説明

細胞膜透過性ペプチド

本発明は、細胞膜透過性ペプチド、有効成分として細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性担体、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックス、細胞膜透過性ペプチドおよび標的物質を含むトランスフェクションキット、膜透過性コンプレックスの製造における細胞膜透過性ペプチドの使用、医薬の製造における膜透過性コンプレックスの使用、および膜透過性コンプレックスの細胞内部への形質導入を誘導するために標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスを対象に投与することを特徴とする細胞内部への標的物質の輸送方法、を提供する。本発明の細胞膜透過性ペプチドは以前のTAT由来ペプチドの活性に比べて顕著な透過能を有しており、そのため、該ペプチドは高い効率で薬剤を標的とすることが必要とされる特定の疾病の治療だけでなく、様々な研究分野における細胞内輸送に応用される。それ故に、細胞膜透過性ペプチド、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドおよび本発明の膜透過性コンプレックスを用いた細胞内への標的物質輸送方法は、ドラッグデリバリーシステムとしてとても有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞膜透過性ペプチド、有効成分として細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性担体、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックス、細胞膜透過性ペプチドおよび標的物質を含むトランスフェクションキット、膜透過性コンプレックスの製造における細胞膜透過性ペプチドの使用、医薬の製造における膜透過性コンプレックスの使用、および膜透過性コンプレックスの細胞内部への形質導入を誘導するために標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスを対象に投与することを特徴とする細胞内部への標的物質の輸送方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、治療薬剤、ペプチドおよびタンパク質のような高分子をin vitroやin vivoで細胞内に輸送する様々な方法が開発されている。
【0003】
in vitroの方法には、エレクトロポレーション、リポソームによる膜融合、DNAコーティングマイクロプロジェクタイルによる高速ボンバードメント、リン酸カルシウム−DNA共沈物によるインキュベーション、DEAE−デキストラントランスフェクション、組換えウイルス核酸の注入、および単一細胞へのダイレクトマイクロインジェクションが含まれる。しかし、このような方法は、タンパク質輸送の実用性が極めて制限されている。
【0004】
in vivoにおける細胞内への高分子の輸送は、スクレープローディング(scrape loading)、リン酸カルシウム共沈法およびリポソーム法により可能となってきた。しかしながら、現在までのこれらの技術は、in vivoでの細胞輸送に対する有用性に限界がみられている。
【0005】
in vitroおよびin vivoにおける無傷細胞への生物活性タンパクの効率的な輸送の一般的な方法には、リポペプチド(P.Hoffmannら、1988)あるいは、ポリリシンやポリアルギニンなどのようなベーシックポリマー(W−C.Chenら、1978)の化学的付加が含まれる。
【0006】
葉酸は輸送担体として用いられてきた(C.P.LeamonとLow、1991)。しかしながら、高い信頼性あるいは一般的な有用性が立証されてこなかった。
【0007】
最近、タンパク質のような高分子を細胞内部に導入する遺伝子治療が脚光をあびているが、これもまた標的ミスという問題を抱えている。別の方法として、タンパク質導入あるいはタンパク療法の研究が活発に進展している。
【0008】
タンパク質導入ドメイン(PTD)は、精製ヒト免疫不全ウイルス1型(“HIV”)TATタンパクを、培地で培養したヒト細胞へ添加することにより、それが周辺の培地から取り込まれるという報告が最初であった(Greenら、1988、Frankelら、1988)。この報告の後、ショウジョウバエのホメオティック転写因子、アンテナペディア(Antp)(Joliotら、1991)および単純ヘルペスウイルス−1 DNA−結合タンパク、VP22(Elliotら、1997)も同定された。
【0009】
TAT、AntpおよびVP22のようなPTDのアミノ酸配列を比べると、アルギニンおよびリジンのような塩基性アミノ酸がほとんどの部分に存在しており(表1)、この配列はマイナス荷電したリン脂質二重層への接近および細胞内部への貫通を可能にする。透過性タンパク質の配列はタンパク質導入ドメイン(PTDs)と名付けられている。
【表1】

【0010】
特に、組換え発現ベクターはTAT47−57の11のアミノ酸を含むペプチドを用いて開発され、TAT融合タンパク質はTATペプチドを他のペプチドあるいはタンパク質に連結させることにより作製され、そのことによって、全長タンパク質の細胞内区画への導入が、サイズあるいは機能の制限なしで可能となった(ナガハラら、1988)。
【0011】
PTDは、融合タンパク質になるように他のペプチドあるいはタンパク質に連結し得、さらに細胞内部に形質導入しうるので、PTDを用いた治療薬剤、ペプチド、タンパク質などの細胞内部への形質導入が多く試みられた。
【0012】
最近、塩基性アミノ酸残基を多くは含まないPTDが知られるようになっている。また、へリックス構造により細胞膜のリン脂質二重層を貫通することが報告されている。
【0013】
TCTP(翻訳により調節される腫瘍タンパク質)は、MacDonaldら(1995)により報告されたIgE依存性ヒスタミン放出因子(HRF)として知られているタンパク質である。TCTPは、1980年代まで腫瘍特異的タンパク質として知られており、その一群は腫瘍の増殖期に関与すると推定されていた。TCTPは、マウス赤白血病細胞株において、21kDaの腫瘍タンパク質p21として報告された(Chitpatimaら、1988)。また、エールリッヒ腹水腫瘍の細胞増殖に関与するp23はTCTP/HRFと同一であることが明らかにされた(Bohmら、1989)。
【0014】
TCTPは腫瘍細胞、特に活発に増殖している腫瘍細胞で頻繁に見られ、細胞質に存在している。それは、172のアミノ酸から成る既知のタンパク質−(NCBI登録#P13693(Homo sapiens))であり、種間において高い相同性を示す。そのC末端の45のアミノ酸は塩基性ドメインを形成する。そのようなドメインは微小管結合タンパク質のMAP−1Bと約46%の相同性を有していることから、HRFは微小管結合タンパク質であるとも推定された。Gachetら(1997)は、HRFが細胞骨格系に沿ってある程度一貫して分布していることを、共焦点顕微鏡を用いて見いだし、そのことはHRFが細胞骨格に結合することを示唆している。
【0015】
TCTP発現はmRNAが通常レベルに維持されていることにより特徴づけられるが、血清の存在のような外部刺激がある場合は、ポリソームに変化して翻訳される。その特徴により、‘翻訳により調節される腫瘍タンパク質(TCTP)’(Thomasら、1981; ThomasとThomas、1986)と名付けられた。また、TCTP mRNAは翻訳中に抑制されるが、そのとき細胞分裂シグナルを受け、活性化されてタンパク質に翻訳されることも報告された(ThomasとThomas、1986)。
【0016】
TCTP/HRFは好塩基球あるいはマスト細胞と相互作用をもつヒスタミン放出物質と考えられており、アレルギー炎症反応に関与している。
【0017】
MacDonaldら(1995)はまた、HRFは細胞内タンパク質であるが、細胞外のHRFはIgE感作好塩基球を刺激してヒスタミンを放出させる(Schroederら、1996)ことを見いだした。Schroederら(1997)は、HRFは、IgEの非存在に関係なく、全ての好塩基球から放出される抗IgE誘導ヒスタミンを増強しうることを見いだし、それにより、HRFはIgEとの結合ではなく細胞膜受容体への結合によりその機能を発揮することを示唆した。
【0018】
本発明者らは、TCTP/HRFが(Na,K)ATPアーゼのサブユニットの第3細胞質ドメイン(CD3)と相互作用し、それにより(Na,K)ATPアーゼの活性を抑制していることを以前に報告した(韓国特許出願No.10−2001−0027896に示されるように)(Jungら、2004)。
【0019】
同時に本発明者らは、TCTP/HRFが細胞膜を透過しうることを報告する。TCTP/HRFのアミノ酸配列には、典型的なPTDの特徴である、十分な量の塩基性アミノ酸(アルギニンあるいはリジン)から成る部分や他のPTDのそれに類似するアミノ酸配列がないため、本発明者らは、TCTPはタンパク質の構造の面で他の既知のPTDと異なっているドメインを有すると考えた。
【0020】
TCTPの全体構造において、NおよびC末端は緩んで露呈しており、中間部分は球状を形作っている。
【0021】
第3に構造の予測については、3つのへリックスがあり、ここで第1へリックス(H1)はとても短く、第2へリックス(H2)および第3へリックス(H3)は外部に露呈している。シゾサッカロミセス・ポンベにおけるTCTPのH2およびH3構造では、塩基性アミノ酸はへリックスの外側に分布しており(Thawら、2001)、それゆえにH2およびH3はタンパク導入能に関与すると推測された。しかしながら、試験結果によると、このへリックス部分は輸送とは無関係であった。
【0022】
従って、TCTP/HRFにおけるタンパク導入機能を有するアミノ酸配列を同定すれば、新しいタイプのPTDの発見だけでなく、新しいドラッグデリバリーシステムの確立(もっとも、これらを用いた新規のベクター開発であるけれども)を可能にしうる。
【0023】
本発明者らはTCTPにおけるPTDの探索に絶え間ない努力をした結果、周知のPTDとは全く異なるアミノ酸から成るタンパク質導入ドメインを特定した。この結果に基づいて、本発明者らは、このドメインが周知のPTDよりも顕著に高い細胞透過能を示すことを確認することにより本発明を確立した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
(技術的課題)
本発明のひとつの目的は、細胞膜透過性ペプチド、有効な要素としての細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性担体、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性コンプレックス、細胞膜透過性ペプチドとその標的物質を含むトランスフェクションキット、膜透過性コンプレックスの製造における細胞膜透過性ペプチドの使用、医薬の製造における膜透過性コンプレックスの使用、および膜透過性コンプレックスの細胞内部への形質導入を誘導するために標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性コンプレックスを標的に投与することを含む細胞内部への標的物質の輸送方法、を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
(技術的解決法)
本発明は、以下のアミノ酸配列から成る細胞膜透過性ペプチドを提供する。:
R1−R2−R3−R4−R5−R6−R7−R8−R9−R10
【0026】
上記の式中、
R1は、欠失しうるか、またはM、A、Q、C、F、LあるいはWから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R2は、欠失しうるか、またはIあるいはAから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R3は、IあるいはAから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R4は、Y、A、F、SあるいはRから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R5は、R、AあるいはKから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R6は、D、A、IあるいはRから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R7は、欠失しうるか、またはL、K、A、EあるいはRから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R8は、欠失しうるか、またはI、KあるいはAから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R9は、欠失しうるか、またはA、S、E、YあるいはTから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R10は、欠失しうるか、またはA、H、KあるいはEから選択されるひとつのアミノ酸であり、そしてR10がKあるいはHであるときは、K、KK、R、RRあるいはHHから選択されるアミノ酸が付加していてもよい。
【0027】
本発明の一態様において、そのアミノ酸配列は配列番号1である。
【0028】
本発明の一態様において、そのアミノ酸配列は配列番号2−7である。
【0029】
また、本発明の一態様において、そのアミノ酸配列は配列番号2のひとつのアミノ酸がアラニンと置き換わりうる。例えば、その上記のアミノ酸配列は配列番号8−16、特に配列番号13から選択されるひとつのアミノ酸配列である。
【0030】
さらに、本発明の一態様において、そのアミノ酸配列は配列番号20−54から選択されるひとつのアミノ酸配列でありうる。例えば、その上記配列は配列番号22、26、27あるいは配列番号31−54から選択されるひとつのアミノ酸配列である。
【0031】
本発明において、'細胞膜透過タンパク質ドメイン'は、原形質膜を通して細胞内部(細胞質、細胞核)にまで透過する機能を持つタンパク質配列を意味する。
【0032】
本発明の細胞膜透過性ペプチドは、周知のTAT、VP22およびAntp PTDs(タンパク質導入ドメイン)と配列の類似性を有しない新規の細胞膜透過タンパク質ドメインである。
【0033】
本発明は、配列番号1のアミノ酸配列から成る細胞膜透過性ペプチドを提供する。本発明はまた、配列番号2−7から選択されるひとつのアミノ酸配列から成る細胞膜透過性ペプチドを提供する。
【0034】
本発明の一実施例によると、配列番号1、2、3あるいは4のアミノ酸配列から成る細胞膜透過性ペプチドは、標準的なTATと比べて非常に優れた細胞透過能を示しており、細胞内透過能は、処理濃度が高くインキュベーション時間も長くなると急速な増加様態を示す。
【0035】
詳しくは、細胞透過能をTCTPの1番から10番[TCTP(1−10)、配列番号1]残基を用いて測定した場合、TCTP(1−10)の細胞透過能はTATの場合に比べて、50μMで15分処理したときは3倍を超える活性、100μMで15分処理したときは6倍の活性を示す。2時間処理した場合、TCTP(1−10)の濃度が50μMおよび100μMのときの細胞透過能はそれぞれ、TATの場合の約29倍および30倍高かった。
【0036】
また、15分処理の場合に比べて、2時間インキュベートにおいては細胞透過能が増加する傾向を示した。
【0037】
さらに、TCTP(1−9)(配列番号2)、TCTP(1−8)(配列番号3)あるいはTCTP(2−10)(配列番号4)のアミノ酸残基を含むペプチドは、周知のTAT(47−58)より優れた透過能を示した。そのうち、細胞透過能はTCTP(1−10)(配列番号1)、TCTP(1−9)(配列番号2)、TCTP(1−8)(配列番号3)およびTCTP(2−10)(配列番号4)の順に優れており、TCTPの1番目のアミノ酸が存在しているときに、細胞透過能はさらに優れていた。
【0038】
ペプチドの長さは、この技術分野における細胞膜透過タンパク質ドメインの一般的な長さとして、望ましくは9−15残基の範囲、より望ましくは9−10残基の範囲で変化しうる。
【0039】
本発明の細胞膜透過性ペプチドは、人工合成、あるいはTCTPからTCTP(1−10)(配列番号1)、TCTP(1−9)(配列番号2)、TCTP(1−8)(配列番号3)あるいはTCTP(2−10)(配列番号4)の配列を単離することで作られうる。
【0040】
本発明のペプチドの合成は、例えば、機器あるいは遺伝子工学を用いて実施されうる。
【0041】
機器を用いた合成の場合、自動ペプチド合成機(PeptrEX−R48、ペプトロン)でFmoc固相法を用いて合成されうる。樹脂から合成されたペプチドを精製した後、該ペプチドは、資生堂カプセルパックC18(Shiseido capcell pak C18)分析用RPカラムを用いた逆相HPLC(Prominence LC−20AB、島津、日本)により精製および解析されうる。合成が完了した後、該ペプチドは、質量分析計(HP 1100 Series LC/MSD、ヒューレット・パッカード、Roseville、USA)により同定されうる。
【0042】
遺伝子工学による単離の場合、目的のペプチドに相当する核酸配列がタンパク質発現の組換えベクターに導入され、ついで、ペプチドコード領域の発現がBL21(λDE3)あるいはBL21(λDE3)pLysのようなプロテアーゼ欠損大腸菌においてIPTGにより誘導され、該ペプチドが精製される。
【0043】
本発明はまた、配列番号8−16のアミノ酸配列から成る、細胞膜透過性ペプチドを提供する。
【0044】
本発明の一実施例によると、配列番号2の一つのアミノ酸がアラニン、第6残基のアラニン置換体、アスパラギン酸(配列番号13)に置換しているアミノ酸配列では、10μMの低濃度において、WT(野生型)ペプチドよりも2.5倍増大した透過能を示し、また第5および第7−9残基(R、L、I、S)(配列番号12、14−16)のアラニン置換体はわずかな減衰を示したが、まだ活性を示していた。第1−第4残基(M、I、I、Y)(配列番号8−11)のアラニン置換体の活性は急激に減少したが、WTペプチド様機能は維持していた。従って、本発明の細胞膜透過性ペプチドは、配列番号8−16から選択される一つのアミノ酸配列から成るペプチドを含む。
【0045】
本発明はまた、配列番号22、26、27、あるいは31−54から選択される一つのアミノ酸配列から成る細胞膜透過性ペプチドを提供する。
【0046】
本発明の一実施例において、配列番号20−30のペプチドは、配列番号1における1以上のアミノ酸の欠損、置換あるいは付加により作られた。その結果、配列番号22、26あるいは27から成るペプチドはTAT(100μM)よりも良好な透過能を示した。これらの透過データに基づいて、配列番号31−45のペプチドは繰り返し合成され、これら全てのペプチドは10μMにおいてTATよりも良好な透過能を示した。上記のデータに基づいて、配列番号46−54のペプチドを配列番号1の様々な変異型として作製し、細胞透過能を測定した。その結果、配列番号49のペプチドはTATに比べて非常に優れた活性を有し、配列番号46−54のペプチドは、TATと比べて同等以上の活性を示し、TCTP(1−10)(配列番号1)に比べて非常に優れた活性を示した。従って、本発明の細胞膜透過性ペプチドは、配列番号22、26、27および31−54から成るペプチドを含む。
【0047】
ペプチドの長さは、この技術分野における細胞膜透過タンパク質ドメインの一般的な長さとして、好ましくは5−15残基、そしてより好ましくは8−10残基の範囲内で変化しうる。
【0048】
本発明のペプチドは、人工合成あるいはTCTP(1−10)(配列番号1)、TCTP(1−9)(配列番号2)、TCTP(1−8)(配列番号3)あるいはTCTP(2−10)(配列番号4)の配列の単離、およびこれらの配列の修飾により作製される。
【0049】
該ペプチドの合成は、上記と同一の合成方法により行われる。
【0050】
本発明はまた、有効成分として細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性担体を提供する。該細胞膜透過性ペプチドは、原形質膜を通して標的物質を輸送する膜透過性担体としての使用を提供する。
【0051】
さらに、本発明は標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスを提供する。
【0052】
本発明における'標的物質'という用語は、生理活性の制御に関与し、薬理作用をもたらし、あるいは細胞内区画における生物活性を維持しうる分子を意味する。
【0053】
本発明の標的物質は、例えば、非タンパク質性分子として、DNAおよびRNAを含む核酸、薬剤のような化合物、炭水化物、脂質あるいは糖脂質などを含み、タンパク質性分子として酵素、制御因子、成長因子、抗体、細胞骨格要素を含みうる。
【0054】
本発明の細胞膜透過性ペプチドは結合や融合状態において、物理的/化学的な共有結合あるいは非共有結合により、あるいはメディエーターにより、1以上の標的物質と結合しうる。
【0055】
詳細には、標的物質が非タンパク質性分子である場合、本発明の細胞膜透過性ペプチドは共有結合により標的物質と結合し、該複合体は標的細胞グループに接触しうる。別の例では、該標的物質は本発明の細胞膜透過性ペプチドと非共有結合しうる。例えば、標的物質が核酸である場合、脂質ベースの担体タイプでは、本発明の細胞膜透過性ペプチドと結合し、標的細胞グループに接触しうる。
【0056】
標的物質がタンパク質である場合、本発明の細胞膜透過性ペプチドと結合した融合タンパク質は、PCRおよびベクターを用いたcDNAクローニングを経て、該タンパク質(該標的物質)のcDNAを得ることにより作製される。それが不可能ならば、該タンパク質は化学的に融合される。例えば、融合タンパク質は、標的物質をリンカーに結合させ、ついで細胞膜透過性ペプチドと反応させてリンケージを形成することにより作製される。
【0057】
特に、該標的物質がタンパク質である場合は、該複合体は融合タンパク質の形で透過される。この場合、本発明の細胞透過性コンプレックスは、以下のように作製される。
【0058】
はじめに、細胞膜透過性ペプチド−標的物質複合体をコードする融合遺伝子を作るために組換え発現ベクターを作製する。
【0059】
上記融合タンパク質をコードする核酸は、細胞膜透過性ペプチドをコードする該核酸配列および標的物質のようなタンパク質をコードする該核酸配列を含む。例えば、これらの核酸配列は、配列番号17−18あるいは55−81から成る配列を含みうる。
【0060】
配列番号17−18あるいは55−81の核酸配列は以下のとおりである。
【表2】

【0061】
一つのアミノ酸をコードするコドンはいくつかあるので、本発明のペプチドをコードする核酸配列は、上記の表に掲載された核酸配列の他に本発明のペプチドをコードする全ての核酸配列を含む。
【0062】
本発明の組換え発現ベクターは、発現の汎用プロモーター、終結因子、選択マーカー、レポーター遺伝子、タグ配列、制限酵素認識サイト、マルチクローニングサイトなどを含みうる。
【0063】
本発明の組換え発現ベクターを用いた宿主へのトランスフェクション方法は、この分野では既知の、熱ショックあるいはエレクトロポレーションなどである。
【0064】
上記のようにトランスフェクトされた宿主細胞において、適切な条件の下で融合タンパク質が発現されると、細胞膜透過性ペプチドおよび標的物質のようなタンパク質から成る融合タンパク質はその分野で既知の従来の方法により精製される。
【0065】
さらに、本発明は、細胞膜透過性ペプチドおよび該標的物質を含むトランスフェクションキットを提供する。トランスフェクションキットは、DNA/RNAをほ乳類細胞の細胞内区画に容易に導入するために最適化された方法である。これまでにカルシウム−リン酸塩法、脂質複合体あるいはデキストラン錯体を用いた方法があるが、これらの方法の効率は1/106から1/102であり、また細胞のタイプに依存するという制限がある。これらの制限を克服するために、該細胞膜透過性ペプチドを用いたトランスフェクションキットが有用となりうる。
【0066】
本発明の該トランスフェクションキットはさらに、標的物質とペプチドを結合する結合因子を含みうる。該結合因子は、転写因子、ウイルスタンパク質、あるいは標的物質を結合しうるタンパク質の全体または一部、を含む特異的DNA/RNA配列を意味する。例えば、Gal4はDNA結合因子である。Gal4は、真核生物、原核生物およびウイルスで広く発現している転写因子である。DNA/RNA結合因子は、in vivoおよびin vitroで、PTDsおよび融合タンパク質の発現するベクターにより用いられうる。また、DNA/RNA結合因子とPTD間の結合は、化学的相互作用、物理的相互作用あるいは非共有相互作用により成し遂げられる。
【0067】
本発明の細胞膜透過性ペプチドとDNA/RNA間のが融合複合体が細胞外部で処理されれば、効率および細胞タイプに依存した制限の両者を克服する。本発明の細胞膜透過性ペプチドおよびDNA/RNA結合因子の両者を用いることで、DNA/RNAをさまざまな細胞の細胞質および核に導入することが可能である。特に、導入方法は、筋肉内、腹腔内、静脈内、口腔内、皮下、皮内、鼻腔内への導入および吸入を含む様々な経路で成し遂げられる。
【0068】
さらに、標的物質は、タンパク質、脂質、炭水化物あるいは化学物質から成るグループから選択される1以上の生体調節物質を含み、また本発明のトランスフェクションキットは、in vivoおよびin vitroにおいて様々な細胞の細胞質および核に上記標的物質を導入しうる。PTDと標的物質間の融合は、化学的、物理的共有相互作用あるいは非共有相互作用により成し遂げられる。
【0069】
本発明のトランスフェクションキットは、本発明の方法により遺伝子治療およびDNA/RNAワクチンに関する新しい技術を提供し、一時的あるいは恒久的に開示され、基礎的研究だけでく、遺伝子治療およびDNA/RNAワクチンのような臨床応用に用いられうる。
【0070】
また、本発明は、膜透過性コンプレックスの製造における細胞膜透過性ペプチドの使用、および、細胞膜透過性ペプチドと標的物質の結合による膜透過性コンプレックスの作製方法を提供する。
【0071】
さらに、本発明は、医薬の製造における標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドを含む該膜透過性コンプレックスの使用、および、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスと医薬的に許容できる担体とを混合する、医薬の製造方法を提供する。医薬的に許容できる担体は当業者によく知られており、当業者は生体への導入に適した医薬的に許容できる担体の選択と使用が可能である。
【0072】
さらに、本発明は、膜透過性コンプレックスの細胞内部への形質導入を誘導するために標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスを対象に投与することを特徴とする細胞内部への標的物質の輸送方法、を提供する。
【0073】
標的物質が、本発明の細胞膜透過性ペプチドに共有的に結合しうる、非タンパク質性分子であるならば、該複合体は標的細胞グループに接触しうる。別の例においては、該標的物質は本発明の細胞膜透過性ペプチドに非共有的に結合し、例えば、該標的物質が核酸ならば、該複合体は本発明の細胞膜透過性ペプチドと結合した脂質ベースの担体形態の標的細胞グループに接触しうる。
【0074】
該‘対象’はヒトを含むほ乳類である。該膜透過性コンプレックスは、筋肉内、腹腔内、静脈内、口腔内、皮下、皮内、粘膜投与および吸入を含む様々な経路により投与される。
【0075】
標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスの投与量は、標的物質およびペプチドの透過能が治療効果を有する量に従って変化し、それ故に特定の用量に制限されない。ただし、例えば、標的物質が核酸であるなら、標的物質の投与量は10〜1000μg/kgで、本発明のペプチドの投与量は0.1mg−10mg/kgである。
【0076】
さらに、本発明は、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスを対象に投与して標的物質を細胞内に導入することによる、関連疾病の治療方法を提供する。
【0077】
治療が望まれる疾病の種類は、細胞内部への投与用の該標的物質に依存して変化しうる。
【0078】
該‘対象’はヒトを含むほ乳類である。該膜透過性コンプレックスは、筋肉内、腹腔内、静脈内、口腔内、皮下、皮内、粘膜投与および吸入を含む様々な経路により投与される。
【0079】
また、本発明は細胞膜透過性ペプチドをコードする核酸配列を提供する。例えば、本発明は、配列番号1、2、22、26、27あるいは31−54から選択されるアミノ酸配列から成る細胞膜透過性ペプチドをコードする核酸を提供する。
【0080】
該核酸は、DNAあるいは一本鎖あるいは二本鎖のRNAであり、人工合成あるいは生物由来のTCTP遺伝子から単離することにより作製される。例えば、配列番号1、2、22、26、27あるいは31−54から成るペプチドをコードする核酸は各々、配列番号17−18、あるいは55−81の核酸配列に相当する。
【0081】
ひとつのアミノ酸をコードするコドンはいくつかあるので、本発明のペプチドをコードする核酸配列は、本発明のペプチドをコードする全ての核酸配列を含み、上記の表に記載された核酸配列に限定されない。例えば、アミノ酸配列のアラニンをコードする配列はgca、gcc、gcgあるいはgctである。
【0082】
本発明の細胞膜透過性ペプチドは、TAT由来のペプチドに比べて輸送において顕著な効果を有する。従って、本発明の細胞膜透過性ペプチド、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックス、および膜透過性コンプレックスを用いた細胞内への標的物質輸送方法は、高い効率で薬剤を標的に向けることが要求される特定の疾病の治療だけでなく、様々な研究分野における細胞内輸送に応用される。それ故に、本発明の細胞膜透過性ペプチド、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックス、および膜透過性コンプレックスを用いた細胞内への標的物質輸送方法は、ドラッグデリバリーシステムとしてとても有用である。
【0083】
ここに記載された発明は、より十分に理解されうるように、以下の実施例を示す。これらの実施例はただの例示であり、どんな方法によっても、この発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【発明の効果】
【0084】
本発明の細胞膜透過性ペプチドは、TAT由来ペプチドの活性に比べて顕著な透過能を有しており、それ故に該ペプチドは、高い効率で薬剤を標的とする必要のある特定の疾病の治療だけでなく、様々な研究分野における細胞内輸送に応用されている。 それ故に、本発明の細胞膜透過性ペプチド、標的物質と結合した細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックス、および膜透過性コンプレックスを用いた細胞内への標的物質輸送方法は、ドラッグデリバリーシステムとしてとても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
(実施例1)TCTPの様々な欠損型によるPTDのマッピング
【0086】
PTDのように機能するTCTPの領域を確かめるために、様々な欠損型が作製され、ついで以下のような実験に用いられた。
【0087】
1)欠損型TCTPの単離および精製
それぞれの欠損型TCTP(図1aおよび1c)が過剰発現するように、標識しうる6つのヒスチジンであるpRSETベクターが用いられた。TCTPのそれぞれの欠損型に相当するDNA配列のサブ・クローニングがベクターのマルチクローニングサイトで実施された。その後、該組換え発現ベクターは、E.coli BL21(DE3)(Novagen)あるいはBL21(DE3)pLysS(Novagen)に導入された。欠損型TCTPの発現はIPTG(isopropyl β−D−thiogalactoside)により3時間誘導され、その後、タンパク質は、ポリヒスチジンと結合するニッケルカラムを用いて単離、精製された。
【0088】
2)細胞培養およびタンパクによる処理
BEAS−2B細胞は、15μg/mlの濃度で1時間あるいは24時間、欠損型TCTPの処理を施された。その後、上澄みと細胞溶解物が得られ、抗TCTP抗体によるウエスタンブロッティングを行った(図1b)。
【0089】
図1bに示されるように、1時間の培養後の細胞上清には全長TCTPが存在した(レーン1)が、このタンパク質は24時間後(レーン6)には消失した。また、C末端のないDel−C112HRFを含む細胞上清において、該タンパク質は24時間後に消失した(レーン9)。一方、残りのN末端のない欠損型のTCTP、Del−N11、N35およびN39C110HRFは24時間後の細胞上清にまだ存在していた(レーン7、8、10)。
【0090】
それ故に、TCTPのPDTはN末端に存在することを知り得た。特に、Del−N11HRFは24時間後に細胞上清にまだ存在していたことから(レーン7)、TCTP1−10はPDTのような役割を果たすと思われる。
【0091】
さらに、本発明のTCTPタンパク質が、5分あるいは30分という短時間で細胞内部に輸送されうるかどうかが調べられた。該実験は上記と同じ方法で実施された(図1d)。
【0092】
図1dに示すように、HRFのN末端を有するDel−C38HRFは、30分後に上清では認められなかった(レーン4)が一方、これらのタンパク質は、5分後(レーン1)および30分後(レーン4)に細胞溶解物で認められた。
【0093】
従って、本発明のTCTPタンパク質を含むN末端はたった数分から数十分という短時間で細胞内部に輸送されうる。
【0094】
(実施例2)本発明のペプチドの細胞透過能の確認
【0095】
実施例1に示すように、TCTPのN末端がPTDのような機能をもつことを確かめるために、TCTPのN末端から成る該ペプチドを構築し、細胞透過能を調べた。
【0096】
1)TCTPのN末端アミノ酸に相当する様々なペプチドの合成
TCTP由来ペプチドおよび対照ペプチド、TAT48−57を以下のように合成した。
【表3】

【0097】
各ペプチドのN末端は蛍光染料ローダミンで標識し、C末端は保護した。HPLCによりペプチド純度(>95%)が決定された。ペプチドの合成はペプトロン社(PEPTRON,Inc)に依頼した。
【0098】
ネガティブコントロールは蛍光染料、ローダミン(分子プローブ)が全てのペプチドの標識に用いられた。
【0099】
2)細胞培養およびペプチドのインキュベーション
ヒーラ細胞株(ATCC)を、10%FBS(GIBCO)および100units/mLペニシリン−ストレプトマイシンを添加したDMEM(GIBCO)で培養した。細胞は、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0100】
ヒーラ細胞を、実験の日の前に70〜80%成熟するまで48−wellプレートで培養した。該細胞を37℃のDMEMで2回洗浄し、実施例2−1)で合成したTCTP由来ペプチドを用量依存的方法で(0、1、5、10、50、100μM)培地に処理し、ついで該細胞を15分間あるいは2時間、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0101】
培養後、細胞を冷たいPBSで3回洗浄し、細胞内取り込みマーカーのローダミンの測定のために、蛍光マイクロプレートリーダー(BIO−TEK instruments,Inc.,Vermont,USA)を用いて、蛍光波長(emission)530nmおよび最大励起(excitation)590nmで、直ちに測定した。リーダーの感度は基本モードとして100に設定したが、蛍光シグナルが強すぎる場合には75まで下げた。全ての実験は、再現性確認のため3回繰り返して公正に実施した(図2および図3)。
【0102】
図2および図3に示すように、TAT、コントロールペプチドは、用量と時間に依存した既知の方法で、細胞内に形質導入した。
【0103】
本発明のTCTP(1−10)、(1−9)、(1−8)ペプチドは、1−10μMではなく50−100μMにおいて、15分(図2)あるいは2時間(図3)で輸送された。50−100μMにおいては、細胞内輸送がとても高いことが認められ、特に2時間処理後には蛍光が強すぎて検出できなかったため、リーダーの感度を75に下げた。
【0104】
図3において、TCTP(1−10)ペプチド濃度が50μMと100μMの間で、2時間処理における輸送能に差はないという事実から判断すると、TCTP(1−10)ペプチドは50μMで飽和状態にあると思われた。一方、TAT(48−57)ペプチドは、1μM以上で飽和状態にあった。
【0105】
TCTP(2−10)ペプチドは1μMから10μMの濃度では輸送がなされなかったが、このペプチドを100μMで15分処理した後においては、より効率的に輸送された。2時間後、このペプチドは、コントロールペプチド、TAT(48−57)、と同様の細胞膜透過能を有し、100μMではコントロールペプチドよりも効率的に輸送された。
【0106】
そのように、本発明のTCTP(1−10)、(1−9)、(1−8)および(2−10)細胞膜透過性ペプチドは、それらの輸送効率において、よく知られたPTD、TATよりも優れた能力を有していることが確認できた。
【0107】
TCTP由来ペプチドについて、高濃度での輸送能力の急増が示されてきており、これらの結果は輸送メカニズムの違いによって引き起こされるのかもしれない。
【0108】
その結果、本発明のTCTP(1−10)、(1−9)、(1−8)および(2−10)細胞膜透過性ペプチドはそれらの輸送効率において、よく知られたPTD、TATよりも優れた能力を有していることが確認できた。これらのペプチドの中から、輸送効率はTCTP(1−10)、(1−9)、(1−8)そして(2−10)ペプチドの順で優れており、TCTP N末端のメチオニン(第1アミノ酸残基)の存在が重要であった。
【0109】
(実施例3)蛍光顕微鏡によるTCTP由来ペプチドの細胞内輸送の同定
【0110】
該ペプチドの細胞内輸送は蛍光顕微鏡により同定された。
【0111】
ヒーラ細胞は、実施例2−2)と同一の方法により、10μMおよび100μMの濃度でTCTP(1−9)(配列番号2)処理された。相違点は、プラスチックプレートは蛍光を阻害する特性を持っていたために、ヒーラ細胞をガラスで覆われた12wellプレートに播種した点であった。洗浄後、細胞をスライドグラスに載せカバーグラスで覆い、観察した(図4)。
【0112】
図4に示すように、本発明のペプチドは、10μMの低濃度では弱い輸送能であり、100μMの高濃度では強い輸送能であった。該ペプチドは細胞質および細胞の核に広く分布していることを見い出した。
【0113】
(実施例4)ペプチド置換体の細胞内輸送の同定
【0114】
本ペプチドの置換体がPTDのような機能をしうることを確かめるために、該ペプチドの置換体を構築し、細胞透過能を調べた。
【0115】
1)ペプチド置換体の構築
TCTP(1−9)(配列番号2)とアラニンの連続置換は以下のように合成された。
【表4】

【0116】
各ペプチドのN末端は蛍光染料ローダミンで標識し、C末端は保護した。HPLCによりペプチド純度(>95%)を決定した。ペプチドの合成はペプトロン社(PEPTRON,Inc)に依頼した。
【0117】
2)細胞培養およびペプチドのインキュベーション
ヒーラ細胞株は、10%FBSおよび100units/mLペニシリン−ストレプトマイシンを添加したDMEMで培養増殖させた。細胞は、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0118】
ヒーラ細胞を、実験の日の前に70〜80%成熟するまで48−wellプレートで培養した。該細胞を37℃のDMEMで2回洗浄し、実施例4−1)で合成したTCTP由来ペプチドを用量依存的方法(0、1、10、100μM)で培地に処理し、ついで該細胞を15分間あるいは2時間、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0119】
培養後、細胞を冷たいPBSで3回洗浄し、細胞内取り込みマーカーのローダミンの測定のために、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて、蛍光波長(emission)530nmおよび最大励起(excitation)590nmで、直ちに測定した。リーダーの感度は基本モードとして100に設定したが、蛍光シグナルが強すぎる場合には75まで下げた。全ての実験は、再現性確認のため3回繰り返して公正に実施した(図5および図6)。
【0120】
図5に示すように、100μMでのTCTP(1−9)の蛍光強度を100%としたとき、取り込みにおける最大の減少を示す該アラニン置換体は、TCTP(1−9)(各配列番号8、9、10、11)のアミノ酸残基1、2、3、4(各々M、I、I、Y)に対するアラニン置換体であり、80−90パーセント減であった。
【0121】
一方、TCTP(1−9)(各配列番号12、13、14、15、16)のアミノ酸残基5、6、7、8、9(各々R、D、L、I、S)に対するアラニン置換体は取り込みが約50パーセント減少したが、我々はこれらのペプチドはまだ輸送能力を維持していると判断した。従って、TCTPのN末端の4つのアミノ酸(M、I、I、Y)は細胞透過能に必要であるとわかった。
【0122】
その一方で、KC4プレートリーダーの感度の設定を75に下げると、1あるいは10μMの比較的低濃度における細胞透過能の結果が分析できなかったため、リーダーの感度は100に固定した(図6)。このとき、100μMでの蛍光強度は非常に強かったため、同じグラフに表示できなかった。
【0123】
図6に示すように、10μMでのTCTP(1−9)の蛍光強度を1としたとき、アミノ酸残基6番目、TCTP(1−9)(配列番号13)のアスパラギン酸、のアラニン置換体は、天然ペプチド、TCTP(1−9)、よりも2.5倍高い透過能を有していた。アスパラギン酸は、負電荷のアミノ酸で、TCTP(1−9)で負電荷を持つ唯一の残基である。従って、負電荷のアミノ酸は、TCTPの細胞透過能を減少させると考えられた。
【0124】
TCTP(1−10)、(1−9)、(1−8)、(2−10)の天然ペプチドは高濃度で効率的に輸送されたが、これらのペプチドは、1μMおよび10μM(実施例2)の比較的低濃度においては、コントロールペプチド、TATよりも低い効率であった。しかしながら、上記の結果から、第6残基の欠失、付加あるいは置換の類似体は、低濃度で非常に優れた透過能を有することが示された。
【0125】
上記の全ての結果から、TCTPのN末端上の4つのアミノ酸(M、I、I、Y)は細胞透過能において不可欠な役割を果たし、特に第6残基、アスパラギン酸のアラニン置換体は、低濃度(10μM)での細胞透過能を急激に増加させる。このとき、透過能が低濃度では増加するが高濃度で減少するのは、疎水性であるアラニン置換体の難溶解性によるものと推測した。
【0126】
(実施例5)突然変異ペプチドの細胞透過能
【0127】
実施例4に示すように、本発明の置換体ペプチドは細胞膜透過能を有していることが確認された。そこで、本ペプチドの突然変異体が透過能を持つことを確認するために、突然変異ペプチドの輸送効率を調べた。
【0128】
1)突然変異ペプチドの構築
実施例4の結果から、様々な突然変異ペプチドがTCTP(1−10)(配列番号1)のフレームで構築された。
【表5】

【0129】
各ペプチドのN末端は蛍光染料FITCで標識し、C末端は保護した。HPLCによりペプチド純度(>95%)を決定した。本発明のペプチドの合成はペプトロン社(PEPTRON,Inc)に依頼した。
【0130】
2)細胞培養およびペプチドのインキュベーション
ヒーラ細胞株は、10%FBSおよび100units/mLペニシリン−ストレプトマイシンを添加したDMEMで培養増殖した。細胞は、5%CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0131】
ヒーラ細胞を、実験の日の前に70〜80%成熟するまで6−wellプレートで培養した。該細胞を37℃のDMEMで2回洗浄し、実施例5−1)で合成したTCTP由来ペプチドを用量依存的方法(0、1、10、100μM)で培地に処理し、ついで該細胞を2時間、CO2インキュベーターにおいて37℃で培養した。
【0132】
培養後、細胞を冷たいPBSで2回洗浄し、1mg/mlトリプシンにより37℃で15分処理して細胞膜に付着しているペプチドを消化し、再度PBSで2回洗浄した。その後、該細胞を、細胞内取り込みマーカーのFITCを測定するために、FACSを用いて、蛍光波長(emission)510nmおよび最大励起(excitation)530nmで分析した(図7、8および9)。突然変異ペプチド、TCTP−CPP#1−35(配列番号20−54)の細胞内輸送能を、野生型(WT)、TCTP(1−10)(配列番号1)およびコントロールペプチド、TAT(48−57)と比較した。
【0133】
3)ペプチド変異体と細胞透過能の関係
突然変異ペプチドを設計する場合、各ポジションの残基はアラニン置換のように全20のアミノ酸で置換されうるが、変化後の他の隣接するアミノ酸の完全ペプチドの電荷および等電点もまた考慮されなければならないので、これは全てのペプチドの中から最も効果的な突然変異を探し出すのに効率的でない。従って、我々は、初期の変化後に推定される結果に基づいて新たな改良を試み、決定的な役割を担うアミノ酸を検証するために新たな変異体ペプチドを設計した。新しい突然変異ペプチドおよび配列は実施例5−1)の表にまとめた。各10の野生型(WT)(配列番号1)アミノ酸にIからX(N末端から)まで番号を付けることで、突然変異ポジションを簡単に説明できるようにした。溶解性および細胞膜に対するWTの結合能を増大させるために(ポリアルギニンおよびポリリシンの使用と同じ理由で)、ポジションWT−Xでのリジン置換、および、同じポジション(配列番号20)でのリジンの同時付加、WT−VII,VIII(配列番号21)のポジションでの2つのリジン置換、WT(配列番号26)(配列番号27)への2つのリジン付加を行った。これらの変異体のうち配列番号26および配列番号27のみが細胞透過能を増大した。平均蛍光強度(MFI)の比較と分析の結果によると、濃度10μMにおけるWTのMFIを1とした場合、TAT、配列番号26および配列番号27は、濃度10μMにおいてはWTより、各々6.1倍、6.04倍、1.73倍高く、100μMの濃度においてはWTより、各々94.75倍、144.6倍、342.9倍細胞透過能が高かった。それ故に、WTのC末端に2つのリジンを付加した全12のアミノ酸の変異体ペプチドは、続いて設計された変異体ペプチド(配列番号31から)において維持し、リジンよりも他の塩基性アミノ酸との置換および塩基性アミノ酸の数の変化を調べた(配列番号48−52)。その結果、C末端における1あるいは2の塩基性アミノ酸の付加がWTよりも高い効率を示した。
【0134】
ポジションWT−Iにおけるメチオニンの硫黄の役割を分析するために、メチオニン(M)をグルタミン(Q)あるいはシステイン(C)(配列番号23および配列番号24−25との比較)に置換した。その結果、硫黄は決定的な役割を担ってはいなかったことから、メチオニンの疎水性の役割を調べるために、メチオニンをフェニルアラニン(F)、ロイシン(L)あるいはトリプトファン(W)(配列番号31および配列番号34−36との比較、配列番号32および配列番号38との比較、配列番号33および配列番号37との比較、配列番号39および配列番号40との比較、配列番号41および配列番号42との比較、配列番号43および配列番号44との比較、配列番号46配列番号47との比較)により置換した。その結果、配列番号37、38および39の細胞透過能は、100μMの濃度において配列番号34より低かったが、10μMの濃度においてはWTよりもそれぞれ52.0倍、55.6倍および25.0倍高かったことから、これらのペプチドは、配列番号31(WTより29倍高い)と比べて非常に優れた効率を有していた。配列番号38と配列番号32の比較および配列番号37と配列番号33の比較の結果、トリプトファンへの置換は輸送能を増大させなかった。この結果は、100μMの濃度におけるトリプトファン置換体の細胞毒性に関連しているのかもしれない(図11)。配列番号39と40、配列番号41と42、配列番号43と44、との間の比較において、メチオニンの代わりにトリプトファンへ置換しても、効率および細胞毒性の面における重大な変化はもたらされなかった。フェニルアラニン(配列番号34)あるいはロイシン(配列番号35)への置換は、配列番号31に比べて、10μMの濃度において輸送能の増大をもたらし、100μMにおいては減衰をもたらした。配列番号31、34、35および36におけるロイシン置換は、10μMでの最大の増大をもたらし、100μMでわずかな減衰をもたらした。100μMにおいて、配列番号35の細胞毒性は配列番号31よりも弱かった。配列番号46(10μMでWTのMFIより3.75倍高い)および配列番号47(10μMでWTのMFIより7.04倍高い)において、ロイシンへの置換は透過能の減少をもたらしたが、配列番号46の毒性は配列番号47の毒性よりも弱かった。細胞毒性および減衰の不安定さを有するメチオニンの問題を考慮すると、メチオニンがロイシンにより置換され、それによりロイシンがペプチド変異体に導入されるのが最も適当であると判断した(配列番号48から)。
【0135】
ポジションWT−IVのチロシン(Y)の役割を調べるために、チロシンを、水酸基は有しないがチロシンのように等電であるフェニルアラニン(F)あるいはチロシンのように水酸基を有するセリン(S)に置換することにより、このポジションにおける疎水性の重要性および水酸基の作用などを調べた。配列番号22および25はWTよりも各々、10μMにおいて19.63倍および0.91倍高く、100μMにおいて216.75倍および1.81倍高かった。この結果から、疎水性の増大はこのポジションにおける細胞透過能を高めることがわかったので、この実験後、我々はペプチド変異体のポジションWT−IVにフェニルアラニンを導入した(配列番号31から)。
【0136】
我々は、ポジションWT−Vにおいて、アルギニン(R)をリジン(配列番号31と43の比較、および配列番号36と44の比較)あるいはアラニン(配列番号31と45の比較および配列番号35と53の比較)に置換することにより、塩基性アミノ酸への置換を比較した。その結果、10μMにおいて、配列番号31(WTと比べて26.77倍増大)の輸送能は配列番号43(12.1倍増大)よりも低く、配列番号36(WTに比べて18.4倍増大)の効率は配列番号44(15.04倍増大)よりも低かった。配列番号45(WTに比べて11.47倍増大)および配列番号53(WTに比べて8.24倍増大)の輸送能は、10μMにおいて、配列番号31および35(29.53倍増大)より低かった。これらの結果から、ポジションWT−Vにおけるアルギニンの維持は有用であると考えられた。
【0137】
配列番号13は低濃度において良好な効率を有した(実施例4)ので、ポジションWT−VIのアスパラギン酸を、疎水性を高めるためにアラニンあるいはイソロイシンで置換した。配列番号31(WT−VI:I)と33(WT−VI:A)の比較において、両者の輸送能は100μMにおいて同様の増大であったが、配列番号31(WTに比べて29倍増大)の透過能の増大は、10μMにおける配列番号33(WTに比べて3.2倍増大)よりもはるかに良好であったことから、イソロイシン置換はアラニン置換よりも効果的であった。これらの結果から、この実験後、イソロイシンをペプチド変異体(配列番号31、34−36、39から)のポジションWT−VIに導入した。
【0138】
ポジションWT−VIIおよびVIIIのロイシンおよびイソロイシンをそれぞれアラニンで置換すると(配列番号14と15)細胞透過能は減衰し、両者を塩基性アミノ酸で置換すると、この機能は2倍減衰し(配列番号1と21の比較)、ポジションWT−VIIのロイシンのみを負電荷で強い親水性を有するグルタミン酸(E)で置換するとこの機能はアラニン置換と同程度の減衰であった(配列番号1と29の比較)ことから、両ポジションにおいて最も効率的なアミノ酸はロイシンおよびイソロイシンであると結論づけた。
【0139】
このポジションのみをそれぞれチロシンおよびトレオニンで置換した配列番号39(WT−IX:Y)および41(WT−IX:T)と配列番号31(WT−IX:S)の細胞透過能を比較すると、ポジションWT−IXのセリンは最も効果的に維持される必要がある。その一方で、ポジションWT−Iのメチオニンの代わりにトリプトファンで置換した全てのケースで、配列番号36(WT−IX:S)の効率は、10μMにおいてのみ、配列番号40(WT−IX:Y)および配列番号42(WT−IX:T)より強かった。
【0140】
ポジションWT−Xのヒスチジン(H)を維持するのが効果的であった。配列番号1と2(配列番号1からのヒスチジン欠失)の細胞透過能の比較において、配列番号1は、50μMの濃度で配列番号2よりも効率的で(図2および3参照)、ヒスチジンをグルタミン酸で置換すると(配列番号1と28と30の比較、図7、8、9参照)、配列番号28および配列番号30は、10μMでWTと同様であり、高濃度では4−5倍減衰した。
【0141】
(実施例6)突然変異ペプチドの細胞毒性の同定
【0142】
本発明のペプチドの細胞透過能が、細胞毒性を受けての細胞膜の弱さによるものなのかどうか確かめるために、以下のように細胞毒性を測定した。ヒーラ細胞を、実験の日の前に70%成熟するまで96−wellプレートで培養した。0、1、10、100μMの濃度で、コントロールTAT48−57および該突然変異ペプチドを、10%FBSを添加したDMEMに、24および48時間処理した。各wellに10μlのCCK−8を添加した2時間後、450nmでの吸光度を、KC4プレートリーダー(図10、11および12)で測定した。100μMで24時間処理の毒性の結果として、配列番号1、TCTP(1−10)の細胞毒性はコントロールに比べて約14%であり、他のペプチド、TCTP−CPP#3、7および8、の細胞毒性は、標準偏差を考慮するとわずかであった。48時間処理の場合、全てのペプチドは、1および10μMにおいて細胞毒性を有しなかった一方、TAT、TCTP(1−10)、TCTP−CPP#3、7および8の細胞毒性はそれぞれ、約53.8、28.3、46.2、8.2および25.6%であった。TCTP−CPP#12−26は全て、1および10μMでは細胞毒性を有しなかったが、100μMにおいてTCTP−CPP#26のみのそばに細胞毒性を有していた。また、TCTP−CPP#27−35は全て、1μMおよび10μMでは細胞毒性を有しなかったが、100μMでは細胞毒性を有していた。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】図1aおよび図1cは、本発明における様々な欠損型のTCTPを示す概略図であり、図1bおよび図1dは、BEAS−2B細胞株における、図1aおよび図1cの様々な欠損型のTCTPの細胞内への取り込みを、ウエスタンブロットにより分析した結果である。
【0144】
【図2】図2は、様々な濃度のヒーラ細胞株における、TCTP由来ペプチド処理15分後の用量依存的細胞内取り込みを示している。
【0145】
【図3】図3は、様々な濃度のヒーラ細胞株における、TCTP由来ペプチド処理2時間後の細胞内取り込みを示している。
【0146】
【図4】図4は、様々な濃度のヒーラ細胞株における、TCTP由来ペプチド処理2時間後の細胞内取り込みを表す蛍光顕微鏡画像を示している。
【0147】
【図5】図5は、感度75での様々な濃度における、TCTP由来ペプチド処理2時間後の細胞内取り込みを示している。
【0148】
【図6】図6は、図5と同じ結果の感度100の場合を示している。
【0149】
【図7】図7は、様々な濃度におけるTCTP由来ペプチド2時間処理の突然変異ペプチドの細胞内取り込みを表す平均蛍光強度を、FACSを用いて示している。
【0150】
【図8】図8は、様々な濃度におけるTCTP由来ペプチド2時間処理の突然変異ペプチドの細胞内取り込みを表す平均蛍光強度を、FACSを用いて示している。
【0151】
【図9】図9は、様々な濃度におけるTCTP由来ペプチド2時間処理の突然変異ペプチドの細胞内取り込みを表す平均蛍光強度を、FACSを用いて示している。
【0152】
【図10】図10は、様々な濃度におけるTCTP由来ペプチド処理24あるいは48時間後の突然変異ペプチドの細胞毒性を示している。
【0153】
【図11】図11は、様々な濃度におけるTCTP由来ペプチド処理24あるいは48時間後の突然変異ペプチドの細胞毒性を示している。
【0154】
【図12】図12は、様々な濃度におけるTCTP由来ペプチド処理24あるいは48時間後の突然変異ペプチドの細胞毒性を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のアミノ酸配列から成る、細胞膜透過性ペプチド:
R1−R2−R3−R4−R5−R6−R7−R8−R9−R10
上記の式中、
R1は、欠失しうるか、またはM、A、Q、C、F、LあるいはWから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R2は、欠失しうるか、またはIあるいはAから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R3は、IあるいはAから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R4は、Y、A、F、SあるいはRから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R5は、R、AあるいはKから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R6は、D、A、IあるいはRから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R7は、欠失しうるか、またはL、K、A、EあるいはRから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R8は、欠失しうるか、またはI、KあるいはAから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R9は、欠失しうるか、またはA、S、E、YあるいはTから選択されるひとつのアミノ酸であり、
R10は、欠失しうるか、またはA、H、KあるいはEから選択されるひとつのアミノ酸であり、そしてR10がKあるいはHであるときは、K、KK、R、RRあるいはHHから選択されるアミノ酸が付加していてもよい。
【請求項2】
該アミノ酸配列が配列番号1である、請求項1に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項3】
該アミノ酸配列が配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、あるいは配列番号13から選択されるひとつである、請求項1に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項4】
該アミノ酸配列が配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53あるいは配列番号54から選択されるひとつである、請求項1に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項5】
該アミノ酸配列が配列番号22である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項6】
該アミノ酸配列が配列番号26である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項7】
該アミノ酸配列が配列番号27である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項8】
該アミノ酸配列が配列番号31である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項9】
該アミノ酸配列が配列番号32である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項10】
該アミノ酸配列が配列番号33である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項11】
該アミノ酸配列が配列番号34である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項12】
該アミノ酸配列が配列番号35である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項13】
該アミノ酸配列が配列番号36である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項14】
該アミノ酸配列が配列番号37である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項15】
該アミノ酸配列が配列番号38である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項16】
該アミノ酸配列が配列番号39である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項17】
該アミノ酸配列が配列番号40である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項18】
該アミノ酸配列が配列番号41である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項19】
該アミノ酸配列が配列番号42である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項20】
該アミノ酸配列が配列番号43である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項21】
該アミノ酸配列が配列番号44である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項22】
該アミノ酸配列が配列番号45である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項23】
該アミノ酸配列が配列番号46である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項24】
該アミノ酸配列が配列番号47である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項25】
該アミノ酸配列が配列番号48である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項26】
該アミノ酸配列が配列番号49である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項27】
該アミノ酸配列が配列番号50である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項28】
該アミノ酸配列が配列番号51である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項29】
該アミノ酸配列が配列番号52である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項30】
該アミノ酸配列が配列番号53である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項31】
該アミノ酸配列が配列番号54である、請求項4に記載の細胞膜透過性ペプチド。
【請求項32】
有効成分として請求項1から31のいずれかひとつに記載される細胞膜透過性ペプチドを含む膜透過性担体。
【請求項33】
標的物質と結合した請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックス。
【請求項34】
該標的物質が、核酸、薬剤、化合物、炭水化物、脂質、糖脂質、酵素、制御因子、生長因子あるいは抗体から選択される1以上のものである、請求項33の膜透過性コンプレックス。
【請求項35】
請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドおよび標的物質を含むトランスフェクションキット。
【請求項36】
該ペプチドと標的物質を結合する結合因子をさらに含む請求項35のトランスフェクションキット。
【請求項37】
膜透過性コンプレックスの製造における、請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドの使用。
【請求項38】
標的物質と請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドを結合させることを特徴とする膜透過性コンプレックスの作製方法。
【請求項39】
標的物質と結合した請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスの、医薬の製造における使用。
【請求項40】
標的物質と結合した請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスと医薬的に許容できるキャリアとを混合することを特徴とする医薬の製造方法。
【請求項41】
膜透過性コンプレックスの細胞内部への形質導入を誘導するために、標的物質と結合した請求項1から31のいずれかひとつに記載の細胞膜透過性ペプチドから成る膜透過性コンプレックスを対象に投与することを特徴とする、細胞内部への標的物質の輸送方法。
【請求項42】
配列番号1、2、22、26、27、あるいは31−54から選択されるひとつのアミノ酸配列をコードする核酸。
【請求項43】
該核酸が各々配列番号17、18、あるいは55−81から選択されるひとつである、請求項42の核酸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−527251(P2009−527251A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556244(P2008−556244)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/KR2007/000885
【国際公開番号】WO2007/097561
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(505469540)エファ・ユニバーシティ・インダストリー・コラボレイション・ファウンデイション (3)
【氏名又は名称原語表記】EWHA UNIVERSITY INDUSTRY COLLABORATION FOUNDATION
【Fターム(参考)】