説明

細胞周期弁別方法、その画像処理システム、及びそのプログラム

【課題】 本発明は、細胞周期をより正確に弁別する方法を提供する。
【解決手段】 スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色し、所定の励起波長光を照射させることにより蛍光を発生させて、該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する細胞周期弁別方法は、異なる2つの蛍光波長に対応する画像を生成し、該画像に基づいて細胞の細胞質の領域と細胞核の領域と核小体の領域とを判別し、該画像から核DNA量に対応する蛍光量を測定し、該画像から前記各細胞の大きさに対する該細胞の発する蛍光量の比または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定し、該画像から各細胞核の領域内での核小体の数を検出し、該画像から細胞核の色調を計測し、該画像から前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測することにより、上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトメータによる細胞周期の弁別技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スライドグラス上の細胞集団に対して、レーザ(レーザビーム)を収束させたスポットで走査し、この細胞集団の個々の細胞が発する蛍光を検出し、走査画像データを画像処理して個々の細胞データを抽出して測定する「生物標本の複数の光学的特性を測定する方法及び装置」(「レーザ走査型サイトメータ(LSC:Laser Scanning Cytometer)」)が開示されている。
【0003】
LSCに限らず、従来からフローサイトメータも細胞診の重要なツールとして使用されてきた。両者ともそれぞれの特長を生かした機能を持っている。両者に共通の機能である細胞周期の分別は、以下に述べるようにサイトメトリの基本的な機能として様々な用途との関連が非常に強い機能である。
【0004】
サイトメータの典型的な医学生物学的研究用途の1つとして、がん腫瘍の解析がある。がん腫瘍の解析では、がん腫瘍において、特に「増殖性」という性質が重要になる。この「増殖性」は、細胞分裂周期の安定期・DNA合成期・分裂期に属する細胞個数比率によって統計的な数値指標として客観的に表現することができる。
【0005】
また、サイトメータには、細胞の分裂周期の段階と、各種バイオセンサーを組み合わせてアポートーシスのメカニズムをより詳しく研究するという用途もある。
また、S期細胞を用いることによって、小核形成を効率よく定量的に測定でき、染色体異常の状況を正確に分析することもできる。
【特許文献1】特開平3−255365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
走査型サイトメータ(LSC)は、上述したように、統計的数値指標を提供することができる。また、LSCは、細胞分裂周期内の特定の期(例えば、分裂中期)に属する細胞データを指定して個々の細胞を顕微鏡視野内に順次呼び出すリコール観察機能により、形態的な検討を顕微鏡下で行うことができる。
【0007】
しかし、LSCは、技術的にはフローサイトメータの手法を継承発展させたものであるために、LSCによる細胞周期の判定は、DNA量とクロマチン(細胞核内染色質)凝集度のスキャッタグラムから判定するというレベルに留まっていた。
【0008】
ここで、細胞周期のスキャッタグラムとは、図11に示すような2次元グラフのことをいう。同図のスキャッタグラムにおいて、X座標軸は全蛍光光量(DNA量)を表し、Y
座標軸は核DNA(クロマチン)の凝集度または細胞核の各点から発せられる蛍光のピーク値を表している。スキャッタグラム中の各点は、1つずつの細胞を表している。すなわち、各細胞の分裂周期に応じて、スキャッタグラム中の位置が決められる。
【0009】
また、同図において、四角で囲んだ部分(G1期、S期、G2期、M期、M終期)の細胞群、あるいは1点ごとの細胞を指定すると、それらの細胞を順次顕微鏡の視野中心に持ってくることができる。前述したように、これをリコール機能と称する。この機能により、ある分裂周期にある細胞の光学的、形態的特長を詳細に調べることができる。
【0010】
しかし、フローサイトメータ及び走査型サイトメータ(LSC)のどちらに関しても、主に蛍光光量の測定精度がそのまま細胞周期の認識の精度を規定する要因とならざるを得ない。
【0011】
すなわち、従来、フローサイトメトリーでは困難とされていたG2期とM期の区別をLSCではクロマチンの凝集度がM期に入ると上昇することを利用して、蛍光強度のピーク値や面積比の高低で判断していたが、凝集度の変化は、分裂初期においては、それほどはっきりしないことが多かった。また、凝集度の測定では面積比率を算出する必要があるため、細胞の大きさが異なる場合などは誤差原因となっていた。
【0012】
また、そもそも蛍光の強度はきわめて微弱であることから、光量測定のS/Nは、必ずしも満足のいくレベルに達しているとは言い難かった。また、同一周期の細胞でもその大きさに無視できない違いがあったり、細胞質、細胞核内部の物質の分布状態も違ったりするなど、蛍光光量は必ずしもDNA量だけに依るものではない。
【0013】
すなわち、ピーク値の測定には、検出系に高S/Nが要求される。また核内外で、DNA以外のたんぱく質等が同時に染色されたりする場合も有るなど、誤認識の原因が多く存在することになる。そのために、細胞領域の決定や、バックグラウンドが蛍光光量測定に与える影響を除去する為の難しい画像処理を必要としていた。
【0014】
従って、光量測定だけからの細胞周期判定も十分に正確であるとはいえない状況であった。さらに、細胞領域の決定や、バックグラウンドの除去方法によっては、蛍光光量測定に悪影響を与えるので、難しい画像処理を必要としていた。
【0015】
そこで、上記課題に鑑み、本発明では、細胞周期をより正確に弁別する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明にかかる、スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色して所定の励起光を照射させることにより得られる蛍光に基づいて該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、該細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する細胞周期弁別方法は、前記得られる蛍光の波長は相互に異なる少なくとも2つの蛍光であって、該蛍光に対応する画像を生成し、前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の、細胞質領域と、細胞核領域と、核小体領域とを判別し、前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の核DNA量に対応する蛍光量を測定し、前記画像に基づいて、前記各細胞核の大きさに対する該細胞核の発する蛍光量の比、または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定することにより核DNAの凝集度を測定し、前記画像に基づいて、前記各細胞核の領域内での前記核小体の数を検出し、前記画像に基づいて、前記各細胞の前記細胞核の色調を計測し、前記画像に基づいて、前記各細胞の各前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測することを特徴とする。
【0017】
前記細胞周期弁別方法において、前記細胞質領域と前記細胞核領域と前記核小体領域との判別は、前記蛍光色素で染色することにより、前記細胞核領域から発せられる蛍光波長と前記核小体から発せられる蛍光波長が相互に異なることに基づいて、判別を行うことを特徴とする。
【0018】
前記細胞周期弁別方法において、前記蛍光色素は、アクリジンオレンジであることを特徴とする。
前記細胞周期弁別方法において、前記画像に基づいて、前記各細胞核領域内での前記核小体の数の検出結果に基づいて、前記細胞周期のG2期にある細胞、M期の初期段階にある細胞、または多核細胞を判別することを特徴とする。
【0019】
前記細胞周期弁別方法において、前記核小体の数の検出の結果、該核小体がない細胞であると判定された場合であって、前記各細胞の細胞核の大きさに対する該細胞核の発する蛍光量の比または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値によって測定される前記凝集度が所定値以下の場合、該細胞はM期初期であると判定することを特徴とする。
【0020】
前記細胞周期弁別方法において、前記細胞核の色調の計測結果に基づいて、前記細胞周期のS期にある細胞のDNA複製の進行状態を判別することを特徴とする。
前記細胞周期弁別方法において、前記細胞核の色調の計測の結果、該色調が略同一である細胞群は、前記測定された前記核DNA量に対応する前記蛍光量に応じて、S期の中でもG1期に近い段階かG2期に近い段階かの振り分けをすることを特徴とする。
【0021】
前記細胞周期弁別方法において、前記細胞核または前記細胞質の分離度合いの計測結果により、M期の初期から中期にある細胞と、後期から最終期にある細胞の分裂進行度を判断することを特徴とする。
【0022】
前記細胞周期弁別方法において、前記核小体の数に基づいて、前記M期の初期から中期にある細胞と、後期から最終期にある細胞と、多核細胞とを判別することを特徴とする。
前記細胞周期弁別方法において、前記M期の初期から中期にある細胞であって前記細胞核の領域が完全に分離していない段階、または前記M期の後期から最終期にある細胞であって前記細胞質の領域が完全に分離していない段階の場合には、ウォーターシェッド・アルゴリズムにより、該領域を分裂させることを特徴とする。
【0023】
前記細胞周期弁別方法において、前記M期における細胞の分裂の進行度合いは、前記分裂させた領域間の距離に対応することを特徴とする。
本発明にかかる、スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色して所定の励起光を照射させることにより得られる蛍光に基づいて該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、該細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する細胞周期弁別画像処理システムは、前記得られる蛍光の波長は相互に異なる少なくとも2つの蛍光であって、該蛍光に対応する画像を生成する画像生成手段と、前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の、細胞質領域と、細胞核領域と、核小体領域とを判別する領域判別手段と、前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の核DNA量に対応する蛍光量を測定する核DNA量測定手段と、前記画像に基づいて、前記各細胞の大きさに対する該細胞の発する蛍光量の比、または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定することにより核DNAの凝集度を測定する凝集度測定手段と、前記画像に基づいて、前記各細胞核の領域内での前記核小体の数を検出する核小体検出手段と、前記画像に基づいて、前記各細胞の前記細胞核の色調を計測する色調測定手段と、前記画像に基づいて、前記各細胞の各前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測する分離度合い計測手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
本発明にかかる、スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色して所定の励起光を照射させることにより得られる蛍光に基づいて該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、該細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する処理を、コンピュータに実行させる細胞周期弁別プログラムは、前記得られる蛍光の波長は相互に異なる少なくとも2つの蛍光であって、該蛍光に対応する画像を生成する画像生成処理と、前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の、細胞質領域と、細胞核領域と、核小体領域とを判別する領域判別処理と、前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の核DNA量に対応する蛍光量を測定する核DNA量測定処理と、前記画像に基づいて、前記各細胞の大きさに対する該細胞の発する蛍光量の比、または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定することにより核DNAの凝集度を測定する凝集度測定処理と、前記画像に基づいて、前記各細胞核の領域内での前記核小体の数を検出する核小体検出処理と、前記画像に基づいて、前記各細胞の前記細胞核の色調を計測する色調測定処理と、前記画像に基づいて、前記各細胞の各前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測する分離度合い計測処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明を用いることにより、より正確に細胞周期を弁別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明では、スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色し、所定の励起波長で蛍光を発生させ、その細胞集団の2次元蛍光画像を撮像し、その2次元蛍光画像から各細胞の各種特徴を抽出するサイトメータを用いて、以下のことを行う。
【0027】
まず、蛍光波長が異なった少なくとも2種類の2次元蛍光画像から、細胞の領域と核の領域と核小体の領域を区別する。
次に、核DNA量にほぼ比例する蛍光量を測定する。細胞の大きさに対するその蛍光量の比または細胞核の各点から発せられる蛍光のピーク値(すなわち核DNAの凝集度)を測定する。
【0028】
次に、1個の細胞核領域内に見出される核小体の有無、及びその数を検出する。次に、細胞核の色調を計測する。そして、細胞核及び/又は細胞質の分離度合いを計測する。
このようにすることにより、細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を正確に特定することができる。
【0029】
細胞の領域と、核の領域と、核小体の領域を区別する場合は、少なくとも細胞核と核小体が分離可能な程度に異なった波長の蛍光を発する蛍光色素で染色する。このようにすることにより、簡単かつ高S/N比を必要とせずに、細胞の領域と、核の領域と、核小体の領域を識別することができる。
【0030】
蛍光色素として、例えばacridine orange(アクリジンオレンジ)を用いる。そうすると、1波長だけの励起光で、核領域についてはDNAに起因して緑色の蛍光を発生させ、核小体領域についてはRNAに起因して赤色の蛍光を発光させることができるので、両者の識別が簡単になる。そこで、まず、核小体の数に着目する。
【0031】
G2期からM期に入ると核小体が消滅するので、1個の細胞核領域内に見出される核小体が1個であればM期最終段階かG1期かS期またはG2期の細胞、核小体が無ければM期の初期段階から中期にある細胞、2個以上の核小体があればM期最終段階または異常多核細胞であると大まかな分類ができる。
【0032】
さらに、細かく分裂段階を決定するには、核小体がない細胞はM期の細胞であるが、分裂が進むと染色体が形成されて、クロマチン(核DNA)の凝集度が上昇する。そこで、細胞の大きさに対する蛍光量の比または細胞核の各点から発せられる蛍光のピーク値(すなわち核DNAの凝集度)が、一定値以下の場合はM期初期の細胞であると判断でき、一定値以上の場合はM期中期から後期の細胞であると判断することができる。
【0033】
核小体が1個の場合は、G1期、S期、G2期、または2個の細胞に分裂し終わった直後のM期最終期である。S期にある細胞は、DNA複製の進行過程で2本鎖のDNAがほどけて、1本鎖のDNA(RNA)となるので、緑色の蛍光中に赤色の蛍光が混じることになる。
【0034】
従って、DNA複製の進行に従って、細胞核領域が黄色味を帯びてくるので、赤色分光画像と緑色分光画像を重ね合わせて(合成画像を形成して)、その色調を調べることにより、S期の進行状態を判別することができる。
【0035】
同一の色調にある細胞は、核DNA量にほぼ比例する蛍光量の測定結果で得られた光量の多少により、S期の中でもG1期に近い段階かG2期に近い段階かに振り分けることができる。M期最終期と、G1期、G2期の区別は、核DNAの凝集度で判別できる。G1期とG2期の区別は、DNA複製の前後なので、光量の圧倒的違いで判別できる。
【0036】
さらに、核小体が2個ならば、細胞質のくびれの有無により、異常細胞であるか、または正常細胞の有糸分裂後期であるかを判断することができる。そのくびれがあれば後期から最終期にある細胞であり、そのくびれがなければ異常多核細胞である。
【0037】
また、細胞核及び/又は細胞質の分離度合いを計測することによって、M期、すなわち有糸分裂周期の中期にある細胞と、有糸分裂周期の後期から最終期にある細胞の分裂進行度をさらに詳細に判断することができる。
【0038】
有糸分裂周期の中期にある細胞であってその細胞核が完全に分離していない段階、または有糸分裂周期の後期から最終期にある細胞であってその細胞質が完全に分離していない段階では、watershed algorithm(ウォーターシェッド・アルゴリズム)を用いることにより、分裂すべき2領域を明確化することができる。そして、その細胞分裂の進行度合いはその2領域の距離によって測定することができる。M期中期で細胞核が完全に分離している場合は、単純にその距離を測定すればよい。
【0039】
本発明の特徴は、細胞認識の指標として従来細胞全体の蛍光強度と発光凝集度(ピーク値で代表する場合も有る)だけを用いていたものを、(1)細胞の形状、特に核小体の存在の有無または数、(2)核の色調変化、を新たに加えるところにある。
【0040】
そこでは、以下に本発明の形態の形態を説明する。
図1は、本実施形態におけるレーザ走査型の蛍光顕微鏡を示す。同図のレーザ走査型の蛍光顕微鏡は一般的なものであり、本実施形態では、このレーザ走査型の蛍光顕微鏡を用いることにする。なお、コントローラ、表示手段、及び信号経路等は一般に公知なので省略してある。
【0041】
被検体2は、XYステージ1の上に固定されている。励起光源であるレーザ光源3から
の光束は、集光レンズ4によってほぼ点光源とみなせる程度に絞られ、第1のコリメータレンズ5によってほぼ平行光とされる。
【0042】
その平行光は第1のダイクロイックミラー6で反射され、対物レンズ9の瞳位置付近に置かれたガルバノミラー7によりX方向またはXY方向(不図示)に走査され、瞳投影レ
ンズ8及び対物レンズ9を介して被検体2上で集光スポットとなり、被検体の所定範囲を走査する。なお、ガルバノミラー7の走査が一方向のみの場合は、他の方向はステージ1によって走査される。
【0043】
瞳投影レンズ8は対物レンズ9の瞳をガルバノミラー7の回転中心付近に投影している。ガルバノミラー7による走査範囲が不足している場合にはXYステージ1が移動し、測
定に必要な範囲全体をカバーすることができる。
【0044】
レーザ光源3からの照明光により被検体2で発生した蛍光は、対物レンズ9、瞳投影レンズ8、ガルバノミラー7を逆に進み、第1のダイクロイックミラー6を透過し、結像レンズ10で一度集光され、第2のコリメータレンズ11で所望の径を持った平行光に変換される。
【0045】
第2のコリメータレンズ11を通過した蛍光の平行光は、第2のダイクロイックミラー12、第3のダイクロイックミラー15で、所定の帯域の蛍光に分離される。色分離されたそれぞれの蛍光はR(赤色)フィルタ13、G(緑色)フィルタ16、B(青色)フィルタ18を通過して、蛍光の赤色成分、緑色成分,青色成分の強度信号としてPMT(ホトマルチプライア)14,17,19で検出される。
【0046】
各PMT14,17,19で検出された蛍光の色成分の強度信号は、画像処理システム20に出力される。画像処理システム20は、例えば、CPU(中央演算装置)、ROM(リードオンリーメモリー)、RAM(ランダムアクセスメモリー)、大容量記憶装置からなるコンピュータである。
【0047】
画像処理システム20では、各PMT14,17,19から出力された強度信号から、それぞれ赤色分光画像、緑色分光画像、青色分光画像が構築される。
なお、同図では、赤色分光画像、緑色分光画像、青色分光画像を構築する構成を図示したが必ずしもR,G,B3原色を必要とするわけではない。例えば、以下で説明する実施形態のように、2色分離の構成、すなわち、後述するアクリジンオレンジによる染色の場合は黄緑から青を透過するバンドパスフィルタと黄色から赤を透過するバンドパスフィルタを付加した2系統のPMT受光光路でよい。さらに、他の色素を用いたり、他の用途に使用する場合には4色以上の系統を用意してもよい。但し、各フィルタの透過帯域は重複部が無い方が望ましい。したがって、形成される画像の色は必ずしも試料の蛍光色そのものではなく、バンドパスフィルタで切り取られたスペクトル範囲の強度画像であるが、本発明の目的にとっては、色分離ができてさえいれば十分である。
【0048】
また、本実施形態ではレーザ走査型の蛍光顕微鏡を用いるが、これに限定されず、例えば一般的な水銀ランプ等の照明、励起光による蛍光励起と、CCDカメラによる2次元画像取り込みのシステムを用いてもよい。この場合には、画像取得の時間を大幅に短縮することができる。
【0049】
図2は、本実施形態における細胞同期弁別方法の概要を示すフローである。まず、細胞集団標本にアクリジンオレンジ(以下、「AO」と称する)による染色処理を施す(ステップ1。以下、ステップを「S」と称する)。
【0050】
その染色処理を施した細胞集団標本について核小体に着目すると、各種RNAが集合・分散している核小体部分と細胞質領域が橙色から赤色の蛍光を発する。それに対して、DNAが集合・分散している核領域は、緑色の蛍光を発する。なお、G2期からM期に移ると、核小体が消滅する。
【0051】
次に、S1で染色処理を施した細胞集団標本をスライドグラス上に固定して、走査型サイトメータを用いて2次元蛍光画像を取得する(S2)。画像処理システム20は、本実施形態では、PMT14による検知信号に基づいて赤色分光画像を構築し、PMT17による検知信号に基づいて緑色分光画像を構築する。
【0052】
次に、画像処理システム20ではその赤色分光画像及び緑色分光画像に基づいて、図3の画像解析を行う(S3)。その画像解析の結果からその細胞集団標本に含まれる各細胞の細胞周期を判定することができる。その判別結果に基づいて、画像処理システム20は図11のスキャッタグラムを作成する。
【0053】
次に、図4〜図11を参照しながら、図3のフローについて説明する。
図3は、本実施形態における細胞同期弁別画像解析処理のフローを示す。図4〜図7は、S2で構築された2次元蛍光画像の解析過程を説明するための図である。図4は、核小体の個数を計測するための画像処理を説明するための図である。図5は、M期(初期)を特定するための画像処理を説明するための図である。図6は、M期(中期)を特定するための画像処理を説明するための図である。図7は、M期(完全最終段階)を特定するための画像処理を説明するための図である。
【0054】
画像処理システム20のCPUは、ROMまたは大容量記憶装置から本実施形態にかかるプログラムを読み出して、S2で構築した2次元蛍光画像(赤色分光画像、緑色分光画像)に対して、図3のフローを実行する。
【0055】
まず、図2のS1で説明したように、細胞集団標本にAOによる染色処理を施して核小体に着目すると、各種RNAが集合・分散している核小体部分と細胞質領域が橙色から赤色の蛍光を発する。それに対して、DNAが集合・分散している核領域は緑色の蛍光を発する。また、G2期からM期に移ると、核小体が消滅する。
【0056】
そこで、本実施形態では、上述の各光量パラメータを参考にしながら、核小体の有無を検出する。これにより、G1期、G2期、及びM期初期の区別を行うことができ、その区別の正確さを格段に向上させることができる。
【0057】
具体的には、G1期〜G2期での核小体の様子は、赤色分光画像Irと緑色分光画像Igとの合成画像Icの緑色の核内に、はっきりとした赤い領域として認識できる(図4(a))。M期に入ると、図5に示すように核膜と核小体がなくなるか、はっきりしなくなり、染色体が現れる。染色体は高解像でなければはっきりとは見えないが、核領域のテクスチヤーのきめが粗くなる。
【0058】
そこで、細胞質を含む赤色分光画像Irから所定の閾値1(以下、「THr1」と称する)によって、領域の境界線region on interest1(以下、region on interestを「ROI」と称する)を抽出し(図4(b))、細胞領域として認識する(S11)。
【0059】
次に、緑色分光画像Igから所定の閾値THg1(THg1は全蛍光光量についての閾値よりも凝集度についての閾値とした方が良い)により、前記ROI1内にある核の境界線ROI2を決定する(図4(c)、S12)。
【0060】
最後に、再び赤色分光画像Irから核境界線ROI2内にあり、かつ所定の閾値2(以下、「THr2」(THr1<THr2)と称する)以上の赤色領域ROI3、すなわち核小体の領域を決定し(図4(d))、核小体の有無または数を数える(S13)。
【0061】
S13における核小体の個数のカウントの結果、ROI3が2以上である場合(図4(e)参照)(S14で「≧2」へ進む)、S22へ進む。S22において、核小体の個数が3個以上である場合(S22で「≧3」へ進む)には、多核異常細胞として無視するか、必要ならば別の座標位置に別途分類する(S25)。
【0062】
ただし、核小体が2個の場合(S22で「=2」へ進む)は、M期後期の場合もあるので弁別作業を続けるが、これについては後述する(S23〜S25)。
S13における核小体の個数のカウントの結果、ROI3が「0」である場合(S14で「=0」へ進む)、S15へ進む。そして、緑色分光画像Igの輝度値が所定の閾値2(以下、「THg2」と称する。)より小さい場合、すなわち、極端なクロマチン(DNA)の凝集が無ければ(S15で「N」へ進む)、その細胞はM期の初期にある細胞であると判断する。
【0063】
そうして、従来のパラメータ(図11のスキャッタグラムの縦軸(蛍光ピーク値又は凝集度)と横軸(蛍光総量)を示す。)のうち、DNA量由来の緑色蛍光の凝集度に応じて、スキャッタグラムでM期初期に相当する座標に位置付ける(S16)。すなわち、ここでは、「M期初期」と確定したので、その2つのパラメータのうち蛍光総量は使用せずに、蛍光凝集度によってスキャッタグラム上の座標を決定する。
【0064】
S15において、DNA凝集度がTHg2以上の場合は(S15で「Y」へ進む)、細胞周期は分裂中期であると判定できる。したがって、図6に示すように、従来のピーク値の変化または凝集度の変化(図11のスキャッタグラムにおいて、M期の進行に伴って、総蛍光量はほぼ一定のままピーク値又は凝集度だけが上昇していくことを意味する。)に加えて、染色体が分裂の進行に従って2つの領域に分かれていく過程が見られる。
【0065】
図6(a1)〜(c1)には、前記2枚の画像を合成した画像においてRNAその他の蛋白質領域が高い凝集度を示す濃い赤色領域60中で、引き離されつつある緑色の染色体集団が色の重なりにより黄色となって表された領域61の形状変化の様子が示されている。
【0066】
従って、同図では引き離されつつある緑色の染色体集団は黄色領域61の形状変化として現れる。そこで、緑色分光画像Igを用いて、図6の(a2)〜(c2)に示すように、上述した方法で検出された細胞領域ROI1内の核領域ROI2の状態変化を調べる。
【0067】
例えば、図6の緑色分光画像Igの(b2)及び(c2)に示すように、緑色領域が2つに分離している場合は、それぞれの緑色領域の中心または重心間の距離を測定することによって、M期中期の所定の位置座標を確定する(S17)。また、2個の領域に分かれていない場合は、図5のa2のように、例えば「watershed algorithm」などにより、核領域のくびれ方から2領域を決定し、その中心または重心間の距離を測定することによって、M期中期の所定の位置座標を確定する(S17)。なお、緑色領域が2つに分離している場合は両領域の互いに向き合う縁辺の距離からを測定することによって、M期中期の所定の位置座標を確定してもよい。
【0068】
S13においてカウントした結果、ROI3が1個ならば(S14で「=1」へ進む)、その細胞周期は、正常細胞のG1期、G2期、S期、またはM期最終段階のいずれかであるので、次のような方法により、G1期以降G2期までの間またはM期最終段階の座標値を決定する。
【0069】
まず、G1期とG2期であれば、核DNAは、DNA複製期(S期)の前後なので全て2本鎖である。従って、G2期の緑色光量はG1期の2倍前後となるので、G1期とG2期とでは緑色光量に大きな違いがある。また、G1期及びG2期には1本鎖のDNAが無いので、前記合成画像IcにおけるROI2の色調は黄色味がかっていない(赤色成分が無い)。従って、従来のDNA光量測定でも簡単に分類することができる。
【0070】
そこで、赤色分光画像Irと緑色分光画像Igの合成画像Icから、色調が完全に緑の細胞を抽出する(S18)。
そして、緑色分光画像Igから核DNA量を測定することにより、上述の通り緑色光量の相違によりG2期にある細胞を決定する。そのG2期にある細胞を、スキャッタグラム上でG2期に対応する座標領域のうち、その緑色光量に応じた座標位置に位置付ける(S19)。
【0071】
次に、緑色分光画像IgからG1期とM期の最終段階とを判別する。M期の完全最終段階とG1とでは、DNAを示す緑色の蛍光輝点の集積の程度(凝集度)が異なる。緑色の蛍光輝点が集まって存在する(=凝集度が高い)場合はDNAが集積されている(すなわち染色体がほぐれきっていない段階)と判定し、緑色の蛍光輝点が細胞核内に散在する(=凝集度が低い)場合は、DNAが離散している(染色体がほぐれて、クロマチンとして分散している状態)と判定する。M期の完全最終段階では、その凝集度が徐々に減少してくるので、それを目安にG1期に落ち着く前の座標を決めることができる(S20)。なお、凝集度や蛍光総量による判定は、従来のレーザ走査型サイトメトリにおける判定方法と同じである。
【0072】
なお、本来、G1,G2期は間期なので、蛍光光量はそれぞれの期で全てが同じであるはずだが、前述したように、核内成分の違いや大きさの微妙な違いにより、光量の総量には多少のばらつきが生じる。この光量の微小な違いも何らかの情報を持つ可能性が有るので、座標位置は異なったものとしておき、後にリコール機能を用いて精査できるようにしておくことが望ましい。
【0073】
次に、S18で「N」へ進んだ場合、すなわち、S期の進行状況の判別について説明する。AOにより染色された場合には2本鎖のDNAは緑色の蛍光を発し、1本鎖のDNA(RNA)は赤色の蛍光を発する。S期ではDNAの複製が行われるので、2本鎖のDNAがほどけて1本鎖のDNA(RNA)が活発に生じる。したがって、図8に示すように、S期では、G1期及びG2期に比べ、より赤色の蛍光を発する。
【0074】
そこで、S期の進行に従って、1本鎖のDNAの量が始めは少量、中間では大量、終わりには少量と変化する。すると、2本鎖を表す緑色と1本鎖を表す赤色の比率が変化するので、前記緑色分光画像Igと赤色分光画像Irを重ねた合成画像Icにより、核の色調が「緑勝ち」→「赤が混じって黄緑」→「緑勝ち」というように変化していく。その様子を実物画像と色度図上での座標位置変化として図9に示しておく。
【0075】
図9は、CIE表色系を示す図である。色度図の座標x,yと画像信号R,G,Bの関係は、例えば1990年にCIE(国際照明委員会)推奨値として公表されたCCIR709によると、以下のようになっている。γ補正も同じ標準に従うと、2.2になる。
【0076】
X=0.412R+0.358G+0.180B
Y=0.213R+0.715G+0.072B
Z=0.019R+0.119G+0.951B
x=X/(X+Y+Z)、y=Y/(X+Y+Z)
図10は、S期における核の色調の変化を示す。上述の通り、核の色調は、「緑勝ち」→「赤が混じって黄緑」→「緑勝ち」と変化する。したがって、同図に示すように、核の色調の変化量はS期中期をピークとしてほぼ対照的になる。よって、合成画像Icからこの色調変化と従来のDNA量増加の割合に応じた光量により、G1期側とG2期側に振り分けができる(S21)。
【0077】
よって、従来の光量だけでは除去されない、細胞の大きさの微妙な違いや厚みの違い、さらに細胞内物質の分布状態の違いによるDNA複製の進行度合いの判定誤差を抑えることができ、より正確なS期のスキャッタグラムを作ることができる。
【0078】
次に、S23〜25について説明する。M期の最終段階では、図7に示すように、核小体が再び現れるが、G1期、G2期、または2核細胞は、1個の細胞の中に2個の核小体があるかどうかと、細胞質にくびれが有るか無いかで判別ができる。図7(c)のように、1個の細胞に1個の核小体ならば、M期の完全最終段階、G1期、S期、またはG2期なので、S18〜S21で述べたようなフローに従って判定すればよい。すなわち、S18〜S20で述べたように、G1期の細胞(M期の完全最終段階の細胞も含んでいる)とG2期の細胞は、その蛍光光量差に基づいて振り分けることができる。また、S21で述べたように、M期の完全最終段階では、凝集度(細胞における、緑色の蛍光輝点の集積度)が徐々に減少してくるので、その凝集度に基づいてG1期に落ち着く状態前の細胞の座標を決めることができる。また、S期は、S21で述べたように、色調とDNA量で座標を決定する。
【0079】
図7の(a)または(b)のように、1個の細胞に2個の核小体が存在する場合、M期の最終段階であるか2核細胞である。そこで、上述した分裂中期の進行状態判定方法(例えば、「watershed algorithm」など)を核領域ではなく細胞質領域のくびれの有無に適応すれば、赤色分光画像IrからM期の最終段階であるか2核細胞であるかを分類する(S23)。
【0080】
細胞質領域にくびれがある場合は(S23で「Y」へ進む)、M期最終段階である。よって、赤色分光画像Irに対して、細胞質中心または重心位置や細胞核の中心または重心位置を考慮しながら前述したようなアルゴリズムを用いて細胞間の距離を測定し、スキャッタグラム中の位置座標まで決めることができる(S24)。
【0081】
細胞質領域にくびれが無い場合は(S23で「N」へ進む)、異常細胞(2核細胞)なので前述したように処理すればよい(S25)。
このように画像処理システム20は、図3のフローに基づいて、細胞同期弁別を行い、さらに、図11に示すスキャッタグラムを作成する。
【0082】
本実施形態によれば、サイトメトリにおける重要な機能である細胞周期の判別が、従来にない高精度で実現できる。この精度向上によって、引き続き究明すべき細胞の諸特徴抽出が、混じりけのきわめて少ない目的周期の細胞または細胞群から、正確にかつ正しく実行できるので、正確な診断をすることが可能になる。
【0083】
なお、本実施形態では、蛍光色素してアクリジンオレンジを用いたが、これに限定されず、細胞の領域と核の領域と核小体の領域とを判別できる蛍光色素であればよい。また、この蛍光色素の特性に応じて用いるフィルタの種類及び数を決定してもよい。すなわち、本実施形態では、アクリジンオレンジの特性に応じて、RフィルタとGフィルタを用いたが、用いる蛍光色素に応じてさらに多種多様のフィルタを用いて、複数色の分光画像を生成してもよい。
【0084】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上述した各実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施形態におけるレーザ走査型の蛍光顕微鏡を示す。
【図2】本実施形態における細胞同期弁別方法の概要を示すフローである。
【図3】本実施形態における細胞同期弁別画像解析処理のフローを示す。
【図4】核小体の個数を計測するための画像処理を説明するための図である。
【図5】M期(初期)を特定するための画像処理を説明するための図である。
【図6】M期(中期)を特定するための画像処理を説明するための図である。
【図7】M期(完全最終段階)を特定するための画像処理を説明するための図である。
【図8】1本鎖DNA(RNA)か2本鎖DNAかによる蛍光の発色の相違によりS期と、G1期及びG2期が特定されることを説明する図である。
【図9】CIE表色系を示す図である。
【図10】S期における核の色調の変化を示す図である。
【図11】スキャッタグラムを示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 XYステージ
2 被検体
3 レーザ光源
4 集光レンズ
5 第1のコリメータレンズ
6 第1のダイクロイックミラー
7 ガルバノミラー
8 瞳投影レンズ
9 対物レンズ
10 結像レンズ
11 第2のコリメータレンズ
12 第2のダイクロイックミラー
13 Rフィルタ
14,17,19 PMT
15 第3のダイクロイックミラー
16 Gフィルタ
18 Bフィルタ
20 画像処理システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色して所定の励起光を照射させることにより得られる蛍光に基づいて該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、該細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する細胞周期弁別方法において、
前記得られる蛍光の波長は相互に異なる少なくとも2つの蛍光であって、該蛍光に対応する画像を生成し、
前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の、細胞質領域と、細胞核領域と、核小体領域とを判別し、
前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の核DNA量に対応する蛍光量を測定し、
前記画像に基づいて、前記各細胞核の大きさに対する該細胞核の発する蛍光量の比、または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定することにより核DNAの凝集度を測定し、
前記画像に基づいて、前記各細胞核の領域内での前記核小体の数を検出し、
前記画像に基づいて、前記各細胞の前記細胞核の色調を計測し、
前記画像に基づいて、前記各細胞の各前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測する
ことを特徴とする細胞周期弁別方法。
【請求項2】
前記細胞質領域と前記細胞核領域と前記核小体領域との判別は、前記蛍光色素で染色することにより、前記細胞核領域から発せられる蛍光波長と前記核小体から発せられる蛍光波長が相互に異なることに基づいて、判別を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項3】
前記蛍光色素は、アクリジンオレンジである
ことを特徴とする請求項2に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項4】
前記画像に基づいて、前記各細胞核領域内での前記核小体の数の検出結果に基づいて、前記細胞周期のG2期にある細胞、M期の初期段階にある細胞、または多核細胞を判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項5】
前記核小体の数の検出の結果、該核小体がない細胞であると判定された場合であって、前記各細胞の細胞核の大きさに対する該細胞核の発する蛍光量の比または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値によって測定される前記凝集度が所定値以下の場合、該細胞はM期初期であると判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項6】
前記細胞核の色調の計測結果に基づいて、前記細胞周期のS期にある細胞のDNA複製の進行状態を判別する
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項7】
前記細胞核の色調の計測の結果、該色調が略同一である細胞群は、前記測定された前記核DNA量に対応する前記蛍光量に応じて、S期の中でもG1期に近い段階かG2期に近い段階かの振り分けをする
ことを特徴とする請求項6に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項8】
前記細胞核または前記細胞質の分離度合いの計測結果により、M期の初期から中期にある細胞と、後期から最終期にある細胞の分裂進行度を判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項9】
前記核小体の数に基づいて、前記M期の初期から中期にある細胞と、後期から最終期にある細胞と、多核細胞とを判別する
ことを特徴とする請求項8に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項10】
前記M期の初期から中期にある細胞であって前記細胞核の領域が完全に分離していない段階、または前記M期の後期から最終期にある細胞であって前記細胞質の領域が完全に分離していない段階の場合には、ウォーターシェッド・アルゴリズムにより、該領域を分裂させる
ことを特徴とする請求項8に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項11】
前記M期における細胞の分裂の進行度合いは、前記分裂させた領域間の距離に対応する
ことを特徴とする請求項9に記載の細胞周期弁別方法。
【請求項12】
スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色して所定の励起光を照射させることにより得られる蛍光に基づいて該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、該細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する細胞周期弁別画像処理システムであって、
前記得られる蛍光の波長は相互に異なる少なくとも2つの蛍光であって、該蛍光に対応する画像を生成する画像生成手段と、
前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の、細胞質領域と、細胞核領域と、核小体領域とを判別する領域判別手段と、
前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の核DNA量に対応する蛍光量を測定する核DNA量測定手段と、
前記画像に基づいて、前記各細胞の大きさに対する該細胞の発する蛍光量の比、または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定することにより核DNAの凝集度を測定する凝集度測定手段と、
前記画像に基づいて、前記各細胞核の領域内での前記核小体の数を検出する核小体検出手段と、
前記画像に基づいて、前記各細胞の前記細胞核の色調を計測する色調測定手段と、
前記画像に基づいて、前記各細胞の各前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測する分離度合い計測手段と、
を備えることを特徴とする細胞周期弁別画像処理システム。
【請求項13】
スライドグラス上に固定された細胞集団を所定の蛍光色素で染色して所定の励起光を照射させることにより得られる蛍光に基づいて該細胞集団の観察を行うサイトメータを用いて、該細胞集団内にある個々の細胞の細胞分裂周期を特定する処理を、コンピュータに実行させる細胞周期弁別プログラムであって、
前記得られる蛍光の波長は相互に異なる少なくとも2つの蛍光であって、該蛍光に対応する画像を生成する画像生成処理と、
前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の、細胞質領域と、細胞核領域と、核小体領域とを判別する領域判別処理と、
前記画像に基づいて、該画像に含まれる前記各細胞の核DNA量に対応する蛍光量を測定する核DNA量測定処理と、
前記画像に基づいて、前記各細胞の大きさに対する該細胞の発する蛍光量の比、または前記細胞核から発せられる蛍光のピーク値を測定することにより核DNAの凝集度を測定する凝集度測定処理と、
前記画像に基づいて、前記各細胞核の領域内での前記核小体の数を検出する核小体検出処理と、
前記画像に基づいて、前記各細胞の前記細胞核の色調を計測する色調測定処理と、
前記画像に基づいて、前記各細胞の各前記細胞核または前記細胞質の分離度合いを計測する分離度合い計測処理と、
をコンピュータに実行させる細胞周期弁別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−327928(P2007−327928A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161584(P2006−161584)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】