説明

細菌のラフ型株の製造方法およびその用途

本発明はMycobacterium obuenseのような細菌のラフ型株の製造方法に関する。該方法は、該細菌をスルホンおよび/またはスルホンアミド(例えば、4,4'-ジアミノジフェニルスルホンまたはその類似体)に曝露することを含む。該方法により製造可能なMycobacterium obuenseのラフ型株およびその使用。特に、ブダペスト条約に基づきNCTCに受託番号NCTC 13365で寄託されているMycobacterium obuenseのラフ型株の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌のラフ型株、例えばMycobacterium属細菌のラフ型株に関する。特に、本発明は細菌のラフ型株の取得方法に関する。本発明は更に、新規Mycobacterium obuenseラフ型株およびMycobacterium obuenseのこのラフ型株の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
当技術分野で公知である、Mycobacterium属細菌などの細菌のラフ型株の取得方法は、Mycobacterium属細菌などの細菌をプレーティングし、いずれかのラフ型コロニーを探索することを含む。しかし、このようにして特定されるラフ型株はいずれも、典型的には安定でない。
【0003】
他の方法は、Tweenまたはグリセロールを含有する培地上でMycobacteriaをプレーティングし、菌膜の成長を促すことを含む。この方法は、Mycobacteriaのいくつかの種のラフ型コロニーを誘導することに成功している。しかし、この方法は、いかなるMycobacteriaでもラフ型変異体を誘導できているわけではない。
【0004】
Mycobacterium obuenseのラフ型株を誘導しうる方法は現在のところ存在しない。
【0005】
したがって、Mycobacteriumのラフ型株、特に安定なラフ型株を製造することができる改良された方法が必要とされている。そのような方法は、Mycobacterium obuenseなどのMycobacteriumのいくつかの種のラフ型株を初めて製造するために有利に使用されうるであろう。
【0006】
好都合なことに、本発明は、Mycobacterium obuenseのラフ型株、特に、安定なラフ型株を初めて誘導したそのような改良された方法を提供するものである。
【0007】
高増殖性Mycobacteriaのラフ型株は以下のような多数の利点を有する:
・安定なラフ型株はスムーズ型株へ復帰しない;
・ラフ型株は、異なる抗原提示を示し、スムーズ型株より病原毒性が低い傾向にある;
・ラフ型株から製造された皮膚試験試薬は、スムーズ型株から製造されたものよりも有効性が高い;
・ラフ型株は、in vitro細胞性免疫実験において使用された場合に非常に有効である;および
・いくつかの桿菌の小さな集団または粒子は、食細胞を刺激する上で、スムーズ型株の単一の生物より有効でありうる。
【0008】
さらに、本発明は、好都合なことに、Mycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞が、被験体の免疫応答をモジュレーションするために使用されうることを見出した。
【0009】
M. vaccaeは被験体の免疫応答をモジュレーションすることが公知であったが、M. obuenseは、免疫モジュレーターとしての使用に適しているとみなされたことはかつてなかった。
【0010】
ワクチンおよび他の免疫モジュレーターは、疾患の罹患率およびそれによる死亡率の減少において大きな影響を及ぼす。ほとんどの現在のワクチンにより惹起される一次免疫は体液性免疫応答によりもたらされるようである。細胞性免疫応答を必要としうる疾患、例えば結核およびリーシュマニア症に対して一律に有効な利用可能なワクチンは現在存在しない。
【0011】
典型的には、アジュバントをワクチンに加える。アジュバントの役割は、ワクチンの特定の抗原に対する身体の免疫応答を増強することである。一般に使用されるアジュバントは典型的には体液性免疫応答をもたらし、細胞性免疫応答をもたらすものではない。また、例えばアルミニウムアジュバントは、無菌膿瘍、紅斑、腫脹、皮下結節、肉芽性炎症および接触過敏症のような好ましくない副作用を引き起こしうる。
【0012】
細胞性免疫応答、特にTヘルパー細胞応答、例えばTヘルパー細胞1(Th1)およびTヘルパー細胞2(Th2)応答を修飾するワクチンまたは他の免疫モジュレーターが求められている。
【0013】
多種多様な自己免疫疾患が存在し、それらはそれぞれ、異なる様態で身体に悪影響を及ぼしうる。自己免疫疾患の多くは稀なものである。しかし、全体として、自己免疫疾患は何百万もの人々を苦しめている。
【0014】
いくつかの自己免疫疾患は、ウイルス、寄生虫および慢性細菌感染のような或る種の誘導因子により開始または悪化することが公知である。加齢、慢性ストレス、ホルモンおよび妊娠を含むそれほど十分には理解されていない他の要因も免疫系および自己免疫疾患の経過に影響を及ぼす。
【0015】
自己免疫疾患はしばしば慢性であり、患者が元気に見えるまたは感じられる場合であっても、生涯にわたるケアおよび経過観察を要する。現在のところ、治療により治癒または寛解しうる自己免疫疾患はごく少数に過ぎない。
【0016】
医師は、ほとんどの場合、自己免疫疾患により引き起こされる炎症の結果に患者が対処するのを助ける。人によっては、限られた数の免疫抑制薬が疾患の寛解をもたらしうる。しかし、彼らの疾患が寛解する場合であっても、患者の投薬を中断できることはめったにない。免疫抑制薬治療の長期副作用はかなりのものとなりうる。
【0017】
血管損傷の開始および進行は複雑な多因子性過程であるが、炎症応答が中心的な役割を果たしているという証拠が増えつつある。血管損傷は、アテローム性動脈硬化症の発症、ならびに急性虚血症候群、例えば心筋梗塞、卒中および末梢動脈閉塞を招く血栓過程に関与する。
【0018】
免疫メカニズムはアテローム性動脈硬化症および筋内膜過形成(myointimal hyperplasia)(MIH)の発生および維持において重要となりうる。
【0019】
筋内膜過形成(myointimal hyperplasia)(MIH)はバルーン血管形成術のような損傷に対する過大な治癒応答とみなされうる。一連の事象は、基底膜の喪失、中膜から内膜内への血管平滑筋細胞(VSMC)の遊走、VSMCの増殖およびより分泌性の繊維芽細胞型への表現型変化、ならびに細胞外マトリックスの産生の増強をもたらし、それは最終的には血管の狭窄または閉塞を招く。それはバイパス移植およびバルーン血管形成術の後に生じ、臨床実施におけるそのような症例の約30%を冒す。それは、そのような処置の失敗の主要原因であり、生じた狭窄および閉塞血管/移植体の治療は厄介である。MIHを招く基本的な細胞メカニズムは十分には理解されておらず、現在のところ、それを有効に予防しうる治療法は開発されていない。本特許の臨床的重要性は、英国および全世界において毎年行われている非常に多数の冠状動脈血管形成術に関する。薬物溶出ステント(drug eluting stent)は現在、有望な結果をもたらしているが、それらは再狭窄を完全には予防しないようである。いずれかの安全で比較的安価な補助療法、例えば本特許において提示されている免疫療法は、大きな臨床的影響を及ぼすであろう。
【0020】
再狭窄に対する免疫療法に関わるメカニズムは複雑であり、完全には解明されていない。血管形成術により引き起こされた内皮損傷はhspに対する宿主免疫応答により悪化しうる。hspは、アテローム性動脈硬化症を含む種々の免疫障害の病因および病態生理に関与しているストレス負荷細胞により産生されるタンパク質である(Xu Qら, Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799)。それは血管形成の領域内の内皮細胞および平滑筋細胞上に存在すると思われる。実際、hspは、後に免疫系により攻撃されうる自己抗原として機能する。この状況は、ウサギおよびマウスにおいて内皮損傷を招く交差反応性マイコバクテリアhsp(hsp65)で免疫化することにより実験的に誘発されうる(Xu Qら, Arterioscler Thromb 1992; 12: 789-799およびGeorge Jら, Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210)。該作用は、Th2リンパ球により分泌されるIL-4に依存的であるらしく、おそらく、抗体により媒介されるのであろう(George Jら, Circ. Res. 2000; 86: 1203-1210およびSchett Gら, J. Clin. Invest. 1995; 96: 2569-2577)。hsp65カラムから溶出したアフィニティー精製ヒト抗体がストレス負荷ヒト内皮細胞をin vitroで損傷しうることから、ヒトに対するこれらの観察の関連性が示唆される。hsp65のヒトホモログであり、ストレス負荷内皮細胞の膜上で発現された場合に抗体に接近可能でありうるhsp60と、該抗体が交差反応することを、この知見は示唆している。ストレス負荷内皮細胞に結合するそのような抗体は、心臓移植後に冠状動脈疾患を引き起こす一因となりうることが示唆されている(Crisp SJら, J Heart Lung Transplant 1994; 81-91)。Mukherjeeら(Thromb Haemost 1996; 75: 258-60)はhsp65に対する術前抗体レベルと冠状動脈再狭窄との間の関連性を示さなかったが、血管形成術後にそのような抗体のレベルが低下した患者が再狭窄する可能性はより低いことを示した。実際、hspに対する抗体の役割は複雑であろう。なぜなら、血管疾患を有する患者は、抗体を産生しているだけでなく、hsp自体の濃度をも上昇させているからである(Wright BHら, Heart Vessels 2000; 15: 18-22)。したがって、抗体濃度の見掛け上の低下は該タンパク質のレベルの増加を反映しているに過ぎないのかもしれない。さらに、hspは調節作用を有し、動脈平滑筋細胞に結合して、インターナリゼーションを要することなく生存を向上させる(Johnson ADら, Atherosclerosis 1990; 84: 111-119)。
【0021】
WO2004/022093および英国特許出願番号0404102.6(それらを共に参照により本明細書に組み入れることとする)は、Rhodococcus、Gordonia、Nocardia、Dietzia、TsukamurellaおよびNocardioides属の細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を開示している。
【0022】
また、米国特許出願番号10/893,524(これを参照により本明細書に組み入れることとする)は、離乳後多臓器消耗症候群(post-weaning multisystemic wasting syndrome)(PMWS)ならびに/またはブタ皮膚炎および腎症症候群(PDNS)の治療または予防のための医薬の製造における、Rhodococcus、Gordonia、Nocardia、Dietzia、TsukamurellaおよびNocardioides属の細菌の全細胞の使用を開示している。
【0023】
しかし、これらの文献はいずれも、細胞性免疫応答をモジュレーションするための、M. obuenseのラフ型株(好ましくは、安定なラフ型株)の全細胞の使用を教示も示唆もしていない。
【発明の開示】
【0024】
発明の概要
本発明は、細菌のラフ型株、例えばMycobacterium属の細菌のラフ型株が、スルホンおよび/またはスルホンアミドに対する曝露により誘導されうるという驚くべき知見に基づくものである。
【0025】
誕生から死亡まで、免疫系は環境との接触を介して教育され、絶えず刺激され、調節される。現代の都市化、および感染症を予防するための公衆衛生対策は、この曝露を実質的に排除していて、アレルギーや新生物疾患のような疾患における前例のない増加を招いている。無害で有益な環境細菌の死菌懸濁液の使用により環境の有益な影響を回復させることは免疫系の正常なバランスを矯正して、疾患の治療および/または健常免疫系の促進において治療的および/または予防的に働きうる。
【0026】
したがって、細菌(例えばMycobacterium、例えばM. obuense)のラフ型株を誘導する方法に加えてまたはそれに代えて、本発明は、被験者に投与されたMycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞が、その被験者の免疫系、特に細胞性免疫系の修飾の惹起において特に有効であるという驚くべき知見に基づくものである。
【0027】
本明細書中で用いる「細胞性免疫系」なる語は、Tリンパ球の存在に依存する細胞性免疫応答を含む。「Tリンパ球」なる語は、細胞傷害性Tリンパ球、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞および調節T細胞を含む。細胞性免疫応答の修飾は、例えば、免疫系失調および免疫過敏症を含む細胞性免疫障害を克服するために用いられうる。
【0028】
本明細書中で用いる「モジュレーション」、「修飾する」、「修飾」なる語およびそれらの他の派生語は、細胞性免疫系の成分のダウンレギュレーション、抑制、誘導、刺激、アップレギュレーション、改変またはその他の影響を意味する。
【0029】
本発明は、被験者に投与されたMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞が、自己免疫疾患または自己免疫障害(特に、例えば血管の内膜の炎症を伴うもの)に対する予防および/または治療効果をもたらす、その被験者の免疫系、特に細胞性免疫系の修飾の惹起において特に有効である、という驚くべき知見に基づくものである。
【0030】
自己免疫疾患および自己免疫障害(特に、例えば血管の内膜の炎症を伴うもの)を有効に治療および/または予防するための、M. obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む組成物の使用の利点は、現在常套的に用いられている化学療法(すなわち、免疫抑制薬の投与)よりも少ない長期副作用を生じながら、この治療および/または予防が行われることでありうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
発明の詳細な態様
1つの態様において、本発明は、細菌のラフ型株の製造方法であって、該細菌をスルホンおよび/またはスルホンアミドに曝露することを含んでなる方法に関する。
【0032】
好適には、本発明の細菌のラフ型株の製造方法においては、該ラフ型株を単離してもよい。
【0033】
好ましくは、本発明の細菌のラフ型株の製造方法においては、培地1ml当たりスルホンおよび/またはスルホンアミド5μg以上の濃度のスルホンおよび/またはスルホンアミドを含有する培地で細菌を増殖させる。
【0034】
好適には、本発明の細菌のラフ型株の製造方法においては、該細菌はMycobacterium属のもの、好ましくはMycobacterium obuenseのものでありうる。
【0035】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の方法により製造可能な(好ましくは製造された)Mycobacterium属の細菌のラフ型株に関する。
【0036】
もう1つの態様においては、本発明は、本発明の方法により製造可能な(好ましくは製造された)Mycobacterium obuenseのラフ型株に関する。
【0037】
もう1つの態様においては、本発明は、特許手続き上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に基づき67 Lakers Rise, Woodmansterne, Surrey, SM7 3LAのBioEos LimitedによりNational Collection of Type Cultures (NCTC), Central Public Health Laboratory, 61 Colindale Avenue, London, NW9 5HTに2005年7月14日付で受託番号NCTC 13365で寄託されたMycobacterium obuenseのラフ型株に関する。
【0038】
1つの態様においては、本発明は、Mycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物を提供する。
【0039】
本明細書中で用いる「免疫モジュレーター」なる語は、被験体の細胞性免疫系をモジュレーションする物質を意味する。
【0040】
本明細書中で用いる「全細胞」なる語は、無傷(intact)または実質的に無傷である細菌を意味する。特に、本明細書中で用いる「無傷」なる語は、全細胞(whole cell)、特に生存している全細胞内に存在する成分の全てから構成される細菌、および/または1以上の成分をそれから除去するよう特異的に処理されていない細菌を意味する。本明細書中で用いる「実質的に無傷」なる語は、該細菌の取得において用いられる単離および/または精製方法が例えば該細胞に対する若干の修飾および/または該細胞の1以上の成分の除去をもたらしうるが、そのような修飾および/または除去の生じる度合が有意でないことを意味する。特に、本発明の実質的に無傷な細胞は、1以上の成分をそれから除去するよう特異的には処理されていない。
【0041】
本発明以前には、細胞性免疫応答をモジュレーションするための、Mycobacterium obuenseのラフ型株からの細菌の全細胞の使用は、予期されていなかった。驚くべきことに、Mycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞を使用することにより、細胞性免疫系のモジュレーションが達成されうることが見出された。該ラフ型株の全細胞の投与によりもたらされる細胞性免疫応答のモジュレーションは、有利なことに、該細菌の個々の成分の投与により惹起される応答と比べて長く持続しうる。
【0042】
好ましくは、本発明の組成物は、1個を超える全細胞を含み、より好ましくは、複数の全細胞を含む。
【0043】
もう1つの態様においては、本発明は、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物であって、使用した該免疫モジュレーター組成物が細胞性免疫応答を修飾する、免疫モジュレーター組成物を提供する。
【0044】
もう1つの態様においては、本発明は、抗原およびアジュバントを含んでなる免疫モジュレーター組成物であって、該アジュバントがMycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む、免疫モジュレーター組成物を提供する。
【0045】
もう1つの態様においては、本発明は、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞と、場合によっては製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含んでなる医薬組成物であって、使用した該免疫モジュレーター組成物が細胞性免疫応答を修飾する、医薬組成物を提供する。
【0046】
本発明は更に、本発明の化合物の1以上を製薬上許容される希釈剤、賦形剤または担体と混合することを含んでなる、本発明の医薬組成物の製造方法を提供する。
【0047】
もう1つの態様において、本発明は、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞および少なくとも1つの抗原または抗原決定基を含んでなる免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物を提供する。
【0048】
好適には、該抗原または抗原決定基は、以下のもののうち1以上の抗原または抗原決定基でありうる:BCG(カルメット・ゲラン菌)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTPまたはTriple)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)、Mycobacterium vaccaeまたはその一部(GB0025694.1に教示されているとおり)および一般的なプラスモジウム抗原、例えばマラリア寄生虫抗原。
【0049】
好適には、該免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は2以上のそのような抗原または抗原決定基を含みうる。
【0050】
もう1つの態様においては、本発明は、抗原または抗原決定基とアジュバントとを含んでなる免疫モジュレーター組成物であって、該抗原または抗原決定基がMycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む、免疫モジュレーター組成物を提供する。
【0051】
該細菌の全細胞が抗原または抗原決定基として機能する場合、該組成物は、好適には、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの他の抗原または抗原決定基を含みうる。
【0052】
本発明は更に、感染(例えば、細菌、ウイルス、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルスにより引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症)および/または感染に伴う免疫異常;自己免疫疾患(例えば、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫の刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの));細胞性肺気腫;COPD;PMWS;PDNS;SIPH;癌(例えば、メラノーマまたは腺癌);免疫系失調(例えば、小児および高齢者における免疫系失調);ならびに術後ストレスおよび感染、のうち1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。高齢者における免疫系失調は免疫老化と称されうる。
【0053】
本発明は更に、1以上のウイルス感染、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルスにより引き起こされる感染の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0054】
1つの態様においては、本発明は、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞および少なくとも1つの抗原または抗原決定基を含んでなる免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物であって、該抗原または抗原決定基がウシパピローマウイルスのウイルス抗原である、免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物を提供する。
【0055】
本発明は更に、寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、またはトキソプラズマ症のうち1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0056】
本発明は更に、自己免疫疾患、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶のうち1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0057】
本発明は更に、ストレス、例えば主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび/または慢性ストレスおよび/または術後ストレス(麻酔薬の投与に関連したストレスを含む)のうち1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0058】
本発明は更に、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫の刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)のうちの1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0059】
好ましくは、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む該免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、アレルギー性喘息を含む喘息、および昆虫刺咬に対するアレルギー、例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるものの治療または予防のための医薬の製造において使用される。
【0060】
本発明は更に、細胞性肺気腫および/またはCOPD、特にウマにおけるものの1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0061】
本発明は更に、PMWSおよび/またはPDNSの1以上の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0062】
本発明は更に、ストレス誘発性肺内出血(SIPH)、好ましくは運動誘発性肺内出血(EIPH)の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0063】
本発明は更に、メラノーマおよび/または腺癌の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0064】
本発明は更に、高齢者における免疫系失調の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。典型的には、本発明のこの態様の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫増強物質でありうる。
【0065】
本発明は更に、例えば成長の増進または飼料利用の効率の増加をもたらしうる免疫系の増強のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。典型的には、本発明のこの態様の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫増強物質でありうる。有利には、本発明の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、家畜の成長を促進させるために現在使用されている抗生物質の代わりに使用されうる。好適には、本発明の免疫モジュレーター組成物は、単独で、または他の治療と組合せて使用されうる。本明細書中で用いる「家畜」なる語は任意の飼育動物を意味する。好ましくは、家畜はウマ、家禽、ブタ(子ブタを含む)、ヒツジ(子ヒツジを含む)、雌ウシまたは雄ウシ(子ウシを含む)のうち1以上である。より好ましくは、家畜はブタ(子ブタを含む)を意味する。
【0066】
本発明は更に、小児における免疫系失調の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0067】
本発明は更に、小児用ワクチン(例えば、百日咳ワクチン接種および現在のMMRワクチン接種)に対する有害反応および/またはその影響の治療または予防のための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株からの細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。本明細書中で用いる「有害反応」なる語は、ワクチンまたはその投与により引き起こされるかまたは感作される局所性または全身性の不利な応答を意味し、これは典型的には短い時間枠内に生じるが、遅れて(例えば、6ヵ月遅れて)生じることもある。「有害反応」は小児の死亡を含みうる。有害反応は別の事象の結果として引き起こされることがあり、この場合、それに対する応答は、該ワクチンまたはその投与により負に感作されている。
【0068】
本発明は更に、細胞性免疫応答を修飾するための医薬の製造における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用を提供する。
【0069】
もう1つの態様においては、本発明は、医薬としての使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0070】
もう1つの態様においては、本発明は、ワクチンにおけるまたはワクチンとしての使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0071】
好適には、該ワクチンは予防用ワクチンまたは治療用ワクチンでありうる。
【0072】
もう1つの態様においては、本発明は、免疫増強物質としての使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0073】
もう1つの態様においては、本発明は、感染(例えば、細菌、ウイルス、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルスにより引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症)および/または感染に伴う免疫異常;自己免疫疾患(例えば、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫の刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの));細胞性肺気腫;COPD;PMWS;PDNS;SIPH;癌(例えば、メラノーマまたは腺癌、またはウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌);免疫系失調(例えば、小児および高齢者における免疫系失調);ならびに術後ストレスおよび術後感染のうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0074】
もう1つの態様において、本発明は、寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症のうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0075】
もう1つの態様において、本発明は、ウイルス感染、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルスにより引き起こされる感染の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0076】
もう1つの態様において、本発明は、自己免疫疾患、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶のうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0077】
もう1つの態様において、本発明は、ストレス、例えば主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレスおよび/または術後ストレスのうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0078】
もう1つの態様において、本発明は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)のうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。好ましくは、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含む該免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、アレルギー性喘息を含む喘息、および昆虫刺咬に対するアレルギー、例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるものの、治療または予防における使用のためのものである。
【0079】
もう1つの態様において、本発明は、細胞性肺気腫および/またはCOPD、特にウマにおけるもののうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0080】
もう1つの態様において、本発明は、PMWSおよび/またはPDNS、特にブタにおけるもののうち1以上の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0081】
もう1つの態様において、本発明は、SIPH、特に魚類(例えば、コイ)および/または競争用動物(例えば、ウマ、ラクダ、グレーハウンドおよびヒト)におけるものの治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0082】
もう1つの態様において、本発明は、癌(例えば、メラノーマおよび/または腺癌および/またはウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌)の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0083】
もう1つの態様において、本発明は、免疫系失調、特に高齢者における免疫老化の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0084】
もう1つの態様において、本発明は、術後感染の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0085】
もう1つの態様において、本発明は、例えば家畜における成長の増進または飼料利用の効率の増加をもたらしうる免疫系の増強における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0086】
もう1つの態様において、本発明は、小児における免疫系失調の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0087】
もう1つの態様において、本発明は、小児用ワクチン(例えば、百日咳ワクチン接種および現在のMMRワクチン接種)に対する有害反応および/またはその影響の治療または予防における使用のための、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物または医薬組成物を提供する。
【0088】
もう1つの態様において、本発明は、ワクチンまたは医薬における、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞の使用であって、該細菌の全細胞が細胞性免疫応答を修飾する、使用を提供する。
【0089】
1つの態様において、本発明のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞はTh2応答をダウンレギュレーションしうる。
【0090】
もう1つの態様において、本発明のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞はTh1応答をアップレギュレーションしうる。
【0091】
好適には、本発明のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞はTh2応答をダウンレギュレーションし、Th1応答をアップレギュレーションしうる。
【0092】
あるいは、本発明のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞はTh1応答をアップレギュレーションしうるが、Th2応答に影響を及ぼさない。
【0093】
あるいは、本発明のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞はTh2応答をダウンレギュレーションし、Th1応答をもダウンレギュレーションしうる。
【0094】
あるいは、本発明のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞はTh2応答をアップレギュレーションし、Th1応答をもアップレギュレーションしうる。
【0095】
もう1つの態様において、本発明は、細胞性免疫応答をモジュレーションする医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物の有効量を被験体に投与することを含んでなる、被験体における状態の治療または予防方法を提供する。
【0096】
好適には、該医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物の有効量は単一用量(1回量)として投与されうる。あるいは、該医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物の有効量は複数(反復)用量、例えば2以上、3以上、4以上、5以上、10以上または20以上の反復用量で投与されうる。
【0097】
もう1つの態様において、本発明は、本発明の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を被験体に投与することを含んでなる、被験体を免疫化するための方法を提供する。
【0098】
本発明のもう1つの態様においては、本発明の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を被験体に投与することを含んでなる、被験体を防御する(免疫化することを含む)ための方法を提供する。
【0099】
好ましくは、被験体は、感染(例えば、細菌、ウイルス、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルスにより引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症)および/または感染に伴う免疫異常;自己免疫疾患(例えば、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの));細胞性肺気腫;COPD;PMWS;PDNS;SIPH;癌(例えば、メラノーマまたは腺癌、またはウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌);免疫系失調(例えば、小児および高齢者における免疫系失調);ならびに術後ストレスおよび術後感染のうち1以上に対して防御、例えば免疫化される。
【0100】
好ましくは、被験体は、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症のうち1以上に対して免疫化される。
【0101】
好ましくは、被験体は、ウイルス感染に対して、例えば、ウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルス感染に対して免疫化される。
【0102】
好ましくは、被験体は、自己免疫疾患、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶のうち1以上に対して免疫化される。
【0103】
好ましくは、被験体は、ストレスに対して、例えば主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレスならびに/または術後ストレスのうち1以上に対して防御される。
【0104】
好ましくは、被験体は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)のうち1以上に対して防御(免疫化を含む)される。より好ましくは、被験体は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、および昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)のうち1以上に対して免疫化される。
【0105】
好ましくは、被験体は、COPDおよび/または細胞性肺気腫、特に被験体がウマであるもののうち1以上に対して防御(免疫化を含む)される。
【0106】
好ましくは、被験体は、PMWSおよび/またはPDNS、特に被験体がブタであるもののうち1以上に対して防御(免疫化を含む)される。
【0107】
好ましくは、被験体は、SIPHに対して、特に被験体が魚類(例えば、コイ)であるもの、例えばEIPH、特に被験体が競争用動物(例えば、ヒト、ウマ、ラクダまたはグレーハウンド)であるものに対して防御(免疫化を含む)される。
【0108】
好ましくは、被験体は、術後ストレスおよび感染に対して防御(免疫化を含む)される。
【0109】
好ましくは、被験体は、癌、例えばメラノーマおよび/または腺癌および/またはウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌の発生および/または進行に対して防御される。
【0110】
好ましくは、被験体は、高齢者における免疫系失調に対して防御(免疫化を含む)される。特に、本発明の組成物は、被験体の免疫系を調節するために使用されうる。
【0111】
好ましくは、被験体は、小児における免疫系失調に対して防御(免疫化を含む)される。特に、本発明の組成物は、被験体の免疫系、特に小児の免疫系を調節するために使用されうる。
【0112】
好ましくは、被験体は、小児用ワクチンに対する有害反応および/またはその影響に対して防御(免疫化を含む)される。特に、被験体の免疫系、特に小児の免疫系は、該小児用ワクチンの投与の前および/または途中および/または後に調節される。
【0113】
本明細書中で用いる「防御された」なる語は、被験体が、本発明の組成物で治療または投与されていない被験体と比べて該疾患/障害に罹患しにくいこと、および/または、該被験体が、本発明の組成物で治療または投与されていない被験体と比べて、該疾患/障害に抵抗しまたは該疾患/障害を克服する高い能力を有することを意味する。
【0114】
もう1つの態様において、本発明は、本発明の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物の有効量を、被験体に投与し、その際、該組成物を抗原または抗原決定基と共投与することを、提供する。
【0115】
本発明に従い該組成物を抗原または抗原決定基と共投与する場合、該抗原または抗原決定基は、好適には、以下のもののうち1以上の抗原または抗原決定基でありうる:BCG(カルメット・ゲラン菌)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳(DTPまたはTriple)ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)、Mycobacterium vaccaeまたはその一部(GB0025694.1に教示されているとおり)および一般的なプラスモジウム抗原、例えばマラリア寄生虫抗原。好適には、そのような抗原または抗原決定基の2以上または3以上が本発明の医薬組成物または免疫モジュレーター組成物と共に投与されうる。
【0116】
好ましくは、本発明の医薬は、感染(例えば、細菌、ウイルス、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルスにより引き起こされる感染、または寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症)および/または感染に伴う免疫異常;自己免疫疾患(例えば、血管障害、例えば閉塞性血管障害、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス);アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの));細胞性肺気腫;COPD;PMWS;PDNS;SIPH;癌(例えば、メラノーマまたは腺癌、またはウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌);免疫系失調(例えば、小児および高齢者における免疫系失調);ならびに術後ストレスおよび術後感染のうち1以上の治療または予防のために使用されうる。
【0117】
好ましくは、本発明の医薬は、マラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症のうち1以上の治療または予防のために使用される。
【0118】
好ましくは、本発明の医薬は、ウイルス感染に対して、例えば、ウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含むパピローマウイルス感染の治療または予防のために使用される。
【0119】
好ましくは、本発明の医薬は、自己免疫疾患、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶のうち1以上の治療または予防のために使用される。
【0120】
好ましくは、本発明の医薬は、ストレス、例えば主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレスの治療または予防のために使用される。
【0121】
好ましくは、本発明の医薬は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)のうち1以上の治療または予防のために使用される。より好ましくは、本発明の医薬は、喘息(アレルギー性喘息を含む)、および昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)のうち1以上の治療または予防のために使用される。
【0122】
好ましくは、本発明の医薬はCOPDおよび細胞性肺気腫の1以上の治療または予防のために使用される。
【0123】
好ましくは、本発明の医薬はPMWSおよびPDNSのうち1以上の治療または予防のために使用される。
【0124】
好ましくは、本発明の医薬はSIPHの治療または予防のために使用される。
【0125】
好ましくは、本発明の医薬は癌(例えば、メラノーマおよび/または腺癌および/またはウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌)の治療または予防のために使用される。
【0126】
好ましくは、本発明の医薬は高齢者における免疫系失調の治療または予防のために使用される。
【0127】
好ましくは、本発明の医薬は術後ストレスまたは感染の治療または予防のために使用される。
【0128】
好ましくは、本発明の医薬は小児における免疫系失調の治療または予防のために使用される。
【0129】
好ましくは、本発明の医薬は、小児用ワクチンに対する有害反応および/またはその影響の治療または予防のために使用される。
【0130】
本発明のもう1つの態様においては、本発明の医薬組成物または免疫モジュレーター組成物はMycobacterium obuenseのラフ型株の細菌を含みうる。好適には、該組成物はMycobacterium obuenseのラフ型株の2以上または3以上の細菌を含みうる。
【0131】
好適には、本発明の使用のための細菌は、他の免疫増強性細菌、例えばRhodococcus属、Gordonia属、Nocardia属、Dietzia属、Tsukamurella属およびNocardioides属のいずれかの細菌、例えば、これらのいずれかの属の任意の種、例えば、Gordonia bronchialis、G. amarae、G. sputti、G. terrae、Nocardia asteroides、Dietzia maris、Tsukamurella paurometabola、Rhodococcus ruber、Rhodococcus rhodnii、R. coprophilus、Nocardioides albusおよびTsukamurella inchonensisと組合せて使用されうる。
【0132】
好適には、それぞれの特定の属の使用種は、低抗原性培地、好ましくは非抗原性培地である培地で増殖しうるものである。単なる例示として挙げると、好適な非抗原性培地はソートン(Sauton)培地である。
【0133】
より好ましくは、本発明の使用のための細菌と組合せて使用される細菌は、Rhodococcus属の細菌、例えばRhodococcus ruber(以前はNocardia rubraとして知られていた)、Rhodococcus rhodocrous、Rhodococcus rhodnii、Rhodococcus coprophilus、Rhodococcus opacus、Rhodococcus erythopolisである。
【0134】
より好ましくは、本発明の使用のための細菌と組合せて使用される細菌はRhodococcus ruberである。
【0135】
単なる例示として挙げると、本発明における使用のための細菌と組合される生物Gordonia bronchialis、Rhodococcus ruber、Rhodococcus rhodocrous、Rhodococcus rhodnii、Dietzia marisおよびGordonia terraeのうち1以上は寄生虫感染の治療および/または予防において有効でありうる。
【0136】
単なる例示として挙げると、本発明における使用のための細菌と組合される生物Tsukamurella inchonensis、Gordonia amaraeおよびNocardia asteroidsのうち1以上は、アレルギー、例えば昆虫刺咬に対するアレルギー、例えば小昆虫によるものの治療および/または予防、および/または癌、例えば皮膚新生物、例えばウマサルコイドの治療および/または予防において特に有効でありうる。
【0137】
単なる例示として挙げると、本発明における使用のための細菌と組合されるRhodococcus coprophilusは、感染、特に寄生虫感染のモジュレーションおよび/または家畜の成長の増進において特に有効でありうる。
【0138】
本発明の1つの実施形態においては、PMWSおよび/またはPDNSの予防または治療において、細菌の全細胞がRhodococcus coprophilusと組合せて使用されうる。
【0139】
本発明の1つの実施形態においては、SIPHの予防または治療において、Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞がTsukamurella inchonensisと組合せて使用されうる。
【0140】
好ましくは、本発明の細菌は使用前に殺菌される。
【0141】
好ましくは、本発明の細菌は、その加熱処理、例えば、オートクレーブ内で121℃で15分間の加熱処理により殺菌される。該細菌を殺すための他の適当な処理には、紫外線もしくは電離放射線、または化学物質、例えばフェノール、アルコールもしくはホルマリンでの処理が含まれうる。好適には、該電離放射線照射はCo60源からの2.5Mradへの曝露により行われうる。
【0142】
好ましくは、本発明の細菌は精製および/または単離されうる。
【0143】
好ましくは、本発明の細菌は、水または緩衝生理食塩水、好適にはpH8のホウ酸緩衝生理食塩水に懸濁される。
【0144】
本明細書中で用いる「被験体」なる語は動物を意味する。好ましくは、被験体は、例えば家畜およびヒトを含む哺乳動物、鳥類、魚類または甲殻類動物である。本発明のいくつかの態様においては、被験体は好適にはヒトでありうる。
【0145】
本発明の1つの態様においては、例えばPMWSおよび/またはPDNSの治療においては、被験体はブタでありうる。
【0146】
本発明のもう1つの態様においては、例えばCOPD、細胞性肺気腫および/またはCulicoidesの治療においては、被験体はウマでありうる。
【0147】
本発明のもう1つの態様においては、例えばSIPHの治療においては、被験体は魚類(例えば、コイ)または競争用動物(例えば、ヒト、ウマ、ラクダまたはグレーハウンド)でありうる。好ましくは、被験体は競争用動物である。
【0148】
本明細書中で用いる「免疫モジュレーター」なる語はワクチンを包含する。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態においては、「ラフ型株」なる語は安定なラフ型株を意味する。「安定」は、20以上の連続的な培養にわたってラフ型株がそのラフ型コロニーの形態を保持することを意味する。
【0150】
本明細書中で用いる「コロニーの形態」または「コロニー形態」なる語は寒天プレート上の細菌の培養特性を意味する。
【0151】
本明細書中で用いる「ラフ型」なる語はスムーズ型以外を意味する。本明細書中で用いる「ラフ型」なる語は、でこぼこのコロニー形態のような特徴を含みうる。また、該用語は、例えば、ウェーブ状および/または突起のある(lobate)形態を含みうる。
【0152】
本発明のもう1つの実施形態においては、本明細書中で用いる「ラフ型」なる語は、該株がO-多糖を産生できない及び/または実質的に産生できないことを意味する。
【0153】
ラフ型株の製造
本発明のいくつかの態様は、細菌をスルホンおよび/またはスルホンアミドに曝露することによる細菌のラフ型株の製造方法、あるいはラフ型株を製造するためのスルホンおよび/またはスルホンアミドの使用に関する。
【0154】
そのような方法および使用は、細菌(例えば、Mycobacteriumのスムーズ型変異体)をスルホンおよび/またはスルホンアミドに曝露するとラフ型変異体の産生がもたらされるという驚くべき知見に基づくものである。
【0155】
好ましくは、本発明の方法において使用する細菌は、Actinomycetales目における好気性生物の属のものである。好ましくは、該細菌はMycobacterium属のものである。好適には、該細菌はMycobacterium obuenseのものである。
【0156】
好適には、本発明の方法において使用する細菌は任意の適当な培地、例えばMiddlebrook 7H11培地で増殖されうる。
【0157】
好ましくは、本発明において使用する細菌は、培地1ml当たりのスルホンおよび/またはスルホンアミドより大きいかまたはそれに等しい濃度、好ましくは7.5μg/ml以上、好ましくは10μg/ml以上、好ましくは30μg/ml未満、好ましくは20μg/ml以下、好ましくは約12μg/mlの濃度のスルホンおよび/またはスルホンアミドに曝露される。
【0158】
好適には、スルホンおよび/またはスルホンアミドを適当な培地と混合し、該培地で細菌を増殖させることが可能である。
【0159】
本発明の方法により製造された細菌のラフ型コロニーは更に単離してもよい。
【0160】
好適には、本発明の方法により製造された細菌のラフ型コロニーは安定でありうる。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態においては、「ラフ型株」なる語は、スルホンおよび/またはスルホンアミドの非存在下の少なくとも3回の反復培養でラフ型形態を保持しうる細菌株を意味する。
【0162】
スルホン
スルホンなる語は、式(I):
【化1】

【0163】
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、R2はヒドロカルビル基である)の化合物を意味する。
【0164】
好ましくは、R1は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0165】
好ましくは、R1は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0166】
好ましくは、R1は置換フェニル基である。
【0167】
好ましくは、R1は4-アミノ-フェニル基である。
【0168】
好ましくは、R2は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0169】
好ましくは、R2は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0170】
好ましくは、R2は置換フェニル基である。
【0171】
好ましくは、R2は4-アミノ-フェニル基である。
【0172】
R1およびR2は同一でも異なっていてもよい。
【0173】
1つの好ましい実施形態においては、該スルホンは4,4'-ジアミノジフェニルスルホンおよび/またはその類似体である。
【0174】
4,4'-ジアミノジフェニルスルホンは、Dapsone(商標)なる商標でSigmaにより商業的に販売されている。
【0175】
4,4'-ジアミノジフェニルスルホンの同義語には、N,N'-ジフェニルスルホンジアミド、4,4'-スルホニルジアニリン、ジ(p-アミノフェニル)スルホン、ノボホン(Novophone)、ジアフェニルスルホン、ドゥミトン(Dumitone)、ジホン(Diphone)、4-アミノフェニルスルホン、ビス(p-アミノフェニル)スルホン、WR 448、F 1358、クロイスルホン(Croysulfone)、ジフェナゾン(Diphenasone)、メタボライト(Metabolite)C、ダプソン(Dapsone)(USAN)、1,1'-スルホニルビス[4-アミノベンゼン]、ジアミノジフェニルスルホン、ジ(4-アミノフェニル)スルホン、p,p'-スルホニルジアニリン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、4,4'-スルホニルビスベンザミン、エポラール(Eporal)、DADPS、ジアフェニルスルホン、ダプソン(dapsone)、アブロスルホン(Avlosulfon)、ベンゼンアミン、4,4'-スルホニルビス-、アニリン, 4,4'-スルホニルジ-、ウドラック(Udolac)、DDS, ファーマシューティカル(pharmaceutical)、DSS、DDS、p,p'-ジアミノジフェニルスルホン、スルファジオン、ジスロン、アブロスルホン(Avlosulfone)、p-アミノフェニルスルホン、ダプソン(Dapson)、スルフォナ(Sulfona)、NSC 6091D、およびジアミノジフェニルスルホンが含まれる。
【0176】
本明細書中で用いる「Dapsone(商標)」なる語は、N,N'-ジフェニルスルホンジアミドを意味し、以下の式:
【化2】

【0177】
を有する任意の化合物を意味する。
【0178】
スルホンアミド
スルホンアミドなる語は、式(II):
【化3】

【0179】
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、R3は水素またはヒドロカルビル基であり、R4は水素またはヒドロカルビル基である)の化合物を意味する。
【0180】
好ましくは、R1は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0181】
好ましくは、R1は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0182】
好ましくは、R1は置換フェニル基である。
【0183】
好ましくは、R1は4-アミノ-フェニル基である。
【0184】
好ましくは、R3は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0185】
好ましくは、R3は、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0186】
好ましくは、R3は置換フェニル基である。
【0187】
好ましくは、R3は4-アミノ-フェニル基である。
【0188】
好ましくは、R4は、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0189】
1つの実施形態においては、R3およびR4の少なくとも一方は水素である。
【0190】
もう1つの実施形態においては、R3およびR4の少なくとも一方はアルキルまたは置換アルキル基である。
【0191】
定義
本明細書中で用いる「ヒドロカルビル基」なる語は、少なくともCおよびHを含む基を意味し、場合により、1以上の他の適当な置換基を含みうる。そのような置換基の具体例には、ハロ-、アルコキシ-、ニトロ-、アミノ基、炭化水素基、N-アシル基、環状基などが含まれうる。該置換基が環状基である可能性に加えて、置換基の組合せが環状基を形成してもよい。該ヒドロカルビル基が2以上のCを含む場合、それらの炭素は必ずしも互いに連結している必要はない。例えば、該炭素の少なくとも2つは適当な要素または基を介して連結されうる。したがって、該ヒドロカルビル基はヘテロ原子を含有しうる。適当なヘテロ原子は当業者に明らかであり、例えば硫黄、窒素および酸素を包含する。
【0192】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、該ヒドロカルビル基は、アルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールおよび置換ヘテロアリール基から選ばれる。
【0193】
「アルキル」なる語は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状または環状炭化水素基、例えばメチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどを意味する。低級アルキル基、すなわち、1〜6個の炭素原子のアルキル基が最も好ましい。
【0194】
「置換アルキル」なる語は、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-ORx、-NRxRy、-SRx、-C(=O)Rx、-OC(=O)Rx、-S(=O)Rx、-SO2Rx、-SO3Rx、-CO2Rx、-NRxC(=O)Ry、-NRxCO2Ry、-NRxSO2Ry、-SO2NRxRyまたは-C(=O)NRxRyから選ばれる1個、2個または3個の基で置換されたアルキル基を意味し、ここで、前記または各Rxは、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびベンジルから選ばれ、前記または各Ryは、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびベンジルから選ばれる。
【0195】
「アリール」なる語はフェニル、1-ナフチルおよび2-ナフチルを意味し、フェニルが好ましく、また、そのような環は、それと縮合したシクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロまたはヘテロアリール環を有する。
【0196】
「ヘテロアリール」なる語は、環の少なくとも1つにおいて少なくとも1つのヘテロ原子(O、SまたはN)を有する、芳香族の5または6員単環式基、9または10員二環式基および11〜14員三環式基を意味する。ヘテロ原子を含有するヘテロアリール基の各環は、1個もしくは2個の酸素もしくは硫黄原子、および/または1〜4個の窒素原子を含有しうる。ただし、各環内のヘテロ原子の総数は4個以下であり、各環は少なくとも1つの炭素原子を有する。二環性および三環性基を完成させる縮合環は炭素原子のみを含有することが可能であり、飽和、部分飽和または不飽和でありうる。該窒素および硫黄原子は、所望により、酸化されていてもよく、該窒素原子は、所望により、四級化されていてもよい。二環式または三環式であるヘテロアリール基は少なくとも1つの完全に芳香族の環を含まなければならないが、その他の縮合環は芳香族または非芳香族でありうる。該ヘテロアリール基は任意の環の任意の利用可能な窒素または炭素原子において結合しうる。ヘテロアリール環の具体例には、限定的なものではないがフラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、イソオキサゾール、ピラゾール、イソチアゾールおよびピリジンが含まれる。
【0197】
「ヘテロ原子」なる語は酸素、硫黄および窒素を包含するものとする。
【0198】
「置換アリール」および「置換ヘテロアリール」なる語は、1個、2個または3個の適当な置換基を有するそのような環を含む。
【0199】
「4,4'-ジアミノジフェニルスルホンの類似体」なる語は、フェニル環に結合している水素原子および/またはアミノ基の1〜6個が適当な置換基で置換されており、せいぜい3個の適当な置換基が該フェニル環のいずれかに存在する、4,4'-ジアミノジフェニルスルホンの基本構造を有する化合物を意味する。4,4'-ジアミノジフェニルスルホンの類似体の適当な置換は、アミノ基を水素で置換することを含みうる。
【0200】
好ましくは、適当な前記または各置換基は、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、フェニル、ベンジル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、-ORx、-NRxRy、-SRx、-C(=O)Rx、-OC(=O)Rx、-S(=O)Rx、-SO2Rx、-SO3Rx、-CO2Rx、-NRxC(=O)Ry、-NRxCO2Ry、-NRxSO2Ry、-SO2NRxRyまたは-C(=O)NRxRyから選ばれ、ここで、その前記または各Rxは、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびベンジルから選ばれ、該または各Ryは、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、アリール、ヘテロアリールおよびベンジルから選ばれる。
【0201】
好ましくは、適当な前記または各置換基は-NRxRyであり、ここで、Rx およびRyは前記と同じである。
【0202】
好ましくは、適当な前記または各置換基は-NH2である。
【0203】
C1-4アルキルのような基に関して下付き文字が用いられている場合には、該下付き文字は、ヘテロ原子に加えて該基が含有する炭素原子の数を意味する。したがって、ヒドロキシC1-4アルキルまたはC1-4ヒドロキシアルキルなる語は、該炭素原子の1つにおいてOH置換基を有する、1〜4個の炭素原子のアルキル基を意味する。
【0204】
「アルケニル」なる語は、少なくとも1つの二重結合を有する直鎖状、分枝状または環状炭化水素基を意味する。1個の二重結合を有する、2〜6個の炭素原子のアルケニル基が最も好ましい。
【0205】
「ハロ」または「ハロゲン」なる語はクロロ、ブロモ、フルオロおよびヨードを意味する。
【0206】
「ハルアルキル」なる語は、1以上のハロ置換基を有するアルキルを意味する。したがって、それは例えばトリフルオロメチルを含む。「ペルフルオロメチル」なる語は、2個または3個のフルオロ置換基を有するメチル基を意味する。
【0207】
「ハロアルコキシ」なる語は、1以上のハロ置換基を有するアルコキシ基を意味する。例えば、「ハロアルコキシ」は-OCF3を含む。
【0208】
治療用途
本発明の免疫モジュレーターは治療において使用されうる。特に、そのような化合物は、Tリンパ球応答をin vivoでモジュレーションするために、および/または免疫応答に関与する他の細胞をin vivoでモジュレーションするために使用されうる。
【0209】
T細胞の増殖および/または分化および/または活性をモジュレーション、特に阻止することができる免疫モジュレーター組成物/医薬組成物は、適応免疫応答、すなわち、細胞性免疫応答のモジュレーションによる予防または治療に感受性である任意の障害に対して使用されうる。
【0210】
好適には、本発明の組成物は、感染症(例えば、細菌感染、例えば、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、結核、例えば、多剤耐性結核およびらい病;慢性ウイルス感染、例えば、肝炎、HIV、およびパピローマウイルスにより引き起こされる感染、例えば、ウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成;潜伏ウイルス感染、例えば帯状ヘルペス(帯状疱疹)または単純疱疹(単純ヘルペス);または寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症);アレルギー(例えば、アレルギー性皮膚炎またはアレルギー性喘息);自己免疫疾患(例えば、血管障害、例えば閉塞性血管障害、関節炎および移植片拒絶);ストレス(例えば、主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス);PMWS;PDNS;SIPH;癌のうち1以上を治療または予防するために細胞性免疫応答をモジュレーションするために使用される(例えば、該組成物は、タバコの影響に対処するために成人期の生涯にわたって定期的に投与してもよい)。
【0211】
より網羅的な障害の一覧はWO-A-98/09985に記載されている。参照の助けとなるよう、その一覧の一部を以下に示す:過敏症に関連した炎症、アレルギー反応、喘息、アフタ性潰瘍形成、潰瘍性大腸炎、肝線維症、肝硬変または他の肝疾患に関連した炎症、皮膚炎、特にアトピー性皮膚炎、例えば湿疹、歯周病または他の歯科疾患、単球または白血球増殖性疾患、例えば白血病、他の癌の治療または予防。
【0212】
感染症
T細胞の増殖および/または分化をモジュレーション、特に刺激(すなわち誘導または増強)することができるか、あるいはT細胞アネルギーの誘導を防止またはT細胞アネルギーを反転することができる組成物は、T細胞性免疫応答を増強または誘導するために一般に使用されうる。実質的に全ての適応免疫応答はT細胞の活性化およびサイトカイン産生細胞へのそれらの分化を要する。したがって、これらの組成物は、感染症、例えばウイルスまたは細菌感染症を予防および/または治療するために一般に使用されうる。好適には、これらの組成物は、寄生虫感染、例えばマラリア、リーシュマニア症、トキソプラズマ症およびトリパノソーマ症を予防および治療するために使用されうる。好適には、これらの組成物は、ウイルス感染、例えばウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成を含む、パピローマウイルスにより引き起こされる感染を予防または治療するために使用されうる。
【0213】
本発明の1つの態様においては、該感染は好ましくはトリパノソーマ症である。
【0214】
本発明のもう1つの態様においては、該感染は、好ましくは、パピローマウイルス、特にウシパピローマウイルス1および2により引き起こされるものである。本発明のもう1つの態様においては、該感染は、好ましくは、ウマサルコイド、性器疣贅、および子宮頸の癌に先行する子宮頸の異形成のうち1以上である。
【0215】
ウマサルコイド
本発明の組成物は、ウマサルコイドを予防および治療するためにも使用されうる。
【0216】
ウマサルコイドはウマの最もよく見られる皮膚新生物であり、ウシパピローマウイルス1および2による感染に関連している(Chambersら, J. Gen. Virol. 2003: 84: 1055-1062)。この病態に対しては、手術、非特異的免疫治療および細胞毒性薬はいずれもいくらか効果をもたらすものの、現在のところ有効な治療方法は存在しない。
【0217】
本発明の組成物は、好ましくは、病変または新生物と同じリンパ節ドレナージ領域に投与される。
【0218】
PMWSおよびPDNS
離乳後多臓器消耗症候群(post-weaning multisystemic wasting syndrome)(PMWS)は4〜16週齢の離乳後の子ブタ(15〜50kg)を冒す。典型的には、PMWSは離乳の1〜2週間後に子ブタを冒し、これは離乳後に適切に飲食しない消耗/虚弱な離乳動物とは全く異なる。PMWS子ブタは、成長し始めたもののその後に急速に衰弱ししばしば抗生物質に対して極めて不良な応答を示す離乳動物である。
【0219】
ブタ皮膚炎および腎症症候群(PDNS)は8〜18週齢の子ブタを冒し、最も顕著な徴候は皮膚上の赤紫色の斑点であり、これは数日後に褐色になり潰れる。子ブタは昏睡状態となり、その腎症から生じる脚部の腫張を示しうる。この症候群も抗生物質に対する応答が悪い。
【0220】
PMWSおよびPDNSの原因因子は共に現在のところ不明である。両方の症候群における最も考えられうる候補因子はブタサーコウイルス「II型」であり、これは、広く分布している正常な非病原性ブタサーコウイルス「I型」とは抗原的に異なる。サーコウイルスII(PCV II)は英国の農場において血清学的に同定されている。PDNSは、免疫複合体により媒介される疾患であると考えられており、その病因には細菌も関与している可能性があるが、それらが果たしている役割は明らかでない。
【0221】
好適には、本発明の組成物は、PMWSおよび/またはPDNSの治療または予防のための医薬の製造において使用されうる。
【0222】
SIPH
本発明の組成物はSIPHの予防および治療にも使用されうる。本発明の組成物は高地性肺水腫(HAPE)の治療にも使用されうる。
【0223】
ストレス誘発性肺内出血(SIPH)は、動物にストレスが加わった際に肺内の血管からの出血を引き起こす病態である。本明細書中で用いる「SIPH」なる語はHAPE(高地性肺水腫)状態を包含しうる。HAPEは、肺内へ流体を取り込ませる肺毛細血管のストレス性不全により引き起こされる病態(水腫肺としても公知である)である。また、本明細書中で用いる「SIPH」なる語は運動誘発性肺内出血(EIPH)をも包含しうる。これは、激しい運動中に肺内の血管からの出血を引き起こす病態である。
【0224】
HAPEは、典型的には標高3000m以上に上昇した後2〜4日してから生じる致命的となりうる病態である。通常の上昇速度では頻度は約1%〜2%であるが、4500mへ急に上昇した人の10%もが該病態を発症しうる。HAPEは急性高山病に引き続いて生じうるが、常にそうであるとは限らない。主な症状は、運動耐性の低下を伴う呼吸困難である。しばしば、最初に空咳が生じるが、これは、泡状の血混じりの痰を伴う咳へと進行しうる。診察で頻呼吸および頻脈がよく見られる。
【0225】
EIPHは、哺乳動物、特に競争用哺乳動物、例えばウマ、グレーハウンド、ラクダおよびヒトを冒すことが公知である。EIPHは、激しい運動後に、哺乳動物、特に競争用哺乳動物を冒すことが公知である。
【0226】
EIPHは純血種のウマにおいて最も広く報告されているが(この場合、それは能力の低下を引き起こすと考えられている)、標準型馬種の競走(速足競争またはペーシング(pacing))、ポロ、障害飛越、クロスカントリーおよび樽競争用のウマにおいても観察されている。EIPHは、競争用ウマの85%までを苦しめると考えられているよく見られる病態である。
【0227】
EIPHの症状は、フィブロスコピー(fibroscopy)により得た気管支肺胞液中の赤血球を観察することにより検出される軽度な出血から、競争の終了時に鼻孔周囲の粘液泡中に出現する血液まで、様々である。最も重篤なケースにおいては、EIPHは鼻孔からの出血(鼻出血)として発現するが、多くのウマは徴候を全く示さない。内視鏡検査の使用は、純血種ウマの40〜75%が競争後に気管内に血液を有することを示している。気管洗浄によっても、および気管支肺胞洗浄(BAL)によっても、診断が達成されうる。
【0228】
アレルギー
本発明の組成物は、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの))を予防および治療するためにも使用されうる。
【0229】
夏癬は、ウマ、特に野生ウマおよび/またはポニーにおいて見られる最もありふれた皮膚疾患の1つである。英国におけるウマの約3%が何らかの度合で罹患している。ほとんどのウマは1〜4歳で徴候を示し、一般に夏の間に病状が悪化する。特定の品種が特に該疾患に罹りやすい。シャイア、ハクニー、ウェルシュポニーおよびアイスランドポニーは全て、感受性品種であると示唆されている。夏癬は、小さいハエであるCulicoidesの刺咬に対する過敏症により引き起こされる。英国においては、該ハエは4月〜10月に現れるが、その数は5月〜9月にピークとなる。該ハエはウマを、通常は尾の先端付近およびたてがみ下部に食いつく。英国においては20種のCulicoidesが存在し、いくつかはウマの腹部下部に食いつく。
【0230】
単なる例示として挙げると、本発明の組成物は、アナフィラキシーショックを起こす素因を有する被験体(例えば、ピーナッツに対するアレルギーなどのアレルギーを有することが判明している被験体)に本発明の組成物を投与して、該被験体が不利に反応しうる抗原(例えば、ピーナッツ)に該被験体が(偶然に)接触した場合にアナフィラキシーショックに対する該被験体の素因を軽減することにより、アナフィラキシーショックを予防および/または治療するためにも使用されうる。
【0231】
細胞性肺気腫/COPD
本発明の組成物は、細胞性肺気腫および/またはCOPD(慢性閉塞性肺疾患)を予防および治療するためにも使用されうる。
【0232】
細胞性肺気腫は、ヒトの喘息およびCOPDに対する類似性を有するウマの肺疾患である。ウマにおける該臨床徴候は、ある程度の線維症で既に損傷している肺において、乾草塵埃中の粒子に対するアレルギー応答により開始する。それは、冬の数ヶ月間に馬小屋に入れられる、より高齢のウマ(6歳を越えるウマ)において最も頻繁に見られる。乾草は、微生物、例えば細菌および真菌、ならびに飼料穀類、植物、糞、りんせつ及び花粉の小さな粒子を含有する。これらの小さな粒子は乾草塵埃中でエーロゾル化され、細胞性肺気腫を有するウマによりそれらが吸入されるとアレルギー反応および線維症を惹起する。細胞性肺気腫の病因に関与すると考えられる主要微生物としては、Aspergillus fumigatus、Thermoactinomyces vulgarisおよびFaenia rectivirgulaが挙げられる。喘息の気管支痙攣およびCOPDの線維症の軽減は共に本特許の範囲内である。
【0233】
自己免疫疾患
本発明の組成物は、T細胞調節不良および/またはT細胞調節不全にメカニズム的に関連している自己免疫疾患を治療および/または予防するために使用されうる。自己免疫疾患の具体例には、以下のうちの1以上が含まれる:望ましくない免疫反応および炎症、例えば関節炎、例えば慢性関節リウマチ、乾癬、乾癬性関節症、血管障害、特に、血管の内膜の炎症が生じる血管障害、例えばアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)、前ブドウ膜炎、および血管形成術後の筋内膜過形成(myointimal hyperplasia)(MIH);甲状腺炎、アテローム性動脈硬化性心疾患、再潅流損傷、心伝導障害、心筋梗塞、習慣性流産、色素性網膜炎、変性眼底疾患(degenerative fundus disease)の免疫および炎症成分、中枢神経系(CNS)または他の任意の器官の両方において免疫および/または炎症の抑制が有益である自己免疫疾患または状態または障害に関連した炎症、パーキンソン病、パーキンソン病の治療による合併症および/または副作用、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、天然または人工細胞、組織および器官、例えば角膜、骨髄、臓器、レンズ、ペースメーカー、天然または人工皮膚組織の移植の場合の移植片拒絶。
【0234】
より詳しくは、器官特異的自己免疫疾患には、例えば多発性硬化症および炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)が含まれる。
【0235】
全身性自己免疫疾患には、関節リウマチが含まれる。
【0236】
血管障害には、血管の内膜の炎症が生じる血管障害が含まれる。
【0237】
好適には、本発明における血管障害には、自己免疫要素、例えば、自己免疫応答により引き起こされるものを含む任意の血管疾患または障害が含まれうる。
【0238】
好適には、本発明における血管障害には、レイノード病およびレイノー現象、前ブドウ膜炎、閉塞性血管障害、アテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)、動脈炎、筋内膜過形成(myointimal hyperplasia)(天然または血管形成術後のもの)、血管の内膜および/または筋肉層の炎症性および自己免疫肥厚、炎症性血管病変、アテローム性動脈硬化性心疾患、再潅流損傷、心伝導障害、心筋梗塞のうち1以上が含まれうる。
【0239】
好適には、本発明における移植片拒絶は、特に免疫抑制物質の非存在下での、慢性移植片拒絶でありうる。したがって、本発明の組成物は、移植の前、移植の際および/または移植の後に投与される従来の免疫抑制物質の代替物として使用されうる。本発明の組成物は、天然または人工細胞、組織および器官、例えば、角膜、骨髄、臓器(例えば、腎臓、肝臓)、レンズ、ペースメーカー、天然または人工皮膚組織、島細胞のうち1以上を移植する際に使用されうる。
【0240】
好ましくは、本発明の組成物は、以下の自己免疫疾患を治療するために使用されうる:血管障害、関節炎、移植片拒絶、ならびに筋内膜過形成(myointimal hyperplasia)およびアテローム形成の根底をなす免疫学的態様。
【0241】
ストレス
ストレスは、しばしば、大きな重圧のかかる遂行性の生活様式である現代生活の症状の1つとして生じ、その影響は、胃潰瘍、高血圧、心疾患および卒中のような主要病態を招くことが広く認識されている。人生における他の大きなストレス性事象、例えば離婚、死別および転居は、心疾患の高リスク因子として理解されている。
【0242】
これらは誤解ではなく、感染に対する感受性の増強および根底にある病因の促進を招く大きなストレス(例えば、過密、監禁および輸送)に家畜をさらすことにより生じる経済的損失を、畜産業界は十分に認識している。境界限定性ストレス(例えば、監禁)は内分泌(ホルモン)活性の有意な変化を招く可能性があり、ついでこれが身体の免疫機能に影響を及ぼしうることを示している、医師および科学者による研究結果の公開が益々増えつつある。これは、細胞性免疫応答が劇的に低下する主外傷ストレス(major trauma stress)(手術ストレスを含む)において顕著に示されうる(Faist (1996))。
【0243】
Elenkov IJ (1999)は、ストレス系の最終産物であるグルココルチコイドおよびカテコールアミンならびに活性化マスト細胞の産物であるヒスタミンが細胞性免疫を選択的に抑制し体液性免疫応答を優勢にしうることを示す最近の証拠を報告している。これは、Th1/Th2パターンおよび1型/2型サイトカイン産生に対するストレスホルモンおよびヒスタミンの示差的効果によりもたらされる。したがって、全身的には、ストレスはTh2移行を誘導する可能性があり、一方、局所的には、ある条件下で、それは末梢コルチコトロピン-放出因子-マスト細胞-ヒスタミン軸の神経活性化を通じて炎症促進活性を誘導する可能性がある。
【0244】
Paik (2000) およびKay (2001)は、独立した学術的なストレスの研究において、非試験期間中および試験期間中の学生の免疫学的プロファイルを調べた。彼らはIL-2およびインターフェロンガンマの産生における有意な減少ならびにIL-6の増加を報告している。
【0245】
これは、身体の免疫系が、Th1サイトカインのダウンレギュレーションおよびTh2サイトカインの選択的アップレギュレーションによりストレス性エピソードに応答することを示している。
【0246】
Iwakabe (1998)は、抑制性ストレスのマウスモデルを使用して、Th2優勢免疫への免疫応答の傾斜を報告している。
【0247】
Th2免疫不均衡へのこのストレスホルモン誘発性スイッチは、非主要慢性ストレス状況、例えば、Australian National Antarctic Research Expedition基地で越冬する労働者における社会心理学的ストレスにおいても報告されている(Mehta (2000))。彼らは、潜伏ウイルス再活性化の付随的増強をも報告している。
【0248】
痴呆患者の介護者(Bauer (2000))およびEuromir 95ミッション中の宇宙飛行士(Norbiato (1998))における慢性ストレスからの同様のストレスホルモンおよび免疫学的な変化が報告されている。特に重要なのは、宇宙飛行士において感染への罹りやすさが増大したことであった。
【0249】
身体はストレスから回復するようにできており、急性ストレスにおいては、主外傷からの患者の回復と共に感染のリスクが低下するようにストレスから回復する。
【0250】
しかし、慢性ストレスはTh2優勢免疫不均衡を維持するらしい。これは非常に重大な結果である。なぜなら、該引用著者の全ては、前記メカニズムによるストレスが感染症、炎症疾患、アレルギー疾患および新生物疾患の開始および/または経過に影響を及ぼす可能性があることに言及しているからである。
【0251】
この結果はLawrence (2000)により更に裏付けられている。
【0252】
Th1応答を刺激しTh2をダウンレギュレーションする免疫調節物質、好ましくは本発明の経口投与免疫調節物質は、免疫系の健常なバランスを回復させて、慢性ストレスに関連した重大な疾患のリスクの増大を軽減しうる。
【0253】
好ましくは、本発明の組成物は、ストレス、特に主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレスを治療および/または予防するために使用される。
【0254】
好ましくは、本発明の組成物は、動物、好適にはヒトおよび/または家畜におけるストレスを治療および/または予防するために使用される。
【0255】
免疫系失調
免疫系失調(免疫系不均衡)、例えばアップレギュレーション、ダウンレギュレーションまたは不適切に調節された細胞性免疫応答は、被験体の一生の任意の時点で生じうる。好適には、該組成物は、免疫系失調をモジュレーションするために使用されうる。すなわち、本発明の組成物は、免疫系失調を治療および/または予防するために使用されうる。
【0256】
(a)小児において
好適には、該免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、赤ん坊、乳児および幼児を含む小児において免疫系失調をモジュレーションするために使用されうる。免疫系失調、例えばアップレギュレーション、ダウンレギュレーションまたは不適切に調節された細胞性免疫応答は、ワクチン接種後、例えば小児用ワクチン接種後の小児において生じうる。そのような免疫系失調は、アレルギー、すなわち、アレルギー性皮膚炎およびアレルギー性喘息の発症のような状態を招きうる。
【0257】
小児を感染から防御するために、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、おたふくかぜおよび風疹に対する反復注射が行われる。これらの全ては必要だと判断されており、適当な時点で小児にワクチン接種を確実に受けさせるよう保健当局により要求される。しかし、人生の早い時期に行われるほとんどのワクチン接種は、重要な免疫学的影響を及ぼすミョウバンアジュバントを含有する。ミョウバンは応答のTh2パターンに対する強力な刺激物質であり、その結果生じる免疫調節不全により、該小児は例えばアレルギーおよび恐らくは癌の発症を受けやすくなる。
【0258】
自己およびその他の外界物の両方に対する適切な認識、調節および応答のために免疫系を再教育することが可能である。
【0259】
好適には、該免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、小児用ワクチン(例えば、百日咳ワクチン接種および現在のMMRワクチン接種)および/またはその影響に対する有害な反応の治療または予防のために使用されうる。
【0260】
(b)高齢者における免疫系失調
免疫系失調(免疫系不均衡)、例えばアップレギュレーション、ダウンレギュレーションまたは不適切に調節された細胞性免疫応答、特に、ダウンレギュレーション、例えば免疫機能の低下は、高齢者、一般には60歳を超える高齢者において生じうる。高齢者における細胞性免疫応答のダウンレギュレーションは一般には免疫老化と称される。典型的には、免疫機能の低下は例えば感染症および新生物に対する感受性の増加を招きうる。人口に対する比率としての高齢者の数は劇的に増加しており、高齢者用医薬は臨床実施の重要な一態様となりつつある。したがって、研究が免疫老化のメカニズムおよび免疫系の健常性と寿命との関連性に焦点を合わせていることは驚くにはあたらない。Goronzy (2001)は高齢者におけるインフルエンザワクチン接種の様々な効力を検証した。この研究においては、ワクチン接種の1ヶ月後に被験体の僅か17%が全3種の赤血球凝集素に対する力価の上昇(ワクチン接種の成功)を示したに過ぎず、46%は明白な応答を全く示さなかった。インフルエンザワクチン接種に対する応答性は免疫老化の有用な生物学的マーカーであると提示された。多数の研究者が高齢者における免疫機能の種々の態様を研究している。例えば、Lio (2000)はサイトカイン応答を研究し、Solana (2000)はNKおよびNKt細胞を研究し、Ginaldi (1999)は、Th1からTh2へのサイトカイン産生移行および炎症性サイトカインの産生の増加がアテローム性動脈硬化症および骨粗鬆症のような加齢関連病的事象の多数の態様を説明しうることを示唆した。したがって、サイトカイン応答を炎症性Th2からTh1へと駆動する免疫系の非病的刺激が要求される。好ましくは、そのような免疫モジュレーターは急性感染による死亡率を減少させ、加齢関連自己免疫疾患の開始を抑制し、加齢関連自己免疫疾患の罹患率を減少させ、おそらくは、新生物疾患の割合を減少させるであろう。これらのすべては免疫老化に関連している。
【0261】
典型的には、本発明のこの態様の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫増強物質でありうる。
【0262】
この分野においては、プロバイオティック(probiotic)な片利共生性の腸内および乳内細菌の潜在的役割が調べられている。例えば、3週間にわたり毎日摂取される、用量当たり5×109または5×1010個のBifidobacterium lactisまたはLactobacillus rhamnosusを補充した乳製品は、高齢者において、末梢血NK、CD4およびCD25細胞の数を増加させ、全身性細胞性免疫を概ね増強することが報告されている(Gill, (2001))。
【0263】
現在、多数の乳酸桿菌および他の腸内片利共生フローラを含有する多数の製品が「ライフスタイル改善剤(lifestyle enhancer)」として盛んに販売促進されている。1950年から薬物として入手可能であるLactobacillus acidophilusの、主張されているプロバイオティック効果に関する、Sanders (2001)による概説は、その効果が作用メカニズムの更なる実証および解明を要することを示唆している。下痢疾患後に腸内フローラを置換し抗生物質療法後のカンジダ症に対処することによる有益な効果は存在するものの、免疫刺激は信頼しうるものではなく、短寿命のようである。しかし、この研究は、強力な経口投与免疫モジュレーター(好ましくは、生製品の維持の問題を回避するために殺菌されているもの)の役割を明らかに確認している。
【0264】
経口ワクチン接種は、ポリオのような経口/糞便病原体に対する局所防御免疫を誘導するための、古くから確立され成功しているメカニズムである。しかし、経口投与ワクチンは細胞性および体液性の両方の全身防御免疫応答を惹起することも示されている。Sharpe (2002)は、麻疹抗原に対する全身性抗体および脾リンパ球応答を誘導するために、麻疹ウイルス抗原を含有する経口投与アデノウイルス構築物を使用した。Manube (2002)は、経口投与弱毒化Mycobacterium microtiが、伝統的に皮下投与されているBCGより高いレベルの、結核によるエーロゾルチャレンジに対する防御をもたらすことを示すためのモデルを開発した。
【0265】
Kim (2001)は、スギ花粉の経口摂取が、油中の花粉の後続の注射により誘発される特異的アレルギーに対する経口免疫寛容をもたらすことを示した。これは、特異的免疫グロブリンレベルの低下、およびインターロイキン4産生の有意な減少に関連していた。すなわち、TH2応答がダウンレギュレーションされた。
【0266】
したがって、適当な免疫モジュレーターの経口投与のような投与により、全身性免疫応答が刺激されモジュレーションされうる。
【0267】
好適には、本発明の1つの態様においては、本発明の細菌の全細胞が食事調製物中に加えられうる、および/または一種の「治療薬(remedy)」として好ましくは経口的に供給されうる、と想定される。
【0268】
免疫系の増強
本発明の組成物は、例えば被験体における成長の増進(例えば、促進)および/または飼料利用効率の向上および/または健康の全般的な増進(すなわち、被験体の全般的な健康状態の改善)をもたらしうる、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくは家畜および/または競争用動物における免疫系を増強するための医薬の製造において使用されうる。被験体の全般的な健康状態は以下のパラメーターの1以上により決定されうる:体重データ(体重増加は正の決定因子である)、警戒(完全な警戒は正の決定因子である)、運動性(不活発な運動性と対比した場合の活発な運動性は正の決定因子である)および疾病(疾病の量の減少は正の決定因子である)。典型的には、本発明のこの態様の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は免疫増強物質でありうる。
【0269】
有利には、本発明の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、家畜の成長を促進させるために現在使用した抗生物質の代わりに使用されうる。
【0270】
本明細書中で用いる「家畜」なる語は任意の飼育動物を意味する。好ましくは、家畜は家禽(ニワトリを含む)、ブタ(子ブタを含む)、ヒツジ(子ヒツジを含む)、雌ウシまたは雄ウシ(子ウシを含む)の1以上である。より好ましくは、家畜はブタ(子ブタを含む)を意味する。
【0271】
本発明は、細胞性免疫応答の修飾のために、本発明の属菌を公知プロバイオティック細菌と組合せて投与することも意図する。
【0272】
商業的には現時点では、抗生物質は食餌増強飼料添加物(または成長促進物質)として一般に使用されており、動物飼料中に添加される。しかし、EUは畜産における抗生物質の非臨床的使用の全面禁止を導入すると予想される。したがって、市場は有効な代替物を必要としている。
【0273】
本発明の利点は、それが食餌増強飼料添加物(または成長促進物質)の代替物として(場合によっては優良畜産規範(good animal husbandry practices)と共に)使用されうることである。
【0274】
本発明の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物は、免疫系を増強するために使用される場合に食餌添加物として投与されうる。
【0275】

好適には、本発明の組成物は、癌を治療および/または予防するために細胞性免疫応答をモジュレーションするために使用される。特に、本発明の組成物は、癌の発生および/または進行に対して被験体を防御するために使用されうると想定される。特に、モジュレーションされた細胞性免疫応答を有する被験体は、癌の発生に対する、より低い感受性を有しうる。
【0276】
特に、癌の成長中にはTh2の無調節増加が観察される。
【0277】
癌は、多数の人々を冒す疾患であり、症例の65%は65歳以上の人において生じる。英国における平均余命は19世紀半ばと比べて2倍となったため、癌のリスクを有する人口が増加している。心疾患のような他の死亡原因による死亡率は近年低下しているが、癌による死亡率は比較的安定したままである。その結果として、3人中1人が一生の間に癌と診断され、4人中1人が癌で死亡することとなる。
【0278】
癌の具体例には、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、腺癌、子宮内膜癌、食道癌、腎臓癌、白血病、肝臓癌、肺癌、メラノーマ、骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、肉腫、軟組織および胃癌が含まれる。
【0279】
また、持続的な喫煙、およびそれよりは低度ではあるが受動喫煙も、中咽頭、気管、肺、食道および胃のような煙草と直接接触する部位の癌に関連づけられている。これらに加えて、腎臓、膀胱、膵臓、肝臓の腫瘍および骨髄性白血病のような遠隔腫瘍も喫煙により増加しうる。本発明においては、本発明の組成物は、喫煙に関連した癌を発生する喫煙者のリスクを低下させるために喫煙者に投与されうると想定される。
【0280】
好適には、癌は腺癌またはメラノーマでありうる。
【0281】
好適には、癌は、ウイルスに関連した癌、例えば子宮頸癌でありうる。理論により束縛されるものではないが、いくつかの場合には、パピローマウイルスにより引き起こされる感染症、例えば子宮頸の異形成は、子宮頸の癌に先行することが判明している。したがって、この場合、子宮頸癌は「ウイルスに関連した癌」とみなされる。しかし、本明細書中で用いる「ウイルスに関連した癌」は、ウイルス感染により引き起こされうるまたはウイルス感染に関連づけられうる任意の癌を意味する。
【0282】
術後回復、ストレスおよび感染
いずれかの大手術の後、いくつかの状況が生じる可能性がある。
【0283】
外科手術に関連したストレスには以下の1以上が含まれる:手術前の不安、手術操作による組織へのストレス、回復に通常伴う疼痛、手術所見の意味に関する心配。
【0284】
これらの種のストレスはTh2へのT細胞機能の偏向に関連している。前投薬および麻酔薬の免疫抑制効果は、手術自体の後の数日間または数週間にわたり持続しうる。
【0285】
疑義を避けるために、本明細書中で用いる「術後ストレス」は、麻酔に関連したストレスを含む。
【0286】
また、手術時点での直接感染に対する切られた肉の曝露、ならびに退院するまでの回復室および病室における感染に対する創傷の曝露も問題である。
【0287】
これらの要因の組合せが患者を一連の潜在的細菌感染に曝露する。
【0288】
患者の入院以降は、そのような悪名高き院内感染には、例えばメチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)による感染が含まれる。腸の手術は、腸内容物に対する切断組織の曝露により、患者をグラム陰性感染に曝露する。下肢の手術も腸内フローラの通常メンバーによる感染にさらされる。
【0289】
創傷の軽度の感染症は治癒を遅らせ、より重度の感染症にかかる可能性を増加させる。
【0290】
これらの影響に対処するために、本発明の適用の結果としてのTh1への免疫調節およびTh2のダウンレギュレーションは術後細菌感染に対する非特異的耐性の増強、創傷治癒の補助および/またはストレスの軽減の1以上を達成するはずである。
【0291】
Tヘルパー細胞
本明細書中で用いる「Th1」なる語は1型Tヘルパー細胞(Th1)を意味する。本明細書において、該用語はまた、そのような細胞型によりまたはそれを介してもたらされる応答を示すために用いられうる。そのような応答は、インターロイキン2(IL-2)の分泌、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の分泌、マクロファージの活性化、細胞傷害性T細胞の活性化または任意の他のTh1関連事象の1以上を含みうる。したがって、「Th1」なる語は、Th1細胞、およびそのような細胞がもたらす免疫応答を含みうる。
【0292】
本明細書中で用いる「Th2」なる語は2型Tヘルパー細胞(Th2)を意味する。本明細書において、該用語はまた、そのような細胞型によりまたはそれを介してもたらされる応答を示すために用いられる。そのような応答は、インターロイキン4(IL-4)の分泌、スプライス変異体インターロイキンIL-4δ2の分泌、インターロイキン5(IL-5)の分泌、リンパ球上の細胞決定因子30(CD30)のレベルの増加、血中の免疫グロブリンE(IgE)もしくは血中の好酸球のレベルの増加または任意の他のTh2関連事象の1以上を含みうる。したがって、「Th2」なる語は、Th2細胞、およびそのような細胞がもたらす免疫応答を含みうる。
【0293】
無調節または不適切な調節のまま放置されると被験体に1以上の有害な影響をもたらすことが判明している、特にTh1および/またはTh2の活性化および/または増殖における、無調節なまたは不適切な調節された細胞性免疫応答が、種々の病態から生じまたは種々の病態を引き起こしうる。
【0294】
特に、そのような無調節なまたは不適切に調節された細胞性免疫応答は、ワクチン接種後、例えば小児用ワクチン接種後に生じることが判明しており、アレルギー、すなわち、アレルギー性皮膚炎およびアレルギー性喘息の開始のような状態をもたらすと考えられている。例えば、Lewis D Curr Opin Immunol 2002; 14: 644は、IL-4、IL-5およびIL-13の分泌によりもたらされるTh2免疫応答が、アレルゲン誘発性喘息、鼻結膜炎およびアナフィラキシーを含むアトピー性障害の発病の鍵となることを報告している。そのような応答は通常の特異的免疫療法により或る程度はダウンレギュレーションされるが、このアプローチは部分的に有効であるに過ぎず、副作用の相当なリスクを有する。調節性T細胞活性の誘導によるTh2応答のダウンレギュレーション、Th2からTh1への免疫偏向、Th2免疫応答のTh1交差調節、アネルギーおよび免疫抑制性サイトカインを含む、アトピー性疾患の免疫療法による予防および治療のための多数の方法が、マウスアレルギーモデルに基づいて案出されている。Choi & Koh Ann Allergy Asthma Immunol 2002; 88: 584-91は、Th2関連アレルギー疾患である喘息を有する成人患者のBCGワクチン接種が臨床的に有効であるかどうかを調べた。BCGワクチン接種は肺機能を改善し、中等度ないし重度の喘息を有する成人における医薬の使用を減少させることが示された。この改善はTh2型免疫応答の抑制を伴っていたが、このことは、BCGワクチン接種が喘息に対する有効な治療方式でありうることを示唆している。von Hertzen J Allergy Clin Immunol 2002; 109: 923-8は、持続的な過剰なコルチゾール分泌に関連した持続的な母体ストレスが、発生中の免疫系、特にTh1/Th2細胞分化に影響を及ぼす可能性があり、それが更に、遺伝的素因を有する個体における喘息およびアトピーに対する罹りやすさを増加させる可能性があることを概説している。
【0295】
また、無調節なまたは不適切に調節された細胞性免疫応答は疾患の進行中に観察されている。特に、癌の成長中には、Th2の無調節な増加が観察される。例えば、Maraveyasら, Ann Oncol 1999; 10: 817-24は、癌、すなわち進行期IV(AJCC)悪性メラノーマの患者におけるSRL 172ワクチンの効力を研究している。これらの患者からの末梢血リンパ球(PBLC)における細胞内サイトカイン(IL-2およびINF-ガンマ)の誘導がアッセイされ、臨床結果と相関づけられた。IV期(AJCC)メラノーマを有する有意な数の患者において、SRL 172は、細胞内IL-2応答の誘導において有効であることが示された。Stanfordら, International Journal of Pharmaceutical Medicine 1999; 13: 191-195は、有効な抗腫瘍免疫応答が1型サイトカインによりもたらされるらしいことを示す証拠が増加しつつあることを報告している。最近の研究は、熱不活化Mycobacterium vaccaeが、信頼しうるTh1アジュバントであることを示しており、前臨床試験はメラノーマならびに前立腺および肺の癌における有益な効果を示している。これらの知見を証明するための、より広範な対照研究が現在行われている。
【0296】
無調節のまたは不適切に調節された細胞性免疫応答は、感染、特に慢性感染、例えば進行性結核、らい腫らい、内臓型リーシュマニア症およびHIVの感染中およびアレルギーにおいても観察されている。例えば、Clerici & Shearer GM Immunol Today 1993; 14: 107-11は、Th1からTh2への移行が、HIV感染の病因における決定的に重要な段階であると提示している。Clerici & Shearer Immunol Lett 1996; 51: 69-73は、HIV特異的細胞性免疫が、HIV感染に対する及びHIV感染からエイズへの進行に対する防御の主要相関因子でありうることを示している。Abbot NCら, European Journal of Vascular and Endovascular Surgery 2002 24:202-8は、熱不活化Mycobacterium vaccaeの投与による、慢性らい患者における末梢血流を改善するための一手段としての免疫療法を評価した。完全に治療された慢性らい患者において、18ヶ月前に行われた免疫療法が血流および温度感覚を有意に改善したことが示された。
【0297】
したがって、本発明の1つの目的は、無調節のまたは不適切に調節された細胞性免疫応答の負の影響を克服するための、Th1および/またはTh2の調節またはモジュレーションを含む、細胞性免疫応答の調節を促進し確立することである。
【0298】
好適には、本発明の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の使用は、Th1またはTh2応答、すなわち、例えば組織損傷を引き起こすTh1またはTh2応答をモジュレーションする。
【0299】
いくつかの疾患はTh1および/またはTh2応答の移行をもたらすことから、無調節のまたは不適切に調節された免疫応答は疾患の確立において何らかの役割を果たしている可能性がある。これらの非定型Th1およびTh2反応は一連の異常な炎症応答を伴っており、これらは、組織病理の根底にあるメカニズムにおいて何らかの役割を担っている可能性がある。
【0300】
単なる例示として挙げると、本発明の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は、現代生活に相応した、環境作用因子(例えば、抗原)との接触の減少という欠点を相殺することが可能であり、感染(例えば、寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症およびトキソプラズマ症)および/または感染に伴う免疫異常、ストレス、例えば主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス)、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの)、細胞性肺気腫、COPDならびに癌(例えば、メラノーマまたは腺癌)、免疫系失調(例えば、小児における免疫失調、例えば小児用ワクチンの望ましくない効果、および高齢者における免疫系失調)、ならびに術後ストレスおよび術後感染の治療の悪影響を相殺することが可能である。
【0301】
ワクチン
有効成分として1以上の物質を含有するワクチンの製剤は当業者に公知である。典型的には、そのようなワクチンは液体溶液または懸濁液としての注射剤として製剤化され、注射前に液体に溶解または懸濁される固体形態も製剤化されうる。該製剤は乳化することも可能であり、あるいは有効成分はリポソーム内に封入されうる。該有効成分は、しばしば、製薬上許容され該有効成分に適合性である賦形剤と混合される。適当な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、またはそれらの組合せが挙げられる。あるいは、該ワクチンは、例えば、経口摂取されるよう、および/または吸入可能となるよう製剤化されうる。
【0302】
また、所望により、該ワクチンは、少量の補助物質、例えば湿潤または乳化剤およびpH緩衝剤を含有しうる。
【0303】
投与
典型的には、個々の被験体に最も適した、ワクチン、免疫モジュレーター組成物および医薬組成物の実際の投与量は医師により決定され、それは個々の患者の年齢、体重および応答に応じて様々となるであろう。以下の投与量は平均的な場合の典型例である。もちろん、より高いまたはより低い投与量範囲が好ましい個々の場合が存在しうる。
【0304】
好ましくは、使用される実際の投与量は被験体に与える毒性が最小限のものである。
【0305】
本発明の組成物は直接注射により投与されうる。該組成物は、非経口、粘膜、筋肉内、静脈内、皮下、眼内、皮内または経皮投与用に製剤化されうる。
【0306】
好適には、本発明の組成物は、103〜1011生物、好ましくは104〜1010生物、より好ましくは106〜10-5×109生物、より一層好ましくは106〜109生物の用量で投与されうる。典型的には、本発明の組成物はヒトおよび動物への使用には108〜109細菌の用量で投与されうる。
【0307】
本発明の組成物を免疫増強物質として投与する場合には、103〜1011生物/用量、好ましくは104〜1010生物/用量、より好ましくは106〜10-5×109生物/用量、より一層好ましくは106〜109生物/用量、そしてヒトおよび動物への使用にはより一層好ましくは108〜109細菌/用量が一定の間隔で投与されうる。
【0308】
当業者に容易に理解されるとおり、投与量は、該用量が投与される生物によって決まるであろう。
【0309】
「投与」なる語は、注射、脂質媒介トランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクション、カチオン性表面両親媒性物質(cationic facial amphiphile)(CFA)およびそれらの組合せ、または更にはウイルス送達を始めとする送達メカニズムによる送達を含む。そのような送達メカニズムのための経路には、限定的なものではないが粘膜、鼻腔内、経口、非経口、胃腸、局所または舌下経路が含まれる。
【0310】
「投与」なる語は、粘膜経路による、例えば吸入用のエーロゾル剤または鼻腔内噴霧剤としての、あるいは摂取可能な溶液としての、送達、および送達が注射可能な形態、例えば静脈内、筋肉内、皮内または皮下経路によるものである非経口経路が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0311】
「共投与」なる語は、本発明のアジュバント、抗原および/または抗原決定基のそれぞれの投与の部位および時間が、免疫系の必要なモジュレーションが達成されるようなものであることを意味する。したがって、該抗原およびアジュバントは、時間的に同時に、および同一部位に投与されうるが、該抗原および/または抗原決定基を、該アジュバントとは異なる時点で、および該アジュバントとは異なる部位に投与する利点も存在しうる。該抗原および/または抗原決定基ならびにアジュバントは更に、同一送達ビヒクル中で投与されることが可能であり、該抗原および/または抗原決定基ならびにアジュバントは、共役体および/もしくは脱共役体、ならびに/または遺伝的共役体および/もしくは脱共役体でありうる。単なる例示として挙げると、本発明の免疫モジュレーター組成物は、1以上の抗原または他の抗原の投与の前、同時または後に投与されうる。
【0312】
該抗原、抗原決定基、ペプチドまたはそれらのホモログもしくは模倣体は、宿主被験体に、単一用量(1回量)または複数用量として、別々に投与してもよく、あるいは共投与してもよい。
【0313】
本発明の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は、多数の異なる経路、例えば注射(これは非経口、皮下、皮内および経皮注射を含む)、鼻腔内、粘膜、経口、膣内、尿道内または眼内投与により投与されうる。
【0314】
好ましくは、本発明においては、投与は注射によるものである。より好ましくは、注射は皮内注射である。
【0315】
好ましくは、本発明においては、投与は、経口的に許容される組成物によるものである。
【0316】
ワクチン接種のためには、該組成物は、0.1〜0.2mlの水溶液、好ましくは緩衝生理食塩水中で準備され、非経口的に、例えば皮内接種により投与されうる。本発明のワクチンは、好ましくは、皮内に注射される。注射部位に、軽度の腫脹および発赤、また、時には痒みが見られるかもしれない。投与様式、投与の用量および回数は公知方法により当業者により最適化されうる。
【0317】
抗原
本明細書中で用いる「抗原」は、免疫応答性宿主内に導入されると、該抗原と結合しうる特異的抗体の産生を修飾する、ならびに/または関連Th応答、例えばTh2および/もしくはTh1を修飾する、実体を意味する。抗原は、純粋な物質、物質の混合物、または可溶性もしくは粒子状物質(細胞または細胞断片または細胞超音波処理物を含む)でありうる。この場合、該用語は、任意の適当な抗原決定基、交差反応性抗原、同種抗原、異種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテンおよび免疫原またはそれらの一部ならびにそれらの任意の組合せを含み、これらの用語は本明細書の全体にわたり互換的に用いられる。
【0318】
本明細書中で用いる「抗原決定基またはエピトープ」なる語は、抗体もしくはT細胞受容体により認識されるかまたはTヘルパー細胞応答を惹起する、抗原上の部位を意味する。好ましくは、それは、タンパク質抗原に由来するまたはタンパク質抗原の一部としての短いペプチドである。しかし、該用語は糖ペプチドおよび炭水化物エピトープをも含むと意図される。該用語は、該全生物を認識する応答を刺激する、アミノ酸または炭水化物の修飾配列をも含む。
【0319】
抗原決定基が、感染症を引き起こす感染因子の抗原決定基であることが有利である。
【0320】
「予防」または「予防用」ワクチンは、例えば防御免疫を刺激することにより病態の発生を予防するためにナイーブ個体に投与されるワクチンである。
【0321】
「治療用」ワクチンは、病態を軽減もしくは最低限度に抑えるためにまたは病態の免疫病理学的結果を抑制するために、既存の病態を有する個体に投与されるワクチンである。
【0322】
アジュバント
本明細書中で用いる「アジュバント」なる語は、免疫応答の影響を増強しうるまたは該影響に関与しうる実体を意味する。アジュバントは、抗原に対する免疫応答を補助、増強、ダウンレギュレーション、修飾または多様化する任意の物質または物質の混合物である。
【0323】
本発明の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物は、該免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物の有効性を増強する1以上のアジュバントを含みうる。有効でありうる追加的なアジュバントの具体例には、Tsukamurella、Rhodococcus、Gordonia、Nocardia、Dietzia、Mycobacterium属のうち1以上の細菌の全細胞、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、ベリリウム、スルファート、シリカ、カオリン、炭素、油中水型エマルション、水中油型エマルション、ムラミルジペプチド、細菌内毒素、リピドX、Corynebacterium parvum(Propionobacterium acnes)、Bordetella pertussis、Mycobacterium vaccae、Mycobacteium obuense、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、インターロイキン、例えばインターロイキン2およびインターロイキン12、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE-デキストラン、ブロック共重合体または他の合成アジュバントが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのようなアジュバントは、例えばMerck Adjuvant 65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)またはフロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, Michigan)のように、種々の入手源から商業的に入手可能である。ヒトへの使用には水酸化アルミニウムのみが承認されている。その他のアジュバントのいくつか、例えばM. vaccaeは、臨床試験に関して承認されている。
【0324】
好適には、アジュバントはMycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞でありうる。
【0325】
当技術分野においては、本質的には金粒子に結合したDNA配列でありヘリウム銃により皮膚内に発射するDNAワクチンが効率的なワクチン送達システムであることが公知である。通常のワクチンとは異なり、これらのDNAワクチンは伝統的なアジュバント成分を要しない。本発明のもう1つの態様においては、本明細書中で定義されている免疫モジュレーター組成物は、好適には、免疫応答の影響を増強しまたは免疫応答に関与するためにそのようなDNAワクチンと組合せて使用されうる。
【0326】
医薬組成物
本発明はまた、Mycobacterium obuenseのラフ型株からの細菌の全細胞の治療的有効量と、場合によっては製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤(それらの組合せを含む)とを含んでなる医薬組成物を提供する。
【0327】
該医薬組成物は2つの成分を含んでもよく、すなわち第1成分は抗原を含み、第2成分はそのアジュバントを含む。第1成分および第2成分は、連続的、同時または一緒に、そして更には異なる投与経路により送達されうる。
【0328】
好適には、該抗原は、疾患過程の一部として、宿主組織内においても産生されうる。したがって、抗原は、細菌、宿主または寄生虫の侵襲に由来するものでありうるし、あるいは組織から遊離した物質、例えばストレスタンパク質または腫瘍抗原でありうる。
【0329】
該医薬組成物は、ヒト用医薬および獣医薬においてヒトまたは動物に使用されるものでありうる。該医薬組成物は、典型的には、製薬上許容される希釈剤、担体または賦形剤の任意の1以上を含む。治療用途のための許容される担体または希釈剤は薬学分野でよく知られており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co.(A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。医薬担体、賦形剤または希釈剤の選択は、意図される投与経路および標準的な製薬実務に基づいて行われうる。該医薬組成物は、該担体、賦形剤または希釈剤としてまたはそれらに加えて、任意の適当な結合剤、滑沢剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を含みうる。
【0330】
該医薬組成物には保存剤、安定剤、色素および更には香味剤が加えられうる。保存剤の具体例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが含まれる。抗酸化剤および懸濁化剤も使用されうる。
【0331】
異なる送達系に応じて異なる組成物/製剤要件が存在しうる。例えば、本発明の医薬組成物は、小型ポンプ(mini-pump)を使用して、または粘膜経路により、例えば、鼻腔内噴霧剤もしくは吸入用エーロゾル剤もしくは摂取可能な溶液として、または非経口的(この場合、該組成物は、例えば静脈内、筋肉内、皮内または皮下経路による送達のための注射可能な形態として製剤化される)に送達されるように製剤化されうる。あるいは、該製剤は、両方の経路により送達されるように設計されうる。
【0332】
好ましくは、本発明においては、該製剤は注射可能な形態のものである。より好ましくは、該製剤は皮内に注射される。
【0333】
好ましくは、本発明においては、該製剤は、経口的に許容される組成物である。
【0334】
該物質を胃腸粘膜から粘膜送達しようとする場合には、それは胃腸管内で一時的に安定に維持されうるべきである。例えば、それはタンパク質分解に抵抗性であり、酸性pHに安定であり、胆汁の浄化作用に抵抗性であるべきである。
【0335】
適当な場合には、該医薬組成物は、吸入により、または坐剤もしくはペッサリーの形態で、またはローション剤、水剤、クリーム剤、軟膏剤もしくは散布剤の形態で局所的に、または皮膚パッチの使用により、またはデンプンもしくはラクトースのような賦形剤を含有する錠剤の形態で経口的に、またはカプセル剤もしくは膣坐剤として単独でまたは賦形剤と混合して、または香味剤もしくは着色剤を含有するエリキシル剤、水剤もしくは懸濁剤の形態で投与されうる。あるいは、該医薬組成物は、例えば静脈内、筋肉内、皮内または皮下に非経口的に注射されうる。非経口投与の場合には、該組成物は、他の物質(例えば、溶液を血液と等張にするのに十分な塩または単糖)を含有しうる無菌水性溶液の形態で最も好ましく使用されうる。頬側または舌下投与の場合には、該組成物は、従来の方法で製剤化されうる錠剤またはロゼンジの形態で投与されうる。
【0336】
医薬の併用
本発明の物質は、1以上の他の医薬上活性な物質と共に投与されうる。例えば、本発明は、本発明の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物と、1以上のステロイド、鎮痛薬、抗ウイルス薬、インターロイキン、例えばIL-2または他の医薬上活性な物質とによる同時または連続的な治療を包含する。
【0337】
これらの方式は、該物質を連続的、同時または一緒に投与することを含むと理解されるであろう。
【0338】
免疫増強物質
本明細書中で用いる「免疫増強物質」なる語は、被験体に投与された場合にその被験体の健康に利益となる分離されたまたは培養内の1以上の細菌を意味する。好ましくは、この利益は該被験体の細胞性免疫応答の修飾により達成される。
【0339】
本発明においては、免疫増強物質は、例えば、被験体(好ましくは小児または高齢者)における免疫系失調の治療または予防のために、あるいは被験体、例えば哺乳動物、特に家畜またはヒトの免疫系を増強するために使用されうる。
【0340】
該免疫増強物質は、本発明の細菌で補充した特別に設計された食事または動物用飼料(例えば、ブタ用飼料)の摂取により投与されうる。
【0341】
該免疫増強物質は直接注射のような他の経路によっても投与されうる。
【0342】
好ましくは、該細菌は、生製品の維持の問題を回避するために殺菌(不活化)される。
【0343】
細胞性免疫応答をモジュレーションする細菌の同定
もう1つの態様においては、本発明は、(a)第1試験動物を免疫刺激物質と接触させ、(b)第2試験動物を、細菌と混合された免疫刺激物質と接触させ、(c)該試験動物のそれぞれにおいて細胞性免疫応答を測定し、(d)該試験動物のそれぞれにおける細胞性免疫応答を比較する工程を含んでなる、細胞性免疫応答をモジュレーション(例えば、修飾)するMycobacteriumのラフ型株の細菌の1以上の全細胞を同定する方法であって、該免疫刺激物質のみの場合と比べて、細菌と混合された免疫刺激物質によるより低い細胞性免疫応答が、該細菌による細胞性免疫応答の修飾を示す、方法に関する。
【0344】
もう1つの態様において、本発明は、ツベルクリン皮膚試験の利用を含んでなる、Mycobacterium属から選ばれる細菌のラフ型株のTh1/Th2応答を決定する方法に関する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは、足蹠上で行われる。Th1優勢反応においては、陽性足蹠免疫応答は24時間の時点で最大となり、48時間の時点で減少する。しかし、Th2反応性が上昇するにつれて、該48時間での陽性足蹠免疫応答が上昇し、24時間の時点の足蹠免疫応答を上回ることさえある。
【0345】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて十分に実証されている。したがって、該試験アッセイは、本発明の免疫モジュレーター組成物の導入がBCG細胞性免疫応答をモジュレーションするか否かを評価するために用いられうる。
【0346】
本明細書中で用いる「試験動物」なる語は、該免疫刺激物質に対する細胞性免疫応答を惹起する任意の動物を意味する。好ましくは、試験動物は哺乳動物である。より好ましくは、試験動物はラット、ハムスター、ウサギ、モルモットまたはマウスである。より好ましくは、試験動物はマウスである。
【0347】
好ましくは、該細菌はTヘルパー細胞応答を修飾する。好適には、該細菌は、Th1およびTh2応答を減少させることによりTヘルパー細胞応答を修飾しうる。好適には、該細菌は、Th1応答を増強しTh2応答を低下させることによりTヘルパー細胞応答を修飾しうる。好適には、該細菌は、Th2応答に影響を及ぼすことなくTh1応答を増強することによりTヘルパー細胞応答を修飾しうる。
【0348】
好ましくは、該免疫刺激物質は既知のTh1およびTh2応答を有する。例えば、免疫刺激物質BCGを使用した場合、反応は通常、24時間の時点で最大となり、この場合、それはTh1応答の指標となる。48時間の時点での反応は通常、より低く、Th2の寄与を含む。BCGはTh1応答を優先的に刺激することが公知である。
【0349】
そのような免疫刺激物質の使用により、試験細菌のTh1/Th2応答を決定することが可能であろう。したがって、特定の疾患および/または障害を治療および/または予防するための所望のTh1/Th2応答を有する1以上の細菌を同定することが可能であろう。
【0350】
好ましくは、細胞性免疫応答は、ツベルクリン皮膚試験を用いて測定される。BCGのような免疫刺激物質でのワクチン接種は、後に試験されるツベルクリン(Tubercle bacilliの可溶性調製物)での皮膚試験に対する応答を誘導する。種々の間隔で、例えばツベルクリンの注射の24時間後、48時間後および72時間後に、局所反応が測定される。簡潔に説明すると、ツベルクリンに対する陽性免疫応答を誘導する免疫刺激物質(例えば、BCG)が使用される。試験動物においては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは、足蹠上で行われる。Th1優勢反応においては、陽性足蹠免疫応答は通常、24時間の時点で最大となり、48時間の時点で減少する。しかし、Th2反応性が上昇するにつれて、該48時間での陽性足蹠免疫応答が上昇し、24時間の時点の足蹠免疫応答を上回ることさえある。したがって、該アッセイは、本発明の免疫モジュレーター組成物の導入が細胞性免疫応答をモジュレーションするか否かを評価するために用いられうる。
【0351】
好ましくは、免疫刺激物質はBCGである。
【0352】
つぎに、実施例により本発明を詳しく説明することとするが、これらの実施例は、本発明を実施する際に当業者の助けとなるものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0353】
方法
ツベルクリン皮膚試験
ツベルクリン皮膚試験は、免疫モジュレーター組成物、すなわち、本発明の全死菌細菌細胞を含む細菌組成物/懸濁液の、細胞性免疫応答に対する効果を評価するための適当なモデルアッセイである。
【0354】
BCGワクチン接種はツベルクリンに対する陽性免疫応答を誘導する。マウスにおいては、ツベルクリン皮膚試験は、好ましくは、足蹠上で行われる。Th1優勢反応においては、陽性足蹠免疫応答は24時間の時点で最大となり、48時間の時点では減少する。しかし、Th2反応性が上昇するにつれて、該48時間目の陽性足蹠免疫応答は上昇し、24時間の時点の足蹠免疫応答を上回ることさえある。
【0355】
BCGワクチン接種の効果は、このツベルクリン皮膚試験を用いて十分に実証されている。したがって、該試験アッセイは、本発明の免疫モジュレーター組成物の導入がBCG細胞性免疫応答をモジュレーションするか否かを評価するために用いられうる。
【0356】
細菌懸濁液の調製
Mycobacteria属由来のラフ型株の細菌を、発酵槽中の抗原不含培地、例えばソートン(Sauton)培地内で2〜28日間増殖させることが可能である。あるいは、関心のある細菌種を固形傾斜培地(solid slope)上で増殖させることが可能である。代替方法は当業者に容易に利用可能であろう。
【0357】
得られた細菌塊を回収し、直接的に、または洗浄後に使用して、バッファー中の懸濁液を調製することが可能である。該細菌細胞懸濁液は、1用量当たり100,000〜10,000,000,000個の桿菌を含有するよう調製する。該細菌細胞を水または生理食塩水に再懸濁させる。好ましくは、生理食塩水は、ボラート(borate)でpH8.0で緩衝化する。好ましくは、該桿菌を、好適にはオートクレーブ内で121℃で15分間加熱することにより、不活化(殺菌)する。得られた細菌懸濁液は全細胞を含む。
【0358】
実施例1
Mycobacterium obuense型株(ATCC 27023)の安定ラフ型変異体の誘導
Mycobacterium obuense型株ATCC 27023は、国際コレクションにおいて、この株によってのみ表される。該株は培養特性においてスムーズ型であり、ラフ型変異体に転換しないことが公知である。
【0359】
実験1.Middlebrook 7H11寒天上での培養
Middlebrook 7H11寒天上へのMycobacterium obuense型株ATCC 27023の6回の連続的な継代培養はスムーズ型コロニーのみを生成した。
【0360】
実験2.4,4'-ジアミノジフェニルスルホンを種々の濃度で添加したMiddlebrook 7H11寒天上での培養
実験2、パートa
Mycobacterium obuense型株ATCC 27023を、種々の濃度のDapsone(商標)を含むMiddlebrook 7H11寒天上で増殖させた。結果を表1に示す。
【表1】

【0361】
実験2、パートb
Mycobacterium obuense型株ATCC 27023を、種々の濃度のDapsone(商標)を含むMiddlebrook 7H11寒天上で増殖させた。結果を表2に示す。
【表2】

【0362】
実験2、パートc
Mycobacterium obuense型株ATCC 27023を、種々の濃度のDapsone(商標)を含むMiddlebrook 7H11寒天上で増殖させた。結果を表3に示す。
【表3】

【0363】
ラフ型コロニーを12μg Dapsone(商標)/ml培養から注意深く拾い、Dapsone(商標)が添加されていないMiddlebrook 7H11培地上で繰返し継代培養した。
【0364】
20回の繰返し継代培養(すなわち、連続培養)の後、ラフ型コロニーのみが増殖した。
【0365】
この実験を用いて単離されたラフ型株は、ブダペスト条約に基づき、NCTCに受託番号NCTC 13365として寄託されている。
【0366】
実施例2
M. obuenseで既に処理されている、BCGでチャレンジされたマウスにおける、ツベルクリンに対するDTH反応
実験群に、誕生時および21日後(離乳時)に107 桿菌 / 0.1mlの免疫モジュレーターを投与した。対照マウスには緩衝化ボラートを同じスケジュールで投与した。
【0367】
最後の免疫化の30日後、マウスの頚部の首筋の皮下にBCG(Merieux)(105 桿菌 / 0.1ml)をワクチン接種した。
【0368】
28日後、動物をツベルクリン(右後足蹠)または生理食塩水(左後足蹠)0.02mlでチャレンジした。
【0369】
あるいは、左後足蹠への注射の代わりに、試験の前に足蹠の厚さをさらに測定することも可能である。
【0370】
チャレンジの24、48および72時間後、DTH反応を測定した。
【表4】

【0371】
このようにして非応答体および応答体をプールしても、有意差は存在しない。
【0372】
しかし、応答体のみを分析した場合には、有意差が示される。
【表5】

【0373】
ボラート感作対照と、M. obuenseのラフ型株での感作の後の結果との間の、ツベルクリンに対する+ve応答サイズにおける差は、24時間の時点においては統計的に有意であり(p < 0.005)、48時間および72時間の時点においては有意性が失われるものの、下方傾向が存在する。
【0374】
ツベルクリンに対する陽性応答は、有効な細胞が注射部位に引き寄せられていること、および炎症性サイトカインが放出されていることを意味する。したがって、細胞が該部位に動員されているがサイトカインを放出していない陰性応答においては、コンピテント細胞が該部位に動員されている場合であっても、主として放出サイトカインに対する応答による膨張はさほどでもないない可能性がある。
【0375】
試験試薬と共通の抗原を含有する試薬で免疫化された動物においては、応答の欠如は、応答が存在しないことを意味するのではなく、該試験がそれを検出していないことを意味するに過ぎない。陰性応答が生じうるのは、応答不能であるからか、あるいは応答は存在するがそれが陰性の意味においてであるからである。後者の状況は、BCGでチャレンジされた動物おけるDTH反応において生じると思われる。理論により束縛されるものではないが、感作細胞は、真皮に遊走することなくリンパ節内に残留しうるか、あるいはそれはそこに達するがダウンレギュレーション性サイトカイン、アネルギー誘導性細胞を産生すると考えられる。時には、リンパ球形質転換試験のような代替試験で、試験抗原に応答性であるコンピテント循環細胞の存在が示され、見掛け上陰性の皮膚試験部位のパンチ生検はこれらの細胞の浸潤を示し、それにもかかわらず、その細胞は、認識可能な膨張を引き起こしていない。皮膚または足蹠で試験された試験陰性個体の比率は、遺伝、ならびに感作およびチャレンジに関する時間スケールによって様々となる。ヒトにおけるこれらの現象に関しては、多くの公開されている証拠が存在する。
【0376】
したがって、そのような試験からのデータの分析においては、本発明者らが行ったように、陽性応答をなす比率および陽性応答体の平均直径を調べる必要がある。それらの2つの群の間では、応答した割合における差は認められなかったが、応答者が引き起こした応答の大きさにおいては差が認められた。
【0377】
結論
M. obuense(ラフ型株NCTC 13365)は免疫調節効果を有する。
【0378】
前記説明において挙げた全ての刊行物を参照により本明細書に組み入れることとする。本発明の範囲および精神からの逸脱を伴わない、本発明の記載されている方法および系の種々の修飾および変更が当業者に明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関して説明されているが、特許請求されている本発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解されるべきである。実際、生化学および免疫学または関連分野の当業者に明らかな、本発明を実施するための記載されている形態の種々の修飾が、特許請求の範囲の範囲内に含まれると意図される。
【0379】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌のラフ型株の製造方法であって、細菌をスルホンおよび/またはスルホンアミドに曝露することを含んでなる方法。
【請求項2】
前記スルホンおよび/またはスルホンアミドが4,4'-ジアミノジフェニルスルホンまたはその類似体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ラフ型株を単離する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
培地1ml当たりスルホンおよび/またはスルホンアミド5μg以上の濃度のスルホンおよび/またはスルホンアミドを含む培地で前記細菌を増殖させる、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記細菌が好気性Mycobacterium属のものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記細菌がMycobacterium obuenseである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の方法により製造されたMycobacteriumのラフ型株。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項記載の方法により製造可能なMycobacterium obuenseのラフ型株。
【請求項9】
ブダペスト条約に基づきNCTCに受託番号NCTC 13365で寄託されたMycobacterium obuenseのラフ型株。
【請求項10】
請求項8または請求項9記載のMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞を含んでなる免疫モジュレーター組成物であって、使用した該免疫モジュレーター組成物が細胞性免疫応答を修飾する、免疫モジュレーター組成物。
【請求項11】
前記組成物が抗原およびアジュバントを含み、該アジュバントがMycobacterium obuenseのラフ型株の全細胞を含む、請求項10記載の免疫モジュレーター組成物。
【請求項12】
Mycobacterium obuenseのラフ型株の細菌の全細胞と、場合によっては製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含んでなる医薬組成物であって、使用した該医薬組成物が細胞性免疫応答を修飾する、医薬組成物。
【請求項13】
感染(例えば、細菌、ウイルス、または寄生虫感染、例えばマラリア、トリパノソーマ症、リーシュマニア症、家禽におけるEimeria種による感染、およびトキソプラズマ症)および/または感染に伴う免疫異常、自己免疫疾患(例えば、血管障害、例えば閉塞性血管障害、ならびに筋内膜過形成および/またはアテローム形成(またはアテローム性動脈硬化症として公知である)の根底をなす免疫学的態様、関節炎および移植片拒絶)、ストレス(例えば、主外傷ストレス(major trauma stress)、社会心理学的ストレスおよび慢性ストレス)、アレルギー(例えば、アレルギー性喘息を含む喘息、枯草熱、アレルギー性皮膚炎(湿疹)、アナフィラキシーショック、植物接触または摂取に対するアレルギー、刺創(例えばイラクサおよび昆虫の刺創)に対するアレルギー、ならびに昆虫刺咬に対するアレルギー(例えば小昆虫、例えばCulicoides(これはウマにおける夏癬を引き起こす)によるもの))、細胞性肺気腫、COPDならびに癌(例えば、メラノーマまたは腺癌)ならびに免疫系失調(例えば、小児および高齢者における免疫系失調)、のうちの1以上の治療または予防のための医薬の製造における、請求項10〜12のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
【請求項14】
感染、自己免疫疾患、ストレス、アレルギー、細胞性肺気腫、COPD、癌および免疫系失調のうち1以上の治療または予防のための医薬の製造における、請求項10〜12のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
【請求項15】
小児用ワクチンに対する有害反応および/またはその影響の治療または予防のための医薬の製造における、請求項10〜12のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
【請求項16】
細胞性免疫応答を修飾するための医薬の製造における、請求項10〜12のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物の使用。
【請求項17】
医薬としての使用のための、請求項10〜12のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物。
【請求項18】
ワクチン中でのまたはワクチンとしての使用のための、請求項10〜12のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物または医薬組成物。
【請求項19】
ワクチンが予防用ワクチンまたは治療用ワクチンである、請求項18記載の免疫モジュレーター組成物。
【請求項20】
前記組成物が細胞性免疫応答を修飾する、請求項18または請求項19記載の免疫モジュレーター組成物。
【請求項21】
前記組成物が抗原または抗原決定基を更に含む、請求項1〜20のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
【請求項22】
抗原または抗原決定基が、BCG(カルメット・ゲラン菌)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)およびMycobacterium vaccaeまたはその一部のうちの1以上から選ばれる抗原または抗原決定基である、請求項21記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
【請求項23】
前記組成物が2以上のそのような抗原または抗原決定基を含む、請求項21または請求項22記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
【請求項24】
前記細菌が殺菌されている、請求項10〜12および17〜23のいずれか1項記載の免疫モジュレーター組成物および/または医薬組成物。
【請求項25】
請求項10〜12および17〜23のいずれか1項記載の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物の有効量を被験体に投与することを含んでなり、該組成物が細胞性免疫応答をモジュレーションする、被験体における病態の治療または予防方法。
【請求項26】
請求項10〜12および17〜23のいずれか1項記載の医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を投与することを含んでなる、被験体を免疫化するための方法。
【請求項27】
前記医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を抗原または抗原決定基と共に共投与する、請求項25または請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記抗原または抗原決定基が、BCG(カルメット・ゲラン菌)ワクチン、ジフテリアトキソイドワクチン、ジフテリア/破傷風/百日咳ワクチン、百日咳ワクチン、破傷風トキソイドワクチン、麻疹ワクチン、おたふくかぜワクチン、風疹ワクチン、OPV(経口ポリオワクチン)およびMycobacterium vaccaeまたはその一部のうちの1以上から選ばれる抗原または抗原決定基である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物および/または免疫モジュレーター組成物を2以上のそのような抗原または抗原決定基と共に共投与する、請求項27または請求項28記載の方法。
【請求項30】
細菌のラフ型株を製造するための、スルホンおよび/またはスルホンアミドの使用。
【請求項31】
実施例に関して実質的に上述されている方法。
【請求項32】
実施例に関して実質的に上述されている免疫モジュレーターまたは医薬組成物。
【請求項33】
実施例に関して実質的に上述されている使用。

【公表番号】特表2009−520489(P2009−520489A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546597(P2008−546597)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004780
【国際公開番号】WO2007/071978
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508178375)バイオイオス リミテッド (4)
【Fターム(参考)】