説明

組合せレンズ、レンズユニット、撮像装置、及び組合せレンズの連結固定方法

【課題】隣接するレンズ同士のレンズ配置精度を高く維持可能な構造でありながら、物体側から入射した光の内部反射光を結像面へ入射するのを防止することができる構造を備えた組合せレンズを提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも物体側から光軸方向に沿って順に第1レンズと第2レンズとを隣接して備える組合せレンズにおいて、第1レンズは、第2レンズに対向する光学機能領域の外周のリム領域の面が、レンズ外周より光軸に向かって順に、レンズ外周のコバ面に連接して光軸に対し略垂直な平坦面と当該平坦面に連接して光軸を中心にすり鉢状に縮径して落ち込んだ傾斜面とを備え、第1レンズに備わるレンズ外周のコバ面が物体側から入射した光の内部反射光を散乱させるための粗面を備え、且つ当該傾斜面が内部反射光を反射させてレンズ外周面方向へ導く傾斜角度を有することで、第2レンズへの内部反射光の入射を防止する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、物体側に凹面を有する第1レンズと、像面側に当該凹面と対向する凸面を有する第2レンズとを備える組合せレンズ、レンズユニット、撮像装置、及び組合せレンズの連結固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、人々のセキュリティや安全に対する意識が著しく向上している。このような背景から、不審人物を認識するための監視カメラや事故を未然に防ぐための車両搭載用カメラ等の普及がめざましい。これら監視カメラや車両搭載用カメラ等の撮像装置においては、より広範囲の視界を得る必要性から、レンズの広角化が強く求められる。
【0003】
現在、固体撮像素子を用いたデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ等の撮像装置には、撮像用レンズとして、撮影者が撮影条件に最適な画角での撮影を手軽に行うことが可能であるズームレンズが用いられることが一般的となっている。しかし、上述の監視カメラや車両搭載用カメラ等の撮像装置では、逆光等の悪条件での撮影も想定する必要があるため、逆光の環境下においても鮮明な映像を撮影することができ、また、これら撮像装置における使用環境を考慮すると小型軽量であることが求められる。
【0004】
ちなみに、逆光や車両のライトを直接撮像してしまう環境下における撮影は、不要な光線がレンズのコバ面や勾配面に内面反射して結像面に入射し易く、その結果、ゴーストやフレアの発生が生じ易くなる。ここで、ゴーストとは、撮影の際に入射した強い光がレンズやカメラ本体内部で反射を繰り返すことによって画像に光の輪や光の筋が表れる現象をいう。また、フレアとは、レンズ内で強い光の反射が複雑に起こり画像のコントラストを下げる現象やこれによって部分的に色のにじみが生じる現象をいう。これらゴーストやフレアの発生は、鮮明な映像を撮影することを困難にする。そのため、監視カメラや車両搭載用カメラ等の撮像装置には、ズームレンズよりも逆光に強く、レンズの構成枚数が少ない単焦点レンズが好適に用いられている。
【0005】
また、監視カメラや車両搭載用カメラ等は、その使用用途から背景を鮮明により広い範囲で撮影可能であることが好ましく、用いられるレンズの広角化が強く求められている。しかし、広角レンズは、物体側から入射される光線の入射可能となる角度範囲が大きいため、不要な光線がレンズのコバ面や勾配面に内面反射して結像面に入射し易い。それでなくとも、車両搭載用カメラにおいては、自動車を運転している際に物体側から入射される光の強さや入射角度等が常に変化する環境で使用されるものである。従って、特に広角レンズを車両搭載用カメラに用いた場合には、天候や車両の走行位置等撮影時の環境の変化に伴う光の強さ及び物体側から入射される光の入射角度等の変化に対応することができず、ゴーストやフレアの発生を十分に防止することができない。
【0006】
そこで、従来より、光学スペックの広角化に伴うゴーストやフレアの発生を防止すべく、レンズフードをつけたり、レンズに反射防止目的のコーティングを施すことが試みられている。最近では、レンズの表面に複数のコーティング層を形成することにより、ゴーストやフレアの発生を防止する効果を向上させた「マルチコーティング」を撮像レンズに採用するケースも増えている。しかし、マルチコーティングを撮像レンズに採用しても、セキュリティ対策用の監視カメラや安全対策用の車両搭載用カメラ等に用いる場合においては、例えば車両のライトを正面から撮影する等によって高輝度の光がレンズに入射し、ゴーストやフレアが強調されてしまうこともあり十分ではない。
【0007】
以上の課題に対して、特許文献1には、ゴースト等の発生を抑制することができる、光学素子および光学ユニットについて開示がされている。具体的には、特許文献1の光学素子は、入射した光を屈折させるための光学機能面と、前記光学機能面より外側の面に形成されて前記入射した光の内部反射による反射光を散乱させるための粗面とが設けられたことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−175991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載された光学素子および光学ユニットでは、監視カメラや車両搭載用カメラ等に用いることを想定した場合に、ゴーストやフレアの発生が十分に抑止されているとは言い難い。すなわち、特許文献1の光学素子および光学ユニットは、レンズのコバ部に黒塗りしたりシボ加工を施したりすることで、ゴーストやフレアの発生に寄与する反射光を撮像素子側に向かうのを阻止するものである。ただし、特許文献1の光学素子および光学ユニットにおいて、当該シボ加工などを施す領域にレンズ側面が含まれていない。
【0010】
また、特許文献1の光学素子および光学ユニットに備えるシボ加工領域は、レンズ位置精度を高めるのを阻害する位置に設けられるものであり好ましくない。少なくとも2つのレンズの組合せからなる組合せレンズにおいて、隣接するレンズ同士のレンズ配置精度を高めるためには、レンズ同士を当接させて配置することが好ましいが、特許文献1の光学素子および光学ユニットの場合、隣接するレンズ同士を当接配置するに際して、シボ加工が施された面を当接させるためレンズ位置精度の向上を図ることができない。
【0011】
参考までに、鏡筒の内周面に設けた各段差によって、各々のレンズを配置する方法を採用すると、配置された各々のレンズは、レンズ外周部が鏡筒内周面に当接して固定されるため、レンズ同士の光軸位置合わせ、レンズ同士の間隔等のレンズの配置精度が、鏡筒の内周面に設けた内壁面形状の精度に左右されることになる。係る場合、鏡筒の内壁面形状を高精度で形成するためには、鏡筒部材を製造する際の金型を高精度で加工する必要があり、また当該金型形状を高精度に保つためのメンテナンス等が必要になることから製造コストの上昇を招くこととなる。また、レンズ同士の光軸の位置合わせを考えると、鏡筒内にレンズを配置して以降のレンズ位置の微調整が難しく、光軸の位置合わせ即ちレンズの光学性能出しが困難となる。
【0012】
本件発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、少なくとも2つのレンズの組合せからなる組合せレンズにおいて、隣接するレンズ同士のレンズ配置精度を高く維持可能な構造でありながら、物体側から入射した光の内部反射光を結像面へ入射するのを防止することができる構造を備えた組合せレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、前記課題を解決するために以下のような組合せレンズを採用した。
【0014】
本件発明に係る組合せレンズ: 本件発明の組合せレンズは、少なくとも物体側から光軸方向に沿って順に第1レンズと第2レンズとを隣接して備える組合せレンズにおいて、各レンズは、中央部の入射した光を屈折させるための光学機能領域と、当該光学機能領域の外周にリム領域とを備え、当該第1レンズは、当該第2レンズに対向するリム領域の面が、レンズ外周より光軸に向かって順に、レンズ外周のコバ面に連接して光軸に対し略垂直な平坦面と、当該平坦面に連接して光軸を中心にすり鉢状に縮径して落ち込んだ傾斜面とを備え、当該第1レンズに備わるレンズ外周のコバ面が、物体側から入射した光の内部反射光を散乱させるための粗面を備え、且つ当該傾斜面が、当該内部反射光を反射させて当該レンズ外周面方向へ導く傾斜角度を有することで、当該第2レンズへの当該内部反射光の入射を防止することを特徴としている。
【0015】
また、本件発明に係る組合せレンズは、前記組合せレンズにおいて、前記第1レンズは、前記第2レンズに対向するリム領域の面が、前記傾斜面のレンズ光軸側に続く連接面を更に備え、当該連接面に内部反射光を散乱させるための粗面を備えることが好ましい。
【0016】
また、本件発明に係る組合せレンズは、前記第1レンズは、平坦面に内部反射光を散乱させるための粗面を更に備えることが好ましい。
【0017】
また、本件発明に係る組合せレンズは、前記第2レンズは、前記第1レンズに対向するリム領域の面が、レンズ外周より光軸に向かって順に、レンズ外周のコバ面に連接して光軸に対し略垂直な平坦面と、当該平坦面に連接して光軸に沿って略円柱状又は光軸を中心に略円錐状に縮径して立ち上がる壁面と、当該壁面から続く連接面とを備え、当該第2レンズの当該壁面と当該連接面との交わり部が当該第1レンズの前記傾斜面に対し当接可能であり、且つ当該第2レンズの当該平坦面が当該第1レンズの前記平坦面に対し当接可能となる形状を有することが好ましい。
【0018】
また、本件発明に係る組合せレンズは、前記第2レンズは、平坦面及び/又は連接面に内部反射光を散乱させるための粗面を備えることが好ましい。
【0019】
また、本件発明に係る組合せレンズは、前記粗面は、シボ加工が施されたものであることが好ましい。
【0020】
本件発明に係る組合せレンズの連結固定方法: 本件発明の前記組合せレンズの連結固定方法は、少なくとも前記第1レンズと前記第2レンズとの連結固定が、当該第1レンズの前記傾斜面に、当該第2レンズの前記壁面と前記連接面との交わり部を当接させてレンズ位置調整を行うための連結をした後、当該第1レンズの平坦面と、当該第2レンズの平坦面とを当接させて固定することを特徴とするものである。
【0021】
本件発明に係るレンズユニット: 本件発明のレンズユニットは、前記組合せレンズが2枚以上のレンズから構成される場合に、少なくとも前記第1レンズと前記第2レンズとを含み、鏡筒内に収納されていることを特徴とするものである。
【0022】
本件発明に係る撮像装置: 本件発明の撮像装置は、前記レンズユニットを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本件発明の組合せレンズは、少なくとも2つのレンズの組合せからなる組合せレンズにおいて、隣接するレンズ同士のレンズ配置精度を高く維持可能な構造でありながら、物体側から入射した光の内部反射光を結像面へ入射するのを防止することができる。従って、本件発明の組合せレンズは、監視カメラや車両搭載用カメラ等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本件発明の一実施形態に係る組合せレンズ及びレンズ連結構造を示す模式断面図である。
【図2】本件発明の別の実施形態に係る組合せレンズを示す模式断面図である。
【図3】本件発明の一実施形態に係る組合せレンズをレンズユニットとして用いた場合を示す模式断面図である。
【図4】比較例の一実施形態に係る組合せレンズ及びレンズ連結構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。なお、以下に示す図においては、図の見易さを考慮し、レンズ断面部のハッチングを省略した。
【0026】
まず、本件発明に係る組合せレンズについて説明する前に、従来の組合せリングについて簡単に説明しておく。図4は、比較例の一実施形態に係る組合せレンズ及びレンズ連結構造を示す模式断面図である。図4の(A)には、物体側から光軸方向Lに沿って順に第1レンズ22と第2レンズ23とが組み合わされた組合せレンズ21が示されている。また、図4の(B)には、当該組合せレンズ21を構成する第1レンズ22と第2レンズ23とが、直接的に接触して連結固定されているのが示されている。そして、図4の(B)に示すように、双方のレンズに物体側からの不要な光線が入射された場合の内部反射を防止する対策が講じられていない場合には、図4の(B)に示す矢符の如く不要な光線が当該第1レンズ22内で内部反射を繰り返し、当該第2レンズ23を介して結像面に入射することとなる。従って、従来の組合せレンズの形態においては、例え、図4の(A)に示す、当該第1レンズ22の光学機能領域24の外周側のリム領域25に、物体側から入射された不要な光線の内部反射を防止する対策が講じられていたとしても、当該不要な光線の結像面への入射を十分に防止することは困難である。
【0027】
本件発明に係る組合せレンズの形態: 図1は、本件発明の一実施形態に係る組合せレンズ及びレンズ連結構造を示す模式断面図である。本件発明に係る組合せレンズ1は、少なくとも物体側から光軸方向Lに沿って順に第1レンズ2と第2レンズ3とを隣接して備える組合せレンズ1において、各レンズ2,3が、中央部の入射した光を屈折させるための光学機能領域4と、当該光学機能領域4の外周側にリム領域5とを備えたものである。
【0028】
ここで、本件発明は、物体側から入射した光の内部反射光を結像面へ入射するのを防止することができる構造を備えた組合せレンズを提供することを課題としている。また、特に監視カメラや車両搭載用カメラに用いられる単焦点広角レンズにおいては、不要な光線がレンズのコバ面や勾配面に内面反射して結像面に入射することによるゴーストやフレアの発生を防止することが求められていることは既に述べた通りである。このゴーストやフレアの発生は、物体側から入射された光が図1に示す第1レンズ2のリム領域5のレンズ外周6や平坦面7,9に反射し、この第1レンズ2において内部反射した光が当該第2レンズ3を通って、最終的に結像面(不図示)に入射することで起こる。
【0029】
図1に示すように、第1レンズ2は、第2レンズ3に対向するリム領域5の面が、レンズ外周6より光軸Lに向かって順に、レンズ外周のコバ面6に連接して光軸Lに対し略垂直な平坦面7と、当該平坦面7に連接して光軸Lを中心にすり鉢状に縮径して落ち込んだ傾斜面8とを備えている。本件発明に係る組合せレンズ1は、物体側の第1レンズ2が、少なくとも平坦面7と傾斜面8とを有することで、第1レンズ2の内部で反射された不要な光線を、当該第1レンズ2と隣接する第2レンズ3に入射されるのを防止するものである。
【0030】
すなわち、本件発明の第1レンズ2は、当該第1レンズ2に備わるレンズ外周のコバ面6が、物体側から入射した不要な光線を散乱させるための粗面(図1におけるレンズ表面の斜線部)を備え、且つ傾斜面8が、当該不要な光線を反射させて当該レンズ外周面方向へ導く傾斜角度を有する。図1の(B)に示すように、本件発明の組合せレンズは、当該第1レンズ2が備える傾斜面8が、当該不要な光線(図1の(B)における矢符)を反射させて当該レンズ外周面6方向へ導く傾斜角度を有することで、当該第1レンズ2に入射された不要な光線のその後の内部反射を防止し、当該不要な光線が当該第2レンズ3に入射するのを防止するものである。
【0031】
なお、本件発明に係る組合せレンズにおいて、第1レンズ2は、第2レンズ3に対向するリム領域5の面が、傾斜面8のレンズ光軸側に続く連接面9を更に備え、当該連接面9に内部反射光を散乱させるための粗面を備えることも好ましい。図1には、第1レンズ2が、傾斜面8に続き光軸Lに対し略垂直な連接面9を備えているのが示されている。このように、本件発明に係る組合せレンズ1は、第1レンズ2の連接面9に粗面を備えることで、不要な光線が当該第2レンズ3に入射するのをより十分に防止することができる。ちなみに、図1には、本件発明の第1レンズ2の連接面9がレンズ光軸Lに対し略垂直な平坦面で示されているが、本件発明に係る組合せレンズにおいて当該連接面9の形状はこれに限定されるものではない。
【0032】
図2は、本件発明の別の実施形態に係る組合せレンズを示す模式断面図である。図2に示す組合せレンズ1の第1レンズ2は、図1に示した組合せレンズと同様に、当該第1レンズ2に備わるレンズ外周のコバ面6が、物体側から入射した不要な光線を散乱させるための粗面(図2におけるレンズ表面の斜線部)を備え、且つ当該傾斜面8が、当該不要な光線を反射させて当該レンズ外周面方向へ導く傾斜角度を有するものである。しかし、図2の(A)に示される組合せレンズ1は、第1レンズ2の連接面9が、光軸を中心にすり鉢状に縮径して落ち込んで、傾斜面8よりも傾斜角度の小さい傾斜面となっている点で、図1に示した組合せレンズと相違する。また、図2の(B)に示される組合せレンズ1は、第1レンズ2の連接面9が存在しない点で図1に示した組合せレンズと相違する。
【0033】
これら図2の(A)及び(B)に示されるように、本件発明の第1レンズ2の連接面9は、第1レンズ2の形態構成として必要絶対条件となるものではない。従って、本件発明の第1レンズ2の連接面9は、その傾斜角度が図2の(A)に示したような角度に限定されものではなく、また所謂テーパー状でなく曲面であってもよい。また、本件発明の第1レンズ2は、図2の(B)に示したように、当該第1レンズ2のリム領域5の面に連接面9を備えない形態であってもよい。しかし、本件発明に係る組合せレンズ1は、第1レンズ2の形態構成に当該連接面9を有することで、特に物体側から入射される光の強さや入射角度等が常に変化する環境下での使用において、ゴースト及びフレアの発生をより効果的に防止することが可能となる。
【0034】
また、本件発明に係る組合せレンズにおいて、第1レンズ2は、平坦面7に内部反射光を散乱させるための粗面を更に備えることも好ましい。第1レンズ2と第2レンズ3とを組合せる際に、当該第1レンズの平坦面7は、当該第2レンズの平坦面10と当接されて固定される部分であるため、レンズ組付けの際の同軸度ズレを防止する観点からみると好ましくないものの、ゴースト及びフレアの発生を更に効果的に防止することができる。
【0035】
また、本件発明に係る組合せレンズにおいて、第2レンズ3は、第1レンズ2に対向するリム領域5の面が、レンズ外周6より光軸Lに向かって順に、レンズ外周6のコバ面に連接して光軸Lに対し略垂直な平坦面10と、当該平坦面10に連接して光軸Lに沿って略円柱状又は光軸を中心に略円錐状に縮径して立ち上がる壁面11と、当該壁面11から続く連接面12とを備えるものである。そして、当該第2レンズ3の当該壁面11と当該連接面12との交わり部13が当該第1レンズ2の傾斜面8に対し当接可能であり、且つ当該第2レンズ3の平坦面10が当該第1レンズ2の平坦面7に対し当接可能となる形状を有するものである。
【0036】
本件発明に係る組合せレンズにおける第2レンズ3の形状を上述した形状とした場合、当該第2レンズ3の壁面11と連接面12との交わり部13を当該第1レンズ2の傾斜面8に対し当接させることで、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3との位置調整を容易に行うことができ、光軸Lの位置ズレを防止することができる。また、更に当該第2レンズ3の平坦面10を当該第1レンズ2の平坦面7に対し当接させることで、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とを組付けた後に光軸Lの位置ズレや、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とのレンズ間隔に変化が起こらぬようしっかり固定することができる。
【0037】
また、本件発明に係る組合せレンズにおいて、第2レンズ3は、平坦面10及び/又は連接面12に内部反射光を散乱させるための粗面を備えることが好ましい。第1レンズ2と第2レンズ3とを組合せる際に、第2レンズ3が、連接面12に内部反射光を散乱させるための粗面を備えることで、ゴースト及びフレアの発生を更に防止することができる。なお、当該第2レンズの平坦面10においては、当該第1レンズの平坦面7と当接されて固定される部分であるため、レンズ組付けの際の光軸の位置ズレを防止する観点からみると好ましくないものの、ゴースト及びフレアの発生を防止する効果について更なる向上を図ることが可能となる。
【0038】
また、本件発明に係る組合せレンズにおいて、粗面は、シボ加工が施されたものであることが好ましい。ここで、シボ加工とは、部材表面に岩目、砂目、梨地等の模様を形成する加工をいい、レンズ成形用金型に予めこれらの模様を設けることで簡単にレンズ表面に粗面を形成することができる。従って、レンズに当該粗面を形成するにあたって、製造コストの増大を招くこともない。
【0039】
なお、本件発明に係る組合せレンズにおける第1レンズと第2レンズには、樹脂系レンズとガラス系レンズとの双方を用いることができる。ちなみに、樹脂系レンズは、ガラス系レンズに比べてレンズの形状制御が容易であり、上述した第1レンズの傾斜面8の傾斜角度や面性状を、設定された条件に対し高精度で作り込むことができる。一方、ガラス系レンズは、樹脂系レンズに比べて温度や湿度に等に対する体積変化が生じにくいため、ガラス系レンズを採用することでより高画質な撮影を行うことができる。本件発明に係る組合せレンズにおいては、用途に応じてレンズの材質を自由に選択することができる。
【0040】
本件発明に係る組合せレンズの連結固定方法: 図1の(B)には、本件発明に係る組合せレンズ1の第1レンズ2と第2レンズ3とが連結固定した状態が示されている。本件発明に係る組合せレンズの連結固定方法は、まず最初に当該第2レンズ3の壁面11と連接面12との交わり部13を当該第1レンズ2の傾斜面8に対し当接させることで、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3との位置調整を行う。このときに、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とは、所謂点接触した状態で連結されているため、容易に双方のレンズ2,3の位置を調整することができ、光軸Lの位置合わせを簡単に行うことができる。
【0041】
そして、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3との位置調整が完了した後に、当該第1レンズ2を当該第2レンズ3に対して押圧付勢させて、当該第2レンズ3の平坦面10を当該第1レンズ2の平坦面7に対し当接させることで、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とを確実に固定することができる。このように、本件発明に係る組合せレンズの連結固定方法は、当該第1レンズ2の傾斜面8と平坦面7とを当該第2レンズ3に対して当接させることで、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とを組付けた後に光軸Lの位置ズレや、当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とのレンズ間隔に変化が起こらぬようしっかり固定することができる。従って、本件発明に係る組合せレンズの連結固定方法によれば、連結する第1レンズ2と第2レンズ3との光軸調整を、高精度且つ容易に行うことができ、且つ当該第1レンズ2と当該第2レンズ3とを連結固定した後も、双方のレンズに位置ズレやレンズ間隔の変化が起こりにくい。
【0042】
ここで、比較例である図4の(B)に示した組合せレンズの連結固定方法は、第1レンズ22と第2レンズ23とが、直接的に接触して連結固定されているものである。しかし、図4の(B)に示した組合せレンズの連結固定方法は、本件発明に係る組合せレンズの連結固定方法で示した構造と異なり、当該第1レンズ22の突出部の角部が当該第2レンズ23の勾配面と点接触した状態のみで連結固定されているものである。従って、図4の(B)に示す組合せレンズの連結固定方法の場合、当該第1レンズ22と当該第2レンズ23とを連結固定した後に双方のレンズに位置ズレが生じる恐れがある。
【0043】
本件発明に係るレンズユニット: 図3は、本件発明の一実施形態に係る組合せレンズをレンズユニットとして用いた場合を示す模式断面図である。図3には、本件発明に係る組合せレンズを構成する第1レンズ2と第2レンズ3とが、第3レンズ17と第4レンズ18との組合せに係るレンズ群を開口絞り20を挟んで物体面側に配置されている。そして、これらレンズ2,3,17,18は鏡筒内に組み込まれており、当該鏡筒16の物体側端部には、ガラスレンズ19が取り付けられている。なお、図3において第1レンズ2の外周は若干傾斜して形成されているのが示されているが、外周面をこのように傾斜させることで、鏡筒16内への配置が容易になると共に、金型からレンズ成形品を離型するのが容易となる。
【0044】
図3に示すように、本件発明に係るレンズユニット15は、組合せレンズが2枚以上のレンズから構成される場合に、少なくとも図1に示した第1レンズ2と第2レンズ3との組み合わせを含み、鏡筒16内に収納されるものである。本件発明に係るレンズユニット15は、例え組合せレンズが2枚以上のレンズから構成される場合であっても、第1レンズ2と第2レンズ3との組み合わせを含む限り、ゴースト及びフレアの発生を防止することが可能となる。また、本件発明に係るレンズユニット15は、第1レンズ2と第2レンズ3とを直接的に接触させて連結させるため、隣接するレンズ同士のレンズ配置精度を高く維持することができる。よって、本件発明に係るレンズユニットは、良好な光学性能を維持するものである。
【0045】
本件発明に係る撮像装置: 本件発明に係る撮像装置は、図3に示すような、少なくとも第1レンズ2と第2レンズ3との組み合わせを含んだレンズユニット15を備えることで、小型で高品質な撮像装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上説明したように、本件発明の組合せレンズは、少なくとも2つのレンズの組合せからなる組合せレンズにおいて、隣接するレンズ同士のレンズ配置精度を高く維持可能な構造でありながら、物体側から入射した光の内部反射光を結像面へ入射するのを防止することができる。したがって、本件発明は、セキュリティ対策用の監視カメラや車両搭載用カメラ等に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 組合せレンズ
2 第1レンズ
3 第2レンズ
4 光学機能領域
5 リム領域
6 外周面(第1レンズ)
7 第1平坦面(第1レンズ)
8 傾斜面(第1レンズ)
9 第2平坦面(第1レンズ)
10 第1平坦面(第2レンズ)
11 壁面(第2レンズ)
12 第2平坦面(第2レンズ)
13 角部
L 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも物体側から光軸方向に沿って順に第1レンズと第2レンズとを隣接して備える組合せレンズにおいて、
各レンズは、中央部の入射した光を屈折させるための光学機能領域と、当該光学機能領域の外周にリム領域とを備え、
当該第1レンズは、当該第2レンズに対向するリム領域の面が、レンズ外周より光軸に向かって順に、レンズ外周のコバ面に連接して光軸に対し略垂直な平坦面と、当該平坦面に連接して光軸を中心にすり鉢状に縮径して落ち込んだ傾斜面とを備え、
当該第1レンズに備わるレンズ外周のコバ面が、物体側から入射した光の内部反射光を散乱させるための粗面を備え、且つ当該傾斜面が、当該内部反射光を反射させて当該レンズ外周面方向へ導く傾斜角度を有することで、当該第2レンズへの当該内部反射光の入射を防止することを特徴とする組合せレンズ。
【請求項2】
前記組合せレンズにおいて、前記第1レンズは、前記第2レンズに対向するリム領域の面が、前記傾斜面のレンズ光軸側に続く連接面を更に備え、当該連接面に内部反射光を散乱させるための粗面を備える請求項1に記載の組合せレンズ。
【請求項3】
前記組合せレンズにおいて、前記第1レンズは、平坦面に内部反射光を散乱させるための粗面を更に備える請求項1又は請求項2に記載の組合せレンズ。
【請求項4】
前記組合せレンズにおいて、前記第2レンズは、前記第1レンズに対向するリム領域の面が、レンズ外周より光軸に向かって順に、レンズ外周のコバ面に連接して光軸に対し略垂直な平坦面と、当該平坦面に連接して光軸に沿って略円柱状又は光軸を中心に略円錐状に縮径して立ち上がる壁面と、当該壁面から続く連接面とを備え、
当該第2レンズの当該壁面と当該連接面との交わり部が当該第1レンズの前記傾斜面に対し当接可能であり、且つ当該第2レンズの当該平坦面が当該第1レンズの前記平坦面に対し当接可能となる形状を有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の組合せレンズ。
【請求項5】
前記組合せレンズにおいて、前記第2レンズは、平坦面及び/又は連接面に内部反射光を散乱させるための粗面を備える請求項4に記載の組合せレンズ。
【請求項6】
前記組合せレンズにおいて、前記粗面は、シボ加工が施されたものである請求項1〜請求項5のいずれかに記載の組合せレンズ。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の組合せレンズの連結固定方法は、少なくとも前記第1レンズと前記第2レンズとの連結固定が、当該第1レンズの前記傾斜面に、当該第2レンズの前記壁面と前記連接面との交わり部を当接させてレンズ位置調整を行うための連結をした後、
当該第1レンズの平坦面と、当該第2レンズの平坦面とを当接させて固定することを特徴とする組合せレンズの連結固定方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の組合せレンズが2枚以上のレンズから構成される場合に、少なくとも前記第1レンズと前記第2レンズとを含み、鏡筒内に収納されていることを特徴とするレンズユニット。
【請求項9】
請求項8に記載のレンズユニットを備えていることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−221136(P2011−221136A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87948(P2010−87948)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000133227)株式会社タムロン (355)
【Fターム(参考)】