説明

細胞外ロイシンリッチ反復領域を有する新規な哺乳動物G−タンパク質共役型レセプター

【課題】細胞外ロイシンリッチ反復領域を有する新規な哺乳動物G−タンパク質共役型レセプターを提供すること。
【解決手段】LGR4、LGR5、およびLGR7遺伝子について、単離されたヌクレオチド組成物および配列が提供される。核酸組成物は、相同なまたは関連する遺伝子を同定するにおける;これらのレセプターについての内因性リガンドを同定するにおける;コードされたタンパク質の発現または機能を調節する組成物を生成するにおける;遺伝子治療のための;タンパク質の機能的な領域のマッピングにおける;および関連する生理学的経路を研究するにおける使用を見出す。さらに、インビボでの遺伝子活性の調節が、予防的および治療的な目的のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(導入)
(発明の分野)
本発明の分野は、タンパク質のG−タンパク質共役型のレセプターファミリーである。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
性腺刺激ホルモン(黄体形成ホルモン、LH;卵胞刺激ホルモン、FSH;絨毛性ゴナドトロピン、CG)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、それぞれ生殖腺および甲状腺の成長および分化に必須である。これらの糖タンパク質ホルモンは、原形質膜上の特異的な標的細胞レセプターに結合して、cAMP−タンパク質キナーゼA経路を活性化する。
【0003】
LH、FSH、およびTSHについてのレセプターは、大きなG−タンパク質共役型の、7回膜貫通タンパク質ファミリーに属するが、大きな糖タンパク質リガンドとの相互作用に重要なロイシンリッチ反復を含有する大きなN末端細胞外(エクト)ドメインを有するにおいて独特である。研究は、これらのレセプターにおいて、細胞外ロイシンリッチ反復領域が、その対応する大きなホルモンリガンドを効率的に捕らえ、そしてレセプターの7回膜貫通螺旋ドメインとの相互作用のためにこれを至適に配向する「ベースボールグローブ」として作用することを示唆する。
【0004】
ホルモンおよびレセプターは、多様な生理学的プロセスにおいて顕著な役割を果たすので、新規なレセプターおよびそれらのリガンドの同定、ならびにこれらをコードする遺伝子に連続される興味がある。
【0005】
(関連文献)
目的の参考文献としては:el Tayer, N、「性腺刺激ホルモン−レセプター相互作用の分子理解における進歩」Mol. Cell. Endocrinol.(1996年12月20日)125:65−70;Bhowmickら、「部位特異的変異誘発およびモデリングによる、黄体形成ホルモン/絨毛性ゴナドトロピンレセプターの細胞外ドメインに結合するホルモンにおいて重要な残基の決定」Mol. Endocrinol.(1996年9月)10:1147−1159;Thomasら、「完全長のルトロピン/絨毛性ゴナドトロピンレセプターの細胞外ドメインの変異分析は、ロイシンリッチ反復1〜6がホルモン結合に関与することを示唆する」Mol. Endocrinol.(1996年6月)10:760−768;Segaloff & Ascoli、「性腺刺激ホルモンレセプター:それらのcDNAのクローニングからの洞察」Oxf. Rev. Reprod. Biol.(1992)14:141−168;Braunら「性腺刺激ホルモンレセプターにおけるアミノ末端ロイシンリッチ反復は、ホルモン選択性を決定する」、EMBO J(1991年7月)10:1885−1890、およびSegaloffら、「ルトロピン/絨毛性ゴナドトロピンレセプターの構造」Recent Prog. Horm. Res.(1990)46:261−301が挙げられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
細胞外ロイシンリッチ反復ドメインを有する3つの新規な哺乳動物G−タンパク質共役型レセプター(すなわち、LGR4、LGR5、およびLGR7)、およびそれらに関連されるポリぺプチド組成物、ならびにこれらをコードするヌクレオチド組成物が提供される。本発明のタンパク質、ポリぺプチド、および核酸組成物は、多様な異なる適用(相同なまたは関連する遺伝子の同定;本発明のタンパク質の発現または機能を調節する組成物の生成を含む)における;本発明のオーファンレセプターについての内因性リガンドの同定における;内因性リガンドの作用の中和化のための機能的な結合タンパク質の生成における;遺伝子治療における;タンパク質の機能的な領域をマッピングするにおける;ならびに関連する生理学的経路を研究するにおける使用を見出す。さらに、インビボでの遺伝子活性の調節は、予防的なおよび治療学的な目的などのために使用される。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1) LGR4、LGR5、またはLGR7からなる群より選択される哺乳動物タンパク質をコードする、単離された核酸。
(項目2) 項目1に記載の単離された核酸であって、前記哺乳動物タンパク質が、配列番号2、配列番号04、配列番号06、または配列番号08のアミノ酸配列を有する、単離された核酸。
(項目3) 項目1に記載の単離された核酸であって、前記哺乳動物タンパク質が、配列番号2、配列番号04、配列番号06、または配列番号08のアミノ酸配列に実質的に同一であるアミノ酸配列を有する、単離された核酸。
(項目4) 項目1に記載の単離された核酸であって、該核酸のヌクレオチド配列が、以下:(a)配列番号1またはそれに相補的な配列;(b)配列番号03またはそれに相補的な配列;(c)配列番号05またはそれに相補的な配列;および(d)配列番号07またはそれに相補的な配列からなる群より選択される配列を有する、単離された核酸。
(項目5) 単離された核酸であって、以下:(a)配列番号1またはそれに相補的な配列;(b)配列番号03またはそれに相補的な配列;(c)配列番号05またはそれに相補的な配列;および(d)配列番号07またはそれに相補的な配列からなる群より選択される配列の少なくとも18個の連続するヌクレオチドを含む、単離された核酸。
(項目6) 単離された核酸であって、以下:(a)配列番号1またはそれに相補的な配列;(b)配列番号03またはそれに相補的な配列;(c)配列番号05またはそれに相補的な配列;および(d)配列番号07またはそれに相補的な配列からなる群より選択される配列の少なくとも50個の連続するヌクレオチドを含む、単離された核酸。
(項目7) 単離された核酸であって、以下:(a)配列番号1またはそれに相補的な配列;(b)配列番号03またはそれに相補的な配列;(c)配列番号05またはそれに相補的な配列;および(d)配列番号07またはそれに相補的な配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列を有する核酸に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする、単離された核酸。
(項目8) 発現カセットであって、発現宿主において機能的な転写開始領域、該転写開始領域の転写調節下の項目1に記載の単離された核酸の配列を有する核酸、および該発現宿主において機能的な転写終結領域を含む、発現カセット。
(項目9) 宿主細胞への項目8に記載の発現カセットの導入の結果として、該宿主細胞の染色体外エレメントの部分として、またはゲノムに取込まれた該発現カセットを含む細胞、および該宿主細胞の細胞性子孫。
(項目10) LGR4、LGR5、およびLGR7からなる群より選択される哺乳動物タンパク質を生成するための方法であって、該方法は:
項目9に記載の細胞を増殖する工程であって、それによって該哺乳動物タンパク質が発現される、工程;および
他のタンパク質が実質的にない該タンパク質を単離する工程、を包含する、方法。
(項目11) 精製されたポリぺプチド組成物であって、LGR4、LGR5、およびLGR7、またはそれらのフラグメントからなる群より選択される哺乳動物タンパク質として存在する少なくとも50重量%のタンパク質を含む、
精製されたポリぺプチド組成物。
(項目12) LGR4、LGR5、およびLGR7からなる群より選択される哺乳動物タンパク質に特異的に結合する、抗体。
(項目13) 項目12に記載の抗体であって、該抗体がモノクローナル抗体である、抗体。
(項目14) LGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子機能についての非ヒトトランスジェニック動物モデルであって、ここで該トランスジェニック動物が、LGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子中に導入された改変を含む、動物モデル。
(項目15) 項目14に記載の動物モデルであって、該動物が、前記導入された改変についてヘテロ接合体である、動物モデル。
(項目16) 項目14に記載の動物モデルであって、該動物が、前記導入された改変についてホモ接合体である、動物モデル。
(項目17) 項目14に記載の動物モデルであって、前記導入された改変が、内因性LGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子発現のノックアウトである、動物モデル。
(項目18) LGR4、LGR5、およびLGR7からなる群より選択されるレセプターに対するリガンドの存在について、サンプルをスクリーニングする方法であって、該方法は:
LGR4、LGR5、およびLGR7、またはそれらの模倣物からなる群より選択されるレセプターと、該サンプルとを接触する工程、ならびに
該レセプターと、該サンプル中のリガンドとの間の結合事象の存在を検出する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、ヒトLGR4のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。
【図2】図2は、ヒトLGR5のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。
【図3】図3は、ヒトLGR7の長い形態のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。
【図4】図4は、ヒトLGR7の短い形態のヌクレオチドおよびアミノ酸配列を提供する。
【図5】図5は、LGR7の長いおよび短い形態のアラインメント比較を提供する。
【図6a】図6は、LGR4および5 cDNAの推定のアミノ酸配列と、FSHおよびLHレセプターをコードするcDNAの推定のアミノ酸配列との比較を提供する。
【図6b】図6は、LGR4および5 cDNAの推定のアミノ酸配列と、FSHおよびLHレセプターをコードするcDNAの推定のアミノ酸配列との比較を提供する。
【図6c】図6は、LGR4および5 cDNAの推定のアミノ酸配列と、FSHおよびLHレセプターをコードするcDNAの推定のアミノ酸配列との比較を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(特定の実施態様の説明)
細胞外ロイシンリッチ反復領域を有する新規な哺乳動物G−タンパク質共役型
レセプター(すなわち、LGR4、LGR5、およびLGR7)、およびこれら
に関連されるポリぺプチド組成物、ならびにこれらをコードする核酸組成物が提
供される。本発明のポリぺプチドおよび/または核酸組成物は、多様な異なる適
用(相同なおよび関連する遺伝子の同定を含む)における;これらの新規なレセ
プターについての内因性リガンドの同定のための;レセプターの発現または機能
を調節する組成物の生成のための;遺伝子治療のための;レセプターの機能的な
領域をマッピングするための;関連する生理学的経路を研究するにおける;イン
ビボでの予防的なおよび治療学的な目的のための;抗体を生成するための免疫原
としての;生物学的に活性な薬剤をスクリーニングするなどにおける使用を見出
す。
【0009】
本発明がさらに記載される前に、特定の実施態様の変化がなされ得、そしてな
お添付の請求の範囲内にあり得るので、本発明が、以下に記載される本発明の特
定の実施態様に制限されないことが理解されるべきである。用いられる用語は、
特定の実施態様を記載する目的のためであり、および制限することを意図されな
いことがまた理解されるべきである。その代わりに、本発明の範囲は添付の請求
の範囲によって確立される。
【0010】
本明細書および添付の請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および
「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り複数形の表示を含
む。他で規定されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的および科学的
な用語は、本発明が属する当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。
【0011】
(LGR4、LGR5、およびLGR7の特徴づけ)
LGR4、LGR5、およびLGR7は、タンパク質のG−タンパク質共役型
の、7回膜貫通ファミリー、具体的には細胞外ロイシンリッチ反復領域の存在に
よって特徴づけられるG−タンパク質共役型の7回膜貫通タンパク質のサブファ
ミリーの新規な哺乳動物レセプターである。このように、これらのタンパク質は
、公知のLH、FSH、およびTSHレセプターにおいて見出される膜貫通セグ
メントおよび細胞外領域に類似する膜貫通セグメントおよび細胞外領域を有する
。換言すると、これらのタンパク質は、G−タンパク質共役型の7回膜貫通領域
およびロイシンリッチ反復細胞外ドメインの両方を有する。これらのタンパク質
のN末端細胞外ドメインはまた、ロイシンリッチ反復を有するショウジョウバエ
のSlitおよびTollタンパク質と高い相同性を示す。これらのタンパク質
は、多様な組識において発現される。
【0012】
ヒトLGR4遺伝子は、配列番号01において示されるようなヌクレオチド配
列を有する。ヒトLGR4遺伝子産物は、配列番号02において示されるような
アミノ酸配列を有する。LGR4は、卵巣、精巣、副腎、膵臓、肝臓、腎臓、お
よび腸を含む複数の異なる組織型において発現される。
【0013】
ヒトLGR5遺伝子は、配列番号03において示されるようなヌクレオチド配
列を有する。LGR5遺伝子産物は、配列番号04において示されるようなアミ
ノ酸配列を有する。LGR5は、筋肉、胎盤、および脊髄組識において主に発現
されることが見出されている。
【0014】
ヒトLGR7遺伝子は複数のスプライシング改変体をコードし、これらのそれ
ぞれは、ロイシンリッチ反復領域に加えて、N末端にて複数のシステインリッチ
の低密度リポタンパク質(LDL)結合モチーフを含む。LGR7のより長い形
態は、膜貫通ドメインおよびN末端LDL結合ドメインにおいて、LGR7のよ
り短い形態よりも、マキガイLGRに高い配列類似性を有する。LGR7の長い
および短い形態の両方の全体の構造は、LHレセプターの構造に類似する。ヒト
LGR7の短い形態の遺伝子は、配列番号05において示されるようなヌクレオ
チド配列を有する。LGR7の短い形態の遺伝子産物は、配列番号06において
示されるようなアミノ酸配列を有する。ヒトLGR7の長い形態の遺伝子は、配
列番号07において示されるようなヌクレオチド配列を有する。LGR7の長い
形態の遺伝子産物は、配列番号08において示されるようなアミノ酸配列を有す
る。LGR7は、精巣、卵巣、前立腺、腸、および結腸を含む複数の組織におい
て発現される。
【0015】
(LGR4、LGR5、およびLGR7配列の同定)
LGR4、LGR5、およびLGR7の相同体は、任意の多くの方法によって
同定される。提供されるcDNAのフラグメントは、目的の標的生物体からのc
DNAライブラリーに対するハイブリダイゼーションプローブとして使用され得
、ここでは低ストリンジェンシー条件が使用される。プローブは大きなフラグメ
ント、または1つ以上の短い縮重プライマーであり得る
配列類似性を有する核酸は、低ストリンジェンシー条件(例えば、50℃およ
び6×SSC(0.9M 塩化ナトリウム/0.09M クエン酸ナトリウム)
)下でのハイブリダイゼーションによって検出され、および1×SSC(0.1
5M 塩化ナトリウム/0.015M クエン酸ナトリウム)中55℃での洗浄
に供される場合、結合したままである。配列同一性は、ストリンジェントな条件
(例えば、50℃以上および0.1×SSC(15mM 塩化ナトリウム/01
.5mM クエン酸ナトリウム)下でのハイブリダイゼーションによって決定さ
れ得る。提供されるLGR4、LGR5、および/またはLGR7配列に実質的
に同一性の領域を有する核酸(例えば、対立遺伝子改変体、遺伝子の遺伝的に改
変されたバージョンなど)は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件
下で提供される配列に結合する。プローブ、特にDNA配列の標識化プローブを
使用することによって、相同なまたは関連する遺伝子を単離し得る。相同な遺伝
子の供給源は、任意の種(例えば、霊長類、特にヒト);げっ歯類(例えば、ラ
ットおよびマウス);イヌ;ネコ;ウシ;ヒツジ;ウマ;酵母;線虫など)であ
り得る。
【0016】
哺乳動物種(例えばヒトおよびマウス)間で、相同体は核酸配列間に実質的な
配列類似性(例えば、少なくとも75%の配列同一性、通常少なくとも90%、
より通常少なくとも95%)を有する。配列類似性は、参照配列に基づいて算定
され、参照配列はより大きな配列のサブセット(例えば、保存されたモチーフ、
コード領域、隣接領域など)であり得る。参照配列は、通常少なくとも約18ヌ
クレオチド長、より通常少なくとも約30ヌクレオチド長であり、および比較さ
れる完全な配列に伸長され得る。Altschulら(1990)J. Mol
. Biol. 215:403−10において記載されるBLASTのような
配列解析のためのアルゴリズムは、当該分野において公知である。他で特定しな
い限り、本明細書中に提供される全ての配列解析番号は、デフォルト設定を使用
するBLASTプログラムで決定されるものである。本明細書中に提供される配
列は、データベースサーチにおいてLGR4、LGR5、およびLGR7に関連
するおよび相同なタンパク質を認識するために必須である。
【0017】
(LGR4、LGR5、およびLGR7核酸組成物)
LGR4、LGR5、およびLGR7をコードする核酸は、cDNAもしくは
ゲノムDNA、またはそれらのフラグメントであり得る。用語「LGR4遺伝子
」、「LGR5遺伝子」、および「LGR7遺伝子」は、特定のLGR4、LG
R5、およびLGR7ポリぺプチドをコードするオープンリーディングフレーム
、ならびにLGR4、LGR5、およびLGR7イントロン、ならびに発現の調
節に関与する、コード領域を約20kb越えるが、さらに可能性としてはいずれ
かの方向においてであり、近接の5’および3’非コードヌクレオチド配列を意
味することが意図される。遺伝子は、染色体外での維持のために、または宿主ゲ
ノムへの組み込みのために、適切なベクターに導入され得る。
【0018】
本明細書中で使用される場合に、用語「cDNA」は、ネイティブな成熟mR
NA種において見出される配列エレメントの配置を共有する全ての核酸を含むこ
とが意図され、ここでは配列エレメントはエキソンならびに3’および5’非コ
ード領域である。通常mRNA種は、連続するエキソンを有し、介在するイント
ロンは、存在する場合、核RNAスプライシングによって除去されて、LGR4
、LGR5、およびLGR7タンパク質をコードする連続するオープンリーディ
ングフレームを作製する。
【0019】
目的のゲノム配列は、列挙される配列において規定されるように開始コドンと
停止コドンとの間に存在する核酸を含み、ネイティブな染色体に通常存在する全
てのイントロンを含む。これは、成熟mRNAにおいて見出される3’および5
’非翻訳領域をさらに含み得る。これはさらに、特異的な転写および翻訳調節配
列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)を含み得、約1kbであるが潜
在的により長い、転写される領域の5’または3’末端のいずれかでの隣接する
ゲノムDNAを含む。ゲノムDNAは、100kbp以下のフラグメントとして
単離され得;実質的に隣接する染色体配列がない。3’もしくは5’のいずれか
でコード配列を隣接するゲノムDNA、またはイントロン中に時々見出されるよ
うな内部調節配列は、適切な組識特異的発現および段階特異的発現に必要とされ
る配列を含む。
【0020】
5’隣接領域の配列は、プロモーターエレメントのために利用され得、エンハ
ンサー結合部位を含み、これはLGR4、LGR5、および/またはLGR7が
発現される組識において発生的調節を提供する。組識特異的発現は、発現のパタ
ーンを決定するために、および発現のネイティブなパターンを模倣するプロモー
ターを提供するために有用である。プロモーター領域中の天然に存在する多型は
、発現における天然の変異、特に疾患と関連し得る変異を決定するために有用で
ある。
【0021】
あるいは、変異は実験的に規定される系において、発現を変化する効果を決定
するために、プロモーター領域に導入され得る。転写因子の結合に関与する特定
のDNAモチーフの同定のための方法(公知の結合モチーフへの配列類似性、ゲ
ルリターデーション研究など)は、当該分野において公知である。例えば、Bl
ackwellら(1995)、Mol. Med. 1:194−205;M
ortlockら(1996)、Genome Res. 6:327−33;
ならびにJoulinおよびRichard−Foy(1995)、Eur.
J. Biochem. 232:620−626を参照のこと。
【0022】
調節配列は、特に、発生の異なる組識または段階における、LGR4、LGR
5、および/またはLGR7の発現の転写または翻訳の調節に必要とされるシス
作用性配列を同定するために、ならびにLGR4、LGR、および/またはLG
R7の発現を調節または媒介するシス作用性配列およびトランス作用性因子を同
定するために使用され得る。このような転写または翻訳の制御領域は、培養細胞
において、または胚、胎児、もしくは成体の組識において、および遺伝子治療の
ために、野生型または変化されたLGR4、LGR5、もしくはLGR7、また
は目的の他のタンパク質の発現を促進するために、LGR4、LGR5、または
LGR7の遺伝子に作動可能に連結され得る。
【0023】
本発明の核酸組成物は、本発明のポリぺプチドの全てまたは一部をコードし得
る。DNA配列の2本鎖または1本鎖フラグメントは、従来の方法に従ってオリ
ゴヌクレオチドを化学的に合成することによって、制限酵素消化によって、PC
R増幅によってなどで、得られ得る。大部分、DNAフラグメントは少なくとも
15ヌクレオチド、通常少なくとも18ヌクレオチド、または25ヌクレオチド
であり、および少なくとも約50ヌクレオチドであり得る。このような小DNA
フラグメントはPCRのためのプライマー、ハイブリダイゼーションスクリーニ
ングプローブなどとして有用である。より大きな、すなわち100ヌクレオチド
を超えるDNAフラグメントは、コードされたポリぺプチドの生成のために有用
である。PCRのような増幅反応における使用のために、プライマーの対が使用
される。プライマー配列の正確な組成は本発明に重要ではないが、大部分の適用
について、プライマーは、当該分野において公知であるように、ストリンジェン
トな条件下で本発明の配列にハイブリダイズする。少なくとも約50ヌクレオチ
ド、好ましくは少なくとも約100ヌクレオチドの増幅産物を生成するプライマ
ーの対を選択することが好ましい。プライマー配列の選択のためのアルゴリズム
が一般に公知であり、そして市販のソフトウェアパッケージにおいて利用可能で
ある。増幅プライマーは、DNAの相補鎖にハイブリダイズし、そして互いに対
してプライムする。
【0024】
LGR4、LGR、およびLGR7遺伝子は、単離され、および一般にインタ
クトな染色体以外として、実質的な純度において得られる。通常、LGR4、L
GR5、もしくはLGR7配列またはそれらのフラグメントを含まない他の核酸
配列を実質的に含まないDNAが得られ、一般的に少なくとも50%、通常少な
くとも約90%の純度であり、および典型的に「組換え」であり、すなわち天然
に存在する染色体において通常は会合されない1つ以上のヌクレオチドによって
隣接される。
【0025】
DNAはまた、生物学的標本における遺伝子の発現を同定するために使用され
得る。ゲノムDNAまたはRNAとして、特定のヌクレオチド配列の存在につい
て細胞をプローブする様式は、文献において十分に確立されており、および本明
細書中での詳述を必要としない。DNAまたはmRNAは細胞サンプルから単離
される。mRNAは、相補的なDNA鎖を形成するために逆転写酵素を使用する
RT−PCR、続いて本発明のDNA配列に特異的なプライマーを使用するポリ
メラーゼ連鎖反応増幅によって増幅され得る。あるいは、mRNAサンプルは、
ゲル電気泳動によって分離され、適切な支持体(例えば、ニトロセルロース、ナ
イロンなど)に移され、次いでプローブとして本発明のDNAのフラグメントで
プローブされる。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、インサイチュハ
イブリダイゼーション、および固体チップ上に配列されるDNAプローブへのハ
イブリダイゼーションのような他の技術がまた、使用を見出し得る。本発明の配
列にハイブリダイズするmRNAの検出は、サンプルにおけるLGR4、LGR
5、および/またはLGR7の遺伝子発現の指標である。
【0026】
LGR4、LGR5、またはLGR7の遺伝子の配列は、隣接するプロモータ
ー領域およびコード領域を含み、プロモーター強度、コードされるタンパク質の
配列などにおいて目的とされる変化を生じるために、当該分野において公知の種
々の方法において変異され得る。このような変異のDNA配列またはタンパク質
産物は、通常、本明細書中で提供される配列に実質的に類似し、すなわち、それ
ぞれ、少なくとも1つのヌクレオチドまたは核酸が異なり、および少なくとも2
つであるが約10を超えないヌクレオチドまたはアミノ酸が異なり得る。配列の
変化は、置換、挿入、欠失、またはそれらの組合わせであり得る。欠失は、ドメ
インまたはエクソンの欠失のような、より大きな変化をさらに含み得る。目的の
他の改変としては、例えば、FLAG系、HAなどでのエピトープタグ化を含む
。亜細胞局在化の研究のために、グリーン蛍光タンパク質(GFP)との融合タ
ンパク質が使用され得る。
【0027】
クローン化遺伝子のインビトロ変異誘発のための技術が公知である。部位特異
的変異誘発のためのプロトコルの例は、Gustinら(1993)、Biot
echniques 14:22;Barany(1985)、Gene 37
:111−23;Colicelliら(1985)、Mol. Gen. G
enet. 199:537−9;およびPrentkiら(1984)、Ge
ne 29:303−13において見出され得る。部位特異的変異誘発のための
方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A La
boratoy Manual,CSH Press 1989、15.3〜1
5.108頁;Weinerら(1993)、Gene 126:35−41;
Sayersら(1992)、Biotechniques 13:592−6
;JonesおよびWinistorfer(1992)、Biotechni
ques 12:528−30;Bartonら(1990)、Nucleic
Acids Res 18:7349−55;MarottiおよびTomi
ch(1989)、Gene Anal. Tech. 6:67−70;なら
びにZhu(1989)、Anal Biochem 177:120−4にお
いて見出され得る。このように変異された遺伝子は、LGR4、LGR5、およ
び/またはLGR7の構造−機能の関係を研究するために、または機能もしくは
調節に影響するタンパク質の特性を変えるために、使用され得る。
【0028】
(LGR4、LGR5、およびLGR7ポリぺプチド)
また本発明によって提供されるのは、LGR4、LGR5、およびLGR7ポ
リぺプチド組成物である。本明細書中で使用される用語ポリぺプチド組成物は、
全長タンパク質、ならびにその部分またはフラグメントの両方をいう。またこの
用語に含まれるのは、天然に存在するタンパク質の変異物であり、ここではこの
ような変異物は天然に存在するタンパク質に相同であるかまたは実質的に類似し
、天然に存在するタンパク質は、ヒトタンパク質、マウスタンパク質、またはL
GR4、LGR5、もしくはLGR7タンパク質を天然に発現するいくつかの他
の種、通常は哺乳動物種由来のタンパク質である。候補の相同タンパク質は、本
発明のLGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質に実質的に類似し、それ
ゆえBLAST(前出)によって測定されるように、候補タンパク質がLGR4
、LGR5、またはLGR7タンパク質と少なくとも約80%、通常少なくとも
約90%、およびより通常少なくとも約98%の配列同一性を有する配列を有す
る場合、本発明のLGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質である。本発
明の以下の記載において、用語「LGR4、LGR5、またはLGR7タンパク
質」は、ヒトLGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質に対してのみだけ
でなく、非ヒト種(例えば、マウス、ラット、および他の哺乳動物種)において
発現されるそれらの相同体もまたいうために使用される。
【0029】
本発明の遺伝子は、LGR4、LGR5、またはLGR7ポリぺプチドの全て
または部分を生成するために用いられ得る。「LGR4ポリぺプチド/タンパク
質」、「LGR5ポリぺプチド/タンパク質」、および「LGR7ポリぺプチド
/タンパク質」によって、LGR4、LGR5、およびLGR7遺伝子のオープ
ンリーディングフレーム(ORF)によってコードされるアミノ酸配列が意味さ
れ、完全長のネイティブなポリぺプチドおよびそのフラグメント、特に生物学的
に活性なフラグメント、および/または機能的なドメイン(例えば、細胞外領域
)に対応するフラグメントを含み;ならびに他のタンパク質またはその部分との
本発明のポリぺプチドの融合物(例えば、キメラタンパク質)を含む。発現のた
めに、発現カセットが用いられ得る。発現ベクターは、転写および翻訳開始領域
(これは誘導性または構成的であり得る)を提供し、ここではコード領域は、転
写開始領域の転写制御下、ならびに転写および翻訳終結領域に作動可能に連結さ
れる。これらの制御領域はLGR4、LGR5、もしくはLGR7遺伝子に対し
てネイティブであり得るか、または外因性供給源に由来し得る。
【0030】
発現ベクターは一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供す
るために、プロモーター配列の近くに配置される便利な制限部位を有する。発現
宿主において作動的な選択マーカーが存在し得る。発現ベクターは、融合タンパ
ク質の生成のために使用され得、ここでは外因性の融合ペプチドはさらなる機能
性(すなわち、増加されたタンパク質合成、安定性、規定される抗血清との反応
性、酵素マーカー(例えば、β−ガラクトシダーゼ)など)を提供する。
【0031】
転写開始領域、遺伝子またはそのフラグメント、および転写終結領域を含む発
現カセットが、調製され得る。特に興味深いのは、機能的なエピトープまたはド
メイン、通常少なくとも約8アミノ酸長、より通常少なくとも約15アミノ酸長
から、約25アミノ酸まで、および多くとも遺伝子の完全なオープンリーディン
グフレームまでの発現を許容する配列の使用である。DNAの導入後、構築物を
含有する細胞は、選択マーカーの手段によって選択され得、細胞は増殖され得、
次いで発現のために使用され得る。
【0032】
LGR4、LGR5、またはLGR7ポリぺプチドは、発現の目的に依存して
、従来の方法に従って、原核生物または真核生物において発現され得る。タンパ
ク質の大規模生成のために、E.coli、B.subtilis、S.cer
evisiae、バキュロウイルスベクターと組合わせた昆虫細胞のような単細
胞生物体、または脊椎動物、特に哺乳動物のような高等生物体の細胞(例えば、
COS7細胞)が、発現宿主細胞として使用され得る。いくつかの状況において
、真核生物細胞においてLGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子を発現させ
ることが望ましく、ここではLGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質が
ネイティブな折畳みおよび翻訳後修飾から利益を得る。小ペプチドはまた、実験
室において合成され得る。完全なLGR4、LGR5、またはLGR7配列のサ
ブセットであるポリぺプチドは、機能に重要なタンパク質の部分を同定および調
査するために、またはこれらの領域に対して指向される抗体を惹起するために使
用され得る。
【0033】
LGR4、LGR5、またはLGR7レセプターの細胞外ドメインの生成のた
めに、Osugaら、Mol. Endocrinol.(1997)11:1
659−1668において記載されるようなアンカー化レセプターアプローチが
用いられ得る。同様に、Kudoら、J Biol. Chem.(1996)
271;22470−22478において記載されるキメラレセプターアプロー
チが使用され得る。
【0034】
このようなペプチドは、内因性リガンドの同定における、ならびにOsuga
(前出)において記載される方法を使用してアゴニストおよびアンタゴニストを
薬物スクリーニングするにおける、使用を見出す。可溶化された細胞外ドメイン
は、例えば、内因性リガンドの作用の中和化における治療学的薬剤としての使用
を見出す。
【0035】
発現宿主を用いることによる、大量のタンパク質またはそのフラグメントの利
用可能性を用いて、タンパク質は従来の方法に従って単離および精製され得る。
発現宿主のライセートが調製され得、ライセートはHPLC、排除クロマトグラ
フィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、または他の精製技
術を使用して精製され得る。精製されたタンパク質は、一般に少なくとも約80
%純粋であり、好ましくは少なくとも約90%純粋であり、ならびに100%ま
で純粋であり得、および100%を含み得る。純粋とは、他のタンパク質および
細胞残渣がないことを意味することが意図される。
【0036】
発現されるLGR4、LGR5、およびLGR7ポリぺプチドは、抗体の生成
のために有用であり、ここでは短いフラグメントが特定のポリぺプチドに特異的
な抗体を提供し、そしてより大きなフラグメントまたは全体のタンパク質は、ポ
リぺプチドの表面上に対する抗体の生成を許容する。抗体は、LGR4、LGR
5、またはLGR7の野生型または改変体の形態に対して惹起され得る。抗体は
、これらのドメインに、またはネイティブなタンパク質に対応する単離されたペ
プチドに対して惹起され得る。
【0037】
抗体は、従来の方法に従って調製され、ここでは発現されるポリぺプチドまた
はタンパク質は、それ自身でまたは公知の免疫原性キャリア(例えば、KLH、
pre−S HBsAg、他のウイルスまたは真核生物タンパク質など)に結合
されて、免疫原として使用される。一連の注射とともに、適切であるように、種
々のアジュバントが用いられ得る。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗
体の両方が生成され得る。モノクローナル抗体について、1回以上の追加免疫後
に、脾臓が単離され、リンパ球が細胞融合によって不死化され、次いで高親和性
の抗体結合についてスクリーニングされる。所望の抗体を生成する不死化された
細胞(すなわち、ハイブリドーマ)は、次いで拡張され得る。さらなる記載につ
いては、Monoclonal Antibodies:A Laborato
ry Manual、HarlowおよびLane編、Cold Spring
Harbor Laboratories、Cold Spring Har
bor,New York、1988を参照のこと。所望であれば、重鎖および
軽鎖をコードするmRNAが、E.coli中にクローニングすることによって
単離および変異誘発され得、そして重鎖および軽鎖は、抗体の親和性をさらに増
強するために混合され得る。抗体を惹起する方法として、インビボ免疫に対する
代替法は、通常インビトロアフィニティー成熟と組合わせた、ファージ「ディス
プレイ」ライブラリーに結合することを包含する。
【0038】
(診断的使用)
本発明の核酸および/またはポリぺプチド組成物は、疾患状態または疾患状態
に対する遺伝子素因と関連する多型の存在について、患者のサンプルを分析する
ために使用され得る。生化学的研究が、LGR4、LGR、またはLGR7コー
ド領域または制御領域における配列多型が、疾患と関連するか否かを決定するた
めに行われ得る。疾患関連性の多型としては、遺伝子の欠失または短縮、発現レ
ベルを変化する変異(これはタンパク質の活性に影響する)などが挙げられ得る

【0039】
LGR4、LGR5、またはLGR7の発現レベルに影響し得るプロモーター
またはエンハンサー配列における変化は、当該分野において公知の種々の方法に
よって正常な対立遺伝子の発現レベルと比較され得る。プロモーターまたはエン
ハンサーの強度を決定するための方法は、発現された天然タンパク質の定量;β
−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランス
フェラーゼなどのようなレポーター遺伝子とともに、ベクター中への改変体制御
エレメントの挿入(これは便利な定量を提供する)などを包含する。
【0040】
多くの方法が、特定の配列(例えば、疾患関連性の多型)の存在について核酸
を分析するために利用可能である。大量のDNAが利用可能である場合、ゲノム
DNAが直接的に使用される。あるいは、目的の領域は適切なベクターにクロー
ン化され、そして分析のために十分な量に増殖される。LGR4、LGR5、ま
たはLGR7を発現する細胞は、mRNAの供給源として使用され得、これは直
接的にアッセイされ得るか、または分析のためにcDNAに逆転写され得る。核
酸は、分析のための十分な量を提供するために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR
)のような従来の技術によって増幅され得る。ポリメラーゼ連鎖反応の使用は、
Saikiら(1985)、Science 239:487において記載され
、技術の概説は、Sambrookら、Molecular Cloning:
A Laboratory Mannual、CSH Press 1989、
14.2−14.33頁において見出され得る。あるいは、多型を検出する手段
としてオリゴヌクレオチドライゲーションを利用する種々の方法が当該分野にお
いて公知であり、例えば、Rileyら(1990)、Nucl. Acids
Res. 18:2887−2890;およびDelahuntyら(199
6)、Am. J. Hum. Genet. 58:1239−1246を参
照のこと。
【0041】
検出可能な標識は、増幅反応液中に含まれ得る。適切な標識としては、蛍光色
素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミン、テ
キサスレッド、フィコエリトリン、アロフィコシアニン、6−カルボキシフルオ
レセイン(6−FAM)、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6
−カルボキシフルオレセイン(JOE)、6−カルボキシ−X−ローダミン(R
OX)、6−カルボキシ−2’,4’,7’,4,7,−ヘキサクロロフルオレ
セイン(HEX)、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)、またはN,
N,N’,N’,−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(TAMRA))
、放射性標識(例えば、32P、35S、3Hなど))が挙げられる。標識は、2段
階系であり得、ここでは増幅されたDNAは、アビジン、特異的抗体などのよう
な高親和性の結合パートナーを有するビオチン、ハプテンなどに結合され、ここ
では結合パートナーは検出可能な標識に結合される。標識は、プライマーの一方
または両方に結合され得る。あるいは、増幅において使用されるヌクレオチドの
プールが標識され、それによって増幅産物中に標識が取込まれる。
【0042】
サンプル核酸(例えば、増幅されたまたはクローン化されたフラグメント)は
、当該分野において公知の多くの方法の1つによって分析される。核酸は、ダイ
デオキシ法または他の方法によって配列決定され得、塩基の配列は野生型LGR
4、LGR5、またはLGR7配列に比較され得る。改変体配列とのハイブリダ
イゼーションはまた、サザンブロット、ドットブロットなどによって、その存在
を決定するために使用され得る。米国特許第5,445,934号において、ま
たはWO 95/35505(これらの開示は本明細書中に参考として援用され
る)に記載されるように、固体支持体に固定化されるオリゴヌクレオチドプロー
ブのアレイへのコントロール配列および改変体配列のハイブリダイゼーションパ
ターンはまた、改変体配列の存在を検出する手段として使用され得る。1本鎖高
次構造多型(SSCP)分析、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、およびゲル
マトリクスにおけるヘテロ2重鎖分析は、電気泳動移動度における変化として、
DNA配列の変化によって作製される高次構造の変化を検出するために使用され
る。あるいは、多型が制限エンドヌクレアーゼの認識部位を作製または破壊する
場合、サンプルは、エンドヌクレアーゼで消化され、そしてフラグメントが消化
されたか否かを決定するために産物がサイズ分画される。分画は、ゲルまたはキ
ャピラリー電気泳動、特にアクリルアミドまたはアガロースゲルによって行われ
る。
【0043】
LGR4、LGR5、またはLGR7における変異についてのスクリーニング
は、タンパク質の機能的または抗原的特徴に基づき得る。タンパク質短縮アッセ
イは、タンパク質の生物学的活性に影響し得る欠失を検出するにおいて有用であ
る。LGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質における多型を検出するた
めに設計される種々のイムノアッセイが、スクリーニングにおいて使用され得る
。多くの多様な遺伝子変異が特定の疾患表現型を導く場合、機能的なタンパク質
アッセイが有効なスクリーニングツールであることが証明された。コードされる
LGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質の活性は、野生型タンパク質と
の比較によって決定され得る。
【0044】
LGR4、LGR5、またはLGR7タンパク質に特異的な抗体は、染色また
はイムノアッセイにおいて使用され得る。本明細書中で使用される場合、サンプ
ルとは、精液、血液、脳脊髄液、涙、唾液、リンパ液、透析液などのような生物
学的液体;器官または組識培養物由来の液体;および生理学的組識から抽出され
る液体を含む。この用語にまた含まれるのは、このような液体の誘導体および画
分である。細胞は、固体組識の場合に解離され得るか、または組識切片が分析さ
れ得る。あるいは、細胞の溶解物が調製され得る。
【0045】
診断は、患者細胞における正常または異常なLGR4、LGR5、またはLG
R7の存在もしくは不在または変化された量を決定するための多くの方法によっ
て行われ得る。例えば、検出は細胞または組識学的切片の染色を利用し得、従来
の方法に従って行われ得る。細胞は細胞質分子を染色するために透過化処理され
る。目的の抗体が細胞サンプルに添加され、そしてエピトープへの結合を許容す
るのに十分な時間、通常少なくとも約10分間、インキュベートされる。抗体は
放射性同位元素、酵素、蛍光剤、化学発光剤、または直接的な検出のための他の
標識で標識され得る。あるいは、第2段階の抗体または試薬がシグナルを増幅す
るために使用される。このような試薬は当該分野において周知である。例えば、
一次抗体はビオチンに結合され得、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合アビジンが
2段階試薬として添加される。あるいは、二次抗体は、蛍光化合物(例えば、フ
ルオレセイン、ローダミン、テキサスレッドなど)に結合される。最終的な検出
はペルオキシダーゼの存在下で色の変化を受ける基質を使用する。抗体結合の不
在または存在は、解離された細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡、ラジオグラ
フィー、シンチレーションカウンティングなどを含む種々の方法によって決定さ
れ得る。
【0046】
診断的なスクリーニングはまた、疾患素因に遺伝子連鎖される多型のために、
特にマイクロサテライトマーカーまたは単一のヌクレオチド多型の使用を介して
、行われ得る。頻繁に、マイクロサテライト多型自身は、表現型的に発現されな
いが、疾患素因を生じる配列に連鎖する。しかし、いくつかの場合において、マ
イクロサテライト配列自体は、遺伝子の発現に影響し得る。マイクロサテライト
連鎖解析は、単独で、または上記のような多型の直接的な検出と組合わせて行わ
れ得る。遺伝子型を決定するためのマイクロサテライトマーカーの使用は十分に
記載される。例えば、Mansfieldら(1994)、Genomics
24:225−233;Ziegleら(1992)、Genomics 14
:1026−1031;Dibら(前出)を参照のこと。
【0047】
(LGR4、LGR5、およびLGR7遺伝子発現の調節)
LGR4、LGR5、もしくはLGR7遺伝子もしくは遺伝子フラグメント、
またはLGR4、LGR5、もしくはLGR7タンパク質もしくはタンパク質フ
ラグメントは、LGR4、LGR5、またはLGR7欠損と関連する障害を処置
するための遺伝子治療において有用である。発現ベクターは、LGR4、LGR
5、またはLGR7遺伝子を細胞に導入するために使用され得る。このようなベ
クターは核酸配列の挿入を提供するために、プロモーター配列の近くに配置され
る便利な制限部位を一般に有する。転写開始領域、標的遺伝子またはそのフラグ
メント、および転写終結領域を含有する転写カセットが調製され得る。転写カセ
ットは、多様なベクター(例えば、プラスミド;レトロウイルス(例えば、レン
チウイルス;アデノウイルスなど)に導入され得、ここではベクターは、通常少
なくとも1日、より通常少なくとも数日間〜数週間の期間、細胞中で一過的にま
たは安定に維持され得る。
【0048】
遺伝子、またはLGR4、LGR5、もしくはLGR7タンパク質は、ウイル
ス感染、マイクロインジェクション、またはベシクルの融合を含む任意の数の経
路によって組識または宿主細胞に導入され得る。ジェットインジェクションがま
た、Furthら(1992)、Anal Biochem 205:365−
368によって記載されるように、筋肉内投与のために使用され得る。DNAは
、金マイクロパーティクル上にコートされ得、そして粒子ボンバードメントデバ
イス、または文献において記載されるように(例えば、Tangら(1992)
、Nature 356:152−154を参照のこと)「遺伝子銃」によって
皮内に送達され、ここでは金微粒子はLGR4、LGR5、またはLGR7 D
NAでコートされ、次いで皮膚細胞にボンバードメントされる。
【0049】
アンチセンス分子は、細胞におけるLGR4、LGR5、またはLGR7のダ
ウンレギュレート発現のために使用され得る。アンチセンス試薬は、アンチセン
スオリゴヌクレオチド(ODN)、特にネイティブな核酸からの化学改変を有す
る合成ODN、またはRNAとしてのアンチセンス分子を発現する核酸構築物で
あり得る。アンチセンス配列は、標的遺伝子のmRNAに相補的であり、そして
標的される遺伝子産物の発現を阻害する。アンチセンス分子は、種々の機構を介
して、例えば、翻訳に利用可能なmRNAの量を減少することによって、RNア
ーゼHの活性化を介して、または立体障害を介して遺伝子発現を阻害する。アン
チセンス分子の1つまたは組合わせが投与され得、ここでは組合わせは複数の異
なる配列を含み得る。
【0050】
アンチセンス分子は、適切なベクター中の標的遺伝子配列の全てまたは一部の
発現によって生成され得、ここでは転写開始は、アンチセンス鎖がRNA分子と
して生成されるように配向される。あるいは、アンチセンス分子は合成ヌクレオ
チドである。アンチセンスオリゴヌクレオチドは一般に、少なくとも約7ヌクレ
オチド長、通常少なくとも約12ヌクレオチド長、より通常少なくとも約20ヌ
クレオチド長であり、および約500ヌクレオチド長を超えず、通常約50ヌク
レオチド長を超えず、より通常約35ヌクレオチド長を超えず、ここで長さは阻
害の効力(特に、交差反応性の不在などを含む)によって支配される。7〜8塩
基長の短いオリゴヌクレオチドが遺伝子発現の強力なおよび選択的なインヒビタ
ーであり得ることが見出されている(Wagnerら(1996)、Natur
e Biotechnol. 14:840−844を参照のこと)。
【0051】
内因性センス鎖mRNA配列の特定の領域が、アンチセンス配列によって相補
されるために選択される。オリゴヌクレオチドについての特定の配列の選択は、
経験的な方法を使用し、ここではいくつかの候補配列がインビトロでのまたは動
物モデルにおける標的遺伝子の発現の阻害についてアッセイされる。配列の組合
せがまた使用され得、ここではmRNA配列のいくつかの領域がアンチセンス相
補性について選択される。
【0052】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、当該分野において公知の方法によって化
学的に合成され得る(Wagnerら(1993)前出、およびMilliga
nら、前出を参照のこと)。好ましいオリゴヌクレオチドは、それらの細胞内安
定性および結合親和性を増加するためにネイティブなリン酸ジエステル構造から
化学的に改変される。多くのこのような改変は文献において記載されており、こ
れは骨格、糖、または複素環式塩基の化学を変化する。
【0053】
骨格化学における有用な変化には、ホスホロチオエート;ホスホロジチオエー
ト(ここでは、非架橋化酸素の両方が硫黄で置換される);ホスホロアミダイト
;アルキルホスホトリエステル、およびボラノホスフェート(boranoph
osphate)がある。アキラルなリン酸誘導体としては、3’−O’−5’
−S−ホスホロチオエート、3’−S−5’−O−ホスホロチオエート、3’−
CH2−5’−O−ホスホネート、および3’−NH−5’−O−ホスホロアミ
デートが挙げられる。ペプチド核酸は、全体のリボースホスホジエステル骨格を
、ペプチド結合で置換える。糖修飾はまた、安定性および親和性を増強するため
に使用される。デオキシリボースのα−アノマーが使用され得、ここでは塩基が
天然のβ−アノマーに関して反転される。2’−OHのリボース糖は、親和性を
構成することなく分解に対する抵抗性を提供する2’−O−メチルまたは2’−
O−アリル糖を形成するように変化され得る。ヘテロ環式塩基の修飾は、適切な
塩基対合を維持しなければならない。いくつかの有用な置換としては、デオキシ
チミジンについてデオキシウリジン;デオキシシチジンについて5−メチル−2
’−デオキシシチジンおよび5−ブロモ−2’−デオキシシチジンが挙げられる
。5−プロピニル−2’−デオキシウリジンおよび5−プロピニル−2’−デオ
キシシチジンは、それぞれ、デオキシチミジンおよびデオキシシチジンについて
置換される場合、親和性および生物学的活性を増加することが示されている。
【0054】
アンチセンスインヒビターに対する代替物として、触媒的な核酸化合物(例え
ば、リボザイム、アンチセンス結合体など)が、遺伝子発現を阻害するために使
用され得る。リボザイムはインビトロで合成され得、そして患者に投与され得る
か、または発現ベクターにおいてコードされ、標的化細胞において発現ベクター
からリボザイムが合成される(例えば、国際特許出願WO 9523225、お
よびBeigelmanら(1995)、Nucl. Acids Res.
23:4434−42を参照のこと)。触媒活性を有するオリゴヌクレオチドの
例は、WO 9506764において記載される。アンチセンスODNと金属錯
体(例えば、トリピリジル(terpyridyl)Cu(II))との結合体
は、mRNA加水分解を媒介し得、Bashkinら(1995)、Appl.
Biochem. Biotechnol. 54:43−56において記載
される。
【0055】
(LGR4、LGR5、およびLGR7の機能について遺伝子変化された細胞
または動物モデル)
本発明の核酸は、トランスジェニック非ヒト動物を作製するために、または細
胞株において部位特異的遺伝子改変を作製するために使用され得る。トランスジ
ェニック動物は、相同組換えを介して作製され得、ここでは正常なLGR4、L
GR5、またはLGR7遺伝子座が変化される。あるいは、核酸構築物がゲノム
中にランダムに取込まれる。安定な組み込みのためのベクターとしては、プラス
ミド、レトロウイルス、および他の動物ウイルス、YACなどが挙げられる。
【0056】
改変された細胞または動物は、LGR4、LGR5、および/またはLGR7
の機能および調節の研究において有用である。例えば、一連の小さな欠失および
/または置換が、異なるエキソンの役割を決定するために、宿主のネイティブな
LGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子中に作製され得る。興味深いことは
、疾患状態についてのトランスジェニック動物モデルを構築するためのLGR4
、LGR5、またはLGR7の使用である。目的の特異的な構築物としては、ア
ンチセンスLGR4、LGR5、またはLGR7が挙げられ、これはLGR4、
LGR5、またはLGR7の発現、ドミナントネガティブなLGR4、LGR5
、またはLGR7変異の発現、およびLGR4、LGR5、またはLGR7遺伝
子の過剰発現をブロックする。LGR4、LGR5、もしくはLGR7配列が導
入される場合、導入される配列は、宿主に対してネイティブなLGR4、LGR
5、もしくはLGR7遺伝子の完全なもしくは部分的な配列のいずれかであり得
るか、または宿主動物に対して外因性である完全なもしくは部分的なLGR4、
LGR5、もしくはLGR7配列(例えば、ヒトLGR4、LGR5、もしくは
LGR7配列)であり得る。lacZのような検出可能なマーカーが、LGR4
、LGR5、またはLGR7遺伝子座に導入され得、ここではLGR4、LGR
5、またはLGR7発現のアップレギュレーションが、表現型の容易に検出され
得る変化を生じる。
【0057】
LGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子またはその改変体の発現を、これ
が通常発現されない細胞または組識において、このような細胞または組識におい
て通常存在しないレベルで、または発生の異常な時期で提供し得る。LGR4、
LGR5、またはLGR7タンパク質の発現を、これが通常生成されない細胞に
おいて提供することによって、例えば、LGR4、LGR5、またはLGR7媒
介性の活性を介して、細胞挙動の変化を誘導し得る。
【0058】
相同組換えのためのDNA構築物は、LGR4、LGR5、またはLGR7遺
伝子の少なくとも一部分を含み、これは宿主動物の種にネイティブであってもな
くてもよく、ここで遺伝子は所望の遺伝子改変を有し、そして標的遺伝子座に対
して相同性の領域を含む。ランダムな取込みのためのDNA構築物は、組換えを
媒介するための相同性の領域を含む必要はない。便利には、ポジティブおよびネ
ガティブ選択のためのマーカーが含まれる。相同組換えを介して標的される遺伝
子改変を有する細胞を作製するための方法は、当該分野において公知である。哺
乳動物細胞をトランスフェクトするための種々の技術については、Keownら
(1990)、Meth. Enzymol. 185:527−537を参照
のこと。
【0059】
胚性幹(ES)細胞について、ES細胞株が用いられ得るか、または胚細胞が
宿主(例えば、マウス、ラット、モルモットなど)から新鮮に得られ得る。この
ような細胞は、適切な線維芽細胞支持細胞層上で増殖されるか、または白血病阻
害因子(LIF)の存在下で増殖される。ES細胞または胚細胞が形質転換され
ている場合、これらはトランスジェニック動物を生成するために使用され得る。
形質転換後、細胞は適切な培地中の支持細胞層上にプレートされる。構築物を含
有する細胞は、選択的な培地を用いることによって検出され得る。コロニーが増
殖するための十分な時間後、これらは拾い上げられ、そして相同組換えの発生ま
たは構築物の組み込みについて分析される。次いで、ポジティブであるこれらの
コロニーは、胚操作および未分化胚芽細胞注射のために使用され得る。未分化胚
芽細胞は、4〜6週齢の過排卵された雌性から得られる。ES細胞はトリプシン
処理され、そして改変された細胞は未分化胚芽細胞の胞胚腔に注射される。注射
後、未分化胚芽細胞は偽妊娠雌性の各子宮角に戻される。次いで雌性は妊娠期間
を経過され、そして生じた子孫は構築物についてスクリーニングされる。未分化
胚芽細胞および遺伝子改変された細胞の異なる表現型を提供することによって、
キメラ子孫が容易に検出され得る。
【0060】
キメラ動物は、改変された遺伝子の存在についてスクリーニングされ、改変を
有する雄性と雌性がホモ接合型子孫を生成するために交配される。遺伝子変化が
発生のある時点で致死を引き起こす場合、組識または器官が、同種異系もしくは
類遺伝子性の移植片として、またはインビトロ培養物として維持され得る。トラ
ンスジェニック動物は、実験室動物、家畜などのような任意の非ヒト動物であり
得る。トランスジェニック動物は、例えば、LGR4、LGR5、もしくはLG
R7、または関連する遺伝子の活性化などに対する候補薬物の効果を決定するた
めに、機能的な研究、薬物スクリーニングなどにおいて使用され得る。
【0061】
(LGR4、LGR5、またはLGR7の機能についてのインビトロモデル)
G−タンパク質共役型レセプターファミリーにおける多くの成分の利用可能性
は、以前に記載されるように、このファミリーのメンバーが操作するプロセスま
たは系のインビトロでの再構築を許容する。単離されたレセプターおよびその潜
在的なリガンドのような2つ以上の成分は、インビトロで合わされ得、そして挙
動が、特異的な標的配列の転写の活性化;タンパク質成分の改変(例えば、タン
パク質分解性プロセシング、リン酸化、メチル化など);異なるタンパク質成分
の、互いに結合する能力に関して評価される。成分は、特異的なドメインの機能
的な役割を決定するために、配列欠失、置換などによって改変され得る。
【0062】
薬物スクリーニングは、インビトロモデル、遺伝子変化された細胞もしくは動
物、精製されたLGR4、LGR5、もしくはLGR7タンパク質、ならびにそ
れらのフラグメントもしくは部分(例えば、可溶化された細胞外ドメイン)、ま
たはLGR4、LGR5、もしくはLGR7細胞外ドメインを含有するキメラレ
セプタータンパク質を使用して行われ得る。LGR4、LGR5、もしくはLG
R7に結合し、そしてその作用を調節する、リガンドまたは基質を同定し得る。
研究の領域としては、LGR4、LGR5、またはLGR7に関連する異常を有
利に阻止する薬剤の開発、および治療におけるこのような薬剤の使用が挙げられ
る。
【0063】
薬物スクリーニングは、異常な細胞におけるLGR4、LGR5、またはLG
R7の機能の活性を調節する薬剤を同定する。特に興味深いのは、ヒト細胞に低
い毒性を有する薬剤についてのスクリーニングアッセイである。広範に多様なア
ッセイがこの目的のために使用され得、標識化インビトロタンパク質−タンパク
質結合アッセイ、電気泳動移動度シフトアッセイ、タンパク質結合についてのイ
ムノアッセイなどを含む。精製されたタンパク質はまた、三次元結晶構造の決定
のために使用され得、これはGTP結合などのような分子間相互作用をモデリン
グするために使用され得る。
【0064】
本明細書中で使用される場合、用語「薬剤」は、LGR4、LGR5、または
LGR7の生理学的機能を変化または模倣する能力を伴う、任意の分子(例えば
、タンパク質または医薬品)を記載する。一般に、複数のアッセイ混合物が、種
々の濃度に対する異なる応答を得るために異なる薬剤濃度を用いて並行して行わ
れる。典型的に、これらの濃度のうちの1つは、ネガティブコントロールとして
(すなわち、ゼロ濃度でまたは検出レベルを下回って)作用する。
【0065】
いくつかの実施態様において、候補薬剤は、多数の化学クラスを包含するが、
典型的にそれらは有機分子、好ましくは50ダルトンよりも大きくおよび約2,
500ダルトン未満の分子量を有する低有機分子である。候補薬剤は、タンパク
質との構造的な相互作用、特に水素結合のために必要な官能基を含み、および典
型的に少なくともアミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシ
ル基、好ましくは少なくとも2つの官能化学基を含む。候補薬剤はしばしば、環
式炭素またはヘテロ環式構造、および/または1つ以上の上述の官能基で置換さ
れる芳香族もしくは多芳香族(polyaromatic)構造を含む。候補薬
剤はまた、ペプチド、糖、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの
誘導体、構造アナログ、または組合せを含む生体分子中に見出される。
【0066】
候補薬剤は、合成または天然の化合物のライブラリーを含む広範に多様な供給
源から得られる。例えば、ランダム化されたオリゴヌクレオチドおよびオリゴペ
プチドの発現を含む、多数の手段が、広範に多様な有機化合物および生体分子の
ランダムなおよび指向された合成のために利用可能である。あるいは、細菌、真
菌、植物、および動物の抽出物の形態における天然の化合物のライブラリーが利
用可能であるかまたは容易に生成される。さらに、天然のまたは合成的に生成さ
れたライブラリーおよび化合物が、従来の化学的、物理的、および生化学的手段
を介して容易に修飾され、そしてコンビナトリアルライブラリーを生成するため
に使用され得る。公知の薬理学的薬剤が、構造的アナログを生成するために、ア
シル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような指向されたまたはラン
ダムな化学修飾に供され得る。
【0067】
ある実施態様において特に興味深いのは、LGR4、LGR5、またはLGR
7に基づくペプチド剤(例えば、可溶化された細胞外ドメイン、またはLGR4
、LGR5、もしくはLGR7の細胞外ドメインを含有するキメラレセプタータ
ンパク質)であり、ここではこのような薬剤は、内因性LGR4、LGR5、ま
たはLGR7リガンド(例えば、ホルモン)の活性を中和化する。
【0068】
スクリーニングアッセイが結合アッセイである場合、1つ以上の分子が標識に
結合され得、ここでは標識は、直接的にまたは間接的に、検出可能なシグナルを
提供し得る。種々の標識としては、放射性同位体、蛍光剤、化学発光剤、酵素、
特異的な結合分子、粒子(例えば、磁性粒子)などが挙げられる。特異的な結合
分子としては、対(例えば、ビオチンおよびストレプトアビジン、ジゴキシンお
よび抗ジゴキシン)などが挙げられる。特異的な結合メンバーについて、相補的
なメンバーが、公知の手順に従って、検出を提供する分子で通常標識される。
【0069】
多様な他の試薬が、スクリーニングアッセイにおいて含まれ得る。これらとし
ては、塩、中性のタンパク質(例えば、アルブミン)、界面活性剤などのような
試薬が挙げられ、至適なタンパク質−タンパク質結合を促進するためにおよび/
または非特異的なもしくはバックグラウンドの相互作用を減少するために使用さ
れる。プロテアーゼインヒビター、ヌクレアーゼインヒビター、抗微生物剤など
のような、アッセイの効率を改善する試薬が使用され得る。成分の混合物が、必
要とされる結合を提供する任意の順序において添加される。インキュベーション
は、任意の適切な温度で、典型的に4℃と40℃との間で行われる。インキュベ
ーション期間は、至適な活性について選択されるが、迅速な高処理量のスクリー
ニングを容易にするためにまた至適化され得る。典型的に0.1時間と1時間と
の間で十分である。
【0070】
目的の他のアッセイは、LGR4、LGR5、またはLGR7の機能を模倣す
る薬剤を検出する。例えば、LGR4、LGR5、またはLGR7遺伝子を含有
する発現構築物は、発現を許容する条件下で細胞株に導入され得る。LGR4、
LGR5、またはLGR7の活性のレベルは、以前に記載されるような機能的な
アッセイによって決定される。1つのスクリーニングアッセイにおいて、LGR
4、LGR5、またはLGR7の機能を阻害または増強する候補薬剤の能力が決
定される。あるいは、候補薬剤は、機能的なLGR4、LGR5、またはLGR
7を欠損する細胞に添加され、そして機能的なアッセイにおいてLGR4、LG
R5、またはLGR7の活性を再現する能力についてスクリーニングされる。
【0071】
所望の薬理学的活性を有する化合物は、生理学的に受容可能なキャリア中で、
処置などのために宿主に投与され得る。化合物はまた、LGR4、LGR5、ま
たはLGR7の機能を増強するために使用され得る。阻害剤は、多様な方法にお
いて、経口的に、局所的に、非経口的に(例えば、皮下に、ウイルス感染によっ
て腹腔内に、静脈内などに)、投与され得る。局所的な処置は特に興味深い。導
入の様式に依存して、化合物は多様な方法において処方され得る。処方物中の治
療学的に活性な化合物の濃度は、約0.1〜100重量%で変化し得る。
【0072】
薬学的組成物は、顆粒、錠剤、丸剤、坐薬、カプセル化剤、懸濁液、軟膏、ロ
ーションなどのような種々の形態において調製され得る。経口および局所の使用
に適切な薬学的等級の有機もしくは無機キャリアおよび/または希釈剤が、治療
学的に活性な化合物を含有する組成物を作製するために使用され得る。当該分野
において公知の希釈剤としては、水性媒体、植物および動物油、ならびに脂肪が
挙げられる。安定化剤、湿潤剤、および乳化剤、浸透圧を変化するための塩、ま
たは適切なpH値を確保するための緩衝液、および皮膚透過エンハンサーが、補
助剤として使用され得る。
【実施例】
【0073】
(実施例)
以下の実施例は、本発明をどのように行いそして使用するのかの完全な開示お
よび記載を、当業者に提供するために記載され、ならびに本発明とみなされる範
囲を制限することは意図されない。使用される数字(例えば、量、温度、濃度な
ど)に関して正確さを確実にするために努力がなされたが、いくつかの実験誤差
および偏差が許容されるべきである。他で示さない限り、部は重量部であり、分
子量は平均分子量であり、温度は摂氏においてであり;および圧力は大気圧であ
るかまたはそれに近い。
【0074】
(実施例1.LGR4およびLGR5の同定)
イソギンチャクおよびショウジョウバエの糖タンパク質ホルモンレセプターに
関連されるヒト配列を、BLOSUM62タンパク質比較マトリクス(Alts
chul SFら、Nucleic Acids Res.(1997)25:
3389−3402)を用いるBLASTサーバーを使用することによって、N
ational Center for Biotechnology Inf
ormationにて発現配列タグデータベース(dbEST)から同定した。
性腺刺激ホルモンレセプターの2つの重複しない領域に高い相同性を示すヒトE
STを同定した。クローンAA312798およびAA298810は、推定の
レセプターLGR4の膜貫通4〜5をコードし、一方AA460529およびA
A424098は、推定のレセプターLGR5の膜貫通2〜3をコードすること
がすることが見出された。GenBank EST部門データベースをさらにサ
ーチするためにこれらのESTを使用して、重複するEST配列をアラインして
、これらのレセプターについての最も長いオープンリーティングフレーム(OR
F)を得た。
【0075】
最も長いヒトORFに基づいて、特異的なプライマーを、ラット卵巣およびヒ
ト胎盤からのLGR4およびLGR5 cDNAフラグメントのPCR増幅のた
めにそれぞれ設計した。標識化ESTクローンとのハイブリダイゼーションおよ
びダイデオキシDNA配列決定によるDNA配列の確認後、単離された特異的な
レセプターフラグメントを使用して、特異的なレセプターcDNAで富化された
サブ−cDNAライブラリーを調製するためのプライマーを設計した。5’伸長
について、逆転写を、ラット卵巣およびヒト胎盤 mRNA調製物ならびにレセ
プター特異的プライマーを使用して行った。第2鎖の合成後、富化されたcDN
Aプールを5’末端にて、特異的なアダプター配列でテイル化して、さらなるP
CR増幅を許容した。3’伸長について、ラット卵巣またはヒト胎盤 mRNA
をオリゴ−dTを使用して逆転写し、その後レセプター特異的プライマーを使用
して第2鎖を合成し、そしてアダプターテイル化した。これらのミニライブラリ
ーを、内部プライマーを使用する各レセプターに特異的なcDNAの上流および
下流のPCR増幅のための鋳型としてさらに使用した。各レセプターcDNAフ
ラグメントに対して強力なハイブリダイゼーションシグナルを有するPCR産物
を、pUC18またはpcDNA3ベクターにサブクローン化した。特異的なレ
セプタープローブを使用するコロニーハイブリダイゼーションに基づくこれらの
サブライブラリーのスクリーニング後、推定のレセプターの5’または3’配列
を有するクローンを同定し、そしてDNA配列決定のために単離した。必要とさ
れる場合、この手順を3回まで繰返し、配列解析のためにおよび真核生物細胞に
おけるレセプタータンパク質の発現のために、各推定のレセプター完全なORF
をコードするcDNAを作製した。各遺伝子の完全なコード配列はまた、独立し
た実験において全ORFに隣接する特異的なプライマーを用いて増幅した。少な
くとも3つの独立したPCRクローンを配列決定し、コード配列の真正さを確証
した。LGR4のヌクレオチド配列、ならびにそのORFによってコードされる
産物のアミノ酸配列が、図1において提供される。LGR5のヌクレオチド配列
、ならびにそのORFによってコードされる産物のアミノ酸配列が、図2におい
て提供される。
【0076】
(実施例2.LGR4および5 cDNAの推定のアミノ酸配列と、FSHお
よびLHレセプターをコードするcDNAの推定のアミノ酸配列との比較)
LGR4およびLGR5と、公知のヒト糖タンパク質ホルモンレセプターとの
配列アラインメントを行い、そしてその結果が図6において示される。網掛けさ
れた残基は、示される4つのレセプタータンパク質のうちの少なくとも2つにお
いて同一である。
【0077】
(実施例3.異なる組識におけるLGR4およびLGR5 mRNA転写産物
の発現パターン)
ノーザンブロット解析について、異なるヒト組識由来のポリ(A)+選択され
たRNAを、32P−標識化cDNAプローブでハイブリダイズした。洗浄後、ブ
ロットをX線フィルムに−70℃で5日間露光した。β−アクチンcDNAプロ
ーブとのその後のハイブリダイゼーションを、核酸ロード量を見積もるために行
った(8時間の曝露)。LGR4は、胎盤、卵巣、精巣、副腎、脊髄、甲状腺、
胃、気管、心臓、膵臓、腎臓、前立腺、および脾臓において発現されることが示
され、一方LGR5は、骨格筋、胎盤、脊髄、脳、副腎、結腸、胃、卵巣、およ
び骨髄において発現されることが示された。
【0078】
(実施例4.ヒトにおけるLGR4および5の染色体局在)
LGR4(>100kb)およびLGR5(>100Kb)のゲノムフラグメ
ントをプローブとして使用して、これらの遺伝子の染色体局在は、FISH法を
使用して、それぞれ、染色体5q34−35.1および12q15におけるバン
ド様のDNAに検出された。
【0079】
(実施例5.LGR7の同定)
ESTデータベースの解析は、マキガイ由来のGタンパク質共役型レセプター
(Lymnaea Stagnalis、アクセス番号481946)に密接に
関連される新規なLGRを示した。マキガイのG−タンパク質共役型のレセプタ
ーは、哺乳動物LGRに特徴的なロイシンリッチ反復エクトドメインおよび7回
膜貫通領域を共有するので、新規なEST配列はマキガイレセプターの相同体ま
たは新規な哺乳動物LGRのいずれかをコードし得る。LGR7 cDNAの単
離のために、Clontch Marathon−readyの精巣cDNAプ
ールをアダプターおよび遺伝子特異的プライマーを用いる5’および3’RAC
Eのための鋳型として使用した。RACE産物の配列解析は、LGR7遺伝子が
、N末端で異なる少なくとも2つのスプライシング改変体をコードすることを示
した。長い改変体のヌクレオチド配列、ならびにそのORFによってコードされ
る産物のアミノ酸配列は、図3において提供され;一方短い改変体のヌクレオチ
ド配列、ならびにそのORFのアミノ酸配列は、図4において提供される。両方
の改変体は、伝統的なC末端7回膜貫通領域および他の哺乳動物LGRにおいて
見出されるシステインリッチ領域に隣接されるロイシンリッチ反復エクトドメイ
ンを含む。長い形態のLGR7は、短い形態のLGR7に比較してN末端のシス
テインリッチ領域において余分に35アミノ酸を含む。興味深いことに、いずれ
の改変体からのLGR7 ORFの解析も、その3次構造が、膜貫通領域におい
て最も優れた同一性を共有するマキガイレセプターの代わりに哺乳動物LGRの
3次構造に類似することを示した。これらの知見は、LGR7およびマキガイレ
セプターが、進化の間の初期に分化し、そしてLGR7はおそらく高等生物体に
おける新規な機能に適合したことを示唆する。
【0080】
LGR7 cDNA配列に基づいて、GenBankのゲノム調査配列部門に
おいて、本発明者らはさらに、LGR7遺伝子の部分を含むヒトゲノムDNAフ
ラグメント(AQ053279)を同定した。このゲノムクローンの真正さを、
サザンブロットハイブリダイゼーションによって確認し、そしてゲノムクローン
をプローブとして使用して、LGR7遺伝子についての染色体局在を同定した。
【0081】
3つの新規な哺乳動物G−タンパク質共役型のレセプター、ならびにこれをコ
ードする核酸が、本発明によって提供されることは、上述の考察および結果から
明らかである。上記される本発明は、研究および治療学的適用を含む多様な適用
における使用を見出す。
【0082】
本明細書中に引用される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物また
は特許出願が具体的におよび個々に参考として援用されることが示されるかのよ
うに、本明細書中に参考として援用される。本明細書中で考察される刊行物は、
それらの開示が本出願の出願日の前であるものについてのみ提供される。先行の
発明により、本発明がこのような開示に先行する権利を与えられないということ
の承認として、本明細書中で解釈されるべきものはない。
【0083】
上述の発明は、理解の明瞭の目的のために説明および例示の手段としていくら
か詳細に記載されたが、ある変化および改変が、添付の請求の範囲の趣旨または
範囲から逸脱することなくそれらになされ得ることが、本発明の技術を考慮して
当業者に容易に明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【公開番号】特開2010−166923(P2010−166923A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51174(P2010−51174)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【分割の表示】特願2000−537903(P2000−537903)の分割
【原出願日】平成11年3月25日(1999.3.25)
【出願人】(591148484)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (8)
【出願人】(509347697)
【Fターム(参考)】