細胞の損傷および疾患のリスクを測定する方法およびシステム
本発明は、CTスキャンにおいて低曝露領域から鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を定量的に測定する方法およびこれを肺閉塞の全体的または局所的測定の測定値と組み合わせる方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTスキャンにおける正常部からの鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を測定することによって肺組織損傷を定量的に測定するためのシステム、ソフトウェアおよび方法に関する。これは、肺曝露、損傷、疾患リスクおよび治療応答の測定において、放射線技術をデータ解析と組み合わせて用いることにより使用できる。ここで記述される方法はまた、COPD、食道がん、心臓血管疾患および骨関節炎を含むミネラル化を包含するその他の疾患に適用できる。
【背景技術】
【0002】
国立がん研究所によると、2007年の肺がんの新たな患者数は213,380と試算され、死者数は160,390であると試算される。肺損傷および肺がんのリスクを測定するための信頼できる方法がない。肺がん検診は、年齢および報告された発がん物質への曝露に基づいて、ハイリスクスクリーニング集団を同定する。リスク評価のこの方法は、発がん性への曝露のおおまかな推量を与えるが、(a)広範囲にわたる潜在性肺組織発作に対する損傷および(b)曝露に応答する変化を考慮しない。個体の組織損傷の客観的測定方法が支持されれば、肺がんリスク群のモニタリングおよび管理を改善し、患者のモニタリングおよび治療を個別化するだろう。
【0003】
コンピューター断層撮影は、ここ10年で改善されてきた。米国の大部分の保健機関は現在、数秒でCT肺スキャンスライスを得ることができる。これらのスキャンからのX線減衰測定は、肺がん、COPDおよび関連疾患の進行、並びに管理に関する情報を明らかにする可能性を有する。CT画像特性は、胸の疾患の初期管理に重要な臨床的情報を提供する。スライスCTは、部分固体の肺病変の区別を可能にし、それはベースラインで検出された場合の高確率の悪性度のためにより積極的に管理される。加えて、気道壁厚および肺気腫の広がりについての高解像度CT測定は、COPDの管理に対する新たな洞察を提供する。
【0004】
環境衛生およびエアロゾル科学分野では、肺がんの背後の基本的メカニズムを研究してきた。これらの研究は、肺に取り込まれる粒子状物質が特定の分布パターンを有することを見いだした。ヒト気道における気流パターンの解析は特に重要である。研究は、気道分岐部の竜骨突起およびその他の気道構造に、その他の肺部位より有意に粒子が沈着することを示す。研究はさらに、3または4を超えるいくつかの気道分岐レベルが、他の領域より有意に粒子の負荷を受けることを示した。これらの高曝露部位は、過度の量の粒子負荷を受け、肺の全体にわたって受けた損傷のレベルの初期指標を提供する。
【0005】
気道が反復するストレスおよび加齢によって石灰化する大量の硝子軟骨を含むことが知られている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、CTスキャンにおける正常領域またはストレスの少ない領域から鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を測定することによる肺がんリスクを定量的に測定する方法を提供する。石灰化は、人体における多くの組織全体にわたるストレスへの応答であるから、本発明の方法は損傷およびリスクを測定するために使用でき、COPD、食道がん、心臓血管疾患、靱帯および腱の老化および骨関節炎を含むその他の疾患に適用できる。
【0007】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の工程を含む肺組織損傷を定量的に測定する方法を含む、i)個体の高解像度CT肺スキャンの取得;ii)CTスキャンの解析、および最高粒子沈着を有する気道組織部位の密度偏差の測定であって、密度偏差は気道幾何解析または流量解析を用いて得られる測定、iii)気道閉塞の局部的および/または全体的程度の測定(例えば、FEV1/FVCは全体的な肺機能測定であり、CT壁厚および肺気腫の測定は局部的である)、並びにv)これらの測定のいずれかとリスクインデックスとの組み合わせ。
【0008】
好ましい実施形態では、本方法は、以下を含む(a)CTスキャンの解析および密度偏差の分析がCTスキャンの気道樹に沿って隣接する低曝露領域からの最大HU密度偏差のログの合計の測定をさらに含む;または(b)最高粒子沈着の位置は、1つまたは複数の分岐部位または湾曲領域を含み、かつ測定を組み合わせる工程では、分岐部位または湾曲領域からの肺損傷の測定を上回る大きな影響をおくことを含む;または(c)CTスキャンが複数エネルギーCTスキャンであり、かつ曝露に対する個体反応を区別するための機能を提供する;または(d)それがさらに、肺がんリスクインデックス(「LCRI」)の評価間の変化を比較する工程であって、治療に対する応答性を決定するために前期比較を使用する工程;または(e)LCRIに測定を組み合わせることには、年齢、性別、喫煙歴、同時罹患率および家族歴などの臨床データの測定基準を調整することを含む;および/または(f)LCRIに測定を組み合わせることには、肺がんと強く関連する肺閉塞の評価基準としてのCOPD壁厚および肺気腫スコアなどのその他のCTデータを加えることを含む。
【0009】
好ましい実施形態では、療法は肺がん療法である。
【0010】
別の好ましい実施形態では、密度およびCT組成測定は、骨の関節表面に位置する硝子軟骨組織から取得し、さらに個体の骨関節炎に関する情報を提供するために使用できる。非損傷関連プロセスのミネラル化反応を計算し、ミネラル化損傷反応のモデルを利用すること(例えば、ミネラル化損傷反応関連の損傷に応答する指数関数的なミネラル化は、組織損傷を推量するためにログ関数を要する)は、骨関節炎の損傷およびリスクレベルを明らかにするだろう。
【0011】
別の好ましい実施形態では、密度および組成CT測定は、血管壁領域および隣接領域から取得され、さらに心血管疾患に関する治療的および/または臨床的情報を提供するために使用され得る。ミネラル化反応の非疾患関連プロセスを計算および減算し、ミネラル化損傷反応モデルを利用すること(例えば、損傷に応答する指数関数的なミネラル化は、組織損傷を推量するために、ログ関数を必要とする)は、従って、心臓血管疾患の損傷およびリスクレベルを明らかにするだろう。
【0012】
別の好ましい実施形態では、密度および組成CT測定は、損傷を評価するために、靱帯および腱から取得される。非疾患関連プロセスのミネラル化反応を計算および減算し、ミネラル化損傷反応のモデルを利用すること(例えば、損傷に応答する指数関数的なミネラル化は、組織損傷を推量ために、ログ関数を必要とする)は、損傷および組織損傷のリスクを明らかにするだろう。
【0013】
本明細書はまた、分岐部または気道輪状軟骨に見られる硝子軟骨のような高曝露部位でのCTスキャンにおける正常部からの鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を測定すること、並びにこれをFEV1およびFVCのような肺機能情報と組み合わせることにより、肺組織損傷の定量的測定のためのシステムを提供する。
【0014】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明は、i)個々の肺組織の高分解能CTスキャンを得るための手段;ii)CTスキャンを解析し、および最高粒子沈着を有している気道組織位置の密度偏差を測定するための手段であって、密度偏差は、気道幾何学解析または流動解析のいずれかを使用して得られる手段;およびiii)LCRIに測定を組み合わせるための手段を含む、肺組織損傷を定量的に測定するためのシステムを提供する。
【0015】
別の好ましい実施形態において、システムは、以下を含む(a)CTスキャンの解析および密度偏差の測定のための手段は、CTスキャンの気道樹に沿って隣接する低曝露領域の最大HU密度偏差のログの合計の測定をさらに含む;または(b)最高粒子沈着の位置は、1つまたは複数の分岐部位または湾曲領域を含みかつ測定の組み合わせのための手段は、分岐部位または湾曲領域の肺損傷の測定により大きな影響をおくことを含む;または(c)CTスキャンが複数エネルギーCTスキャンであり、かつ曝露に対する個体反応をさらに区別するための物質組成特性を提供する;または(d)さらに、肺がんリスクインデックス(「LCRI」)の評価間の変化を比較する手段を含み、かつ治療に対する応答性を決定するために前期比較を使用する;または(e)LCRIに測定を組み合わせる手段は、年齢、性別、喫煙歴、同時罹患率および家族歴のような臨床データの測定基準を調整することをさらに含む;および/または(f)LCRIに測定を組み合わせる手段は、その他のCTデータとCOPD壁厚および肺気腫スコアなどの測定基準に加えること(両者とも肺がんと相関するため)をさらに含む。
【0016】
1つの好ましいシステムでは、療法は、肺がん療法である。
【0017】
別の好ましいシステムにおいて、密度および組成CT測定は、骨の関節の表面に位置する硝子軟骨組織から取得し、および骨関節炎に関する情報を提供するために、さらに使用できる。
【0018】
別の好ましい実施形態では、危険な閉塞および石灰化を同定するために、肺の全領域がコンピュータープログラムで解析される。閉塞の位置を検出して医師に通知する。これは、疾患発症のリスクを減少させるために治療介入が必要とされる場合に使用され得る。
【0019】
別の好ましい実施形態では、分岐部にて見いだされるミネラル化パターンを、損傷を引き起こす粒子の質量、形状および電荷を含む粒子曝露の型および程度を提供するために解析する。
【0020】
別の好ましい実施形態では、受診回数、放射線量、コストおよび検出率を最適化する個別化肺がんスクリーニングプロトコルを作製するために、LCRIが使用される。FEV1/FVCデータと組み合わせたベースラインCTスキャンはLCRIを形成するために結合され、予測されたリスクを徐々に検証するためにフォローアップ計画が引き続いて計算される。スクリーニングの頻度および期間は、個別に最適化できる。CTスキャンより頻繁に肺機能(FEV1/FVC)を測定することによって、低ベースラインリスク患者のためのフォローアップスクリーニング受診を行うことが可能であり、これによりコストおよび用量を減少させる。
【0021】
別の好ましい実施形態では、悪性度の確率を決定するために、LCRIを肺がんが疑われた病変の測定結果および特性と組み合わせる。これは、針生検を行う前に有用である。
【0022】
別の好ましい実施形態では、外科計画ツールは、組織石灰化および潜在性切除を解析し、外科医に疾患リスク最小化のための最良の治療法を提供するための選択肢を与える。これは、いくつかの治療的選択肢と関連するリスクに対する助言を与えることができる。
【0023】
本明細書はまた、本明細書に示したような方法の工程を実行するためのソフトウエアコード部分を含む、デジタルコンピューターのRAMに直接ロード可能なコンピュータープログラム製品を提供し、前述の製品は前述のコンピューター上で実行される。
【0024】
好ましい実施形態では、ソフトウエアコード部分は、ネットワークからダウンロード可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1Aは、気道分岐部の代表的な図面である。図1Aは、分岐部測定法の詳細を示す。図1Bは、分岐部位での粒子沈着を示すシミュレーションである。
【図2】分岐部の石灰化を示すCT画像のパネルである。
【図3】患者データ、そのCT測定結果、肺機能測定結果、補正値およびLCRIのスプレッドシートである。図3は横方向に2ページに及ぶ。ここに報告されたデータは、閉塞の測定と組み合わせた気道部位の沈着の測定が肺がんリスク状態の測定基準を提供し得るという証拠を提供する。
【図4】図4(a)は、LCRI結果のグラフである。図4(a)は、患者年齢に対してプロットされた損傷インデックスを示す。図4(a)は、肺がんリスク閾値を確立でき、そこから診断および治療的決定を下し得ることを示す。図4(b)は、LCRI危険分散のグラフである。図4(b)は、LCRI(LCRI)に対してプロットされた頻度を示す。図4(b)は、がんおよび正常集団がインデックスに沿った分離を示すことを示す。
【図5】軟骨の平均CT密度が測定される膝のCTスキャンである。図5は、ミネラル化測定が骨関節炎の判定に役立つことを示す。
【図6】ミネラル化が存在する食道のCTスキャンである。図6は、ミネラル化がG.I.組織に生じ、腫瘍、GERD、Barrettなどのような、損傷がミネラル化をもたらす胃腸の疾患の判定に役立つことができる。
【図7】横軸にプロットしたFEV1/FVCに対する縦軸にプロットしたBDIを示す散布図/グラフである。図7は、LCRIを確立するために使用されるがん回帰直線を示す。
【図8】横軸上の年齢に対してプロットされる縦軸上のパックイヤーを示す散布図/グラフである。図8は、年齢およびパックイヤー分布を示す。
【図9】縦軸上にプロットしたFEV1/FVCに対する縦軸上にプロットしたBDIを示す散布図/グラフであるが、回帰直線を示さない。
【図10】パックイヤーデータの年齢関連群の中の年齢の範囲に対する縦軸上の平均LCRI値を示す棒グラフである。図10は、対照群と腫瘍群間の差異を示す。
【図11】横軸上の年齢に対してプロットされた縦軸上のLCRIの散布図/グラフである。図11はまた、10−29PY、30−49PY、50−69PYおよび>70PYからの対照の範囲に対するがんデータポイントを示す。
【図12】気道セグメント化のためのパイプラインを示す箱および矢チャートである。
【図13】図13(上部)は、気道区分からの輪郭を示すCT「スライス」である;(左下)LA04方法を使用して抽出された中央気道表面線を示す;(右下)中央線の分岐部がどのように自動抽出され、親/子関係が算出されるかを示す。
【図14】上方に4画像、(i)気道表面、(ii)埋め込まれたボロノイ図、(iii)中央抽出直線および(iv)形態解析をおいた箱および矢線図である。これらは、各分岐部で中央線の分岐部および竜骨突起を同定するために使用される。
【図15】竜骨突起(赤)およびCD算出(青)を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
以下の定義は、本発明の詳細な説明を理解するための助けとして提供される。
【0027】
「硝子軟骨(HYALINE CARTILAGE)」は、身体部分の運動に関与する部位で見出される保護マトリックスをいう。それは、神経や血管を含まない。骨関節の末端を覆う場合を除き、それは線維膜によって覆われる。この膜は軟骨に栄養を提供する。それは丸いまたははっきりとした角の形態の細胞からなり、粒状のまたはほとんど均一なマトリックスの集団の状態にある。細胞群は、一般的に直鎖状の外形を有し、これらが接触しており、残りの外周は丸い。これらは、インターレースフィラメントおよび顆粒が時に存在する透明な原形質からなり、1つまたは2つの円形核がこれに包埋される。細胞は、軟骨小腔と呼ばれるマトリックスの空洞に含まれ、これらの周囲でマトリックスは同心性の線状に並ぶ。これは、いわゆる空間のカプセルを構成する。それぞれの小腔は単細胞に占められるが、細胞分裂の間、それは2、4または8つの細胞を含み得る。硝子軟骨はまた、マトリックスを産生する軟骨の細胞(cartilage cell)である軟骨細胞(chondrocyte)を含む。硝子質の軟骨マトリックスは、両者とも弾性軟骨に見出される、タイプIIコラーゲンおよびコンドロイチン硫酸で大部分構成される。
【0028】
「気道(AIRWAY)」は、空気が外部環境から肺胞に流れる気管支の部分をいう。気道は口または鼻で始まり、咽頭を介して気管にアクセスする。気管は竜骨にて主気管支に分岐し、第2胸椎の高さに位置する。気管支は肺の各葉の1つである細気管支に分岐する。葉内で、気管支は繰り返し再分割し、肺胞群に終わる。
【0029】
用語「肺がんリスクインデックス(LCRI:LUNG CANCER RISK INDEX)」は、下記に記載してある。肺組織に対する小さな発がん性粒子の影響は、過去10年にわたって大規模に研究されてきた。多数の研究が、気道の空気の流れが一定の気道部位に過度の粒子状物質の沈着をもたらすことを報告した。気道樹における分岐部位はかなり多くの粒子沈着を受け、それ故、より強度の損傷を受け、このような部位で肺がんが選択的に形成されるに至る。
【0030】
CTスキャンでの気道分岐部の測定は、分岐の成長につれて気道サイズが急速に減少するため困難である。気道分岐間の分岐領域のサイズは、一定レベルでのCTスキャナポイントスプレッド機能(PSF)のサイズより小さく減少する。高度なCT分析法を使わずに、最初の数分岐だけのCT密度を確実に測定できる。肺がんリスクを推量するために、7分岐位置にて最大CT密度の手動測定を行った。肺がんリスクインデックス(LCRI)は、気道における複数の分岐領域の平均密度偏差を測定することによって実行する。各分岐にて、最大CT密度−分岐近くの低ストレス軟骨領域の平均密度のログ(すなわち、Log(分岐−比較))を行う。ログ関数は、指数関数的な石灰化反応と関連する損傷を推量するために使用する。比較領域測定値の減算は、石灰化における全体的な増大または広範囲にわたる機械的ストレスの影響などの分岐領域において生じ得るその他の石灰化プロセスの影響を除去するために行う。比較領域の選択は、食道、心臓または大動脈などの大きな運動性構造の近くの領域などの、石灰化しない傾向を有する気道部位を避けてなされるべきである。より高度な方法は、分岐の上下の輪状軟骨の平均密度を追跡し、全気道樹とまではいかないが、分岐全域の比較密度を空間的に推量するだろう。分岐の最大密度の測定は、最大平均CT密度を産出する分岐領域の26結合したボクセル2つを同定することにより行った。CTスキャンの直交性リフォーマットは、すべての次元における最大石灰化の見直しを可能にするために許可されるが、厳密に必要とされない。2ピクセルの要求を、CT密度における焦点増大のサイズ閾値をセットするため、およびスキャナノイズの影響への対抗を補助するために使用した。これは、大きな患者を低用量にてスキャンするときに特に重要である。LCRIはまた、本明細書にさらに記述されるように、診断および治療的決定のための閾値を確立するために使用できる。
【0031】
図を、ここで参照するに、図1Aは、気道分岐部の代表的な図面である。図1は、分岐部測定法の詳細を示す。図1は、気道分岐部位での粒子沈着負荷を示す。
【0032】
コンピューター断層撮影法(CT)スキャンは、ヒト気道の高解像度画像を提供し、および気道内腔全体および周囲組織に沿ってX線密度(Hounfsfield UnitsまたはHUとして表わされる)の詳細な測定を提供する。ある気道領域が受ける選択的発がん物質負荷を考慮すると、特に気道分岐部では、これらの領域が正常組織から変化を示すだろうと予想することは合理的である。さらに、これらの部位の初期変化は、その他の肺領域で変化が目に見える前の肺がんリスクの初期指標を表すことも予測される。増大した石灰化は、部分的には、有害であり肺から最終的に除去する必要がある発がん物質およびその他の物質の隔離による可能性もある。
【0033】
たばこ煙に高曝露された個体の高解像度CTスキャンの解析は、気道分岐部およびその他の高屈曲領域のCT密度が増加するように見えることを明らかにする。図1Aに示される方法は、分岐領域における最大強度領域の決定、および比較強度の減算を含む。比較領域は、気道輪状軟骨であり、これを測定して、最大ミネラル化領域である竜骨突起の測定値と比較する。比較強度は、比較領域から得られる測定である。
【0034】
図1Bは、分岐部位での粒子沈着を示す計算流体力学(CFD)シミュレーションである。
【0035】
図2は、粒子流研究に記載されているように分岐部位で高CT密度反応を示す個体の高解解像度CTスキャンからのスライスを示す。いくつかの喫煙者CTスキャンの解析は、強度は低いが、明らかな密度増大を示す。矢印は、有意な石灰化が存在する場所を示す。
【0036】
アスベスト繊維の沈着に関する刊行物は、気道分岐部の高レベルの曝露をまた説明する[3]。
【0037】
文献探索は、分岐部位またはその他の高曝露領域でのX線密度増加の測定の何らの使用を示さないが、恐らくこれは、数量化手段およびごく最近になって利用可能となったCTの使用により主に観測可能であることによる。従って、CT画像およびその他の撮像方法により肺組織損傷を評価する定量的方法は新規であると思われる。
【0038】
1つの特定の理論に拘束されないが、より高い密度は、患部組織の持続的な炎症反応に関連する可能性が高い。気道の主要素である硝子軟骨は、ストレスおよび加齢とともにミネラル化することが知られている。加えて、インターロイキン−6およびインターロイキン−7経路は、炎症が石灰化および緻密化をもたらし得る潜在的なメカニズムを代表する。炎症は、喫煙およびアスベストに関係しており、共通の因果関係を示唆する。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明は、粒子沈着部位にて密度の偏差を定量的に測定することである。本発明の1つの実施形態は、検出限界まで全気道樹のCTスキャンを解析することである。密度偏差の解析(その他のミネラル化潜在源からの)は、曝露のすべての形態に対する全体の個体反応を決定できる。種々の形態の生物学的ストレス、生体力学的ストレスおよびすべての形態の粒子沈着ストレスのモデル化および減算は、肺リスクおよび傷害の型、並びに程度を理解する助けとなることができる。さらなる解析は、気道幾何学解析または流動解析を用いて最高粒子沈着の位置を測定できる。もたらされた測定値は、次いで、全体的または局部的な肺組織曝露反応スコアに組み合わせることができる。気道形状および構造のさらなる解析は、気道全体にわたって行うことができ、および肺がんリスクスコアはこの情報と標準気道機能テストおよび肺気腫スコアリング法を組み合わせることによって形成し得る。マルチエネルギーCTスキャナでのスキャンは、損傷を受けた領域における鉱物の組成を明らかにするはずである。これは、肺がんリスク量に関する情報および治療方法に対する助言を提供し得る損傷反応のさらなる分類を提供する。アプローチのさらなる改良は、年齢および性別を一致させた対照群から偏差を測定する。これは、老化による密度の自然増加を制御するだろう。
【0040】
本方法の別の使用は、治療に対する反応を測定することである。肺機能のCT密度増大における減少は、治療に対する初期反応を示唆し、および治療反応を潜在的に予測できる。
【0041】
図3は、個々の患者データ、これらのCT測定、肺機能測定、測定補正値および計算されたLCRIのスプレッドシートである。データは、閉塞の測定と組み合わせた鉱物沈着の測定が肺がんリスクを決定するための測定基準を提供できるという証拠を提供する。図3は、パックイヤー、性別、年齢およびLCRIとともに測定された被験体の厚みを示す。これに、主要分岐部位からの個体試料識別子および定量的測定データが続く。
【0042】
図3は、右および左分岐部位からのデータをそれぞれ示す。
【0043】
図3は、知見の統計的概要を示し、高曝露領域(粒子沈着)と肺疾患との間の関係を図示する。
【0044】
図3のデータをここで参照するに、本発明の好ましい実施形態のための工程の最小セットは:
【0045】
(1)気道樹の高解像度スキャンを得る(CTスキャンが好ましい)。
【0046】
(2)スキャンした画像における気道樹を追跡し、気道で最も多くの粒子沈着を有する分岐部位を同定する。
【0047】
(3)各高曝露領域にてCT密度を測定し(Hounsfield単位で)、LCRIを形成するために測定値を組み合わせる。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本発明はデータの取得を含む。例えば図3において、スプレッドシートデータは以下の特異的な工程によって得られた:すなわち、
【0049】
(1)以下の特性を有する気道樹の高解像度3D CTスキャンを得る:
(a)2mm以下のスライス厚(市販のものでは約0.5mmのものが最良であり、好ましい)
(b)再構成カーネルは、過度の平滑化も尖鋭化も行うべきでない。GEスキャナには骨カーネルが好ましい。
(c)Zにおけるピクセルスペーシングは、スライス厚以下であるべきである。
(d)XおよびYにおけるピクセルスペーシングは、最良のサンプリング(ナイキストセンスではわずかにオーバーサンプリングが好まれる)のためには、約0.8mm以下であるべきである。
(e)スキャナの管電流(mAとして表される)は、画像ノイズが妥当であるように十分な高さにセットされるべきである。より高いmAが好まれる。
【0050】
(2)スキャン画像における気道樹を追跡し、最も多い粒子沈着を有する位置を同定する。
(a)直交性再フォーマットをサポートするメディカル画像ビューワを使用してCTスライスのスタックを調べることによって、気道樹の分岐部位を検査し見出だす。ウィンドウ/レベルイメージビューイングパラメータは、それぞれ1500および−100にセットした。
(b)自動的に気道樹を追跡し、分岐部位を同定する幾何学モデリング法(例えば、局所的形状または骨格化を同定する3Dヘシアン)が、本発明の範囲内として考えられる。
【0051】
(3)高曝露領域のCT密度を測定し(Hounsfield単位で)、LCRIを形成するために測定を結合する。
(a)各分岐領域を、両側領域を含み、かつ気道を上がって検査する。両ボクセルにわたって最も高いCT密度を産出する分岐部位の位置に2ボクセル領域を置く。頂点または境界を共有するために結合ボクセルが必要である。測定がノイズに左右されず、焦点領域における気道損傷の測定が得られるように、2ボクセル領域を選択した。
(b)分岐部上下の軟骨の平均CT密度を直接測定し(気道の周囲の1/4にわたっている輪状軟骨の測定で十分である)、これを2ボクセル分岐値から減算する。生じた値のログは、分岐部の損傷測定値を推量するために使用される。
(c)個体ごとに、主要分岐部の1つ、左2つ、右2つを含む計5測定を行った。
(d)分岐損傷の全5測定を平均する。
(e)肺の損傷値の平均を、LCRTを形成するためにFEV1/FVC比と組み合わせた。より高いFEV1/FVC比では、より高いミネラル化を要し、肺がんリスクに関して高いと考えられる。単純な分類子(例えば一次の、または多項の)が、FEV1/FVC肺機能で個体のリスクを割り当てるためには十分である。
【0052】
この測定を行うのに好ましい領域が存在し、そこは分岐部の周辺である(しかし、最大密度はこの領域に存在しないので、そこだけで測定を行うのは問題があるかもしれない)。分岐は各末端でより広くなるものと考える。分岐のそれぞれのより広い末端は、測定値を得るための好ましい領域である。この領域は、高曝露され、望ましい測定のためにも十分厚い。分岐部の中央の薄い壁のある構造は、スキャンシステムにおける問題である、部分容積アーティファクト(partial volume artifact)によって密度が減弱される。また、部分容積アーティファクトを考慮し、どれほどのCT密度が薄いゾーンでより低い密度を生み出すかを定量的に見積もることも、本発明の範囲内として考えられる。スキャナPSFおよび分岐組織のコンボリューションに対する空気の寄与は修正できる。
【0053】
別の好ましい実施形態は、気道樹の流れ分析および(a)各最大CT密度ロケーショナーにて粒子沈着負荷を決定すること(b)最高粒子負荷の場所にて密度を測定することを含む。次いで、粒子沈着量を、個体の密度測定の重み付けに使用する。部分容積アーティファクトはCT密度測定値を減少させるので、測定は、測定されている気道のサイズに基づいて重み付けされる。流れ分析とCTスキャン物理学を結合すること(すなわち、部分容積アーティファクト、ノイズ、その他を説明すること)は、この問題を軽減する助けとなる。
【0054】
別の好ましい実施形態は、損傷粒子の質量、形状および電荷を見積もるためにミネラル化のパターンを解析することを含む。より高い質量粒子は、分岐部位にミネラル化のより限局的な領域を作り出す。例えば、重力はアスベスト繊維を下葉に定着させる傾向がある。
【0055】
別の好ましい実施形態は、LCRIに基づいた個別肺がんスクリーニングプロトコルを作製することを含む。FEV1/FVCの測定は、低リスク患者が数年にわたるリスク曲線および状態を得、CTスキャン数および適用範囲を減少させるために使用できる。
【0056】
別の好ましい実施形態は、全体的および局部的インデックスを含む、属性とLCRIの結合に基づいた病変の悪性度の確率を測定することを含む。
【0057】
最後に、この方法の変形は、例えば消化管またはリンパ系の場合など、流れる液体、空気/気体または個体/液体混合物の使用を通じて機能するその他の器官系に適用できる。
【0058】
図4AはLCRI結果のグラフであり、患者年齢に対してプロットされる損傷インデックスを示す。図4Aは、肺がんリスク閾値を確立し得ることを示しており、そこから診断的および治療的決定がなされ得る。
【0059】
図4Aは、女性対照に対する女性がんおよび男性対照に対する男性がんを示す。図4Aは、また15〜40、〜60、〜90、〜100パックイヤー患者のリスク進行を示す。この進行の中で、肺がんリスク閾値を決定できる。従って、個体の位置をこの進行の上で決定できる。従って、5年にわたって2.0〜2.4のLCRIから移動する47歳では、がんを発症する高確率を有する。個体の位置および軌道を考慮して、医師は、療法、検出ストラテジーおよびがん発症の確立を減少させるための行動を患者に助言し、検出確率を増強させることができる。
【0060】
図4Bは、LCRIリスク分散のヒストグラムである。図4Bは、LCRIに対してプロットされる頻度を示し、がんおよび正規母集団がインデックスに沿って分離を示すことを示す。図4Bは、同様の年齢、性別およびパックイヤー特性を有する対照検体と一致させることを考慮すると、がん患者のLCRI分布が対照PCRI分布より高いことを示す。この分離では、正常な生体力学的ミネラル化プロセスを考慮する。2.6にて垂線を引くと、69%の感受性および77%の特異性を生じ、および有益な診断試験を生み出す。
【0061】
図5をここで参照するに、膝のCTスキャンが示される。CTは、鉱物密度および組成に関する情報を提供するだろう。正常鉱物密度または組成と比較した場合、この分析結果は、体関節の炎症および骨関節炎にかかわる情報を提供する。
【0062】
軟骨および特に硝子質の平均CT密度の測定から、当方は増加した鉱物密度および鉱物組成を測定できる。なお、骨増殖体または骨棘(bone spur)は膝の高炎症領域に形成される傾向がある(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Bone_spur参照)。
【0063】
もちろん、硝子軟骨は最も一般的な軟骨の形態であって、その鉱物組成および密度の変化は疾患のバイオマーカーであり、治療反応の測定に潜在的に有用である。
【0064】
硝子軟骨およびその他の組織は、硬化によってストレスおよび老化に反応する。大半の人々において、これはCT密度を変えることができる自然過程である。
【0065】
その他の組織部位は、自然のおよび測定可能な老化反応を有する。粒子沈着および炎症などの増加したストレスは、より急速に組織をミネラル化する。
【0066】
発がん性または毒性の化合物は、このようなミネラル化の中で隔離される。これは、疾患および体内のプロセスを測定するために使用できる。
【0067】
危険物質および刺激物の肺に対する影響は、COPD、肺がんおよび心臓病を含むいくつかの疾患を生じ得る。肺リスク特性(イメージに基づいた特性および肺機能検査)を通じて個体を追跡することは、個体が有するまたは罹患している可能性がある疾患の型および重症度を理解する点で有用である。例えば、気道分岐部にて急速に増大するミネラル化を有するが比較的少ない肺機能の損失を有する個体は、COPDより肺がんにかかる可能性がより高い。
【0068】
リスク、閉塞および沈着/ミネラル化の各々の主要構成要素を異なるサブタイプに分解することは特に有用である。気道閉塞は、(a)気道壁肥厚、(b)肺気腫、または(c)他の要素によって生じ得る。肺機能検査は、閉塞および機能的異常の型を理解するために使用し得る多くの測定からなる。
【0069】
ミネラル化測定は、(a)全体の気道ミネラル化、(b)分岐部の石灰化の程度の測定、または(c)肺の全体にわたる石灰化の異なるパターンに分解できる。特に、分岐周囲のミネラル化パターンおよびこれらの全体的な分布は、当方に発がん物質/刺激物およびそれに対する体の反応についての多くを教示できる。例えば、より大きなアスベスト粒子は、堆積して重力の影響により肺底に形成する傾向がある。二重エネルギーCT情報は、それにより当方に発がん物質/刺激物の型およびそれに対する個体の反応について、さらに教示するだろう。
【0070】
これらの各測定により個体の位置および軌道を時間とともにマッピングすることは、個体が現在有するおよび将来直面する可能性がある疾患の型について有用な情報を提供するだろう。これは、肺がん、COPDおよびその他の呼吸器疾患のために患者を管理および治療することにおいて、極めて有用だろう。この情報はまた(単独で、またはさらなる心臓測定と結合して)、心臓病および心機能の現在の状態および将来の状態を理解することにおいて有用となり得る。
【0071】
方法は、このプロセスを使用する体全体のいくつかの部位での老化の測定のために、本明細書に意図される。CTはそれを測定する1つの方法であるが、生検およびその他のスキャニング方法もこれらの診断試験のために使用できる。以下を含む多くの疾患の測定に関する支援があるように思われる。
【0072】
肺がん:
分岐部およびその他の部位を測定し、ミネラル化の量および割合を測定する。これは、肺がんと相関するように思われる。
【0073】
骨関節炎:
関節およびその他の部位にて硝子軟骨の鉱物含量の変化を測定する。
【0074】
以下の記事は、関節/硝子軟骨の骨化プロセスを支持する論文を評する。
http://www.peprotech.com/content/focusarticles.htm?id=72
【0075】
また以下の記事は、肢の固定化(軟骨にストレスを生じる)がCTで測定できる増大したミネラル化を引き起こすこと示す:
http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0100-879X2004000400006
【0076】
別の記事は、マイクロCTにおける鉱物化測定能力を記述する:
http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6WP3-4CHRY50-1&_user=10&_rdoc=1&_fmt=&_orig=search&_sort=d&view=c&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=1c87e9e52f0252b0fcbeb069bb27f0f8
【0077】
骨関節炎、および特に、軟骨に生じる微小ミネラル化プロセスを研究することは、疾患、進行および治療反応を測定する実行可能な方法をもたらす、平年偏差の決定を提供するように思われる。
【0078】
心臓および血管の疾患:
また、微妙な変化をそこで測定するために、特に硝子軟骨が含まれる部位で、血管および心臓組織の自然のミネラル化プロセスを決定し得ることが意図される。
【0079】
胃腸管
食道/消化管はまた、ミネラル化の定量によりストレスを測定し得るもう1つの部位であるように思われる。
http://www.springerlink.com/content/h071q457134h1311/。
【0080】
これは、肺のCT事例を解析するために本明細書に記述されるものと同様の方法で観察できる。
【0081】
図6は、食道の石灰化例のイメージを示す。赤い輪郭は石灰化の部位を示す。図6は、軟骨の平均CT密度が測定される食道のCTスキャンである。図6は、ミネラル化検出が、組織損傷が増加したミネラル化を生じるがん、GERD、Barrett、その他を含む胃腸疾患の決定に役立ち得ることを示す。
【0082】
診断システム
別の実施形態では、複数の画像を発生させるものとして当該技術分野において公知の医用撮像装置、特にコンピューター断層撮影(CT)システムを含むシステムが提供される。
【0083】
CT撮像時間の間に、個体は水平に横たわり、および複数のX線に曝露されて一連のX線検出器で測定される。X線のビームは、個体の特定の薄い横断面または「スライス」を通過する。検出器が透過線の量を測定する。この情報は、体の標本点のX線注目係数(attention coefficient)を計算するために使用される。次いで、グレースケール画像が算出されたX線減衰係数に基づいて構築される。画像のグレーの色調は、スライスの中であらゆる点のX線吸収量を対照させる。CTセッションの間に得られたスライスは、再構築されて、X線に曝露された体の中の関心領域の解剖学的に正確な描写を提供する。
【0084】
初期CT画像が得られると、画像は一般にセグメント化される。セグメント化プロセスは、画像のピクセルまたはボクセルを、いくつかの特徴(すなわち強度、質感、その他)に関して一様な一定のクラスに分類する。例えば、脳のセグメント化画像において、脳物質は、3つのクラスに分類できる:灰白質、白質および脳脊髄液。セグメント化が完了した後、個別の色をそれぞれのクラスの領域に印をつけるために使用できる。セグメント化画像が現像されると、外科医は外科的技術を計画するためにセグメント化画像を使用できる。
【0085】
一般に、セグメント化CT画像を作製することは、いくつかの工程を含む。データセットは、データのCTスライスを取得することによって作製される。セグメント化プロセスを介して、グレースケール値が次いでデータセットにおけるそれぞれの位置に割り当てられ、異なる型の組織は異なるグレースケール値を有するだろう。データにおける各タイプの物質は特定の値を割り当てられ、従って、その物質のそれぞれの存在は同じグレースケール値を有する。例えば、特定の画像における骨のすべての存在は、淡いグレーの特定の色調に見えてもよい。着色のこの基準は、画像を見る個体が、画像に表されている物体を容易に理解できるようする。
【0086】
医療画像システムの1つの実施形態は、CT撮像装置またはスキャナ、プロセッサおよびインターフェースユニットを含む。CT撮像装置は、複数の画像データセットを生み出す。CTとの関連で、画像情報の獲得は一般に「スキャン」といわれる。プロセッサは、本発明の実施形態に従って計算を行うように設定し、また、計算を行い、および再構成、画像データ記憶貯蔵、セグメント化等などの周知の画像処理技術の機能を制御するように設定する。プロセッサは、マイクロプロセッサのような単一集積回路などの中央処理装置(CPU)を含んでいてもよく、また中央処理装置の機能を遂行するために協力して働く任意の適当な数の集積回路装置および/または回路基板を含んでいてもよい。プロセッサは望ましくはメモリを含む。プロセッサ内のメモリは、当業者に公知の任意の型メモリを含んでいてもよい。これは、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)、フラッシュメモリ、キャッシュメモリ、その他を含む。メモリは、単一の型のメモリ要素でもよく、または多くの異なる型のメモリ要素で構成してもよい。プロセッサはまた、メモリに含まれるプログラムを実行でき、これらのプログラムまたは画像獲得および画像視聴の経過で生じ得るその他のアクティビティーに応答して作用し得る。本明細書に使用される、「適合された」、「設定された」およびその他は、要素を上述の効果を提供するために協調させ得る要素間の機械的または構造的接続をいい、これらの用語はまた、アナログもしくはデジタル計算機または与えられた入力信号に応答する出力の提供に続いて実行されるようにプログラムされたアプリケーション特有のデバイス(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))のような電気素子の作業能力をいう。
【0087】
インターフェースユニットはプロセッサに結合されて、ヒト使用者がシステムとやりとりできるように適応される。プロセッサはさらに、ヒト使用者が伝達された情報を解釈できるように、コヒーレントな様式でインターフェースユニットに伝達される計算を行うために適応される。伝達された情報は、2Dまたは3D、カラーおよびグレースケール画像並びに診断および検出情報に関するテキストメッセージを含んでいてもよい。インターフェースユニットは、パーソナルコンピュータ、画像ワークステーション、携帯画像表示ユニットまたは一般にCTシステムの一部として分類される任意の従来型画像表示プラットホームでもよい。
【0088】
個体の複数のスキャンから集められた全データは、1つのデータセットと見なされる。各データセットは、より小さな単位、ピクセルまたはボクセルに分割できる。データセットが二次元の場合、画像はピクセルと呼ばれる単位で構成される。ピクセルは、通常xおよびyという二次元の座標を使用して示すことができる二次元のスペースにおける点である。画像の各ピクセルは、8つのその他のピクセルに囲まれ、9ピクセルが3x3の正方形を形成する。中心ピクセルを囲むこれらの8つのその他のピクセルは、中心ピクセルの8結合した隣接物と見なされる。データセットが三次元の場合、画像はボクセルと呼ばれる単位で示される。ボクセルは、通常x、yおよびzである三次元座標を使用して示すことができる3次元空間における点である。各ボクセルは、26のその他のボクセルによって囲まれる。これらの26のボクセルは、元のボクセルの26結合した隣接物と見なされる。
【0089】
本発明のある実施形態において、診断および疾患の検出に使用するためのコンピューターを使ったシステムは、複数の画像データセットを収集する画像収集デバイスおよびシグナルの階層および解剖学的モデルに基づいた画像データセット内の選択された組織型を分類するように適応するプロセッサを含む。プロセッサはさらに、選択された疾患の診断および検出に使用するための分類された組織型の解剖学的な背景を識別するように適応する。システムはさらに、画像データセット中の分類された組織型および処理された画像データセットの解釈を補助するための分類された組織型の解剖学的背景を示すためのインターフェースユニットを含む。解剖学的モデルは、解剖学的組織のパラメトリックな数学的表現である。解剖学的背景は、肺がんを暗示する肺小結節、健康な肺組織、COPDを暗示する病的肺組織および放射線科医によって特徴付けられ、かつさらに数学的にモデル化し得るその他の組織の病理学的記述の少なくとも1つを含む。
【0090】
ある具体的実施形態では、画像装置はX線CTスキャナである。CTシステムは、特に、関心領域の複数の画像または代わりのスライスを取得するようにうまく適応される。また、この例示的実施形態において、撮像対象は肺である。
【0091】
実施例−個体肺がんリスクを推量するための定量的方法
この実施例では、個体肺がんリスクを推量するための新規の方法の実行が、FEV1/FVCと組み合わせた気道分岐部のCT石灰化密度測定に基づき評価される。
【0092】
13人の初期肺がん患者を、低用量、<=1.25mmのスライス厚および優れた画質を有する全体肺CTデータの利用に基づいたCTスクリーニング研究から選択した。91人のがんのない対照被験者をまた、この基準に加えて各被験体の年齢が+/−10年以内でがん症例のパックイヤーが+/−10年以内である要件で選択した。7/13(54%)がん陽性および70/91(77%)がん陰性スキャンは、1.0mmのスライス厚で行った。2つのがん症例および14の対照症例は女性であった。B80fカーネルを使用した2つの対照症例を除いて、シーメンススキャナおよびB60f再構成カーネルを使用した。肺機能検査は、ATS肺活量測定指針に従ってCTスキャン時間にて実施した。定量的方法は、気道分岐部CT密度およびFEV1/FVCに基づいたLCRIを算出するために開発された。単一のリーダーが、すべてのCT画像測定を手動で行った。
【0093】
全104症例のLCRI測定は、それぞれ69%および79%の肺がん検出感度および特異性を達成した。パックイヤー対照10−29、30−49、50−69および>=70に対する平均LCRI値はそれぞれ2.34、2.46、2.60および2.59であった。対照症例の54/91(59%)は、最低のがん陽性LCRI値以下のLCRI値を有した。FEV1/FVCが50%を超え、CTスライス厚が1.0mmであったサブセットの症例に適用された場合、これは55/74(74%)に増大した。
【0094】
実施例−分岐部損傷測定法
各HRCTスキャンは、Avila氏が標準画像評価機能を用いた医療データ評価アプリケーション(VolView 3.0)を使用して測定した。測定一貫性を維持するために、1500および−100のウィンドウ/レベルセッティングが各データセットの評価に使用された。
【0095】
主要気道分岐部を測定し、最大石灰化を示す各肺の2つの気道分岐部について軸スライス上で視覚的探索を行った。このようにして、5つの分岐を各患者において測定した。竜骨突起または小さな下流領域沿いの最大CT密度を有する2つの26結合ボクセルを平均化して、分岐部密度(BD)を形成した。2つのボクセルは、画像ノイズバイアスを回避するために平均化させた。分岐部の真上の輪状軟骨の証拠の探索を行って、気道の周囲およそ1/4にまたがる軟骨の代表領域の平均密度を測定した。この平均密度は、比較密度(CD)と呼ばれるだろう。CDの測定の間、部分容積アーティファクトおよび石灰化に影響する他の要素(例えば気道の後方半分は石灰化しない傾向がある)を回避するよう注意した。CD値は、限局的なPM沈着に関連がない因子の影響を除去するためにBD値から減算した。ログ関数を、次いで組織が受けた損傷量を反映させるために(BD−CD)値に適用した。これは、石灰化が組織の微小環境における小さな変化に反応して急速に発達する結晶成長プロセスであると記述する生物学的石灰化に関する文献によって部分的に後押しされた。全5分岐の平均値を計算して、最終の一定スキャナ補正因子(CF)をさまざまなスキャナタイプおよびプロトコルを説明するために適用した。補正後のこの平均値は、分岐損傷インデックス(BDI)といわれ、個体の肺がんリスクを推量するために使用された。BDI産出は表1の方程式に要約される。
【0096】
実施例−スキャナ補正係数
この実施例では、スキャナ補正係数を少なくとも1.25mmのスライス厚でスキャンした69の対照被験者の平均BDI値の解析に基づいて構築した。表1における補正係数は、本明細書で使用されるシーメンススキャナの部分容積アーティファクトを説明するために使用される。
【0097】
ファントム解析を利用し、およびスキャナポイントスプレッド関数(PSF)野本になる方法、並びにCTスライスに関する分岐部の向きを含む、スキャナ較正のより強固な形態を使用し得ることが理解される。
【0098】
【0099】
実施例−細気管支および肺胞の損傷測定
本実施例は肺がんリスクを推量するための方法を開示し、FEV1およびFVCスコアがHRCTスキャン時間の近くに得られることを必要とする。これらの呼吸器の操作が、訓練された人員による監督を含む、肺活量測定を行うためのATSガイドラインに従って行われることは特に重要である。FEV1/FVC比は、呼吸器の健康を評価するために一般に使用される測定基準であり、肺がんリスクを推量するために使用した。気道壁肥厚、瘢痕および気道リモデリングの明らかな存在にもかかわらず、FEV1/FVC値に対して補正はなされなかった。
【0100】
実施例−LCRIの計算
この実施例において、本明細書に記述される、データセット開発においてがん患者について計算されたBDIおよびFEV1/FVC値のプロットは、1mmのスライス厚でスキャンされ、55%より大きいFEV1/FVC値を有した6/13患者において線形に近い傾向を示した。このプロットは図7に示してある。直線回帰がこれらのがんデータポイントについて計算され、この直線までの距離をLCRIの計算に使用した。4つのがん症例が55%より大きいFEV1/FVCスコアを有したが、1.25mmのスライス厚にてスキャンされたことに注意すべきである。1mmのスライス厚がんデータ直線回帰と一致して、1.25mmのスライス厚データポイントは同様の勾配を有したがより低いBDI値を有した。これは、スキャナ補正法が完全には部分容積アーティファクトを説明できないことによるだろう。
【0101】
実施例−年齢およびパックイヤー分布
図8を参照するに、HRCTデータおよびFEV1/FVCデータを取得し、手動測定技術を適用した。ここで、BDおよびCD測定値は、主に1つのリーディングセッションにおいて、がん状態または個体のFEV1/FVC値についての知識なしに得られた。
【0102】
実施例−BDIおよびFEV1/FVC値
ここで図9を参照するに、初期の肺がん症例のHRCTスキャンを、各がん症例に加えていくつかのさらなるHRCT症例のために、年齢(性)、性別およびパックイヤーを一致させた4〜5の対照症例とともに概説した。すべての被験体は、初期肺がんのスクリーニング研究の一部としてスキャンした。大部分の症例は男性であった。初期の結果では明らかな性差がなかったため、性別はLCRI方法または結果報告に使用しなかった。1.25mmより大きいスライス厚のデータセットまたは過剰の画像ノイズまたは動きを含んだものは測定しなかった。全症例を、表1に示されるシーメンススキャナにより低用量でスキャンした(乏しいカバーレッジのために測定されなかった1つのSomatom Plus4スキャンを除いて)。少数のB80f症例を除いて、B60f再構成カーネルを使用した。合計15のがん症例および122の対照症例が解析のために提供されたが、22例は不十分なスライス厚または乏しい像質のため解析されなかった。これらの22例のうち、2つのがん症例が除外され、1つは3mmのスライス厚のため、他方は肺の限定されたカバーレッジのため除外された。このデータ収集についての年齢およびパックイヤー分布が図8に示してある。
【0103】
図9は、測定されたすべてのがんおよび対照についてのBDIおよびFEV1/FVCスコアのプロットを示す。この測定空間では、健康で損傷のない肺は右下隅に位置し、高度に損傷を受けた肺は左上隅の方へ位置する傾向がある。
【0104】
実施例−LCRI対年齢
ここで、図10および11を参照するに、図10は、変動するパックイヤーと合わせた被験体の平均LCRI値を示す。部分容積アーティファクトと関連する変動を回避するために、1.0mmのスライス厚でスキャンした症例のみをこの解析に使用した。対照症例はLCRI値の増加を示しているように見える。すべての7つのがん症例は2.70以上のLCRI値を有した。最後に、全症例についての年齢に対するLCRI値のプロットを図11に示す。パックイヤー群は異なる色で示し、年齢および喫煙曝露の増加に伴ったリスクの進行を示すように見える。
【0105】
実施例−自動化法
この実施例では、個体の肺がん発症リスクを推量するための自動化方法が提供される。LCRIを使用して、当方は、分岐部石灰化を測定する手動的方法をより強固なおよび自動化されたソリューションと置き換える。この完全に自動化された方法は、非常により速い実験および洗練された方法を可能とし、さらに手動方法のリーダー内、リーダー間変動を除去する。LCRIを計算するための自動化方法は、4つの主な工程を含む。第1に、5分岐レベルまでの完全な3D気道樹をCTスキャンから完全にセグメント化する。第2に、各分岐の位置およびその竜骨突起の3D範囲の位置を確実に同定する。第3に、竜骨突起近くの最大石灰化の解析、並びに分岐部周囲の平均的石灰化負荷の推量を測定する。気道の分岐部石灰化負荷の全体の分布の推量は、全分岐部が処理され、次いで患者のBDIが計算されたときに確立する。第4に、患者のFEV1/FVCスコアとBDIを、全体のLCRIを形成するために線形分類器を使用して結合した。
【0106】
実施例−気道セグメント化ソフトウェア
この実施例では、自動的に低用量HRCTスキャンで気道樹を検出して追跡するソフトウェアモジュールが提供される。セグメント化の失敗は分岐部石灰化の分布の推量の質を下げるため、高度に正確な気道セグメント化は重要である。もたらされたセグメント化は、次いで、分岐部を同定しLCRIの推量に用いるピクセル領域を定義するための足場として役立つよう利用する。
【0107】
気道セグメント化は、気道の2つの主な特徴である管形状および空気と同様のHU強度値に基づく。管形状は、多重スケールで計算した画像ヘッシアン行列のEigen解析に基づいた、Satoら[1998, Medical Image Analysis 2:143-168]が提唱した方法で測定する。検討されるスケールは、第1と第5の分岐レベルの気道に予想される直径の範囲のものである。すべてのピクセルについて、この方法は管状性(tubularness)値を計算する。画像におけるすべての与えられたピクセルについて、HU強度および管状性の値は、2Dパラメータ空間における位置として使用する。気道構造は、3D CTスキャンにおける空間的な結合性を、HU強度および管状性の2Dパラメータ空間における近接性に基づいた類似性基準と組み合わせて、領域拡張法を使用することにより抽出する。領域拡張のためのシード位置は、CTデータセットにおいて極めて独特な特徴をもたらす、気管の大きな予想半径に基づいて自動的に選択される。
【0108】
パラメータ領域拡大フィルタの出力は二値画像であり、それは等表面(iso-surface)抽出が行われる場合に残念ながら階段効果を生じる。これらの階段は部分列分岐部解析においてアーティファクトを生じ、従って、これらを防止するために、アンチエイリアスレベルセットに基づいたフィルタを、最終の表面抽出前に画像を平滑化するよう、このパイプラインの最後に追加する。アンチエイリアスフィルタは、表面が1つ以上のボクセルによって移動されないことを保証する[29]。図12は、大部分が現在ITKツールキットとして入手可能なフィルタからなる画像処理パイプラインを図示する。セグメント化結果を図13に示す。データセット異常が見いだされる場合、これらは解析され、アルゴリズム補正が開発されるだろう。次いで、すべての主要なセグメント化問題が解決されるまで、アルゴリズム評価およびアルゴリズム補正のサイクルを反復して行うことができる。
【0109】
実施例−気道分岐部および竜骨突起のためのパイプライン
図14をここで参照するに、気道分岐部および竜骨突起を同定するために使用するパイプラインが提供される。次いで、5分岐レベルまでの各分岐部および竜骨突起を自動的に同定するモジュールが開発される。ヒト気道および特に老齢の喫煙者の気道は、非常に広い範囲の気道分岐角度、気道直径の変化、気道セグメントに沿ったおよび分岐部での屈曲、並びに4つもの同時に発生する分岐を含む気道幾何学における大きな変動を示す。加えて、突起、痰および部分的な気道狭窄の存在が、この課題をさらに複雑なものにしている。
【0110】
この方法は、分岐血管樹の幾何学の解析に関する以前の研究に基づく[Antiga et al., 2004 IEEE Trans. Medical Imaging 23:704-713]。ここで、第5レベルまで、気道のセグメント化を含む表面が示される。表面は、それが確実に閉じている必要があれば覆われる。Antigaらにおいて概説されるようにこの表面の中央線を抽出する。これは、これらのドロネー三角形分割から、気道表面における位置の包埋されたボロノイ図を計算することを含む。埋め込まれたボロノイ図は、目的の内部にあるボロノイ図のサブセットであり、ドロネー三角形分割からの除去によって得られ、その外心が気道表面から外れる四面体である。中央線は、ボロノイ多角形の境界上にあることが保証される。次の工程は、高速進行法(fast marching method)を使用するボロノイ球半径に反比例する速度関数で、このボロノイ図上のEikonel方程式を解くことである。この方法は中央線の正確な描写を生み、その正確さは、画像分解より密度が高いメッシュ分解によって決定される。中央線を伴った各位置の半径は、ボロノイ球の半径によって与えられる。生じる中央線樹の形態を解析して、分割および親、各分岐部での子を検出する。図14は、この画像処理パイプラインを図示する。これらの方法のすべては、BSDライセンスの下、ITK[www.itk.org]、VTK[www.vtk.org]およびVMTK[www.vmtk.org]で利用可能である。
【0111】
データセットを評価するために、その竜骨突起を分析的に計算でき、および竜骨突起抽出アルゴリズムを実証するためにこれらを使用する、樹木様の幾何学を分析的に構築する。開発データセットの評価はまた、中央線が正確に抽出されるかどうか、および各分岐部での竜骨突起が計算されることを調べることにより視覚的に行うことができる。
【0112】
実施例−分岐部石灰化解析
本明細書に記述されるように、BDIの算出は、(i)分岐部密度(BD);(ii)比較密度(CD);および(iii)スキャナ補正係数(CF)の正確な測定を必要とする。この実施例では、BDIを算出するために使用される自動化方法が提供される。完全に自動化されたアルゴリズムで、ある症例のすべての上気道分岐部の測定が可能であり、それは損傷の全体の分布を推量するための分布関数に適合する。このデータが標準的な統計的分布によって表される場合、この分布の上尾部の解析は患者のすべての肺領域に関するBDIを創出できる。この分布は、少数の異常分岐値に対してより弾性的であると予測されるだろう。
【0113】
実施例−比較密度
この実施例では、別のBDIの改善、すなわちCDの算出が提供される。第1に、ソリューションが手動測定と同様の操作を実施する。次いで、分岐部を囲む軟骨の増加量およびBDの位置でのCD値を決定するために空間的に補間されたこれらの値を測定する。これは、CD算出の支配とは無関係な密度値を持つ単一の輪状軟骨を防ぎ、従ってより堅固なBDI測定を生じる。
【0114】
実際には、第5世代に至るまでの気道のセグメント化、並びに各分岐部の近くの竜骨突起のセグメント化が既に見出されているため、CDが得られている。Insight ToolKit(ITK)[31]は、ある画像の近傍を歩かせ、手動操作を近傍中の各ボクセルに適用させ得るイテレータを有する。竜骨突起のセグメント化は、歩かされる近傍として使用され、かつ近傍の画像の各ボクセルから算出され、分岐部に関するBD値に到達するように最大26結合した対である。CDを得るために、気道は、以前に算出した中心線を使用して分岐部からの距離cを上っていく。垂直平面は、この位置で気道樹に対して垂直な画像を切断するために使用され、気道境界からの半径方向距離rを与える距離地図が作製されるだろう。
【0115】
アルゴリズムは2つの部分で評価できる。第1に、デジタルファントムのセットを公知のBDIで開発して、あらかじめ定められた気道樹および分岐部セグメント化を使用して、システムの計算の正当性を確認する。第2に、開発データセット、並びに以前の切片からの気道樹および分岐部のセグメント化を考慮して、多数のBDI値を手計算して、プログラムによって計算された値と比較する。
【0116】
実施例−肺がんリスクの推量
この実施例では、開発データセットの種々の群に関するFEV1/FVCおよびBDI値の解析により、並びに増大するがんインデックスの作製に要する幾何学および方向の確立により、全体のLCRIを推量する方法およびシステムが開示される。直線回帰ストラテジーは増大する肺がんリスクの方向を決定するために使用されるが、線形判別分析およびサポートベクター機械解析などのより高度な分類法も本発明の主題の範囲内のものと想定される。これらの方法は、自動化されたアルゴリズムおよび/または個体FEV1およびFVC値などの入手可能な臨床情報、並びに肺機能試験予測割合および年齢、パックイヤーおよび肺気腫の存在などの臨床データから収集されるデータを含むことができる。
【0117】
実施例−自動化された肺がんリスク方法の評価
この実施例では、自動化された肺がんリスク方法を評価するための方法が提供される。2つの測定基準を使用して、自動化されたLCRI方法対手動測定の能力を測定できる。第1の測定基準は、適年齢およびパックイヤーを一致させた対照からがん症例を分離する本方法の能力である。加えて、肺がん発症リスクの優れた推量は、増大するタバコ曝露に相関するはずである。従って、第2の測定基準は、算出LCRIと自己申告パックイヤーとの間の相関度である。曲線下面積(AUC)の計算を含むレシーバオペレータ特性(ROC)アプローチが、開発データセット上の自動化LCRI方法対手動測定法の能力を完全に理解するために採用されるだろう。また、リーブワンアウト(leave-one-out)クロスバリデーションアプローチを、ROC曲線と関連する信頼区間をよく理解するために採用できる。
【0118】
参照文献
[1] HenschkeCI, Yankelevitz DF, Smith JP, et al. “CT screening for lung cancer: assessing a regimen’s diagnostic performance.” Clin Imaging 2004;28:317-21.
[2] Imre Balashazy, Werner Hofmann and Thomas Heistracher, “Local particle deposition patterns may play a key role in the development of lung cancer,” J ApplPhysiol 94: 1719-1725, 2003.
[3] Official Statement of the American Thoracic Society, “Diagnosis and Initial Management of Nonmalignant Diseases Related to Asbestos,” Am J Respir CritCare Med Vol 170. pp 691-715, 2004.
【0119】
本明細書に詳述される参照文献は、特にこれらが当業者のレベルを教示するために、および一般の人が請求された発明の主題を理解するために必要な任意の開示のために関連するため、これらの全体が本明細書に援用される。上記実施形態が改変され得ることまたは本発明の要旨を逸脱しない範囲でわずかな変更がされ得ることは当業者に明らかだろう。従って、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびこれらの衡平法上の均等物の範囲によって決定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、CTスキャンにおける正常部からの鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を測定することによって肺組織損傷を定量的に測定するためのシステム、ソフトウェアおよび方法に関する。これは、肺曝露、損傷、疾患リスクおよび治療応答の測定において、放射線技術をデータ解析と組み合わせて用いることにより使用できる。ここで記述される方法はまた、COPD、食道がん、心臓血管疾患および骨関節炎を含むミネラル化を包含するその他の疾患に適用できる。
【背景技術】
【0002】
国立がん研究所によると、2007年の肺がんの新たな患者数は213,380と試算され、死者数は160,390であると試算される。肺損傷および肺がんのリスクを測定するための信頼できる方法がない。肺がん検診は、年齢および報告された発がん物質への曝露に基づいて、ハイリスクスクリーニング集団を同定する。リスク評価のこの方法は、発がん性への曝露のおおまかな推量を与えるが、(a)広範囲にわたる潜在性肺組織発作に対する損傷および(b)曝露に応答する変化を考慮しない。個体の組織損傷の客観的測定方法が支持されれば、肺がんリスク群のモニタリングおよび管理を改善し、患者のモニタリングおよび治療を個別化するだろう。
【0003】
コンピューター断層撮影は、ここ10年で改善されてきた。米国の大部分の保健機関は現在、数秒でCT肺スキャンスライスを得ることができる。これらのスキャンからのX線減衰測定は、肺がん、COPDおよび関連疾患の進行、並びに管理に関する情報を明らかにする可能性を有する。CT画像特性は、胸の疾患の初期管理に重要な臨床的情報を提供する。スライスCTは、部分固体の肺病変の区別を可能にし、それはベースラインで検出された場合の高確率の悪性度のためにより積極的に管理される。加えて、気道壁厚および肺気腫の広がりについての高解像度CT測定は、COPDの管理に対する新たな洞察を提供する。
【0004】
環境衛生およびエアロゾル科学分野では、肺がんの背後の基本的メカニズムを研究してきた。これらの研究は、肺に取り込まれる粒子状物質が特定の分布パターンを有することを見いだした。ヒト気道における気流パターンの解析は特に重要である。研究は、気道分岐部の竜骨突起およびその他の気道構造に、その他の肺部位より有意に粒子が沈着することを示す。研究はさらに、3または4を超えるいくつかの気道分岐レベルが、他の領域より有意に粒子の負荷を受けることを示した。これらの高曝露部位は、過度の量の粒子負荷を受け、肺の全体にわたって受けた損傷のレベルの初期指標を提供する。
【0005】
気道が反復するストレスおよび加齢によって石灰化する大量の硝子軟骨を含むことが知られている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、CTスキャンにおける正常領域またはストレスの少ない領域から鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を測定することによる肺がんリスクを定量的に測定する方法を提供する。石灰化は、人体における多くの組織全体にわたるストレスへの応答であるから、本発明の方法は損傷およびリスクを測定するために使用でき、COPD、食道がん、心臓血管疾患、靱帯および腱の老化および骨関節炎を含むその他の疾患に適用できる。
【0007】
別の好ましい実施形態では、本発明は、以下の工程を含む肺組織損傷を定量的に測定する方法を含む、i)個体の高解像度CT肺スキャンの取得;ii)CTスキャンの解析、および最高粒子沈着を有する気道組織部位の密度偏差の測定であって、密度偏差は気道幾何解析または流量解析を用いて得られる測定、iii)気道閉塞の局部的および/または全体的程度の測定(例えば、FEV1/FVCは全体的な肺機能測定であり、CT壁厚および肺気腫の測定は局部的である)、並びにv)これらの測定のいずれかとリスクインデックスとの組み合わせ。
【0008】
好ましい実施形態では、本方法は、以下を含む(a)CTスキャンの解析および密度偏差の分析がCTスキャンの気道樹に沿って隣接する低曝露領域からの最大HU密度偏差のログの合計の測定をさらに含む;または(b)最高粒子沈着の位置は、1つまたは複数の分岐部位または湾曲領域を含み、かつ測定を組み合わせる工程では、分岐部位または湾曲領域からの肺損傷の測定を上回る大きな影響をおくことを含む;または(c)CTスキャンが複数エネルギーCTスキャンであり、かつ曝露に対する個体反応を区別するための機能を提供する;または(d)それがさらに、肺がんリスクインデックス(「LCRI」)の評価間の変化を比較する工程であって、治療に対する応答性を決定するために前期比較を使用する工程;または(e)LCRIに測定を組み合わせることには、年齢、性別、喫煙歴、同時罹患率および家族歴などの臨床データの測定基準を調整することを含む;および/または(f)LCRIに測定を組み合わせることには、肺がんと強く関連する肺閉塞の評価基準としてのCOPD壁厚および肺気腫スコアなどのその他のCTデータを加えることを含む。
【0009】
好ましい実施形態では、療法は肺がん療法である。
【0010】
別の好ましい実施形態では、密度およびCT組成測定は、骨の関節表面に位置する硝子軟骨組織から取得し、さらに個体の骨関節炎に関する情報を提供するために使用できる。非損傷関連プロセスのミネラル化反応を計算し、ミネラル化損傷反応のモデルを利用すること(例えば、ミネラル化損傷反応関連の損傷に応答する指数関数的なミネラル化は、組織損傷を推量するためにログ関数を要する)は、骨関節炎の損傷およびリスクレベルを明らかにするだろう。
【0011】
別の好ましい実施形態では、密度および組成CT測定は、血管壁領域および隣接領域から取得され、さらに心血管疾患に関する治療的および/または臨床的情報を提供するために使用され得る。ミネラル化反応の非疾患関連プロセスを計算および減算し、ミネラル化損傷反応モデルを利用すること(例えば、損傷に応答する指数関数的なミネラル化は、組織損傷を推量するために、ログ関数を必要とする)は、従って、心臓血管疾患の損傷およびリスクレベルを明らかにするだろう。
【0012】
別の好ましい実施形態では、密度および組成CT測定は、損傷を評価するために、靱帯および腱から取得される。非疾患関連プロセスのミネラル化反応を計算および減算し、ミネラル化損傷反応のモデルを利用すること(例えば、損傷に応答する指数関数的なミネラル化は、組織損傷を推量ために、ログ関数を必要とする)は、損傷および組織損傷のリスクを明らかにするだろう。
【0013】
本明細書はまた、分岐部または気道輪状軟骨に見られる硝子軟骨のような高曝露部位でのCTスキャンにおける正常部からの鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差を測定すること、並びにこれをFEV1およびFVCのような肺機能情報と組み合わせることにより、肺組織損傷の定量的測定のためのシステムを提供する。
【0014】
もう1つの好ましい実施形態において、本発明は、i)個々の肺組織の高分解能CTスキャンを得るための手段;ii)CTスキャンを解析し、および最高粒子沈着を有している気道組織位置の密度偏差を測定するための手段であって、密度偏差は、気道幾何学解析または流動解析のいずれかを使用して得られる手段;およびiii)LCRIに測定を組み合わせるための手段を含む、肺組織損傷を定量的に測定するためのシステムを提供する。
【0015】
別の好ましい実施形態において、システムは、以下を含む(a)CTスキャンの解析および密度偏差の測定のための手段は、CTスキャンの気道樹に沿って隣接する低曝露領域の最大HU密度偏差のログの合計の測定をさらに含む;または(b)最高粒子沈着の位置は、1つまたは複数の分岐部位または湾曲領域を含みかつ測定の組み合わせのための手段は、分岐部位または湾曲領域の肺損傷の測定により大きな影響をおくことを含む;または(c)CTスキャンが複数エネルギーCTスキャンであり、かつ曝露に対する個体反応をさらに区別するための物質組成特性を提供する;または(d)さらに、肺がんリスクインデックス(「LCRI」)の評価間の変化を比較する手段を含み、かつ治療に対する応答性を決定するために前期比較を使用する;または(e)LCRIに測定を組み合わせる手段は、年齢、性別、喫煙歴、同時罹患率および家族歴のような臨床データの測定基準を調整することをさらに含む;および/または(f)LCRIに測定を組み合わせる手段は、その他のCTデータとCOPD壁厚および肺気腫スコアなどの測定基準に加えること(両者とも肺がんと相関するため)をさらに含む。
【0016】
1つの好ましいシステムでは、療法は、肺がん療法である。
【0017】
別の好ましいシステムにおいて、密度および組成CT測定は、骨の関節の表面に位置する硝子軟骨組織から取得し、および骨関節炎に関する情報を提供するために、さらに使用できる。
【0018】
別の好ましい実施形態では、危険な閉塞および石灰化を同定するために、肺の全領域がコンピュータープログラムで解析される。閉塞の位置を検出して医師に通知する。これは、疾患発症のリスクを減少させるために治療介入が必要とされる場合に使用され得る。
【0019】
別の好ましい実施形態では、分岐部にて見いだされるミネラル化パターンを、損傷を引き起こす粒子の質量、形状および電荷を含む粒子曝露の型および程度を提供するために解析する。
【0020】
別の好ましい実施形態では、受診回数、放射線量、コストおよび検出率を最適化する個別化肺がんスクリーニングプロトコルを作製するために、LCRIが使用される。FEV1/FVCデータと組み合わせたベースラインCTスキャンはLCRIを形成するために結合され、予測されたリスクを徐々に検証するためにフォローアップ計画が引き続いて計算される。スクリーニングの頻度および期間は、個別に最適化できる。CTスキャンより頻繁に肺機能(FEV1/FVC)を測定することによって、低ベースラインリスク患者のためのフォローアップスクリーニング受診を行うことが可能であり、これによりコストおよび用量を減少させる。
【0021】
別の好ましい実施形態では、悪性度の確率を決定するために、LCRIを肺がんが疑われた病変の測定結果および特性と組み合わせる。これは、針生検を行う前に有用である。
【0022】
別の好ましい実施形態では、外科計画ツールは、組織石灰化および潜在性切除を解析し、外科医に疾患リスク最小化のための最良の治療法を提供するための選択肢を与える。これは、いくつかの治療的選択肢と関連するリスクに対する助言を与えることができる。
【0023】
本明細書はまた、本明細書に示したような方法の工程を実行するためのソフトウエアコード部分を含む、デジタルコンピューターのRAMに直接ロード可能なコンピュータープログラム製品を提供し、前述の製品は前述のコンピューター上で実行される。
【0024】
好ましい実施形態では、ソフトウエアコード部分は、ネットワークからダウンロード可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1Aは、気道分岐部の代表的な図面である。図1Aは、分岐部測定法の詳細を示す。図1Bは、分岐部位での粒子沈着を示すシミュレーションである。
【図2】分岐部の石灰化を示すCT画像のパネルである。
【図3】患者データ、そのCT測定結果、肺機能測定結果、補正値およびLCRIのスプレッドシートである。図3は横方向に2ページに及ぶ。ここに報告されたデータは、閉塞の測定と組み合わせた気道部位の沈着の測定が肺がんリスク状態の測定基準を提供し得るという証拠を提供する。
【図4】図4(a)は、LCRI結果のグラフである。図4(a)は、患者年齢に対してプロットされた損傷インデックスを示す。図4(a)は、肺がんリスク閾値を確立でき、そこから診断および治療的決定を下し得ることを示す。図4(b)は、LCRI危険分散のグラフである。図4(b)は、LCRI(LCRI)に対してプロットされた頻度を示す。図4(b)は、がんおよび正常集団がインデックスに沿った分離を示すことを示す。
【図5】軟骨の平均CT密度が測定される膝のCTスキャンである。図5は、ミネラル化測定が骨関節炎の判定に役立つことを示す。
【図6】ミネラル化が存在する食道のCTスキャンである。図6は、ミネラル化がG.I.組織に生じ、腫瘍、GERD、Barrettなどのような、損傷がミネラル化をもたらす胃腸の疾患の判定に役立つことができる。
【図7】横軸にプロットしたFEV1/FVCに対する縦軸にプロットしたBDIを示す散布図/グラフである。図7は、LCRIを確立するために使用されるがん回帰直線を示す。
【図8】横軸上の年齢に対してプロットされる縦軸上のパックイヤーを示す散布図/グラフである。図8は、年齢およびパックイヤー分布を示す。
【図9】縦軸上にプロットしたFEV1/FVCに対する縦軸上にプロットしたBDIを示す散布図/グラフであるが、回帰直線を示さない。
【図10】パックイヤーデータの年齢関連群の中の年齢の範囲に対する縦軸上の平均LCRI値を示す棒グラフである。図10は、対照群と腫瘍群間の差異を示す。
【図11】横軸上の年齢に対してプロットされた縦軸上のLCRIの散布図/グラフである。図11はまた、10−29PY、30−49PY、50−69PYおよび>70PYからの対照の範囲に対するがんデータポイントを示す。
【図12】気道セグメント化のためのパイプラインを示す箱および矢チャートである。
【図13】図13(上部)は、気道区分からの輪郭を示すCT「スライス」である;(左下)LA04方法を使用して抽出された中央気道表面線を示す;(右下)中央線の分岐部がどのように自動抽出され、親/子関係が算出されるかを示す。
【図14】上方に4画像、(i)気道表面、(ii)埋め込まれたボロノイ図、(iii)中央抽出直線および(iv)形態解析をおいた箱および矢線図である。これらは、各分岐部で中央線の分岐部および竜骨突起を同定するために使用される。
【図15】竜骨突起(赤)およびCD算出(青)を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
定義
以下の定義は、本発明の詳細な説明を理解するための助けとして提供される。
【0027】
「硝子軟骨(HYALINE CARTILAGE)」は、身体部分の運動に関与する部位で見出される保護マトリックスをいう。それは、神経や血管を含まない。骨関節の末端を覆う場合を除き、それは線維膜によって覆われる。この膜は軟骨に栄養を提供する。それは丸いまたははっきりとした角の形態の細胞からなり、粒状のまたはほとんど均一なマトリックスの集団の状態にある。細胞群は、一般的に直鎖状の外形を有し、これらが接触しており、残りの外周は丸い。これらは、インターレースフィラメントおよび顆粒が時に存在する透明な原形質からなり、1つまたは2つの円形核がこれに包埋される。細胞は、軟骨小腔と呼ばれるマトリックスの空洞に含まれ、これらの周囲でマトリックスは同心性の線状に並ぶ。これは、いわゆる空間のカプセルを構成する。それぞれの小腔は単細胞に占められるが、細胞分裂の間、それは2、4または8つの細胞を含み得る。硝子軟骨はまた、マトリックスを産生する軟骨の細胞(cartilage cell)である軟骨細胞(chondrocyte)を含む。硝子質の軟骨マトリックスは、両者とも弾性軟骨に見出される、タイプIIコラーゲンおよびコンドロイチン硫酸で大部分構成される。
【0028】
「気道(AIRWAY)」は、空気が外部環境から肺胞に流れる気管支の部分をいう。気道は口または鼻で始まり、咽頭を介して気管にアクセスする。気管は竜骨にて主気管支に分岐し、第2胸椎の高さに位置する。気管支は肺の各葉の1つである細気管支に分岐する。葉内で、気管支は繰り返し再分割し、肺胞群に終わる。
【0029】
用語「肺がんリスクインデックス(LCRI:LUNG CANCER RISK INDEX)」は、下記に記載してある。肺組織に対する小さな発がん性粒子の影響は、過去10年にわたって大規模に研究されてきた。多数の研究が、気道の空気の流れが一定の気道部位に過度の粒子状物質の沈着をもたらすことを報告した。気道樹における分岐部位はかなり多くの粒子沈着を受け、それ故、より強度の損傷を受け、このような部位で肺がんが選択的に形成されるに至る。
【0030】
CTスキャンでの気道分岐部の測定は、分岐の成長につれて気道サイズが急速に減少するため困難である。気道分岐間の分岐領域のサイズは、一定レベルでのCTスキャナポイントスプレッド機能(PSF)のサイズより小さく減少する。高度なCT分析法を使わずに、最初の数分岐だけのCT密度を確実に測定できる。肺がんリスクを推量するために、7分岐位置にて最大CT密度の手動測定を行った。肺がんリスクインデックス(LCRI)は、気道における複数の分岐領域の平均密度偏差を測定することによって実行する。各分岐にて、最大CT密度−分岐近くの低ストレス軟骨領域の平均密度のログ(すなわち、Log(分岐−比較))を行う。ログ関数は、指数関数的な石灰化反応と関連する損傷を推量するために使用する。比較領域測定値の減算は、石灰化における全体的な増大または広範囲にわたる機械的ストレスの影響などの分岐領域において生じ得るその他の石灰化プロセスの影響を除去するために行う。比較領域の選択は、食道、心臓または大動脈などの大きな運動性構造の近くの領域などの、石灰化しない傾向を有する気道部位を避けてなされるべきである。より高度な方法は、分岐の上下の輪状軟骨の平均密度を追跡し、全気道樹とまではいかないが、分岐全域の比較密度を空間的に推量するだろう。分岐の最大密度の測定は、最大平均CT密度を産出する分岐領域の26結合したボクセル2つを同定することにより行った。CTスキャンの直交性リフォーマットは、すべての次元における最大石灰化の見直しを可能にするために許可されるが、厳密に必要とされない。2ピクセルの要求を、CT密度における焦点増大のサイズ閾値をセットするため、およびスキャナノイズの影響への対抗を補助するために使用した。これは、大きな患者を低用量にてスキャンするときに特に重要である。LCRIはまた、本明細書にさらに記述されるように、診断および治療的決定のための閾値を確立するために使用できる。
【0031】
図を、ここで参照するに、図1Aは、気道分岐部の代表的な図面である。図1は、分岐部測定法の詳細を示す。図1は、気道分岐部位での粒子沈着負荷を示す。
【0032】
コンピューター断層撮影法(CT)スキャンは、ヒト気道の高解像度画像を提供し、および気道内腔全体および周囲組織に沿ってX線密度(Hounfsfield UnitsまたはHUとして表わされる)の詳細な測定を提供する。ある気道領域が受ける選択的発がん物質負荷を考慮すると、特に気道分岐部では、これらの領域が正常組織から変化を示すだろうと予想することは合理的である。さらに、これらの部位の初期変化は、その他の肺領域で変化が目に見える前の肺がんリスクの初期指標を表すことも予測される。増大した石灰化は、部分的には、有害であり肺から最終的に除去する必要がある発がん物質およびその他の物質の隔離による可能性もある。
【0033】
たばこ煙に高曝露された個体の高解像度CTスキャンの解析は、気道分岐部およびその他の高屈曲領域のCT密度が増加するように見えることを明らかにする。図1Aに示される方法は、分岐領域における最大強度領域の決定、および比較強度の減算を含む。比較領域は、気道輪状軟骨であり、これを測定して、最大ミネラル化領域である竜骨突起の測定値と比較する。比較強度は、比較領域から得られる測定である。
【0034】
図1Bは、分岐部位での粒子沈着を示す計算流体力学(CFD)シミュレーションである。
【0035】
図2は、粒子流研究に記載されているように分岐部位で高CT密度反応を示す個体の高解解像度CTスキャンからのスライスを示す。いくつかの喫煙者CTスキャンの解析は、強度は低いが、明らかな密度増大を示す。矢印は、有意な石灰化が存在する場所を示す。
【0036】
アスベスト繊維の沈着に関する刊行物は、気道分岐部の高レベルの曝露をまた説明する[3]。
【0037】
文献探索は、分岐部位またはその他の高曝露領域でのX線密度増加の測定の何らの使用を示さないが、恐らくこれは、数量化手段およびごく最近になって利用可能となったCTの使用により主に観測可能であることによる。従って、CT画像およびその他の撮像方法により肺組織損傷を評価する定量的方法は新規であると思われる。
【0038】
1つの特定の理論に拘束されないが、より高い密度は、患部組織の持続的な炎症反応に関連する可能性が高い。気道の主要素である硝子軟骨は、ストレスおよび加齢とともにミネラル化することが知られている。加えて、インターロイキン−6およびインターロイキン−7経路は、炎症が石灰化および緻密化をもたらし得る潜在的なメカニズムを代表する。炎症は、喫煙およびアスベストに関係しており、共通の因果関係を示唆する。
【0039】
好ましい実施形態では、本発明は、粒子沈着部位にて密度の偏差を定量的に測定することである。本発明の1つの実施形態は、検出限界まで全気道樹のCTスキャンを解析することである。密度偏差の解析(その他のミネラル化潜在源からの)は、曝露のすべての形態に対する全体の個体反応を決定できる。種々の形態の生物学的ストレス、生体力学的ストレスおよびすべての形態の粒子沈着ストレスのモデル化および減算は、肺リスクおよび傷害の型、並びに程度を理解する助けとなることができる。さらなる解析は、気道幾何学解析または流動解析を用いて最高粒子沈着の位置を測定できる。もたらされた測定値は、次いで、全体的または局部的な肺組織曝露反応スコアに組み合わせることができる。気道形状および構造のさらなる解析は、気道全体にわたって行うことができ、および肺がんリスクスコアはこの情報と標準気道機能テストおよび肺気腫スコアリング法を組み合わせることによって形成し得る。マルチエネルギーCTスキャナでのスキャンは、損傷を受けた領域における鉱物の組成を明らかにするはずである。これは、肺がんリスク量に関する情報および治療方法に対する助言を提供し得る損傷反応のさらなる分類を提供する。アプローチのさらなる改良は、年齢および性別を一致させた対照群から偏差を測定する。これは、老化による密度の自然増加を制御するだろう。
【0040】
本方法の別の使用は、治療に対する反応を測定することである。肺機能のCT密度増大における減少は、治療に対する初期反応を示唆し、および治療反応を潜在的に予測できる。
【0041】
図3は、個々の患者データ、これらのCT測定、肺機能測定、測定補正値および計算されたLCRIのスプレッドシートである。データは、閉塞の測定と組み合わせた鉱物沈着の測定が肺がんリスクを決定するための測定基準を提供できるという証拠を提供する。図3は、パックイヤー、性別、年齢およびLCRIとともに測定された被験体の厚みを示す。これに、主要分岐部位からの個体試料識別子および定量的測定データが続く。
【0042】
図3は、右および左分岐部位からのデータをそれぞれ示す。
【0043】
図3は、知見の統計的概要を示し、高曝露領域(粒子沈着)と肺疾患との間の関係を図示する。
【0044】
図3のデータをここで参照するに、本発明の好ましい実施形態のための工程の最小セットは:
【0045】
(1)気道樹の高解像度スキャンを得る(CTスキャンが好ましい)。
【0046】
(2)スキャンした画像における気道樹を追跡し、気道で最も多くの粒子沈着を有する分岐部位を同定する。
【0047】
(3)各高曝露領域にてCT密度を測定し(Hounsfield単位で)、LCRIを形成するために測定値を組み合わせる。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本発明はデータの取得を含む。例えば図3において、スプレッドシートデータは以下の特異的な工程によって得られた:すなわち、
【0049】
(1)以下の特性を有する気道樹の高解像度3D CTスキャンを得る:
(a)2mm以下のスライス厚(市販のものでは約0.5mmのものが最良であり、好ましい)
(b)再構成カーネルは、過度の平滑化も尖鋭化も行うべきでない。GEスキャナには骨カーネルが好ましい。
(c)Zにおけるピクセルスペーシングは、スライス厚以下であるべきである。
(d)XおよびYにおけるピクセルスペーシングは、最良のサンプリング(ナイキストセンスではわずかにオーバーサンプリングが好まれる)のためには、約0.8mm以下であるべきである。
(e)スキャナの管電流(mAとして表される)は、画像ノイズが妥当であるように十分な高さにセットされるべきである。より高いmAが好まれる。
【0050】
(2)スキャン画像における気道樹を追跡し、最も多い粒子沈着を有する位置を同定する。
(a)直交性再フォーマットをサポートするメディカル画像ビューワを使用してCTスライスのスタックを調べることによって、気道樹の分岐部位を検査し見出だす。ウィンドウ/レベルイメージビューイングパラメータは、それぞれ1500および−100にセットした。
(b)自動的に気道樹を追跡し、分岐部位を同定する幾何学モデリング法(例えば、局所的形状または骨格化を同定する3Dヘシアン)が、本発明の範囲内として考えられる。
【0051】
(3)高曝露領域のCT密度を測定し(Hounsfield単位で)、LCRIを形成するために測定を結合する。
(a)各分岐領域を、両側領域を含み、かつ気道を上がって検査する。両ボクセルにわたって最も高いCT密度を産出する分岐部位の位置に2ボクセル領域を置く。頂点または境界を共有するために結合ボクセルが必要である。測定がノイズに左右されず、焦点領域における気道損傷の測定が得られるように、2ボクセル領域を選択した。
(b)分岐部上下の軟骨の平均CT密度を直接測定し(気道の周囲の1/4にわたっている輪状軟骨の測定で十分である)、これを2ボクセル分岐値から減算する。生じた値のログは、分岐部の損傷測定値を推量するために使用される。
(c)個体ごとに、主要分岐部の1つ、左2つ、右2つを含む計5測定を行った。
(d)分岐損傷の全5測定を平均する。
(e)肺の損傷値の平均を、LCRTを形成するためにFEV1/FVC比と組み合わせた。より高いFEV1/FVC比では、より高いミネラル化を要し、肺がんリスクに関して高いと考えられる。単純な分類子(例えば一次の、または多項の)が、FEV1/FVC肺機能で個体のリスクを割り当てるためには十分である。
【0052】
この測定を行うのに好ましい領域が存在し、そこは分岐部の周辺である(しかし、最大密度はこの領域に存在しないので、そこだけで測定を行うのは問題があるかもしれない)。分岐は各末端でより広くなるものと考える。分岐のそれぞれのより広い末端は、測定値を得るための好ましい領域である。この領域は、高曝露され、望ましい測定のためにも十分厚い。分岐部の中央の薄い壁のある構造は、スキャンシステムにおける問題である、部分容積アーティファクト(partial volume artifact)によって密度が減弱される。また、部分容積アーティファクトを考慮し、どれほどのCT密度が薄いゾーンでより低い密度を生み出すかを定量的に見積もることも、本発明の範囲内として考えられる。スキャナPSFおよび分岐組織のコンボリューションに対する空気の寄与は修正できる。
【0053】
別の好ましい実施形態は、気道樹の流れ分析および(a)各最大CT密度ロケーショナーにて粒子沈着負荷を決定すること(b)最高粒子負荷の場所にて密度を測定することを含む。次いで、粒子沈着量を、個体の密度測定の重み付けに使用する。部分容積アーティファクトはCT密度測定値を減少させるので、測定は、測定されている気道のサイズに基づいて重み付けされる。流れ分析とCTスキャン物理学を結合すること(すなわち、部分容積アーティファクト、ノイズ、その他を説明すること)は、この問題を軽減する助けとなる。
【0054】
別の好ましい実施形態は、損傷粒子の質量、形状および電荷を見積もるためにミネラル化のパターンを解析することを含む。より高い質量粒子は、分岐部位にミネラル化のより限局的な領域を作り出す。例えば、重力はアスベスト繊維を下葉に定着させる傾向がある。
【0055】
別の好ましい実施形態は、LCRIに基づいた個別肺がんスクリーニングプロトコルを作製することを含む。FEV1/FVCの測定は、低リスク患者が数年にわたるリスク曲線および状態を得、CTスキャン数および適用範囲を減少させるために使用できる。
【0056】
別の好ましい実施形態は、全体的および局部的インデックスを含む、属性とLCRIの結合に基づいた病変の悪性度の確率を測定することを含む。
【0057】
最後に、この方法の変形は、例えば消化管またはリンパ系の場合など、流れる液体、空気/気体または個体/液体混合物の使用を通じて機能するその他の器官系に適用できる。
【0058】
図4AはLCRI結果のグラフであり、患者年齢に対してプロットされる損傷インデックスを示す。図4Aは、肺がんリスク閾値を確立し得ることを示しており、そこから診断的および治療的決定がなされ得る。
【0059】
図4Aは、女性対照に対する女性がんおよび男性対照に対する男性がんを示す。図4Aは、また15〜40、〜60、〜90、〜100パックイヤー患者のリスク進行を示す。この進行の中で、肺がんリスク閾値を決定できる。従って、個体の位置をこの進行の上で決定できる。従って、5年にわたって2.0〜2.4のLCRIから移動する47歳では、がんを発症する高確率を有する。個体の位置および軌道を考慮して、医師は、療法、検出ストラテジーおよびがん発症の確立を減少させるための行動を患者に助言し、検出確率を増強させることができる。
【0060】
図4Bは、LCRIリスク分散のヒストグラムである。図4Bは、LCRIに対してプロットされる頻度を示し、がんおよび正規母集団がインデックスに沿って分離を示すことを示す。図4Bは、同様の年齢、性別およびパックイヤー特性を有する対照検体と一致させることを考慮すると、がん患者のLCRI分布が対照PCRI分布より高いことを示す。この分離では、正常な生体力学的ミネラル化プロセスを考慮する。2.6にて垂線を引くと、69%の感受性および77%の特異性を生じ、および有益な診断試験を生み出す。
【0061】
図5をここで参照するに、膝のCTスキャンが示される。CTは、鉱物密度および組成に関する情報を提供するだろう。正常鉱物密度または組成と比較した場合、この分析結果は、体関節の炎症および骨関節炎にかかわる情報を提供する。
【0062】
軟骨および特に硝子質の平均CT密度の測定から、当方は増加した鉱物密度および鉱物組成を測定できる。なお、骨増殖体または骨棘(bone spur)は膝の高炎症領域に形成される傾向がある(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Bone_spur参照)。
【0063】
もちろん、硝子軟骨は最も一般的な軟骨の形態であって、その鉱物組成および密度の変化は疾患のバイオマーカーであり、治療反応の測定に潜在的に有用である。
【0064】
硝子軟骨およびその他の組織は、硬化によってストレスおよび老化に反応する。大半の人々において、これはCT密度を変えることができる自然過程である。
【0065】
その他の組織部位は、自然のおよび測定可能な老化反応を有する。粒子沈着および炎症などの増加したストレスは、より急速に組織をミネラル化する。
【0066】
発がん性または毒性の化合物は、このようなミネラル化の中で隔離される。これは、疾患および体内のプロセスを測定するために使用できる。
【0067】
危険物質および刺激物の肺に対する影響は、COPD、肺がんおよび心臓病を含むいくつかの疾患を生じ得る。肺リスク特性(イメージに基づいた特性および肺機能検査)を通じて個体を追跡することは、個体が有するまたは罹患している可能性がある疾患の型および重症度を理解する点で有用である。例えば、気道分岐部にて急速に増大するミネラル化を有するが比較的少ない肺機能の損失を有する個体は、COPDより肺がんにかかる可能性がより高い。
【0068】
リスク、閉塞および沈着/ミネラル化の各々の主要構成要素を異なるサブタイプに分解することは特に有用である。気道閉塞は、(a)気道壁肥厚、(b)肺気腫、または(c)他の要素によって生じ得る。肺機能検査は、閉塞および機能的異常の型を理解するために使用し得る多くの測定からなる。
【0069】
ミネラル化測定は、(a)全体の気道ミネラル化、(b)分岐部の石灰化の程度の測定、または(c)肺の全体にわたる石灰化の異なるパターンに分解できる。特に、分岐周囲のミネラル化パターンおよびこれらの全体的な分布は、当方に発がん物質/刺激物およびそれに対する体の反応についての多くを教示できる。例えば、より大きなアスベスト粒子は、堆積して重力の影響により肺底に形成する傾向がある。二重エネルギーCT情報は、それにより当方に発がん物質/刺激物の型およびそれに対する個体の反応について、さらに教示するだろう。
【0070】
これらの各測定により個体の位置および軌道を時間とともにマッピングすることは、個体が現在有するおよび将来直面する可能性がある疾患の型について有用な情報を提供するだろう。これは、肺がん、COPDおよびその他の呼吸器疾患のために患者を管理および治療することにおいて、極めて有用だろう。この情報はまた(単独で、またはさらなる心臓測定と結合して)、心臓病および心機能の現在の状態および将来の状態を理解することにおいて有用となり得る。
【0071】
方法は、このプロセスを使用する体全体のいくつかの部位での老化の測定のために、本明細書に意図される。CTはそれを測定する1つの方法であるが、生検およびその他のスキャニング方法もこれらの診断試験のために使用できる。以下を含む多くの疾患の測定に関する支援があるように思われる。
【0072】
肺がん:
分岐部およびその他の部位を測定し、ミネラル化の量および割合を測定する。これは、肺がんと相関するように思われる。
【0073】
骨関節炎:
関節およびその他の部位にて硝子軟骨の鉱物含量の変化を測定する。
【0074】
以下の記事は、関節/硝子軟骨の骨化プロセスを支持する論文を評する。
http://www.peprotech.com/content/focusarticles.htm?id=72
【0075】
また以下の記事は、肢の固定化(軟骨にストレスを生じる)がCTで測定できる増大したミネラル化を引き起こすこと示す:
http://www.scielo.br/scielo.php?script=sci_arttext&pid=S0100-879X2004000400006
【0076】
別の記事は、マイクロCTにおける鉱物化測定能力を記述する:
http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6WP3-4CHRY50-1&_user=10&_rdoc=1&_fmt=&_orig=search&_sort=d&view=c&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=1c87e9e52f0252b0fcbeb069bb27f0f8
【0077】
骨関節炎、および特に、軟骨に生じる微小ミネラル化プロセスを研究することは、疾患、進行および治療反応を測定する実行可能な方法をもたらす、平年偏差の決定を提供するように思われる。
【0078】
心臓および血管の疾患:
また、微妙な変化をそこで測定するために、特に硝子軟骨が含まれる部位で、血管および心臓組織の自然のミネラル化プロセスを決定し得ることが意図される。
【0079】
胃腸管
食道/消化管はまた、ミネラル化の定量によりストレスを測定し得るもう1つの部位であるように思われる。
http://www.springerlink.com/content/h071q457134h1311/。
【0080】
これは、肺のCT事例を解析するために本明細書に記述されるものと同様の方法で観察できる。
【0081】
図6は、食道の石灰化例のイメージを示す。赤い輪郭は石灰化の部位を示す。図6は、軟骨の平均CT密度が測定される食道のCTスキャンである。図6は、ミネラル化検出が、組織損傷が増加したミネラル化を生じるがん、GERD、Barrett、その他を含む胃腸疾患の決定に役立ち得ることを示す。
【0082】
診断システム
別の実施形態では、複数の画像を発生させるものとして当該技術分野において公知の医用撮像装置、特にコンピューター断層撮影(CT)システムを含むシステムが提供される。
【0083】
CT撮像時間の間に、個体は水平に横たわり、および複数のX線に曝露されて一連のX線検出器で測定される。X線のビームは、個体の特定の薄い横断面または「スライス」を通過する。検出器が透過線の量を測定する。この情報は、体の標本点のX線注目係数(attention coefficient)を計算するために使用される。次いで、グレースケール画像が算出されたX線減衰係数に基づいて構築される。画像のグレーの色調は、スライスの中であらゆる点のX線吸収量を対照させる。CTセッションの間に得られたスライスは、再構築されて、X線に曝露された体の中の関心領域の解剖学的に正確な描写を提供する。
【0084】
初期CT画像が得られると、画像は一般にセグメント化される。セグメント化プロセスは、画像のピクセルまたはボクセルを、いくつかの特徴(すなわち強度、質感、その他)に関して一様な一定のクラスに分類する。例えば、脳のセグメント化画像において、脳物質は、3つのクラスに分類できる:灰白質、白質および脳脊髄液。セグメント化が完了した後、個別の色をそれぞれのクラスの領域に印をつけるために使用できる。セグメント化画像が現像されると、外科医は外科的技術を計画するためにセグメント化画像を使用できる。
【0085】
一般に、セグメント化CT画像を作製することは、いくつかの工程を含む。データセットは、データのCTスライスを取得することによって作製される。セグメント化プロセスを介して、グレースケール値が次いでデータセットにおけるそれぞれの位置に割り当てられ、異なる型の組織は異なるグレースケール値を有するだろう。データにおける各タイプの物質は特定の値を割り当てられ、従って、その物質のそれぞれの存在は同じグレースケール値を有する。例えば、特定の画像における骨のすべての存在は、淡いグレーの特定の色調に見えてもよい。着色のこの基準は、画像を見る個体が、画像に表されている物体を容易に理解できるようする。
【0086】
医療画像システムの1つの実施形態は、CT撮像装置またはスキャナ、プロセッサおよびインターフェースユニットを含む。CT撮像装置は、複数の画像データセットを生み出す。CTとの関連で、画像情報の獲得は一般に「スキャン」といわれる。プロセッサは、本発明の実施形態に従って計算を行うように設定し、また、計算を行い、および再構成、画像データ記憶貯蔵、セグメント化等などの周知の画像処理技術の機能を制御するように設定する。プロセッサは、マイクロプロセッサのような単一集積回路などの中央処理装置(CPU)を含んでいてもよく、また中央処理装置の機能を遂行するために協力して働く任意の適当な数の集積回路装置および/または回路基板を含んでいてもよい。プロセッサは望ましくはメモリを含む。プロセッサ内のメモリは、当業者に公知の任意の型メモリを含んでいてもよい。これは、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックRAM(SRAM)、フラッシュメモリ、キャッシュメモリ、その他を含む。メモリは、単一の型のメモリ要素でもよく、または多くの異なる型のメモリ要素で構成してもよい。プロセッサはまた、メモリに含まれるプログラムを実行でき、これらのプログラムまたは画像獲得および画像視聴の経過で生じ得るその他のアクティビティーに応答して作用し得る。本明細書に使用される、「適合された」、「設定された」およびその他は、要素を上述の効果を提供するために協調させ得る要素間の機械的または構造的接続をいい、これらの用語はまた、アナログもしくはデジタル計算機または与えられた入力信号に応答する出力の提供に続いて実行されるようにプログラムされたアプリケーション特有のデバイス(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))のような電気素子の作業能力をいう。
【0087】
インターフェースユニットはプロセッサに結合されて、ヒト使用者がシステムとやりとりできるように適応される。プロセッサはさらに、ヒト使用者が伝達された情報を解釈できるように、コヒーレントな様式でインターフェースユニットに伝達される計算を行うために適応される。伝達された情報は、2Dまたは3D、カラーおよびグレースケール画像並びに診断および検出情報に関するテキストメッセージを含んでいてもよい。インターフェースユニットは、パーソナルコンピュータ、画像ワークステーション、携帯画像表示ユニットまたは一般にCTシステムの一部として分類される任意の従来型画像表示プラットホームでもよい。
【0088】
個体の複数のスキャンから集められた全データは、1つのデータセットと見なされる。各データセットは、より小さな単位、ピクセルまたはボクセルに分割できる。データセットが二次元の場合、画像はピクセルと呼ばれる単位で構成される。ピクセルは、通常xおよびyという二次元の座標を使用して示すことができる二次元のスペースにおける点である。画像の各ピクセルは、8つのその他のピクセルに囲まれ、9ピクセルが3x3の正方形を形成する。中心ピクセルを囲むこれらの8つのその他のピクセルは、中心ピクセルの8結合した隣接物と見なされる。データセットが三次元の場合、画像はボクセルと呼ばれる単位で示される。ボクセルは、通常x、yおよびzである三次元座標を使用して示すことができる3次元空間における点である。各ボクセルは、26のその他のボクセルによって囲まれる。これらの26のボクセルは、元のボクセルの26結合した隣接物と見なされる。
【0089】
本発明のある実施形態において、診断および疾患の検出に使用するためのコンピューターを使ったシステムは、複数の画像データセットを収集する画像収集デバイスおよびシグナルの階層および解剖学的モデルに基づいた画像データセット内の選択された組織型を分類するように適応するプロセッサを含む。プロセッサはさらに、選択された疾患の診断および検出に使用するための分類された組織型の解剖学的な背景を識別するように適応する。システムはさらに、画像データセット中の分類された組織型および処理された画像データセットの解釈を補助するための分類された組織型の解剖学的背景を示すためのインターフェースユニットを含む。解剖学的モデルは、解剖学的組織のパラメトリックな数学的表現である。解剖学的背景は、肺がんを暗示する肺小結節、健康な肺組織、COPDを暗示する病的肺組織および放射線科医によって特徴付けられ、かつさらに数学的にモデル化し得るその他の組織の病理学的記述の少なくとも1つを含む。
【0090】
ある具体的実施形態では、画像装置はX線CTスキャナである。CTシステムは、特に、関心領域の複数の画像または代わりのスライスを取得するようにうまく適応される。また、この例示的実施形態において、撮像対象は肺である。
【0091】
実施例−個体肺がんリスクを推量するための定量的方法
この実施例では、個体肺がんリスクを推量するための新規の方法の実行が、FEV1/FVCと組み合わせた気道分岐部のCT石灰化密度測定に基づき評価される。
【0092】
13人の初期肺がん患者を、低用量、<=1.25mmのスライス厚および優れた画質を有する全体肺CTデータの利用に基づいたCTスクリーニング研究から選択した。91人のがんのない対照被験者をまた、この基準に加えて各被験体の年齢が+/−10年以内でがん症例のパックイヤーが+/−10年以内である要件で選択した。7/13(54%)がん陽性および70/91(77%)がん陰性スキャンは、1.0mmのスライス厚で行った。2つのがん症例および14の対照症例は女性であった。B80fカーネルを使用した2つの対照症例を除いて、シーメンススキャナおよびB60f再構成カーネルを使用した。肺機能検査は、ATS肺活量測定指針に従ってCTスキャン時間にて実施した。定量的方法は、気道分岐部CT密度およびFEV1/FVCに基づいたLCRIを算出するために開発された。単一のリーダーが、すべてのCT画像測定を手動で行った。
【0093】
全104症例のLCRI測定は、それぞれ69%および79%の肺がん検出感度および特異性を達成した。パックイヤー対照10−29、30−49、50−69および>=70に対する平均LCRI値はそれぞれ2.34、2.46、2.60および2.59であった。対照症例の54/91(59%)は、最低のがん陽性LCRI値以下のLCRI値を有した。FEV1/FVCが50%を超え、CTスライス厚が1.0mmであったサブセットの症例に適用された場合、これは55/74(74%)に増大した。
【0094】
実施例−分岐部損傷測定法
各HRCTスキャンは、Avila氏が標準画像評価機能を用いた医療データ評価アプリケーション(VolView 3.0)を使用して測定した。測定一貫性を維持するために、1500および−100のウィンドウ/レベルセッティングが各データセットの評価に使用された。
【0095】
主要気道分岐部を測定し、最大石灰化を示す各肺の2つの気道分岐部について軸スライス上で視覚的探索を行った。このようにして、5つの分岐を各患者において測定した。竜骨突起または小さな下流領域沿いの最大CT密度を有する2つの26結合ボクセルを平均化して、分岐部密度(BD)を形成した。2つのボクセルは、画像ノイズバイアスを回避するために平均化させた。分岐部の真上の輪状軟骨の証拠の探索を行って、気道の周囲およそ1/4にまたがる軟骨の代表領域の平均密度を測定した。この平均密度は、比較密度(CD)と呼ばれるだろう。CDの測定の間、部分容積アーティファクトおよび石灰化に影響する他の要素(例えば気道の後方半分は石灰化しない傾向がある)を回避するよう注意した。CD値は、限局的なPM沈着に関連がない因子の影響を除去するためにBD値から減算した。ログ関数を、次いで組織が受けた損傷量を反映させるために(BD−CD)値に適用した。これは、石灰化が組織の微小環境における小さな変化に反応して急速に発達する結晶成長プロセスであると記述する生物学的石灰化に関する文献によって部分的に後押しされた。全5分岐の平均値を計算して、最終の一定スキャナ補正因子(CF)をさまざまなスキャナタイプおよびプロトコルを説明するために適用した。補正後のこの平均値は、分岐損傷インデックス(BDI)といわれ、個体の肺がんリスクを推量するために使用された。BDI産出は表1の方程式に要約される。
【0096】
実施例−スキャナ補正係数
この実施例では、スキャナ補正係数を少なくとも1.25mmのスライス厚でスキャンした69の対照被験者の平均BDI値の解析に基づいて構築した。表1における補正係数は、本明細書で使用されるシーメンススキャナの部分容積アーティファクトを説明するために使用される。
【0097】
ファントム解析を利用し、およびスキャナポイントスプレッド関数(PSF)野本になる方法、並びにCTスライスに関する分岐部の向きを含む、スキャナ較正のより強固な形態を使用し得ることが理解される。
【0098】
【0099】
実施例−細気管支および肺胞の損傷測定
本実施例は肺がんリスクを推量するための方法を開示し、FEV1およびFVCスコアがHRCTスキャン時間の近くに得られることを必要とする。これらの呼吸器の操作が、訓練された人員による監督を含む、肺活量測定を行うためのATSガイドラインに従って行われることは特に重要である。FEV1/FVC比は、呼吸器の健康を評価するために一般に使用される測定基準であり、肺がんリスクを推量するために使用した。気道壁肥厚、瘢痕および気道リモデリングの明らかな存在にもかかわらず、FEV1/FVC値に対して補正はなされなかった。
【0100】
実施例−LCRIの計算
この実施例において、本明細書に記述される、データセット開発においてがん患者について計算されたBDIおよびFEV1/FVC値のプロットは、1mmのスライス厚でスキャンされ、55%より大きいFEV1/FVC値を有した6/13患者において線形に近い傾向を示した。このプロットは図7に示してある。直線回帰がこれらのがんデータポイントについて計算され、この直線までの距離をLCRIの計算に使用した。4つのがん症例が55%より大きいFEV1/FVCスコアを有したが、1.25mmのスライス厚にてスキャンされたことに注意すべきである。1mmのスライス厚がんデータ直線回帰と一致して、1.25mmのスライス厚データポイントは同様の勾配を有したがより低いBDI値を有した。これは、スキャナ補正法が完全には部分容積アーティファクトを説明できないことによるだろう。
【0101】
実施例−年齢およびパックイヤー分布
図8を参照するに、HRCTデータおよびFEV1/FVCデータを取得し、手動測定技術を適用した。ここで、BDおよびCD測定値は、主に1つのリーディングセッションにおいて、がん状態または個体のFEV1/FVC値についての知識なしに得られた。
【0102】
実施例−BDIおよびFEV1/FVC値
ここで図9を参照するに、初期の肺がん症例のHRCTスキャンを、各がん症例に加えていくつかのさらなるHRCT症例のために、年齢(性)、性別およびパックイヤーを一致させた4〜5の対照症例とともに概説した。すべての被験体は、初期肺がんのスクリーニング研究の一部としてスキャンした。大部分の症例は男性であった。初期の結果では明らかな性差がなかったため、性別はLCRI方法または結果報告に使用しなかった。1.25mmより大きいスライス厚のデータセットまたは過剰の画像ノイズまたは動きを含んだものは測定しなかった。全症例を、表1に示されるシーメンススキャナにより低用量でスキャンした(乏しいカバーレッジのために測定されなかった1つのSomatom Plus4スキャンを除いて)。少数のB80f症例を除いて、B60f再構成カーネルを使用した。合計15のがん症例および122の対照症例が解析のために提供されたが、22例は不十分なスライス厚または乏しい像質のため解析されなかった。これらの22例のうち、2つのがん症例が除外され、1つは3mmのスライス厚のため、他方は肺の限定されたカバーレッジのため除外された。このデータ収集についての年齢およびパックイヤー分布が図8に示してある。
【0103】
図9は、測定されたすべてのがんおよび対照についてのBDIおよびFEV1/FVCスコアのプロットを示す。この測定空間では、健康で損傷のない肺は右下隅に位置し、高度に損傷を受けた肺は左上隅の方へ位置する傾向がある。
【0104】
実施例−LCRI対年齢
ここで、図10および11を参照するに、図10は、変動するパックイヤーと合わせた被験体の平均LCRI値を示す。部分容積アーティファクトと関連する変動を回避するために、1.0mmのスライス厚でスキャンした症例のみをこの解析に使用した。対照症例はLCRI値の増加を示しているように見える。すべての7つのがん症例は2.70以上のLCRI値を有した。最後に、全症例についての年齢に対するLCRI値のプロットを図11に示す。パックイヤー群は異なる色で示し、年齢および喫煙曝露の増加に伴ったリスクの進行を示すように見える。
【0105】
実施例−自動化法
この実施例では、個体の肺がん発症リスクを推量するための自動化方法が提供される。LCRIを使用して、当方は、分岐部石灰化を測定する手動的方法をより強固なおよび自動化されたソリューションと置き換える。この完全に自動化された方法は、非常により速い実験および洗練された方法を可能とし、さらに手動方法のリーダー内、リーダー間変動を除去する。LCRIを計算するための自動化方法は、4つの主な工程を含む。第1に、5分岐レベルまでの完全な3D気道樹をCTスキャンから完全にセグメント化する。第2に、各分岐の位置およびその竜骨突起の3D範囲の位置を確実に同定する。第3に、竜骨突起近くの最大石灰化の解析、並びに分岐部周囲の平均的石灰化負荷の推量を測定する。気道の分岐部石灰化負荷の全体の分布の推量は、全分岐部が処理され、次いで患者のBDIが計算されたときに確立する。第4に、患者のFEV1/FVCスコアとBDIを、全体のLCRIを形成するために線形分類器を使用して結合した。
【0106】
実施例−気道セグメント化ソフトウェア
この実施例では、自動的に低用量HRCTスキャンで気道樹を検出して追跡するソフトウェアモジュールが提供される。セグメント化の失敗は分岐部石灰化の分布の推量の質を下げるため、高度に正確な気道セグメント化は重要である。もたらされたセグメント化は、次いで、分岐部を同定しLCRIの推量に用いるピクセル領域を定義するための足場として役立つよう利用する。
【0107】
気道セグメント化は、気道の2つの主な特徴である管形状および空気と同様のHU強度値に基づく。管形状は、多重スケールで計算した画像ヘッシアン行列のEigen解析に基づいた、Satoら[1998, Medical Image Analysis 2:143-168]が提唱した方法で測定する。検討されるスケールは、第1と第5の分岐レベルの気道に予想される直径の範囲のものである。すべてのピクセルについて、この方法は管状性(tubularness)値を計算する。画像におけるすべての与えられたピクセルについて、HU強度および管状性の値は、2Dパラメータ空間における位置として使用する。気道構造は、3D CTスキャンにおける空間的な結合性を、HU強度および管状性の2Dパラメータ空間における近接性に基づいた類似性基準と組み合わせて、領域拡張法を使用することにより抽出する。領域拡張のためのシード位置は、CTデータセットにおいて極めて独特な特徴をもたらす、気管の大きな予想半径に基づいて自動的に選択される。
【0108】
パラメータ領域拡大フィルタの出力は二値画像であり、それは等表面(iso-surface)抽出が行われる場合に残念ながら階段効果を生じる。これらの階段は部分列分岐部解析においてアーティファクトを生じ、従って、これらを防止するために、アンチエイリアスレベルセットに基づいたフィルタを、最終の表面抽出前に画像を平滑化するよう、このパイプラインの最後に追加する。アンチエイリアスフィルタは、表面が1つ以上のボクセルによって移動されないことを保証する[29]。図12は、大部分が現在ITKツールキットとして入手可能なフィルタからなる画像処理パイプラインを図示する。セグメント化結果を図13に示す。データセット異常が見いだされる場合、これらは解析され、アルゴリズム補正が開発されるだろう。次いで、すべての主要なセグメント化問題が解決されるまで、アルゴリズム評価およびアルゴリズム補正のサイクルを反復して行うことができる。
【0109】
実施例−気道分岐部および竜骨突起のためのパイプライン
図14をここで参照するに、気道分岐部および竜骨突起を同定するために使用するパイプラインが提供される。次いで、5分岐レベルまでの各分岐部および竜骨突起を自動的に同定するモジュールが開発される。ヒト気道および特に老齢の喫煙者の気道は、非常に広い範囲の気道分岐角度、気道直径の変化、気道セグメントに沿ったおよび分岐部での屈曲、並びに4つもの同時に発生する分岐を含む気道幾何学における大きな変動を示す。加えて、突起、痰および部分的な気道狭窄の存在が、この課題をさらに複雑なものにしている。
【0110】
この方法は、分岐血管樹の幾何学の解析に関する以前の研究に基づく[Antiga et al., 2004 IEEE Trans. Medical Imaging 23:704-713]。ここで、第5レベルまで、気道のセグメント化を含む表面が示される。表面は、それが確実に閉じている必要があれば覆われる。Antigaらにおいて概説されるようにこの表面の中央線を抽出する。これは、これらのドロネー三角形分割から、気道表面における位置の包埋されたボロノイ図を計算することを含む。埋め込まれたボロノイ図は、目的の内部にあるボロノイ図のサブセットであり、ドロネー三角形分割からの除去によって得られ、その外心が気道表面から外れる四面体である。中央線は、ボロノイ多角形の境界上にあることが保証される。次の工程は、高速進行法(fast marching method)を使用するボロノイ球半径に反比例する速度関数で、このボロノイ図上のEikonel方程式を解くことである。この方法は中央線の正確な描写を生み、その正確さは、画像分解より密度が高いメッシュ分解によって決定される。中央線を伴った各位置の半径は、ボロノイ球の半径によって与えられる。生じる中央線樹の形態を解析して、分割および親、各分岐部での子を検出する。図14は、この画像処理パイプラインを図示する。これらの方法のすべては、BSDライセンスの下、ITK[www.itk.org]、VTK[www.vtk.org]およびVMTK[www.vmtk.org]で利用可能である。
【0111】
データセットを評価するために、その竜骨突起を分析的に計算でき、および竜骨突起抽出アルゴリズムを実証するためにこれらを使用する、樹木様の幾何学を分析的に構築する。開発データセットの評価はまた、中央線が正確に抽出されるかどうか、および各分岐部での竜骨突起が計算されることを調べることにより視覚的に行うことができる。
【0112】
実施例−分岐部石灰化解析
本明細書に記述されるように、BDIの算出は、(i)分岐部密度(BD);(ii)比較密度(CD);および(iii)スキャナ補正係数(CF)の正確な測定を必要とする。この実施例では、BDIを算出するために使用される自動化方法が提供される。完全に自動化されたアルゴリズムで、ある症例のすべての上気道分岐部の測定が可能であり、それは損傷の全体の分布を推量するための分布関数に適合する。このデータが標準的な統計的分布によって表される場合、この分布の上尾部の解析は患者のすべての肺領域に関するBDIを創出できる。この分布は、少数の異常分岐値に対してより弾性的であると予測されるだろう。
【0113】
実施例−比較密度
この実施例では、別のBDIの改善、すなわちCDの算出が提供される。第1に、ソリューションが手動測定と同様の操作を実施する。次いで、分岐部を囲む軟骨の増加量およびBDの位置でのCD値を決定するために空間的に補間されたこれらの値を測定する。これは、CD算出の支配とは無関係な密度値を持つ単一の輪状軟骨を防ぎ、従ってより堅固なBDI測定を生じる。
【0114】
実際には、第5世代に至るまでの気道のセグメント化、並びに各分岐部の近くの竜骨突起のセグメント化が既に見出されているため、CDが得られている。Insight ToolKit(ITK)[31]は、ある画像の近傍を歩かせ、手動操作を近傍中の各ボクセルに適用させ得るイテレータを有する。竜骨突起のセグメント化は、歩かされる近傍として使用され、かつ近傍の画像の各ボクセルから算出され、分岐部に関するBD値に到達するように最大26結合した対である。CDを得るために、気道は、以前に算出した中心線を使用して分岐部からの距離cを上っていく。垂直平面は、この位置で気道樹に対して垂直な画像を切断するために使用され、気道境界からの半径方向距離rを与える距離地図が作製されるだろう。
【0115】
アルゴリズムは2つの部分で評価できる。第1に、デジタルファントムのセットを公知のBDIで開発して、あらかじめ定められた気道樹および分岐部セグメント化を使用して、システムの計算の正当性を確認する。第2に、開発データセット、並びに以前の切片からの気道樹および分岐部のセグメント化を考慮して、多数のBDI値を手計算して、プログラムによって計算された値と比較する。
【0116】
実施例−肺がんリスクの推量
この実施例では、開発データセットの種々の群に関するFEV1/FVCおよびBDI値の解析により、並びに増大するがんインデックスの作製に要する幾何学および方向の確立により、全体のLCRIを推量する方法およびシステムが開示される。直線回帰ストラテジーは増大する肺がんリスクの方向を決定するために使用されるが、線形判別分析およびサポートベクター機械解析などのより高度な分類法も本発明の主題の範囲内のものと想定される。これらの方法は、自動化されたアルゴリズムおよび/または個体FEV1およびFVC値などの入手可能な臨床情報、並びに肺機能試験予測割合および年齢、パックイヤーおよび肺気腫の存在などの臨床データから収集されるデータを含むことができる。
【0117】
実施例−自動化された肺がんリスク方法の評価
この実施例では、自動化された肺がんリスク方法を評価するための方法が提供される。2つの測定基準を使用して、自動化されたLCRI方法対手動測定の能力を測定できる。第1の測定基準は、適年齢およびパックイヤーを一致させた対照からがん症例を分離する本方法の能力である。加えて、肺がん発症リスクの優れた推量は、増大するタバコ曝露に相関するはずである。従って、第2の測定基準は、算出LCRIと自己申告パックイヤーとの間の相関度である。曲線下面積(AUC)の計算を含むレシーバオペレータ特性(ROC)アプローチが、開発データセット上の自動化LCRI方法対手動測定法の能力を完全に理解するために採用されるだろう。また、リーブワンアウト(leave-one-out)クロスバリデーションアプローチを、ROC曲線と関連する信頼区間をよく理解するために採用できる。
【0118】
参照文献
[1] HenschkeCI, Yankelevitz DF, Smith JP, et al. “CT screening for lung cancer: assessing a regimen’s diagnostic performance.” Clin Imaging 2004;28:317-21.
[2] Imre Balashazy, Werner Hofmann and Thomas Heistracher, “Local particle deposition patterns may play a key role in the development of lung cancer,” J ApplPhysiol 94: 1719-1725, 2003.
[3] Official Statement of the American Thoracic Society, “Diagnosis and Initial Management of Nonmalignant Diseases Related to Asbestos,” Am J Respir CritCare Med Vol 170. pp 691-715, 2004.
【0119】
本明細書に詳述される参照文献は、特にこれらが当業者のレベルを教示するために、および一般の人が請求された発明の主題を理解するために必要な任意の開示のために関連するため、これらの全体が本明細書に援用される。上記実施形態が改変され得ることまたは本発明の要旨を逸脱しない範囲でわずかな変更がされ得ることは当業者に明らかだろう。従って、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびこれらの衡平法上の均等物の範囲によって決定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における組織の鉱物化を定量的に測定する方法であって:前記組織の鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差をCTスキャンにおいて測定すること;前記偏差を、CTスキャンにおいて正常またはストレスの少ない組織領域と比較して、組織損傷インデックスを提供することを含む方法。
【請求項1】
個体における組織の鉱物化を定量的に測定する方法であって:前記組織の鉱物密度偏差および/または鉱物組成偏差をCTスキャンにおいて測定すること;前記偏差を、CTスキャンにおいて正常またはストレスの少ない組織領域と比較して、組織損傷インデックスを提供することを含む方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2011−524754(P2011−524754A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546914(P2010−546914)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/034021
【国際公開番号】WO2009/102930
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510221582)キットウェア インク (1)
【出願人】(311007969)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【国際出願番号】PCT/US2009/034021
【国際公開番号】WO2009/102930
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510221582)キットウェア インク (1)
【出願人】(311007969)
【Fターム(参考)】
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