説明

細胞生命力の決定方法および装置

本発明は、細胞生命力の決定方法および装置に関する。方法は、生きている細胞(15)が磁気粒子(4)に結合され、センサアレイ(14)上に供給され、センサアレイ(14)の上方に一様に分布され、細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)の上方に磁気的に固定され、細胞生命力を維持および/または改善する物質がセンサアレイ(14)上に供給され、および/または細胞生命力を低下させる物質がセンサアレイ(14)上に供給されるステップを含む。装置は流体に直接的に流体接触するように配置されているセンサ(17)から構成されたセンサアレイ(14)と、そのセンサアレイ(14)の上方に磁場(5)を発生する装置とを有する。センサアレイ(14)上に磁気粒子(4)と生きている細胞(15)とを含む層が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞生命力の決定方法および装置に関する。この方法は、生きている細胞が磁気粒子に結合され、センサアレイ上に供給され、センサアレイの上方に一様に分布され、細胞を結合されて磁気粒子がセンサアレイの上方に磁気的に固定され、細胞生命力を維持および/または改善する物質がセンサアレイ上に供給され、および/または細胞生命力を低下させる物質がセンサアレイ上に供給されるステップを含む。装置は流体に直接に流体接触するように配置されているセンサから構成されたセンサアレイと、センサアレイの上方に磁場を発生する装置とを含む。
【背景技術】
【0002】
マイクロ生物学において、培養細胞および抗生物質の耐性テストに基づいて病原菌を検査するための多くの方法が知られている。例えば成長もしくは細胞成長抑制のような作用が検査される「表現型の」評価が有利である。培養細胞に対する作用を介して人間又は動物に対する作用との直接的な関係が得られる。その場合に培養細胞が培養液中で数日間にわたって例えばペトリ皿の中に入れられて観察される。培養細胞の成長もしくは損傷が長時間にわたって測定されて評価される。観察に必要な長い時間がこの方法を非常に高価にし、手間をかけさせる。
【0003】
培養細胞の成長もしくは損傷を測定するためにセンサシステムを使用するとよい。生きている細胞が、例えばセンサ上で成長させられる。これは、それに基づいて細胞の生命力を、例えばインピーダンス、酸素又はpH値の測定によって監視するためである。センサとして、インターディジタル電極アレイ、酸素センサ又はpH値センサを使用するとよい。細胞の生命力に対する尺度は、とりわけ表面への細胞の接着、細胞の呼吸又は細胞の物質代謝である。しかし、センサ上での細胞成長は時間がかかり、センサシステムの貯蔵性を制限する。センサ上で成長した細胞は表面上で移動および/または壊死し得る。
【0004】
細胞の生命力を酸素値又はpH値により測定するためには、細胞壁とセンサ表面との間に規定の液体膜が必要である。センサ表面上で細胞壁が直接的に成長する場合には、その規定の液体膜が失われることがある。これは測定が不可能になるほど測定の妨げることがある。
【0005】
信頼性のある測定のためには、更にセンサ表面が壊死細胞によってふさがれないことが必要である。この理由から各処理もしくは測定インターバルの前に壊死細胞がセンサ表面から取り除かれなければならない。これは一般に試薬により行なわれが、これが費用につながり、しかもセンサ表面の損傷を招き得る。それによって対比可能で再現可能な測定が妨害される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の課題は、細胞生命力にとって典型的であるパラメータの迅速かつ簡単な信頼性のある測定を可能にする細胞生命力の決定方法および装置を提供することにある。その際に、例えば表面上での細胞の移動のような誤差要因又は細胞とセンサ表面との間の液体膜なしの直接的な成長による測定誤差を回避すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、細胞生命力の決定方法に関しては請求項1の特徴によって解決され、細胞生命力の決定装置に関しては請求項9の特徴によって解決される。
【0008】
本発明による方法および装置の有利な実施形態はそれぞれに付属した従属請求項からもたらされる。主請求項の特徴を従属請求項の特徴と組み合わせることができ、また従属請求項同士の特徴を組み合わせることができる。
【0009】
本発明による細胞生命力の決定方法は、生きている細胞が磁気粒子に結合されるステップと、細胞を結合されて磁気粒子がセンサアレイの上に供給されるステップと、細胞を結合されて磁気粒子がセンサアレイの上方に一様に分布されるステップと、細胞を結合されて磁気粒子がセンサアレイの上方に磁気的に固定されるステップと、細胞生命力を維持および/または改善する物質がセンサアレイ上に供給されるステップとを含む。更に、細胞生命力を低下させる物質がセンサアレイ上に供給されるステップを含むとよい。
【0010】
生きている細胞を磁気粒子に結合することによって、外部の磁場により細胞の移動を制御することができる。特に磁気粒子がナノメートルからマイクロメートルの範囲の直径を有する場合、例えば抗体によって細胞を磁気粒子に結合することができる。数百マイクロメートル範囲の直径を有する比較的大きい粒子の場合には細胞が粒子の表面上でも成長することができる。結合後に細胞を貯蔵容器内に中間貯蔵するとよい。生きている細胞の細胞生命力を測定するために、細胞をセンサアレイの上方へ移動し、そこに磁気的に固定する。移動は、例えば流動する液体又は磁気的な相互作用によって行なわせるとよい。磁気的にセンサの上方に固定されている細胞を測定するとよい。そのために細胞生命力を維持および/または改善する物質、および/または細胞生命力を低下させる物質が使用される。
【0011】
細胞を操作するための磁気粒子の使用は、細胞の需要に即した使用およびセンサアレイへの生きている細胞の迅速な信頼性のある供給を可能にする。例えば前もって用意されて貯蔵容器内に貯蔵された生きている細胞が、例えば環境有毒物質の測定を行なう際に適時にセンサアレイに供給されるとよい。代替として、例えば血液から特定の細胞を磁気粒子への結合によるフィルタ作用で取り出し、磁気粒子により的確にセンサアレイに供給することができる。これは、例えばピペットによる操作によって又は特定の培養液上での数日にわたる細胞培養による増殖によって行なわれるよりも簡単に低コストで行なうことができる。
【0012】
細胞生命力を維持および/または改善する物質は酸素および/または培養液を含む。細胞生命力を低下させる物質は抗生物質を含む。これらの物質は測定時に的確に一度だけ又は間隔をおいて交互にセンサアレイ上に与えられ、その際に細胞の代謝産物の変化が測定されるとよい。これは、細胞生命力に関する信頼性のある迅速な検証を可能にし、ペトリ皿内の培養液中の個々の培養細胞の細胞成長を光学的に観察するよりも低コストで時間を節減することができる。
【0013】
方法の1つのステップにおいて細胞生命力のための最適な温度、特に37℃が設定されるとよい。この温度の場合には、細胞の変換された代謝産物の測定信号又は細胞の代謝反応の出発物質の取り出しが格別に大きく、従って簡単に測定することができる。
【0014】
センサアレイのセンサは電気化学的および/または化学的センサを含み得る。これらが、特に細胞生命力の尺度として使用される測定値を測定するように設計されているとよい。電気化学的測定の場合には、光学的測定と違って、不透明の磁気粒子が測定を妨害しない。電気化学的センサは非常に小さく低コストでアレイ形式に製作することができ、信頼性のある測定結果を提供することができる。電気化学センサの電流−電圧信号の純粋に電気的な解析が、例えば光学的測定の場合よりも簡単に低コストで実現することができる。
【0015】
センサの測定量として、細胞によって消費される物質および/または細胞の代謝産物、特にpH値としての酸および/またはpO2値としての酸素および/またはタンパク質が測定されるとよい。これらの量は1つの細胞の生命力についての明確な測定量である。例えば1つの細胞の代謝によってその細胞の周囲の酸素が変換される。それゆえ、その細胞の直接周囲における酸素の減少はその細胞の生命力に関する尺度である。
【0016】
センサアレイの上方において磁気粒子に結合している細胞が、必要ならば、特にアレイの上方における磁場の操作により取り除かれるとよい。それによってセンサを再生させて、次の測定のために準備することができる。死んだ細胞は、それらを取り除かなければ、センサの機能を失わせ、測定結果の質を落とし、又は測定を全く不可能にする。死んだ細胞は、センサアレイによる測定によって識別可能であり、磁場を介して的確に運び去ることができる。まさに環境有毒物質の測定および長時間にわたるセンサ機能に関しては、死んだ細胞の搬出およびそれによって行なわれるセンサの再生は有意義である。
【0017】
死んだ細胞が取り除かれるステップの後に、生きている細胞が磁気粒子に結合されるステップ、細胞を結合されて磁気粒子がセンサアレイ上に供給されるステップ、細胞を結合されて磁気粒子が個々の細胞の確実かつ的確な測定のためにセンサアレイの上方に一様に分布されるステップ、細胞を結合されて磁気粒子がセンサアレイの上方に磁気的に固定されるステップ、細胞生命力を維持および/または改善する物質がセンサアレイ上に供給されるステップ、および/または細胞生命力を低下させる物質がセンサアレイ上に供給されるステップが繰り返されるとよい。それによって、長時間にわたる測定が可能となり、あるいは種々の測定のために1つのセンサアレイを繰り返し使用することが可能となる。
【0018】
本発明による細胞生命力の決定装置は、流体に直接に流体接触するように配置されているセンサから構成されたセンサアレイと、そのセンサアレイの上方に磁場を発生する装置とを含む。そのセンサアレイ上には、磁気粒子と生きている細胞とを同時に含む層が形成されている。本発明による装置は既述の方法を実施するために使用されるとよい。
【0019】
その場合に、生きている細胞がセンサアレイ上における前記層内の磁気粒子のマトリックス(母体)中に埋め込まれているとよい。これは、少なくとも幾つかの又は全ての細胞が直接にセンサ上で成長するのではなく、細胞とセンサとの間に液体膜が配置されていることを保証する。これが細胞の生命力の確実な測定をやっと可能にする。細胞とセンサ表面との間に液体膜がなければ、反応生成物又は出発物質濃度もしくはその変化の信頼性のある記録が不可能である。センサ表面上での全ての細胞の直接の成長を防止するために、磁気粒子がいわば細胞のためのスペーサとして利用されている。
【0020】
センサアレイ上における磁気粒子と生きている細胞とを含む前記層がセンサアレイ領域にわたってほぼ一様な厚さを有するとよい。特に層厚がマイクロメートル範囲にあるとよい。格別に好ましくは層厚が10〜1000マイクロメートルの範囲にあるとよい。一様な層厚によって、個々のセンサの上方への細胞の堆積が防止され、マイクロメートル範囲の厚さの場合には、センサ同士の間隔が相応に僅かであるならば、粒子マトリックス内の細胞は最も近いセンサに対して十分に近いところに存在し、それにより細胞代謝の産物又は細胞代謝の出発物質の減少をセンサによって記録することができる。「ほぼ一様な厚さ」とは、丸い粒子群のでこぼこ(非平坦性)と、一部における粒子数の僅かな変動による層表面の波とに起因する10%よりも少ない範囲内の若干の変動があり得ることを意味する。
【0021】
生きている細胞とセンサアレイのセンサとの間に、磁気粒子からなり細胞を通さない少なくとも1つの層が配置されているとよく、これはセンサ表面上で直接に成長する細胞がないことを保証する。特に、電気化学的測定を可能にするために、磁気粒子間の空所が液体で満たされているとよい。センサアレイは、生きている細胞を有する層がセンサアレイ上に形成される前に、磁気粒子からなり細胞を通さない層により覆われるとよい。層全体の形成を2段階に分けることは細胞の生命力測定の信頼性を高める。何故ならば、細胞が、磁気粒子からなり細胞を通さない層の中に堆積せず、かつセンサ表面上で直接的に成長しないことが保証されているからである。
【0022】
この本発明による装置が、支持体を有する貫流通路を含み、その支持体の表面上にセンサアレイが貫流通路に流体的に接続されて配置されているとよい。
【0023】
センサアレイのセンサが電気化学的センサであり、特にセンサアレイの表面における1つのセンサの総占有スペースがマイクロメートル範囲にあるマイクロセンサであるとよい。それにより、1つのセンサのサイズが1つの細胞の範囲内にあることと、1つのセンサの測定信号を1つの細胞に割り当てることとが可能になる。1つの細胞の物質代謝が、マイクロメートル範囲のサイズを有するセンサによって測定できる領域内で行われる。遙かに大きい、例えばミリメートルのサイズにあるセンサは、1つの細胞の直接周囲において細胞代謝によって引き起こされるのと同程度の少ない濃度変化を確実に測定できない。電気化学的センサの使用は、マイクロメートル範囲のセンサの構成をはじめて可能にし、透明でない粒子の場合にも信頼性のある測定信号を供給する。
【0024】
本発明による装置が、磁場を変化させる少なくとも1つの装置を含むとよい。これはコイル装置および/または永久磁石式移動装置を含み得る。それによって、センサアレイの上方に磁気粒子の一様な層が形成されるように磁場を形成することができる。例えば永久磁石の回転又は電流の流れの遮断による磁場遮断の際に、上方における磁気粒子の固定およびそれにともなう細胞の固定が解除され、死んだ又は損傷した細胞がセンサアレイから排除され、もしくは運び出されるとよい。例えばコイル中の電流の流れを再投入するか、又は磁気粒子もしくは磁気ビーズを固定するための磁場が生じる位置に永久磁石を復帰させることによって、改めて新たな新鮮な細胞をセンサアレイの上方へ固定することができる。それにより、生きている細胞を有するセンサアレイを新たな測定のために使用することができる。
【0025】
細胞生命力の決定装置に関連する利点は細胞生命力の決定方法に関して既に述べた利点に類似している。
【0026】
以下において、図面に基づいて、従属請求項に記載の特徴に従った有利な発展的構成を有する本発明の好ましい実施形態を更に詳細に説明する。しかし、本発明はそれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は磁場の発生装置と磁気粒子の固定装置とを有する従来技術による貫流セルの断面図である。
【図2】図2はセンサアレイ上方に細胞を有する磁気粒子を固定するために磁場を発生および変化させる装置を有する貫流セルの断面図である。
【図3】図3は図2に示された磁場を発生および変化させる装置と共に磁気粒子マトリックス内の細胞の一様な層を有する貫流通路の拡大図である。
【図4】図4は図3に示されたセンサアレイ上の磁気粒子マトリックス内の細胞の一様な層の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、従来技術に基づく貫流セル1の断面が示されている。貫流セル1は、液体が流れ方向3に貫流する貫流通路2を含む。液体は、例えばDNA断片を結合し得る個別の磁気粒子もしくは磁気ビーズを有する。貫流通路2は磁場5,5'を発生する装置によって取り囲まれている。即ち、貫流通路2の上方および下方に永久磁石が取り付けられている。貫流通路2の直ぐ上方および下方のミューメタル体6,6’により、永久磁石5,5’の磁場(磁力線7により示されている)が、貫流通路2内の小さな領域に集中させられる。
【0029】
貫流通路2内に最大の磁場密度8を有する位置が生じ、この位置に流体中の磁気ビーズ4が集められて固定される。貫流通路2の上方および下方に配置されている冷却体9,9’と、熱結合板11,11’に熱結合されて同様に貫流通路2の上方および下方に配置されているペルチエ素子10,10’とを介して、貫流通路2内において最大の磁場密度8を有する位置で温度が制御又は調節される。例えば、磁気ビーズに結合されたDNA断片は、2つの温度間の時間的なランプ(ramp)の形での温度変化によってPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)により増幅される。
【0030】
図2には本発明による細胞生命力の測定装置の断面図が一実施例に基づいて示されている。貫流通路2が2つの永久磁石5,5’間に配置されている。例えば回転可能なステッピングモータ内に存在し得る、磁場を変化させる装置16(図示されていない)が、一方の永久磁石5’に接続されている。図2Aでは、貫流通路2の内部において磁場が存在する位置に永久磁石5’がある。貫流通路内の磁気粒子4は磁場によって永久磁石5と永久磁石5’との間の領域内に固定され集められる。この領域内にはチップ13を有するチップモジュール12が配置され、このチップ13上には貫通通路2に流体接触するセンサアレイ14がある。従って、磁場によって、液体が流れている際に、磁気粒子4とこれらの磁気粒子4に結合されている細胞15とがセンサアレイ14の上方に磁気的に固定される。
【0031】
図2Bでは、液体が停止状態にあり、永久磁石5’が図2Aの位置に対して90°回転され、それにより貫流通路2内には永久磁石5’によって生じる磁場が存在しない。磁力線7は、永久磁石5から永久磁石5’に向かって貫流通路2を透過する経路を持たない。磁気粒子4および細胞15は、例えばセンサアレイ上での環状の液体流れによって、又は拡散もしくは対流によって、センサアレイ上を自由に移動して再分布する。
【0032】
図2Cでは、液体が停止状態にあり、永久磁石5’が再び、図2Aに示す元の位置に回転されている。貫流通路2内のセンサアレイ14の上方の領域には磁場が生じ、この磁場の磁力線7は互いにほぼ一様な間隔を有する。センサアレイ14の上方の一様な磁場分布は磁気粒子4のほぼ一様な厚さの層を形成し、その層の中に細胞15が埋め込まれている。磁気粒子4は一種のマトリックス(母体)をなし、このマトリックス中において細胞15がセンサアレイ14の上方に固定されている。
【0033】
図3には、センサアレイ14の上方の貫流通路2内に可変磁場を形成する代替実施例が示されている。永久磁石5が磁場形成要素16の下方に配置されている。磁場形成要素16は、例えば磁化可能な鉄からなり、センサアレイ14の上方の貫流通路2内に特に一様な磁場を形成する外形を有する。図3に示された例においては、磁界形成要素16のセンサアレイ14に向いた側の面が丸く形成されている。センサアレイ14の上方において一様に形成された磁場は、センサアレイ14の上方に、細胞15が埋め込まれ磁気粒子4からなるほぼ一様な厚さの層を形成する。永久磁石5を移動可能に配置し、永久磁石5を磁場形成要素16から遠ざけたら、貫流通路内の磁場が「遮断」される。磁場形成要素16に永久磁石5を再び近づけたら、貫流通路内に磁場が再び「投入」される。永久磁石5および/または磁場形成要素16の代替として、コイルの通電時に制御可能又は調節可能な磁場を発生する電気コイルをセンサアレイ14の近くに配置してもよい。
【0034】
図4には、図2Cおよび図3に示されセンサアレイ14の上方において細胞15を埋め込んだ磁気粒子4のほぼ一様な厚さの層の拡大図が示されている。磁気粒子14のマトリックス内には常に細胞が存在し、これらの細胞は最も近くに置かれたセンサ17に対して空間的な間隔をもって配置されている。このことは、これらの細胞15が直接にセンサ17上で成長せず、これらの細胞15とセンサ17との間に液体膜が存在又は配置されていることを保証する。それによってセンサ17による細胞生命力の信頼性のある電気化学的測定がはじめて可能となる。細胞15は、磁気粒子のマトリックス内に埋まって固定されているために移動できない。細胞15を有する磁気粒子4の層をマイクロメートル範囲の厚さで形成し、かつそれぞれ隣接センサに対するセンサ17間の間隔がマイクロメートル範囲となるようにセンサ17をアレイの形に配置するならば、細胞15の周囲において細胞15によって測定量が変化する領域18が、少なくとも1つのセンサ17に接触することが保証されている。細胞15の周囲における測定量変化領域18は、例えば酸素の拡散距離であるとよい。生きている細胞15は物質代謝の際に酸素を消費し、酸素濃度の変化を領域18においてセンサ17によって測定することができる。
【0035】
細胞が測定によって損傷又は壊死した場合には、これらの細胞を磁場の遮断と流体の流れの投入とによって簡単に運び去ることができる。新鮮な生きている細胞15を有する磁気粒子4の新たな層をセンサアレイ14の上方に形成して、装置を更なる測定のために使用することができる。それによって、例えば、日、週、月のような長時間にわたる間隔で測定を実施することができる再生可能なセンサ装置が得られる。
【符号の説明】
【0036】
1 貫流セル
2 貫流通路
3 流れ方向
4 磁気粒子(磁気ビーズ)
5,5’ 磁場
6,6’ ミューメタル体
7 磁力線
8 最大磁場密度位置
9 冷却体
10 ペルチエ素子
11 熱結合板
12 チップモジュール
13 チップ
14 センサアレイ
15 細胞
16 磁場形成要素
17 センサ
18 測定量変化領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている細胞(15)が磁気粒子(4)に結合されるステップと、
細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)の上に供給されるステップと、
細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)の上方に一様に分布されるステップと、
細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)の上方に磁気的に固定されるステップと、
細胞生命力を維持および/または改善する物質がセンサアレイ(14)上に供給されるステップと、
細胞生命力を低下させる物質がセンサアレイ(14)上に供給されるステップと、
を有する細胞生命力の決定方法。
【請求項2】
細胞生命力を維持および/または改善する物質に酸素および/または培養液が含まれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
細胞生命力を低下させる物質に抗生物質が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
方法の1つのステップにおいて細胞生命力のための最適な温度、特に37℃が設定されることを特徴とする請求項1乃至3の1つに記載の方法。
【請求項5】
センサアレイ(14)のセンサ(17)により電気化学的および/または化学的測定、特に細胞生命力の尺度として使用される測定値の測定が行なわれることを特徴とする請求項1乃至4の1つに記載の方法。
【請求項6】
細胞によって消費される物質および/または細胞の代謝産物、特にpH値としての酸および/またはpO2値としての酸素および/またはタンパク質が測定されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
センサアレイ(14)の上方において磁気粒子(4)に結合している細胞(15)が必要なときに、特に磁場の操作により取り除かれることを特徴とする請求項1乃至6の1つに記載の方法。
【請求項8】
センサアレイ(14)の上方において磁気粒子(4)に結合している細胞(15)が取り除かれるステップの後に、生きている細胞(15)が磁気粒子(4)に結合されるステップ、細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)上に供給されるステップ、細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)の上方に一様に分布されるステップ、細胞(15)を結合されている磁気粒子(4)がセンサアレイ(14)の上方に磁気的に固定されるステップ、細胞生命力を維持および/または改善する物質がセンサアレイ(14)上に供給されるステップ、および/または細胞生命力を低下させる物質がセンサアレイ(14)上に供給されるステップが繰り返されることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
流体に直接的に流体接触するように配置されているセンサ(17)から構成されたセンサアレイ(14)と、そのセンサアレイ(14)の上方に磁場(5)を発生する装置とを備え、特に請求項1乃至8の1つに記載の方法を実施するための細胞生命力の決定装置において、前記センサアレイ(14)上に、磁気粒子(4)と生きている細胞(15)とを含む層が形成されていることを特徴とする細胞生命力の決定装置。
【請求項10】
前記生きている細胞(15)は、センサアレイ(14)上の前記層内の磁気粒子(4)のマトリックス内に埋め込まれていることを特徴とする請求項9記載の装置。
【請求項11】
センサアレイ(14)上における磁気粒子(4)と生きている細胞(15)とを含む前記層は、センサアレイ(14)の領域にわたってほぼ一様な厚さ、特に10〜1000マイクロメートルの範囲の厚さを有することを特徴とする請求項9又は10記載の装置。
【請求項12】
生きている細胞(15)とセンサアレイ(14)のセンサ(17)との間に、磁気粒子(4)からなり細胞を通さない少なくとも1つの層が配置され、特に磁気粒子(4)間の空所が液体で満たされていることを特徴とする請求項9乃至11の1つに記載の装置。
【請求項13】
前記装置は支持体を有する貫流セル(1)を含み、その支持体の表面上に、センサアレイ(14)が貫流セル(1)に流体的に接続されて配置されていることを特徴とする請求項9乃至12の1つに記載の装置。
【請求項14】
センサアレイ(14)のセンサ(17)が電気化学的センサ(17)であり、特にセンサアレイ(14)の表面における1つのセンサ(17)の総占有スペースがマイクロメートル範囲にあるマイクロセンサであることを特徴とする請求項9乃至13の1つに記載の装置。
【請求項15】
磁場(16)を変化させる少なくとも1つの装置を含む、特にコイル装置および/または永久磁石移動装置を含むことを特徴とする請求項9乃至14の1つに記載の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−506406(P2013−506406A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531414(P2012−531414)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064483
【国際公開番号】WO2011/039271
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】