説明

細胞表面分子に対する抗体の生産方法

【課題】患者における抗体介在性疾患を予防または治療すること。
【解決手段】患者における抗体介在性疾患を予防または治療するための、ヒトB細胞の表面上に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体の治療上有効な量を含む組成物であって、該組成物は、そのような治療を必要とする患者に、薬学的に受容可能な賦形剤中で、該組成物を投与する工程を包含する方法において使用され、ここで該CD40抗原への該抗体の結合が、該B細胞の増殖または分化を妨げる、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、膜関連抗原分子に特異的である抗体を生産する方法に関する。さらに詳細には、本発明では、宿主動物の免疫化および宿主動物から単離した抗体のスクリーニングに、これらの膜関連抗原を使用する方法を記載する。さらに、本発明は、免疫系疾患を治療する新規な方法に関する。特に、本発明は、(1)移植組織拒絶反応、移植片対宿主病、および、異物としての特異抗原の認識により生じるその他の免疫学的症状;ならびに、(2)IgE介在性疾患(アレルギー)、および、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)および特発性血小板減少性紫斑病(ITP)を含む自己免疫疾患のような、抗体介在性疾患;の予防または治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
I.モノクローナル抗体の産生
モノクローナル抗体は、免疫学的研究の有力な手段であることが立証されている。一般的には、モノクローナル抗体は、免疫原組成物中に存在するその他の抗原に対する抗体から、目的の抗原に対する抗体を判別するスクリーニングアッセイが可能であれば、免疫原として混合抗原を使用して産生し得る。目的の抗原が細胞表面分子であるときは、膜環境による高次構造制限を保持するために、免疫原として目的の分子を含有する細胞あるいは膜画分を使用するのが好ましい。
【0003】
全細胞によるマウスの免疫化では、通常は、多くの異なる分子に対する抗体を生産する、強い免疫応答を示す。この広範な免疫応答は、次の、マウス脾臓細胞あるいはリンパ球細胞由来のハイブリドーマクローンによる特異的抗体の産生についてのスクリーニングでの、この免疫原細胞の使用を妨害する。
【0004】
さらに、目的の抗原が低濃度で発現される場合には、その抗原に特異的なマウスB細胞の頻度は比較的低い。この低頻度により、目的の抗原に対する抗体を産生するクローンを同定するために、膨大な数のハイブリドーマクローンのスクリーニングが必要とされる。
【0005】
ヒト細胞表面抗原を発現する同系移植ネズミの線維芽細胞は、特異的抗体を産生するために、マウスを免疫化するのに使用されてきた(DiSantoら、1991)。適切なマウス株に注射すると、線維芽細胞に存在するバックグラウンドの抗原タンパク質が免疫原性にはならず、免疫応答が異種移植組換えタンパク質に集中する。しかし、この方法には、抗体産生が望まれる各々の種あるいは株に対する特異的な組換え細胞の構築が必要である。
【0006】
II.移植片拒絶反応およびCD28−B7系
移植後の移植片拒絶反応の防止のための最近の戦略は、シクロスポリンA(CsA)、FK506、およびコルチコステロイドのような広域作用免疫抑制剤に基づく。これらの薬剤は、しばしば長期間摂取しなければならないので、重篤な感染、腎毒性および癌の危険性を増す。さらに、全ての被験体が、これらの免疫抑制剤の高用量に耐え得るわけではなく、しばしば移植片拒絶反応あるいは移植片対宿主病(GVHD)を生じる。移植片拒絶反応の最適な予防は、ドナー組織に対して特異的耐性を誘導することに基づく。従って、移植組織の拒絶反応を予防するための理想的な薬剤は、長期間の免疫抑制の必要性のない、ドナー反応性T細胞のクローン性非応答、すなわち、アネルギーを誘導すべきである。アネルギーは、「共刺激性」シグナルの非存在下の、T細胞レセプター(TCR)とペ
プチド提示主要組織適合性複合体(MHC)抗原との間の相互作用後の、細胞間シグナル化によると考えられている。非特許文献1。この共刺激性シグナルは、通常、抗原提示細胞(APC)の細胞表面により提供される。非特許文献2;および非特許文献3。
【0007】
T細胞は、インビボでの正常な免疫応答時に重要な役割をなす。それらには、細胞毒性、遅延型過敏、およびB細胞によるT細胞依存性抗体産生が含まれる。さらに、T細胞は、インターロイキン−2(IL−2)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、リンホトキシン、γインターフェロン(IFN−γ)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)のような広範囲の種々のリンホカインを産生し得る。
【0008】
T細胞の活性化は、リガンド−レセプター相互作用に起因する。生理学的条件下で、TCR/CD3複合体は、APCのMHC分子により提示される抗原性ペプチドに結合する。TCR/CD3複合体は、抗原誘導活性化において2つの役割をなす。第一は、抗原提示MHC分子成分中の特異的抗原の認識である。第二は、その認識事象が、シグナル化機構により形質膜を通って伝達される。しかし、抗原のTCRのみへの結合は、最大のT細胞活性化には十分ではない。T細胞表面のその他の多くの補助分子が、付着あるいはシグナル化または両方に重要な役割をなすことは周知である。例えば、T細胞上のCD2分子は、APCのLFA−3に結合し得るが、さらに、抗体のCD2への結合は、TCR/CD3複合体により示されるシグナルを増大し得ることもまた示された。T細胞活性化に関するその他のリガンドペアーは、LFA−1/ICAM−1、CD4/MHCクラスII抗原、VLA−4/VCAM、および、最も重要なCD28/B7である。
【0009】
TCR刺激が、全T細胞活性化あるいはT細胞アネルギーを導くかを決定する共刺激性シグナルの適当な候補物は、T細胞上のCD28とAPCのB7との相互作用により生産される。CD28分子の架橋結合が、T細胞のアネルギー性になるのを救い得ることが、インビトロにおいて実証された。非特許文献4。CD28は、見かけの分子量が44 kDaである、ホモダイマーのトランスメンブラン糖タンパク質であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである(非特許文献5)。CD28分子は、CD4陽性T細胞の約95%、および、CD8陽性T細胞の50%に発現する。TCR/CD3複合体およびCD28に対するモノクローナル抗体によるT細胞の共刺激により、T細胞は非常に活性化される。非特許文献6;非特許文献7;および非特許文献8。この効果には、IL−2を含む数種のリンホカインのmRNAの安定化に明らかに関連し、これらのリンホカインの産生を大いに促進する。非特許文献7(前出);および非特許文献8(前出)。さらに、CD28応答要素は、IL−2遺伝子のエンハンサーで実証され、このことは、転写レベルでの調節もまた存在することを示唆している。非特許文献9、および、非特許文献10。CD28に介在されるT細胞活性化のある種のモデルが、CsAによる阻害に対して比較的に耐性であることが報告された。非特許文献11。
【0010】
B7は、見かけの分子量が45−65 kDaである、トランスメンブラン糖タンパク質であり、CD28のように免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。非特許文献12。B7発現CHO細胞は、TCR刺激と相乗作用し得、このことによりIL−2分泌およびT細胞増殖をもたらす。非特許文献13;および、非特許文献14。B7はまた、CTLA−4分子の組換え融合タンパク質に結合する。非特許文献15。CTLA−4もまた免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、そしてCTLA−4およびCD28の細胞質領域は、有意に相同である。非特許文献16。B7分子は、活性化B細胞(非特許文献12、前出)、IFN−γで刺激された単球(非特許文献17)、および、単離された末梢血樹枝状細胞(非特許文献18)で発現される。免疫組織化学の研究によれば、B7分子はまた、インビボにおいて、リンパ組織および非リンパ組織の両方の樹枝状細胞上に構成的に発現される。非特許文献19。
【0011】
インビボにおいて、B7抗原は、移植組織拒絶反応時にT細胞活性化に関連する。Lenschowおよび共同研究者は、ヒトCTLA−4と免疫グロブリンG1 Fc領域との可溶性融合タンパク質(CTLA4Ig)(これは、マウスおよびヒトB7の両方に強く結合する)を使用して、マウスヘの移植後の、ヒト膵島の拒絶反応を予防した(非特許文献20)。ここでCTLA4Igは、異種移植(T細胞が由来する種に対する外来抗原)の拒絶反応を遮断する。
【0012】
B7とCD28抗原間の相互作用を妨害する分子は公知である。可溶性CTLA4−Ig融合タンパク質は、この相互作用を部分的に遮断することが知られている。非特許文献21。抗CD28抗体もまたこの相互作用を遮断することが知られている。さらに、抗B7抗体が当該分野において公知である。非特許文献22;非特許文献23;非特許文献24。
【0013】
III.B細胞活性化およびCD40抗原−リガンド系
B細胞は、インビボにおける正常な免疫応答時に重要な役割をなす。外来抗原は、特異的B細胞上の表面免疫グロブリンに結合し、このことにより、エンドサイトーシス、プロセシング、MHCクラスII分子上のプロセスされたペプチドの提示、および、B細胞表面のB7抗原の上昇調節(up−regulation)を含む一連の事象の引金となる。次に、特異的T細胞は、MHCクラスII分子上に提示されたプロセス抗原のT細胞レセプター(TCR)認識を介してB細胞に結合する。TCRを介する刺激は、T細胞の活性化を開始し、T細胞のサイトカイン産生を始める。T細胞のCD28抗原とB細胞のB7抗原との間の相互作用は、さらにT細胞を活性化する第二のシグナルを提供し得、高レベルのサイトカイン分泌をもたらす。さらに、休止ヒトT細胞では発現されないCD40リガンドは、上記のシグナルを受けると、T細胞表面で上昇調節される。次に、B細胞は、B細胞表面のCD40抗原を介してCD40リガンドにより刺激され、そしてまた、可溶性サイトカインによっても刺激されて、このB細胞は成熟化して高レベルの可溶性免疫グロブリンを分泌する形質細胞になる。
【0014】
数年前に、非特許文献25では、EL4B5として知られるマウス胸腺腫EL−4系の変異体サブクローンは、ネズミおよびヒト起源の両方のB細胞を強く刺激して増殖し、インビトロにおいて免疫グロブリンを分泌する形質細胞に分化し得た。この活性化は、抗原非依存的であり、MHC制限されないことが見いだされた。ヒトB細胞の最適刺激には、活性化ヒトT細胞由来の上清液の存在が必要であるが、EL4B5細胞がホルボール−12−ミリステート13−アセテート(PMA)あるいはIL−1で予め活性化されているときには、B細胞応答もまた生じた。非特許文献26;および、非特許文献27。この培養系でのB細胞活性化は効率がよい−−制限希釈実験は、ヒトB細胞の大部分が、活性化されて増殖し、抗体分泌細胞に分化し得ることを示した。非特許文献28。
【0015】
これらの変異体EL−4細胞が、ネズミおよびヒト両方のB細胞を活性化する機構は、以前には解明されなかった。しかし、EL4B5に誘導されるB細胞の活性化には、細胞−細胞接触が必要であることは明らかである。第一に、B細胞は、PMAに刺激されるEL4B5細胞に由来の上清液の存在下では増殖しない。Zublerら、(1985)前出。第二に、B細胞は、半透過濾過膜により、PMAで処理したEL4B5細胞から分離されると、増殖しない。Zhangら、前出。マウスLFA−1、ヒトLFA−1あるいはヒトLFA−3に対する抗体、および、マウスあるいはヒトMHCクラスII分子に対する抗体は、ヒトあるいはネズミB細胞のEL4B5に誘導される増殖を抑制しない。Zublerら、(1987)およびZhangら、前出。
【0016】
CD40抗原は、B細胞の細胞表面に発現される糖タンパク質である。B細胞の分化のときに、この分子はまず前B細胞上に発現され、次いで、B細胞が形質細胞になるときに
、その細胞表面から消える。CD40分子の抗CD40抗体との架橋は、B細胞に種々の効果を媒介する。CD40抗原はヒト神経成長因子(NGF)レセプターおよび腫瘍壊死因子−α(TNF−α)レセプターに関連することは周知であり、このことは、CD40がB細胞活性化における重要な機能を有するリガンドに対するレセプターであることを示唆する。
【0017】
CD40のリガンドは、活性化T細胞の細胞表面で同定された。非特許文献29;非特許文献30;非特許文献31。CD40リガンドのcDNAクローニングは、TNF−αと相同であるII型トランスメンブラン糖タンパク質の特性を有する分子を明らかにした。非特許文献32、および、非特許文献33。CD40リガンドの細胞外ドメインは、トランスメンブラン領域に近接した2つのアルギニン残基を含有し、これらはタンパク質分解的切断を受けてリガンドの可溶性形態を生じ得る可能性のある部位を提供する。組換えCD40リガンドの発現は、この分子が精製B細胞の増殖を刺激し、そしてIL−4と共同してIgEの分泌を媒介し得ることを示した。非特許文献32、および非特許文献33、前出。結果として活性化T細胞上の機能性分子がなくなる、CD40リガンドの遺伝子の異常のせいで、被験体がIgM以外の抗体イソ型を正常なレベルで産生できないことに特徴があるまれな病気であるX連鎖性高IgM症候群が起こることが報告された。非特許文献34;および、非特許文献35。
【0018】
当業者に公知の全ての抗CD40抗体は、ヒトB細胞に刺激効果を有する。公知の抗CD40抗体を用いるB細胞表面上へのCD40分子の架橋は、B細胞に種々の効果を媒介する。抗CD40モノクローナル抗体(mAb)は、細胞間接着、増殖、および、ある種のサイトカインと共同して、抗体を分泌する細胞への成熟化を誘導し得る。例えば、公知の抗CD40 mAbは、B細胞活性化においてTヘルパー細胞の効果を模倣することを示した。FcγRIIを発現する付着細胞上にもたらされると、これらの抗体はB細胞の増殖を誘導する。非特許文献36。さらに、公知のCD40 mAbは、IL−4の存在下で、IgM、IgGおよびIgEの分泌のためのTヘルパーシグナルに代わり得る。非特許文献37。さらに、公知の抗CD40 mAbは、リンパ節から単離されたB細胞のプログラムされた細胞死(アポートシス)を防止し得る。
【0019】
【非特許文献1】Mueller,D.L.ら、Annu.Rev.Immunol.(1989)7:445
【非特許文献2】Hawrylowicz,C.M.ら、J.Immunol.(1988)141:4083
【非特許文献3】Springer,T.A.ら、Annu.Rev.Immunol.(1987)5:223
【非特許文献4】Harding,F.A.ら、Nature(1992)356:607
【非特許文献5】Aruffo,A、およびSeed,B.PNAS(USA)(1987)84:8573
【非特許文献6】Thompson,C.B.ら、PNAS(USA)(1989)86:1333−1337
【非特許文献7】June,C.H.ら、J.Immunol.(1989)143:153−161
【非特許文献8】Lindsten,T.ら、Science(1989)244:339−343
【非特許文献9】Fraser,J.D.ら、Science(1991)251:313
【非特許文献10】Verwey,C.L.ら、J.Biol.Chem.(1991)266:14179−14182
【非特許文献11】June,C.H.ら、Mol.Cell.Biol.(1987)7:4472−4481
【非特許文献12】Freeman,G.J.ら、J.Immunol.(1989)143:2714−2722
【非特許文献13】Linsley,P.S.ら、J.Exp.Med.(1991)137:721−730
【非特許文献14】Gimmi,C.D.ら、PNAS(USA)(1991)88:6575
【非特許文献15】Linsley,P.S.ら、J.Exp.Med.(1991)174:561−569
【非特許文献16】Harper,K.ら、J.Immunol.(1991)147:1037
【非特許文献17】Freedman,A.S.ら、Cell.Immunol.(1991)137:429−437
【非特許文献18】Young,J.W.ら、J.Clin.Invest.(1992)90:229−237
【非特許文献19】Vandenberghe,P.ら、”International Immunology”(1993)
【非特許文献20】Lenschow,D.J.ら、Science(1992)257:789−792
【非特許文献21】Linsley,P.S.ら、J.Exp.Med.(1991)74:561
【非特許文献22】Yokochi,T.ら、J.Immunol.(1982)128:823
【非特許文献23】Freedman,A.S.ら、J.Immunol.(1987)139:3260
【非特許文献24】Valle,A.ら、Immunol(1990)69:531
【非特許文献25】Zublerら、J.Immunol.(1985)134:3662
【非特許文献26】Zublerら、Immunological Reviews(1987)99:281
【非特許文献27】Zhangら、J.Immunol、(1990)144:2955
【非特許文献28】Wenら、Eur.J.Immunol.(1987)17:887
【非特許文献29】Fenslow,ら、J.Immunol.(1992)149:655
【非特許文献30】Laneら、Eur.J.Immunol.(1992)22:2573
【非特許文献31】Noelleら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1992)89:6550
【非特許文献32】Armitageら、Nature(1992)357:80
【非特許文献33】Spriggsら、J.Exp.Med.(1992)176:1543
【非特許文献34】Allenら、Science(1993)259:990
【非特許文献35】Korthauerら、Nature(1993)361:539
【非特許文献36】J.Banchereauら、Science(1989)251:70
【非特許文献37】H.Gascanら、J.Immunol.(1991)147:8
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、モノクローナル抗体産生細胞を生産する方法を提供する。この抗体は、特定の細胞表面分子に対して結合特異性を有する;この方法は、上記の方法の制限を克服する。本発明はまた、抗B7抗体あるいはB7抗原に結合する分子を、その他の免疫抑制剤と共に使用して、T細胞アネルギーを引き起こし、そしてそのことにより移植片拒絶反応あるいはGVHDを予防あるいは治療する方法を提供する。さらに、本発明はまた、(1)B細胞応答を阻害し得、そして、(2)抗体介在性疾患の予防あるいは治療に使用し得る新しい抗CD40抗体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
本発明は、選択された膜関連抗原に対して特異的に反応するモノクローナル抗原を産生し得る不死化細胞系を生産する方法を提供する。この方法では、典型的には、バキュロウイルスベクターを用いる抗原コーディング配列の組換え発現を経て、膜関連抗原は、昆虫細胞の細胞表面に産生される。これらの昆虫細胞を、宿主動物に注射する。膜関連抗原に対する抗体を産生し得る細胞を回収する;そのような細胞を、細胞培養において増殖するために不死化する。不死化細胞を、膜関連抗原に特異的な抗体の産生についてスクリーニングする。典型的には表面に膜関連抗原を有する非昆虫細胞を使用する結合アッセイを用いてスクリーニングを行う。上記非昆虫細胞表面の膜関連抗原に結合する抗体を産生する不死化細胞を、選択する。
【0022】
1つの実施態様では、膜関連抗原をコードするDNA配列を、選択された昆虫細胞での抗原発現に適したバキュロウイルスベクター中に、作動可能に挿入する。抗原をコードするDNA配列を有するベクターを、例えばベクターのトランスフェクションにより、昆虫細胞へ導入する。細胞表面の膜関連抗原を産生するベクターで形質転換された昆虫細胞を、選択する。
【0023】
目的の膜関連抗原をコードする標的DNA配列を単離する1つの方法は、標的DNA配列を含有するDNAあるいはRNAテンプレートのいずれかを使用するポリメラーゼ連鎖反応を用いることである。本発明の実施に有用な昆虫細胞は、Spodoptera frugiperdaから得られ得る。膜関連抗原に対する抗体分子を産生し得る、一般的に使用される動物細胞は、脾細胞あるいはリンパ球である;宿主動物細胞の不死化を、標準的な方法により完了する。本発明の1つの実施態様では、宿主動物はマウスである。
【0024】
上記の方法では、表面に膜関連抗原を有する、ヒト細胞を含む多くの非昆虫細胞を使用し得る。このような非昆虫細胞は、初代細胞あるいは培養細胞であり得る。1つの実施態様では、非昆虫細胞は、培養ヒトリンパ球、特に形質転換B細胞であり得る。
【0025】
本発明の方法において、有用な膜関連抗原には、以下のものが含まれる:ヒト細胞表面タンパク質;末梢血単核細胞の抗原標識タンパク質、例えば、CD40あるいはB7;および、ヒト細胞表面に存在するウイルス抗原タンパク質。
【0026】
本発明ではまた、選択された膜関連抗原に特異的な抗体を含有する血清を産生する方法を記載する。この方法おいて、膜関連抗原は昆虫細胞の細胞表面に存在し、この細胞を宿主動物に注射し、そして、膜関連抗原に特異的な抗体の存在について動物由来の血清をスクリーニングする。このようなスクリーニングには、典型的には、細胞表面に膜関連抗原を有する非昆虫細胞を用いる結合アッセイを使用する。
【0027】
また、スクリーニングアッセイで、抗原を発現する組換え非昆虫細胞を用いて、選択された膜関連抗原に対する抗体の存在について、血清およびハイブリドーマ上清液を試験し得る。
【0028】
本発明はまた、B7抗原に結合する分子(上記の方法により産生された抗B7モノクローナル抗体のような)と、免疫抑制剤との、被験体への共投与が、アロ抗原(T細胞と同種の細胞固有の抗原)に対して長期間継続するT細胞アネルギーを誘導し得るという発見に基づいている。
【0029】
従って、本発明は、被験体における移植組織拒絶反応を予防する方法を提供し、この方法は、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、(1)B7抗原に結合する分子、および(2)シクロスポリンA、FK506あるいはコルチコステロイドのような免疫抑制剤の治療上有効な量を投与することを包含する。本発明の好ましい実施態様では、B7抗原に結合する分子は抗B7抗体である。
【0030】
さらに、本発明は、被験体における移植片対宿主病(GVHD)を予防あるいは治療する方法を提供し、この方法は、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、(1)B7抗原に結合する分子、および(2)シクロスポリンA、FK506あるいはコルチコステロイドのような免疫抑制剤の治療上有効な量を投与することを包含する。本発明の好ましい実施態様では、B7抗原に結合する分子は抗B7抗体である。
【0031】
さらに、本発明は、被験体のリウマチ様関節炎の予防および治療する方法を提供し、この方法は、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、(1)B7抗原に結合する分子、および(2)シクロスポリンA、FK506あるいはコルチコステロイドのような免疫抑制剤の治療上有効な量を投与することを包含する。本発明の好ましい実施態様では、B7抗原に結合する分子は抗B7抗体である。
【0032】
上記の方法のさらに好ましい実施態様では、抗B7抗体は、本明細書に記載されているように産生された、モノクローナル抗体であり、最も好ましくはB7−24モノクローナル抗体である。
【0033】
本発明はさらに、上記の方法により産生されたヒトB細胞の成長および分化を刺激しない抗CD40抗体の発見に基づく。逆に、これらの抗体は、比較的低濃度で、ヒトB細胞応答を阻害し得る。従って、ヒトB細胞応答により産生される抗体に介在される疾患あるいは症状を、予防あるいは治療するためにこれらの抗体を使用し得る。これらの抗体はまた、B細胞応答を調節するのに有用な、CD40抗原上の新規なエピトープを認識する。
【0034】
従って、本発明は、ヒトB細胞表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体を提供し、CD40抗原への抗体の結合は、B細胞の成長あるいは分化を抑制する。
【0035】
さらに、本発明は、被験体の抗体介在性疾患を予防あるいは治療する方法を提供し、この方法は、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、ヒトB細胞表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体の治療上有効な量を投与することを包含する。ここにおいて、抗体のCD40抗原への結合は、B細胞の成長あるいは分化を妨げる。
【0036】
さらに、本発明は、被験体のアレルギーのようなIgE介在性疾患を予防あるいは治療
する方法を提供し、この方法は、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、ヒトB細胞表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体の治療上有効な量を投与することを包含し、ここにおいて、抗体のCD40抗原への結合は、B細胞の成長あるいは分化を妨げる。
【0037】
さらに、本発明は、被験体の抗体介在性自己免疫疾患を予防あるいは治療する方法を提供し、この方法は、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、ヒトB細胞表面に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体の治療上有効な量を投与することを包含し、ここにおいて、抗体のCD40抗原への結合は、B細胞の成長あるいは分化を妨げる。この方法によって治療が期待される特定の自己免疫疾患には、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)および特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が含まれる。
【0038】
さらに、本発明は、CD40抗原の抗CD40モノクローナル抗体への結合と競合し得るCD40抗原エピトープを提供し、ここにおいて、この抗体のヒトB細胞表面に位置するヒトCD40抗原への結合は、B細胞の成長あるいは分化を抑制する。
【0039】
上記目的のさらに好ましい実施態様では、抗CD40モノクローナル抗体は、上記の方法により産生され、そして5D12、3A8あるいは3C6のいずれかである。
【0040】
本発明はまた、選択された膜関連抗原に対して特異的なモノクローナル抗体を産生する不死化細胞系を生産する方法であって、該方法が以下の工程を包含する、方法を提供し、この方法は、昆虫細胞の細胞表面上で膜関連抗原を産生する工程;該昆虫細胞を宿主動物内に注入する工程;抗体分子を産生し得る細胞を該宿主動物から回収する工程;細胞培養における増殖のために該抗体分子を産生し得る細胞を不死化する工程;非昆虫細胞の表面上に膜関連抗原を有する非昆虫細胞を用いる結合アッセイで、膜関連抗原に特異的な抗体の産生に対して該不死化細胞をスクリーニングする工程;および該非昆虫細胞の表面上で膜関連抗原に結合する抗体を産生するこれらの不死化細胞を選別する工程を包含する。
【0041】
好ましい実施形態においては、前記産生する工程が、以下の工程:選択された昆虫細胞内で前記抗原の発現に適するバキュロウイルスベクター内に、前記膜関連抗原をコードするDNA配列を作動可能に挿入する工程;該ベクターを用いて昆虫細胞をトランスフェクトする工程;および該昆虫細胞の細胞表面上で膜関連抗原を産生する該ベクターで形質転換された昆虫細胞を選別する工程をさらに包含する。
【0042】
本発明はさらに、選択された膜関連抗原に対して特異的な抗体を含有する血清を生産する方法であって、該方法が以下の工程を含む、方法を提供する:昆虫細胞の細胞表面上で膜関連抗原を産生する工程;該昆虫細胞を宿主動物内に注入する工程;および細胞表面上に膜関連抗原を有する非昆虫細胞を用いる結合アッセイにおいて、膜関連抗原に特異的な抗体の産生に対して該動物から血清をスクリーニングする工程。
【0043】
本発明はさらに、被験体における移植組織の拒絶反応を予防する方法であって、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、(a)B7抗原に結合する分子および(b)免疫抑制剤の治療上有効な量を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0044】
本発明さらに、被験体における移植片対宿主病(GVHD)を予防または治療する方法であって、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、(a)B7抗原に結合する分子および(b)免疫抑制剤の治療上有効な量を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0045】
本発明さらに、被験体におけるリウマチ様関節炎を予防または治療する方法であって、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、(a)B7抗原に結合する分子および(b)免疫抑制剤の治療上有効な量を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0046】
好ましい実施態様において、前記B7抗原に結合する分子は、抗−B7抗体である。
【0047】
さらに好ましい実施態様では、上記方法において、前記免疫抑制剤は、シクロスポリンA、FK506、ラパマイシンおよびコルチコステロイドからなる群より選択される。
【0048】
本発明はさらに、被験体における抗体介在性疾患を予防または治療する方法であって、そのような治療を必要とする被験体に、薬学的に受容可能な賦形剤中の、ヒトB細胞の表面上に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体の治療上有効な量を投与する工程を包含し、ここで該CD40抗原への該抗体の結合が、該B細胞の成長または分化を妨げる、方法を提供する。
【0049】

好ましい実施形態において、前記抗体介在性疾患は、IgE介在性疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、および特発性血小板減少性紫斑病(ITP)からなる群より選択される。
【0050】
さらに好ましい実施形態では、前記モノクローナル抗体は、5D12、3A8および3C6からなる群より選択される。
【0051】
本発明はさらに、抗CD40モノクローナル抗体と免疫反応するCD40抗原エピトープであって、ヒトB細胞の表面上に位置するヒトCD40抗原への該モノクローナル抗体の結合が、該B細胞の成長または分化を妨げる、CD40抗原エピトープを提供する。
【0052】
本発明さらに、モノクローナル抗体B7−24を提供する。
【0053】
本発明さらに、ヒトB細胞の表面上に位置するヒトCD40抗原に結合し得るモノクローナル抗体であって、該CD40抗原への該抗体の結合が、該B細胞の成長または分化を妨げる、モノクローナル抗体を提供する。
【0054】
本発明はさらに、5D12、3A8および3C6からなる群より選択されるモノクローナル抗体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載されている発明は、以前に公表された刊行物および係属中の特許出願を引用する。例えば、このような刊行物は、科学報文、特許、あるいは係属中の出願からなる。以上あるいは以下に掲載されたこれらの全刊行物および出願は、本明細書中で参考として援用されている。
【0056】
I.定義:
本明細書で使用される用語「膜関連抗原」、「細胞表面分子」および「細胞表面抗原」とはすべて、タンパク質、ポリペプチドあるいはペプチドのことであり、このタンパク質、ポリペプチドあるいはペプチドの少なくとも1つの抗原性部分が、生物学的膜の表面に露出し、以下に示す1つまたはそれ以上の共有結合された部分を有し得る:1つまたはそ
れ以上の単糖あるいは複合糖部分(糖タンパク質として)、脂質部分(リポタンパク質として)、脂質および糖の組合せ部分、あるいは、その他翻訳後の改変。
【0057】
「タンパク質」とは、典型的にはアミノ酸の長い鎖に基づくポリマー(ポリペプチド)のことである。タンパク質は、1つ、2つ、あるいはそれ以上のポリペプチド鎖から構成され得、さらに、炭水化物のようなポリペプチド鎖に関連するその他の型の物質を含有し得る。タンパク質の大きさは、(任意の数である)5,000から数十万g/moleの広範囲におよぶ。5,000の数は、およそ40−45個のアミノ酸の存在に対応する。約5,000g/mole未満のタンパク質は、典型的にはポリペプチドあるいは単にペプチドと呼ばれる(Bohinski)。
【0058】
本明細書で使用される用語「抗体」とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、1本鎖抗体、および、Fab’、F(ab’)2、Fのようなそれらのフラグメント、ならびに、親抗体の抗原結合機能をとどめているその他のフラグメントのことである。
【0059】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、均一な抗体分布を有する抗体組成物のことである。この用語は、抗体の種あるいは起源に関して限定されず、さらに産生される様式により限定されることも意図されない。この用語は、全免疫グロブリン、および、Fab’、F(ab’)2、F、およびその抗体の抗原結合機能をとどめているその他のフラグメントのことを指す。いかなる哺乳類種のモノクローナル抗体でも、本発明に使用され得る。しかし実際問題として、モノクローナル抗体を産生するために要求されるハイブリッド細胞系あるいはハイブリドーマをつくるのに使用するラットあるいはネズミ細胞の入手可能性の理由により、抗体は典型的にはラットあるいはネズミ起源となる。
【0060】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」とは、免疫グロブリンの枠組み構造領域の少なくとも一部が、ヒト免疫グロブリン配列に由来することを意味する。
【0061】
本明細書で使用される用語「1本鎖抗体」とは、結合抗体の結合ドメイン(重鎖および軽鎖の両方)を決定し、結合機能を保存し得る連結部分を供給することにより調製される抗体のことである。本質的にこれは、抗原への結合に必要な可変領域部分のみを有する、根本的に短縮された抗体の形をとる。1本鎖抗体の決定および構築は、Ladnerらの米国特許第4,946,778号に記載されている。
【0062】
本明細書で使用される用語「B7抗原に結合する分子」とは、同じ環境下ではその他の物質がB7抗原に複合体化されない環境下で、B7抗原と複合体を形成し得る分子を意味する。その複合体は、CD28あるいはCTLA4抗原を介する、B7の正常なシグナル変換経路を遮断する様式で形成される。B7抗原に結合する分子には、D28、CTLA4、CTLA4Igおよび抗B7抗体が含まれる。
【0063】
本明細書で使用される用語「CD40抗原エピトープ」とは、CD40抗原それ自身を除いた、本発明の抗CD40モノクローナル抗体と免疫反応し得る分子のことである。CD40抗原エピトープは、タンパク質、タンパク質フラグメンント、ペプチド、炭水化物、脂質、およびその他の分子を含み得るが、本発明の目的に対しては、最も一般的には、タンパク質、短いオリゴペプチド、オリゴペプチド擬似体(すなわち、CD40抗原の抗体結合特性を模倣する有機化合物)、あるいはそれらの組合せである。適切なオリゴペプチド擬似体は、特に、PCT出願US91/04282に記載されている。
【0064】
II.膜関連抗原分子に対する抗体の生産
この章では、免疫原としてトランスフェクトされた昆虫細胞を使用する、細胞表面分子に対する抗体の生産および選択の方法を記載する。本発明のトランスフェクトされた昆虫細胞はまた、スクリーニングアッセイに使用され得る。
【0065】
1つの実施態様では、本発明は、細胞表面抗原に対するポリクローナル抗体を産生する方法を包含する。この方法は以下の工程を包含する:(i)目的の抗原をコードする核酸コーディング配列の選択および単離、(ii)コーディング配列の効率よい発現を得るための、バキュロウイルス発現ベクターヘのコーディング配列の挿入、(iii)選択された抗原を発現する組換え昆虫細胞を得るための、発現ベクターの昆虫細胞へのトランスフェクト、および(iv)膜関連抗原を発現する昆虫細胞を用いた宿主動物の免疫;を包含する、免疫工程。
【0066】
免疫後に、宿主動物の血清を、目的の抗原を発現する、昆虫細胞以外の細胞に対してスクリーニングする。あるいは、目的の抗原を含有する膜画分、またはある場合には、精製した組換え産生抗原自体を、血清をスクリーニングするために使用し得る。典型的には、(a)予め採血された血清、(b)目的の抗原を発現しない昆虫細胞で免疫した宿主動物の血清、および(c)組換え昆虫細胞で免疫した宿主動物の血清を、スクリーニングする。目的の抗原に特異的な抗体の存在は、血清(a)および(b)による陰性反応、および血清(c)による陽性反応によって示される。
【0067】
本発明の別の実施態様では、本発明は、細胞表面タンパク質に対するモノクローナル抗体を産生する、ハイブリドーマの生産方法を包含する。この方法には、上記の(i)から(iv)の工程が包含される。組換え昆虫細胞を用いた宿主動物の免疫後に、抗体産生細胞を、動物から単離する。本発明の好ましい実施態様では、このような抗体産生細胞は、ハイブリドーマ細胞を生産するために使用され、このハイブリドーマ細胞はクローン化されてモノクローナル抗体の産生に使用される。このようなハイブリドーマ細胞由来の上清液を、例えば、以下に記載されている細胞に基づくスクリーニングアッセイにより、特異的な抗体産生についてスクリーニングする。
【0068】
A.膜分子に対するコーディング配列の単離
選択された膜関連抗原に対する核酸コーディング配列は、公知の上記抗原のタンパク質成分に対するアミノ酸および/またはDNAコーディング配列に基づいて単離され得る。このコーディング配列は、生物学的ソースから標準の方法で単離され得る(Ausuelら;Maniatisら;Sambrookら)(例えば、ハイブリダイゼーション、分化ハイブリダイゼーション(differential hybridization)、クローニングおよびプラークスクリーニングなど)。また、目的の抗原をコーディングする合成オリゴヌクレオチド配列は、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製され得、または、例えばSynthetic Genetics社(San Diego,CA)から購入され得る。大きなコーディング配列の場合、上記オリゴヌクレオチドコーディング配列は、このコーディング配列に対応した多数のオリゴヌクレオチドフラグメントの縦列配列を包含する一連のクローニング工程を経て合成され得る(Crea;Yoshioら;Eatonら)。オリゴヌクレオチドコーディング配列は、標準の組換え方法(Maniatisら;Ausubelら)で、または、ポリメラーゼ連鎖反応(Mullis;Mullisら)で増幅され単離され得る。
【0069】
上記膜関連抗原の配列が公知のまたは一部公知の場合、特異的な抗原コーディング配列が単離され得る。典型的には、この抗原コーディング配列は、cDNAライブラリーから単離され、DNAフラグメントを、選択されたソースからベクターへ挿入することによって生産され得る。膜抗原含有ソース由来のDNAフラグメントを含有するcDNAライブラリーは、標的RNA分子から生産されたランダムフラグメントcDNA分子を用いて組
み立てられ得る。このようなcDNAライブラリーは、一般にバクテリア系(例えば、ラムダgt10(Promega,Madison WI))を用いて組み立てられ得るだけでなく、従来技術を用いて、酵母または真核性発現系においても組み立てられ得る(Ausubel)。
【0070】
このライブラリーは、典型的には、プローブとして、公知の、または、抗原コーディング領域とハイブリダイゼーション可能なコンセンサス配列を有するオリゴヌクレオチドを用いて、膜関連抗原DNA配列の存在に対してスクリーニングされる(通常はハイブリダイゼーションによる;Ausubelら;Maniatisら)。上記プローブは、放射性同位元素、ビオチンおよびジゴキシゲニンを含む多くの検出部分を有し得る。また、核酸プローブ配列が利用できない場合、目的のコーディング領域を有するクローンのスクリーニングは、例えば、免疫スクリーニングを用いて実行され得る(Promega社製”PROTOCLONE”lambda gt11系を使用;Youngら;Huynhら)。
【0071】
コーディング領域は、正のシグナルを与える組換え型単離体から(ハイブリダイゼーションまたは免疫学的スクリーニングのいずれかによって)単離される。典型的には、コーディング領域を含有するDNAフラグメントは、制限消化によって単離され、次いでサイズ分画およびフラグメント精製される。このような核酸コーディング領域は、次いで、以下のB項に記述されるpAcC8ベクター(図1A)のようなバキュロウイルス転移ベクターに挿入するために加工され得る。また、pVL1393ベクター(Luckowら)およびpAc3T3ベクター(Summersら)を含有するバキュロウイルスベクターが利用できる。
【0072】
また、コーディング配列は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅(Mullis;Mullisら)によっても単離され得る。上記PCRに有用なプライマーは、公知の核酸配列いずれからも誘導され得る。正確な配列が公知でない場合、縮重プライマーが使用され得る(Mullis;Mullisら)。典型的には、これらのプライマーは、8個またはそれ以上の共直線ヌクレオチドからなる2つの核酸配列であり、ここで、この2つの配列は、標的配列を生産するために、ある一定の間隔で分割され(実施例1)、対向するストランドに相補的である。
【0073】
典型的なPCRサイクルは以下の工程を包含した:高温での溶融、続いてアニーリング、および伸張。この反応を25−30サイクル繰り返す。PCR生成物は制限酵素によって消化され得、そして、分離用1.5%アガロースゲルを用いて電気泳動で分析され得る。クローンに特異的な、増幅されたフラグメントは、典型的には電気泳動ゲルサイズ分画法によって同定される。このクローンされた特異的なDNAフラグメントは、次いで、例えば”GENE CLEAN”系(BIO 101,La Jolla CA)を用いて、上記ゲルから回収される。必要であれば、このDNAは、フェノールおよび/またはフェノール:クロロホルム(1:1)で抽出され得る。単離されたDNAは、エタノールで沈澱する。沈澱後、このDNAは、バキュロウイルス発現ベクターに挿入するために使用される。
【0074】
ヒトCD40またはB7抗原を発現するSf9細胞の生産を、模式的に図1Bに示す。図に示すように、RNAは、エプスタイン−バーウイルス(EBV)形質転換ヒト脾臓細胞群から、標準の方法を用いて単離される(Chirgwinら)。総RNAは、確立した方法によるランダムヘキサマープライミングを用いて、cDNAに転化される(詳細は実施例1に示す)。目的の膜関連抗原分子をコーディングするDNA分子は、5’末端におけるクローニングに対する制限部分を有する順方向および逆方向プライマーを用いて、PCR増幅によって生産される。ヒトCD40およびヒトB7抗原に対するコーディング
領域の調製に使用されるこのようなcDNAプライマーを、図2に示す。これらのプライマーは、CD40およびB7抗原に対する確立された完全なDNAコーディング配列に基づいて構築された(Freemanら、1989;Stamenkovicら、1989)。
【0075】
さらに図1Bに関して、cDNAは、Thermus aquaticsから得られたポリメラーゼのような熱安定性ポリメラーゼ、等モルのデオキシヌクレオチドの混合物、および緩衝液系の存在下で、順方向プライマーおよび逆方向プライマーと混合される(実施例1)。この混合物は、熱循環器中で増幅され、得られたPCR産物は、バキュロウイルス転移ベクターのポリリンカー中でサブクローニングされる。このようなベクターの1つであるpAcC8を、図1Aに図形的に示す。ポリヘドリンプロモーター(Miller)(polyhedrin promoter)の下流に独特な制限エンドヌクレアーゼ部分を含有する多くのこのようなバキュロウイルス転移ベクターはいずれも、本発明の実施に使用され得る:Autographica californica核多角体病ウイルス(AcNPV)(Wuら;Matsuuraら;Takeharaら)、または、Bombyx mori核多角体病ウイルス(pBmNPV)ポリヘドリンmRNA(Nyunoyaら;Sekineら)。
【0076】
バキュロウイルス中の発現前に、DNAの挿入は、典型的には配列決定分析によってPCR誘導突然変異について検査される。
【0077】
B.抗原コーディング配列のバキュロウイルスベクターへの挿入
膜関連抗原コーディング配列のバキュロウイルスベクターヘの挿入は、確立した方法に従って実行される(Ausubelら;Maniatisら;Sambrookら)。ヒトB7およびヒトCD40をコーディングする全長cDNAは、クローニングに対する制限部分を有するプライマーを用いたPCRによって生産された。PCR増幅に対する鋳型は、EBV形質転換ヒト脾臓B細胞RNAから生産されたcDNAであった。手短に言えば、単離されたDNAコーディング領域は、バキュロウイルス転移ベクター、または、pAcC8プラスミドのようなプラスミドに連結され、その結果、膜関連コーディング領域はポリヘドロンプロモーターの下流となる。このポリヘドロン遺伝子ATGはATTに突然変異し(図1A)、機能性ATGを有するコーディング配列を含有しない組換え型クローンにおける翻訳開始が起こらないようにする。生じるプラスミドDNAは、野生型バキュロウイルス(AcNPV)で、Spodoptera frugiperda(Sf9細胞)由来の昆虫細胞にトランスフェクションされ、野生型ウイルスと膜関連抗原遺伝子を運搬する組換え型ベクターとの間の生体内組換えを経て、組換え型ウイルス粒子を創造する。
【0078】
実施例1−2は、DNAの異形セグメントを含有する組換え型バキュロウイルスベクターの単離を記述する:すなわち、pAcCD40(全長CD40分子をコーディングする)、pAcCD40−ED/Glu(CD40の細胞外ドメインをコーディングする)、pAcB7(全長B7分子をコーディングする)、およびpCcB7−ED/Glu(B7分子の細胞ドメインをコーディングする)の単離を記述する。
【0079】
C.昆虫細胞のバキュロウイルスベクターによる感染
上記の組換え型ウイルスは、次いで、昆虫細胞を共感染させるために使用された(実施例2)。これらの細胞は、次いで、異形のDNA挿入によってコーディングされた抗原を発現させた。
【0080】
Sf9細胞(Spodoptera frugiperda;Summersら)は、10細胞/mlの密度で、組換え型ウイルスで感染させた。組換え型バキュロウイルス
に感染したSf9細胞は、同定され、そしてクローン精製された(Summersら)。
【0081】
細胞表面抗原を発現させる細胞は、48時間後に収穫され、そして宿主動物の免疫化に使用された。分泌組換えタンパク質の生産のために、上記細胞は72時間の培養後収穫された。
【0082】
Sf9細胞表面上の組換え型分子の発現(実施例3)は、ELISAシステム(Harlowら)を用いて試験された。図3は、抗(B7)モノクローナル抗体BB−1は、AcB7ウイルスに感染したSf9細胞のみと反応し、ヒトCD26を発現させるSf9細胞とは反応しなかったことを示す。対照的に、抗(CD26)モノクローナル抗体Ta−1は、CD40を発現させるSf9細胞のみと反応した。図4は、抗(CD40)モノクローナル抗体S2C6が、CD40を発現させるSf9細胞のみと反応し、B7を発現させるSf9細胞とは反応しなかったことを示す。これらの結果は、バキュロウイルス系における選択された膜関連抗原の生産に対する本発明の方法の特異性を示す。これらの結果は、膜関連抗原がSf9細胞表面上でさらされることも示す。
【0083】
さらに、これらの結果は、選択された膜関連抗原を発現させるSf9細胞が、選択された抗原に対する反応性を有する抗体の存在に対して、血清およびハイブリドーマ上清液をスクリーニングするために使用され得ることを示唆する。
【0084】
D.膜関連抗原を発現する昆虫細胞の宿主動物への注入
ポリクローナル抗体の生産に適当な宿主動物には、例えば、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、チンパンジー、およびイヌが挙げられる。本発明の1つの利点は、免疫化アジュバントが一般に必要とされないことである。
【0085】
モノクローナル抗体の生産に使用される適当な宿主動物には、通常、ラット、ハムスター、およびマウスが挙げられる。しかし、ヒトに免疫的に近い抗体の生産を所望する場合、このような抗体のソースは、チンパンジーのような高等な霊長類を含み得る。ヘテロミエローマ融合パートナーとの融合は、モノクローナル抗体の生産に使用され得る(Carroll;Perkins,1991)。このような融合は、混合した細胞のポリエチレングリコールヘの曝露、および、細胞の強い電場への曝露(電気融合)を含む多くの当業者に公知の方法によって達成され得る(Harlowら)。ハイブリドーマは、選択培地中での増殖によって選択され、次いで、以下に記載のように抗原特異性について試験される。
【0086】
CD40およびB7に対するモノクローナル抗体の生産について、マウスが、細胞表面上に上記分子を発現させるSf9細胞によって免疫化された(実施例5)。2回目の免疫化の1週間後、マウスは採血され、そして、血清は、特異性抗体の存在に対してEBV形質転換B細胞の蛍光細胞染色により分析された(実施例3)。図5は、上記細胞染色の結果を示す。この細胞染色は、CD40またはB7を発現させるSf9細胞によって免疫化されたマウスが、EBV形質転換B細胞系ARC(American Type Culture Collection(A.T.C.C.)、12301 Parklawn
Dr.,Rockville MD 20852)に対するCD40およびB7の双方に対し陽性である血清力価(titre)を有したことを示す。これに対して、対照Sf9細胞によって免疫化されたマウスは、上記ARC細胞に対する活性を示さなかった。この結果は、宿主動物が、選択の膜関連抗原を発現させるSf9細胞によって免疫化され得ることを示し、免疫化の結果、組換え型抗原に対する抗体を含む免疫応答が起こることを示す。上記の免疫化は、Sf9昆虫細胞中でクローンされた組換え型ヒトタンパク質以外のヒトタンパク質と相互反応性である抗体を生じない。
【0087】
あるマウスにはSf9細胞を発現させるCD40を、あるマウスにはSF9細胞を発現させるB7を、最終ブースター注射で投与した。ブースター注射の3日後、脾臓は除去され、そして脾細胞はSP2/0ネズミミエローマ細胞と融合された。
【0088】
E.特異的な抗体産生リンパ球の単離および不死化
モノクローナル抗体産生のための抗体産生リンパ球は、好ましくは、免疫化された宿主動物の骨髄、脾臓またはリンパ節から単離され得るようなB−リンパ球である(Harlowら)。
【0089】
また、B−リンパ球は末梢循環から単離され得る。この場合、血液試料は遠心分離され、そして勾配分離法(gradient separation techniques)によって粗(crude)末梢血リンパ球(PBL)混合物を産生する。単球およびT−リンパ球は、確立した手法によって、選択的にこの細胞混合物から除去される(Mishell)。上記の残りの細胞には、「パンニング(panning)」手続のような選択手続がとられ得る。この手続中に、抗原親和性を有する細胞は、抗原を含有する親和性マトリックスによる選択的捕捉によって濃縮される。本発明の意味からは、このようなマトリックスは、膜関連抗原を発現させる細胞を含有する。
【0090】
B−リンパ球が上記の循環から単離される場合、エプスタイン−バーウイルスのような形質転換ウイルスによる形質転換が有利であり得る。形質転換細胞(リンパ芽球様細胞)は、継代培養ウェル中で分配され、そして培地中で数週間維持され、特異性抗体産生に対して試験される。このような特異性抗体産生を示す培地は、拡張され、そして、上記のようなポリエチレングリコールまたは電気融合を含む1つまたはそれ以上の標準の融合プロトコルを用いて、種に適するミエローマパートナー細胞と融合される。種々のソース由来のB−リンパ球の単離および不死化の方法は、当業者に周知である。
【0091】
本発明を支持すべく実行された実験において、免疫化されたマウス由来の脾細胞は、以前にde Boerら(1988)によって記述されたように、SP2/0ネズミミエローマ細胞ポリエチレングリコールと融合された。ハイブリドーマクローンは実施例6に記載のように処理された。
【0092】
表1(実施例6)は、融合データを要約する。CD40融合の後、細胞の半分のみが、480ウェル中でシードされた。この結果、ハイブリドーマが351ウェル中で増殖した。B7融合の後、この細胞は960のウェル中に分配され、そして、この融合によりハイブリドーマが312ウェル中で増殖した。融合の14日後、12ウェルの上清液がプールされ、このプールは、ARC細胞反応性である抗体の存在について試験された。FACS分析は、CD40融合由来の4つのプールおよびB7融合由来の1つのプールがARC細胞に対して反応性であることを明らかにした。反応性を示すプール由来の個々の上清液が再試験され、CD40反応性の4ウェルおよびB7反応性の1ウェルが同定された。上記の反応性ウェル由来の細胞は、限界希釈によってクローニングされ、そして、3回の細胞増殖の後、4つの安定な抗−(CD40)ハイブリドーマクローン(CD40−3A8、CD40−3C6、CD40−5D12、CD40−5)および1つの安定な抗−(B7)ハイブリドーマクローン(B7−24)が確立された。これらの結果は、選択された膜関連抗原に対するモノクローナル抗体を分泌する安定なハイブリドーマクローンを達成する能力を示す。
【0093】
ハイブリドーマ融合物をスクリーニングする多くの方法が利用でき(Harlowら)、これらは以下を包含する:(i)例えば、放射性標識された一部精製または精製抗原のような標識された抗原、(ii)例えば、組換え型抗原を発現させるSf9細胞のような全細胞または透過細胞、を用いる抗体捕捉、および、(i)溶液中の抗体/抗原、(ii
)固相の抗体/抗原、を用いる抗原捕捉。
【0094】
F.モノクローナル抗体の特異性の試験
EBV−形質転換細胞を、1次ハイブリドーマ上清液のスクリーニングに用い、そして限界希釈クローニングの後の生成物のスクリーニングに用いた。以下に示す複数の証拠は、4種の抗−(CD40)および1種の抗−(B7)モノクローナル抗体が生成されたことを示唆する。
【0095】
第1に、5種のハイブリドーマクローン全部からの上清液は、ARC細胞および他のEBV−形質転換B細胞系と反応したが、T細胞系のHSB(A.T.C.C.)およびCEMM(A.T.C.C.)とは反応しなかった。
【0096】
第2に、競合結合実験を、本発明のモノクローナル抗体および可溶形標的抗原を用いて行った(実施例7)。ハイブリドーマ上清液を可溶形CD40およびB7とあらかじめインキュベートした(実施例7)。続いて、混合物を蛍光細胞染色のためにARC細胞に添加した。競合実験の結果を図6に示す。データは、可溶性B7が、ARC細胞に対する抗−(B7)モノクローナル抗体B7−24の結合を遮断し得たが、可溶性CD40はし得なかったことを示す。逆に、可溶性CD40は、ARC細胞に対する抗−(CD40)モノクローナル抗体CD40−3A8の結合を遮断し得たが、可溶性B7はし得なかったことを示す。別の3種の抗−(CD40)モノクローナル抗体でも、類似の結果を得た。さらに、可溶性CD如40が抗−(CD40)モノクローナル抗体に及ぼす効果、および可溶性B7が抗−(B7)モノクローナル抗体に及ぼす効果は、濃度に依存するものであった。可溶性タンパク質の量が減少すると、ARC細胞に対する抗体の結合の遮断が減少した。
【0097】
さらに分析するために、抗−(CD40)および抗−(B7)モノクローナル抗体を、それらの扁桃B細胞に結合する能力について試験した(実施例8)。表2は、新たに単離した扁桃B細胞の89−95パーセントが、4種の抗−(CD40)モノクローナル抗体で陽性に染色されたことを示す。ほぼ同じパーセントの細胞が、抗−(CD40)モノクローナル抗体G28.5に陽性であった(Clarkら)。表3は、新たに単離した扁桃B細胞の12−17パーセントが、抗−(B7)モノクローナル抗体BT−24で陽性に染色されたことを示す。しかし、扁桃B細胞を固定化抗−(IgM)抗体およびIL−2の存在下で、5日間インキュベートした場合、B7−24に対する陽性細胞のパーセントは、約25パーセントまで増加した。
【0098】
さらに、扁桃B細胞が抗−(IgM)抗体およびIL−2で刺激された場合、B7−24に陽性のB細胞の数が増加するだけでなく、細胞1個当りの蛍光染色量にも著しい増加がみられ、これは刺激後、B7の発現が増加することを示唆した。
【0099】
上記のデータは、膜関連抗原と特異的に反応するモノクローナル抗体を単離する手段が、本発明の方法によって与えられることを示唆する。本発明の方法により得られたモノクローナル抗体は、上記のように類型され得る(Harlowら)。
【0100】
G.用途
モノクローナル抗体の生成のためには、精製した物質でマウスを免疫化することが最も望ましい。しかし、膜抗原の精製には専門的で複雑な技術を要し、そしてさらに膜からの抽出は、分子構造を改変させ得る。それに加えて、タンパク質を可溶化すると、その免疫原性がしばしば減少する。それ故に、細胞表面抗原に対するモノクローナル抗体のほとんどは、全細胞または膜画分でマウスを免疫化した後に、得てきた。多くの場合、特異的なリンパ球のサブセットをマウスに注射し、モノクローナル抗体の一団を得てきた。これら
の抗体を、それらが結合する抗原の単離および特徴付けに用いてきた。マウスを全細胞で免疫化したとき、多数の異分子に対して抗体が作り出される。それ故、ハイブリドーマクローンによって生成された特異的抗体をスクリーニングするために、同じ細胞を用いることは困難である。
【0101】
上記で触れた問題を避けるために、本発明の方法は、昆虫細胞中の膜関連抗原の発現、および宿主動物を免疫化するためのこれら昆虫細胞の使用を包含する。PCR技術(Saikiら、1985;Saikiら、1988;Mullis;Mullis,ら)を導入して以来、コードする核酸のコード配列がすでに公開されているタンパク質に対するcDNAをクローン化することは比較的直接的になった。発現ベクターヘのクローニングを容易にするために、完全なコード領域のみにわたるPCRプライマーを使用し得、そしてこのプライマー中に制限部位を取り込ませ得る。
【0102】
ヒトの細胞内、分泌、およびトランスメンブランタンパク質は、ポリヘドリンタンパク質に対する必須でないバキュロウイルス遺伝子での調節下の細胞内において発現する場合、昆虫細胞中で高レベルで発現し得る(Webbら、1989;Luckowにより再検討、1990)。本発明を支持すべく行った実験では、ヒトCD40またはヒトB7を発現する5X10個のSf9細胞を2回だけ注射すると、これらの抗原に対する良好な血清力価(titres)を得られることが示された。さらに、昆虫細胞自体は、ヒト細胞と相互反応性の免疫応答を誘起しなかった。これは、ハイブリドーマクローンによる特異的抗体産生のスクリーニングに、EBV形質転換B細胞を使用することを可能にした。ここで、偽陽性の結果を得る危険は最小であった。本発明の方法によって得た全ての陽性1次ウェルは、実際、免疫化に用いられた抗原に特異的であった。
【0103】
本発明の方法により得た抗体は、膜関連抗原に対するものであり、膜関連抗原を検出するための診断試薬として使用するのに有利である。例えば、細胞表面マーカータンパク質に対する抗体、または細胞表面から突き出ているウイルスのタンパク質に対する抗体である。
【0104】
1種の診断上の構成(configuration)は、ウイルス特異的抗原の検出能力を有する抗ウイルス抗体の使用を包含する。例えば、抗原は、抗原捕獲アッセイによって検出される。このアッセイでは、被験体の血清試料中に存在するウイルス抗原は、抗原特異的モノクローナル抗体、または抗原特異的ポリクローナル抗体と反応する。抗体は固体基質に結合し、次いで、抗原は、抗−ウイルス抗体に対する、第2の異なった標識をした抗体によって検出される。
【0105】
本発明の方法によって得た抗ウイルス抗体は、抗ウイルス免疫応答を強化する手段として使用され得る。それは、抗体−ウイルス複合体が、マクロファージおよび他のエフェクター細胞によって、典型的に認識されるからである。抗体は、他の治療で用いる抗体の投与量と同量を投与し得る。例えば、狂犬病、はしかおよびB型肝炎のようなウイルス性疾患の早期インキュベーション中に、プールしたガンマグロブリンを、0.02−0.1ml/ポンド体重で投与して、ウイルスが細胞内に入り込むことを阻害する。このように、膜関連ウイルス抗原と反応する抗体は、単独で、他の抗ウイルス抗体の入った「カクテル(cocktail)」で、または他の抗ウイルス薬剤との複合体中で、受動的に投与され得、免疫応答および/または抗ウイルス薬剤の効力を強化する。
【0106】
III.抗体を使用する組成物
本発明は、上記の方法によって生成されるような抗体を使用することを意図する。本発明の抗体は、以下の内のどちらかである。(1)ヒトB細胞の表面のヒトCD40抗原と結合し、B細胞の分化、成長を刺激しない、または(2)B7抗原に結合する。しかし、
これらの抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体(humanized antibodies)、一本鎖抗体、およびそれらのフラグメントであり得る。抗−CD40抗体は、単独で用いられる。一方、抗−B7抗体は、免疫抑制剤をも含有する組成物中で用いられる。
【0107】
A.抗体の調整
モノクローナル抗体5D12、3A8、3C6、およびB7−24を、本明細書中の詳細な説明の第II節および実施例1−7のように調製する。本発明の他のモノクローナル抗体も、これと同様に、または以下のように調製する。第1に、ポリクローナル抗体を、CD40またはB7抗原に対して生じさせる。第2に、CD40またはB7に特異的なモノクローナル抗体を選択する。
【0108】
1.ポリクローナル血清
ポリクローナル血清は、従来の方法により調製する。一般的に、まずCD40またはB7抗原を含有する溶液を用いて、適切な動物、特にマウス、ラット、ウサギ、またはヤギを免疫化する。ウサギおよびヤギは、得られ得る血清量、および標識した抗ウサギ抗体および抗ヤギ抗体の有用性のために、ポリクローナル血清の調製に好適である。一般的に、免疫化は、生理食塩水中、好ましくはフロイント完全アジュバントのようなアジュバント中に、抗体含有溶液を混合、または乳化し、そしてその混合液または乳化液を、(一般的には、皮下または筋肉内)注射することにより行う。50−200μg/注射で、典型的には十分である。一般的に免疫化は、生理食塩水中のタンパク質を、1回またはそれ以上注射することにより、2−6週間後に高められる。この場合、フロイント不完全アジュバントを用いるのが好ましい。あるいは、当該分野で周知の方法を用いる、インビトロでの免疫化により抗体を生成し得る。本発明の目的では、インビトロでの上記の方法は、インビボでの免疫化と同等と考えられる。
【0109】
ポリクローナル抗血清を、以下のようにして得る。免疫化した動物から採血し、ガラスまたはプラスチックの容器に入れて、その血液を25℃で1時間インキュベートし、次いで、4℃で2−18時間インキュベートする。血清を遠心分離(例えば、1,000Xgで10分間)により回収する。ウサギから1回の採血当り約20−50mlを得る。
【0110】
2.モノクローナル抗体
モノクローナル抗体を、KohlerおよびMilstein,Nature(1975)256:495−96の方法、またはその改変方法を用いて調製する。典型的に、マウスまたはラットを、上記のように免疫化する。しかし、血清を抽出するために動物から採血するよりはむしろ、脾臓(および任意に数個の大きなリンパ節)を取り出し、単細胞に分離する方が良い。所望であれば、脾臓細胞を(非特異的付着細胞を取り除いた後)、細胞懸濁液をタンパク質抗原でコートしたプレートまたはウェルに注ぐことによりスクリーニングし得る。抗原に対して特異的な膜関連免疫グロブリンを発現するB細胞はプレートに結合し、そして懸濁液の残りと共には洗い流されない。次いで、得られたB細胞、または全ての解離した脾臓細胞は、ミエローマ細胞との融合を誘導され、ハイブリドーマを形成する、そして選択培地(例えば、ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン培地、「HAT」)中で培養される。得られたハイブリドーマは、限界希釈によりプレーティングし、そして所望の免疫化細胞表面抗原に対して特異的に結合する(そして無関係の抗原には結合しない)抗体の生成についてアッセイされる。次いで、選択したmAb分泌ハイブリドーマは、(例えば、組織培養ビン、または中空ファイバーリアクターのような)インビトロ、または(マウスの腹水のような)インビボのどちらかで培養される。
【0111】
所望であれば、(ポリクローナルまたはモノクローナル)抗体は、従来技術を用いて標識し得る。好適な標識は、発蛍光団、発色団、放射性原子(特に32Pおよび125I)
、電子濃密試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドである。酵素は、典型的に、それらの活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、通常3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を、分光光度計で定量可能な青い色素に変換する能力によって検出される。「特異的結合パートナー」とは、例えば、抗原とそれに対する特異性を有するモノクローナル抗体との場合のように、高い特異性でリガンド分子に結合する能力を有するタンパク質を指す。他の特異的結合パートナーは、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、IgGとプロテインA、および当該分野で周知のおびただしいレセプター−リガンドカップルを包含する。同じ標識でも幾つもの異なる様式で作用するので、上の試薬は、種々の標識を個々のクラスに分類することを意味するのではないことを理解すべきである。例えば、125Iは、放射性標識として、または電子濃密試薬として働く。HRPは、mAbに対する酵素または抗原として働き得る。さらに、所望の効果のために様々な標識を組合せ得る。例えば、mAbおよびアビジンもまた、本発明の実施において標識を必要とする:従って、ビオチンでmAbを標識するならば、125Iで標識したアビジンで、またはHRPで標識した抗ビオチンmAbで、mAbの存在を検出し得る。他の置換および可能性は、当業者に容易に明らかであり、そして本発明の範囲内で、同等物と考えられる。
【0112】
IV.免疫抑制剤を含有する組成物
本発明の組成物は、2つの成分を含有する。2つの成分は、共同して、移植片拒絶反応、GVHD、またはリウマチ様関節炎を予防し、治療することに治療学的効果を有する。2つの成分は:(1)MAb B7−24のようなB7抗原に結合する分子;および(2)免疫抑制剤である。B7抗原に結合する分子は、上記第III節に記載のように、CD28、CTLA4、CTLA4Ig、および抗B7抗体を包含する。
【0113】
本発明の抗B7抗体(またはB7抗原に結合する他の分子)は、1つ、またはそれ以上の免疫抑制剤との組合せにより与えられる。免疫抑制剤は、T細胞の活性化または増殖を、遮断または阻害する薬剤である。本発明の免疫抑制剤は、シクロスポリンA(CsA)、コルチコステロイド(メトトレキサート、プレドニゾロン、デキサメタゾン)、FK506、およびラパマイシン(rapamycin)を、包含する。好ましくは、免疫抑制剤は、シクロスポリンA、FK506、またはコルチコステロイドであり、最も好ましくは、シクロスポリンAである。
【0114】
V.CD40抗原エピトープ
本発明のCD40抗原エピトープは、抗CD40モノクローナル抗体との免疫反応性を有する分子である。この抗CD40モノクローナル抗体の、ヒトB細胞の表面にあるヒトCD40抗原への結合は、B細胞の成長または分化を妨げる。すなわち、こういったエピトープは、CD40抗原に対する該抗体の結合と競合する。これらのエピトープを同定するための系統だった技術は、H.M.Geysenによる、米国特許第4,708,871号(これは、本明細書中に参考として援用されている)に記載されているように、当該分野では周知である。典型的に、これらのエピトープは、短いアミノ酸配列である。これらの配列は、アクセスが可能な限り、より長いペプチドまたはタンパク質配列中にはめ込み得る。
【0115】
本発明のエピトープは、固相合成法のような標準ペプチド合成技術により調製され得る。あるいは、本発明の配列は、組換え法によって、より大きなペプチドまたはタンパク質に組み込み得る。これは、目的の配列をコードするDNAカセットを調製すること、および、適切な部位において修飾されるべきタンパク質をコードしているDNA中にそのカセットを連結することにより、最も容易に達成し得る。配列DNAは、標準合成技術によって合成され得、または、好適な制限酵素を用いて、ファージpIII遺伝子から切り取られ得る。
【0116】
本明細書中、同定したエピトープは、簡単な固相技術によって調製し得る。最小の結合配列は、例えば、H.M.Geysenによる米国特許第4,708,871号に記載の方法を用いる標準技術によって、各エピトープについて系統的に決定し得る。簡単に言えば、それぞれのピン上のただ一つのオリゴペプチドによって、各ピン上に独特のオリゴペプチドを有するピンの固相配列に結合するCD40抗原由来の重複オリゴペプチドの1セットを合成し得る。ピンを、96−ウェルのマイクロタイタープレートのフォーマットに合うように並べることで、例えば、抗CD40モノクローナル抗体への結合に対して、全てのピンを同時にアッセイすることが、可能になる。本方法を用いることにより、連続したアミノ酸の可能なサブセット全部に対する結合親和性を容易に決定し得る。
【0117】
本発明のアナログも、標準固相方法により調製され、そしてそれらの方法は、PCT出願米国第91/04282号に記載されている。
【0118】
VI.処方物および投与方法
本発明の抗体および組成物は、移植組織拒絶反応を抑止するために、または(1)GVHD、あるいはリウマチ様の関節炎、または(2)アレルギー、SLE、PBC、およびITPのような抗体介在性疾患を予防あるいは治療するために治療上有効な濃度で投与される。この目的を達するために、抗体または組成物は、公知の様々な受容可能な賦形剤を用いて処方され得る。代表的には、抗体または組成物は、静脈または腹腔内のどちらかに注射することにより投与される。この投与を行うための方法は、当業者に公知である。局所的または経口的に投与、または粘膜を通じて送達され得る組成物を得ることもまた可能で有り得る。
【0119】
被験体に投与する前に、処方成分が抗体に添加され得る。液体の処方物が好ましい。例えば、これらの処方成分は、油、ポリマー、ビタミン、炭水化物、アミノ酸、塩、緩衝液、アルブミン、界面活性剤、あるいは充填剤を含有し得る。好ましくは、炭水化物は、モノ、ジ、またはポリサッカライドのような糖または糖アルコール、あるいは水溶性グルカンを包含する。サッカライドまたはグルカンは、フルクトース、デキストロース、ラクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、スクロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、αおよびβシクロデキストリン、溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、およびカルボキシメチルセルロース、またはそれの混合物を包含し得る。スクロースが最も好ましい。「糖アルコール」は、−OH基を有するCからCの炭化水素として定義され、そしてガラクチトール、イノシトール、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、グリセロール、およびアラビトールを包含する。マンニトールが最も好ましい。上記のこれらの糖または糖アルコールは、個別にまたは組み合わせて用いられ得る。糖または糖アルコールは、水性調製物で可溶性である限り、使用される量に固定された制限はない。好ましくは、糖または糖アルコール濃度は、1.0w/v%〜7.0w/v%の間であり、より好ましくは2.0〜6.0w/v%の間である。好ましくはアミノ酸は、カルチニン、アルギニン、およびベタインの左旋性(L)型を包含するが、他のアミノ酸も添加され得る。好ましいポリマーは、平均分子量が2,000〜3,000の間であるポリビニルピロリドン(PVP)、または平均分子量が3,000〜5,000の間であるポリエチレングリコール(PEG)を包含する。凍結乾燥前、または再構成後に溶液中のpH変化を最小にするために組成物中で緩衝液を用いることも好ましい。ほとんどの生理的緩衝液が用いられ得るが、クエン酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、およびグルタミン酸塩の緩衝液、またはそれの混合物が好ましい。最も好ましいのはクエン酸塩緩衝液である。好ましくはその濃度は、0.01〜0.3mol/リットルでる。処方物に添加され得る界面活性剤は、欧州特許第270,799号、および第268,110号に示される。
【0120】
さらに抗体は、例えば、ポリマーヘの共有結合により、化学的に改変され得、その循環半減期を増加する。好ましいポリマー、およびペプチドにそれらを付着する方法は、本明細書中で参考としてそのすべてが援用される、米国特許第4,766,106号;第4,179,337号;第4,495,285号;および第4,609,546号に示されている。好ましいポリマーは、ポリオキシエチル化されたポリオール、およびポリエチレングリコール(PEG)である。PEGは、室温で水に可溶性であり、そして一般式:R(O−CH−CHO−Rを有する。ここでRは、水素あるいはアルキルまたはアルカノール基のような保護基で有り得る。好ましくは、その保護基は、1〜8の炭素を有し、より好ましくは、それはメチルである。記号nは、正の整数であり、好ましくは1〜1,000の間、より好ましくは2〜500の間である。PEGは、好ましくは1000〜40,000の間の平均分子量を有し、より好ましくは2000〜20,000の間の、最も好ましくは3,000〜12,000の間の平均分子量を有する。好ましくは、PEGは少なくとも1つの水酸基を有し、より好ましくはそれは末端の水酸基である。この水酸基は、好ましくは活性化されインヒビター上の遊離アミノ基と反応する。しかし反応基の型と量は、変動され得、本発明の共有結合的に結合されたPEG/抗体を達成し得ることが理解され得る。
【0121】
水溶性のポリオキシエチル化されたポリオールがまた、本発明において有用である。それらはポリオキシエチル化されたソルビトール、ポリオキシエチル化されたグルコース、ポリオキシエチル化されたグルコース、ポリオキシエチル化されたグリセロール(POG)などを包含する。POGが好ましい。1つの理由は、ポリオキシエチル化されたグリセロールの骨格が、例えば、動物およびヒトで天然にモノ−、ジ−、トリグリセリドで存在する骨格と同一だからである。従って、この分枝は必ずしも身体で異質な物質として見られない。POGは、好ましくはPEGと同一の範囲の分子量を有し得る。POGの構造は、Knaufら、1988年、J.Bio.Chem.263:15064〜15070に示され、そしてPOG/IL−2結合体の議論が、米国特許第4,766,106号で見い出される。その両者は、参考として本明細書に援用されている。
【0122】
循環半減期の増加のための他の薬剤送達系は、リポソームである。リポソーム送達系の調製方法は、Gabizonら、Cancer Research(1982)42:4734;Cafiso、Biochem Biophys Acta(1981)649:129;およびSzoka、Ann Rev Biophys Eng(1980)9:467で議論されている。他の薬剤送達系は、当該技術で公知であり、そして例えば、Poznanskyら、DRUG DELIVERY SYSTEMS(R.L.Juliano編、Oxford、N.Y.1980)pp.253〜315;M.L.Poznansky、Pharm Revs(1984)36:277に記載されている。
【0123】
液体薬学的組成物が調製された後、好ましくは、分解を予防し、そして無菌状態を維持するために、凍結乾燥される。液体組成物を凍結乾燥する方法は、当業者に公知である。使用する直前に、組成物は付加成分を含有し得る無菌の希釈液(例えば、リンガー液、蒸留水、または無菌の生理食塩水)で再構成され得る。再構成に際し、組成物は、好ましくは当業者に公知の方法を用いて被験者に投与される。
【0124】
上述したように、本発明の抗CD40抗体および組成物は、ヒトの被験体を治療するために用いられ、アレルギー、SLE、PBCおよびITPのような抗体介在性疾患を予防または治療する。抗B7抗体は、好ましくは移植組織拒絶反応、GVHD、またはリウマチ様の関節炎の予防または治療に用いられる。これらの抗体の好ましい投与経路は、非経口である。非経口投与において、本発明の組成物は、薬学的に受容可能な非経口賦形剤と組み合わせて溶液、懸濁液、またはエマルジョンのような注射可能な形態で単位用量で処方され得る。そのような賦形剤は、本来、非毒性であり、そして非治療的である。そのよ
うな賦形剤の例は、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。不揮発油およびオレイン酸エチルのような非水賦形剤がまた用いられ得る。好ましい賦形剤は、生理食塩水中の5%デキストロースである。賦形剤は、緩衝液および防腐剤を含む、等張性および化学的安定性を増強する物質のような小量の添加剤を含有し得る。
【0125】
投与の用量および様式は、個体に依存し得る。一般的に組成物は、抗体が1μg/kg〜20mg/kgの間、より好ましくは20μg/kg〜10mg/kgの間、最も好ましくは1〜7mg/kgの間の投与量で与えられるように投与される。好ましくは、それは瞬時投与で与えられ、瞬時投与後、4〜6時間の間循環レベルを10〜20倍増加する。瞬時投与の後、連続注入がまた使用され得る。その場合、抗体は5〜20μg/kg/分の投与で、より好ましくは7〜15μg/kg/分の投与で注入され得る。
【実施例】
【0126】
以下の実施例は本発明を例示し、本発明を制限する意図ではない。
【0127】
材料および方法
Iscove’s modification of Dulbecco’s
Eagle培地(IMDM)、および胎仔ウシ血清を、JR Biosciences(Lenexa、KS)より得た;ペニシリンおよびストレプトマイシンを、Irvine(Santa Ana、CA)より得た;そしてポリエチレングリコール(分子量1500)を、Boehringer Mannheim(Indianapolis、IN)より得た。
【0128】
培養培地。 SP2/0マウスミエローマ細胞、ハイブリドーマ細胞、精製されたT細胞、EBV形質転換されたB細胞、および細胞系をストレプトマイシン(200μg/ml)、ペニシリン(200U/ml)および10%の熱不活性化した胎仔ウシ血清を補足したIMDM(完全IMDM)内で培養した。Sf9昆虫細胞を、撹拌された(125〜150rpm)シェイカーフラスコで、0.5%の胎仔ウシ血清を補足したMaiorellaら(1989)に記載された培地を用いて培養した。3T6−Fcγ RII細胞を、アミノプテリン(0.2μg./ml)、チミジン(5μg/ml)、キサンチン(10μg/ml)、ヒポキサンチン(15μg/ml)、マイコフェノール酸(20μg/ml)、デオキシシチジン(2.3μg/ml)、および10%の熱不活性化した胎仔ウシ血清で補足した50%のDulbecco’s modified Eagle’s培地、および、50%のHAM−F10培地からなる培地(完全DME/HAM−F10)で培養した。3T6−Fcγ RII/B7細胞を、400μg/mlのG418(Gibco)を含有する完全DME/HAM−F10培地で培養した。
【0129】
細胞および細胞系。 抹消血単核細胞を、フィコール−ハイパック密度差遠心分離により、ヘパリン化された血液(健康なボランティアより得た)から単離した。T細胞をLymphokwik(Lambda、California)(1λ)を用いて単核細胞およびB細胞を除去することにより濃縮した。EBV形質転換されたB細胞系ARC、およびP815細胞系、Fcγ RIIおよびFcγ RIIIを発現するNK耐性マウス肥胖細胞腫細胞系(Ra,C.ら、Nature(1989)341:752)を、ATCC(Rockville、MD)より得た。Warmerdam,P.A.M.ら、J.Exp.Med.(1990)172:19に記載されたように3T6−Fcγ RII、CD32を発現するマウスの線維芽細胞細胞系、ヒトのFcγ RII高応答性対立遺伝子(allele)は、Dr.J.van de Winkel(University Hospital、Utrecht、The Netherlands)より快く供与された。突然変異型のマウスの胸腺腫EL−4サブクローンEL4B5は、Dr.R.
H.Zubler、Hopital Cantonal Universitaire、Genevaより供与された。ヒトFcγ RIIaのHR(高応答性)対立遺伝子形態のハイブリッド分子を発現するマウス3T6の形質転換体細胞は、Dr.P.A.M.Warmerdam、Department of Experimental Immunology、University Hospital Utrecht、Utrecht、The Netherlandsより供与された。Warmerdamら、J.Immunol.(1991)147:1338。両細胞系をゲンタマイシン(80μg/ml)および10%の熱不活性化したウシ胎児血清(FCS)(Hyclone、Logan、Utah)で補足したIscove’s Modified Dulbecco’s Medium(IMDM)で培養した。B細胞活性化能力の欠失の可能性を避けるために、4〜8週間毎にEL4B5細胞の新規のバッチを解かして用いた。細胞系を、マイコプラズマリボソームRNA(GenProbe、San Diego、CA)用のHラベルされたDNAプローブの使用により、マイコプラズマ汚染を定期的にテストし、そして実験の経過の間、マイコプラズマは検出されなかった。
【0130】
ヒトBリンパ球 Bリンパ球を、本質的にDe Grootら、Lymphokine
Research(1990)9:321に記載されているように、扁桃腺摘出を受けた子供から得た扁桃腺から単離した。要約すれば、組織をメスの刃で離散させ、食細胞およびNK細胞を5mMのL−ロイシンメチルエステル処理で減らし、そしてT細胞を2−アミノエチルイソチオウロニウムブロマイドで処理したヒツジ赤血球(SRBC)とのロゼッティングの1サイクルにより除去した。得られたBリンパ球調製物の純度は、抗(CD20)mAb B1(Coulter Clone、Hialeah、FA)、または抗(CD3)mAb OKT3(Ortho、Raritan、NJ)、ならびにウサギ抗(マウスIg)(Zymed、San Francisco、CA)のFITCが結合したF(ab’)フラグメントを用いた間接的な免疫蛍光のラベリング、およびFACS分析で調査した。B細胞調製物は、以下を含有した(6つの単離物の平均±SD):95±4% CD20−陽性細胞、および2±1% CD3−陽性細胞。
【0131】
抗体
抗(ヒト B7)モノクローナル抗体BB−1(Yokochiら、1982)をDr.E.A.Clark(University of Washington、Seattle、WA)から得、そして精製された抗体として用いた。抗(ヒトCD40)モノクローナル抗体G27.5(Clarkら、1986)をDr.J.A.Ledbetter(Oncogen Corporation、Seattle、WA)から得、そして精製された抗体として用いた。抗(CD40)モノクローナル抗体S2C6(Paulieら、1985)をDr.S.Paulie(University of Stockholm、Stockholm、Sweden)から得、そして精製された抗体として用いた。抗(ヒトCD26)モノクローナル抗体Ta−1、および抗(CD20)モノクローナル抗体B1をCoulter(Hialeah、FL)から得た。抗(CD3)モノクローナル抗体OKT3を、Ortho(Raritan、NJ)から得、そして抗(−LeuM3)モノクローナル抗体をBecton−Dickinson(San Jose、CA)から得た。ビーズ(Immunobeads)に結合した抗(IgM)抗体をBio−Rad(Richmond、CA)から得た。
【0132】
抗B7 Mab B7−24(IgG2a、κ)、ならびに抗CD40 mAbs 5D12、3C6および3A8を上記のII節に記載したように得、そして精製された抗体として用いた。抗CD3 Mab CLB−T3/4.1(IgG1、κ)を希釈された組織培養の上清液として用い、そしてそれは好意によりDr.L.Aarden(Central Laboratory of the Red Cross Blood Transfusion Service、Amsterdam、The Netherl
ands)から供与された。抗CD3 Mab UCHT1(IgG、κ)を精製された抗体として用い、そしてそれはDr.P.Beverley(Imperial Research Cancer Fund,London,UK)から供与された。抗CD72 Mab WL225(IgG2a、κ)を精製された抗体として用い、そしてそれはDr.K.Thielemans(Vrije Universiteit Brusel、Belgium)により供与された。抗ICAM−1 Mab 84H10を希釈された腹水として用いた。抗CD40 mAb S2C6は、Dr.S.Paulie(University of Stockholm、Sweden)より供与された。Paulieら、J.Immunol.(1989)142:590。抗CD40 mAb G28.5は、Dr.J.A.Ledbetter(Oncogen Corporation、Seattle、WA、USA)より供与された。Clarkら、PNAS(USA)(1986)83:4494。コントロールの抗体は以下のものであった:抗(β−グルコセレブロシダーゼ) mAb 8E4 (IgG1)、Barneveldら、Eur.J.Biochem.(1983)134:585、ならびにミエローマ免疫グロブリンMOPC−21(IgG1)およびMOPC−141(IgG2b)(Sigma、St.Louis、MO)。すべてのmAbを精製された抗体調製物として用いた。hCD40.Hμ融合タンパク質は、Dr.P.Lane(Basel Institute for Immunology、Basel、Switzerland)より供与され、そしてそれをトランスフェクトされたJ558L細胞の5倍に濃縮された上清液として用いた。Laneら、Eur.J.Immunol.(1992)22:2573。
【0133】
本発明のモノクローナル抗体は、以下を包含する多くのリポーター部分を用いて、標準方法によりラベルされ得る:蛍光ラベル(一般にアビジンをリンクされた、フルオレセイン(FITC)、R−フィコエリトリン、ローダミン(TMRITC)、ローダミン600(XRITC)、「テキサスレッド(TEXAS RED)」など);放射活性部分(125Iなど);発光物(ルシフェラーゼなど);酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼなど)。さらに、リポーター抗体(本発明のモノクローナル抗体に結合特異性を有する抗体、例えばヤギの抗マウスIgG)がまた、上記に記載したラベル性部分を用い得る。
【0134】
酵素およびオリゴヌクレオチド E.coli DNAポリメラーゼI(クレノウフラグメント)を、Boehringer Mannheim Biochemicals (BMB)(Indianapolis、IN)から得た。T4 DNAリガーゼおよびT4 DNAポリメラーゼを、New England Biolabs(Beverly、MA)より得た;ニトロセルロースフィルターをSchleicher and Schuell(Keene、NH)より得る。合成オリゴヌクレオチドリンカーおよびプライマーを、市販されている自動化されたオリゴヌクレオチド合成装置を用いて調製した。または、注文設計された合成オリゴヌクレオチドを、例えばSynthetic Genetics(San Diego、CA)より購入し得る。cDNA合成キットおよびランダムプライミングラベリングキットを、Boehringer−Mannheim Biochemical(BMB、Indianapolis、IN)より得る。ペプチドをコードするオリゴヌクレオチド配列は、上述したようにいずれかで合成され得る。または、ペプチドは、標準のインビトロ技術(Applied Biosystems、Foster City CA)によって直接合成され得る。
【0135】
ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の作業で行った通常の操作は、抗体の精製を含めて、標準の手順(Harlowら)により行った。
【0136】
蛍光細胞染色(FACS)アッセイ 細胞(10/試料)を10μlの一次抗体中で(1% BSAおよび0.05% アジ化ナトリウムで補足したPBS−BSAまたはH
BSS(ハンクス平衡塩類溶液、Gibco/BRL)中の10μl/ml)4℃で20分間、インキュベートした。PBS−BSAまたはHBSS−BSAで3回洗浄した後、細胞を4℃で20分間、ヤギの抗(マウス IgG)抗体(Jackson、West Grove、PA)のFITCラベルしたFab’2フラグメント100μl中でインキュベートした。PBS−BSAまたはHBSS−BSAで3回洗浄し、そしてPBSで1回洗浄した後、細胞を0.5mlのPBS中で再度懸濁した。分析をFACSSCAN V (Becton Dickinson、San Jose、CA)で行った。
【0137】
B7介在性T細胞増殖アッセイ
精製T細胞を、Fcγ RIIa高等応答動物(high responder)の対立遺伝子でトランスフェクトされた3T6線維芽細胞およびB7分子と共に培養した(de Boer,M.ら、Eur.J.Immunol.(1992)22:3071−3075)。H−チミジンの取り込みにより増殖を測定した。簡単に言えば、96ウェル平底組織培養プレートにおいて、抗CD3 Mab CLB−T3/4.1含有または未含有の200μl/ウェルの完全IMDM中で、10個の放射線照射(2500ラド)された3T6−Fcγ RII/B7細胞と共に、4X10個のT細胞を培養した。72時間の培養期間のうち最後の16時間の間は、1μCi/ウェルのH−チミジンでその細胞をパルスした。T細胞の増殖を3つのウェルの平均cpmとして表す。
【0138】
細胞毒性T細胞アッセイ
精製T細胞を、Fcγ RIIa高等応答動物の対立遺伝子でトランスフェクトされた3T6線維芽細胞およびB7分子と共に培養した。簡単に言えば、24ウェル平底組織培養プレートにおいて、抗CD3 Mab UCHT1の存在下で1ml/ウェルの完全IMDM中で、0.2X10個の放射線照射(2500ラド)された3T6−Fcγ RII/B7細胞と共に、10個のT細胞を3〜4日間培養した。抗CD3再方向性細胞毒性アッセイにおいて、リンパ球の細胞毒活性を下記のように分析した。
【0139】
混合リンパ球培養(MLC)アッセイ
混合リンパ球培養(MLC)において、刺激細胞としてEBV−形質転換B細胞系ARCを用いて、精製T細胞の増殖を測定した。96ウェル丸底組織培養プレート(Corning)において、200μl/ウェルの完全IMDM培地中で、5X10個の放射線照射(5000ラド)された刺激細胞と共に、5X10個のT細胞を培養した。72時間の培養期間のうち最後の16時間の間は、1μCi/ウェルのH−チミジンでその細胞をパルスした。T細胞の増殖を3つのウェルの平均cpmとして表す。二次MLCに対しては、一次MLCに対する上記のように細胞を刺激した。二次MLCに対するT細胞芽細胞を、5〜7日の一次MLC中で、続いて刺激細胞の非存在下で2〜4日間培養して生産した。一次または二次MLC中に生産されるT細胞の細胞毒活性を、マウスP815細胞を用いた抗CD3再方向性細胞毒性アッセイにおいて下記のように分析した。あるいは、CTL活性を誘導するのに用いられるEBV−形質転換B細胞は、標的細胞として役立った。
【0140】
細胞毒性アッセイ
標的として、P815ネズミ肥満細胞腫細胞またはARC EBV−形質転換B細胞を用いて、4時間の標的細胞溶解アッセイにおいて、CTL活性を測定した。P815標的細胞の場合には、2μg/mlの抗CD3 Mab OKT3を用いて、CTLを標的細胞に非特異的に架橋させた。標的細胞としてARC細胞を用いた場合には、アロ抗原特異性CTLのみがキリング工程(killing process)において関与する。10個の標的細胞を、200μCiの51Cr−クロム酸ナトリウム(Amsersham International)と共に1時間培養し、続いて洗浄した。96ウェルV底マイクロタイタープレートにおいて、種々の量のエフェクター細胞と共に5000の
Cr標識の標的細胞を用いて総容量200μl/ウェルでCTLアッセイを行った。(それぞれ、自然放出及び最大放出の評価のために)、4個のウェルを200μl培地単独の5X10個の標的細胞で満たし、そして4個のウェルを100μl培地および100μlサポニンの5X10個の標的細胞で満たした。P815の場合には、(バックグラウンドの実験的溶解を測定するために)、3個のウェルを抗CD Mabの非存在下でエフェクター細胞および標的細胞で満たした。他の3個のウェルもまた、抗CD3の存在下で総溶解量を測定するために、2μg/mlの抗CD3 Mabを含有した。プレートを200Xgで10分間遠心分離し、そして37℃で4時間インキュベートした。その後、各ウェルの上清液100μlをガンマカウンターでカウントした。結果を、P815標的細胞に対する抗CD3依存性特異性放出の百分率、すなわちARC標的細胞に対するアロ抗原特異性放出の百分率として表す。
【0141】
B細胞増殖アッセイ
平底96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、10%ウシ胎児血清を補足した200μlのIMDM中で、B細胞(1ウェル当り4X10個)を培養した。固定化した抗−(IgM)抗体(イムノビーズ;5μg/ml;BioRad,Richmond,CA)を加えることによりB細胞を刺激した。指示されたところに100 U/mlの組換えIL−2を加えた。さまざまな濃度のmAbを微量培養の開始時に加え、そして18時間のパルシング後、3日目の[H]−チミジンの取り込みを測定することにより、増殖を評価した。
【0142】
Banchereau様B細胞増殖アッセイ
Banchereauらによって、Science(1989)251:70に記載されたのと類似の培養系において、抗CD40 mAbがB細胞増殖を刺激する能力を試験するために、ヒトFcγ RIIのHR対立遺伝子形を発現するマウス3T6トランスフェクタント細胞を用いた。B細胞(1ウェル当り2X10個)を、平底マイクロウェルにおいて(5000ラドで放射線照射された)1X10個のトランスフェクタント細胞の存在下、10%ウシ胎児血清および100 U/mlの組換えIL−4を補足した200μlのIMDM中で培養した。そのB細胞を加える前に、3T6細胞を培養プラスチックに少なくとも5時間固着させた。抗CD40m Abを15ng/mlから2000ng/mlまでのさまざまな濃度で加え、そして[H]−チミジンで18時間パルシングして7日目にチミジンの取り込みを測定することにより、B細胞の増殖を評価した。
【0143】
EL4B5細胞とのB細胞活性化アッセイ
B細胞(1ウェル当り1000個)を、放射線照射(5000ラド)されたEL4B5細胞(1ウェル当り5X10個)と共に、平底マイクロタイタープレートおいて、熱処理により不活性化した10%ウシ胎児血清、5ng/mlのホルボール−12−ミリステート 13−アセテート(Sigma)および5%ヒトT細胞上清液を補足した200μlのIMDM中で培養した。さまざまな濃度のmAbを培養の開始時に加え、そして[H]−チミジンで18時間のパルシング後6日目にチミジンの取り込みを評価した。T細胞上清液を調製するために、1μg/mlのPHAおよび10ng/mlのPMAの存在下、精製T細胞を10個/mlの密度で36時間培養した。Wenら、上述。その細胞を遠心分離することによりT細胞上清液を得て、そしてそれを−20℃で貯蔵した。T細胞上清液がEL4B5−B細胞培養液中でヒトB細胞の増殖を高める効力を試験し、そして最も効力のある上清液をプールし、そして実験に用いた。
【0144】
B細胞による抗体産生に対するヒトT細胞ヘルパーアッセイ
96ウェル組織培養プレートを、抗CD3 mAb CLB−T3/3(CLB,Amsterdam,The Netherlands)の腹水液の1:500希釈液でコートした。示されるように、共刺激性mAbを加えた:抗CD2
mAb CLB−T11.1/1およびCLB−T11.2/1(CLB,Amsterdam,The Netherlands)、共に腹水1:1000および抗CD28
mAb CLB−28/1(CLB,Amsterdam,The Netherlands)。次いで、扁桃(tonsillar)のT細胞(3000ラド放射線照射;1ウェル当り10個)、扁桃のB細胞(1ウェル当り10個)およびrIL−2(20U/ml)を加えた。各細胞培養の最終容量は200μlであった。8日後、細胞を遠心し、そして細胞を含まない上清液を集めた。(希釈された)試料中のヒトIgMおよびIgGの濃度を以下のようにELISAにより算出した。
【0145】
免疫グロブリンの定量に対するELISAアッセイ
ヒトIgMおよびIgGの濃度をELISAにより算出した。4μg/mlのマウス抗ヒトIgG mAb MH 16−01(CLB,Amsterdam,The Netherlands)または1.2μg/m1のマウス抗ヒトIgM mAb 4102(Tago,Burlingame,CA)の0.05M炭酸塩緩衝液(pH9.6)を用いて、4℃で16時間インキュベーションすることにより、96ウェルELISAプレートをコートした。プレートをPBS−0.05% Tween−20(PBS−Tween)で3回洗浄し、そしてBSAで1時間飽和させた。2回洗浄後、試験試料の種々の希釈液でプレートを37℃で1時間インキュベートした。3回の洗浄後、1μg/mlのベルオキシダーゼ標識のマウス抗ヒトIgG mAb MH 16−01(CLB)またはマウス抗ヒトIgM mAb MH 15−01(CLB)で37℃で1時間インキュベーションすることにより、結合したIgを検出した。プレートを4回洗浄し、そして基質としてO−フェニレンジアミンを加えることにより、結合したペルオキシダーゼ活性を示した。各アッセイに対して標準曲線を作成するために、ヒトの標準血清(HOO,CLB)を用いた。
【0146】
流動細胞蛍光定量アッセイ
ARC細胞(10個/試料)を100μlの一次抗体(PBS−BSA、または、1%BSAおよび0.05%アジ化ナトリウムを補足したHanks平衡塩類溶液(HBSS)中10μg/ml)中で4℃で20分間インキュベートした。PBS−BSAまたはHBSS−BSAで3回洗浄後、ヤギ抗(マウスIgG)抗体(Jackson,West Grove,PA)のFITC標識F(ab’)フラグメント100μl中で細胞を4℃で20分間インキュベートした。PBS−BSAまたはHBSS−BSAで3回洗浄し、そしてPBSで1回洗浄した後、細胞を0.5ml PBS中に再懸濁した。FACSCANV(Becton Dickinson,San Jose,CAにより分析を行った。
【0147】
あるいは、PMA(5ng/ml)およびヒトT細胞上清液(5%)を含む培地中で培養する前に、および培養中の異なった時点でEL4B5細胞を集めた。0.05%アジ化ナトリウムを補足したHank平衡塩類溶液(4℃)100μl中で希釈されたhCD40−Hμを含む、トランスフェクトされた細胞の上清液10μlを用いて、細胞を30分間インキュベートした。これに続いて、ウサギ抗(ヒトIgM)のFITC−複合F(ab’)フラグメント(Central Laboratory of the Blood Transfusion Service,Amsterdam,The Netherlands)でインキュベーションした。コントロールとして、FITC−−複合体のみで細胞をインキュベートした。分析のために、FACScan−4細胞蛍光分析機(BectonおよびDickinson)を用いた。ヨウ化プロピジウムの使用により、分析から非生存細胞を除外した。
【0148】
実施例1
CD40およびB7のPCRクローニング
Chirgwinら(1979)により本質的に記載されるように、EBV−形質転換ヒト脾臓細胞集団からRNAを単離した。簡単に言えば、細胞を、リン酸塩緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、そして0.7 M 2−メルカプトエタノールの存在下で5Mグアニジウム チオシアネート中で溶解した。細胞溶解物を、不連続CsCl勾配(Chirgwinら)上で層化し、そしてBeckman SW28ローターを用いて26,000rpmで16時間遠心分離した。ペレットをDEPC処理HOに溶かすことによりRNAを回収した。RNAをエタノールで1回沈澱させ、DEPC処理HOに再懸濁し、そして−70℃で貯蔵した。
【0149】
500単位のLMV−RT(Bethesda Research Laboratories,Bethesda,MD)、5μMランダムヘキサマー(Pharmacia,Piscataway,NJ)、1mM DTT、dNTP混合物(0.5 mM)、10 mM Tris−HCl pH 8.3、50
mM KCl、2.5m mM MgClおよび0.1mg/ml BSA(ウシ血清アルブミン)を含む反応緩衝液50μl中でランダムヘキサマープライミングを用いて、全RNA(10μg/反応)をcDNAに変換した。37℃で1時間インキュベーションした後、試料を3分間煮沸し、そして−70℃で貯蔵した。既知のCD40およびB7の配列に相同性を有する配列を含んだプライマーを用いて、CD40およびB7分子をコードするDNAをPCRにより生産し、そこでプライマーはまたクローニングに有用な制限部位をコードした(図2)。これらのプライマーは、B7およびCD40に対する公知のcDNAコード配列に基づいていた(Freemanら,1989;Stamenkovicら,1989)。すべてのプライマーは、5’末端で、続いてクローニングのための制限部位でC−Gクランプにより開始する(図2において太字で示される)。可溶形のB7およびCD40のクローニングのための、逆方向プライマーにおける下線の配列は、アフィニティ精製に用いられるモノクローナル抗体により認識されるエピトープを表す。括弧内の数字は、CD40およびB7に対する公知のcDNAに関するプライマーの位置を表す。
【0150】
PCR増幅に対して、1μlのcDNAは、1μl(10ピコモル)の順方向プライマー、1μl(10ピコモル)の逆方向プライマー、および47μlのPCR混合物を混合して作られた。PCR混合物は、1.25単位のTaqポリメラーゼ(Perkin−Elmer/Cetus,Norwalk,CT)、dNTP混合物(各0.2mM)、10mM Tris−cHL pH8.3、50mM KCl、2.5mM MgClおよび0.1mg/ml BSAから成っていた。70μlの鉱油を50μlのPCR混合物にかぶせ、そしてPerkin−Elmer/Cetus thermocycler中で増幅を25サイクル行った(95℃で30秒の変性、55℃で30秒のプライマーアニーリングおよび72℃で1.5分の伸張反応)。増幅を25サイクル行った後、PCR産物を得た。
【0151】
増幅産物を、BgIIIおよびKpnIで消化し(図1B)、そしてサイズ分画により単離した。バキュロウイルスでの発現前に、PCR誘発の変異の導入を防ぐために、配列分析により各フラグメントのDNA配列を確認した。バキュロウイルス転移ベクターpAcC8もまたBgIIIおよびKpnIで消化した(図1B)。
【0152】
増幅されたフラグメントを線状pAcC8ベクターに連結した(挿入片:ベクターの比は3:1であった)。連結産物を細菌株DH5α(Gibco/BRL,Gaithersburg MD)内に形質転換し、そして組換えpAcC8ベクターをアンピシリン耐性に基づいて選別した。組換えプラスミドを細菌クローン(Maniatisら;Ausubelら)から単離し、そして目的の挿入片の存在をポリメラーゼ連鎖反応を用いて確認した(上記参照)。標準的手法により、プラスミドの大量調製を行った(Ausube
lら:Maniatisら;Sambrookら)。
【0153】
実施例2
ヒトCD40およびB7のバキュロウイルス発現
転移ベクターのpAcCD40(全長CD40分子をコードする)、pAcCD40−ED/Glu(CD40の細胞外ドメインをコードする)、pAcB7(全長B7分子をコードする)およびpCcB7−ED/Glu(B7分子の細胞ドメインをコードする)を用いて、ヒトCD40およびヒトB7をコードする配列をAutographa californicaバキュロウイルス(AcNPV)中に組換えした。
【0154】
プラスミドを野生型バキュロウイルスDNA(2−10 pfu)(AcNPV:Summerら)と共に、10細胞/mlの密度でSF9(Spodopterafrugiperda)細胞内にトランスフェクトした(Summersら)。組換えバキュロウイルス感染Sf9細胞を同定し、そしてクローン精製した(Summersら)。
【0155】
組換えタンパクの細胞表面の発現のために、培養の48時間後に細胞を集めた;分泌された組換えタンパクの産生のために、培養の72時間後に細胞を集めた。
【0156】
実施例3
Sf9細胞ELISA
組換えウイルスで感染されたSf9昆虫細胞を24ウェルプレート内で48時間培養した。組織培養培地を除去後、抗体を含む1%BSA含有PBS(PBS−BSA)0.25mlを用いて、室温(RT)で45分間プレートをインキュベートした。PBS−BSAで3回洗浄した後、西洋ワサビペルオキシダーゼに複合化したヤギ抗(マウス全Ig)免疫グロブリン(Zymed,South San Francisco,CA)のPBS−BSAによる1/250希釈液250μlを用いて、RTで35分間インキュベートした。PBS−BSAで5回洗浄することにより、未結合のペルオキシダーゼ活性を除去した。2mg/mlの3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンのエタノール液0.5mlを、10mM酢酸ナトリウム、10mM EDTA緩衝液(pH5.0)で10mlまで希釈し、そして0.03(V/V)Hを加えることにより調製されたアッセイ混合物を加えることにより、結合したペルオキシダーゼ活性を表した。10分後に、1M HSO 100μlを加えることにより反応を停止した。
【0157】
生存Sf9細胞に関して行われた上記のELISAアッセイは、以下の結果を与えた。図3は、24ウェルプレート内で48時間培養したpAcB7およびpAcCD26で感染したSf9細胞に対するデータを表している。ELISAに使用される抗体は以下の通りであった:B7−24、抗−(B7)(白抜き棒)、Ta−1、抗−(CD26)(線影棒)、および非一次抗体(灰色棒)。
【0158】
図4は、24ウェルプレート内で48時間培養したpAcB7およびpAcCD40で感染した生存Sf9細胞に対するデータを表している。ELISAに使用される抗体は以下の通りであった:S2C6、抗−(CD40(白抜き棒)および非一次抗体(線影棒)。
【0159】
実施例4
蛍光性細胞染色
A.傾向性細胞染色
10μlの一次抗体(PBS−BSA、または1%BSAおよび0.05%アジ化ナトリウムを補足したHBSS(Hanks’ Balanced Salt Solution,Gibco/BRL)中 10μg/ml)中で細胞(10個/試料)を4℃で
20分間インキュベートした。PBS−BSAまたはHBSS−BSAで3回洗浄後、ヤギ抗−(マウスIgG)抗体のFITC標識Fab’2フラグメント(Jackson,West Grove,PA)100μl中で、細胞を4℃で20分間インキュベートした。PBS−BSAまたはHBSS−BSAで3回洗浄して、PBSで1回洗浄した後、PBS 0.5ml中で細胞を再懸濁した。FACSSCAN V(Becton Dickinson,San Jose,CA)で分析を行った。
【0160】
流動細胞定量分析の一般プロトコルおよび流動細胞定量法の臨床データ分析は、KerenらおよびCoonらによって詳細に記載されている。一般血液細胞カウンティング技術およびDNA定量は、Powers,KerenらおよびCoonらにより記載されている。
【0161】
ARC EBV形質転換B細胞の蛍光性細胞染色のデータを、図5に表す。図5Aにおいて、B7発現Sf9細胞で免疫化されたマウスからの血清の1:100希釈(実線)または正常マウス血清の1:100希釈(点線)での染色の結果を示す。
【0162】
図5Bにおいて、CD40発現Sf9細胞で免疫化されたマウスからの血清の1:100希釈(実線)または正常マウス血清の1:100希釈(点線)での染色の結果を示す。
【0163】
図5Cにおいて、コントロールのSf9細胞で免疫化されたマウスからの血清の1:100希釈(実線)または正常マウス血清の1:100希釈(点線)での染色の結果を示す。
【0164】
B.可溶性抗原競合アッセイ
可溶性B7および可溶性CD40の存在下および非存在下で、抗−(B7)モノクローナル抗体および抗−(CD40)モノクローナル抗体で、ARC EBV−形質転換B細胞を染色した。ARC細胞を加える前に、抗体と、可溶性B7、可溶性CD40またはコントロールとをRTで20分間プレインキュベートした。
【0165】
図6Aは、B7−24(点線)または二次抗体単独(実線)による染色の結果を示す。図6Bは、B7−24単独(点線)または可溶性B7でプレインキュベートしたB7−24(実線)による染色の結果を示す。図6Cは、B7−24単独(点線)または可溶性CD40でプレインキュベートしたB7−24による染色の結果を示す。図6Dは、CD40−3A8(点線)または二次抗体単独(実線)による染色の結果を示す。図6Eは、CD407A8単独(点線)または可溶性B7でプレインキュベートしたCD403A8(実線)による染色の結果を示す。図6Fは、CD403A8単独(点線)または可溶性CD40でプレインキュベートしたCD403A8(実線)による染色の結果を示す。
【0166】
実施例5
宿主動物免疫化
0日目および14日目に、AcCD40ウイルスAcB7ウイルスまたはAcCd3ウイルス(コントロールのウイルス)で感染された5X10個のSf9細胞を、雌のBALB/cマウスの腹腔内に注入した。21日目に、特異的抗体の存在を試験するために100μlの血清を得た。残りの期間が少なくとも2週間となった後、マウスに、AcCD40ウイルスまたはAcB7ウイルスで感染された5X10個の細胞による最終の注入を行った。この最終の注入後3日目に、細胞融合のために脾臓細胞を用いた。
【0167】
実施例6
ハイブリードマクローンの生産
Boerら(1988)により以前に記載されているように、50%ポリエチレングリ
コールを用いて、免疫化BALB/cマウスから得た脾細胞をSP2/0ネズミミエローマ細胞と10:1の割合で融合した。ヒポキサンチン(0.1mM)、アミノプテリン(0.01mM)、チミジン(0.016mM)および0.5ng/ml hIL−6(Genzyme,Cambridge,MA)を補足した完全IMDM培地中に、融合細胞を再懸濁した。次いで、各ウェルが平均1個の成長するハイブリッドを含むように、融合細胞を96ウェル組織培養プレートのウェル間に分配した。
【0168】
10〜14日後、特異的抗体の産生に対してハイブリドーマ集団の上清液をスクリーニングした。ハイブリドーマクローンによる特異的抗体の産生をスクリーニングするために、12ウェルの上清液をプールし、そして実施例4に記載のように、それをEBV−形質転換B細胞の蛍光性細胞染色のために用いた。次いで、陽性プールの上清液を別々に試験した。0.5ng/ml hIL−6含有IMDM/FBS中での希釈を制限することにより、陽性ハイブリドーマ細胞を3回クローン化した。分析の結果を表1に表す。
【0169】
【表1】

実施例7
扁桃B細胞の試験
deGrootら(1990)により記載のように、扁桃摘出を受けている子供から得た扁桃から、扁桃B細胞リンパ球を単離した。簡単に言えば、メスの刃身で組織を散らし、5mM L−ロイシンメチルエステルで処理することにより食細胞およびNK細胞を除去し、そして臭化2−アミノエチルイソチオウロニウムで処理されたヒツジ赤血球を用いて1サイクルのロゼット形成させることにより、T細胞を除去した。
【0170】
上記の実施例4に記載のように、蛍光性細胞染色を用いて、扁桃B細胞に結合する能力に対して、抗−(CD40)モノクローナル抗体および抗−(B7)モノクローナル抗体を試験した。培養された扁桃B細胞の蛍光染色分析に対して、死細胞を除外するためにヨウ化プロピジウムを用いた。
【0171】
表2は、抗−(CD40)モノクローナル抗体の高純度扁桃B細胞への結合に対する上記分析の結果を示す。
【0172】
【表2】

これらのデータは、新鮮な単離された扁桃B細胞の89〜95パーセントが、4つの抗−(CD40)モノクローナル抗体を用いて陽性に染色したことを示す。
【0173】
本質的に同様の方法により、扁桃B細胞とモノクローナル抗体G28.5(Clarkら)との反応を試験した:すなわち、本発明の抗−(CD40)モノクローナル抗体に対するのとおよそ同じパーセントの細胞が、G28.5に対して陽性であった。
【0174】
表3は、抗−(B7)モノクローナル抗体B7−24の高純度扁桃B細胞への結合を、実施例4に記載の蛍光性細胞標識により測定した結果を示す。
【0175】
【表3】

これらのデータは、新鮮な単離された扁桃B細胞の12〜17パーセントが、抗−(B
7)モノクローナル抗体B7−24を用いて陽性に染色したことを示す。
【0176】
実施例8
Mab B7−24によるT細胞増殖の遮断
T細胞増殖および上記のMLCアッセイを用いて、T細胞活性化におけるB7分子の役割を研究した。B7−24 Fabフラグメントの非存在下での増殖は、20,000〜60,000 cpmの範囲であった。図7は、このMabがT細胞増殖の抗−CD3誘導性B7介在性の誘導を完全に遮断し得るので、このMabがそのB7分子の機能的に重要なドメインに結合するということ、を示す。データは、別々のドナーのT細胞を用いた4名の各実験の±S.D.を示す。
【0177】
図8は、抗−B7 Mab B7−24(四角)またはBB−1(三角)によるT細胞の抗−CD3誘導性B7介在注増殖の阻害を示す。従って、驚くべきことに、刺激細胞としてB7−陽性EBV−形質転換B細胞を用いて、Mab B7−24は、一次MLC中でT細胞活性化を阻害し得ないことが見い出された。図9は、一次MLC(黒塗り符号)および二次MLC(白抜き符号)の間、B7/CD28相互作用を遮断する効果を示す。異なった濃度のMaB 7−24(図9A)またはBB−1(図9B)の存在下または非存在下、EBV−形質転換B細胞系ARCを用いて、精製T細胞を3日間刺激した。抗体の非存在下の増殖は、一次MLCでは15,000〜30,000の範囲であり、そして二次MLCでは20,000〜60,000の範囲であった。データは、別々のドナーからのT細胞を用いた4名の各実験の平均±S.D.を示す。
【0178】
この実験から、抗B7−モノクローナル抗体は、明らかに、一次MLCを完全には遮断し得ない。しかし、同一の実験条件下では、CD3に対するMabは、一次MLCにおいてT細胞の活性化をほとんど完全に遮断し得た。興味深いことに、プレ活性化したT細胞を用いて、二次混合リンパ球培養においてその阻害能力に対してMab B7−24を試験したところ、そのMab B7−24はT細胞の活性化を阻害し得た。
【0179】
実施例9
シクロスポリンAおよび/またはMab B7−24を用いるT細胞増殖の遮断
上記T細胞増殖アッセイを使用して、B7によるT細胞の共刺激が、CsAを用いる阻害に対しても抵抗性があるかどうか測定した。図10は、T細胞が抗CD 3Mabにより増殖を誘導されると、B7による共刺激が、用量に依存するようにCsAよって阻害され得ることを示す。しかし、有毒でないCsA濃度でT細胞の活性化を完全に遮断することは不可能であった。一次MLC(結果は示さず)または二次MLC(表4を参照のこと)を遮断するためにCsAを使用しても、同様の結果が得られた。これらの実験は、B7−CD28/CTLA4介在T細胞増殖が、CsAの阻害作用に対し、部分的にのみ感受性であることを明確に示す。このように、インビトロでT細胞がB7と共刺激されるときに、完全に阻害されないことは、移植片拒絶または急性GVHDの際に、CsAによる治療にもかかわらずインビボで起こることに類似し得た。
【0180】
【表4】

表4は、CsA単独またはmAb B7−24単独では、T細胞活性化が用量依存的に、しかし、不完全に阻害されることを示す。しかし、CsAおよびB7−24を共に用いると、T細胞活性化は、完全に遮断された。興味深いことに、0.025μg/mlのB7−24の添加は、2.5μg/mlの添加とほとんど同量の遮断を起こした。さらに、0.025μg/mlのB7−24の存在下で、CsA濃度を60倍に減少させても、T細胞活性化は90%以上阻害された。この阻害は、最高濃度のCsA単独で最大に阻害されたときよりも大きかった。
【0181】
表5中に示すように、同一の増殖アッセイにおいて、ICAM−1またはCD72のどちらか一方にMabを用いても相乗効果は観察されなかったので、Mab B7−24とCsAとの間のこの相乗効果は、B7/CD28相互作用に対して特異的であった。
【0182】
【表5】

実施例10
Mab B7−24および他の免疫抑制剤でのT細胞増殖の遮断
他の免疫抑制剤と共にMab B7−24を用いてT細胞増殖の遮断を示すために、上記の実施例9のプロトコルを用いる。(A)FK506、(B)ラパマイシン、(C)メトトレキセート、(D)プレドニソロン、または(E)デキタメタゾンをCsAの代わりに用い、実施例9の増殖アッセイプロトコルと同様にして行った。
【0183】
実施例11
シクロスポリンAおよび/またはMab B7−24での細胞毒性Tリンパ球活性の遮断
CsAおよびB7−24がまた、T細胞のアロ抗原特異的活性化においても、CTL活性の誘導を遮断することに共に作用し得たかどうかを試験するために、上記の細胞毒性アッセイを用いた。精製T細胞を、EBV−形質転換B細胞系ARCで6日間刺激し、引続き培地のみで2日間培養した。培地のみの存在下で、EBV−形質転換B細胞系ARCと共に3日間の再刺激した後、図11に示すようにT細胞のCTL活性を分析した;400μg/mlのCsA;10μg/mlのMab B7−24;または400μg/mlのCsAおよび10μg/mlのMab B7−24。約50%のARC標的細胞が、4時間のアッセイで溶解され得たので、これらの培地中でアロ抗原により活性化されたT細胞は、効果的に誘導され細胞溶解性となった。二次MLCにおける、CTL活性のこの誘導は、400ng/mlのCsAでは若干阻害され得るのみであった。ニ次MLCの間の10μg/mlのMab B7−24の添加は、約40%の阻害を引き起こした。しかしながら、CsAとMab B7−24とを組み合わせると、CTL活性化のほとんど完全な
遮断をもたらした。
【0184】
実施例12
Mab B7−24および他の免疫抑制剤での細胞毒性Tリンパ球活生の遮断
他の免疫抑制剤と共にMab B7−24を用いて細胞毒性Tリンパ球活性の遮断を示すために、上記の実施例11のプロトコルを用いる。(A)FK506、(B)ラパマイシン、(C)メトトレキセート、(D)プレドニソロン、または(E)デキタメタゾンをCsAの代わりに用いて、実施例11の細胞毒性アッセイプロトコルと同様に行った。
【0185】
実施例13
アロ抗原特異的T細胞活性化の際のCsAとMab B7−24との組み合せ
一次MLCアッセイ中に、CsAおよびMab B7−24の存在下で、アロ抗原により(上記のように)刺激されたT細胞が、二次抗原刺激に応答し得るかどうかを調べた。精製T細胞を、EBV−形質転換B細胞系ARCを用い、6日間、10μg/mlのMab B7−24および400μg/mlのCsAの存在下または非存在下で刺激し、引続き培地のみで2日間培養した。EBV−形質転換B細胞系ARCを用いて3日間の再刺激をした後、T細胞のCTL活性を分抗した。表6のデータは、代表的な実験のデータであり、CsAまたはMab B7−24単独の存在下ではなくて、CsAおよびMab B7−24の両方の存在下で、アロ抗原に6日間曝すことは、二次MLCにおけるアロ抗原によるその後の誘発に対する全体の非応答性を生じたことを示す。対照実験では、固定化抗CD3 Mabまたは無関係なアロ抗原を発現している細胞を用いて刺激した後でも、その細胞群が細胞毒性になるように誘導され得たことから、この非応答性は、一次MLC後における細胞の生存力の欠如によるものではなかった(結果は示さず)。
【0186】
【表6】

実施例14
アロ抗原特異的T細胞活性化の際のMab B7−24と免疫抑制剤との組み合せ
他の免疫抑制剤と共にMab B7−24を用いて二次抗原刺激を遮断する能力を示すために、上記の実施例13のプロトコルを用いる。(A)FK506、(B)ラパマイシン、(C)メトトレキセート、(D)プレドニソロン、または(E)デキタメタゾンをC
sAの代わりに用いて、実施例13のCTLアッセイプロトコルと同様に行った。
【0187】
実施例15
抗CD40 mAbを用いるB細胞増殖の共刺激
ヒトCD40に対するモノクローナル抗体を産生している4種のハイブリドーマを、実施例1〜7に記載のようにして生産した。これらのmAbは、抗CD40 mAb G28.5が結合すると同様の割合の扁桃B細胞に結合することが示された。de Boerら、J.Immunol.Methods(1992)152:15。これらのモノクローナル抗体の内、IgG2bサブクラスである3種(5D12、3A8および3C6)を、上記のB細胞増殖アッセイにおいて、ヒトB細胞に対して活性化シグナルを発する能力について試験した。
【0188】
ヒト扁桃B細胞(4X10/ウェル)を、セファロースビーズ(5μ/ml)に結合した抗IgMの存在下(図12A)、または抗IgM+rIL−2(100U/ml)の存在下(図12B)で、マイクロウェル中において200μlを培養した。濃度の異なる抗CD40 mAb S2C6、5D12、3C6または3A8を添加し、そして[H]チミジンの取り込みを、18時間のパルシングの3日後に測定した。図12Aに示したデータは、3つの異なるドナーからのB細胞調製物を用いたデュプリケートインキュベーション(duplicate incubation)を伴う実験から導かれた平均値である。図12Bのデータは、共通する結果を有する2つの実験の内の1つの実験から得られたデュプリケートインキュベーションの平均値である。
【0189】
どの新規な抗CD40 mAbも、固定化抗IgMの存在下、または固定化抗IgMおよびIL−2の存在下で、ヒトB細胞増殖を実質的には共刺激し得なかった。対照的に、抗CD40 mAb S2C6は、ヒトB細胞増殖を濃度依存的な様式で共刺激した。
【0190】
実施例16
抗CD40 mAbを用いるB細胞増殖の誘導
実施例15で試験したmAbを、ヒトB細胞の増殖を誘導するそれらの能力について、上記Banchereau様アッセイで、すなわち、FcγRIIを発現する接着細胞上の抗CD40 mAbを提示することにより試験した。抗体提示細胞として、ヒトFcγRIIのHR対立遺伝子形を発現するマウス3T6トランスフェクタント細胞を用いた。上記の系において、抗CD40 mAb S2C6は、IL−4と共に、扁桃ヒトB細胞の実質的な増殖を誘導することを観察し、それを[H]チミジンの取り込みの測定により評価した。しかし、抗CD40 mAb 5D12、3C6または3A8は、上記の培養系において、ヒトB細胞の増殖を誘導しなかった(データは示さず)。
【0191】
実施例17
抗CD40 mAbをいるS2C6刺激B細胞増殖の阻害
抗CD40 mAbをまた、抗CD40 mAb S2C6によるヒトB細胞増殖の共刺激を阻害する能力について、上記のB細胞増殖アッセイを用いて試験した。ヒト扁桃B細胞(4X10/ウェル)を、セファロースビーズ(5μg/ml)に結合した抗IgMおよび抗CD40 mAb S2C6(1.25μg/ml)の存在下で、マイクロウェル中において200μ1を培養した。濃度の異なる抗CD40 mAb 5D12、3C6または3A8を添加し、[H]チミジンの取り込みを、3日後に評価した。コントロールとして、抗−(グルコセレブロシダーゼ)mAb 8E4を、同濃度で添加した。Barneveldら、Eur.J.Biochem.(1983)134;585。データは、デュプリケートインキュベーションした2つの異なるドナー由来のB細胞を用いた実験から導かれた平均値±標準偏差である。
【0192】
抗CD40 mAb 5D12、3A8および3C6の各々が、抗IgM誘導ヒトB細胞増殖の共刺激を、mAb S2C6により阻害し得ることが見出された(図13)。対照的に、β−グルコセレブロシダーゼに対して、同量の非関連であるmAb 8E4では、有意な阻害は見られなかった。Barneveldら、上記。このように、上記の抗CD40 mAbは、ヒトB細胞の増殖を刺激するシグナルを発しないが、それとは逆に、他のmAbで抗CD40を引き起こすことにより働く刺激シグナルを阻害し得る結論に達した。従って、これらのmAbは、CD40を介するシグナル化が、EL4B5細胞によるヒトB細胞増殖を刺激する役割を有するかどうかを調べるための優れた道具であると考えられた。
【0193】
実施例18
EL4B5誘導ヒトB細胞増殖への抗CD40 mAbの効果
抗CD40 mAbのEL4B5誘導ヒトB細胞増殖に対する効果を、上記のB細胞活性化アッセイを用いて試験した。ヒト扁桃B細胞(1,000/ウェル)を、活性化ヒトT細胞の5%上清液および5ng/mlのPMAの存在下で、放射線照射EL4B5細胞(50,000/ウェル)と共に培養した。抗CD40 mAb 5D12、3C6または3A8を、種々の濃度で添加した。コントロールとして、mAb MOPC−141(IgG2b)を添加した。6日間の培養の後、[H]チミジンの取り込みを評価した。
【0194】
図14は、抗CD40 mAb 5D12、3C6または3ABの添加が、濃度に依存してヒトB細胞増殖の阻害をもたらしたことを示す。データは、デュプリケートインキュベーションをした4つの異なるドナー由来のB細胞を用いた実験から導かれた平均値±標準偏差である。mAbなしでのインキュベーションで得られた[H]チミジンの取り込み値は、4つの異なる実験で、それぞれ10460±1843cpm、6982±1729cpm、4362±1020cpmおよび1543±3190(平均値±標準偏差)であった。B細胞単独での[H]チミジンの取り込みは、40±5cpmの総量であり、放射線照射EL4B5細胞単独では、31±15cpmであった。
【0195】
非常に有効な阻害が生じた。各々10ng/mlという低い濃度で、3つの抗CD40
mAb 5D12、3C6および3A8は、ヒトB細胞増殖を、
完全に阻害した。最大の阻害の半分が、約1ng/mlで見出された。対照的に、アイソタイプ一致性IgG2bマウスミエローマタンパク質MOPC−141は、[H]チミジンの取り込みに有意な効果を示さなかった。同様の阻害を、[H]チミジンの取り込みを、6日目ではなく培養の4日目に評価した際に観察した。このように、観察された効果が、抗CD40 mAbの影響下での増殖の速度論的変化によるものであるという可能性は、排除された(データは示さず)。
【0196】
比較のために、他のB細胞表面構造に対する、いくつかのmAbの影響を調べた。抗CD20 mAb B1および抗B7 mAb B7−24(後者のmAbを、図14で用いた抗CD40 mAbを生産するために用いた手順と同様の手順により、抗CD40 mAbを用いた実験において使用した濃度と同一の濃度で生産した)のどちらも、EL4B5誘導ヒトB細胞増殖に対し如何なる影響も与えなかった(データは示さず)。従って、抗CD40 mAbのEL4B5誘導B細胞増殖に対する阻害効果が、B細胞表面のマスキングによるものではない結論に達し得る。
【0197】
実施例19
EL4B5誘導ヒトB細胞増殖への、hCD40.Hμの効果
EL4B5細胞が、CD40に結合する膜構造を発現し得るかどうかを調べるために、CD40の細胞外ドメインおよびヒトIgMの定常ドメインCH、CHおよびCH(hCD40.Hμ)からなる融合タンパク質を、流動螢光定量分析に用いた。Lane
ら、上記。非活性化EL4B5細胞は、融合タンパク質に結合しなかった。しかし、EL4B5細胞を、ヒトB細胞の活性化に必要な条件であるPMA(5ng/ml)および5%のヒトT細胞上清液と共に培養すると、軽度のhCD40.Hμの結合が見出された(データは示さず)。この螢光の小さいシフトは、3回の独立した実験で常に見出された。CD40結合の誘導に必要な最短の活性化期間は、24時間であった。抗CD40 mAbが阻害したように、EL4B5細胞に対するhCD40.Hμの結合が、EL4B5誘導ヒトB細胞増殖を阻害するかどうかを決定するために、上記のB細胞活性化アッセイを用いて、融合タンパク質を、ヒトB細胞とEL4B5細胞との共培養物中で滴定した。図15は、融合タンパク質が、まさに全く、[H]チミジンの取り込みを濃度依存的に阻害し、そして、図14に示される実験で使用された抗CD40 mAbと同様に、EL4B5細胞により誘導されたB細胞増殖を完全に阻害し得たことを示す。
【0198】
実施例20
ヒトB細胞による、ヒトT細胞誘導抗体産生への、抗CD40 mAbの効果
上記のT細胞ヘルパーアッセイを用いて、活性化T細胞により接触依存的に刺激されたB細胞による免疫グロブリン産生を阻害する能力についても、抗体を試験した。抗CD3
mAbでコートされ、かつT細胞を共刺激する異なったmAbでコートされるか、または、コートされない96ウェルプレートにおいて、ヒト扁桃B細胞(10/ウェル)を、放射線照射された精製T細胞(3,000ラド、10/ウェル)と共に培養した。培養8日後に、B細胞による免疫グロブリンの産生の測定のために、上清液を採取した。B細胞による免疫グロブリン産生は、上記のELISAアッセイにより評価した。抗CD40 mAb 5D12を、培養当初から種々の濃度で添加した。コントロールとして、mAb MOPC−141を添加した。図16Aは、T細胞が、固定化抗CD3 mAbにより刺激され、可溶性の抗CD2および抗CD28 mAbにより共刺激されると、抗CD40 mAb 5D12の添加が、ヒトB細胞によるIgG産生の阻害を濃度に依存して引き起こしたことを示す。B細胞によるIgM産生は、同程度に阻害された。同様の結果を、抗CD40 mAb 3C6および3A8で、ならびにhCD40.Hμ融合タンパク質で得た。
【0199】
本発明の抗CD40 mAbは、非常に有効な阻害を示した。約30ng/ml程度の低い濃度で、3つの抗CD40 mAbの各々が、50%の最大阻害を示した。対照的に、アイソタイプ一致性のIgG2bマウスミエローマタンパク質MOPC−141は、免疫グロブリンの産生に影響しなかった。
【0200】
3つの抗CD40 mAbによる阻害効果は、CD40リガンドヘルパー活性を提供しているT細胞の活性化の様式に対し特異的でなかった。図16Bは、全てのT細胞増殖条件下(抗CD3単独;抗CD3+抗CD2;抗CD3+抗CD28;および抗CD3+抗CD2+抗CD28)で、抗CD40 mAb5D12の添加が、ヒトB細胞による免疫グロブリン産生の強度の阻害をもたらしたことを示す。この阻害は、CD40−CD40リガンド相互作用を完全に遮断することで知られるhCD40.Hμ融合タンパク質による阻害の量に匹敵する。阻害の百分率は、T細胞活性化条件に依存して、40〜70%に変化した。対照的に、アイソタイプ一致性のIgG2bマウスミエローマタンパク質MOPC−141、あるいはヒトIgM(hCD40.Hμ融合タンパク質のコントロールとして)は、ヒトB細胞による免疫グロブリンの産生に影響しなかった。
【0201】
培養の寄託
上記の実施例中で使用されたハイブリドーマは、ブダペスト条約の条項に基づき、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)、12301
Parklawn Drive、Rockville、Maryland、USAに寄託され、受理された。この寄託は、これらのハイブリドーマが、上記の発明または下記の
請求項に記載の発明を実施するのに必須であることを示すものではない。
【0202】
ハイブリドーマ 寄託日 アクセス番号
B7−24 1993年5月6日 HB 11341
3C6 1993年5月6日 HB 11340
5D12 1993年5月6日 HB 11339

本発明は、特定の実施態様を参考にして記載した。しかし、本出願は、添付の請求の範囲の意図および範囲から離れることなく、当業者により行われ得る変更および置換を、包含することが意図される。
【0203】
本発明は、細胞表面抗原に対して特異的な抗体を生産する方法に関し、そしてそれは免疫原として組換え昆虫細胞を用いる。昆虫細胞は、細胞表面抗原を含有する分子のコード領域でトランスフェクトされ、そしてこれらの抗原は、昆虫細胞の表面上で発現される。宿主動物は、これらのトランスフェクトされた昆虫細胞で免疫化されて、細胞表面抗原に対して特異的な抗体を生産する。宿主動物からの抗体産生細胞は、モノクローナル抗体産生性ハイブリドーマ細胞を生産するために用いられる。血清およびハイブリドーマ上清液は、スクリーニングアッセイにおいてトランスフェクトされた細胞を用いて、表面抗原に対する抗体の存在に対して試験され得る。本方法により生産された特異的抗体は、抗B7抗体および抗CD40抗体であり、そしてそれらは被験体における抗体介在性疾患または免疫系疾患を予防または治療するために用いられ得る。抗B7抗体は、T細胞アネルギーの誘導、同種移植片移植組織拒絶反応の治療、移植片対宿主病の治療、およびリウマチ様関節炎の予防または治療に用いられ得る。免疫抑制剤は、抗体と一緒に投与され得る。CD40抗原に結合する抗CD40抗体は、B細胞の成長または分化を妨げるのに用いられ得る。これらの方法において有用なモノクローナル抗体、およびそのようなモノクローナル抗体と免疫反応するエピトープもまた提供される。
【0204】
(参考文献)
【0205】


【化1】



【0206】


【化2】




【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1A】図1Aは、バキュロウイルス転移ベクターpAcC8および多重クローニング部位の配列の図解を示す。
【図1B】図1Bは、本発明の方法に従って、ヒトCD40あるいはB7抗原を発現するSf9細胞生産の図解を示す。
【図2】図2は、ヒトCD40およびヒトB7抗原のコーディング領域を調製するのに使用する、ポリメラーゼ連鎖反応プライマーの配列を示す。これらのプライマーは、抗原B7およびCD40の公表されている全DNAコーディング配列(Freemanら、1989;Stamenkovicら、1989)に基づいて構築した。
【図3】図3は、抗(B7)モノクローナル抗体BB−1と、AcB7ウイルスに感染させたSf9細胞およびヒトCD26を発現するSf9細胞との反応を試験する、ELISAアッセイの結果を示す。
【図4】図4は、抗(CD40)モノクローナル抗体S2C6と、CD40を発現するSf9細胞およびB7を発現するSf9細胞との反応を試験する、ELISAアッセイの結果を示す。
【図5A】図5A−Cは、CD40あるいはB7を発現する、EBV形質転換B細胞系ARC細胞の蛍光細胞染色の結果を示す。
【図5B】図5A−Cは、CD40あるいはB7を発現する、EBV形質転換B細胞系ARC細胞の蛍光細胞染色の結果を示す。
【図5C】図5A−Cは、CD40あるいはB7を発現する、EBV形質転換B細胞系ARC細胞の蛍光細胞染色の結果を示す。
【図6A】図6A−Fは、CD40およびB7を発現するEBV形質転換B細胞系ARC細胞、ならびに可溶性CD40およびB7抗原の蛍光細胞染色を用いた競合アッセイの結果を示す。
【図6B】図6A−Fは、CD40およびB7を発現するEBV形質転換B細胞系ARC細胞、ならびに可溶性CD40およびB7抗原の蛍光細胞染色を用いた競合アッセイの結果を示す。
【図6C】図6A−Fは、CD40およびB7を発現するEBV形質転換B細胞系ARC細胞、ならびに可溶性CD40およびB7抗原の蛍光細胞染色を用いた競合アッセイの結果を示す。
【図6D】図6A−Fは、CD40およびB7を発現するEBV形質転換B細胞系ARC細胞、ならびに可溶性CD40およびB7抗原の蛍光細胞染色を用いた競合アッセイの結果を示す。
【図6E】図6A−Fは、CD40およびB7を発現するEBV形質転換B細胞系ARC細胞、ならびに可溶性CD40およびB7抗原の蛍光細胞染色を用いた競合アッセイの結果を示す。
【図6F】図6A−Fは、CD40およびB7を発現するEBV形質転換B細胞系ARC細胞、ならびに可溶性CD40およびB7抗原の蛍光細胞染色を用いた競合アッセイの結果を示す。
【図7】図7は、抗B7 Mab B7−24のFabフラグメントによる、T細胞の抗CD3誘導B7介在性増殖の阻害を示す。
【図8】図8は、抗B7 Mabs B7−24(四角)あるいはBB−1(三角)による、T細胞の抗CD3誘導B7介在性増殖の阻害を示す。
【図9A】図9は、(A)MAb B7−24あるいは(B)MAb BB−1による、3日間の一次MLC(黒丸)および3日間の二次MLC(白丸)時の、B7/CD28相互作用のブロッキング効果を示す。
【図9B】図9は、(A)MAb B7−24あるいは(B)MAb BB−1による、3日間の一次MLC(黒丸)および3日間の二次MLC(白丸)時の、B7/CD28相互作用のブロッキング効果を示す。
【図10】図10は、CsAによる、T細胞の抗CD3誘導B7介在性増殖の抑制を示す。データは、異なるドナーのT細胞を用いた、3回の個別実験の平均値±S.D.である。
【図11】図11は、二次MLC時のアロ抗原誘導CTL活性のブロッキングにおける、抗B7 Mab B7−24とCsAとの相乗効果を示す。T細胞のCTL活性は、培地のみ;400μg/ml CsA;10μg/ml Mab B7−24;あるいは、400μg/ml CsAおよび10μg/ml Mab B7−24の存在下での、EBV形質転換B細胞系ARCによる3日間の再刺激後に測定した。
【図12A】図12Aは、3つの新規な抗CD40 mAbおよび1つの従来の抗CD40 mAbの、抗IgM誘導ヒトB細胞増殖を共刺激する能力の比較である。
【図12B】図12Bは、組換えインターロイキン−2(rIL−2)の存在下での、図5Aの実験の繰り返しを示す。
【図13】図13は、3つの新規な抗CD40 mAbの、固定化抗IgMおよび抗CD40 mAb 52C6との共刺激により誘導されたヒトB細胞増殖を阻害する能力を示す。
【図14】図14は、3つの新規な抗CD40 mAbの、EL4B5誘導ヒトB細胞増殖に対する効果を示す。
【図15】図15は、可溶性CD40(hCD40.μ)の、EL4B5誘導ヒトB細胞増殖に対する効果を示す。
【図16A】図16Aおよび16Bは、1つの新規な抗CD40 mAb 5D12の、ヒトB細胞による、ヒトT細胞誘導免疫グロブリン産生に対する効果を示す。
【図16B】図16Aおよび16Bは、1つの新規な抗CD40 mAb 5D12の、ヒトB細胞による、ヒトT細胞誘導免疫グロブリン産生に対する効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の方法

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2008−260771(P2008−260771A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−116438(P2008−116438)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【分割の表示】特願2007−48157(P2007−48157)の分割
【原出願日】平成5年7月8日(1993.7.8)
【出願人】(591076811)ノバルティス バクシンズ アンド ダイアグノスティックス,インコーポレーテッド (265)
【Fターム(参考)】