説明

細胞培養、細胞処理及び試料透析用仕切り付装置

【課題】本発明の目的は、細胞を成長させ、細胞を処理し、試料を透析する装置及び方法を提供することにある。
【解決手段】区画(15,20)を分離する選択的透過性膜(25)を備えた多目的仕切付き細胞培養装置(10)は、従来式装置に対して多くの特性を備えている。本装置は、回転しながら、又は静置した状態で、高密度細胞培養、共培養及び試料透析が行えるように構成される。また、本装置は、区画と区間との間を液体が絶えず移動可能に構成される。他の膜式細胞培養及び生体処理装置では見出されない多岐に亘る特性として、細胞能力の向上、細胞分泌生成能力の向上、細胞及び生成物のより高い密度、培地収容容積の増大、外因性成長因子使用量の最小限化、標準的な細胞培養器具及びプロトコルとの適合性、スケールアップ効率の増加、回転又は静置時に機能する能力、ポンプを要しない灌流能力及びより効率的な試料透析などが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞を成長させ、細胞を処理し、試料を透析する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半透膜を備える装置は、細胞培養分野に様々な用途を有している。これらの用途として、高密度細胞培養、共培養、細胞感染及び試料透析などが挙げられる。しかしながら、既存の装置では、それらの効率及び有用性が制限されるといった欠点がある。
【0003】
高密度細胞培養のための静置式膜装置が提案され、市販化されている。ウィルソンらの米国特許第5,693,537号に関連して、インテグラ・バイオサイエンシズ社からセルラインがフラスコの形態で製品化されており、10,000分子量をカットオフ(MWCO)する半透過性の透析膜により分離されて、二つの室に仕切られている。これらは使い易く、小規模での製造には有利である。しかし、これらの装置では、シート状の透析膜を利用しているため、効率良くスケールアップすることができない。細胞の数を増加させるには、透析膜の表面積を広くしなければならない。膜がシート状であるため、装置の設置面積が比較的大きくならざるを得ない。設置面積が大きな装置によれば、細菌培養器(インキュベータ)内の空間が効率良く使用できない。更に、透析膜の表面積が大きくなると、裂ける可能性が増大してしまう。別の欠点として、装置内に存在する培地の高さが制限されることがあり、装置内の増殖した細胞に栄養を供給するにはより多くの培地が必要とされ、そのため、装置の設置面積を増加させなければならない。フォーグラーによる米国特許第4,748,124号と、ベーダーによる米国特許第6,468,792号とには、仕切付きガス透過性装置が導入されている。フォーグラーの米国特許には、区画するための透析膜が開示される一方、ベーダーの米国特許では、多孔性の膜を利用している。しかしながら、これらは、前記のセルラインの場合と同様に、スケールアップの制限を受ける。
【0004】
半透膜で装置を仕切ることによりローラーボトルを改良する試みが行なわれてきた。しかし、それらの試みには欠点があり、市場では、商業的な反響がほとんど得られなかった。その欠点としては、非標準的なローラー機構の必要性、ピペットとの連動不能性、接着性培養における一般的な材料との不適合性、及び装置内に存在可能な培地量が限られてスケールアップが制限される、といった点が挙げられる。
【0005】
ファルケンベルグらによる米国特許第5,449,617号、及び米国特許第5,576,211号には、透析膜により仕切られたガス透過性ローラーボトルが記載されている。透析膜により栄養培地から細胞と細胞分泌生成物とを分離することによって、細胞、及び細胞分泌生成物の密度を増加させることができる。そのボトルに収容される培地の最大容積は360mlであり、そのうちの60mlは細胞区画内に存在し、300mlは栄養区画内に存在する。そのスケールアップ性能は、360mlの培地容量によって制限され、これにより、スケールアップするためには装置の数が多くなりすぎてしまう。また、付着表面積を備えないため、接着性培養には適していない。更に、透析膜はボトルの回転軸と垂直であるため、ボトルの直径を大きくしないと、透析膜の表面積を増大させることができない。これにより、質量の移動が制限されてしまう。
【0006】
ファルケンベルグらの米国特許第5,686,301号には、米国特許第5,449,617号及び米国特許第5,576,211号に規定される装置を改良したものが記載されている。内部加圧による損傷を防止する折畳み式シースに関する特徴が開示されている。しかしながら、装置内に存在可能な培地の容積についてこれを改善することはできない。また、透析膜の制限された表面積について検討されていない。更に、接着性培養には適していない。
【0007】
ビバサイエンス・サルトリアス・グループ社は、ファルケンベルクらの特許に関連してミニパームを製品化し、販売している。最大細胞区画構成部分は50mlであり、最大栄養構成部分は400mlである。つまり、市販の装置内に存在可能な最大培地容積は450mlにすぎない。市販の小型装置、特注の回転器具の必要性、従来式実験室ピペットの使用不能性、細胞せん断の可能性、細胞の微視的観察の不能性及び接着性培養の適合性の欠如などが、従来式ボトルの代替物としてはその価値を制限している。
【0008】
ナーゲルスらによる米国特許第5,702,945号に開示される装置では、接着性細胞の培養能力の向上によるミニパーム装置の改良が試みられている。一つの細胞付着マトリックスは、ガス透過性膜の内面において細胞培養区画内に備えられている。接着性培養は実現可能であるが、従来式ボトルと比べて、接着性細胞に対し狭い表面しか備えることができない。また、細胞集合性及び形態に関する微視的評価が受け入れられない。
【0009】
一般に、共培養の用途が、コーニング社製のトランスウエル(登録商標)等の小型装置において実施されている。これらの装置は、非常に小規模な培養の場合にのみ相応しい。ムッシらの米国特許第5,527,705号では、仕切付きローラーボトルを使用した大規模な共培養の代替物が提供されている。このボトルは、同軸で、かつ同じ長さの2つの円筒形容器を介して仕切られ、内部容器は、外部容器内の中で心出しされている。微多孔性膜は、外部容器内に存在する細胞群から内部容器内に存在する細胞群を物理的に分離する。内部容器による外部容器内の接種物への妨害を阻止する方法についての討議又は指針は存在しない。一方、微多孔性膜が外部容器内の液体中を移動可能な容器間の推奨距離Dは、0.254mm(0.010)インチ〜約1.016mm(0.040インチ)である。従来式ローラーボトルについて推奨される接種容積は170〜255mlであるが、微多孔性膜との接触が距離Dに応じて約15ml〜80mlで発生するため、微多孔性膜による接種物への妨害が実質的に保証されている。あいにく、これらの比重は培地の比重に近いため、細胞が存在する培地への妨害が発生していると、細胞は播種するのにかなりの時間を要してしまうことが多い。従って、仕切付きローラーボトルが回転すると、接種物への妨害によって、細胞が外部容器の内面に適切に引き寄せられない虞がある。好ましくは、内部容器の第一端から第二端に延びる支持要素が距離Dを物理的に得るために使用されているが、接種物を更に妨害することになる。従って、共培養用のローラーボトルは、トランスウエル装置の優れた代替物として提供されたが、その形状によって、通常の接種過程が妨害されてしまう。
【0010】
ベクタと静置標的細胞との間の接触頻度を増加させるため、微多孔性膜により仕切られた装置の使用法が、パルソンらの米国特許第5,866,400号に記載されている。この方法は、一つの区画に細胞を保持するのに0.1μm〜約2.0μmの微多孔性膜を利用しており、一方で、ベクタは貯留細胞を通過して移動し微多孔性膜を通過する。これにより、ブラウニアン運動を利用すると共に感染率を改善した方法と比べて、ベクタと細胞との間の接触量が増大した。感染率を更に増大させるため、ポンプを用いて細胞を含む区画内にベクタを再循環して戻すこともできる。しかしながら、ポンプの使用は、工程の複雑化を伴うことになる。
【0011】
透析膜を利用する装置は、装置内に存在する試料の分子組成を変更するのに使用される。透析膜からなる容器内に試料を配置して、その容器を透析液を保持する第二容器内に浸漬することにより、溶液の最終的な組成が制御される。二つの形式の製品が市販されている。第一の形式は透析配管からなり、例えば、スペクトラム・ラブズ社から市販され、フラハティの米国特許第5,324,428号とエドレマンらの米国特許第5,783,075号とに記載されている。不都合な膜表面積と試料容積との比は固有のものである。第二の形式はカートリッジ様式であり、ピアス・ケミカル社から商品名スライド−A−ライザ(登録商標)として市販されている(例えば、米国特許第5,503,741号参照)。この構成は、シリンジと針とを使用する必要があり、ピペットよりも好適な液体の取扱い方法ではない。これは、膜が平坦である必要もあるため、約10mlの試料容積のサイズに制限される。従って、これは、通常の透析液容器よりも速やかに大きくなる。更に、非支持式のシート膜は、大きくなるほど、破れやすくなることが予想される。
【0012】
要約すると、種々の半透膜により仕切られた様々な装置が、高密度細胞培養、共培養、細胞処理及び試料透析用に使用される。しかし、これらの膜式装置は、それらの効率及び有用性を制限する固有の欠点を含む。高密度細胞培養を生成する膜式装置は、効率的なスケールアップに適した形状を備えていない。膜式ローラーボトル内で共培養のスケールアップを提供する試みは、トランスウエルや従来式ローラーボトル等と同じ方法で細胞を引き寄せることができない。装置を通過する膜性の流動を使用して感染率を増加させると、ベクタの再循環時にポンプが必要になるため複雑化してしまう。試料の透析に際し、透析配管では、表面積と試料容積との比が十分ではなく、スライド−A−ライザ透析カートリッジは針の使用を必要とする。これらの欠点を克服する改良型の装置が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来の仕切付き細胞培養、共培養、細胞処理及び実験室試料透析装置よりも優れ、半透膜により仕切られた装置について複数の形式を開示することにある。この仕切装置は、回転又は静置している間、高密度な細胞培養が可能で、接種物を破砕することなく共培養が可能で、一方の区画から他方の区画へと液体を物理的に移動させ、実験室試料の透析をより効率的に行なえるように構成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態に従って、改良型高密度細胞培養装置を形成するため、基礎培地区画と細胞培養区画とが半透膜によって分離されている。この装置は、より多くの培地を保持すること、ピペットの使用を可能にすること、従来のローラーボトルで行なうように接着性細胞を付着させること、従来式のローラーボトルで行なわれる顕微鏡検査を可能にすること、及び標準ローラーラックを機能させることなどの多くの点で、従来の高密度ローラーボトルを改良するように構成することができる。新規の仕切装置の利点は、例えば、使い易さ、微視的評価、ピペットアクセス及び標準ローラーラックとの適合性といった従来式ボトルに固有の望ましい特徴を失うことなく、細胞及び細胞分泌生成物の濃度を増大させ、栄養供給期間の継続時間を延長し、従来式ローラーボトルに固有の無駄な空間量を最小限に抑えることを可能にする。また、この実施形態は、現行の実験室透析配管やカートリッジと比べて、実験室試料がより効率的に透析されるように構成することもできる。
【0015】
本発明の別の実施形態に従い、改良された大規模共培養装置が形成される。この装置は、均質な細胞播種、微視的評価、ピペットアクセス及び標準ローラーラックとの適合性といった従来式ローラーボトルの望ましい属性を保持する基礎培地区画と細胞培養区画との間に幾何学的な間係をもたらすことにより、先行技術を改良したものである。
【0016】
本発明の別の実施形態に従い、回転又は停止時に機能し得る改良型仕切装置が形成される。この新規の仕切付き細胞培養装置の利点として、回転又は非回転時に機能する能力がある。非回転位置のとき、培地容積に対するより高い半透膜表面積、より高い培地高さ及びスケールアップ効率の改良などを含む構成にすることにより、従来の非回転式仕切装置を改良したものである。
【0017】
本発明の別の実施形態に従い、装置が回転する間、一方の区画から他方の区画へと液体が連続的に移動する。懸垂区画は、液体を通過させる半透膜に部分的に作製されている。懸垂区画は、その中心周りに周囲区画を回転させるようにして静止状態に維持されている。物理的特性によれば、周囲区画から培地を収集して、それをボトルの回転動作により懸垂区画に貯留する。培地は、半透膜を通じて周囲区画に戻される。
【0018】
本発明の別の実施形態に従い、懸垂区画は、本装置内に存在している。本装置は、懸垂区画に動きを伝えて撹拌板の動作を真似るように回転され、設定されている。
なお、本出願は、本明細書にその全体が参照文献として組み込まれた2003年11月10日に出願された米国仮出願第60/519,676号の優先権を主張するものである。本発明は、一部、国立衛生研究所中小企業最新研究助成2R44HL065977−02「膜式ローラーボトル」に基づく米国政府の支援によって一部実施された。米国政府は、本発明に係る特定の権利を有している。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1A】ローラーボトルと同じ方法で回転するときに細胞を培養するように構成された仕切装置。
【図1B】ローラーボトルと同じ方法で回転するときに細胞を培養するように構成された仕切装置。
【図2A】ピペットを用いて仕切装置内に培地及び細胞培養培地を導入する方法を示す図。
【図2B】ピペットを用いて仕切装置内に培地及び細胞培養培地を導入する方法を示す図。
【図3A】基礎培地区画の外形を変更して接種物の妨害を最小限に抑える方法の例を示す図。
【図3B】基礎培地区画の外形を変更して接種物の妨害を最小限に抑える方法の例を示す図。
【図3C】基礎培地区画の外形を変更して接種物の妨害を最小限に抑える方法の例を示す図。
【図3D】基礎培地区画の外形を変更して接種物の妨害を最小限に抑える方法の例を示す図。
【図4A】接種位置から供給位置へ基礎培地区画が移動する方法の一例を示す図。
【図4B】接種位置から供給位置へ基礎培地区画が移動する方法の一例を示す図。
【図4C】接種位置から供給位置へ基礎培地区画が移動する方法の一例を示す図。
【図4D】接種位置から供給位置へ基礎培地区画が移動する方法の一例を示す図。
【図5A】基礎培地区画に基礎培地を保持する基礎培地アクセスポートカバーの作製法の一例を示す図。
【図5B】基礎培地区画に基礎培地を保持する基礎培地アクセスポートカバーの作製法の一例を示す図。
【図6】仕切装置が水平位置にあるときピペットによって基礎培地区画から基礎培地を収集するための構成を示す図。
【図7A】液密方法で円筒形の半透膜を基礎培地区画と一体にする構成を示す図。
【図7B】液密方法で円筒形の半透膜を基礎培地区画と一体にする構成を示す図。
【図7C】液密方法で半透膜シートを基礎培地区画と一体にする構成を示す図。
【図8A】細胞培養区画から液体を収集する種々の構成を示す図。
【図8B】細胞培養区画から液体を収集する種々の構成を示す図。
【図9A】仕切装置の回転時に仕切装置を上下に揺り動かす構成を示す図。
【図9B】仕切装置の回転時に仕切装置を上下に揺り動かす構成を示す図。
【図9C】仕切装置の回転時に仕切装置を上下に揺り動かす構成を示す図。
【図10】実験室試料の透析に好適な仕切装置の断面図。
【図11A】非回転時に機能する仕切装置の断面図。
【図11B】回転時における図11Aの仕切装置の断面図。
【図11C】半透膜表面積と細胞培養培地容積との比を変更して半透膜を通過する液体の流束を制御する非回転式仕切装置を構造化する方法を示す断面図。
【図11D】半透膜表面積と細胞培養培地容積との比を変更して半透膜を通過する液体の流束を制御する非回転式仕切装置を構造化する方法を示す断面図。
【図11E】半透膜表面積と細胞培養培地容積との比を変更して半透膜を通過する液体の流束を制御する非回転式仕切装置を構造化する方法を示す断面図。
【図12A】一方の区画から他方の区画へ流体を物理的に輸送可能な仕切装置を示す図。
【図12B】その過程を示す図。
【図12C】その過程を示す図。
【図12D】その過程を示す図。
【図13A】撹拌板と類似した液体動作を生成するように移動可能な懸垂区画により構成された仕切装置。
【図13B】撹拌板と類似した液体動作を得るように移動する懸垂区画により構成された仕切装置。
【図13C】撹拌板と類似した液体動作を得るように移動する懸垂区画により構成された仕切装置。
【図13D】撹拌板と類似した液体動作を得るように移動する懸垂区画により構成された仕切装置。
【図14】実施例1、実施例2及び実施例3のデータの生成に使用される仕切装置の断面図。
【図15A】非回転位置で細胞を培養するように構成された実施例4の仕切装置を示す図。
【図15B】非回転位置で細胞を培養するように構成された実施例4の仕切装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1Aは、仕切装置10の断面図を示し、同装置は、従来式ローラーボトルと類似の方法で回転するときに細胞を培養するように構成されている。仕切付きボトル10内には、基礎培地区画15が存在している。細胞培養区画20は、半透膜25によって基礎培地区画15から分離されている。キャップ50は、仕切装置10を汚染から保護する。図1Bは、図1AのA−A断面図を示す。半透膜25は、基礎培地区画15の一部分を形成する。基礎培地区画15内には、基礎培地30が存在し、細胞培養区画20内には、細胞培養培地35が存在している。基礎培地30と細胞培養培地35との間の連通は、半透膜25を介して生じる。このように、仕切装置10を構成することにより、基礎培地区画15内での培地の交換時に細胞及び細胞分泌生成物が細胞培養区画20内に保持されるため、その装置を用いて、細胞培養区画20内に細胞及び細胞分泌生成物を濃縮することができる。また、培養区画20内で細胞が培養されるとき、及び基礎培地区画15内で細胞が培養されるとき、仕切装置10を共培養に使用することもできる。
【0021】
半透膜25の特性は、基礎培地30と細胞培養培地35との間を通過可能にすることを決定し、細胞培養区画20内に保持されることを決定する。半透膜25のどの特性が特定の細胞培養適用に望まれるかを記載する多くの情報源が利用されている。例えば、セルラインと称される製品は、10,000MWCO再生酢酸セルロース膜を利用しており、これは、高密度モノクローナル抗体の生成に非常に有効であることが証明されている。共培養が望まれる場合、半透膜は、物理的接触から細胞を分離するように機能するが、半透膜を通じて分泌生成物を行き来させるようにしている。微多孔性膜は、通常は、共培養用に使用されている。半透膜を適切に選択する際に指針となる情報源として、ウィルソンらによる‘537号特許、フォーグラーによる‘124号特許、ベーダーによる‘792号特許、ムッシらによる‘705号特許、ミリポア(マサチューセッツ州、ビレリカ)、スペクトラム・ラボラトリーズ株式会社(カルフォルニア州、ランコ ドミンゲス)及びバイオベスト・インターナショナル(ミネソタ州、コーン・ラピード)などがある。
【0022】
装置ハウジング40は、任意の生物適合性材料からなる。好適な実施形態において、ハウジングは硬質であり、光学的に透明である。ポリスチレンは、フラスコ及びローラーボトルに使用される一般的な材料である。この装置ハウジングがポリスチレンから作製されると、従来式装置と同じ付着特性を示すことができる。これは、科学者が従来式フラスコ及びローラーボトルから仕切装置内へ培養の規模を変えるときに役立つかもしれない。好適な実施形態において、装置ハウジングは、回転し易くするため円筒形をなしている。一方、他の形状も可能である。例えば、メーダの米国特許第5,866,419号に記載された形状をその設計に容易に組み込むことができる。非円筒形の装置ハウジングを円筒形ハウジングに取付けて、非円筒形の装置ハウジングの形状をローラーラックに適合させることは、当業者にとって明らかである。好ましくは、基礎培地区画は、半透膜から装置ハウジングまでの距離がその周縁周りに均一となるように、装置ハウジングの形状と一致している。
【0023】
当業者にとって明らかなように、隔壁、滅菌配管連結などを介して閉鎖系として仕切装置を構造化する多くの方法が存在している。しかし、従来式装置の簡素性を保持することが望まれるとき、ピペットを使えるようにすることが好都合である。図2A及び図2Bは、ピペットにより仕切装置内に培地と細胞培養培地とを導入する方法を示す。図2Aにおいて、ピペット65は、基礎培地区画アクセスポート45を介して基礎培地30を基礎培地区画15内に分配するために用いられる。図2Bにおいて、ピペット65は、細胞培養区画アクセスポート60を介して細胞と細胞培養培地35とを細胞培養区画20内に分配するために用いられる。
【0024】
基礎培地区画は、適切な基質源と廃棄物吸込みとを備えるのに十分な基礎培地を保持する機能を果たしている。従って、一次設計の考慮事項として、所与の細胞培養の適用に要求される培地量が挙げられる。基礎培地の容積を大きくすれば、従来式装置に対して供給頻度を減らすことができる。例えば、従来式ローラーボトルに存在する300mlの基礎培地が300×10細胞を養い、毎日交換する必要があれば、基礎培地区画内に600mlの基礎培地を加えることにより、供給日程を2日ごとに減らすことができる。細胞培養区画内に細胞と小容積の細胞培養培地とを配置し、比較的大容積の培地を基礎培地区画内に配置することによって、細胞密度を増やすことができる。例えば、300×10個の細胞が従来式ローラーボトルの培地300ml中に存在する場合、細胞培養区画内に細胞と10mlの細胞培養培地とを配置し、基礎培地区画内に300mlの基礎培地を配置することで、供給日程を変更しないで細胞密度を約30倍に増加させることができる。
【0025】
基礎培地区画に対する一つの設計要求は、半透膜を通過する静水圧差に関連している。基礎培地の高さが図1Bの実施形態で示すように、細胞培養培地の高さを超えるとき、膜を通過する静水圧差が発生することになる。従って、基礎培地区画から細胞培養区画内への液体の移動が容易に行われる。細胞培養区画内へと移動する液体が、例えば血清等の細胞培養培地中に存在し得る重要な物質を希釈しないように注意すべきである。この作用は、半透膜を適切に選択することによって制御することができる。因子としては、MWCO、材料、表面積及び膜の厚さが挙げられる。通常、微多孔性半透膜は、それ自体を通過する液体について、所定の静水圧差で限外ろ過性半透膜と比べてかなり速く移動させることができる。また、液体流束は表面積に比例する。この液体流束特性は、仕切装置を適切に設計する際、個別的な原則に基づいて評価する必要がある。例えば、我々は、基礎培地が半透膜よりも50.8mm(2.0インチ)高く位置しているとき、表面積が3cmであるAKZOノーベル社製の10,000MWCO再生セルロース膜は、5日間に亘って液体をほとんど移動させないことを認めた。一方、我々は、基礎培地が最初に半透膜よりも50.8mm(2.0インチ)高く位置しているとき、表面積が3cmであるヌクレオポア(登録商標)社製の0.4μmの微多孔性膜は、5日間に亘って液高さが44.45mm(1.75インチ)低下することも認めた。
【0026】
基礎培地の高さは、基礎培地区画の外形により制御することができる。所定の培地容積に対して、長さを増加させるような基礎培地区画の構造化のみによって、培地の高さが減少することになる。従って、静水圧差は、基礎培地区画の外形によって減らすことができる。
【0027】
また、細胞と細胞分泌生成物とが高密度で存在する場合のように細胞培養培地のタンパク質濃度が基礎培地に対して増加するとき、半透膜を通過する液体の移動についても生じることがある。次に、細胞培養培地の高い浸透圧は、半透膜を通過して基礎培地から液体を取り出す。これは、透析膜を介して仕切られる市販装置では一般的に行われている。プロトコルを調整して培養に及ぼす任意の不利益な作用を最小限にすることができる。例えば、血清が基礎培地ではなく、細胞培養培地に存在する適用において、セルラインの製品仕様書によれば、従来式装置で使用されるよりも血清濃度を約5%増加させることを示唆する。このように、透析膜を介した液体移動による血清の希釈は、低温保存からスケールアップされるときのように、細胞が直面する濃度よりも低くはならない。
【0028】
好ましくは、基礎培地区画は、半透膜を最も有効に使用するように構造化されている。これは、仕切装置が回転するとき、基礎培地区画が回転するよう構成することにより、実現することができる。そうすることにより、半透膜がその全表面積に亘って湿潤になり、基礎培地と細胞培養培地との間の質量移動を増大させることができる。細胞が半透膜に付着し得る共培養の場合、そうすることにより、細胞が存在する表面積を増加させると共に、従来式ローラーボトルと類似の方法で付着細胞のガス交換を可能にする。
【0029】
当業者にとって明らかなように、仕切装置が回転すると基礎培地区画も確実に回転する多くの設計方法が実現可能である。基礎培地区画は、装置ハウジングと同じ方向又は逆方向に回転することができる。例えば、基礎培地区画を装置ハウジングに物理的に連結すれば、同じ方向に回転することができる。物理的連結点は、細胞培養区画から液体を引き出すのを干渉しないように選択され、構成されるべきである。当業者にとって明らかなように、様々な方法によって、基礎培地区画が装置ハウジングと逆方向へ回転可能にすることができる。この場合、円筒形の基礎培地区画と装置ハウジングとが好ましい。基礎培地区画が装置ハウジングに物理的に取付けられるか否かに関係なく、逆回転は、基礎培地区画と装置ハウジングとの間に生じる摩擦力のみから得られる。基礎培地区画と装置ハウジングとの間の接触点の表面仕上げを変更することにより、摩擦を変更することができる。基礎培地区画と装置ハウジングとの間のギア式界面は、逆回転を得るための別の方法である。細胞培養培地が細胞培養区画の長さを中心に自由に移動しないように界面に注意を払うべきである。基礎培地区画がボトルハウジングに物理的に連結された状態で逆回転が望まれるなら、基礎培地区画を装置ハウジングと逆方向に回転可能にする任意の連結があれば十分であろう。例えば、無摩擦回転ユニオン継ぎ手は、一つの選択肢である。
【0030】
基礎培地区画のさらに別の設計要求は、細胞培養区画の細胞培養培地との物理的接触に関連している。物理的接触は、細胞培養培地にムラを発生させ、接着性細胞が装置ハウジング上に沈着するといった影響を及ぼす虞があり、懸濁細胞培養の用途で細胞せん断を引き起こす虞がある。別の外形及び、それらの接種物及び細胞培養培地との接触の例を、図3A、図3B及び図3Cに示す。図3Aにおいて、基礎培地区画15Aは、細胞培養区画20Aを通じて延びている。図3Bにおいて、基礎培地区画15Bは、細胞培養区画20Bを通じて延びているが、その外形は、半透膜25が存在する場所以外の領域で基礎培地区画15Bが細胞培養培地35とは接触しないように設計されている。図3Cにおいて、基礎培地区画15Cは、細胞培養区画20Cを通じて延びており、図3Aの構成より、装置ハウジング40の下部から大きな距離をもって上昇されている。
【0031】
接種物は、異なる方法で各構成の基礎培地区画に接触する。図3Aでは、基礎培地区画15Aの全長に沿って細胞培養培地35と接触する。図3Bにおいて、好ましくは、主に半透膜25からなる基礎培地区画15Bの全長の小部分に沿って細胞培養培地35と接触する。図3Cにおいて、ボトルハウジング40が回転すると、基礎培地区画15Cは上昇した状態になるため、細胞培養培地35と接触することはない。図3Cの構成を用いるとき、細胞培養培地35から細胞が結実した後、半透膜25を介して細胞培養培地を基礎培地に連通させて設置する二つの選択肢がある。最初の選択肢は、半透膜25に接触するまでの間、細胞培養区画20C内の細胞培養培地35の容積を増加させることによる。第二の選択肢は、半透膜25を細胞培養培地35に接触させるため、図3Dに示すように、接種後に基礎培地区画15Cを低下させることによる。この第二の選択肢は、第一選択肢よりもかなり小さい容積の細胞培養培地が細胞培養区画20C内に存在することを可能にする。図3Dは、小容積の細胞培養培地35が細胞培養区画20C内に存在して、半透膜25と接触し得るように再配置された基礎培地区画15Cを示す。
【0032】
細胞培養装置設計及び機械工学分野の専門家にとって明らかなように、基礎培地区画15Cの位置の下方への移動は、様々な方法を用いて達成することができる。多種多様な機構が可能である。一つの技術として、図4A〜図4Dに示すように、基礎培地区画を下方へ駆動するのに基礎培地の重量を使用することがある。記載される技術は、培地が基礎培地区画に添加されるとき、基礎培地区画を供給位置内へと自動的に移動することを可能にする。図4A及び図4Dは、本目的を達成するある方法により構成された仕切装置300を背後から見たときの斜視図を示す。図4Bは、図4Aの仕切装置300の背面図を示す。図4Cは、図4Dの仕切装置300の背面図を示す。基礎培地区画15Cは、無摩擦スロット311内に保持されている。無摩擦スロット311は、位置決めリング305に結合される連結棒310と一体化されている。図4Bに最もよく示すように、基礎培地区画15Cは、接種物又は細胞培養培地を妨害しないように上昇されている。位置決めリング305は、装置ハウジング40に無摩擦で接触している。釣合い錘320は、位置決めリング305に取付けられている。連結棒310は、釣合い錘320と直接対向して位置決めリング305に取付けられている。釣合い錘320は、基礎培地区画15Cの重量よりも大きくされている。従って、釣合い錘320は、釣合い錘320が最低点になるまでの間、位置決めリング305を強制的に回転させ、連結棒310及び基礎培地区画15Cをその直上に強制的に存在させる。重力は、基礎培地区画15Cをスロット311によって許容される最低点まで落下させる。スロット311の寸法は、装置ハウジング40に対して様々な所望の高さに基礎培地区画15Cを設置できるように変更することができる。細胞を供給する必要があるとき、基礎培地区画15Cへ基礎培地を添加することによって、基礎培地区画15Cを細胞培養培地に接触させて自動的に配置する。基礎培地の重量のため、基礎培地区画15Cの重量が増加して釣合い錘320の重量を超えたとき、基礎培地区画15Cが中心を外れて移動するような任意の運動は、重力がそれを下位に配置することを可能にする。その運動は、ピペットを用いて基礎培地区画15Cを極僅かに移動させることにより、仕切装置300を層流フードからインキュベータへ運ぶ簡単な動作だけから、又は装置ハウジング40に及ぼすローラー機構の作用から生じることができる。基礎培地区画15Cが中心から外れると、レバーアームが形成されて、その重量が釣合い錘320に打ち勝ち、基礎培地区画15Cができる限り最低点に位置するまでの間、無摩擦位置決めリング305は回転する。足部315は、装置ハウジング40に接触する。足部315と装置ハウジング40との間に適切な摩擦量を発生させることにより、基礎培地区画15Cは、装置ハウジング40と逆方向に回転させることができる。
【0033】
基礎培地が基礎培地区画内部に存在可能に同基礎培地区画を構造化することは、多くの方法によって達成することができる。基礎培地の高さが基礎培地区画アクセスポートの高さよりも下方に位置すれば、培地区画アクセスポートは、単に開放口にすることができる。しかし、基礎培地が基礎培地区画アクセスポートよりも高い位置に存在することが望まれるなら、細胞培養区画内に基礎培地が流出しないようシールすることが必要とされる。図5A及び図5Bは、基礎培地区画に基礎培地を保持するよう機能する基礎培地アクセスポートカバーを構成する方法の一例を示す。液体を取扱うピペット使用能力は、フラスコ及びローラーボトル等の従来式装置の簡素さを保持することが望まれる場合に、好都合になることがある。図5A及び図5Bに示される構成は、ピペットをアクセス可能に適合されている。図5Aにおいて、基礎培地区画アクセスポートカバー80は、ピペット65により開放され、コイルバネ85は、本来の位置から強制的に押し出されて、基礎培地30が基礎培地区画15D内に導入される。ピペット65が除去されると、コイルバネ85は、基礎培地アクセスポートカバー80を駆動して密封位置に復帰させる。これにより、仕切装置10Aが図5Bに示すようにその側面に配置されると、基礎培地区画が培地により完全に充填されて、培地30を保持することが可能になる。
【0034】
基礎培地区画が基礎培地アクセスポートカバーにより構成されると、輸送中又は使用中において、基礎培地区画内の圧力が増加することがある。通常は、輸送時、陸上輸送や空輸のときに直面する温度変化及び標高変化によりガスは膨張する。使用時、温度変化により培地からガスが除去され、その増大するガス容積により基礎培地区画が加圧される。基礎培地区画内に組み込まれた半透膜が十分要求を見たさなければ、圧力の増加によって、基礎培地区画の一体性が損なわれる虞がある。圧力の上昇時に、基礎培地区画を換気する多くの方法が存在することは、当業者にとって明らかである。例えば、傘型逆止弁かポペット弁を基礎培地区画内に組み込むことができる。
【0035】
ピペットを用いて基礎培地区画から培地を除去するとき、垂直より水平に近い角度に仕切装置を配向することにより、流動フードにおける取り扱い性がより一層良くなる。仕切装置を垂直より水平に近い角度に配向することにより、基礎培地区画の低点にアクセスする一つの方法として、基礎培地区画内に導管を作ることがある。図6は、この目的を達成するための実施形態の断面を示す。ピペット65は、ピペットインターフェース66内に係合されて、基礎培地区画15Eの下部からピペット65に至る液体流路を形成する。ピペットインターフェース66は、ピペット65とシール部を形成するものの、好ましくは、ピペット65が真空ポンプから離れないように、ピペット65を容易に開放可能に構成すべきである。本明細書にその全体が組み込まれた同時係属米国出願第10/460,850号と同時係属米国出願第60/517,288号とは、この特徴に関する指針を与える情報源である。
【0036】
半透膜は、液密方法で基礎培地区画に固定されるべきである。図7A及び図7Bは、半透膜25Aが押し出されるときに半透膜25Aを基礎培地区画15Fに付着する一つの構成を示す。図7Bは、図7Aの細部Aを拡大した図である。ガスケット90は、基礎培地区画15Fのハウジングと一体化され、半透膜25Aは、ガスケット90の一面に亘り配置され、保持ワイヤ100により液密方法によってガスケット90に対し固定される。図7Cは、接着剤110により基礎培地区画15Gに固定されたシート状の半透膜25Bを示す。音波溶接等の半透膜を基礎培地区画に固定する多くの方法として、機械的圧搾、接着剤、埋め込み用樹脂が挙げられることは、当業者にとって明らかである。
【0037】
細胞培養区画からの液体収集は、様々な方法により達成することができる。図8Aは、ピペット65の先端を装置ハウジング40Aの全長に沿って延びる溝67に接触させる方法で同ピペット65を配置する極めて簡素化された法を示す。溝67は、細胞培養培地が貯留する場所と、ピペット65の先端が配置される場所とを備えている。リム69は、ボトルを滑らかに回転させるようにする。図8Bは、細胞培養培地35を収集する別の方法を示す。仕切装置10Bは、垂直な向きに配向されている。ピペット65の先端は、基礎培地区画15Hを通過して細胞培養区画20D内に延びる導管120の内部に接続されている。導管120は、液密方法で基礎培地区画15Hを通過させて、基礎培地30の損失を抑止する。基礎培地区画15Hは、細胞培養培地35が導管120の先端に集合できるように、装置ハウジング壁41から所定の距離だけ離れて配置されている。このように、ピペット65に適用される真空は、導管120を通じてピペット65内へと細胞培養培地35を引き込む。この導管120の先端をピペット65に対して密封すべきだが、ピペット65を回収する際に、導管120内にピペット65を嵌着させるよりも大きな力が作用しないようにすべきである。同時係属米国出願第10/460,850号と同時係属米国出願第60/517,288号とは、この特徴に関する指針を与える情報源である。
【0038】
仕切装置が閉鎖系ではない場合、基礎培地区画及び/又は細胞培養区画内へのアクセスポートは、従来式ローラーボトルのキャップと同じ機能を有するキャップによって覆うことができる。緩み位置において、ガス交換を可能にし、汚染を防止する。閉鎖位置では、細胞培養区画内の環境が5%COの場合のようにガスを捕捉できるが、仕切装置は加温室において操作される。仕切装置が閉鎖系のように構造化されているなら、ガスを定期的に撒き散らして酸素とpH管理とを提供するか、或いはガス交換が培養を十分に維持するように装置ハウジングの少なくとも一部をガス透過性にすることができる。同時係属米国出願第10/961,814号は、ガス透過性装置ハウジングについての優れた参考資料を提供する。
【0039】
接着性細胞培養では、細胞が付着する仕切装置内の表面積を、当業者にとって公知方法を用いて増大させることができる。指針源として、米国特許第3,941,661号、米国特許第4,317,886号、米国特許第4,824,787号、米国特許第4,829,004号、米国特許第4,912,058号、米国特許第6,130,080号に記載されたものが挙げられる。
【0040】
細胞培養培地をさらに混合することが望ましいとき、例えば、細胞培養培地の容積が極めて小さい場合があり得るように、半透膜の位置は細胞培養培地から離れており、及び/又は任意の別の理由のため、そのことを達成することができる。図9Aは、仕切付きボトルが回転するとき、仕切付きボトルを上下に揺動する構成を示す。図9B及び図9Cは、異なる時点での図9Aの断面図を示す。偏心器140は、装置ハウジング40Bの端部に近接して設置されている。図9B及び図9Cに示すように、仕切付きボトル10Cが回転すると、偏心器140は、装置ハウジング40Bの端部を持ち上げたり下げたりするように作用する。このように、細胞培養培地35は、繰り返し前後に揺動されて、それにより、形成し得るあらゆる濃度勾配が破壊される。望まれるなら、第二偏心器を装置ハウジングの反対側の端部に取付けて、より強い揺動を提供することができる。偏心器以外の形状を利用してもよく、例えば、点から突き出た単純形状の突起を用いてもよい。その突起がローラーラックのローラーを通過するときに、装置ハウジングは上昇することになる。ボトルの各端部に設けられる一つ以上の突起及び/又は複数の突起を用いることにより、振動をより強く作用させることができる。
【0041】
また、仕切装置を使用することにより、実験室試料の透析のための効率的な装置を提供することができる。図10は、この目的を達成するように構成された仕切装置10Dの一例を示す。透析液区画415は、前述された基礎培地区画を形成するための方法のいずれかによって形成される。試料区画420は、細胞培養区画を形成するため、先に記載された方法のいずれかによって形成される。好適な実施形態において、半透膜25CのMWCOは、100,000ダルトン未満であり、3,000〜30,000ダルトンになることが多く、透析液区画415は、基礎培地アクセスポートカバーについて前述された構成の透析液区画アクセスポートカバー480を有し、仕切装置10Dは、ローラーラック内で回転するように構成され、キャップ450は、試料435の偶発的な流出又は汚染を防止するように存在するであろう。使用時、透析液430は、透析液区画415内に配置され、試料435は、試料区画420内に配置されている。仕切装置10Dは、所望の任意の速度でローラーラック内において回転される。追加の混合は、図9A〜図9Cにおいて前述された技術を用いて行なうことができる。定期的に、透析液は除去されて、交換される。実験室試料を透析する別の方法及び装置と比較してこの実施形態の利点が多数あり、先行技術である米国特許第5,324,428号公報、米国特許第5,783,075号公報、米国特許第5,503,741号公報を再検討した後に最もよく理解することができる。より大きな試料容積は、試料容積に対する膜表面積の高い比によって処理され、撹拌棒は必要とされず、透析液容器内で装置を適切に指向する必要もなく、針は必要とされず、ピペットやアスピレータ等の標準的な実験室器具を用いて液体を容易に取扱うことができ、透析膜を透析液容器から除去する際に生じる透析膜からの液だれによる散乱が解消され、試料の無菌性を容易に維持でき、透析液であってもその無菌性に容易に維持することができる。
【0042】
仕切装置は、回転せずに機能するように構成することができる。例えば、これは、細胞のせん断を減らした場合や、回転器具が利用できない場合などに、好都合になり得る。図11Aは、回転を要しない方法で構成された仕切装置10Eの断面図を示す。ガス透過性底150は、仕切装置10Eの底部によるガス交換を可能にする。ガス透過性材料は、細胞培養装置の設計者にとって公知なあらゆる材料であってもよい。同時係属米国出願第10/961,814号は、指針を与えることができる多くの情報源の中の一つである。基礎培地区画15Iは、ガス透過性底部150から所定の距離だけ離れて存在している。細胞培養区画20Eは細胞培養培地35を含み、基礎培地区画15Iは基礎培地30を含む。図11Bは、回転位置で仕切装置10Eが機能し得る方法を示す。どちらの区画へのアクセスも、前述した方法で行なうことができる。
【0043】
非回転位置で機能するとき、細胞は、ガス透過性底150の近傍に存在するようになる。細胞培養培地35は、半透膜25Dを介して基礎培地30と繋がっている。細胞培養培地35の容積管理は、ガス透過性底150から及び装置ハウジング40から基礎培地区画15Iが存在する距離によって行なわれる。任意の所定の高さの細胞培養培地では、その距離が小さくなるほど、容積が減少し、それにより、濃度が高くなる。通例を超える高さに培地を配置して利得を得る能力は、同時係属米国出願第10/961,814号に記載されている。
【0044】
この構成の別の利点として、半透膜を通過する静水圧を平衡に保つ能力がある。細胞培養培地容積に対する基礎培地容積の高い比、しかも、基礎培地と細胞培養培地との間の高低差が小さい構成を容易に作製することができる。従って、濃度の利点と供給頻度の利点とが依然として存在するものの、半透膜を通過する静水圧駆動力は低下する。図11Aに示すように、細胞培養培地35と基礎培地30との高さは同等であり、半透膜25Dを通過する静水圧が平衡に保たれている。容積の差は、多くの可能な幾何学的関係の一つを算出すれば容易に理解することができる。例えば、仕切装置が円筒形で、基礎培地区画15Iはその片面が装置ハウジング40Cから10mm離れて存在し、ガス透過性底150から10mm離れて存在し、細胞培地が15mmの高さに配置され、装置ハウジングの直径が11cmである場合、基礎培地容積は1100mlとなり、細胞培養培地容積は295mlとなる。従って、細胞培養培地に対する基礎培地の比は約3.7になり、細胞と細胞分泌タンパク質は、供給日程に応じて約3.7倍を超えて増大するだろう。本明細書にその全体が組み込まれた同時係属米国出願第10/961,814号は、培地の高さと、細胞成長及び分泌生成物に及ぼす影響とに関する指針を与える。
【0045】
図11C、図11D及び図11Eは、基礎培地容積に対する半透膜面積の比を変更して、質量移動又は静水圧駆動液体流束を変化させる方法を示す。図11Cにおいて、基礎培地区画15Jの底部は半透膜25Eからなり、基礎培地30の下部で、基礎培地30を質量移動に晒している。図11Dにおいて、基礎培地区画15Kの底部及び側面は半透膜25Fからなり、その底及び側面で、基礎培地30を質量移動に晒しており、それにより、質量移動に利用可能な表面積を増大させることができる。図11Eにおいて、培地区画15Lの側面は半透膜25Gからなり、その側面で基礎培地30を質量移動に晒している。
【0046】
半透膜の材料の種類に応じて、仕切装置が回転するか否かに関係なく、半透膜の外周を構造的に支持することが望まれるかもしれない。例えば、半透膜が膨らみ、装置ハウジングを強く押圧すると、細胞培養培地は物理的に遮られるか、半透膜の周縁への移動が阻止されるかもしれない。半透膜に対し装置ハウジングとの不都合な物理的接触をさせないようにすることは、糸目の粗い織りメッシュ等を用いた多くの方法によって達成することができる。構造支持体が半透膜の外周に備えられるなら、メッシュや他の物理的構造によって、半透膜の表面周囲に細胞培養培地を移動させつつ、細胞培養培地を半透膜にできるだけ多く接触可能にする必要がある。構造支持体を使用する前に、支持体無しの場合と比べて、任意の所定の支持体の効果を測定するため、質量移動の評価を行うべきである。基礎培地区画から細胞培養区画へのブドウ糖移動速度は、質量移動に及ぼす構造支持体の効果を測定する一つの方法として挙げられる。再生セルロ−ス等の親水性膜の場合、移動は、構造支持体無しの場合に適切になる。
【0047】
図12A、図12B、図12C及び図12Dは、一方の区画から他方の区画へと流体を物理的に輸送可能であって、ローラーボトルのように回転可能に構成された仕切装置を示す。仕切装置200は、懸垂区画210を備え、その底部は、半透膜230から構成されている。周囲の区画220は、装置ハウジング235を介して境界が付けられている。懸垂区画210は、装置ハウジングが回転すると懸垂区画がその状態に維持されるように、装置ハウジング235と一体化されている。それは、軸受け、無摩擦一点取付け部品、回転式滑り継ぎ手等の使用を含む当業者にとって公知な多くの機械的取付け方法により実現される。キャップを取り外すと、アクセスポート225は、ピペットによる各区画へのアクセスを可能にする。操作時において、仕切装置200が回転するとき、スコップ240は周囲区画220から液体を収集し、その液体を懸垂区画210へと送達する。図12B、図12C及び図12Dは、図12AのA−A線から見たときの透視図であり、周囲区画220と懸垂区画210との間の液体輸送の際に生じる一連の事象を示す。図12Bにおいて、培地250は、周囲区画220と懸垂区画210との内側に存在している。スコップ240は、周囲区画220内にある培地250の中に浸漬される。図12Cにおいて、仕切装置200は、回転矢印260で示すように反時計周りに回転する。スコップ240が培地250から上昇して、培地250により満たされる。図12Dにおいて、仕切装置200は、回転矢印260で示すように更に反時計周りに回転する。スコップ240は、懸垂区画210よりも上方に配置され、培地250が重力により流れ出すように配向される。培地250はスコップ240から落下し、懸垂区画210に流れ込む。また、培地250は、半透膜230を通過して進み、周囲区画220へと入り込む。スコップにより送達されて懸垂区画内に流れ込む培地の容積と、半透膜を介して懸垂区画内に存在する培地の量とのバランスを保つことにより、一方の区画から次の区画へと培地が絶えず移動する間、一定容積の培地が各区画内にそれぞれ保持される。使用するスコップの数、スコップの液体収容容積、回転速度、半透膜の透過率及び半透膜の表面積を変更することによって、上記のバランスを良好に保つことができる。好適な実施形態において、装置ハウジング235は、回転時において円滑に移動可能な円筒形をなし、また、液体流動が監視できるように光学的に透明である。
【0048】
この構成は、様々な適用に対して大変役立つ。主な特性として、ポンプを必要とせずに、一つの区画から次の区画へと液体を絶えず移動させる能力がある。例えば、造血細胞の変換を行う場合、それらを通過するようにベクタを移動させることで、単純なブロウニアン運動よりも高い頻度で接触させることができる。造血細胞は、懸垂区画内に配置されるが、半透膜の特性は、懸垂区画内に細胞を保持する一方で、培地とベクタとを通過させるように選択することができる。スコップによりベクタが懸垂区画内に導入されると、ベクタが重力によって周囲区画の方へと進み、造血細胞と接触する。造血細胞を変換せず、かつ周囲区画に移動するベクタは、次に、スコップによって懸垂区画へ戻されて、細胞を変換する別の機会を待つ。この場合、懸垂区画内の培地は、完全に排出しないことが重要であり、そうしないと、細胞を死なせてしまう虞がある。
【0049】
この構成が有用になる別の実施形態として、細胞分泌生成物や任意の外因性因子による各区画への灌流が望まれ場合や、共培養用が望まれる場合などが挙げられる。この場合、細胞は、懸垂区画及び周囲区画内に配置される。細胞を取り巻く液体は、周囲区画から懸垂区画へ絶えず移動し、再び戻る。
【0050】
従来式培養装置の多くの適用では、それらが振動板上に設置されている。装置ハウジングが懸垂区画を中心に回転するときその状態に維持される懸垂区画を備えて仕切装置が構成される場合、振動板と類似の作用を発揮することができる。図13A、図13B、図13C及び図13Dは、このような仕切装置の断面図を示す。図13A〜図13Dは、仕切装置の回転時、懸垂区画と細胞培養培地とが通過するときの動作を示す。好ましくは、仕切装置は、標準的なローラーラック上で回転可能に構成されている。仕切装置10Fは、懸垂区画210Aと一体化されている。図13Aは、静止時の懸垂区画210Aを示す。回転方向矢印236で示すように、装置ハウジング235Aが懸垂区画210Aを中心に回転するとき、装置ハウジング突起275は、懸垂区画突起280と接触して、図13Bに最もよく示すように、懸垂区画をその静止位置から駆動する。その接触により、装置ハウジング突起275が懸垂区画突起280と接触しなくなるまでの間、装置ハウジング235Aとの接触箇所であるピボット点を中心に、懸垂区画210Aを強制的に回転させる。その時、懸垂区画210Aは、図13Cに最もよく示すように最初の位置を通過して揺れ戻る。重力が懸垂区画210Aに力を及ぼすとき、図13Dにおいて最もよく示すように、懸垂区画は静止するようになる。細胞培養培地35の撹拌量は、回転速度、装置ハウジング突起と懸垂区画突起との間の接触期間、及び装置ハウジング突起数によって変更することができる。
【0051】
ガス透過膜上での細胞培養が望まれる場合、図13A〜図13Dに示す構成は、細胞の定期的な混合に有用なものとなる。この場合、半透膜230Aの材料の選択は、その上方に存在する細胞へのガス移動を提供する能力に基づいて行われる。米国特許第5,693,537号は、ガス透過性膜の材料選択に指針を与える多くの情報源の内の一つである。同時係属米国出願第10/961,814号には、細胞培養用のガス透過性装置を構造化する方法が記載されており、培養性能を最適化する懸垂区画210Aの設計に適用される特殊な設計特性の指針を与える。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
細胞密度の増加及び血清使用量の減少について接着性細胞を含む仕切装置の評価
図14に示す仕切装置試験装置500を作製した。その装置ハウジングは、コーニング(登録商標)社製の850cmローラーボトルを改造して作製した。そのボトルの底部を取り除いて、装置ハウジング540を作製した。基礎培地区画515は、図示するように装置ハウジング540の先端部に配置した。装置の底部541を液密方法で取付け、それにより、組み立て手順が完了し、液密細胞培養区画520を作製した。半透膜525は、長さが25.4mm(1.0インチ)、直径が111.76mm(4.4インチ)の14,000MWCOセルロース膜からなり、89cmの半透膜表面積を作製した。半透膜525は、25.4mm(1インチ)当り16ストランドで直径が0.508mm(0.020インチ)であるポリプロピレン糸製メッシュ530によって膨張を抑制するようにした。細胞付着に利用可能な装置ハウジング540の内部表面積は、基礎培地区画515と点検口535との間に存在する表面であって、約490cmであった。
【0053】
接着性CHO細胞株、CHO−ACE005の成長については、従来式ローラーボトルに対し、6個の仕切装置の試験装置500によって評価した。高密度で細胞の成長を補助し、かつ血清の使用量を減少させる能力についてその評価を行った。仕切装置での高密度のときの細胞の成長を評価するため、培地容積と成長表面との比を従来式のコーニング社製の490cmのローラーボトルの場合よりもかなり低く設定した。従来式のコーニングの490cmローラーボトルは、115mlの培地を含有していたが、各仕切装置の試験装置500は、細胞培養区画520に30mlしか含有していなかった。追加的な培地補助は、85mlであり、基礎培地区画515によって提供された。このように、全ての試験装置は、115mlの総培地量を有しているが、従来式ボトルの115mlに対して、仕切装置の試験装置500では、30mlしか細胞と直接接触することはなかった。
【0054】
仕切装置が血清の使用量を減らせるのなら、更なる有益性を得ることができる。こうした潜在的な有益性を評価するため、6個の仕切装置の試験装置500の全てについて、細胞培養区画520に10%の血清を有するようにした。3個の仕切装置の試験装置500が基礎培地区画515に10%血清を有し、3個の仕切装置の試験装置500が基礎培地に血清を有しないようにした。
【0055】
血清が補填された上記の装置の全てにDMEM培地を使用した。37℃、95%RH及び5%COの条件下で、全ての装置を1RPMの回転速度で回転させた。
PBSでリンスし、トリプシン処理(0.25%トリプシン、1mMのEDTA.4Na)を2回行うことによって、接着性細胞を収集した。細胞をトリパンブルーにより染色して生存率を確認し、血球計算板によって数えた。表1において、“細胞/ml”として同定された細胞密度を細胞培養培地のml当たりに換算して求めた。従って、仕切装置の各試験装置から回収された細胞の総量を30mlで割る一方、各ローラーボトルから回収された細胞の総量を115mlで割った。全ての値の平均値を求めた。その結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

表1によれば、細胞培養をより効率よく行う仕切装置の能力が明らかに示されている。血清使用量が10倍を超えて低いにもかかわらず、培養されて生存する細胞数は妨害されなかった。更に、培地中の細胞濃度は約4倍に増加した。
(実施例2)
抗体密度の増加及び血清使用量の減少について懸濁細胞を含む仕切装置の評価
先に、実施例1に記載され、図14に示す4個のγ照射仕切装置の試験装置500を作製した。従来式ローラーボトルと比較して、分泌抗体密度、分泌抗体量を増加させ、血清を減らす仕切装置試験装置の能力を評価するために試験を行なった。
【0057】
IgGモノクローナル抗体を分泌する22×10個のマウスハイブリドーマ細胞を25mlの培地に懸濁し、各細胞培養区画520内に接種し、75mlの培地を各基礎培地区画515内に配置した。IgGモノクローナル抗体を分泌する22×10個のマウスハイブリドーマ細胞を100mlの培地に懸濁し、従来式のコーニングの490cmローラーボトルの中に接種した。ブドウ糖消費量を毎日監視した。FBS血清濃度は、従来式のコーニングの490cmローラーボトル及び2個の仕切装置試験装置500の全ての培地に対して10%であった。しかし、2個の仕切装置試験装置500は、細胞培養区画520に10%濃度でFBS血清を含有し、基礎培地区画515にはFBS血清が全く存在しなかった。37℃、95%RH及び5%CO2の条件下で、全ての装置を1RPMで回転させた。各細胞培養区画520と、ローラーボトルとから5日毎に試料を採取した。ELISAを行い、抗体の生成を測定した。その結果を表2と表と3にそれぞれ示す。
【0058】
【表2】

表2は、各仕切装置試験装置500では、従来式ローラーボトルと比べてIgGモノクローナル抗体濃度を少なくとも16倍に増加させたことを示している。
【0059】
【表3】

表3は、従来式ローラーボトル(n=2)と比較して、仕切装置試験装置500(n=4)で生成された抗体総量が少なくとも52%増加したことを示している(対応のないt検定解析によりn=2,p<0.001)。また、重要なことに、FBS血清使用量が13倍減少したことは、生成されたIgGの総量に影響を及ぼさなかった(p<0.05)。さらに、生成された抗体mg当りのブドウ糖の使用量は、少なくとも28%減少しており、これは、培地のより効率的な使用を示唆している。要約すると、生成を増大させ、生成物を濃縮する仕切装置の能力により、下流側の処理で実質的なコスト低下がもたらされる。さらに、高価な血清の使用量を減らせば、培養工程のコストを減らすことができる。このように、仕切装置は、従来式ローラーボトルよりはるかに優れている。
(実施例3)
細胞密度の増加について懸濁細胞を含む仕切装置の評価
メッシュ530が無い以外は、図14に示すような仕切付き試験装置を作製した。半透膜525は拘束されず、動作時には、膨潤から膨張して、装置ハウジング540と接触した。装置ハウジング540は、基礎培地区画515と点検口535との間にて約177.80mm(7インチ)延び、約600cmの細胞培養に適した装置ハウジング表面積を形成した。
【0060】
2個の仕切付き試験装置とT−175フラスコとの比較を細胞密度に基づいて行った。培地は、10%のハイクロン・ウシ胎児血清と1%のギプコ・ペニシリン・ストレプトマイシンとを補充したハイクロン培地(カタログ番号SH30382.02)により構成された。培養条件は、37℃、95%R.H.及び5%COであった。全ての装置を1RPMで回転させた。25mlの培地中、25×10個のマウスハイブリドーマ細胞を各細胞培養区画520に接種した。各基礎培地区画515は、170mlの培地を受け入れた。25mlの同じ培地中、25×10/mlのマウスハイブリドーマ細胞をT−175フラスコに接種した。
【0061】
細胞の生存を維持するのに必要なように、全ての試験装置に栄養を供給した。表4は、各装置で得られた最大生存細胞密度と最大生存細胞とを示す。
【0062】
【表4】

通常使用される組織培養フラスコと比べて細胞密度を増加させる仕切装置の能力が示された。細胞密度は、少なくとも約600%増加した。
(実施例4)
細胞と細胞分泌タンパク質密度の増加とについて懸濁細胞を含む非回転式仕切装置の評価
非回転状態で機能する仕切装置の能力を評価するために試験を行なった。3個の非回転式仕切装置を作製した。各装置は、異なる半透膜表面積をそれぞれ備えている。これらの構成を従来式T−175フラスコと比べて評価した。モノクローナル抗体を得るマウスハイブリドーマ適用では、細胞密度に関して比較を行なった。
【0063】
図11E及び図11Dに記載され、更に図15A及び図15Bに示す方法によって、二つの形式の仕切付き試験装置を作製した。仕切付き試験装置は、以後、試験装置600Aと試験装置600Bとしてそれぞれ識別されている。試験装置600A及び試験装置600Bは、半透性の表面積について細胞培養培地との接触量が異なっていた。各試験装置について、装置ハウジングは、コーニングの850cmローラーボトルを改造して作製した。ボトルの底部は、装置ハウジング640を作製するため取り除いた。基礎培地区画615は、図示した場所に配置した。ガス透過性装置底650は、厚さが0.10mm(0.004インチ)のジメチルシリコーン98cmからなり、これを液密方法によって装置ハウジング640に取付け、それにより、液密細胞培養区画620を形成した。各装置の半透膜625は、14,000MWCOセルロース膜により構成した。図15Aに示す試験装置600は半透膜625を有し、それは、円筒形基礎培地区画615の周縁を含み、基礎培地区画615の底部からの高さが25.4mm(1.0インチ)となるように延びている。図15Bに示す試験装置15Bは半透膜625を有し、それは、円筒形基礎培地区画615の周縁を含み、基礎培地区画615の底部からの高さが25.4mm(1.0インチ)となるように延びると共に、基礎培地区画615の底部を備えている。仕切付き試験装置とT−175フラスコとの二つの形式を表5に要約する。
【0064】
マウスハイブリドーマ細胞をハイクロン培地で培養した。細胞計数と生存率とを、標準的な血球計算板とトリパンブルー除去方法とを用いて監視した。“0日目”にハイブリドーマ細胞を各仕切装置に接種した。その結果を表5に示す。
【0065】
【表5】

これらの結果は、組織培養フラスコ等の従来式培養装置よりもかなり高い密度で細胞を培養する非回転式仕切装置の能力を示している。重要なことに、半透膜表面積の増加によって、装置の占有面積を増大させることなく、培養能力をより一層高めることができる。これにより、空間をより効率的に使用することができる。
【0066】
本思想から逸脱することなく、多くの変更を行えることは、当業者にとって明らかである。従って、本発明の範囲は、例示及び記載した実施形態に制限されるものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物によって解釈されるべきである。本明細書にて引用した各出版物、特許、特許出願及び参考資料は、本明細書に参照として組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーボトル式仕切装置において、
長軸を有する装置ハウジングであって、装置ハウジングの少なくとも一部にローラーラック上で回転するための構造手段を設けた装置ハウジングと、
前記装置ハウジング内に設けられて長軸を有する基礎培地区画であって、前記基礎培地区画の側壁の少なくとも一部が限外ろ過性半透膜からなる基礎培地区画とを備え、
前記基礎培地区画は、前記基礎培地区画内に液体が存在する場合に前記基礎培地区画の長軸を前記装置ハウジングの長軸と同方向にして維持するための剛体構造を有し、
前記基礎培地区画により占有されない前記装置ハウジング内の空間が細胞培養区画として形成され、
前記ローラーボトル式仕切装置は、
前記基礎培地区画への流体アクセスを提供する第1アクセスポートと、
前記細胞培養区画への流体アクセスを提供する第2アクセスポートと、
前記基礎培地区画の半透膜を通過して前記細胞培養区画に流入するためのガス交換を除く前記細胞培養区画と外気との間のガス交換を提供する手段と
を備えているローラーボトル式仕切装置。
【請求項2】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記半透膜は、0.1μm以上の物質の通過を阻止するローラーボトル式仕切装置。
【請求項3】
請求項1に記載の記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記半透膜は、0.01μm以上の物質の通過を阻止するローラーボトル式仕切装置。
【請求項4】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記基礎培地区画は、円筒状に形成されているローラーボトル式仕切装置。
【請求項5】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記基礎培地区画の側壁は、前記装置ハウジングの外壁から第1の距離を空けて配置された第1の部分と、前記装置ハウジングの外壁から第2の距離を空けて配置された第2の部分とを備え、前記第1及び第2の部分のいずれか一方が前記装置ハウジングとは接触していないローラーボトル式仕切装置。
【請求項6】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記基礎培地区画は、前記装置ハウジングが水平位置で回転中に前記装置ハウジングと同じ方向に回転するための手段を有しているローラーボトル式仕切装置。
【請求項7】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記基礎培地区画は、前記装置ハウジングが水平位置で回転中に前記装置ハウジングと反対方向に回転するための手段を有しているローラーボトル式仕切装置。
【請求項8】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記基礎培地区画は、基礎培地アクセスポートカバーを有しているローラーボトル式仕切装置。
【請求項9】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記基礎培地区画は、換気手段を有しているローラーボトル式仕切装置。
【請求項10】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記細胞培養区画の壁には、前記細胞培養培地を収集するための溝が設けられているローラーボトル式仕切装置。
【請求項11】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記ローラーボトル式仕切装置は、前記細胞培養培地を混合すべく前記装置ハウジングが水平位置で回転中に揺動運動を引き起こすため、前記装置ハウジングの外側から突出する少なくとも一つの突起を有しているローラーボトル式仕切装置。
【請求項12】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記ローラーボトル式仕切装置は、前記半透膜による細胞培養培地の流通を促進させるため前記半透膜を前記装置ハウジングに接触させないようにするための手段を有しているローラーボトル式仕切装置。
【請求項13】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記装置ハウジングの少なくとも一部がガス透過性材料からなるローラーボトル式仕切装置。
【請求項14】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
前記半透膜としてセルロースを含む非微多孔性膜が用いられるローラーボトル式仕切装置。
【請求項15】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置において、
表面積が3cmである非微多孔性膜を50.8mmの高さだけ培地よりも低く配置した場合、培地が非微多孔性膜を通過しないローラーボトル式仕切装置。
【請求項16】
請求項1に記載のローラーボトル式仕切装置を用いて細胞を培養する方法において、
前記細胞培養区画に細胞と一定量の細胞培養培地とを加える工程と、
前記基礎培地区画に一定量の基礎培地を加える工程と、
ローラーラック上にローラーボトル式仕切装置を載置する工程と
を備える方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
基礎培地の容積は、細胞培養培地の容積よりも大きい方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【公開番号】特開2012−75442(P2012−75442A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15256(P2012−15256)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2006−539757(P2006−539757)の分割
【原出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(506118799)ウィルソン ウォルフ マニュファクチャリング コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】WILSON WOLF MANUFACTURING CORPORATION
【Fターム(参考)】