説明

細胞周期相データの決定

放射線を発することのできる1種以上の発光レポーターを含み、1種以上の発光レポーターが、少なくとも1細胞周期相の指標となり得る第一の発光レポーターを含む、細胞周期相データの決定方法であって、自動分類法を使用して個々の細胞を異なる細胞周期相に分類するための分類規則情報を記憶させる段階と、1種以上の発光レポーターによって発せられた放射線の検出によって作成された画像データを受け取る段階と、画像データを分析して、個々の細胞に対応する画像データ中の対象区域を同定する段階と、画像データを、同定された対象区域を基盤として分析して、選択した細胞について、その細胞の1種以上の細胞質成分に関連するパラメーターの測定値を含む、1以上の測定値を決定する段階と、分類情報を測定値に適用して、選択した細胞を、異なる細胞周期相にある細胞を各亜集団が有する複数の細胞亜集団のうちの選択された1亜集団に分類する段階とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1細胞周期相の指標となり得る発光レポーターを含む細胞についての細胞周期相データの決定方法に関する。本発明はさらに、そのような方法が実施されるように適合させた装置及びコンピュータソフトウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薬物の発見及び開発、並びに一般の生物学的調査では、細胞アッセイを的確に行うための方法及び装置が求められている。細胞アッセイを化学化合物の生物活性評価に使用すると有利なのである。
【0003】
さらに、多数の化学化合物のスクリーニングを迅速かつ割安に行うことが求められている。様々な生化学ターゲット、例えば、受容体、酵素、及び核酸に対する活性を求めて化学化合物を試験することが日常茶飯事となっている製薬産業で、この必要は高まりつつある。これらの化学化合物は、大規模なライブラリーに集められ、時には異なる化合物が100万種を超える。用語化学化合物の使用は、それだけに限らないが、単純な有機及び無機の分子、タンパク質、ペプチド、核酸、及びオリゴヌクレオチド、炭水化物、脂質、又は生物学的に注目される任意の化学構造を含むように広く解釈されるものとする。
【0004】
化合物スクリーニングの分野では、細胞アッセイは、細胞集団に対して実施される。測定される応答は、通常は細胞集団の平均である。例えば、イオンチャネルアッセイ用の一般的な機器が、米国特許第5355215号明細書に記載されている。典型的な検定法は、イオン感応性染料の蛍光の時間依存性を測定することからなっており、蛍光は、化学化合物が加えられた結果として変化する細胞内対象イオン濃度の尺度である。染料は、マルチウェルプレートのウェルの底に配置された細胞集団に、測定前の時点で装入される。一般に、細胞の応答は、程度も時間も不均一である。この多様性は、化合物スクリーニングにとって重要な生物活性の観察をわかりにくくし、又はその妨げとなりかねない。不均一性は、実験供給源から生じることもあるが、より重大なのは、どんな細胞集団も根本的に不均一であることである。特に、多様性の起源は、集団間で生活環が相違しているためであるかもしれないし、又は活性のある目標分子の数が進化によって相違しためであるかもしれない。この変動を緩和し、補正し、又は利用しさえもする方法があれば、化学化合物の薬理活性を特徴付ける際の細胞アッセイの有用性が高まるはずである。
【0005】
個々の細胞の応答を定量すると、細胞集団の個々の細胞の応答が一様でないことによって引き起こされる問題が回避される。集団の少数部分が刺激物質に応答する場合を考慮せよ。平均の応答を測定するデバイスは、個々の細胞応答を測定する装置よりも感度が劣る。後者の方法では、応答プロフィールの統計学的な特徴付けがなされ、活性細胞のサブセットが選択できるようになっている。集団の特徴付けをさらに行うと、応答プロフィールの解釈が高度になる。
【0006】
細胞周期は、創薬の多くの領域にとって重要なポイントである。一方では、この基本の過程が、新規な抗癌剤ターゲット及び改良された化学療法を発見する機会になっており、他方、他の治療領域の薬物及びターゲットについては、細胞周期に望ましくない影響を及ぼさないかどうか試験しなければならない。歴史的に、細胞周期を全体的な生化学的過程として、かつ分子レベルで研究するための広範な技術が開発されてきている。
【0007】
既知の方法としては、細胞集団の増殖活性を示すデータを作成するものが挙げられる。
【0008】
シンチレーション計数による[14C]若しくは[H]−チミジン取込みの測定(Regan,J.D.及びChu,E.H.(1966年)、「A convenient method for assay of DNA synthesis in synchronized human cell cultures」、J.Cell Biol.第28巻、139〜143頁)は、細胞増殖を測定する最も初期の方法の1つであったが、今日でもまだ広く使用されている。より最近の開発(Graves,R.ら(1997)、「Noninvasive, real−time method for the examination of thymidine uptake events−application of the method to V−79 cell synchrony studies」、Anal.Biochem.第248巻、251〜257頁)によって、均質なマイクロプレートアッセイフォーマットでチミジン取込みを測定できるようになった。
【0009】
チミジン取込みアッセイに代わるいくつかの非放射性の方法が開発されている。これらには、ヌクレオチドブロモデオキシウリジン(BrdU)を複製DNAに取り込ませるものである酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Perros,P.及びWeightman,D.R.(1991年)、「Measurement of cell proliferation by enzyme−linked immunosorbent assay (ELISA) using a monoclonal antibody to bromodeoxyuridine」、Cell.Prolif.第24巻、517〜523頁;Wemme,H.ら(1992年)、「Measurement of lymphocyte proliferation: critical analysis of radioactive and photometric methods」、Immunobiology第185巻、78〜89頁)、及びKi−67などの増殖特異的抗原の染色(Frahm,S.O.ら(1998年)、「Improved ELISA proliferation assay (EPA) for the detection of in vitro cell proliferation by a new Ki−67−antigen directed monoclonal antibody (Ki−S3)」、J.Immunol.Methods第211巻、43〜50頁)が含まれる。
【0010】
ミトコンドリア及び細胞の他の酵素による基質の変換に基づく比色法(Mosmann,T.(1983年)、「Rapid colourimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays」、J.Immunol.Methods第65巻、55〜63頁;Roehm,N.W.ら(1991年)、「An improved colourimetric assay for cell proliferation and viability utilizing the tetrazolium sal XTT」、J.Immunol.Methods第142巻、257〜265頁)も細胞増殖の測定に使用される。これらの検定法はしばしば、細胞増殖アッセイと呼ばれるが、厳密に言えば、細胞量アッセイである。チミジン又はBrdUの取込みを測定するのとは異なり、これらの検定法は、細胞周期の進行についての固有の尺度を何ら提供せず、細胞増殖の尺度、すなわち別の集団と比べた細胞数の増加しか提供しない。
【0011】
電気インピーダンスの測定(Upadhyay,P.及びBhaskar,S.(2000年)、「Real time monitoring of lymphocyte proliferation by an impedance method」、J.Immunol.Methods第244巻、133〜137頁)、溶存酸素の測定(Wodnicka,M.ら(2000年)、「Novel fluorescent technology platform for high throughput cytotoxicity and proliferation assays」、J.Biomol.Screen.第5巻、141〜152頁)、及びその他の測定に基づく、細胞増殖(すなわち、増加する細胞数)の他の測定方法が報告されている。しかし、上で論じた比色検定法のように、これらは細胞周期パラメーターを直接に報告するものでなく、広く採用されていない。
【0012】
上記の方法は全て、調査中の細胞集団内の全般的な増殖についてのデータを提供するが、個々の細胞の状態を特定するものではない。これらの検定法を、例えば[H]若しくは[14C]−チミジン取込みのマイクロオートラジオグラフィー(Dormer,P.(1981年)、「Quantitative carbon−14 autoradiography at the cellular level: principles and application for cell kinetic studies」、Histochem.J.第13巻、161〜171頁)又はBrdUの免疫細胞化学物質検出若しくは免疫蛍光検出(Dolbeare,F.(1995年)、「Bromodeoxyuridine: a diagnostic tool in biology and medicine,Part I: historical perspectives, histochemical methods and cell kinetics」、Histochem.J.第27巻、339〜369頁)によって画像化に適合させると、S期に移行した細胞の同定が可能になるが、分析中の他の細胞の細胞周期位置についての情報は得られない。
【0013】
集団中の全細胞の細胞周期の状態を決定するためには、分析技術によって少なくとも単一細胞のレベルまで解明できることが前提条件である。利用可能な2種の属性分析技術であるフローサイトメトリー及び鏡検法のうち、フローサイトメトリーは、細胞周期分布を分析するための標準の方法として確実に定着してきている。
【0014】
細胞核のDNA含有量は、細胞周期を通して予測可能に変動する。すなわち、G2期又はM期の細胞のDNA含有量は、G1期の細胞の2倍であり、DNA合成が行われているS期の細胞のDNA量は中程度である。したがって、細胞DNAを、ヨウ化プロピジウム(Nairn,R.C.及びRolland,J.M.(1980年)、「Fluorescent probes to detect lymphocyte activation」、Clin.Exp.Immunol.第39巻、1〜13頁)又は生細胞に対して適合性のある他の蛍光染料(Smith,P.J.ら(2000年)、「Characteristics of a novel deep red/infrared fluorescent cell−permeant DNA probe, DRAQ5, in intact human cells analyzed by flow cytometry,confocal and multiphoton microscopy」、Cytometry第40巻、280〜291頁)で染色した後、フローサイトメトリーにかけると、G1、S、及びG2/Mの各期の細胞の相対的な比率を測定することができる。しかし、ヨウ化プロピジウム染色及びフローサイトメトリーによる分析は、必然的に破壊的であり、したがって細胞周期の進行を調査するのに多数のサンプルが必要となるが、何百ものサンプルを分析することになる場合では速度が制限されかねない。その上、G2/M期では、全ての細胞でDNA含有量が同じであるので、フローサイトメトリーでは、細胞周期位置の細かな解明が得られない。
【0015】
DNA染色をパルス標識BrdU取込みと組み合わせて(Dolbeare,F.ら(1983年)、「Flow cytometric measurement of total DNA content and incorporated bromodeoxyuridine」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.第80巻、5573〜5577頁)使用すると、細胞周期位置をさらに解明することができる。DNA染色及び/又はBrdU取込みからなる二重パラメーター分析を、細胞表面マーカーに対する抗体と共に使用すると、規定された細胞亜集団の細胞周期分布の輪郭を描くこともできる(Mehta,B.A.及びMaino,V.C.(1997年)、「Simultaneous detection of DNA synthesis and cytokine production in staphylococcal enterotoxin B activated CD4T lymphocytes by flow cytometry」、J.Immunol.Methods第208巻、49〜59頁;Johannisson,A.ら(1995年)、「Activation markers and cell proliferation as indicators of toxicity: a flow cytometric approach」、Cell Biol.Toxicol.第11巻、355〜366頁;Penit,C.及びVasseur,F.(1993年)、「Phenotype analysis of cycling and postcycling thymocytes: evaluation of detection methods for BrdUrd and surface proteins」、Cytometry第14巻、757〜763頁)。
【0016】
これまで、依然としてフローサイトメトリーが細胞周期分析のための主流の方法となってはいるものの、上記の技術の多くが、顕微鏡分析にも適用されている(Gorczyca,W.ら(1996年)、「Laser scanning cytometer (LSC) analysis of fraction of labeled mitoses (FLM)」、Cell Prolif.第29巻、539〜547頁;Clatch,R.J.及びForeman,J.R.(1998年)、「Five−colour immunophenotyping plus DNA content, analysis by laser scanning cytometry」、Cytometry第34巻、36〜38頁)。
【0017】
上述の方法は専ら、一時点からの様々な形の情報(例えば、DNA含有量のためのヨウ化プロピジウム染色)、又は時間をかけてまとめられた情報(例えば、チミジン又はBrdUの取込み)を提供する。別の一技術である細胞分裂追跡法(Nordon,R.E.ら(1999年)、「Analysis of growth kinetics by division tracking」、Immunol.Cell Biol.第77巻、523〜529頁;Lyons,A.B.(1999年)、「Divided we stand: tracking cell proliferation with carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester」、Immunol.Cell.Biol.第77巻、509〜515頁)では、細胞集団の複製履歴の分析が可能になる。この方法では、細胞にカルボキシ−二酢酸フルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)などの蛍光染料を装入するが、蛍光染料は、細胞分裂の連続する回転毎に娘細胞間で分割され、蛍光が2分の1になる。フローサイトメトリーによる後続の細胞蛍光分析では、集団中の各細胞が経験した細胞分裂の数が明らかになる。この技術は、BrdU染色及び増殖マーカー染色と組み合わせた多重パラメーター分析でも使用されている(Hasbold,J.及びHodgkin,P.D.(2000年)、「Flow cytometric cell division tracking using nuclei」、Cytometry第40巻、230〜237頁)。
【0018】
国際公開第01/11341号は、蛍光画像化法を使用して、細胞の分裂指数を自動的に測定する方法を記載している。この技術は、その核から発信されるシグナルによって、特に有糸分裂細胞についての報告を行う免疫蛍光法を使用するものである。別の蛍光チャネルで検出された核の数と比べた有糸分裂細胞数を検出することによって、分裂指数が決定される。この技術は、所与の閾値を上回るシグナルを有する細胞を単にカウントするものであり、有糸分裂以外の細胞周期相の検出に適するものではない。
【0019】
GFP及び画像化技術が細胞周期分析に応用されると、細胞周期を制御する分子事象のタイミングの理解において意味のある前進が遂げられるようになった。GFPに鍵となる細胞周期制御タンパク質(Raff,J.W.ら(2002年)、「The roles of Fzy/Cdc20 and Fzr/Cdh1 in regulating the destruction of cyclin B in space and time」、J.Cell Biol.第157巻、1139〜1149頁;Zeng,Y.ら(2000年)、「Minimal requirements for the nuclear localization of p27 (Kip1), a cyclin−dependent kinase inhibitor」、Bicohem.Biophys.Res.Commun.第274巻、37〜42頁;Huang,J.及びRaff.J.W.(1999年)、「The disappearance of cyclin B at the end of mitosis is regulated spatially in Drosophila cells」、EMBO J.第18巻、2184〜2195頁;Weingartner,M.ら(2001年)、「Dynamic recruitment of Cdc2 to specific microtubule structures during mitosis」、Plant Cell第13巻、1929〜1943頁;Arnaud,L.ら(1998年)、「GFP tagging reveals human Polo−like kinase 1 at the kinetochore/centromere region of mitotic chromosomes」、Chromosoma第107巻、424〜429頁)及び他の細胞成分(Kanda,T.ら(1998年)、「Histone−GFP fusion protein enables sensitive analysis of chromosome dynamics in living mammalian cells」、Curr.Biol.第8巻、377〜385頁;Reits,E.A.ら(1997年)、「Dynamics of proteasome distribution in living cells」、EMBO J.第16巻、6087〜6094頁;Tatebe,H.ら(2001年)、「Fission yeast living mitosis visualized by GFP−tagged gene products」、Micron第32巻、67〜74頁)が融合されると、細胞周期の背後にある分子構成への意義深い見識が得られた。しかし、これらの特殊化された手法は、関与する機序及び成分について価値あるデータを提供するにしても、細胞周期をモニターする包括的な方法ではない。
【特許文献1】米国特許第5355215号明細書
【特許文献2】国際公開第01/11341号パンフレット
【非特許文献1】Regan,J.D.及びChu,E.H.(1966年)、「A convenient method for assay of DNA synthesis in synchronized human cell cultures」、J.Cell Biol.第28巻、139〜143頁
【非特許文献2】Graves,R.ら(1997年)、「Noninvasive, real−time method for the examination of thymidine uptake events−application of the method to V−79 cell synchrony studies」、Anal.Biochem.第248巻、251〜257頁
【非特許文献3】Perros,P.及びWeightman,D.R.(1991年)、「Measurement of cell proliferation by enzyme−linked immunosorbent assay (ELISA) using a monoclonal antibody to bromodeoxyuridine」、Cell.Prolif.第24巻、517〜523頁
【非特許文献4】Wemme,H.ら(1992年)、「Measurement of lymphocyte proliferation: critical analysis of radioactive and photometric methods」、Immunobiology第185巻、78〜89頁
【非特許文献5】Frahm,S.O.ら(1998年)、「Improved ELISA proliferation assay (EPA) for the detection of in vitro cell proliferation by a new Ki−67−antigen directed monoclonal antibody (Ki−S3)」、J.Immunol.Methods第211巻、43〜50頁
【非特許文献6】Mosmann,T.(1983年)、「Rapid colourimetric assay for cellular growth and survival: application to proliferation and cytotoxicity assays」、J.Immunol.Methods第65巻、55〜63頁
【非特許文献7】Roehm,N.W.ら(1991年)、「An improved colourimetric assay for cell proliferation and viability utilizing the tetrazolium sal XTT」、J.Immunol.Methods第142巻、257〜265頁
【非特許文献8】Upadhyay,P.及びBhaskar,S.(2000年)、「Real time monitoring of lymphocyte proliferation by an impedance method」、J.Immunol.Methods第244巻、133〜137頁
【非特許文献9】Wodnicka,M.ら(2000年)、「Novel fluorescent technology platform for high throughput cytotoxicity and proliferation assays」、J.Biomol.Screen.第5巻、141〜152頁
【非特許文献10】Dormer,P.(1981年)、「Quantitative carbon−14 autoradiography at the cellular level: principles and application for cell kinetic studies」、Histochem.J.第13巻、161〜171頁
【非特許文献11】Dolbeare,F.(1995年)、「Bromodeoxyuridine:a diagnostic tool in biology and medicine, Part I: historical perspectives, histochemical methods and cell kinetics」、Histochem.J.第27巻、339〜369頁
【非特許文献12】Nairn,R.C.及びRolland,J.M.(1980年)、「Fluorescent probes to detect lymphocyte activation」、Clin.Exp.Immunol.第39巻、1〜13頁
【非特許文献13】Smith,P.J.ら(2000年)、「Characteristics of a novel deep red/infrared fluorescent cell−permeant DNA probe, DRAQ5, in intact human cells analyzed by flow cytometry, confocal and multiphoton microscopy」、Cytometry第40巻、280〜291頁
【非特許文献14】Dolbeare,F.ら(1983年)、「Flow cytometric measurement of total DNA content and incorporated bromodeoxyuridine」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.第80巻、5573〜5577頁
【非特許文献15】Mehta,B.A.及びMaino,V.C.(1997年)、「Simultaneous detection of DNA synthesis and cytokine production in staphylococcal enterotoxin B activated CD4+T lymphocytes by flow cytometry」、J.Immunol.Methods第208巻、49〜59頁
【非特許文献16】Johannisson,A.ら(1995年)、「Activation markers and cell proliferation as indicators of toxicity: a flow cytometric approach」、Cell Biol.Toxicol.第11巻、355〜366頁
【非特許文献17】Penit,C.及びVasseur,F.(1993年)、「Phenotype analysis of cycling and postcycling thymocytes: evaluation of detection methods for BrdUrd and surface proteins」、Cytometry第14巻、757〜763頁
【非特許文献18】Gorczyca,W.ら(1996年)、「Laser scanning cytometer (LSC) analysis of fraction of labeled mitoses (FLM)」、Cell Prolif.第29巻、539〜547頁
【非特許文献19】Clatch,R.J.及びForeman,J.R.(1998年)、「Five−colour immunophenotyping plus DNA content, analysis by laser scanning cytometry」、Cytometry第34巻、36〜38頁
【非特許文献20】Nordon,R.E.ら(1999年)、「Analysis of growth kinetics by division tracking」、Immunol.Cell Biol.第77巻、523〜529頁
【非特許文献21】Lyons,A.B.(1999年)、「Divided we stand: tracking cell proliferation with carboxyfluorescein diacetate succinimidyl ester」、Immunol.Cell.Biol.第77巻、509〜515頁
【非特許文献22】Hasbold,J.及びHodgkin,P.D.(2000年)、「Flow cytometric cell division tracking using nuclei」、Cytometry第40巻、230〜237頁
【非特許文献23】Raff,J.W.ら(2002年)、「The roles of Fzy/Cdc20 and Fzr/Cdh1 in regulating the destruction of cyclin B in space and time」、J.Cell Biol.第157巻、1139〜1149頁
【非特許文献24】Zeng,Y.ら(2000年)、「Minimal requirements for the nuclear localization of p27 (Kip1), a cyclin−dependent kinase inhibitor」、Bicohem.Biophys.Res.Commun.第274巻、37〜42頁
【非特許文献25】Huang,J.及びRaff.J.W.(1999年)、「The disappearance of cyclin B at the end of mitosis is regulated spatially in Drosophila cells」、EMBO J.第18巻、2184〜2195頁
【非特許文献26】Weingartner,M.ら(2001年)、「Dynamic recruitment of Cdc2 to specific microtubule structures during mitosis」、Plant Cell第13巻、1929〜1943頁
【非特許文献27】Arnaud,L.ら(1998年)、「GFP tagging reveals human Polo−like kinase 1 at the kinetochore/centromere region of mitotic chromosomes」、Chromosoma第107巻、424〜429頁
【非特許文献28】Kanda,T.ら(1998年)、「Histone−GFP fusion protein enables sensitive analysis of chromosome dynamics in living mammalian cells」、Curr.Biol.第8巻、377〜385頁
【非特許文献29】Reits,E.A.ら(1997年)、「Dynamics of proteasome distribution in living cells」、EMBO J.第16巻、6087〜6094頁
【非特許文献30】Tatebe,H.ら(2001年)、「Fission yeast living mitosis visualized by GFP−tagged gene products」、Micron第32巻、67〜74頁
【非特許文献31】Haugland R.P.の「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals」、第6版、1996年、Molecular Probes,Inc.、米オレゴン州Eugene
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の実施形態によれば、放射線を発することのできる1種以上の発光レポーターを含み、1種以上の発光レポーターが、少なくとも1細胞周期相の指標となり得る第一の発光レポーターを含む、細胞周期相データの決定方法であって、
自動分類法を使用して個々の細胞を異なる細胞周期相に分類するための分類情報を記憶させる段階と、
1種以上の発光レポーターによって発せられた放射線の検出によって作成された画像データを受け取る段階と、
画像データを分析して、個々の細胞に対応する画像データ中の対象区域を同定する段階と、
画像データを、同定された対象区域を基盤として分析して、選択した細胞について、その細胞の1種以上の細胞質成分に関連するパラメーターの測定値を含む、1以上の測定値を決定する段階と、
分類情報を測定値に適用して、選択した細胞を、異なる細胞周期相にある細胞を各亜集団が有する複数の細胞亜集団のうちの選択された1亜集団に分類する段階と
を含む方法が提供される。
【0021】
本発明は、高処理量の化合物スクリーニングで使用するための、迅速かつ臨機応変な細胞集団の発光画像化分析の方法を提供する。
【0022】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面に即して単なる実例として示す、以下の本発明の好ましい実施形態の説明から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、疾患治療用の薬剤の同定に有用である。本発明は、1種以上の発光マーカーを使用して生態応答を測定する、広範な生物学的検定法を実施するための高処理量の方法を提供する。そうした検定法は、それだけに限らないが、コンビナトリアルライブラリーで見られるものなどの薬物候補を含む、化学化合物又は生物学的に注目される任意の分子に対して実施することができ、それだけに限らないが、コンビナトリアルライブラリーで見られるものなどの薬物候補を含む、生物学的に注目される化学化合物の高処理量のスクリーニングを可能にする。
【0024】
本発明の技術は、個々の細胞についてのデータが、統計学的に意味のある細胞集団サンプルを構成するのに十分な細胞数でデータが得られるよう十分に迅速に、細胞レベル又は細胞下レベルで得られる検定法で使用することができる。
【0025】
これらの検定法では、フルオレセイン;ローダミン;Texas Red;Amersham Corp.の染色剤Cy3、Cy5、Cy5.5、及びCy7、Hoechstの核染色剤;及びクマリン染色剤を含むがこれに限らない既知の任意のフルオロフォア又は蛍光標識を使用することができる(Haugland R.P.の「Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals」、第6版、1996年、Molecular Probes,Inc.、米オレゴン州Eugeneを参照のこと)。
【0026】
光学的配置
図1は、本発明の第一の実施形態を示している。顕微鏡は、例えば、光学範囲が350〜750nmの電磁気放射供給源100若しくは110、円柱レンズ120、第一のスリットマスク130、第一のリレーレンズ140、ダイクロイックミラー150、対物レンズ170、二次元に並んだサンプルウェル182を含むマイクロタイタープレート180、チューブレンズ190、フィルタ200、第二のスリットマスク210、及び検出器220を備える。これらの要素は、光軸OAに沿って、図1の平面に垂直に伸びるマスク130、210中のスリット開口部132、212と位置が合っている。レンズ140、170、及び190の焦点距離、及びこれらレンズ間の間隔、並びにマスク130とレンズ140の間、対物レンズ170とマイクロタイタープレート180の間、レンズ190とマスク210の間の間隔は、共焦点顕微鏡を形成するようなものである。この実施形態では、円柱レンズ120を使用して、ランプ100又はレーザー110からの電磁気放射の焦点を線形に結ぶ。線の形状は、第一のスリットマスク130によって最適化される。スリットマスク130は、光学系の像面、すなわち、物面と共役関係にある面に描かれている。スリットマスク130中の開口部132によって形成される照明ストライプは、レンズ140、ダイクロイックミラー150、及び対物レンズ170によって2次元に並んだサンプルウェル182を含むマイクロタイタープレート180へと中継される。図示する都合上、図1の光学要素は断面を描き、ウェルプレートは遠近法によって描いている。ウェルプレート180への照明ラインの投影は、ライン184によって描かれ、また図1の平面に垂直であると理解される。矢印A及びBが示すように、ウェルプレート180は、示していない手段によってアレイの縦横と平行に二次元(X,Y)に動かすことができる。
【0027】
代替実施形態では、スリットマスク130は、光学系のフーリエ平面、すなわち対物レンズ後部焦点平面(BFP)160と共役関係にある面に属する。この場合では、開口部132は、図の平面に横たわっており、レンズ140は、開口部132によって形成された照明ストライプを対物レンズ170の後部焦点平面160へと中継し、対物レンズ170が、図1の平面に垂直な物面でそれをライン184に変換する。
【0028】
追加の代替実施形態では、スリットマスク130は、完全に取り除かれる。この実施形態によれば、照明供給源はレーザー110であり、そこからの光が、対物レンズ170の後部焦点平面160に集められる。これは、図1に示すように、円柱レンズ120と球面レンズ140の組合せによって実現することができ、或いは円柱レンズ120によって、照明を直接に平面160上に集めることもできる。
【0029】
サンプル区域、例えば、サンプルウェル182中のサンプルの像は、照明ラインをサンプル内の平面に投影し、そこからの蛍光発光を検出器220上に結像させ、検出器220による読みと同期させてプレート180を照明ラインに対して直角方向に動かすことによって得られる。図1に示した実施形態では、蛍光発光を、対物レンズ170によって集め、ダイクロイックビームスプリッタ150によって投影し、フィルタ200及び第二のスリットマスク210を通して、レンズ190によって、無限遠補正対物レンズ170を備えた共焦点結像系に適するように検出器220上に結像させる。ダイクロイックビームスプリッタ150及びフィルタ200は、照明波長で優先的に光を遮断する。検出器220は、実例を挙げれば、カメラであり、一次元又は二次元のどちらでもよい。一次元検出器を使用する場合、スリットマスク210は必要でない。照明、検出、及び変換の各手順は、指示された区域が画像化されるまで続けられる。サンプルが一定の速度で平行移動されるならば、機械の動きは単純になる。連続的な動きは、カメラによる読みの時間が露出時間と比べて短い場合、最も有用である。好ましい実施形態では、カメラの読み取りを連続的に行う。露出時間と読み時間を合計した時間中のサンプルの移動dは、照明ラインの幅Wより大きくても小さくてもよく、例えば0.5W≦d≦5Wである。マルチウェルプレートの全部のウェルを同様にして画像化することができる。
【0030】
或いは、顕微鏡は、光学系の視野によって元から限定される隣接するいくつかのウェルを差し渡して照明ラインの焦点が合わせられるように設計してもよい。最後に、1台以上の顕微鏡を同時に使用することもできる。
【0031】
照明ストライプ184の大きさ及び形状は、対物レンズ後部焦点平面160中のフーリエ変換ストライプの幅及び長さによって決定される。例えば、ライン184の長さは、160でのラインの幅によって決定され、逆に、184での幅は、160での長さによって決定される。回折限界性能に対しては、160での照明ストライプの長さを、対物後部開口部いっぱいになるように選択する。当業者ならば、照明ストライプ184の大きさ及び形状が、対物レンズの収差及び対物レンズの視野によって課される制限の範囲内で、円柱レンズ120の焦点長さと120でのビームサイズの組合せ方、すなわち各寸法での有効な開口数によって制御できることは明白であろう。
【0032】
照明ライン184の寸法は、シグナル対ノイズの比が最適となるように選択する。したがって、その寸法は、サンプルに応じて決まる。検定法に応じて、分解能は、回折限界、すなわち0.5μm未満と約5μmの間で様々であってよい。ビーム長さは、対物レンズ視野によって決定されることが好ましく、例えば、0.5〜1.5mmの間である。Nikon ELWD,0.6NA,10倍対物レンズは、例えば、約0.75mmの視野を有する。633nmの照射での、この対物レンズでの回折限界分解能は、約0.6μm又は約1100分解能要素である。
【0033】
有効深さ分解能は、主としてスリットマスク210中の開口部212の幅又は一次元検出器の幅によって決まり、像倍率は、対物レンズ170とレンズ190の連携によって生み出される。共焦点顕微鏡の最高深さ分解能は、1μmにせまるものである。この出願では、5〜10μmの深さ分解能で十分であり、又は有利にさえなることもある。
【0034】
例えば、生細胞などの問題のサンプルが回折限界体積中に含有するフルオロフォアが、十分に短い画像取得時間で妥当なシグナル対ノイズの映像を可能にするのに不十分であるとき、回折限界体積よりも大きい体積を照明しそれからの発光を集めることが有利である。イオンチャネル開口部などの一過性事象のビデオ速度動力学研究でも、同様の状況が効を奏する。これは特に、対物レンズの後部開口部をアンダーフィルする(underfilling)ことによって実現されるが、これは、照明開口部の直径を増大させることに等しい。照明の有効な開口数(「NA」)は、対物レンズのNAよりも小さい。しかし、蛍光発光は、対物レンズの全開NAで集められる。開口部212の幅は、より大きな照明体積からの発光が検出されるように増大させなければならない。回折限界よりも数倍大きい開口幅では、幾何光学が、検出量要素の大きさの妥当な近似値を提供する。すなわち、
横幅:a=d/M、
軸幅:z=√2a√tanα
[式中、Mは倍率であり、dは、開口部212の幅であり、αは、対物レンズ170の弧に対する半値角である]。照明開口部132又は開口部を備えていない実施形態中のその同等物と検出開口部212を独立に制御可能であることが、本発明の重要な部分である。
【0035】
多波長配置
ある種の検定法には、多波長蛍光画像化を可能にする実施形態が好ましい。この手段では、画像化される同じ区域の画像データを、異なる複数のそれぞれの色チャネルで同時に生成することができる。
【0036】
独立した波長又は色の数は、実施する特定の検定法に応じて変わってくる。一実施形態では、3種の照明波長を使用する。図2A及び2Bは、3色ライン走査共焦点画像化システムの波線経路をそれぞれ上面及び側面から示している。一般に、このシステムは、円柱レンズCLによって第一空間フィルタSFの所で焦点が結ばれて延長ビームになる平行ビームを作り出すための数箇所の電磁気放射供給源S、コリメーティングレンズL、及びミラーM;第一空間フィルタSFと第二空間フィルタSF間の共焦点顕微鏡;結像レンズIL;ビームスプリッタDM及びDM;及びサンプルからの蛍光放射の異なる波長成分を分離し検出するための検出器Dを含む。空間フィルタSF、SF及びSFは、スリットマスクであることが好ましい。
【0037】
詳細には、図2Aは、色λ、λ、及びλのための供給源S、S、及びS、並びにそれぞれの光源からの光をコリメートするレンズL、L、及びLを描いたものである。レンズL、L、及びLを調整して、システム中の他のレンズの任意の色度を補償することが好ましい。ミラーM、M、及びMは、光源Sからの照明の色を合体させるのに使用する。ミラーM及びMは、部分的に透過性であり、部分的に反射性であり、ダイクロイックになることが優先される。Mは、例えば、λを優先的に透過させ、λを優先的に反射するはずである。すなわち、λがλよりも大きいことが優先される。
【0038】
共焦点モードでの顕微鏡操作では、光源Sからの合体した励起ビームが物面OP中で「線形」、又は高度に偏心した楕円形に焦点を結ぶ必要がある。上記で図1に関して論じたように、様々な配置を使用して、これを実現することができる。図2に示した実施形態では、合体された照明ビームの焦点が円柱レンズCLによって空間フィルタSF中のスリットと符合した細長い楕円形に結ばれる。図2A及び2Bに描かれているように、スリットマスクSFは、照明光の伝搬に対して垂直に、かつその長軸を図2Aの頁の平面に取って並べられた、この系の像面に属する。レンズTL及びOLは、SFを含む平面から物面OPに照明ラインを中継する。回転ミラーTMは、便宜上のものである。別の実施形態では、DMは、TLとOLの間にあり、CLは、照明光の焦点を直接にBFPへと結ぶ。当業者には、他の実施形態が明白となろう。
【0039】
図2Bを参照すると、サンプルによって発せられ、対物レンズOLによって集められた光は、チューブレンズTLによって空間フィルタSF上に結像される。SFは、頁平面に垂直に伸びるように並べられたスリットにすることが優先される。したがって、フィルタSFを通過した光が事実上照明ラインとなる。SFは、主像面又はそれと共役関係にある任意の面に配置される。DMは、部分的に反射性であり、部分的に透過性であり、さらに「マルチクロイック」であることが好ましい。ある波長バンドを優先的に反射し、他の波長バンドを優先的に透過する多波長「ダイクロイック」ミラー又は「マルチクロイック」ミラーを得ることができる。
【0040】
ここで、δλは、λによって励起された蛍光発光であると規定する。δλは、一般に、λよりも幾分長い波長の分布となる。δλ及びδλも同様に規定される。DMは、λを優先的に反射し、δλ(n=1,2,3)を優先的に透過させる。SFを透過した光は、主像面と共役関係にある平面に属する検出デバイス上に結像される。図2Aでは、空間フィルタSFの像が、レンズILによって3台全ての検出器Dに結像される。この実施形態は、それぞれの検出器によって生成される画像間でほぼ完璧な記録が必要とされる用途において好ましい。別の実施形態では、個々のレンズILは、検出デバイスと連係しており、レンズの対IL及びILが、空間フィルタSFの像をそれぞれの検出器Dに中継する働きをする。光は、ミラーDM及びDMによって検出器毎に分割される。ミラーは、部分的に透過性であり、部分的に反射性であり、ダイクロイックになることが優先される。DMは、δλを優先的に反射し、δλ及びδλを優先的に透過させる。遮断フィルタBFは、δλを優先的に透過させ、存在する他の全ての波長を効果的に遮断する。DMは、δλを優先的に反射し、δλを優先的に透過させる。遮断フィルタBF及びBFは、それぞれδλ及びδλを優先的に透過させ、存在する他の全ての波長を効果的に遮断する。
【0041】
走査ミラーの配置
本発明の一部の実施形態では、ビデオ速度で像を形作ることによって迅速なデータ取得を提供する。ビデオ速度撮像によって、最高で毎秒30フレーム又は60フレームが可能になる。本発明の使用では、30Hz程度のフレーム速度を含意するものとする。好ましい実施形態では、ビデオ速度撮像は、照明とサンプルの相互的な変換がなされるように、サンプル面の一方の寸法に沿って照明を当て、それに垂直な方向で照明ビームによる走査を行うことによって実現される。走査台は、一般に大きくて重い。そのため、十分にすばやく動かすことができない。
【0042】
図3は、走査ミラーSMを利用する本発明の実施形態を描いたものである。ミラーは、対物レンズ後部焦点面(BFP)と共役関係にある平面に配置されると有利である。BFP(又はそれと共役関係にある平面)の回転によって、物面(OP)及びその共役面での変換が行われる。SMの全走査範囲は、レンズRL及びRLの典型的な値の焦点長さではわずか数度で済む。図3に示すように、このレンズ対は、BFPを倍率1でSMに結像させるが、様々な倍率を有利に使用することができる。像取得速度の限定要因は、カメラの読み速度及びシグナル強度である。上述の画像化モードでは、カメラの読み速度、例えば1MHzでデータを連続的に取得することができる。走査ミラーを用いる場合では、データを一方向に取得することが好ましい。データの連続的な取得を可能にする理想化された走査運動は、のこ歯状である。実際には、旋回走査時間と戻り走査時間の合計が、走査期間の約1/3〜2/3を占める。50%のむだな時間、50Hzのミラー振動周波数、及び1MHzの画素取得速度を想定して、毎秒50フレームでフレーム毎に約10000画素が実現されるはずであり、これは、フレームからフレームへと、細胞などの個々の物体の輪郭を明確にし、追跡するのに十分なものである。しかし、像あたり10画素は、一般に上であると考えられていたものの10分の1である。用途に応じて、高分解能で比較的小さい像、例えば、0.5−μm×0.5−μmのピクセレーションで50−μm×50−μmの像を得、又は低めの分解能で比較的大きい像、例えば、2−μmのピクセレーションで200−μm×200−μmの像を得ると有利である。
【0043】
オートフォーカス
本発明の好ましい実施形態では、サンプルは、画像化システムの物面に位置する。したがって、画像化システムの視野にあるサンプルの一部をこのシステムの物面内に保つオートフォーカス機構を使用する。平面性の正確さは、システムの被写界深度によって決定される。好ましい実施形態では、被写界深度は約10μmであり、視野は約1mmである。
【0044】
このオートフォーカスシステムは、ごくわずかな遅れを伴って作動し、すなわち、応答時間が像取得時間に比べて短く、例えば、0.01〜0.1秒である。さらに、オートフォーカス光源は、照明光源及びサンプルの性質と無関係である。他の利点の中でも特に、この配置では、結像系の光軸に沿ったサンプル受けの位置が、物面の位置と無関係に決定できるようになる。
【0045】
単一ビームオートフォーカスの実施形態を図2C及び3Cに示し、そこに、波長λの単独の光源S及び検出器Dを示してある。波長λは、必ずサンプル蛍光と異なるものとし、サンプル中の蛍光を相当には励起できない波長であることが優先される。すなわち、λは、近赤外、例えば800〜1000nmであることが優先される。部分的に透過性であり、部分的に反射性であるミラーDMは、ダイクロイックになることが優先され、λを反射し、λ及びδλを透過させる(n=1、2、3)。本発明の用途に適する光学系オートフォーカス機構は既知である。例えば、サーボ制御に適する位置誤差シグナルを生成するための非点レンズ系が、Applied Optics第23巻565〜570頁(1984年)に記載されている。「スキュービーム」を使用する焦点誤差検出系は、SPIE第200巻73〜78頁(1979年)で開示されている。後者の手法は、Dをスプリット検出器とする図2C及び3Cに従って容易に実施される。
【0046】
ウェル底部にサンプルを含むマイクロタイタープレートと共に使用するためには、サーボループを絶ってウェルの間を移動させなければならない。このため、照明を別のウェルに移動させる度に焦点を合わせ直す必要があるので、実質的な時間遅れが生じる。
【0047】
図4に示す本発明の好ましい実施形態では、サンプル面と物面の相対位置の連続的な閉ループ制御を提供する。このシステムは、2本の独立した電磁気放射ビームを利用する。Sを供給源とする一方の焦点は、連続表面上、例えばマイクロタイタープレートの底で結ばれる。Sを供給源とする他方の焦点は、不連続な表面上、例えばマイクロタイタープレートのウェルの底で結ばれる。一実施形態では、S及びSを供給源とするビームの波長は、それぞれλ及びλである。λは、Lによって平行にされ、アイリスIによって絞られ(apertured)、対物レンズOLによって不連続な平面上で焦点が結ばれる。λは、Lによって平行にされ、アイリスIによって絞られ、レンズCFLによって対物レンズOLと共同して連続表面上で焦点が結ばれる。反射光は、それぞれレンズIL及びILによって検出器D及びD上に焦点が結ばれる。部分的に透過性であり、部分的に反射性であるミラーDMは、ダイクロイックになることが優先され、λ及びλを反射し、λ及びδλを透過させる(n=1、2、3)。ミラーM、M、及びMは、部分的に透過性であり、部分的に反射性である。λ及びλが異なるものである場合、Mは、ダイクロイックになることが優先される。
【0048】
サンプルがマイクロタイタープレート中に存在する実施形態によれば、λは、ウェルの底で焦点が結ばれる。物面は、ウェルの底から可変距離で底上げすることができる。これは、Lを調整して、或いはサーボ制御ループ中のオフセット調整によって実現される。記載する都合上、λが物面中で焦点を結ぶことを想定する。
【0049】
オートフォーカスシステムの運転は次の通りである。サンプルウェルの底が対物レンズOLの焦点面中にない場合、検出器Dは、Z制御装置に対して、スイッチSWによって供給されるエラーシグナルを発する。Z制御装置は、マイクロタイタープレートを対物レンズに向けて、又はそれから離して動かすためのモーター(非表示)を制御する。或いは、Z制御装置は、対物レンズを動かすことができてもよい。マイクロタイタープレートのボトムPBが、レンズCFLと対物レンズOLの組合せの焦点面にない場合、検出器Dは、Z制御装置に対して、スイッチSWによって作動されるエラーシグナルを発する。XY制御装置は、レンズOLの物面OP中にあるマイクロタイタープレートを動かすためのモーター(非表示)を制御する。
【0050】
示されている通り、走査全体がコンピュータ制御下にある。典型的な走査は次の通りである。特定のウェルで像が完成した時点で、コンピュータがSWを作動させて、サーボ機構の制御を、Dによって発信されるエラーシグナルからDによって発信されるエラーシグナルへと切り替え、次いで、コンピュータが、プレートを次のウェルに移動するようXY制御装置に指示を出し、その後サーボがDに戻る。
【0051】
プレートの底からのシグナルを利用する「粗い」焦点合わせ機構が使用されて、サンプル面の位置が、プレート底部の厚さの、ウェル毎の格差の範囲内に保たれるので、「細かな」機構によって調査する必要のある範囲が最小限に抑えられる。例えば、アイリスIの直径が2mmであり、ILが100mmである場合、検出器上の像サイズは、約100μmになる。同様に、アイリスIの直径が0.5mmであり、ILが100mmである場合、検出器上の像サイズは、約400μmとなる。後者は、「粗い」焦点合わせとして機能するよう、感度が劣るように選択する。
【0052】
上述の単一ビーム実施形態でのように、波長λ及びλは、必ずサンプル蛍光と異なるものとし、サンプル中の蛍光を相当には励起できない波長であることが優先される。すなわち、λ及びλは、近赤外、例えば800〜1000nmであることが優先される。さらに、2種の波長は、例えば、λ=830nm、λ=980nmのように、異なるものであることが好ましい。
【0053】
2ビームオートフォーカスの代替実施形態では、λ=λであり、2本のビームは、同じ供給源から生じてよい。2本のビームが互いに垂直に偏光し、Mが偏光ビームスプリッタであることが優先される。
【0054】
次のように作動する単一ビームオートフォーカスの好ましい実施形態では、擬閉ループ制御装置を提供する。走査の終わりの時点で、コンピュータがSWを作動させて、プレートが次のウェルに移動する間、Z制御装置の出力を一定レベルに保つサンプルホールド装置へと制御を切り替え、その後SWはDに戻る。
【0055】
検出デバイス
物面と共役関係にある平面中にマニホルド、すなわち独立した検出要素を備えた検出デバイスを使用する。上で論じたように、ライン照明は、主として迅速に画像化する必要のある用途で有利である。ライン照明の平行性に固有の、ポイント照明と比べての潜在的なスピードの増大は、画像化システムが、サンプルの各点から発せられる光を照明ラインに沿って同時に検出することができる場合に限り実現される。
【0056】
上述の従来技術の画像化システムの出力箇所に、電荷結合素子(CCD)又は他のカメラを配置することが可能である(Whiteらの米国特許第5452125号明細書、及びBrakenhoff及びVisscher、J.Microscopy第171巻17〜26頁(1993年))。得られる装置は、本発明と比べると、3つの重大な欠点を有する。1点目は、像を二次元の検出器に結像させ直す必要があり、これが装置に不必要な複雑さを加えることである。別の点は、通常はカメラの構成要素となる、1000画素×1000画素のアレイを上回る十分な品質を有する完全な二次元検出器が必要となることである。第三の欠点は、その二次元デバイスからの完全な像を読み取るのに追加の時間が必要となることである。
【0057】
これらの欠点を回避し、高感度及び低ノイズ検出という制約の範囲内で、画像化速度だけでなく処理量も最適化するために、連続ライン読取りカメラを使用するが、好ましい実施形態では、長方形のCCDをラインカメラとして使用する。どちらの実施形態も、像内のライン間又は像間のむだな時間を伴わない。更なる利点は、以下で論じるステージ走査実施形態で、より広い有効視野が実現されることである。
【0058】
以下の好ましい実施形態を考慮に入れることによって、検出デバイスに必要な特性をさらに明らかにすることができる。対物レンズの分解能の限界は、< 1μm、通常は約0.5μmであり、検出器は、約1000の独立した要素からなるアレイを含む。分解能、視野(FOV)、及び像取得速度は、独立した変数ではなく、これらのパフォーマンスパラメーター間での妥協を余儀なくさせる。一般に、光学系の倍率は、分解能を犠牲にすることなく、できる限り広いFOVで結像されるように設定する。例えば、約1mmの視野は、1−μmのピクセレーションで1000要素のアレイに画像化することができるはずである。検出要素が20μmであれば、系の倍率は20倍にセットされることになる。これでは1−μmの分解能は得られないことを留意されたい。ピクセレーションは、分解能と同等ではない。例えば、対物レンズ固有の分解能の限界が0.5μmであり、物面中の0.5μm×0.5μmの各領域が画素上に写される場合、得られるデジタル画像の真の分解能は、0.5μmでない。真の0.5−μm分解能を実現するためには、ピクセレーションが、物面中の領域約0.2μm×0.2μmに対応する必要があるはずである。好ましい一実施形態では、画像化システムの倍率を、光学部品の真の分解能が実現されるように設定する。
【0059】
現在、本発明の用途にとって十分な読出しスピードを有する、最高検出効率最低ノイズの検出デバイスは、CCDカメラである。図5には、m×n(mは、実質的にnより少ない)アレイの検出要素を備えた長方形のCCDカメラが描かれている。蛍光発光の像は、好ましくは読み記録器に最も近い一列を扱う。これによって、移動時間が最小限に抑えられ、照明を受けた列と読み記録器との間の列からのシグナルに誤ったカウントが蓄積されることが回避される。
【0060】
原理としては、光学システムの倍率は、図5に示すようなCCDカメラ上のスリットSFの像の高さが1ピクセルになるように設定できるはずである。実際には、照明ラインとカメラの列軸との完全なアラインメントを維持することは困難であり、図2及び図3に例示するような多波長実施形態で3台のカメラと照明とのアラインメントを維持することはさらに困難である。少数、例えば2〜5の検出要素をカメラの各カラムに集めることによって、アラインメントの状態を緩めることができ、その間、読取りノイズ又は読取り時間の欠点は最小限に抑えられる。
【0061】
それぞれが物面と共役関係にある平面に配置された、図2及び図3の不定幅検出空間フィルタSF、及び図1の210と連係した、1台以上の長方形CCDカメラを検出デバイスとして備えた好ましい実施形態の更なる利点を以下で説明する。上で論じたように、本発明の一実施形態では、検出空間フィルタを省き、合体検出空間フィルタと検出デバイスを合体させたものとしてラインカメラを使用する。しかし、これも上で論じたように、不定幅検出空間フィルタは、サンプル依存的なシグナル対ノイズ比が最適化されるよう、検出量を最適化できるようにする。以下の好ましい実施形態は、ラインカメラの利点、すなわち、スピード、及び変動する検出量という柔軟性を保持している。倍率は、カメラの1列に高さhの回折限界ラインが結像されるように設定する。検出空間フィルタの幅dは、変数h≦d≦10hであることが好ましい。読取りの前にカメラの照明カラム中の検出装置が集められるが、これは、露出及び読取り時間に比べるとごくわずかな時間しか必要としない動作である。
【0062】
好ましい一実施形態では、カメラは、Princeton InstrumentsのNTE/CCD−1340/100−EMDである。好ましい実施形態の読取り速度は、読取りノイズの少数電子系で1MHzである。画素フォーマットを1340×100とし、カメラを問題の領域から離れた列の大部分(80%)に移行するようにつなげてカメラを有効に1340×20にすることができる。
【0063】
連続読取りカメラの上述の利点、すなわち連続する各取得間のむだな時間がないことに加えて、長さがサンプルの程度によってのみ制限される長方形の像が取得できるようになることが更なる利点である。長さは、カメラの短い方の幅及びライン照明の程度によって決定される。好ましい実施形態では、96穴マイクロタイタープレートの、直径7mmのウェル底部にサンプルを配置する。1μm×1mmの一片を照明し、照明区域から発せられる放射線を検出装置上に結像させる。視野が約〜1mmになるように光学的な列を設計する。本発明によれば、ウェル底部の像を1×7−mmの視野に1−μmのピクセレーションで生成することができる。
【0064】
環境の制御
本発明の実施形態では、生細胞で検定法が実施される。生細胞アッセイは、適切に実施するために、生理的条件に適度に近づける必要があることがたびたびある。特に重要なパラメーターは、温度である。温度を上下させる手段、特にサンプルの温度を37℃に保つための手段を組み込むことが望ましい。別の実施形態では、生細胞の生存能力を維持するために、相対湿度及び/又はCO及び/又はOの制御が必要である。さらに、湿度を制御して蒸発を最小限に抑えることが、サンプル体積を小さくするために重要である。
【0065】
高めの温度、好ましくは37℃でマイクロタイタープレートを用意する、LCIシステムと適合性のある3通りの実施形態を以下で述べる。
【0066】
画像化システムは、耐光性囲い内に存在することが好ましい。第一の実施形態では、サンプルプレートは、囲いの内部全体をその温度に保って所望の温度を維持する。しかし、37℃では、湿度が意図したように高めに保たれない限り、蒸発冷却によってサンプル体積が縮小されて、アッセイ期間が制限される。
【0067】
第二の実施形態は、プレートを据え付けのカバーの下で移動させられるようにするマイクロウェルプレート用熱カバーを提供する。このカバーは、顕微鏡の光軸に沿って並べられたウェルの上に1箇所の開口部を有する。この開口部は、アクティブなウェルへの分注を可能にする一方で、加熱を維持し、残りのプレートへの循環の制限が続けられるようにする。遮熱カバープレートとマイクロウェルプレート間の約0.5mmの間隔によって、マイクロウェルプレートの自由な移動が可能になり、蒸発が最小限に抑えられる。問題のウェルの中身は、分注開口部を介して長くとも数秒間しか周囲条件に曝されないので、中身は、測定の際にそれほどの温度変化を受けない。
【0068】
第三の実施形態では、薄いサファイア色の遮熱ウィンドウをプレート底部囲いとして使用する。ウェルの隔離板に沿った型の抵抗加熱器が、ウィンドウ温度を所望のレベルに保つ。
【0069】
追加の実施形態では、開示した3つの方法を様々に組み合わせることができる。
【0070】
自動化されたスクリーニングアッセイで使用する、本発明の追加の好ましい実施形態では、画像化システムを、Zymark Twisterなどのプレート取扱いロボットに組み込む。
【0071】
データ処理システム
図6は、本発明に従って配置されるシステムのデータ処理構成要素の略図を示している。このシステムは、Amersham Biosciences IN Cell Analyzer(商標)システムに基づくものであり、検出器D、D、D、D、D、スイッチSW、制御ユニット401、像データ記憶装置402、及び入力/出力(I/O)装置404を含む、上述のような共焦点顕微鏡400を含む。関連コンピュータ端末405は、中央処理装置(CPU)408、メモリ410、ハードディスクドライブ412などのデータ記憶装置、並びにコンピュータとMDPUの相互連絡、及びコンピュータとスクリーン428のディスプレイ要素432の、スクリーンI/O装置430を介しての相互連絡をそれぞれ円滑にするI/O装置406を含む。オペレーティングシステムプログラム414は、ハードディスクドライブ412に記憶されており、コンピュータ端末405の低レベルの演算を既知の方法で制御する。プログラムファイル及びデータ420も、ハードディスクドライブ412に記憶されており、関連装置を介したオペレータへの出力を既知の方法で制御し、ハードディスクドライブに記憶されたデータを出力する。関連装置は、スクリーン428の要素としてのディスプレイ432;別のI/O装置(非表示)を介して、オペレータからの情報の入力を受け取り、オペレータに情報を出力する位置決め装置(非表示)及びキーボード(非表示)を含む。ハードドライブ412に記憶されたプログラムファイル420には、画像処理及び分析アプリケーション416、アッセイ制御アプリケーション418、及び顕微鏡400から受け取った画像データ及びデータ処理中に作成された出力ファイルを記憶させるためのデータベース422が含まれる。画像処理及び分析アプリケーション418は、Media CyberneticsのImage−Pro(商標)など、既知の画像処理及び分析ソフトウェアパッケージのカスタマイズ版でよい。
【0072】
共焦点顕微鏡400を使用する検定法の性能は、制御アプリケーション418を使用して制御し、画像データを取得する。1種以上の検出器D、D、Dによってマイクロタイタープレート中の少なくとも1個のウェルの画像データを取得し終えた後、画像データをコンピュータ405に送信し、コンピュータ端末ハードドライブ412のデータベース422に記憶させ、その時点で、画像処理及び分析アプリケーション416を使用して、以下でより詳細に述べるように画像データを処理することができる。
【0073】
細胞中に発現される発光レポーター
以下で述べる検定法の数多くの変形形態を、本発明に従って実践することができる。一般に、細胞中の1種以上の発光レポーターの特有の空間的及び/又は経時的分布を使用して、検定法を定量化する。発光は、上述のようなライン走査共焦点顕微鏡を使用して本質的に平らな表面から観察すると有利である。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、発光レポーターは、我々の以前の国際特許出願PCT/GB02/004258号に記載の方法で用意する。細胞集団の細胞周期中の位置は、
a)
i)細胞周期相に特異的な1種以上の発現制御要素と、
ii)破壊制御要素
とに操作可能に連結され、かつその制御下にある検出可能な生細胞レポーター分子をコードしている核酸配列を含む核酸レポーター構築物、好ましくはDNA構築物を細胞中に発現させ、
レポーター構築物が、細胞周期の所定の時点で細胞中に発現されるステップ、及び
b)レポーター分子によって発せられる発光をモニターして、細胞周期中の細胞の位置を決定するステップ
によって決定される。
【0075】
核酸レポーター構築物が、細胞周期相に特異的な空間局在化制御要素に連結され、その制御下にあることも好ましい。
【0076】
細胞周期相に特異的な発現制御要素は、通常は、1種以上の核酸配列の転写及び/又は翻訳を制御し、細胞周期特異的な発現の制御を可能にするDNA配列である。周期位置レポーター構築物の構築には、1以上の細胞周期相で特異的に活性を有するどんな発現制御要素を使用するのも適切である。
【0077】
適切には、細胞周期相特異的な発現制御要素は、細胞周期特異的なプロモーター、及び転写若しくは翻訳の制御に対して細胞周期特異的に影響を及ぼす他の要素から選択される。発現制御要素がプロモーターである場合では、プロモーターの選択は、研究のために選択される細胞周期相に応じて決まる。
【0078】
適切なプロモーターとしては、サイクリンB1プロモーター(Cogswellら、Mol.Cell Biol.(1995年)、第15巻(5)、2782〜90頁、Hwangら、J.Biol.Chem.(1995年)、第270巻(47)、28419〜24頁、Piaggioら、Exp.Cell Res.(1995年)、第216巻(2)、396〜402頁);Cdc25Bプロモーター(Kornerら、J.Biol.Chem.(2001年)、276巻(13)、9662〜9頁);サイクリンA2プロモーター(Hengleinら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(1994年)、第91巻(12)、5490〜4頁、Zwickerら、Embo J.(1995年)、第14巻(18)、4514〜22頁);Cdc2プロモーター(Tommasi及びPfeifer、Mol.Cell Biol.(1995年)、第15巻(12)、6901〜13頁、Zwickerら、Embo J(1995年)、第14巻(18)、4514〜22頁);Cdc25Cプロモーター(Korner及びMuller、J.Biol.Chem.(2000年)、第275巻(25)、18676〜81頁、Kornerら、Nucl.Acids Res.(1997年)、第25巻(24)、4933〜9頁);サイクリンEプロモーター(Botzら、Mol.Cell Biol.(1996年)、第16巻(7)、3401〜9頁、Korner及びMuller、J.Biol.Chem.、(2000年)、第275巻(25)、18676〜81頁);Cdc6プロモーター(Hateboerら、Mol.Cell Biol.(1998年)、第18巻(11)、6679〜97頁、Yanら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(1998年)、第95巻(7)、3603〜8頁);DHFRプロモーター(Shimadaら、J.Biol.Chem.(1986年)、第261巻(3)、1445〜52頁、Shimada及びNienhuis、J.Biol.Chem.(1985年)、第260巻(4)、2468〜74頁)及びヒストンプロモーター(van Wijnenら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(1994年)、第91巻、12882〜12886頁)が挙げられる。
【0079】
適切には、細胞周期相に特異的な発現制御要素は、細胞周期特異的なIRES要素、及び翻訳の制御に対して細胞周期特異的に影響を及ぼす他の要素から選択される。IRES要素は、リボソームの結合及び翻訳の開始が5’−キャップ構造領域でないmRNAの領域で行われるようにする、内部リボソーム侵入部位である。細胞周期特異的なIRES要素は、キャップ非依存的な翻訳の開始を細胞周期の特定の段階に限定する(Sachs,A.B.、Cell(2000年)、第101巻、243〜5頁)。発現制御要素をIRESにするように選択する場合、その選択は、調査中の細胞周期相に応じて決まることが適切である。この場合では、構成的に発現されるプロモーター(例えば、CMVやSV40)又は誘導性のプロモーター(例えば、pTet−on pTet−off系、Clontech)を使用すると、バイシストロン性mRNAの転写を制御することができる(Sachs,A.B.、Cell(2000年)、第101巻、243〜5頁)。或いは、細胞周期相非依存的なIRES要素(例えば、pIRESベクター中に見られるEMCV IRES、BD Clontech)を細胞周期特異的なプロモーター要素と共に使用することもできる。或いは、細胞周期相特異的なプロモーターを細胞周期相特異的なIRES要素と共に使用して、レポーターの発現のより厳密な制御を実現することもできる。
【0080】
本発明での使用に適するIRES要素としては、G2−IRES(Cornelisら、Mol.Cell(2000年)、第5巻(4)、597〜605頁);HCV IRES(Hondaら、Gastroenterology(2000年)、第118巻、152〜162頁);ODC IRES(Pyronetら、Mol.Cell(2000年)、第5巻、607〜616頁);c−myc IRES(Pyronnetら、Mol.Cell(2000年)、第5巻(4)、607〜16頁);及びp58 PITSLRE IRES(Cornelisら、Mol.Cell(2000年)、第5巻(4)、597〜605頁)が挙げられる。
【0081】
表1は、本発明に従って使用することのできる好ましい発現制御要素を挙げ、各要素が活性化される細胞周期相を示すものである。
【0082】
【表1】

【0083】
破壊制御要素は、その配列を含むタンパク質の破壊を制御するタンパク質モチーフをコードしているDNA配列である。適切には、破壊制御要素は、細胞周期の影響を受けるもの、例えば、サイクリンB1 Dボックス(Glotzerら、Nature(1991年)、第349巻、132〜138頁、Yamanoら、EMBO J.(1998年)、第17巻(19)、5670〜8頁、Clute及びPines、Nature Cell Biology(1999年)、第1巻、82〜87頁);サイクリンA N末端(den Elzen及びPines、J.Cell Biol.(2001年)、第153巻(1)、121〜36頁、Geleyら、J.Cell Biol.(2001年)、第153巻、137〜48頁);KENボックス(Pfleger及びKirschner、Genes Dev(2000年)、第14巻(6)、655〜65頁)、サイクリンE(Yehら、Biochem Biophys Res Commun.(2001年)、第281巻、884〜90頁)、S.cerevisiae由来のCln2サイクリン(Bersetら、Mol.Cell Biol.(2002年)、4463〜4476頁)、及びp27Kip1(Montagnoliら、Genes Dev.(1999年)、第13巻(9)、1181〜1189頁、Nakayamaら、EMBO J.(2000年)、第19巻(9)、2069〜81頁、Tomodaら、Nature(1999年)、第398巻(6723)、160〜5頁)でよい。
【0084】
表2は、本発明に従って使用することのできる破壊制御要素を挙げ、各要素が活性化される細胞周期相を示すものである。
【0085】
【表2】

【0086】
或いは、破壊制御要素は、Rogersら、Science(1986年)、第234巻、364〜8頁に記載されているようなPEST配列などの、細胞周期の影響を受けないものでもよい。細胞周期の影響を受けない破壊制御要素の例としては、カゼイン由来配列、オルニチン脱炭酸酵素、及びタンパク質半減期を短縮するタンパク質が挙げられる。このような細胞周期の影響を受けない破壊制御配列を本発明の方法で使用すると、細胞周期特異的なプロモーターによる発現が誘導されてからの細胞周期レポーターの残存時間を測定する手段となる。
【0087】
適切には、核酸配列によってコードされる生細胞レポーター分子は、蛍光タンパク質及び酵素からなる群から選択することができる。好ましい蛍光タンパク質としては、Aequorea victoria由来の緑色蛍光タンパク質(GFP)、及び野生型GFPのアミノ酸配列をアミノ酸の欠失、付加、又は置換によって変更したものである機能性GFP類似体などのGFP誘導体が挙げられる。本発明で使用するのに適するGFP類似体としては、EGFP(Cormack,B.P.ら、Gene(1996年)、第173巻、33〜38頁);EYFP及びECFP(米国特許第6066476号明細書、Tsien,R.ら);F64L−GFP(米国特許第6172188号明細書、Thastrup,O.ら);BFP(米国特許第6077707号明細書、Tsien,R.ら)が挙げられる。他の蛍光タンパク質として、DsRed、HcRed、及び他の新規な蛍光タンパク質(BD Clontech及びLabas,Y.A.ら、Proc Natl Acad Sci USA(2002年)、第99巻、4256〜61頁)、並びにRenilla GFP(Stratagene)が挙げられる。適切な酵素レポーターは、その酵素に対する基質中で検出可能な(例えば、蛍光又は発光)シグナルを発することのできるものである。特に適切な酵素/基質としては、ニトロ還元酵素/Cy−Q(国際公開第01/57237号で開示されているようなもの)及びβ−ラクタマーゼ/CCF4が挙げられる。
【0088】
好ましい実施形態では、核酸レポーター構築物は、タンパク質の細胞下での局在化を細胞周期特異的に制御することのできるタンパク質モチーフをコードしているDNA配列を含む、細胞周期相に特異的な空間局在化制御要素を適宜含んできてよい。そのような局在化制御要素は、
i)レポーターが特定の細胞下に局在することが望ましい場合、かつ/又は
ii)細胞周期位置のより厳密な決定が求められる場合
では、本発明に従って使用すると有利である。
【0089】
レポーターの細胞下の局在性を決定して、その有効な働き及び/又は破壊を確実にする必要があることもある。局在化制御要素を使用すると、レポーターシグナルの強度及び局在性の両方を測定できるようになるので、細胞周期位置のより厳密な決定が可能となり得る。
【0090】
適切な空間局在化制御要素としては、細胞周期制御タンパク質、例えば、サイクリンB1 CRSの局在化を調節するものが挙げられる。
【0091】
用語「操作可能に連結された」とは、本明細書では、その要素が、その企図された目的に合わせて機能するように、例えば、転写がプロモーター中で開始され、本発明の蛍光タンパク質をコードするDNA配列によって進行するように配置されていることを指す。図7は、本発明によるDNA構築物の一般構造を図示するものであり、その中で、図7Aは、細胞周期相に特異的なプロモーターを使用し、内部リボソーム侵入部位(IRES)要素を使用しない構築物を示し、図7Bは、IRES要素を使用して哺乳動物の選択を容易にする構築物を示し、図7Cは、構成的若しくは誘発性の哺乳動物プロモーターと、発現制御要素としての細胞周期相に特異的なIRESを利用する構築物を示す。各事例で、Aは、細胞周期相に特異的な発現制御(プロモーター)を表し、Bは、細胞周期相に特異的な破壊制御要素を表し、Cは、細胞周期相に特異的な局在化制御要素を表し、Dは、レポーター遺伝子を表し、Eは、細胞周期非特異的なIRES要素を表し、Fは、選択用哺乳動物マーカーを表し、Gは、構成的哺乳動物プロモーターを表し、Hは、細胞周期特異的なIRES要素を表す。
【0092】
本発明の好ましい実施形態では、構築物は、サイクリンB1プロモーター、サイクリンB1破壊ボックス(Dボックス)、サイクリンB1細胞質保留配列(CRS)、及び緑色蛍光タンパク質(GFP)を含む。
【0093】
一実施形態では、核酸レポーター構築物は、次の要素、すなわち、
a)次のものを含むベクター主鎖、
i)細菌の複製起点
ii)細菌の薬物耐性遺伝子
b)細胞周期相に特異的な発現制御要素、
c)破壊制御要素、及び
d)レポーター分子をコードしている核酸配列
を含む発現ベクターを含む。
【0094】
核酸レポーター構築物は、適宜、細胞周期相に特異的な空間局在化制御要素及び/又は真核細胞薬物耐性遺伝子、好ましくは哺乳動物の薬物耐性遺伝子をさらに含む。
【0095】
発現ベクターは、ポリアデニル化シグナル、スプライスドナー/スプライスアクセプターの各シグナル、介在配列、転写促進因子配列、翻訳促進因子配列などの他の核酸配列を含んでいてもよい。薬物耐性遺伝子とレポーター遺伝子は、2種の遺伝子が別々のプロモーターから転写開始されるよりも、適宜、細胞周期特異的な内部リボソーム侵入部位(IRES)(Sachsら、Cell(2000年)、第101巻、243〜245頁)又は細胞周期非依存性の内部リボソーム侵入部位(IRES)(Jangら、J.Virology(1988年)、第62巻、2636〜2643頁;Pelletier及びSonenberg、Nature(1988年)、第334巻、320〜325頁)によって操作可能に連結されていてよい。細胞周期非特異的IRES要素を使用する際、Clontechから市販されているpIRES−neoベクター及びpIRES−puroベクターを使用することができる。
【0096】
特定の実施形態では、核酸レポーター構築物は、サイクリンB1プロモーターをコードしているDNA配列を、サイクリンB1のアミノ末端の171アミノ酸をコードしているDNA配列に操作可能に連結したものと、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードしているDNA配列とから組み立てられる(図8)。図8に示した構築物は、サイクリンB1プロモーター(A)、サイクリンB1破壊ボックス(Dボックス)(B)、サイクリンB1 CRS(C)、及びGFPレポーター(D)を含んでいる。サイクリンB1の局在化及び破壊を制御するモチーフは全て、その分子のアミノ末端中の約150アミノ酸まで地図作成が済んでいる。したがって、パートナーキナーゼに結合し、それを活性化するのに必要となり、サイクリンボックスと呼ばれる特定の配列を欠いているために細胞周期の進行を妨げない(Nugentら、J.Cell.Sci.(1991年)、第99巻、669〜674頁)、サイクリンB1のアミノ末端由来の配列のみを使用して、人工の細胞周期マーカーを構築することができる。サイクリンB1のアミノ末端配列に必要となる調節性のキーモチーフは、次のものである。
i)破壊ボックス(Dボックス)と呼ばれる9アミノ酸のモチーフ。これは、目標サイクリンB1のユビキチン化機構に必要であり、また1種以上のC末端リジン残基と共に、その細胞周期特異的な分解にも必要である。
ii)約10アミノ酸の核輸出シグナル(NES)。このモチーフは、エクスポーチン1によって直接又は間接的に認識され、間期の間、細胞質中のサイクリンB1のかさを十分に維持する。
iii)NES中に位置しまたそれに隣接し、有糸分裂時に迅速な核の輸入、及び核の輸出の低減をもたらす、約4箇所の有糸分裂特異的なリン酸化部位。
【0097】
この構築物は、真核細胞中で発現させると、内発的なサイクリンB1の発現及び分解と平行した、GFPレポーターの細胞周期特異的な発現及び破壊を示す。したがって、GFPの蛍光強度を測定すると、細胞周期のG2/M期にある細胞を同定することができる(図9)。さらに、この構築物の蛍光産物は、内発性サイクリンB1の空間局在性を模倣するので、細胞下の蛍光分布を分析すると、細胞周期位置をさらに精密に割り当てることができる。前期では、サイクリンB1は、核へと直ちに位置を変え、したがって、細胞中のGFP蛍光の精密な局在性を利用すると、間期から有糸分裂へと移行する細胞を識別することができる。細胞が中期に到達し、紡錘体アセンブリチェックポイントがクリアーされてしまうと、サイクリンB1は非常に急速に分解され、したがって、GFP蛍光の消失を使用して、M期中期にある細胞を同定することができる。
【0098】
同時性をもたない細胞集団中で構築物を発現させると、各細胞が、構築物からの蛍光産物の周期的な発現及び破壊を示して、集団中の全細胞から蛍光の連続的な点滅パターンがもたらされる。したがって、各細胞の蛍光強度を経時的に分析すると、各細胞の細胞周期状態の動的な情報が得られる。
【0099】
第一の態様に従う核酸レポーター構築物の別の実施形態は、細胞周期の所望の区画を報告する細胞周期相レポーターが設計されるように、例えば、表1及び表2に示したものから、適切な代替細胞周期制御要素を選択して構築することができる。
【0100】
発現ベクター及びプラスミドの構築及び使用については、当業者によく知られている。事実上、どんな哺乳動物細胞発現ベクターも、本明細書で開示する細胞周期マーカーと共に使用することができる。細菌及び哺乳動物の薬物耐性遺伝子と、細菌の複製起点とを含む適切なベクター主鎖の例としては、pCI−neo(Promega)、pcDNA(Invitrogen)、及びpTriEx1(Novagen)が挙げられるがこれに限らない。適切な細菌の薬物耐性遺伝子としては、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、及びクロラムフェニコールが含まれるがこれに限らない抗生物質に対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子が挙げられる。真核細胞の薬物選択マーカーとしては、ネオマイシン、ヒグロマイシン、ピューロマイシン、ゼオシン、マイコフェノール酸、ヒスチジノール、ゲンタマイシン、及びメトトレキサートなどの薬剤が挙げられる。
【0101】
DNA構築物は、当業者によく知られている方法による制限消化、ライゲーション、形質転換、及びプラスミド精製といった標準の組換え分子生物学の技術によって調製することができ、Sambrook,J.ら(1989)、「Molecular Cloning−A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press刊に記載されているようなものである。或いは、DNA構築物は、確立されている方法、例えば、Beaucage及びCaruthers(Tetrahedron Letters(1981年)、第22巻、1859〜1869頁)が記載しているホスホラミダイト法、又はMatthesら(EMBO J.(1984年)、第3巻、801〜805頁)が記載している方法によって合成して調製することもできる。ホスホラミダイト法によれば、オリゴヌクレオチドを、例えば自動DNA合成装置中で合成し、精製し、徐冷し、適切なベクターに連結し、クローン化する。DNA構築物は、例えば、米国特許第4683202号明細書又はSaikiら(Science(1988年)、第239巻、487〜491頁)に記載されているように、特定のプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製してもよい。PCR法の総説は、PCR protocols(1990年)、Academic Press刊、米カリフォルニア州サンディエゴの中に見ることができる。
【0102】
DNA構築物を調製する際、レポーターをコードしている遺伝子配列は、細胞周期相に特異的な破壊制御要素、及び適宜、空間局在化制御要素に、インフレームで連結されなければならない。次いで、得られるDNA構築物を、1以上の適切な細胞周期相に特異的な発現制御要素の制御下に置くべきである。
【0103】
構築物又はそのような構築物を含む発現ベクターの導入先となる宿主細胞は、その構築物を発現させることができるどんな細胞でもよく、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、真菌細胞、線虫細胞、魚類細胞、両生類細胞、植物細胞、及び昆虫細胞からなる群から選択することができる。
【0104】
調製されたDNAレポーター構築物は、当業者によく知られている技術を使用して、宿主細胞に形質移入することができる。1つの手法は、化学的若しくは物理的手順を使用して、細胞を一時的に透過性にするものである。これらの技術には、電気穿孔法(Tur−Kaspaら、Mol.Cell Biol.(1986年)、第6巻、716〜718頁;Potterら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(1984年)、第81巻、7161〜7165頁)、リン酸カルシウム法(例えば、Graham及びVan der Eb、Virology(1973年)、第52巻、456〜467頁;Rippeら、Mol.Cell Biol.(1990年)、第10巻、689〜695頁)、又は直接微量注入法が含まれよう。
【0105】
或いは、カチオン脂質法による方法、例えば、Superfect(Qiagen)又はFugene6(Roche)を使用して、DNAを細胞に導入することができる(Stewartら、Human Gene Therapy(1992年)、第3巻、267頁;Torchilinら、FASEB J(1992年)、第6巻、2716頁;Zhuら、Science(1993年)、第261巻、209〜211頁;Ledleyら、J.Pediatrics(1987年)、第110巻、1頁;Nicolauら、Proc.Nat.Acad.Sci.,USA(1983年)、第80巻、1068頁;Nicolau及びSene、Biochem.Biophys.Acta(1982年)、第721巻、185〜190頁)。Jiaoら(Biotechnology(1993年)、第11巻、497〜502頁)は、遺伝子を輸送し、脳組織中で発現させるための、衝撃によって影響を与える遺伝子輸送プロトコルの使用を記載しているが、これを、宿主細胞へのDNAの輸送に使用してもよい。
【0106】
DNA構築物を細胞に形質移入するための別の代替法は、ウイルスが細胞に侵入する自然の力を利用する。このような方法としては、例えば、単純ヘルペスウイルス(米国特許第5288641号明細書)、サイトメガロウイルス(Miller、Curr.Top.Microbiol.Immunol.(1992年)、第158巻、1頁)、ワクシニアウイルス(Baichwal及びSugden、1986年、「Gene Transfer」、R.Kucherlapati編、米ニューヨーク、Plenum Press刊、117〜148頁)、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス(Muzyczka、Curr.Top.Microbiol.Immunol.(1992年)、第158巻、97〜129頁)に基づくベクター及び形質移入プロトコルが挙げられる。
【0107】
適切な組換え宿主細胞の例としては、HeLa細胞、ベロ細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、U2OS、COS、BHK、HepG2、NIH 3T3 MDCK、RIN、HEK293、及びin vitroで増殖する他の哺乳動物細胞系が挙げられる。このような細胞系は、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC)、米メリーランド州ベセズダから入手できる。哺乳動物から細胞を移した後、細胞を限られた期間培養してから樹立させた、一次細胞系由来の細胞も、本発明に含まれるものとする。
【0108】
細胞周期位置レポーターの安定な発現を示す細胞系は、標準の方法を使用して、遺伝子改変細胞の異種移植片を宿主動物中で樹立させる際に使用することもできる(Krasagakis,K.Jら、Cell Physiol.(2001年)、第187巻(3)、386〜91頁;Paris,S.ら、Clin.Exp.Metastasis(1999年)、第17巻(10)、817〜22頁)。細胞周期位置レポーターを発現させるように遺伝子改変された腫瘍細胞系の異種移植片は、モデル系の確立による、腫瘍細胞の分裂、静止、及び有糸分裂の研究、並びに新しい抗癌薬のスクリーニングを可能にする。
【0109】
細胞周期位置レポーターを発現させる遺伝子改変細胞系又はトランスジェニック組織を宿主動物中で同種移植片として使用すると、組織移植片の寛容性又は拒絶に影響を及ぼす機序の研究が可能になる(Pye D及びWatt,D.J.、J.Anat.(2001年)、第198巻(第2部)、163〜73頁;Brod,S.A.ら、Transplantation(2000年)、第69巻(10)、2162〜6頁)。
【0110】
細胞の細胞周期位置の決定方法を第二の態様に従って実施するためには、DNAレポーター構築物を形質移入した細胞を、レポーター分子が細胞周期の特定の段階で発現されるのに十分な条件下、かつ十分な時間をかけて培養することができる。通常、レポーター分子の発現は、形質移入後16時間〜72時間の間に起こるが、培養条件に応じて様々となり得る。レポーター分子が緑色蛍光タンパク質配列を主体とするものであれば、レポーターが、折り重なって蛍光性の高次構造になるのに所定の時間がかかることがある。この時間は、使用する緑色蛍光タンパク質誘導体の一次配列に応じて決まる。蛍光レポータータンパク質は、時間と共に色が変化してもよいが(例えば、Terskikh、Science(2000年)、第290巻、1585〜8頁を参照のこと)、その場合、形質移入してから特定の時間間隔で画像化を行う必要がある。
【0111】
核酸レポーター構築物が薬物耐性遺伝子を含む本発明の実施形態では、薬物耐性遺伝子を形質移入し、発現させた後(通常は1〜2日)、形質移入を受けた細胞が耐性を有する抗生物質存在下で細胞を増殖させて、選択用マーカー遺伝子によって、改変レポーター遺伝子を発現させる細胞を選択することができる。抗生物質を加える目的は、レポーター遺伝子を発現させる細胞、並びに、場合によっては、レポーター遺伝子がその関連するプロモーター、IRES要素、エンハンサー、及び終止配列と共に細胞系のゲノムに組み込まれている細胞を選択することである。選択を行った後、構築物を発現させているクローンの細胞系を、標準の技術を使用して単離することができる。次いで、クローンの細胞系を標準の条件下で増殖させることができ、この細胞系が、レポーター分子を発現させ、細胞周期の特定の時点で検出可能なシグナルを発生させる。
【実施例】
【0112】
実施例1
安定細胞株産生の実施例
DNA構築物の調製
i)サイクリンB1の破壊ボックス(destruction box)及びNESをコードしている、サイクリンB1のN末端側3分の1のmRNA(アミノ酸1〜171)を、標準のPCR法及び以下のプライマーを用いてHindIII及びBamHI両端から増幅させた:
GGGAAGCTTAGGATGGCGCTCCGAGTCACCAGGAAC
GCCGGATCCCACATATTCACTACAAAGGTT
ii)wtGFPの遺伝子を、融合タンパク質の構築を容易にするはずである制限部位を導入するよう設計されたプライマーで増幅させた。このPCR産物を、製造元の使用説明書に従ってpTARGET(Promega)中にクローニングし、変異(F64L/S175G/E222G)を、QuikChange site−directed mutagenesis kit(Stratagene)を用いて導入した。自動DNA配列決定法により構築物を確認した。次いで、この変異体GFPをコードしているDNAを、BamHI及びSalI制限部位を使用してサイクリンB1 N末端領域の下流にクローニングした。
iii)サイクリンB1プロモーターの細胞周期依存性領域(−150−>+182)を、SacII及びHindIII部位を用いて増幅し、サイクリンB1 N末端領域とGFPの融合タンパク質の上流にクローニングした。
iv)このプロモーター及び組換えタンパク質をコードしているDNAを切り出し、BglII/NheIで切断するpCI−Neo由来ベクター中のCMVプロモーターの位置にクローニングした。
【0113】
実施例2
一時的にトランスフェクトした細胞を使用した、細胞周期相マーカー由来のGFP蛍光への細胞周期ブロッキング剤の効果
U20S細胞(ATCC HTB−96)を、96ウェルマイクロタイタープレートのウェル中で培養した。pCORON4004ベクター(Amersham Biosciences)中でサイクリンB1 D−box、サイクリンB1 CRS及びGFPをコードしている配列に作動可能に連結させたサイクリンB1プロモーターを含む、実施例1により調製した細胞周期レポーター構築物を、トランスフェクション試薬としてFugene6(Roche)を使用して細胞にトランスフェクトした。
【0114】
24時間培養した後、細胞を、細胞周期特異的ブロッカーであるミモシン(G1/S移行期でブロックする)又はデメコルチン(M期でブロックする)に曝した。対照細胞は培地のみに曝した。
【0115】
細胞をさらに24時間インキュベーションし、次いで自動画像解析を伴う共焦点走査イメージャ(IN Cell Analysis system、Amersham Biosciences)を使用して核におけるGFPの発現について解析した。
【0116】
デメコルチンに曝した細胞では、対照細胞と比較すると蛍光が増大したが、ミモシンに曝した細胞では、対照細胞と比較すると蛍光が減少した。サイクリンB1のプロモーターが活性化する時期の前であるG1/S期で(ミモシン処理を行い)ブロックされた細胞では蛍光が減少するが、サイクリンB1のD−ボックスが作用する時期の前であるM期で(デメコルチン処理を行い)ブロックされた細胞では蛍光が増大する。
【0117】
実施例3
構築物のマイクロインジェクション
HeLa細胞に、実施例1により調製した構築物を微量注入し、低速度撮影顕微鏡によりこれを調査した。微分干渉コントラスト(DIC)画像をそれに相当する蛍光画像と共に作成した。中期の細胞は核で明るい蛍光を示した。これと同一の細胞を同様にして、その後の時期である後期及び後期の後期(late anaphase)で画像を作成した。このDIC画像では、細胞が2個の娘細胞に分裂したことが示され、その相当する蛍光画像では、細胞周期が進行するにつれて、蛍光構築物の破壊に伴い蛍光が消失したことが示された。
【0118】
実施例4
安定細胞株の産生
U2−0S細胞(ATCC HTB−96)に、実施例1に記載の構築物をトランスフェクトし、これを、その構築物を安定的に発現する細胞を選択するため1mg/mlジェネテシンを含む培地中で数ヶ月間増殖させた。クローンをいくつか、標準の方法により(例えば、Freshney, Chapter 11 in Culture of Animal Cells、(1994年)Wiley−Liss Incに記載されている)採取し、蛍光細胞を含むクローンを単離した。この細胞株を、25mM HEPESを含む培地中で37℃にて維持した。
【0119】
実施例5
より明るい安定細胞株の調製
実施例1に記載した、ベクター中の緑色蛍光タンパク質レポーター配列を、標準の方法により増強(enhanced)GFP(EGFP;Cormack,B.P.ら、Gene、(1996年)、第173巻、33〜38頁;BD Clontech)で置換した。このEGFP遺伝子は、変異F64L及びS65Tを含むより明るい種類のGFPである。さらに、EGFPは、哺乳類細胞中での発現を最適化するよう改変されているコドンを含む。この新たな構築物を、U2−0S細胞にトランスフェクトし、いくつかのコロニーをジェネテシンを加えて選択した後、蛍光活性化細胞選別装置(fluorescence activated cell sorter)を使用して単一細胞を選別することにより単離を行った。このようなクローンでは、実施例4で生じるものより明るい蛍光が示され、予想の通り、蛍光の強度及び場所はその細胞の細胞周期相によって変化するようである。
【0120】
アッセイ及び画像取得
本発明の実施形態によると、スクリーニングアッセイを化合物からなるライブラリーを用いて行う。1種以上のマルチウェルプレートを、上記の細胞株を用いて調製する。以下の実施形態では、実施例1で上述した細胞周期レポーター構築物を含む細胞株を用いるが、本記載の細胞株の他のいかなる実施形態も、代替の実施形態において使用することができることを理解されたい。本明細書において集団(population)と呼ぶ、制御された量の細胞群を、プレートのウェル中全てのキャリア溶液に加え、所定の期間、例えば24時間定着させる。次いで、化合物からなるライブラリーの別の集団を制御された濃度及び量、各ウェルに加え、所定の期間、例えば24時間定着させる。本発明の一実施形態では、撮像する前に核染色を追加して行う。本発明の別の実施形態では、撮像する前に核染色は追加されない。次いで、上記の共焦点顕微鏡を用いて、プレートの各ウェルについて順番に撮像する。各ウェルの底にある中心の狭い領域を撮像し、選択される領域の1種以上のチャネルにおける画像データを取得する。共焦点顕微鏡で検出された蛍光を1種以上のデジタル画像に変換し、この画像におけるデジタル値は、検出装置の各画素上に入射する蛍光放射線の強さに比例する。
【0121】
画像の処理及び解析
本発明による画像データの処理及び解析は通常、個別の段階をいくつか含む。画像データを解析して、個々の細胞に相当する画像データの領域を識別する。このような対象領域は、細胞核など個々の細胞の細胞下成分であってもよい。デジタル画像のうちの一つからバイナリマスクを作成するが、画像中で1種以上の基準を満たす値を全て1に置き換え、基準を満たさない値を全て0に置き換える。一般に、この1種以上の基準は、アッセイのセットアップ手順において取得される画像から判定される閾値を含む。値が1の隣接画素の集合を求めてマスクを検索し、個々の細胞に相当する対象領域を識別する。次いで、識別された対象領域を使用して、個々の細胞に関する測定値を作成する。この測定値に分類基準を適用し、個々の細胞を、様々な細胞周期相における細胞からなる複数の部分集団(sub−population)のうちから選択されるものに分類する。識別された各対象領域について、同じ画像又は別の画像におけるそれに相当する画素の値を解析する。識別された対象領域に関する測定値を、画像における画素の位置及び画像中の画素の輝度から計算する。計算した測定値に分類基準を適用して、識別された各細胞を、解析された画像の部分から順に分類し、分類データをアッセイについての出力データファイルに書き込む。このようにして、ハイスループット自動化処理において、細胞集団中の複数の部分集団の相対的なサイズを示す細胞周期相データを測定することが可能となる。プレートのウェル全ての中から順に取得した1種以上の画像について、この処理をたて続けに繰り返す。
【0122】
第一の実施形態
使用した細胞周期相マーカーは、図10で示すように細胞の細胞周期相によって変化する蛍光シグナルを有する。本発明の本実施形態では、異なる4つのパターンに分類することができる。
1.G0/G1/S期の細胞では、その細胞周期相マーカーが核及び細胞質の両方で相対的に低発現である。
2.G2細胞では、その細胞周期相マーカーが核で相対的に低発現であり、細胞質で相対的に高発現である。
3.M細胞では、その細胞周期相マーカーが核で相対的に高発現であり、細胞質でほとんど発現しない。
4.P細胞では、その細胞周期相マーカーが核及び細胞質で相対的に高発現である。
【0123】
対象領域の識別
細胞周期相マーカーとは異なる波長の蛍光を発する核マーカーを本実施形態で使用して、画像データの解析下で各細胞についての核領域を識別する。核マーカーは、インターカレーションさせる有毒な核染色(DRAQ5(商標)又はHoechst(商標)色素、例えばHoechst33342など)のうちの一つであってもよい。別法としては、同一の細胞集団を撮像し解析して、その相対的な細胞周期部分集団を経時的研究で何度も判定するアッセイでは、毒性のない核マーカーを使用することができる。そのような毒性のないマーカーは、NLS蛍光タンパク質融合の形態であってもよい。例えば、Qlontech(商標)pHcRed1−Nucベクターを本発明による細胞株にトランスフェクトすると、これは核中で赤色蛍光シグナルを発する。画像を取得する間に、細胞核の画像は、核マーカーに相当する第1のチャネルにおいて取得され、また細胞周期相の解析画像は、細胞周期相マーカーに相当する第2のチャネルにおいて取得されるが、この2つの画像は、各画像の画素が整列するよう共に記録される。
【0124】
細胞核の画像を最初に解析し、画像データ中の核領域を識別する。画像及びそれに相当する閾値画像を目で見て調査することによって、オペレータが細胞核画像において核シグナルの閾値を設定し、その閾値によって核領域の縁が正確に識別されることが保証される。領域分割(segmentation)アルゴリズム、例えばウォーターシェッド領域分割アルゴリズム(S.Beucher,F.Meyer、「Morphological Segmentation」Journal of Visual Communication and Image Representation、1:21〜46頁、1990年及びVincent,Soille、IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence、13:583〜598頁、1991年)を閾値画像に適用して、解析される個々の細胞全ての核領域をユニークに識別する。
【0125】
識別された各核対象領域から、細胞測定値が得られるはずである対象領域を定義する2種のバイナリマスクを作成する。それは、(核の中央部分で細胞周期相マーカーの輝度シグナルをサンプリングする)収縮核マスク(eroded nuclear mask)及び(核近辺の細胞質中で細胞周期相マーカーの輝度シグナルをサンプリングする)細い細胞質リング(thin cytoplasmic ring)である。核対象領域を所定の数の画素、例えば画素3個分だけ核対象物の縁から収縮させ、収縮核マスクを作成する。核に隣接した細胞質領域を示す細い細胞質リングを作成するには、核対象物をその縁から所定の数の画素、例えば画素2個分だけ膨張させる。
【0126】
個々の細胞に関する測定値
次いで、上記の通り個々の細胞全てについて作成した2種のマスクを細胞周期相解析の画像に適用する。
【0127】
収縮核マスク領域における各画素の蛍光シグナル強度を平均して、核領域全体の平均強度を示す平均核シグナル強度(I)を作成する。
【0128】
細い細胞質リングにおける各画素の蛍光シグナル強度を平均して、サンプリングする細胞質リングに含まれる平均強度を示す平均細胞質シグナル強度(I)を作成する。有糸分裂細胞の場合、「細胞質」発光シグナル強度は、通常、選択される細胞の細胞成分にほぼ相当する領域中で取得されるが、細胞の境界の主に外側のものになる(ので相対的に低くなる傾向がある)ことに留意されたい。
【0129】
次いで、測定された2つの平均強度の比をとり、核及び細胞質の平均強度の比を示す核/細胞質比
【0130】
【数1】

【0131】
を作成する。
【0132】
細胞の分類
オペレータが細胞周期相の解析画像及び画像中で選択された対象物に関する測定値出力を調査することにより、さらに3種の閾値が設定され、自動分類処理が可能となる。オペレータが様々な細胞周期相それぞれに相当する細胞を手動で選択し、閾値を設定してこれらの相を正確に識別する。 核閾値(T
)を設定して、G0/G1/S及びG2期の細胞とM及びP期の細胞とを分離する。平均核シグナル強度が相対的に高い標準的なM及びP期の細胞の値と、平均核シグナル強度が相対的に低い標準的なG0/G1/S及びG2期の細胞の値とのほぼ中間値となるようこの値を選択する。
【0133】
細胞質閾値(T)を設定して、G0/G1/S期の細胞とG2及びP期の細胞とを分離する。平均細胞質シグナル強度が比較的高い標準的なG2及びP細胞の値と、平均細胞質輝度シグナルが相対的に低い標準的なG0/G1/S細胞の値とのほぼ中間値となるようこの値を選択する。
【0134】
核/細胞質輝度閾値(T)を設定して、M期の細胞とP期の細胞とを分離する。相対的に低い標準的なM期の細胞についての核/細胞質比と、相対的に高い標準的なP細胞のものとのほぼ中間値となるようこの値を選択する。
【0135】
オペレータが個々の細胞対象物を選択し(例えば、画面で相当する核を示す場合はマウスをライトクリックすることにより)、このような3種の閾値を設定する。プレート中の異なるいくつかのウェルにおいてこの比較を繰り返すと、アッセイ全体にわたる諸設定の一貫性が保証される。
【0136】
別法としては、自動作成ヒストグラム(automatically−generated histograms)又は各ウェル中の相当するパラメーターのスキャッタプロットに基づいて閾値を選択することができる。対照ウェル中のシグナルを測定し閾値を調節すると、各細胞周期相における細胞の期待される割合が分かるようになることに基づいた画像処理の適用によって、その閾値自体も自動的に測定することができる。別法としては、スキャッタプロット又はその他のデータ表示におけるパターンを認識することにより自動的に閾値を選択することができる。さらに別法としては、画像処理の適用を、これまでのアッセイで使用者が行った手動の選択に基づいて閾値を選択できるように適合させることができる。
【0137】
閾値を選択すると、アッセイで取得した全ての画像データに関する自動分類処理を行うことができる。閾値を参照して細胞相を識別するのに使用する分類基準は、本実施形態では以下の通りである:
If(I≦T AND I≦T)THEN object=G0/G1/S.
If(I≦T AND I>T)THEN object=G2.
【0138】
【数2】

【0139】
【数3】

【0140】
データ出力
各プレートのウェル全て、又は少なくとも一部についての分類の結果は、各ウェルの識別子に対する、細胞周期のG0/G1/S、G2、M及びP期それぞれにおける集団(部分集団)の割合の形で出力される細胞周期相集団データを含むデータファイルとして出力される。さらに、又は別法として、細胞の細胞周期相が識別されると、細胞周期相データを細胞毎に出力することもできる。
【0141】
本実施形態を使用して得られた結果の例
図11は、本発明によって行われたアッセイの一つで得られた結果を示す。安定的にトランスフェクトさせたU2OS細胞をコルヒチン(M期のブロッキング剤)又はミモシン(G0/G1/S細胞相でブロックを起こすと知られている薬剤)のどちらかで処理した。対照として非同調(unsynchronised)細胞を含む細胞を、本発明の方法を使用して分析した。蛍光活性化細胞選別装置(FACS)解析により細胞を分析すると、類似の結果が得られ、本発明の方法によって細胞周期相が確実に識別されたことが示された。
【0142】
第2の実施形態
本実施形態は、第1の実施形態に基づくものであり、上記の手順を使用し改変された細胞分類処理を伴う。上記の方法に基づいた追加の測定パラメーターを、各細胞について計算する。この追加のパラメーターを使用すると、その細胞分類基準は、より少ない種類の閾値に基づくものとなり得る。これには直接目で見られるという利点があり、したがってより直観的に理解でき使用しやすくなり、また定義するのに必要な分類閾値は2種だけである。
【0143】
本実施形態では、追加のパラメーターを以下のように定義する:
ρ=|1−R|
ただし、Rは核/細胞質比である。このパラメーターは絶対値(絶対値)であり、その値は、平均核輝度シグナルIと組み合わせて、各細胞相の違いを識別するために用いる。
【0144】
上記と同様に、オペレータが分類閾値を設定するが、本実施形態では設定すべき閾値は2種だけである。核閾値(T)を設定して、G0/G1/S及びG2期の細胞とM及びP期の細胞とを分離する。平均核シグナル強度が相対的に高い標準的なM及びP期の細胞の値と、平均核シグナル強度が相対的に低い標準的なG0/G1/S及びG2期の細胞の値とのほぼ中間値となるようにこの値を選択する。
【0145】
第2の閾値(Tρ)を設定して、G0/G1/S及びP期の細胞とG2及びM期の細胞とを分離する。パラメーターρの値が相対的に高い標準的なG0/G1/S及びP期の細胞の値と、パラメーターρの値が相対的に低い標準的なG2及びM期の細胞の値とのほぼ中間値となるようにこの値を選択する。
【0146】
本実施形態で使用した分類基準は、以下の通りである:
If(I≦T AND |1−R|≦Tρ)THEN object=G0/G1/S.
If(I≦T AND |1−R|>Tρ)THEN object=G2.
If(I>T AND |1−R|≦Tρ)THEN object=P
If(I>T AND |1−R|>Tρ)THEN object=M
このような分類基準の概略図を図12に示す。
【0147】
第3の実施形態
本実施形態の方法は、細胞周期相マーカーのシグナルだけに基づいて、細胞周期の様々な相における細胞を自動的に分類する方法を提供するものであり、核マーカーの使用の必要性を除去する。細胞相マーカーの蛍光に相当するチャネルだけで画像を取得する。画像から閾値を判定して各細胞についてのバイナリ細胞マスクを作成する場合に、細胞領域分割アルゴリズムを適用する。オペレータが画像で標準的なG1S細胞を選択し、このような細胞中の平均核シグナル強度より高い閾値を設定することにより、シグナル閾値設定を使用して細胞マスク全体を作成した。
【0148】
次いで、細胞周期相の解析は、細胞周期の相それぞれに特異的な、強度、シグナルテクスチャ、サイズ及び形状の各パラメーターの組合せに基づくものである。以下にさらに詳細に記載する通りに、様々な細胞周期相である各細胞を相当する分類閾値を設定することによって識別する。
【0149】
本実施形態において、画像処理及び画像解析ソフトウェアの適用により計算された代表的な測定パラメーターは以下のものを含む:Iは細胞内の平均シグナル強度;Fは細胞内の平均シグナルから10%超外れる画素の割合;Hは対象物内の穴面積(閾値以下の輝度を有する画素の集合)を示す不均質性;Aは細胞輪郭(に最も適合する楕円)の主軸と短軸の比を示す外観;Rは細胞の全幅を示す半径;Lは細胞の平均幅を示す長さ;Cは塊状度(シグナルテクスチャ);Mは辺縁度である。
【0150】
各パラメーターの特異的な組合せ及びそれらと細胞型に基づいてアッセイ毎に設定される閾値との関係を、自動細胞分類処理で識別される各細胞相に対する分類基準として使用する。好適に識別される相には、G0/G1/S、G2、M及びP期の細胞がある。さらに、本実施形態では、有糸分裂細胞をMP(中期)細胞、A(後期)細胞、T(終期)細胞及びC(細胞質分裂)細胞に分類することができる。このような細胞周期相における蛍光レポーターのシグナル強度及び分布の概略図を図13に示す。本実施形態では、初期(early)のG1期の細胞も識別することができる。
【0151】
本実施形態で使用される一連の分類基準の例は、以下の通りである:
初期のG1=I<100、A>1.5、H<=20、0<F<0.1
G1=I<100、H>20、F<0.1
G2=I<40、I<100、F>0.1、H>=0、R>40
P=I>100、H<10、L>45
MP=I>100、A<1.5、R<40、L<=45、F>0.5
A=I<100、A<1.5、R<40、L<=55、F=0、T>0
T=I<100、A>1.5、L>55、H=0、F=0
C=I<=100、A<1.5、R<70、H<=20、F<0.2、T=0
式中で、太字で示した閾値は、各アッセイについてオペレータによってリセットされ、イタリック体で示した閾値は、サイズ/細胞形状に依存しており、別の細胞型を使用する場合に限りリセットされる。
【0152】
辺縁度パラメーターMは、上記の一連の分類基準の例で使用されていないが、代替の例では使用されることがあることに留意されたい。
【0153】
上記実施形態は本発明の例示的なものとして理解されるはずである。本発明のさらなる実施形態が予想される。本明細書で使用される「発光(luminescence)」という用語は、蛍光並びに化学発光及びリン光などその他の種類の発光現象を含むよう意図されていることに留意されたい。本発明の代替の様々な実施形態において、レポーター分子の発現をモニターし、レポーターにより放たれる発光シグナルを適切な検出装置を使用して検出することによって、細胞の細胞周期位置を決定することができる。レポーター分子が蛍光シグナルを発する場合は、従来の蛍光顕微鏡又は共焦点型蛍光顕微鏡のどちらを使用してもよい。レポーター分子が発光している場合は、ルミノメーターなどの適切な装置を使用してもよい。こうした手法を用いると、レポーター分子を発現する細胞の割合を測定することができる。DNA構築物が転座制御エレメントを含み、顕微鏡を使用して細胞を調べる場合は、レポーターの位置も決定することができる。本発明による方法で、DNA構築物で形質転換又はトランスフェクトした細胞の蛍光を光学的方法により適切に測定することができる;例えば、分光光度計、蛍光計、蛍光顕微鏡、冷却電荷結合素子(CCD)イメージャ(走査イメージャや領域イメージャなど)、蛍光活性化細胞選別装置、共焦点顕微鏡又は走査共焦点装置などである。こうした場合、培養細胞のスペクトル特性を、光の励起及び放射の走査として測定することができる。
【0154】
上記実施形態では、初期設定された分類基準を使用して、選択した細胞を様々な細胞周期相の細胞からなる複数の部分集団のうちから選択されるものに分類するという処理方法を使用するが、神経回路網を使用するなど他の分類方法を実施してもよい。
【0155】
いずれかの実施形態に関して記載したいかなる特徴も、単独で、又は記載した他の特徴と組み合わせて使用することができ、また他のいかなる実施形態の1種以上の特徴と組み合わせても、或いは他のいかなる実施形態のいかなる組合せでも使用することができることを理解されたい。さらに、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、上述していない均等物及び変更形態も使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明によるサンプルの画像化に使用するライン走査共焦点顕微鏡の第一の実施形態を示す略図である。
【図2a】それぞれ、走査ミラーなしの本発明の多色実施形態の光線経路を示す上面図及び側面図である。
【図2b】それぞれ、走査ミラーなしの本発明の多色実施形態の光線経路を示す上面図及び側面図である。
【図2c】単一ビームオートフォーカスの光線経路を示す上面図である。
【図3a】それぞれ、走査ミラー付きの本発明の多色実施形態の光線経路を示す上面図及び側面図である。
【図3b】それぞれ、走査ミラー付きの本発明の多色実施形態の光線経路を示す上面図及び側面図である。
【図3c】単一ビームオートフォーカスの光線経路を示す上面図である。
【図4】2ビームオートフォーカスシステムを示す側面図である。
【図5a】長方形CCDカメラ及び読出し記録器を示す図である。
【図5b】長方形CCDカメラ及び読出し記録器を示す図である。
【図5c】長方形CCDカメラ及び読出し記録器を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に従って配置した画像化データ処理システム中のデータ処理構成要素を示す略図である。
【図7】本発明の実施形態で使用する核酸細胞周期位置レポーター構築物を示す略図である。
【図8】細胞周期のG2/M期を決定するためのDNA構築物を示す図である。
【図9】細胞周期が進行する際のサイクリンB1による調節を示す略図である。細胞周期は、S期の終わりに発現を開始し、G2(A)の間に最高点に達する細胞周期相に特異的なプロモーターによって転写が開始されるサイクリンB1の発現と共に、矢印の方向に進行する。有糸分裂の開始時(B)に、サイクリンB1は、細胞質から核へと位置を変え、中期以後(C)、このタンパク質は特異的に分解する。
【図10】G0/G1、S、G2、及び分裂(M)の各細胞周期相における、本発明の実施形態による蛍光レポーターを含む細胞での典型的なシグナル強度及び分布を示す略図である。
【図11】同時性をもたない細胞集団、コルヒチン処理細胞集団、及びミモシン処理細胞集団のそれぞれで本発明による自動分析を使用して決定した、G0/G1/S、G2、前期、及び分裂期の各細胞周期相における、細胞亜集団の相対的なサイズを示す1揃いの円グラフである。
【図12】本発明の第三実施形態における、閾値セットを基準とした、異なる細胞周期相の位置を示すグラフである。
【図13】分裂期、後期、終期、及び細胞質分裂の核細胞終期層における、本発明の実施形態による蛍光レポーターを含む細胞での典型的なシグナル強度及び分布を示す略図である。
【符号の説明】
【0157】
100 電磁気放射供給源 ランプ
110 レーザー
110 電磁気放射供給源
120 円柱レンズ
130 第一のスリットマスク
132 スリット開口部 照明開口部
140 第一のリレーレンズ
150 ダイクロイックミラー ダイクロイックビームスプリッタ
160 対物レンズ後部焦点平面(BFP)
170 対物レンズ
180 マイクロタイタープレート
182 サンプルウェル
184 ライン 照明ストライプ
190 チューブレンズ
200 フィルタ
210 第二のスリットマスク
212 スリット開口部 検出開口部
220 検出器
400 共焦点顕微鏡
401 制御ユニット
402 像データ記憶装置
404 入力/出力(I/O)装置
405 関連コンピュータ端末
408 中央処理装置(CPU)
410 メモリ
412 ハードディスクドライブ
414 オペレーティングシステムプログラム
416 画像処理及び分析アプリケーション
418 圧制制御アプリケーション
420 プログラムファイル及びデータ
422 データベース
428 スクリーン
430 スクリーンI/O装置
432 ディスプレイ要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発することのできる1種以上の発光レポーターを含み、1種以上の発光レポーターが、少なくとも1細胞周期相の指標となり得る第一の発光レポーターを含む、細胞周期相データの決定方法であって、
自動分類法を使用して個々の細胞を異なる細胞周期相に分類するための分類情報を記憶させる段階と、
1種以上の発光レポーターによって発せられた放射線の検出によって作成された画像データを受け取る段階と、
画像データを分析して、個々の細胞に対応する画像データ中の対象区域を同定する段階と、
画像データを、同定された対象区域を基盤として分析して、選択した細胞について、その細胞の1種以上の細胞質成分に関連するパラメーターの測定値を含む、1以上の測定値を決定する段階と、
分類情報を測定値に適用して、選択した細胞を、異なる細胞周期相にある細胞を各亜集団が有する複数の細胞亜集団のうちの選択された1亜集団に分類する段階と
を含む方法。
【請求項2】
画像データを分析し、分類情報を、選択した複数の細胞それぞれに適用する段階と、選択した複数の細胞について、選択した細胞中の複数の亜集団の相対的なサイズの指標となる細胞周期相集団データを作成する段階とを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞を含む複数のウェルからの画像データで方法を実施する段階を含み、複数のウェルが異なる試験化合物を含んでいる、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
1種以上の発光レポーターが、細胞中の細胞下成分の位置の指標となる第二の発光レポーターをさらに含み、
画像データを受け取る段階が、
a)第一の発光レポーターによって発せられた放射線の検出によって作成された第一の画像データの受け取りと、
b)第二の発光レポーターによって発せられた放射線の検出によって作成された第二の画像データを受け取り
とを含み、
画像データを分析して対象区域を同定する段階が、第二の画像データの分析を含み、
画像データを分析して1以上の測定値を決定する段階が、第一の画像データの分析を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
対象区域が、選択した細胞毎に、第一の型の対象区域と第二の型の対象区域とを含み、1以上の測定値が、第一の型の対象区域を使用して決定された第一の測定値と、第二の型の対象区域を使用して決定された第二の測定値とを含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第一の型の対象区域を、主に細胞の核区域が選択されるように準備された方法を使用して同定する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第二の型の対象区域を、主に細胞の細胞質区域が選択されるように準備された方法を使用して同定する、請求項5又は請求項6記載の方法。
【請求項8】
分類情報が、選択した細胞を複数の細胞亜集団のうちの第一の選択された亜集団に分類する第一の分類規則を含み、第一の分類規則が、第一の測定値及び第二の測定値の両方を考慮に入れるものである、請求項5乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
分類情報が、選択した細胞を複数の細胞亜集団のうちの第二の選択された亜集団に分類する第二の分類規則を含み、第二の分類規則が、第一の測定値及び第二の測定値の両方を考慮に入れるものである、請求項5乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
1以上の測定値が、一般に、選択した細胞の細胞質成分に相当する区域を考慮に入れた細胞質発光シグナル強度の測定値を含む、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
1以上の測定値が、一般に、選択した細胞の核成分に相当する区域を考慮に入れた核発光シグナル強度の測定値を含む、請求項1乃至請求項10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
分類情報が、選択された、比較的弱い核発光シグナル強度及び比較的弱い細胞質発光シグナル強度を有する細胞を第1の細胞周期相亜集団に分類する効果を有する規則を含む、請求項10又は請求項11記載の方法。
【請求項13】
分類情報が、選択された、比較的弱い核発光シグナル強度及び比較的強い細胞質発光シグナル強度を有する細胞を第2の細胞周期相亜集団に分類する効果を有する規則を含む、請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
分類情報が、選択された、比較的強い核発光シグナル強度及び比較的小さい核対細胞質発光シグナル強度比を有する細胞を第3の細胞周期相亜集団に分類する効果を有する規則を含む、請求項10乃至請求項13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
分類情報が、選択された、比較的強い核発光シグナル強度及び比較的大きい核対細胞質発光シグナル強度比を有する細胞を第4の細胞周期相亜集団に分類する効果を有する規則を含む、請求項10乃至請求項14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
分類情報が、測定値から得た第一のパラメーターを考慮に入れたものであり、測定値から得た第二のパラメーターと合同で、異なる4細胞周期相亜集団の各亜集団を特有の形で同定する、請求項10乃至請求項15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
画像データを受け取る段階が、第一の発光レポーターによって発せられた放射線の検出によって作成された第一の画像データの受け取りを含み、
画像データを分析して1以上の測定値を決定する段階が、第一の画像データの分析を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
画像データを分析して対象区域を同定する段階が、第一の画像データの分析を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
対象区域を、細胞の核区域及び細胞質区域の両方を含む区域が選択されるように準備された方法を使用して同定する、請求項17又は請求項18記載の方法。
【請求項20】
1以上の測定値が、選択した細胞毎に、同定された対象区域を使用して決定された第一の測定値と、同定された対象区域を使用して決定された第二の測定値とを含む、請求項17乃至請求項19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
第一及び第二の測定値を、同定された同じ対象区域を使用して決定する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
分類情報が、選択した細胞を複数の細胞亜集団のうちの選択された第一の亜集団に分類する分類規則を含み、分類規則が、第一の測定値及び第二の測定値の両方を考慮に入れたものである、請求項20又は請求項21記載の方法。
【請求項23】
1以上の測定値が、同定された対象区域を考慮に入れた発光シグナル強度の測定値を含む、請求項17乃至請求項22のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
1以上の測定値が、
同定された対象区域内の平均シグナル強度に関するパラメーター、
同定された対象区域内の平均シグナル強度から、所与の量を超えて逸脱した分の画素に関するパラメーター、
同定された対象区域内の、シグナル強度が所与の閾値を下回っている画素数に関するパラメーター、
同定された対象区域に相当する楕円形の輪郭の主軸と副軸の比に関するパラメーター、
同定された対象区域の最大幅に関するパラメーター、
同定された対象区域の平均幅に関するパラメーター、
同定された区域内のシグナル基調に関するパラメーター、
同定された対象区域の縁取りに関するパラメーター
からなる群から選択された1以上の測定値を含む、請求項17乃至請求項23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
細胞が、
i)少なくとも1細胞周期相に特異的な発現制御要素、及び
ii)破壊制御要素
に操作可能に連結され、かつこれらの制御下にある検出可能な生細胞レポーター分子をコードしている核酸配列を含む核酸レポーター構築物、好ましくはDNA構築物を含む、請求項1乃至請求項24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
請求項1乃至請求項25のいずれか1項記載の方法を実施するために準備された装置。
【請求項27】
請求項1乃至請求項25のいずれか1項記載の方法を実施するために準備されたコンピュータソフトウェア。
【請求項28】
請求項27のコンピュータソフトウェアを記憶するデータキャリヤ。

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図3c】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図5c】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公表番号】特表2006−521785(P2006−521785A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570045(P2004−570045)
【出願日】平成15年9月8日(2003.9.8)
【国際出願番号】PCT/GB2003/003876
【国際公開番号】WO2004/088573
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(398048914)ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド (30)
【Fターム(参考)】