝子発現の特徴を検査してもよい。
【0088】
[標的された形質転換]
マウスX染色体上の、ヒポキサンチン・ホスホリボシルトランスフェラーゼ(Hprt)遺伝子座での導入遺伝子の標的化挿入は、Nucleis S.A.,60 Avenue Rockefeller,69008 Lyon,Franceによって行った。Hprt遺伝子はハウスキーピング遺伝子であり、そのようなものとして全ての組織において遍在性に発現される。この遺伝子座は、ほとんどの組織において内因性のエンハンサー活性を示さないことが示されており、そしてプロモーター依存性の導入遺伝子発現を支持する見事に許容的なクロマチン環境を提供する(Farhadl et al.,2003;Heaney et al.,2004)。標的化挿入は、BPES胚性幹細胞を用いて達成され、ここではマウスHprt遺伝子座は、Hprt遺伝子機能を修復するように設計されたHprt標的化ベクターpDESTと組み合わせて部分的に欠失されており、その中に導入遺伝子がクローニングされている。この導入遺伝子は、λファージに基づく部位特異的な組み換えの方法によってpDEST標的化ベクター(Gateway(登録商標)クローニング,Invitrogen)に導入される。この系を利用するためには最初に、特定の組み換え部位(attL)を含む低コピー数のプラスミド、いわゆるEntryベクターを作成する必要がある。これを用いて、最初に構築して、次いでその後に組み換えによってpDEST目的(destination)ベクターにこの導入遺伝子をシャトルすることができる。このベクターは、低コピー数プラスミドpACYC177へ、スペーサーフラグメントによって隔てられた、特定の組み換え配列attL1およびattL2を導入して、プラスミドpCL15attを作成することによって生成される。このベクターは、レポーター構築物の引き続くクローニングのために用いられる。
【0089】
[動物の飼育]
マウスを固い床のポリプロピレンのケージ中でおがくずの上で飼育して、使用の前に5日間順応させた。温度は19〜23℃の範囲内で、そして相対湿度は40〜70%の範囲内で維持した。1時間あたり14〜15回の空気交換を行い、そして12時間の暗野を伴って12時間の明野の周期とさせた。動物にはRM1食餌(Special Diet Services Ltd.,Stepfield,Witham,Essex,UKより供給)を各々の試験の期間中、自由にとらせた。飲用水は局所の供給からとらせ、そしてボトルで与え、自由にとらせた。動物は、群に無作為に割り当てて、各々の実験の開始前に耳に番号をつけて秤量した。
【0090】
[用量調製および投与]
各々の試験化合物を適切なビヒクル溶液に溶解して、10ml/kgの用量容積で腹腔内注射(i.p.)によって投与した。できるだけ、そのまま(未処理)のコントロールおよびビヒクル処理したコントロールの両方を用いた。マウスにおいて毒性が劣ることが特徴付けられている試験品目を用いる場合、用量設定実験を主な実験の前に行なった。試験品目を単独のマウスに投与して、これを6〜8時間および24時間後に有害な効果についてモニターした。この単一の用量範囲でマウスが処置に耐容した場合、残りのマウスにはプロトコールに従ってこの試験品目を投与した。
【0091】
[終結手順]
最終の血液サンプルを、心臓穿刺によって、血漿の調製のためのチリウム/ヘパリンコーティングしたチューブに採取した。組織は、各々のプロトコールに規定されるとおり、以下のように慣用的に解体した。
【0092】
組織の2つの切片(約2mmの厚み)を、以下に記載の方法に従ってLacZ発現の組織化学的分析のために取り出した。
【0093】
2つのさらなる切片(約2mmの厚み)を、10%の中性の緩衝化ホルマリン(10%NBF)に一晩入れ、次いで、処理して、切り出して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色した。
【0094】
残りの組織を凍結バイアルに入れて、RT−PCRおよび可能な生化学的分析のために液体窒素中で急速凍結させた。
【0095】
マウス脳を、できるだけ完全に歯状回を除去するように切開した。腎臓の場合には、腎臓の1つを縦断面で、その他は横断面で切断した。
【0096】
[血漿サンプルの分析]
血漿調製に適切なチューブに取り出した後、静脈血サンプルをローラー上で10分間混合し、次いで氷上で冷却した。2,000rpmで、8〜10℃で10分間の遠心分離によって赤血球を除去した。この上清(血漿)を第二のチューブに移して、分析が必要になるまで−70℃で保管した。
【0097】
血漿サンプルは、製造業者の指示に従ってRocheオートアナライザー(Cobas Integra 400)で適切な分析物について分析した。測定された慣用的なマーカーとしては以下が挙げられた:(肝臓の障害について)血漿アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアルカリホスファターゼ(ALP)および(腎臓の障害については)血漿クレアチニンおよび血中尿素窒素(BUN)。
【0098】
[mRNAの逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)アッセイ]
内因性遺伝子の発現の分析は、ABI Prism 7000システムを用いてRT−PCRによって行った。RT−PCR分析に関して、凍結組織サンプルは、1mlのTRI試薬(Sigma)中でPolytron PT-mr2100ホモジナイザーを用いてホモジナイズした。各々のサンプルの総RNAは、製造業者の指示に従って単離して、RNAペレットは、75%エタノール下で−70℃で保管した。各々のRNAペレットをRNAase/DNAaseを含まないdH2O中に再懸濁して、Genequant RNA/DNAカルキュレータ(Amersham)を用いて定量した。第一鎖のcDNA合成は、製造業者のプロトコールに従って2μgの総RNAおよびProtoscript First Strand cDNA Synthesis Kit(New England Biolabs)を用いて各々のサンプルについて行った。cDNA合成後にRNAを分解するためのさらなる工程を行った。各々のサンプルをRNAase/DNAaseを含まないdH2Oを用いて50μlまで希釈して−20℃で保管した。
【0099】
p21またはヘモオキシゲナーゼ−1(HO−1)発現における変動を測定するためには、内部コントロールを含むことが必要であった。βアクチンcDNAの増幅によって、サンプル間のRNA含量に対する変動を制御する標準が得られる。従って、2つの別の反応(標的遺伝子およびβアクチンcDNA増幅)から構成される最終の反応が単独のチューブ中で同時に行われた。用いられるPCR条件は、95℃で10分、続いて95℃で15秒間の変性の40サイクルおよび60℃で1分間のアニーリング/伸長であった。p21およびHO−1増幅反応のためのプライマーおよびプローブは、ABIから入手した(Assay-On-Demandキット)。これらの方法は、ABI Prism 7000システムで用いた標準的な条件について前にバリデートされている。
【0100】
[LacZ導入遺伝子発現の検出]
・凍結方法1
組織をPBSで洗浄して、0.1M MgCl2および5mMのEDTAを含有する、PBSに含有される0.2%グルタルアルデヒド(pH7.3)中でシェーカー上で4℃で4時間、前固定した。固定後、この組織を20%のスクロース溶液に移して、4℃で一晩脱水した。翌日、それらをコルクの円板上でcryo−M−bed培地中に包埋して、液体窒素中にゆっくりと下ろし、次いで切片が必要になるまで−80℃に移した。
【0101】
クリオスタットサンプルおよびチャンバの温度は−30℃に設定した。切片化するサンプルを、切り出す1時間前にクリオスタットに入れて、適切な温度と平衡にさせた。凍結切片(10μm)を切断して、アミノプロピルトリエトキシシラン(APES)コーティングしたスライド上に置いた。
【0102】
染色前に、切片を0.2%のグルタルアルデヒド(上記)中において室温で10分間インキュベートし、次いで2mMのMgCl2、0.01%のデオキシコール酸ナトリウムおよび0.02%のNonidet−P40を含有するPBS中で2回(各5分)洗浄した。次いで、切片を1mg/mlのX−gal、5mMのフェロシアン化カリウムおよび5mMのフェリシアン化カリウムを含有する同じ洗浄溶液で、37℃で一晩さらに洗浄し、次いでPBS中で5分間2回洗浄して、風乾させて、水性の封入剤(Hydromount)中に装填した。スライドを評価して写真に撮った。
【0103】
・凍結方法2
この方法は、Campbell et al.,1996およびCampbell et al.,2005に記載されたとおりで、ただしわずかな改変をともなった。
【0104】
組織を切り出して、直ちに、PBS中に0.1%グルタルアルデヒドおよび2mMのMgCl2を含有する冷却した4%パラホルムアルデヒド中に入れて、上記の溶液中で穏やかに振盪しながら2〜8℃で3時間固定した。固定した組織を、2mMのMgCl2を含有する冷却したPBSを用いて2〜8℃で3×5分洗浄して、2mMのMgCl2および30%(w/v)スクロースを含有するPBS中で2〜8℃で一晩脱水した。翌日、脱水した組織をイソペンタン/ドライアイス浴を用いてOCT包埋培地中に包埋した。包埋した組織は凍結切片にされ得るまで−70℃で保管した。
【0105】
凍結切片を、2mMのMgCl2を含有するPBS中で2〜8℃で5分間3回、次いで界面活性剤洗浄液(2mMのMgCl2、0.01%のNonidet P40および0.1%のデオキシコール酸ナトリウムを含有するPBS)中で2〜8℃で3×30分、洗浄した。次いで、それらを2mMのMgCl2、0.02% Nonidet P40、0.1%のデオキシコール酸ナトリウム、5mMのフェロシアン化カリウム、5mMのフェリシアン化カリウムおよび0.1%のX−galを含有するPBS中において37℃で一晩染色した。翌日、このスライドを2mMのMgCl2を含有するPBS中において5分間3回、続いて、PBS中において室温で5分で3回洗浄した。それらを100%のエタノール(5分)で平衡化して、Eosinを用いて室温で1分間対比染色した。脱水および装着の後、それらを評価して、写真を撮った。
【0106】
・ホール・マウント・メソッド
新鮮な4%パラホルムアルデヒド中に事前に固定された組織標本を、「Whole Mount X-Gal Histochemistry of Transgenic Animal Tissues」(http://www.rodentia.com/wmc/docs/lacZ bible.htmlを参照のこと、以下にまとめている)の手順を用いて、直ちに染色し、そして固定後の組織を70%(v/v)のエタノールに移した。
【0107】
4%パラホルムアルデヒド中での1時間の固定後に、リンス緩衝液(100mMリン酸ナトリウム(pH7.3)、2mM MgCl2、0.01%デオキシコール酸ナトリウム、0.02%のNP−40)を用いて、組織を室温で各々30分間3回リンスした。次いで、それらをリンス緩衝液に加えて5mMのフェリシアン化カリウム、5mMのフェロシアン化カリウム、1mg/mlのX−gal(−20℃で保管したジメチルホルムアミド(DMF)中の25mg/mlストックから作成)中で、4〜48時間(代表的には、一晩;約90%の潜在的な染色が最初の24時間に生じると考えられる)染色した。引き続き、この組織を10%ホルマリン中で4℃で一晩、後固定して、処理して、切片にして、ニュートラルレッド(Neutral Red)で対比染色して核を明らかにした。
【実施例】
【0108】
[実施例1:p21レポーター遺伝子構築物]
p21のプロモーター領域の4つの切片(el-Deiry,W.S.et al.,Cancer Res.55:2910-2919,1995;Ensembl Mus-musculus transcript information ENSMUST00000023829)を、図1(a)に示されるオリゴヌクレオチドプライマー対を用いHerculase Taq(Stratagene)を用いてマウスゲノムDNA(CB/4)からポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって個々に増幅させた。マウスp21プロモーター領域由来の配列に相補的なプライマー配列切片は下線で示す。各々のPCR産物は、HindIIIおよびEcoRIを用いて別々に消化して、pBluescriptにライゲーションさせた。配列バリデーションの後、この4つのフラグメントを固有の内部ApaLI、BamHIおよびAscI制限部位、ならびに操作されたEcoRIおよびXhoI隣接部位を用いて単一の構築物に連結して、p21の最初の87塩基対の非コードエキソンおよびそれから上流の配列を含む5006塩基対の構築物を作成した(図1b)。次いで、この完全なp21プロモーター構築物をEcoRIおよびXhoIを用いて切り出して、Kozak配列、LacZコード配列およびSV40ポリアデニル化シグナル配列の上流のベクターpXen3中に連結して、ベクターpX3Wを得た(図2)。トランスジェニックのWAZマウスは、前核性のC57BL/6xCBA胚へのpX3Wのマイクロインジェクションによって作成した。
【0109】
[実施例2:メタロチオネイン1Aレポーター遺伝子構築物]
mt1とも呼ばれる、強力な金属結合および酸化還元能力を有する小さいシステインリッチタンパク質の1つのファミリー、Mt1は、亜鉛の恒常性、ならびに重金属毒性および酸化的損傷に対する細胞応答において重要な役割を果たす。転写因子結合部位の複雑なアレイは、近位プロモーターにおいて−700bpから転写開始部位へ同定されている。これらとしては、5つのMRE(MTM−1結合)、Sp1、ARE、USF1、AP−1(さらに、ヒトにおけるAP−2、AP−4)が挙げられる。近位プロモーター領域(−153〜−43)に集合されるこの5つのMREは、重金属に対する、そして酸化ストレスに対する応答における転写誘導の媒介に関与する(Stuart et al.,1984 Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Dec;81(23):7318-22,Dalton et al.,1996 J Biol Chem;271(42):26233-41)。−100で重複するARE/USF認識配列は、基本的な発現を維持するのに必須であって、また酸化ストレスに応答するMt1発現の活性化においても役割を果たす。MTF−1およびUSF−1は、発達中の胚における亜鉛に対する応答においてMt−1発現の本質的な調節で協同することが報告されている(Andrews et al.,2001 EMBO J 20:1114-112)。AREは、H2O2および酸化還元サイクルの生体異物に対する応答においてGST−Yaサブユニットおよびキニンリダクターゼ遺伝子の誘導を媒介する(Jaiswal,1994 Biochem Pharmacol.3;48(3):439-44.)。マウス遺伝子について既に構築されたレポーター(LacZおよびタグ化hCG)は、まだ特徴付けられていない上流の転写調節エレメントとして包含するように設計された、遺伝子の26kbの上流セグメントを組み込む。他では、mt1およびmt2についてマウスノックアウトモデルが作成されて研究されている:両方の対立遺伝子の破壊についてホモ接合性のマウスは正常に発生したが、野性型よりもCdでの肝中毒作用に対して顕著に過敏であった(Masters et al.,1994 Proc.Nat.Acad.Sci.91:584-588)。Beattie et al.(1998,Proc.Nat.Acad.Sci.95:358-363,1998)はまた、mt1/mt2二重ヌルマウスにおける毒性ストレス、高い食物取り込みおよび結果としての肥満に対する感受性の増大を報告した。なかでも、mt1の転写の向上を誘発する刺激は、重金属(例えば、カドミウム)(Li et al.,1998 Nucl.Acids.Res.26:5182-5189)、コバルト、亜鉛、H2O2、ヒドロキシラジカル、ヘム類似体、虚血、四塩化炭素、スズ・プロトポルフィリン、糖質コルチコイド、ホルボールエステル、パラコート、ジエチルおよびピロリジン・ジカルバメート、LPS、X線照射および炎症性ストレスシグナルである。
【0110】
[実施例3:PUMAレポーター遺伝子構築物]
アポトーシスのp53上方制御調節因子はまた、BBC3とも呼ばれる。PUMAの外因性の発現は、それが発現される細胞中で過度に急激なアポトーシスを生じることが示されている(Yu.J et al.,2001)。その転写は少なくとも一部は、近位のプロモーター内の同族のプロモーター結合部位に対するp53の結合によって上昇され(p53結合部位は転写開始の230bp上流のBS1、および翻訳開始の144bp上流のBS2)、ヒトプロモーターにおいて特徴付けられる主要なp53応答エレメントである。ヒトプロモーターにおける対応物は、転写開始からそれぞれ、−410bpおよび−375bpに位置する。しかし、PUMAのプロモーター領域は十分に特徴付けられていないので、レポーターは、最大16kbの上流遺伝子配列および5kbの下流配列を組み込み、その結果まだ特徴付けられていない転写制御エレメントが含まれる。
【0111】
従って、PUMA遺伝子レポーターは、細胞においてアポトーシスを誘発する毒性の侵襲を検出するために有用であると予想される。公知の誘導因子としては、DNA損傷剤、例えば、5FU、アドリアマイシン、エトポシド(Yu.J et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.100:1931-1936,2003,Yu.J et al.,Molec.Cell 7:673-682,2001、Nakano,K Molec.Cell 7:683-694,2001)およびp53の細胞レベルを増大することが公知の因子、例えば、4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)(Jia-wen Han et al.,2001 PNAS 98(20)11318-11323)が挙げられる。
【0112】
[実施例4;Gclcレポーター遺伝子構築物]
グルタミン酸−システインリガーゼ触媒性サブユニット(GCLC)は、調節性ユニット(GCLM)と一緒になって、フリーラジカルの蓄積を生じさせるある範囲の毒性の侵襲に対する細胞の防御に必須の役割を果たす、グルタチオン(GSH)生合成の最初の工程を触媒する。Gclc転写物は、ある範囲の化学的/生体異物因子、例えば、クロロホルム、塩化カドミウム、アセトアルデヒド(Yang H.et al.,2001 Biochem.J.(2001)357:447-455)、ピロリジンジチオカルバメート(PDTC)によって、HepG2およびHEK293細胞において(Erica L.Dahl et al.,2001 Toxicological;Sciences 61,265-272)、イソチオシアン酸フェネチル(PEITC)によって、HepG2およびHEK293細胞において(Erica L.Dahl et al.,2001 Toxicological;Sciences 61,265-272)、そして、β−ナフトフラボン(β−NF)によって、HepG2細胞において(Erica L.Dahl et al.,2001)、そして塩化カドミウムによって上昇されることが公知である。このプロモーターの多数の領域が、gclc遺伝子転写を調節することが公知である;例えば、Yang et al(2001)は、このプロモーターの機能的な分析を行って、−595〜−111、−1108〜−705の間に位置する3つの上流の隣接領域(正の調節を与える)および−705〜−595の間のもの(負の調節を付与する)を記載している。
【0113】
−416〜−316の近位プロモーター内には、NF−κBおよびAP−1認識配列が存在する。ヒトの5’隣接領域の分析によって、これが、抗酸化的応答エレメント(ARE)およびAP−1およびNF−κB結合部位を含むことが示される。マウスグルタミン酸システインリガーゼ触媒性サブユニット(Gclc)遺伝子のノックアウトは、ホモ接合性の場合胚致死性であり、ヘテロ接合性の場合、軽度のグルタチオン欠損のモデルとして提唱されている(Dalton et al.,2000 Biochem Biophys Res Commun.Dec 20;279(2):324-9)。従って、gclcに基づくレポーターは、試験系(細胞またはトランスジェニック動物)が酸化ストレス下に配置されているか否かという信頼性のある指標を提供するということが想定される。レポーター遺伝子のコード領域が、この第二のエキソンにおいて、gclc遺伝子座の天然の第一のコドンの位置に、公知のそして推定の特徴付けされていない転写調節エレメントを提供する16kbの上流配列とともに配置されるように、このレポーターは設計される。
【0114】
[実施例5:Cox2レポーター遺伝子構築物]
プロスタグランジン−エンドペルオキシダーゼシンターゼ2(Ptgs2)とも呼ばれる、マウスのシクロオキシゲナーゼ−2は、アラキドン酸のプロスタグランジンへの変換を触媒することを担う。これは、炎症性シグナル、例えば、IL−6に対する応答で誘導され、そしてアスピリンのような非ステロイド性抗炎症薬物の主な標的である。文献は、cox−2の発現の上昇を生じさせる広範な化合物、例えば、リポポリサッカライド、サイトカイン、分裂促進因子:スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、亜ヒ酸塩、CCl4、4−ヒドロキシ−2−ノネナール、LPS、インターロイキン−1、腫瘍壊死因子α、PAFまたはインターロイキン−1β、ベンゾ[a]ピレン、エタノールおよびアラキドン酸、ホルボール12−ミリステート13−アセテート、ドキソルビシン、Fe−NTA、デオキシコール酸12−O−テトラデカノイルホルボール13−アセテートを報告する。
【0115】
Cox2に基づく発現カセットは可能性としては、炎症性応答を惹起する任意の毒性侵襲についての良好な候補レポーターに相当する。この遺伝子のプロモーター領域は、公知の転写因子結合部位、例えば、NF−kB、(NF−κB−2ただしNF−κB−1ではない)、NF−IL6、ATF/CRE、E−Box、Pea3、SP1、AP−2、C/EBP、STAT3、STAT1、TBP−応答エレメントの複雑なアレイを含む。高度に保存された3’UTRは、mRNA安定性のレベルで媒介された転写後制御に関係する、例えば、ホスファチジル−イノシトール3−キナーゼおよびAgC10は、メッセージの安定に必要なp38MAPKを阻害することによって3’UTRを介してCox−2のmRNAを負に調節する。従ってこのレポーター構築物は、転写開始部位から上流の約3.5kbのセグメト、およびcox2のコード配列から下流のさらなる約3kbのセグメントを組み込む。
【0116】
[実施例6;Ki67レポーター遺伝子構築物]
この名称は、増殖している細胞において高度に発現される極めて大きい核抗原を認識する市販の抗体をいう(Schluter,C et al.,J.Cell Biol(1993)123:513-522)。抗原の発現は細胞周期の早期のG1、S、G2およびM期の間に生じるが、静止期の細胞では検出されない。この抗体は、その機能に関してほとんど知られていない新生物疾患状態における増殖中の細胞を検出するための腫瘍病理学で広範に用いられるが、分裂している細胞集団におけるその遍在によって、細胞分裂での中心的な役割が明らかに示唆される。高レベルのKi67発現と周期中の細胞集団との間の絶対的な相関によって、これは細胞増殖のレポーター遺伝子の基礎となる潜在的に強力なツールにされる。この遺伝子およびその調節は、まだ十分に特徴付けされていないので、レポーター遺伝子設計は、まだ未同定の調節性エレメントとして包含するように設計される遺伝子の大きい上流のセグメント(転写開始の最大30kbの上流)を利用する。
【0117】
[実施例7;Stk6レポーター遺伝子構築物]
セリン/トレオニンキナーゼ6(オーロラ(Aurora)ファミリー・キナーゼ1)、STK6は、種々の分裂事象を制御する。STK6遺伝子の転写物は、細胞周期を通じて変化して、G2/Mの間にピークになる。マウスSTK6のプロモーターは、特徴付けられている。E4TF1モチーフ(−87〜−78)およびSp−1部位(−129〜−121)は、正の調節エレメントとして同定されている(Tanaka M et al.,(2002)JBC Vol.277:10719-10726)。タンデムリプレッサーエレメント、CDE/CHR(−53〜−49/−39〜−35)は、細胞周期調節エレメントとして同定されている。レポーター遺伝子コード配列の上流にこの領域を置くことによって、レポーターカセットは、外部刺激に応答して宿主細胞集団が細胞分裂を受けるようなシグナル伝達を潜在的に可能にする。
【0118】
[実施例8;Hsp70レポーター遺伝子構築物]
ストレスに応答する熱ショック遺伝子(hsp)の誘導は、最初の侵襲に対して防御するように機能し、引き続くストレスに対する耐性の状態を生じさせる。この防御的な役割は、タンパク質の折り畳みにおける積極的な関与、タンパク質の天然の折り畳み状態におけるそれらのタンパク質の維持、および誤って畳まれたタンパク質の分解の修復または促進に起因する。Hsp70は、種々のストレス刺激によって誘導される細胞アポトーシスに関与する。従って、これによって潜在的に、ある範囲のストレス刺激をシグナル伝達し得るレポーターの基礎が提供される。これはUV照射、熱ショック、重金属および病理学的刺激(感染、熱、炎症、悪性)または生理学的刺激(増殖因子、ホルモン刺激組織発達)によって誘導される。マウスHsp70遺伝子の5.0kbの5’隣接領域は、hsp70遺伝子の転写の増大を媒介することによって急性ストレスに応答することが示された調節性モチーフを含む。従って、レポーターは、これに基づいて操作されている;レポーターコード配列は、hsp70遺伝子座の転写開始部位から約5kb上流で開始する配列の制御下に置かれる。
【0119】
[実施例9;Hmox−1レポーター遺伝子構築物]
HOZレポーター遺伝子構築物は、βガラクトシダーゼのコード配列である、LacZに作動可能に連結されたマウスヘモキシゲナーゼ−1(HO−1)遺伝子由来の調節性配列を含む。HO−1は、ヘムの異化における最初の反応を触媒して、ビリベルジンおよび一酸化炭素および鉄を生じさせる。ほとんどの誘導因子によるHO−1遺伝子発現の刺激は、転写のレベルで媒介される。転写は、酸化ストレス、ヘム、重金属、熱ショックおよびUVに応答して誘導される。
【0120】
以前の多数の研究で、マウスHO−1遺伝子由来の最大14kbの上流配列を含んだクローンの誘導が報告されている(Alam,1994;Alam et al.,1994;Alam et al.,1995;Zhang et al.,2001)。
【0121】
いくつかのエンハンサー領域がこれらの研究から同定されている。これらのさらに遠位では、AB1領域は、開始部位から10kb上流に位置し、このことは、少なくとも10kbのプロモーター配列が種々の誘導性因子による正確な誘導に必要であることを示す。さらなるエンハンサー領域SX2は−4kbに位置し、いくつかのSTAT結合部位はほぼ−400〜−600bpに位置する。さらに、あるエンハンサーエレメントが、ヘムおよびカドミウム応答を調節する、ヒト遺伝子のイントロン内で同定されている(Hill-Kapturczak et al.,2003)。
【0122】
本発明者らは、RedET組み換えクローニング(Zhang et al.,2000)を用いて、HO−1−LacZレポーター導入遺伝子を生成した。HO−1遺伝子のエキソン1および2に対して相同な領域を含むようにLacZ−SV40ポリAミニ遺伝子を操作した。このミニ遺伝子カセットはまた、その3’末端に細菌Amp遺伝子を含み、これがクローニングの間に選択マーカーとして用いられた。次いで、このミニ遺伝子を、内因性HO−1エキソン1およびイントロン1配列を置換する、マウスHO−1遺伝子座(クローンRPCI-23 290L07、HGMP Resource Centre)を含むBACクローンに、相同組み換えによって導入した。従って、HO−1プロモーターは、HO−1タンパク質の代わりに、ATG開始コドンからLacZを発現する。LacZ−SV40ポリAミニ遺伝子の正確な位置は、5’−接合領域および3’−接合領域の両方を配列決定することによって確認された。次いで、ほとんどのHO−1遺伝子を16.5kbの上流プロモーターおよび8kbの3’配列と一緒に含むHO−1レポーター遺伝子座を、BACクローンから外してpACYC低コピー数プラスミド骨格へ組み込んだ。
【0123】
この構築物のHEK293細胞への一過性のトランスフェクション、およびヘミンでの誘導によって、誘導されていないコントロールの細胞を上回るLacZ標識指数の11倍の増大が生じた。
【0124】
Malstrom et alのHO−1レポーターは、転写開始部位の上流の15kbのHO−1配列を用いる。本発明のHOZレポーター遺伝子は、転写開始部位の上流16.5kbおよび下流8kbを用いる。従って、本発明のレポーターは、Malstrom et alによって用いられる配列のない調節性DNA配列を含む可能性が高く、従ってその発現は、内因性のHO−1遺伝子の方式と類似の方式で調節される可能性がさらに高く、従ってHO−1遺伝子活性化に関与する細胞ストレス応答のさらによい検出装置である。
【0125】
[実施例10;PIG3レポーター遺伝子構築物]
p53誘導性遺伝子3すなわちPIG3は、転写物であって、その発現がコントロール細胞(p53ヌル)に対してp53発現結腸直腸癌細胞において10倍より大きく上昇された14の転写物のパネルの1つとして、連続的遺伝子発現解析(serial analysis of gene expression)(SAGE)によって最初に同定された(Polyak et al.,1997 Nature Genet.30:315-320,2002)。反応性の酸素種(ROS)は、アポトーシスの強力な誘導因子であり;PIG3は、ROSの代謝においてある役割を有し得るキノンオキシドリダクターゼホモログをコードする。
【0126】
Contente et al.,(2002 Nature Genet.30:315-320)は、PIG3転写物が、Y=CまたはTであるPIG3プロモーター(TGYCC)nのペンタヌクレオチド反復配列に対するp53の結合への直接応答で上方制御されるということを実証した。この配列はPIG3プロモーターの転写活性化に必要かつ十分である。これに基づいて、p53認識配列リピートを含む、近位プロモーターから下流に配置されたレポーター遺伝子配列、およびPIG3遺伝子から上流の配列を含む構築物は可能性として、レポーター遺伝子が存在する細胞または組織におけるp53誘導のレポーターを提供する。
【0127】
[実施例11;SOD2レポーター遺伝子構築物]
マンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD、SOD2)は、H2O2へのスーパーオキシドアニオンの不均化を触媒する金属酵素の多数のメンバーのファミリーである。SOD2遺伝子は、酸化的リン酸化の副産物として生成されたスーパーオキシドに対する防御の第一選択であるミトコンドリア内のフリーラジカルスカベンジング酵素をコードする。これは腫瘍壊死因子(TNF)誘導性遺伝子産物である。これは、細胞内シグナル伝達分子H2O2の生成において重要な役割を果たす。
【0128】
SOD2遺伝子のプロモーター領域は、多数の十分に特徴付けられた転写因子認識配列を含み、これにはSP−1;AP−1;AP−2;NF−κB;STAT3;C/EBP;Egr−1;TNFREが挙げられる。転写因子SP−1およびAP−2は、基本プロモーターの転写活性において反対の役割を有するようである。SP−1は、ヒトMnSODプロモーターからの転写に絶対的に必須である正の役割を果たすが、AP−2は、この目的において負の役割を果たすようである。エンハンサーエレメントは、ヒトMnSOD遺伝子のプロモーター領域でみられる。いくつかの重要なエンハンサーエレメントは、第二のイントロンに位置する。第二のイントロンにおけるNF−κB部位は必須であるが、サイトカインによるMnSODの高レベルの誘導には十分でない。調節性エレメントにおける変異は、いくつかの細胞タイプにおけるMnSODの誘導の欠失をおそらく部分的に担うが、誘導の程度の相違が存在し、これは、DNA合成における欠陥では説明できない。この相違は、細胞における活性化補助因子またはサプレッサータンパク質の有無に起因し、酸化ストレスに対する防御に物理学的な役割を有し得る可能性が高い。
【0129】
ヒトMnSODプロモーターは、TATAボックスおよびCAATボックスの両方を欠くが、いくつかのGCモチーフを有する。近位プロモーター領域(基本プロモーター)は、複数のSp1およびAp−2結合部位を含むこと、そしてSp1はMnSOD遺伝子の構成的発現に必須であることが示されている。Egr−1結合部位は、MnSODの基本プロモーターで同定されている。この基本プロモーターは、ヒト肝細胞癌細胞株HepG2において12−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート(TPA)に応答性である。TPAによるhMnSOD転写の活性化における、これらの結合部位の寄与、ならびに転写因子Egr−1、AP−2、およびSp1の役割は、部位特異的変異分析、ウエスタンブロットおよび転写因子の過剰発現によって検討されている。この結果によって、Sp1は、ベースのそしてTPA活性化hMnSOD転写の両方に正の役割を果たすが、Egr−1の過剰発現は、hMnSODのTPA媒介性活性に対するなんら影響のない基本プロモーターの活性における負の役割を有することが示された。
【0130】
約11.8kbの5’プロモーター領域と18kbの遺伝子に加えて3’領域との間にクローニングされたレポーター遺伝子配列を含むレポーター構築物は潜在的に、レポーター構築物を含む細胞または組織において酸化ストレスのレポーターを提供する。
【0131】
[実施例12;p21−LacZ(WAZ44)レポーターマウスおよびエトポシドの効果]
記載されたように431の受精したマウス卵へのpX3W構築物の注入によって、全部で96の子孫が得られ、そのうち12がトランスジェニックであることがPCR分析によって見出された。これらの創始動物のうち6匹を、トランスジェニックマウス系統を首尾よく樹立するために管理した。これらのうち1つの系統であるWAZ44を、毒性チャレンジ後、極めて低レベルの基礎的なトランスジェニック発現および導入遺伝子誘導を示した予備研究の結果に基づいて、詳細な検討のために選択した。
【0132】
WAZ44マウスにおけるLacZ誘導に対するさらなる評価のための化合物としてエトポシドを選択した。エトポシドは、エピポドフィロトキシンから誘導された一般に用いられる化学療法剤であり、その抗癌剤としての作用方式は、酵素トポイソメラーゼIIの阻害を包含する。エトポシドは、マウスに対して慢性的に投与された場合、遺伝毒性の発癌物質である。その作用形態は、染色体の再配列をもたらす有糸分裂再組み換えの誘導および重要な遺伝子座での異型接合性の損失を包含する(Wijnhoven et al.,2003)。導入遺伝子に関与するDNAインバージョン後にのみ発現されるE.coli LacZ導入遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを用いて、エトポシドは、インビボで0.05〜50mg/kgの用量で体細胞染色体内組み換え事象の有意な誘導を生じさせることが実証されている(Hooker et al.,2002,Sykes et al.,1999)。エトポシドが毒性用量のi.p.(腹腔内)投与の3〜4週後のマウスで慢性の腹膜炎および胸膜炎をもたらす顕性の毒性を誘導することを示す証拠は限られている(Staehelin,1976)。
【0133】
WAZ44マウスでの実験では、単独用量(最大40mg/kg)のエトポシドをi.p.投与した。動物を24時間後に殺傷して、組織を固定して、LacZ発現のために染色した。コントロールのWAZ44マウスでは導入遺伝子発現はほとんどまたは全く検出されなかったが、エトポシドを投与された動物は、脾臓、胸腺および脳のいくつかの領域で有意な発現を示した。
【0134】
[実施例13:p21−LacZ(WAZ44)レポーターマウスおよびアクリルアミドの効果の影響]
アクリルアミドは、150mg/kgという総用量で、処置の開始の約7日後に部分的麻痺として神経障害の顕在化を誘導する。この用量は、単独の注射としてまたは分割して与えられてもよい;しかし、この効果は、総用量に依存しており、150mg/kgの単独用量は、急性毒性であると考えられるので、30mg/kgの注射の5日のコースが好ましい。アクリルアミドの中毒は、中枢性効果および末梢性の効果の両方を伴う;この中枢の影響としては、投与の2日内に生じる挙動の変化(乳なめ(milk-licking)の増大)、進行性の末梢性変化、例えば、後肢把持の減少および最大3週間に及ぶ自発運動の減少が挙げられる(TealおよびEvans,1982)。WAZ44マウスの実験では、5用量のアクリルアミド(30mg/kg)をi.p.投与した。
【0135】
アクリルアミド処理したWAZ44マウスの脳から凍結切片を調製して、凍結方法1を用いて染色した。解剖用の顕微鏡を用いて、スライドを見て、顕微鏡写真(a)脳全体の横断面、もとの倍率×10;(b)歯状回および海馬、もとの倍率×25、(c)皮質、もとの倍率×63を撮った。アクリルアミドを用いて得た結果の例を図4に図示しており、これによって、アクリルアミド処理したWAZ44マウス脳の歯状回、海馬および皮質における高レベルのLacZ発現が明らかになる。
【0136】
[実施例14:脳でのWAZ導入遺伝子発現]
脳におけるWAZ遺伝子導入をさらに検討するため、本発明者らは、p21を誘導することが示されている塩化第二水銀(HgCl2)(Bartosiewicz et al,.2001)、海馬においてp21を誘導することが示されているリポポリサッカライド(LPS)(Ring et al,.2002)、および血液脳関門を横切ることが公知であるパラセタモールの効果とエトポシドの効果を比較した。
【0137】
WAZマウスには、エトポシド(40mg/kg);塩化第二水銀(HgCl2、8.5mg/kg);リポポリサッカライド(LPS、1.5mg/kg)またはパラセタモール(300mg/kg)の単回i.p.注射を与えた。WAZマウスには、単独用量レベルで各々の化合物の単回のi.p.注射を与えた(図5を参照のこと)。24時間後、このマウスを殺傷して、脳を切片にして、LacZ発現のために染色した。図Xは、各々の化合物の投与から生じるLacZ染色を示す。全ての化合物が、脳におけるWAZ導入遺伝子の高レベルの発現を誘導した。エトポシド塩化第二水銀およびLPSは全て、脳の種々の領域内で同じ細胞において発現を誘導した。しかし、パラセタモールは、海馬、樟脳および皮質内で異なるパターンの誘導を生じた。
【0138】
[実施例15:HO−1−LacZ(HOZ)レポーターマウスおよび塩化カドミウムの効果]
HOZマウスは、実施例9に記載されたHO−1プロモーターによって駆動されたLacZレポーター遺伝子を含む。HO−1−LacZ導入遺伝子は、「標的化形質転換(Targeted Transgenesis)」に記載されたとおり、BPES細胞株を用いて、相同組み換えによって、マウスHprt遺伝子(X染色体)中に挿入した。
【0139】
胚盤胞への注入のために2つのES細胞クローンを選択し、引き続いて4匹の雄性キメラマウスをこのクローンの1つから得た。キメラの3匹は100%ES由来であって、これらの雄性動物を、B6雌性動物と交配して24匹の子孫を作成した。次いで、これらの動物を用いて、HOZ導入遺伝子レポーターの誘導能を検討した。
【0140】
毒性の侵襲に対するHOZ導入遺伝子応答の予備的な特徴づけは、塩化カドミウムを用いて行った。塩化カドミウムの経口投与後、カドミウムは、近位十二指腸を介して吸収されて、肝臓に輸送され、ここで腎臓へ再分布される前に沈着される(Sorensen et al.,1993)。従って、カドミウムは、急性の肝毒性、続いて慢性の腎毒性を生じさせる。カドミウムの腎毒性効果は、急性の曝露後の肝臓で合成されて、循環中に放出されるメタロチオネイン−Cdの腎取り込みに起因すると考えられる(SendelbachおよびKlaassen,1988)。
【0141】
カドミウムの生化学的毒性は、酸化ストレスに関する多数の変化に関与し、これには、肝脂質過酸化の増強、グルタチオン枯渇、γグルタミルトランスペプチダーゼの上方制御およびGSTおよびCYPの下方制御が挙げられる(Andersen and Andersen,1988,Dalvi and Robbins,1978,Karmakar et al.,1999)。
【0142】
最初に、1匹のHOZマウスに体重1kgあたり10mgの塩化カドミウムをi.p.で与えた。1匹のコントロール動物にはビヒクル溶液、等張の生理食塩水、i.p.を与え、未処理の動物を第二のコントロールとして用いた。この動物を投薬の24時間後に殺傷し、肝臓、腎臓および脳をH&E染色およびlacZ組織学のために収集した。
【0143】
引き続き、さらなる実験を行なって、多数のHOZマウスを用いて、これらの知見を拡大した。この実験のために、雄性および雌性の両方のHOZマウスを用いて、用量範囲2〜8mg/kgでの投与後8時間および24時間の塩化カドミウムの効果を試験した。選択された用量は、これらの用量が受容できない毒性を誘導することなくマウスの肝臓でHO−1誘導を生じるという、前の実験に、そして文献報告に基づいた(Aleksunes et al.,2005,Kenyon et al.,2005,Malstrom et al.,2004)。
【0144】
HOZマウスの肝臓および腎臓の切片を調製して、標準的な手順(H&E)に従って染色した。(a,b)未処理のコントロール;(c,d)生理食塩水処理;(e,f)塩化カドミウム処理(10mg/kg、i.p.生理食塩水に含有される)。図5の全ての画像は、H&E染色切片の画像である:(a、c、およびe)は肝臓の画像;b、dおよびfは、腎臓の画像(もとの倍率×100)。H&E染色された切片の評価によって、未処理の動物およびビヒクル処理したコントロールの動物では顕著な肝臓の異常は示されなかったが、塩化カドミウム処理した動物由来の肝臓の外見は、肝細胞空胞化および赤血球の沈着に関連する壊死の領域として表れる急性の毒性を示した(図6、a、cおよびe)。腎臓の組織学的評価によって、塩化カドミウム処理されたマウス腎臓における偶発的な壊死性の近位尿細管(PCT)の存在が明らかになったが、未処理または生理食塩水処理したコントロールの腎臓では顕著な異常は観察されなかった(図6、b、dおよびf)。
【0145】
HOZマウス肝臓の切片を調製して、上記のように染色した。(a,b)未処理のコントロール;(c,d)生理食塩水処理;(e,f)塩化カドミウム処理(10mg/kg、i.p.生理食塩水に含有される)。a、cおよびeの画像に示される切片は、凍結法1に従って凍結され、そして凍結法2に従って染色され(もとの倍率×200)、そしてb、dおよびfに示されたものは、ホール・マウント法(もとの倍率×200)によって調製され、そして染色された。未処理およびビヒクルで処理されたコントロールの動物の肝臓は、LacZ染色を欠いた(図7、a、b、cおよびd)。対照的に、LacZの発現を示す極度に青い染色が、投与の24時間後の塩化カドミウム処理マウスの肝臓で観察された(図7、eおよびf)。染色は、肝臓の小葉の中心静脈の周囲で最も強度であると思われた。
【0146】
図8に関して、この応答は、種々の用量の塩化カドミウムの投与後24時間のHOZマウス肝臓におけるHOZ導入遺伝子発現を示す。各々の性別のHOZマウスに、示されたように体重1kgあたり0、2、4または8mgという動物1匹あたりの総用量が得られるように算出した濃度で塩化カドミウムを含む等張性の生理食塩水の腹腔内注射(体重1kgあたり10ml)を与えた。24時間後、動物を殺傷して、肝臓組織の切片をLacZについて染色した。低用量の塩化カドミウムの効果を試験した場合、HOZ遺伝子発現は、8mg/kgの塩化カドミウムの24時間後に各々の性別の動物由来の肝臓において明白に出現した。雄性の動物では、低用量の塩化カドミウムの後にいくつかのHOZ発現がみられたが、雌性の動物では明白でなかった(図8)。
【0147】
図9を参照すれば、種々の用量の塩化カドミウムの投与8時間後のHOZマウス肝臓でのHOZ導入遺伝子発現の応答が示されている。各々の性別のHOZマウスに、示されたように体重1kgあたり0、2、4または8mgという動物1匹あたりの総用量が得られるように算出した濃度で塩化カドミウムを含む等張性の生理食塩水の腹腔内注射(体重1kgあたり10ml)を与えた。8時間後、動物を殺傷して、肝臓組織の切片をLacZについて染色した。低用量を与えられた動物では低レベルの発現を伴う8mg/kgの塩化カドミウムのわずか8時間後の雌性マウス由来の肝臓において、高レベルのHOZ遺伝子発現がまた明らかであった。雌性の動物由来の肝臓では、8時間ではHOZ発現の一貫した証拠はなかったが、4mg/kgの塩化カドミウムを投与された動物では弱いLacZ染色が観察された(図9)。
【0148】
LacZ染色を腎臓で評価した場合、点状の青い染色をみることができた(図10)。HOZマウス腎臓の切片を調製して、上記のように染色した。(a,b)未処理のコントロール;(c,d)生理食塩水処理;(e,f)塩化カドミウム処理(10mg/kg、i.p.生理食塩水に含有される)。切片は、凍結法1に従って凍結して、そして凍結法2に従って染色した(b、eおよびh:もとの倍率×10;c、fおよびi:もとの倍率×200)未処理および生理食塩水で処理されたコントロールの動物では、わずか2〜3の近位尿細管(PCT)が染色された(図10、a、b、c、およびd)だけであるが、塩化カドミウム処理したマウスでは、染色されたPCTの頻度はかなり高かった(図10、eおよびf)。このパターンは、引き続く実験において確認され、ここでは8mg/kgの塩化カドミウムが、投与の8時間後の腎臓でHOZ遺伝子の検出可能な発現を生じた。
【0149】
これらの結果は、塩化カドミウムに応答する腎臓におけるHOZ導入遺伝子の誘導を示す。
【0150】
塩化カドミウム処理の有無において、HOZマウスの脳ではLacZ発現の証拠はなかった。
【0151】
Malstrom et alのデータでは、Ho1−lucトランスジェニックマウス研究によって、塩化カドミウムに応答するそれらのルシフェラーゼシグナルは、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルと相関して「中程度(moderately)」に過ぎない。対照的に、本発明者らの結果では、ALT上昇が証明される前に低用量の塩化カドミウムでHOZ導入遺伝子発現が示される。従って、HOZ導入遺伝子発現は、単に毒性と相関するのではなく毒性の予測因子である。この証拠によって、本発明のシステムは、正確であるだけでなく、先行技術の方法よりも鋭敏であることが示唆される。
【0152】
[実施例16;内因性HO−1の発現]
内因性HO−1発現に対する塩化カドミウムの効果を、HOZマウス由来の肝臓および腎臓の組織におけるHO−1のmRNAのレベルのRT−PCRアッセイによって決定した。図11は、10mg/kgの塩化カドミウムの投与の24時間後のHOZマウス肝臓におけるHO−1のmRNAレベルを示す。このバーは、生理食塩水を投与されたマウスおよび未処理のマウスのいずれかと比較して、24時間前に10mg/kgの塩化カドミウムを投与されたマウスの脳、腎臓および肝臓の組織におけるRT−PCRによってアッセイされたHO−1 mRNAの相対的濃度を示す。
【0153】
10mg/kgの塩化カドミウムを投与された動物では、24時間後の腎臓および肝臓におけるHO−1 mRNAのレベルは、コントロールに比較して極めて大きく上昇した(図11)。肝臓では、塩化カドミウムの用量増大とHO−1 mRNAの増大との間の明確な用量応答関係は、8時間で両方の性で明らかであった。これは、24時間まではほとんど存在しなかったが、HO−1のmRNAレベルは、最高用量の塩化カドミウムを与えられた動物の肝臓では依然としてわずかに上昇していた(図12)。図12を参照すれば、種々の用量の塩化カドミウムの投与の8時間および24時間後のHOZマウスの肝臓におけるHO−1のmRNAレベルが示される。このバーは、体重1kgあたり0〜8mg/kgに及ぶ塩化カドミウムの投与後のHOZマウス肝臓における、RT−PCRによってアッセイされたHO−1のmRNAの相対的な濃度を示す。このパネルは、塩化カドミウム注射後の8時間または24時間の雄性および雌性のマウスでみられた効果を比較する。
【0154】
[実施例17;亜ヒ酸ナトリウムの効果]
(メタ)亜ヒ酸ナトリウムによるHO−1の誘導に対する前の報告では、i.p.投与後8時間でHO−1活性がピークになったことが示された。従って、本発明者らは、投与後8時間および24時間後のHOZ導入遺伝子発現に対する亜ヒ酸ナトリウム投与の効果を検査した。雌性のHOZマウスには、等張性の生理食塩水中で体重あたり13mg/kgの亜ヒ酸ナトリウムを、i.p.で8時間後または24時間後のいずれかで投与して、肝臓組織を収集して、LacZ発現について染色した。これらの結果によって、両方の時点でHOZ導入遺伝子の発現が示された(図13)。
【0155】
[実施例18:肝毒性および腎毒性のマーカー]
2つの血漿酵素マーカーALTおよびASTを、塩化カドミウムまたは亜ヒ酸ナトリウムで処理したHOZマウスにおける肝毒性のマーカーとして用いた。10mg/kgの塩化カドミウムで処理したHOZマウスについてのこの分析の結果は、表1に、そして2〜8mg/kgの塩化カドミウムまたは13mg/kgの亜ヒ酸ナトリウムで処理したHOZマウスについての分析の結果は、表2および3に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
雌性HOZマウスは、塩化カドミウム8mg/kgに対する顕著でかつ急激な応答を示した。血漿ALTにおける増大は、8時間後170倍、そして24時間後275倍であったが、ASTについての対応する増大は、8時間後237倍、そして24時間後97倍であった。用量応答は急勾配であった:塩化カドミウムの4mg/kgの用量に対する応答における血漿ALTの増大は、8時間後2.4倍でしかなく、8時間後にはALTにおける2倍を超える増大はないが、血漿ASTにおける増大はいずれの時点でも観察されなかった。塩化カドミウムに対する雄性HOZマウスの応答は、緩徐であって、より弱く、ここでは、8mg/kgでの処理の24時間後、ALTが7.9倍に増大、そしてASTは3.8倍に増大しており、ただしそれ以外に2倍を超える増大はなかった。HOZマウスは、亜ヒ酸ナトリウムに対して肝毒性の応答を示さなかった。
【0160】
表4に示されるように血中尿素窒素(BUN)レベルを測定することによって腎毒性を評価した。8mg/kgの塩化カドミウムに対する応答では、BUNによって測定した場合、雌性マウスは軽度の腎毒性を示した。BUNの増大は、8時間後に6倍、そして24時間後に44倍であった。このマーカーを用いて測定した場合、雄性のマウスでは腎毒性は観察されなかった。
【0161】
【表4】
【0162】
引用文献
【表5A】
【表5B】
【表5C】
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】パート(a)が、マウスp21遺伝子の4つの領域を増幅するために用いられるPCRプライマーオリゴヌクレオチド対およびそのプロモーターの配列を示し、パート(b)が、完全なレポーター構築物を作成するためのレポーター配列との組み合わせのために適切なプロモーター配列、転写開始配列および非コードエキソンを含む5006塩基対のDNA構築物のこれらの4つの増幅されたPCR産物の再構成形態を示す。
【図2】pX3W構築物を示す。
【図3】pXWhCG.RAB構築物を示す。
【図4】アクリルアミド処理したWAZ44マウスの脳におけるLacZの発現を示す。
【図5】WAZ44マウス脳におけるLacZの発現を示す。
【図6】塩化カドミウムでの処理後のHOZマウスの肝臓および腎臓の組織病理学を示す。
【図7】塩化カドミウム処理の有無によるHOZマウスの肝臓の組織学を示す。
【図8】投与の24時間後の肝臓におけるHOZ導入遺伝子発現に対する塩化カドミウムの効果を示す。
【図9】投与8時間後の肝臓におけるHOZ導入遺伝子発現に対する塩化カドミウムの効果を示す。
【図10】塩化カドミウム処理の有無によるHOZマウスの腎臓の組織学を示す。
【図11】未処置、ビヒクルコントロールおよび塩化カドミウム処理したHOZマウスでのHO−1 mRNAの誘導を示す。
【図12】種々の用量の塩化カドミウム投与の8時間および24時間後のHOZマウスの肝臓におけるHO−1のmRNAレベルを示す。
【図13】亜ヒ酸ナトリウムがマウスの肝臓においてHOZ導入遺伝子発現を誘導することを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸構築物であって、(i)細胞環境における有害な外部または内部(細胞外または細胞内)の変化に応答して発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域の核酸配列と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列と、(iii)所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得、かつ分泌可能タンパク質および/または組織学的に検出され得る因子の形態で読み出し得る少なくとも1つまたは複数の核酸配列とを含む、核酸構築物。
【請求項2】
プロモーター配列が、以下のストレス状態:
(i)細胞におけるDNAの恒常性状態の乱れ;
(ii)細胞の酸化ストレスに応答した変化;
(iii)肝毒性ストレスを引き起こす変化;
(iv)細胞アポトーシスを誘発する刺激;
(v)化合物、治療剤もしくは他の生体異物因子の投与;または
(vi)天然、誘導された、もしくはモデル化された疾患状態、
の任意の1つまたは複数に応答して発現を変化させる、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
プロモーター配列が、p21、メタロチオネイン1A、PUMA、Gclc、Cox2、Ki67、Stk6、Hsp、Hmox−1、PIG3およびSOD2の遺伝子を含む群の任意の1つまたは複数から選択される、請求項1または2のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項4】
所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列またはレポーター配列が、転写物またはコードされた翻訳産物ポリペプチドのいずれかのアッセイを通じて遺伝子発現の読み出しを容易にするように選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項5】
レポーター配列の転写物が、以下:
(i)レポーター配列のRNA転写物のアッセイ;または
(ii)レポーター配列のポリペプチド翻訳産物のアッセイ
の任意の1つまたは複数によって検出される、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項6】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物p21遺伝子の転写開始部位のすぐ5’側の領域から最大5000塩基対のDNAを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項7】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物メタロチオネイン1A遺伝子の上流セグメントの最大26kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項8】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物PUMA遺伝子の上流遺伝子配列の最大16kbおよび下流配列の5kbセグメントを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項9】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Gclc遺伝子の上流遺伝子配列の最大16kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項10】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物cox2遺伝子の転写開始部位から上流の最大3.5kbの配列、およびコード配列からの3kbのさらなるセグメントを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項11】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Ki67遺伝子の転写開始の上流遺伝子配列の最大30kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項12】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Stk6遺伝子のE4TF1モチーフ(−87〜−78)およびSp−1部位(−129〜−121)ならびに必要に応じて任意にタンデムレプリッサーエレメントCDE/CHR(−53〜−49/−39〜−35)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項13】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Hsp70遺伝子の5’隣接領域の最大5kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項14】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Hmox−1遺伝子の転写開始部位から最大16.5kbの上流および8kbの下流を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項15】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物PIG3遺伝子のp53認識配列リピートを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項16】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物SOD2遺伝子の5’プロモーター領域の最大11.8kbおよび哺乳動物SOD2遺伝子の18kbおよび哺乳動物SOD2遺伝子の3’領域を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項17】
核酸構築物であって、(ii)転写開始部位を含む核酸配列と、(iii)所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得、かつ分泌可能タンパク質および/または組織学的に検出され得る因子の形態で読み出し得る核酸配列とからヌクレオチドアイソレーター配列によって作動可能に隔てられた(i)細胞環境における有害な外部または内部(細胞外または細胞内)の変化に応答して発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域の核酸配列を含み、ヌクレオチドアイソレーター配列が、部位特異的リコンビナーゼによって認識される核酸配列に隣接する、または挿入であって転写開始部位を含む核酸配列および所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得る核酸配列に関して反転されるような挿入に隣接する、核酸構築物。
【請求項18】
リコンビナーゼ認識部位が、ヌクレオチドアイソレーター配列が欠失されるか、または反転されたプロモーター配列の方向がリコンビナーゼの存在下で逆転されるように配置される、請求項17に記載の核酸構築物。
【請求項19】
部位特異的リコンビナーゼのコード配列をコードする遺伝子に作動可能に連結された組織特異的プロモーターを含む核酸配列をさらに含む、請求項17または18のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項20】
部位特異的リコンビナーゼ系が、バクテリオファージP1 cre−loxまたは細菌のFLIP系またはバクテリオファージP1の2つのloxP部位である、請求項17〜20のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項21】
請求項2〜16の特徴のいずれか1つまたは複数をさらに含む、請求項17〜20のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項23】
請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物を含み、かつ非ヒト動物の細胞が核酸構築物によってコードされるタンパク質を発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれかに記載の構築物を複数含む、請求項22に記載の宿主細胞または請求項23に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項25】
さらなる1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸配列の導入であるさらなる形質転換に供される、請求項22に記載の宿主細胞または請求項23に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項26】
インビトロまたはインビボにおける、細胞中の変化した代謝状態または疾患状態における変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物の使用。
【請求項27】
所定のレポーター配列についてのテンプレートとして作用し得る核酸配列、またはRNA転写物および/または翻訳産物が、レポーター配列が発現される細胞に対して異種である、インビトロまたはインビボにおける、細胞中の変化した代謝状態または疾患状態における変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物の使用。
【請求項28】
エピトープタグペプチド配列を用いて翻訳産物が同定されるレポーター配列の発現によって遺伝子活性化事象が示される、請求項26または27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
細胞または細胞株または非ヒト動物において毒物学的に誘導されたストレスについて、スクリーニングするか、またはそれをモニタリングする方法であって、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含み、細胞、細胞株または非ヒト動物をストレスに曝すステップと、レポーターまたは読み出し産物をモニタリングするステップとを含む、方法。
【請求項30】
ウイルス、細菌、真菌および寄生生物の感染をスクリーニングして特徴付ける方法であって、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含み、細胞、細胞株または非ヒト動物をウイルス、細菌、真菌および寄生生物の感染ストレスに曝すステップと、レポーターまたは読み出し産物をモニタリングするステップとを含む、方法。
【請求項31】
癌、感染性疾患、心血管疾患、代謝疾患、神経学的疾患および遺伝に基づく疾患をスクリーニングする方法であって、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含み、細胞、細胞株または非ヒト動物を癌、感染性疾患、心血管疾患、代謝疾患、神経学的疾患および遺伝に基づく疾患を誘発するかまたはその原因となる因子もしくは状態に曝すステップを包含する、方法。
【請求項32】
種々の異なるレポーターまたは読み出し産物を同時にモニタリングできるように、複数の細胞または細胞株または非ヒト動物が、異なる核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持している、請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
複数のレポーターまたは読み出し産物を単独の細胞または細胞株または非ヒト動物から獲得できるように、細胞または細胞株または非ヒト動物が、2つ以上の遺伝子構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持している、請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
核酸構築物であって、(i)細胞環境における有害な外部または内部(細胞外または細胞内)の変化に応答して発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域の核酸配列と、(ii)転写開始部位を含む核酸配列と、(iii)所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得、かつ分泌可能タンパク質および/または組織学的に検出され得る因子の形態で読み出し得る少なくとも1つまたは複数の核酸配列とを含む、核酸構築物。
【請求項2】
プロモーター配列が、以下のストレス状態:
(i)細胞におけるDNAの恒常性状態の乱れ;
(ii)細胞の酸化ストレスに応答した変化;
(iii)肝毒性ストレスを引き起こす変化;
(iv)細胞アポトーシスを誘発する刺激;
(v)化合物、治療剤もしくは他の生体異物因子の投与;または
(vi)天然、誘導された、もしくはモデル化された疾患状態、
の任意の1つまたは複数に応答して発現を変化させる、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
プロモーター配列が、p21、メタロチオネイン1A、PUMA、Gclc、Cox2、Ki67、Stk6、Hsp、Hmox−1、PIG3およびSOD2の遺伝子を含む群の任意の1つまたは複数から選択される、請求項1または2のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項4】
所定のRNA転写物のテンプレートとして作用し得る核酸配列またはレポーター配列が、転写物またはコードされた翻訳産物ポリペプチドのいずれかのアッセイを通じて遺伝子発現の読み出しを容易にするように選択される、請求項1〜3のいずれかに記載の核酸配列。
【請求項5】
レポーター配列の転写物が、以下:
(i)レポーター配列のRNA転写物のアッセイ;または
(ii)レポーター配列のポリペプチド翻訳産物のアッセイ
の任意の1つまたは複数によって検出される、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項6】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物p21遺伝子の転写開始部位のすぐ5’側の領域から最大5000塩基対のDNAを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項7】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物メタロチオネイン1A遺伝子の上流セグメントの最大26kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項8】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物PUMA遺伝子の上流遺伝子配列の最大16kbおよび下流配列の5kbセグメントを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項9】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Gclc遺伝子の上流遺伝子配列の最大16kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項10】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物cox2遺伝子の転写開始部位から上流の最大3.5kbの配列、およびコード配列からの3kbのさらなるセグメントを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項11】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Ki67遺伝子の転写開始の上流遺伝子配列の最大30kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項12】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Stk6遺伝子のE4TF1モチーフ(−87〜−78)およびSp−1部位(−129〜−121)ならびに必要に応じて任意にタンデムレプリッサーエレメントCDE/CHR(−53〜−49/−39〜−35)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項13】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Hsp70遺伝子の5’隣接領域の最大5kbを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項14】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物Hmox−1遺伝子の転写開始部位から最大16.5kbの上流および8kbの下流を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項15】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物PIG3遺伝子のp53認識配列リピートを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項16】
プロモーター領域の核酸配列が、哺乳動物SOD2遺伝子の5’プロモーター領域の最大11.8kbおよび哺乳動物SOD2遺伝子の18kbおよび哺乳動物SOD2遺伝子の3’領域を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項17】
核酸構築物であって、(ii)転写開始部位を含む核酸配列と、(iii)所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得、かつ分泌可能タンパク質および/または組織学的に検出され得る因子の形態で読み出し得る核酸配列とからヌクレオチドアイソレーター配列によって作動可能に隔てられた(i)細胞環境における有害な外部または内部(細胞外または細胞内)の変化に応答して発現が改変される遺伝子または遺伝子のセットのプロモーター領域の核酸配列を含み、ヌクレオチドアイソレーター配列が、部位特異的リコンビナーゼによって認識される核酸配列に隣接する、または挿入であって転写開始部位を含む核酸配列および所定のRNA転写物についてのテンプレートとして作用し得る核酸配列に関して反転されるような挿入に隣接する、核酸構築物。
【請求項18】
リコンビナーゼ認識部位が、ヌクレオチドアイソレーター配列が欠失されるか、または反転されたプロモーター配列の方向がリコンビナーゼの存在下で逆転されるように配置される、請求項17に記載の核酸構築物。
【請求項19】
部位特異的リコンビナーゼのコード配列をコードする遺伝子に作動可能に連結された組織特異的プロモーターを含む核酸配列をさらに含む、請求項17または18のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項20】
部位特異的リコンビナーゼ系が、バクテリオファージP1 cre−loxまたは細菌のFLIP系またはバクテリオファージP1の2つのloxP部位である、請求項17〜20のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項21】
請求項2〜16の特徴のいずれか1つまたは複数をさらに含む、請求項17〜20のいずれかに記載の核酸構築物。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項23】
請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物を含み、かつ非ヒト動物の細胞が核酸構築物によってコードされるタンパク質を発現する、トランスジェニック非ヒト動物。
【請求項24】
請求項1〜21のいずれかに記載の構築物を複数含む、請求項22に記載の宿主細胞または請求項23に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項25】
さらなる1つまたは複数の遺伝子またはタンパク質をコードする1つまたは複数の核酸配列の導入であるさらなる形質転換に供される、請求項22に記載の宿主細胞または請求項23に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
【請求項26】
インビトロまたはインビボにおける、細胞中の変化した代謝状態または疾患状態における変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物の使用。
【請求項27】
所定のレポーター配列についてのテンプレートとして作用し得る核酸配列、またはRNA転写物および/または翻訳産物が、レポーター配列が発現される細胞に対して異種である、インビトロまたはインビボにおける、細胞中の変化した代謝状態または疾患状態における変化から生じる遺伝子活性化事象の検出のための請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物の使用。
【請求項28】
エピトープタグペプチド配列を用いて翻訳産物が同定されるレポーター配列の発現によって遺伝子活性化事象が示される、請求項26または27のいずれかに記載の使用。
【請求項29】
細胞または細胞株または非ヒト動物において毒物学的に誘導されたストレスについて、スクリーニングするか、またはそれをモニタリングする方法であって、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含み、細胞、細胞株または非ヒト動物をストレスに曝すステップと、レポーターまたは読み出し産物をモニタリングするステップとを含む、方法。
【請求項30】
ウイルス、細菌、真菌および寄生生物の感染をスクリーニングして特徴付ける方法であって、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含み、細胞、細胞株または非ヒト動物をウイルス、細菌、真菌および寄生生物の感染ストレスに曝すステップと、レポーターまたは読み出し産物をモニタリングするステップとを含む、方法。
【請求項31】
癌、感染性疾患、心血管疾患、代謝疾患、神経学的疾患および遺伝に基づく疾患をスクリーニングする方法であって、請求項1〜16または17〜21のいずれかに記載の核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持する細胞、細胞株または非ヒト動物の使用を含み、細胞、細胞株または非ヒト動物を癌、感染性疾患、心血管疾患、代謝疾患、神経学的疾患および遺伝に基づく疾患を誘発するかまたはその原因となる因子もしくは状態に曝すステップを包含する、方法。
【請求項32】
種々の異なるレポーターまたは読み出し産物を同時にモニタリングできるように、複数の細胞または細胞株または非ヒト動物が、異なる核酸構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持している、請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
複数のレポーターまたは読み出し産物を単独の細胞または細胞株または非ヒト動物から獲得できるように、細胞または細胞株または非ヒト動物が、2つ以上の遺伝子構築物でトランスフェクトされているかまたはそれを担持している、請求項29〜31のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図10】
【図11】
【図12】
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【公表番号】特表2008−506380(P2008−506380A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520896(P2007−520896)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002779
【国際公開番号】WO2006/008484
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505379799)シーエックスアール・バイオサイエンシズ・リミテッド (3)
【出願人】(506098066)ロスリン・インスティテュート(エディンバラ) (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002779
【国際公開番号】WO2006/008484
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505379799)シーエックスアール・バイオサイエンシズ・リミテッド (3)
【出願人】(506098066)ロスリン・インスティテュート(エディンバラ) (2)
【Fターム(参考)】
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