説明

細胞培養装置及び方法

【課題】 可動軸を設けることなく培養対象から3次元的な構造を有する組織を培養する。
【解決手段】 培養液Yと培養対象である培養対象Xが収納されたテーパ状培養容器1と、該テーパ状培養容器1内に培養液Yの螺旋流を発生させる上昇流発生手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記3件の先行技術文献には、培養対象から3次元的な構造を有する組織を培養する技術が開示されている。これら従来技術は、細胞が収納された培養容器を1軸あるいは2軸周りに回転させることによって培養対象に作用する重力の方向を分散させて3次元的な構造を有する組織を培養しようとするものである。なお、培養対象は、細胞壁(膜)によって囲まれた生物体の構成単位としての細胞あるいはこのような細胞が機能分化してない状態で複数密着した細胞塊であり、また組織は細胞塊が増殖して機能分化したものである。
【特許文献1】WO02/424009A1
【特許文献2】特開2003−70464号公報
【特許文献3】特開2002−45173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような培養対象を培養する場合には培養容器への新しい培養液の供給と培養容器からの古い培養液の排出を行う必要があるが、上記各従来技術は培養容器を1軸あるいは2軸周りに回転させる構造を有するので、培養液の培養容器への供給や培養液の培養容器からの排出を実現するために可動軸に対して培養液用の軸シールを設ける必要があり、また観察機器、吸引ピペットあるいは温度センサ等の培養容器への組み込みに際して可動軸を考慮する必要があり、よって装置構成が複雑となるという問題点がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、以下の点を目的とするものである。
(1)従来よりも簡単な構成の細胞培養装置で培養対象から3次元的な構造を有する組織を培養する。
(2)可動軸を設けることなく培養対象から3次元的な構造を有する組織を培養する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、培養容器内に培養液の上昇流を発生させた状態で培養対象を培養する、という解決手段を採用する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、培養対象を培養液の上昇流中に置くことによって培養対象に作用する重力の影響を軽減することができ、よって培養対象から3次元的な構造を有する組織を培養することが可能となる。
例えば培養対象が上昇流中で培養容器の側壁に付着した状態にある場合、培養対象は側壁を姿勢保持の拠所とするのではなく側壁に単に接する状態であり、よって準3次元的に増殖することが可能である。一方、培養対象が培養容器の内壁に付着することなく上昇流中で浮遊した状態にある場合には、培養対象は全周囲において増殖を阻害するものがないので、完全に3次元的に増殖することが可能である。
また、本発明では、培養液の上昇流によって培養対象に作用する重力の影響を軽減するので、従来のような可動軸を必要とせず、よって装置構成が簡単である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る細胞培養装置A1の構成を示す概念図である。この図において、符号1はテーパ状培養容器、2は挿入具、3はビデオカメラ、4は画像処理装置、5はポンプ制御装置、6はポンプ、Xは培養対象、Yは培養液である。
【0008】
これら各構成要素のうち、挿入具2、ポンプ制御装置5及びポンプ6は本実施形態における上昇流発生手段を構成し、またこのうちポンプ制御装置5及びポンプ6は培養液供給手段を構成している。また、ビデオカメラ3及び画像処理装置4は本実施形態における対象位置検出手段、ポンプ制御装置4は対象位置制御手段に各々該当する。
【0009】
テーパ状培養容器1は、図示するように垂直姿勢に支持され断面が円形の管状部材であり、内径が下方から上方に向けて直線的に漸次大きく設定されたテーパ部1aと、該テーパ部1aの下端に形成され上下方向の内径が一定な直管部1bとを備えている。例えば、テーパ部1aの下端部における内径はφ2mm、上端部における内径はφ6mm、高さは60mmである。このテーパ状培養容器1には培養対象である培養対象Xと培養液Yとが収納されている。また、このテーパ状培養容器1は、外部から培養液Y中の培養対象Xを視認可能なように透明な樹脂あるいはガラスから形成されている。
【0010】
挿入具2は、上記直管部1bに圧接挿入されることによりテーパ状培養容器1の下端に固定された円筒状部材であり、直管部1bの内壁と圧接する周面(圧接面)に螺旋状の溝2a(螺旋溝)が複数形成されている。すなわち、この螺旋溝2aは、直管部1bの内壁とによって培養液が通過する1あるいは複数の螺旋通路を形成している。なお、テーパ状培養容器1と挿入具2とは本実施形態における培養ユニットを構成している。
【0011】
ビデオカメラ3は、テーパ状培養容器1内の培養対象Xを含む撮像領域の画像(対象画像)を撮像し、当該対象画像を示す映像信号を画像処理装置4に出力する。画像処理装置4は、この映像信号を画像処理することにより培養対象Xの上下方向における位置(垂直位置)を細胞位置として検出し、当該細胞位置を示す位置検出信号をポンプ制御装置5に出力する。
【0012】
ポンプ制御装置5は、位置検出信号に基づいて細胞位置が所定の目標位置を維持するようにポンプ6を制御・駆動する。ポンプ6は、上記ポンプ制御装置5による制御の下に、新しい培養液Yをテーパ状培養容器1の下端部つまり挿入具2の下方から培養液Yを順次供給する。このポンプ6による培養液Yの供給に応じて、古い培養液Yがテーパ状培養容器1の上端部からオーバーフローして外部に排出される。なお、戻り配管を設けることにより、このようにオーバーフローして外部に排出された培養液Yをポンプ6の入口に戻して循環させるようにしても良い。
【0013】
なお、本実施形態における培養対象X及び培養液Yは特に特定のものに限定されるものではない。培養対象Xは、3次元的な構造を有する組織への培養が必要なものであれば何でも良く、複数の固体からなる集合体あるいは単独固体の何れでも良い。また、培養対象Xの種類としては、例えば様々な種類の細胞(異種細胞)の集合体あるいは幹細胞が考えられる。異種細胞の集合体は異種細胞間の相互作用によって多様な組織に分化し、幹細胞は単独であっても多様な組織に分化することが知られている。培養液Yは、このような培養対象Xの種類に応じて適宜適切なものが選択される。
【0014】
次に、このように構成された本細胞培養装置の動作について、図2をも参照して詳しく説明する。
本細胞培養装置では、ポンプ6がポンプ制御装置5によって駆動されることによって新しい培養液Yが挿入具2の下方に順次供給されるが、この培養液Yは、螺旋溝2aと直管部1bの内壁とによって形成される螺旋通路を経由してテーパ部1aの下端に流れ込む。そして、このように螺旋通路を経由して培養液Yがテーパ部1aに流れ込むことによって、テーパ部1a内には図示するように下方から上方に向かう螺旋流が発生する。
【0015】
この螺旋流の流速は、下方から上方に向かう上昇流速成分とこれに直交する水平面で周回する回転流速成分とからなる。上昇流速成分は、培養対象Xに作用する重力に抗して培養対象Xをテーパ部1aの下部に沈降させない力(上昇揚力)を培養対象Xに作用させる。しかも、テーパ部1aの内径が上方に向かって直線的に漸次大きくなっているので、上記上昇流速成分は、下方から上方に向けて漸次小さくなる流速勾配を有し、よって上記上昇揚力は上方から下方に向けて漸次大きくなる。
【0016】
したがって、培養対象Xは、テーパ部1aにおいて、自らに作用する2つの力つまり自らの自重に基づいて作用する重力と上記上昇揚力とがつり合った垂直位置で浮遊することになる。例えば培養対象Xが複数の固体からなる集合体であった場合、各個体は、自らの自重に応じた垂直位置に浮遊することになる。このようにして培養液Y中に浮遊する培養対象Xは、重力等、特定方向からの外力が極めて弱い状態となるので、3次元的に増殖して3次元的な構造を有する組織に成長する。
【0017】
また、増殖するに従って培養対象Xの自重は徐々に大きくなるので重力も大きくなり、よってテーパ部1aにおける培養対象Xの垂直位置(浮遊位置)は徐々に下方に下がるが、テーパ部1aの下端に着底することはない。すなわち、テーパ部1aの上昇揚力は上方から下方に向けて漸次大きくなるので、培養対象Xは自重が大きくなってもテーパ部1aの下端つまり挿入具2の上端まで沈降することなく培養液Y中に浮遊する。
【0018】
したがって、螺旋流の流速が一定の状態では、培養対象Xは増殖するに従って浮遊位置が漸次低くなるものの、培養液Y中における浮遊状態を継続する。なお、仮にテーパ部1aが直管構造を有していた場合、上下方向のどの位置でも上昇揚力は一定なので、培養対象Xは増殖によって自重が大きくなると沈降して着底することになる。
【0019】
さらに、螺旋流の上昇流速成分は次のような作用・効果を奏する。
すなわち、上昇流速成分に対峙する培養対象Xの下方側面(前面)は上昇流速成分によって下方から水圧を受けるが、上昇流速成分の方向に対して裏側に位置する培養対象Xの上側面(裏面)近傍には低圧域が形成される。すなわち、培養対象Xの前面の圧力に対して裏面の圧力は小さく、このような圧力差によって上記上昇揚力が培養対象Xに作用する。
【0020】
培養対象Xが複数の固体からなる集合体であった場合、浮遊する個々の固体は、上記上昇流速成分の作用によって他の固体の裏面近傍の低圧域に入り込もうとし、この低圧域に入り込むことによって安定状態となる。すなわち、上昇流速成分によって各固体が他の固体の低圧域に入り込んで互いに凝集した状態となり、よって培養対象Xとしてより大型化した凝集塊が形成される。例えば、支持細胞を含む複数種類の細胞を培養対象Xとした場合、支持細胞は表面が接着性を有しているので、凝集した状態では互いに接着して大型で多様な細胞から構成される細胞塊が形成される。このような細胞塊の培養を継続すると、細胞−細胞間相互作用による未分化細胞の分化や増殖が促進されて、生体組織により近い培養組織をin vitroで形成することができる。なお、細胞−細胞間相互作用については、例えば特開2000−189158号公報に詳細が開示されているので、ここでの詳細説明を省略する。
【0021】
続いて、上記螺旋流の回転流速成分の作用・効果について図2を参照して説明する。
図2は、テーパ部1aの水平断面における回転流速成分の速度勾配を示しているが、この図に示すように螺旋流の回転流速成分は、テーパ部1aの内壁面近傍において最大流速となり、テーパ部1aの中心に近づく程漸次流速が遅くなる流速勾配を有する。すなわち、螺旋流は、水平方向に速度勾配を有する流速勾配付上昇流である。
【0022】
図示するように、このような流速勾配中に培養対象Xが存在した場合、当該培養対象X近傍においてテーパ部1aの中心側の回転流速はテーパ部1aの内壁側の回転流速よりも小さいので、培養対象Xにはテーパ部1aの中心方向を向く揚力(中心方向揚力)が作用する。この中心方向揚力の作用により、培養対象Xは水平面内においてテーパ部1aの中心に凝集するので、テーパ部1aの内壁面への培養対象Xの付着が防止される。
【0023】
すなわち、速度勾配付上昇流としての螺旋流は、培養対象Xを培養液Y中に凝集状態で浮遊させると供に、培養対象Xが増殖して自重が大きくなってもこの浮遊状態を継続させ、かつ培養対象Xのテーパ部1aの内壁面への付着を防止する。したがって、本細胞培養装置によれば、培養対象Xを浮遊状態とすることができるので、培養対象Xを3次元的な構造を有する組織に培養することができる。
【0024】
ここで、挿入具2からテーパ部1aに噴出される培養液Yの流速を一定に設定した状態、つまりポンプ6によるテーパ状培養容器1への培養液Yの供給量が一定な状態において培養対象Xは次第に沈降しつつも浮遊状態を維持するが、培養対象Xに作用する重力がテーパ部1aの下端における上昇揚力を上回る程に、つまり培養対象Xが浮遊限界を超える重量にまで増殖したとき、培養対象Xは挿入具2の上端面に着底することになる。
【0025】
本細胞培養装置では、このような培養対象Xの着底を回避するために、ビデオカメラ3及び画像処理装置4からなる対象位置検出手段及びポンプ制御装置4からなる対象位置制御手段を設けることにより、テーパ部1aにおける培養対象Xの垂直位置が所定の目標位置を維持するようにポンプ6をフィードバック制御する。
【0026】
すなわち、本細胞培養装置は、画像処理装置4がビデオカメラ3から供給された対象画像の映像信号に基づいて培養対象Xの垂直位置を示す位置検出信号をポンプ制御装置5に供給し、かつ、ポンプ制御装置5が上記位置検出信号が示す培養対象Xの垂直位置と目標位置との誤差に基づいてポンプ6を制御・駆動することによってポンプ6における培養液Yの吐出量、つまりテーパ部1aにおける上昇揚力を自動的に調整し、以って培養対象Xの垂直位置を目標位置に維持する。
【0027】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明の第2実施形態に係る細胞培養装置A2の構成を示す概念図である。この図において、符号1はテーパ状培養容器、2は挿入具、5Aはポンプ制御装置、6はポンプ、7は絞り弁、Xは培養対象、Yは培養液である。なお、この図では上記第1実施形態の構成要素と同一の構成要素には同一符号を付しており、またこのような構成要素については再度の説明を省略する。
【0028】
上記第1実施形態におけるポンプ制御装置5は位置検出信号に基づいて細胞位置が目標位置を維持するようにポンプ6を自動制御するものであったが、本第2実施形態におけるポンプ制御装置5Aはポンプ6を一定の回転数で定速運転する。したがって、ポンプ6から出力される培養液Yの供給量は固定となる。
【0029】
絞り弁7は、図示するようにポンプ6と2つのテーパ状培養容器1との間に設けられており、テーパ状培養容器1への培養液Yの供給量を手動調節する手動調節手段である。すなわち、絞り弁7の開口度に応じて各テーパ状培養容器1への培養液Yの供給量、つまり各テーパ状培養容器1内における螺旋流の流速が設定される。
【0030】
2つのテーパ状培養容器1は全く同一の形状に形成されており、各々に挿入具2が設けられている。すなわち、本細胞培養装置A2は、2つの培養ユニットを備えるものである。これら2つの培養ユニットと絞り弁7とを結ぶ配管は同一内径を有しているので、2つのテーパ状培養容器1には絞り弁7を介して培養液Yが同等に供給される。
【0031】
このような細胞培養装置では、2つの培養ユニットの各挿入具2からテーパ状培養容器1に噴出される培養液Yの流速は絞り弁7によって固定値に設定される。培養対象Xは、この状態でテーパ部1a内に発生する螺旋流によって各テーパ状培養容器1内で浮遊するが、培養が進行するに従って浮遊位置を徐々に下方に移動させつつ所定の大きさまで培養される。
【0032】
ここで、培養対象Xの浮遊位置がテーパ部1aの下端近傍に達したとき、開口度を増大させるように絞り弁7を手動調節することにより培養対象Xの浮遊位置を上昇させることができる。そして、培養対象Xをさらに大きな組織まで培養することができる。
【0033】
したがって、このような細胞培養装置によれば、絞り弁7によって各テーパ状培養容器1における培養対象Xの浮遊位置を手動調整しつつ培養対象Xを3次元的な構造を有する組織に成長させることができる。
【0034】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について、図4を参照して説明する。
上記各実施形態ではテーパ部1a内に下方から上方に向かう上昇流の一形態である螺旋流を発生させることにより培養対象Xを浮遊状態とし、以って培養対象Xを3次元的な構造を有する組織に培養する。しかしながら、このような下方から上方に向かう螺旋流は、当該螺旋流が存在しない場合において培養対象Xが培養液Y中を沈降する場合つまり培養対象Xの比重が培養液Yの比重よりも大きい場合に有効なものである。
【0035】
したがって、当該螺旋流が存在しない場合において培養対象Xが培養液Y中を上昇して浮き上がる場合つまり培養対象Xの比重が培養液Yの比重よりも小さい場合に培養対象Xには、上述した培養ユニットを上下逆にする必要がある。
【0036】
図4は、このように比重が培養液Yよりも小さい培養対象Xを培養する場合の培養対象培養装置の構成を示す概念図である。なお、この図4では、図1の構成と同一の構成要件については同一符号を付している。この培養対象培養装置の培養ユニットは、図示するように図1や図3の培養ユニットに対して上下が逆転したものである。
【0037】
すなわち、本培養対象培養装置におけるテーパ状培養容器8は、内径が上方から下方に向けて直線的に漸次大きく設定されたテーパ部8aと、該テーパ部8aの下端に形成され上下方向の内径が一定な直管部8bとを備えており、当該直管部8bには挿入具2が圧接挿入される。このようなテーパ状培養容器8には培養液Yが挿入具2の上方から供給される一方、テーパ状培養容器8の下端から培養液Yが順次排出されるようになっている。
【0038】
また、このようなテーパ状培養容器8は、培養液Yが挿入具2の上方から供給されることにより上方から下方に向かう螺旋流(流速勾配付下降流)が発生し、かつその下降流速は上方から下方に向けて漸次小さくなる。そして、このような螺旋流によって培養対象Xに作用する浮力と重力とのバランスを取ることが可能となり、この結果として3次元的な構造を有する組織の培養が可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)最初に、上記各実施形態では上昇流として流速勾配付上昇流(具体的には螺旋流)を用いたが、流速勾配付上昇流に代えて単純な上昇流を用いても良い。この場合、回転流速成分及びその流速勾配は存在せず、よって中心方向揚力が培養対象Xに作用することはないので、培養対象Xが培養容器の内壁面に付着することが生じ得る。しかしながら、培養対象Xが培養容器の内壁面に付着した状態であっても、上昇流によって重力の影響が軽減されるので3次元構造の組織を培養することができる。
【0040】
(2)上記各実施形態に係る培養対象培養装置は培養ユニットを1あるいは2つ備えるものであるが、培養ユニットの個数はこれに限定されるものではない。例えば培養ユニットの個数をさらに増やすことにより、培養対象Xを複数の培養ユニットで並列的に同時培養することが可能であり、効率の良い組織培養を実現できる。
【0041】
(3)上記各実施形態では螺旋溝2aが形成された挿入具2を用いることによって螺旋流を発生させたが、培養容器中に螺旋流を発生させる手段は、この挿入具2に限定されるものではない。例えば、培養容器の下端に斜め上方に培養液を噴出するノズルを設けることにより螺旋流を発生させても良い。
【0042】
(4)上記各実施形態のテーパ状培養容器1は内径が直線的に漸次大きく設定されたテーパ部1aを備えるものであるが、テーパ部1aの内径変化はこのように直線的である必要はない。テーパ部1aの内径変化は上昇流速成分の流速勾配の変化を規定するものであり、よって培養対象Xをどの程度の大きさ(重量)まで培養するかに応じて適宜設定される。
【0043】
(5)上記各実施形態では培養容器としてテーパ状培養容器1を採用したが、当該テーパ状培養容器1に代えて、内径が変化しない直管状培養容器を用いても良い。ただし、この場合には、螺旋流の上昇流速成分は流速勾配を持たないものとなるので、培養対象Xの増殖に依らず浮遊状態を維持するためには、培養対象位置検出手段と培養対象位置制御手段とによって螺旋流の上昇流速成分を自動制御する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる培養対象培養装置の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の第1実施形態において螺旋流の回転流速成分の作用を示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係わる培養対象培養装置の構成を示す概念図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係わる培養対象培養装置の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0045】
1,8…テーパ状培養容器、2…挿入具、3…ビデオカメラ、4…画像処理装置、5…ポンプ制御装置、6…ポンプ、7…絞り弁、X…培養対象、Y…培養液


【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液と培養対象とが収納される培養容器と、
該培養容器内に培養液の上昇流を発生させる上昇流発生手段と
を具備することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項2】
培養容器は、水平断面積が下方から上方に向けて漸次大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の細胞培養装置。
【請求項3】
上昇流発生手段は、培養容器の内壁面近傍において最大流速となる流速勾配付上昇流を発生させることを特徴とする請求項1または2記載の細胞培養装置。
【請求項4】
流速勾配付上昇流は、培養容器の下方から上方に向かう螺旋流であることを特徴とする請求項3記載の細胞培養装置。
【請求項5】
上昇流発生手段は、培養容器の下端から当該培養容器内に圧接挿入されると供に培養容器との圧接面に螺旋状の溝が形成された挿入具と、下方から挿入具に培養液を供給する培養液供給手段とに基づいて螺旋流を生成することを特徴とする請求項4記載の細胞培養装置。
【請求項6】
培養容器と挿入具とから培養ユニットを複数備え、各培養ユニットに培養液供給手段から培養液を並列供給することを特徴とする請求項5記載の細胞培養装置。
【請求項7】
上昇流発生手段は、上昇流の上昇流速を手動調整する手動調節手段を備えることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項8】
上昇流発生手段は、
培養液中における培養対象の垂直位置を検出する対象位置検出手段と、
該対象位置検出手段によって検出された培養対象の垂直位置が所定位置を維持するように上昇流の上昇流速を自動制御する対象位置制御手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の細胞培養装置。
【請求項9】
培養液と培養対象とが収納される培養容器と、
該培養容器内に培養液の下降流を発生させる下降流発生手段と
を具備することを特徴とする細胞培養装置。
【請求項10】
培養容器は、水平断面積が上方から下方に向けて漸次大きく設定されていることを特徴とする請求項9記載の細胞培養装置。
【請求項11】
下降流発生手段は、培養容器の内壁面近傍において最大流速となる流速勾配付下降流を発生させることを特徴とする請求項9または10記載の細胞培養装置。
【請求項12】
流速勾配付下降流は、培養容器の上方から下方に向かう螺旋流であることを特徴とする請求項11記載の細胞培養装置。
【請求項13】
培養容器内に培養液の上昇流を発生させた状態で培養対象を培養することを特徴とする細胞培養方法。
【請求項14】
上昇流の上昇流速は下方から上方に向けて漸次小さく設定されることを特徴とする請求項13記載の細胞培養方法。
【請求項15】
培養容器の内壁面近傍において最大流速となる流速勾配付上昇流を発生させることを特徴とする請求項13または14記載の細胞培養方法。
【請求項16】
流速勾配付上昇流は、下方から上方に向かう螺旋流であることを特徴とする請求項15記載の細胞培養方法。
【請求項17】
上昇流の上昇流速を手動調整することによって培養対象の垂直位置を調節することを特徴とする請求項13〜16いずれかに記載の細胞培養方法。
【請求項18】
培養液中における培養対象の垂直位置を検出し、この培養対象の垂直位置が所定位置を維持するように上昇流の上昇流速を自動制御することを特徴とする請求項13〜16いずれかに記載の細胞培養方法。
【請求項19】
培養容器を複数設け、各培養容器に培養液を並列供給することにより各培養容器内に上昇流を発生させることを特徴とする請求項13〜18いずれかに記載の細胞培養方法。
【請求項20】
培養容器内に培養液の下降流を発生させた状態で培養対象を培養することを特徴とする細胞培養方法。
【請求項21】
下降流の下降流速は上方から下方に向けて漸次小さく設定されることを特徴とする請求項20記載の細胞培養方法。
【請求項22】
培養容器の内壁面近傍において最大流速となる流速勾配付下降流を発生させることを特徴とする請求項20または21記載の細胞培養方法。
【請求項23】
流速勾配付下降流は、上方から下方に向かう螺旋流であることを特徴とする請求項22記載の細胞培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75041(P2006−75041A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260818(P2004−260818)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】