説明

組合せ焼成菓子

【課題】味も見た目にも楽しく栄養価の高いシリアルを手軽に摂取でき、かつ通常の焼成菓子の製造ラインで製造することができ、更には味や素材が異なった様々なバリエーションを展開することのできる実用的な新規焼成菓子を提供することを目的とする。詳しくはそのまま焼成菓子をスナック菓子として食したり、また、牛乳などの飲料中に溶かしてシリアルの食感を楽しむことのできる新規焼成菓子を提供することを目的とする。
【解決手段】シリアル部とメレンゲ部を組み合わせて焼成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成することを特徴とする焼成菓子に関する。詳しくは、焼成菓子をそのままスナック菓子として食することにより栄養価の高いシリアルが手軽に摂取でき、一方で牛乳などの飲料中に溶かしてシリアルの食感を楽しむこともできる新規焼成菓子であって、更には、通常の焼成菓子の製造ラインで製造でき、味や素材が異なった様々なバリエーションを展開することのできる新規焼成菓子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にメレンゲとは、卵白やゼラチン等の起泡性タンパク質を、砂糖などと混合し、攪拌して泡立てた後、必要に応じて色素、香料、呈味改善素材等を加えて、所望の形状に成形したもののことである。そして、得られたメレンゲを乾燥あるいは焼成したものがメレンゲ菓子として食されている。メレンゲ菓子は、口どけがよく、軽い食感があることを特徴としており、食感改良の為に、様々な改良が行われてきた。例えば、油性の原料を含むメレンゲの製造に関して、ソフトな食感及び組織を変えずに風味の良いメレンゲを得るために、サイクロデキストリンを含有すること(特許文献1)や、滑らかで良質の安定したメレンゲを製造するためのメレンゲ改質剤として、重量平均分子量を600〜15000に調整したカゼインまたはカゼイン分解物を用いること(特許文献2)などが行われてきた。更には、食感がソフトで軽く、口溶けがよく、風味がまろやかな気泡含有食品組成物の調製方法として、ナトリウム含量が0.15重量%以下、及びカルシウム含量が2.5重量%以上であって、且つ脂肪含量が1重量%以下の乳清タンパク質を含有する組成物に気泡を含ませる方法(特許文献3)が開示されている。
【0003】
しかし、そのメレンゲ菓子の形態としては、得られたメレンゲを単に絞り出して乾燥したものや、茶を含有したメレンゲ(特許文献4)といった単にメレンゲ自体に味を付けるだけのものや、ココナッツパウダーやチョコレートをメレンゲ中に含有させるもの(特許文献5)、メレンゲ中にナッツを含有したものを可食性シート生地で被覆し、生菓子とする(特許文献6)といった形態のみが開示されており、本願発明のようにスナック菓子としても、飲料に溶かしてシリアルとしても楽しめるといった、2種の形態で食することのできるシリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成した新規焼成菓子については一切開示されていない。更には、消費者の嗜好の変化に応じて新規な焼成菓子を製造しようとした場合、新しい製造ラインの導入が必要であるなど、コストの問題を抱えていた。
【0004】
一方、シリアルは、とうもろこし、小麦、米、大麦等の穀類を圧扁、成形、膨張、焙焼等により加工したものを主原料とし、必要に応じてビタミン類、野菜、果実、ナッツ等を加えて製造したものとして知られている。そして最近では、ミネラル、ビタミン、食物繊維などを強化したシリアル製品が販売されており、その栄養価の高さと手軽さから、おやつや朝食用として利用されてきた。しかし、その形態は、皿やコップなどの食器に移し、スプーン等を用いて食べるなど手間のかかるものであり、またフレーク状になっていてこぼしやすいなど、気軽に栄養を摂取したい場合に簡便さに欠けるものであった。また、通常のシリアル製品は、シリアル自体に若しくはシリアルに被覆する形態で味を付加していたが、シリアルに被覆する方法では調味料の被覆量が限られるなどといった制限があり、シリアルそのもののバリエーションは需要者のニーズに即座に対応できるものではなかった。また、最近ではシリアルをチョコレートや糖液によって結着、成形したバータイプのシリアルも調製されている。しかし、上記バータイプのシリアルは、多量の脂肪や糖分が付加される結果、シリアルの優れた栄養バランスが大幅に損なわれる上、食感が重い、チョコレートや糖液が溶け出して手がべたつくといった問題があった。更には、チョコレートや糖液の油脂や糖類が内部のシリアルに移行し、シリアルの食感が湿ってしまうなどといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平4−237477号公報
【特許文献2】特開平8−173044号公報
【特許文献3】特開2004−105179号公報
【特許文献4】特開2002−176918号公報
【特許文献5】特許第3010282号公報
【特許文献6】特開2002−95418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、味も見た目にも楽しく栄養価の高いシリアルを手軽に摂取でき、かつ通常の焼成菓子の製造ラインで製造することができ、味や素材が異なった様々なバリエーションを展開することのできる実用的な新規焼成菓子を提供することを目的とする。詳しくはそのまま焼成菓子をスナック菓子として食したり、また、牛乳などの飲料中に溶かしてシリアルの食感を楽しむことのできる新規焼成菓子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記問題点に鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、シリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成することにより、栄養価の高いシリアルが飛散することなく、スナック菓子として手軽かつ簡便に摂取でき、また、牛乳などの飲料中に溶かしてシリアルの食感を楽しむなど複数の食べ方を提供でき、かつ通常の焼成菓子の製造ラインで製造することができ、味や素材が異なった様々なバリエーションを展開することのできる新規焼成菓子を提供できることを見いだした。また、メレンゲ部100重量部に対し、シリアル部を 40〜200重量部配合することにより、牛乳などの飲料への溶解性が向上することを見出し、更には、メレンゲ部に乳清タンパク質を含むことにより、メレンゲのホイップ時間が短縮され、かつメレンゲの口溶けが軽くなり、更には焼成菓子のフレーバーリリースが良くなることを見いだした。
【0008】
本発明は、以下の態様を有する焼成菓子に関する;
項1.シリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成することを特徴とする焼成菓子。
項2.メレンゲ部100重量部に対し、シリアル部を40〜200重量部配合する、項1に記載の焼成菓子。
項3.メレンゲ部に乳清タンパク質を含む、項1又は2に記載の焼成菓子。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、シリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成すること特徴とする焼成菓子に関する発明である。ここで、シリアルとは上述したとおり、とうもろこし、小麦、米、大麦等の穀類を圧扁、成形、膨張、焙焼等により加工したものを主原料とし、必要に応じてビタミン類、野菜、果実、ナッツ等を加えて製造したもので、主に朝食用として、牛乳等を加え、加熱し、又は加熱しないで食べるものをいう。シリアルの一例としては、オートミールやコーンフレークなどが挙げられる。本発明で用いるシリアルとしては、製菓用に用いられるシリアルや、通常市販されているシリアルが使用できる。
【0010】
メレンゲ部は、前述の通り、卵白やゼラチン等の起泡性タンパク質を、砂糖などと混合し攪拌して泡立てた後、必要に応じて色素、香料、呈味改善素材等を加えて、所望の形状に成形することにより調製することができる。ここで、起泡性タンパク質としては、卵白、グルテン分解物、乳清タンパク質等が挙げられるが、メレンゲの口どけ向上、風味の観点より、乳清タンパク質を用いることが好ましい。更に好ましくは、乳清タンパク質の中でも、以下に述べる両条件を満たす乳清タンパク質を使用することが好ましい。(1)ナトリウム含量が0.15重量%以下、及びカルシウム含量が2.5重量%以上である。(2)脂肪含量が1重量%以下の乳清タンパク質を含有する。この両条件を満たす乳清タンパク質を含有することにより、食感がソフトで軽く、口溶けやフレーバーリリースが良いメレンゲ部となると共に、メレンゲ部を製造する際のホイップの工程にかかる時間を短縮することができる。なお、かかる乳清タンパク質は商業的に入手可能であり、例えばミルプロ〔商標〕WP(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を挙げることができる。
【0011】
本発明の焼成菓子は、シリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成することを特徴とする。ここで、シリアル部とメレンゲ部との組合せ方法については、特には限定されないが、シリアル部をメレンゲ部の中に混合させた形態が好ましい。シリアル部をメレンゲ部の中に混合させることにより、メレンゲのふわっと軽い食感とシリアルのサクサク感のコントラストがおいしい焼成菓子となる。また、メレンゲ部に各種素材を添加することにより、通常の焼成菓子の製造ラインで、味や素材が異なった様々なバリエーションの新規焼成菓子を提供することができる。更には、シリアル部のみのものは、フレーク状でこぼしやすかったが、メレンゲ内にシリアルを内在させることでシリアルが飛散しにくく、食べやすくなる。また、焼成菓子の形態についても特には限定されないが、好ましくは一口サイズに成形したものが好ましい。一口サイズに成形することにより、そのまま食する際に手軽に食べられると共に、飲料に溶かした際もメレンゲ部が飲料へ溶解しやすくなるためである。
【0012】
また、本発明の焼成菓子におけるシリアル部とメレンゲ部の割合は、特には限定されないが、牛乳などの飲料への溶解性、及びシリアルの保形性の観点より、メレンゲ100重量部に対し、シリアルを40〜200重量部含有させることが好ましく、更には、メレンゲ100重量部に対し、シリアルを65〜150重量部含有させることがより好ましい。ここで、シリアルの配合量がメレンゲ100重量部に対し、200重量部より極端に多くなると、焼成菓子の形態が崩れやすく、また、牛乳などの飲料に溶かした際に味付けが不十分となったり、シリアルへ新規食感を付与しにくくなる場合がある。一方、シリアルの配合量がメレンゲ100重量部に対し、40重量部より極端に少なくなると、食した際のボリューム感が充分に得られない場合がある。
【0013】
本発明の焼成菓子は、シリアル部とメレンゲ部を組み合わせた後に、焼成工程を得ることにより調製することができる。ここで本発明において焼成とは、50〜200℃程度の高温空気中で食品を熱加工し、生地を乾燥させることをいう。具体的には、60〜80℃の低温状態の乾燥機中で一晩乾燥させる乾燥工程や、90〜180℃程度のオーブン内で焼成する工程方法などが挙げられる。
【0014】
また、本発明で開示される焼成菓子は、様々な方法で食することができる。その一例としては、通常と同様に、そのまま食するといったことが挙げられる。かかる場合、本発明の焼成菓子は、口中に入れることでメレンゲからなる部分が溶解し、シリアル特有の食感とシリアルを被覆するメレンゲの軽やかな甘い口どけが楽しめる。そして更には、通常皿に盛った状態からスプーン等によって摂取しなければならないシリアルを手でつまんで一口で食することができることから、手軽かつ簡便に栄養価の高いシリアルを摂取することができる。
【0015】
一方、本願発明の焼成菓子は、牛乳などの飲料中に溶かして楽しむこともできる。係る場合は、牛乳などの飲料中に焼成菓子を入れ、攪拌することにより、メレンゲ部が迅速に溶解し、シリアルが飲料中に拡散して、味つきシリアルとしても食することができる。この際、焼成菓子を溶かし入れる飲料は特には限定されないが、好ましくは、牛乳、豆乳、ミルクティー、コーヒー、カフェオレなどが挙げられる。更には、本願発明の焼成菓子は、トッピングとして、ヨーグルトやバナナを加えたり、バニラアイスを添えたりなど、様々な方法で食することができる。
【0016】
また、本発明におけるメレンゲ部には、消費者の嗜好に応じて、甘味料、香料、色素、乳化剤、酸化防止剤や機能性素材等を添加することができる。そしてこういった様々な素材を添加したメレンゲ部を使用することによって、焼成菓子の味や素材にバリエーションを付与することができる。
【0017】
甘味料としては、例えば、ショ糖、異性化糖、乳糖、麦芽糖、ブドウ糖、果糖、転化糖、水あめ、粉末水あめ、還元麦芽水あめ、蜂蜜、トレハロース、パラチノース、D−キシロース等の糖類;キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール等の糖アルコール類;サッカリンナトリウム、サイクラメート及びその塩、アセスルファムカリウム、ソーマチン、アスパルテーム、スクラロース、アリテーム、ネオテーム、ステビア抽出物に含まれるステビオサイドなどの高甘味度甘味料等を挙げることができる。
【0018】
乳化剤としては、焼成菓子に一般的に用いられている乳化剤であればよい。例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン脂肪酸エステル、クエン酸あるいは乳酸等の有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル)、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サポニン、ポリソルベート、ステアロイル乳酸塩(ナトリウム、カルシウム)等などを挙げることができる。
【0019】
香料、色素としては、製菓の際に用いられる一般的な物質を用いることができ、香料や色素をメレンゲ部に添加することにより、例えばコーヒー味やストロベリー味といった様々な色と味を持つ焼成菓子を調製することができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の内容を以下の実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは、「重量部」、「%」は「重量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを示す。
【0021】
実施例1−(1) メレンゲ部の調製
表1の処方に従って、メレンゲ部を調製した。詳しくは、粉糖、起泡性タンパク質を粉体混合したものを水へ投入し、ホイッパーを用いて63rpmの回転数で混合し、溶解させた。次に、比重が0.3以下となるように216rpmの回転数でホイップしたものに、色素(ビターベース#5)、香料(コーヒーオイル)を加えてメレンゲ部を調製した。
【0022】
【表1】

【0023】
ここで、起泡性タンパク質として乳清タンパク質を使用した実験例1は比重が0.3以下になるまでにホイップするのに要した時間は3分であったのに対し、乾燥卵白を使用した実験例2は6分を要した。
【0024】
実施例1−(2) 焼成菓子の調製
実験例1で得られたメレンゲ部とコーンフレーク(森永商事(株)製)を表2の処方に従って混合した後、一口大の大きさに成形し、60℃の乾燥機で一晩乾燥させることにより焼成菓子を調製した。
【0025】
【表2】

【0026】
実施例1−a〜2−aを比較すると、メレンゲ:コーンフレークの割合が1:1の時に、ボリューム感、牛乳への溶解性等、最もバランスが良い焼成菓子が得られた。なお、起泡性タンパク質として、乳清タンパク質を使用した実施例1−bの方が、乾燥卵白を使用した実施例2−aよりも口溶けが良く、更には牛乳への溶解性の高い焼成菓子が得られた。また、フレーバーリリースの点でも、乳清タンパク質の口溶けの良さや食感の軽さに起因して1−bの方が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、そのままスナック菓子として食することで栄養価の高いシリアルを手軽に摂取でき、また、牛乳などの飲料中に溶かしてシリアルの食感を楽しむなど、複数の食べ方を提供でき、かつ通常の焼成菓子の製造ラインで製造することができ、更には味や素材が異なった様々なバリエーションを展開することのできる実用的な新規焼成菓子を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアル部とメレンゲ部とを組み合わせて焼成することを特徴とする焼成菓子。
【請求項2】
メレンゲ部100重量部に対し、シリアル部を40〜200重量部配合する、請求項1に記載の焼成菓子。
【請求項3】
メレンゲ部に乳清タンパク質を含む、請求項1又は2に記載の焼成菓子。

【公開番号】特開2007−202418(P2007−202418A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21971(P2006−21971)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000175283)三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 (429)
【Fターム(参考)】